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第12回権利保護基盤の強化に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成17年3月15日(火)15:58〜18:06
2.場 所:知的財産戦略推進事務局内会議室
3.出席者:
【委員】阿部会長、伊藤委員、久保利委員、下坂委員、高林委員、竹田委員、中川委員、山田委員、吉野委員
【参考人】岩宮参考人、岡田参考人、中村参考人、生野参考人、山田参考人、橋本参考人、渡部参考人
【事務局】荒井事務局長、小島事務局次長
4.議事
(1)開会
(2)参考人からの意見聴取
 
(1)(株)飾一 岩宮陽子 代表取締役社長
(2)(株)ワコー 岡田和廣 代表取締役社長
(3)三鷹光器(株) 中村勝重 代表取締役社長
(4)日本IT特許組合 生野糧作 事務局長
(3)事務局説明
(4)討議
(5)閉会


○阿部会長 時間前ですが、中川先生から少し遅刻をされるというメッセージをいただいておりますので、ただいまから、第12回目の「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」を開催させていただきます。御多忙中のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、前回に引き続きまして、中小・ベンチャー企業の知財に関する諸問題について、参考人の皆様から問題点と解決策などについて御提起をいただきまして、委員の皆様方と一緒に御議論をさせていただきたいと思っております。
 お手元の議事次第にもありますように、本日はまず4人の参考人の方々、次いで事務局から中小・ベンチャー企業の知財に関する問題点や解決策の案につきまして、簡単に御説明をしていただいて、その後にまとめて意見交換、御質問等の時間にさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 本日は、先ほど申し上げましたように、中川委員は30分ほど遅れるという御連絡をいただいていますが、野間口委員はやむを得ず御欠席ということでございます。
 それから、前回にも申し上げましたが、前回御出席をいただきまして、御議論に参加していただいた3人の参考人の方々、ここにおられますが、財団法人大田区産業振興協会の山田専務理事さん、東京都知財総合センターの橋本所長さん、東京大学先端研の渡部先生には本日も御出席をいただいております。後ほどの議論に御参加をいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
 本日、新たに参考人としておいでいただいた方、向こうに座っておられますが、簡単に御紹介をしますと、株式会社飾一の岩宮陽子代表取締役社長さんであります。よろしくお願いします。
 株式会社ワコーの岡田和廣代表取締役社長さんであります。よろしくお願いします。
 3人目の方は、三鷹光器株式会社の中村勝重代表取締役社長さんであります。よろしくお願いします。
 4番目の方は、日本IT特許組合の生野糧作事務局長さんでいらっしゃいます。よろしくお願いします。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 まず、4人の参考人の方々から、最初に中小企業の知財に関する現状や問題点についてお話をいただきますが、大変恐縮なんですが、後の意見交換を重視させていただきたいという思いから、お一人5分でお願いしたいということですので、御説明のほどをよろしくお願い申し上げます。多分、5分では言い尽くせないことがあろうかと思いますが、後ほど意見交換の中で御発言いただければありがたいと思います。
 最初に、飾一の社長さんである岩宮さんからお願いいたします。よろしくお願いします。

○岩宮参考人 5分ということでございまして、私はこのような席が初めてでございますのでちょっと支離滅裂になるかもしれませんが、お聞き苦しいところはお許しくださいませ。
 私は、33年前にたまたま正月飾りを考案しまして、夫の特許を取れという言葉で特許庁へ申請に参りました。弁理士を使わずに不慣れなもので3度ほど通いました。
特許庁の窓口の方から、正月飾りなどで申請をする人はほとんどいないから、早く売れという言葉を頂戴しました。それがちょうど、私にとっては後ろから風を送られたように、実は販売しようという意欲になって、創業するというきっかけを頂戴しました。
 その後に1997年、私は新素材を発見するというチャンスをいただきました。正月飾りの考案から始まって、日本独自の文化素材の水引というものへのこだわりを持ち、いろいろな体験をさせていただきました。
 今回も、女性社長が経験したこと、そして、国をよくするために感じたことを書いてほしいと言われまして、このようなことを書かせていただきました。「知財に対する認識」「産学連携の問題」「大企業との関係」「特許取得、維持コストの問題」「知財と資金調達」と。

○阿部会長 資料1でございます。

○岩宮参考人 とにかく、私が文部科学大臣賞をいただきましたときにも、実はノーベル賞受賞の白川先生、それから、江崎先生にも、日本で新素材が立ち上がった例がないから、すぐアメリカへ行けとおっしゃっていただきました。女性であったことと、全く違った領域から私が科学の発見をしたということで、実は大変苦しい思いもしましたが、自分自身の土壌が科学者ではないというハンデの中で何とかやり続けてみようと思って、今日までやってまいりました。
 産学連携も、北海道大学から京都大学に至るまでおおよそ10校程と、今、取り組みをさせていただいておりますが、そこにもたくさんの問題点を見ました。
大企業との共同開発で体験した中でいろいろと、これはおかしいのではないかというふうなところをとりあえずここに列挙させていただきました。
 もう一つベンチャーの支援策というものでスタートの時期への支援はございますけれども、その後のフォローアップというか、ステップバイステップの支援が適切なものがないと感じます。
 そして、金融機関でもプロジェクトに対する資金支援がないという事。いろいろな企業とコラボレートして、様々な開発を推進する中では、シーズと企業と企業の技術の融合という中で推進をしていこうと考えておりましてもなかなかそこに支援が得られないというところで中小企業としては大変苦しい思いを散々してまいりました。
 また、私どもの基礎技術を、今はここには書いておりませんが、いろいろな県が地域活性のために、利用し、紙、木、金属、皮というふうに、汎用性があることがわかってまいりまして、地方の国おこしのための地域振興会を開いてくださっております。その地域の方々が、新規性というものを、特許を取るということはある程度は開示することとなり、それがやがて刊行されると。それが漏れることを恐れるような、かつての日本の中で匠の世界で生きた良さというか、そんなふうなことを頑なに守っているようなきらいがございまして、特許性があるという言葉に対しても余りきらめきを持たないような、地域の方々に触れることもございます。
 もっともっとグローバル化の時代ですから、新しいことに果敢にチャレンジし、そこからまた国の力となるような特許出願に依って、時間差の中、他社の出願で失っていくことがないように、権利というものをしっかりと認識を持って取得せねばならないではないかということを思いました。
 最後ですが、一般的に知的財産を持つ中小企業への金融支援というものがとても薄いという気がしております。銀行は、いわゆる特許、権利、中小企業が知財に関するこだわりを持って研究開発を推進するということに対しての意欲、それらを評価するところはありません。判定はどこまで行っても短期的な決算書であります。大企業への資金注入や、債務放棄を拝見し中小企業はやり切れない思いがございます。
 又、法人化される大学は、やはり資金を入れなければ連携が組めないようなTLOの制度も取り組み開始時期が左右され、中小企業に対する資金とか権利とか、支援とかということに、もう少し良い判断をしていただける制度があったら、もっと中小企業は励みになり、連携する事を意欲的に頑張り切れるのかなという気がいたしております。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは、また後で御議論いただくことにいたしまして、続きまして、株式会社ワコーの岡田社長さんからお願いします。

○岡田参考人 株式会社ワコーの岡田です。よろしくお願いいたします。
 「中小・ベンチャー企業に於ける特許の問題」ということで、OHP形式、プロジェクターのスライド形式に資料を用意してまいりました。
 私どもの会社は、1988年、16年前に会社を興しました。私自身、今ですとMEMS、昔ですとマイクロマシーニングという技術をバックグラウンドに持っておりまして、その技術をもって16年前に会社を興しました。
 MEMSとかマイクロマシーニングというような技術を使うということになりますと、やはりどうしてもセンサーが基本になります。センサーの市場というのは今後大きくなるだろうということで、加速度センサーとか力センサー、あるいはジャイロセンサーを開発してまいりました。
 幸いにして、私ども、今まで日本、ヨーロッパ、アメリカで130 件ほど特許を取得しておりまして、いわゆる登録率が大体99%、今まで拒絶査定を受けたことが殆どないという、かなり特徴的な会社と思っております。それだけ独創的な技術を開発して特許を出願したということが基本になると思っております。現状は、やはり特許侵害ということに非常に苦慮しております。
 特許侵害の問題がどうにかならないかということで今日は発言させていただきたいと思います。
 2枚目を見ていただければと思います。私ども、特許に対する課題ということで、16年間、内外の特許を拒絶通知という形で特許庁と情報交換させていただきました。今、感じる点を少し申し上げますと、まず特許審査に関しましては、審査官による審査結果の差がかなり大きくあると思います。多分、特許庁として、当然、研修とかされて、一律な基準をもって審査されているということだろうと思いますが、実際はそうではないと思います。やはり審査に審査官の個性があり、その個性が審査結果に反映されているものと理解しています。
 更に、国内だけではなくて、国内外による差があるように感じています。日本とヨーロッパは割合と似ている点が多いと思いますが、アメリカの特許審査はアバウトだということを感じております。弊社でPCT出願しないのは、日本の予備審査が厳しく、その結果が米国の審査に反映されるためです。改善すべき点ではないでしょうか。
 アメリカの特許を通ったから、これは価値のある特許だというのはかなり誤解があります。先ほど私どもの登録率は99%と申しましたが、1%落としたのは日本の特許です。アメリカ、ヨーロッパは今のところすべて通っております。アメリカの場合ですと、先行技術調査報告ということがありますが、先行技術調査を報告して、クレームを先行技術のまま書いても通ってしまったという特許が幾つかあります。私ども、時間稼ぎのために通してほしくないというものもあるわけです。
 日本とヨーロッパはかなり似ており、ある程度納得のいく審査がなされていると思いますが、アメリカの特許は審査の質に問題があるように感じております。
 私ども基本特許となるものが何件かあるわけですが、アメリカの場合ですと許可されやすいということがあります。多少言い難いところもありますが、米国特許は思いどおりになるところが多いと思います。しかし、日本の場合はなかなか難しいところがあります。そうしますと、戦略的特許を国内で育てていく上では審査官との協調関係が必要と思います。
 この前、特許庁の上級審査官研修会で話をさせていただきましたが、出願人は審査官と敵対関係ではないだろうと思っております。審査官との協調関係は不可欠です。それをうまく利用しながら、戦略的特許を取得するべきだと思いますし、また、特許庁は我々に付与するべきだと考えております。
 次に「特許に対する課題」です。これが一番悩んでいるところで、非常に苦労しております。
 まず、特許侵害に関しましては侵害した方が得かということです。現在、私どもの特許はかなりの会社から侵害を受けています。賠償額は損害額だということがありますので、これはやはり侵害した方が得だと思う企業が多いのではないでしょうか。
 私どもは、今のところ、大企業の侵害に対しては泣き寝入りせざるを得ない状況でもあります。次のページにありますが、幾つか訴訟を構えて警告状等を出しておりますが、あまり対応して頂いていません。非常に難しい状況にあります。私どもが警告状を出しても、ほとんどレスポンスがないのは、訴訟を起こして初めて相手企業が本気になるというような風土があるのではないでしょうか。
 3番目としまして、罰則規定、懲罰的規定というのはやはりだめなのかと言うことです。アメリカですと、3倍賠償があるわけですが、日本の場合ですと、その話をしますと、多分、今日も法律学者の先生が出席されていると思いますが、毎回先生におしかりを受けて、日本ではなじまないと言われております。
 そうしますとソフトの特許化と同じように外圧を利用せざるを得ないのかなと思います。
 ところが、次のページにあります様に、アメリカの企業で特許を侵害している会社が多くありますので、多分、外圧も利用できないだろうと思います。そうしますと、特許侵害の問題は本当に難しい問題で、泣き寝入りが妥当となるのではないでしょうか。
 そうなりますと、4番目として、この特許侵害に関しましては、中小企業に対して優遇措置を設けるという方法もあるかと思います。中小企業にアドバンテージを付けるような優遇措置を設けていただけないかと考えております。
 3番目に言い残しましたけれども、特許制度というのはもろ刃の剣というところもあります。今日、メーカーの方もお見えになっていますが、メーカーですと、必ず特許を侵害する場合と侵害される場合があります。この件でメーかの方と議論をしますと、いつも壁に当たってしまいます。今日はホンダの吉野社長が御出席になっておりますので、申し上げ難い点もあります。
 次に、先ほど外圧が利用できないだろうと申し上げましたが、次のページにありますように、私どもの加速度センサーがA社という外資系の企業に侵害を受けています。これに対して警告状を出していますが無視されっぱなしです。やはり、これは訴訟を起こさないと対応していただけないんだろうと考えております。
 それから、B社という、これは国内企業です。外資系だからだめというわけではなくて、やはり国内の企業さんも同じような状況になっております。
 次ぎに、力センサーです。力センサーはノート型パソコンとか、あるいは携帯電話とかに最近使われるようになってきました。外資系の会社に、警告状を出しましたところ、真摯に受け止めていただいて、対応していただいております。
 ここには3社しか書いてありませんが、まだ沢山あります。国内1社に関しては残念ながら無視され、海外の企業は1社が対応していただいて、1社は無視されているという状況です。特許の無視は決して外資系だから駄目ということではなさそうです。
 3番目に、自動車の衝突検出用の加速度センサーと、その自己診断システムという特許があります。衝突時にエアバッグが開くか開かないかという判断に加速度センサーが使われています。加速度センサーが壊れていて、衝突時にエアバックが開かないと重大な問題になります。そのために、加速度が正常か否かを診断する必要があります。その自己診断の特許を、日本とアメリカでかなり広い範囲で権利を持っております。加速度センサーの場合ですと、おもりが加速度によって変位するわけですが、その変位をクーロン力で変位させて、加速度センサーが生きているか死んでいるかを判断するという特許です。世界中の車に使われている技術です。これをこれから回収したいと考えております。今日は、吉野社長と名刺交換させていただければ、今後の進展に繋がると思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 次ぎに、出願人或いは発明者側の立場で勝手なことを申し上げましたが、出願人或いは発明者側としてもやはり注意するべき点はあると思います。我々は、出願するときには高品質な特許出願を心がけるべきです。やはり、防衛特許的なものは情報公開で対応すべきです。
 特許の出願件数は、会社によってはノルマというのがありますが、このやり方はやめた方がいいのではないでしょうか?
 あと、私どもが審査官の手を煩わすというのは審査請求後のことになりますので、審査請求は非常に慎重にやるべきだろうと思います。これはやはり出願人としては注意すべき点ではないでしょうか。これらを注意することによって、健全な特許制度が維持されるものと思います。
 最後になりましたが、私ども、特許制度というのは非常に感謝しております。私どもの会社が存在していられるのは、特許制度のお陰だと思っております。
 私どもの収入のほとんどは特許のロイヤルティー収入です。従業員は、私を含めまして11人いますが、会社はすべて特許のロイヤルティー収入で維持されています。この特許制度があって、私どもの会社は存在出来ていると考えております。
 あとは、特許によって独自商品の展開が可能ですし,また、大企業と対等な立場も可能です。平等はあるけれども、対等がないとかいろいろ言われますが、大企業とも対等になれるのは特許のおかげです。これを維持するためには、やはり特許法の遵守というのが必要だろうと思います。
 ですから、特許侵害に対して新たな法的措置、或いは法整備が必要ではないかと思います。もし法整備が無理ならば、やはり中小企業に対しての優遇措置を是非検討していただきたいと思っております。時間がだいぶ超過してしまして、申し訳ありませんでした。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして三鷹光器の中村社長さん、お願いします。恐れ入ります、5分でよろしくお願いします。

○中村参考人 三鷹光器の中村です。資料を見ていただきたいんですが、ちょっとタイトルが面白く書いております。当社は、もともとロケットとか衛星とか、いろいろ宇宙の仕事をやっておりました。その仕事を38年やりまして、その経験からいろいろと案を出しまして、もともと国立天文台のすぐ横にある会社なものですから、我々はそういうところで育ったわけです。
 ただ、その中で非常に、いまだに納得できない事件がありましたので、ここで報告しておきます。
 パンフレットがあるんですけれども、望遠鏡と言いましても、重さが十何トンもあるような、ダンプカーを超えるような、口径数メーターに及ぶような、公共施設用の望遠鏡であります。今回、言いたいのは、その望遠鏡の特許が幾つかありますが、その接眼部に身障者の方とかが見えるような、非常にユニークな特許を取ったわけです。
 それで入札に臨んだんですが、入札というところに対しまして、2回ほどやりまして負けました。これが大変不服なんですが、それは税金でやるわけですから、安いお金で落とすことは結構なんですが、私の不満というのはどういうことかと言いますと、その特許があるがために、建物からすべてのデザインが変わるという内容であります。残念なことに、その特許を入札で落とした安い会社に、公共施設、要するに国が、そこにつくらせたというのが大変納得いかないので訴訟を起こしたわけです。その訴訟を起こしまして、当然特許を基に勝ちました。勝ちましたが、細かいところは資料を読んでください。最終的には、もともとまねすることを予測してそこに落として、訴訟を起こして勝ったんですが、私にお金は一銭も入らない、相手方は何億円の望遠鏡を受注したということです。
 ところが、その接眼部の特殊なところを含めた入札であるにもかかわらず、それが却下されたら入札が成立しないはずなのが、それがまかり通っていると。それも、2か所の公共施設でやられたということなので、ここにいろいろ法律家の方々もいるので、後でまたこのようなところを、どうすればよかったのか、そのようなことがある限り日本は沈没じゃないかと。
 当社ももともと200 〜300 の特許を持っております。それ以来、更新時期のときに望遠鏡関係はみんなキャンセルしております。幾ら日本で頑張ってもだめだということであります。私の出した三百幾つの特許はほとんどパーフェクトです。それだけ自身を持ってやっているわけです。
 そのようなことの中で、今度特許というものを有効に使うために、私は次に医療の方に入りました。どうしてかというと、望遠鏡は要は道楽者だと、こんなもので不景気の中どうにもなるわけではないということで、医療、命を助ける器械だったらもっとこの特許に対して非常に評価してもらえるんではないかと私は考えたわけです。
 これに関しまして、日本も当然やっておりましたけれども、海外にも出しました。当然すべて通っているわけなんですが、これに関しましては、非常に今、私は恩恵を被っております。大量生産のものは、小さな中小はやるべきではないと、私はそういった精神でやっております。そういう中で、それが2番目にあるんですけれども、むしろ3番目の方に移りたいと思います。
 結論としましては、ドイツの方の精密光学器械、光物ですとUボートとか潜水艦とか軍艦の光学系をやるようなすごい会社、スパイ衛星も飛ばすような会社があるんですけれども、実は2月1日に2回目の訴訟をやりまして、これも勝ちました。ここのところなんですが、外国、ドイツでやったわけです。ですから、私は実際そこに行きました。代理人が、是非社長に来てほしいということで、行ってよくわかりました。やはり国によって内容が違います。この特許を取るのに10年にかかりました。それで1年、2年、裁判に2年費して、権利は今、8年ですけれども、私は8年あればそこの会社の息の根を止めることはできます。そして、その裁判の決定が、その日のうちにすぐ下るということであります。
 向こうの代理人に、なぜ私に来てほしいと言ったんだというと、その日に、その時間に瞬間的に決断が出てくると。日本のメーカーさんで社長が来てくれたのは、あなただけですということを聞きました。
 ちょうどこのような部屋のところで、右手にドイツ語、英語、通訳する人がガラス張りの半透明の裏側でやっております。それで、裁判長と向かい合っていろいろ話し合いをやるわけですが、そこでいろんな議論をしました。それほど、三鷹の特許がドイツにとって非常に怖いということで、それを無効にしてしまおうということをやったわけです。お陰様で、アメリカと日本では、アメリカは2年で取れて、日本は3年後に取れまして、10年後ですから8年の間に、もうアメリカでは市場の70%を占めました。それは何かというと、頭の脳腫瘍とかを直す脳神経科用の手術器械であります。それらを、このちっぽけな日本の一メーカーが、世界のそういった頂点を制したということを言いたいわけです。
 最後ですけれども、中小が大手と手を組むと損をしますよということを言いたいわけです。なぜならば、私はロケットや衛星でいろんな大手さんと手を組みました。共同出願します。ですけれども、我々がどけどけと言って、その会社の奥のクリーンルームの中に行くようなことはできません。そういうことを考えたとしたら、特許を取るときに共同特許をしないで、自分のアイデアがあったとしたら、それを契約に結んで、その大手さんにつくらせると。中小企業が大手につくらせるという方向に行った方がいいと思います。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは、日本IT特許組合の生野さんから、お願いします。

○生野参考人 今お三方からお話がありましたのは、我々から見ますと非常に特許先進企業の例でございまして、これからお話するソフト業界、非常に特許に関して遅れております。
 ソフトウェアそのものは、あらゆる産業に組み込まれて、エンドユーザーから、それからほかの産業からすべてがソフトウェアが非常に重要な技術になってきている。ところが、ソフトウェア産業自体を見ますと、非常に知的財産面で遅れているという現実がございます。
 我々が調べましたソフトウェア関連企業、今、上場企業が219 社ございますが、ここの特許出願数が10年間で3件以下が219 社中122 社、なおかつ1件も出してないという企業が68社ございます。ということは、非常に特許後進企業の集まりであると。
 これだけソフトウェアが重要な時代に、こんなに特許に関して出願数が非常に少ない。勿論、登録数はもっと少ないわけでございますが、こういう現実をどうするんだということろから、我々の組合の動きが始まっております。
 勿論、幾つか理由がございまして、ソフトウェアそのものが特許として明確化されたのは、まだ日が浅くて、最終的には2002年の法改正でソフトウェア、プログラムが単体で特許になるという法改正がなされて、それから特許として認められたと我々は思っておりますが、従来ハードウェアを保護するのが特許権でありまして、プログラムというのは余り技術として認められてなかったんではないかというようなことを思っておりますが、ここへ来まして、プログラムも特許として認められ、ビジネスモデル特許等も認められるようになりまして、ソフトウェア業界の特許出願は非常に増えてはおります。ここのところ、20%ぐらいの増加率でございます。
 ただ、先ほど申しましたソフトウェア専業者全体の特許の出願数というのは、ソフトウェア関連特許全体のわずか4%、非常に少ない、やはりハードウェアメーカーが中心になっております。
 こういう中で、2000年ごろから、大企業からの特許侵害警告が非常に増えてまいりまして、それまで特許になじみがなくて、特許に関する要因も経験もない企業は、どうしていいかわからないわけです。
 だまってロイヤルティーを払ったとか、あるいは裁判にまでなったとか、いろんな例がございますが、今後これがますます大企業は大メーカー中心に、古い特許をお金に変えようという動きがもう顕著でございまして、現在使ってない昔のハードウェアの特許でソフトウェアの製品を攻めるというのは、これからもっともっと増えると思います。
 同時に、アメリカ中心でございますけれども、外資系の企業も日本での出願が非常に増えている。御承知のように、マイクロソフトはこの業界の優でございますが、2000年ぐらいから100 件単位で特許出願数が増えているという事実がございまして、今後は大メーカー並びに外資系企業からソフトウェア専用のベンダー、こちらに対する侵害警告がもっともっと増えるんではないかと。
 こういう状況から、我々中小のベンダーが一人ひとりで対抗するのはとても難しいという意識の下に、今まで侵害警告を受けた経験がある会社。それから、これから知的財産というのが事業戦略上重要であるという認識を持った会社の6社ほどが発起人になりまして、組合をつくって共同防衛しましょうと。防衛という意味は、勿論その侵害警告を受けたときに、どうやって対応するか。あるいは、侵害警告を受けないように、どういう対策を立てたらいいかということと同時に、自分たちで自らもっともっと自分の商品なりサービスを守るための特許ですね。これは、ほかのソフト業界とかなり違うところがあると思いますが、特許の商品、サービスに対する貢献度というのは、非常にほかの業界、今まであったようなお話に比べると貢献度は低いわけです。
 どちらかと言いますと、インプリメンテーション、セールス、マーケティング、あるいはメンテナンス、その辺の方が貢献度は高いわけです。したがって、ソフトの貢献度は低い。ただし、それを持っていないといつ侵害警告を受けるかわからないし、だまっていますと大企業が模倣して、先に特許を出してしまうというようなケースもあるので、やはり自分たちで特許をどんどん出していこうと。
 それで、今は3年になりますが、1年目で40件ぐらいの特許だったわけでございますが、組合の中で2年目で100 という具合にだんだん増えております。ただし、ここのところで我々のクライアント、組合員、こちらが主にターゲットとしております、ビジネスモデル系の特許の審査が非常に厳しくなって、出しても無駄だというような話もありまして、少し気持ちがなえていると言いますか、そういう意欲が減退しているというのも事実でございます。
 課題でございますけれども、2ページ目にまとめてございますが、今、ソフトウェア業界を見ますと、構造上の問題がまず1つ大きい点がございます。というのは、ここ数年、大手の寡占化というのが非常に進んでおりまして、いわゆる大手が寡占状態で、技術のある中小ベンダーはその下に入っていると。したがって、エンドユーザーのじかの声が聞けないとか、あるいは大企業との契約問題で中小ベンダーの発明が有意な点に立てないとか、本来ソフトウェアというのは自由な発想で、新しいものがどんどん次から次へと出てくるべきものなんですが、こういう寡占状態でなかなか出にくい状態にあると。
 そういう中で、やはりもともと技術開発志向のソフトウェアベンダーが、今度は横連携で新しいサービスをお客さんに展開していこうというような、横の動きも出ている状況でございます。
 ここで一番必要になるのは、その横連携をする独特な技術を持った会社の知財サポートをどうしていくかという点かと思います。
 その中で、1番から3番までございますが、効率的特許出願に関して、知財サポートする民間への支援を考えていただきたいという点とか。それから、ソフトウェアに強い弁理士、これはやはり技術がこれだけ専門化した中で、何でもできると弁理士の皆さんはおっしゃるわけです。決してそうではないと思いますので、この人はソフトウェア弁理士とか、あるいはナノ技術の弁理士とか、そういうタイトルを付けるぐらいの選考をしていただけると、非常に助かると思います。
 そのほか、幾つか資金面での補助の点がございます。
 それから、2つ目が侵害警告に対する調査の関連の要望。
 3つ目は、我々組合のような機能というのは、まさに組合員の知的財産を一括管理するという役割で発足しておりますので、新しい管理型知財信託業です。こちらも大メーカー、あるいはTLOにとどまらず、こういった組合団体、ほかの業界でも幾つもあると思いますが、こういうところへの適応も是非御検討いただきたいということでございます。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。時間を限らせていただきまして、申し訳ありませんでした。大変生々しいお話をいろいろ伺うことができまして、ありがとうございました。 それでは、意見交換の前に前回の会議の最後でも申し上げましたけれども、事務局において各種の問題点に対する対応策について原案を作成してもらいました。また、併せて議論の参考に供するため、関係省庁にも意見を聞いてもらいまして、それについて論点を整理してもらいました。
 これについて、事務局で資料をまとめてくれましたので、説明をしてください。
 小島事務局次長、よろしくお願いいたします。

○小島事務局次長 それでは、まずお手元の資料5「中小・ベンチャー企業の知的財産を巡る諸問題とその対応策(案)」について御説明いたします。
 本資料は、前回お配りしました事務局の資料に、前回の御議論を追加した上で、会長から御指示のありましたとおり、問題に対する対応策について、左側の欄に事務局の原案を、右側の欄に参考としてそれに対する関係省庁の意見及び論点を記載したものでございます。時間の関係がございますので、左の欄を中心に御説明いたします。適宜、右の欄の各省意見及び論点を目で追っていただければと思います。
 まず、1ページ目でございますが、「1.創造分野」「(1)産学連携における問題・障害の解決」ということで、Aには窓口の整備の問題、真ん中ですがB契約の柔軟化の問題、そしてそこでは具体的施策として、運用の事例集を作成・公表するというようなことが書いてあります。
 それから、2ページにまいりまして、Cで契約事務体制の強化の問題。
 その下、Dで契約料等の弾力化の問題、それの具体的方策として、事例や目安などの作成・公表するということが書かれております。
 なお、右の欄にございますが、契約料の弾力化の問題については、文科省から全文削除という意見が出ております。
 3ページでございますが、D秘密管理の徹底の問題でございます。
 先を急いで恐縮ですが、4ページの(2)、産学連携の円滑化ということで、A大学のシーズと企業のニーズの橋渡し機能の強化ということで、具体的政策として商社、コンサルタントの活用を図るということが書かれております。
 その下、B特許情報へのアクセス機能の強化ということが書かれております。
 5ページ「2.保護分野」でございます。(1)特許庁の審査姿勢ということで、A権利化の促進、B審査の早期化、C出願内容の平易化ということが書かれております。
 6ページにまいりまして、真ん中辺りですが、(2)利用者側に立った制度等の改善ですが、Aに利用者側に立った制度等の改善ということで、一部継続出願制度の導入から、カラー図面の添付の許容を図るなどの制度の改善を図るということが書いてございますが、右側の欄には経産省意見として修正意見が書かれております。
 7ページ、BIPDLの機能強化。
 (3)に入りまして、中小・ベンチャー企業に対する支援ということで、(イ)中小・ベンチャー企業の負担の軽減ということで、A出願にかかる費用負担の軽減、手続の簡素化という問題でございますが、これについては右側の欄にございますが、経済産業省より前段の部分を削除すべきという意見が出されております。
 8ページ、B海外出願に対する助成、C、先ほども出ておりましたけれども、先行技術調査に対する助成の問題ということであります。
 9ページにまいりまして、(ロ)中小・ベンチャー企業に対する相談窓口の整備ということで、D弁理士情報の提供のための窓口の整備。
 10ページにまいりまして、D中小企業の経営戦略に根ざした知財戦略の支援。
 F海外出願に対する支援ということが書かれております。
 11ページの(4)国内における知的財産権侵害対策の強化ということで、A知財尊重の徹底ということで、経団連等が知財憲章を策定し、会員企業に徹底することが書かれております。
 その下、B知財駆け込み寺の整備ということで、大企業から知的財産権侵害を受けた場合の対応等についての窓口を整備し、相談を行うということが書かれております。なお、これにつきましては、右側の欄にございますように、経済産業省、公正取引委員会から一部削除の意見が出ております。
 13ページに入りますが、B中小企業知財保護立法の制定ということで、ここに具体的方策として(イ)大企業との取引関係において従属的な地位にある中小企業の知的財産の保護を図るため、中小企業の知的財産を保護するための法制度を整備する、
 (ロ)侵害し得であることや、訴訟において中小企業が損害に見合う十分な賠償を受けられないことを踏まえ、新たな賠償額の算定制度等の導入等により損害賠償額を引き上げる、
 (ハ)訴訟における中小企業の負担を軽減するための立証責任の転換等の制度を設けるということでございますが、これについては右側の欄にございますが、法務省からは、(ロ)(ハ)の削除、経済産業省からは全文削除という意見が出されております。
 引き続きまして、14ページ、公正取引委員会ガイドラインの作成・公表ということでございまして、これについては右側の欄にございますが、公正取引委員会から新たなガイドラインの作成は不要という意見が出されています。
 E情報開示制度における営業秘密の保護の確保ということで、この意見に関しましては、右の欄にございますが、厚生労働省からは全文削除。次のページには、経済産業省から一部修正意見というものが出されております。
 先を急いで恐縮ですが、16ページ、(5)海外における知的財産権侵害対策の強化ということで、これにつきましては、A水際対策の強化。
 17ページに入りまして、B個人輸入・個人所持の禁止制度の整備ということで、これについては右側にございますが、文科省からは全文削除。財務省、経済産業省からは一部修正意見が出ております。
 18ページに入りまして、C海外企業による侵害対策の強化。
 D関係機関の取組みの強化。
 E在外公館の取組みの強化ということが挙げられてございます。
 最後に20ページでございます。「3.活用分野」でございまして、先ほども御意見が出ておりましたけれども、(1)地域における知的財産権の取扱いということ。
 (2)@公共調達における知財の尊重の徹底。
 B官公需制度の改善ということでございます。これについては、右側の欄に経済産業省から下線部削除という意見が出ております。
 21ページに入りまして、C優先調達のための制度整備ということで、これにつきましても、右側の欄にございますが、経済産業省からは全文削除という意見が出ております。
 (3)、先ほどの御意見にもございましたが、知財信託の活用、知財による資金調達の拡大ということで、知財信託の担い手は事業組合や財団法人に拡大するとともに、知的財産に基づく資金調達を円滑に行えるよう、制度整備や運用の改善を行う。あるいは、訴訟費用の負担等を行うための知財保険の活性化や共済制度の創設などの具体的方策を講ずるということで、これにつきましては、右の欄にございますように、財務省、経済産業省、金融庁から、それぞれ修正意見が出ております。
 資料5については、以上でございます。
 なお、お手元にもう一つ資料6がございますが、これは説明は省略いたしますけれども、大学発バイオベンチャー協会から要望書が出ておりますので配布しております。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。膨大な資料でございます。前回の続きでもあるわけですが、それでは議論の時間に入らせていただきます。参考人の方々からもいろいろと御指摘がございました。それらを含めまして御議論賜るわけでありますが、対象が多岐にわたりますので、前回と同様3つに分けて御議論をいただこうかと考えております。7人の参考人の方々も御議論に参加していただくようにお願いいたします。
 それから、先ほども申し上げましたように、関係省庁からも御意見をいただいております。それらについても御意見がございましたら、活発に御発言をいただきたいと思います。 それでは、まず資料5の1ページから4ページの「創造分野」について、最初に御議論を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。どなたからでも結構でございます。 前回御欠席された先生方、中川先生、竹田先生、伊藤先生、高林先生、いかがでしょうか。
 どうぞ。

○竹田委員 産学連携に基づく技術開発は、政府の資金援助もあって、活発に行われる状況になっていると思いますが、一番問題なのが、大学側の、いわゆる知財本部の設立も含めて、そこが円滑に運用されるかどうかということの問題です。また、さらに今度は権利が共有で取得された後に、その権利の実施のところで大学が特許発明を実施するということはありませんが現在の全部特許法の共有の規定がかかってきますから、企業側としては自分の特許権を大学側の同意なしに譲渡することは勿論のこと、通常実施権の設定もできないというようなことがありまして、企業にとつて足かせになっているわけです。
 数年前から、特許法の共有関係の規定は見直すべきではないかという意見はあるのですけれども、なかなか大学との関係だけで見直すというわけにはいかないという問題があって、1つの足かせになっていると思います。
 これから、産学の連携による知財が増えてくるに従って、そこの点をどうやって円滑に実行するかということは、法律改正の問題も去ることながら、運用、また行政的な指導に当たる機関も含めて、よほどしっかり対応していかないと、せっかく生み出された特許が十分に活用されないようなことになるのではないかと。
 そういう意味で、私は事例集をつくって、いろいろな対応についての1つの指導的見解を示していくということも大事だと思いますけれども、もう少し根本的に知財本部の強化も含めた産学の共有特許の円滑な実施の方向についての、具体的な施策を考える提案が必要ではないかと思います。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございます。国立大学が法人化をされて、ようやく1年ということで、さまざまな新しい課題が顕在化してきている中で、産学連携をどう進めていったらいいかということは、大学によっても相当温度差がありますし、大学の中でも勿論あるんですが、その辺、一方では大学の自主性をきちんと担保していかなければいけないということもありますし、余り画一的にやっていいかということもあろうかと思います。何かございますでしょうか。
 どうぞ。

○吉野委員 私の理解では、例えば、アメリカのケースですと、大学によって随分違うんです。多分、大学側から見て企業も随分違うと思うんです。それらが明らかになっていくと、一種のマーケットみたいになって、あそこはこういうフレキシビリティーがあるから、あそことやろうよみたいな、そういう動きに自然になっていくものだと思いますけれどもね。

○阿部会長 そのためにはもう少し、もう2、3年様子を見る必要があるかもしれませんけれどもね。
 どうぞ。

○中村参考人 今の産学の件で、私もコンソーシアム、そういったところでもう既に4件ぐらい経験があるんですけれども、まず大学側の方からこういうことをやろうと思うけれどもいかがかと。それに対して、あなたのところでこういった技術ができますかというようなことからスタートするわけですけれども、いつもそこでヒアリングになったときに、逆に審査官の方からいろんな質問が出るんですが、そこの内容にもちょっと不思議なところがありまして、例えば、既にメーカーの方が特許を持っていると、この特許がそこまでいくなら、大学の方としてはそれを生かしてこういうことをやりたいと、こういう可能性を持っているから手を組んでやってみたいと、大学と国だけではだめで、企業も参加してほしいと。そういうところはいいんですけれども、その段階は問題ないんですが、実際一緒にやったときに、そこの研究室機関で何かアイデアが出てきたと、それは大学側の方でもすい上げますよということになりますと、さっきおっしゃったように大学は特許に対してどういうふうなことを言ってくるのか、途中まで進行しますと、大学としてはその権利をこうしたいということが出てきますと、それをやる気が出ても、500万とか600万とかいろんな予算にもよるんですけれども、そのわずかな予算で我々のアイデアをすい取ってしまうのは大学はおかしいのではないかと、そんなようなところで、私の場合はそういうときには、先ほどの大きな会社との共同特許、要するに、大学も大企業だと考えれば、その年にこうすればいけるぞとわかったとしてもやらない。出願して取得してからその研究を一緒にやる方がずっと賢いと考えて、今のところ大学優先型ではなくて企業優先型で押し通しております。
 そうしますと、成功する例が多いんです。ヒアリングのときにわたします。この研究は必ず成功しますと、どうしてかというと、我々は既にこういったところに実績と経験を持っておりますと、そうするとヒアリングである委員の方は、ではもうある程度はできているんですかというふうになるんですけれども、結局この研究の次のマーケットとして、これは研究して終わったら、今度は市場性があるんですかと、マーケットがあるんですかと、要するに、受け口があるんですかと、そこまでの研究で実際投資をするべきではないかとなるんですけれども、手を組む大学側の方の特許に対する考え方を、いろいろ担当の先生とやっているときは表に出てこなくて、いざ行ってある程度出ると、大学の特許はこういう規定ですということが出てくる。そこで急に議論が始まって、何か不愉快な思いをするということがしばしばあるわけです。
 ですから、各大学でいろいろあるけれども、何か国の方からも、ベンチャーに対してはこうしたらいいという、何かそういったことをやっていただけたらいいかなと。
 逆に言えば、ある大学ですと非常にやりやすいのは、実施権はもうメーカー側でやってほしいと、それで大学のいろんな施設とかで一緒にやりましょうと。ですけれども、大学としては学会発表、そういった場は逆に優先的にやらせてほしいと。そこに対してメーカーさんはその研究に対して、ある程度施策とかものをつくったときに展示品を一緒に出してほしいと、そういうところで本当の産学になるではないかと思います。

○阿部会長 おっしゃるようなケースは、多分、余りよくないんですけれども、たくさんあるかもしれませんね。
 どうぞ。

○橋本参考人 いろいろ中小企業の人から話がありますので、その中でやはり自社だけの独自の技術力ではいろんな新事業の種を、技術を探せないという方も多いものですから、産学連携をかなりいろんな機会にお薦めをしておりますが、中小企業の方からの反応は、必ずしも余り芳しくはありません。今、三鷹光器の中村参考人が1例をおっしゃったんですけれども、やはり非常に端的な例が言いますと、大学というのは公共の場に近いと、何か企業側から技術を流しても、秘密保持が守られるかどうか、非常に不安がありますと。また、学生さんが絡んだときは、翌年にはライバル企業に就職するかもしれませんという話。それから、今のお話に近いんですけれども、補助金をもらうのに有利だからということで特許出願をしましょうということになって、実際はもともと企業がアイデアを持っていたらしいんですけれども、形の上では共有になってしまったというような、もうちょっと複雑なものもありますけれども、不満があります。
 やはり、アメリカのバイ・ドール法なんかは、中小企業に対するライセンスというのを、かなり優先的にやるというのは明確なんですけれども、それは残念ながら日本版のバイ・ドール法ではないんではないかと理解しております。
 それから、大学によってはいろいろ会費制、その他というのがあって、中小企業に対してはいろいろバリアーが高いところもあると思います。それから、技術指導というような、一番中小企業向けの制度が取れないようなところもあるやに聞いております。環境はいろいろ整備されているんですけれども、本当は最終的には、条件を自由にして、産業界で実用化されることが目的のはずだと思っているんですけれども、組織ができると、組織は実績を上げたいということになる。そうすると、特許を取ることが目標になったり、少し誤解がありはしないかという気がします。研究者の方も研究費を獲得するというのが、ものすごく重要なことなんだとは思うんですが、それがまず先に来てしまっているというところがありはしないかというふうにも感じてします。

○阿部会長 秘密保持に関しましては、3ページでしたか、前回も御議論いただきましたが、これはやはりきちんとしたガイドラインなのか、契約なのかわかりませんけれども、何かがないと企業の方は心配だというのはおっしゃるとおりだと思います。
 それから、目的が単に特許を取るためになったり、今、たまたま奨励の時期になっていて、特許の数が本当は大切ではないんですけれども、少なくとも今まではそういう奨励が現場で行われてきたと。そうではない大学もあるんですけれども、そんなことで、私は、これはこれから変わっていってもらわなければいけないところだと思います。
 いろいろ御意見があろうかと思いますが、時間の関係もありますので保護の分野、資料の5ページから19ページについての御議論に入らせていただきまして、今の大学との関係でも保護に関することはもう御議論に出ていましたので、あるいは1ページから4ページを含んでいただいても結構でありますが、主として5ページから19ページの部分について御意見をちょうだいしたいと思いますので、よろしくお願いします。
 ここは、少し時間をとらせていただきたいと思います。
 どうぞ。

○竹田委員 先ほどの参考人の御意見の中にも、裁判所に対して特許権侵害訴訟を起こすということが大企業等の関係で非常に困難だという指摘がありましたので、その点との関係で、13ページの「中小企業知財保護立法の制定」となっていますが、そこまで制定の必要があるかということはさておいて、まず、現状認識で、私は右側の論点の中で「現在の損害算定制度では、現実に実損のてん補になっておらず、侵害者の侵害し得となっているという中小企業の現実を踏まえた問題提起」とありますが、果たして、現在の裁判所が認定して支払いを命じている損害賠償額が現実の補填になっていないかということについて、こういう問題提起を事務局がしていることについては、いささか疑問があります。
 これは、平成9年から10年にかけて、現在の知財戦略本部の荒井事務局長が特許庁長官をされていたころに随分努力されて、特許権の行使しやすい侵害訴訟制度をということで、手続的にもかなりの改善をいたしましたし、それから損害賠償額についてもそれを多角的に認定してやすいような制度にしてきたわけです。
 私が東京高裁判事を退官したのは平成10年で、もうそれから7年になりますが、7年で確かに様変わりになっていると思います。これは侵害訴訟の審理期間の迅速化という意味では、本当に従来の半分以下になっていると思いますし、損害賠償額だって数十億の認定をするような事件は幾つもあるわけです。
 先日も東京高裁裁判所と話し合う機会がありましたが、東京地裁には数十億の損害賠償請求訴訟などはごろごろしているというのが、現在の状況のようです。
 それでは、現実に裁判所が認定している損害賠償額が非常に少額で問題かというと、私はそういうような声は余り聞こえてこないかと思います。
 つまり、現実に訴訟を起こして、そしてそこで十分な訴訟対応をすれば、今は実損をてん補できるだけの賠償が得られる制度になっていると思います。
 そういう意味で、今のてん補賠償制度に基づいても、私は特許権の行使については十分な対応ができる体制はできていると思います。
 それから、懲罰的損害賠償制度については、余り申し上げることはありませんけれども、これは最高裁がアメリカの懲罰賠償判決の執行判決で、公序良俗に違反するとまで言っていることですから、我が国の法体系からいって、そう簡単に取られることではない。 ただ、先ほど参考人の方々の意見をお聞きしていて私が感じたのは、つまり中小企業やベンチャー企業が裁判所の制度を利用できる体制ができていないということが問題なのであって、損害賠償額を増やすための法改正をしたり、13ページに挙げているような法改正をすることが必要なんではないと私は思います。
 では、そのために、どういう面からそれをサポートしてあげたらば、中小企業やベンチャー企業が、侵害訴訟をきちんと起こして、大企業が侵害しても泣き寝入りしないで裁判所に救済を求められるかという入口のところをもっと充実した制度をつくろうじゃないかと、その提案をするのが正論であって、こういう知財保護法、多分これは各省が全文削除だという意見をずらずら並べているように、いざこのような法改正をしろといったら、容易にできることではないのです。そんなことよりも、今、私が言っているような意味で、これは先ほどの参考人の方にも優遇策を考えてほしいということがありましたけれども、それだったらどういう優遇策を取ってほしいとか、それをもっと明らかにしてもらって、それを法制度に乗せるなり、それが行政のいろいろな指導とか、そういうものによってカバーできるものであれば、そういうことを考えてもらいたい。その方が絶対に実効性があると思います。
 以上です。

○阿部会長 今、御議論されたのは、13ページの真ん中から少し下の「論点」のところを中心におっしゃったわけですね。

○竹田委員 保護法の制定も含めてということです。

○阿部会長 わかりました。そういう御意見ですが、どうぞ。
 では生野参考人。

○生野参考人 今のお話は、大企業に中小ベンチャーが侵害された、その逆のケースで我々は是非提案させていただきたいのは、中小ベンチャーが大企業からむやみに侵害警告を受けて訴訟まで至ったケース、これは裁判になりますと、弁護士費用が高くて、中小ベンチャーは対応できないわけです。大企業は大弁護士グループで攻めてくるわけですけれども、それに対して、やはり知財保険のようなものを考えていただきたいという意見を最後の方に出してあるんですが、簡単に経済産業省の方から、これは削除となっておりますが、保険会社に聞いたら、現状の制度ではこれができないと、このぐらいの回答はだれでもできるわけで、例えば貿易保険を考えたときのように、もう少し大所高所に立って御検討いただきたいと思います。

○阿部会長 それは何ページですか。

○小島事務局次長 今のは21ページです。

○阿部会長 これは保護を通り越して活用のところまで行っていますけれども。

○生野参考人 保護に関連しているところでございますから。

○阿部会長 いや、別に便宜上分けているだけですから、はみ出していただいて結構ですけれども、21ページのどこでしょうか。

○小島事務局次長 下の方です。

○阿部会長 最後の「知財保険の活性化や共済制度の創設など」というところですね。わかりました。どうぞ関係がありましたら、はみ出していただいても結構でございますので。
 どうぞ、伊藤委員。

○伊藤委員 13ページに記載されている事項の関係で、私も一言申し上げたいと思います。
 基本的には、今、参考人の方や竹田さんの御発言に同感でありまして、いかにして侵害を受けた権利者に対して裁判による救済を求めやすくするかという工夫をする必要があると思います。そのための措置としては、訴え提起を容易にする経済的措置など、色々なものが考えられるかと思います。ただ、いったん訴訟の場に移りますと、訴訟というのは当事者対等とか、武器平等の原則という言葉で言われますけれども、公平あるいはフェアネスの精神が貫かれなければならない、これが憲法上の要請でもあります。わかりやすい例で言いますと、一方の当事者はキックボクシングで手も足も使っていい、相手方は手しか使ってはいけないということは、当事者対等に反するのであり、例えば、一方当事者が経済的弱者であるという理由によって、攻撃防御の手段に差を付けることは、憲法違反の疑いさえ生じさせるところです。13ページに例としてあげられている立証責任の転換や証拠収集手段の拡充は、もちろん立法政策としてありうる選択肢ですが、それを利用できるのは、中小企業のみであり、大企業はそれを利用できないとすることは、訴訟手続の基本理念や憲法の基本原理からみて、根本的な問題を孕んでいるように思います。

○阿部会長 ありがとうございました。では、岡田さん、岩宮さん順番にお願いします。

○岡田参考人 先ほど竹田先生の言われたことに関しまして意見を申し上げます。訴訟を起こす場合と、先ほどの弁護士費用というものが相当かかります。もう一つは、やはり時間の問題もあります。中小企業ですと、やはりその場その場で生きておりますので時間が重要な問題になります。例えば私どもが訴訟を起こしたときに、大企業というか、相手企業は多分弊社の特許に対し無効審判で応戦してくるのであろうと予想しています。そうしますと、結論が出るのに1〜2年はかかります。その後裁判が始まって、年単位でどんどん時間が過ぎていくことになります。私どもは年単位に対して資金的な余裕とか、経営的な能力はあるのかというと、無理なことと思います。やはり早期に結審するということはなかなか難しいのかもしれません。やはり私ども中小企業という甘えはいけないのかもしれませんが、また、法の下の平等を遵守するということが基本かもしれませんが、そうはいっても、やはり私どもと大企業との体力差がありますので、それを補完する上での何か差別的な中小企業に対しての優遇措置というのはあるべきではないかという気がしています。
 あと、具体的に優遇措置は何かというと、私どもが今困っているのは、先ほど警告準備中というお話をさせていただきましたが、私ども訴訟に持ち込むまでに一番大変なのは、証拠集めです。具体的に言いますと、エアバック用の自己診断システムというのがあります。これの証拠を集めるのは、車のイグニッションキーを回します。そうすると、加速度センサーが正常に動くか、動かないかを自動的に検査します。これが自己診断システムです。この証拠として集めるのは大変な作業です。自動車を1台買ってきて、ダシュ-ボードを分解し、更に弁当箱を空け加速度センサーのところに、信号線を取り付け、顕微鏡下でイグニッションキーを回し、重りの動きを観察します。これによって特許侵害の有無が明白になるわけですが、この作業は非常に困難だと思います。弁当箱の中に加速度センサーが入っておりますので、そこから信号線を取り出して、顕微鏡下で証拠を集めるというのは、かなり困難なところもあります。14ページのところに「情報開示制度における営業秘密の保護の確保」とありますが、当社の場合相手側が情報を開示して侵害していないことを証明してほしいと思っております。これは大企業、中小企業関係なしにそうあるべきことと理解しています。

○阿部会長 ありがとうございました。では、岩宮参考人お願いします。

○岩宮参考人 これは、希有な例なのかもしれませんが、私どもは無機の高分子の研究をいたしておりますが、かつて世界的な優良企業から、機能材料に機能アップのプロジェクトが持ち込まれました。
 私どもの根幹技術そのものは、もう既に機能アップできることがわかっておりました。本来ですと、共願すべきでないものですが、共願という形で彼らは押し切りました。
 私どもは、本当に小さな企業ですので、これは訴訟を起こしてもだめだと思いました。私は何をしたかと申しますと、横浜市の経済局に持ち込みました。横浜市の経済局長にこの相談をいたしまして、横浜市の経済局のスタッフが面に立って相手方との話し合いを始めてくださいました。市という組織体が、交渉をして下さり、相手が大企業でございましたが、話し合いは5回か6回行われまして、権利を私共の単願というふうにみなすということの契約書が交わされ、私どもが権利を確実に持つ事が出来ました。PCT出願も致しております。私どもでは、県や市という公共の団体をバックにして救われたという例がございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 事務局、どうぞ。

○小島事務局次長 ちょっと補足しますと、先ほど竹田委員から「論点」のところで実損のてん補で十分ではない、そういう問題は生じていないんじゃないかという御指摘があったんですが、前回、根本特殊化学の根本社長が参考人として来ていただいて御発言されたんですが、その中で大企業と中小企業だと、中小企業の逸失利益が実損てん補だということで損害賠償になるけれども、大企業が1,000 出して、中小企業が失われた逸失部分は20だとすると、20しかてん補されないので、終わってみたら何のあれにもならない。その間に、他人の特許でやったもので、開発のコストもかからないものでやったんだから市場価格は下がって、もっと大きな損害を生じている。だから、侵害した者が侵害し得であるというので、今の賠償規定その他の制度では実損はてん補されていないんだということを非常に強調されていました。まさにそういう意見が左に一部出ていますけれども、そういう意見が我々もいろんなところからヒアリングすると、現実に提起されているということです。
 それから、伊藤委員から訴訟における原理原則というのはわかるんですが、他方で、やはり先ほど御指摘がありましたけれども、証拠開示の面とか、どうしても不利な点はあるので、そういうところを何か工夫できないかという非常に切なる要望は幾つか出されています。皆さんそういう訴訟の原理原則わかった上で悩み苦しんでいる中小企業の切なる要望だと思います。

○阿部会長 どうぞ。

○久保利委員 少し議論がかみ合っていないような感じがするんです。要するに、竹田先生がおっしゃっているのは間違いではないわけで、そういう法制度の改革は確かにできてきている。伊藤先生おっしゃるとおり、民事訴訟法というのは、そういう建前で動くこともそのとおりだと。ただ、現場で見ていると、例えば先ほどから出ていますけれども、では一審判決、二審判決、最高裁という最後の最後まで中小企業が本当に判決を全部求めてぎりぎりとやれるのかと。そして弁護士費用も別途相手方から取れるというところまで行けるのかということになると、現実はそうではないだろうと思うわけです。しかも、裁判所ももうこの辺で和解しましょうという和解勧告が出てくる。
 一方でぎりぎりとやろうと思ったって、米国の証拠開示やデポジションのような相手方の懐に手を突っ込んで向こうの持っている書証を全部引っ張り出すというふうなシステムがあるわけでもない。勿論、最近はそれに類似したものがありますよというけれども、ではそれを使おうと思ったら、また弁護士費用が幾らかかるかわからないということになってくるわけで、現実問題としては、私は中小企業の皆さん方、参考人の方々がおっしゃっている弊害は現実に存在すると思うんです。
 問題は、それをどこでどういうふうに変えていくのかというときに、民訴の原則を変えてそれを救うとか、本来の損害賠償理論をどうするという問題ではなくて、やはり現実的に、例えば今、岩宮さんがおっしゃったみたいな手立てもあるだろうし、裁判所がもう少し後見的な役割を発揮して、この事件の円満解決については、むしろ大企業に少し引かせることによって、中小企業を助けるような和解策を出すというのもあるでしょう。あるいは弁護士がそれではコンティンジェント・フィーで行きましょうと、着手金が何とかでかんとかで、全部タイムチャージではなくて、例えば勝ったときにはこれこれのものをちょうだいしますよと。それは本来のものよりも少し高いかもしれない、3割もらいますよということがあるかもしれない。
 しかし、それでも今のイニシャルコストとしてはかかっていきませんから、勝ってお金が取れたときに払えばいい話ですから、資金繰り的には中小企業には楽になる方法がある。場合によってはストックオプションを差し上げましょうと、うちの株式がこの特許で本当に会社で立派になったときには、弁護士さんにストックオプションをあげましょうという話もあるかもしれない。
 要するに、そういういろんな制度を各種各様使いながら伸びていかないと、いつまで経っても中小企業はレスキュー対象だけで終わったのでは困るわけです。ある種のベンチャーなんですから、それが発展していくという要素を加味しながら、弁護士に対してもいろんな制度を上手にお使いになるというのを考えていかなければいけなくて、それがここで一生懸命いろんなことを事務局がまとめられた真意なんではないかなと。
 それに対して、法務省の意見だとか、経産省の意見だとかというのは、余りにも冷た過ぎるんではないかという感じがするので、一緒に悩みながら、もう少し知恵を出し合ってその方向に行けるようなことを考えるのが、この調査会の意味ではないかと思いますので、是非そこの辺りに知恵を絞る方向で議論した方がいいような気がいたします。
 弁護士もそういう点では、もっと知恵を絞らなければいけないというふうに自ら感じております。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。どうぞ。

○山田委員 今の久保利先生と同じようなことなんですけれども、実際に知財の問題で中小企業と大企業の問題というのは、今日もありましたけれども、大企業が平気で侵害するとか、あるいは結局侵害されても泣き寝入りと、あるいは勝手に特許を出すと、そういう事実が中小企業に対してあるわけです。それに対して、力関係が弱いから泣き寝入りになってしまうと。
 ここにある下請け代金支払い遅延防止法というのも、これそのものが本当に実際に効果を出すというのは、だからって大企業に我々が言えるわけではないんです。こんな法律があるからお金を払ってくださいよと言った瞬間に仕事がなくなるわけです。
 ただし、やはりどうしてももめると、最後はこれがあるんですよということが言えるんですね。結局、何が問題かというと、中小企業は裁判所に行った瞬間に、そこで会社としてなくなるんです。さっきおっしゃったように、最高裁まで行けるような力がないですし、そんな費用と闘う時間がないし、闘うお金もないわけです。
 でも、ここに中小企業に下請代金支払い防止法と同じように、中小企業の知財の保護法というものがあるという事実があれば、それをむやみに変なことはできないだろうということが、大企業にこういうものがありますよと、結局は我々が裁判所に行けなくてもありますよということを言うことによって、やはりそれは守らないといけないなと、そういう秩序があるということがわかっていただけるだけでも、結局、泣き寝入りしているのが多いわけですから、是非そういう保護法がつくれればと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○下坂委員 一点、岡田参考人の資料でお伺いしたいんですが、懲罰規定はなぜだめか、というのが2ページにあるんですけれども、これはいろいろ御説明がありまして、法律上いろんな問題があるとしても、もし可能と仮定した場合、かねがね気になっている点は、取る方から考えれば、懲罰規定で何倍も取れるんですけれども、逆の場合がありますね。その場合は、また中小企業は保護法とか何かで別になるというわけでございますか。

○岡田参考人 私自身非常に自己中心的な人間なものですから、私の立場から言わせていただきます。私どもは特許を大企業にライセンスして、そのロイヤルティーで会社を経営しています。ですから、私どもの会社はものをつくっていませんので、第三者の特許を侵害することはあり得ません。

○下坂委員 岡田参考人の場合は、そうなんでございますね。

○岡田参考人 ですから、自己中心的に話をさせていただきました。

○下坂委員 そうすると、普通の中小企業の場合。新たな賠償制度といいました場合、一般の中小企業の方々の場合は、中小企業同士の訴訟もありますし、それから被告になって巨額な賠償金を取られる場合もありますが、そういうときも同じ考えでよろしいわけでございますか、同じように巨大な額を払わなければいけないという状況が出てくるんですけれども。

○山田委員 それは、当然平等にすべきですね、当たり前のことで、やはり侵害すれば中小企業であろうと、それは平等に3倍取られるということだと思いますけれども、やはり侵害してはいけないというのが根本ですからね。

○久保利委員 岡田さんは、決して自己中心的ではなくて、まさに知財国家をつくっていこうということだと思います。ものづくりよりは知恵づくりという基本的なスタンスがあったはずなので、岡田さんみたいにやるのが中小企業としては一番賢いのではないかと。要するに、いい特許を持って、それを大企業につくらせるとか、中国でつくらせるというのが、むしろ中小企業のこれからの頭を使った経営なのであって、ものをつくらない、極端に言うと、そういう発明家ばかりが集まって中小企業をつくってロイヤルティーだけでどんどん生きていくという会社がたくさんできると、実は日本の中小企業というのは、まさに3倍賠償でうんともうけられるような会社ばかりになって、自分は侵害しないから、一切それの被害には遭わないということになるのであって、私はそういうふうになるのがいいんだと思って3倍賠償というのをかなり孤立無援の中で言い続けているわけです。侵害する人よりされる人を保護すべきでしょう。それは国家戦略として私は正しいのではないかと。それを公序良俗違反だというふうに、確かに竹田先生がおっしゃるとおり、最高裁は今そうなっておりますけれども、しかし、それは一体日本国のこれからの知財の在り方にとって、本当に永久にそれでいいのかどうかと。むしろ、そろそろそれは見直して、岡田さんみたいな方々がもっと発展できるような賠償システムをつくった方がいいように私は思っているんです。

○岡田参考人 ありがとうございます。

○下坂委員 ロイヤルティーを取って実施したら何も実施していないということにはならないんじゃないですか。使用させているわけですね。自分はしなくてもつくらせてやっていれば、それはその人の実施ですから。

○岡田参考人 許諾先がものをつくるわけですから、許諾先が第三者の特許を侵害する可能性はあります。私どもは、それは保証しておりません。

○下坂委員 その人との関係はどうなっているんですか。

○岡田参考人 その人の関係といいますと。

○下坂委員 その許諾先の会社と、つくらせている会社。

○岡田参考人 作っている会社に対し、その会社がものをつくりますので、第三者の特許を侵害する可能性があるわけです。しかし、私どもは第三者の特許を侵害しないことを保証していません。

○下坂委員 契約上ですね。

○岡田参考人 はい。

○下坂委員 うまいですね。

○阿部会長 でも、それはあり得ますね。それから、中小企業が侵害することも十分あり得ることだと思います。

○岡田参考人 私どもは、先ほど登録率が99%と申し上げました。今から16年前に三軸の加速度センサーとか、三軸のジャイロセンサー、力センサーというのを発明したわけですが、先行技術が全然出てきませんでした。
 それで、私どもは基本特許を押さえました。その後、改良特許とか、応用特許みたいのが出てくるわけですが、私どもは残念ながら応用特許までは押さえ切れませんでした。でも、これは大企業に許諾した段階で、大企業が自由に得意なところで応用特許を出してくださいと言います。私どもは基本的には共同出願はしません。やはり共同出願しますと、捨てたようなものと考えています。大企業と共同で出願してもあまり価値がありません。私どもは基本特許を持っていればロイヤルティーがいただけるわけですから、それでもう十分だというふうに考えているわけです。

○阿部会長 伊藤委員どうぞ。

○伊藤委員 先ほど、岡田参考人から権利保護にとっての情報収集や証拠開示の重要性のお話がございまして、それに関連して小島さんや、久保利さんからの御発言がございました。権利保護にとっての情報獲得の重要性については、私は全く認識を同じくしております。
 しかし、先ほど、久保利さんは、13ページの項目について法務省や経産省が全文削除という意見を出されていることに関して、態度が冷たいといわれました。しかし、私が意見の背景を忖度するに、これらの意見も権利保護に冷淡なわけではなく、最近の訴訟法の改正などを活用すれば、中小企業を含む権利者の保護の必要を十分に満たすだけの情報収集手段が整備されているといっているのではないでしょうか。たとえば、ごく最近の民事訴訟法の改正で、訴え提起前の証拠収集制度は、いろんな反対の議論があったにもかかわらず、立法の運びになりました。現在は、その新しい制度が運用の緒に就いたという段階です。久保利さんは高名な弁護士さんでいらっしゃるけれども、実務界全体としては、まだ新しい制度の運用などに慣れておられないのではないかという気がするんです。
 ですから、せっかく最近の法改正によって、権利保護のための情報収集や証拠獲得のための武器をつくったわけですので、それを有効に活用することをまず考えていただきたい、その段階を踏むことなしに、また新たな制度についての検討を始めるというのは、制度設計の責任を負う者の態度としては問題があるのではないかと感じます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○渡部参考人 ちょっと抽象的なことを申し上げます。今日、参考人の意見を聞いていて、前回も私が申し上げたように、争いが生じてから打てることは限られているということと、不平等なバイアスのかかった制度をつくるというのは、やはりなかなか難しいだろうということで、基本的にはリスクマネージメント、今日もいろいろな意見が出ていましたけれども、弁護士の先生、いろいろな専門家の方の支援を得て、リスクマネージメントを手厚く行うというのが正しいんだと思います。が、今日お話を伺っていて、知的財産重視のさまざまな戦略を今まで取ってきて、これでいろんな制度も変えてきた結果が、果たしてどういう影響があるのかということが、私は前から心配しているところがありまして、制度をいろいろいじる、例えば今日もCIPが中小企業側から要望が出ている話ということですけれども、補正要件の緩和とか、いろんなことをいじりますと、基本的にノウハウというか、経営資源がある方がどんどん有利になっていきますね。
 知的財産に関しては、1件辺りの出願が最低のユニットで、それ以上の金額はどうしてもかかるわけですし、しかも大企業の方がよく言われるように、ある程度まとまった特許群がないと勝てないんだと、まさしくそのとおりだと思います。
 そういう意味で、やはり中小企業はどうしても不利だし、それから訴訟になっても、やはり経営資源がないと不利だということの中で知的財産重視戦略を進めてきた。
 産学連携に関してもそうですけれども、やはり大企業と中小企業との有利さの乖離というのが、起きてきているような気がするんです。そこは全体の知的財産重視戦略の中ですごく重要な部分で、もし中小企業が置いてきぼりになってしまうという結果が出たら、これは結局知財戦略の足元がだめだったということになるんではないかと。
 そういう意味で大学についても、いろいろ指摘されている難しい問題がすごくあるんですけれども、対策をなんとか取っていきたいと思います。これも典型的なんですけれども、平等にすると不利なんです。共同研究、共同出願ということをやると、中小企業はどうしても不利になるとか、そういうことに対して、やはりなんらかの手段でバイアスをかけないといけない。
 そういうふうに見たときに、先ほど久保利先生が言われましたけれども、今回の提案に対して全部削除というのが結構目立つんですけれども、削除されたらこういう議論というのはなかったことになってしまうんですね。やはりそこには問題点が存在するのですから、論点がいけなければ論点を変えるなり何なりという見方で、ここはかなり粘っていかないといけない問題なんではないかと。ちょっと個別に言うと、すごく長くなってしまうので言いませんけれども、今まで議論があって、片づいているからというようなことがあっても、やはり残しておく必要があるんではないかと思います。
 個別を始めますと、ちょっと長くなるので、ここで終わります。

○阿部会長 ありがとうございます。どうぞ。

○山田参考人 かつて消費者問題のときに、消費者側に生産物の欠陥責任を立証しろという話がありましたが、時代が変わって、製造側の責任を問う法律ができ上がりました。この国の産業構造は中小企業と大企業との関係で言うと、中小企業側は基盤的技術をもって、パーツの部分とか、かなり根幹な部分をつくり上げて、それを大企業がアッセンブリーするという形態で成り立ってきているわけです。
 それが、お互いのパートナーシップとしてうまくいってきたために日本の活力があったわけです。そこの現実を踏まえないと、やがて中小企業は大きくなるだろうという話は別として、中小企業は中小企業としての存在意義があるわけです。しかしその存在基盤は脆弱で、ジャッジは土俵に上がれば対等だというんですが、土俵に上がれない、その前段の問題があるんです。
 ですから、そこで大局的に見たときに、中小企業に対しては、基本的にこの国としては一定の大企業との落差を付けながら、つまり片方にげたを履かせるということは、はっきり表示していいはずなんです。そうしないと、いつまで経ってもこの議論というのはなかなかかみ合わない話でありまして、そういう意味では、保護立法という大局的な観点に立ったものをつくり上げていく必要があります。これまでの産業形態が今、大きく転換しようとしています。日本は創業がものすごく減って、廃業が増えていますから、これまで産業の根幹を担ってきた中小企業が著しく激減してくるわけです。
 一方では、今までのような形で大手企業にやられっぱなしのような侵害状態を放置すると、これによって中小企業は一気につぶれます。そうすると、この国自体の産業競争力というのは、全くなくなってしまうという問題に今、差しかかっているということ、そこのところは是非認識しておいていただきたいと思っております。

○阿部会長 では、高林委員、中川委員の順番でお願いします。

○高林委員 私、この会議の確か第一回のころに、医療過誤訴訟とか、製造物責任訴訟という問題と、知財の侵害訴訟というのは、全く違う場面だというお話をしたような記憶が、今、よみがえってきました。医者と患者というものは、常に患者は被害者で原告であり、医者は加害者で被告であると。物を製造する者は常に加害者で被告であって、消費者は常に原告であると。そういうところから立証責任の転換とか、証拠開示など武器対等の原則をやや曲げるようなことも制度として採用されてきていると思います。
 今のお話は、知的財産の侵害訴訟の場面でも、中小企業は常に被害者であって、大企業である侵害者からやられっぱなしになっているということのようですけれども、中小企業だって、先ほど下坂委員もおっしゃったとおり、原告になる場合も被告になる場合もあるわけであって、大企業は常に悪者であるから被害者である中小企業を優遇すべきだとの立場から法体系をつくれというのは、余りにも乱暴な議論ではないかと私は思います。
 例えば、資金がないから訴訟ができない場合であれば、民事訴訟であれば訴訟救助であったり、法律扶助であったりと、そういうような保護政策というものが取られているわけで、竹田委員がおっしゃるとおり、中小企業を保護するための政策を取っていくべきだということは賛成しますけれども、中小企業は常に保護すべきであるとして、法律を変えて行けということは、とても賛成できることではない。これは法学者であるかどうかにかかわらず、常識的にも、そのように会社の規模で区別して行くべきではないと私は思っております。

○中川委員 今の高林委員の御意見と一部一緒になるかもしれませんが、法律の世界で弱者と強者の間をどうするかというのは常に問題になります。中小企業対大企業だけでなく、個人対企業、個人対行政などという形で、武器が平等ではない間の関係をどうすればいいかということが問題になるわけです。それに対する対応策の考え方としては、場面を2つに分けなければいけない。
 1つは、弱い者と強い者が契約関係といいますか、取引関係といいますか、そういう場面です。それについてはいろいろと法的な対応がされています。例えば、個人対企業であれば消費者契約法であるとか、労働法であるとか,そういうものです。下請け法は中小企業対大企業と言って差し支えないでしょう。
 そういう場面は、ちょうど13ページのCの(イ)で書かれていることに対応します。ここはどのような対応策をとるべきか、ヒントがいろいろと法律の世界にあります。このような場面について、知財に関する中小企業の保護法制のようなものは、考えられないではないと思います。
 それに対して、もう1つ問題になっている場面が知財の侵害の場面です。13ページで行くと(ロ)(ハ)の場面です。これは、言ってみれば、ある人に殴られたとか、モノを盗まれたとか主張している人がいる場面で、本当に殴ったり盗んだりしたのかを判定しなければいけないという場面です。やはりここにも弱者と強者というのがあるんですが、こういった場面で武器不平等を何とかしようというときは、すこし状況が違ってくる。
 例えば、交通事故で考えますと、示談がうまくいかないので訴訟をしようと思っても、相手は非常にお金があるらしいがこちらは金がない、訴訟しようと思っても自分はとても弁護士を雇う金がないといって、泣き寝入りという話は幾らでもあるわけです。そういう場合に、原告が弱者だから勝訴しやすくさせてあげようという考え方はとられていない。せいぜい先ほど挙げられた、法律扶助ぐらいです。
 ほかに、例えば懲罰的賠償が強者に対する懲らしめになるという立場もありえようと思いますが、しかし、懲罰的賠償というのは、逆にいつ自分が訴えられる立場になるかわかりませんので、かならずしも中小企業対大企業という今議論になっている文脈にはそぐわない。だから必ずしも解決策ではない。
 弱者対強者というときは、裁判における立証責任の転換という形で制度化されることがありますが、これも、訴えている方が弱い立場だから、では立証しなくていいかという話かというと、そういうことではない。これは、たとえば、証拠に近い人の方が立証責任を持つべきだと、その方がフェアだろうというふうに法律家は考えてきたわけなんです。中小企業だから立証責任を転換してくれ、ということが公正な裁判のあり方かというと、そうではないというわけです。
 このように場面を分けて考えると、知財侵害の場面では、大企業が侵害したと中小企業が主張する場合に、中小企業を中小企業だからという理由で制度的に保護してくれというのは、法律の世界ではなかなか考えにくいことなんです。
 結局、解決策は自己防衛しかない。先ほど、リスクマネージメントということはおっしゃいました。あるいはIT特許組合の今日はお話がございましたけれども、まさに中小企業のグループが自分たちで相補いながら、財団でもつくってお金を出し合いながら共同で対抗するといった方法しかないんではないかと思うんです。
 だから、中小企業の知財保護立法を考える場合には、場面を分けて考えないと、議論は混乱するだろうと思うのです。そして知財侵害の場面では、今のところ、法制を変えることが有効かというと、残念ながらそれについてはいい案がないのではないか、というのが伺っていての感想です。

○阿部会長 どうぞ。

○下坂委員 私、先ほど岡田参考人にお伺いしましたのは、懲罰規定3倍賠償なんてやった場合には、それは中小企業が被告になってつぶれるような罰金を食らうこともありますよということです。そこがかねがね疑問だったもので伺いたかったんです。
 それでも中小企業はかまわない、自分たちは原告になる場合の方が多いんだということであれば、それならば、それも1つの方法かという気はしているんです。
 前回と違って、今回は先生方がいっぱいお出ましくださって大変アカデミックで、法体系からいいますとこれはなかなか難しいところがあると。けれども、中小企業も巨額な損害賠償を被っても当然というお考えならば、法体系上無理だからもはやここでディスカッションしても、当然無理だということにせず、何とかみんなでディスカッションできないかというふうに考えているんですけれども。

○阿部会長 この問題は、前々から議論の対象になっているところです。時間の関係もありますので、最後の活用分野、20ページから22ページの部分について御議論を賜わって、併せて前の方に飛んでいただいても結構でございますので、とりあえず20ページから22ページをお願いしたいと思います。どこでも結構でございますので、お願いいたします。
 どうぞ。

○中村参考人 先ほどの岡田さんの考えと私も共通しているんです。中小だから保護してくれなんて、私は当然そんなことは思っていないんです。私もさっき知的財産は我々のよろいだと言っているわけです。ですから、この考えは自分のものだと、大手のものではないと思ったら、また訴えられることを推定したら、やはり中小であるものは、きちんと自分の意志の下できちんと特許を出すということで、その特許を出すということは、逆に訴えられたときも、そのときは私はこうだったというのを少なくとも明らかにする場でありますから、それは頑張るべきだと思います。金がないから出さないと、そういうことは経営者は考えてはいけないと思います。
 それと、私の例ですけれども、そういった大手さんに、おまえの特許は無効だというようなときも堂々と立ち向かうことを、やはり私は考えなければいけないと。そのための資金をためる意味だったら、我々はこれからこういうふうになるだろう、むしろ自分たちの考えを大手につくらせる。今までは大手から仕事をもらっているという伝説をここで崩すべきだろうと思います。
 ただ、特許とか、侵害とか、いろんな法律的なことはよくわからないので、そこでちょっと困ることが起きるんです。そういった相談場所をどうしたらいいか。先ほど私が言いましたような公共施設、国がやっているところが手前のところを特許を違反してつくっていることを推薦して、しかも安くつくらせて、あげくの果てには何億もの仕事を取られた上に、自分は特許裁判で勝っても最終的にはゼロだと、要するにまね得だと、こういったところに対しての仕打ちが何もないと。
 結論的にはどういった裁判になったかといったら、ではそれをつくるのをやめなさい、使用もやめなさい、そしてどうせい安くつくった機械だから調子悪くて、裁判の方から使うのをやめなさいと言ったから、はい使うのをやめますと、それだけで終わってしまったと。私が言っているのは、そういった知的財産の一番の競合はやはり入札、これが一番だと思います。私のシステムを生かしたところ、特許を持っているとそれは余り上に出さないでほしいと、どうしてと、あなたのところにだけに仕事を出さなければいけないようなことになったら、入札にならないじゃないかと。これは絶対的な競合で、法律家はここのところをしっかりやらないと思う。入札制度と特許とどっちが勝ちなのか、今後本当に見直してほしいと思います。
 先ほどのことですけれども、決して中小は保護してほしい、そういうことではなくて、もっとその一歩手前があるんです。私のところによく相談が来るんですけれども、おれの考えだったけれども、大手さんにそっくりつくられてしまったと。では特許となるのかと、まねされて悔しいと思ったら、それを出願しなさいよと。たかが数十万じゃないですかと。そういうことなんです。
 そして、次のステップになりますと、大手さんの方が売り先を知っている、マーケットを持っている、それから訴えられても、どうしたらいいかということも全部知っている、中小はつくる量産が限られております。たとえ特許を持っていて依頼が来ても生産が間に合わない、何とかできないのと、では今度は当社の下でつくりますよといって、結局技術的にも取られてしまう。
 そういったところに対してどうしたらいいか、もう先ほど、この特許の下で量産するなら、もう大手さんに先につくってもらおうと、そういうところを最初からアドバイスして、スタートしていいじゃないかと。私はそんなふうに思うんです。
 ですから、これから中小は大手さんにつくらせるというのはそういう意味で、それの一番のよろいは何かといったら特許だと思うんです。この特許を最大の武器として中小は闘うべきだと、私はそれをやって、実例で行きますと、カメラのライカというのを御存じだと思うんですが、実は私は医療に関しまして、そのライカと契約を結んだんです。あなたは特許を持っていない、あなたの機械は旧式ですと。私の特許をもってやればもっとたくさん売れますよと、どうしますかと。
 当然相手も大手ですから、いろんな特許に対しての知的財産部もありますから、むしろ大きいがために、知識を持っているがために、違反したらどうなるかというのを逆によく知っております。むしろ、一番問題なのは、先ほどの日本の公共施設がやった、安いの一点張りでつくるところは、国からつくれと言われたからつくっただけだと、すべて結託してやられてしまったら、我々はどうにも動きが取れない。本当にそういった入札制度が既に崩しながらも負けていると、こんな事態は本当に法律的に許してはいけないと私は思うんです。
 ですが、海外ではこんな問題はございません。むしろ特許製品なんですねと。そういうことになりますと、特に医療の先生方は尊敬してくれます。日本の人たちは尊敬してくれません。特許を持っていても何にも評価してくれません。それほど知識が低い、特許とは何ぞやも何も知らない。ましては役所の人も、地方に行くと本当のことをよく知らない。そういったところの宣伝不足が非常に私は問題だと思います。
 むしろ、外国の方が違反したらどうなるかという怖さを知っておりまして、それから裁判をやっていても本当に公平です。本当に一つずつ意見を聞いてそれで攻めていきます。私たちは、それを決して細かいところを保護してくれなんて言っているわけではなく、これからの中小は特許を取りなさいよと。
 そして、先ほどのパーツ的な、つくり方の特許、それから要するに製造特許ですね。基本とかよりも製造特許、応用特許、そっちの方がひらめきが非常に多いんです。そこをただ乗りされているのが非常に多いと。それは社長さんがあほなんですよと、どうしてそれだけのものを持っているときに出願しないんですかと、そこのところで言った方がいいと思うんです。
 ではやたらといっぱい出たらいいかということではなくて、特許は最近出願のお金が上がったと、私はそれは結構だと思うんです。少し払った後で、2,000 〜3,000 円プラスでもいいから、たくさん出たらそのお金を積んで、ノーベル賞ではないですけれども、むしろ日本の中に反映した、世界に反映したと、すごい特許ではなくて、きちんと貢献したという実績が出たら、3億円ぐらいの褒美をやって賞を出したらいいじゃないかと。何で野球とサッカーの人たちがあれだけ反映していて、これだけものを考えた人たちが反映しないなんていうのは絶対おかしいわけで、そこを法律が何もやっていないということは一番罪だと私は思います。
 何とかそういったところ、ノーベル賞も3億円ぐらいもらえるから頑張ってやるものなんですけれども、何でものづくりがいろいろ考えても、ただ印紙税で何年おきにお金を取られると、こんなのは本当にばかな話であって、これを取られるんだったら上乗せでも結構です。それを積み立てて、1年間、例えば貢献した、何した、これは確かにすごいですねということに対して、1億、2億のお金を出して、評価したら日本のアイデアマンは、よしそれをやろうと  いうことで考えるんじゃないかと私は思います。 今の高校とか、中学、大学の人たちは、みんな野球とかサッカーの方に興味を持って、発明なんていうのは一銭にもならないから考えない。そんなのはおかしなルールじゃないかと私は思います。ちょっと極端ですけれども、そんなふうに思っております。

○阿部会長 中村さんのおっしゃった入札については、自治体との関連については、そういう事例を伺ったことがありますので、似たようなことだと思いますけれども。
 1ページから最後の22ページまでのどこの場所でも結構でございますので、どうぞ。

○岩宮参考人 私は、1997年に実はこの化学の発見を致しました。たまたまその年神奈川県では事業創出オーディションでは副賞1億円の無担保融資が付いておりました。金融不安があり山一證券の倒産があった年でした。受賞することで私は金融的な安心を得られると思ってチャレンジをしました。幸運にも受賞できまして、1998年貸し渋りの中に、事業推進が出来ました。特許も次々と出しておりまして、昨年も二十数件の特許を出し続けております。根幹技術は紙とか線維とかフィルムとかという分野と液剤の製法になるわけでございます。今日、いろいろなところで地場産業の方々に出会います。まさに日本はものづくりの国です。本当にものをつくってこつこつと今までの伝統産業に、自分の抜きん出た技術をしっかりと築き守りながら、今の経済の低迷の中にどうやって次の時代につなぎ、この国の中で形を残すかということを考え必死に生きている中小企業はたくさんいらっしゃいます。
 私どものような技術は、例えば木材の表面に機能を与えます。
それで間伐材を使用し、ものづくりにチャレンジする建具職人の方々に液剤の融合と、化学反応を見ていただき、芸大の先生を始め、いくつかの大学の先生方は実際にこれをお使い下さいました。香りも残し呼吸するのに水をはじき強度がある木材が出来ました。ところが、メカニズムがわからないのです。私は是非神奈川県にもある大学の幾つかに、実はこういったシロキサン結合、ゾルゲの置換基利用による反応ということで木材とのメカニズムの解明をしてほしいとお願いにまいりました。そうでなければ、立証する論文が書けないし、なかなか信頼していただけない。
 ところが神奈川県内の大学はだめでした。TLOは大学のシーズ領域内でおやりになる。しかし、民間の持つシーズに対して解明する為の協力をお願いするには、沢山のエネルギーが要りました。やっと今年、京都大学、筑波大学に御協力をいただけるということで、今、折衝を始めておりますが、共同体としてやってくださるような力がある、先生や機器のある大学が協力して頂き、民間の持つ技術が、より活力を増して、開発に取り組める支援策があってもよいのではないか、またそういう目をもって大学が取り組むという姿勢があってもよいのではないかということを感じております。

○阿部会長 ありがとうございました。そろそろ時間ですので、では最後でよろしいでしょうか。

○山田参考人 14ページの営業秘密の関係ということで、MSDSという制度、これは人体の安全確保のために、いろいろ悪影響を及ぼすであろう、化学物質に対して、それの情報開示ということが言われている件であります。大田区企業でこういった検査の試薬をつくっているメーカーに対して、相手方の大手企業のグリーン調達を行う資材部門などがそれを扱ってくれる場合に、物質の分量が1%というパーセント未満のものは、開示する必要がないはずなのですけれども、実際上は、ともかく何でも化学物質のものについては全部資料を出せという要求が出されています。そうすると、実は微量のところに大変なノウハウがあるわけなのですが、それを開示しなければならないという問題が出てしまうということです。
 それで、ごく微量のものしかやっていないんだから、パーセントというよりも、むしろ絶対量規制でミリグラム規制とか、そういうふうに切り替えてくれないかという話が出ているんです。
 ですから、こういった営業秘密は化学問題だけではなくて、いろんな問題が出てきますけれども、特に化学の場合には、専門家から見れば、その組成について、例えば化学物質の名称ではなくて、物質分類名をもって開示すればいいと言われていても、大体わかってしまうという話なんです。
 ですから、そういった面で、先ほどの大学との関係はありますけれども、営業上の秘密というのは、これは中小企業にとって、本当に根幹のノウハウの部分なので、そういうのも防衛してもらいたいと。

○岩宮参考人 今の意見でございますが、それを本当にそうしていただけると有難いと存じます。特許では、あいまいもことした所を多少残す事も出来ますが、しかし、MSDSでは、すべて開示していかなければならない。ここでノウハウが大企業に解明し、本当にやられてしまうことがございます。

○阿部会長 前回と今回、まさに中小企業から切実、また非常にある意味で教訓的なお話をたくさんいただいたように思います。
 2回の議論をさせていただいて、ここまでとさせていただきたいと思います。ここまで議論が進みまして、しかもかなりのことは出たと思いますが、ここで簡単に結論を出してしまうというようなものでないこともたくさんあると思います。
 それで、私の提案でありますが、本日の資料5のうち、左の欄の中小・ベンチャー企業の知的財産を巡る諸問題と、その対応策(案)について、広く国民の一般の皆様から御意見を伺うことにして、パブリック・コメントの手続に付したいと思います。
 ただし、ただこれだけ出しては、いろいろ誤解があることもありますので、本日の議論も是非反映させていただくということで、これは手直しをしてからというと、非常にある種の結論に持っていくというのは、今の段階では、私はかなり時間がかかりますし、困難なこともありますので、とにかく皆様の御意見も付して、むしろパブコメに出して、率直な御意見をいただくということがいいのではないかと思っております。
 すなわち、本日の御議論を正確に反映させるという意味で、議事録を案に添付して公開して意見を聞くことにしたらいかがかと思いますが、これは前回も付けていただいた方がいいですね。

○小島事務局次長 はい、勿論。

○阿部会長 前回と今回の議事録を付けて公開をしたいと思いますが、いかがでしょうか。 では、それは御承認いただいたことにさせていただきますが、併せて多分委員の皆様はまだおっしゃりたいことが残っているかもしれませんので、パブコメに並行して追加意見のメモを、もうおっしゃったというんではあればいいですけれども、メモを出した方がいいというお考えの委員の方がいたら是非お願いしたいと思いますし、参考人の方につきましても、前回で出た方を含めますと8人になりますが、併せて追加メモを出していただきたいと思います。
 そうは言いましても、なかなかどこをポイントに意見を出されたらいいかわからない方もいるかもしれませんので、大変面倒をおかけしますが、事務局には、もう一度8人の方にインタビューしていただいて、今日の結果、前回の結果も踏まえて、再度意見聴取をしていただいて、少し整理していただく作業をしていただきたいと思いますが、皆様御協力いただけますでしょうか。
 多分、今日言い残したということがたくさんおありになるんじゃないかというふうに感じましたので、そういうふうに事務局に大変ですけれども、頑張ってもらいたいということです。
どうですか。

○小島事務局次長 事務局の方で、先ほどの参考人の方々にまた御意見を伺うということをやらせていただきます。
 それから、1点だけお願いがあるんですが、先ほどの議事録、前回の分はもう公表されていますけれども、今回の議事録を公開するに当たって、発言された方に御確認を取る必要がありますので、時間の関係で誠に恐縮ですけれども、今回は超特急でやらせていただきたいと思います。2〜3日で確認を終了させていただきたいと思いますので、ちょっとうるさくお願いしますけれども、よろしく御協力をお願いしたいと思います。

○阿部会長 それでは、そういうことで、議事録の確認については御協力をお願いしたいと思います。
 また、事務局にはパブコメの手続をよろしくお願い申し上げます。
 また、前回も申し上げましたが、これまでの2回の議論とパブコメの意見を踏まえまして、事務局において、委員の方と、それから関係省庁ともすり合わせをしていただいて、報告書の案を作成していただきたいと思います。よろしゅうございますね。
 それで、私としては、余り意見を申し上げませんでしたけれども、やはり中小企業から知財がたくさん創造されて、それが産業につながっていくことが日本の活性化であるという点を、ただしいろいろ難しい点がありますので、何人かの委員の方もおっしゃったように、是非知恵を出すという方向でお願いするということで、今後の報告書につなげていただければと思っています。
 それでは、次回の専門調査会についてお願いします。

○小島事務局次長 次回の会合は、4月14日の14時〜16時に本日と同じ場所で行いますので、よろしくお願いいたします。

○阿部会長 次回は、先ほどの報告書案について御報告申し上げるとともに、これまで本調査会で議論していただきました事項についてのレビューをして、その進捗についてもチェック、御議論をいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、あとは事務局にバトンタッチします。

○小島事務局次長 先ほどの繰り返しになりますけれども、議事録の確認についてはよろしくお願いします。
 それから、また委員及び参考人の方々には、事務局の方から連絡を取らせていただきますので、よろしくお願いします。うるさいとお思いかと思いますけれども、よろしくお願いします。

○阿部会長 それでは、これをもちまして会議を終了させていただきます。特に参考人の方、本当にありがとうございました。