検証・評価・企画委員会(第6回)日 時:平成26年3月26日(水)10:00〜12:00 場 所:中央合同庁舎4号館1208特別会議室 出席者:
○渡部座長 定刻になりましたので、ただいまから第6回「検証・評価・企画委員会」を開催させていただきます。本日は御多忙中のところ、御参集いただきまして誠にありがとうございます。本日は、中小・ベンチャー企業及び大学支援強化タスクフォースにおける検討内容と職務発明制度、及び知財人財育成に関する各所における取り組み状況について報告を行い、議論を行うこととしております。よろしくお願いいたします。 なお、本日は角川委員、竹宮委員、中山委員、松本委員、山田委員、喜連川委員が御欠席ということを伺っております。また、日覺委員、長谷川委員は所用のため御欠席されておりますけれども、日覺委員の代理で田中裕之様、長谷川委員の代理人で奥村洋一様に参考人として出席いただいております。 それでは、知的財産政策ビジョンの検証について議論に移りたいと思います。まずは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。 ○安田参事官 配付資料の確認でございます。 資料1−1 中小・ベンチャー企業及び大学支援強化タスクフォース報告書 資料1−2 中小・ベンチャー企業及び大学支援強化タスクフォース概要 資料2−1 職務発明制度@(経済産業省) 資料2−2 職務発明制度A(経済産業省) 資料2−3 職務発明制度B(経済産業省) 資料2−4 職務発明制度C(経済産業省) 資料2−5 職務発明制度 参考資料(経済産業省) 資料3 政府が中心となった人財育成の場の整備(経済産業省) 参考資料1 営業秘密タスクフォース及び中小・ベンチャー企業及び 大学支援強化タスクフォースの設置について 参考資料2 検証・評価・企画委員会(第2回、第3回)における各委員発言 (職務発明制度、人財育成関係) 漏れ等がありましたら、お申し出いただければと思います。最後の参考資料2でございますけれども、本日の議事であります職務発明制度と人財育成関係に関しまして、昨年11月の検証・評価・企画委員会における主な意見として、事務局が用意したものでございます。本日の御議論の参考としていただければと思います。 以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 それでは、早速でございますけれども、中小・ベンチャー企業及び大学支援強化について議論を行いたいと思います。このアジェンダにつきましては、御案内のとおりでございますが、タスクフォースを設置しまして2月より議論を進めてまいりました。その検討結果を御報告させていただきたいと思います。 なお、同様にタスクフォースを設置している営業秘密保護の強化につきましては、現在もタスクフォースにおいて議論を進めている最中ですので、こちらにつきましては次回の産業財産権分野の検証・評価・企画委員会について検討結果を御報告させていただく予定でございます。 まずは、事務局より説明をいただきたいと思います。 ○安田参事官 それでは、資料1−1「中小・ベンチャー企業及び大学支援強化タスクフォース報告書」でございます。こちらのタスクフォースですが、参考資料1の別紙2の委員から構成されましたものでございます。会議ですが、2月6日、2月27日の2回開催いたしました。この報告書ですが、各委員から海外進出先で知財に関してどのような問題に直面しているのかという具体的な事例を御紹介いただきまして、これを踏まえ議論を行った結果を取りまとめたというものでございます。 報告書でございますけれども、「T.背景」「U.海外展開を図る中小・ベンチャー企業に対する知的財産面での支援の方向性」「V.海外展開を図る中小・ベンチャー企業及び大学に対する知的財産面での支援強化に向けた論点」「W.最後に」という構成になってございます。 まず、「T.背景」です。中小・ベンチャー企業の海外展開の加速化ということで、我が国の中小・ベンチャー企業もグローバル化に伴いまして、新興国を中心に海外展開を加速しているという状況です。それから、知財マネジメントの重要性ですが、そういった中で技術に勝ってビジネスで負けないようにするために、例えばコア技術はクローズ化して他社との差別化による市場からの収益獲得を図りつつ、コア技術の周辺部分などを国際標準化、ライセンスでオープン化するなど、いわゆる「オープン・クローズ戦略」に代表されるような多様な知財マネジメントがますます重要になってきているという状況にあるという指摘でございます。 一方で、最後の海外展開に当たっての知的財産面での課題とありますように、海外展開を図る多くの中小・ベンチャー企業はまだまだ知財マネジメントに対する理解が不十分でございまして、あるいは理解していたとしても必要な知財マネジメント、これは資金だとか人財の問題だとかありますけれども、それが実現できずに海外展開に当たって様々な困難に直面しているという実態から改めて浮き彫りになった次第でございます。 こういった背景を踏まえまして、「U.海外展開を図る中小・ベンチャー企業に対する知的財産面での支援の方向性」でございますけれども、方向性の検討に当たりまして、幾つかの重要な観点が挙げられたところでございます。 相談窓口のワンストップ化や知財活動の裾野拡大を推進して、経営層に対する啓発の強化でありますとか、知財マネジメントをいかに浸透させるかという観点。知財マネジメントの実現に向けた質の高い専門家による支援、これを国が積極的に充実させるという観点。それから、中小・ベンチャー企業の経営層を支える経営層とかかわりのある方々、例えば金融機関等の方に知的財産に対する理解を促すといった観点。受身的な姿勢ではなくて、「先を見越した」予防的支援の観点。最後に特許以外にも意匠、商標などを複合的に活用して収益の最大化を図るために、意匠、商標、ノウハウ、こういったものも含めて、かつ訴訟までを視野に入れた知財マネジメントをビジネスモデルの検討段階から構築可能とする、こういった観点が挙げられたところでございます。 こういった観点から支援の方向性といたしましては、「即ち」とありますけれども、@経営層に対する直接的、あるいは経営層を支える方々に対する間接的な知財啓発、A窓口のワンストップ化、裾野拡大、B質の高い知財専門家によるビジネスモデルの検討段階からの総合知財戦略構築支援といった施策が支援の方向性として浮かび上がったところでございます。これらの支援につきましては、中小・ベンチャー企業だけではなく、大学に対する支援策としても同様に有効なものと言えると思います。 この方向性といいますか、考え方に基づきましてタスクフォースでは、「人財」「資金」「情報及び関係機関の連携」という3つの論点から検討を行ったところでございます。 「V.海外展開を図る中小・ベンチャー企業及び大学に対する知的財産面での支援強化に向けた論点」、順次紹介いたしますけれども、ここにあるのは各委員から出された主な意見でございます。 「1.『人財』に関する論点」で経営層及び経営層を支える人たちに対する知財啓発に関しますと、まず、経営層に対する知財マネジメントの啓発を国が実施、補助して強化すべきという意見がありました。それから、中小・ベンチャー企業の経営層を地場で支える、地方のという趣旨でございますけれども、金融機関、中小企業診断士、地方自治体の中小企業支援関係者といった人財に対しても、知財の啓発を評価すべきだという意見がありました。 3ページ、質の高い知財専門家による知財の総合支援ということでございまして、特許だけではなくて意匠、商標、ノウハウを加えて、さらに訴訟対応まで含めた知財マネジメントを構築するためにビジネスモデルの検討段階から質の高い知財専門家による支援を実施すべきだ、そのための人財育成を強化すべきであるといった意見がありました。 次に、国内及び海外のニーズに応じた支援として、弁理士、弁護士、企業OB等の経験豊富な専門家を登録しておきまして、国内あるいは海外に適材適所に派遣しまして、関係機関と連携しながらチームで支援する新しいスキームを構築すべきだという指摘がありました。 司法の知財人財の交流強化として、我が国で新興国等の裁判官を受け入れ、日本の裁判実務の浸透を図るべきであるという意見が出ました。 「2.『資金』に関する論点について」でございますけれども、海外知財紛争を見越したトータル的な支援の実施という観点でございます。海外の知財紛争を見越しましたトータル的な支援の充実、これはビジネスモデル検討段階から権利行使、訴訟まで含めた強い特許の形成等の支援を検討すべきであるという指摘でございます。それから、海外の紛争を解決する手段の1つの可能性として国際仲裁等、これはADRでございますけれども、それの活用が有効になる場合もありますので、そういった方法もあるということを周知、その活用を促すべきではないかという指摘でございます。 ニーズを踏まえた資金的支援の強化として、2つ目のポツですが、全ての中小・ベンチャー企業を一律に料金減免の対象にするべきだといった指摘がありました。料金減免と併せて3ポツ目ですが、手続の簡素化をもっと進めるべきだという指摘でございます。4ポツ目、大学においてもいろいろと海外に出願するわけですけれども、外国の特許出願支援につきまして、大学独自の戦略的な活用が可能となるように、大学のニーズに応じた支援を検討すべきであるという指摘でございます。 4ページ、「3.『情報及び関係機関の連携』に関する論点」ですが、窓口のワンストップ化、裾野拡大ということでございます。支援の窓口が地方によってばらばらにあるということですので、窓口を1カ所に集中して、ワンストップ化して支援とか支援策、セミナー等の情報提供をするということとか、専門家を紹介すべきといったことでございます。それから、窓口の機能を強化し、アクセスをしやすくするなどして窓口の敷居を下げて、中小・ベンチャー企業に対して裾野の拡大を図るべきという指摘でございます。 海外知財情報の収集・分析・発信の強化ですけれども、こちらは今、特許庁等がいろいろとやっているところですが、訴訟を含む海外の知財情報の国による収集・分析・発信をさらに拡充すべきといった指摘でございました。それから、海外における、あるいは国内でもそうですけれども、成功事例集だけではなくて失敗事例集も作成して、これを周知するべきではないかという指摘でございます。 ネットワークの活用・強化にいきますと、2つ目のポツですけれども、専門家自身も他の業種の専門家と相談できるようなネットワークを構築すべきだという指摘でございます。最後のポツですが、中小・ベンチャー企業の海外進出、これは円滑にする手段として大学の持つ国際的なネットワークを活用するということも検討すべきではないかという指摘でございます。 「W.最後に」ですけれども、こういった論点を踏まえまして、本日の御議論をいただければと思います。 事務局からは以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 今、御説明にありましたように、タスクフォースを2回やらせていただきました。報告書にありますように、中小企業は日本の地域経済あるいは雇用の担い手として非常に重要なセクターでありますけれども、自らの意思、あるいは環境変化に伴って海外に物すごく加速して進出しているという状況の中で実情をこのタスクフォース2回の中で伺ったわけでございます。ベンチャー、中小企業自身のお話、これはある意味で失敗談なのですけれども、忌憚なくお話をいただきましたし、中小を支援されている機関から事例を御紹介いただきました。 感想を申しますと、非常に問題が山積している状況と認識いたしました。中小企業も知財に関心がないわけではなくて、聞けば概ね9割以上の皆さんが知財は大事だと認識されているけれども、一方で知財権もほとんどなく契約もなしに現地でビジネスをやっているという実態が稀ではなくて、かなり存在しているということですとか、その結果として結果的には模倣品ですとか、あるいは今度は権利行使をされてしまうという状況、そういうことがたくさんあるということが分かってまいりました。 今、読んでいただいた資料1−1、それから、資料1−2で全体の構成をまとめさせていただいておりますが、今のような背景と問題点を御議論するという形で作っています。 中には、例えばそもそも分かっていない、知財で日本と同じだと思って無契約でやっても大丈夫だろうと思ったら、そんなことは全然なかったという、そもそも情報が十分ではないかということです。問題が深刻化してから、ようやくこういうことに気をつければよかったのだということが分かったという話もございましたし、知財を出願しても新興国ですと、様々な国によって実態も違いますので、そういう情報もなく、専門家といっても比較的その分野の専門家ですから、中小企業にとってはそれぞれの専門領域の担当者がいるわけではないので、そこはいい状態で情報が供給されていない。本来、ワンストップであればまだしもというところでありますけれども、そういう情報が足りない、人がいないという問題があります。それから、そういうことが分かっていても資金がないから、結局、諦めてしまうという話等もございました。 そういうことを論点として、「人財」「資金」「情報及び関係機関の連携」という3つにまとめて皆さんの御意見をここにまとめさせていただいたというものでございます。 まず、こういうものを作らせていただきましたけれども、これについて今から委員の皆様から御意見をいただければと思います。限られた時間でございますので、前回と同じように御意見につきましてはお一方当たり2〜3分を目安でお願いをして、一巡してからまた時間があればという形で進めたいと思います。 それでは、このアジェンダについて御意見いかがでしょうか。 荒井委員、どうぞ。 ○荒井委員 今回、中小・ベンチャー企業、あるいは大学支援をおまとめいただいたのは、大変タイムリーなものだと思いますので、敬意を表します。実は今まで中小企業の関係で東京商工会議所に知財戦略委員会を作って活動してきたのですが、これを全国に広げようということで、日本商工会議所に科学技術・知財専門委員会が設置されまして、全国ベースで中小・地域の振興をやろうということを始めましたので、御報告させていただきます。 そういう観点から今の報告書で2ページにあります「人財」、これは非常に大事だと思いますが、特に地方の中小ブランドをやっている人々からしてみると、知財経営というのが非常に大事なわけですが、なかなかその知識がない。参考になるのが農林漁業金融公庫、今の日本政策金融公庫ですが、10年前から農業経営アドバイザー制度を作りまして、農業についても従来はほとんど経営ということを余りやっていなかったのですが、それでは良くないということで農業経営について詳しい地方の金融機関の職員を育てようということで研修をやって、農業経営の試験をやって合格したら農業経営アドバイザーにするということで、今、2,500人まで増えてきて、非常に成果を上げています。 これを参考にしてぜひ知財経営アドバイザー制度を作ったらどうかということでございます。実施主体が特許庁の工業所有権情報・研修館が主体になって、そして、地方銀行や信用金庫の職員を対象に研修をして試験をやって、合格したら知財経営アドバイザーにするということにしたらいいのではないかと提案させていただきます。 もう一点、3ページでございますが、資金の関係で「ニーズを踏まえた資金的支援の強化」の2つ目のポツに「全ての中小・ベンチャー企業を一律に減免対象にする」ということで、これは大変画期的なことですので、ぜひ300人以下は一律に減免対象にすると、はっきりと人数も示して実現していただきたいと思います。それから、今、減免対象になっているのは特許だけでございますので、ぜひ地方の中小企業や地域振興にとっては商標とか意匠も大変大事な役割を果たしますから、そちらも減免の対象に拡大していただきたいという要望です。 もう一点の要望は手続でございますが、特許を中小企業が出願する際に第一が出願種類、2つ目が審査請求の書類、3つ目が早期審査請求の種類、4つ目が料金減免の書類と4種類の手続、書類が必要なので、中小企業については出願書類を一括セットにして、1つの書類に書けば、中小企業にとって必要なものは4点揃うというように実現していただきたいと思います。単に手続を簡素化ということではなくて、特にこういう問題については一括にして、中小企業にあるいは地域の人にフレンドリーな知財制度にしていただきたいという要望でございます。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 長澤委員、どうぞ。 ○長澤委員 私は、このタスクフォースに参加していませんが、ここに書かれていることをざっと今、見させていただいて、書かれていることは、方向性もやるべきことも、これで正しいと思いますし、よくまとめられたと感心しております。 ただ、現実問題として、私も中小企業の経営者の方々と座談会などをやっていますと、かなり生々しい話も聞いています。それらの問題を私が何とかしてあげようとした場合にどうするかという観点でコメントを差し上げたいと思います。経営者の啓発から、特許、意匠、訴訟を含む権利行使、海外の知財制度、国際仲裁、や不競法等多くの分野が関連してきますがこれらをすべて1人でできる人は滅多にいないと思います。 ワンストップ窓口を置いて、そこがまず受け皿になるのは非常にいいと思うのですが、これまで聞いている話ですと、ワンストップ窓口が誰かを紹介することになります。その場合、この人は例えば不競法の専門家である。また次に、弁理士を紹介しますが、この人は特許の権利化の専門家である。ところが、だんだん混乱してきてしまい、紹介された人達が言っていることがずれてしまうと、結局、中小企業の経営者は、何をやっていいか分からないから、もう相談はやめたということになってしまう場合があると聞いています。 従って、本当に親身になって、中小企業が経営する事業とか人事面も見てあげて、その企業の経営にとって何が一番大事なのかということを的確に指導できる人をまず窓口に置く、もしくはある特定の企業には、この人を担当としてアサインして差し上げることが必要だと思います。その窓口担当は全ての分野についての知見はなくても構わないので、こういうときにはこの人に相談したらいいというノウハウとか知恵を持っている人を配置するのがよいと思います。そうすれば、初めて、お金がなければこれを優先すればいいですよ、権利化はこうするべきだが、こういう状況だったらこうしましょう、今、一番危ないのはこれですよというアドバイスができると思います。このような親身な対応こそ、まさに中小企業の人にとっては一番ありがたいサポートとなるのではないかと思います。 その意味では、先ほど荒井委員から言われていたアドバイザー制度をうまく活用して、この中小企業はこの人が担当するぐらいの親身なアドバイザーを置くといいと感じました。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。窓口が単なる窓口ではダメという話だと思います。 妹尾委員、どうぞ。 ○妹尾委員 ありがとうございます。 まず、よくなったなと思います。特に前書きのほうで、知財マネジメントの重要性としてようやくオープン・クローズがきちんと書かれるようになってきたのは、非常に良い進展だと思います。 ただ、この中でこれがオープン・クローズ戦略では実はなくて、オープン領域とクローズ領域をどう組み合わせるか、どう関係づけるかというところに、オープン・クローズ戦略の要諦があるので、そこまでもう少し書き込んでいただくと良いと思います。すなわち、クローズ領域からどうやってオープン領域を支配するかという、その仕掛けがビジネスモデルの要諦であるということなのです。 それから、最後のところで「多様な知財マネジメントを経営戦略に織り込む」と書いてありますが、これは「経営戦略」ではないです。これは「事業戦略」です。事業戦略を複数組み合わせて、どうするかということは経営戦略の範疇ですけれども、これ自身は事業戦略ですから、細かいことを言うと、そういうところが気になるなという気がしました。 もう一つの観点を簡単に申し上げます。荒井先生と長澤さんがおっしゃった窓口について私も一言申しあげますと、これは非常に良いのですが、窓口というのは大抵、問題があったときに行く窓口という観点になってしまいがちです。どういうことかというと、前書きに書いてあった「パッシブ」か「アクティブ」なのかといったときの「パッシブ」になってしまうのですよ。 窓口業務というのは、通常3つのタイプに分けます。1つ目は「キオスクタイプ」、すなわち、何か物を買いに行ったときにガムちょうだい、はいよと言って渡してくれるようなところです。ですから、出願してね、はいよという、こういうものです。 2つ目は、「化粧品売り場」と私たちは俗に呼びます。どうしたら良いのでしょう、お肌が花粉のときに荒れていますと言ったら、この化粧品を使いなさいという、こういうものです。つまり、問題を持っている人が来たら、プロが解決策を提示するというスタイルです。 3つ目の窓口のタイプを「人生相談所」と私たちは俗に呼んでいます。すなわち、何だかよく分からないけれども、不安なのですという人が行くところです。いわゆる新宿の何とかとか、広小路の何とかさんとか、こういう世界です。これと同じで多分、経営の人たちは知財マネジメントが重要だという認識ではないはずです。海外に行くけれども、どうしたら良いだろうかとか、くらいの感じです。それで、今、経営がどうのこうのというときに、その人達と対話を繰り返しながら、実はこういう問題として認識したほうが良いのではないか、と自ら気づいてもらえるようなことができる人なのです。だから、ここの窓口が知財マネジメント専門家であっては逆にいけないのかもしれません。そうではなくて、いわば非専門家の専門家がいるほうが良いだろうと思います。 その意味では、この窓口はきわめて重要なのですけれども、従来の特許相談の窓口とか何とかの延長線上で考えていたら、また同じことになってしまうので、ここのコンセプトをじっくりとちゃんと検討して、荒井先生が言う知財経営アドバイザーとか、こういうところにいくことが必要でしょう。ただ、その人たちは先生がおっしゃるように、地方の銀行だとか金融あるいは中小企業診断士だとか、日ごろ接している方ができるような、そういう総合的なものにしていかないといけないと思います。知財1つだけでは限界があるかなという、パラドックスですけれども、限界があるのかなという感じがしました。 以上です。 ○渡部座長 では、奥村委員、どうぞ。 ○奥村参考人 奥村です。 2点、申しあげます。1点目は、皆さん気になっておりました窓口の件について、1点だけ追加いたします。私は妹尾委員の言われた類型1〜3にプラス4の類型を足したいと思います。渡部座長が言われましたように、中小企業の方は問題があることも知らずに海外に出て行かれることがあるので、何が何だか分からないから、不安とも思わず出て行って、失敗される方もおられるわけです。 その意味では、海外進出するときには一度、こういうところに顔を出してねというイメージの仕組みが必要だろうと思います。それをどこにどのように作るのかということは、よく分かりません。ただ、事業の進め方としては、新しい事業に参入する前には私どものような会社ですと、大体、コンサルタント会社を雇って総合的にベンチマークはどうなのだとか、自分のところのケーパビリティから考えると、何がどう足らないのかとか、そういうことを分析した上で出て行きます。 そういったプロセスそのものを踏むという習慣が恐らく中小企業にはないだろうと思います。そういう意味で、そういうことをきちんとチームで支援することはとてもいいことです。それをうまく機能できるような仕組み、ここがもしかしたら一番のキーポイントなのではないかなと思いました。 もう一点は、海外支援という意味では中小・ベンチャー企業、大学支援とは別なイニシアチブとして海外へ例えば特許庁の審査官を派遣していただいて、海外のプラクティスを日本流に変えていただくということも検討していただいていますが、それはまさに中小企業の支援にも当たりますので、いろいろなイニシアチブがリンクしているということを一つ、皆さんに頭に置いていただきたいと思います。 そのことは、我々のような中小ではない企業にとっても重要なことでございまして、そういうところに特許庁から審査官を派遣していただいて、前の御発表ですと、ちょっと短くて中途半端かなと思いましたが、しっかりとした支援をしていただければ、中小の支援にもなりますし、現地でのそういう方たちが中小の支援をする足がかりにもなるのではないかと思っていますので、一つ頑張っていただきたいと思います。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員 ただいまの奥村委員の御発言につけ加えることになりますが、今回のテーマが国内の中小企業、大学ということなのですけれども、もう少し広い視点で考えれば、海外への情報発信、日本の状況を理解してもらうということも、中小企業の知財活動を海外でサポートすることになると思いますので、それも含めていただけるといいのではないかなと思います。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 杉村委員、どうぞ。 ○杉村委員 この報告書の方向性については全面的に賛成いたします。報告書の中でも紛争トラブルの未然防止や今後の事業展開のための適切なアドバイスを実施することと、現在すでに中小企業が抱えている問題に対してタイムリーな支援を行うための適切な窓口の設置は重要だと思っております。 また、国内だけではなくて、報告書の3ページにも記載がありますように、特許庁が中心となって、海外に経験豊富な弁理士・企業OB等の知財専門家を多数、登録して、中小企業が進出している海外に知財専門家を派遣して現地で中小企業を直接支援するような新たなスキームを早急に構築していただきたいと思っています。 先ほど奥村委員もおっしゃっていましたように、私ども弁理士は海外の審査実務に日ごろ接しておりますが、比較をいたしますと、日本では均質な優れた審査が全世界的に見ても行われているのではないかと思っております。日本の安定的な審査実務、そして裁判のシステム、こういうものを中国だけでなく多くの新興国に構築し、浸透させるために、特許だけではなく、意匠、商標の審査官も一緒に中長期に新興国へ派遣していただいて、日本の審査実務の浸透を積極的に図っていただきたいと思います。また、裁判システムについては、裁判官等の国際的な人財交流をもっと図っていただきたいと思っています。 それから、紛争解決に関わるコストの削減は、中小企業にとって重要なことです。コスト削減や迅速な解決を図るために、国際紛争処理に際して、国際的に認知度を高めて海外企業にも利用してもらえるような知財の国際的なADR機関を国内に早急に整備すべきであると思っております。そのために英語で国際紛争を解決できる人財育成を図っていくべきだと考えます。 タスクフォースで言い忘れた点が1点ございますので、付け加えさせていただきたいことがございます。中小企業がこれから国内外で事業展開を行う上でも起点となる特許権等の日本国内での適切な権利化を図るため、東京だけではなくて地方、例えば大阪等に特許庁のサテライトオフィスを設けていただき、企業から特許庁、特に審査官に対するアクセス性を改善していただきたいと思います。これによって企業側と審査官の意思疎通が図られますので、より安定した適切な権利化が期待できると考えます。まずは、出願等が多く、そして、中小企業も多い大阪等の関西エリアにサテライトオフィスを設けていただくのがよいのではないかと期待してます。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 山本委員、どうぞ。 ○山本委員 私も皆様のご意見同様、こちらの方向性でよいと思います。これまでの御意見を整理しますと、結局、ワンストップ窓口はどこなのか、誰がやるのかということを決めなければ、これ以上進んでいかないと思います。どこをワンストップにするかを決めて、誰がその支援をしていくのか、その支援のメニューの中でパッシブではなくて、いかにプロアクティブな内容の支援をしていくのかという議論を詰めていく必要があるのではないかと思います。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 相澤委員、どうぞ。 ○相澤委員 既に御指摘がありましたけれども、3ページの減免制度につきましては、減免の対象に、中小企業にとって必要な意匠、商標を加えていただきたいと思います。それから、年金の問題も大きいので、年金にも配慮をしていただきたいと思います。 3ページの2の先ほどからある海外人財の研修ですが、研修は、とかく知識の伝達に終わりがちです。海外の実情を踏まえて、海外に出ている日本企業がどういう利益を受けるために研修をやっているのかという目的意識をはっきりして、研修を計画し、実施しないと、政府の研修としてはポリシーが欠けることになると思います。 ○渡部座長 ありがとうございます。 御発言は大体、いただきましたか。 宮川委員、どうぞ。 ○宮川委員 こちらのタスクフォースの一員として検討させていただき、このような報告書にまとめていただいたことに感謝いたします。そして、内容についてはみなで議論をした方向性が的確に反映されていると思っております。皆さんがおっしゃっていた中で、私は弁護士としてワンストップ窓口の中の1つの役割として、法曹というものが何かお手伝いできるのではないかということをタスクフォースでもお伝えして、弁護士も知財の専門家として認識していただいているということで、非常に安心しております。 そして、ほかの委員がおっしゃっていらしたように、できるだけ中小企業の方には何が問題なのか分からないというところをちゃんと理解してあげて、まさに本当のワンストップ、そこに行けば何が問題なのか教えてもらえるような、親切な窓口となるように私どもも支援していきたいと思いますので、委員の方も御協力よろしくお願いしたいと思います。 ○渡部座長 ありがとうございます。 田中参考人、どうぞ。 ○田中参考人 もう既に皆様から出た御意見で十分言い尽くされているかもしれませんけれども、ここから先は窓口の敷居をいかに下げていただいて、実際に機能できるようにするかというところが問題になるかと思います。これは皆さん、問題意識は同じだと思いますので、工夫して進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○渡部座長 ありがとうございます。 一通り御意見をいただいたかと思います。関連省庁から何か確認事項等はございますか。よろしいでしょうか。もしなければ、いただいた御意見を参考にさせていただいて、さらに少しブラッシュアップをしていきたいと思います。 それでは、まず、このアジェンダについてはこれで終了させていだいて、次に職務発明制度についてでございます。これについては、初めに担当省庁であります特許庁より説明をいただければと思います。 ○山田室長(特許庁制度審議室) 特許庁制度審議室長をしております、山田と申します。 資料2−1から資料2−5までを使って御説明をさせていただきます。 まず、資料2−1でございますけれども、一昨日3月24日に産構審の知的財産分科会のもとで「特許制度小委員会」を動かし始めました。ここで職務発明制度についてのあり方を議論するということでございます。資料2−1は委員名簿の御紹介ですけれども、委員長は大渕先生にお願いしておりまして、知的財産法の学者が3名、労働法の学者が2名、民法学者が1名、経済学者が1名、理系の研究者が2名という構成でございます。それから、産業界の代表が4名、中小企業代表が1名、労働界が1名、マスコミが1名、TLOが1名、裁判所が1名、弁護士、弁理士が1名ずつという構成になってございます。 続きまして資料2−2以降は、第1回目の特許制度小委員会で使った資料をそのまま主なものを抜粋してお持ちいたしました。 資料2−2「現行の職務発明制度及び職務発明制度の見直しに関する政府の取組」ということで、当日、御説明した資料でございます。「1.現行の職務発明制度の概要」については釈迦に説法かと存じますので、割愛させていただきます。 2ページ、「2.職務発明制度の見直しに関する政府の取組」でございます。これは昨年6月の閣議決定「知的財産に関する基本方針」の中で現在、発明者帰属となっている職務発明制度について抜本的な見直しを図り、例えば法人帰属、または使用者と従業者との契約に委ねるなどということが書かれてございます。 同日の知財本部では、「知的財産政策ビジョン」で観点が5つほど書かれております。発明者に対する支払いの予見性を高める観点とか、発明者への支払いが発明の譲渡に対する対価と考えるべきか、追加的な報酬と考えるべきかという観点、労働法の視点が大切という観点、グローバルの観点、発明者にとって魅力ある制度・環境の提供という観点ということで、5つ御提示いただいております。 続く安倍政権の成長戦略であります「日本再興戦略」でも6月14日に閣議決定しておりまして、「例えば」というところの例示は変わっておりませんが、ここではスケジュール感が付け加わっております。「来年の年央」、これは今年の年央ということでございますけれども、論点を整理し、平成26年度中に結論を得るというスケジュールを書いてございます。 同日の知財本部の「知的財産推進計画」でも、先ほどの7日の本部の観点がそのまま引き継がれるとともに、3ページの工程表で2013年度、2014年度にやる中身が書き込まれております。2013年度は調査・研究をやるということで、2014年度には2013年度の調査・研究委員会での議論結果を踏まえ、審議会を開催し、2014年年央までに論点を整理し、2014年度中に結論を得ると書き込まれております。ここの審議会に当たるものが3月24日に開催させていただいた「特許制度小委員会」でございます。 さらにこの工程表に関しましては、私ども産構審の知的財産分科会で今年の2月に知的財産分科会の取りまとめを発表しておりまして、この中で2013年の工程表という既定のスケジュールを前倒しし、2014年早期に特許制度小委員会での検討を開始して、議論の加速化を図るということが書かれてございます。 続きまして、資料2−3でございます。2−3から2−4が工程表でいうところの調査研究の委員会で議論されたことの御紹介でございます。2013年度の調査・研究の委員会は、知的財産研究所にお願いして調査研究委員会を回しました。この知的財産研究所における委員会では、もっぱらファクト・ファインディング、それから、法制的な論点の抽出にとどめまして、何か一定の方向性を出すという政策判断の部分はいたしておりません。 その中で、まず、法制的な論点の抽出ということでまとめた資料が2−3でございます。これは調査研究委員会の中でも本当に様々な議論があったわけですけれども、その一部をここで御紹介しています。 1ページ、「現行の職務発明制度を改正する必要性について」でございます。最初の○、こちらは産業界が感じている問題として、@現行の特許法の条文には「相当の対価」という表現が残っており、手続が不合理であれば多額の対価を支払うことが求められかねないということ、A研究者全員と合意を取りつけることが現実的に難しい、B裁判所が算出した額と被告事業者側が想定した額との間に乖離がある場合に裁判所が手続が合理的であると判断してくれるかどうか分からないという御懸念があります。 2つ目の○も産業界の方からの御指摘だったと思います。現在の研究は、一部の優秀な研究者に頼るということではなくて、研究はチームで行っている実態があるのだから、チームに対して報奨を与えることができる制度が望ましいということでございます。 3つ目の○については、むしろ改正の必要性について懐疑的な立場からの御意見でございます。現行の35条に関する判例の蓄積はなくて、法改正を早急に行う必要性は感じられないという御指摘でございます。ただ、この方もチームで研究開発がされている中で、チーム内で不公平感が生じているという問題は理解できているというコメントでございます。 一番下の○、これは現行法では対価については当事者間の手続を重視するというものに変わっているわけだから、対価の判断は従来と同じようにはならないのではないかという御意見です。これも改正に対してはやや慎重な御意見でございます。 2ページ、「2.職務発明に関する権利の帰属について」でございます。 1つ目の○は、発明というのは技術的思想の創作であり、それが発明者に帰属して、企業がその移転を受けるということが必要なのではないか、今の制度は発明の本質に依拠したごく自然な法制度だということでございます。 2つ目の○についても、権利の帰属を変更することについては否定的な立場の御意見でございます。従業者原始帰属に関してはいろいろな問題が指摘されていまして、二重譲渡問題、使用者最終帰属問題、対価額過剰問題という問題があるという指摘がされていたわけですけれども、それに対して別の形で解決できるのであれば、法人原始帰属の制度にしなくてもいいのではないかという御意見でございます。 3つ目の○は、法人帰属に移したほうがいいのではないかというお立場のお考えでございまして、帰属の問題というのはあくまでも立法政策なのだということ、それで発明奨励、産業発達といった特許法の趣旨に立ち返った議論をすることが不可欠だということで、使用者への原始帰属、法人帰属というのはあり得るのではないかという御意見でございます。 4つ目の○についても、使用者帰属に移したほうがいいというお考えの立場からの御意見でございまして、従業者原始帰属というところを出発点とする限りは、どうしても「相当の対価」の性質は譲渡代金と考えるのが自然な流れだから、従業者帰属とする以上、対価の額は過剰なものとなりがちになるという御指摘でございます。 続きまして、「3.従業者等への対価・報奨等の在り方について」でございます。 最初の○は、現行規定では具体的にどのような手続を踏めば合理性が担保されるか不明確なので、企業にとって予測可能性を有する規定を検討する必要があるという御意見でござまいす。 3ページ、1つ目と2つ目の○は使用者、事業者の契約に委ねるということについて、やや懐疑的な立場からの御意見が2つ出ております。権利承継を契約一般に委ねたという場合でもこれは完全に規制がなくなるわけではなくて、契約自由の原則はあるけれども、例外的に公序良俗とか暴利行為といった民法の一般条項が及ぶということでございます。かえって結果の予測可能性が低くなるのではないかという御意見でございます。 2つ目の○は、労働法の立場からの御意見ですけれども、従業者と労働者の間で一本の契約を結んだとしても労働法の側面については、例えば労働契約法は適用されるということで、労働法と特許法は二者択一のものではなくて、重畳的に適用されてしまうのだということでございました。これも予測可能性が低くなるという点についてのコメントです。 3つ目○は、法人帰属、使用者原始帰属とした場合の法制のあり方についての整理をしている部分でございます。使用者原始帰属とした場合の法制というのは、外国の例などを参考にすると、例えばということで、1つ目の形は理念型的スイス型、法人帰属で法的の請求権がないという形です。2つ目は、理念型的英国型、法人帰属で顕著な利益が発生した場合に限り請求権が発生するという形です。3つ目は、新日本型、これは法人帰属で法定の請求権はないものの、各企業に「発明報奨規則」(仮称)という規則の制定を法律的に義務づけるという形です。こういった形が可能性としてあるのではないかという整理でございます。 4つ目の○は、事業者の対価請求権をなくすと、優れた研究者が海外に流出することにならないだろうかという御懸念です。 5つ目の○は、35条を仮になくしたとしても企業は発明者に対してきっちりと報奨をしなければ、企業は技術者を維持することができないのだから、当然、報奨はいたしますという御見解でございます。 1つ飛ばしまして4ページの1つ目の○、こちらは先ほどの使用者原始帰属とした場合の法制について3つの整理を先ほど御紹介しましたが、4つ目としてこういう形もあるのではないかということで追加的に出てきた形でございます。法定の対価請求権を残しつつも、企業に発明報奨規則(仮称)の制定を義務づけるという形もあるのではないかという御意見でございます。この場合には、行政が手続的、実体的ガイドラインを作って、裁判所は各企業の規則がガイドラインに適合しているかどうか、実際に額の決定が規則に基づいて行われたどうかを審査するということで、対価の予測可能性や裁判所の過剰な裁量的判断を予防できるのではないかということでございます。 2つ目の○は、研究者に対するインセンティブのあり方は金銭に限られず、社内表彰や研究所の設置などの形があるのではないかということでございます。 「4.著作権法との関係その他」でございます。 「(1)著作権法との関係」、1つ目と2つ目の○をご説明いたしますと、職務発明は特許法では従業者帰属なのですが、著作権法では職務著作というのは法人帰属で報酬請求権なしという形になっております。特許法と著作権法というのは、いろいろな点で相違点はあるものの、両制度の効果、すなわち特許法は従業者帰属で、著作権法は使用者帰属、そういう違いを基礎づけるほどの大きな違いがあるとは言えないのではないか、そういう御指摘でございました。 1つ飛ばしまして「(2)職務発明の取扱いに関する特別な考慮の要否」、ここのところは、帰属先については高度の立法政策である。いろいろなオプションがあるところ、例えば使用者帰属を原則としつつ、当事者の反対合意がある場合には例外的に従業者帰属を肯定するような制度も考えられるのではないか、こういった特則が例えば大学などにおいて必要とされる可能性があるのではないかということです。 5ページ、1つ目の○は、使用者帰属の制度のうち、報奨規則の制定を使用者に義務づけるという制度を仮に考えた場合に、その具体的な内容としてはいろいろなパターンがあるけれども、報奨規則については手続要件を満たすということで、その内容を担保したらいいのではないかということ、そして、この具体的な内容については日本の国情に合った制度設計として、通常のサラリーマン研究者を中心にしたルールづくりを考えるべきではないか。そして、フリーランサーやスーパー研究者は別の取り扱いにできるようにして、デフォルトのルールは通常のサラリーマン研究者をベースにしたらどうかということでございます。 最後に「(3)その他の視点」でございます。この知的財産研究所の調査・研究では、経過措置の問題や時効の問題、大学や国研についての取り扱いは十分に議論できませんでしたので、今後はそれを取り上げてほしいという意見でございました。 以上が法制的な制度検討の視点でございます。 続きまして、ファクト・ファインディングについて資料2−4で御紹介いたします。ファクト・ファインディングにつきましては、山本大臣からの御指示をいただきまして、特許庁のほうで網羅的にアンケート調査を実施いたしました。本部会合のほうで御報告いたしておりますので、こちらは簡単に御紹介するにとどめます。 2ページ、去年の10〜12月に1万7,000という非常に大量のアンケートを送りました。研究者向けには1万5,000強、企業向けには2,500弱という大量のアンケートを送っておりますので、回答率もこの種のものとしては比較的高いほうでしたので、サンプルとしては十分な数が集まっているのではないかと思っております。 3ページ、まずは企業向けのアンケート調査でございます。「(1)職務発明に関する取決め」があると言っている企業は、大企業では99.1%、中小企業でも4分の3超は職務発明に関する取り決めがあります。そこで権利の移し方を定めているというのは、大企業では91.2%、中小企業では88.5%。それから、職務発明に関する取決めがないと回答した企業の中でも、慣行として従業者から使用者に権利を移しているというのは、大企業で8割、中小企業でも5割超でございます。社会的実態として、企業側に権利を移しているということはほとんどの場合がそうだということが改めて確認できました。 「(2)職務発明に対するインセンティブ」を企業はどう考えているかのということです。企業側は研究者としての評価をきちんと行うとか、地位や処遇を向上させるとか、そういったことを非常に重要だと考えております。 研究者のインセンティブ、報奨金を向上させているということについては、「向上させている」「どちらかといえば向上させている」が7割は占めておりますけれども、他の要素との相対比較をすると、企業側はそれほどでもないとお感じになられているということだろうと思います。 「(3)職務発明に関する運用」、現在の職務発明に関する運用について「問題がある」と答えた企業が大企業では7割弱、中小企業でも4割強が現行の職務発明の運用は問題があると答えていらっしゃいます。 どういう点が問題かということが横の棒グラフに書いてございまして、やはり作業負担が大きいということが上2つ、それから、3番目として、発明者と発明者以外で非常に不公平感があるということが挙がってございます。 4ページ、研究者向けのアンケートでございます。これは日本企業を左、海外企業を右で書いていまして、「日本企業」と書いているのは日本でお勤めの日本企業の方、「海外企業」と書いておりますのは、海外に務める海外企業の方と日本で勤めているけれども、外資企業の研究所に日本で勤めている方が分類されてございます。これで日本企業にいる人と海外企業にいる人、あるいは海外企業に日本から移った人の間でどういう違いがあるのかということを比較して見ることが可能になっております。 「(1)研究開発を行う上で重要だと思うこと」は、日本企業に勤める人も海外企業に勤める人も「現実的な問題を解決したい願望」とか「知的好奇心を満たす仕事に従事することによる満足感」といったところが非常に大きいです。「職務発明に対する金銭的な報奨」は下から2番目ぐらいになってございます。 日本企業と海外企業に勤める人で有意な差が出ておりますのは、「金銭的な処遇」です。これは報奨ということではなくて、全般的な金銭的な処遇にこだわる人がやや海外企業に勤める人の方が高いという結果は出ておりますけれども、発明報奨金にこだわる人は下から2番目ですので、それほど相対的には高くないということかと思います。 次に「(2)組織が優れた発明を生み出すために重要だと思うこと」も、日本企業、海外企業とも「研究者・技術者個人の能力の高さ」「研究開発組織のチームワークの良さ」「研究予算の充実」「研究設備の充実」ということでございまして、「職務発明に対する金銭的な報奨(発明報奨金)の多さ」というものがそれほど相対的には高い位置にない、一番下だということです。 「(3)組織に勤務し続ける上で重要だと思うこと」も、「良好な人間関係」「金銭的な処遇(給与、年収)の良さ」「職場における雇用の安定性」ということでございまして、「職務発明に対する金銭的な報奨(発明報奨金)の多さ」はそれほど相対的には高くないということでございます。何か職務発明制度に関して仕組みをいじったら、優秀な研究者が海外に出ていくとか、そういったことは必ずしも確認されずに、研究者が重要だと感じていることが素直にあらわれていると思っております。 続きまして、資料2−5、こちらは私どもが調査・研究を回しておりまして、その過程でそれぞれの団体が声明や要望を発表しておりましたので、これを御紹介させていただきます。 1ページ、まず、経団連でございます。下から3行目に書いてございますけれども、「今後、法改正により法人帰属となっても、従業員の発明に対するモチベーションの維持・向上のため、企業は、今後とも発明者の貢献に対する評価と処遇を、各社の規則に基づき適切に講じていく」というお立場を表明されております。 2〜3ページは製薬協でございます。奥村参考人の名前で出ておりますけれども、「(1)法改正の方向性」で使用者(法人)帰属とする。ただし、大学などについては個別契約により発明者帰属を定めた場合はそれに従うことにする。発明者人格権(氏名表示権)は発明者に発生する。 「2.」でございますが、「相当の対価」の支払いにかわって企業はインセンティブ施策を講じるということが書かれております。 「(2)研究開発型製薬産業からみた法改正の理由」としていろいろと書いていらっしゃいますが、法律的な論点として重要なところは最後のところでございまして、制度を変えた場合に遡及適用がきわめて切実な要望だということが書かれております。 4ページ、知財協、製薬協、JEITAの3者の連名でございます。こちらも原始的に法人に帰属する。それから、発明者の名誉は尊重する。インセンティブ施策は法的強制ではなくて、企業の自由設計に任せる。大学や国の研究機関は対象外ということがその下に書かれております。 5ページ、最後に弁理士会でございます。まず、一口に法人帰属といっても法人に原始的に特許を受ける権利が発生する制度、それから、自然人を発明者として原始的には発明者に特許を受ける権利が発生するけれども、発明が完成した時点で瞬間移動して法人に帰属されるという2つの説明の仕方があります。日本弁理士会はその後者の方だということでございます。そういう意味での法人帰属ということです。 それから、承継による発明者の対価請求は認めないということ。企業は発明者に対して発明報奨を与えることを法的に担保するということ、その具体的な内容については、社内規則が整備されている企業については企業の裁量に任せる。「発明報奨」に関する社内規則が整備されていない企業についても、何らかの規定を置くべきである。大学発明及び企業内のスーパー発明者については、別途検討を要するということでございます。 長くなりましたけれども、以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございます。職務発明制度につきましては、昨年の知財政策ビジョンあるいは推進計画2013に基づいて進めていただいていることの検証をこの委員会としてするということかと思いますが、御意見ございますか。 奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員 大変よくまとめていただいて、分かりやすくて非常に参考になりました。 何回も申し上げているのですが、問題の根源が対価請求権にあるということは確認しておく必要があると思います。発明の価値を定めるのは非常に難しい。事業が終わってから、あるいは特許が切れてやっと発明の価値が確定するわけです。そういったものに対して対価という概念は非常に整合性が悪いものになってしまっているということで、その部分だけをいじればよろしいかなと思います。1つのやり方としては、日本弁理士会の提言のようなやり方もあるのではないかと考えます。 逆に考えると、従業者というか発明者の原始帰属を変えるべきではないですし、変える必要はないと思っています。普通に考えれば、発明した人が発明の権利を持っているというのがやはり発明の本質を考えれば、そういうことになるだろうと思います。その中でいきなり対価請求権をいじれば済むことなのに、法人帰属に持っていくというのは無理があると思っていますし、それは発明の奨励にも恐らくならない。企業がこれからどのように法律が法人帰属になったときに制度を組み立てていらっしゃるのかも、もちろん分からないのですけれども、発明奨励にはならない。私は弁理士ですので、いつも発明者のヒアリングをして世間話もしますし、その際に感じている感覚からすると、確信しています。 あと、気になっているのは、スイスと英国の例がよく出てくるのですけれども、何でスイスなのか、何で英国なのか。知財立国ではないところで、しかも、変わった制度を持っているところが例に取り上げられていて、これらを参考に決めてしまうのはちょっと本当かなと強く感じております。 以上です。ありがとうございます。 ○渡部座長 ありがとうございます。 どなたかございますか。 奥村委員、どうぞ。 ○奥村参考人 ありがとうございます。奥村でございます。 特許庁からのサマリーのところに少し追加させてください。特に資料2−3の最初の「現行の職務発明制度を改正する必要性について」の1つ目の○に産業界が提案した問題点ということで、問題点がクローズアップされた御報告いただきました。産業界が最初に出した声明でこの改正を提案した本当の理由は、安倍政権が今、頑張ってやっております日本の成長戦略の一環として、日本が一番イノベーションを起こしやすい国にするためには何が必要かということを考えた上での提案であるということを1つ強調させてください。 その際に、我々が考えましたのが現行の制度によって企業の中にここで書かれているような、いろいろなコストがかかっているという点をここで解消することができれば、それはイノベーションの方にコストを向けていくことができる。そして、いろいろなリソースを向けていくことができる。 もう一点、いろいろな意味で問題になっておりますのは、企業の中での不公平感でございます。チームの研究という、研究の部分のチームだけがクローズアップされておりますが、研究以外のものももちろん企業内では非常に重要なイノベーションを担っておるわけでございます。営業もそうでしょうし、マーケットもそうですし、製造部門もそうです。そういった人たちとの不公平感はどうしても拭い去ることができません。そういったところも全て解消できますので、大きな意味でイノベーションに向かっていく原動力になると確信しております。 それとチームでというところを非常に強調いたしますと、本当に日本の企業研究者はみんなドングリの背比べでという話になると非常に問題でございます。やはり個人の能力があってこそ企業内の研究もできるわけでございます。その場合、とてもすばらしい成果を挙げられた従業員に対して何もしないのかということは、特許法とは全く別の観点から経営者というのは、そういう人たちを捨て置くことはまずございません。資料2−5に幾つかの産業団体から出ておりますように、そういった人たちに関しましてはしっかりした処遇をしますよという経営者の社会に向けての声明文だろうと思います。そういう意味で、そこは一つ御信用いただければいいのではないかと思っております。 もう一点、奥山委員から御指摘いただきました、法人帰属にすることは発明のインセンティブにはならないのではないかという点につきまして、余り長い説明するのもなんですが、私の理論ではないのですけれども、経済学者の方、法学者の方といろいろお話をしておりますと、現行の特許法の制度でいきますと、経済学上は対価請求権が発明者にあるということで、実は経済学上、発明というものの権利は共有されている。いわゆる使用者と発明者でいつまでたっても共有されている。共有されている権利はうまく使われないということが経済学上、割と当たり前のことなので、これは解消していいというお話もいただいております。 発明者に原始的に発明の権利を帰属させるということになりますと、そこから一旦、法人への権利の移転が起こるわけでございます。その移転の仕方はいろいろあるということで、ここのところは法学者の先生方にお任せしなければいけないところですが、その移転を予約承継しておくことの法的な安定性が非常に疑問であるので、ここも特許法上、企業内の活動で生まれた発明については、使用者に帰属するということを決めておくことが、これはいろいろな産業活動上でのコストも大きく減らすことができるという御意見をいただいております。 その意味で発明者そのものの気持ちは、現状でも実際に社内規定において使用者側の帰属になっているものでございまして、だからといって、インセンティブが働いていないかというと、そういうわけではございませんので、帰属の問題によって発明が生まれるインセンティブが下がるということはないのではないかと思っております。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 よろしいでしょうか。産構審までたどり着いて、経済学者も入ってこれから議論をするということでございますので、引き続き。 長澤委員、どうぞ。 ○長澤委員 最後に発言しようと思っていたのですが、私も経団連の知的財産委員会の委員をやらせていただいておりますし、日本知的財産協会にも関わっていますので、ここに書かれている産業界の意見に私の意見も入っています。これ以上、余り申し上げることはございませんが、報告ということで少しお話をさせていただきます。 1つは、最近、新たな職務発明訴訟を我が社が受けました。これは旧法下のものでございまして、新法とは特に関係はないと思いますが、この訴訟では「相当の対価」をどのように決めているかというところに焦点が当たっています。弁護士さんの意見も、企業としてはここまでやるべきだとか、いろいろあります。 原告とは、今までいわゆる協議をして来ましたが、我が社の発明対価制度に対する意見を繰り返し主張しておられました。原告発明者に対しては真摯に対応しようと努めてまいりましたが、それでも、最終的には訴訟になってしまいました。 弁護士さんに相談して、今、その事件を進めておりますが、多額の弁護士費用がかかります。この弁護士費用を節約できれば、発明者の対価を増やせるなと思います。これは余談ですが。 そこで何が言いたかったといいますと、今回、法改正をしていただくときには、「合理的」や、「相当の」等の疑義のある言葉はぜひ排斥していただきたいということです。それから、このような訴訟がこれからも起こり続ける可能性があるわけですから、早い立法とできれば遡及効ももう一度、考えていただきたいということが2点目です。 もう一つは、中小企業の方と職務発明制度の見直しについて座談会をやったときに感じた点ですが、不明瞭さを一掃するために、例えば、こういう発明報奨規程であればだったらいいですよと、特許庁さんからガイドラインを出していただくとしても、それが余りにも分厚いので、一部の経営者さんたちは「電話帳なんて読まないよ」とおっしゃる場合もありますので、できる限りシンプルなものにして欲しいと思います。また、「私が経営者なのだから、よくやったという人にはちゃんとお金を出すので、経営者の裁量に任せてもらいたい」という発言が座談会の席で出ていました。我々、大企業も一緒なのです。ガイドラインを出していただくにしても、できるだけシンプルで疑義の生じないものにしていただきたいと思います。 最後になりますけれども、よく我々がチームワークということを言うと、「それは、悪平等ではないか」という意見がときどき聞かれます。しかし、我々もチームの中にMVPがいることは充分に分かっております。チームが10人としても、あの人がMVPであるということは分かりますし、現場にいる企業しか分からないはずです。裁判所は分かりません。我々はこの人が一番よくやったということで、その人に対しては発明対価でお金を払ったり、発明活動に対してお金を払ったり、また、チームとしてもある表彰をしてお金を払うというように、皆が悪平等ではなくて不公平感が出ないような制度設計を進めております。この制度設計によってチームの輪も保ち、スーパー発明者のインセンティブを保つという自由度を持って経営したいと考えています。従って、このような経営の自由度を奪わないような制度設計をぜひお願いしたいと思います。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 相澤委員、どうぞ。 ○相澤委員 現在の問題が、平成16年に改正された条文が不明確であったということが問題になっているのですから、改正をして、また、不明確な制度や条文にならないように、十分配慮していただきたいと思います。 それから、発明者帰属から法人帰属に変えて遡及効を持たせるということは、無理だと思います。そうすると、現行法を削除して契約に任せて、過去の発明について、契約で清算するということを認めることを附則等で考えてあげることが1つの解決方法ではないかと思います。 今度改正ができると、旧々法を適用されるもの、旧法を適用されるもの、現行法を適用されるものという3つのものができるわけで、企業さんにとって余り好ましい事態ではないと思います。できれば、整理する方法を考えていただくのがよいのではないかと思います。 もう一つは、短期消滅時効です。問題の早期解決のために、改正法施行後に発生する権利については、短期消滅時効を考えた方が良いと思います。 最後に大学と企業では存立目的が違うので、その違いを含めて、考えていただきたいと思います。 ○渡部座長 ありがとうございます。 山本委員、どうぞ。 ○山本委員 簡単に申し上げます。機関帰属か個人帰属かという論点ではない、大学の特別の話で何度か申し上げておりますが、現行の職務発明というのは雇用関係で縛られています。大学には学生がおり、学生は雇用されていないため、職務発明にはなっておりません。しかし、ここでの大きな問題は、現在非常に多くの留学生を受け入れており、NEDOのお金やJSTの支援を利用した発明であっても、学生の発明は学生のもの、大学の設備を使わなければ生まれ得なかった発明も学生の発明は学生のもの。さらに、大学病院の患者様のデータを使用しても学生の発明は学生のものであるということです。 留学生受入れの際に、学生のものは学生のものですねという確認が入ることがあります。機関帰属か個人帰属かという議論にとどまらず、現行の雇用関係だけを要件としている職務発明について、前提をなくした全部契約とするのであれば、問題は解決するのかもしれませんが、そこは御配慮いただきたいと思っております。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 これは先ほども申しましたが、産構審のほうでしっかりと取り組んでいただくということかと思います。そして、1点追加させていただくと、インセンティブの話は結構出てきますが、インセンティブの効果というのは、社会心理学などで研究がありまして、金銭的報酬はケースによってはクラウド・アウト効果といって、逆にマイナスに働くこともあるなど蓄積があるのですが、余りそういう議論は今回は出てきていないので、そういうことも含めてよく検討していただければと思います。ということで、このアジェンダについては終わりにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。 それでは、最後の話題でございますが、政府が中心となった人財育成の場の整備についての議論でございます。初めに、これも担当省庁の特許庁で御説明いただければと思います。 ○河合知的財産活用企画調整官(特許庁企画調査課) 特許庁企画調査課の河合でございます。 第3回の場で私どもの取り組みの状況を一旦、御報告させていただきまして、応援もいただきましたし、御指導もいただきましたので、今回も資料を若干、ブラッシュアップいたしましたことと、もう一点の取り組みにつきまして少し概況を御紹介させていただきたいと思います。 資料3ですけれども、「検証テーマ:グローバル知財人財の育成・確保」ということで推進計画2013項目番号【53】を受けたもので御報告をさせていただきます。 工程表の記載は飛ばさせていただきまして、取り組み状況でございます。11月の第3回で御説明させていただきました「グローバル知財マネジメント人財育成推進事業」という予算要求をしておりまして、末尾のほうに「26年度政府予算案に反映済み」とございますが、先日、予算成立を見ましたので、現在、平成26〜28年度の3カ年事業の事業者の公募手続を開始している段階でございます。早ければ3月の終わりから事業者の募集を始めたいと思っております。 2ページ、こちらの事業の概要ですが、前回は事業内容を薄く書いておりまして、質疑で補足させていただきました点は、今回言葉でできるだけ書き込みをさせていただいております。少し読み上げますが、この3カ年度事業の事業内容で目指しているものを御紹介させていただきます。まず、我が国企業の収益拡大、競争力強化を目指すべくということで、グローバル市場を意識し、企業の経営戦略に知的財産を活用できるグローバル知財マネジメント人財の育成を行うとございます。 まず、この方向性を決める有識者による検討委員会を立ち上げさせていただきまして、グローバルな知財マネジメント人財に求められる人財像、具体的にはスキルですとか、知識につきましてそれを明確化していきたいということがございます。これはこの事業のうちではなくて、今後、向こう10年間ということで知的財産政策ビジョンでも示されております、グローバル知財マネジメント人財はこういうスキル、知識を持っておくべきということをできるだけ詳細化したいと考えております。 加えまして、企業の経営幹部の方々ですとか、経営企画、事業、研究部門の管理職の方々を対象としました研修のカリキュラムを策定するということを委員会のほうで御検討いただきたいと思っております。 一方で、実際に教材ですとか研修を行いますと11月に申し上げましたけれども、テーマといたしましては、海外進出ですとか企業の買収、合併、カーブアウト、ベンチャー創業、企業再生、海外知財管理、コンプライアンス、企画・標準化、ライセンス契約等々、いろいろなビジネスの場面がある中で知的財産が重要な役割を果たした成功事例と失敗事例をいわゆる知財ケースとして収集いたしまして、必要に応じて当事者のヒアリング等も実施させていただくことを考えております。 これを素材といたしまして、実際の「検証研修」なる研修を実施する予定でございますけれども、大きく分けて自己学習用の教材、インターネットを使ったもので、11月の回では妹尾先生からMOOCsの御紹介もいただいておりますが、最近、schooというものも伺っております。そういう遠隔で自己学習できるような教材の開発と同時に知財ケースファイルを収集したものを使ったケーススタディのような少人数グループ制での演習を実施していきたいと考えております。 右側の事業イメージのほうは、11月の回と余り変わっておりませんが、柱としまして先ほど申し上げましたように「研究カリキュラムの策定」「事例収集」「学習教材・知財ケースファイルの開発」「検証研究実施」という取り組みでございます。対象者としましては、いわゆる企業の知財部門の方々はメインのターゲットではございません。企業の経営幹部の方々、経営企画部門、事業部門、研究開発部門の管理職の方々、あとは弁護士、弁理士、公認会計士、中小企業診断士といった、大企業様には当然のことながら中小企業様の支援もされるような士業の皆様方、あとは社会人の大学院生等にも御参加いただこうと考えております。 毎年、大きく5テーマを実施することを3年間、計15テーマぐらいを予定しておりますと申し上げましたが、そちらは現在のところも変わっておりません。ただ、そのうち幾つかは可能であれば、外国人をあえて入れまして、英語ベースでケーススタディをやれるような教材にしていきたいと考えております。 予算の総額は、前回は単年度で1.5億円程度要求しておりますと申し上げたのですが、ざっくり3分の1になりまして、今、総額は1.6億円という予算でございます。他事業からも少し補いまして、ここに当初、御説明申し上げた分も含めて事業実施に十分な予算確保のめどがついておりますので、一応、御報告をさせていただきます。 もう一点、いただいております宿題が1ページ、「取組状況」の2つ目の●でございます。もともと推進計画2013でいただいておりました宿題としましては、海外の知財庁が知財人財の育成にどういうことをしているかという情報収集、調査をせよということでございましたので、半年かけて主要の知財庁の知財人財育成機関等の資料収集とその分析をさせていただきましたということで、御報告をさせていただきます。 3ページ、概括表だけになりますけれども、今回ターゲットといたしましたものは、世界知的所有権機関(WIPO)、米国特許商標庁(USPTO)、欧州特許庁(EPO)、韓国特許庁(KIPO)中国国家知識産権局(SIPO)という5つの機関を調査いたしております。表にそって御紹介をさせていただきます。 まず、WIPOですけれども、1998年にWIPO Academyを組織内機関として立ち上げておりまして、「海外協力研修」「学生向け研修」「知財経営/知財管理」「専門家向け研修」「遠隔研究」と各研修それぞれメニューがございます。WIPOの場合はAcademyと言いましても、実際に建物があって、教員を抱えていてということではございません。各加盟国に対して要望があれば講師を派遣したり、研修素材を提供したり、あるいはインターネットの素材を提供するという取り組みをしております。 行政官とか審査官向けのものは、この表からは割愛しておりまして、先ほども申し上げました「知財経営/知財管理」の点だけで申し上げますと、世界知的所有権機関(WIPO)としましては、Academic Institutions Programというものがございます。これは今、海外の7大学院と提携いたしまして、その大学院におきまして知財の基本知識も教えますけれども、知財経営、知財管理を新興国の社会人学生が多いのですが、そういう方々を対象に知財の管理ですとか、あるいは知財経営について教えるコースがございます。 ただ、これはいずれも6〜8カ月の期間でございまして、決して詰まったカリキュラムではないので、若干、内容的には薄いものですが、もう既に4年ぐらいの取り組みがございまして、相当数の学生が出ていると伺っております。 それから、WIPOでは一番下に書いてございますが、IP Panoramaというeラーニングがございます。整備されたのは2008年ごろですけれども、韓国特許庁が受託いたしまして、こちらは詳細に知財の戦略活用についての学習コースの教材が出ております。ライセンシング訴訟、ポートフォリオ管理、人材育成等のメニューがあることを確認しております。 米国特許商標庁(USPTO)はもっぱら海外協力研修に重点を置いておりまして、The Global IP Academy (GIPA)という組織がございます。11月の回に奥山委員から御紹介いただいた組織かと思います。知財経営、知財管理に関しましては特段、メニューは確認しておりません。 次に欧州特許庁(EPO)、こちらのほうは知財経営、知財管理については、Business Unitというコースがございまして、受講者数等は公開されておりませんが、ビジネスのための知財戦略ですとか、知財のポートフォリオ管理、あるいはライセンシングによる技術活用というタイトルでの研修がございます。確認できる範囲では、ここ3年間実施されてございます。それから、EPOでは遠隔研修のビデオモジュールの中にも結構、産業界の方々が講師になって知財戦略について御紹介されているビデオを確認しております。 韓国特許庁(KIPO)は組織外に別法人でInternational IP Training Institute(IIPTI)という組織を設けておりまして、2005年から研修に取り組んでございます。こちらのほうは、知財経営、知財管理につきましては明示的なコースは確認できておりませんが、専門家向け研修の中にIP Education for the Private Sectorというものがございます。ここの中で知財戦略、ライセンシング等に言及したコンテンツを確認いたしております。一番下のeラーニングにつきましては、WIPOに納めたものとほぼ同内容でございましたが、知財戦略等を言及したコンテンツがございました。ただ、古いまま放置されておりまして、新しくはなっていない印象です。 最後に中国国家知識産権局(SIPO)、こちらも組織直下の中にChina Intellectual Property Training Center (CIPTC)という機関がございます。メニューだけで見ますと、WIPOと同様に網羅的なコースがございました。知財経営、知財管理に目を向けますと、Enterprise IP Training Programがございまして、受講者だけで言いますと、一昨年度は5,400名ぐらいの受講が確認できました。大部分は知財担当者を対象にした実例研修でございまして、それが一般的な知財経営、知財管理で受講されたのは、おそらく2つのコースで100人前後と思われます。これは先ほど申し上げましたようなケーススタディのようなものを若干、取り入れておりまして、経営に関わる事例研究をされているということです。日程は3日程度と確認しております。 最後に対比といたしまして、日本特許庁を書かせていただいております。基本的に人財育成のところは実施機関としまして、工業所有権情報・研修館(INPIT)が一括で担当しておりますが、専門家向け研修とeラーニングを中心に充実させております。現在のところ、知財経営、知財管理につきましては特段、コースがございませんので、★を入れさせていただいております。ですから、1つ前で申し上げました「グローバル知財マネジメント人材育成推進事業」で実施いたしましたものを最終的にはINPITに受け継いで、これをINPITのほうで知財経営、知財管理の人財育成も取り組むような方向で今、考えております。 ただ、11月の回でも申し上げましたように、最終的には民間の人材育成機関にさらに移転されることが望ましいと考えております。一旦の受け皿としてのINPITを予定しておりますが、専門職大学院を始めたくさん知財人財の育成機関はございますので、こういうところと連携しながら、事業成果を活用できるよう努力してまいりたいと考えております。 以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 このテーマも検証のステージにあるものでございますが、御意見をいただければと思います。御意見のある方は挙手をお願いいたします。 奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員 前回の11月にも申し上げたことなのですけれども、ケーススタディも結構ですが、エリート教育であること、少人数教育であることが大事なのではないかなと思っています。それはなぜかと言えば、これまでそういうシンポジウム、セミナーも多々やられていますので、その上に何か乗せる、あるいは特別のお金を使ってやるとすれば、そういうものになるべきではないかなと思っています。 1つの取り組みを御紹介しますと、私はこれには直接関与していないのですが、知的財産教育研究・専門職大学院協議会という団体が8つの専門職大学院で構成されて、最近、ここ2年でしょうか、今年もやるみたいですけれども、英語で1週間のセミナーをやることになっています。日本人も参加できますし、もちろん外国の方々も主にアジアですけれども、いろいろな国からいらっしゃっているという状況です。こういった取り組みは、ほかにも各大学で英語での教育というのはあると思いますが、非常にいいと思っています。 お願いしたいのは、今は協議会のコースは日本の講師だけなのですけれども、ここに外国の先生も呼んできて、例えば6単位が付与できるようになれば、アジアだけではなくてアメリカの生徒もサマーコースの1つとして取れるようになるということですので、そういうものができれば、知財教育のハブになるのではないかと思っています。外国の先生を呼んでくるにはどうしても費用の問題がございまして、そういったところで今回の予算を使っていただければ、非常に有効なのではないかと思っております。 先ほどの御説明の中でも15のテーマがあって、ケーススタディを英語でやるという、非常に心強い御説明があったのですけれども、もう一歩進んで、そういったものを形あるものとして作っていけば、日本にしかないものができるのではないかなと考えております。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 山本委員、どうぞ。 ○山本委員 大学の技術移転に限っているような話かもしれませんが、先週まで南アフリカに行っていて、ATTP(Alliance of Technology Transfer Professionals)という団体の日本のカウンシルとして参加していました。何かというと、アメリカのAUTMという大学のネットワークやヨーロッパの大学のネットワークでASTP-Protonとか、ヨーロッパにも入っているのですが、イギリスの大学のネットワークでPraxisUnicoとか、そういう大学のネットワークが世界中にありますけれども、主に欧米と南アフリカと日本も去年から大学技術移転協議会がこのATTPに加盟しました。 要するに、世界的に認定された技術移転のプロを作ろうと、これはRTTP(registered technology transfer professional)といいますが、世界で研修コースを作っていて、1時間受けると、1CEポイントが得られて60CEポイントを得られると、RTTPになるというものです。日本のコースも4つはこれに認定しようということで、今、1件だけアプライしていて、あと3件もこれから出します。 何を申し上げたいかというと、大学の技術移転関係者はもう各国でやるというよりは、世界で認定されたプロを作ろうという動きがありますし、今回の議論もどういうプログラムを認定するかという議論をしていました。 国際標準的なものを作っていくことがすごく重要で、日本だけで認められるプロを作っても悪い意味でのガラパゴス化してしまうと問題なのかなと思っております。今回のプログラムにも、私たちがやっているATTPを御活用いただければと思っております。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 いかがでしょう、よろしいですか。 奥村委員、どうぞ。 ○奥村参考人 少し申し上げたい点は、奥山委員が言われた発言に非常に近いのです。御発表いただいた計画は、たしか私も前に参考人として来たときにいろいろ発言させていただいたことも反映していただいていますが、どうも印象としてボトムアップ教育というイメージがとてもあります。そうではなくて、日本から世界の知財のことをリードするような人がどんどん出てくるような仕組みが必要なのだろうと思っています。 と言いますのも、例えば私ども製薬業界としては政府に検討をお願いしたいとこととしまして、昨今、新興国や途上国の関係で医薬品アクセスの問題と知財であるとか、こういったものがよく問われています。現実には知財が医薬品アクセスに関与している部分はほとんどないのですが、それが大きな問題になっていたりします。それに対してきちんと反論していく学術的な研究をやっている部分だとか、例えば行政上のいろいろな施策を考える部分だとか、企業でそういうことを考える人間とか、各方面からそういうことがきちんとできる人財がアメリカとかヨーロッパの一部の国に比べて日本はどうなのだというと、少し遅れているのではないかと思っております。 また、これは荒井委員の論文を拝借したアイデアなのですが、例えば元NIH構想として出ておりました健康医療戦略推進本部というのが今回できております。この中で私ども製薬工業協会が提案しておりますのは、そこでライフサイエンスに関係する知財の国としての政策を議論するグループを作ってほしいということです。そのときも、そういったことを議論する人間が日本国内で多くたくさん育成されているのかというところは、少し疑問に感じざるを得ません。 例えばどういうことかと言いますと、卵細胞を使った実験はヨーロッパでは生命倫理上できないとか、特許にならないという話もありますし、一方、アメリカのほうでは最近、遺伝子のフラグメント自体は特許にならないとか、ナチュラルルールはだめだとか、そういった倫理的なものであるとか、ライフサイエンスに関わる発明そのものの根源的な議論がそういう地域ではされております。残念なことにまだ日本ではそういう事件もないということも事実かもしれませんが、そういったことをきちんと議論していく場もないので、そういうことを健康医療戦略推進本部の中で議論していただく人が集まってくるような、そういった人財の育成をしていっていただけるところも考えていただければと思っております。 ついでにもう一点だけ、これは民間の人財を育てるところに焦点が当たっておりますが、国際交渉官でいわゆる日本国を代表として出ていただける政府の方々の国際交渉力を上げるという意味で、そちらの育成もぜひ頑張っていただきたいと付加させてください。お願いします。 ○渡部座長 ありがとうございます。 妹尾委員、どうぞ。 ○妹尾委員 今までの御議論も含めて考えると、この中に結構矛盾が内包しそうな気がして心配な感じがします。ここで出ているグローバル知財マネジメント人財というのは、グローバル知財「権」人財を言いたいのかどうか。知財マネジメントというのは、最初の議論にあったように、実は事業戦略においてオープン・クローズをどうできるかとか、ビジネスモデル上どう貢献できるかということです。その中で知財で権利化する部分もあれば、知財で秘匿する部分もある。両者の関係づけもすごく重要だということをうたったわけです。 その流れで見てくると、だから、ここの企業経営幹部だとか管理職だとか、そういう人たちに徹底的にそういうことを分かってもらおうという協力をしようというのがここの趣旨ということがあります。 一方で、今のいろいろな方の御意見はどうも知財権のプロフェッショナルをさらにエリート教育しようということに聞こえる。そうなると、このプログラム自身が結構、矛盾を内包する感覚になってしまうのでなはいかというおそれを感じます。 私はどちらも必要だと思いますが、先ほど河合さんが言われたこれと、今まで皆さんのおっしゃったことを盛り込もうとすると、結局は中途半端になってしまいかねない。やるのだとしたら、コンセプトは明確にしなくてはいけなくて、ここで言われている人財育成そのものについては、従来のように企業の幹部、経営層、事業戦略層に知財の重要性を徹底するという趣旨は貫いていただきたいという感じがします。これが第1点です。 そうだとすると、第2点でこの紙の左側の事業の内容の中に海外進出だとか、企業買収・合併だとか、カーブアウトという割と派手な話が全部入っています。しかも、後半に入ると、知財権の話のみになってしまうのです。しかし、我々が接している限りでは基本的には一番重要なのは、新規事業の立ち上げだとか、既存事業の見直しという、まさに一番たくさんあるアイテムです。そういうテーマに広い意味での知財、その権利だとかいろいろなものも含めて活用できる人たちをきちんと育てるのだというコンセプトからいけば、派手目のものももちろん重要ではあるのだろうと思いますが、大部分を占める本当の今後、必要なグローバルな新規事業、あるいはグローバルな既存事業の見直しを主におかないと大変なことになるのではないかという懸念が若干あります。 もちろん、テーマがいけないと言っているわけではないのですが、このテーマが派手に見えるので、ちゃんと主流もきちんと押さえてほしいなという感じがありました。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 ○相澤委員 教育には、多額の投資と時間を使わなければ、成果は上げられないということについて御留意をいただきたいと思います。 ○渡部座長 ありがとうございます。 最後に宮川委員、どうぞ。 ○宮川委員 今、妹尾委員がおっしゃったような幹部、あるいは経営者の方に向けてのグローバル知財人財の育成教育という視点でこれを見ますと、私がお付き合いしている方たちは非常に英語が達者で、国際的感覚の豊かな経営者の方、幹部の方も多数いらっしゃいますが、そうではないトップのマネジメントの方はそれ以上にいらっしゃいます。 何かと申しますと、英語の書類が出ると、全て翻訳を作らなければ読めないトップの方たち、幹部の方たちがいらっしゃるのが現状で、そういう方に向けて世界を活躍できるグローバル人財の教育を今やることにより、果たしてそういう方が育成できるのかということが妹尾委員のお話を伺っていて、少し懸念されました。もっと世界的に活躍できるグローバル人財というのは、もう少し下のところから作っていかないと難しいのではないかなというのが感想でございます、済みません。 ○渡部座長 人財育成のご意見は切りなく出てきますが、この後、全体の議論もありますから、1回これで切らせていただきますが、特許庁はこの後、検討委員会のほうで検討していくということになるかと思いますが、今、いただいた意見から何かございますか。 ○河合知的財産活用企画調整官(特許庁企画調査課) 今回もたくさん御意見をいただきまして、ありがとうございます。こちらのほうは、とりあえず3年間の取り組み事業の1つですので、知的財産政策ビジョンの10年の戦略の中では、あくまで1つ目の取っかかりのところだと御理解いただけたらと思っております。 先ほど御紹介を端折ったのですけれども、WIPOの「Academic Institutions Program」が7つの大学院が取り組んでいますという御紹介をさせていただきました。文部科学省とも今後、御相談していかないといけないのですが、私どもとしては日本で今、数多くあります知財教育プログラムをお持ちの大学のいずれかにぜひ全て英語でやっていただける知財教育プログラムを作っていただけないかということを考えております。 2月24日にWIPOのガリ事務局長がお越しになったときに、日本でそういうコースを作るのであれば支援をしてくださるということでしたので、今後、お引き受けいただける大学があれば、一緒に取り組みをしていきたいということを補足させていただきます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 それでは、残った時間を今回、タスクフォースは営業秘密と中小企業、検証ということでやっていますが、2014年の推進計画に向けて少し新しい話題もいろいろと補充したいと思います。あと10分しかないのですが、フリーディスカッションという形で本日取り上げたアジェンダ以外に御意見を賜ればと思います。 荒井委員、どうぞ。 ○荒井委員 新ネタではなくて誠に恐縮なのですが、職務発明で法人帰属の議論ですけれども、もう一つのオプションとして、使用者と従業者との契約についてもぜひ検討していただきたいと思います。これは相澤委員からおっしゃったいろいろな問題を契約でもう少し合理的に処理しようではないかという流れを作った方がいいのではないかということが1点です。 もう一点は、この議論で今の検討ですっきり済めばいいのですが、作っているうちに非常に複雑なものができて、とても中小企業では手に負えないとか、要するに、シンプルではない、ワーカブルではないような結果になるかもしれないので、そんなことならもう使用者と従業者できちんと契約して、あとはそれぞれの国際競争だ、頑張れという方針でいいのではないかと思います。ぜひそちらも検討していただきたいと思います。 今ごろ言いまして、済みません。 ○渡部座長 よろしいでしょうか。 ○山田室長(特許庁制度審議室) 今、荒井委員から御指摘のありました点、もちろん政策を決めるのは産構審の場ですので、白地で議論しましょうということにはなっております。ただ、調査研究委員会の場では先ほど少し資料の中でも御説明しましたけれども、当初はもちろん日本再興戦略で例えば法人帰属または契約でということで示されていたわけですが、議論の過程の中では、契約にしたからといって何でも許されるわけではない。民法の一般条項の契約適用もあるし、労働法的な世界の適用もあるので、予測可能性がなかなか立たないのでなはいかという指摘が委員からなされて、調査研究の場では少し契約に委ねるという意見は比較的というか、ほとんどそういうことを御主張される方は結論においてはいらっしゃらなかったということはございます。 もちろん今回は座敷を変えて白地から議論するということでございまして、第1回目の場でも契約的なことをおっしゃられた委員の先生はいらっしゃいましたので、これから御指摘を踏まえて議論してまいりたいと思います。 ○渡部座長 よろしいですか。 他にはいかがでしょうか。 長澤委員、どうぞ。 ○長澤委員 ちょうど3月24日期限で知財高裁の意見募集の受付が終わったと思います。何故、この意見募集が行われてきたかということは、もう皆さんも御承知のとおりだと思います。いわゆるICT関係の特許の数が非常に増えている。その中に多数の標準規格必須特許もあって、それら標準規格必須特許の権利行使の在り方についてどのように考えるべきかについて民間に意見を求めたと感じております。 それと同じように、先程奥村委員もおっしゃったように、環境技術、食品や薬品に係る新技術等、人類のためになるものに係る特許ついてどういう扱いをするべきかという議論があると思います。この議論については、もともと特許制度ができたときの正のサイクルとの比較で考えなければならないと思います。このような変化が少しずつ出てきているのではないかと思いますし、この議論に対して、どのようにこの国は取り組んで行けばいいのか、また、特許法の中にどのようにこの議論を反映させるべきであるかということが、新しい話題としてはあるのではないかと思います。 ○渡部座長 ありがとうございます。 妹尾委員、どうぞ。 ○妹尾委員 旧ネタと新ネタを1つずつ。旧ネタのほうは、先ほどの河合さんの最後のおっしゃったことが気になっています。IPの権利の教育を経営層にするということでいくならば、権利の専門職大学院の人たちに教育をお願いするより、むしろMBAなどのビジネス系の方々にお願いするほうが本来は効果的ではないのかと思います。権利教育でまた権利教育だけをやるということになったら、経営の連中は恐らくまた特許をとれということかと思ってしまう。そういう話で終わってしまうということが目に見えているように思います。むしろビジネス側からきちんと教育をしてもらうという方策を考えたほうが良いのではないかと思います。これが旧ネタです。 新ネタというか、実は、古い新ネタなのですけれども、権利ではなくて秘匿をどうするかということがきわめて重要な話になってきています。秘匿が秘匿で終わらずにどうしても権利化せざるをえないのはどうしてか。秘匿する怖さは、秘匿したときに、もしばれたときに困るということがあるわけです。だけど、秘匿するときの扱い、しばらく前に先使用権や何かが大分変わってしまっています。でも、ここからオープン&クローズをやるときに、オープン領域、クローズ領域を考えるときに、どうやって秘匿がしやすくなるということを考えるということも重要です。特にすり合わせ技術が得意な日本にとってはきわめて重要なことだと思います。 だから、秘匿化をどうやって法務的に保護できるかという、あるいは秘匿したことによってリスクが生じるわけですから、それをいかに減少させるかみたいな方策がまたあると良いなと思います。以前に法改正があって、先使用権に関する法的保護がだめになってしまったのですけれども、もう一回、あれを考え直しても良い時期にきているのではないかと思います。これが古そうで新しいネタではないかと思います。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 ○畑野参事官 長澤委員の御指摘がよく理解できなかったのですけれども、検討せよというのはアミカスの導入を検討すべきということなのか、標準必須特許についての権利制限というか、差し止め請求みたいなもののあり方を検討せよということですか。 ○長澤委員 ストレートに言いますと、今の特許法ですと、特許には、100%差止請求権が認められるようにも解釈できます。どういう特許に対して差止請求を制限するべきか、また、どういう特許に対して、どれだけのライセンス料が相応しいかというのは非常に難しい議論だと思います。このことを条文としては明確に書けなくても、少なくとも差止請求を制限する場合があるという明確な示唆が法律上あってもいいのではないかと思います。この問題を検討していただきたいということです。 ○畑野参事官 それはビジョンのほうでも検討するということがあって、特許庁の方で検討会を動かしていると聞いていますが、山田君、何かありますか。 ○山田室長(特許庁制度審議室) 去年、調査研究を知的財産研究所のほうで回してはおりまして、勉強は進んでおりますけれども、直ちに制度改正のステージに上げるという判断はまだいたしておりません。引き続き勉強を継続したいと思っております。 ○長澤委員 その研究会には私も参加させていただいております。ただ、結論がその研究会で出た話をまとめただけという、分厚い書類だけでして、その後、どうするかとか、それを今後どうつなげていくかということが特に語られていませんでした。私としては、是非とも引き続き検討をしていただきたいと考えております。 ○渡部座長 その取り扱いは検討させていただきます。 奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員 ごく手短に、今の畑野参事官の御質問にも関係するのですけれども、特許庁の鈴木長官時代に特許制度研究会があって、そこで日本版アミカスブリーフがぽんと出てきたのです。それが今回の知財高裁のあれにつながっているのではないかと思います。その間、私も個人的というか、弁理士会を通じていろいろと努力してきたのですけれども、もう一回、それを取り上げていただいて制度化していただける方向性を検討していただけると、非常にありがたいと思います。 ○渡部座長 ありがとうございます。 宮川委員、どうぞ。 ○宮川委員 手短にですが、営業秘密のタスクフォースはもちろん立ち上がって、いろいろと検討されていらっしゃるのでしょうけれども、最近、また大きな営業秘密侵害罪の事件も発生しまして、非常に話題を集めているところです。今後も営業秘密の保護という点では注目が集まっていると思いますので、私が聞き漏らしていたら申しわけありませんが、今、どんな状況なのか、どういう予定なのか。 ○渡部座長 次回、営業秘密タスクフォースの報告をするという形になっています。 相澤委員、どうぞ。 ○相澤委員 日本の特許権の保護が非常に弱いという点について理解をしていただく必要があると思います。知的財産推進計画で、特許権等の権利保護をより充実しないと、制度間競争に破れ、訴訟が外国に流れてしまいます。勝訴率が低い、損害賠償額が安い、という問題を何とかしなければいけません。 差止請求権について議論をするならば、特許権がこれ以上弱くならないように、損害賠償請求権をアメリカ並みにするようことも考えないと、日本からの訴訟回避が起こる虞あります。 それから、営業秘密の問題で出てきた問題は、営業秘密だけではなくて外国において日本の権利が侵害されたときに、それをどうするかという問題です。外国における日本の権利の侵害を日本の司法システムの中に取り込んでいくかということを考えていかなければなりません。属地主義も営業秘密では既に妥当しないので、それを念頭において、新たな考え方で日本の法制度を考えていかなければいけないのではないかと思います。 ○渡部座長 ありがとうございます。 時間がきております。次回も少しこういう時間がとれればと思いますので、とりあえず、本日の会合はこれで切らせていだたきたいと思います。よろしいでしょうか。 そうしましたら、次回の会合について事務局からお願いいたします。 ○安田参事官 次回の委員会でございますけれども、コンテンツ分野の委員会となります。日程ですけれども、4月11日、金曜日の14時30分からでございます。また、先ほどありましたけれども、営業秘密のタスクフォース等の報告を受ける産業財産権分野の会合につきましては、4月23日、水曜日の15時から予定しております。場所等につきましては、追って連絡いたしたいと思います。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 本日は御多忙中のところ、大変ありがとうございました。これにて閉会とさせていただきたいと思います。 |