検証・評価・企画委員会(第4回)日 時:平成25年12月4日(水)13:30〜15:30 場 所:中央合同庁舎4号館1208特別会議室 出席者:
○中村座長 ただいまから「知的財産戦略本部第4回検証・評価・企画委員会」を開催いたします。御多忙のところお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。 今日は、コンテンツ分野の各論について議論を行うこととしております。 今日は大ア委員、川上委員、日覺委員、長谷川委員、松本委員、山本委員が所用のため御欠席という連絡をいただいております。野口委員は、後ほど遅れて来られると思われます。また、今日は日覺委員の代理として、東レ知的財産部IPL室長の田中様に御出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。 さて、本日は、後藤田副大臣に御出席をいただいておりますので、冒頭一言ぜひ御挨拶をいただければと思います。 ○後藤田副大臣 どうも皆さん、大変お忙しいお時間、また、そうそうたる皆様方、今日は第4回目ということでありがとうございます。今日は大臣が公務で出席がまだ間に合っておりません。申しわけなく思います。先ほども座長からお話がありましたとおり、今日はコンテンツについてのフォローアップと評価を行っていただくというふうに承知しております。何とぞ、知財ビジョン、また単年度の施策について、様々な角度からのいろいろな取組みがしっかりと実を結ぶように、引き続き先生方の御指導を賜りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。今日はありがとうございます。 ○中村座長 ありがとうございました。 では、知財政策ビジョンに基づいて、取組みの進捗についての議論をしたいと思います。最初に、検証事項の論点などについて事務局から説明をお願いします。 ○田口参事官 よろしくお願いします。 まず冒頭、本日の配付資料について御確認いただきたいと思います。本日の配付資料でございますが、一番上に置かれている検証・評価・企画委員会第4回の議事次第をご覧ください。配付資料につきましては、議事次第の下半分に記載しておりますが、資料1〜10までございます。資料について足りないといったことがある場合につきましては、お近くの事務局員にお申しつけください。 そのほか、卓上には知的財産政策ビジョン、知的財産推進計画2013の冊子を置かせていただいております。必要に応じ、御参照いただければと思います。よろしくお願いします。 引き続き、資料1について説明をいたします。 知財ビジョン及び知財推進計画2013におけるコンテンツ関連施策は非常に多岐にわたっているところでございます。コンテンツ分野に関しまして、当委員会で検証・評価いただく項目として、アジェンダとして整理させていただいておりますのが資料1でございます。この資料の内容は、11月5日の第1回会合において席上配付したものと同様でございます。 先ほど申し上げましたように、知財推進計画におきましては、特に工程表で取り上げられている施策について、非常に細分化され、多岐にわたっております。重要なテーマごとに大くくりして整理したものがこの資料でございます。コンテンツ分野の評価・検証作業については、このアジェンダの記載事項について、本日と12日の2回にわたって行っていただく予定でございます。 資料1をご覧いただきますと、まず、@〜Bが本日の評価・検証事項でございますが、@デジタル社会に対応した新産業創出と環境整備、Aデジタル・アーカイブの促進、Bコンテンツ人財の育成と開発拠点の整備といった、主として国内における環境の整備等についてでございます。 12日はC〜Eでございまして、Cクールジャパンの展開、Dコンテンツの海外展開促進、E模倣品・海賊版対策の強化といった海外展開等に関連した施策について、検証・評価をお願いする予定でございます。 各省における政策が予定どおり行われているのかどうか、また、実施に当たって予算の効率化の観点等から各省間連携しながら進められているのかどうかといったことなど、検証・評価いただければと存じます。 事務局からは以上でございます。 ○中村座長 ありがとうございました。 それでは、今、事務局から説明がありましたアジェンダごとに議論を進めたいと思います。コンテンツ分野全体で今回を含めて2回に分けて、今、資料1にありましたように、今日は@〜Bのアジェンダを扱おうということでございます。今日の委員会では、それぞれ1つのアジェンダごとに事務局が説明して、関係省庁の説明をいただいて討議といった流れで進めまして、3つのアジェンダが終了したところで再度、全体討議をするという流れにさせていただければと思っております。 なお、各省の担当の方は、各アジェンダが終了したら退席されるということで、基本的には最後の全体討議の場には参加されないということですので、もし、各省の方に質問がある場合には、それぞれのテーマ、それぞれのアジェンダの時間で行っていただくようにお願いしたいと思います。 また、今回の委員会では、知財政策ビジョンの各施策について検証して評価して、今後、施策をどのように進めていくべきか、あるいはまた、不足している課題は何なのかといった点について御審議をいただきたいと思っております。後ほど事務局から説明があると思いますけれども、テーマごとに今後の課題の案を記述してもらっています。ですから、各委員におかれましては、この課題案を参考にしてもらいながら検証・評価をしていただければと思っております。 では、最初のテーマ、デジタル社会に対応した新産業創出と環境整備について、まず事務局から説明をお願いします。 ○田口参事官 資料2をご覧いただきたいと思います。表紙をめくっていただきますと、資料1の@〜Bの項目を記載しております。本日、第1番目に検証・評価いただくのは、デジタル社会に対応した新産業創出と環境整備の項目でございます。この項目に関して、後ほど文化庁から@電子書籍の流通等に向けた著作権制度の見直しの状況と、Aクラウドサービスの促進やクリエーターへの適切な対価の還元に向けた制度見直しの状況について説明を、そしてBビッグデータの活用促進に向けた取組みについて、IT総合戦略室から説明をいたします。それぞれの項目について説明省庁以外の各省の関連施策もございます。時間の関係ですべての施策について担当省庁から説明いただくことが難しいため、事務局において関連施策の進捗状況について整理したというのが、この資料でございます。 3ページをご覧ください。電子書籍に係る施策の状況についてまとめたページです。左側に知財ビジョン及び知財推進計画2013での記載事項、対応策を整理してございます。ビジョンにおいては課題として、電子書籍のコンテンツの充実・普及支援などを記載しております。また、対応策としまして、電子書籍に対応した出版権の整備、出版・配信に係る契約上の課題についての検討を記載しているところでございます。 右側でございますが、各省の取組みの整理をしております。文化庁以外にも経産省等において施策を行っているところでございます。その施策の進捗状況について記載させていただいているところでございます。 先ほど御説明があったように、今後の課題につきまして右下に記載しております。電子書籍に対応した出版権の整備、民間での電子出版促進に向けた支援、電子図書館の利用促進に向けたインフラ整備等というところが今後の課題と考えております。こういった課題も御参考に御議論いただければと思います。 4ページでございますが、クラウドサービスの促進等について整理しております。クラウドを活用したサービス等について、市場規模の予測、急激な拡大が見込まれているところでございます。知財政策ビジョンにおいてクラウドサービス等の促進に向け、必要な制度のあり方についての検討が必要という指摘をいただいているところでございます。主として制度見直しの事項でございますので、先ほど申し上げたように、文化庁からその取組み状況等について説明を後ほどいただきます。 5ページでございますが、ビッグデータの活用促進に向けた取組み等についてでございます。破線の枠内がビジョンにおける指摘事項でございますが、電子行政オープンデータ戦略における公共データの二次利用の促進に向けた統一的なルール等の基盤整備という御指摘をいただいているところでございます。 ビッグデータの利活用につきましては、IT総合戦略室から施策の進捗状況について説明しますが、各省においてもIT総合戦略室の調整のもと着実に施策に取り組んでいただいているところでございます。その施策の状況について、左側の下に整理させていただいております。 また、右側ですが、教育の情報化、プラットフォームの形成の推進における取組み状況につきまして、各省の取組みについて記載させていただいております。なお、教育の情報化に関しましては、行政改革推進会議が秋の行政レビューを行った際にも取り上げられております。 なお、知財推進計画2013の工程表との関係についてでございますが、施策を大くくり化してとらえていますので、1対1の関係というわけではございませんが、主として電子書籍関係では工程表の項目の131番と冊子の後半部分のページ数ですと87ページというところでございます。クラウドサービスの関係では、工程表の項目の124番、83ページでございます。ビッグデータの活用の関係では、工程表の項目の136番、89ページとの関連が強いという状況でございます。 事務局からの説明は以上でございます。 ○中村座長 ありがとうございました。 それでは、各省の取組みについて、文部科学省、IT総合戦略室から説明をお願いします。説明については、それぞれ3分程度でお願いできればと思います。よろしくどうぞ。 ○森課長(文化庁著作権課) 文化庁著作権課の森と申します。よろしくお願い申し上げます。 まず、電子書籍への対応、クラウドサービス等への対応についての文化審議会著作権分科会における検討状況につきまして、資料3に基づきまして御説明させていただきたいと存じます。 まず、電子書籍の関係でございますが、本年5月より審議会に小委員会を設けて検討を開始し、9月に中間まとめをとりまとめたところでございます。この中間まとめでは、電子書籍の流通促進、そして、効果的な海賊版対策という観点から、現行の紙の媒体での出版権の制度を見直し、著作権者との契約によって出版者が設定を受けることのできる権利として、電子書籍に対応した出版権を整備しようということで中間的なとりまとめがなされたところでございます。 これまで中間まとめに対しまして、1カ月ほどパブリックコメントの手続を実施した上で、先月11月25日にさらに小委員会を開きまして、パブコメの結果を踏まえたさらなる議論を行ったところでございます。大筋、電子書籍に対応した出版権を設けることについての合意がなされているところでございますけれども、残された論点として1つございますのが、電子書籍に対応した出版権の整備をするに当たって、紙の出版部分と電子の出版部分についての権利を一体として設けるのか、別立てで設けるのかということが大きな議論として残っていたわけでございます。 この点についての議論の概要を簡単に申し上げますと、1ページの下半分にございますように、一体的な設定に積極的な御意見が主として出版社の方々から表明されてきているところでございまして、出版社の社会的な役割といったもの、あるいは現在電子出版がなされているものの実態を踏まえると、紙と電子を一体として制度化すべきであるという御意見が強いわけでございます。 また、関連する印刷産業の方々であるとか、これまで著作権者の方々は一体的な設定に反対であったわけでございますけれども、写真家の団体を代表する方からは出版社の役割をかんがみれば一体としたほうがよいといった御意見。ただ、その際には、フェアな契約習慣がなされるといったことが前提であるといった御意見も表明されてきているところでございます。 2ページにまいりまして、一体的な設定に消極的な御意見もございます。これは、主として権利者の方々からの御意見であったわけでございますが、著作権者が出版権についての契約をするに当たって、必要なものを必要なものだけ契約するということが確保されるためには、紙と電子が別立ての権利であることが望ましいという御意見でございます。 また、経団連等産業界からも電子出版の義務をすべての出版社に課すことは現実的ではないといったこと、あるいは電子出版に対する新規参入を促進するという観点も考慮する必要があるといった御意見が出されてきているところでございます。 そもそも一体的な権利とするかどうかというのは、これまで抽象的に議論されてきたわけでございますけれども、そもそも一体的な権利を制度化するということが、どういった具体的な権利義務の内容を想定したものかといったことを議論すべきであるといったことも前回の小委員会で指摘がなされ、そういった観点から2ページの下半分にございますような論点についても議論がなされております。紙と電子両方の権利の設定を受ける場合には、紙と電子両方について義務を負うべきであるという御意見。また、紙と電子の権利を引き受ける場合には、紙と電子の権利を設定することを明示的に設定契約において合意がなされる必要があるという御意見。また、義務違反の場合に、紙の義務、電子の義務に違反した場合には、紙の権利、電子の権利それぞれが消滅すべきであるといった御意見等が出されているところでございまして、総じて一体的な権利を制度化すると言いましても、基本的には紙・電子それぞれについて権利を有し、義務を負うということが共通の理解となっております。したがいまして、こういったことを前提として、これを一体的な権利とすることについて、どのような理由、どのような必要性があるかについては、さらに議論を重ねていく必要があると思っております。 いずれにしましても、この小委員会の議論はかなり集中的に議論してまいりましたので、12月中にも再度小委員会を開き、最終とりまとめに向けて進めてまいりたいと考えてございます。 続きまして、もう一点、クラウドサービスについての検討状況でございます。3ページでございますけれども、この問題につきましても審議会に小委員会を設けて検討を行ってまいりまして、8月には関係事業者へヒアリングを行いました。主な論点といたしましては四角囲みにございますものでございまして、クラウドサービスにおける著作物の利用行為主体を利用者・ユーザーと考えるのか、それともクラウドサービスを提供する事業者と考えるのかといった論点。 2点目として、クラウドサービスといったものを利用する場合に、仮にその主体がユーザー・利用者であると考えた場合に、その行為が私的使用目的の複製ということで著作権法上許容されたものになるかどうかといった論点。 さらに3点目としまして、そういったクラウドサービスの発展に伴って、そこにおいて利用される著作物の権利者に対して、適切な対価を還元することが必要ではないかといった様々な論点について、これまで議論が進められてきたところでございます。 こうした議論の中で、この問題について集中的に議論する場を設けることが必要であるといった御意見が出されたことから、今年11月、この小委員会のもとに、この問題について集中的に議論するためのワーキングチームを設けまして、今後このワーキングチームにおいてさらに議論を進めてまいりたいと考えているところでございます。 以上でございます。 ○濱島参事官(内閣官房IT総合戦略室) IT総合戦略室でございます。資料4に基づきまして、御説明いたします。 まず、1枚目をご覧ください。ここでパーソナルデータとございますが、パーソナルデータとビッグデータの中で有用性が高いと言われております個人の行動履歴でありますとか、購買履歴等を指すことが多うございまして、現行の個人情報保護法等では、必ずしもカバーし切れていない分野であるというところでございます。そのパーソナルデータの利活用環境を整備していくために、私どもこういった検討会をIT本部の下につくりまして、今年の9月以降、検討を進めてきているところでございます。なお、IT戦略上、本件に係る制度見直し方針を年内に策定することとされており、本検討会におきましては、制度見直しの方針を検討していくことが一つの大きなテーマとなっているところでございます。 2ページをご覧ください。では、こういったパーソナルデータに関するどういった課題があるのかについてまとめたものでございます。 まず、プライバシーの意識の高い消費者が増加してきて、プライバシーに関する考え方が社会に広く浸透してきて、現行法を超えた対応を求めるようなケースも出てきたと。また、消費者の要求も個人によって異なるものがあるという中で、企業のほうではプライバシー保護の観点からどのような措置をとれば十分か判断できず、データの利活用を萎縮しているという面があるということが第1点。 第2点といたしましては、データの使い方の変化といたしまして、これはITを中心とする技術の向上を背景といたしまして、データを利活用して社会の問題を解決していこう。また、新しいビジネスをつくっていこうという期待も高まっていると。その結果、想定外の目的での利活用ですとか、他事業者と連携した利活用などのデータの使い方の多様性とったものが出てきたところがございます。 一方で、それによりまして個人情報の定義の曖昧さでありますとか、利用目的の拡大、第三者の提供に係る手続面の煩雑さといったことがビッグデータ時代、円滑な利活用を進める上での課題になってきているということが言えようかと思います。 第3番目に、企業活動のグローバル化があろうかと思います。企業活動がグローバル化して、国境を越えて多くのデータが飛び交うという時代になってまいりました。この点、各国との関係で言いますと、EUと比較いたしますと、EUは我が国の規制を保護の観点から不十分であると見ておりまして、企業が欧州からデータを移転することについて制限が設けられている状況になっております。 こういったもろもろの課題がございまして、検討会を9月2日にスタートさせていただきまして、現在第4回会合を終了したところでございます。第5回会合では、いよいよ年内のパーソナルデータ利活用に関する制度見直し方針案を、検討会としての案を決定させていただく方向になってございます。 第4回の11月22日の中で、検討会の皆様に御検討いただくためのいわばたたき台といたしまして、パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針の事務局案を提示させていただいております。4ページ以降にその概要をまとめさせていただいております。第5回会合に向けて検討中でございまして、これは現在、鋭意変更の作業をさせていただいているところでございます。 また今後、検討会が終了いたしますと、各省のほうにも御意見をちょうだいするという手続を行いたいと思いますので、内容的には今後変更があり得るということを前提に、現段階での検討の結果を私どもから御報告させていただきます。 ポイントをかいつまんで御報告させていただきますが、「3.制度見直し事項」にポイントが書かれております。まず、一番初めに、第三者機関、プライバシーコミッショナーの設置について整理をさせていただいております。先ほど企業が利用できるデータをなかなか判断しづらい面があるということを申し上げました。この辺を判断してもらえるような第三者機関を設置していこうと。そして、パーソナルデータと利活用に関する分野横断的な統一的な見解を出していただいたり、事前相談や苦情処理、最終的には問題のある行為については行政処分などを考えていくという体制を整備することを検討しているところでございます。 また、(2)でございますけれども、利活用を特に促進する観点から、いわゆる匿名性の高いデータをどう扱っていくかというポイントがございます。一定水準まで個人が特定される可能性を低減させたようなデータのカテゴリーをつくりまして、こういったものはある意味で情報漏えい時のプライバシーへのインパクトが小さいという判断から、本人の同意なく第三者に提供するような柔軟な取り扱いが可能となるような仕組みをつくっていこうということを現在検討しているところでございます。 5ページは飛ばしていただきまして6ページでございますけれども、もう一つのポイントといたしましては、(4)のプライバシー保護等に配慮した情報の利用・流通のために実現すべき事項といたしまして、パーソナルデータの保護の目的の明確化という視点から、プライバシーを保護するといった基本理念をうたうということ、さらには、保護されるパーソナルデータの範囲の明確化につきましても、現行法の範囲からさらに実質的に個人が特定される可能性があるというものについても、パーソナルデータについて整理をしていこうと考えております。 以上、雑ぱくな御説明でございますが、現在、事務局での検討の案を御披露させていただきました。あくまで事務局の案でございますが、今後の進め方におきましても2015年、平成27年の通常国会への法案提出を目指していくということも記させていただいております。 以上でございます。 ○中村座長 ありがとうございました。 それでは、委員の皆様から意見をいただければと思います。できるだけ多くの方々から御発言をいただきたいと思っておりますので、恐れ入りますけれども、御発言は2〜3分を目安にお願いできればと思います。いかがでしょうか、挙手をお願いいたします。 角川委員どうぞ。 ○角川委員 私のほうから「1.デジタル社会に対応した新産業創出と環境整備」という問題の@電子書籍の流通促進と効果的な海賊版対策に向けた著作権制度の見直しについて意見を言わせていただきます。 電子書籍時代に向けて出版社に何らかの権限を認めることによって、電子書籍の流通を促進しなければいけないということは、知財本部がここ2年知財計画に書き込んできたことでございます。これが実現する方向にあるということは非常によろしいことではないかと思います。この著作権問題は一つの山を越えて、ようやく電子書籍の権利が紙の権利と一体でやるのがいいのか、あるいは別でいいのかということに入ってきたところで、これは一つの問題が解決した後の次の問題だと私も認識しています。 そのことに関しまして私は、一体のほうがいいと思っている人間です。これは、やはりもともと著作権制度の見直しについては、産業の育成という知財本部の目的の中から出てきたことですので、出版産業というものが隆盛になるためにはどうしたらいいかという視点が必要なのだと思います。その点では、著作権問題の法律論議に理論的に入ってしまうと本来の目的を見失ってしまって、末梢的なことで制度ができてしまうのではないかという、こういう会議の持っている危険性と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、リスクもあったりするのだと思います。 私は、電子書籍の流通は促進されなければいけないけれども、一方で、紙の文化も失ってはいけないのではないかと思っているわけです。ですから、電子書籍に偏り過ぎて紙がなくなってしまい大元のところが衰退してしまっては、何のための著作権改正かなと思うわけです。KADOKAWAという会社においては、御存じのとおり業界でも率先して電子書籍を推進しているほうですけれども、同時に、出版社が紙の文化を大事にするためには、一体であることによって紙の出版を続けていく。それによって全国の書店が生きていけるのだと思っております。電子書籍が100%になってしまって、グーテンベルク以来の紙の印刷がなくなってしまって、町から、地方の都市から書店がなくなってしまうということにならないようにするためには、健全な電子書籍の普及が大事だと思っているわけです。 既に御存じのとおり、町からレコード屋さんがなくなってしまいました。クラシックのレコードを聞こうと思っても、レコード店がなくて入手できないということが起こっています。同じように、今DVDなどについても町から消えつつあるわけです。デジタルを推進することによって、紙がなくなって書店がなくなってしまうことが起こらないようするためには、出版社に何らかの権利を与えると同時に、何らかの義務を負わせて、やはり紙を出していくことを努力させなければいけないのだと思います。 もし、一体化でないということになりますと、やはり残念なことですけれども、電子書籍は紙をつくるよりストレートで楽なんですね。印刷工程は今デジタル化が進んでおりますので、紙よりも電子書籍をつくるほうが楽ですから、では、別立てでやれば作家から電子書籍の権利を先にもらって、売れたら紙にするというふうに二次的に扱われるようになることが私は一番怖いと思います。 出版産業というレベルから見ると、ぜひ大運営をしていただきたいとお願いしたいと思います。 ○中村座長 ほかにいかがでしょうか。瀬尾委員、お願いします。 ○瀬尾委員 今、角川委員から電子化の意見ということでございまして、これは本当に取り組まなければいけないということで同意できるものなのですが、ただ、現時点というのはアナログのコンテンツからデジタルのコンテンツへ変更されてきて、膨大なアナログデータが過去にあって、これをどうやってデジタル化して利活用するかというはざまにあると思います。実は一定の機会を除くと、過去のアナログ資産は失われてしまうものも多く出てくる。つまり、フィルムなどは失われてしまいますし、ビネガーシンドロームということで映画も写真もフィルムが痛んでしまうわけです。ですので、今この時点で必要なことは過去のアナログデータをいかにデジタル化して流通させるか。その中で今の書籍の電子化というのは、一つの大きな指針をつくっていくと思います。 ただ、実は先ほどからある法制度その他の環境整備も重要なのですが、どうやって利用できるシステムをつくっていくかということが、実は余り全体像が見えてきていないのではないかと思います。つまり、その後のアーカイブという次の項目にもつながっていきますし、図書館の存在もこれまでのような図書館の機能だけでいいのかどうか。図書館のあり方自体をもう一度議論する時期にも来ているのではないかということもあり得ます。ですので、相対的な環境整備がここである程度でき上がってくると同時に、それを利活用する環境とインフラをどうしていくかを今から考えないと、実際にできても使えない、流通が妨げられるとは言わないけれども、流通が活性化しない状況が考えられるのではないかと思います。 ですので、これを土台にして、非常に喫緊な問題でございますので、今からインフラの整備という案にございます利用促進に向けたインフラ整備は、具体的な形として既に考えていかなければいけないのではないかと考えております。 以上です。 ○中村座長 喜連川委員、お願いします。 ○喜連川委員 私は与えられた中で、新産業創出の中のビッグデータについて、意見を申し上げたいと思うのですけれども、我が国は2010年1月1日に現行検索エンジンが合法化されたわけですが、それに至るまで我が国は優れた技術をいっぱい持っていたわけですが、複製にあたるという理由から、先ほど御紹介があったパーソナルデータと同じような産業の萎縮効果というもので、極めて大きな機会損失をこうむったと認識しております。これと同じようなことが今ビッグデータに出てきているということで、あえて「パーソナル情報」とおっしゃらずに「パーソナルデータ」という表現でおやりになられるわけですが、この問題につきましては、過去、各省で非常に深く何度も何度も何度も議論されてきたのではないかと思います。 したがいまして、慎重にも慎重を期さなければいけない、個人の命にもつながるような非常に重要な法律に関するものではあるかもしれないですが、一方では、こういう種類のデータはOKなんだというような、産業の機会喪失を最小限に食い止めるような迅速な動きも非常に大切なのではないかと感じますので、御配慮いただければありがたいと思いますと同時に、個人情報だけではなく、むしろデータのオーナーシップ、観測したデータの一体所有者はだれなのかといったことさえわからないような現行法の中で、人につながらないようなビッグデータの利活用も随分たくさんあると思います。 そういうパーソナルデータだけにはとどまらない、いろいろな法整備をしっかりしていただきますと同時に、アメリカOSTPはビッグデータはスパコンとインターネットとほぼ匹敵するくらいのインパクトがあるとおっしゃっておられるわけでございまして、我が国はスパコンに対して1,200億円の投下をいたしました。これで2回世界で一番をとったわけでございますけれども、いただいた資料の中ではビッグデータの施策が各省庁で一体どの程度の規模さなれているのか、さっぱりわかりません。スパコンと同じようにビッグデータも大きなインフラがないと、いろいろな実験が大学も小さな企業も全然できないということが事実でございますので、そういうプラットフォームへの大胆な取組みをぜひお考えいただけるとありがたいと思います。 以上です。 ○中村座長 斉藤委員、お願いします。 ○斉藤委員(レコード協会) クラウドサービスのことで発言いたします。音楽ですけれども、クラウドサービスはもう始まっているところもあります。特に、海外は始まっているところが随分あるのですけれども、日本においては各社それぞれちょっと温度差はあるのですが、レコード協会加盟各社は海外の人たちともAmazonやiTunesなどと契約のテーブルに着いているところもあります。ですから、全体を押しなべてこういう形でというのはなかなか難しい。さらに、その後ろに控えているアーティストの中にも、まだ配信ということに対して後ろ向きの人は随分おりますし、そういう面では個々に抱える各社の状況が違いますので、最初は、契約というような形で、各社がそれぞれに結んでいくようなことにある程度任せないと難しいのではないかと思っています。もちろん、著作権制度について文化庁の小委員会でやっていただくのは我々も積極的に参加したいと思いますけれども、サービスそのものをどう論議するかについては、各社の契約のベースを少し待たないと難しいのではないかと思っております。 ○中村座長 野口委員、お願いします。 ○野口委員 電子出版権の部分とパーソナルデータの部分と一言ずつ申し上げたいと思います。電子出版権については、本当に文化庁さんが非常に熱心に取り組んでいる様子を傍目から拝見しています。権利の設定の仕方を紙と電子について一体的にするのか別々に設定するのかというのは、デフォルトの設定としてどちらのほうがいいのかについて大きな議論はあると思うのですが、例えば別々にしたとしても、1つの出版社が両方契約を結ぶこともできるわけですから、そういう意味では、最終的には契約のスターティングポイントがどこかという話が違うだけであって、両者が合意すればどちらにもできるという意味では、法律的にはそんなに本質的な大きな違いではないのかなと思っております。 むしろ、 法制度全体という観点から見たときに少し注意をすべきかなと思っているのは、自分が出版権を持っていない分野に対しての差止請求権の有無という論点について、例えば「みなし侵害」規定を入れるかどうかというような形で議論されている点です。先ほどのクラウドとも関係があるかもしれないですが、例えば出版関係のクラウドサービスをどこかが始めたときに、クラウドサービスがどこまで許されるのかは明確ではない部分があります。このような状況で、このようなクラウドサービスにおける電子の利用に対して電子出版権者が話し合いを申し入れてきたり、差止めを請求したりするときには、その後その出版権者と交渉をしたり、両方の当事者が合意すればライセンスを受けるなどの話をすることができるかと思います。しかし、例えば、紙の出版についてだけ権利を持っている出版権者が電子の利用に対してみなし侵害に基づく差止請求権を持っていて、 クラウドなどの電子サービスについて差止請求権を行使できることになりますと、クラウド事業者側からすると、その出版権者はもともと電子の利用を許諾する権利がないわけですから、ライセンスを視野にいれた交渉ができないという問題が出てきてしまいます。紙の出版権者が電子にも差止請求権を行使できるようにしてほしいのは、海賊版対策として重要だというニーズがあるというのも理解できる反面で、正規のビジネスとして情報の流通を促進しようという観点から見たときには、差止は請求できるけれどもライセンスは付与できない権利者がいるということは、ビジネス形成にとっては非常に難しい側面が出てくるので問題が大きいのではないか、という点が気になったところでしたので、その点も ぜひ検討をしていただければ、と思いました。 あと、パーソナルデータについては、4ページで一定水準まで特定される可能性を低減した、いわゆる匿名化処理をしたデータについては、主に米国の動向を見習って規制を緩和する方向で議論しているという理解でいるのですけれども、第三者提供については本人の同意がなくてもできるという柔軟なルールにしようという話がされているということは、データ活用と個人情報保護のバランスという意味では非常にいい方向なのかなと思って拝見しています。しかし、 最初に情報を取得したときの目的をはみ出た目的外使用についても、今のところ日本では、最初にきちんと利用目的を提示して、目的外の使用については同意をとることが原則になっていると思うのですが、その部分についても、過去の多大な蓄積のあるデータが、データを取得した時にはおよそ見えていなかった新しい使い方が後からどんどん出てきて、それをビッグデータのうねりの中で上手に活用していこうという課題が、第三者提供と同じぐらい大きなニーズとして存在していると思います。この目的外使用についても、米国では、匿名化すれば同意なしで利用できるようにしよう、という議論が米国では第三者提供と同じくらい大きく取り上げられて議論されていると理解しているのですが、日本の議論は第三者提供の議論にのみフォーカスがあって、目的外利用のところも同じように匿名化すれば軽減できるかどうかについて、余り議論されていないような印象があります。私の理解が間違っていれば御指摘いただきたいのですけれども、日本の国際競争力を上げるという意味では、目的外使用は第三者提供と同じくらい重要な課題かなと思いましたので、半分御質問で、半分が意見でございます。 ○中村座長 何かそれについてコメントはございますか。 ○濱島参事官(内閣官房IT総合戦略室) 先生の御指摘のとおりでございまして、今、基本的に企業サイドから要望が出ているのは、第三者提供するときの匿名化データの同意の有無の論点でございまして、一旦企業が保有したときの目的外利用のことについては、特段大きなトピックになっていないと承知をしております。今の先生の御意見をどうこなせばいいかというところはあるのですが、現状のところ恐らくビッグデータの分析をできる人というのは、大きなデータホルダーというよりも、むしろほかに分析屋さんがいて、委託か何かのスキームを使って別にビッグデータの分析をしているような方々というのが結構多いという状況でございますので、そういう産業構造が変わってきて、むしろ自社内でちゃんと分析ができるような、目的外にもいろいろ使っていきたいといったような声が出てくると、そういうことも検討の材料になってくるのではないかと思っています。現状はそんな感じでございます。 ○野口委員 ありがとうございます。そういう意味では、例えば、産学連携というような観点でもこれは非常に重要だと思っています。例えば、オープンガバメントデータの文脈でも、過去に政府が資金提供をして収集した情報、例えば医療のプロジェクトで集めた健康情報などを製薬企業がどのように生かせるか、とか、そういう議論がこれから出てくると思うのですけれども、私の理解するところでは、 大学の先生が特定のプロジェクトで政府から委託資金をもらって研究をするようなときには、患者さんからとる同意書では、この特定のプロジェクトでこの情報を使います、というような同意しかとっていないと思うのです。このようにして集めた膨大なデータを活用して、今後、 創薬のための研究をしましょう、と思って見てみたら、そのデータはこの特定の文部科学省から委託された研究の目的でしか使えない、というようなことが 書いてあるという事態が多分あちこちで起こるだろうと思います。そこで、データか同意を結局一から取り直し、というのでは、今のビックデータの時代観も間に合わないですし、税金という面でも膨大な損が出ると思います。そういう意味で、もし、今、事業者さんから余りリクエストが出てこなかったとしても、近々には必ず重要な課題になってくる論点かと思っていますので、真剣に御検討いただければと思います。 ○中村座長 ありがとうございました。何かございますか。 ○喜連川委員 今の御指摘は非常に正しい御指摘で、目的外使用というのはITベンダーの場合は、今日やっていることと明日やろうとすることというのは、どんどん変わってくるわけです。したがいまして、この検討会の中でそれが入っていないというのは到底考えられないことで、一番先頭にでも入れていただくというのが当たり前だと。それも含めて、とにかく今どこまでやっていいのか。これをぜひ企業に対しても、大学に対しても早く動けるようにしていただきたいと思っています。 著作権法を改正した後、何が日本に起こったか。ドコモが元気になっているような、国民に広く受け入れられるような新しいサービスとしてのしゃべってコンシェルというものが動くようになったわけです。これは世界に冠たる技術です。しかし、それは著作権法の改正がなければ実現できなかったこと。そういうふうに産業を変えるためには、根本的に制度枠をしっかり明確にすることがマストであると思います。 ○中村座長 ありがとうございました。 ひとまずこのテーマはここまでとさせていただいて、次に進めさせてください。最後にまた時間がありましたら、全体討議の場でここに戻っていただければと思います。今ありましたように、著作権もあるいはパーソナルデータ、ビッグデータも情報の保護と流通促進の線引きでありまして、デリケートなアジェンダでありますが、同時に今お話がありましたように迅速さも求められるところです。また、今日は説明がございませんでしたけれども、教育の情報化も非常に重要なテーマだと認識しておりますので、ぜひとも引き続き施策への取組みを、政府御担当の方にはお願いしたいと思います。対応どうもありがとうございました。 さて、続いて2つ目のアジェンダ、デジタル・アーカイブの促進について議論を行いたいと思います。初めに、これも事務局から説明をお願いします。 ○田口参事官 デジタル・アーカイブの促進についてですが、再び資料2に戻っていただきたいと思います。6ページになります。 知財ビジョンでは左下にあるように、書籍・映画等のデジタル・アーカイブ化の促進や、各アーカイブ間の連携による環境整備、海外発信の強化を取り組むべき施策として記載していただいているところでございます。 また、資料の真ん中にあるように、デジタル・アーカイブ、資料の性質によっては原資料のままによるアーカイブになりますが、近年、各省庁、関係機関により様々な取組みが行われております。本日は、文化庁、東京国立近代美術館フィルムセンター、国会図書館からアーカイブ事業の取組み状況や、文化庁よりアーカイブに関連する制度について説明を受けることとしております。 アーカイブに関する背景的な課題については、青い実線の枠で囲んであるところに整理しておりますが、個別のアーカイブ化は一定程度進んでいる一方、アーカイブ間の連携や多国語発信は限定的であるというような御指摘をいただいているところでございます。 また、今後の課題としては、右下にございますが、利活用の促進といったこと、特にアーカイブの活用と連携、また、アーカイブ間の連携として、共通メタデータの普及等、連携のためにどのような取組みをしていくべきかといった課題例を挙げています。これらの課題例も参考にしていただきつつ、各省の施策の取組み状況について検証・評価、また関係機関の取組みについてのアドバイス等をいただくようお願いします。 なお、知財推進計画2013の工程表との関係については、主として工程表の137番、冊子の90ページに記載がございます。 事務局からは以上でございます。 ○中村座長 ありがとうございます。 今日は、これに関する関係の皆さんにたくさんお越しいただいております。文部科学省、東京国立近代美術館フィルムセンター、国立国会図書館からそれぞれ説明をお願いしたいと思います。説明については、それぞれ3分程度でお願いできればと思います。よろしくお願いします。 ○石垣室長(文化庁芸術文化課) 文化庁芸術文化課支援推進室長の石垣でございます。座ったままで恐縮でございますが、説明させていただきます。資料5をご覧いただきたいと思います。「メディア芸術デジタルアーカイブ事業概要」でございます。 メディア芸術デジタルアーカイブ事業につきましては、平成22年度より実施してございます。 事業概要でございますが、ここに書いてございますとおり、我が国でこれまで創造されてきましたメディア芸術作品の全体像、これは作品情報と所蔵情報ということになろうかと思いますが、それについて分野を横断するデータベースとして整備することと、作品のデジタル化に資する事例検証等を行うことにより、デジタル・アーカイブ推進のための基盤を築くということで実施しているところでございます。 補足させていただきますと、体系的な収集・保存がされておりませんメディア芸術作品、または、その関連資料を後世に残すため、中核的な拠点施設に実物を保存するのではなく、保存施設や団体等がどこに何を保存し、どのような状況にあるのか、そういったものを把握するとともに、例えば、マンガ原画のデジタル化の仕様策定検証、映像ドキュメンテーションの検証等を行うことにより、分野の特性を踏まえたデジタル・アーカイブ推進のための基盤を築くというのが、この事業の目的でございます。 対象とする分野でございますが、マンガ、アニメーション、ゲーム、メディアアートの4分野について事業を実施してございます。この事業を実施するに当たりましては、各分野の各機関の協力を得て実施させていただいているところでございます。マンガでございますと国立国会図書館、明治大学米澤嘉博記念図書館、京都国際マンガミュージアム、大阪府立中央図書館国際児童文学館、川崎市市民ミュージアム、北九州市漫画ミュージアム、熊本県菊陽町図書館、この7機関に協力をいただいているところでございます。また、アニメーションにつきましては、日本動画協会と国立国会図書館、東京国立近代美術館フィルムセンター、京都文化博物館に協力いただいております。ゲームにつきましては、立命館大学ゲーム研究センター。それから、メディアアートにつきましては、慶應義塾大学アート・センターに協力いただきながら実施している状況でございます。 主な事業実績でございます。まず、マンガ部門につきましては、マンガ所蔵館7館の所蔵単行本につきまして、同定・統合作業を実施させていただきまして、約19万冊についてのデータを収集してございます。併せて約8万件の雑誌等のデータを収集しております。また、データ精度向上のため典拠情報、例えば、ここに書いてございます著者、出版社、レーベル等を作成しているところでございます。 アニメーションにつきましては、劇場・テレビアニメーション等、約9,000タイトルの基本情報。それと、約600作品の詳細情報をメタデータ化させていただいております。また、アニメーション制作会社等によるワーキンググループを組織いたしまして、収集したデータの利活用の検討を行ってございます。 ゲーム分野でございますが、家庭用ゲーム機、これはファミリーコンピュータからプレイステーション2までの12機種におけます発売ソフト、ゲームタイトル約1万4,000タイトルのデータを収集させていただいております。 また、メディアアートでございますが、約5,000件の催事情報及び約4,000件の作品情報をメタデータ化させていただいてございます。また、1985〜1999年まで行われておりました、ふくい国際ビデオビエンナーレの資料分のモデルアーカイブ化も取り組ませていただいているところでございます。 平成25年度、平成26年度の予定でございますが、まず、各分野で収集する作品情報の拡大と、4分野横断のデータベース構築に向けての検索・入力システムの設計・開発を推進させていただこうと思ってございます。 そういったものを踏まえまして、最終的には総合データベースの構築を検討してございます。この総合データベースでございますが、平成26年度中を目指しまして構築・公開するという形になってございます。これによりまして、データベースの構築によりまして我が国のメディア芸術作品の全体把握が可能になり、デジタル・アーカイブ化が推進されます。また、教育・研究活動、産業界における人材育成の活用のほか、広く一般国民の利用が可能となると考えているところでございます。 簡単ではございますが、以上でございます。 ○田村室長(文化庁伝統文化課) 文化庁文化財部伝統文化課文化財保護調整室長をしております田村と申します。私から文化遺産オンラインについて御説明させていただきます。失礼ですが、座って説明させていただきます。 お手元の資料6をご覧いただければと思います。文化遺産オンラインですけれども、こちらは国民の貴重な財産である有形・無形の文化財に関する情報を、インターネット上で公開するポータルサイトでございまして、国指定等文化財のほか、美術館・博物館が所蔵する文化財の所在地や画像等を含む情報を発信しているものでございます。現時点で11万件以上の情報を公開しているところでございます。こちらは日本国内の文化遺産情報の総覧を可能にし、さらには世界に向けて発信することを目指して、文化庁と国立情報学研究所が共同で運営しているものでございます。 簡単に経緯を御説明させていただきます。平成15年4月に、文化庁と総務省が連携してブロードバンドを通じて国や地方の有形・無形の文化財に関する情報を積極的に公開していく文化遺産オンライン構想とつくりまして、あわせて文化庁に文化遺産情報化推進戦略会議を設置して検討を行ったところでございます。平成15年に中間まとめを出しまして、平成16年に文化遺産オンライン試行版を一般に公開しました。その後、平成20年3月に正式に文化遺産オンラインを公開いたしまして、リニューアルを経て今に至っているところでございます。 構成につきまして簡単に御説明させていただきます。お手元の資料の左端のトップページの画像です。少し見にくくて恐縮なのですけれども、主なコンテンツといたしましては、ギャラリー、すなわち文化財の情報を画像つきで解説文や所有場所といった情報を検索できるものでございます。現在4万7,000件余りの画像つきの情報を公開してございます。 また、トップページの真ん中あたり、見にくくて恐縮なのですけれども、全国から登録された美術館・博物館の情報を掲載しているコンテンツもございます。現在947館の情報を掲載してございます。また、文化遺産データベースといたしまして、画像が添付されていないものも含めまして、先ほど御紹介した11万3,000件余りの情報を検索できるコンテンツもございます。また、特殊コンテンツといたしまして、日本の世界遺産と無形文化遺産、または伝統工芸、民俗芸能などの無形文化財の動画を公開するもの。また、地方の文化財を都道府県別に御紹介するといったコンテンツもございます。 資料の真ん中あたりの作品詳細ページは、先ほど御説明した文化遺産オンラインのギャラリーの一例でございます。こちらは江戸時代18世紀の尾形光琳作の国宝の例でございますけれども、画像、名称、所在地などが解説文及び地図とともに表示されるようになってございます。 現在の状況でございます。資料の右側でございます。平成24年度のアクセス数でございますけれども、訪問者数が75万1,505人、訪問回数113万3,002回となってございます。 情報掲載件数は、お手元の資料では10月末現在で計算させていただいておりますけれども、最新のデータですと4万7,290件の画像つき、文化遺産登録全件数は10万3,251と若干ふえてございます。画像つきのデータは、現時点で登録件数全体の41.8%となってございます。また、情報をお寄せいただいている全国の美術館・博物館等につきましては156館となってございます。 課題と取組みでございます。お手元の資料の右下でございます。まず、課題といたしましては、画像情報の掲載率が平成24年度末で40%以下、現時点でも42%弱にとどまっていること。また、現在は日本語の情報しか掲載されておらず、英訳がないといったことが挙げられます。 文化庁といたしましては、文化遺産オンラインを通じて世界に誇るべき我が国の多様で豊かな文化財を積極的に発信していくため、掲載件数や画像情報の充実、情報の英訳等を推進するため、平成26年度概算要求におきまして、所要の経費を要求しているところでございます。 今後とも文化遺産オンラインを通じた文化財の海外発信方策に努めてまいりたいと考えております。 簡単ではございますが、私からの説明は以上でございます。 ○栩木主任研究員(東京国立近代美術館フィルムセンター) 東京国立近代美術館フィルムセンターの主任研究員を務めます栩木と申します。よろしくお願いいたします。 フィルムセンターでは、まず、フィルムセンターの通常の事業すべてにわたって、フィルム・アーカイブという立場ないしはアイデンティティーを持って活動している機関でございますが、そもそもフィルム・アーカイブは何で必要なのだろうかということになります。皆さん御存じのように、映画は20世紀最大の、しかも大変グローバルな表現形式であり、かつ、表現メディアであるということが言えると思います。その意味で、様々な価値を映画は有していると思うのですが、例えば、人間の感情、考え、思考といったものを表現するための文化的及び芸術的な価値を有している。 また、文字に還元することができない大量の情報量も有した、歴史資料としての価値もそこに存在すると考えています。こうしたものが、実際に映画が失われることによって100年余りの人間の記録ないしは記憶が失われてしまうことにほかならないと考えているわけです。その意味で、こうした価値を後世に伝えていくためには何をすべきか。ここがフィルム・アーカイブの仕事ということになるわけですが、一つは、現在残存しているフィルムを網羅的に収集することを原則としながら、廃棄、散逸、劣化の危機にあるフィルムを優先的に、また、希少性の高いもの、ないしは利活用に必要なフィルムを優先的に収集して、これを劣化や散逸などを防ぐための安全で安定した環境に保護して、かつ、長期的に保管する、これが一つの使命だと考えます。 と同時に、つくり手の意図を十分に伝えて、豊かな情報量を欠損させることなく、必要に応じて最善の複製物をつくる、これもまた必要であろうと考えます。 同時に、映画には様々なフィルム以外の関連する資料、例えば、シナリオ、ポスター、チラシ、カメラ、映写機などもございますが、こういった関連する資料もあわせて収集して、これらフィルム、関連する資料すべてにわたって所蔵品に関する情報を集積する必要があろうかと思います。 その上で、フィルム及び資料の収集や保存の成果を還元するために、上映・公開・展示、そして、それを利用したいという様々な方からのアクセス、こういったものに対する対応をすることがフィルム・アーカイブの仕事と考えております。 それでは、フィルムセンターはどう取り組んでいるかということでございますが、まず、所蔵するフィルムの本数は、昨年度末現在で約6万7,000本。日本映画と外国映画の割合は87対13という割合になっております。関連する資料が昨年度の収集数として2,784点。これまでのトータルの収集する関連資料というのは約79万点と計算しております。また、館内で行います上映会には約9万人。そして、展覧会には約1万5,000人の動員をしております。 下表には独立行政法人になりました平成13年度からの所蔵本数ないしは館内活動の入場者の推移を表にまとめておりますが、独法化以降の12年間で約4万本の映画フィルムを収集・保存させていただきました。年に平均しますと約3,300本が新しくフィルムが保護され、保存されているということでございます。 一方、2ページですが、館内の上映・展覧会につきましては、年平均で上映会に関しましては約10〜11万。展覧会につきましては、徐々に増加傾向にございまして、現時点では約1万5,000〜6,000を年間の平均数と考えております。 今度は館外の利用などに関してでございますが、これは昨年度実績でございますが、文化庁様及び実施会場の各教育委員会との共催という形で、25年間優秀映画鑑賞推進事業という全国巡回上映事業をやっております。昨年度実績は全国で189会場、入場者数が約8万人という動員を記録しております。 フィルムの貸し出しは約100件、300本余り。それから、フィルムから複製をとりたいという申請を受けての対応が37件で426本。館内での試写ということですが、何か目的に応じて試写対応することが83件、288本。資料類の貸し出しが今4件で39点及び資料類の複製などに関する特別観覧が全体で943点という数字になっております。また、紙類、冊子類の複製がございまして、これが全体で1,100ページほどの書物の複写に対して対応させていただいております。現在、館外での複製物の利用というものが徐々に増加傾向にあることが言えるのではないかと思っております。 さて、フィルム・アーカイブでもデジタルへの対応をしていくわけですが、どういうポイントでフィルムセンターで取り組ませていただいているか申しますと、大体3点に分かれます。まず、1点目は、やはり利便性の高いデジタルメディアへフィルムをどう返還するかということで、現在3,000本余りについて返還をしております。残念ながら、まだ4.7%ぐらいの割合ですが、そのような変換率。 2点目は、デジタル技術を用いた高解像度の修復を行うという作業。これは現時点まで25作品をやっております。また、音声への修復、同時に所蔵品のデータベースをデジタル技術を使って充実させるという点があります。 最後にある課題ですが、まだ映画フィルムが様々残存しておりまして、廃棄や劣化の危険性があるものを継続的に収集し、保護すること。資料も同様でございます。また、デジタル記録媒体について、どうやって長期保存に向けてやるか、このあたりに関しては、現時点で様々なトライアルをしております。それに向けてとにかく読み出し可能な状態に常にしておくために、どのような体制が必要なのかを検討中でございます。 以上でございます。 (山本大臣 入室) ○中村座長 ありがとうございます。 御報告途中でございますけれども、ここで山本大臣にお越しいただきましたので、ぜひ御挨拶をいただければと思います。 ○山本大臣 知財担当大臣の山本一太でございます。本日は、我が国のコンテンツ産業を代表する皆様方にお集まりいただきまして、本当にありがとうございました。今日は最初から出席させていただいて御議論を聞かせていただこうと思ったのですが、国会が揉めに揉めておりまして、今日も明日も日付変更線を超えるような事態になっておりまして、今中断しているのでここに来ることができました。3時からまた総理のQTがあるものですから戻らなければいけないのですが、一言だけ御挨拶をと思ってここに参りました。安倍政権の三本の矢の一つである成長戦略においては、やはりコンテンツの海外展開とクールジャパンがとても大事だと考えております。クールジャパンも大きな意味では知財戦略の一つですので、稲田大臣とも協力して、しっかり進めていきたいと思いますので、ぜひ皆様には忌憚のない御意見で議論していただければと思いますし、次回また機会があればぜひフルで参加させていただきたいと思います。 本当に申しわけないのですが、このような状況ですので、一言御挨拶だけと思いまして、本日は失礼させていただきます。 (山本大臣 退室) ○中村座長 ありがとうございました。 続いて、また国立国会図書館からの報告を、これも3分程度でお願いします。 ○佐藤電子情報部副部長(国立国会図書館) 国立国会図書館電子情報部副部長の佐藤と申します。私からは資料8に基づきまして、国立国会図書館におけるデジタル・アーカイブ構築への取組みについて御説明させていただきます。 2ページをご覧ください。こちらでは資料デジタル化予算の推移を示しております。当館では平成12年度から当館所蔵資料のデジタル化を実施してきております。平成21年度及び平成22年度の補正予算で、大規模な資料デジタル化予算が計上されまして、当館の資料デジタル化は一気に進みました。これまでの資料デジタル化経費の総額は約153億円となっております。 3ページをご覧ください。このスライドでは当館の資料デジタル化事業と関係の深い著作権法改正を2つ掲げております。一つは、当館の原資料保存のためのデジタル化、もう一つはデジタル化資料の図書館送信に関する法改正でございます。当館の資料のデジタル化あるいはその利活用につきましては、著作権者の権利を保護しながらということもありますが、さらに出版社等の商業活動を阻害しないようにというところも非常に重要な視点でございますので、出版関係者、図書館関係者等と協議しながら事業を進めているところでございます。 4ページをご覧ください。当館の資料デジタル化及び提供の状況について表でお示ししております。当館はこれまでに全体で約228万点の資料をデジタル化し、そのうち著作権処理が済んだ約47万点についてインターネットで公開しております。館内限定提供という資料が181万点ほどございますけれども、先ほどの平成24年の著作権法改正によりまして、著作権法保護期間中のものであっても絶版等資料につきましては、図書館等に送信できることになりました。ですので、来年1月からのサービス開始に向けて、現在準備をしているところでございます。 5ページをご覧ください。こちらは国立国会図書館における他機関デジタル・アーカイブとの連携への取組みを紹介しております。当館所蔵資料だけでなく、他の図書館あるいは博物館、美術館、公文書館等のデジタル・アーカイブと連携しまして、統合的な検索ができるポータルサービスとして国立国会図書館サーチというものを提供しております。今の状況については、こらちの資料をご覧いただければと思います。 6ページにいきます。6ページ以降につきましては、当館が今年3月に公開いたしました東日本大震災アーカイブ、愛称「ひなぎく」と申しておりますが、これについての説明資料でございます。平成23年の東日本大震災という歴史的にも重大な経験を記録し、将来に継承していくことは当館の重要な任務の一つだと考えております。当館は、国内外の様々な機関・団体と協力しながら、東日本大震災アーカイブの構築に取り組んでおるところでございます。 7ページをご覧ください。こちらは関係機関との連携、それから、ひなぎくの利活用の想定を示したものでございます。ひなぎくを真ん中に書いてございます。ひなぎくは、自らも大震災の記録を収集いたしますけれども、一方で、ポータルサイトとして、関係機関がどのようなコンテンツを作成あるいは収集し、保存しているかを把握して、それらのコンテンツにアクセスできるようにします。そういうものにしようと考えております。 8ページをごらんください。現在ひなぎくと連携している主なデジタル・アーカイブをこちらで紹介しております。 最後9ページでございます。予算額だけポッとお出ししてもイメージがわかないかもしれませんけれども、平成26年度の東日本大震災アーカイブ関係予算として、約3億円を要求しているところでございます。 最後にひなぎくの事業の課題として、アーカイブ連携の拡大、利活用の促進、利活用と収集とをつなげる取組みを掲げさせていただいております。 簡単ではございますが、以上で報告を終わります。 ○森課長(文化庁著作権課) 裁定制度の見直しについての検討状況につきまして、資料3にお戻りいただきまして、4ページに基づきまして簡単に御説明させていただきたいと思います。 この裁定制度のあり方につきましては、過去の膨大なコンテンツの利用促進という観点から、権利者不明の場合の立証負担の軽減などによって手続の簡素化・迅速化を図るようにということが、知財ビジョンで掲げられていたところでございます。この問題につきましては、本年9月より著作権分科会の小委員会におきまして検討を行ってございます。これまで裁定制度の運用の見直しにとどまらず、裁定制度全体のあり方の見直しも含めた検討を行っておりまして、議論の内容といたしましては、公共的な目的での利用の場合と、営利目的の場合とで制度のあり方についての検討の視点が異なってくるのではないかといった御意見ですとか、制度を見直すに当たって諸外国における類似の制度についても参考としながら検討すべきであるといった御意見が出されてきているところでございます。 11月には国立国会図書館を初め、裁定制度を御利用いただいている関係者の方々からもヒアリングを実施いたしました。その中では、不明権利者と連絡をとるために求められている相当な努力の要件が厳しいことから負担が大きいといった課題、さらには、補償金のあり方、また、一度裁定を受けたものについて再度裁定を受ける場合の手続について簡素化できないかといった、様々な課題について御指摘をいただいているところでございます。 今後、こうした御意見・御議論も踏まえながら、さらに小委員会において議論を深めてまいりたいと考えているところでございます。 以上でございます。 ○中村座長 どうもありがとうございました。 それでは、委員の皆様からアーカイブについて御意見をいただければと思います。齋藤委員どうぞ。 ○齋藤委員(トーセ) アーカイブにつきまして、3年程前に国立国会図書館の方が弊社へお見えになり、ヒアリングをされたことがありました。確か、その際のゲーム分野のアーカイブ数は4,000〜5,000タイトルだったと思います。それが現在では1万4,000タイトルと記載されているのを見て、大分集まってきているなと思いました。ゲームの場合、ハードとソフト共に同一の商品でもバージョン違いなどがある為、故障した場合のことも考えて余分に集めておく必要があります。出来るだけ急務で収集作業を行って頂ければと思います。 もう一つの課題は、形のないソーシャルゲームをどのようにアーカイブ化していくかということです。ソーシャルゲームには完成形がありません。日々変わっていく為、どの時点でどの様に残すかを早く決めて実行しなければ、消えて無くなってしまう可能性がありますので、この問題も早急な対応をお願いしたいと思います。 それから、形ある物の保存対策について、私が京都出身だから言えると思うのですが、例えば、町屋の「登録有形文化財の指定」の様に、アーカイブについては、『アーカイブ指定』といったシールを貼り、それを動かしたり、売却や破棄したりする場合は、必ず国立国会図書館に申請しシールを戻さなければいけないといったルールを作るべきだと思います。現在弊社には1,000点程のゲームコンテンツがありますが、その様な対策を早く行わなければ、次第に無くなってしまう運命にあると思います。 以上です。 ○中村座長 迫本委員どうぞ。 ○迫本委員 知財に限らずそもそも論になりますけれども、国と民間とのかかわり方を考えた場合に、知財というのはやはり民間の野心といいますか、自助努力といいますか、おもしろいものをつくっていこうみたいなところが根幹にあると思っています。そこに国がかかわるというのは、民間のそういう自助努力でマーケットメカニズムが働くところにおいては、基盤整備ということでそこに直接手を出さずに、そこの動きを活性化するようにということがあるのではないかと。それ以外に文化財として保護するような場合には、これはマーケットメカニズムが働かないところですので、国はある程度積極的にかかわっていく必要があるのではないかといつも考えております。 デジタル・アーカイブを考えたときに、この過渡期にあるというか、今はマーケットメカニズムが働かない分野だと思うのですけれども、将来これを整備することによって、6ページにありますように、今後の新規事業創出の促進ですとか地域の活性化、文化の多様性を確保していこうという流れにあるのではないかと思っています。私どもは映画会社ですので、私どもの個人的な立場から言いますと、フィルムセンターさんがやっていただいていることは非常にありがたいことで、我々とも連携をとりながら今後もいい形で我々のような権利者と利用者の方々の利便に資するようにやっていければと思っておりますが、将来これがなった場合に我々といいますか、全般的にビジネスになったときの仕組みをどうしていくか、権利者がどういう形で、利用者が利用されたら利用者の方からどういう対価をちょうだいするのか、それをどう分配するのかみたいなことも、特にアーカイブの場合はパブリックドメインになっているような場合があると思いますので、その辺のことも踏まえながら仕組みづくりも検討していただきながら進めていただければ、現在は非常にいいスタートを切っていると思いますので、さらによくなるのではないかと考える次第です。 逆に、その辺のことがはっきりしないと、パブリックドメインのときはどうなるかわからないから、権利者としてはこのコンテンツを出すのを躊躇するみたいなことも想定されますので、その辺の仕組みづくり、ルールづくりを進めていただいて、今のをさらに加速していただいて将来の新規事業の創出等でのビジネスの活性化にもつながるような、そして、本来の文化財としての価値も発揮できるような両面できるような形でやっていただければ、大変ありがたいかなと考える次第です。 以上です。 ○中村座長 木田委員、お願いします。 ○木田委員 NHKの木田といいますけれども、アーカイブ主体にNHKアーカイブスも入っているので、一言お話しさせていただきます。 まだNHKに60万時間の番組・ニュースがテープで残っておりまして、これを6年ぐらいかけてデジタル化しようと考えております。それほど膨大なNHKの資産でありますので、これを使っていろいろ新規事業あるいは国民への還元ができないかと多くの方から期待をかけられているわけですが、実は外部連携というのはなかなか限定的であります。それには幾つか問題点があるのですけれども、それを御紹介しておきたいと思います。 1つは、言うまでもなく権利処理の問題です。NHKのアーカイブスは放送に資するためにアーカイブされてきているものですから、これを違う目的で使っていこうとすると、権利を全部取り直さなければいけないことになります。では、このコストは一体どこがどうするかということが、まず一番大きな問題です。先ほどの裁定制度の話もありましたように、古くなればなるほど不明の方が莫大な数になることは大体想像がつくところです。そういった権利処理が一番大きな問題としてあります。 あと、もう一つは、放送法でNHKの事業について非常に細かく規定されております。したがって、NHKアーカイブスを外部と連携していく場合に有償なのか無償なのか、どういう形が一番いいのかということについては、今やっていることは実は現行の制度内でのギリギリやれることになっていますので、どうしても限定的なのですけれども、これをさらに大規模に展開するにはどうするかということがあります。 あとは、NHKの特にニュースなどで事件・事故などの場合の人権対応ということがあって、1年ぐらいおいて匿名化していく作業を実は内部ではやっております。これが外部連携ということになった場合に、そういった現状のアーカイブスとの整合性といいますか、違う手続が必要になってくるかもしれないというようなことがありまして、我々としてはこの資産をいい形で生かして、国民・視聴者の皆さんに寄与したいとは思っているのですけれども、現実的にはどうしても限定的にならざるを得ない。こういった問題が何らかの形で解消されていけば、もっといい形で活用が進むのではないかと考えております。 以上です。 ○中村座長 瀬尾委員、お願いします。 ○瀬尾委員 先ほど申し上げましたけれども、アーカイブの話ですが、私もこれまでいろいろなアーカイブとかかわってきて、実は経済的な側面と文化的な側面がごっちゃになってしまう場合が多いんです。つまり文化的だから予算をつけて保存するということと、きちんと利活用を図って経済効果をちゃんとバランスをとるということが一緒になってアーカイブと言われてしまうと、比較的難しいことが起きてしまうので、きちんと文化的な側面としてのアーカイブと、ちゃんと流通促進をある程度目的としたアーカイブである、大体機能は両方を兼ねているのですけれども、そこをまず明確にして考えていかないと難しいと思います。 それから、実際に言えますのは、経済的にどうやってバランスをとって、どこまでお金を稼いでいかなければいけないかということも目算を立てないで始めると、実はその維持費がばかにならないものがどんどん累積していって、そのアーカイブが行き詰まってしまうという例も実は多くございます。ですので、このアーカイブ化は絶対に必要なことなのですけれども、経済的な効果と文化的な効果をきちんとバランスをとって、きちんとお金の採算をとって考えていくことが私は重要かと思います。その視点をなくすと、後々辛いことになっていくと。 実際にそうなったらどうなるかというと、先ほどから幾つか出ておりますけれども、非常に重要な権利処理の話がございます。このアーカイブ化の中で1つだけ強く申し上げたいのは、やはり著作者不明の場合の権利処理を、裁定を応用するのか、全く別の制度にするのかは別にして、商用利用まで含んだ著作者不明の場合の権利処理もしくはその場合の制度を早急に考えていかないと、著作権の保持期間があるものについてはかなりの率で動けなくなってしまう可能性が高いと思います。ですので、まず一つは権利処理についての手当をすることと、もう一つは、先ほどの6ページの図でもございますけれども、アーカイブ自体がポータル化されていないで、言ってしまえばバラバラになってしまっている。これをポータル化して日本の検索窓口をできるだけ統一していくようにしないと、これ以上広がってしまった後では実際の連携は非常に難しくなってしまうと思います。ですので、最初に申し上げたようなアーカイブの考え方をもとに、今言った権利処理の方法とポータルをどうやってつくっていくのかという2つの大きな問題に、まず早急に取り組んでいくということで、このアーカイブが生きるのではないかと考えます。 以上です。 ○中村座長 ありがとうございます。 久夛良木委員、お願いします。 ○久夛良木委員 ゲームの分野ですが、私の知る限りゲーム機は大体日本では20年くらい、世界でも30年ぐらいの歴史があると思うのですが、例えば、カートリッジであるとかディスクであるとか、ゲーム機本体やソフト単体としてのアーカイブはそれなりに皆さん集めて進んでいると思うのですが、稼働可能な状態で、つまり遊べる状態でアーカイブされていないと文化財としての意味はないわけですよね。これがされているかということに関しては、実は甚だ心もとなくて、とりあえず今、対応するハードウェアとディスク、カートリッジが集められ、その目録がつくられているだけというのが実情だと思うんです。ところが、未来にわたってずっと遊べる状態でアーカイブするというのは技術的にも経済的にも大変なことで、しかしそこをやらないとコンテンツそのものの中身自体が消失してしまう。遊べる環境が整わないと、未収集のままになっている他のコンテンツ群も滅失してしまうことも間違いないということで、今この中でゲームのアーカイブ分野は確かに立命館大学等、また、我々のソニー・コンピュータエンタテインメントでも集めてはいますが、それが一つの大きなムーブメントというか、ゲームソフト全体のアーカイブに及ぶような一つの連携になっていないんです。今後この議論を進める中で、我々も頑張らなければいけないのですが、ぜひ遊べる状態でゲームコンテンツをアーカイブしていく、つまり後世につないでいくということをやりたい、やっていかなければいけないのではないかと思うのが一つ。 では、どうするのかということに関して、今後出て来るネットワークに全面対応したゲームコンテンツ等は比較的希望が持てるのではとは思います。だんだんゲーム本体がサーバー側に移行して来ると、それらサーバー側の構築そのものはある時点の構成を再びビルドすることで再生できる。それと、例えば今後新しく出るようなゲームシステムですと、世界中の人々のゲームプレーが或る程度YouTube等の動画サイトに上げられるような状態になっているので、それぞれがどういうゲームだったかというのが後世にコンテンツとしても文化として残る可能性があるわけです。しかも、ボーンデジタルで。一方で、残念なことに、昔のファミコン時代も含めてさらに前ゲームシステムというのは世界でたくさんリリースされていて、そこにそれぞれ多数のゲームコンテンツ群があった。そういったゲームで多分ここにいらっしゃる方々も遊んだ記憶があると思いますが、それらをお創りになったゲームクリエーターの方々は、残念ながらもうこの世にいらっしゃらないかもしれないし、それらのゲーム機メーカーも現在存在していないところもたくさんあるので、これをどうやって集めていくかというのは大事なことだと思い、一言コメントさせていただきました。 ○中村座長 重村委員、お願いします。 ○重村委員 民放の立場からちょっとお話ししますと、アーカイブの問題に関して一番大きい問題は、いわゆる民間放送においては、かつては古い素材は消すということが経済的効率からいっても行われていたわけです。だけれども、一般の方の中に散逸している素材はたくさんあるわけです。したがって、そういうものをどこが主体になって集めるのかという問題が非常に大事だろうと思います。こういう固い会議でこういう話をするのはあれですけれども、フジテレビに昔「かくし芸大会」というのがありました。実を言うと、あれはほとんど素材が残っていないのですが、何周年かになったとき初期のものを探そうと思いましたら、ハナ肇さんの家にあったというケースがあるわけです。 だから、民間企業の場合は、必要に応じれば一生懸命探すのですけれども、そうでない場合というのは、ある意味で積極的にそういうものを探していこうという姿勢がないわけですから、そういう意味において、特に放送などにおいては貴重な放送史に残るような作品というのが民間の中に散逸していると。それをどこかが主体になって集めるということを明確にしていかないと、多分このまま世代が変わっていって消えていってしまうのだろうという感じがするというのが1点です。 それから、もう一つ、アーカイブ化と同時に、さっきのデジタルリマスターで複製化するときに非常に重要な要素としては、著作権者がある意味でいうと非常に不明確な状況があると思います。いわゆるリマスター化するときにもう一回、著作権者とか隣接権者をきちんと調べ直して残していくことが、今後議論になっていくのだろうと思いますけれども、コンテンツにいわゆるIDナンバーをつけていくメタデータ的な要素の意味からいっても非常に重要になっていくだろうと思います。したがって、アーカイブをつくっていくということは、幽霊化している著作権者とか隣接権者を明確にしていく場でもあるという観点から、これから事業をやっていただければと思っております。 ○中村座長 どうもありがとうございました。非常に重要な指摘を続けていただいておりますが、今日はもう一つアジェンダがございますので、そちらに進めさせていただければと思います。御担当の皆様方どうもありがとうございました。引き続き取組みのほど、お願いしたいと思います。 今日の3つ目のアジェンダでございますが、コンテンツ人財の育成と開発拠点の整備です。これも事務局から説明をお願いします。 ○田口参事官 コンテンツ人財の育成と開発拠点の整備につきましては、資料2の7ページと8ページになります。 人材育成については資料7ページの左側のポンチ絵に整理してありますように、すそ野の拡大から海外で活躍する人材の育成まで、その施策の対象は非常に広範囲にわたっております。知財政策ビジョンにおきましても左下の枠内にございますように、子どもたちが文化芸術に触れる機会をふやすための効果的な施策といったクリエーターのすそ野拡大の施策から、海外で活躍する人材の育成まで御指摘いただくとともに、人材育成の前提という側面が強いと思いますが、適正な活躍の場が確保されるという観点から、クリエーターに対する利益の還元の適正化についても御指摘をいただいているところでございます。 本日は、文化庁と経済産業省から人材育成について説明をすることとなっております。 今後の課題についてございますが、右下の枠内でございます。海外展開に向けた人材の発掘・育成に向けた政策課題の検討、民間での人材育成に係る取組みの支援及び環境整備といったところが挙げられるかと思います。これらを参考にしていただきながら御検証いただくようお願いします。 また、人材育成とも関連した施策としまして、8ページに地域における取組みの例等について記載させていただいております。札幌市における札幌コンテンツ特区の取組み、そして、京都での取組み、沖縄県での取組み。また、東アジア文化都市、文化芸術創造都市の推進など、行政と地域が連携した事例について記載させていただいております。人材育成について検証・評価いただく際にあわせて参考としていただければと考えております。 なお、知財推進計画2013の工程表との関係では、冊子の117ページあたりでございますが、工程表の項目の185〜190番にかけてが関連になっております。 事務局からは以上でございます。 ○中村座長 では、本件について文部科学省、経済産業省から説明を、それぞれ3分ぐらいでお願いいたします。 ○石垣室長(文化庁芸術文化課) 改めまして文化庁の石垣でございます。資料9に基づきまして御説明申し上げます。 若手アニメーター等の人材育成ということで、支援のための事業を実施しているところでございますが、その背景につきまして簡単に御説明させていただきたいと思います。 アニメーターにつきましては、作業指示に従って原画と原画の間の動画を描く動画マンから始まり、ここで経験を積んだ上で中堅アニメーターである原画マン、または作画監督となるようなことになってございます。しかしながら現在、動画工程の80%とも90%とも言われておりますが、中国・韓国を初めとする海外に流出しております。そのため、アニメーター育成のファーストステップまたは訓練期間としての動画行程の機会が減少しており、従来のOJTでの人材育成機能が失われつつあるという現状を聞いてございます。このため、ここの事業内容にございますとおり、一線級の監督の下で、若手アニメーターを起用した制作スタッフによるオリジナルアニメーション作品の制作を通じまして、オン・ザ・ジョブ・トレーニングを組み込んだ制作現場における若手アニメーター等の育成事業を支援しているという状況にございます。 この事業につきましては、平成22年度から実施してございますが、平成22年度は33名で4団体が作品を制作しています。また平成23年度は22名で4団体、平成24年度は24名で4団体となってございます。平成25年度につきましては、16社の応募がございまして、そのうち4社を採択し、二十数名の育成対象者がいるという状況になってございます。 この目的でございますが、@次世代を担う若手アニメーター層の育成、Aアニメーターの育成方法に関する知見の獲得と方法論の確立、そして、Aで得られました成果の業界全体への普及・活用を目標としているところでございます。 対象者でございますが、原画職として6カ月〜3年以内程度の経験を有しており、かつ、応募時に30歳未満である者を対象としているところでございます。 事業スキームは書いてございますとおり、文化庁とプロジェクト事務所、これは公募で選ぶわけでございますが、これまでは日本アニメーター・演出協会というところ、通称JAniCAと呼ばれてございますが、そこに委託して実施してございます。そちらでは「アニメミライ」という名称で、この事業を推進しているところでございます。ここでは、ヒアリングチームですとか、アニメーター育成検討委員会、選定・評価委員会を組織して、こちらでノウハウの提供等を行いながらやっている状況にございます。 次にいっていただきますと、今度は新進芸術家の海外研修ということで、海外研修への支援でございます。中ほどに書いてございますが、我が国の将来の文化芸術振興を担う人材を育成するためということで、美術、音楽、舞踊、演劇、映画、舞台美術等、メディア芸術の各分野につきまして、若手芸術家等に海外で実践的な研修に従事する機会を提供するということで実施してございます。この若手芸術家等でございますが、アートマネジメント担当者、または学芸員、技術者、プロデューサー、評論家等々もこちらの中に入っております。 研修期間でございますが、1年、2年、3年、特別という形でございます。 それと、音楽分野及び舞踊分野につきましては、高校生研修ということで15歳以上から18歳未満の方につきましても研修機会を提供しているところでございます。 支援対象としましては、往復の航空運賃、支度料、滞在費という形になってございます。 右上に書いてございますとおり、この事業はそもそも昭和42年度から実施してございます。平成24年度までに3,101人にこの制度を活用していただいているところでございます。近年の派遣実績は、ここに書いてあるとおりでございます。なお、平成25年度につきましては、応募人数が313人、このうち一次審査を通りまして面接に臨みましたのが127人、最終的に内定しましたのが79人という形になってございます。今後ともこういった形で、海外で研修する機会を提供していきたいと思っているところでございます。 簡単でございますが、以上でございます。 ○須賀課長補佐(経済産業省文化情報関連産業課) 続きまして、経済産業省のコンテンツ課から人材育成と下請けガイドラインについて若干御説明させていただきます。 人材育成については、基本的にクリエーター育成は文化庁に担当していただき、我々は流通部分、特にグローバルにビジネスをするときに不可欠な人材の育成にリソースを集中して振り向けていくということで分担をしており、グローバルに映像を制作・流通させられるプロデューサー人材を育成するため、海外のトップクラスのフィルムスクールのプロデューサー育成コースに、日本の優秀でやる気のある若者を年に数人ですけれども送り込んでおります。そのときに国内で候補生を選考するわけですけれども、選考委員会のメンバーに業界の名だたる方々に入っていただいて、資料10の3ページに名簿をおつけしたのですけれども、この方々には選考だけに関わるのではなくて、その後定期的に留学生が今どうしているか、何か悩んでいないかというような相談にも乗っていただきますし、フィルムスクールを卒業した後に、彼らが国内で浮いてしまわないように、しっかりと国内の企業のグローバルなビジネスに役立てていくということで、卒業後のキャリアまで面倒を見ていただくことをお約束いただいて、この委員会に御参加いただいております。 資料に御説明していますとおり、海外留学の候補者を育てるという意味で、プロデューサーの役割を教えるような国内での研修も組み合わせてやっております。 支援制度を活用した後に、米国に残って活動したいという人に対してもサポートしますし、日本で新しく就職して日本企業のグローバル展開に役に立ちたいと言ってくれる人についても、そのあっせんも含めてかなり入り込んでサポートすることにしていまして、今年ちょうど第1号で留学した方が、委員のメンバーのおひとりの企業で採用いただくことが決まったりしております。 今後も細々とですけれども、この取組みは継続することが重要だと思っていますので、若者に投資をして大きく育てて、しっかりと彼らが国内で活躍できるように環境を整えていくということをやっていきたいなと思っています。 それから、最後の1枚の紙ですけれども、御参考までで、アニメーション業界において下請けガイドラインというものを本年4月に策定しております。これはいろいろな分野で親会社のほうが資金力があって、体力がある場合に、下請けに対して非常に無理な条件を押しつけるようなことがないように、下請法に基づいて業界ごとにガイドラインをしっかりとつくっていくということで、アニメーション業界も契約をしっかりするとか、お金をしっかり払うとか、当然のことなのですけれども、業界慣行を見つめながら作成したということで、4月に公開しております。 以上です。 ○中村座長 ありがとうございました。 では、委員の皆様、いかがでしょうか。齋藤委員、お願いします。 ○齋藤委員(トーセ) クリエーターの人材育成の支援という観点で言いますと先日開催されましたクールジャパン推進会議「ポップカルチャーに関する分科会」でもお話したのですが、クリエーターに対する税制の改善が必要だと思います。クリエーターの報酬は、ヒット商品が出た時には成果に応じて高い報酬を得ますが、そうでないときの報酬は減少し、報酬額に波があって均一ではないと思われます。収入が多い年の翌年には、多額の税金を引かれてひどい目に遭うというようなこともよくあります。税金が累進課税で掛かると、儲かったと喜んでフェラーリを買ったら、翌年に税金を払う為にフェラーリを売らないといけなくなったという様な話も聞いたことがあるくらいです。その様な状況で、税金の支払いを繰り延べることが出来れば、クリエーターの働く意欲が増すのではと思います。 この間ウィキペディアで累進課税について調べたら、アガサ・クリスティは、「税金を払うために一年一冊は書かねばならないが、それ以上書けば国税庁を太らせるだけの愚行として執筆ペースを抑えていた」という話が載っていました。累進所得税は、労働者のモチベーションを低下させ、労働供給を低下させるデメリットもあります。このような状況を作らない為にも税金の繰り延べ支払いが採用されると良いのではと考えます。 ○中村座長 ほかにいかがでしょうか。時間が迫ってまいりましたので、このアジェンダ以外のほかのアジェンダのことでも結構です。全体の中で御議論いただいてもよろしいかと思います。これまで言えていなかった、言い残したことなどがありましたら。 宮川委員、お願いします。 ○宮川委員 私は、電子書籍とクラウドサービスについて少し述べさせていただきたいと思います。 電子出版に関しましては、先ほど角川委員から出版産業のお立場から非常にわかりやすい御説明をいただきましたし、また、野口委員からも御見解を伺っております。今後この出版権については内容を詰めていかれると思いますので、一体的設定とかあるいは紙と電子書籍が分離可能な形で設定されるかという問題については、さらに御検討いただきたいと思っております。どうもデジタル関係の著作権法の規定は、普通の人が読んでも何が書いてあるかわからないような複雑な規定になってしまうことが多いように思っておりますので、出版社の方だけではなく著者・著作権者の方がきちんと理解して、安心して利用いただけるような形で法律の規定がとりまとめられることを心から希望しております。 また、電子出版、紙の出版の一体化というお考えもありますけれども、どのような形で出版するかということは著者の方が選択する自由というのもあるわけですので、もし、一体化になってしまいますと、逆に出版権の設定を敬遠してしまうようなお気持ちになってしまうおそれもありますので、なるべく選択の自由度の高い規定ぶりになり、なおかつ出版社の方のいろいろな御説明や御努力で、2つの権利を1つにまとめて許諾してもらえるような、そのような形が望ましいのではないかと私は思っております。 それから、クラウドサービスについては、やはりストレージサービスを含めまして、著作物の利用者としては非常に便利なサービスだと思っておりますので、著作権法の問題もいろいろありますけれども、権利者の方の利益還元という点も大事でございますが、ユーザーの利便性についても考えをいたしていただいて、著作権法についてはさらに議論していただきたいと思っております。よろしくお願いします。 ○中村座長 井上委員、お願いします。 ○井上委員 私は、ビッグデータの関係とクラウドサービスについてコメントしたいと思います。 ビッグデータに関しましては、進捗状況の5ページに、ビッグデータの活用推進に向けた取組みということで書かれておりますけれども、その中左上に電子行政オープンデータ戦略に関して記述がございます。これは昨年来私が申し上げてきたのですけれども、各府省が有する公共データというのは宝の山と言うべきものでございまして、今後、自治体のデータもオープン化されていきますと、新規ビジネスの創出効果は極めて大きいものだと考えられるわけでございます。 オープンデータの戦略を進めていくに当たりまして非常に重要になってきますのは、二次利用を推進するためのルールの整備ということになってまいります。ルールとしましては、重ね合わせての利用がビッグデータの世界では当然のこととして考えられておりますので、標準化されたライセンスあるいは世の中で標準的なライセンスと互換性を有するライセンスといったものを採用するのが非常に重要になってくるわけです。現在、内閣官房でライセンスあるいはルールの整備についての議論が重ねられているわけですけれども、データホルダーであります各府省としては、リスクを恐れるという雰囲気、傾向が強いようでございまして、なかなか標準化されたライセンスを採用することには抵抗があると伺っております。そのようなことで、オープンデータがなかなか進んでいかないというのは、G8でもオープンデータに関して日本の政府も約束をしているような状況でございますので、ゆゆしき事態だと考えております。 そうした点からしますと、今日は大臣・副大臣ともに既に退席されているわけでございますけれども、ぜひ政治的なリーダーシップを持って、オープンデータ戦略を推進するような形を整えていただけないものかと私は考えております。 それから、もう一点、クラウドビジネスの環境整備、そして、クリエーターへの適切な対価還元ということでございますが、これは先ほど宮川委員からもお話がございましたように、クラウドビジネスはユーザーの利益・利便性を飛躍的に高めるものでございますので、ぜひともこれを推進する形での環境整備を進めていただきたい。議論の中では、ともすれば権利者団体とクラウドビジネス提供者、あるいは機器メーカーの対立の構図で議論が進んでいくことが多いわけでございますけれども、ぜひとも利用者、エンドユーザーですとか、一般消費者の声も適切に反映されるような議論の場にしていただきたいと思っております。 もう一点、クラウドビジネスの環境整備とあわせた形でクリエーターへの適切な対価還元ということも議論されることになっておりますけれども、ここで言うクリエーターというのが、果たしてどのような主体を想定しているのか。これは論者によってかなり違っているように思われるわけです。経済的にビジネスを回していく主体としての権利者をベースに考えるのか、それとも現実に現場で個々のコンテンツを制作している個人のクリエーターを中心に考えるのか、それぞれの議論の場において多少違いがあるように思われますので、このあたりクリエーターとしてどのような主体を想定するのかを明確にしながら議論をしていっていただきたいと考えております。 以上です。 ○中村座長 では、竹宮委員、お願いします。 ○竹宮委員 とにかくデジタル化ということからすべてのアーカイブにしても、クラウドサービスにしても、すべてがオープン化ということにつながるかと思います。電子書籍に関することで私どもは一番関係があるわけですけれども、今言われていることは各出版社との出版権契約という形で、まずそれを推進していくような形になっているわけですけれども、このプロジェクトにおいて最終目標というのはどこなのかをできるだけ早く策定して、例えば、ジャパンコンテンツというようなまとまりでのポータルサイトをつくることが目標なのであれば、すべての出版社と出版契約している人も、あるいはほかのいろいろな電子書籍等に自分の作品を流している人も、すべてがどこでどうダウンロードしてもみんな同じ形で収入が入るというふうに設定してもらえれば、一番このプロジェクトは進みやすくなるのではないかと思います。 まず最終的理想型というのを求めて、そこから逆算的に何をするべきなのかを決めていかないと、なかなか決まらないまま、こうするべきだということばかりで進んでいくのではないかと思うので、そこをできるだけ見えるようにしていただきたいなと思っております。 ○中村座長 ありがとうございました。 時間が迫ってまいりました。最後に発言されたい方はお二方。では、野口委員、お願いします。 ○野口委員 簡単に。先ほどアーカイブと孤児著作物の関係で、大変重要な御指摘が瀬尾委員からあったと思うのですけれども、文化庁さんの資料では、諸外国の制度の動向も踏まえると言いつつ、大きな方向性としては今の裁定制度をより使いやすくするという方向性で検討されているようです。しかし、例えば、ヨーロッパであれば1人が相当の調査をすれば、それについて2人目、3人目が同じ調査を しなくていいという第三者効がある点、事前に補償金を積む必要がなく権利者が出てきたときに後から払えばよい点、営利目的利用をしてもその利益がさらにアーカイブ事業への再投資に使われる限りは認められる点などが、一歩も二歩も日本の裁定制度より先に進んでいると思います。したがって、日本も本当に裁定制度を見直すという方向性で十分なのかというところを、もう少し根本的に議論していただきたいなという気持ちがあります。 孤児著作物については、私が昨年、一度資料を提出させていただいて議論させていただいたように記憶しているのですけれども、文化庁の委員会で具体的にこのアジェンダを取り上げるとなったときに、そこの問題意識が余り明確に委員の先生方に伝わっていないようなところもあるような気がして、何で数年前に裁定制度を見直したのに、またやるのでしょうかみたいな質問が委員から出てしまう状況になっているように拝見するので、そのあたりは背景と目的意識と議論をもう少し明確化していただけると、もっと前に進むのかなと思いました。 ○中村座長 奥山委員、お願いします。 ○奥山委員 今の野口委員の意見と全く重なってしまうのですが、権利処理をずっとこれまで議論してきて、裁定制度をいじるだけか、というところもございまして、これだけデジタル化が進んでいる中で、早く立法するなり規則をつくるなりどんどん先へ進めていきたいと思います。 もう一点、発表者の方々はいなくなってしまったのですけれども、例えば、今日いただいた資料2の各施策の進捗状況2のところの4ページ、そのほかにも5ページもそうなのですけれども、一見すると文科省、経産省で同じようなことについて検討されているようで、これは第三者的に見ると結論が見えているような気もするのですが、これはどこがすり合わせるのかちょっとはっきりしていないなと思いまして、それぞれの研究結果をどこですり合わせるのか、よく考えていただきたいと思います。それは5ページのビッグデータの活用でも同じように見受けますので、そこはよろしくお願いしたいと思います。 以上です。ありがとうございます。 ○中村座長 どうもありがとうございました。 予定の時間を若干過ぎましたので、本日の会合はここで閉会したいと思います。まだまだ皆さん言い足りないことがあろうかと思います。この3つのアジェンダについて追加的なコメント等がありましたら、ぜひ事務局までお届けいただければと思います。 最後に、次の会合について事務局から連絡をお願いします。 ○田口参事官 次回の委員会は、引き続きコンテンツ分野の会合を予定しておりまして、12月12日木曜日、14時から。本日と同じ、この合同庁舎4号館の部屋は変わるのですけれども、6階の620会議室にて開催いたします。 ○中村座長 では、閉会いたします。どうもありがとうございました。 |