検証・評価・企画委員会(第4回)日 時:平成26年11月26日(水)13:00〜15:00 場 所:中央合同庁舎4号館1階 123会議室 出席者:
本日は、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。 本日は、「イノベーション促進に向けた知財政策」というテーマの下、知的財産政策ビジョンの検証について議論を行うこととしております。 なお、本日、荒井委員、角川委員、松本委員、山田委員につきましては、所用のため御欠席されておられます。 日覺委員及び長谷川委員も本日は御所用のため欠席されておりますけれども、日覺委員の代理で吉沢浩明様、長谷川委員の代理で奥村洋一様に参考人として出席していただいています。 あと、前田委員が少し遅れて来られるということでございます。 まず、委員会開催に先立って、知財事務局長から御挨拶をいただきたいと存じます。 横尾局長、お願いいたします。 ○横尾局長 知財の事務局長の横尾でございます。 今日は、雨の中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。 最初におわびを申し上げなければいけないのですが、御案内のとおり、先週金曜日に衆議院の解散がございまして、事実上の選挙戦ということで、大臣以下、政務、今日は誰も出席できないということでございますので、おわび申し上げたいと思います。 安倍政権の重要課題のテーマが地方の創生でございまして、今日のテーマは、地方・中小企業の知財武装をどうしていくかということと、産学官連携も多くの問題は地方における産学官連携の問題ではないかなと思っております。そういう意味では、地方の問題というのが今日の大きいテーマではないかなと思っている次第でございます。 前回同様、各省から知財計画2014の取組状況について説明をしてもらいますが、是非委員の皆様方には批判的な検証をいただきたいと思っております。 恐らく3つありまして、1つは、方向性が妥当であるということであれば、その後押し、場合によっては進捗が遅いということであれば、加速をすべきだというお話をいただければと思います。第2に、方向性がもし妥当でないということであれば、問題点の御指摘をいただきたいですし、連携不足、あるいは複数省庁がそれぞれ整合していないということがあれば、その点も御指摘をいただきたいと思います。第3に、場合によっては、今日説明にない施策が本当は重要なのだということであれば、それも御指摘をいただきたいと思います。 あるべき姿を目指して、是非建設的かつ率直な御意見を賜りたいと思いますし、前回同様プロボカティブに、事務局、各省庁とより双方向性のある議論を熱くしていきたいと思いますので、渡部先生のイニシアティブの下、是非よろしくお願いをしたいと思います。 ○渡部座長 ありがとうございました。 それでは、知財財産政策ビジョンの検証について、議論に移らせていただきたいと存じます。 まずは事務局から配付資料の確認をお願いいたします。 ○北村参事官 何枚かめくっていただきますと、右上に資料1と書いた論点ペーパーがまずございます。 続きまして、資料2、3、いずれも特許庁の提出資料でございます。 続いて、資料4が農林水産省の提出資料。 資料5が文部科学省の提出資料です。 資料6、7が経済産業省の提出資料。資料7は表紙と別添1、別添2とございます。 続きまして、資料8が本日御欠席の荒井委員提出資料。 資料9が相澤委員御提出の資料です。 最後に事務局からの参考資料を付けてございます。 以上です。 ○渡部座長 よろしいでしょうか。 それでは、知的財産政策ビジョンの検証という形で進めさせていただきたいと存じます。 検証に先立ち、事務局から「イノベーション促進に向けた知財政策」に関する論点についての説明をお願いいたします。 ○北村参事官 では、資料1に基づきまして、「イノベーション促進に向けた知財政策」に関する論点について御説明を申し上げます。 まず1ポツ、本日の2つのテーマの1番目でございます「地方・中小企業等支援」でございます。第1回の委員会等で有識者の皆様からいただきました主な御意見を列挙してございます。 順に御紹介いたしますと、まず、中小企業に対する支援について、内容の充実をすべきという御意見をいただいております。 海外進出に当たり、専門家へのアクセスとか資金が不十分であるとしたら、改善すべきという御意見。 中小企業が自ら訴訟を提起して権利活用を図ることのできる環境の整備が必要という御意見。 特許のみならず、意匠権、商標権も活用した総合的な知財戦略を考えるべしという御意見。 地方大学と中小企業が上手く連携できるように配慮すべきという御意見。 地方においては、中小企業と地方自治体の人財の知識が足りないために、大学を中心とした産学官連携が上手くいかないことがあるという御意見。 地方の中小企業にとって、地理的表示保護制度は良い制度なので、今後活用が望まれるという御意見をいただきました。 こういったところを踏まえて、事務局から主な論点として一案を提示させていただいております。 まず、地方創生に資する知財総合支援窓口の在り方はどのようにあるべきか。地方に関する知財の支援ということで、こちらの窓口が中心となっておりますので、こういったところを挙げさせていただいております。 2点目、海外進出のための更なる支援の在り方はどのようであるべきか。 3点目、知財を活用した融資の促進をどのように図るべきか。 4点目は、第2回と同様の論点ですが、中小企業の勝訴率が低い理由は何かという論点。 次は、地理的表示保護制度の導入に伴い、地域団体商標制度との違いを踏まえ、地域における両制度の活用促進をどう図るべきかという論点。 最後ですが、地方創生のために、地方の大学、自治体と中小企業の連携を促進するにはどうすべきか、という論点を一例として挙げさせていただいております。 続きまして、裏面ですが、2つ目の議題でございます産学官連携についてです。こちらも委員の皆様からいただきました主な御意見をまず御紹介いたします。 産学の間に意識のずれがあるのは当然ではあるが、一番大きいのは知識の格差があることという御意見をいただいております。 産学連携に携わる人材について、若者にとって魅力的に思える職業になるような支援。処遇を上げるとか任期を長くするとか、そういったお話ですけれども、そういった御意見をいただいております。 科学技術振興機構(JST)による知財のパッケージ化という取組がございますが、こちらは非常にメリットもある一方で、大学が自ら考えなくなるかもしれないという趣旨で、機能弱体化を招くおそれもあるのではないか、今後の運用を考えるべきという御意見をいただいております。 大学と企業を上手くつなげるべく、大学の産学連携本部とTLOの統合など、制度の効率化が必要ではないかという御意見。 産学連携の評価の指標ですけれども、特許の出願件数などではなくて、連携によって生み出される製品・サービスの内容とか売上げなどが重要ではないかという御意見。 国の研究開発プロジェクト、こちらはその活用を目指してやっておるわけですけれども、実は防衛特許が多いという御意見もいただいております。 共有特許について、日本ではその許諾等に全員の承諾が必要になっていく。これがハードルになっているという御意見もいただいております。 地方の大学と中小企業・ベンチャーが連携しやすい環境を作ることが重要という御意見をいただいております。 これらを踏まえまして、事務局から主な論点として一案を提示させていただいております。 まず、産学の意識のギャップを埋める、そして連携を推進するためにはどのようにすべきか、というのが1点。 いわゆる橋渡し人材をどのように確保・育成すべきか、という点。 知財活用促進に向けたJSTの取組について、どういった運用を期待すべきか、という点。 大学の産学連携本部とTLOにどういった役割を期待すべきか、という論点。 評価をどういった指標でやるのか、例えばライセンス収入とか技術移転数、移転先の属性、製品・サービスの内容、売上げ等、こういった点でございます。 日本版バイ・ドールの運用の見直しを今、行ってございますけれども、それがどうあるべきか、という点。 共有に係る特許権、いわゆる特許法73条の規定が妨げになっているという意見がありますけれども、これについてどのように考えるか、という論点。 強い大学発ベンチャーの創出を加速するための環境整備は何であろうか、という論点。 以上を一例として挙げさせていただいております。 こちらからの紹介は以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 本日のテーマは「イノベーション促進に向けた知財政策」ということでございますが、今、2つに分けて説明をしていただいたように、論点を地方・中小企業の活性化と産学官連携の強化という2つのアジェンダに分けて議論をさせていただきたいと存じます。 それでは、まず地方・中小企業の活性化について議論を進めさせていただきたいと存じます。 このアジェンダにつきまして、特許庁からそれぞれ取組の説明をお願いいたします。 ○松下特許庁普及支援課長 特許庁で、中小企業、地域の支援を担当しております松下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 私の方から資料2に沿って、知財総合支援窓口と金融機関との連携という2つに御説明をさせていただきたいと思います。時間の関係もありますので、簡単に説明をさせていただければと思っております。 まず、資料の1ページをめくっていただきますと、左側の図にありますとおり、皆さま御承知のとおり、特許出願件数に占める中小企業の割合というものは12%ということで、横ばいで推移しているところでございます。このような中小企業の知財活動につきましては、特許庁としても支援を強化すべく、下の黄色いところに書いておりますけれども、地域を元気にするという視点と、グローバルな展開を支援するという2つの視点から、27年度の概算要求においても大幅な予算の増額を要求させていただいているところでございます。 2ページ目に行きますと、正に地域を元気にするという今日のテーマの視点からの施策を書かせていただいております。 今日は1ポツ(1)、2ポツ(1)のところを後ほど説明させていただきますが、それ以外にも2ポツの(2)にありますとおり、中小企業において特許情報などをより使っていただくという視点からの施策というものも提案させていただいているところでございます。 3ページ目は、グローバル展開という視点からの施策について少し紹介させていただいております。事業展開前の情報収集段階、準備段階、更には実施段階ということで、一気通貫の知財支援を目指しているところでございます。 その意味で、例えば2ポツの(1)にございますとおり、外国出願補助金については増額を要求するとともに、地域ブランドに関する地域団体商標の場合には、全て補助の対象とするという予算要求をさせていただいております。 では、今日の宿題にいただいております第1点目、4ページ目、知財総合支援窓口について御説明させていただきます。窓口につきましては、皆さま御存じのとおり、知財の問題をワンストップで解決するということで47都道府県に設置させていただいております。 右側ですけれども、平成23年度から始めておりますが、当初10万件、24年度12万件、25年度15万件というふうに支援の件数は増えております。右の真ん中あたり、知財区分別に見ますと、やはり特許に関する相談というのが一番多くなっておりますが、続いて商標になっております。ただ、地方に行きますと、商標の出願の方が多い窓口というものもあるのが実情でございます。 では、窓口に来たときにどういうふうに支援をしていくのかというところですけれども、左側の真ん中あたりにある窓口担当者というのは、大企業の知財部のOBの方などですが、この方がまず中小企業の相談を受け、それで対応できる部分については対応させていただく。 右の真ん中の赤い枠のように、ただし、更に高度な専門性を要する相談につきましては、弁理士さん及び弁護士さんの協力なども得ながら相談に応じていくということにしております。 @のところに書かせていただいておりますけれども、今、週1回程度弁理士さん、また、月に1回程度弁護士さんを各窓口に配置しているところでございます。 Aにありますとおり、窓口で相談を受けるだけでなく、やはり現場の技術を見た方が良いといったような場合もありますので、そういう場合には訪問して支援をするということもできるようになっているところでございます。 もうちょっと違う切り口から相談の分析をしますと、5ページ目、知財のワンストップ相談といっても、今のところ出願関係の相談というのが多いというところでございます。例えば海外展開に関しては4%程度になっております。 そういうこともありまして、専門家さんとしては弁理士さんに一番御活躍いただいている、御協力いただいているというのが現状でございます。 6ページ目には参考までに地域ごと、窓口ごとの支援件数についての推移なども書かせていただいておりますけれども、やはり愛知、大阪といったような都心が多いということになっております。 この知財総合支援窓口は、これまでも少しずつ試行錯誤でブラッシュアップをしておりますけれども、例えば7ページ目を見ていただければと思います。23年の4月にできてから、24年度にはデザイン、意匠というところに焦点を当てましてそういう支援を充実させました。 また、25年度につきましては海外という視点からの支援を充実させていただいております。 また、今年度は2つのことをやらせていただいています。 1点目は、出願のみならず、経営にもっと密着したような相談というものに幅を広げていくためにも、専門家をもっと活用させていただければというふうに思っておりまして、先ほど御紹介させていただきましたとおり、日本弁理士会や弁護士知財ネットの御協力も得ながら窓口に専門家を配置させていただいております。 また、7ページの一番下に書かせていただいていますけれども、相談は、待っていてもなかなか来ないというところも現状でございます。そういう意味では、まだ窓口を利用したことのない企業を訪問する。我々は「掘り起こし活動」と言っていますが、そういう活動というものも今年度から強化をさせていただいております。 8ページ目ですけれども、窓口については期待が高いがゆえに様々な御指摘もいただいております。 1ポツのところに、今年7月に特許庁長官の研究会でまとめた報告書を参考までに載せさせていただいておりますが、例えば1ポツの(2)にありますとおり、もっと中央で情報を収集、集約し、それをフィードバックする、そういう機能を充実させるべきではないかといったことでありますとか、(3)にありますとおり、もっとオープン・アンド・クローズ戦略の支援を強化する。そのためには専門家を一層活用するといったような御指摘をいただいております。 (4)としましては、窓口は47都道府県57カ所にありますけれども、どうしても1つの窓口で県全体をカバーできないということもありますので、巡回型でありますとかサテライト的なものを含めた、そういう立地面での柔軟性を確保するようにという御指摘をいただいたところでございます。 それを踏まえ、とりあえず27年度におきましては、2ポツの(1)にありますとおり、今までに加えて一層機能を強化させていきたい。具体的には(2)の@にありますが、そういう専門家の方々の配置を全体として倍増していく。営業秘密でありますとか、例えば職務発明でありますとか、多様な相談への対応を強化していくということを考えております。 Aとして、まだ窓口を利用したことがないけれども、優れた技術を持っていて、知財戦略が経営に有効に働くのではないかというような企業に対する裾野拡大活動というものも続けていきたい。 Bにありますとおり、先ほど中央でもうちょっときっちりと情報を収集、集約すべきではないかという指摘がありましたので、INPITのリソースを活用して総合調整的な面での強化、相談事業、特許情報、人材育成といった様々な既存の事業と連携させたような形でこの窓口というものを位置づけられないかということで、現在見直しに向けた方向性を検討しているところでございます。 続きまして、第2点目の宿題としていただいております金融機関との関係でございます。 9ページの資料の一番上にありますとおり、特許庁としましては、金融機関というものに関して言いますと、正に知財を重視した融資をしてほしいという側面が1点。 2番目としては、それ以外にも金融機関は中小企業とすごく接点の多いような機関でございますので、知財の重要性の普及啓発活動に是非活用できないか、という観点から現在活動を進めております。 左側の1本目の柱につきましては知財の金融の支援ということで、融資の参考となるような「知財ビジネス評価書」でありますとか「知的資産経営報告書」を作成して、これに基づいて金融機関が融資につなげられないかなということで、モデル的に現在、例えば「ビジネス評価書」については50社、「知的資産経営報告書」については20社程度の支援を検討しております。 その他、国内外の調査を行おうということで、今年度取り組んでおります。 また、右側、2本目の柱ですけれども、金融機関の方に知財をもっと分かっていただくということで、特許庁の職員を様々な金融機関に派遣して、セミナーや説明会というものをやらせていただいております。 その中で、先ほどの論点にもありましたけれども、知財を活用した金融ということについては、10ページ目にこれまでの調査を少し書かせていただいておりますが、一番上に書いておりますとおり、中小企業サイドから見ると、知的財産と言いながら、財産として知財を見ていただけない。逆に権利取得であるとか維持費用が不要なコストであるというふうにみなされるというような指摘も受けております。そういうこともあり、知財を重視した形での資金調達というものは難しい状況にあります。 しかしながら、11ページ、12ページに書かせていただいていますけれども、最近、知財を重視したような形での融資に取り組んでいただいているところも増えております。 11ページ目が第一のパターンでございますが、知財であるとか技術・ノウハウを評価して融資につなげている例ということでは、上の方に兵庫の産業活性化センターの取組を書かせていただいております。これは公的機関である中小企業を支援するセンターが知財を活用したビジネスの評価書の作成を支援して、信用金庫などが実際に融資に結び付けるという取組を行っているということでございます。融資実績は11ページの右側に書かせていただいております。 これは公的な機関が関与している例ですけれども、それ以外にも下の方に大分の豊和銀行さん、千葉県の千葉銀行さんの例を書かせていただいています。この例につきましては、知財を活用したビジネスを価格的に評価して、豊和銀行さんの場合にはその評価額の50%を上限として融資する。更にその場合には知財を担保にとるといったような取組でございます。 他方で、千葉銀行さんの場合にも同じように価格的に評価をしますけれども、担保としてとるのではなく、非常に知財を重視した形での融資を行っているという事例でございます。 もう一つのパターンが12ページ目にあります、「知的資産経営報告書」。先ほどの11ページ目が個々の知財もしくは個々の知財の組合せのビジネスを評価した形での評価書ですが、こちらの方は中小企業の知的資産全体を評価するということで、中小機構などが中心にこれまでも取り組んできているものでございます。実際に兵庫でありますとか埼玉の信用金庫さんの例を上の方に書かせていただいております。 更に、京都府の取組というものが注目できるものかなということで、ここに載せさせていただいておりますけれども、そういう「知的資産経営報告書」を見て、有識者の方が評価・認証して、ここは良いといったところについては、そのメリットとして融資というものにつなげていくというような取組を行っております。 このような例が最近増えつつあり、知財を活用した金融に対する取組というのは少しずつではありますが、進んでいるというふうに感じているところでございます。 13ページ目、今後ですけれども、我々としましては、今年度はどちらかというと既存の予算を寄せ集めた形でいろんな事業を展開しましたけれども、来年度、できれば新規予算要求ということで、知財を活用した金融の好事例の全国展開を図りたいと思っております。特許庁の視点から言いますと、正にこういうふうに知財が資金調達にもつながるというところが知財の裾野の拡大につながると考えているところでございます。 具体的な取組(1)(2)は、先ほどのモデル事例でも少し申し上げましたけれども、今やられているような取組を他の金融機関の皆様にも経験いただくということで、評価書の作成支援をやっていきたいと思っております。 更に、(3)のところですけれども、少しずつではありますが、知財を重視した融資というものが増えておりますので、シンポジウムといった形で多くの方に知っていただいたり、また、金融機関の方々がどのようなことを望んでいるか、また、それに対してどう対応したら良いかというようなマニュアルの作成なども来年度は取り組んでいきたいと思っております。 簡単ではございますけれども、私からの説明は以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 それでは、地域団体商標の方を商標課から。 ○金子特許庁商標制度企画室長 引き続きまして、地域団体商標制度の概況について御説明させていただきます。私は、特許庁商標課商標制度企画室、室長をしております金子と申します。よろしくお願いいたします。 お手元の資料3について御説明させていただきます。まず、地域団体商標制度の概要でございますが、地域団体商標制度というものは、地域の産品等についての事業者の信用の維持を図り、地域ブランドの保護による我が国の産業競争力の強化と地域経済の活性化を目的として、いわゆる地域ブランドというものを用いられることが多い地域の名称プラス商品名などから成る、本来商標法の中では原則登録できない文字商標について、特定の要件の下、登録を可能にするというものでございまして、平成18年4月1日から施行されているものでございます。 主な登録要件につきましては、そこにある4つの要件がございまして、商標の構成、地域名プラス商品名、若しくは特産とか名産などの文字を付与したもの等があります。 次に登録主体でございますが、農協などの事業協同組合、それから後ほど詳しく説明しますが、商工会、商工会議所、特定非営利活動法人についても本年8月1日施行の改正により登録主体として追加されております。 周知性については、商標が需要者の間に広く認識されていることが必要です。 周知性の要件につきましては、今、商標審査基準というものがございまして、これは例えば、「隣接都道府県に及ぶ程度の需要者の認識が必要」とありますけれども、この周知性の要件につきましては、周知性の判断が厳格にされ過ぎているという指摘を踏まえて、現在、特許庁では商標審査基準ワーキンググループ、正に本日も行われるのですが、そのワーキンググループにおいて、商品又は役務の特性によって生産地の隣接都道府県の需要者に認識されていることを要しない場合もあるということを考えて、判断基準をより具体化、明確化する方向で議論が進んでいるところでございます。 2ページ目でございます。これは本年8月1日から施行されているものでございますが、地域団体商標の主体要件の拡充というものです。これまでは、地域団体商標を出願できる者というのは、これまで農業協同組合とか漁業協同組合、その他の事業協同組合等だったのですが、実際に地域で元気に活動している、普及に中心的に取り組んでいるという者が農業協同組合や事業協同組合だけではなくて、例えば商工会とか商工会議所、特定非営利活動法人いわゆるNPO法人等である場合もあるということで、結果的にこれらの団体を出願人として認めないということになりますと、地域ブランドの名称の商標権としての保護が困難、又は遅れてしまうのではないかということで、特に近年、新たな地域ブランドとしてご当地グルメなどが知られてきており、伝統的な地域ブランドとは異なって、これらを束ねる主体というのは、事業協同組合の他に商工会、商工会議所、特定非営利活動法人等の場合もあるということから、商標法の改正を行って、本年8月1日からこれらの商工会、商工会議所、NPO法人にも出願できるようにしているところでございます。 次のページに行きまして、平成26年10月31日までに登録された商標ということでございますが、出願自体は1,075件、そのうちの登録件数に関しては564件ございます。特に近畿138件。近畿の中でも京都が非常に多くございまして、その次に関東甲信越、それから東海ということになってございます。 次の4ページ目に行きまして、地域団体商標登録による効果でございます。これは平成24年7月から8月にかけて地域団体商標の権利を取得している者に対して行ったアンケート結果でございます。その中でも地域団体商標権者へのアンケート調査によると、「商品・サービスのPRができた」「地域全体に対するイメージが良くなった」「地域における団体構成員のモチベーションが向上した」など、商品イメージのみならず、地域のイメージの向上とか、地域での取組についてのモチベーションアップにも貢献しているところでございます。 特許庁では、地域団体商標の普及活動としてこの他に「地域団体商標」という冊子、パンフレットを作って商工会等に配布しているところでございます。また、専門家は地域に出張していろいろな相談に乗るという事業も展開しているところでございます。 以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 それでは、地理的表示について、農水省さん、お願いします。 ○坂農林水産省新事業創出課長 それでは、続きまして、地理的表示法について御説明させていただきます。私は農林水産省で地理的表示保護制度を担当しております新事業創出課長の坂と申します。よろしくお願いいたします。 地理的表示保護制度は、元々ワインなどの例えばシャンパーニュとかボルドーとか、そういった名称を保護するためにヨーロッパで発達した制度でございまして、お酒以外の農林水産物・食品につきましては、長らく我が国ではそれを保護する制度がございませんでした。先の通常国会におきまして地理的表示法をお作りいただきまして、来年6月を目途に制度を発足させるということになっております。本日、資料に基づきまして、地理的表示保護制度の概要、それと新しい法律の概要の2点について御説明をさせていただきます。 それでは、1ページをご覧ください。まず、地理的表示はどういうものかというものでございます。端的に言いますと、何か名前がついた商品がありまして、その名前がその産地を特定できるような名称であること、さらにその商品の特性というのがその産地の特徴に根差しているということが必要となります。 具体的にこの干し柿の例で言いますと、例えば「東京干し柿」という名前がついている場合、図の青のところで、例えば他よりも甘いとか、評判が良いとか、おいしいとか、そういったいろんな特性がある場合に、緑の東京という産地に根差した特性が青の特性と結びついている場合、例えば東京干し柿に使っている柿というのが多摩地方でしかできないとか、気候風土と結びついているとか、多摩地方で何百年も作り続けてきたといった人的な特性、こういった関係が成立する場合にのみその名称を知的財産として保護するという仕組みでございます。 1ページの下のところでございますけれども、ヨーロッパで発達いたしましたが、近年、EUが自由貿易交渉をテコにその拡大を図っておりまして、現在100カ国以上の国でそれに対する保護が与えられているという状況でございます。 続きまして、2ページにヨーロッパの地理的表示保護の対象品目を簡単に載せさせていただいております。お酒以外で多いのは乳製品と肉類・加工品の2点でございます。 乳製品などでは例えばカマンベールチーズ。カマンベール自体は保護されていないわけですけれども、ノルマンディーで作られたカマンベールチーズという意味のカマンベール・ドゥ・ノルマンディーというのは、地理的表示として保護されているわけでございます。 同様に、その右側でございますけれども、いわゆるパルマハム。パルマ産の生ハムを意味しますプロシュート・ディ・パルマについても地理的表示として保護されております。 その他に野菜・果物でございますとか水産物、こういったものも保護されているところでございます。 続きまして、3ページでございます。先ほど成立いたしました地理的表示法、正式には「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」と申します。この概要について申し上げます。 その産品の名前、いわゆる地域ブランドに類するものでございますが、それを知的財産として保護するために2つ条件がございます。先ほど1ページ目でご覧いただきました干し柿のような関係を担保するために、まずどのような地域で、どういう方法で、どのような品質のものを作るか、こういったものを1つの書類、「明細書」と呼んでおりますが、明細書というものにまとめていただいて、その方法について、その産地での生産・加工に携わる方々の合意を得ていただく必要がございます。それが1点でございます。 その要件を満たしたものについてのみ地理的表示を付することが認められるという仕組みでございますので、その品質を保つために、生産業者、加工業者の皆様が自らその品質を管理する、それを担保するための仕組みを作っていただく、この2点が必要になります。 なお、品質管理につきましては、自らチェックしていただく他に、国からチェックをして、その内容を担保するという仕組みになっております。 図でいきますと、黒の矢印、登録申請の際にその明細書と品質管理の業務方法書のようなもの、この2点を添えて申請をしていただくということになります。 その申請を受けまして、農林水産省におきまして内容を審査し、学識経験者の御意見もお聞きしながら、登録の可否を判断するということでございます。 その際に、取締りでございますけれども、これは通常の知的財産権の体裁をとっておりませんで、知的財産ではございますが、その表示を規制によって保護するという仕組みをとっております。 具体的に違って参りますのが、不正使用があった場合の対応でございまして、グレーの矢印の部分になります。通常不正使用があった場合は、知的財産権に基づいて、訴訟などによってそれを排除していただくことが必要になりますけれども、地理的表示の場合は、不正使用を認知した場合、農林水産大臣に通報していただくことによって、国が不正な使用を規制するという形で取締りを行うという仕組みをとっております。これによりまして、通常このような産品を作っていらっしゃいますのが、一次産品でございますので、農林水産業者、食品などの加工業者の皆様でございますけれども、比較的資金に余裕がない場合でも、知的財産を容易に守ることができるという特性がございます。 これによって、次の4ページでございますが、制度の目標といたしまして、まず品質が公的に保証されたものについて、ブランドを作る仕組みでございますので、ブランドの保護、活用によって生産者の利益を増大させることができるという点が1点挙げられます。 これもヨーロッパの例で恐縮でございますけれども、フランスブレス地方、リヨンの東で生産されておりますフランス一番の銘柄でございますブレス鶏につきましては、通常の鶏肉の4倍の値段で取引されておりまして、その名前についても法的に保護されている。そういった例がございます。 その隣はピレネー地方の山村でございますけれども、エスプレットの唐辛子。これにつきましても、非常に寒村でございましたが、資源の有用性に着目して法的な保護を与えた結果、生産も増大するし、生産の場を含めて観光客が増加するなど地域振興にも資する、そういった効果がヨーロッパでは検証されておるところでございます。 このような品質を公的に担保する制度ができることによりまして、消費者の方々にとっても利益が保護される、信頼が保護されるといった話。ひいては地域発でその地域の特産品を例えば海外市場にも、品質が公的に担保された仕組みを持ちまして輸出を促進すること。これによって更に地域産業の活性化にも資する。このような成果が得られるのではないかと思って、現在施行の準備を進めているところでございます。 以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 それでは、前半のアジェンダについて、今から20分ぐらい委員の皆さまから御意見をいただきたいと存じます。いかがでしょうか。 ごめんなさい。荒井委員が今日御欠席ですけれども、御意見を出していただいていますので、事務局から御紹介いただければと思います。 ○北村参事官 資料8の荒井委員の提出資料について、簡単に項目だけ御紹介させていただきます。 1枚紙ですが、「地域・中小企業の活性化に向けて必要な施策(意見)」ということでいただいております。 第一に、「特許料金等の減免制度の拡充について」ということで、従業員300人以下の中小企業に一律に利用できるような要件緩和ということでいただいております。 裏面ですが、「2.知財総合支援窓口について」「3.営業秘密の保護強化について」「4.職務発明制度の見直しについて」「5.早期審査について」、そちらに記載の御意見をいただいているところです。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 それでは、引き続きいかがでしょうか。では、相澤委員。 ○相澤委員 中小企業が意匠を活用するためには、意匠制度の基本が大正時代の法律のままになっていますので、これは改善する必要があると思います。1物品1意匠になっているのは、これは多角的な出願をするのには使い難い制度になっているので、これは中小企業のためにも改正することは必要だと思います。 それから、金融ですが、これは政府系金融機関がどれぐらいお金を貸しているのかということが一つの問題ですし、地方の金融機関が地方の中小企業にお金を貸すことになると、金融庁の地方金融機関に対する規制でどのように評価されるかということが非常に大きいのではないかと思います。融資をしようと思っても融資ができないということもあり得るので、規制への配慮も必要だと思います。 地域団体商標というのは、地理的表示と違って、品質をどう担保するのかという問題があります。地域団体商標について、品質は権利者が自由にできるということになれば、粗悪品で利益を得る人に対する対処に問題があります。地理的表示の制度というのは、その産地でも、品質の基準を満たさない製品を売る人も取り締まるということに意味があります。そして、地理的表示制度を工業品についても導入する必要があると思います。 中小企業の侵害訴訟は、資産としての評価にも関わりますが、勝訴率が低いだけではなくて、損害賠償も少ないので、権利の実現に問題が生じます。中小企業で知的財産の専門家を代理人とするためには、十分な損害賠償が必要になると思います。 以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 どなたかお手を挙げていましたね。では、奥山委員。 ○奥山委員 いろんなテーマが入っているのですが、最初に金融機関、融資のお話です。これは地方銀行や信金の取組について調べていただいて大変ありがたいと思っていますが、やはり大銀行ではなくて、地元の中小企業に密着している銀行に働き掛けることが非常に大事だということを地方を回っていろいろ見聞きすると感じております。 もう一つは、地方自治体への働き掛けというのも大事ではないかなと思っております。各地方自治体にはちゃんと知財の担当の方がいらっしゃいますので、そういう方々も巻き込んで、経産局も交えて一層盛り上げていただきたいと思います。 地理的表示制度が導入されたということで、大変素晴らしいことだと思います。地域団体商標は2006年から始まっていますが、そのときには日本弁理士会も協力しましたが、大変なキャンペーンをやりまして、最大の効果は商標というものが地域の町興しに使えるという認識が高まったということだと思います。地理的表示にも同じようなことが言えると思いますので、ここ2〜3年で集中的に啓発活動をやるべきだと思いますし、それに際しては弁理士とか弁護士とか、資格者のリソースを使うということも是非検討していただきたいと思います。 訴訟のこともちょっとだけ資料1に触れられているのですが、権利が潰れ難い、損害賠償の額が少なくともコスト以上は認められるという状況を作り上げないと、やはり中小企業が権利活用を考えることはできないと思っております。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 では、山本委員、お願いします。 ○山本委員 まず、前提として、これは地方の大学と中小企業のコラボレーションについては触れられていないですが、地域の大学と地方の企業という発想自体が非常に内向きで、私たちは青森の会社にも秋田の会社にも山口の会社にもライセンスしていますが、企業サイドに立ったら、その企業に必要な技術は日本中の大学、あるいは海外の大学の技術だって集めるべきであって、もちろん地元と地元の連携を否定しているわけではなく、それができればベストですが、残念ながら知財総合支援窓口からこんな技術はないかと聞かれることは過去に1件もないです。ただ、地方の企業からこんな技術がないかというのは毎週のようにあるということを考えると、そこのアクティビティーをもっと広げていただいた方が良いのではないかというのが1点。 もう1点が、地理的表示法についてです。例えば地域団体商標で言うと、市田柿というのはすごく有名です。2カ月で2億5,000万円売れる干し柿です。私たちは、ロボットを使ってそれを5億にできないかという相談を受けているのですが、これは地域団体商標を取っています。では、これが地理的表示法をという時にはどう選択するのかということがよく分からなかったのと、行政が取り締まってくれるのですが、市田柿に関して言えば、中国産市田柿などというのがもう流通しています。わけが分からないです。市田というのは地名ですから、中国産市田柿というのは矛盾しているのですが、これなども行政が取り締まっていただけるということなのですか。地域団体商標と地理的表示の部分が、両方取った方が良いのか、選んだ方が良いのか、ケース・バイ・ケースなのかというのがよく理解できていないので、教えていただければと思います。 ○渡部座長 分かりました。では、最後に伺うということで。 では、御意見を先に。妹尾委員、どうぞ。 ○妹尾委員 特許庁の方に話を戻します。窓口の強化が行われる。これは大変良いことだと思っているので、大いに進めて欲しいとは思います。ただし、毎回申し上げているようなことで恐縮なのですが、現場の実態を聞いていて、それから中小企業の方々の話を聞くと、どうしても窓口へ行くと、「特許を取れ、特許を取れ」としか言わないというのですよ。これではまずいわけです。要するに、それが例外なのか、どの程度なのかというのは全部調査をしているわけではないので一般化しにくいのですが、窓口担当者のトレーニングはどうされているのかなと。つまり、窓口トレーニングがしっかりされている良い人に当たったら、ビジネスの指導をする中で知財マネジメントを指導してもらえるけれども、そうでない人に当たったら、何でもかんでも特許を取れと言われるだけの話みたいなことになってしまいかねません。それはまずいので、この窓口をやる方々、これは弁理士の先生や弁護士の先生で、立派な方々だろうとは思いますけれども、でも、窓口業務のある程度のレベルの合わせとか、レベルアップということも同時に図っていただけると良いのだろうなと思います。現場の声を聞くと、そういうのは少なからず耳に入るので、その辺のところが今後この強化策が効果を出すかどうかという決め手になるのだろうと思います。 もう一つが、金融の方々へのセミナーを開くというのも非常に結構なことだと思うのですけれども、地方自治体の商工部とか、職員への指導といいますか、支援というか、教育も充実させていただいた方が良いと思います。というのは、日頃接している方々は、地方自治体の市の職員とか県の職員の方々なのですが、その方々がある程度の知識がないと、それが上手くいかない。 もう一つ、地方で言えば、中小機構とかそういうところの職員の方は、財務諸表の指導と技術の指導はできるのですけれども、知財マネジメントの指導はほとんど慣れていらっしゃらない。慣れていないから、そういう話も出ないというのが実態ではないかと思います。調査を昨年、一昨年していた限りでは、そういうことがかなり言えると思います。 なので、この窓口を大いに進めることも結構なのですけれども、中身の質の向上、充実を是非図っていただくと、より効果が上がるのではないかと思います。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 杉村委員が手を挙げていますね。 ○杉村委員 資料2に基づき特許庁の方から詳細な御説明をいただき、ありがとうございました。 この資料を見ますと、支援件数の増加も著しくありますし、各都道府県の知財総合支援窓口担当者が頑張っている様子がうかがえると思います。知財総合支援窓口の担当者の活動が、徐々にではありますけれども、確実に地域に根差してきているのではないかと思います。 今後は営業秘密等も強化の方向に入ると思いますので、地域における知財のワンストップサービスの充実が更に図れるように、弁理士、弁護士、中小企業診断士等の専門家の活用を更に進めるとともに、専門家同士の連携も強化し活動の認知度を向上させるために広報活動を商工会議所等と連携しながら活発に展開すべきであると思っております。 それから、金融機関の意識改革の点でございますが、昨年度の中小・ベンチャー企業等のタスクフォース会議の中で、中小企業の方から「特許出願などのお金かけても、銀行からは企業内部資金の留保が減るだけで、企業資産としてほとんど評価されない」というような御指摘もあったかと思います。企業にとって銀行から信頼されることは極めて重要なことですので、銀行側の意識改革について、より積極的に取り組んでいっていただきたいと思います。 先ほど奥山委員の方からも御意見がございましたが、銀行、特に地域の信金、そういう地域に根差した金融機関側の意識改革をもっと積極的に促していっていただいて、知財を活用する企業を積極的に評価するような風土を構築していくべきであると思います。 特許庁資料2の4ページを見ますと、知財総合支援窓口の御担当者の方との連携機関に、地方の信金等の銀行機関が含まれておりませんので、信金等の銀行機関を連携機関に加えるとともに、これらの連携機関と知財専門家との協働関係も構築し、知財総合支援窓口、知財専門家、連携機関のトライアングル関係の仕組みを構築して活用すべきであると考えます。 地理的表示と地域団体商標の点でございますが、地域のブランド作りは、今後、世界をマーケットにするブランド戦略であることが必要だと思っております。例えば、「宇治茶」などの地名を米国で保護するためには商標制度の活用が必要であり、また、中国とか欧州ですと、地理的表示で保護を受けることが必要です。従って、地域ブランドの作り方を失敗しないためには、海外戦略も念頭に置いて、制度の正しい知識、活用方法を正確かつ迅速に、そしてタイムリーに伝えることが不可欠であると思いますので、全国的なセミナーや説明会を積極的に展開していくべきであると思います。 最後に、中小企業の訴訟における勝訴率に関する議論については前回の委員会のときにペーパーを出させていただきました。中小企業の勝訴率の問題は、大企業と中小企業の間では、「企業内での知財紛争に対する対応能力」や「訴訟にかける費用の負担能力」に歴然とした差があることが大きな原因ではないかと考えられます。中小企業側の背景事情を調査・分析していただきまして、知財専門家によるサポート体制の強化とか、印紙代等の財政支援の施策を積極的に検討すべきでないかと考えております。 以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 では、あと2人、宮川委員と長澤委員までにさせていただきます。 ○宮川委員 もし本当に中小企業の勝訴率が低いということであれば、杉村委員がおっしゃったように、中小企業内の担当者の能力の問題、あるいは資金力の問題というのはもちろんあるかと思いますが、そもそも中小企業の方がお持ちの特許権自体が訴訟という場での権利行使に耐え得るようなものになっていない場合が多いのではないかということも感じております。元々明細書の書き方が悪いか、あるいは内容としては無効になってしまうようなものなのかもしれません。中小企業の方は、ここにいらっしゃる奥山先生や杉村先生のような優秀な弁理士さんのアドバイスを受けられる方ばかりではなく、予算が少なくて良いアドバイスが得られないということで、権利自体も権利化する際にはなかなか難しい問題があるのではないかと思っております。 そういう意味では、奥山先生や杉村先生がおっしゃっていたように、弁護士、弁理士も含めた知財の専門家というものが権利化の段階から、そして訴訟を提起するかどうかという判断の段階においてもサポートできるように、知財総合支援窓口というものを更に充実していくように私どもも協力していきたいと思っております。 以上です ○渡部座長 ありがとうございました。 どうぞ。 ○長澤委員 妹尾委員が発言したことのサポートになるかもしれませんが、私共の会社も関係会社を多く持っていまして、そこには1人、2人の特許部員がいる部門やM&Aを行った場合、知財の文化に全くなじまない部門を訪問することが多くございます。その経験から二点程話をさせていただきます。妹尾先生もおっしゃっていましたが、そうした関係会社を訪問した後、気の利かない本社スタッフを派遣してしまいますと、特許をどんどん出しなさい、挙句の果てには第三者特許はちゃんと調査したのですかという指示をしてしまうことになります。ところが、その会社の経営の実態を見てみると、開発のスピードをコアコンピタンスとし、それで勝負している会社だった場合、知財活動にあまりに多くの時間を取られるとその会社は一発で潰れてしまいます。いわゆる経営的な知財の判断、どこまでのリスクをとって、どこまでリスクを許容するかという判断ができることが非常に大事です。「特許庁における地域・中小企業への支援強化」資料の中の4頁、5頁に記載がありますが、もう少し企業OBが介入していくことが重要であると思いました。80年ぐらいというのは、産業界の知財部門の曙的な時代でした。1980年代前半に入社した方々は現在50代後半になっており、大学院を卒業した方だと定年を迎える方も出てきています。その中には上級管理職の方々も沢山おられ、現在LES等の団体で活躍されている方がおられます。そのような企業OBの方々には窓口担当者として活躍できる方が数多く潜んでいると思います。その点について是非考えていただきたいと思います。これが一点目です。 二点目は、例えば、海外にベンチャー企業が進出したいという場合があります。キヤノングループの子会社で新たに海外に展開したいというときに、知財部門から派遣される人が何をやるかというと、まず契約をチェックします。契約に穴があると、一生懸命知財活動をして権利を得たとしても、全部巻き上げられてしまう虞があります。ところが、支援内容を見ると、契約はわずか2.5%しかないと記載されています。これは、既に相談に行っている方が特許を出しなさい、他社の特許を検討しなさい、というのを中心に話をしていることを代弁しているような表になっていると感じるため、そのような観点からも、経営的な判断ができる知財人員と優秀な弁理士さんとを組み合わせて、優秀な弁理士さんが良い特許出願をし、経営に慣れている方がそれを守っていくというような支援体制ができれば望ましいのではないかと感じました。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 時間の関係もありますので、前半のアジェンダはこれぐらいにさせていただいて、御質問内容、幾つかあったかと思いますが、地域団体商標と地理的表示の関係、地理的表示の行政の対応について等々、いかがでしょうか。では、農水省。 ○坂農林水産省新事業創出課長 それでは、地理的表示と地域団体商標との関係について、回答させていただきます。 地理的表示は、先行する登録商標がある場合は、その同名のもの、内容で登録ができないことになっております。既に地域団体商標として登録されている場合は、その商標権者またはその承諾を得た者が申請する場合であれば、地理的表示と両方登録を受けることができます。ただし、この場合に地理的表示は知的財産権として権利構成をとっておりませんので、一旦登録された場合は、定められた生産地域内で柿を作る方全てがその名前のものを作れるということになります。ですので、独自のノウハウなどを持って既に権利者として生産を行っている方がノウハウを囲い込みたいという場合は、従来どおり地域団体商標を使っていただいて、地域全体のものとして振興する、そういうブランド戦略をとる場合は地理的表示と併用されるということが良いのではないかと思っております。 ○渡部座長 中国産市田柿は。 ○坂農林水産省新事業創出課長 法律の中では要件を満たさない方が地理的表示又はこれに類似する表示を使うことが規制対象となります。これに類似する表示の中身について、現在政省令の制定も含めて、その範囲をより明確にする形で作業を行っている段階でございます。いただいたようなお話も踏まえて、より適切な規制ができるようにこれから法の施行準備を進めて参りたいと思っております。 ○渡部座長 他はいかがでしょうか。 ○相澤委員 権利行使をする場合には、不正競争防止法第2条第1項第13号に虚偽の原産地の表示が不正競争になるので、権利行使をすることは可能な場合があると思います。 それから、地域団体商標権を取っていれば、それで権利行使をし、税関に対して輸入差止措置、認定手続を取るということは可能だと思います。 ○渡部座長 どうぞ。 ○山本委員 中国産市田柿は、日本の流通は抑えられるかも分からないですけれども、中国でも流通しますね。それは何とかなるのですか。 ○相澤委員 それは中国法の問題で、日本法では対処できません。 ○渡部座長 他にもいろいろ御意見がありましたけれども、特許庁さん、何か。 ○金子特許庁商標制度企画室長 相澤委員の御質問で意匠の話がございましたが、私は門外漢でございますが、ちょっと御説明させていただきます。 特許法の一部を改正する法律が本年3月に成立しまして、5月14日に交付されております。その中で意匠法の一部を改正する法律というのがございまして、意匠のハーグ協定への加盟に関する改正もございます。国際出願が意匠においてできるようになりまして、そのハーグ協定の中では、1意匠1出願ではなくて、多意匠1出願も認められているというところでございます。 ○相澤委員 日本の意匠法では認められないのですね。 ○金子特許庁商標制度企画室長 自己指定する場合にはできるので。 ○相澤委員 日本の意匠法そのものが変更されたということではないと思いますが。 ○金子特許庁商標制度企画室長 はい。 ○相澤委員 私の議論は、地方の中小企業が日本の意匠出願としてできるか、という話です。 ○金子特許庁商標制度企画室長 すみません。 もう一つ、地域団体商標に関して、質の悪いものをどう担保するかというお話でしたが、これもアンケート調査を行った結果ですが、今、品質管理の策定をしているところ、策定済みであるところは34.9%ございまして、検討中であるところは17.6%、約半分については、品質管理について地域団体商標を取得した権利者においてもしているところでございます。これをどのように伸ばしていくかについては、特許庁からもいろいろ訪問したりして指導していくということを考えております。 ○渡部座長 よろしいですか。 ○松下特許庁普及支援課長 質問のあった2点についてお答えさせていただきます。相澤委員の方からありました政府系金融機関における知財を活用した融資状況ですけれども、一番進んでいると我々が思っているのは日本政策金融公庫です。中小企業向けですが、そちらですと、知財を利用して融資をした実績が、昨年ですと540社で214億円程度というようなデータもございます。ということもあり、我々は政府系金融機関との連携も考えております。 2点目、妹尾委員から窓口の担当者への研修はどうなっているのかということですけれども、ここははっきり言って強化しなければいけないと思っておりますが、現在ですと、年に2回ぐらい中央に集まって研修をさせていただくということが1点目。 2点目としては、地域のブロックごとにその時々のテーマに応じた研修をやらせていただいているということ。 3点目としては、ウェブ的な研修というのも今年度から始めているということですが、なかなかばらつきがあるのは事実ですので、更なる向上を図るための施策というものも来年また考えていきたいと思っております。 質問に対しては以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 それでは、次のアジェンダに移らせていただきたいと存じます。次は産学官連携の強化について議論を行いたと存じます。 これについて、まず文部科学省の取組の御説明をお願いいたしたいと思います。 ○坂本文部科学省産業連携・地域支援課長 文部科学省産業連携・地域支援課長の坂本です。どうぞよろしくお願いいたします。 それでは、資料5に基づきまして説明させていただきます。最初に、産学官連携の活動の現状のデータを御紹介させていただくところから始めまして、当省で進めております施策の御説明をさせていただきたいと思います。 まず、現状でございますけれども、3ページをご覧いただければと思います。こちらは民間企業等との共同研究の実績でございますが、上の箱の中に書かせていただいていますとおり、共同研究につきましては、受入金額、件数共に総じて増加傾向を示しております。景気変動の影響によって、21年度に1件当たりの受入額が落ち込んだことが右下のグラフを見ていただければ分かりますけれども、件数自体の減はわずかなもので、その後、また回復してきております。ですので、資料にも意識の定着と書いておりますが、着実に関係者の間で共同研究を展開していく活動は拡大しつつあると考えております。 4ページをご覧いただきますと、特許の保有件数の推移を示しておりますが、保有件数は大幅な増加傾向にあることをこのグラフが示しております。これは、過去に特許出願したものが一定の期間を経て権利化されてきたものが今、出てきているのであろうと我々は考えております。 5ページでございます。これらのデータから産学連携の活動の展開は着実に進められていると言えるかと思うのですが、一方で、まだまだ課題もあるということで、こちらに代表的な意見の例を掲載させていただいております。例えば企業側からの主な意見ということで、知的財産あるいは経費分担、コンプライアンス、成果の取扱い等について、大学あるいは研究機関側に融通がきかないとか、あるいは規定が企業側のニーズに沿ったものになっていないといった問題意識が見られるところでございます。 あるいは大学側の意識改革の必要性ということで、企業側の早く製品開発を進めていくことの重要性への理解、あるいは企業の求める製品開発スピードに協調していく意識を強く持って欲しいということでありますとか、更には大学側が持つシーズ情報をもっと積極的に産業界に共有してほしい、更にはそれによってお互いビジネスを考えていく場を作ってほしい、そういった期待の声と我々は理解しておりますが、そういった内容を書かせていただいております。 また、大学側の意見の方でも、大学側の研究の特性への理解でありますとか、あるいは企業がもっと日本の大学を活用してほしいとか、民間のニーズ情報の共有でありますとか、あるいは先ほどの知財経費分担等のルールに関しての認識をできる限り擦り合わせていくことの必要性、そういった意見が出ているところでございます。 こういった課題を一つ一つどう解決していくかを、我々文部科学省として大学等の現場とよく話をしまして、また、企業側の方々のニーズもよく聞きまして、その活動内容を支援する、あるいは制度的な面を支援していくことを引き続き考えていきたいと思っております。 これからは施策の御説明になります。施策につきましては、我々、産学官連携の活動を促進するための支援、あるいは知的財産の活用を高度化するための支援、あるいはそういったものを担う人材を育成するための支援と、様々な施策を持っておりますけれども、代表的なものだけ簡単に御説明させていただきたいと思います。 まず、7ページを御覧いただければと思います。タイトルとして「革新的技術シーズの創出へのアプローチ」と書かせていただいておりますが、先ほど最初に事務局の方から御説明いただきました中にも、産学官連携の問題意識というところで産と学の意識ギャップに関するところがございました。この意識ギャップを埋める幾つかのアプローチを、文部科学省も持っているところでございます。 そもそも大学が持つ先端的技術シーズを萌芽的な段階から産学が共同で開発し、更に企業主導で実用化にまで持っていく、そういったところを、段階を追って支援していくような制度として、JSTが運用しているA-STEPという制度がありますけれども、最近の例を1つこちらで御紹介させていただきます。特に革新的な技術シーズの創出は当然リスクが非常に高いわけでございますが、そういったハイリスクのものは、決して技術的な意味でハイリスクということだけでは特徴づけられなくて、将来の社会にとって必要な技術を産業界と大学、研究機関が共同でそのビジョンをきちっと定義をして、共有をして、そこからバックキャスティングをして研究計画を作っていき、実際それを実施し、社会実装まで持っていくことが望ましい。そういうプログラムとして、7ページにビジョンを書かせていただいており、具体的な事業としては8ページに説明をしております、「センター・オブ・イノベーションプログラム」を26年度からスタートしておるところでございます。 これにつきましては、特に産学連携のシステムのポイントとして「アンダーワンルーフ」という言葉を本事業のポイントの2つ目のポツのところに書かせていただいておりますが、企業からも技術開発について、ハイリスクと言われますけれども、実用化のところまでのコミットメントを得まして、拠点となる大学等においてアンダーワンルーフで産学共同の研究開発を進めていただく、そういった事業を展開しているところでございます。 9ページ、10ページは、今、支援させていただいている拠点を列挙させていただいておりますが、これは説明を割愛させていただきます。 次は、これまでの議論の御指摘の中で、産学官連携のマネジメントを強化する必要性についても御指摘があったと理解しております。人材面につきまして、我々は、リサーチ・アドミニストレーターの育成・確保という施策も進めさせていただいております。 リサーチ・アドミニストレーターは、11ページの左上に書かせていただいておりますとり、大学等において研究者とともに研究の企画立案、研究資金の調達・管理、知財の管理・活用等を行う人材群ということで、こういった人材を専門職として大学の経営に位置付けていただきたいということで、支援を行っております。 概要のところにございますが、スキル標準の策定、研修・教育プログラムの整備を文部科学省で進めているところでございます。 12ページでございます。今後の方向性としましては、今、申し上げたように、こういったマネジメント人材を教員、職員に加えて、第3の職種として大学の経営の中にきちっと位置付けていただくように我々は誘導していきたいと考えております。 更に、マネジメント人材につきましても、そういった研究マネジメントに係る専門のポストを中心にキャリアを積んでいただき、更には、他の大学や研究開発機関であるとか、あるいは民間、政府機関、そういったところにも交流で行っていただき、将来的には経営の一角を担えるような魅力のあるキャリアパスの構築を後押ししていきたいと思っております。 更に、マネジメント人材をきちっと組織内の専門部署に集めて、チームとして機能させることも目指しています。そういったチームがきちっとパフォーマンスを出すためには専門的なスキルも重要でございますので、そういったものを客観的に認証する仕組み作りについて、今、主要な大学で検討を進められておりますので、そういった仕組み作りの後押しもしていきたいと考えているところでございます。 13ページは知財関係でございますが、大学等の知財管理の取得・活用を如何に支援するかというところでございます。こちらにつきましては、まず、大学等で取得されているがなかなか単独の組織では活用へのハードルが高い特許、あるいは特許群にする、もしくはパッケージ化することによって活用が見込まれるような非常に重要な特許について、JST(科学技術振興機構)が発掘して、集約・一元管理し、活用促進を図り、更には事業化のために必要であればその周辺特許も取得して、その知財の価値を高めていく「重要知財集約活用制度」を今、運用しているところでございます。 その他、14ページをご覧いただきますと、大学等による外国特許出願の支援でありますとか、あるいは研究開発の段階から早期に発明の発掘、権利化、更にはそういった技術シーズと産業界のニーズのマッチングを図るための見本市、説明会等々、更にはそういったところで実際に情報を伝達し、更にはコラボレーションを企画していく目利き人材の育成プログラムというものも我々は推進しているところでございます。 15ページをご覧いただければと思います。次は大学発ベンチャーの創出をしていくという観点からの事業の御紹介でございます。 まず、15ページに記載しております「大学発新産業創出拠点プロジェクト」と言いますのは、下の図に描いておりますとおり、民間の事業化ノウハウを持った人材、ベンチャーキャピタルとか金融機関、そういったところで非常に事業化の経験を豊富にお持ちの方を軸といたしまして、大学あるいは独法が持つ優れた技術シーズ、あるいはそれを生み出した研究者を選び出して、起業家の目線、研究者の目線、両方でビジネスモデルを構築し、更に将来、そのビジネスを実際経営していく経営者も交えて経営チームを作って、その研究開発をできる限り効率的に進めていく、効率性の向上を徹底的に追求するような形で事業を進めていただく、研究開発の部分について、文部科学省の方で支援をさせていただくという制度でございます。 これによって、15ページの右下のところに書かせていただいておりますが、投資家の視点を持った方の仲介によって経営人材と研究者のチームが結成をされまして、将来の成長を見据えた知財戦略あるいは市場戦略をきちっと確立していただくことを我々が後押しさせていただきたいと思っているところでございます。 次は16ページでございますが、人材育成の部分でございます。先ほどのベンチャーの立上げ、あるいは企業内でもイノベーションを起こす人材が必要であるということは、様々なところで強調されているところでございます。そういった人材の育成プログラムというものを海外の先行事例を持つ大学等、あるいは国内外の企業と連携しまして育成をするプログラムを作成していく。Project Based Learningというものを軸としながら、実践的な人材育成のプログラムを開発していく。主に日本の大学でそういった教育に熱心なところに支援していくようなプログラムを我々は推進をしております。 最後でございますけれども、先ほど地域の企業支援、あるいは地域の企業と大学のシーズをどうやって結びつけていくかという議論がありましたので、簡単に御紹介させていただきます。 我々文部科学省は、地域科学技術イノベーションというところも非常に重要な政策課題であると認識しております。そういった地域のイノベーションの活動支援ということで、17ページに書かれておりますように、従来、地域イノベーションにおいて課題とされてきたこと、リニアモデルにとらわれないコーディネートが必要であるとか、自治体の壁を越えた広域連携でありますとか、あるいは国際展開力をどうやってつけるかとか、そういったところもいろいろ見据えながら、できるところからきちっとマッチングを成立させていきたいと考えております。 今、東北地域を先行事例として全国に展開したいと考えておりますが、18ページをご覧いただきますと、マッチングプランナープログラムというのがございます。各地域の大学等で産学連携のコーディネーターと呼ばれておりますマネジメント人材が活動されており、各地域でネットワークを形成されております。このプログラムは、特に広域連携という部分につきまして、各地の地域のネットワークを結び付ける、あるいは全国の技術シーズのデータ、これは科学技術振興機構(JST)にも非常に大きなデータベースがございますので、そういったデータベース、更にはネットワークのハブ的な機能というものを活用いたしまして、地域企業のニーズを全国の技術シーズとマッチングしていく、そういった活動を行うマッチングプランナーというものを配置するものでございまして、今、概算要求させていただいているところでございます。 長くなりましたが、文部科学省からは以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 続きまして、経済産業省の方からお願いいたします。大学連携推進室の説明をいただけますか。 ○宮本経済産業省大学連携推進室長 経産省の大学連携推進室の宮本でございます。資料6を見ていただきたいと思います。 めくっていただきまして、3ページ目です。今、文科省からも説明がありましたが、これは文科省も合わせてですけれども、産学連携施策を国レベルで取り組み始めたのがちょうど平成10年のころ。今から15年ぐらい前です。このころからTLOの整備、知財本部の整備等、体制の整備というのを中心に両省でやって参りました。最近はアンダーワンルーフ型の研究拠点の整備等を進めて参りました。 その結果、どういうことが起こっているかというと、次の4ページ目を見ていただきますと、共同研究実績は平成10年のころからぐっと伸びてきていますし、受託研究実績も、特許の出願実績もどんどん伸びてきています。しかしながら、平成20年ころからこの辺の5年間ぐらいが足踏みしている。数字上はそういう状況になっています。 そういう足踏み状態の状況の下で、経産省として産学連携活動を今後更に発展させていくにはどうしたら良いのかということを、5ページ目の真ん中の絵を見ていただきたいのですが、A、B、Cと上から書いてあるところですが、事情が異なるこれらのA、B、Cの3つの類型について、現在類型ごとに議論を行っております。 従来から多く取り組まれているのがCの型で、大学が直接企業にコンタクトして共同研究や特許のライセンシング等の活動を行い、大学のシーズを産業化、事業化につなげていく型です。 Bの型は、ベンチャー企業に大学のシーズの事業化を託して、そのベンチャー企業が事業化に向けて努力することで最後は産業化していく。そういう型です。 Aの型は、最近、我が省で言い始めているのですが、橋渡し役としての産総研などの公的研究機関について、彼らの役割にもう少し改善すべきところがあると考えており、ドイツの例をはじめさまざまな事例を勉強し、良いところを取り入れて、どんどん活発に改善していこうと考えております。 具体的に今、どういったことに取り組んでいるかといいますと、例えば6ページ目を見ていただきますと、橋渡し機関が間に入って産学連携する場合、あるいは大学が直接民間企業にコンタクトして大学の技術シーズを事業化していく場合、いろんな場合がありますが、いずれにしても大学と研究機関、もしくは研究機関と企業、あるいは大学と企業、異なる組織の間で優秀な人材の流動化を促進する制度が必要です。現状では、本業に支障を来さない範囲で、つまり、兼業規制で許容される範囲内で別の機関の仕事に関わるわけですけれども、所属する機関と協力する相手の機関、両方と雇用契約を結んで、一定のエフォート割合の下で、ちょうど間の橋渡し的な活動に研究者が腹を据えて取り組める環境を整備しようと考えています。 こういうことをやろうとすると、医療制度とかいろんな制度で、二重払いしなければいけなくなるのではないかとか、様々な制度が絡んできますので、そういった制度が障壁となることで流動化を阻害することはないかということを今、厚労省等の制度官庁と議論をしております。そういう障壁のない状態で行えるようなクロス・アポイントのやり方というのを年内に取りまとめる予定にしています。 2つ目の類型Bでは、大学発ベンチャーを通じた産業化もあるのですが、大学発ベンチャーが日本でアメリカほど成長しない理由が幾つかありまして、7ページ目にありますように、そのうちの一つが、リスクマネーがそもそも足りないということでございまして、そこの部分を補強するという観点から産業競争力強化法を改正して、国立大学法人自体がベンチャーキャピタルに対して出資をすることができるようにするための法改正をいたしました。 出資に必要となる予算措置については文部科学省が全て措置されたわけですけれども、総額1,000億円の予算を4大学、東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学向けに確保されまして、現在、それぞれの4大学におけるベンチャーキャピタルの設立のための法律上の認定、認可の審査を行っている状況でございます。 8ページ目を見ていただきますと、平成10年以降、特許出願件数も増え、共同研究や受託研究の件数及び受入金額も増えています。大学に知財本部を設置して、TLOなどの体制が整備されてきた結果、そうなっているわけですが、特許出願や共同・受託研究の伸びが頭打ちになっている状況の下で、これを更にどういうふうに発展させていくかということを考えたときに、大学間のパフォーマンスの差、つまり、大学間で産学連携を非常に上手く回せているところと、そこまで上手く回せていないところ、大学ごとの差の部分に着目していく必要があると思います。このあたり、単に特許出願や共同研究の数をとにかく増やしましょうとかいうことだけではなくて、産学連携の質的な部分についても評価をして、ベストプラクティス、あるいは上手く回せているところの成功要因が分かれば、それを横展開していくことが重要であると考えております。 このように、今後は量のみならず質についても上げていくことが必要であるということで、文科省さんと共同で産学連携活動の調査・分析を平成25年度から開始しております。現時点では、昨年集めたデータ、つまり、平成24年度のデータを基に分析を行っております。 下に2つグラフがあるかと思うのですが、見ていただければ分かりますように、大学の産学連携活動と申しましても、例えば、特許実施許諾収入を増やしましょうという活動と、共同研究・受託研究の契約額を増やしましょうという活動は、全く異なる観点の活動になるわけです。 この2つのグラフを見てみますと、例えばBとかCという大学は、投入コストである産学連携部門の人件費に対して、特許の実施許諾収入においても、共同研究・受託研究の契約額においても、両方とも高いパフォーマンスを出していますが、Aという大学は、特許の実施許諾収入においては高いパフォーマンスを出しているけれども、共同研究・受託研究の契約額の方ではそうでもない。DとかEという大学はその逆になっているというように、大学によって個差、あるいは得意分野等いろいろあるようです。このあたり、大学のポリシーに合う形で幾つかの産学連携のパフォーマンスを上げようとする場合にどうすれば良いのか。これを今、いろいろと分析しております。 本日は時間がございませんので、データの詳細は今回お見せできませんが、最後の9ページを見ていただきますと、今、我々の方でいろいろデータを分析している中で見えてきている大まかな内容について、簡単に紹介をさせていただきます。 まず、産学連携活動を評価するための視点ということですが、先ほど申しましたように、特許や共同・受託研究に注目すれば、特許の保有件数、あるいは特許の実施許諾収入、あるいは共同研究や受託研究の件数、受入金額、また、地域貢献等に注目すれば、大学が所在する都道府県内の企業との共同研究等の活動実績、海外との連携実績といったように、さまざまな視点があり、これらの視点それぞれについて産学連携評価のための指標を作成しております。この指標ごとにデータを分析したところ、それぞれの指標において、大学の得意、不得意のばらつきが非常に大きいということが見えてきたところでございます。仮に、ある1つの指標においてある大学が非常に強みを発揮していたとしても、それが他の指標でもその大学が強いかどうかと一意に連動しているわけではないということが分かってきております。 従いまして、視点ごとにその視点に関する成功要因が異なることが予想されます。視点ごとに産学連携活動の傾向や成功要因を分析して、各大学に横展開していくことが必要なのではないかと考えております。 例えば、具体的にかけたコストに比べて特許収入を多く得ている事例でどのような傾向が見られるかというのを(1)のところに書いていますが、特許収入は、特許の譲渡収入と特許の実施許諾収入、両方の収入が有り得るわけですけれども、我々が今、見ているところでは、全体的に譲渡収入というのは非常に小さい割合しか占めておらず、基本的には特許収入でパフォーマンスを上げるためには、特許実施許諾収入を上げることが必要という傾向が見えてきています。特許実施許諾収入でパフォーマンスを上げている大学は、1件当たりの特許実施許諾契約額が高く設定されている傾向が見られます。 また、共願特許による収入や単願特許による収入など、特許収入を得るにはさまざまなケースがあるのですが、特許収入のパフォーマンスを上げている大学は、単願特許からの特許収入を高く得ることに成功している大学であるという傾向が見えてまいりました。 特許収入パフォーマンスは全体コストに対してどれだけの特許収入を得ているかということが重要になりますので、特許収入パフォーマンスを上げるには、分母である全体コストを減らしていくことが重要なのですが、全体コストの一部である特許関係費の大学間のばらつきが非常に大きく、これが特許収入コストパフォーマンスを大きく左右している。このあたりが見えてきております。 共同研究・受託研究の獲得に関しましては、新規案件の獲得能力、つまり、人件費当たり何件案件を獲得しているかということと、獲得した1件当たりの共同受託研究金額の規模が重要になってくるわけですが、新規案件の獲得能力に関して、人件費当たりの案件獲得件数を見てみますと、大規模大学、中小規模大学に関わらず大学間の個差が非常に大きく、5倍、10倍はざらに出てくるという状態にございます。 一方で、共同受託研究の1件あたりの獲得金額に関しては、中小規模大学においてはおおむね横並びになっていて、大体350万ぐらいです。また、大規模大学においては350万から1,200万ぐらいとばらついており、これらのばらつきがある中で大学の個差が出ている。こんな状況でございました。 地域貢献については、現在、日本全国いろんな企業のニーズと大学のシーズのマッチングを試みているわけですが、例えば、共同・受託研究の獲得に関して、各大学が所属する同一地域内の企業のニーズに対してどの程度応えられているかを見たところ、中小規模大学においては、大学によって地域企業に大きく貢献しているところと、そうでないところの差が非常に大きく出ておりまして、今後、大学による地域貢献を高めていくにあたり、地域貢献を上手くやれている大学のベストプラクティスを他の大学へ横展開していくということが有効なのではないかと考えております。 いずれにしましても、こういう個々の視点ごとのベストプラクティスというのを横展開することで、全体として量だけでなくて質も上げるということに取り組んでいく必要があると考えているところです。 以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございます。 日本版バイ・ドールの方をお願いします。 ○島津経済産業省成果普及・連携推進室長 経済産業省成果普及・連携推進室の島津でございます。 本日は、国の研究委託による研究開発における知的財産マネジメントに関する運用指針の策定に向けた取組状況について、御説明申し上げます。資料7というものの裏面を御覧ください。非常にシンプルな資料になっておりますので、説明も簡潔に心がけたいと思います。 経済産業省におきましては、本年の1月から5月にかけまして産業構造審議会の研究開発・評価小委員会におきまして、今後の産業技術政策の在り方についてという議論、検討を行いました。議論には本日座長の渡部先生にも御参画いただいて、知財も含めて多方面の検討をいたしまして、その結果として、先ほど宮本から説明のございました資料の5ページの橋渡しの機能を強化するというのを、一番根幹の主張として取りまとめました。 その一環で、国の研究開発プロジェクトもきちんと技術成果を生み出して、それを事業化に橋渡しをしていく。そこをきちんと発揮していくために改革を進めていこうという方向が打ち出されまして、その一環として知財マネジメントについてもきちんと考えるという流れがここで取りまとめられたという次第でございます。 その取りまとめのうち、知財マネジメントについては別紙という形で比較的濃厚に書かれておりまして、資料の別添1として付けてございますが、最後の方に指針となるガイドラインを策定するということが取りまとめでも記載してございます。それを受けまして、調査事業の予算を使いましてファクトを集めつつ、委員会方式でどのような指針とするかというようなものの議論を現在重ねているところでございます。 別添2で委員会の委員構成が配付してございますが、こちらでも渡部先生に座長をお願いしておりまして、いつも渡部先生ばかりで恐縮でございますが、委員は、国の研究開発プロジェクトの受託者になります産業界、大学、研究機関、知財の研究者の皆さま、知財にお詳しい弁護士の方、こういった方を構成メンバーといたしまして、アンケート調査、聞き取り調査によって企業の知財に関する感触、実態等々を調べながら、今、指針を取りまとめるべく検討を重ねているところでございます。 現在までに委員会を2回開きまして、年度内に更に2回開催し、そこに今後の予定がございますが、年度内に報告書を受けた経済産業省として運用指針を取りまとめて、極力来年度の国プロから適用していきたいということを目途に今、検討を進めているというところでございます。 まだ委員会も半分しか終わっていない状況ですので、なかなか形にあるものを本日は御紹介できませんけれども、そのような流れでやっております。 実際に踏み台になるのは、正に添付してございます参考資料、中間取りまとめで取りまとめられました「マネジメントの在り方」がございますので、大枠は大体決まっていると。ただし、実際にこの作成を担当した現職官僚が代替わりしても、後任でも分かるように、それからNEDOのような外部機関が参照する際にでも迷うことがないように、きちんと各章をブレークダウンして細かく掘り下げて明記するという作業も必要ですし、とりわけバイ・ドール、産業技術力強化法の第19条1項3号にございます知的財産を相当期間利用していない場合に、国の要請に基づいて第三者に当該知的財産権を実施許諾すると。この条文にございます「相当期間」の目安というものは一体如何ほどなのかというところを可能な限りガイドラインで書いて、受託者にも、マネジメントする国なりNEDOなりの側にも、こういう運営を旨とするのだなということをきちんと伝えるべく作成を進めております。 ただし、国のプロジェクトというものは何を目的にするか、どういう趣旨であるか、構成員はということ、その一つ一つごとに最適な知財マネジメントの在り方というものが全く異なるはずでございます。なので、ガイドラインが出されたからといって、それを運営する主体が変に固定的な考え方にならないように、一番理念として持っているキーワードは、とにかく事業化を念頭に置いて、プロジェクトごとの最適化を図る、そういった考え方で、渡部先生のお力も借りながら策定を進めていきたいと思います。 以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 それでは、このアジェンダについて、残り20分弱になりましたけれども、御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。では、前田委員。 ○前田委員 御説明ありがとうございます。 産学連携を十数年やってきて、頑張っていると思っている方もいらっしゃいますし、少しそうではないという方もいらっしゃるのかなと思うのですが、先ほど文部科学省の坂本課長が御説明されたCOI等の採択プログラムを見ますと、かなりライフサイエンス分野が多いかなと思います。半分以上がライフサイエンス分野で、異分野の企業がライフサイエンスに入ってくるのは、イノベーションを創出するという意味で非常に良いのではないかなと思っています。 それに当たって、厚生労働省と農林水産省も、産学連携にもっと積極的に入っていただけたら良いなと思っています。この委員会は横串を刺すための本部だと思っていますので、是非、厚生労働省などを巻き込んでいただいて、もっともっと前に進めていただけると嬉しいなと思います。 また、URAなどの研究マネジメント人材は、評価する側の方の評価項目がすごく大事ではないかなと思います。先ほどの知財総合窓口の方の評価もそうですが、例えば特許を何件出しましたとかいう評価にしてしまうと、何でも特許の方に持っていきたいと思ってしまいます。研究マネジメント人材も、件数なのか、どういうやり方で結んであげるのとか、ある程度自由度があって、その方たちが通常の契約をただ結ぶだけではなく、学会とかでは結び付かないような思いもかけないところを結んできたり、いろんな活動を行って、適正かつ多方面での活躍を評価してあげてほしいなと思います。そこが硬直化して、例えば業務をエフォートで管理されたりしますと、結局は良い動きができないまま終わってしまいますので、学校の経営陣の研究マネジメント人材、いわゆる研究支援人材の評価を上手くやってもらいたいと思います。 あと、マッチングプランナーはすごく良いなと思います。特に広域という観点のところです。先ほど山本社長もおっしゃっていましたが、広域で一番上手に事業化してくれるところに持っていくべきだと思っていますので、この事業はすごく良いなと思いながら聞かせていただきました。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 他はいかがでしょう。山本委員。 ○山本委員 文部科学省はJSTで大学の技術をパッケージ化して、経産省は産総研で大学の技術をまとめてとなると、大学の知財本部やTLOに任せていたら駄目なのではないかというような感じもする、というのが気になっております。 バンドル化するというのは否定していないのですが、どういう技術をバンドル化するべきなのかというのはちゃんと考えるべきで、これはモラルハザードを起こしやすくて、大学で自分たちで駄目だと思った特許はどんどんJSTに出してしまうということが起こる可能性もあります。駄目な技術を幾ら集めても駄目だと思うので、どういう類いの技術をバンドル化していって、どういう戦略を描くのかというのが非常に重要ではないかなと思っています。 一方で、START事業などというのは非常に上手くいっているなと思っていますので、これはこのまま継続してもらいたい。 あと、URAに関しては、誰を評価というのが今、ありましたけれども、一番の問題は、キャリアパスがない、5年たったらクビになるのではないかというのが一番の問題なのではないかなと思っています。仮にクビになっても、どんどんキャリアパスがあって自分のスキルを高めていくことができれば良いのですが、そこはどのように具体的に考えておられるのかというのを教えていただきたいと思っています。 何が言いたいかというと、経産省の資料の8ページ目にグラフがありましたけれども、共同研究であれ、大学発ベンチャーであれ、ライセンスであれ、どんな製品が何個できて、どれだけ売れているかが分からないと、本当にイノベーションに結実しているかどうかが分からないわけなので、そこのゴールというのをちゃんと定めていくことが重要で、そのために、C大学が良いのか、B大学が良いのかというよりは、どういうパフォーマンスが求められるのかというのが9ページに書かれていましたが、これを1年だけではなくて、継続していただくことが重要かなということと、一番気になるのは、8ページのグラフの中で左下の方に団子になっている大学がすごく多いところでして、これは全部モラルハザードを起こしやすそうな、どこか助けてくれるところがあったら全部出しますというようになってしまいそうなので、そこを本当に具体的にどうやっていくのかというのをちゃんと考える必要性があるのではないかなと思っています。 どちらかというと自立よりも仕組みで助けようというような方向性がうかがえるので、そうではなくて、本当に各大学が自立できる、知財本部でもTLOでも良いのですが、そういう施策というのが何なのかというのをもう少し突き詰めていただければと思っています。 最後1点だけ。バイ・ドールですが、私はいつも過激な意見を言っていますが、一定期間バイ・ドールでどんどん自由に海外ライセンスできるようにした方が、むしろ日本の産業界に対する刺激になるのではないか。同じ技術を持っていっても、やはり海外企業の方が圧倒的に食い付きが良いというのは事実なのです。 本当に大学に良い研究シーズがないのであれば、海外ライセンスも上手くいかないわけで、むしろ良い技術はどんどん海外に行ってしまうぞという方が、日本の企業のやる気を引き起こすものになるのではないかということと、細かいことですが、各省庁のバイ・ドール条項というのは、共同出願契約を全部書かないといけないのですが、あれは自分でやってみると分かりますが、とても面倒です。すごく時間がかかって、省庁ごとにちょっとずつ違うので毎回毎回やらないといけない。せめて統一してコピー・ペーストできるようにするとか、何かしていただきたいと思っています。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 ほか如何でしょうか。では、喜連川委員、お願いします。 ○喜連川委員 坂本課長から御説明いただいて、文部科学省としてもすごく頑張ってここまでやってきていただけているのだなというのは何となく分かるところなのですけれども、非常にチャレンジングであるというものに対してという記載があったかと思うのですが、そもそも日本の企業が今、余り上手く成功して回っていないという現実があるときに、日本の企業の知財の御経験者の方、立派な御経歴のある方がコンサルタントになっていって、それで上手くいくのだったら、企業がもっと元気になっているはずなわけです。 なので、そもそもチャレンジングなテーマというのは、日本の企業が今まで上手くいかなかったようなところに国費を投じてやっていた。そのアウトカムをどうやって展開すれば良いのかということに関しては、少しめり張りをつけた方が良いのかなという気がしています。 例えば今まで御議論に出た、地方でいろいろな地域産業と密着してということは非常に重要なことで、そういう中粒度と言うと怒られてしまうかもしれないのですが、そういう産学連携というのは極めて大切だと思うのですけれども、ちょっとはね飛んだようなものに対しては、そもそも通常のありきたりの方策では上手くいかないから日本が困っているという前提をどこかで考えていただければありがたい。 医療と同じで、非常に大学の持っている研究というのはダイバシティが高いのですね。いろんな種類のものがあります。従いまして、これは東京大学では山本さんが頑張っていただけているわけですけれども、それでも全部の領域をカバーするなどというのは根源的に不可能なわけです。 今、大学が法人化以降、やや不具合になってきましたのは、大学と大学の競争原理というものを過度に入れるようになってしまったので、そこで数の勝負みたいな、先ほどの議論がどうしても出てきているのではないのかなという気がしなくない。 医療の場合というのは、このややこしい心臓疾患の場合はこの先生というところに行くわけです。全部が全部東大に行くわけではないわけですね。そういう意味で、大学を越えた専門性の豊かな部分でのサポートというのが日本の国益を大きくする上で非常に重要なのではないかなという気がしまして、何か御配慮いただけるとありがたいかなと思っております。 ちょっと長くなって恐縮なのですが、大学にとりまして少しややこしいところは、一体何%の教官がこういうことをすべきなのかということが根源的に問題になります。経済産業省さんの資料の中で、是非後からスタティクスを何かつけていただけるとありがたいのは、大学の先生の90%がこんなことをしたらそもそも困るわけですね。国民からの負託というのは原則基礎研究で、企業がやらないことをやる、企業のニーズもないことをやることが大学の負託なわけです。 だけど、その中である程度のパーセンテージは民に対してリターンを返すような研究もしようよ。ここのパーセンテージを国家としてどのくらいに設定するのかというのは、根源的に非常に重要な問題で、先ほどの数競争になると、それを過度にインテンショナルに数を上げようという、ちょっと無理な努力をしてしまう可能性がありますので、そこは節度を持ったやり方をした方が良いのではないかなという気がしております。 以上でございます。 ○渡部座長 ありがとうございます。 奥山委員、手を挙げられていましたか。 ○奥山委員 産学連携ということでいろいろ御報告いただいて、URAのプロジェクトも大分進展しているということで、大変素晴らしいと思うのですが、先ほど来人材キャリアパス、経産省の方からも人材の流動化ということを伺ったのですが、いろんな組織が作られて、知財本部とかTLOとかURA、マッチングプランナーは大学の中ではなさそうですけれども、そういういろんな職種があって、それが有機的に機能しないと、あるいはそういった組織の間で人が流動するというか、ステップアップしていけるような仕組みにしないといけないのだろうなというふうに思いました。 あと、グローバルアントレプレナー育成促進事業ということで、私も大学にいたものですから研究とかはばりばりやるのですが、そういう視点の教育というのがほとんどなかったわけで、そういう事業が必要だったというのは、大学を出てみると分かるのですね。そういうものが全然なかったというのに気がついて、何でなかったのだろうねということをOB同士で言っているみたいなところがあるので、是非進めていただきたいと思います。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 他はいかがでしょうか。では、相澤委員。 ○相澤委員 産官学連携で、官の連携をきちんとする必要があると思います。 資金の面で言えば、補助金も、統一した基準で交付する必要があるのではないかと思います。 地方ということになれば、大学と協調していくことが必要なので、地方公共団体を含めて、官も協調していただいた方が良いのではないかと思います。 地方の中小企業と地方の大学も生かしていくためには、官の方で統一した基準の補助金で誘導していくということも必要ではないかなと思います。 ○渡部座長 ありがとうございます。 他にいかがでしょうか。では、長澤委員。 ○長澤委員 最近のビジネスの状況を見てみますと、業界によって違いはありますが、1つのビジネスを自前の技術だけで実現するというのは、非常に難しくなっています。2社、3社だけではなくて、約10社の技術を集めてやっと1つのビジネスが成功するというようなことも多くございます。 そういう意味でも、産学連携の中でその中の1つのパートができるということは非常に素晴らしいことであると思います。私も文科省のお仕事をやらせてもらっていますし、委員にもなったことがありますが、利用させてもらっている立場からして、非常にありがたいとは思っています。 ただ、今回の資料の中で、これは山本委員がおっしゃったことと少し共通しますが、枠が地方から精々いって日本全国という状況の中で、日本には無いような技術もありますし、日本の企業でない相手と組みたい場合ということが今後はどうしても増えてくると思います。従って、組む相手の枠をもう少し広げていただきたいと考えています。ただ、国家予算ベースでやる仕事のため、これについては日本の大学なり日本の企業が主導をとり、全体をまとめていくという枠の中で外国の企業がパートナーとして入ってくることが必要であると考えます。もちろん、営業秘密の流出には注意しなければいけませんが、外国の企業等が入ってくるということをある程度は許容して良いのではないかなと思いました。 最後に、マネジメント人材に関して、スキルは当然付けて欲しいのですが、責任と権限を共に与えれば、殆どの場合は本人が必死になると思います。必死になれば、様々な人から話を聞くしかなくなりますので、専門以外の知見もあがり、それによってバランスのとれたマネジメント人材が育つと私は思っています。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 では、妹尾委員、最後にお願いします。 ○妹尾委員 すみません、時間がないので手短に申し上げます。 非常にベタな話をさせてください。ここのところ大分幾つもの地域、地方の産学官連携の実態をずっと調べていって、ほとんどが困ってしまうという事態なのですね。それは何故かというと、最近、地方の大学が地元産品で機能性素材を開発しました、あるいはそれの製法、従来のコストに比べて100分の1ぐらいでできるようになりましたなどという例が非常に多いのです。ほとんどの場合は医薬品にするか、化粧品にするか、食材にするかということなのですが、そういう基本的なパターンのときのビジネスモデルと知財マネジメントのことについて、ほとんどの方に知見がないということなのです。 そうすると、何が起こるかというと、県庁の方はお金を付ける、地元の中小企業は舞い上がる、地方の大学の人たちはむやみにばらばらで特許を取るみたいなことがあって、結局、企業が事業化するときに恐ろしく困ってしまう。少なからず、共倒れを起こしてみんな駄目になるという例があるのです。こういう席ですから申し上げると、大抵の場合はそこに文科省と経産省から数億円が入っています。特許を全部取れということしか指導しない。 これをいつまで繰り返すのかなというのがあって、ここでも何回か申し上げたのだけれども、もういい加減卒業したいという感じがあるのですね。というのは何かというと、今日の論点のところに書いてあるように、意識のギャップはあるにせよ、知識の不揃いがあると、ほとんど上手く行かないということなのです。ですので、これに関するビジネスモデルと知財マネジメントの基本的な知識の向上と標準作りを是非やっていただきたい。それだけでうんと成功する例が増えると思います。なので、そこへあと一歩皆さまの足なみを合わせていただけたら良いなというふうに思います。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございました。 大体御意見をいただいたかと思います。時間も迫っていますけれども、今日、中山委員から御発言がないようですが、よろしいですか。前半の中小企業の方でも何かあれば。よろしいですか。 ○中山委員 テフコの中山でございます。 4回もやってしまって、今日初めてで、申し訳ないなと思います。知財事務局の方にも、昨日の夜、わざわざ来ていただいて、ありがとうございます。 今、いろいろ聞いてみて、私は地方の現場、青森の小さい工場の社長なのですけれども、ここで話されていることと現場に行ってのギャップというのはどうしても感じざるを得ないし、すごく高いマクロのところで話されているのですが、どうしても地方に行くとミクロであること、あと、人、物、金が全部無いので、簡単に言うと、経営者はどうしても非常に取っ付きやすいものから行きたがるという傾向があります。 昨日も知財事務局の方と夜、話していたのですけれども、例えば特許権をたくさん取らせようということ、それを高度化しようというのに固執するだけでなく、門戸を広げて。地方の人たちのレベルというのは、手前どもも含めて、大手さんとかと比べてすごく低いところにあるのです。でも、昨日ももらいましたけれども、例の地域団体商標の本を見させていただいて一つ感じた点は、農協とかの紹介であると、すごく固いもので、みんなとっくに認知されていて、これはとっくに食えているものだろうというのがすごく並んでいる。例えば松阪牛であるとか。ただ、「NEW」と書いてあって、横手焼きそばとか、そういうのも入れてくれている。 国ですから、オーソライズされていることは大切だと思いますけれども、変なものをまた全部入れろというわけではなく、これから成長して売り上げをいく、しっかり頑張っている、そういうのを審査したものがブランド化されていくこと。それがなるべく廉価に、安く広まっていくこと。それがものすごく重要だし、そういうところから特許権とか、製造方法とかそういうのに発展していく。 つまり、日本の地方などというのは、簡単に言うと、例えばキヤノンさんとかブリヂストンさんとか、地方でやっていますけれども、基本的には農業とか漁業に依存しているところが多い。そういうところの意匠とか標章とかというものの意識は低いのですね。低いということは、僕が思うに、長年、農業とか漁業をやっている人は、もう特許級のことをやってしまっているのです。でも、それが特許として申請されていなかったノウハウがたくさん積まれているのですね。そうでしたら、かなり自信のある品質のものであれば、そこに意匠だけ付けてあげるだけでもすごく役立つのではないかなというふうにすごく思いました。 全体のことは皆さま、専門家で詳しいと思うので、僕は部分的なことになってしまいますけれども、地方の実情も踏まえてということで。すみません。 ○渡部座長 ありがとうございます。 それでは、大体時間も参りましたけれども、経産省、文科省、今、特にコメントするところはよろしいですか。 ○小原科学技術振興機構理事 すみません、先ほど山本先生の方から話がありました知財の集約の件でございますが、先ほどモラルハザードのお話がありまして、正に私どもが危惧しているのもそこでして、如何にしっかりした特許を評価して集めるのか。ここが最大のポイントだろうということで、まず評価はかなり厳しくするつもりです。まず、内部的な評価をしまして、その後、外部の評価委員会によります知的財産審査委員会で評価いたします。 私どもは、その特許をライセンスないしは他のところに持っていかなければいけないという責務を持っておりますので、そういう面では、そこが一番最大のモラルハザードを防ぐといいますか、そういうことをとてもできる状態ではないということで、そういう面では、山本先生がおっしゃるとおり、そこにこの後も気をつけながら一歩一歩集約に努めていきたいと思っているところです。 以上です。 ○渡部座長 ありがとうございます。 それでは、全体総括を横尾局長、よろしいですか。 ○横尾局長 今日はいろいろありがとうございます。 感想も含めてなのですが、地方・中小企業で、特許庁も分かっていてやろうとしているのですが、今の中山委員の話とも絡むし、荒井さんの紙に書いてあるのですけれども、窓口に来る人というのはまだ良い方で、窓口に来ない人、しかも、中小企業でなくて漁業とか農業をやっている人にどう知財マネジメントを広げるかというのが物すごく大事な課題だと思います。そういう意味では、特許庁の紙に巡回指導云々とありましたけれども、それだけでは限界があるので、例えば荒井さんの紙にありましたが、他の機関を使ってセミナーをやるとか、勉強会をやるとか、そこをもう一段工夫をして末端まで広げる努力をもっとしないといけないのではないかなと思いました。 それからもう一つ、弁理士、弁護士の専門家を是非活用というのも、地方へ行くと、そういう優れた人がどれだけいるのかというのが大きい問題だと思うのです。たとえいても、その情報がないので、優れた弁護士、弁理士、あるいは診断士という人にどうやってアクセスするかというのももう一つ大きい課題だと思います。 これは企業のOBの方も一緒で、企業のOBの方を雇えば良いのですけれども、私もJETROにいたときに、JETROというのは県に事務所があって、アドバイザーを雇うのですが、県で枠はあるのに雇えないのです。要するに、地方には人がいない。という問題をどうやってクリアするか。従って、中央で一括採用して、ある程度の長期間でやると。特許庁も今、考えておられるようですが、そこは是非弁理士、弁護士会も連携して、行き届かない地方をどうやって盛り上げるかという工夫が要るのではないかなと思いました。 産学官連携は、実は先ほど山本さんがおっしゃったのとちょっと似た感想なのですけれども、文科省のSTARTとかのマッチングプランナーというのは大変良いプロジェクトだと思うし、JSTなり産総研が間に入るというのも良いと思うのですが、では、一体知財本部なりTLOというのは何だったのかという問題があって、これも先ほどの中山委員あるいは妹尾さんの話とも絡むのですけれども、ベタな地方の大学と言うと怒られますが、その人たちなりその大学、その中小企業はこのプログラムで一体どれだけ対処できるのか。多分ものすごく良いケースだと思うのです。 それはそれでやったら良いのだけれども、もうちょっとベタな世界をどうやって引き上げるかというのが今の地方創生での命題だと思うので、地方大学も含めて、知財本部なりTLOを作って、先ほどの経産省の資料の8ページの下にいるこの領域を一体どうするかというのは、多分早急な課題なのではないかなという気がします。そこは先ほどの文科省のプログラムとあわせて、引上げというか、この対応を是非委員の先生方のお知見も借りながら考えていく必要があるのではないかなと思った次第でございます。 ○渡部座長 ありがとうございました。 それでは、事務局から予定の御紹介をお願いします。 ○北村参事官 次回第5回委員会は12月9日火曜日の午後3時から、コンテンツ分野の会合を開催します。 次々回第6回の委員会は12月24日の午前10時から、産業財産権分野とコンテンツ分野合同の会合を開催させていただきます。 以上です。 ○渡部座長 すみません。10分超過いたしました。本日は御多忙中のところ、大変ありがとうございました。これで散会させていただきます。どうもありがとうございました。 |