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第2回 権利保護基盤の強化に関する専門調査会 議事録 | |||
1. | 日 時:15年10月28日(火)15:55〜18:00 | ||
2. | 場 所:知的財産戦略推進事務局 会議室 | ||
3. | 出席者: | ||
【委員】 | 阿部会長、伊藤委員、久保利委員、下坂委員、高林委員、竹田委員、野間口委員、山田委員、吉野委員 | ||
【事務局】 | 荒井事務局長 | ||
4. | 議事 | ||
(1) | 開会 | ||
(2) | 参考人からの意見聴取 | ||
園尾隆司 最高裁判所事務総局行政局長 | |||
古口 章 司法制度改革推進本部事務局次長 | |||
宗定 勇 日本知的財産協会専務理事 | |||
(3) | 「知的財産高等裁判所の創設」について | ||
(4) | 閉会 |
○阿部会長 それでは、時間までちょっとございますが、皆さんにおいでいただきましたので、ただいまから権利保護基盤の強化に関する専門調査会、第2回会合を開催させていただきます。御多用中のところ、よろしくお願い申し上げます。
○荒井事務局長 お手元の資料を確認させていただきます。1枚目の紙は議事次第が載っていると思いますが、資料1が、最高裁判所の資料でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。もし、漏れがございましたら、事務局の方にお申しつけいただければと思います。
○園尾行政局長 園尾でございます。よろしくお願いいたします。 ○阿部会長 よろしくお願いします。
○古口次長 古口でございます。よろしくお願いいたします。 ○阿部会長 3人目は、日本知的財産協会の宗定専務理事でいらっしゃいます。 ○宗定専務理事 宗定でございます。よろしくお願いいたします。 ○阿部会長 大変お忙しいところをおいでいただきまして、ありがとうございました。
○園尾行政局長 着席をして説明させていただいてよろしいでしょうか。恐れ入ります。
○阿部会長 どうもありがとうございました。時間の関係もございますが、お1人かお2人ぐらい御質問をいただきたいと思います。できれば短い御質問の方がありがたいんですけれども。 ○久保利委員 地域分割会社と国鉄の例を置かれましたけれども、そうではなくて、むしろNTT東日本と西日本に対するドコモのような、要するに横串と地域割りのものとがセットになって、非常に使いやすい通信システムができるというふうに司法も考えるわけにはいかないんですか。 ○園尾行政局長 いろいろな考え方があると思います。さまざまな現在行っておる実務との整合性というようなことを考えながら、いろいろ研究していくというのがよいという考えを基本的には持っております。 ○阿部会長 その辺は、また後で御議論いただきたいと思います。
○古口次長 どうもお呼びいただきまして、ありがとうございます。座らせていただきます。
○阿部会長 ありがとうございました。
○宗定専務理事 よろしくお願いいたします。座らせていただきます。
○阿部会長 ありがとうございました。
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○荒井事務局長 それでは、お手元の資料4、これは前回の第1回専門調査会における論点の整理でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。
○久保利委員 先ほど御質問しましたのは、せっかく園尾さんにお見えいただいたのに質問の1つもないのは大変失礼だと思いましたので。名調子の落語をもう少し聞きたいということで、落語の名人でございますので。そう思った次第であります。要するに、今回の改革というのは、宗定さんがおっしゃっていましたけれども、根本的に日本国がこれからどういう国として生きていくかという大問題があって、それを解決するのに知財戦略国家という手法があるのではないか。その中から、それでは司法制度はどう変えたらいいかというのが今のテーマなのだろうと。そういう観点でものを考えていくときに、既存のさまざまな司法の体制、裁判の体制がありますけれども、それをどうする、こうするという全体をいつも考えていると、どうも切り口として違うのではないか。むしろ知財の問題を一番よく解決するための戦略というものを考えるのが、この専門調査会を含めた本部の役割だろうと。したがって、それがものすごく大変なダメージをほかの部分に与えるということがあるのであれば、それは勿論考えなければいけませんけれども、こういう改革をしたら他への影響を与えるかどうかを考えるというところから始まっていくと、何もできないままに終わってしまうのではないだろうかと思います。
○阿部会長 先ほど来、竹田委員からお手が挙がっていましたので、よろしくお願いします。 ○竹田委員 今、久保利委員から出ました司法制度改革推進本部の甲案・乙案あるいは事務局長が説明されましたA案・B案の対立の中で、それを具体的に解決できる提案を私としては考えてみたつもりですので、意見を述べたいと思います。事前に事務局に提案の内容を届け出てありますので、事務局の方から皆さんに資料を配付していただけませんか。 (資料配付) 今お配りしました提案は、まず1ページは、この提案をするに至った基本的認識が書いてあります。2ページには、具体的な提案の内容が書いてあります。3ページには、なぜこのような提案をするのかという理由が書いてあります。以下、できるだけ簡略に説明したいと思います。まず、1のところは、第1回の専門調査会で私が述べた意見の要旨ですが、この意見がこの提案の言わば基本的認識となっていますので、その点を簡単に御説明します。 第1に、知財高裁の設置問題と技術専門裁判官制度の導入をリンクさせるべきではない。今、久保利委員もおっしゃいましたように、将来的には理工系の学部卒業者の司法試験を経て裁判官に任官してくる、そういう裁判官を知的財産事件の処理能力のすぐれた裁判官に育成する。それによって、産業界が期待している知的財産事件の処理体制が整う。それまでの間は、個々の裁判官の具体的事件処理と研さんを通じて、技術的な基礎と知識の習得に努めるとともに、補助機構としては調査官制度、専門委員制度を活用するということです。 第2に、平成15年の民訴法の改正によって、特許権などの訴えは東京高裁に集中するという点で、実質的な特許裁判所として機能していますが、司法行政面から見た場合には、決して十分な体制が整ったとは言えない。知的高裁が設立されて知的財産事件の処理に関する人事権や予算執行権等の司法行政上の権限を独立して行使できるようにする必要がある。 3番目に、知財高裁を設立した場合の職分管轄の範囲とか移送の問題は、私は立法技術的に解決できることであると思います。この点ついては、いろいろな論点が出されておりますし、それについては十分検討する必要がありますけれども、知財高裁の職分管轄の範囲をきちんと定めることによって、私は十分解決できる問題だと思っています。 一番重要な問題は、やはり土地管轄で定められている我が国の裁判所組織に知的財産事件を職分管轄とする新たな高裁を設置することの是非で、今、知的財産権が問題になっていますけれども、技術専門性の高い分野というのは多々あることは前回にも説明したとおりです。また、そのような分野だけでなく、通常の民事紛争とは異なる色彩の強い労働事件について労働裁判所、行政事件について行政裁判所等の専門裁判所の設置が問題となる。これは我が国の司法制度に大きな影響を与える可能性が高いということであります。 2ページに入りまして、そのような基本的認識に基づいて、知財高裁の設置として次のような提案をしたいと思います。 まず法律、例えば、知財高裁設置に関する法律によって根拠付けられることを前提として、第1に、東京高等裁判所内に知財高裁を設置する。これが、これまで説明いただきました乙案とかB案と違う点は、実質的な特許裁判所として機能させるのではなくて、知財高裁を設置法というような法律を設けて、法的に知財高裁の設置を定めるという点でありまして、東京高裁内に設けるという点では甲案とは違いますけれども、実質的な知財高裁ではなくて、法的に承認された知財高裁という意味では、まさに甲案と実質同じ趣旨を達成できると考えています。 2番目に、知財高裁に有する裁判権は、(1)が審決取消訴訟等、(2)が民訴法6条3項の訴え、それから、(3)は民訴法6条2に定める訴え、これは東京高裁管轄内に所在する地方裁判所がした終局判決に対する控訴ということになります。つまり、平成15年法で改正された東京地裁の知的財産部が有する裁判権を全部そのまま知財高裁の裁判権とするということです。 3番目に、最高裁は知財高等裁判所の判事の1人に、代表判事いわゆるチーフ・ジャッジというものをイメージしているわけですけれども、それを命ずる。 そして4番目に、知財高裁は前記2の裁判権の行使のために必要な司法行政事務、これは知財高裁の司法行政を行うのに必要な裁判官の人事権も予算執行権も含んで知財高裁が行う。そして、その司法行政事務を行うのは、裁判所法の建前から当然ですから、知財高裁の裁判官会議によるものとして、知財高裁の代表判事がこれを総括する。同裁判官会議は、その権限を代表判事に委任することができる。参照条文としては、そこに書いたとおりです。 それをもう少しわかりやすく言いますと、資料6の先ほど事務局長から御説明いただきまきした10ページを見てくださいますか。この10ページにA案・B案というのがありますが、このB案の知財高裁というのは実質的なものか、法的なものかわかりませんけれども、私の提案するのはこれを法的に根拠付けられた知財高裁とする。ただ、東京高裁の中の知財高裁ですから、そこは「長官」という同じ名称を使わずに「代表判事」という名称を使ったということです。 それから、次に15ページを見てください。裁判管轄権の範囲は、この15ページに赤で表示した部分が、そのまま知財高裁の裁判権となるということです。なお、この記載で不正確なのは、右から2番目の東京高裁の地裁が「東京地裁等」となっていますが、これは正確に言えば「東京高等裁判所が管轄する各地方裁判所」ということです。その内容は、以上のようになります。 それでは、なぜこういう提案をするのかという理由を3ページ目で説明します。この提案を私がいたしますのは「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」の趣旨に従って、知的財産重視という国家政策を明確にするために、立法措置によって新たに知的財産高等裁判所を設置する。それを東京高裁内に設置することによって、民事事件の控訴審の管轄は、土地管轄によって定められている裁判所の組織に知財事件のみを職分管轄とする高等裁判所を設置することによって生ずる司法制度への影響を最小限にとどめることを趣旨とするものです。 なお、先ほど事務局長の説明の中に、こういう形での裁判所は法的につくれるものかどうかわかりませんがというコメントがありましたけれども、この提案はあくまでも私の個人的見解ですが、法的に設立できないようなものを提案することは、私としてもこの公式の席でできることではありませんので、自分自身としても十分研究したつもりですし、また、知人の研究者、弁護士、裁判官等の意見も聞いて、これならば可能だと考えて提案した次第です。 それから次に、本提案は単なる実質的な特許裁判所でなくて、法的に根拠付けられた知財高裁を設置するものですから、知財重視の国家意思表示を国の内外に示すと同時に、知財をめぐる紛争の早期解決、判断の統一を図ることができるのみならず、知的財産権の処理に関連する人事権や予算執行権等の司法行政上の権限を独立して行使することによって、技術専門性を確保し、知的財産についての豊かな経験と知識を持つ裁判官の育成に寄与することができると思います。 それから、また、本提案にある知財高裁の裁判権は、今回の民訴法の改正により東京高裁が有するとされた範囲と同一ですから、制度の連続性と法的安定性を確保することができる。それから、管轄の範囲と移送については現行法と同一ですから、それについて新たな問題を生ずることもない。 最後に、もう一つつけ加えたいのは、知財高裁の設置については、地方無視とかあるいは地方からのアクセス障害という批判が強いわけです。日弁連に所属する関西地方の多くの弁護士会等で強い反対意見が出ているのもそういうことだと思います。もともと知財高裁の設置というのは、産業社会の活性化という視点から提起された知財戦略の一環ですから、東京への一極集中によって地方産業の発展を阻害するという懸念を解消することは極めて重要なことであり、この提案はその要請にこたえるものだと思っております。 前回も申し上げましたように、私は東京高裁に15年勤めまして、陪席判事として準備手続も行い、判決を書くところから始めて、退官する数年前から東京高裁の知財部を代表して対外的なことを含めて担当してきたわけですけれども、そのときの経験も踏まえて、これならば産業界から先ほど言われているような要請には十分こたえ得ると私は確信しておりますので、是非とも皆さんの御検討をお願いしたいと思います。 長くなりましたが、以上です。 ○阿部会長 ありがとうございました。
○竹田委員 結構です。 ○阿部会長 久保利先生とそこは大きく違うところだと思いますが、御意見を賜りたいと思いますけれども、ちょっと違った観点でまた下坂先生、いつも御指名申し上げて大変恐縮なんですけれども。 ○下坂委員 今日はいろいろな意見を聞かせていただきましたのと、それから本部の資料の10ページの方の、今、竹田委員の方から御説明のあったものも初めて拝見した珍しい図だと思っております。まず、私の方は9ページと10ページについて述べさせていただきたいと思います。
○阿部会長 ありがとうございました。9ページについては、下坂先生が必ずしも乙案を御思想されていないところを見ますと、比較的この会で共通点が得られやすいかなと思いました。どうもすみません。
○野間口委員 下坂委員ほど高邁な意見ではございませんけれども、先ほど日本知財協の宗定専務理事が申しましたが、産業界の端的な意見というのはああいうところかなと思っております。したがいまして、私もこの10ページに関して言えば、甲案・乙案あるいはA案・B案については、A案の方が非常にはっきりしていいなと。
○阿部会長 ありがとうございました。
○荒井事務局長 あるべきというか、いろいろな方の御意見をお伺いすると、今後の例えば知財高裁ができたときの判事は、こういう形で養成されていったらいいんじゃないかということです。 ○阿部会長 これは、A案・B案に限らずということですね。 ○野間口委員 私は、今既にこういうことでキャリアを積んでいただいているんだというふうに理解したのでございます。いろいろな方の御意見を聞きまして。 ○荒井事務局長 御専門でいかがですか。 ○竹田委員 よろしいですか。実際にこういう類型にぴたりとすべて当てはまるわけではないですけれども、原則的にはこういうルートを通って東京高裁の知財部の判事になり、裁判長になる人が多いということは間違いなく言えると思います。現状でも言えると思います。 ○吉野委員 私自身、制度、組織の在り方みたいな議論は、比較的なじみが薄い部分なんですけれども、施設のアナロジーとして考えると、企業の中にある幾つかの事業をスピンオフさせて独立させるか、あるいは社内カンパニーみたいな形で、まずはセミ独立みたいな形にして、その先の発展によってまた独立ということを図るかということとかなり近いなと思っていまして、完全に独立させること、この場合、知的高裁を完全に9番目として創設することのネガの大きさが私にはわからない。ひょっとすると、アイソレートされて総合力みたいなものをあるいはフレキシビリティみたいなものを活用していくことが難しくなるのではないかという懸念を私は持っています。ただ、司法の世界は私は全然存じませんので、ネガみたいなものはどれだけなのかというのはわかりませんけれども、B案では自立性だとか独立性みたいなもの、こういう形で知財分野を統括するということはどうしても必要だろうと思うんです。バラバラに部があるという形よりも。したがって、私はどちらかというとB案の方が6対4ぐらいで。A案というのは非常にわかりやすいんだけれども、ちょっと行き過ぎではないのかなという気がしております。それは、将来またそっちのステップというのはあるかもしれませんが、柔軟性だとか総合力だとか、孤立性、アイソレーションみたいなものを避けて、ほとんど同じような効果を出せるのではないかという感じで、私はむしろB案の方がいいのではないかと感じております。 ○阿部会長 ありがとうございました。 ○久保利委員 1点、吉野さんに質問なんですが、今アイソレートということでしたけれども、多分企業におけるスピンオフと違うのは、例えば、判事を採用するのに知財高裁の長官が勝手な人を判事として採用することはできないわけです。最高裁の任用制度の中でやってくるわけですね。それから、予算という話になりますけれども、これもオール最高裁の配分の中で知財高裁にどう行くかというのであって、人と金の問題で企業におけるスピンオフとはアイソレーションの度合いが違うのではないかと。結局、東京高裁の中にまた孫会社みたいな形でいるか、子どもの列という中で高裁の中に長官としては位置付けられて、それが横串型の高裁だということになるか、ある意味で言うと、アイソレーションがスピンオフのようなものとは違うような気が……。 ○吉野委員 企業の場合でも、スピンオフしても連結ではやはり見るわけですよ。 ○久保利委員 だけれども、連結のときに親会社が人を採用して、スピンオフしたところへ人を渡すなどということはないですよね。 ○吉野委員 それは、近さ次第なんですよ。 ○久保利委員 それがうんと近いと逆に非独立性という話になりますし、うんと離れてしまうとまるっきり関係ないよという話になるわけですけれども、少なくとも今の知財高裁で9番目のと言っているのは、やはり1番から8番まであった上での9番目ですから、全く違うユニークなそういう人事・財政すべてというものとは違うという点で、余りアイソレーションのことは気にされなくても、竹田先生のおっしゃっている中でもやはり回転というか、人事的なローテーションというのはいろいろなことをやっていくわけだから、そこは違うかなという気が私はして、今アイソレーションとおっしゃったことがどういう意味を持つのかなとちょっとお聞きしたわけですけれども。 ○阿部会長 吉野委員がおっしゃったA案のマイナスの面というのは私自身もよくわからないので、それはむしろA案を御主張されている委員の方を含めて我々全体の問題ですけれども、深彫りをしていく必要があるかなと思います。 ○山田委員 私も、非常に専門的なお話が多いのでよくわからないところが多いんですけれども、私の経験からしかお話しできないですが、我々の会社は1998年から6年間にわたって、ちょっと関係ないような話ですけれども、大学と大学院卒を272名採用したんです。非常に優秀な社員を採用したんですが、彼らは優秀にもかかわらず知財の重要性ということをほとんどの人が理解していない、そういう理解が非常に足らなかった。私たちは、知財が大切だということに気付きまして、2000年から毎月定期的に弁理士の先生に来ていただいて社内発明を吸い上げていますが、彼ら若い人たちは発明することには大いに興味があるんですけれども、発明したものを特許にするということの重要性にまだ気がついていない。これはどうしてかというと、学校で知財が重要だと習ってきていないからなんですね。日本の司法制度はどこで習うかというと、中学校から習うんだと思うんですけれども、もし今回法的に第9番目の高等裁判所として知財高等裁判所が設立されたら歴史的なことなわけですね。そうすると、これは当然教科書の中に載って、知財高等裁判所として取り上げられると思います。そうすると、教科書の中で日本には8つの高等裁判所があり、知財は日本の国力にとってとても重要なことなので、知財に関しては特別に9番目の知財高等裁判所がありますという教育をすることによって、これからの日本を担う若者に知財の重要性を十分認識させることができると思います。
○阿部会長 ありがとうございました。
○高林委員 私は6時まで大丈夫でございます。 |
○阿部会長 そうですか。実は、私の司会の手順が必ずしもよくないんですが、資料7に今日御欠席の中川委員からメモをちょうだいしているんですが、これを簡単に事務局で御紹介いただいてから、まだお2人ご発言をいただく先生が残っていますので。 ○荒井事務局長 それでは資料7、中川委員のメモを御説明させていただきます。
○阿部会長 ありがとうございました。
○高林委員 わかりました。かなり議論が煮詰まっておりますので、どこから話すべきか迷いますけれども、まず最初に、野間口委員からもお話のありました事務局につくっていただいた資料12ページの件について述べたいと思います。野間口委員から、裁判官がこのようなキャリアを経ながら知的財産専門になっていくことを知って非常に安心したというお話がありましたけれども、私も竹田委員に比べれば短い経験ですが、知的財産訴訟担当の裁判官を経てきた人間といたしましては、知的財産訴訟というものも一般民事訴訟ができる人間でなければ良い裁判はできないし、そこにかつ技術的な素養というものも加えながらやっていく、そういうキャリアの中の1つの過程と位置付けられると思っていますので、このようなキャリアを経ていくということが非常に大事なことだと思っております。
また、仮に東京高裁内に知財高裁が位置づけられるとした場合に、その名前として知的財産高等裁判所というのが使えるかどうかということに関しましては、竹田委員にも検討していただいているようですし、中川委員も書面でご指摘されているところですが、私も可能であると思います。また、その場合には、私は東京高裁内知財高裁と言う必要も全然ないのではないかと思っておりまして、知的財産控訴裁判所とか知的財産高裁という名前でよろしいのだと思っておりますので、名称の点も含めて工夫することであらゆる複雑な問題点を回避しながら、望みどおりのよい効果が得られるのではないでしょうか。現代の国家的難問を解決するためには知財立国政策が重要であることを疑う者はおりませんし、私も当然そう思っておりますので、委員の間でもコンセンサスが得られるところという意味では、竹田委員の御提案は非常にいい提案であると今思った次第です。
○阿部会長 東京高裁の中にということは、余り強調しなくてもいいのではないかと。 ○高林委員 はい。名称と致しましてはそのとおりです。むしろ、特別の職分管轄を有する独立した知財高裁としました場合には、デメリットが多いのではないかと思います。 ○阿部会長 ありがとうございました。 ○伊藤委員 今日は、検討会の座長ということではなくて民事司法制度の研究者の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。既に第1回に申し上げたとおりですが、長年、民事司法制度の研究をやってまいりましたが、その結論はごく平凡なものでございます。つまり、民事司法制度の改革や運営について考える際に、裁判所や法律家の立場とか利益から考えるのではなくて、利用者たる当事者の利益を基礎とすべきであり、制度設営の負担をお願いする国民の視点から、それを検証すべきだということでございます。
○阿部会長 ありがとうございました。
○久保利委員 今、伊藤先生から非常に明解なんですけれども、なかなか奥深い御意見がありました。ただ、要するに知財高裁の問題というのは、実はつくってみないとわからないところがたくさんあります。かといって、つくってみなければわからないから、とりあえずつくるんだというのは乱暴な議論ですから、今の伊藤先生のおっしゃったことは十分考えなければいけませんけれども、逆に、移送の問題とかそういうことが本当にこの新しい知財高裁をつくる上での最大のイシューなんだろうかというと、そうではないのではないか。むしろ、国民のニーズというものを考えるときには、やはり対外的にアメリカに対しても中国に対しても大きなメッセージを出せる、そういうものが欲しいというのが国民のニーズなのではないか。そのときに、移送問題でぐちゃぐちゃする相手もいるよというなら、そこを何とかするのが研究者であったり、弁護士であったり、裁判所であったりするのであって、そこはある程度専門家として知恵を出すのは当然だと思いますが、移送のそういう問題があるから9番目の知財高裁はまずいとは必ずしもいかないのだろうし、先生もそうおっしゃっているわけではないだろうと。
○竹田委員 今の久保利委員の意見に私の反論を申し上げますと、1つは、看板効果とかアナウンス効果ということですが、これは実質的な特許裁判所で足りると言えば、その点には大きな開きが出てくるでしょうけれども、それは司法改革本部の1枚紙にも出ていることだと思うんですが、これは法的に承認された知財高裁なんですよということを国民に説明できるというのは、やはり非常に大きいと思うんですよね。世界的に見ても、例えば、CAFCが特許以外の事件をやっているとか、シンガポールの知財裁判所といっても、それは独立した裁判所ではないですよとか、いろいろ細かいことで反論はできますけれども、そういうことはさておいても、その点に違いはそれほどないでしょう。
○荒井事務局長 10ページの関係で、今A案とB案が議論されているんだと思いますが、先生方の御意見は結局、知財立国をつくろうという方向は一致している。それから2点目、そのために知財に関する司法制度を充実させようというところも一致しているんだと思います。したがいまして、A案とB案は同じ方向でどちらがよりよいかということで、グッド、ベター、ベストというか、その選択だと思いますが、私の感じでは、効果という意味ではこの効果は14ページに整理したものでございますが、こういうものについてはA案の方が大きいということだと思います。
○阿部会長 ありがとうございました。
○荒井事務局長 わかりました。 ○阿部会長 そういうことで、事務局から個別にもし御相談がありましたら、是非また御協力いただければと思います。
○荒井事務局長 結構です。 ○阿部会長 そういうことでございますが、いかがでしょうか。私は思いはかなり近づいていると思いますが、まだかなり大きい違いも当然ありますので、立派な知財高等裁判所をつくろうという点では皆さん共通しているように思いますけれども、まだ各論においては違いがありますので、それでは、そんなことで進めさせていただきたいと思いますが、何か特に御意見がございましたら。よろしゅうございますか。
○荒井事務局長 特にございません。いろいろ御相談させていただきますので、お願いいたします。 ○阿部会長 それでは、どうもありがとうございました。 |