検証・評価・企画委員会(第13回)
日 時:平成27年5月28日(火)15:00〜17:00
場 所:中央合同庁舎4号館1階 108会議室
出席者:
- 【委 員】
- 相澤委員、荒井委員、井上委員、奥山委員、角川委員、川上委員、喜連川委員、
久夛良木委員、迫本委員、重村委員、杉村委員、瀬尾委員、妹尾委員、竹宮委員、
長澤委員、中村座長、日覺委員、前田委員、宮川委員、森永委員、山田委員、
山本委員、渡部座長、正木参考人 - 【政 務】
- 平副大臣
- 【各省等】
- 経済産業省、総務省、中小企業庁、特許庁、文化庁、法務省、最高裁判所
- 【事務局】
- 横尾局長、増田次長、磯谷次長、田川参事官、田口参事官、北村参事官
- 開 会
- 議 事
(1)タスクフォースからの報告
・地方における知財活用促進タスクフォースの報告
・知財紛争処理タスクフォースの報告
(2)「知的財産推進計画2015」(素案)について - 閉 会
○渡部座長 何人かの委員の方が少しおくれて来られるかと存じますけれども、定刻になりましたので、ただいまから知的財産戦略本部第13回「検証・評価・企画委員会」を開催いたしたいと存じます。
本日は、御多忙のところ御参集いただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、地方における知財活用促進タスクフォース及び知財紛争処理タスクフォースの報告を行いまして、その後、「知的財産推進計画2015」(素案)について、議論を行うこととしております。
本日御出席いただいております委員の方は、座席表のとおりでございます。何人かの委員の方が今、向かっておられるというふうに伺っております。
なお、木田委員にかわりまして、このたび、同じくNHK理事の森永委員が就任されましたので、御紹介いたします。
森永委員、よろしくお願いいたします。
また、本日は、小林委員の代理で正木泰子様に参考人として御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
本日は、平副大臣が御出席の予定でございますけれども、所用のため、おくれて来られるという連絡を受けております。
まず初めに、横尾知財事務局長から御挨拶をいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○横尾局長 知財事務局長の横尾でございます。
皆様、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。暑いのに、役所はエアコンが6月からしか入らないということで、5月のぎりぎりに設定をしてしまいまして、大変申しわけありません。上着、ネクタイ等をとっていただいて、自由闊達に御議論いただければと思います。
今回2014の実施から2015の計画のこのサイクルで、検証・評価・企画委員会、最後の会合でございます。これまで委員の皆様には大変活発な御議論をいただきまして、まことにありがとうございます。
4月に有識者本部員が新しくなりまして、そのもとで本部会合を開催し、安倍総理からも御指示を賜りました。それを受けまして、4月の検証・評価・企画委員会、産業財産権、コンテンツ、両分野でこれまでの議論の整理を行って、大体ラップアップの議論をいただいたかと思います。その議論を踏まえ、また、私どもでいわゆるパブリックコメントを行い、いろんな関係者の意見を伺って、政府部内でもいろんな議論をして、きょうは「知財計画2015」の素案ということで提示をさせていただいております。
まだ、政府部内、いろんな調整が残っている部分もありますが、あえて提出をしてございます。今回は、まさに2015を決定する本部会合の前の最後の検証・評価・企画委員会でございますので、これまで以上に率直かつ建設的な御意見を賜るとともに、時間的な制約はございますが、ぜひ言い残しのないように御意見を賜れればというふうに思います。
きょうは、私どもの知財事務局のみならず、関係府省の課長さんにも出席をしてもらっておりますので、その場で異論があれば、ぜひ反論というか、説明をしていただきたいし、最後の会合にふさわしい有意義な議論ができるように期待をしておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
○渡部座長 横尾局長、どうもありがとうございました。
それでは、早速議事に入りたいと存じます。
まずは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
○田川参事官 それでは、本日お配りしております資料でございますが、資料1といたしまして、地方のタスクフォースの報告書。
資料2としまして、紛争処理タスクフォースの報告書。
資料3といたしまして、1枚紙でございますが、素案の構成。さらに、委員の方々には素案本体をお配りしております。なお、この資料につきましては机上配付とし、会議終了後、回収させていただければというふうに思います。
資料4といたしまして、相澤委員提出資料でございます。
参考資料1として意見募集、パブリックコメントの結果。
参考資料2が「農林水産省知的財産戦略2020」。
参考資料3につきましては、地方、それから知財紛争のタスクフォースの設置要綱でございます。
不足等ございましたら。よろしゅうございますでしょうか。
○渡部座長 よろしいでしょうか。
それでは、タスクフォースの報告に移らせていただきます。
事務局から、これまで開催した地方における知財活用促進タスクフォース及び知財紛争処理タスクフォースにおける報告をお願いいたします。
まず、地方における知財活用促進タスクフォースの報告をお願いいたします。
○北村参事官 資料1を御覧ください。「地方における知財活用促進タスクフォース報告書」に基づいて御説明いたします。こちらの開設趣旨、そのメンバーにつきましては、参考資料3の方を適宜御覧いただければと思います。座長の方は、本委員会の座長でございます渡部座長にお務めいただいております。その座長の報告書という体裁での内容でございます。
まず、「はじめに」のところですけれども、問題意識といたしまして、我が国の中小企業385万社のうち実際に特許・意匠・商標等を権利化しているところは約3.3万社、1%にも満たないという状況が現状でございます。
この対策としましては、中小企業自らが知財を意識する。権利化して活用していくというふうになっていかなければいけないところが一つございますし、そのためには必要に応じて大企業や大学との連携も必要であろうというふうに考えてございます。
こうした問題意識に立ちまして、3つの観点について議論いたしました。
1つは中小企業自身の知財戦略の強化。2点目が中小企業による大企業の知財活用促進、いわゆる産産連携というもの。3点目が大学の知財活用促進、産学連携。こちらの3点について御議論をいただいたところでございます。
資料の2ページに移りますけれども、中小企業と一口に言っても幾つか層があるのではないか。タスクフォースの中では知財活用挑戦型というものと知財活用途上型、少なくともそういう2つを意識しながら検討すべきではないかということで、議論が進んだところでございます。
まず1点目、2ページの中小企業の知財戦略強化です。これまでも知財総合支援窓口等でいろいろ中小企業への支援を続けているというところでございますが、いろいろとその課題が出てございます。
3ページ目ですけれども、知財活用挑戦型の方の知財戦略強化という観点では、権利化・標準化・秘匿化し、活用して事業化につなげるための支援が必要であるという御意見をいただいております。特に地方においては知財とビジネスの両面からアドバイスできる人が不足しているという御指摘や、技術だけではなくて、ブランドデザインに関する支援も必要であろうという御意見を多数いただきました。
A知財活用途上型の中小企業ですけれども、こうした中小企業については、まず知財についての意識を高めることが必要であろう。そのためには地方自治体等のいろんな中小企業を支援する関係者に対する知財啓発も必要であろう。そういった議論がなされたところです。
それを踏まえて今後の方向性ですけれども、3ページから4ページ目に書いてございます。まず、知財活用挑戦型の企業につきましては、これまでもやっておりますが、人的支援を強化するということ。それから、権利化のみならず、標準化・秘匿化も含めて支援すること、あと、デザイン・ブランドを活用した事業化支援というものが必要であろうという取りまとめとなっております。
知財活用途上型の方ですけれども、まずは知財啓発の強化。そのための教材などのツールの開発、こういったところが必要であろうという議論がなされました。
2つ目の論点は産産連携でございます。資料の4ページです。こちらは、これまでも知財ビジネスマッチングということで、大企業が保有している特許等を中小に活用してもらうという、川崎市の取組などに代表される例がございますが、まだいろいろと課題があるころで、具体的には4ページの下、知財を活用してビジネスをつくり出すプロデューサー的人材の育成・ネットワーク化というのが必要なのではないかという問題も出てございました。
2つ目の問題として、5ページ目の真ん中ほど「A大企業の参画を拡大させるための取組」ということで、こういう取り組みで大企業が経済的なメリットを見出せないというところもあり、特に経営幹部の方のこういった活動への理解がなかなか進まないという御意見も頂いています。そのあたりを政策的に後押しすることが必要ではないかという御意見も出されたところです。
あと、そういった活動を支えるデータベース等のインフラ整備も重要であるという御議論もいただきました。
こういったところを踏まえて、今後の方向性です。資料の6ページの真ん中より下のほうです。まず「@橋渡し・事業化支援機能の整備」ということで、こういった人材の育成・配置・ネットワーク化が必要であるということ。
Aとしまして、大企業の参画を拡大させるために、ビジネスマッチングに関する取り組みについて、例えばそういうところに積極的な大企業を表彰するとか、そういったことが必要なのではないかというところで方向性をまとめてございます。
3点目、産学連携ですけれども、7ページのところに書いてございますが、これまでも産学連携はいろいろ取り組まれているところですが、まだ十分ではないところもあろうという御意見をいただいておりまして、例えばTLOの数も一時は48ありましたが、今は36に減っているということで、なかなか難しいというところも意見として出されております。
他方で、四国の例に見られるような、1年間で収益が30倍以上にもなったという例も紹介されていて、地元の金融機関を巻き込みながら中小を積極的に訪問したということが成功の秘訣であるというような話も紹介がなされました。
こういったところを踏まえて、意見と課題ですが、8ページになります。
まずは、@大学の知財戦略強化というものが必要であろうという点。2点目としまして、先ほどの産産連携と同様ですが、橋渡し・事業化支援機能の整備が重要であるということ。あと、大学のインフラの整備というのが必要であろうという取りまとめがされました。
これらを踏まえた方向性ですけれども、10ページになります。今後の方向性ということで、まず大学自身の知財戦略強化。2つ目として橋渡し・事業化支援の人材の育成強化。
3点目としまして、共同研究の特許出願の形態とか、研究契約のあり方の検討といったところが今後の方向性として出されているところでございます。
最後、10ページの一番下「おわりに」のところなのですが、一番重要なところは、そこに書いてございますが、達成目標を定めて、これに基づいてPDCAサイクルを回すと。着実な政策の実現。ここが肝心なところであろうかというふうに考えております。
後ろの方は、タスクフォースで紹介されましたメンバーの方々のプレゼンテーションの概要が載っておりますので、後ほど御参照いただければと思います。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
続きまして、知財紛争処理タスクフォースの報告を事務局よりお願いいたします。
○北村参事官 資料2を御覧ください。「知財紛争処理タスクフォース報告書」でございます。こちらもタスクフォース座長、相澤委員の取りまとめペーパーという形で出させていただいております。
まず、「はじめに」のところですけれども、ことし、知財高裁ができてから10年を迎えたという節目の年であるということで、これまでの知財紛争のところですが、実務家からは一定の評価がされているというところかと思います。
他方で、今の知財紛争において、証拠収集を十分に行えないとか、損害賠償額が十分でないといった問題も示されているというところも実情でございます。
こういった中、我が国が目指すべき方向ですけれども、1ページ目の一番下の方に書いてございますが、国内外のユーザーから選択される実効性の高いシステムの実現。そして、我が国の知財紛争処理システムの利用が国内外のビジネススタンダードとなるということ。こういったところを目指して議論を重ねてこられたというのがこちらのタスクフォースでございます。
個別の論点を一つ一つ簡単に御紹介申し上げます。
まず、2ページ「証拠収集手続」でございます。被告の側に証拠が偏在しているという知財紛争の特徴がございますので、なかなか証拠が出てこない、立証が困難であるというのが問題意識として出されました。
さまざま議論されましたけれども、今後の方向性ということで、少し飛びまして5ページ目に書いてございます。「(3)今後の方向性」ですけれども、@、A、Bとございますが、例えば@具体的態様の明示義務という規定が今ございますが、このあたりをもう少し検討すべきではないかという方向性。
2点目としまして、文書提出命令という規定について、もう少し検討すべきではないかと。
3点目としまして、その文書を提出してもらうに当たって、秘密保持の命令がきちんと運用されることが大事であろうという御指摘。
こういったところで方向性をまとめてございます。
2点目の論点「権利の安定性」ですけれども、こちらは、特許権侵害で訴えたときに、逆にその権利が無効にされるという問題の是非について議論がなされたところです。
こちらも今後の方向性だけ申し上げますと、7ページの中ほどになります。産業政策上の観点を反映した進歩性水準の判断が重要であるということに留意しまして、権利者と被疑侵害者とのバランスを確保するということで、今後検討すべきということでまとめてございます。
3点目の論点「損害賠償額」です。こちらも損害賠償額が低過ぎるのではないかという御指摘をいただいているところでございまして、議論の末、今後の方向性ですが、9ページから10ページ目にかけて書いてございます。
例えば10ページ目、@の特許法102条という損害賠償に関する規定について、少し見直しが必要なのではないかという御意見とか、あと、損害賠償の中でなされる寄与率という考え方について、少し検討すべきではないかということ。
民法の不法行為の枠から踏み出すという考え方もあるのではないか。そういった意見も示されたところでございます。
4つ目の論点「差止請求権」でございます。こちらは、結論だけ申し上げると、11ページの一番最後段落の今後の方向性ですが、タスクフォースの中では、原則は制限すべきではないけれども、標準必須特許の場合とか、PAEと呼ばれる者の差止請求については、今後慎重に検討すべきではないかということで、タスクフォースの方を取りまとめてございます。
5つ目の論点は、12ページになりますが、制度運用ではなくて、中小企業支援という観点でございます。中小企業が権利を持って訴えた場合になかなか勝てない、勝訴率が20%以下に留まっているのが実情でございます。こういったところを踏まえて議論がなされまして、方向性として、13ページの下の方に書いてございますが、人的リソース、経費の面で中小企業をサポートすることが必要なのではないかということで結論づけられております。
6点目の論点「情報公開・海外発信」ですけれども、14ページになりますが、我が国の知財紛争処理システムがよりよく国内外に理解されるためには、情報発信をきちんとすべきということでございます。
最後の論点「地方における知財司法アクセス」ですけれども、現在、特許については、東京、大阪のみに専属管轄しているという実情がございますが、こういったところについて御意見をいただきまして、方向性として、16ページになりますが、例えばテレビ会議システムなどの活用も進めて、地方からのアクセスを向上させるべきではないかというような御意見もいただいたところでございます。
事務局からは以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
前半の地方のほうのタスクフォースは、私が座長としてやらせていただきました。後半のほうは相澤委員に座長をお願いしました。何か補足事項がございましたら。相澤委員、よろしいですか。
○相澤委員 はい。
○渡部座長 それでは、タスクフォースの報告のほうは終わらせていただきまして、「知的財産推進計画2015」(素案)についての議論に移らせていただきたいと思います。
昨年秋より検証・評価・企画委員会及び2つのタスクフォースを開催してまいりました。当該計画(素案)につきましては、各会合で委員の皆様から御意見をいただきまして、それを踏まえまして作成をしております。
まずは素案の内容について事務局より報告していただいた後、自由な御議論をいただければと存じます。
まず、事務局より御説明をお願いいたします。
○田川参事官 それでは、「知財推進計画2015」(素案)につきまして、御説明をさせていただきます。
まず、全体の構成でございますが、1枚目にございますように、第1部と第2部ということにしております。第1部の重点3本柱といたしまして、「地方における知財活用の推進」、第2といたしまして「知財紛争処理システムの活性化」、第3といたしまして「コンテンツ及び周辺産業の一体的な海外展開の推進」ということにしております。これは、4月14日に行われました知財本部会合におきまして、総理からこの3つの点に重点を置いて検討すべきという御指示を反映したものでございます。
第2部といたしましては、その重点3本柱以外のものにつきまして、引き続き取り組んでいくべきこと、新たな視点として取り組むべきことということで、8つの課題というものを提示しているところでございます。
それでは、順に概要を御説明したいと思います。
まず、「第1.地方における知財活用の推進」でございますが、問題意識につきましては、先ほどのタスクフォースの説明でございますので、施策を中心に簡単に御説明いたします。
5ページでございます。まずは「中小企業の知財戦略の強化」ということで、地域の知財支援体制の強化。地域の知財戦略本部を活用していくということ。
6ページ目でございますけれども、事業化の支援といたしまして、相談機能の強化、知財総合戦略支援窓口、あるいは一般的な中小企業支援の窓口でございますよろず拠点との連携を強化する。INPITに知財の専門家、事業戦略を踏まえて、知財戦略の構築支援、体制を整備するというのがございます。そのほか、デザイン・ブランドの活用、融資における知財活用の推進、海外展開の支援というものがございます。
権利化・標準化につきまして、料金制度についての見直しの検討、あるいは地域の中小企業さんへの支援といたしまして、出向いて審査をする巡回特許庁というものを盛り込んでおります。
標準化の支援体制の強化、大企業との係争の際の支援というものを盛り込んでいるところでございます。
なお、文言につきまして、先に申し上げるべきでございましたけれども、現在、細かな文言も含めて各省と調整中でございまして、調整中のものには「調整中」ということにしております。
それから、知財啓発の推進。
8ページ目に参りまして、中小企業と大企業・大学との知財連携の強化ということ、橋渡し人材を配置して支援をしていく。
そのネットワークを図っていく。
さらに、その基盤といたしまして、表彰制度等を活用して、大企業の取り組みをできるだけ企業の経営層にもアピールするような形で進めていきたいというのがございます。
そのほか、その基盤といたしまして、TLOの評価と事業の改善、開放特許データベースの充実・活用というものを取り上げております。
知財紛争処理システムにつきましては、14ページから15ページに書いております。証拠収集手続、特許権の安定性の向上、ビジネスの実態を反映した損害賠償額の実現、権利行使につきまして引き続き検討を加えていくという方向でございます。
活用の促進といたしまして、相談体制の強化、訴訟経費に対する支援、テレビ会議の活用といったもの、あるいは地方における知財専門家へのアクセス支援。それぞれ細部について精力的に調整をしているところでございます。
さらに、海外等に対する情報発信、情報公開についても盛り込んでいるところでございます。
続きまして、コンテンツの海外展開でございます。20ページからでございます。課題といたしまして、まず第一に海外展開しやすいコンテンツの制作・確保ということで、現地ニーズに即したコンテンツを作成するための共同製作の支援でございますとか、既存のコンテンツの現地化の支援、21ページでございますが、権利処理をさらに迅速化するための取り組みというものを盛り込んでおります。
次に、継続的な展開を行っていくということから、放送枠の確保の支援。プロモーション、現地化等に対する支援を継続していくといった取り組みを盛り込んでおります。
続きまして、23ページ目でございますが、コンテンツと関連産業の連携ということで、波及効果の多いコンテンツ産業を海外に展開して、そのほかの非コンテンツ産業へも波及させて、一体として展開しようということで、官民の連携、事業者のマッチングのための横断的な仕組みを検討し、整備するということを盛り込んでおります。
そのほか、共通的な課題として、双方向性をきちんと確保していこうと。日本が出すだけではなくて、海外からも受け入れるという取り組みについても盛り込んでおります。
第2部でございます。
第1といたしまして、世界最速・最高品質の特許審査を行うということでございます。具体的な施策については、26ページから29ページにかけて記載しております。
まず、特許審査の観点につきましては、さらに迅速化と品質の向上を図っていく。そのための品質管理を進めていくというのがございます。意匠制度についても見直しを検討するということを調整中でございます。
知財システムの国際化、新興国に対するキャパシティビルディングなどを進めていく。
あるいは審査協力、特許審査ハイウエイの拡充を行うといった方向を出しております。
28ページ目に、さらに農林水産分野における知財戦略の推進ということで、今般農水省でまとめました知財戦略を検証し、さらにそれを実施していくという観点を盛り込んでおります。
続きまして、職務発明制度につきましては31ページ、32ページでございます。職務発明制度につきましてはガイドラインの策定を盛り込んでおります。営業秘密につきましては、水際措置の導入でございますとか、あるいは32ページ目、マニュアルの策定、ワンストップの支援、官民連携といった観点を盛り込んでおります。
続きまして、「国際標準化・認証への取組」でございます。具体的には33ページ目から施策を盛り込んでおります。
まずは戦略的標準化の加速ということで、新市場創造型標準化制度、新たな制度を実のあるものにしようということでの取り組みでございます。そのための人材育成でございますとか、34ページ、中小企業、中堅企業に対する支援体制の強化。
個別分野では、食料産業分野での国際化戦略、IoTに対応した国際標準化戦略の推進というものを盛り込んでおります。
次に、「4.産学官連携機能の強化」でございます。
地方タスクフォースとも関連いたしますけれども、それに関連した取り組みとして、36ページにございます。大学の知財戦略の強化に向けた取り組みを促進するということ、国の研究開発プロジェクトの知財戦略を強化する、大学での知財教育を推進するということを盛り込んでおります。
「5.デジタル・ネットワークの発達に対応した法制度等の基盤整備」でございます。
具体的には39ページから40ページでございますが、権利処理の円滑化に向けた集中管理の促進でございますとか、コンテンツの持続的な再生産につながる環境整備、新しい産業の創出環境に向けた制度検討ということで、新規ビジネス、あるいは人工知能等の環境変化を踏まえて、柔軟性の高い規定、円滑なライセンシング体制についての検討を行うといったことを盛り込んでおります。
そのほか、教育の情報化、公共データのオープン化、リサーチデータのオープン化等についても盛り込んでおります。
6がアーカイブの利活用の促進でございます。これにつきましては44ページからでございます。まず、利活用を進めるための基盤的な取り組みを政府で進めるという観点から、44ページ、統合ポータルを構築する。それに向けて取り組みをするというのがございます。
45ページでございますが、そのために関係府省等の連絡会、実務者の協議会を設置する。分野ごとの取り組みとして、各分野ごとのアグリゲーターの取り組みを進めるということがございます。
さらに、基盤といたしまして、46ページ目でございますが、関連する著作権制度についての見直しを進める。
47ページでございますが、利用者に係る著作権者の意思表示ということで、著作者没後の課題等についての検討を行うといったことを盛り込んでおります。
続きまして、「模倣品・海賊版対策」でございます。これにつきましては50ページ、51ページでございます。まずは正規版コンテンツの流通拡大を進めつつ、海賊版対策を行う。さらに、インターネットを通じた知財侵害への対応ということで、消費者への注意喚起でございますとか、民間での取り組みの推進、あるいは国境を越えたサイト、行為に対する措置のあり方についての検討、各国への働きかけ等を盛り込んでおるところでございます。
最後、「コンテンツの人材育成」でございます。これにつきましては、国際的なコンテンツ人材、特にアーティストでございますとか、あるいはプロデューサー、そういった人材の育成を進めていく。アーカイブの関連人材の育成等を進めていくといった点を盛り込んでいるところでございます。
以上でございます。
○渡部座長 ありがとうございました。
それでは、今から「知的財産推進計画2015」(素案)につきまして、委員の皆様から御意見をいただきます。
先ほど局長のほうから言い残しがないようにという御意見をいただきましたが、同時に、時間が限られておりまして、お一方3分間で言い残しのないようにお願いを申し上げたいと存じます。どなたからでも結構でございます。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。では、妹尾委員、お願いします。
○妹尾委員 3点ほど発言をさせてください。
第1点は、ちょっと気になることがあります。特にコンテンツ人財については表書きがあるのですが、いわゆるテクノロジー系の人財育成については、全くこの柱立ての中から消えているということが大変気になっております。人財育成の戦略がつくられて丸10年で、もうエンドが来ていて、その次をつくらなければいけないときに、人財育成がこういうふうに少し陰に隠れているというのはいかがなものかと思います。
人財育成、いろんなところで出ているのですが、この中を見ていると、活用ということと啓発ということが非常に訴えられている。ということは何か。活用人財と啓発人財が更に強化されなければいけないということだと思います。その意味で、「知財推進計画2015」でもそれがきちっと打てる。
特に私が発言させていただきたいのは、次の人財育成計画がこの中で取り組まれなければいけないのではないかということです。確かに中にはぱらぱらとは出ているのですけれども、それが太い柱にならずに、いつの間にか落ちているというのは大変残念だと思います。これは素案ということなので、是非人財育成を強化することを入れていただきたいと思う次第であります。
2番目が標準化についてであります。久々に標準化が表に出てきて、大変良いなというふうに思っています。ただ、その中で、33ページにありますとおり、ここでの人財育成も「標準化に係る交渉を担う人財育成」と入っているのですが、産業モデル、ビジネスモデルの中でどう活用すれば競争力になるのだということをデザインする人間が入っていません。そういう人財を育成しないと、また標準化のための標準だとか、以前のように知財権のための知財権の人財とかというのと同じことになってしまいます。ですので、是非標準化をどう活用すればいいかというところを研究する、そういう標準化の活用人財、あるいは標準化のビジネス上の啓発人財、こういうところへ目を向けて、標準化が自己目的にならないような手だてを打つような方式にしていただきたいということが第2点目です。
第3点は何かというと、ようやく知財推進計画の中に農林水産関係が入ってきたということは、大変喜ばしいことだと思います。添付の参考資料の中に今日発表されている農林水産の知財戦略が入っておりますけれども、これは大変画期的だろうと思います。
というのは何かというと、農林水産業が、従来の国内で生まれたものを国内だけに振興するということから脱して、内内から内外、外内、外外、それに向けて展開する基盤を造りつつあるということなのです。これは大いに奨励すべきものだと思います。
ただし、そのときに、農水独自の領域というのは確かにあると思うのですが、農林水産、あるいは食料産業はほとんど他の産業とオーバーラップする部分なのです。例えばITの活用しかり、例えばロボットの活用しかり、例えばバイオの活用しかり。農林水産業は今や知識産業、情報産業になっているということを考えると、他の工業分野、産業分野と極めてリンクしている、あるいはオーバーラップしているということですから、知財戦略も当然その文脈の中で考えなければいけないと思うわけです。
ですので、農林水産は農林水産だよねという柱立てだけではなくて、今後について、他もオーバーラップ、あるいはリンクしながら総合的に強化する。あるいは地方における創生に知財を使うといっているときには、地域の中心産業は農水、あるいは食料産業ですから、そこのところにも目を届かせるというような感じで更に書いていただけたら良いなというふうに思います。
以上、3点申し述べさせていただきました。ありがとうございます。
○渡部座長 ありがとうございます。
いかがでしょうか。では、川上委員、お願いします。
○川上委員 一つ目は、海外のサーバー経由の著作権侵害や権利侵害は、本当に対策を検討していただきたいと思います。これはずっと持論です。
もう一つは、知財活用において、いろいろルールづくりも必要でしょうけれども、企業で実際に特許権を取得したり、訴訟等をしている現場的な立場から言うと、日本は何が問題なのかというと、みんな特許で訴えないのです。訴えないから、戦ったことのない軍隊みたいなもので、みんな弱いのです。闘ってみたら実は特許権が、全然意味のない権利の取り方をしていた、ということにそのときようやく気づくということです。数だけ競って、中身は伴っていないことがすごく多いです。
これがすごく問題だと思っており、各企業の知財の部署で特許権の数をある程度持っているところは、実際に訴えることをしないと、おそらく日本の知財の力は向上しません。
したがいまして、弊社の中では、知財の部門に数値目標で年間1個訴えるということをやれと指示をしているのですけれども、冗談と思われて実行してくれないのですが、おそらくこのようなことを推進しないと本当に強くならないし、ルールが整備されると、海外の知財を集めてくるいろいろな人たちにいいようにされてしまうと思います。
そうすると、今の法務をやっている人は、日本の社会構造の中で闘う気のない人、できれば静かに今日一日が終わればいいという人たちが集まる構造になっているのです。そもそも闘おうという人は法務部門なんか行かないのです。やはりここが本当に意識改革が必要なので、どこかで社会的なそのようなムーブメントがないと、この風土は変わらないと思います。
なので、所有している特許100件につき1件ぐらいは訴訟費用を国が持つとか、それぐらいのことをしていただいて、まず実際に権利行使をすることに対するインセンティブの仕組みの設計を真剣に考えたほうがいいと思います。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
荒井委員、お願いします。
○荒井委員 今の御意見に勇気づけられたので、私も話をさせていただきます。知財という権利は、特に特許などは特許庁からお金と時間をかけて取って、それが裁判所に行き、侵害を止められる、あるいは損害賠償を取れることに意味があるので、川上委員の御意見に大賛成です。
日本の特許について、推進計画の14ページにいろいろ書いてありますが、日本の一番の特色は、取るだけ取って使わない、権利を行使しないということです。訴訟の件数が、減っていて、その原因は賠償額が低い、権利が無効になることですから、これではいけないと思いますので、今の川上委員のムーブメントに大賛成です。そういう方向でしっかりやる、そのためには勝訴率を上げる、損害賠償額を上げることが必要です。国際的に見て日本は知財を大事にする国だというように変えていただくことが大事です。
今回、相澤座長と事務局の大変な御努力で前向きな方向を出していただきましたが、ただ、川上委員ほどの意見が入っていなかったのは残念で、追加していただいて、是非しっかりやっていただきたいというのが第1点です。
もう一点は7ページの中小企業の関係です。7ページの上の方に料金減免があります。出願に占める比率が、アメリカでは中小企業の比率が2割、日本では1割です。日本経済の強みは中小企業だと言われているのに、なぜ特許を取っていないのか。一つの原因は、料金割引制度が、アメリカは一律半分にして、非常に取り易くしている。それに対して、日本はいろんな要件があり取りにくいという原因があります。地方創生のためにも、中小企業、ベンチャー企業がしっかりやるためには、せめてアメリカ並みの料金割引制度に早くしていただきたいと思います。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
いかがでしょうか。では、前田委員、お願いします。
○前田委員 きれいにまとめていただきまして、ありがとうございます。
36ページの大学の産学連携についてです。中小企業と大学との連携の目線で書かれている感じがするのですけれども、大きな事業に持っていくときには、大企業との連携も大変大事だと思っています。契約の柔軟性などの側面で、大企業と実施するという観点からも書いていただけると好ましいと思います。
あと、医学系にとっては、特許と同時に有体物譲渡契約、すなわちマテリアル・トランスファー・アグリーメントが大変重要ですが、この契約が上手にできていないと、せっかく生まれた知財が初めから無効になってしまったり、好ましくない状況になってしまいます。是非、マテリアル・トランスファー・アグリーメントの観点からも契約を上手に結ぶことを記載してもらえると好ましいと思います。
例えば、東京医科歯科大学など、年間500件以上のMTAが発生しています。当然、そこで得られる収入も多いですけれども、上手な契約を結ばないと知財が生まれなくなってしまいます。
農林水産省のところは、妹尾先生もおっしゃっていたのですが、知財は大変重要だと思います。少し分野は違いますけれども、種苗法の観点とか、名古屋議定書で生物多様性とか、いろいろなものが議論されていますので、是非農水省の方と連携して上手に知財を強くしていただけると好ましいと思います。
○渡部座長 ありがとうございました。
いかがでしょうか。では、角川委員、お願いします。
○角川委員 僕も3点申し上げます。
最初は、20ページ「今後取り組むべき施策」として、「海外展開しやすいコンテンツ制作・確保」のところで「現地ニーズに即したコンテンツの制作」ということを指摘されたのは大変適切だと思います。日本からクールジャパンということを押しつけるというふうなイメージ、これが現地にとっては誤解をされやすい、また日本がそういうコンテンツで海外侵略するのではないかという、かつてのそういうイメージが持たれて、非常に危険なところです。そこで、現地ニーズに即したコンテンツ、現地の文化やニーズに合わせる、そういう現地に受け入れやすいコンテンツを。ここに「放送」というふうにこだわっているのがちょっと。放送及びコンテンツ全体ということで、「放送」と「コンテンツ」の間に「・」を入れてくれるといいのではないかなというふうに思います。そのことが1点。
それから、40ページ「権利処理の円滑化に向けた集中管理の促進」と。これもこれからのクラウド上のコンテンツの配信については、非常に重要な問題になってくるわけですけれども、「新しい産業の創出環境の形成に向けた制度等の検討」というところで、インターネット云々ということで5行ぐらい書いてありますが、これも非常にわかりにくい表現になっています。何をおっしゃりたいのかなというふうに思うのです。もしクラウド事業者が自由勝手にコンテンツを利用するということになりますと、これから海賊版が生まれてくるのは、クラウド事業者から生まれてくる危険性が非常に高いと思います。クラウド上の海賊版の氾濫ということが起こってくることはいけないと思います。
過日、京都で著作権の国際会議があったのですけれども、これからのソーシャル時代に海賊版が生まれるのはクラウド事業者から7割、ユーザーから3割というふうな指摘がありました。そういうことを考えますと、法人にこそ著作権を与えて、権利者がたくさんいるときには報酬請求権で処理する。現状の映画における著作権法が非常に適切に動いております。
実際にコンテンツをつくる人というのはリスクを冒すわけですから、リスクを冒してつくったコンテンツをクラウド事業者が勝手に使えてしまうというのでは非常に不公平だと思います。資金を出した人が正当な権利としてコンテンツを活用する。そのコンテンツを活用するときに、現行の著作権法が著作権側に非常に強く働いているのでうまく利用されていないということが大きな問題なのです。
ですから、テレビ等の放送のコンテンツについても、放送事業者がコンテンツをつくっているにもかかわらず、放送コンテンツの権利者が放送させないというふうな問題が起こっていることが大きな問題なのであって、放送事業者がリスクを冒してつくったコンテンツには法人著作権を与えて、放送事業者にコンテンツを展開しやすくするということが必要だと思います。そのとき放送事業者がコンテンツの海外展開が非常に消極的であるという場合には、それこそ国が指導するということが正しいのではないかというふうに思います。
3点目は、コンテンツ人材の育成でございます。これも知的財産戦略本部ができて以来、ずっと人材育成というものが課題になっていて、その割には人材育成が十分できていないということがあって、今日でも大きくなっているのではないかと思います。
52ページですけれども、人材育成というのは、当たり前ですが、個人指導によってなされていくということが前提になっていて、なかなか個人指導ができないということが障害になっているのではないかと思います。
そこで、私は、育成のためのカリキュラム、コンテンツ作成のカリキュラムを作成して、そして集団的な指導ができるような状況をつくれば、人材育成が掛け算でふえていくのではないかと思います。
その際に、そのカリキュラムというのが実際にあり得ないのですね。各大学でポップカルチャーについて講座を持っていると言っても、カリキュラムができていない、あるいはそれが秘蔵されていて公開されていない、そういう問題があります。そこで、ぜひ日本コンテンツの制作のカリキュラム、アニメの描き方、漫画の描き方、CGのつくり方、そういったカリキュラム作成についての支援等、作成支援をお願いしたいと思います。
そして、集団的な指導をするための教育実習の支援ということが必要だと思います。それは国内だけではなくて、実は海外の人たち、日本にいる、アジア、日本コンテンツが好きで集まった人たちに教育実習をして、そして本国に送り返す。それによって、先ほど第1に申し上げたコンテンツの現地化というのが促進されるのではないかと思います。
以上、3点申し上げました。
○渡部座長 ありがとうございました。
いかかでしょうか。日覺委員、お願いします。
○日覺委員 タスクフォースでしっかりと検討され、そして整理され、それに基づいてまとめられた「知的財産推進計画2015」ということですから、しっかりと進めていただきたいと思います。
また、経団連から意見を提出しておりますので、参考にしていただければと思っています。
今日は、その中で2点だけ簡単にお話をしたいと思います。
まず、中小企業の知財戦略強化ですが、やはり日本における中小企業では、特徴ある独自の技術を保有して革新的な技術開発を行っているところもあると思いますが、そうした企業に知財戦略の指導が行える機関を配置することが重要だと考えます。ただ、どのような機関を設けるのがよいかということになりますと、その辺は少し考える必要があるのではないかと思っています。
具体的なアイデアとしては、例えば業界ごとの連携というのが現実的ではないかと思っています。業界ごとに素材から部品加工、そして最終の組み立て、こういった一連のサプライチェーンの中で、いわゆる部品加工というのは、素材や組み立てに比べて比較的規模が小さい中小企業が担っているというケースが非常に多いと思っています。そんな中で、素材や組み立ての大企業等が連携する中で、サポートする体制なり仕組みというのを作っていくことができればよいのではないかと考えています。
ちょっと手前みそになるのですが、東レの場合は、繊維分野で北陸の産地企業を中心に約90社が参加して、東レ合繊クラスターという活動をしておりますが、その中で分科会を作って技術開発や人材育成などに取り組んでおり、ここで私どもは産地の企業に対して知財面での支援を行っているという状況です。参考にしていただければと思います。
2点目は、知財紛争処理システムの活性化の中で1点だけ、権利の安定性についてですが、優れた特許発明に対して、適切に法的保護を与える知財紛争システムを構築するということは、優れた特許権の知財価値を高めることになるので、非常に望ましい方向であるというふうに考えます。
ただ、その前提となるのは、特許が適切な権利範囲で登録されているということと、そして権利者と被疑侵害者の立場のバランスがとれているといったことが必要かと思います。
まず第一に、特許権が創作された発明から過大な範囲までカバーするものと裁判で認められるようになると、特許権の存在が産業の発達を阻害することにもなりかねない。そのためにも、特許庁においては審査の質を担保して、適切な権利範囲での特許登録を実行していただくことが必要であると考えます。
第2は、裁判となった場合に、権利者の立場を強くすることに偏ってしまうと、真の侵害者ではない被疑侵害者の立場で、無謀な権利者に対抗することが困難な状況に追い込まれるということになるのだと思います。
例えばタスクフォースにおける議論でも、特許権が有効であるという推定規定を設けるという意見が出ていますが、何の制限もなく特許権が有効であると推定することには反対をしたいと思います。特許庁において審理がしっかりと行われた範囲において特許権は有効であると推定するということは当然許容できても、審査に考慮されなかった公知例や証拠に対しても特許が有効であると推定することは、権利者を不当に保護することになると考えますので、よろしくお願いします。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
いかがでしょうか。では、喜連川委員、お願いします。
○喜連川委員 喜連川でございます。
大学の立場から、40ページに「教育の情報化」が書いてございますが、その中で一番最後のポツ、41ページ目にまたがっているところに「教材・学習履歴の保存・活用のあり方等の課題の解決に資するため」とありますが、実はアメリカを含めまして、今、教育関係に関するビッグデータが非常にホットな話題になっています。そうしますと、学生がどういうふうに学びのプロセスを経ているかということによって、この子はこういうことが得意だ、ああいうことが得意だといううに人生がわかってきてしまいまして、アメリカは、そのタレントをビジネスモデルにしているというようなところがございます。
しかしながら、私ども教育関係におりますと、教育課程の履修履歴というものは、ある意味で言いますと、その学生のゲノムのような重要なプロパティーを持っているものでございまして、保存と活用以上にどう保護するかという視点が非常に重要だと思いますので、ぜひその辺もお加えいただければ、ありがたいと思っております。
著作権に関しましては、何度も申し上げてまいりました中で、クラウドの利用、あるいは遠隔授業等、緩和がなされて、非常にすばらしいことだと思うのですけれども、論文の著者からの許諾というものを全学会からみんなもらうということをやっていると、ちょっと間に合わないのではないかなと思います。
よりクイックな動きを実現するという意味では、やはりフェアユースを少し御改良いただくことが重要ではないかなと感じております。
大学の知財に関しまして、これは地方ということでフィーチャリングされておりますが、妹尾先生も何度もおっしゃられていますように、大学の知財を取ることだけを目標にして、全然使われていないというのは、地方に限らず、都会のほうが深刻ではないかなと思いますので、都会の大学もそのテリトリーに入るような表現にしていただきたいと思っております。
先ほど標準化の話が出まして、情報処理学会の会長を拝命しておりますと、情報処理学会も学会ポーションと標準化・規格委員会というポーションと2つ持っておるのですけれども、その中で戦略的な標準化みたいなことをやろうと言うのですが、標準化というのはすごく地味で、学校の先生の業績にならない。
ですから、何かもう少しインセンティブメカニズムを入れるということが非常に重要ではないかなといつも感じている次第でございます。
最後でございます。アーカイブというところがございますが、我が国は、多分第5期の中でいわゆるオープンサイエンス、オープンデータというものが重要だという記載が重要視されてくると思うのですが、そういう学術のコンテンツというものと、ここでおっしゃられていますようないわゆるコンテンツとしてのアーカイブというのは、プロパティーは異なるのかもしれないですけれども、プラットホームとしては相当共通なところがあります。しかも、サイエンスデータのほうが圧倒的に大きくなると思いますので、その辺を融合したうまいスキームで進めていくことが、国家としては非常に効率的な運用ができるのではないかと思います。
以上でございます。
○渡部座長 ありがとうございました。
では、奥山委員、お願いします。
○奥山委員 何点かございますが、まず第一は知財紛争処理システムの機能強化ということで、たまたま昨日、著作権の判例を勉強する会に出席していたところ、著作権侵害は認められたのですが、1,000万円請求した損害賠償が5万円しか認められなかったと。5万円では子供のお小遣いという感じが非常に強くします。大人が考えたものがコピーされて5万円というのは、悲しい話としか言いようがないと思っております。
結局、それはどこが原因なのかと考えると、パブコメなんかを拝見しておりまして、日本の制度は、壊れてしまっているわけではないのですけれども、よいところがあって、それを維持しようとしているように見えるのですが、結局、それはローカルな最適化でしかなくて、全然グローバルな最適化につながらない発想になってしまっているということがあるのだと思います。
外を見れば、中国のようにどんどん出願と訴訟件数を意図的に増やしているところもありますし、ドイツのように侵害訴訟を取り込もうということでバイアスをかけている国もあるわけです。ですから、そういうところと闘っていかなければいけないというスタンダードで見直さなければならなくて、昨日の判決を拝見していて、やはり一筋縄ではいかないなというふうに感じました。
タスクフォースにも参加させていただいて、色々意見を言わせていただき、非常によくまとめていただいたと思っているのですが、それを超えるぐらいの議論をこれからしていかなければいけないのではないかと感じております。
2点目は審査の質に関する部分です。今、26ページのところで「『世界最速・最高品質の特許審査』の実現」ということで、これまで非常によい方向に色々なことが動いてきていて、感謝申し上げているのですが、一つ気になっているのは審査官の人数です。人の問題がございまして、今、任期付審査官で何とか辛うじて審査官の数を維持しているという状態なのですが、それがいつまで続けることができるのか。審査官の数が減ってしまっては、きちんとした審査ができないというふうに考えますので、そこのところの手当てはぜひよろしくお願いしたいと思います。
それから、意匠制度のところ、次の27ページになるのですけれども、結局、ユーザーインターフェースをどういうふうに保護するかという議論もされてきたのですが、これもローカルな最適化のような議論になってしまって、監視負担が増えるということで今、議論が立ち消えになっている状態なのですが、これから日本の企業も外へ出て闘わなければいけないときに、日本の制度が外の制度に追いついていないというのは、いささかいかがなものかと感じますし、また、出願の件数が減っているということを考えますと、ここで非常に大きな制度の見直しをしないと、日本の企業が海外で闘っていく基礎ができないのではないかと思います。
最後になりますけれども、23ページのところにコンテンツ分野での「共通的な課題への対応」という項目があって、幾つか書いていただいているのですが、その中でちょっと見落としたのかもしれないのですけれども、統計的データがないという問題が非常に議論の対象になったというふうに考えているのですが、そこが今回おまとめいただいたものには反映されていないように感じています。コンテンツの分野でのデータを収集するというのは非常に大変であることは十分理解するのですけれども、どこかの機関、あるいは幾つかのそういうコンテンツ関連の団体でものですが、そういうところにきちんとデータを集める。そのためには予算も必要でしょうし、そういう統一的な機構を設けるということも必要かもしれませんが、とにかくそういうきちんとしたデータを集めるということをぜひ2015に含めていただきたいと思います。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございます。
では、宮川委員、お願いします。
○宮川委員 宮川から3点ほどお話しさせていただきます。
1つは、私も荒井委員、奥山委員と同じように、知的紛争処理タスクフォースの委員としていろいろな議論に参加させていただきましたので、その点について、少し御報告したいと思います。
いろいろな委員からいろいろな意見が出されて、それを「知財紛争処理タスクフォース報告書」にまとめていただいたのは、大変御苦労をおかけしたと思っております。特に先ほど荒井委員がおっしゃったように、勝訴率が高いとか賠償額が高い、あるいは裁判で無効にしづらいということは、日本が知財を大事にしているということであるという御意見に対して、私を含む法律家の委員からはかなり強い反論が出されておりまして、そういうものではないということも、このタスクフォースの報告書の中に違う意見という形で入れていただいたことに感謝しております。
また、先ほど奥山委員がおっしゃったように、日本で損害賠償額が低いということについては、もちろん民法の原則を大きく飛び越えて知財の分野でどこまで行けるか、そういう前向きな考え方もあり得るのでしょうが、やはり前提として、先ほどの著作権の例で言えば、この著作物を日本のマーケットでどれだけのお金を払ってみんなが利用してくれるのか、そういうマーケット価値というのですか、知的財産に対する日本の評価、価格が低ければ、損害賠償額は高くならないので、そういう意味で、知財というものを日本がどのように評価していくか、知財の価値評価の問題もあるのではないかということを私もご指摘させていただいたと思っております。
そういう中で、「知的財産推進計画2015」の14ページにございますように、知財紛争処理システムの機能強化という点では、それぞれの項目を挙げていただきましたが、考慮すべき要素のバランスを考えながら、逆に余りにも権利の行使を強くすることによって、日本のイノベーション創出を萎縮させるということがないような形で検討していっていただければと思っております。
もう一つ、「知財紛争処理システムの活用促進」という点で、次の15ページに「地方における知財専門家へのアクセス支援」と書いていただいておりますが、知財裁判の管轄が東京、大阪に集中しているという点もございまして、電子会議システム等を活用して地方の中小企業の方へもアクセスを容易にしようと書いていただいている点については、非常に賛成しております。また、地方においても知財の専門家が十分育ち、皆さんのお力になれるように、日弁連や弁護士知財ネットといった地方に知財の専門家をつくろうと活動している団体とも協力していただいて、どんどん進めていただきたいと思います。
最後になりますが、コンテンツ関係につきましては、50ページ「インターネットを通じた知財侵害への対応」というところでございますが、先ほど川上委員からもご意見がありましたように、インターネットを利用した知財侵害というのは非常に捕捉が難しいと思いますので、このようにいろいろな措置を検討していただいて、対応を考えていただくというのは非常にすばらしいことだと思っております。
その中で、2つ目の「インターネットサービスプロバイダや権利者との連携によって自主的な削除対応をする。民間の取り組みを促進する。」という行き方もございますが、このような仲間内できちんとルールを守ってやってくれるインターネットサービスプロバイダだけではなく、海外のインターネットサービスプロバイダという問題もございますので、ルールを守る人たちの自主的な解決のほかに、例えばインターネットのアクセス制限を行うといったもっと強いアクションがとれるような方策もその検討の中に入れていただけたらと思っております。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
瀬尾委員、お願いします。
○瀬尾委員 非常に丁寧なお取りまとめで、内容的に異議はございませんが、ただ一つ、この中で私の感じるところがあるので、申し上げます。
まず第一に、「2015」という年代、先ほどからございます2020年にオリンピックを控えた今、必要だというふうな部分、つまり、時代感覚のような視点をもっと強く出して、今、必要であること、それから2年後に必要であること、5年後に必要であること、そういう視点をもうちょっと強く出していってもいいのかなと感じました。
逆に言えば、今、非常に強く押して2020年にかけての経済効果を最大化するような施策こそこの一、二年で必要なのではないかなと。そういう側面をきちんと出していくことで今しかできないことがあるだろう。そして、今かけるべきお金があるだろうというふうに思っております。
その中で、今回、アーカイブについてなのですが、細かくいろいろなものが進捗して、実際に形が見えてきていますけれども、一つ申し上げると、経済施策としての具体的な姿がまだ見えていないような気がいたします。前から申し上げているように、これを海外発信、国内の地方に至るようなデジタル・ネットワークの中心として考えて、ほかの分野に対する効果が見込めるようなインフラとしてきちんと整備する時期に来ているのではないかなと思っております。
経済施策としてどうやってこれを立案するのか。そして、これでどうやって海外に対して効果を持たせるのか。例えばパッケージとして日本のアーカイブシステムを海外に売り込むことだって考えられると思いますが、そのような経済施策としての側面をもっとこの知財会議で、こういうふうな形のアーカイブが経済施策として有効であるというような方向性を強く議論して、出していくということが今後望まれるような気がします。そうしないと、アーカイブと言っても、何となく文化と保存のためのものというだけでは、ここのテーマとして果たしてどうであるのかという問題になってしまいます。
もちろん、文化的な効果も期待はできますけれども、ここでテーマにしているアーカイブについての議論の深掘りと具体的な効果は是非進めて、もっと進んだ提言が盛り込まれることを今後に期待しております。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
竹宮委員、お願いします。
○竹宮委員 私は大学関係者であると同時に漫画家でもあるわけですが、その立場から、項目がどことは言えないわけなのですけれども、ひとつ言っておきたいのは、知財に関することを教育するという点についてはいかがでしょうかということです。ここでまとめられていることなどは、若い人は全然よくわかっていない。自分と関係ある部分に関しては田銷の関心があっても、一般にどんな考え方が検討されているのかなどについては全然わかりませんし、広報と教育ということを考えていただきたいなと思っているところです。それに関しても少し盛り込んでいただけたらなと思う次第です。
もう一つは、インターネットの利用に関する知財侵害に関しては、ごく最近起こっていることであって、なかなか専門家というものがいないこともあって、教育も行き届いていません。実際に学生の中でそういった問題に絡んでしまうようなことも起きています。
そういうことを学生に教育するということばかりでなく、人材を育てるということに関しては、そういった人材が役目につくところまではいいとして、意識的な啓発が絶対に必要となってきますので、それについて、もう少し具体的に考えを盛り込んだほうがいいのではないかなというふうに思います。人材育成とただ言うのではなく、それをどのように教育するのかということについて考え、方向性ということでもいいので入れられたらいいかなというふうに思います。
学生の受け入れに関しても、大学にそういったコースなりができればいいのかなというふうにも思いますし、この知財の検討会議が広報されることも大事なのではないかなと思います。ごく一般の人に対して難しくない形で伝えることができれば、それはインターネットでも構わないと思いますが、もっと積極的に発信されれば、もう少し全体の理解や、この後、どうなっていくのかということが理解できると思います。教育の部分でもそういった方向性、コンテンツ人材、アーカイブ人材というものを育てていこうという機運も出てくるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
○渡部座長 ありがとうございました。
では、長澤委員。
○長澤委員 長澤でございます。
今まで私が紛争タスクフォースとか営業秘密の委員会で余り話していないようなことを中心に、3点ぐらいに絞って話をします。
妹尾委員がおっしゃったことと重複するかもしれませんが、国際標準の技術を決定する会議というのは全て英語で、すごいスピードで進めていきます。従って技術を提案したり発言する標準の策定作業はネイティブのイングリッシュスピーカーでないと、とてもついていけません。また、仲間づくりや、仲間と共に技術を標準技術として採用させることもできません。そういう意味で、我々も英語がネイティブで、既に国際標準の作業の経験がある人間をヘッドハントして雇い入れて、成功に結び付けている例があります。
逆に日本語をネイティブにする人財は、これは妹尾委員がおっしゃったこととほぼ同じなのですが、標準化策定のロードマップや技術戦略等を打ち出せる人間を育てる方向がよいと思います。今まではこれらの戦略が欧米中心に行われてきたわけですから、その部分に長けた人財を育てることに重点を置くのが良いのではないかと思います。
2番目は大学と地方の戦略についてですが、大学の先生と話をすると、我々に特許を譲渡してくれる例が多くあります。譲渡価格はそれほど高い額ではありません。なぜ大学が簡単に特許を譲渡するかというと、大学は特許権収入が幾らで、支出が幾らでというのを少し気にし過ぎであるからではないかと感じます。収支を気にし過ぎると、特許を売却する、すぐにえないものは捨てる、といった発想になりがちだと思うのです。知的財産というのは長期投資であり、20年間有効なため、評価の基準に特許の収支というものをあまり強調されない方が良いのではないかと思いました。
我々の会社の中でも経理本部は収支を追いかけますが、知財戦略というのは短期の、例えば、この四半期の収支がどうこうという次元のものではありません。10年後、20年後を見てどういう活用をするかということを考えるのが知財の戦略なので、そこは考慮していただきたいと思います。
例えば大学や大企業の財産を中小企業が使うことについても、ビジネス上、将来的にも全く競合することはない場合、例えば、部品を作っている中小企業がいて、その部品が我々のビジネスと関係ない場合、私は無償でライセンスを出しても構わないと思っています。ただ、そのビジネスが成功した場合には少しライセンス料が得られる程度で、全く構わないと思っています。例えば、当初5年ぐらいは無償というのも受け入れられると思います。
それから、昨今は残念ながら部品でも1社の特許だけで全てをまかなうのは難しいと思います。そうすると、ある程度の組織、川崎モデルのような組織のメンバーが、全て5年間は無償にするから、頑張って事業を立ち上げてくださいというぐらいドラスティックなプログラムをプロデュースするようにすればどうかというように感じました。
3番目は紛争処理の話ですが、私も少しだけ話をしますと、相澤委員がペーパーを出していらっしゃるように、確かに新興国に悪用されるというのは非常にまずいと思います。そういう意味では、ある程度の強さを保たなければいけないのですが、先ほど日覺委員からも出ていますように、バランスというのが非常に大事であり、その中で、例えば差止請求権というのは私が言い出したことなのですが、これについては、いわゆる「権利の濫用」や「競争の阻害」等という言葉をキーワードにして制限するのが良いというふうに感じています。
最後に、手短に営業秘密について話しますが、営業秘密は、今回不競法の改正が行われ、私も委員を務め、かなりの希望を経産省で盛り込んでいただいたということで、万々歳という向きもあるのですが、実は、万々歳で終わってほしくないのです。刑事に関しては、これまでも刑事罰というのがあったわけです。親告罪でしたけれども。ただ、ほとんど執行がなかったというのが実態だと思うのです。
今度非親告罪化になり、未遂も罪となったときに、これは誰が調べるのでしょうか。そのためには相当な予算と警察関係の相当強い協力が必要ではないかと思っています。官民戦略会議が立ち上がり、そこで話し合いがなされるということですので、そこで今後、予算等が、どのような調査をどのようなインセンティブで実行していくかという具体的な施策を含め、是非ポジティブに議論して欲しいと思います。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
迫本さん。
○迫本委員 これは全体的にすばらしい方向で取りまとめられているので、こういう形で進められればと思います。我々に関係するコンテンツの海外展開というのもこういう形でしていただければいいのではないかと思います。
海外展開というのは、前にも申し上げたのですが、コンテンツをどう展開するかということ、基本的には民間の何とか儲けるぞとか、当てるぞという、いい意味での山っ気が中心になるものだというふうに思っております。そういう意味では、民間の自助努力を整備するよう、基盤を国が整備していくということが本来あるべきスタンスではないかと思っております。
そういう意味で、何かのコンテンツを選ぶとかいうことはもうマーケットに任せて、あとは民間が自助努力できるように整備するというのが基本だと思っております。そういう意味で、21ページの「制度的課題の検討」というのを入れていただいたことは、大変大きいことではないかと思っております。制度的に対応できれば、価値中立的ですから、個人だろうが、法人だろうが、大企業だろうが、中小企業だろうが、いいもの、受け入れられるものが海外に伸びていくという形になれば、それは本来あるべきだと思います。
ここに「資金調達の円滑化などの」と書いてあるのですが、前に申し上げたように、税制とか会計上の制度なども含めて制度的な関係を検討していただけたらと思っております。
いつもこれを申し上げますと、財務省がうんと言わないのでと答えられるのですけれども、でも、財務省の次官の方とか皆さんに聞くと、嫌だなんて言ったことはないなどとおっしゃいますし、ぜひ括弧のところに「財務省」というのも入れていただけたらなというのが私の要望でございます。
もう一点、「国際共同製作の促進」とあるのはすごくいいと思うので、やっていただけたらと思うのですが、ただ、先ほど私が申し上げた観点からすれば、では、誰が支援する作品を選ぶのだという話になるので、やはりこういうのはマーケットに選んでもらうような形にしたほうがいいのではないかなと思います。
こういう話をするときに、私も国とのあれで前からいろいろなお話を伺わせていただいておりますけれども、行政のほうは、民間の自助努力が足りないので、もっともっとてこ入れしていけば海外展開というのが進むのではないかという思いもあり、民間のほうは民間のほうでやっているのだけれどもみたいなことがあって、私も役所の方から言われるのと現場の者から言われるのとの間に入っていて、そこはちょっと食い違っているような気がします。例えばそういうことを一時的に国がやれば、一気にそれで活性化していくかというと、簡単にそうとは言えないと思いますし、また、我々が御批判として受け入れてもっともっと頑張ってやらなければいけないという点もあると思うので、現場レベルでの交流、情報交換をやっていけたらなというふうに思います。
私、ANEWも外国人のプロデューサーを使ってやっていくみたいなお話になったときに、それでいくのかなという思いがあったので、あれなどがどういうふうになっているかというのも一度検証されて、現場レベルでの率直な意見交換というのをやったらどうかというのが、今後こういうのを進めていく上において有用なのではないかという点を感じました。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございます。
では、井上委員、お願いします。
○井上委員
まず、コンテンツの海外展開の推進について、さまざまな施策が講じられており、その成果を期待したいと思います。しかし、21ページにも指摘があるように、施策の継続性をどう確保していくかということが非常に重要であろうと思っております。日本コンテンツの海外への浸透を図るというプロセスは、一種のブランド構築で、継続しないと効果が上がらないということがあります。民間の自助努力も必要ですので、永続的に一つの施策を続けるということはできないと思いますが、施策が一旦終了した段階で、その後、民間で取り組みを継続していくような仕組みづくりを、施策を展開している間にきちんと進めていただく必要があると思います。
その際に重要になってくるのは、評価指標を設定するときに、施策を実施している期間の数値目標にとらわれてばかりいるのではなく、その後何等かの形で継続していくための仕掛けをつくっているかということも指標として明確な形で入れていただければと思っております。
2点目は、39ページのICT活用教育の推進の点です。これは初等中等教育及び高等教育機関でのICT活用教育ですとか、デジタル教科書・デジタル教材の開発ですとか、こういったさまざまな問題が関連しているところでございます。
現在の著作権法の教育関連の権利制限規定は、ICT活用教育への対応という点で見ますと、かなり限定的であり、また、権利の集中管理等のライセンシング体制も十分なものとはなっていないとい問題があり、ICT活用教育の中で他人の著作物を使うのが難しい状況が生じています。
多様な著作物を教育現場で容易に利用できるような環境が実現することが求められており、そのために必要な著作権制度の問題を整理し、解決策を模索することは、喫緊の課題であろうと思います。スピード感を持って検討していただきたいと思っております。
検討の視点としまして、著作者への適正な対価の還元ということはもちろん重要です。また、教育機関の権利処理コストを低減するということも重要です。しかし忘れてならないのは、教育を受ける側の学生や生徒の立場、視点であろうと思います。例えばライセンシング体制を構築する際、個別の大学ごとでライセンスを結ぶということにしますと、大学の財源の問題で、ある大学ではライセンスを結べず、教員は他人の著作物は使わないで教材をつくってくださいということになってしまうと、学生が質の高い教育を受けられなくなってしまうというような問題が生じます。学ぶ側の立場にたった制度づくり、体制の構築を考えていただきたいと思っております。
もう一点、41ページのリサーチデータのオープン化の点でございます。これはオープンサイエンスとの関係で科学技術イノベーション総合戦略の中で議論されているところだと思います。ここでは、公的助成を受けた研究成果に議論の範囲を限定するような書きぶりになっております。しかし、学術情報基盤を整備して、イノベーションの創出、新産業の発展、創成につなげていこうという目的に照らすと、議論の土俵を公的助成を受けた研究成果に限定するのは狭過ぎるのではないか。もちろん、施策としては、公的資金を投入したものについてしか展開できないものもあるでしょう。しかし、議論の土俵としては、公的資金を投入したものに限らず、広げておくということが重要ではないかと思います。
先ほど喜連川先生からも御意見がありましたけれども、これはアーカイブの一種という捉え方もできます。大学の図書館でのジャーナル問題などもございます。リサーチデータの公的資金投入というような限定をかけない形で議論していただきたいと思います。
リサーチデータの問題に関しては、アカデミック・コミュニティの中で完結する問題ではなく、産業界との関わりの中でリサーチデータをイノベーションにつなげていくというのが重要になってきます。オープンとクローズの切り分けも含めて、どういうふうに整理していくかということについて、知財戦略本部がしっかり目配りをしていくことが重要であろうと考えております。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
それでは、重村委員。
○重村委員 全体によくまとめてあって異論はないのですが、1つだけコンテンツの海外展開の部分で申し上げておきたいのは、今、迫本さんからもお話がありましたように、民間が自助努力でもってやっていくと同時に、各省庁も横断的に協力するということに関して是非そのようにお願いしたいと思います。問題点として一言付け加えれば、海外の在外公館の認識と情報共有の問題だろうと思うのです。
実は先週も東南アジアに行ってきたのですが、大使館の中で省庁から出向されている方は、ここで議論されていることをよくわかっていらっしゃる方が多い。ただ大使館によっては非常にクールな反応をされるところもある。「こういうことをやってどういう意味があるのですか」と言われてしまう。これは一つの特殊な例だろうとは思いますが、熱が随分違うなということです。
そういう意味で、国内外を問わず情報が共有化されること、国内外が一丸となってこういう施策を行っていくということが必要だろうと思いますので、ここで議論されていることがどういう形で海外の機関に発信されていくのかということが重要な気がいたします。
一方で、JETROであるとか、JNTOであるとか、あるいは日系企業の商工会議所というところは非常に熱心です。その意味では、我々が考えている以上に協力していただけるのだけれども、その核になるのは在外公館だと思いますので、その点は、どういう形で表現するかは別にして、そこの部分に留意していただければというふうに思っています。
○渡部座長 ありがとうございます。
杉村委員、お願いします。
○杉村委員 杉村です。
7ページの一番上でございますが、「中小企業の海外展開を支援するために一気通貫の支援を強化する」という記載がございます。具体的にどういう形の一気通貫の支援であるかということが書いてありませんので、幾つか例示記載をしていただきたいと思います。
例えば15ページの上から2番目のところには「訴訟経費に関する支援」ということで、「中小企業の紛争処理システムについての必要な支援を検討」と書いてございますので、この一気通貫の支援については、人的側面や経済的側面についての支援を強化するというような例示を記載していただけるとありがたいと思います。
「巡回特許庁」の件でございますが、地方における知財活用促進タスクフォースの報告書を見ますと、4ページのところに「中小企業に対する支援を強化」ということで、「デザイン・ブランドを活用した事業化支援」が記載されておりますので、巡回特許庁も特許の面接というように特許だけに限定せずに、意匠、商標の巡回面接についても検討・活用していただきたいと思います。「巡回特許庁」の欄に、「意匠」「商標」という文言も付加していただければと思います。
26ページに「『世界最速・最高品質の特許審査』の実現」と書いてございます。中小企業が今後、意匠登録制度を活用していくに当たりましては、やはり意匠の審査も世界最速・最高品質ということの実現を希望いたしますので、特許だけに限らず、意匠についての世界最速・最高品質の審査の実現も図っていただければと思います。
28ページの「農林水産分野でのブランド化の促進」ということで、地理的表示保護の活用促進という記載がございます。この文言を見ますと、地域のブランド戦略に応じた地域団体商標制度等と書いてございますが、地理的表示保護に関しましては、各国保護制度がバラバラでございますので、「地域のブランド戦略」だけではなくて、グローバル戦略も視野に含んだ活用の促進を図っていくべきと考えます。また、推進計画の51ページの下から2番目のところには、農林水産物の侵害対策強化として海外展開のことがうたわれております。この方針とも一致すると思いますので、「グローバル戦略」という文言を付加記載していただきたいと思います。
最後になりますが、少し戻りまして、15ページでございます。知財紛争のタスクフォースに私も参加しておりましたが、報告書の14ページを見ますと、「意見と課題」というところで、例えば情報公開に関しては、いろいろな例示がございます。一方で、後半では「例えば、当事者名、期日、経過、和解の事実等」と記載されております。弁理士のネットワークを通じまして、どういうものの情報公開が要望されているのかを複数の弁理士にお聞きしたところ、統計的なデータ、例えば和解の件数がどのぐらいあるのか、和解について差止請求が伴っているのか、特許、意匠、商標等の件数比率はどのようになっているのか、また仮処分がどのぐらいの件数あるのか等の、統計的なデータの情報公開に関する要望が強くございました。
一方で、当事者名とか訴訟の経過は、個別事案の情報でございます。そもそも当事者がこういう個別事案の情報の開示を拒否する場合があることも多く、当事者である原告も被告も「訴訟」を起こすことに伴う風評を特に気にしております。従いまして、個別具体的な事項の情報公開は、訴訟提起を躊躇させる要因にもなりかねますので、個別事案的な情報の開示については慎重な検討をお願いしたいと思います。
むしろ推進計画には、先ほど申し上げましたような統計的なデータをまず積極的に情報公開していただくことを記載していただきたいと思いますので、文言を、上記個別具体的事項の例示より、統計的なデータの例示の情報公開への期待に変えていただくことを希望いたします。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
では、山本委員。
○山本委員 過激な意見を4つぐらい言います。
36ページの国プロですけれども、前の小委員会でもお話ししましたが、護送船団方式をもうやめたほうがよいのではないかと思っていて、1社でも採択が可能なスキームにしたほうがよいと思っております。国のお金なので、1社だけにお金を出すというのはなかなか通らないという意見が多いのですが、例えば複数社が集まって共同研究をやってくださいと言うと、本当の意味での深い共同研究にはならなくて、当たり障りのない研究成果しか出てこないということがあるので、1社でも採択できるような国プロに変えていかないといけない。国によっては1業種1社しかないところとどうやって闘うかという話ですので、そこを考えたほうがよいと思います。
36ページの最後に「知財マネジメントの在り方を検討し、必要な措置を講ずる」と書いていますが、これは何もやらないというふうに見えるので、ぜひ書いていただきたいと思っております。
2点目は、特許は取って守るものではだんだんなくなって、どうやって活用するかという時代になってくるだろうと思っていますので、特許法73条の共有特許ですが、相手方の同意がなくても自由にライセンスができるようにして、ただし、別段の定めがあったらこの限りではないと。今の内容を入れかえるだけですが、そうしていただけないかと思っております。
3点目は、37ページの「大学等における知財教育の推進」というのはよいことなのですけれども、ぜひグローバル基準でというのを入れていただきたいと思います。LESだとCLPとか、大学関係者はRTTPという世界基準のプロフェッショナルというのが今、認定されているので、日本だけでこの人はプロだというのを作っても余り意味がないので、海外から認められるプロにしていただきたい。
最後は、大学の技術をどんどん海外にライセンスできるようにしていただきたい。これの支援をやっていただいたほうがよいと思います。私は、近い将来、世界の大学はネットワーク化されると思っています。もしかすると、私たちがリヨン大学の技術を日本の会社に紹介するかもしれないし、オックスフォード大学が東北大学の技術を紹介しているかもしれないといったときに、オープンイノベーションに乗り遅れない会社と遅れる会社で優位性が分かれると思っております。だとすると、もう日本の技術を日本の中だけでというのではなくて、ロイヤルティーが入ってくるわけですので、どんどん海外にもライセンスを積極的にできるように、例えばバイ・ドールを改定していくということができれば、日本の大学の技術は世界的に見ても価値があるのだ、うかうかしていたら海外に行ってしまうぞというほうが、日本の企業も本当の意味でのオープンイノベーションになっていただけるのではないかと思っています。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございます。
山田委員、お願いします。
○山田委員 山田です。
前回も中小企業の立場からビジネスセンスを持った人材育成、人材支援というのを是非お願いしますというお話をしまして、その内容がこの計画にはかなり網羅されていると思います。
計画としてはこれでよろしいと思いますけれども、実際にはこれをどう実行するかというのが一番問題で、例えば窓口の連携を強化するとか、支援を強化するとありますが、どうやって強化するのか、どうやって人材を育成するのかというところがこれからのポイントになってくると思います。
実行計画を立てる経産省におりていくのかもしれませんけれども、是非地方の中小の現場を皆さんで見ていただきたい、見に行くべきではないかと思います。
またどんな計画もそうですが、何をもってその成果を図るか、何を指標とするかということが重要だと思うのですが、特許の件数を指標とするのではなくて、どれだけ売り上げが上がったか、具体的に経済がどれだけ活性化したかというような、数値を成果、指標として出していただけるような計画を、立てていただければと思います。
国際標準化は、今までは1社では出せなくて、その業界でコンセンサスをとらなければとれないということだったので、非常にいいと思うのですが、地方の企業でこれを相談できる窓口というのがまだまだ少ないので、ぜひ地方にも国際標準化を推進できる人材を配置していただければと思います。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
正木参考人。
○正木参考人 資料全体については、非常に丁寧に集約していただいていると思っております。
その中で2点述べさせていただければなと思っております。
まず、地方における知財活用の推進でございますけれども、御提示いただいている2015の計画案においては、知財活用の推進ということですので、中小企業の知財戦略の強化、あるいは地域中小企業と大企業、大学の知財連携の強化、視点ということで、知財面からの各種取組というのを広く織り込んでおられると思います。
その一方で、知的財産の活用は、先ほども活用という話が出ていましたが、研究開発の戦略あるいは事業戦略と一体で行うものでありますので、知財の活用の拡大という側面からだけではなくて、産業競争力の強化に向けて、我が国全体としてのイノベーションを生み出す基盤の中に知財の活用があるというような視点が非常に大事ではないかなと考えております。
今、各省等で検討を進めておられますイノベーションナショナルシステムの強化策などとも連携、あるいは協働したような総合的な取組というふうに落ちていくと大変良いのではないかなと思っております。
もう一点は営業秘密の保護の強化のところでございます。関係法案の成立というのを前提にして、各種取組を織り込んでいただいておりますけれども、理想的には営業秘密は漏えいが起きないということが望まれるところではございますが、今、いろいろと法案を成立させるというところに持っていっていただいている中で、営業秘密事項に関して守るということに関する理解、あるいは遵守の促進ということに関する施策というのも入れていただければなと考えております。これによって、日本の企業の競争力強化だけでなくて、知的財産制度自体が良い方向に健全に発展していくというところにつながるのではないかなというふうに思っております。
以上でございます。
○渡部座長 ありがとうございます。
それでは、森永委員。
○森永委員 この計画の最後の取りまとめの会に初めて出席するという、大変不幸で、幸せな機会に恵まれまして、ありがとうございます。
45ページの「分野ごとの取組の促進」というところで、それぞれの協力、メタデータの集約を行うというふうに取りまとめていただきました。その御期待、そういうことも含めて努力してまいりたいと思います。適切な表現、ありがとうございます。
38ページから41ページ「デジタル・ネットワークの発達に対応した法制度等の基盤整備」のところにつきましてですが、「今後取り組むべき施策」というところに関して、国際放送等で海外の放送局に放送を依頼するとき、放送だけでなくて、ライブストリーミングあるいは見逃しサービスをやることがセットでないと受け入れないよというところがどんどんふえていまして、今後の課題等ではその辺も含めて検討してまいりたい。
あと、NHKはライブストリーミングをこの秋から実験的に始めますけれども、そこのところにおける問題点も整理をして、次の機会にはお話しさせていただきたいと思います。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
久夛良木委員、お願いします。
○久夛良木委員 最後なので、ゲームの立場でコメントさせていただきたいのですが、17ページにコンテンツの国内市場の規模と海外の売上状況でゲームが言及されているのですね。これを見ると、ゲームは、国内市場が1兆4,000億円。海外に輸出が1兆2,000億円。これだけ見ると非常に健全なような印象を受けると思いますが、この中には多分に誤解とミスリーディングな状況が含まれていて、欄外のほうにもちらっと書いてありますが、実は我が国のゲームというのは、歴史的に子供の遊びの一つとして発展してきて、現在はそれがカジュアルゲームからスマートフォンの課金アプリに移っている。
一方で、欧米に限らず、日本以外の世界市場では、大人のためのエンターテインメントとして、今、物すごい勢いで市場が急拡大しているのです。昨年の全世界の市場の規模が約10兆円。予想をはるかに超えるスピードで拡大中です。その中で日本のプレゼンスはどのぐらいかというと、多分数千億円もなくて、世界全体の5%以下です。そういった実態が全く触れられていないというか、誰も言わないという状況がある。
またその売り上げの中身ですが、以前の家庭用やPCゲームの場合、例えば1本何千円であるとかそういった形で、売り上げが高いということは、たくさんの方が喜んでそのコンテンツにお金を払って遊んでいるということを意味したわけです。ところが、今、日本のスマホのゲームというのは様子が違っていて、無料で楽しむユーザーも大勢いる中で、特定少数のユーザーにさらにたくさんお金を使っていただくという構造になっている。これは必ずしもコンテンツが多く売れているから販売金額が大きいというふうにも言えなくなってきている。
この状況というのは日本において突出しており、ほかの国とは市場が異なっているのです。このようなゲームが海外市場でまずは受け入れられない、つまりは輸出もされないために、ゲームのティストの違いも含めて、日本のゲーム産業が世界市場で急速にプレゼンスを落としているというような状況があります。
それはなかなかデータに出てこないのですが、せっかく17ページでこういうグラフが出てきているので、できることだったら、それをもうちょっと深堀りしていただいて、いま何が問題で、今後どこを強化していかなくてはいけないかということが、もうちょっと客観的にわかるように資料の補足をお願いしたいと思います。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
相澤委員、お願いします。
○相澤委員 紛争処理に関してですが、数字を出しておりますが、数字は課題を把握するのに重要であると思います。
日本の裁判所は非常に真面目できちっとやっています。それでも、課題があるのですから、その解決のためには、制度を改正していかなければいけないと考えています。それについてはある程度の御理解を得られたと思っています。
資料4に示しておりますが、先ほど長澤委員からも御指摘があった特許権の制限についての懸念です。日本でこの議論をしておりますと、通商的側面というのが抜け落ちることがあります。現在、外国で何かと理由を付けて特許権を制限し、自国産業の保護する動きがあります。もちろん標準に関わる特許権につきまして、濫用という問題も考えなければいけないのですが、そのときに、通商的側面、海外で日本の企業がどうやって利益を上げるかという側面を考慮していただきたいと思います。
中小企業につきましては、産業革新機構の出資で、橋渡しだけをするわけではなくて、投資もするという試みが始まっています。中小企業における特許の技術展開のためには、マッチングプラス投資ということを考えていただく必要があると思います。
最後に、電子的画面表示の意匠法による保護ですが、既に意匠制度小委員会で課題が出されていると思いますので、引き続き進めていただくことをお願いしたいと思います。
○渡部座長 ありがとうございました。
一通り御意見をいただいたかと思いますが、中村座長、よろしいですか。
○中村座長 はい。
○渡部座長 ただいま御意見をいただいた中で、各省庁でコメントがございましたら出していただければと思いますが。では、どうぞ。
○法務省 法務省でございます。
先ほど杉村委員からも御指摘があった15ページの「情報公開・海外発信の拡充」という観点の2ポツ目のところでございますが、知財高裁設置法を所管する立場から若干補足をさせていただければと思います。こちらにございますとおり、情報公開ですとか海外発信につきましては、非常に重要なものであるというふうに理解しておりますが、ただ、こちらの「例えば」以下にございますとおり、個別事案の開示ということに関しまして、とりわけ和解に関する情報の開示につきましては、訴訟当事者の利益という観点から、慎重な考慮が必要ではないかというふうに考えております。
和解と申しますのは、双方の譲歩が前提となっておりまして、訴訟で争ってきた当事者の心情といたしましては、相手方に譲歩した事実を知られたくないというような心情が働く場合も多いというふうに承知しております。
こうしたことから、和解に関する個別の情報がインターネット等を通じまして広く公開されるということが前提となりますと、そもそも和解に応じてくれないとか、それから提訴自体をちゅうちょしてしまうとか、さらには和解条項の中に非公開条項を希望するといった当事者がふえるというような事態も十分想定されますので、和解に関する個別情報の開示につきましては、慎重な御考慮をいただければと考えております。
以上です。
○渡部座長 ありがとうございました。
他省庁はいかがでしょうか。ございますか。どうぞ。
○特許庁 特許庁です。
多くの委員から審査の品質ということで御指摘があったかと思います。また、品質は特許だけではなく、意匠、商標も含めてという御指摘もあったかと存じます。
特許庁では去年度より品質管理小委員会というのを設置しまして、特許、意匠、商標について、外部の専門家から評価をいただくという委員会を立ち上げております。こういう取り組みは、世界の主要の特許庁の中で日本が初めての取り組みとなっておりまして、我々日本特許庁として、世界で通用する最高品質ということを目指して頑張っていきたいと思います。
ありがとうございます。
○渡部座長 ありがとうございます。
よろしいでしょうか。
それでは、ちょっと時間が限られておりまして、言い残しがないようにということに対して、若干まだ残っているかもしれませんが、貴重な御意見をいただきました。これを踏まえて、「知財推進計画2015」の原案の作成をお願いしたいと存じます。
横尾事務局長からコメントをいただければと思います。
○横尾局長 きょうは、貴重な御意見ありがとうございます。冒頭お願いをしましたが、従前以上に建設的な御意見を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。
3つぐらいコメントをさせていただきたいと思います。
まず、構成にかかわる部分でございますが、瀬尾委員からありました今回の時代認識のような記述は、きょう用意しておりませんが、はしがきをつくらないといけないと思っておりますので、はしがきにその旨は記載したいと思います。
それから、今回の構成なのですけれども、総理の指示もございましたので、重点の3本は外に出して、それ以外のものを並べておりますが、現在のこの構成は、一昨年の2013年のビジョンの4つの分野をベースにしております。ただ、それをすると、実は先ほど妹尾委員、竹宮委員からあったのですが、人材のところに項目としてコンテンツ人材とありまして、テクノロジー系、こちらの人材はもっと下の項目に隠れているのですね。したがって、人材の部分については、教育の問題も含めて、ちょっと項目を立てて、産業財産権絡みの人材とコンテンツの人材を一緒にして、人材で一本化をしようかなと思った次第でございます。
それから、インターネットの侵害の話も含めて、国際的な問題について、きょうはたくさん御指摘をいただきました。実はこれも今、2つに分かれておりまして、産業財産権のところが、知財システムの国際化の推進は、日本のシステムを海外に売り込むというか、新興国支援というのが書いてあって、それとは似て非なる、模倣品・海賊版対策とは別の項目になっていまして、これも言ってみれば国際対策ということで同じくくりにできるのではないかなという印象を持ちましたので、これも一緒にしたいと思います。
でも、ビジョンが産業財産権とコンテンツで、この委員会も2つに分かれているから、その影響で2つに分かれているのですが、融合する領域が多いので、そこの2つはちょっと整理をし直そうかなと思った次第です。
それから、産学官連携と大学の話で、今回地方にフォーカスを当てようということで、できるだけ地方に寄せているのですが、前田委員と喜連川委員からの御指摘もあったので、産学官連携機能の強化というのを別の項目で立てています。そういう趣旨で書いたのですが、大学の話も含めて、そこはもうちょっとわかりやすくさせていただこうかなと思います。
2番目に表現の問題です。極力わかりやすくしろと言って、スタッフで工夫して書いたつもりですが、きょう伺っていてなかなかわかりにくいところもあって、委員の皆さんからこれが書いていないのではないかと言われたのは、実は書いたつもりというのが三、四カ所あって、これではおわかりいただいていない。ということは、一般の人はますますわからないのかなと思いましたので、そこの表現の仕方をさらに工夫したいと思います。
具体的な新しい点も含めて提案がありました。これについては、今、調整中というのもまだたくさんありますが、関係府省とよく調整をして、どういうものが盛り込めるか、インテンシブに検討したいと思います。
ありがとうございました。
○渡部座長 ありがとうございます。
最後に、閉会に当たり、平副大臣より御挨拶をいただければと存じます。
○平副大臣 ありがとうございました。担当副大臣でございます。
私も幾つかコメントをさせてもらいたいと思います。人材育成のところはまさにそうで、私、いろんな政策分野をやっているのですが、必ず人材育成というのが入ってくるのです。この間、文部科学省の副大臣とその話をしたら、文部科学省の側からすると、全ての分野から人材育成が大事だと持ってこられて困っているという考えなので、ということは、ここで入れていないと、プライオリティーをどうつけるかというときに、ないということになるので、これは絶対入れておかなければいけないと思いました。
2つ目は、税制の話がありました。それは財務省に言ってよといつもごまかされるのだという話なのですが、実は私もいろんな政策を取りまとめてきて、事務方も財務省と結構ぎりぎりやるのですよ。それでまとまらないと書けないというのがあります。
あと、自民党とか与党の税制調査会という別プロセスがあって、ここをちゃんと説得をしなければいけないのですが、ただ、ここの議論で感じるのは、ロケをしたときに、カナダは税制の優遇がありますという話があるのですけれども、具体的な精緻な、では、どういう税制をすべきだという議論までどうもブレークダウンできないので、我々は闘いにくい。最後は政治でということもあるので、最初から諦めないで、書く書かないは別として、この税制自体をどういじるのだという精緻な議論はぜひやっていく必要があるだろうなと思いました。
あとは、重村さんからの在外公館が冷たいというのは、ある意味クールジャパンですね。これはまずいので、運用でちゃんとやります。
今、外務省が「ジャパン・ハウス」をつくると言っているのですが、この間、外務省のプレゼン資料の「ジャパン・ハウス」の写真の例がすごいシャビーだったので、これはまずいということになって、外務省といわゆるソフトとか知財のところと連携してやることになりましたので、これは運用でしっかりやりたいと思います。
いずれにしても、タスクフォースを立ち上げていただいて、かなり深掘りをしていただいて、いい報告書ができるというふうに思いますが、引き続き人材育成のところとフェアユースのところはさらに深掘りをしていかないといけないと思いますので、それは宿題としていただいておきます。
最後にゲームのところ。私は、ゲームは強いと思っていたので、今のお話だと大分イメージが違う。この間「ハウス・オブ・カーズ」のビデオを見ていたら、政治家の主人公がテレビでゲームをやっていましたね。あと、課金の仕組みもビジネスモデルからしてすみ分けられてしまっているようなので、ゲームのところはちょっと深掘りをして認識を深めたいと思います。
きょうはどうもありがとうございました。
○渡部座長 ありがとうございました。
最後に、事務局から今後の進め方について、お願いいたします。
○田川参事官 今後の進め方でございますけれども、きょういただきました御意見。
済みません。では、一言。
○妹尾委員 済みません。皆さんのお手元に配られた、大変見苦しい表紙で恐縮でございますけれども、これは中小企業の皆さんに知財を理解していただく連載をまとめたものです。もし必要ならば実費300円でたくさん出れますので、お求めいただければと思います。ありがとうございました。
○田川参事官 それでは、失礼いたしました。
今後の進め方でございますけれども、きょういただいた意見等を踏まえまして、各省との調整を経まして、6月の末までに本部決定をするという段取りで進めていくということでございます。その過程でまた御相談をすることがあるかもしれませんけれども、その際はよろしくお願いしたいと思います。
○渡部座長 ありがとうございました。
本日の会合はちょっと蒸し暑くて恐縮でございましたが、終わりにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
○田川参事官 素案につきましては、回収をさせていただきたいと思いますので、机上に残していただければと思います。よろしくお願いいたします。