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 トップ会議等一覧知的財産戦略本部権利保護基盤の強化に関する専門調査会 [印刷用(PDF)]


第7回 権利保護基盤の強化に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成16年4月8日(火)15:00〜17:00
2.場 所:知的財産戦略推進事務局内会議室
3.出席者:
【委員】阿部会長、久保利委員、下坂委員、高林委員、竹田委員、中川委員、山田委員、吉野委員
【事務局】荒井事務局長、小島事務局次長
4.議事
(1)開会
(2)参考人からの意見聴取
財務省関税局 藤原審議官
(3)模倣品・海賊版対策の強化について
(4)閉会


○阿部会長 それでは、先生方お見えになりましたので、ただいまから「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」第7回を開催させていただきます。
 御多忙中のところありがとうございます。座ったまま進行させていただきます。
 今日は、お三方がやむを得ず御欠席なので、若干こじんまりとしておりますけれども、よろしくお願い申し上げます。
 本日は、前回の会議におきまして、税関での取り締まりの現状等について御質問がございました。実は、私も税関に見学に行ってまいりました。竹田委員もおいでになられたそうですが、それはともかくとしまして、財務省の方においでいただきまして御説明をお願いしております。
 御紹介をさせていただきます。
 財務省関税局の藤原啓司審議官でいらっしゃいます。よろしくお願いします。
 お手元の議事次第にもございますが、本日は、まず、財務省から御説明をいただいて、御意見、御質問をお願いしたいと思います。
 その後、前回の議論の内容を踏まえまして、事務局に作成をお願いした模倣品・海賊版対策の強化についてのとりまとめ案について御討議をいただきたいと思います。そういう順番で進めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、議事に入らせていただきます。参考人の藤原審議官にお忙しいところをお見えいただいております。よろしくお願い申し上げます。

○藤原財務省関税局審議官 ただいま、御紹介に預かりました藤原でございます。座って御説明させていただきます。
 本日は、こういう説明の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。 資料といたしまして、横長の紙で「知的財産権侵害物品の水際取締りについて」という資料をお配りさせていただいております。
 これに基づきまして、税関での知的財産権侵害物品の差止の手続の実態につきまして、御説明を申し上げたいと思います。
 1ページ目でございますけれども、この1ページ目の資料は、水際取り締まりの流れをフローチャートで示したものでございます。
 御承知かと思いますけれども、右側に参考として輸入通関手続の流れの一般図を書いてございますけれども、船あるいは航空機で貨物が運ばれてまいります場合には、個々の貨物ごとに陸揚げされまして保税地域に搬入されます。その後、輸入者の方から輸入申告が出されまして、税関の方におきまして審査・検査を行います。納税が済みましたら輸入許可されまして、その後輸入者の方は初めて保税地域から貨物の搬出が可能になるというのが一般的な流れでございます。
 知的財産権の侵害物品の水際取り締まりの流れが左側に書いてございます。まず、あらかじめ権利者の方から輸入差止の申立てというのを出していただきます。それに基づきまして、勿論、職権でも行いますが、この申立てを受けまして、水際での取り締まりを行っているところでございます。
 この輸入差止申立てというのは、どの輸入者を対象にするかということを特定する必要はございませんし、また、侵害物品が輸入されるおそれがあるということについての疎明は必要でございますけれども、現実に、侵害物品が輸入されましたとか、あるいは被害を受けたという証明は必要ないわけでございます。
 その申立てのときに侵害物品であるという裁判所の判決書等があれば、これは疎明といたしましては、極めて有効だということでございます。
 このようにあらかじめ輸入差止申立てを受けて、具体的に個々の実際の輸入申告が行われますと、その段階で申立てがあった侵害物品に該当するという疑義がある貨物を発見いたしました場合には、輸入の許可を留保いたしまして輸入貨物を差し止めるということになるわけでございます。それで直ちに認定手続に入りまして、両当事者の意見、証拠によりまして、税関長が侵害の該否を判断することになるわけでございます。
 この場合に、輸入差止申立てに係る貨物等で、もう既に侵害物品と認定されたものと同じものであると判断される貨物であれば、それは侵害であると判断される可能性が極めて高いことになります。したがいまして、国内にその物品が出回ることがないわけでございます。
 それで一番最後のところで、認定(該当又は非該当)と書いてございますけれども、該当の場合には、没収・廃棄等に進むことになりますし、非該当の場合には輸入許可ということになるわけでございます。
 次のページに移りますけれども、最近の申立て状況、あるいは輸入差止状況の説明でございます。
 2ページ目は、権利別の輸入差止申立て件数を書いてございます。これは今年の4月1日現在の数字でございまして、現在、有効なものにつきましては177 件となっております。そのうち権利別に見ますと、特許権が12件とか、あるいは実用新案権1件等々となっております。
 それから、権利別の知的財産権の侵害疑義物品の輸入差止実績が次のページにございます。
 平成10年から平成14年までの数字しかまだお示しできておりませんけれども、よく言われますように、今までのところは商標権あるいは著作権の絡みが非常に多いわけでございますけれども、特許権等につきましても最近は増加いたしているところでございます。
 認定手続に入りましたもののうち、輸入者が自主的に輸入を断念したもの、あるいは税関長が侵害の認定を行ったもの等、実質的に侵害と認められたものの実績でございますけれども、約九十八%になっておりまして、ほとんど輸入されることはございません。その他のものは、並行輸入品等でございます。
 4枚目に移りますけれども、今まで税関手続は少しずつ改革をいたしておりますけれども、今までどういうふうにやってきたかという資料でございます。
 税関といたしましては、知的財産戦略本部の御決定を重く受け止めまして、ここに書いてございますように、15年度の関税改正では、特許権等の権利を輸入差止申立ての対象といたしました。それから特許庁への意見照会制度を導入いたしております。
 その後、知的財産推進計画が決定されましたが、本年度の関税改正は4月1日から施行いたしておりますけれども、輸入者名等を認定手続が開始した段階で、権利者の方に通知するということにいたしております。
 このように、2年連続いたしまして関税定率法を改正するなど、この問題につきましては積極的に取り組んできているところでございます。
 それから、ここには詳しくは書いてございませんが、輸入差止申立ての受理につきましても、輸入差止申立書等の資料の提出部数を大きく削減するなど、相当改善を図っているところでございます。
 今後とも水際取り締まりのさらなる改善を検討していく所存でございますけれども、後で御議論いただくとりまとめ案の水際取り締まり部分の(7)というのがございますが、その検討に当たっての事例をお示しいただいておりまして、これらを踏まえまして、これまでの改正法の施行状況も見ながら、今後の税関手続の見直しにつきまして、更に検討してまいりたいと思います。
 今、申し上げましたように、16年度関税改正の結果として、輸入者名等が権利者に通知されるために、権利者が行政手続と司法手続の併用を選択することが可能となるわけでございます。
 このため、両方の手続が同時並行的に進むということが増加することも予想されますけれども、行政手続と司法手続との間の整合性がより重要になると考えております。
 これまでの専門調査会の議論でも、その点につきましていろんな御議論があったと伺っております。事実上、税関が司法の決定を尊重することで十分だという意見がある一方で、法制度として仕組むべきだという意見もあったと承知しております。
 また、仮処分が当事者以外の者を拘束することの問題でありますとか、あるいは仮処分決定までの期間の短縮が必要ではないかとか、あるいは仮処分と本訴の判決の関係でありますとか、いろんな御指摘があったと承知いたしております。
 先ほど申し上げましたように、2年連続で法改正を行っておりますけれども、行政手続と司法手続の調整という大きな問題につきましては、単に関税定率法の問題としてだけではなくて、財務省、法務省等、関係省庁が御指摘のあった論点も含めまして、今後十分に検討することが課題であると考えております。
 勿論、我々といたしましても、先生方と問題意識は共有しているつもりでございますけれども、提起されました論点につきまして十分時間をかけて詰めていく作業が重要であると考えております。
 それから、税関が知的財産侵害物品の差止に当たりまして、実際上問題意識を持っているものといたしましては、1つはサンプル検査の問題でございます。もう一つは、偽ブランド品の問題でございます。
 最初のサンプル検査につきましては、侵害認定を行うに当たりまして、有効な手段になり得るのではないかと考えております。権利者の方々から要望が強いということも十分承知をいたしておりまして、権利者によるサンプル検査につきましては、この調査会でも御議論があった、国内における取り扱いとの整合性でありますとか、守秘義務の問題等も踏まえながら検討していきたいと考えております。
 それから、偽ブランド品の個人輸入につきましては、今般、商標法においてその権利の範囲を規定していただけるということであれば、税関も対応が可能になろうかと思います。 それから、税関が侵害の該否を認定するに当たりまして、専門家の方々のお知恵を活用するということも重要な点でございます。
 既に、特許庁への意見照会制度を導入しておりますけれども、更に知的財産権を専門とする弁護士や弁理士の先生方と顧問契約のような形で侵害の該否についての御意見を賜わるということを検討いたしておりますし、この方が行政の簡素化の流れに沿うものであると考えます。また、税関の内部、外部に新たな機関を設けるよりも、迅速な侵害認定が可能になるのではないかと考えております。
 いろいろ申し上げましたけれども、まとめていいますと、私どもといたしましては、この調査会での御議論を踏まえまして、偽ブランド品の個人使用目的の輸入問題につきましては、商標法の改正が前提でございますけれども、それが行われますれば、対応が可能でございます。
 それから、サンプル検査につきましても検討してまいりたいと考えておりますし、先ほど申し上げました専門家の弁護士、弁理士等の方々の活用を図りまして、一層の認定手続の迅速化を検討してまいりたいと考えております。
 それから、行政手続と司法手続の整合性につきましては、引き続き関係省庁と検討してまいりたいと考えております。
 それから、また繰り返しになりますけれども、税関の認定手続、あるいは裁判所の判決書等で一旦侵害物品と認定されたものと同一のものにつきましては、現在も、今後も輸入を許可するということはあり得ないものと考えておりますし、また、その判断につきましても迅速に行えるようにと考えております。
 ただ、認定手続を全く行わないというのは、行政手続の上からも、あるいはTRIPS協定の上からもできないということは御理解をいただきたいと思います。
 いろいろ申し上げましたけれども、私どもは知的財産権につきまして、決して後ろ向きではございませんので、むしろ積極的にこれからも取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。現状と、これからの取り組みの仕方について御説明をいただきました。御意見、御質問をいただきたいと思います。
 どうぞ、中川委員、下坂委員。

○中川委員 法制的な質問ですけれども、最初に2点お願いします。
 輸入差止申立てをするときに、何をどこまで特定しなければいけないかということを、もう一度お願いします。今、非常に面白いことをおっしゃったような気がしましたので、輸入者の特定は不要なんですね。

○藤原審議官 不要でございます。

○中川委員 では、何を特定するんですか。

○藤原審議官 むしろ、どういう物品につきまして、どういう権利があって、それにつきまして侵害のおそれがあるというところを疎明していただければということでございます。

○中川委員 物品だけ特定すればいいわけですか。

○藤原審議官 物品と、それについての侵害のおそれがあるというものです。

○中川委員 そうすると、なんか一般排除命令の申立てに近いイメージでしょうか。私はてっきり輸入者も特定しなければいけないと理解していたのですが、違うんですね。

○藤原審議官 輸入者がだれであっても、それに該当するようなものが来ましたら、それから認定手続を始めて、差止をするということでございます。

○中川委員 これは、むしろ一般排除命令の申立てに近いというふうに理解してよろしいんでしょうか。

○藤原審議官 一般的な申立て命令とお考えいただければと思います。

○中川委員 わかりました。
 2番目ですが、認定手続について不満がある人は、どういう訴訟を起こすのか、どこをどうとらえて訴訟を起こすことになるんでしょうか。行政訴訟ですけれども。

○藤原審議官 先生がおっしゃったのは、多分侵害認定のときだろうと思いますけれども、これが侵害であると認定いたしまして通知をするわけですけれども、そういたしますと、それによりまして輸入ができなくなるわけでございます。
 以前、全く別の話ですけれども、わいせつ該当物品につきまして、最高裁の判定があったと思いますけれども、恐らくそれを行政処分ととらえて取消訴訟をするということになろうかと思います。

○中川委員 侵害認定である旨の通知があって、その取消訴訟になるわけですね。わかりました。
 あと、認定手続の大体の期間ですが、大体どのぐらいで済むのか、イメージ的なところを教えていただきたいんですけれども。

○藤原審議官 目安としては1か月程度というところを目安といたしております。大体その間に終了しております。

○中川委員 今までの平均値とかないんですか。

○藤原審議官 平均という形ではとっておりませんけれども、ほとんどがその中で収まっております。

○中川委員 長いとこのぐらいというのはありませんか、半年とか。

○藤原審議官 そんなにかかったという例は聞いておりません。

○中川委員 わかりました。ありがとうございます。

○阿部会長 それでは、下坂委員お願いします。

○下坂委員 認定手続の場所、地域性についてお伺いしたいんですけれども、輸入貨物というのは動かすわけにはまいりませんものですから、現在、恐らく税関の8つの本関と、それから沖縄の方でもおやりいただいておられます。
 今日出てまいりますまとめ案で、いろんな提案がなされておりますが、今度審理して、それから認定していくというようなことになりますと、あちらこちらにそういうものをつくらないといけないということで、今、8つでおやりになっているところでは、認定なさるのは、それぞれの本関がおやりになっているということでございますが、もし審理機関を設けるとすれば、将来的には本関にすべて設けていかないといけないということになりますか。

○藤原審議官 必ずしも前提がよいかどうかはわかりませんけれども、もしそういうことであれば、そういうことになるかもしれません。ただ、それよりは外部の専門家の方々の方がいいと、先ほども申し上げました。

○阿部会長 それでは、高林委員。

○高林委員 認定手続取りやめというところに関する質問ですけれども、どのような場合に、このような道に進むのでしょうか。

○藤原審議官 これは、TRIPS協定上規定があるわけでございますけれども、特許権、あるいは実用新案権、意匠権等につきまして、商標権等よりも恐らく判断が難しいだろうという考えだと思いますけれども、一定期間内に、侵害かどうかの判断が付かないとき、輸入者の方から通関解放を求める権利が認められているわけでございます。
 したがいまして、一定期間内に認定手続が終了しない場合には、輸入者による認定手続の取りやめ請求、それから担保を提供していただかないといけないわけですが、それによりまして輸入許可をするということでございます。
 昨年までといいますか、3月31日までの制度ですと、この輸入許可をするときに権利者の方に輸入者の名前を税関から通知するわけでございますけれども、それが今年度の改正によりまして、もっと早く、認定手続の開始のときに通知するということにいたしたわけでございます。

○高林委員 そうすると、認定手続を取りやめになりますと、権利者といいますか、差止申立人は、別途訴訟でも起こすということですか。

○藤原審議官 民事の方ですね。通関開放について付け加えて言いますと、これは日数の制限がございますが、途中で権利者が税関に対しまして特許庁への意見照会を要請いたしますと、税関が特許庁に意見照会を出しまして、特許庁の回答を待つということでございまして、それによりまして、通関開放の権利発生までの期間が延びるということでございます。

○高林委員 輸入差止申立人が申立てを撤回するとか、そういう手続はあるのでしょうか。

○藤原審議官 どの段階でございましょうか。

○高林委員 この段階でございます。

○藤原審議官 輸入差止申立ての方は、一般的には2年ごとに区切っておりまして、何もなければそのまま継続可能でございまして、権利の存続期間まで可能なわけでございますけれども、その期間ごとに期限が来ましたら判断することになろうかと思いますけれども、具体的な有効申立て期間内に申立ての撤回の申出がありました場合には、それは当然認めることになりますし、撤回を受け付けましたら、それが各税関に通知されるということでございます。

○高林委員 撤回を認めましたら。

○藤原審議官 撤回を認めますと、それは当然認められるわけでございまして、それが全国の税関に通知されるということでございます。

○高林委員 差止めを認めるか否かという手続きは職権で行われるわけですけれども、それと差止を申し立てている人の撤回とはどういう関係にあるのでしょうか。申立人は単なるきっかけを与えるだけであって、その後は、申立人が撤回しようが、撤回しまいが手続は進んでいくものなのかと思ったのですが、いかがなのでしょうか。

○藤原審議官 そもそもいろんなケースがあろうかと思いますけれども、輸入者と権利者の間で話が付いてしまって、もう輸入を認めてもいいということであれば、それはそもそも侵害物品ではないわけでございますので、輸入許可されるべきものと思いますし、それからそもそも職権での取締りと、輸入差止申立てに基づく取締りがそんなに矛盾したりするようなケースというのは、あまり今のところは生じておりません。

○高林委員 今後の議論にかなり重要だと私は思っているものですから、お伺いしているのですけれども。

○藤原審議官 輸入差止申立てを基に取り締まりを行っております。

○高林委員 当事者で合意ができて、和解ができてしまったときには。

○藤原審議官 それは、そもそも侵害ではなくなってしまいます。

○高林委員 侵害ではなくなるのですか。

○藤原審議官 はい、ですからそれは輸入許可をするということになります。当事者が認めるのであれば、侵害物品ではなくなってしまいますから。

○高林委員 当事者から合意ができれば、侵害品でなくなるということですね。

○藤原審議官 当事者により輸入が認められればですね。

○高林委員 わかりました。

○阿部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、とりあえず藤原さん、どうもありがとうございました。次に移らせていただきます。
 2つ目の議題に入らせていただきますが、模倣品・海賊版対策強化のとりまとめ案についての討議に入りたいと思います。
 事務局の方で案をつくってくれましたので、小島次長から簡単に説明をしていただきたいと思います。お願いします。

○小島事務局次長 資料2でございます。「模倣品・海賊版対策の強化について(とりまとめ(案))」を御説明いたします。
 前回の論点整理に基づきまして、また、前回の会議で議論のあった点を盛り込みまして、大きく5つの観点、すなわち外国市場対策、水際取り締まり、国内取り締まり、中小企業支援、官民の体制に大くくりいたしまして、合計23の項目を取り込むべき施策案として整理してございます。
 前回と同様、左側に取り組むべき施策案、右側に参考資料を挙げております。
 まず、1ページ目は、模倣品・海賊版の被害状況と対策強化の必要性についての問題意識を整理したものです。
 特に5行目でございますけれども、後ほど4ページに出てきますけれども、模倣品・海賊版問題と組織犯罪、テログループとのつながりについて国際的に指摘されておりまして、国内はもとより海外においても我が国企業が模倣品・海賊版から守られるよう官民挙げて強力な対策を講ずることが求められているということが明記されております。
 2ページ目でございます。
 2ページ目以降が、我が国政府の外国市場対策の強化の問題でございます。左側中ほど以下でございますが、1−1で「政府による支援の強化」を取り上げておりますけれども、(1)のA、在外公館の知財支援担当窓口を明確にすることなどによる企業支援の強化の必要性。
 B、在外公館やJETROにおける企業からの相談への対応の充実が必要であるということを取り上げております。
 また、2ページ目の右側中段の参考に「最近の米国の中国に対する取組み」とございますが、ここにありますように、米国でも中国対策が最近強化されてきております。
 左側の(2)では、Aにおいて侵害発生国に対して、具体的な制度改善や取り締まりの実行ある強化についての要請を政府として強力に行うべきであること。
 Bでは、侵害発生国における啓発活動支援の取り組みについて取り上げております。
 3ページ目でございます。
 3ページの左側の(3)でございますが、上記のような海外における活動の基とするとともに、模倣品・海賊版対策を実効あるものとするために、侵害状況の定期調査、権利者の申立てに基づく調査、それらの調査結果に基づく交渉、報告書の作成・公表等を行う制度を整備するため、右側の中段の(2)にありますような米国や欧州の制度にならい、必要に応じて法律制定などの制度整備を行うべき旨が書かれております。
 その下、1−2でございますが、二国間の枠組みの活用に関する政策をまとめてございますが、(4)ではFTA交渉において、協定に知財保護のための実効的なエンフォースメント確保のための条項を盛り込むよう積極的交渉をすべきこと。
 次の4ページ目にまいりまして、(5)では、侵害発生国に対する働きかけを実効的に行うため、欧米との連携を深めるべきことを挙げております。
 その下の2の「多国間での取組の強化」でございますが、1ページ目の問題認識にもありましたように、模倣品・海賊版が一国にとどまらず、広く世界各国に拡散していること。 それから、先ほども言及いたしましたが、右側の参考欄の(6)−Aの模倣品・海賊版と犯罪組織、テログループとのつながりに関する報告書等に書かれておりますけれども、この問題が広く国際的にも関心が強く、国際的に取り組むべき問題であることから、WTO、WIPO、G8サミットを始めとする国際的なフォーラムにおいて、模倣品・海賊版の拡散防止条約の提唱など、模倣品・海賊版問題を国際的に積極的に取り上げて、その解決を図るための活動を活発に行うべきであるとしております。
 次に、5ページ目でございます。
 5ページからは、水際での取り締まり強化に関する問題でございます。
 II−1は、侵害判断が困難な貨物の取り締まりの強化の問題でございます。
 (7)においては、特許権侵害品などに関し、侵害判断差止を当事者の主張に基づき、専門的かつ簡便・迅速に行うための制度の確立ということで、(7)の5行目ぐらいでございますが、権利者が事案の性質や、そのニーズに応じて多様な手続が活用できるよう以下のような侵害判断の手続につき、必要に応じ関税定率法の改正を行うなどの制度整備をすべきであるとされております。
 ここでは、これまでの議論を踏まえ、多様な侵害判断の手続として(A)〜(F)の手続を提案しております。
 まず(A)では、税関長が外観等から判断して、侵害判断を行うというもの。 (B)は、権利者が一定の要件の下で、サンプル提供を受けて、分解、解析を行える制度を設けるというもの。
 (C)は、侵害判断の際に、弁護士、弁理士等の外部専門家を活用するというもの。
 (D)は、同じく侵害判断の際に、専門家からなる技術判定機関を活用して侵害判断を行うというものでございます。
 6ページ目に入りまして、(E)は、税関内に特別の審議機関を設けて侵害判断を行うというもの。
 (F)は、裁判所の仮処分命令を活用するというもので、侵害認定手続期間内に裁判所の仮処分命令の決定があった場合には、税関長が、その決定に係る侵害判断に基づいて侵害を認定するというものでございます。
 この場合、裁判所においては迅速な処理が期待されるということが付言されております。 また(G)は、仮処分申請中の貨物の取り扱いについて、一定期間内は疑義貨物の通関を認めないようにするというものでございます。
 その下の(8)では、侵害品の差止について、同一のものについて毎回一から侵害判断をしていては非効率であり、時間もかかることから、輸入者のいかんを問わず、同一侵害物品の輸入の差止が簡便かつ迅速に行えるように制度改善をすべきであること。
 その下の(9)では、裁判外紛争処理機関の活用と、税関対応との関係について検討すべきであることを掲げております。
 7ページでございます。
 7ページでは、主に、偽ブランド品の取り締まりの強化ということを挙げております。 1では、模倣品の流通態様に応じた取り締まりの強化として、4つの施策を掲げております。
 (10)は、並行輸入、個人輸入、あるいは小口貨物を利用した輸入の取り締まりの強化のための税関と権利者との連携の強化。それから、税関の検査設備、情報システムの強化、税関職員の確保等、税関の取り締まり体制の強化を取り上げでおります。
 その下の(11)(12)では、マーク切除や部品取り外しによる脱法行為について、水際での取り締まり対象とするための商標法や意匠法、あるいは不正競争防止法の改正等の制度改善を取り上げておりますし、(13)では、いわゆるデッドコピー品を水際で取り締まるための不正競争法及び関税定率法の改正等の制度改善を求めるものでございます。
 2は、個人輸入等の取り締まりの強化ということで、(14)では、個人使用目的であっても、偽ブランド品の所持の禁止や、税関での輸入を取り締まることが可能となるよう商標法の改正等の制度改善をすべきことを挙げております。
 続きまして8ページです。
 国内での取り締まりの強化のための必要政策でございます。
 (15)は、インターネットを利用した侵害に対する取り締まりの強化でございます。
 Aでは、オークションサイトの管理者による本人確認、権利侵害出品物のサイトからの削除、権利法における侵害取り締まりの強化等、インターネットオークションサイトにおける模倣品売買等に関する規制を強化するため、必要に応じ法改正を行うなどの制度整備をすべきことを提言しております。
 B、Cでは、警察、税関による取り締まりの一層の強化、それから消費者の誤認を避けるための表示義務規制の強化を挙げております。
 (16)では、商品の形態模倣に対する保護の強化のための不正競争法の改正を取り上げております。
 (17)では、意図せざるノウハウ等の海外への流出を防止するために「技術流出防止指針等」具体策について、中小企業を始めとして広く周知徹底を図るべきということでございます。
 9ページ目に入りまして、9ページ目は「中小企業・ベンチャーの支援と啓発の強化」ということで、(18)では中小企業・ベンチャー企業が模倣品・海賊版対策を講ずるに当たって、相談や助成等の具体的支援の強化が必要であるということを挙げております。
 (19)では、消費者たる国民も模倣品・海賊版が社会悪であることを広く認識してもらうよう学校教育、啓発活動を図るべきだということを挙げております。
 10ページ目でございますが、官民の体制強化ということで、右側下に各省庁の連携ネットワーク、それから右側の上に地方、海外への活動ネットワークの図が掲げてございますけれども、権利者、企業の利便性を向上させ、また、個別の模倣品・海賊版問題への対応を迅速に行うという観点から関係団体、それから関係省庁が強力に連携すべきであるということをうたっております。
 (20)のAの2行目においては、関係府省が一体となって以下のような対策に取り組むよう政府においては連携体制を具体的に早急に整備すべきであるとし、相談窓口の整備と連携の強化、具体的政府の政策への反映、各省の政策調整といった具体的連携の強化。
 Bでは、JETROを中心とした関係団体の相談ネットワークの構築、そのための体制整備を挙げております。
 続きまして、11ページでございます。
 (21)では、侵害発生国の当局間の連携の強化。
 (22)では、官民合同ミッション等、官民の連携、あるいは海外の模倣品・海賊版対策団体との連携強化という点を取り上げております。
 最後の(23)では、これまで出てまいりました各種施策の実行方法として、本問題の緊急性にかんがみ、一括法での対応等を早急かつ集中的な処理を行うべきということをうたっております。
 資料2については、以上でございます。
 なお、お手元に本日御欠席の伊藤委員から御意見が提出されておりますので、資料3として席上に配付させていただいております。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまのとりまとめ案につきまして議論に入りたいと思います。
 大変多岐にわたっておりますので、もしよろしければ分けて御議論をいただきたいと思います。
 まず最初に、Iの外国市場対策というところでありますが、2ページからです、ここにつきまして10分ぐらい御議論いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 どうぞ。

○久保利委員 久保利ですが、この外国市場対策、私は全体として誠に当然だし、もっともだと、特に中国の問題というのは、ここに書いてありますように、なかなか根の深い問題があると思います。基本的には私は、米国とスタンスを合わせて、日本だけではなくて、米国の中国に対する取り組みという、2ページの右側の参考に書いてありますような、こういう流れと平仄を合わせて、中国政府に対する要望を行っていくということが必要ではないかというふうに思います。
 基本的にこれを進めていくわけですが、しかし、根本的にこの種の模倣案件というのは、すべて国際的にも国内的にも犯罪組織と非常に密接な関係があるということであります。中国、韓国にこれを要請するのは当然なんですけれども、実は翻って日本を見てみたときに、私としては納得のいかない点が実はあるわけでありまして、それは何かというと、これは経産省の方でも研究会をつくってやっておられますけれども、いわゆる肖像パブリシティ権の関係です。
 逆に中国、韓国のお客さんが、日本にこの種の、言わば生写真といいますか、ブロマイドみたいなもの、あるいはポスター、こういう肖像権侵害のものを買いに来ていています。原宿、竹下通り辺りに行きますと、光臨歓迎と中国語で書いたり、ハングルで書いたりしているところで売っているのは全部不正商品でありまして、無許諾の肖像をポスターや何かにしたもので、これを売っているわけです。
 これは勿論、背後にはやくざ組織があるわけでありまして、言わば国際的な犯罪組織とかアルカイダとか何かを言う前に、我が国の中にそういう暴力団、やくざ集団というものがつくって売っている、そういう写真等々をきちんと取り締まらないで、あまりよそ様のことばかり言うのもどうかと、しかもお客様として韓国中国の人が買いに来ている、勿論日本人もいるわけです。
 例えば、サッカーの選手、SMAPだ、モーニング娘だ、あるいは『冬のソナタ』のチェ・ジウとか、ペ・ヨンジョンとか、こういうような人たちの盗撮写真が全く許諾なしに売られているわけです。
 そういうようなことを考えますと、やはり肖像商品化権というふうなもの、これを含めて日本の法制度の網から漏れているところをきちんとやっていく。そしてそれとセットで、海外に対しても日本はここまできちんとやっているのに、あなた方も一生懸命やってくださいというお願いをしていくというスタイルが必要なので、日本は何か万全で、中国と韓国だけが問題だということではないのではないかと。
 したがって、不備な点について韓国、中国に対してきちんと要請するのは当然のことだと思いますけれども、身の周りを見て、原宿の駅前のああいう違法商品を氾濫させていて、これに対する刑事罰もなければ、実質上の取り締まりもできていないという我が国の現状にも少し目を向ける必要があって、これの法制度の整備も含めて考えていくべきではないかというふうに私は思います。

○阿部会長 ありがとうございました。今の点は、あまり書いていないですね。なるほどと思いますが。

○久保利委員 経産省も、「経済的価値に着目した肖像の保護と利用に関する研究会」という立派な研究会がありまして、一生懸命やっておられるんですが、この辺の政策的な踏み込み、あるいは刑事罰に対する取り組みという辺りが今一つかなという感じもしますので、是非こちらの調査委員会からもそういうお願いをしたいと思いまして発言いたしました。

○阿部会長 わかりました。では、ほかの方の御意見をちょうだいしたいと思います。
 どうぞ。

○吉野委員 外国市場対策のポイントは、やはり在外公館がどれぐらいちゃんと絡んでいただけるかということだと思うんです。
 今までですと、大使館なり、領事館なりというのは、この件については非常に消極的で、したがって、はっきりした担当の人を置くとか、そういう実効の上がる体制にしていただきたいと思います。今までは、今日は外務省の方はいらっしゃるか知らないんだけれども、非常に知財関係に対しては冷淡だったというふうに思っています。

○阿部会長 そこは是非多面的に、制度整備も含めてお願いをして、いろんな方の御要望も全く同じだと思います。
 どうぞ。

○山田委員 同じですね。特に中小企業の場合、海外でそういうことがあった場合に、全くどこへ行っていいかわからないという状況だと思いますから、是非、今おっしゃったような本当に担当の窓口の方を置いていただくとか、明確にそういう形をつくっていただくとありがたいと思います。

○阿部会長 今まで出てきたものですと、JETROとタイアップしていただくとか、そういう案もありましたので、その辺も含めて強いというとあれですけれども。

○吉野委員 そうですね、JETROさんは能力はおありになると思うんです。ただ、相手に対してのオーソリティーというような感じだと、やはりJETROさんはやや官そのものではないですからね。

○阿部会長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。
 それでは、とりあえず次に移ってよろしゅうございますか。2番目の水際での取り締まり強化、これは少し時間をとって、30〜40分とって御議論をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 どうぞ。


○竹田委員 5ページから6ページにかけて水際措置についての具体的な提言が書かれておりますが、この中には、いわゆる運用で解決できる問題と、立法的な措置を必要とするものとがあると思います。
 まず、立法的措置を必要とするものについて、これまでの議論を踏まえ、私の意見をそこに加えて申し上げますと、(B)のサンプル解析制度を活用した侵害認定の制度、それから(F)の裁判所の仮処分命令を活用した侵害認定、この(F)に関連して(G)の仮処分申請中の貨物の留置の問題につきまして、立法措置を講ずる方向で制度改革は進められるべきではないかと思っております。
 まず、(B)のサンプル解析制度を活用した侵害認定に関しましては、これは産業界から非常に要望の強いことであり、今年の7月からはEC理事会規則が施行されますし、商標権侵害についてですが、米国連邦規則にも規定がある。
 このサンプル解析の必要性は、特に商品の外形的な形状を見ただけでは権利侵害が明らかではない場合に、そのサンプルを解析して、権利者側としてははっきりさせないと侵害品だということで輸入を差し止めることができなくなるということがありますので、制度化する必要があろうと思います。
 ただ、その場合、ここにも一定の要件の下と書いてありますように、その一定の要件をどう設定するかということが具体的に見ると非常に難しい問題を含んでいるところだろうと思います。
 非常に大きな装置1台というように、それを完全に分解しなければ、解析できないものを対象にするということはなかなか困難でしょうし、また、それを解析することによって生ずる、そのものの破壊などによる保証の問題というのも考える必要がある。そのような要件については、更に検討する必要があろうかと思いますが、それが実現する方向で制度改革をすることが望ましいのではないかと思います。
 もう一つは、仮処分命令を活用した侵害認定ですが、これはここに前回から若干の修文がなされておりますが、考え方としては、ここに書かれたような内容で立法化が適切かということについての検討と、その方向での制度改革ができれば望ましいと思います。
 その場合には、当然(F)のところの右側で図にされておりますように、少なくとも輸入者情報の開示制度が今度とられるようになって、その通知を受けた権利者が仮処分申請をすると一定期間は税関に留置されて、それで一定期間内に仮処分が出たときには、税関は差止の措置をとらなければならないと思います。これは、ドイツ特許法の142 条のAにも規定があることです。
 この制度については、今日配付された伊藤委員のペーパーの中で(7)の(F)の「裁判所の仮処分を活用した侵害認定というところの2.のところで「当事者対立構造の下で運営される民事訴訟(仮処分を含む)の結果が、公益実現の責務を負う行政庁たる税関を法律上拘束するという制度を構想するのであれば、法21条1項の趣旨そのものを見直すことが必要になるのではないかと存じます」という部分がありますが、確かに従来の関税定率法の規定から言えば、このような制度を問うということは、従来の制度になかったという意味で、その趣旨を見直すという部分を含むことにならざるを得ないと思います。
 ただ、この場合に、21条のいわゆる輸入禁制品は、多くが鉄砲とか、麻薬とか、偽造貨幣という、言わば国家的法益の保護に関わるものであるのに対して、5号は知的財産権、つまり知的権利の保護に関するものでありまして、このような、本来的に言えば、私人間の私的紛争に関わる問題について輸入禁制品として扱っている場合に、それを当事者間の効力が、いわゆる相対効のみが生ずる仮処分によって、税関長が差止する措置をとるということは、制度的には必ずしも矛盾するものではないのではないかと思っております。
 なお、関連して、ここに挙がっているほかの条項について簡単に意見を申しますと、(A)とか(C)は、現在でもある程度行われている運用の問題でありましょうし、そういう意味では、このような運用が行われること自体については、特に問題はないだろうと思います。
 それから(D)の技術判定機関と(E)の税関内審議機関は、まさに新しい行政機関ないし、行政委員会をつくるものでありますけれども、このような行政委員会をつくるとしましても、この前から何度か研究者の委員の方からも指摘がありましたように、結局は司法的判断を経る必要性が出てくるという意味では、こういう中間的な機関が必要かどうかという問題もあります。
 それから、これは現在の我が国の状況から言えば、この行革の時代に、こういう審議機関、特に税関、少なくとも港で言えば百数十あるんでしょうけれども、少なくとも税関本関について言っても8つありますから、そこに全部こういう審議機関を設けなければならないということになって、よほど高度の必要性があれば、それも可能かもしれませんけれども、先ほどの藤原審議官の御報告いただいた報告書の中にもあるように、特にそういう機関で審議をして判定しなければならないような特許権侵害は、平成13年1件、平成14年7件ということですから、今後、輸入者情報開示制度が設けられるために、この数というのは増えてくる可能性は多分にあると思いますけれども、それにしてもなかなかそういう特別な行政機関を設けるだけの状況というのは、今すぐ必要性が認められるということは難しいのではないかと思っております。
 最後に、(9)のADRの機関の活用は、それはそれなりに活用することはいいと思うんですけれども、8の同一製品の輸入差止の問題については、これはあえて法律でそのような規定をしなくても、実際上、現在は行われていることだという説明がありましたし、当該輸入の対象になっているものそのものとは、同一品といっても別のものですから、その場合、当然に前の仮処分の効力が及ぶというのを法律で規定するのは、ちょっと難しいのではないか。
 ただし、事実上そのように税関で運用されるのであれば、それはそれで全く問題がないのではないかと思っております。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。今、5ページの(7)につきまして、(A)(B)(C)(D)(E)(F)、それから(8)(9)について立法措置が必要なもの、運用でいくべきもの、それから審議機関については、必ずしも現時点で設置する必要はないんではないかという御意見等がございましたが、これらについて、ほかの委員の先生方は、いかがでしょうか。
 どうぞ。

○下坂委員 竹田先生御提案のものなんですが、例えばグレーの部分について件数は少のうございましても、裁判所で仮処分ということになりますと、例えば特許と実用新案とかについては、大阪地裁、東京地裁ということに、将来的にもしなったとしますと、その仮処分もそこでということになるんでございますか。

○竹田委員 これは、通常の民事訴訟法の規定に従って行うことになると思いますけれども、特別の制度を設けるというのではないということになると思います。

○阿部会長 よろしいですか。

○下坂委員 はい。

○阿部会長 では、中川委員お願いします。

○中川委員 今、竹田先生がおっしゃったこととほぼ結論が一緒でありまして、ただ仮処分のところだけ少し違うかもしれないんですが、少し付け加えさせていただきます。
 まず、(B)のサンプル解析ですけれども、結論的には賛成なんですが、この上のところに関税定率法の改正と書いてあるんですが、基本的には手続関係は全部関税法なんですね。ですから、関税定率法の改正というのはちょっと狭過ぎるといいますか、もっと大きく問題をとらえて、関係法令というふうに広くくくった方がいいんじゃないかなと思います。これは法制的な観点からの感想です。
 その上で、(B)に関しては、どの法律かはわかりませんが、これを入れるならば、法律改正は必要だろうと思われます。
 それに対して、(A)(C)(D)に関しては、必ずしも法律の根拠がなくてもできるんではないかなという気がするんです。運用で十分できそうな気はいたします。取りまとめには、そういう書き分けが必要ではないかという感想です。

次のページの(E)なんですが、竹田先生と同じ感想を持ちまして、選択肢としてはこういうのがあると思いますが、ここで言う専門的な判断というのが、事実に関する専門的な判断であれば、その前の(C)や(D)でできるわけですね、専門家の意見を聞けばいいと。
 法律的な専門的な判断、つまりクロスライセンスについてどう判断するか、あるいは均等論的な判断をどうするかとか、そういうふうな話であれば、これは相当な専門家をとってこないといけないので、多分かなりお金的に大変なんじゃないかなと思うので、本当に実現可能性があるのかなという心配はあります。
 (E)でイメージしているのが、どういうふうな意味での専門性を持った常設機関をイメージされているのかがはっきりしません。法律についての専門的な判断であれば、裁判所があるじゃないかという反論に合うでしょうし、事実に関しての専門的な判断であれば、(C)や(D)でいいじゃないかという反論が出てきそうですので、いや、そうじゃないと、裁判所にもない、しかし(C)や(D)でもない別のニーズがあってこういうのが必要なんだという説明がないと、どういうふうな機関なのかがわかりにくいなという気がいたしました。
 それで、竹田先生と意見が多分違うのが(F)なんですけれども、意見が違うかどうかわからないのは、実は文章の書き方の意味がなかなか微妙でよくわからないからです。(F)の最後のところなんですけれども、当該決定における侵害判断に基づいてというときの、この「基づいて」というのは、拘束されるという意味なのか、それとも参考にはするけれども、場合によっては違う判断もあり得るよという意味なのか、非常に苦心された書き方かもしれないんですけれども、まずそこが気になるところなんです。どちらなのかによって、えらく話が違ってきますので、これは質問であると同時に、もしこれが拘束であれば、税関は仮処分を待つんではないかという気がするんです。かえって遅くなるんではないかと。その方が安心だからですね。
 どうして安心かといいますと、先ほど審議官の説明のときに質問したんですが、税関の決定に対して、通知についての取消訴訟ができるわけですね。仮処分に拘束されて黒認定するんであれば、その黒認定の通知に対する取消訴訟で何が違法かというと、多分仮処分が違法だと言えないんではないかと、行政官はこの仮処分に拘束されるわけですが、これはいけないと言えないので、そうすると、ほとんどもう争うことがないんですね。認定手続の手続違反ぐらいなんです。
 つまり、税関としては仮処分を待った方が、通知の取消訴訟の被告になったときに訴訟が楽なんです。そうであれば、わざわざリスクをおかして仮処分が出る前に黒認定をしなくなるんではないかということで、かえって遅くなるんではないかなという不安がありまして、逆効果になる可能性がありますので、だからこれは義務づけるという意味ではなくて、「基づいて」というのは、あくまでも参考資料、しかし非常に有力な参考資料であるというふうな意味であれば、その心配は薄れるとは思うんですけれども、ちょっとそういう心配がありました。
 ですから、義務づけという趣旨であれば、これは考え直した方がいいんじゃないかなという気がしております。

○阿部会長 ちょっといいですか、あまりたくさんあると、今のところで切っていいですか。

○中川委員 はい。

○阿部会長 これは事務局に対する質問が、今の「基づいて」と、それから先ほどの(E)のところの専門的な判断のところがどういう中身かということでしたが、何かお答えいただく必要はありますか。

○小島事務局次長 まず(E)の税関内の特別の審議機関というのは、これまでの議論で出された米国のITCの議論、あるいは下坂委員からの御提案では、この専門家というのは技術的専門家、法律的専門家が入った審議機関という位置づけでございます。
 それから(F)の「仮処分の侵害判断に基づいて」の「基づいて」というところは、委員の方からいろいろな御議論があり、必ずしもそれが拘束されるものか、参考かというのは、若干いろいろニュアンスがあったので、したがって「基づいて」としたもので、決めておりません。

○中川委員 そこのところを決めないと、なかなか条文にするのは難しいんではないかなと思うんですけれども。

○阿部会長 では竹田委員、ほとんど似ていると思いますけれども、論点のところだけお願いします。

○竹田委員 私は(F)の「侵害判断に基づいて」というのは、それに拘束されるという意味に考えて、だから立法事項だと。中川先生が言われたような趣旨で、これを参考にというか、強力な参考にというのか、それで判断するというのであれば、立法の問題ではなくて運用の問題でいいと思うんです。
 今、水際措置をより一層強化して、現在の日本の経済社会が置かれている状況をもっとサポートしようということで制度改革を考えると、そこは思い切って拘束されるという方向を打ち出して立法事項にした方がよろしいのではないかと。私はそう考えております。

○阿部会長 その点については、これからまとめる段階で、今のところは若干ファジーになっているということですね。
 それから(E)の方は、竹田委員がおっしゃったのは、むしろ現状では特許の数の1件とか7件だということですので、判断の中身がどうかという以前に、つくる必要がないんではないかという御意見でしたので、その辺は。

○小島事務局次長 ちょっとその点を付言させていただきますと、先ほどの関税局から御説明がございましたけれども、権利者からの輸入申立て制度で特許権が導入されたのは、まだ1年前ぐらいのことですので、そういう意味では、今までは特許権に関わる侵害判断というのは、税関ではあまりされていなかったということです。
 これからは、権利者からの申立ても出てきますので、そこは随分状況が変わってくるんではないかと思います。

○阿部会長 竹田委員がおっしゃるのは、その辺の様子を見ながらということをおっしゃったんだと思いますので、どのくらい迅速に対応していくかというのは、実績との関連というのは当然あるだろうと思いますが、そこはまたもう少し詰める必要があるんではないかと。
 ほかの点は、いかがでしょうか。済みません、途中でしたね。

○中川委員 ちょっと竹田先生がおっしゃった(F)の論点について、一言だけ。私の考えは、行政と司法は競争させた方がいいと思うんです。つまり、仮処分に基づいて行政が動くのであれば、恐らく行政は遅くなる。しかし、独立に判断できるとなると、行政に来てくださいということで、先に判断する可能性がある。仮処分に拘束されてということになると、権利者としては結局裁判所と税関両方やらなければならないんではないかと、何か手間が増えてしまうような気がします。むしろ別々にしておいて、司法ものんびりやっていると税関が先に出してしまうよというような競争関係を持たせた方がより有効な水際になるんではないかと思っております。
 これは、背景はもっといろいろあります。行政をどうとらえるかというのは司法との関係で大問題なんですけれども。
 先ほど、もう一点と申し上げたのは(8)に対する質問なんですが、最後の2行で「制度的には可能であるが、これが簡便かつ迅速に」というところなんですけれども、先ほどの審議官の御説明だと、私も質問したんですが、要するに今の輸入申立てというのは、限りなく一般排除命令に近いというふうにとらえるのが正しいのかなという気がいたしました。そうであれば、それを更に簡便、迅速というのは、いわゆる当事者から意見を聞かなくてもいいということなのか、そうであれば、これは憲法論の問題が出てくるのではないか。モノを輸入するという経済行為に対して意見も聞かないで、最悪の場合、黒認定されると没収されるわけですね。これは財産権の侵害ということで非常に重大な問題になってしまいますので、簡便、迅速というのが手続、つまり意見を聞くというのを一切切ってしまうという意味なのか、単に早くしろということだけなのか、今の侵害の手続とどう違ってくることをイメージされているのかということをお聞きしたいです。

○小島事務局次長 ここで書いた意味は、中川委員がおっしゃられた後者の方で、意見を聞く手続に関して、一般的には2週間程度なんですが、明らかに一旦黒認定されたものについては2週間待たずとも、その半分にするとか、短い期間で処理するというような運用の改善をするということが簡便、迅速な制度改善として想定されています。

○中川委員 今の侵害認定手続にある手続保障というか、意見を言うという機会などは、それ自体は残されるわけですね。それをもっと早くやれという意味ですね。

○小島事務局次長 そういう意味で書かれています。

○阿部会長 ありがとうございました。ほかの委員の方、どうぞ久保利委員。

○久保利委員 この(F)の議論ですけれども、基本的に私は、やはり運用よりは法律改正でいくのがよろしかろうと。その法律改正と併せて、裁判所の仮処分を活用するのはよろしかろうと思うんですが、今、中川先生がおっしゃったとおり、競争させるのは大変よろしいわけですが、逆に二度手間になるのと、今度司法が真面目に早くやるという保証もないわけで、まちまちになって、要するにお互いにもちもちになって、行政も判断しない、裁判所も判断しないというのでずるずるといく危険が一番高いのではないかと。あえてサボタージュという言葉を使えば、両方ともサボタージュする危険があって、片方だけがするというふうなことではないかもしれない。
 ということになると、要するにこの種のものについては百日裁判ではありませんけれども、仮処分を例えば1か月以内に決定を出さない場合にはどうするとか、あるいは2週間以内に税関長が一定の判断をした場合には、もうその判断を優先するとか、何かその辺の、私もまだ具体的なものはよくわかりませんが、双方にインセンティブが付くようなものをやらないと、結果的にはどっちもやらない。
 これはもう随分、アメリカで訴訟が起きて、それを管轄違いで日本に持ってきて、日本で仮処分が出たらば、それを認めてやりましょうといって、60日以内に仮処分決定を持ってきたら、そのとおりにアメリカは手を引きますという決定までもらったのに、日本の裁判所がついに60日間決定を出さないために、またアメリカに持っていかれてしまったというケースを、ちなみに私の「法化社会へ日本が変わる」の中でザルームさんと対談して、具体的に会社名も挙げて言っていますけれども、要するにそういうふうにともすれば両方とも遅延しがちだと、これをどう縛るかというのが実は最大の問題であって、その知恵をどう出したらいいかが、私も考えているんですが、なかなかうまい知恵がないと。それを是非竹田先生にお願いをしたいと思います。

○竹田委員 私も当然、期間の制限ということは考えていまして、どのぐらいの期間が適切かという問題があるのと、これは裁判所の審理期間を縛るわけにはいきませんので、あまくでも対象貨物の留め置きの期間で縛りを付ける以外にないと思うんです。
 だから、仮処分の申請をした、そうすれば一定の期間内は税関で留め置かれる。私は、ここに非常にうまい表現で書いているとは思うんですけれども「裁判所には、水際における迅速な救済の必要性に鑑み、仮処分命令が迅速になされるような訴訟運営面での対応を期待するとともに」ということで、縛りは留め置きの期間の縛りをかけて、そして、その期間内に仮処分が出なかったときは、あとは税関長が決めるということにするのが一番適切でないかと思っています。

○久保利委員 今の一定期間内に仮処分が出た場合には、竹田先生のお考えでは税関長は拘束されるという発想ですね。
 したがって、裁判所が早くやれば、それで行政は待っていても、裁判所が早くやってくれれば、それでよろしいと。
 逆に裁判所は拘束できないというのは、そうなんですが、しかし、裁判迅速化法もありますし、ある程度の目途を与えるということも私は可能なのではないかと。
 こっちの留め置き期間の方は具体的に一定の期間を決め、裁判所は大変上手に事務局がお書きになった「訴訟運営面」という部分に配慮して、どれぐらいを目途にとか、どれぐらいを目標にしてとか、目途というふうな言い方があり得るのではないかと。現に2年を目途というふうなことが裁判迅速化法では書かれていますから、そういう目標数値としてはあり得るのか、あるいは一定期間という留置期間内に仮処分を出すように裁判所は努力しなければならないというふうなことになるのか。

○竹田委員 今の点ですけれども、確かに裁判所迅速化法で2年を目途とするという規定がありますけれども、やはり司法手続法でそれをやるのだったらできると思いますけれども、行政に関する法律でそういう縛りをかけるということは、やはりできないことだろうと思います。
 だから、留置期間の方で制限して、あとはここに書かれているような期待をして、そして中川委員のおっしゃったように、行政がそれを放置して結果を見るのが、いつまでも見られるということはないようにするというのが、一番いいのではないかと考えているんですけれども。

○久保利委員 私が考えたのは、中川先生がおっしゃったのをちょっと拡大解釈かもしれません。関税定率法の改正と書くだけではなくて、関連法令というふうに言う中で、裁判所の迅速化法の問題も含めて視野に入れて検討したらどうかというくらいのことまでは考えたわけでありますけれども。

○阿部会長 それでは、ここはまた事務局の方で少し整理していただいて、また先生方に御意見を伺って、ある賢明なる、そういう人に、できるだけ持っていっていただくことにして、今の件ですか。

○山田委員 今の件というか、今の水際取り締まりの件ですが。

○阿部会長 では、どうぞ。

○山田委員 これが終わるんだと思ったんですが、違うんですか。

○阿部会長 そろそろ商標のところに行かないと時間が間に合わなくなるので、どうぞ、水際の件で一つ。

○山田委員 ずっと方法論が話されていましたけれども、基本的に権利社会は何が目的かといったら、早く結論を出してくれと、判断してくれというのが目的なんです。
 そうすると、今のように、いろんな手段があると思うんですけれども、模造品と一言で言っても、外観とか、あるいはサンプルの解体しなければいけないものとか、特許とか、あるいはバッチとか、いろんな方法があるわけですね。それを一本のやり方でなかなか全部取り締まるということは難しいと思うんです。
 そうしますと、何かというと、やはり模造品の種類をパターン化して、それが入ってくるルート、例えば大きな機械の模造品がポケットに入って入ってくるわけではないわけですね、そのルートがありますね、模造品の種類とルートのパターン化をして、それに対して多様な、要するに侵害を防止するルートをつくっていけばいいんじゃないかと思うんです。
 それは、お金がどれぐらいかかるとかというのは別にして、国がどのぐらいこの問題をとらえて対処していくのかということに対して、国が判断すべきだと思うんです。重要だと思えば、それはちゃんとお金をかけてきちんと守るような多種多様な方法を考えてもいいというふうに考えますけれども。

○阿部会長 必要なお金はかけていくべきだと思いますから、この案でどこを検索されたらいいかと。

○山田委員 これは、いろんな種類がありますけれども、私が言っているのは、模造品のパターンを分けて、ルートを分けて、そのルートに対してそれぞれ防御の方法を考えると。 そのときに、権利者はどこに行くかといったら、一番最後に書いてある政府の窓口に、ちゃんと一本化した窓口であって、私はどこに行けばいいんですかと、それはAパターンですと、Bパターンですというのをちゃんと一本化してできれば非常に権利者としては有効だと思いますね。

○阿部会長 その辺は法律というよりも、運用の問題が大きいかもしれませんけれども、そういうある種のきちんとした整理をここでしておくということは、場合によっては極めて有効かもしれません。その辺も含めまして。

○高林委員 サンプル解析のことで、ちょっとプリミティブな質問ですけれども、左側の文章を読むと「権利者が税関からサンプルの提供を受け、解析を行う」という文章と、「外観から侵害判断ができないような貨物については、税関においても税関長の職権で分解検査を行う」というふうになっていますが、現在の運用として、もの自体の分解検査を職権で税関長自らがやるということは、全然できないことなのでしょうか。

○阿部会長 事実確認という意味で御発言いただければ大変ありがたいです。

○藤原審議官 点検とか、見本の検査とか、そこをどの辺まで読むかによると思いますけれども、ごく簡単なものであれば、それは非常に安価なものであるとか、少量のものであるとか、それは当然できるかと思いますし、ものによっていろいろ限界は出てくるかもしれません。

○高林委員 こういう分解検査というものは、権利者ではなく職権で税関長がやるのであっても、法改正が必要であるということですか。

○藤原審議官 職権でやる場合に、それが法改正が必要かというと、必ずしもそうではないかとは思います。

○竹田委員 ちょっと待ってください。私の認識とは全然違うんですけれども、現行法では、そういうことが行うことができないからやりませんというのが、税関の基本的態度だと私は認識しているんですけれども、そうじゃないんですか。現行法でも分解して解析することが税関長の権限だったらできるんですか。

○藤原審議官 実際問題として、今までそこまで必要なケースが少なかったということだと思います。

○中川委員 本当は令状が必要なぐらいですね。

○竹田委員 そうですね、これができるというのは、ちょっと信じられない議論ですから。

○藤原審議官 いろんなケースがあろうかと思いますけれども、ごく簡単な安い場合もあれば、先ほどおっしゃっていましたように、非常に高価なものもあろうかと思いますし、元に戻せる場合もあるし、そうでもない場合もあります。

○高林委員 権利者に渡して、権利者に分解させるというならば、法律改正をしなければならないでしょうね。私の質問は、職権でも現行法でもできるところと、法律改正が必要なところを、ちゃんと分けて議論しないといけないのではないかということです。
 ですから、この提案が権利者に渡して、分解まで認めるんだという提案であるならば、これは当然法律改正が必要だと思いますけれども、この文章を見ると、そこまで提案していないように読めるんです。
 前半は外観から内容がわからないから、分解するというところまでは入っていないんですね。サンプルの提供を受け、解析を行うとしか書いていないわけですから。分解と解析というのは大分意味が違うのではないかと思います。


○小島事務局次長 表現上、ちょっと不十分なところがあったかもしれませんけれども、ここでは分解検査、分解解析と両方同じ意味で使っていますので、前者は権利者が取得して、要するに権利者じゃないと分解できないような、ただネジを開けるだけではできないようなもの、あるいは壊れてしまうようなものがありますので、そういうものは権利者が取得して分解検査をするという意味で書いたものです。
 後者は、今までも制度的にはできているもので、開けて見ただけでわかるものであれば、職権でどんどんやればいいんじゃないかという趣旨でございます。

○高林委員 いや、後者は外観から侵害判断ができないような貨物についてですよ。

○小島事務局次長 外観からは侵害判断ができないが、ふたを開けただけで判断ができるようなもの、例えば、この会議でもバンダイが説明していました缶バッチ製造機みたいなおもちゃがありましたけれども、あれはふたを開けさえすれば、特許侵害だというのがわかるというものです。だけれども、現在は、ふたを開けて見るということをしていないので、特許侵害で止められなかったわけです。そういうような類いのものが後者でできるのではないかということです。

○高林委員 なるほど、職権でできるものは積極的にやっていくと、できないものについては第三者にゆだねて法律改正した上で分解検査していくと、そういう趣旨ですね。

○小島事務局次長 そういうのが(B)の趣旨でございます。

○阿部会長 ここは文章がちょっとわかりにくいかもしれないですね。では、そこはよろしくお願いします。
 それでは、大変恐縮ですが、今の御意見を踏まえて、また事務局で整理してもらうことにして、7ページの商標権侵害品等の取り締まりの強化について、御意見を賜わればありがたいと思います。
 どうぞ。

○山田委員 これは、前にも申しましたように、買う人がいるからいけないんであって、売るのも買うのも違法だということで、あるいは持つのも違法だということをちゃんと法律で決めてしまえば、買えなくなりますから、ここは非常に有効だと思いますね。

○阿部会長 7ページについて御意見を

○山田委員 7ページだけですね。

○阿部会長 ええ、とりあえず。
 どうぞ。

○久保利委員 (11)番のマーク切除の話ですけれども、これの基になっているのは、恐らく大阪地裁の昭和57年の判例だと思いますけれども、もう20年以上も昔の判例ですし、しかも地裁段階の判例で、まさにこの判例でずっとマークを切除して許してきたという方がおかしいと思いますので、是非脱法行為の取り締まり強化、これは是非法律改正も含めてお願いしたいというふうに思います。

○阿部会長 どうぞ。

○中川委員 質問なんですが、(14)の問題ですが、侵害品かどうかは権利者が争うかどうかによって、変わってくるという理解でよろしいんでしょうか。

○阿部会長 もう一回お願いします。

○中川委員 つまり、商標権侵害品を個人が持ってはいけないという制度をつくる場合、これが侵害品なのかどうかというのは、だれが決めるんでしょうか。例えばこれは刑罰をかけるというふうなイメージですか、それとも輸入だけで禁止するということですか。

○小島事務局次長 ここに書いてあるのは両方のイメージです。

○中川委員 両方ですね、刑罰であれば裁判所が判定するはずですね。これでは、商標権の侵害かどうかは、権利者が争っているかどうかとは無関係に決めるんですか。
 というのは、輸入差止のところで権利者が争わなければ、それは禁制品ではありませんという発言が先ほどありましたね。それに対して、竹田先生がううんとおっしゃっていましたけれども、禁制品かどうかは権利者が争うかどうかで決まるんだということであれば、仮に利用者がまだ争っていない場合、侵害品と思っているかどうかわからない場合、しかし、検察がこれを商標権侵害だといって刑事裁判にした場合は、権利者の意見を伺ってから、有罪になるかどうか決まってくるということになるんでしょうか。

○小島事務局次長 取り締まり運用の詳しいことはわかりませんが、現実に路上で売られているものや、スーパーとかディスカウントショップで売られているものは、現に警察が取り締まって、逮捕、没収しているわけなので、それと同じことを想定しています。

○中川委員 そうすると、先ほどの輸入差止申立てですか、あれも当事者が争わなくたって輸入は止められるということになるんですかね。これは繰り返し出てきている問題で、知財侵害品の水際取締制度を禁制品のところに置くのがいいのかどうかという根本問題なんですけれども。

○阿部会長 特にこれは個人が知らないで持ってくる場合もあるわけですね。本物だと思ってね。

○小島事務局次長 知ってか、知らないでかとか、そういうのは法律の構成要件をどうするかというところで決めればいいかと思います。

○阿部会長 そういうことですね。今の中川委員の御指摘のところは、整理しておく必要があるように、私のような素人でも思いますが、いかがですか。

○久保利委員 それは、麻薬でも常に同じ問題があるわけで、そうとは知らないで持っていましたというのを所持罪でやろうという。

○中川委員 大麻というのは、これは一律に決まるんですね。でも、侵害品かどうかは一律に決まるものと考えていいのか、それとも権利者が争うときに侵害品と考えるのか、ちょっとその根本をどこかで整理しておかないといけないのではないか。差止の話になると権利者が争うかどうかで決まると、しかし、個人使用になると、これはもう何か一律に決まっているものなんだと、それは果たして全体で整合的なのかどうか、これは知財の問題ですので、私は専門家ではありませんが。

○竹田委員 これは、特許法でも商標法でも権利侵害になるのは、業としてという要件があるわけですね。だから、個人の使用とか所持というのは、これは原則的に言えば、業としてとは言えませんので、侵害にはならないわけですね。侵害にならないものの所持を禁止するというのは、これは本来の知財法の概念とは、また別の秩序維持的な考えで、何らかの立法的措置を講じる問題だというふうな視点でとらえないと、知財法の体系と基本的に違うものを持ち込むことになってしまうんではないかと思います。

○小島事務局次長 (14)で取り上げているのは、その右側の(14)−Cで、フランスの知財法を引用してありますけれども、あるいはこの場でユニオン・デ・ファブリカンの方が御紹介されていたわけですけれども、フランスの知財法、商標法の扱いにならって、今の法律を改正したらどうかという御提案でしたので、その法律改正を前提とした提案でございます。

○高林委員 その法律改正というのは、知財法の商標に絡む法律だけを改正するという趣旨なんでしょうか。

○小島事務局次長 別に商標法だけではなくて、ほかの法律が適当ならば、ほかの法律でもいいと思いますが。

○高林委員 今日は、中山先生もいらっしゃらないし、知財の学者は私と竹田先生だけですので、言わなければいけないのかもしれませんが、繰り返しになりますけれども、この問題は知財法全体に関わるものであって、そこだけを簡易に動かすことというのは、知財法全体の体系から見てふさわしい改正だとは思えません。
 ただ、別の秩序として、たとえば、ブランドを侵害するようなものについて、個人の輸入であっても水際で差し止めておくべきだという考え方は、関税定率法とか、そういうところで措置する可能性はあると思いますけれども、知財法全体に手を付けようという発想は、知財法の学者としては、大問題であるといいますか、難しい問題であると思います。
 それと、ちょっと前に戻るんですけれども、マーク切除の問題についても、バックに付いている著名なマークを切除したということだけを想定するならば、マークを取るだけであったとしても、何ということをやるのだといえようかとは思うのですが、商品に付されている商標の態様というのは、いろいろなものがあるわけですから、一概にすべてのマーク切除は侵害になるというのは、私は難しいと思います。57年の判決は古いとおっしゃいますけれども、今でもこういう原則というのは、場面ごとではありますけれども、維持されていると思います。
 ですから、この問題についても、マークが最初から付いていない場合もあるでしょうし、税関の手続のところではがされてしまう場合もあるでしょうし、いろんなものがあるわけですから、どこではがされたのかというのを無視して、一律にマークと本体がばらばらになっている場合であっても駄目であるというふうにするのは、難しいのではないかと私は考えますが、久保利委員はいかがですか。

○久保利委員 脱法行為ですからね。

○小島事務局次長 ここで書かれているのは、(11)(12)は、税関ではがしたり、部品を取り外すという脱法行為について、それを取れば通関できるという運用になっていることが問題で、その脱法行為を放置するのはいかがかという御意見があったことを踏まえて書かれていますので、ここは税関での切除、取り外しに関するものについてであります。

○高林委員 そうすると、輸入する前にマークを外してばらばらにしてから輸入するのは、全然カバーしていないというわけですね。

○阿部会長 高林委員の前半については、どういう法整備をするかよく整理していただいて、御指摘のような懸念にならないようにお願いしたいと思います。
 III に移ってよろしゅうございますか。
  (「はい」と声あり)

○阿部会長 それでは、III の国内の取り締まりについて、10分ぐらいで御議論を賜われば大変ありがたいと思います。いかがでしょうか。
 どうぞ。

○山田委員 先ほどの個人所有とか、あるいは輸入が取り締まられれば、当然、模造品の販売ということをインターネットの中で販売しても、それは違法であるというふうな形になると思うんです。これは是非やっていただきたい。
 あと(17)番のノウハウの流出というので、いろいろ実施すべきノウハウ等の海外流出を防止すると、ずっとありますけれども、もう一点、これは今までに出ていないんですけれども、例えば金曜日の夜に飛行機に乗って海外に行って、それでノウハウを教えてくるという技術者がたくさんいるというふうに聞いております。それは現実にあることで、企業としても、みんなそれを見張っているんですけれども、なかなかそれを取り締まれない。 ただし、これは聞くところによると、例えば国内で会社の社員が他の企業に機密を漏らすと違法なんですけれども、海外へ行って機密を漏らしても違法じゃないんですか。例えば、アジアの国のどこへ行っても、そこで日本の企業の機密を漏らして、あるいは技術のノウハウを漏らして、それが違法かどうかと、もし違法であれば、それで取り締まればいいことであるし、違法でなければ、違法であるという立法整備が必要で、やはり何人かはやはりちゃんと取り締まるという実績を残せば、そういう技術者というのは、ある意味では真面目な技術者でノウハウを持っている人ですから、そういうのが違法であるということをちゃんと明確にすれば、そういうことはすぐしなくなると思うんです。
 やはり、これは図面とか何とかというよりも、人間がそのまま行って話をする方が、概念も何も全部話してしまいますから、非常に大きな痛手を受けるというので、もしあれだったら追加していただければと。

○小島事務局次長 今の点は不正競争防止法で、国内で秘密を漏洩した場合は刑罰の対象になりますが、同じ人が国外でやった場合には、刑罰の対象にならないと承知しております。日本の国内法ではですね。

○久保利委員 国外犯を特に罰するという規定がない限りはそうではないわけですから、少なくとも不正競争防止法にその規定はないと思います。

○小島事務局次長 欧米の法律では、国外犯を処罰する規定があるようでありますけれども、現時点で日本ではこの問題に関する国外犯の処罰規定はございません。

○山田委員 外へ行かれて話をされても漏れるのは同じですからね。

○吉野委員 今の出張の話以外に、やはり中国企業、韓国企業は、スカウトがすごいですから、だから向こうへ連れて行って、向こうで仕事をしてもらうというケースが非常に多いですね。特に定年後とかね。
 したがって、海外で秘密を漏洩するのを防止する何か手立てがほしいですね。

○阿部会長 それは、どうして法律で許しているんですか。

○荒井事務局長 今まではだめなもの以外は許しているというやり方ですから、こういうものはよくないというふうになれば、そういう形に。

○阿部会長 単にそういうことですか、ではよくないと。

○久保利委員 私の記憶するところによると、むしろ逆に韓国等においては、国外で営業秘密を漏洩した場合には、むしろ刑罰が重くなるという規定があるということを聞いたことがありまして、本当かどうかまだ確認しておりませんけれども、それは十分あり得る話ではないかと。内部で漏らしっこしているのは、国益からするとまだあれだけれども、外国に漏らすのはいかぬという、この間の理研遺伝子スパイ事件のアメリカとの関係ではありませんけれども、そういう問題は私はあり得ると思います。
 だから、日本でこれがないというのは、さっき申し上げた肖像パブリシティの問題も含めて、日本の法制度は、特に刑事罰の関係について言うと、ゆるゆるなんだということを認識した方がいいと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。ほかの点はいかがでしょうか。

○荒井事務局長 ちょっと新しい御指摘ですので、追加させていただきます。

○阿部会長 よろしゅうございますか。それでは、次のIVの中小企業の支援というところ、これも10分程度御議論賜わればありがたいと思います。

○山田委員 これは中小企業のところですから代表して、本当に日本の産業を支えるのは、中小、ベンチャー、アメリカも半分ぐらいが、それが支えているというような形になっていますから、でも実質的には彼ら、我々も含めて本当に海外で特許とか、戦う力はまだないんです。それに対して支援とか、ここに書いてある助成とか、そういったものを厚くやっていただけると、それが大きく成長してお返しができるようになると思いますので、是非よろしくお願いいたします。

○阿部会長 ありがとうございました。ほかに、いかがでしょうか。特になければ、次に移ってもよろしゅうございますか。
  (「はい」と声あり)

○阿部会長 それでは、V番目の官民の体制強化について、最後になりますが、御議論を賜わりたいと思います。
 これは、先ほど吉野委員が言われたことも。

○吉野委員 もう一つ、これは国内の下の方のグレーというか、ブルーのところを相談という矢印が来ていますけれども、これは難しい話なんだけれども、このままでは全然だめですね。かといって、何か機関をつくってといってもワークするかどうかわからなくて、何かいい知恵が必要なところですね。

○山田委員 窓口を一本に絞ってほしいですね。後で各機関が連携するのは御自由に連携してもらって、窓口はまず一本に絞って。

○吉野委員 これは、今、どういうイメージで書かれているんですかね。

○小島事務局次長 10ページ目の右側の絵のイメージは、左側の(ア)というところにありますけれども、問題があった権利者は、関係の深いところにどこでも行ってくださいと。関係の深い、例えば経済産業省だ、農水省だと。そしてそれぞれの省に支援担当窓口が設置されるので、どこでも行ってくださいということです。
 ただそれが、例えば農水省に行って種苗法なら農水省の中で解決できますけれども、特許権に関することでしたら、特許庁に行かなければいけませんで、それを即時に特許庁に連絡する体制を整備するということを考えているわけです。

○吉野委員 そんなうまくいくと思いますか。

○山田委員 責任窓口というか、それを明確にして、最後まで面倒を見てくれる窓口を明確にして。

○吉野委員 最後まで面倒は見切れないと思うんですね。やはり領域がそれぞれ専門性があるからね。

○山田委員 ただ、それが例えば特許庁に行っていないとか、そういったことは、そこにクレームが付けられると、どうして行っていないんですかというような、そういった形じゃないとワークしないんではないかと思いますね。

○吉野委員 やはり知財立国と言っているんだから、知財担当大臣ぐらい指名して、その下にやはりスタッフがいて、そのスタッフが推進機能を持つとか、何かないと、こんなんではどうしょうもないという感じがしますね。何か知恵がもう少しほしい感じがしますね。だけど、日本も何とか立国というのが多いが、知財立国と言っているわけでしょう。

○荒井事務局長 言っています。これは一生懸命やりたいと思います。

○阿部会長 1つは、事務局がこういう役割を負うという考え方があるんですが、事務局は実務をやらない組織のようですので、なかなか難しいんですが、事務局が束ねることはできるかもしれませんけれども。しかし何か良い、それこそ効果的なものにしないといけないので、知財大臣でも、そこの事務局はこういう実務をやっていただかないと窓口の一本化はできないですね。
 現体制の中での工夫をここにお書きになったんだと思いますが、それではどうも働かないんではないかという御指摘ですので、これは行政の問題ですので知恵を出さなければいけないわけですが、事務局でも考えてもらう必要がありますけれども、何かいい案がありましたらば。


○中川委員 弁護士会での相談窓口というのも、あれもある種のワンストップサービスなんでしょうか。つまり、相談が来て、これはこの人に行ってくださいとか、こういう紛争はこっちと、何か同じようなものが、ここの事務局にホームページか何かでやれないでしょうか。とりあえずこんな相談内容です、どこへ行けばいいんですかという相談であれば、とりあえず、まずは領域別に文科省とか農水省に行くと。更にそれが訴訟もやろうかとか、水際とかになると、こういうふうな手続がありますよということを教えてくれるような、1か所に行けば、その後、振り分けてくれるというような仕組みがあればかなり違うと思うんですけれども。ちょうど弁護士会の相談窓口みたいに。

○久保利委員 基本的に弁護士会の場合には、総合と個別のものとダブるであるわけです。ですから、総合のところへ行かれますと、例えばクレサラ問題ですと言ったら、クレサラのところへ紹介して、そこへ行きなさいというふうに割り振りができるわけです。逆に、今、クレサラと思ってクレサラのところへ行くのも勿論ありですけれども、そういうどこか集約的な総合窓口、ここにも書いてありますけれども、総合相談窓口というのが、では一体国のどこにあるんですかと、何丁目、何番地に行って、ビルの何階に行ったらいいんですかというのが、実はないのにこれを書いているわけですね。つくろうという話なのかもしれませんが。

○吉野委員 民の場合には、場合によっては死活問題なんだね。ところが官はインセンティブがないんだね。それがビルトインされない限り大変難しいと思いますね。

○久保利委員 弁護士会だって、これはある意味で言うと、弁護士の営業窓口という発想があるから一生懸命受けて分けるわけですから、この窓口は忙しくなる一方で、何のメリットもないと思えば、官は働かないですね。それでは、困るわけですから、何かいいインセンティブを与えながらやる方法を考えるしかないですね。

○阿部会長 なかなか難しいですが、是非知恵がありましたら、勿論事務局にも考えてもらいますけれども。インセンティブですね。国のためというのはインセンティブにならないですか。

○久保利委員 いや、本来はなるはずなんですけれども。

○山田委員 さっき吉野委員がおっしゃったように、知財立国というんだったら、やはりそういう知財相をつくるなり、そういうのも一つのあれかもしれないですね。

○阿部会長 実務をやるところをつくらないとね。

○山田委員 これは現状を絵で、丸で結んだという感じですね。

○阿部会長 ありがとうございました。やはりそこが決め手でしょうね。あとは官民の体制強化で御意見ございますでしょうか。
 なければ、どこでも結構でございますので、少し言い足りなかったところがございましたら是非、どうぞどこでも結構です。

○下坂委員 先ほどの水際での取り組みの5ページの辺りなんですが、これは今後どのようにまとめられていくのかが、ちょっと読めないんではございますけれども、(A)〜(F)までいろんなアイデアがございまして、先ほど仮処分のところをかなり審議されて、それらをまた書き加えられるというお話で、いずれにいたしましてもたくさん出ておりまして、それぞれ一長一短はございますけれども、例えば(A)でしたら、特許庁への意見照会、これは現状ですけれども、この意見照会なさるようなところに、例えば、今は特許庁ということになっているところにADR機関の活用ということもお考えいただければ、民民で今、ADRをいろいろ活性化しようということで審議されているところでございますので、そこに例えば仲裁センターなどを持ち込むのはどうかと考えます。
 それから(C)の方で弁護士、弁理士等の外部専門家というのがありますが、これらも、例えばADRの方の仲裁センターなどでは、弁護士も弁理士も専門家がずっとリストアップされておりますので、公平とか中立という面からいっても、専門家の利用は十分できるのではないかというふうに考えております。
 (D)におきましても、技術判定機関の中に専門家も入れるときに、ADRの人たちも入れていくというような形もお考えいただければ、大変ありがたいと思っております。
 人材の供給源というものの一つとしての提案でございます。

○阿部会長 これは事務局いかがですか。

○荒井事務局長 6ページの(9)でADRの関係はまとめて書いてございまして、それぞれの項目、例えば税関長で判断するときに、ADRに行って当事者で話し合いという形がいいのかどうかというのは、いろんなケースがあると思いますので、ちょっと明示的にこういうところにADRと書くのがいいかどうかは、検討させていただきたいと思います。 ただ、御趣旨としてADRを活用するとか、そういうことは(9)でまとめて書いてあると、そういうことになっておりますので、ちょっと個別に入れると、性質が違ったものが入ってきたという面があると思いますので、行政手続でやっている話と、ADRの当事者間の紛争問題を直接リンクさせていいのかのどうか、ちょっと検討させていただきます。

○高林委員 そこのところで、私も先ほどの審議官の御説明にもありましたけれども、当事者間で和解ができれば、侵害品でないので、それが輸入を認めるということは、制度としてはそうはなっていないと思うんですね。実際に職権でやるべきことであるわけですから、そこは現実にはそういうふうな運用がされているんだとは思うんですけれども、ADRというのは、まさにそういうものであろうかと思うわけです。
 ですから、ADRをどんどん活用して、仲裁なり調停なり、何でもよろしいんですけれども、そういう判断が出た場合には、それにやはり事実上拘束されるとか、尊重するとか、法理的にどうするとか、そういうことになってくると、これはかなり議論しなければいけないんではないかなと、私は思うんですけれども。
 ですから、どんどん当事者対立構造のような形になっていく手続であるなら、ADRというのは、その中のまさに1つだし、裁判もまさに一番やるべきものですけれども、片や完全に職権でやっていく手続からスタートしているわけですから、その辺をどの辺に色分けをしていくのかというのを工夫しないといけないのかなという気がします。

○阿部会長 具体的には、難しい問題がたくさんあるかもしれませんね。
 どうぞ。

○竹田委員 関税局に質問ですけれども、当事者間合意があれば、例えばADRを使うときには、結構時間がかかりますね。そのときに輸入者と権利者との間でそういう手続に使いましょうという場合には、その留め置き期間というのは、無制限、あるいはかなり長期間ということは可能なんですか。

○藤原審議官 認定手続の中で、当事者同士で話し合いましょうという気運が出てきまして、そこで話し合いが行われている間、認定を先に延ばすというのは、実際問題としてはできると思います。そこで、話しがついてどっちかになればということです。

○竹田委員 その話合いの実態として使うということは、十分可能性がありますね。

○阿部会長 どうぞ。

○久保利委員 8ページのインターネットオークションの話ですけれども、左側の(15)のAとしてお書きになっているんですが、関係する省庁がさっきの総合窓口の話とも絡みますけれども、警察庁から経産省まで7つか、8つの省庁が絡むわけです。
 これが、本当に連携してやれるのかというと、実際はなかなか難しいのではない。しかも、インターネットオークションの場合には、右の方にも書いてありますけれども、ものすごいパーセンテージの汚染率になっているわけでして、これは早くどこかがリーダーシップを取って具体的に進めないと、実際上は一歩も進まないということになるんではないかと。
 そういうことであれば、実はこれはサイバー犯罪だとか、インターネット犯罪だとか、いろんなものがこれに絡んでいると思いますので、例えば法律家を事務局が主導で、こういう問題に詳しい法律家のアドバイスを受けながら、具体的な解決案をつくっていくとか、本来の意見書をつくったり、計画をつくったりするという仕事とはちょっと違うと思いますけれども、あるいはそういうプロジェクトチーム、タスクフォースをつくるなり、何かしないと、これではとても書いただけで先へ進まないのではないかと。しかも、現実には大変大きな問題で、前々回ぐらいに私も申し上げましたけれども、オークションサイトの中で汚染されているものというのは本当に多種多様です。しかもその背後には犯罪組織がいるというものですので、やはりきちんとした取り組みをしなければ、日本のオークションサイトというのが、そういう世界中の犯罪組織のターゲットになっていくんではないかという点で非常に重要な問題だと思いますし、是非具体的な一歩を総合的に進めていただきたいと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。久保利先生の御発言を伺うと、いつも深刻に受け止めざるを得なくなりますが、そういうつもりで是非お願いします。
 あとはいかがでしょうか。

○荒井事務局長 事務局からお願いがあります。いろいろ今日御指摘をいただいておりまして、これを更にまた御意見をお伺いしながら、よりよい案にしようと思いますが、是非日本の企業の方、あるいはいろんな方の財産がいっぱい侵害されている、そういう深刻な状態であるということと、今のいろんなお話がございましたように、いろんな問題が新しく起きていますので、私どもの法律の知恵だけだとなかなか不十分ですので、是非こういう形で直せばいいとか、積極的な御提案を、いっぱい問題があるのは承知はしているんですが、何とか、現実はそういうニーズが非常に強いということなので、従来の法律では法律の考え方だけだと、相当まだまだ足りないと思いますので、是非いろんな解決すべき案をいっぱい出していただければ、私どもも参考にしてやっていきたいと思います。お願いでございます。

○阿部会長 それでは、時間になりましたので、そろそろ締めたいと思いますが、模倣品・海賊版対策の強化につきましては、実は3回にわたって専門調査会で御議論をいただきまして、また多くの参考人からの御意見をいただいて議論を重ねてきたわけであります。 本日も、更に有益な御指摘をたくさんいただきましたが、事務局におかれましては、最終的なとりまとめの作成を行っていただきたいと思います。
 ただし、今、事務局長からお願いがありましたけれども、各委員にも個別に御相談をさせていただくということもあると思いますので、いろいろ知恵を出していただくように是非お願いいたします。
 次回は、できれば当専門調査会として、最終的なとりまとめの議論をさせていただければありがたいと思います。
 それから、次回以降ですが、人材の問題というのが残っておりまして、これに少しでも入りたいと思います。
 5月末までに推進計画の改定を行う予定になっておりますので、大変タイトなスケジュールでございますが、また事前に委員の方々の御意見を伺うようになると思いますけれども、御協力をいただきたいと思います。
 また、欠席された3人の委員につきましても、今日の状況を御説明していただいて、御意見をいただくということを事務局がやられると思いますが、そういうことで進めさせていただきたいと思います。
 そういうことで、非常にタイトですが、もう少し頑張りたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 そういうことでよろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)

○阿部会長 それでは、本日はこれで閉会させていただきますが、次回は、5月7日金曜日、午前10時からここで開催させていただきたいと思います。
 本日は、御多忙中のところ大変ありがとうございました。