知財紛争処理タスクフォース 議事要旨(第3回)
【日 時】 | 平成27年4月3日(金)15:00〜17:00 |
【場 所】 | 中央合同庁舎8号館4階416会議室 |
【出 席 者 】 | 相澤座長、荒井委員、飯村委員、大野委員、奥山委員、上柳委員、杉村委員、高倉委員、長澤委員、宮川委員、川俣参考人、田邉参考人 |
【政 務】 | 平副大臣、松本政務官 |
【事 務 局 】 | 横尾局長、増田次長、田川参事官、北村参事官 |
【関係府省】 | 法務省、特許庁 |
【オブザーバー】 | 最高裁判所 |
事務局より「知財紛争処理の改善に向けた論点」について説明した後、「権利の実現、安定性」について、知的財産研究所、最高裁判所、法務所によるプレゼン及び意見交換、「情報公開・海外発信、地方における知財司法アクセス」について田邉参考人によるプレゼン及び意見交換をそれぞれ実施。主な意見は以下のとおり。
<権利の実現、安定性>
- 各国の数値を用いて検討する場合は、制度の違いに理解を及ぼして議論すべきである。他方、数値データを比較することによって、数値の差異が何に起因するのか、制度の違いはどこにあるのか、という点が明らかになる。互いの制度の良し悪しを分析し、自国の制度の改良につなげる、というアプローチも有用である。
- 他国では議論になっていないという事実は、政策論・立法論において検討する際に考慮すべき事項ではあるが、他国で議論していないということを過度に意識してしまうと、現状維持による弊害が起こる可能性がある。特に、知的財産法制のようなイノベーション、産業政策に関わる施策については、5年先、10年先にも現状で良いのかを他国に先駆けて議論し、行き過ぎや不足については、改めて点検していくといった、ダイナミックで臨機応変なアプローチも必要である。
- アメリカのメディエーションは、日本での裁判官の指導による和解にかなり近いのではないかという印象を受けている。アメリカにおいて権利者側がどれだけ満足しているかは、この和解の部分を考えて判断しないといけないと思う。
- 和解で43%が権利の実現が図られたとあるが、和解金額は5千万円以下でほとんど弁護士費用も出ない。これで「権利の実現が図られた」と言うのは無理なのではないかと思う。
- イノベーションの観点から、無効の抗弁は今のままで良いのか、司法と行政の役割分担はどうすべきか、ということを積極的に議論すべきである。
- 104条の3は産業政策的には間違いだったのではないか。キルビー判決を受けて104条の3を導入したことは理解できるが、当時から状況は完全に変化しているし、予期せぬ結果がおそらく生じてしまい、誤ったメッセージとなって広がったと感じている。このため、104条の3を何らかの形で手直しするか廃止すべきである。
- 審査の過誤はあり得ると考えるので、侵害訴訟の場で無効の主張ができないのは疑問である。訴訟の現場では、信じられないくらい広いクレームの権利もある。有効性推定規定があれば権利者は良いかもしれないが、被疑侵害者はつらい。バランスは考慮すべき。たまたま審査官が間違った判断をしたら、権利者が有利になる制度が良いか否かは慎重に議論すべきである。
- 外国との比較でいえば、フォーラムショッピングをする場合、(無効の抗弁がない)ドイツを選択する傾向があるようだが、欧州統一裁判所では無効の抗弁を導入する方向で検討しているはずである。今、日本が逆方向に進むのはいかがなものか。
- 104条の3の無効の抗弁という防御の方法については、被疑侵害者の一つの選択肢として残しておき、いろいろな選択肢の中で戦略を立てていく、法の正義を実現していく、という方向で今後の議論を進めるべきである。
- 企業で発明を生み出す立場から見ると、発明にはみな価値があり、それに対してどの進歩性のレベルをクリアしたものに独占権を与えるかと言うのが判断だと思う。どこから上に独占権を与え、どこから下に独占権を与えないかというレベル感が大切であって、正義の問題という話ではないのではないか。
- 特許要件のレベルの設定について、ある程度数をこなしていかないと適切なレベル設定は難しいのではないか。その辺が予見性という部分で裁判所は特許庁より少し低いという意見の原因ではないか。行政の責任でアナログ的なハードルの高さを常時モニタリングし微調整する仕組みがあっても良いのではないかと考える。
<情報公開・海外発信、地方における知財司法アクセス>
- 日本政府もIT化を進めており、裁判は公開で行われるという憲法の原則もあるわけであるから、ITを使って情報公開するという事を考えていただく必要がある。
- 誰が原告で誰が被告で裁判が起きたのか、いつ裁判をやるか、和解で終わればその旨をウェブで発表してもらいたい。
- どこまで情報公開するかバランスが大事であり、その点について議論する場があった方がよい。中間書類は見られるが、検索できないので探すのが大変である。弁論準備手続は非公開となっているので、公開されるのは第1回口頭弁論、第2回口頭弁論程度である。
- 以前は裁判所にあるパソコンで自分で調査できたが、今はできなくなった。一方、米国では、訴状が出た瞬間にデータベースに掲載され、全当事者の名前や、和解したかどうかなどの訴訟データが検索可能である。日本の裁判所は是非直してもらいたい。
- 知財高裁のホームページは詳細に判例を検索できるようになっており、ありがたく思っている。加えて、和解のデータについても掲載してもらえるとありがたい。また、知財分野ごとの割合等のデータも、外国語も含めて発信していただきたい。
- 特許侵害訴訟についての地方の裁判所の管轄権については、弁理士など日本の知財人材は確実に増えているため、地方での知財に対する認識は上がる方向であるから、一気にすべての地裁に管轄権を認めることはできなくても、一歩ずつその方向に向かうのは問題無いし正しいことであると思う。
- 裁判管轄については、柔軟に考え札幌、名古屋、福岡くらいでできるようにお願いしたい。
- 高い専門性の司法サービスの提供のため、専属管轄化したことも重要であり、管轄の集中による専門性の確保と、地域活性化とをどのようにバランスを取るかという問題である。電子訴訟システムの運用を一層進めることにより、バランスを取るのが良いかと考える。
- テレビ会議システムなどの電子訴訟システムは活用されていないので、もう少し広報活動すべきである。
- テレビ会議システムなどの電子訴訟システムについては、実際に使われていないのか、ファシリティの問題なのか、については整理する必要がある。
- 出身地に戻って、知財の仕事をしたいという者もいるが、実際には、東京と大阪にしか、訴訟弁護士としての仕事はない、という話をよく聞く。知財を専門とする若い有為な人材が地方に浸透することが、地方における産学連携、地域のベンチャー支援等、地方創生にとって重要である。
- 日本の知財紛争処理システムは、アジア諸国にとっては、お手本になるシステムであり、日本企業がアジア諸国に進出する中、官民一体となって、日本の知財紛争処理システムをアジア諸国に売り込んでいけば、日本企業がアジア諸国に進出しやすくなる。
以 上
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