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 トップ会議等一覧知的財産戦略本部権利保護基盤の強化に関する専門調査会 [印刷用(PDF)]


第11回権利保護基盤の強化に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成17年3月1日(火)15:55〜17:57
2.場 所:知的財産戦略推進事務局内会議室
3.出席者:
【委員】阿部会長、久保利委員、下坂委員、山田委員、吉野委員
【参考人】根本参考人、山田参考人、橋本参考人、渡部参考人
【事務局】荒井事務局長、小島事務局次長
4.議事
(1)開会
(2)意見聴取
 
(委員)
(1)山田眞次郎 委員
(参考人)
(2)根本特殊化学(株) 根本郁芳 代表取締役社長
(3)(財)大田区産業振興協会 山田伸顯 専務理事
(4)東京都知的財産総合センター 橋本正敬 所長
(5)東京大学先端科学技術研究センター 渡部俊也 教授
(3)事務局説明
(4)討議
(5)閉会


○阿部会長 それでは、ちょっと時間前ですけれども、先生方お集まりいただきましたので、これから「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」、第11回となりますが開催させていただきます。本日は、御多忙中のところ御参集いただきましてありがとうございます。
 座ったまま進行させていただきますが、最初にこれからの段取りについて簡単に御説明を申し上げますと、あらかじめ各委員の先生方には、事務局から説明がいっていると思いますけれども、今日とこの次の3月15日の専門調査会では、中小・ベンチャー企業の知的財産に関するさまざまな問題について御議論いただくと、そのために参考人の皆様に御出席をいただきまして、問題点と解決策などについて御提起をいただいて御議論をいただくというふうなことを考えております。
 次々回になりますが、4月14日の専門調査会にこれからの2回分のとりまとめをした上で、4月14日の専門調査会に御報告をさせていただくと、併せて4月14日の専門調査会におきましては、これに限らず知的財産推進計画の改定2005の作成に向けまして、これまで本調査会で御議論いただきました事項についてレビューをしていきたいと。これまでの推進計画の中身がきちんと実行されているかどうかのチェックもさせていただいて、実行が不十分なものがあれば、また追加すべきものがあれば、それぞれ要請を行うことも考えているところでございます。
 そういった段取りでこれから進めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 さて、本日は、山田委員及び4人の参考人の方々から、また次いで事務局から、中小・ベンチャー企業の知的財産に関する問題点や解決策について説明をしてもらいまして、その後にまとめて意見交換の時間を取らせていただきたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
 本日は、実は委員の先生方、風邪がはやっているせいか欠席が多くて、風邪でない人もいるのかもしれませんが、伊藤委員、高林委員、竹田委員、中川委員、野間口委員はやむを得ず御欠席との御連絡をいただいております。それでは、今日はお忙しいところをおいでいただきました4人の参考人の方々を簡単に御紹介させていただきます。
 根本特殊化学株式会社の根本郁芳代表取締役社長さんでございます。よろしくお願いいたします。
 財団法人大田区産業振興協会の山田伸顯専務理事さんでございます。よろしくお願いいたします
 東京都知的財産総合センターの橋本正敬所長さんでございます。よろしくお願いいたします。
 東京大学先端科学技術研究センターの渡部俊也教授でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 まず、既に御案内申し上げましたように、山田委員及び4人の参考人の方々から御発表いただくわけでありますが、大変恐縮ですが意見交換の時間をたくさん取りたいので、5分ずつぐらいで御説明をいただきたいということでお願いを申し上げます。
 まず、山田委員から、よろしくお願いいたします。

○山田委員 それでは、この紙に従いまして、問題点の提起ということで、特許庁の方の問題ということで、これから日本の中小企業、あるいはベンチャーに期待されることは何かというと、やはりアメリカ同様、シスコ、マイクロソフト、デルといった大きな産業をつくり出す新しいベンチャーが出てくればいいということが期待されると思うんですけれども、そういった会社が考え出す技術というのは、非常に新しい概念であると。それをなかなか、ある意味では現状の特許庁で判断できないのが問題ではないかと思います。
 実際、そういった新しい概念というのは、例えば、今までにないものを出してきますから、それを判断するときに、今までの審査官などではなかなか判断できないんではないかと思います。
 2番目としましては、これはいつも言われておりますけれども、まず拒絶するというスタンスを、むしろ拒絶するのではなくて日本がせっかく出すものですから、日本の財産として早く特許にしてあげるという体制が取れれば、いずれにしても、自分の国に早く特許とすれば、日本の知的財産というぐらいですから財産になりますから、早く財産にしてあげると。
 どうすれば財産になるかということを教えてあげるぐらい、やさしい特許庁になっていただければと思います。
 その意味では、技術は現在ドックイヤーと言われているぐらい、非常に早く技術が進んでしまうと、したがって、長い間審査を待っていると、ビジネスチャンスを失うこともあるわけです。これは何回も言われていることですけれども、早く、スピードよく審査していただくということが望ましいと。
 もう一点、中小企業にとって、私自身もそうですけれども、明細書の中身の日本語が難しい、難解であると。これは、ある意味で弁理士の方にもそうなんですけれども、クレームなんか、請求範囲、それを書くときに、特許になりやすいように請求範囲が小さくなって、だんだん最後は自分たちがわからないうちに小さくなっていると。ただし、特許は取れるということが結構多いんです。そのときに、余り難解だとその範囲が読んでいてもわからないんです。ですから、これはどうして欲しいかわからないんですけれども、もっと簡単な言葉なのかどうかわからないですけれども、難解であるということです。
 それと、審査官、弁理士の問題ということで書いてありますけれども、なかなか先ほどと同じように、新しい技術、新しい概念に対して理解ができないということが1つの問題です。
 これから日本は、先ほど言いましたように、全く新しいものを生み出す、従来のよその国からならってきたものを、その周辺特許を取って生きていくということではなくて、全く新しい概念を生み出して日本の財産にするという時代になりますから、そういう時代に備えてそれをちゃんと理解するということをしていただきたいと思います。
 ただ、姿勢がないかと言ったら、そうではなくて、私の会社の例なんですけれども、審査官の方に3回も来社していただいて、親切に聞いていただけるんです。どうなんだということで、その姿勢はあるので、理解する姿勢はあるんですけれども、理解する方も是非育成していただくということが望ましいと思います。
 それと、弁理士の方は、明細書が上手な人は高齢であって、高齢である人がうまいというわけではないんですけれども、大体何回もやっていれば上手になるということなんですけれども、でもその方たちに新しい今の概念を説明するのは、非常に難しいと。それで、若い方は、またなかなか特許にするコツというのが難しいというところで、ここがやはりもどかしいというか、だれが悪いというわけではなくてもどかしいですね。
 それと次のページですけれども、「中小・ベンチャー企業の抱える問題」ということで、これは中小企業がゆえに出願が出しにくい理由は、勿論お金がかかるということが筆頭に挙げられます。また、1年間維持をする費用がまた大変であるということです。
 それと、中小企業たくさんある中で、弁理士の方に発明の内容を十分言葉で伝え切れない。あるいは、絵が描けないとか、言葉で伝え切れないというものも1つの問題だと思います。
 これが一番多いと思うんですけれども、自分の技術が特許性があるのかどうかという判断がなかなかできないんです。いいことをやっているという自慢はするんですけれども、それは特許性があるかどうかという判断です。実際には、これは結構中小のトップに会うと、すごく自慢して、こんなものができるんだと言われるんですけれども、その中で特許になるものかどうかというのがわからないというのが問題だと思います。
 それともう一点は、出願の仕方がわからないと。
 先ほども言ったように、是非これらの中小企業が考えることも日本の財産ですから、何とか日本の財産に登録してあげるという姿勢がほしいと思います。
 それと、外国出願は資金的な余裕がなくて、まず国内出願と、外国も逆にどこに出していいかもわからない程度が、普通の中小ではないかと思います。
 それとこれは、ちょうど昨日も毎日新聞に出ておりましたけれども、技術とノウハウは中小と一緒にやると取られてしまうと。これは、中小企業と大企業が仕事をする場合は、どちらかというとやはり下請け的に仕事をすることが多いわけです。対等ではなくてですね。そうすると、やはり力の関係で仕事が欲しかったら全部見せろということになるわけです。あるいは、契約書も非常に上手な契約書で、後になると効いてくるという。これは多分わからないと思います。ある意味で大学の先生になるようなぐらいの知財のプロの方が書かれた書類を、我々が見ても多分わからないですね。もうだまってサインするだけと、お金が欲しかったらサインしなさいという形になると思いますので、これは訴訟しても勝目はないし、訴訟すれば、逆に知財の担当というのは、中小の場合は社長ですから、やったらやったで、自分でやったらもうつぶれてしまうというのが、これは結局訴訟になれないし、やられたら必ず負けるという状況になるので、中小育成のためには、やはりそういったものに対しても、保護という言葉はおかしいかもわかりませんけれども、何らかの形で公平に見て上げるという体制が欲しいです。
 あと水際の対策で、これは特許権侵害品の判断ということで、これは高度な専門的、技術的知識が求められると。昨年ですけれども、文房具の会社の社長さんが参考人で来られていましたけれども、中小企業は海外との知財の紛争をするのはほとんど不可能だと思います。そういう意味では、やはり裁判所というよりも、そういった簡単に判定していただける機関といったものが利用できれば、非常にありがたいと思います。
 それと、偽ブランド品、個人が持つのはOKということになっていますけれども、ソフトをコピーしてはいけないということを、例えば、水際で言い始めたわけです。それが秩序を生んだわけです。それと同じように、偽ブランド品を持ってはいけないという秩序を生むためにも、個人の持つものはだめだということを、偽だと知っていて持つのはだめだという、そういったものを法律で禁じるということも1つの案ではないかと思います。
 これは前にも話しましたけれども、営業の秘密を海外で漏らすわけです。例えば、アジアの国に行ったりして漏らすと。これは、刑事罰の対象になったので、非常にいいことだと思うんですけれども、実際に一度是非そういうものを摘発するということをやれば、一回で止まると思うんです。それはなぜかというと、漏らす人は非常に高度な技術者なんです。高度な技術者というのは善良な人たちなんです。その人は軽い気持ちでやっているんじゃないかと思うんです。ですから、それを一回摘発して、その人はかわいそうかもわかりませんけれども、実際にそういうことを摘発するということが、すべて一瞬で止まるんではないかと思いますので、そういったことが必要かと思います。
 長くなりましたけれども、以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。的確に御指摘いただきました。
 それでは、参考人のトップとして根本社長、恐れ入りますが5分ということでお願いします。

○根本参考人 夜光塗料をつくっております。根本でございます。私どもは実際の事例を中心にお話させていただきたいと思います。
 私どもの新しい夜行塗料は、1993年に開発したものです。従来の夜光塗料は放射性物質を入れないと光らないというものだったんですけれども、これを入れないでも十分実用にたえられるものができたということで、大変評価していただきまして、いろいろな賞をいただいたりしたわけでございます。しかし、その権利を取得するのには、その後大変長い時間がかかっております。日本では、3年2か月かかりました。それから、米国ではこれが最短でしたが2年1か月かかりました。中国は一番長うございまして、11年かかってようやく苦労して取ったというところでございます。
 また、日本の中で大変残念ながら、ある会社がどうしてもいろいろと出しゃばって見えるものですから、訴訟を起こしまして、その訴訟にかかる時間も大変長いと。1審に勝訴しましたのが、3年5か月かかりました。それから、更に控訴され、2審で1年7か月かかり、都合で5年かかりました。そういうことをしている間は、差し止めとかは何もできませんので、いろんな意味で市場の方で問題が起きました。こういう値段で売れば、十分従来かけた費用も償却できるかなと思うものが、だんだん値段を下げてやられますから、開発投資を回収する暇もないと。取り返すにも大変時間がかかるというものでございました。
 そういうこともございますので、ある程度、特許を取ることについては、大体部分改正されてきたようですので、短くなっていくんだろうと思いますけれども、訴訟を実際起こした場合でも、ある程度そこで何らかの中間的な強制力を持ったような形でのやり方ができないのかなと思います。2審が終わらないといけない、あるいはさらに上告されたら、もう完全に20年間の特許期間というのはなくなってしまうわけです。そういうことですので、特許がこのテーマであります権利保護の基盤というものが、どういうふうに強化されていくのか、大変私も興味深く見ているところでございます。
 それから、損害賠償の件につきましても、実際の損害賠償とは大分違いまして、私の場合で言いますと、2億円の損害賠償を請求しまして、1審で1億円の賠償を決定していただいたんですが、2審に行きましたら5,000 万になってしまいました。5,000 万では本当に、俗な言葉で言うと元が取れないわけでして、それまでかけた開発費用はもちろんのこと、特許を取るための費用、あるいは訴訟のために用いた費用、そういうものを考えますと、大変なロスでございます。こういう賠償額の問題についてももっときちんと、どう言いましょうか、権利を保護する意味でのきちっとした金額が請求できるようにならないものだろうかと思っております。
 先ほど言いましたように、特許というのは20年間でございますから、その中でもう既に私どもは十数年経っておりまして、あと7、8年となった現在、ようやくこれから本当に特許を活用した仕事、販売ができるようになったというのが実態です。
 また、お陰様で、アメリカ向けも、ヨーロッパ向けも大変順調に量が増えていっているところでございますけれども、値段の問題では、これはまた中国のものがどうしても出ていってしまうものですから、そっちの方で安いものが出ていって、私どもの方の値段を下げさせられるという形にも相なってきておりまして、大変苦労しているところです。
 それと、安くなると同時に、期間が短いものですから、短い間に回収するということは時間と金額の両方の要素で攻められておりまして、これも問題だと思っております。
 もう一つは、訴訟費用の問題ですが、これも私どもたまたまですけれども、前は特許に対する保険がございました。その保険を、ちょうど最後の段階だったんだろうと思いますけれども、一応保険料を払い込んでおりましたので、裁判の費用についてはそちらから捻出できたわけなんですけれども、現在その特許の保険というのは、もうないのではないかと思います。私どもで最後だと言われておりましたので。もし民間でできないのだったら、何らかの形で公的な保険というものが付けてもらえるような政策ができないのかなと思います。大変、私ども中小企業にとっては、役に立った保険でございました。
 それから、もう一つ、中国の問題。これはもうどちらも困っておられると思います。私どもが中国で取れなかった理由というのは、相手が役所ぐるみのぐるでございまして、いろんな裁判に訴えても、持ってくる資料がみんな役所の判こを簡単に押してもらっているわけです。明らかに偽造された、そういう事実のないものを役所が認めたような判こなんですけれども、これが裁判になると有効に中国内では生きてくるということでございます。これはさすがにヨーロッパの方では証拠として採用されませんでしたので、うまく整理できたわけですけれども、そういう問題ですから、今も新聞等によりますと、中国に対しては相当強い姿勢で日本政府も臨まれているようですけれども、もっと更に強い方法で中国に対しては出していってもらわなければいけないのではないかと思います。
 以上、簡単ですけれども、事例をお話し申し上げました。

○阿部会長 ありがとうございました。具体的なお話いただいたと思います。
 それでは、お二人目は、山田専務理事さん、よろしくお願いいたします。

○山田参考人 大田区というところは、精密加工の企業が多いということで、従来下請け企業の形態だったんですけれども、とてもそういう形では食えないということで、最近では非常に独自性のある製品づくり、あるいは技術開発に関わっている企業が多くなりました。中小企業の事例を幾つかここに持ってまいりました。
 今日は、時間の関係もございますので、主な事例としては大企業との関係。あるいは、海外企業等の事例。それから、明細書関係で弁理士さんとの問題。あるいは、大学等の事例、制度に関する事例等々がございますけれども、その中で大企業の事例の中で、3つほど具体的にお話を申し上げます。
 A社というのは、冷凍チャックという方式で、凍結液を加工物を付着させるのに使う。つまり研削盤のような動くものに、マグネットでもって付着するものは別として、通常ほかのものですとなかなか付着できないわけです。それで加工が難しいと。これは、17℃で凝着するという液を使って、システムとして機能する冷凍チャックを編み出したわけです。この技術は非常に脚光を浴びているものですから、なかなか企業としてもこれを大事にしたいという面があって、ライセンス契約をきちっと取り交わしてからでないと販売しないという方針を取っています。既に販売されているのですけれども、中にはそれはもう冗談じゃないということで、ライセンス契約を拒否する企業も多々あると。
 最近の事例では、かなりの大手なんですけれども、ほぼ同趣旨の特許を現在出願しているということです。それも内容的には、「この冷凍液を介在させる」という表現を、「冷凍液に浮かべた」という表現に変えて、そのほか請求項を幾つかちりばめて、同じような特許を出しています。これに対しては、私どもの総合法律事務所を通じていろいろ相談に預って、審査官に対する情報提供をしようということで、今、動いているところでございます。
 2番目のB社の事例でありますけれども、B社の事例は比較的有名でありまして、もう特許を取ってから10年は超えていると思いますけれども、ここにありますように、プルトップ缶です。ブリキの缶詰でありますけれども、これを開けると、ここのところで手を切るということで、アメリカなんかではピアニストの指を演奏前に切ってしまったので、数億円の訴訟だということで大騒ぎになるんですが、日本ではなかなか訴訟まで持ち込まないのが実態です。そういった事例を、この金型工である発明者が、もう真剣に取り組んで、見事にはがした途端に全部のエッジが丸まってしまうという構造を編み出して、これを金型で量産技術を確立したんです。これを国際特許として、17か国押えていたんですけれども、日本では特定のメーカーが、この缶の業界については独占しているということで、ほとんどこれはコスト的に合わないということもあって採用しないという線に出てきたんです。
 それで、やむなくアメリカの特許だけを譲渡するという形を取って、ただそのときに販売権を3年間にわたって認めてしまったと。つまり多国の、ヨーロッパ圏の販売権を認めてしまったということで、それで、言わばしり抜けになってしまったということです。
 この企業にとっては、国際特許取得に2,000 万円、年間維持に500 万円かかるということで、とてもじゃないけれどもやっていられないということから、そういったことで、結局非常に画期的な特許であるにもかかわらず、実は今はノーズルになってしまっている。
 今、日本の大手もこれに準じたものをまね出しているということで、今ではまねて普及されればいいやというような、一種の居直りといいますか、泣き寝入りも度を越してしまったというところで、非常に今、諦観しているような状態で、大変に問題があるケースであります。
 E社の事例は、製紙工場でパルプを溶かしていく際に、泡を消すという工程があるそうであります。その泡を消す工程で使う界面活性剤に塩素を一緒に入れるものですから、その二次結合でダイオキシンが発生するという問題が、従来からあったと。
 それで、この方が考えた方法は、塩素を混入させない、非常にうまい処方剤を考えて、ダイオキシン発生を防ぐようなものを編み出したんです。
 そうすると、結構国際的な大手が乗り出してきて、全面的にこれをまねしてしまったということなんですけれども、化学上の素材というのは、耳かき1杯で何を入れたかよくわからないというような世界なので、全く無視されたということで、しようがないと思っていたのです。けれども、昨今、国が知財重視だということから、一度ユーザーに働きかけてみようということで、製紙メーカー側にうちの技術を侵害していませんかという話を持ち出したら、ぴたっと止まったということで、今はこの分野ではかなりこの会社のものが使われているそうであります。そんなようなケースであります。
 資料に私どもの方の総括と要望等が書かれてございます。やはり中小企業にとっては、特許を取るということは大変なことでありまして、一発勝負に近いわけです。そういうところから、現在特許の手数料関係が昨年4月に改定されて、実質的にはあれは値上げです。審査請求量が倍増されたために、年金が安くなっても、請求項の数にもよりますけれども、大体6年ぐらいまでは実質の値上げになっています。中小企業は、短期間で資金を回収しなければならないという立場から言うと、そういうものも、日本の特許を中小企業が担うべき分野として大いに進めるという立場から問題ではないかと。
 それと知財侵害に対する罰則です。これをもっときちっと入れてもらう必要があると。 更に信託業法の改正で、私どももUFJ信託と組んで、特許の信託制度を制度的につくり上げて普及させているところであります。実際に、第1号のケースも今、出てきているところなんですけれども、これの参入障壁の問題でも、我々のような公的機関もこういった信託業法の担い手になるような立場で改正できないかということもお願いしたいということです。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、橋本所長さん、お願いします。

○橋本参考人 資料4に沿ってお話を進めたいと思います。1ページから2ページにかけて、東京都の施策、知的財産総合センターのことが書いてございますが、ごく簡単に言いますと、東京都は平成15年から中小企業の知的財産の活用支援を始めております。都庁の中に会議体としての活用本部があるんですけれども、その施策実施の拠点が、私の属しております、東京都知的財産総合センターだということが1つです。
 それから、センターでやっている主な事業は相談事業。それに加えまして、2ページの方へ進んでいただきますと、シンポジウム、セミナー等の情報提供。3番目に、助成事業としまして、海外特許出願の費用の助成とか、外国侵害調査費用の助成とかをやっているということをまず御理解いただければと思います。
 それで「施策・事業の実施拠点の立場から」ということで書いてございますけれども、相談を預かっていまして改めて確認できたのが、知的財産制度を上手に活用することが重要であるということ。これが、中小企業の経営者の方も、比較的よく理解されていると思われます。これは、決して専門的に詳しいところまで理解しているという意味ではございませんけれども、少なくとも感覚的にはわかっておられる方が多いと、何とか権利を取りたいという方も含めてです。
 しかし、実際にうまく活用されているかどうかということになりますと、大企業とはいささか違ったやり方で、うまく活用されている。見方によっては、物量作戦等が取れない中で、大企業以上に効率的に活用されている中小企業もございます。ただ、その数は限られております。そうした企業でもさまざまな問題を抱えておられるというのは、根本社長のお話からも伺えたかと思います。
 一方、多くの中小企業にとっては活用しようという場合に、ハードルが幾つかありまして、数が多く非常に高いということが言えるんではないかと思います。
 専門家がいない。私どものアンケート調査ですけれども、知財担当者がいる会社が10社に1社でございます。その中で、担当者が専任者である会社が、10社に1社しかありません。ですから、100 社に1社ぐらいしか専任者がいないということです。
 どうなるかと言いますと、社長さんが経営者でもあり、営業部長でもあり、研究開発部長も兼ね、知財担当もやっている。一人何役かをこなしている会社が結構多いということでございます。
 それから、費用が結構高い。日本の特許を取るだけでも、弁理士費用が払えないから自分で明細書を作成したいという会社も結構ございます。中には、三十数回私どものセンターにお見えになって、自分で明細書を書かれた方もおられます。決して効率よくありません。ただ、一歩ずつでもその会社が力を付けてもらうということが大事かと思っております。
 それから、独自の技術開発力に限界を感じておられる会社もございます。いろんなことをお勧めするわけですけれども、産学官連携なんかもその1つでございます。ただ、あとでもうちょっと時間があれば触れたいと思いますけれども、反応は必ずしも芳しくございません。
 もう一つ申し上げたいのは、資格のある専門家とのコミュニケーションも、決してよいとは言えないということがございます。これは、中小企業側にも、先ほど山田委員が指摘されたような問題点がありまして、もうちょっとよく勉強してわかりやすく説明しなければいかぬところが勿論ございます。ただ、やはり資格のある専門家側も、中小企業も重要なお客さんだということで、もう少し親切な方が増えてほしいと思っております。
 そういうことで、現在の状況では、多くの中小企業にとっては、いろいろ努力してみても、知的財産政府は残念ながら「絵に描いた餅」となると、せっかく知的財産立国と言っておきながら、蚊帳の外になってしまう懸念があるんじゃないかということも感じております。
 それから、地方自治体という立場からは、実行できることを一つひとつスピード感を持って実施しつつはあるんですけれども、やはり制度面を中心として国との連携が不可欠であると考えておりまして、推進事務局とは常に情報交換させていただいているという現状でございます。
 それから、相談の7割ぐらいが特許実用新案の相談です。1割ぐらいが商標です。産業財産権というのは、非常に相談件数が多いものですから、中小企業、ベンチャー企業の皆様へと、ここにございますが、この小冊子に関連して少しお話をさせていただきたいと思います。
 これは、特許庁、中小企業庁でつくられたもので、大変コンパクトでわかりやすいですし、私どものセンターにもパンフレットを置いて、必要に応じて説明をさせていただいています。トップページには「料金減免制度」「特許先行技術調査支援」「早期審査制度」という3つを標題として挙げられています。
 ざっと見ますと、支援メニューは大変充実しているように見えます。たくさんあります。ところが、中小企業の目線で見ますと、たくさんあるけれども、問い合わせ先が多岐にわたっています。それぞれ違います。恐らく、東京都内の方だとまだいいんですが、地方の方だと問い合わせることすら躊躇されるんではないかと思われます。
 だんだん見ていきますと、いろんな手続が面倒です。特に今日は山田参考人も触れられました「料金減免制度」を取り上げたいと思います。表紙には、中小・ベンチャー企業であれば、審査請求料、特許料等が安くなると書いてあります。でも、中を読みますと、その説明がこんな量のページです。これでも、どんな書類が必要かはまだわかりません。だんだん読んでいるうちに、これは中小企業といっても、我々は対象とならないなと、手続も面倒でとても大変だと、多分弁理士の先生も、余りこれは説明されてないと思います。なぜそういうことがわかるかと言いますと、弁理士の先生から、職務発明規則のいいひな形ありませんかと問い合わせが幾つかあります。聞いてみると、この減免申請をするときに、多分、職務発明規則か何かを添付しなければいけないとのことです。
 それから、実質的な支援となっているかどうかということなんですが、資格のある専門家による相談、都内にも結構ございます。でも、どういうわけか最近は私どもの方へ振られてくる相談が結構多いし、弁理士さんの相談では、かなりいろんなトラブルがございます。これは、細かく説明いたしません。弁理士会のパテント誌の11月号に私が書いておりますので、それを御参照ください。くれぐれも中小企業が気軽に相談に行けるところ、親身になって相談に応じていただけると。そういう先生方が増えていただきたいと思っています。
 済みません。悪口ばかり言いましたが、「早期審査制度」、これは非常にうまくいっております。数か月で権利が取れたと大変喜んで報告をしていただく会社が複数ございます。すぐに自分で事業化を考えるなり、ライセンス先を探すなりという活動を始められますし、現にライセンスを受けることに関心があるという相手が見付かったという事例、あるいは、実際にライセンスを受けたいということで条件の交渉もまとまりつつあるという事例も出てきております。
 そんなことで、大変身近な例での説明ですが、あといろいろ書いておりますけれども、また何か質問があれば補足をさせていただきたいと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、渡部先生、お願いします。

○渡部参考人 大学におりますけれども、技術移転とか、大学発ベンチャー育成をやった立場で、少し意見を述べさせていただきます。紙がございますが、ちょっと長々書きましたので、少しかいつまんでお話をいたしますと、中小企業・ベンチャー、これは大企業も同じですけれども、知財問題は基本的に企業が行うべき知財マネージメントのどこかがうまくできなかったときに、機会損失を招くという構造です。
 図の1のところにありますが、特許の場合は研究開発、権利化事業を行って、時系列的にはその後に紛争が来ることになります。紛争まで来てしまいますと、これはもう取り得るオプションは限られております。紛争に至った場合には、中小企業の場合、あるいはベンチャーの場合は、ともかく早く明確な結論を出していただくということしかないわけです。実態的にそれに頼る以上に重要なのは、リスクマネージメントとして研究開発段階から行っていないといけないものが非常に多い、大企業はそれは行っていますが、中小企業はここが弱いという認識をしております。
 例えば先ほども出てきましたが、共願の特許は非常に危ないわけでありまして、自分の持っている知財が共願になることによって、相手側の実施が自由になるというケースがあります。これは、相手が大学であっても、大企業であっても同じであって、その前に出願するものは出願しないといけないし、手を打たないといけないわけですが、必ずしもそういうことが行われていなかったり、あるいは権利化をするときに、早期審査請求のオプションが使えるかどうか。特許制度は、必ずしも中小企業にとってはわかりやすいものではありませんから、そういうことが御存じなければ、その機会を逸してしまいます。特許のクレームの範囲にしても、縮減を重ねていって、それが何の事業に使われるのかを前提としないで権利範囲を狭めてしまいますと、結果的には全く意味のない特許になる。ただし、そうなっても気が付いていない中小企業事業者の方は、結構多いです。AとBとCから成る組成物ということで、これは自分の製品をカバーしているんだろうとずっとずっと思っておられて、実はCという物質は入ってなくても製品は遜色ないんですということを言われていたので、それではこの権利範囲に入っていませんよということを、人から言われて、私がそういう話をして初めて気が付かれる方もおられます。だれかが、そこまで来るまでに、そういうことをわかっていただくようにしないといけなかったわけで、そういう機会をつくって上げないといけないということだと思います。これは、大企業−中小企業、大企業−大学も実は同じて、大学との問題というのが、今、結構指摘が多くなっております。これも大企業、中小企業、両方問題があるわけですけれども、現在、大学の知的財産管理活用体制というのは、企業側の要請に従って一元的、しかも企業の行っている知財マネージメントとなるだけ同じような形でマネージメントするということが実現しつつあるということにおいては、正しい方向と思いますが、2つの点で幾つか齟齬があるということです。
 1つは、コミュニケーションが不足していると。先ほど橋本さんの資料でしたか、契約をしない限り教授と話もできないということは、多分実態的にはないはずだし、そういうようなコミュニケーションの問題もありますが、1つにはやはり中小企業側の方が、実際比較的未熟な技術、大学の技術というのは未熟な技術ですから、それを受け取って、それを事業にするということの経営資源が必ずしもない場合にリスクがあるわけです。そのリスクを吸収するマネージメントができないということでありまして、そこはこの紙の中では、図の2に書いてありますけれども、実際細かく考えていきますと、結構大学の技術を中小企業者に移転するというのは、かなり難しいことです。これは、もともとは、大企業との関係で言えば、比較的基礎研究所もあって、そこの人たちが技術を理解してということがあればいいわけですけれども、中小事業者の場合は、現場に非常に近いところのファンクションしかないと、そこに技術を移転して使えるようになるというのは、実はかなり難しいことで、そこには中間的な機能を果たして上げるという工夫が必要だと思います。それが1点、これは中小企業のアブソーティブ・キャパシティーの問題というふうに、この中では称しています。
 それから、もう一つ、大学側も、やはりマネージメントが必ずしも上手にできていない部分もあるだろうということで、ここで御提案をさせていただいているのは、例えば、中小事業者が、いろいろな新しい技術を持って、それを本当に自分の商品として使えるかどうかということを試作してマーケティングするみたいな機能というのを、本来であれば公的研究機関、あるいは公設試験所などが行うべきですけれども、そこが生産的に効率がよくそういう仕事が行われてない場合外部にマネジメントを委託する。ここではアメリカのGOCOを例に取り上げていますけれども、外部にマネージメントを任せてでも、中小事業者のためにそういうことを担う機関をつくっていく必要があるのではないかということを書かせていただいております。
 その他、知財に関する情報提供システムということで、中小事業者にとっても、大学発ベンチャーにとってもそうですけれども、インフォーマルな情報ネットワークというのが最も重要で、どの弁理士さんがいいとか、どの大学の、どこの窓口がいいとか、そういうことは公開情報ではなかなか難しいので、こういうインフォーマルな情報ネットワークのハブになり得る機関をきちっとしていく。これは大学周辺、あるいは地域でつくっていくということが必要だと思います。
 以上、簡単ですけれども、説明させていただきました。

○阿部会長 内容は盛りだくさんのようですけれども、どうもありがとうございました。
 それでは、次に事務局から資料について説明をしてもらいます。

○小島事務局次長 それでは、資料6と資料7について御説明いたします。
 まず初めに資料6は、森下本部員からの意見書でございます。ごく簡単に説明しますと、森下本部員の意見は、1ページの「1.中小企業・ベンチャー支援の拡充」ということで、1ページの一番下にありますが「(4)米国のような一部継続出願制度の導入」、次のページの「(5)拒絶理由通知への応答期間の延長」「(6)外国語書面出願の出願費用の減免と翻訳期間の延長」「(7)図面の代用となるカラー写真の利用」等々、制度改善が必要だというのが1点。
 それから、3ページ「2.産学連携の推進」ということで、これについても「(1)大学からのベンチャーへの出資」を認める、「(2)ライセンス料の目安、事例の公開・調査」等々の制度の拡充が必要だというのが、森下本部員からの意見でございます。
 時間の関係で急ぎますが、次に資料7「中小・ベンチャー企業の知的財産を巡る諸問題」でございます。この資料は事務局において中小・ベンチャー企業、その他の有識者の方からいろいろヒアリングをさせていただき、そこで提起されました意見、また、さまざまな機会に事務局へ寄せられた要望や意見、それから、経済産業省が行った、中小企業へのアンケート調査で摘出された問題等々を、この資料にございますように、知的財産の創造・保護・活用の分野ごとに分類し整理したものでございます。
 資料について簡単に御説明いたします。
 まず1ページ「1.創造分野」でございますが、「(1)産学連携における問題・障害の解決」ということで、「1)大学知財本部とTLOとの関係の明確化や対応窓口の問題」です。その下に「意見例」を取り上げておりますので、ちょっと目で追っていただければと思います。
 「2)大学やTLOの契約内容や契約実務における硬直性の問題」。
 2ページにまいりまして「3)大学やTLOの契約実務を行う事務体制の問題」。
 「4)大学やTLOのライセンス料、着手金等の問題」。
 「5)大学やTLOにおける技術漏洩の問題」。
 2ページの「(2)産学連携の円滑化」を図るべしという御意見として、
 「1)大学と中小・ベンチャー企業との橋渡しに関する問題」。
 3ページに参りまして「2)大学における特許情報へのアクセス機能強化の問題」。
 4ページに参りまして「2.保護分野」でございますが、「(1)特許庁の審査姿勢」として、
 「1)新しい技術概念が認められない、権利範囲が明確でないなどという特許審査に係る問題」。
 「2)特許審査の待ち時間が長すぎるという問題」。
 「3)特許出願明細書の記載等が難解であるという問題」。
 5ページに入りまして「(2)利用者側に立った制度等の改善」が必要だという意見として、
 「1)出願・審査における負担に係る制度上の問題」。
 「2)特許電子図書館(IPDL)等の検索機能の強化の問題」。
 6ページに入りまして「(3)中小・ベンチャー企業に対する支援」として、
 「1)出願料・審査請求料・特許料等の費用負担の問題、減免申請手続の問題」。
 7ページに入りまして「2)海外特許出願に際しての手ほどきや相談についての問題」。
 「3)海外特許出願のための弁理士費用や翻訳費などの費用負担の問題」。
 「4)先行技術調査の費用負担の問題」。
 「5)優れた弁理士が見出しにくい適切な弁理士情報を提供する機関が必要という問題」。
 8ページに入りまして「6)経営・事業戦略と知的財産を併せ指導できる専門家が不足しているという問題」。
 9ページに入りまして「(4)国内における知的財産権侵害対策の強化」として、
 「1)大企業が中小・ベンチャー企業の知的財産を尊重しないという問題」。
 「2)大企業から知的財産権侵害を受けた場合の相談窓口・対応窓口がないという問題」。
 10ページに入りまして「3)大企業が優越的地位を乱用し、中小・ベンチャー企業の技術を模倣・盗用するという問題」。
 11ページに入りまして「4)大企業との取引における知的財産の保護について、公正取引委員会のガイドラインが必要、3倍賠償制度や立証責任の転換などが必要という問題」。
  「5)MSDS制度により流出の恐れのある中小・ベンチャー企業の営業秘密の保護の問題」。
 12ページに入りまして「(5)海外における知的財産権侵害対策の強化」として、
 「1)模倣品の判定や輸入差し止め決定のために技術を専門的に判定する審議機関・判定機関がないという問題」。
 「2)模倣品・海賊版の個人輸入・個人所持を禁止・差し止めるための制度がないという問題」。
 「3)海外での模倣品被害対策に対する支援の必要性の問題」。
 13ページに入りまして「4)模倣品被害対策についての国内での相談や対策支援の強化に関する問題」。
 「5)在外公館での模倣品被害対策に対する対応強化に関する問題」。
 14ページからが「3.活用分野」でございます。
 (1)地域における知的財産権の取扱いに関し、「地方自治体が保有する特許等は活用しにくいという問題」。
 (2)公共調達の問題として、「1)地方自治体が模倣品を放置するなど知的財産意識が低いという問題」。
 「2)国・地方自治体の調達において、知的財産を用いた先進的製品が一般競争入札から外されるという問題」。
 15ページに入りまして「3)国・地方自治体の調達において、中小・ベンチャー企業による知的財産を有効活用した製品が調達されてないという問題」。
 (3)は、知財による資金調達の拡大の関係でございまして、知財信託の拡充、知財担保融資の円滑化、知財保険の導入等の問題ということです。
 以上でございます。
 それから、お手元に参考資料といたしまして、ちょっと厚い資料があろうかと思いますが、中小・ベンチャー企業における知的財産の活用方策に関する研究会報告書ということで、現在財団法人の知的財産研究所がとりまとめ中の、暫定版でございますけれども、今回の議題に関係がございますので、この報告書のうちの要約と、それから後ろの方にアンケート調査を実施しまして、個別企業からの回答集が載っておりますので、その回答集を添付しております。御参考までにご覧いただけたらと思います。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは、全体について議論の時間に入りたいと思います。山田委員及び参考人の方々からさまざまな御指摘をいただきました。それらを踏まえまして、資料7に入っていることもたくさんありますが、入ってないこともたくさんありますけれども、資料7を土台にして御議論をいただくのがいいのではないかと思います。
 資料7といっても非常に量が多いですので、これは創造分野、保護分野、活用分野に分かれていますので、とりあえずこれを3つに分けて御議論をさせていただきます。
 まず、資料7の1ページから3ページが創造分野でありますので、これについて皆様から御意見をいただきたいと思います。参考人の方も是非一緒に入っていただければと思います。
 それでは、どなたでも結構でございますので、御発言をいただきたいと思います。
 どうぞ。

○下坂委員 GOCOというのを創設すべきという御提案があるんですが、これは余り良く知らないのですけれども、アメリカでは古くから行われているというものですか。

○渡部参考人 多分、30年ぐらい前から、制度的には軍事研究所みたいなところは、コントラクター・オペレーティド、国の施設ですけれども、民間に運用を任しているいうやり方だと。この話は、もともと公設とか、公的研究機関を、いかに中小企業のためにということを考えたときに、ヨーロッパで、フラウンホーファー・ゲゼルシャフト等、公的研究機関が、民間的な運用をしながら、中小企業に技術移転をしていくということがあって、これを日本の現在の公的研究機関などにあてはめて制度的にどういうふうに説明するかということで、こういう表現を使っています。アメリカでは、昔からそういうものがあると。ただし、それを組織全体に適用させることが適切かどうかということで、一部そういう運用もあるのではないかということです。

○阿部会長 よろしいですか。

○下坂委員 ここをインキュベーションとして産業に直結させる研究をするということでございますか。

○渡部参考人 途中で申し上げましたように、中小事業者にとっては、大学の技術をそのまま論文があって、小さなサンプルがあるという状態で受け取って、それを事業化するというのは、かなりギャップがありますので、その間をかなり丁寧に面倒見ていってあげないといけないと。具体的には、試作ラインぐらいがあって、試作品がつくれて、それでマーケティングして、自分の事業になるかどうかぐらいまではやらないといけないわけです。それは、今の国のナショナル・イノベーション・システムの中では、公的研究機関、あるいは公設試験所などが相当するのかと思いますが、いろんな整備が各地域にありますので、それがその国のものであるがゆえに、あるいは公的な設備であるがゆえに、きめ細かな運用ができてないということを改善しようという考え方です。

○阿部会長 どうぞ。

○橋本参考人 このTLOとか知財保護の関係ですけれども、やはり組織が複雑になれば、なるほど、物事はスムーズに進まないということではないかと思います。特に日本においては。
 それで、文科省の委員会でも、アメリカのTLOなどは、インベンション・ディスクロージャーの受け付けから、ライセンスまで一気通貫でやっていますと、そうでないとうまくいかないんではないでしょうかと申し上げたんですが、これはTLOの中でも大学TLOと地域TLOがダブルに絡んだだけで、今までよりやりにくくなったという点もあるわけですから、余り機能がここが足りないから、更に追加するということは私は賛成いたしません。
 それから、大学の発明が中小企業には利用できないという話ですが、一方では知財本部あるいはTLOの私の友人からは、いろいろやってみたけれども、やはり我々のお客さんは中小企業だと、中小企業に相談してどうかと、こういう問い合わせもあります。どこか何か矛盾しているのかなという感じもいたします。

○阿部会長 これは私が発言するのがいいかどうかわかりませんが、TLOは特に国立大学の場合は、法人化される前のスキームでつくったということもあって、今の知財本部とどううまく調和させていくかというのは、どこの大学もうんと苦労して動いているところですので、多分もうちょっと時間かかるんではないかと思います。いろんな不便な事例が過渡期の中では起きていると思いますが、2、3年経ってもだめだとなりますと問題なので、そこは各大学の努力が第一ですけれども、政府として何かやっていくことがあればやっていくべきだと思いますけれども、なかなか難しい。どこの大学も、いろいろ知恵を出して苦労しているようですので。

○渡部参考人 誤解のないように申し上げますが、同じ機能を複数の組織に担うのはあり得ないことで、それが混乱の原因になると思います。必ずそれぞれの機能は明確に役割を分担しないといけません。TLOと知財本部の場合は、それが過渡期では若干ありますので、混乱はあるかもしれませんが、TLOと知財本部は同じ仕事をしないという明確なポリシーを持っていることに関しては、御指摘のように非常に評判はよいのではないと思います。
 先ほど私が申し上げたことは、例えば、試作をするという機能はTLOは承認事業の対象となっておりませんので、これは承認TLOの事業としてはないんです。そこをもう少し丁寧にやってあげようということで、重なるようなことを考えているということではないということです。

○阿部会長 いかがでしょうか。

○吉野委員 これはうまく行っているケースもあると思うんです。なかなかうまくいかないケースと、全体としてどんな状況なんですか。

○渡部参考人 やはり、技術分野とか、今、TLOについては経産省のアンケートをたまたま私の方で設計したものをやっておりまして、TLOさんに言わせると、この業界の成長見通しということをお聞きしました。
 それで、毎年20%成長するという非常に明るいTLOもあれば、20%で縮小していくのではないかというTLOもあります。その要素をいろいろ調べているところですけれども、バイオみたいな成長分野を比較的やっているところとか、それから、地域で非常に苦しい地場産業のために何とか頑張ろうとしているTLO。これは逆に言うと、その地域の方にとっては非常にいいパートナーになり得るわけで、役割を少し層別してみて、その成長ということと別に、本当にこの人たちにどういうミッションを与えればいいのかということを議論するべきと思います。一律のTLOが良いということではないと思いますので、そこを層別していくことが必要だと思います。
 地域のために頑張っているんだとお答えになられたTLOも結構多うございまして、逆に言うと、その地域にとっては、そのTLOをいかに活用するかということだと思います。

○阿部会長 TLOがない大学もたくさんありますし、知的財産本部とTLO両方ある大学、片方しかない大学、両方ともない大学もあるんですが、その辺はどうでしょうか。
 中小企業から見た場合には、地元の大学がTLOも知財本部もない大学というのは結構あるんでしょうか。そこはどうでしょうか。

○渡部参考人 ないからといって、これはやはりTLOの方も大学の方も、ある規模がないと事業運営がなかなか難しくなることもあります。広域でカバーするという考え方、つまり単一のTLOが複数の大学をカバーするという考え方があります。
 それから、今、文部科学省のコーディネーター制度で、広域コーディネーターという格好で地域の共同研究や何かの面倒を見ようということもあります。広域コーディネーター制度なんかは、むしろもっと地域のために少しミッションを考え直すということもあるのではないかと思いますが、そういうようなことを含めて、無理にすべての大学にTLOをつくる必要は全くないと思います。
 逆に言うと、そこの地域の資源とか、環境とか、農業が強いとかいうようなことに合わせてモデルを考えていただいた方が適切だと思います。一律というのは、やはり技術移転には向かないと思います。

○吉野委員 産学連携の集まりみたいなところでは、いい例がいっぱい出てくるんです。この調査会では問題がいっぱい出てくる。どっちも本当だと思うんですけれども、全体像がどうなっているのかというのはつかみにくいですね。

○阿部会長 これは文科省では、文科省の方はおられますか。

○文部科学省 はい。

○阿部会長 全体像を調べておられますか。

○文部科学省 文部科学省の方では、失敗例はなかなか調べにくいと申しますか、お尋ねしても、こういうときに実は失敗してというのが集まりにくいというのが状況でございます。
 ただ、今、知財の活用というのが盛んに言われておりますので、大学の知財がどういうふうにうまくいっているのかと、うまくいかなかったのか、何に原因があるのかと。それは、現在調べておるところでございます。

○阿部会長 そういうデータが集まったところで教えていただけると、ありがたいと思います。

○文部科学省 御紹介させていただきます。

○阿部会長 ほか、いかがでしょうか。
 それでは、また戻ることにいたしまして、保護分野に入らせていただきます。4ページから13ページ、これは非常にページ数は多いんです。また、今日、いろんな御指摘をいただいたことに関係するところもたくさんあるように思いますので、保護分野について是非御議論を賜りたいと思います。
 先ほど、御発表いただいたことに関係あるようなことが1、2)と、3)もずっとつながって書いてあります。待ち時間を短くしようというのはかなりきちんとした数値目標をつくっていただいて、進めてはいただいておりますけれども、大幅に減るのはもうちょっと先になると思います。

○久保利委員 7ページの「中小企業の経営戦略に根ざした知財戦略の支援」ということで、適切な弁理士情報を提供する機関という問題がありますね。8ページの方に、ライフサイエンス分野の弁護士の全国マップとかいろいろ要望があるんですが、少なくとも弁護士会の現状を踏まえると、マップより何より、本当におるのかなというのがまずあって、それこそ東京、大阪でも非常に限られた人しかいないのではないかと。
 弁理士さんのことはよくわかりませんけれども、今、地方の弁護士さんによる知財関係の支援を強化するといいますが、例えば、東北大学のある仙台でさえも特許専門弁護士、特にインターナショナルなそれができる人というのはほとんどいらっしゃらないだろうと思うんです。そうすると、この種の中でライフサイエンス分野の全国マップというのは多分、東京の中の何人かぐらいしかあり得ないのではないかと。
 だから、日弁連も問題だからもっと強くしようということはやっているわけですけれども、現状から言うと、弁護士のリソースとして情けないという状態というのをまず御認識いただいて、中小企業だからそうなっているのではなくて、大企業も含めてもともと、実は余り多くはない。それで、若い先生たちはこれから一生懸命勉強して、そういう分野で専門化していこうという流れはありますけれども、地域格差というか、東京とそれ以外の格差というのは一般の方々が思っている以上に専門分野ではすごく差があって、その中でもライフサイエンスという話になってくると、東京でも余り多くはないのではないかと。
 したがって、この辺りの問題は、中小企業の問題というよりは日本の企業法務全体の問題というふうに認識をしなければいけないと、私は非常に厳しく受け止めております。

○阿部会長 早くマップができればいいという。
 どうぞ。

○小島事務局次長 ここでは、弁護士、弁理士と意見の中でありますが、主として、今日もどなたかのプレゼン資料にありましたけれども、まず中小企業にとっては、弁理士に対して接触したいんだけれども、どこに誰がいるのかなかなかわからない。さらに、弁理士の専門技術分野あるいは得意分野がわからないというのがいろんなところで聞かれる話でして、弁理士会の方でも去年からそういうデータベースをつくっているんですが、なかなか実績ベースとか得意分野というのがわかる仕組みになっていない、また、それがわかるとミスマッチが起こらないので便利だという意見が非常に多かったということです。

○阿部会長 下坂先生、弁理士がいっぱい出てくる。

○下坂委員 それで、今日は出席したくないような気持ちでいたんですが。御発表の皆様には、弁理士という表現を極力お避けいただきまして、随分やわらかく御発表いただいたんですが、内心はそうではなかろうとは思っておりました。弁理士会の方でも、今、いろいろと地域アクセスポイントというのを大至急やっております。
 実は、今度の改革は、弁理士にとりましても大変衝撃的なものです。弁理士の方も、急激に4,000人ちょっとから6,000人も既にオーバーいたしました。それで、新しく資格を取った者の研修とか、いろいろ皆様から御批判が出ているような知識、技術がわからないとか、いろんな批判が出ております。
 ただ、1点言いたいことは、地方の中小企業なんかをいろいろ支援するための弁理士が地方にいないという指摘をよく受けるのですけれども、弁理士の立場から言うと、行っても仕事がないんです。そうすると、個々の弁理士に、仕事もないのにそこに行って、お前さんはそこで飢えろということになり、それは言えないことです。
 だから、そういう観点から見ましても、弁理士会としていろいろな支部のようなもの、またはアクセスポイントのようなものをつくっていくべきではないかということで、会の計画として、現在のところ、平成17年度に金沢、札幌、仙台、あと高松、それから、広島にアクセスポイントを置く計画がございます。あと日本弁理士会は東京に本部がございまして、大阪と名古屋の方に支部がございます。それらを、ゆくゆくは全都道府県にまたがるように支部をつくっていきたいという気持ちの下でやっています。今、こういう改革に沿いまして、弁理士会、一生懸命努力しているところでございます。
 また、今度、秋葉原の方に分室のようなものといいますか、研修所をつくりまして、そこにはたくさん知財関係者がお集まりいただいて、それから、橋本さんの方のセンターもおありでございますので、緊密な連絡を取りながら進めさせていただきたいということで、一歩一歩ですけれども、進んでいるところでございます。
 先ほどのライフサイエンスとかに関しましては、特許の性質といたしまして、同じような分野の出願を長くやれば、そこのエキスパートになっていくということがございます。ただ、中小企業の場合は、端的に言いますと、例えば、1年に2件ぐらいぽんと来て、また全然違う会社から違う技術の出願がぽんと来るということになる場合が多く、弁理士事務所の経営ということを考えますと、なかなか十分なことができないという苦しい点はあることはあります。ただ、言えますことは、それでもどの弁理士の事務所もみな中小企業に対しましては、半額でいいですよとか、あなたが成功したらお金を頂きますから、とか、事業成功の暁には百倍ぐらいいただきますよ、というような形で、いろいろと無償や割引で取り扱っている事件も非常に多くございます。
 それから、個人の方が、個人で出願をしていらした方が困られた後御紹介受けることもあり、それらもほとんど無料でお手伝いをして、その方の名前のままで継続できるように助けていくということなども、どこの事務所も多かれ少なかれやっています。ただ、そういう事案を組織として外から見える形になっていませんから、指摘を受けるところにはなっております。
 弁理士会及び弁理士も努力しているという点、皆様方の御意見を入れながら努力しているという点は、どうか今後に期待いただいて、只今のところはお許しいただきたいと考えております。
 それから、弁理士の名簿でございますけれども、例えば、1人の弁理士というのは、商標だけしかやりません、意匠だけしかやりません、という場合があります。これは、事務所が大きくなればなるほどそういう傾向にあります。
 それから、化けでも、私は無機だけですよ、有機だけですよ、いや私は繊維だけですよということで、大変狭くなってまいります。この場合は知識は深く狭くなります。これをずっと追求していきますと、弁理士事務所1つが大体特許庁の1,000体制ぐらいの規模でないと、各専門に対応できないという状況が起こります。
 そこいらを補うためには、例えば、1人の化けの人が有機も無機も取り扱うとか、いろんな幅広いところでやらざるを得なくなってまいります。一般には、発明者から十分なお話をいただいて、そこを勉強いたしますから、そこをずっと深くやっていくことによって、その専門性、理解性というのはどんどん深まって参るはずです。
 これは弁護士の方たちがよく、専門でなくても訴訟で明細書を理解することには差し支えがないという御主張をなさるんですが、ある意味では、それと同じようなことだろうとは思います。ただ、専門分野が非常に狭く深くなっておりますので、最初の1、2件がなかなかお手間を取らせるということもありますけれども、大体2、3か月もしくは4、5件をこなしたところで、その分野だったらかなりのものをまとめていくということはできるようになる。
 名簿については、個人の弁理士が何ができるというものよりも、弁理士A事務所は何から何を扱う、B事務所は何から何を扱うという単位で弁理士のリストを公開した方がいいのではないか、という考えを持っているのですが、名簿については更に検討して御提案をさせてもらいたいと思います。

○阿部会長 御質問がありました、どうぞ。

○橋本参考人 具体的なことで恐縮なんですが、ホームページで調べて検索もできるようになっているんですよ。ただ、やはり専門性になりますと、あれは御本人の記載だということで、人によってはバイオからITまで何でもやれるというふうにお書きになっている方もおられて、余り頼りになりません。
 ですから、過去何年間の出願実績とか、あるいは卒業したときに工学部の何々学科を出たとか、そういう客観的なことをもう少し書いていただくと、より参考になりやすいなと思っておりますので、御検討ください。

○下坂委員 そういう学歴は出ていないのですね?
 私は、まだ名簿をうまく出せないものですから、まだ見ていない。2回ほどトライしたんですけれどもなかなかうまくいかなくて。

○橋本参考人 多分、なかなかしっかり特許を使っておられる会社でも、いい方に当たるまで何度か苦労しましたという方が多いです。初めての方は勿論わかりません。本当に専門の先生は恐らく大手の企業の仕事をされていますので、コンフリクトとかあって多分だめですから、私どもとしては、そうでない先生で理解力のある人という観点で探すんですが、なかなかわかりませんので、よろしくお願いします。

○下坂委員 ただ、お客さんとの相性とかもありますし、理解力というのは付き合ってみないとわからないというところもありまして、その辺りが名簿にはなかなか出てこないところだろうと思いますけれども。もうちょっと弁理士会の方と相談をしてみます。

○阿部会長 先ほど、出願料その他、費用負担のお話が出ていますし、ここにもこれは弁理士の費用ということだけではなくて、国に対することがたくさん書いてありますけれども、どうでしょうか。

○山田参考人 これは私どもが、昨年、小泉本部長あてに出した要望の第1番目でございまして、現在、減免制度はある。先ほど、橋本参考人もおっしゃったんですけれども、実際はその減免制度というのは、ベンチャーで非課税10年とかプアなところと、逆にリッチというと変ですけれども、研究開発費が売り上げの3%以上とか、そういう研究開発型企業と。あるいは、三法、経営革新法等々の認定を受けるというような、いろんな条件で決めているんです。
 それらの条件というのは、中小企業にとっては、ほんの一部で例外なんです。圧倒的中小企業はそこに該当しないんです。
 ですから、現在のところ、これは私どもはここにもありますが、スモール・エンティティー、アメリカの従業者数500未満の小規模事業所としては、全部出願から審査、年金に至るまで半額だと。このぐらいの制度はできないですかということを盛んに申し上げてきているんですけれども、ここら辺のところがどこまで拡充されたか。今度の経営革新法等を統合した三法の制定が行われておりますので、中小企業政策審議会でも再三これは申し上げたんですけれども、なかなか中小企業は知財に対して取り組んでいるんだというところは、国の関係者の方も余り見てくれないというか、その辺が非常にじくじたるものを感じましたけれども、何といってもやはりこれは改正する方向に世論としても動くべきではないかと思っております。

○阿部会長 これはどうですか。事務局の方は。

○小島事務局次長 今の減免制度の拡充の問題は、去年から課題になっておりまして、去年の推進計画では、特許庁の説明では、周知徹底が欠けているので利用が少ないということだったので、周知徹底を強力に行うこととしたものです。それでやってみてだめなら、もう一回条件改定、その他制度改訂をやるということになっております。一昨年は800件の適用しかなかったので、それが特許庁の説明では2万件になるという話でしたので、2万件になっていなければ、やはり今、山田参考人がおっしゃったように、条件が厳し過ぎて使えないということだと思いますので、更に考えていかなければいかぬという問題だと思います。

○阿部会長 特許庁の方はおられますか。今の何万件とかというのは、どうですか。

○特許庁 2万件と言っていたかどうかは今わからないんですけれども、今年は2,200件以上で、平成15年の3倍ぐらいの実績となっており、るる浸透していってはいると思います。
 それと先ほどおっしゃっていた減免の対象は資力に乏しい法人、個人。それから、先ほどおっしゃった研究開発型企業と三法の承認、あるいは認定やSBIR補助金の交付を受けている企業ですけれども、その企業の数を合計すると、例えば、経営革新法の承認企業というと現在年間3,500〜3,600件ぐらいいるんで、今もう2万弱ぐらいになっているのではないかと思います。あとは年間1,000件くらい。
 だから、その2万件というポテンシャリティーがあるという意味においては、その三法の統合とか研究開発型企業という意味では、2万件程度の中小企業は対象になり得るような状況にはなっているというふうには考えられると思います。
 したがって、やはり施策の周知・浸透という点では、引き続きやっていきたいと思っております。

○山田参考人 その際に、先ほど橋本さんがおっしゃったように、職務発明規定を内部で持っている方は、それについてはやはり問われるわけですか。

○特許庁 そうですね。そこは要件になっております。したがって、職務発明規定の整備という面でも、今回改正した法律を施行するに当たっても、事例集においても大企業向けのみならず、中小企業向けの内容を盛り込んだり、来年度から個別の相談に乗るための相談事業というのを中小企業のためにやっていこうということで考えているところであります。

○山田参考人 是非、職務発明規定は、大概社長本人が発明していますので、どれほど規定が要るんだというところがあろうかと思いますが、よろしくお願いします。

○阿部会長 職務発明規定は別にして、そのほかにさっき幾つか並べたというのは全部満足しなければいけないんですか。どれか1つ満足すればいいんですか。

○久保利委員 全部です。1〜6まですべての要件。

○阿部会長 そうですか。では、そういう意味では結構きついかもしれないですね。

○山田参考人 三法のどれかでいいんですね。

○特許庁 どれかでいいんです。全部とおっしゃったのは、どれのことをおっしゃっているのかわからないですけれども。

○久保利委員 職務発明であらかじめ承継した法人で、出資の総額が3億以下で、設立10年以内で、法人税が課されていなくて、支配法人がないというのが資力に乏しい法人のところですね。

○特許庁 資力の乏しい法人というカテゴリーではそうですけれども、例えば、研究開発型の中小企業という意味であれば、また別途、経営革新法承認を受けているといった要件をクリアすれば良く、今の要件とはまた別のものであります。

○久保利委員 4つありますね。

○阿部会長 では、多少は分類されているんですね。

○特許庁 そこは大きく分けると、5つぐらいの分類になっていると思います。

○橋本参考人 本件は東京都もかねてからアメリカの状況などについてのデータもすべて要望しております。是非、中小企業の社長さんになったつもりで書類を全部準備しようとすると、どういう書類を用意して、どこへ行って、まずは確認してからでなければいかぬかという辺りも考えていただけると大変ありがたいです。

○特許庁 中小企業の方にわかりやすい形で情報が流れるようにしていきたいと思います。

○橋本参考人 関東経済産業局にまず行ったり、いろんなところに行かなければいけないはずなんです。そういう必要性があるのかどうか、私はよくわかりませんけれども。
 それとアメリカの制度は、その後調べましたら、特許関係の料金が大幅に上げたときに中小企業については半分にするというのが、これは自己申告だけで、それにうそがあれば、また問題が生じますけれども、ということがずっと踏襲されていまして、出願件数のうち、毎年の統計を取っても3分の1ぐらいはスモール・エンティティーの出願扱いになっているそうです。よろしくお願いします。

○特許庁 特許料制度はまさに全出願人の方の支払った料金によりやりくりしており、全体では、中小企業の方の出願もございますし、そうでない方々の出願もあります。したがいまして、中小企業の料金を減免することは全体に影響するものですので、そういった中でどういう方策が一番適当かということは引き続き慎重に考えていくことが必要と思っております。

○橋本参考人 むしろ、もう少し積極的に。中小企業が先に知的財産制度を利用しようとすると、まず出願から始まるわけですね。それを奨励しようというような、もう少し特許庁どまりではなくて、国としての何かも考えていただきたいと思いますけれども。

○阿部会長 それは我々に言っていただく方がいいかもしれません。特許庁にもお願いするとして。

○特許庁 特許庁の方でも、中小企業の知財活用支援のための取り組みはさまざまに強化していこうと思っております。

○阿部会長 特に東京都は半額ですか。何か割り引きされていることもやっておられるんですか。

○橋本参考人 私どもは外国特許出願の費用が、これはまたけた違いに金がかかるものですから、それの半分を。

○阿部会長 外国ですか。大変いいことだと思います。
 どうぞ。

○山田委員 ちょっと全体の意見になるんですけれども、中小企業は知財の問題というのは何が最大の問題かというと、基本的には大企業との関係だと思うんです。中小企業同士の知財問題というのは、そんなに大きな問題ではないと。なれば問題ですけれども、多くないと。中小企業と大企業と。
 中小企業の場合は、特許を取るということがポイントではなくて、特許を取られるというのがやはり大きなポイントですね。一緒にやったら特許を取られるということと、その次に取られた特許で自分が侵害を訴えられるという、これがやはり一番怖いんですね。
 ですから、最初に、まずどういうときにそれが起きるかというと、共同開発で一番起きやすいんですね。あるいは、一緒に仕事をするときにそういうことが起きるわけです。最初の契約書というのは、そこのときに非常に重要なんです。大企業と一緒に仕事をする場合の最初の契約書、そのときの契約書は、さっき久保利先生がおっしゃったように、だれに相談したらいいかというのがわからないんですね。普通の弁護士の方に相談しても知財に詳しい方はそんなにいないんです。
 ですから、どこへ行ったらいいかわからないんです。自分たちも向こうから突き付けられる。それを見てもらう人がいないということなると、そこの中に巧妙に書かれた、後でわなになるようなものが見抜けないんです。そうするとそのまま契約してしまうと。1点は、そこに何かガイドラインみたいな、こんなことは書いてはいけないよとか、ここまでやってはいけないよというようなガイドラインを出すか、あるいは、これはちょっとまずいよということを見ていただけるような機関とか、そういったものが一つあるといいなと。あるいは大企業の指導するとか、これはそこまで書いてはまずいよとか、そういうものをまずは一つ欲しいなということです。
 さっき言いましたように、最大のあれは、大企業との間の法律的なというよりもマナーの、道徳的な問題といいますか、それは法で縛れないと。法律だと負けるんだけれども、話を聞けば、それはかわいそうにと思うようなものはたくさんあると思うんです。そういったものを、これは昔の村八分ではないですけれども、道徳的に判断してくれる機関、公正取引委員会なんかもそうですね。これちょっとまずいよというか、指導を出したり、そういうことをされますね。そういった道徳的な判断をするという機関があると、やはり大企業との契約で抑止力になると思うんです。
 それが裁判所までに行く前に、中小企業保護法みたいに、中小企業と契約する場合はこういうことを守りなさいというような、そういった知的な、例えば、お金は早く来月払えということを言うわけです。それと同じように、やはり中小企業と契約する場合は、こういうことはやってはいけないとか、こういうことがあるという、何かそういったものをつくっていただけると、契約するときにこれがあるから困りますと言えるんです。
 今は多分、契約が欲しかったら、はいと判こを押すしかないんです。それで、最終的には特許の問題になったり、あるいは向こうが特許を取ったり、そういったことで問題になりますので、何かそういう機関ができれば非常に、今、2つの話ですけれども、契約書のガイドライン、あるいは指導する場所。2番目としては、そういった道徳的な判断をしていただくという、そういうものがあればいいなと思います。

○阿部会長 大企業との問題は保護の非常に大きいテーマですので、いいときに振っていただいたと思いますので、どうぞ、御意見をいただきたいと思いますが、久保利先生、どうでしょうか。

○久保利委員 だから、優越的な地位の乱用というふうな話になれば独禁法の問題になるし、新規立法ということであれば下請法みたいなものを知財について新しくつくるのかどうかという問題でしょう。不公正な取引に当たるかどうかという独禁法的な問題が入ってきますので、言わば知財と独禁とセットの問題になってくるんだろうという気はします。
 ただ、このいろんなクレームというか、問題事例というのを見ていると、要するに、下請関係を解除してしまうとか、特許を取り上げておいて逆にそれで縛ってしまうとか、モラルだけではなくて、何か違法性がありそうな感じのあるケースもあるけれども、違法性を追及して訴訟したらば、それきりお仕事がもらえないという、多分、非常に隷属的な部分が中小企業と大企業との二重構造の中で、それが力関係として出てきていると。これを法的にどうやって逆転するか。法的に訴えようとすると、基から切られてしまうというのなら、どこかで国家が後見的に支えないといけない部分があるのではないのかなという気がします。
 だから、その意味では、今、おっしゃったように、弁護士を連れて行って契約をしようとしたら、それだけでお前とは契約しないと言われてしまうと。弁護士に契約書を見せますと言っただけで、お前とはやらないと言われてしまったのでは弁護士の出番そのものがないわけです。だから、そういう意味で、どこをどういうふうに押さえていったらいいのか、大変難しい問題だという感じがします。

○阿部会長 吉野先生、いかがでしょうか。大企業の代表でなくて、個人意見で結構です。

○吉野委員 悪い大企業が多いということですけれども、例えば、海外でもビジネスをやっているような企業はこういう話は通用しないわけです。
 1つは、やはりこれはモラルが出発点だと思いますから、例えば、経団連の行動指針で知財についてどこまで述べているかというのは、私もまだ確認していないんだけれども、やはりそういうところからきちんとやっていくようでしょう。これは、大企業も自分たちの権利は主張するわけだから、やはりそれは相手の権利もちゃんと見てあげないといけないという、当然のことなんですけれども。

○阿部会長 経団連で議論していただく価値のあるテーマの一つかもしれません。
 下坂先生、この件はいかがですか。

○下坂委員 中小企業・ベンチャーといってもいろんなレベルがございまして、見事に自分たちで大企業相手に堂々と渡り合っていらっしゃる方もおられる。それから、契約書もきっちりおつくりになっている方もいらっしゃる。
 あと、会社の力関係になりましたときが問題です。例えば、以前、アメリカからカードに関して特許権侵害だと言ってきた会社があります。内容証明みたいなもので、レジスターメールでしたが、それを見ましたら、240件ぐらいの日本における特許権がざっと羅列されておりまして、それから、その後に世界中におけるいろんな特許権が羅列されている。
 それに対して、侵害だと言うがどこが侵害だと尋ねますが全部の権利を侵害している、という。もし、二百何十件もの特許を私どもがチェックいたしますと、ものすごい検討料がかかります。言ってくる方がどこという指摘をする義務があると言うのですけれども、彼らはやらないんです。ちょうどクロスライセンスの申し込みのようなものです。その後、3人ほどのアメリカ人がどんと来まして、それで、小会社、ベンチャーだったんですけれども、そこを訪ねまして、一方的に主張し、ベンチャー企業の社長さんも下りましてライセンス契約をした。そういう場合というのは、もうどうにもしようがないということが言えるんです。
 幾ら金切り声でおかしいと言ったところで、大会社を盾に攻めてくる。ベンチャー企業は現在やっている技術がないとつぶれてしまうということからライセンス料を払う。それは外国との関係でしたけれども、国内でも頻繁にそういう話は聞きます。そこから抜けていくために、もっと中小企業は組めないのでしょうか。何か自分たちでもっと自主的に自立していくという方策、政府にあれしてくれ、これしてくれ、いや、これが悪いというのではなくて何かやれないのかなという感じを、そういうのに当たるたびに思うんですけれども。かなり無理でございますか?
 大田区なんかは組んでおられますね。

○山田参考人 技術力のかなり優位な企業は、それができるんです。ここで挙げた中でも、C社というのは1度、商談段階でレーザー加工機を相手方に盗用されて商談が不調となったという、それくらい徹底的に秘密保持契約を結ぶと。それをやらない企業とは一切、大企業であろうと何だろうと契約しないという態度に出られる企業は、これはある面で自立的に何とかなると思うんです。
 だから、そこまでの技術的な優位性を持っている企業ばかりではありませんので、かなりなレベルの企業でも、先ほどの共同出願なんかの場合では、D社の事例なんかも決して小さい、弱い企業ではないんですけれども、やはり相手さんがお得意先だというような関係になると、しようがないかなという程度に終わってしまうところが多いんです。
 だから、それは非常に問題なので、何らかの、さっき言われたような契約のガイドラインといいますか、日本というのは契約社会ではないものですから、下請法関係でも圧倒的に契約をやっていないんです。やっと金型流出問題以来、金型業界では随分契約書のひな形をつくって結べというようなことを、工業界として指導し始めたぐらいで、ほとんど契約になっていない。
 契約をしないということに対して、今度は罰則が少し上がったんですけれども、それでも圧倒的にまだまだ、だから本来はそういう契約自体がほごだと言って、そうすると日本の契約社会が成り立たなくなってしまう。これは口頭で全部やっていましたから、これも非常に構造的な問題があるわけです。
 でも、やはり知財に対して毅然とした態度を取っていかないと、せっかく開発しておいてみんな持って行かれてしまうというのではとんでもない話だと思います。

○阿部会長 渡部先生、この件について。

○渡部参考人 先ほどちょっと申し上げましたが、やはりリスクマネージメントであちこちでしくじってしまっているという、それで結局、病気が随分悪化した状態になってから相談されてもなかなか何もできないという事が多いです。例えば、ある企業では中小企業投資育成から投資も受けている、政府から補助金ももらっていると。それでいて、そういう、今、おっしゃっているような契約みたいなことがちゃんとできていないということなんです。
 中小企業投資育成から投資を受ける、あるいは補助金を出すのであれば、何か申請書があるでしょうから、それはちゃんと、それでは、こういう契約をやらないと、あなたのところのビジネスは危ないですと、何かそういう要件がその補助金なりの申請の場のやりとりができるとか、そのような工夫で何か面倒を見てあげられないか、そんなに難しいことではない細かいことでも、でもやらなくて、結局、取り返しがつかないということもあるんです。何とかそこを。

○山田参考人 だから、お上に弱いというのはありますので、それはお互いに、かえってこういった制度要件に載せるために契約書がどうしても必要なんですという、制度要件の中にスキームで確定させてもらうと。
 そうしないと、例えば、今度なくなってしまうんですけれども、計画手法ではこういうものは認められないとかいうところまで逆に縛りをかけてもらった方がいいのではないかと、習慣化しないと直らないのではないかと思います。

○渡部参考人 逆に、補助金を受けていて、こういうふうにしないとだめなので、この契約をしてくださいとか、何かそういうふうな使い方でも、できるだけそういうことができないかという。

○阿部会長 わかりました。時間の関係もありますので、大企業の問題は勿論、今日で終わらない、ほかの点もそうですけれども、また引き続き御検討いただきたいと思います。事務局の方でも少し整理して、今、いろんな御意見出ましたので、やはり何かあった方がいいというのが多くの方の御意見のようですが、もう一つ残っているのは水際対策、海外ですけれども、これはかなり、この専門調査会でもこれまでも議論してまいりましたし、それから、2004でも載っているんですが、中小企業が非常に大変だということは山ほど、山田委員からも伺って、勿論、大企業も大変なんですけれども、別な意味で中小企業は非常に大変だということは伺っていますが、どうでしょうか。これは引き続き、国を挙げてやっていかなければならない一つの大きい課題ではありますけれども。
 どうぞ。

○下坂委員 この前から、技術判定機関のようなものをとか、審議機関のようなものをと、ずっと一貫して主張させていただいているんですけれども、今日、当初に山田委員の方からの御発言にもありましたように、ITCというようなお話もそこであったんですけれども、中小企業の体力では、税関における手続以外に訴訟までというのはなかなか大変だと思いますので、やはりここは、税関の機能強化によって技術的な判断を早くきちんとできる組織・機関を設けることがどうしても必要ではないかというふうに考えております。
 今回の通常国会に関税定率法の一部改正案が出まして、そこでサンプル提供分解検査制度というのが導入されることになりましたけれども、これはちょっと問題が違うのではないか。そのことだけで解決できるという問題とはちょっと種類が違うものではないかと思っております。
 このサンプル提供分解検査制度というのは、権利者が税関の検査の延長として行政行為を行うものではありませんで、権利者側にとっての利益はあるというものの、そこで得られた技術内容に関する情報は、権利者が税関長に対して行う証拠、意見の提出だけに資するものということができます。当事者平等の観点から見ますと、輸入者も技術的判断に関与して主張を尽くすことができる公的な仕組みを別途設けることが必要だと考えております。
 前回か前々回に出ました、いろいろなこういう方策があるんですが、技術判定機関を活用した侵害認定、もしくは税関内審議機関による侵害認定、そういういずれかの方策、勿論、税関外でも構わないんですが、そういういずれかの方策がこのまま引き続き検討されてお取りいただければと強く要望するものです。

○阿部会長 これは、いろんな激論がありまして、今、ここまで来ているんですけれども。
 どうぞ。

○根本参考人 私どもの製品についての実例を申し上げますと、私どもの製品というのは新規化学物質ということで審査を受けて、ようやく売れるようになるわけなんですけれども、そのいわゆる模造品として中国から輸入された方がおりまして、その方々がやられるのは、そういう製品は新規化学物質ではないんだと。私どものこうした製品とは違うんだと。それは新規化学物質ではないんだという建前なんですが、構造上はすっかり私どもの方をまねておられるから、新規化学物質に間違いないんですけれども、経産省に言ったら、経産省の方では、いや取らないでいいんだとおっしゃって、私どもの方は取るとおっしゃったということで、そういうことで、税関の方との関連がもしあれば、そういうものをきちんと水際でとめることができるのではないかと思うんです。だから、そういう特許紛争になる前の段階できちんと整理ができると思うんですけれども、そういう連携というのは取られないものでしょうか。

○阿部会長 かなりやりつつあるんですけれども。

○渡部参考人 それはあれですか、国内に入ってきているということですね。

○根本参考人 はい、入ってきています。例の海外の場合も、アメリカの場合も、そういう認定を取りましたし、ヨーロッパ、EUの関係も取っているわけなんですけれども。

○阿部会長 進捗はどうですか。

○小島事務局次長 今、根本参考人がおっしゃられたのはまさに水際で、税関でそういうようなチェックができるようにならないかという問題ですが、技術的な判定ができれば、つまり同じ物質かどうかというのが判定できれば今の話ができますので、そういうところが従来、機械とか何かそういうことで問題になっていましたけれども、同じ問題でありますので、今、下坂委員がおっしゃられたように、そういう技術判定を税関でさせる仕組みというのは引き続き考えていかなければいかぬということだと思います。

○阿部会長 久保利先生、何か付け加えることはございますか。

○久保利委員 ここの準司法的機関をどうするこうするというとなかなか激論で、4人ぐらい、この委員ぐらいだと大体まとまってしまいそうな気もするんですけれども、それ以外の先生方が大勢いらっしゃるので、そうもいかないと思うんですけれども。

○阿部会長 また激論しましょう。
 そういうことで、我々怠けているわけではないんですけれども、いろいろ難しいハードルがあるようで、技術屋とか研究者、企業から見てやってほしいということと、法体系の中でどこへ落としていくかということです。いろんな議論があるようですが、これは大切なことですので、是非引き続き議題にしていきたいと思っております。
 時間の関係がありますので、次の「3.活用分野」に入らせていただきますが、これは14、15、16ページ、短いんですけれども、是非、御意見をいただきたいと思います。
 どうぞ。

○渡部参考人 先ほどの私の話はここで説明するべきだったかもしれませんが、地域の特許、知財の問題で、中小企業向けTLOを創設してほしい、あるいは公設費の問題等が出ています。
 先ほど、私、吉野委員の御質問にうまく答えられなかったんですが、TLOと産学連携に関して、大企業を含めて、全体平均としては非常にうまくいっているというふうに思っておりまして、特に大学知的財産本部整備事業なんていうのは5年でアメリカの20年をやってしまおうということで、その計画は一応、計画どおりにいっている。
 ただ、これは非常に数が多い地域の中小企業さんにとって、やはり効果が届いていない部分がまだかなり残っています。その残っているところに関して、やはり地域にある資源をいかにして活用するかという観点で、公設費とか公的研究機関というところの活用というのは非常に重要だと思われます。
 先ほど、GOCOの話というのは新しい組織の名前ではありませんで、組織の運用の話でありまして、公設費とか公的研究機関を中小企業のために活用するための運用の方法というのを提案させていただいたということです。
 ただ、その中でも、TLOの中でも地域のために頑張っているところ等がありますので、そことの連携をするのに一番ふさわしい運用の形を取るということが、この地方自治体の地域の特許の有効活用という問題だと思います。
 それから、この公的調達の話ですけれども、これは自治体で、やはり地域でいいベンチャーや何かがあって、やはり公的調達で何とかしてあげたいということがよくあるんですが、やはり随契が非常におっかなびっくりで、結局、なかなかできないというのがあります。
 これはやはり、もともと公的調達のある一定の枠というか、予算を、むしろこういうすぐれた特許があるところを調達するんだというように最初から決めてしまうというような形でやっていただくようなことをしないと、やはり、今の制度の中で随契やると非常に怖いということがあるようですので、むしろ外されるのではなくて、特許がある、独占的にやっているところを使うんだというような形で予算枠を組んでやっていただくというのが必要だと思います。
 以上、2点です。

○阿部会長 ありがとうございました。

○山田参考人 地方自治体の調達で言いますと、私ども、平成元年から新人コンクールというのをやっていまして、我々、特許製品をコンクールで表彰するんですけれども、それは区の方の調達に乗らないんだということはしょっちゅう文句が出るんです。
 我々も、最近はかなり事前に働きかけて、特に建築土木関係の製品に関しても出されていますから、そういうものについては、極力、当該部局を紹介しながら売り込んでおりまして、最近かなり調達されだしました。
 特許を意図的に外すわけではなくて、たまたま、今、先生がおっしゃったようなことで、随契ということの立場と、それから、直接、その自治体がそれを使うわけではない。業者が使うというケースが非常に多いんです。
 その業者が使うのを使うように指導しろというのは、これまた役所側から言うとなかなか難しい立場なので、その部分は逆に、いかに売り込みやすくするかとか、結果としてその業者が、その製品を使っている業者がうまく調達に乗れるような、そういう働きかけをするというのは役所の外部機関的なところが行う必要があるかなというように、経験上、感じました。

○阿部会長 どうぞ。

○橋本参考人 地方自治体が保有する特許は活用しにくいという1つの理由が、やはり東京都の例でも条例とか要綱とかいろいろありまして、多分、正確には調べたわけではありませんが、国の制度をそのまま引き継いで、地方自治体が昭和二十何年代に、大体、規則を決めているんです。活用はこういう方法によるとか、そのときの実施料はこういうふうに決めるんだとか。
 それで、たしか専用実施権とか独占的な実施権がまずライセンスで認められない。それから、対価も、あれは、昔、特許庁が決めたルールなので、フレキシブルに運用しようと思えばできないことはないんですが、それが残ってしまうと、基本形を、余り例外を適用したくないというのが、私どもも反省しなければいかぬのですけれども、役所的なところがどうもあるみたいです。
 それで、検討して、これは条例は都議会の了解が要るので、去年の7月になりましたけれども、条例は廃止、要綱は全部大幅に改正をしました。
 ただ、困っていますのは、今度は基準がないとやりにくいと。各局の局長が全部判断して何でもできるということになったわけですけれども、そういう声が出ていますので、何か対応しなければいかぬかなとは思っています。

○阿部会長 その廃止したというのは、ほかの県の例も幾つかあるのでしょうか。東京都だけですか。

○橋本参考人 ほかの県は、ちょっと調査しておりませんので。
 ですから、恐らく、今、これが必ずしも地方自治体だけではなくて、国が絡んでいるところも基本的に税金でやった研究だから、希望者にはどこにでもライセンスするのが原則。優先的実施権とか、少しずつ制度は変わっていますけれども、ベースはそこらにあると思います。
 それから、ライセンス条件も一つの、特許庁が決めた基準が頭にあって、そのために大学等の、あるいは公設試験研究機関の発明は商業的な、実績のある技術ではないにもかかわらず、それがベースになっていることによってライセンスしにくいという傾向がありそうに思っております。

○阿部会長 いかがですか。

○渡部参考人 今の件は、逆に言うと、今、大学の技術をTLOが民間的な技術移転をするようなシステムを、地域の知財についても活用できるような運用の仕方をすればいいということですか。

○橋本参考人 TLOも似たような問題を抱えていますので、TLOに準ずるというよりは、要するに、問題解決型の発想ができる、つまり、フレキシブルに条件なんかが決められる。そういう形が、いずれの場合にも必要なのではないかと思っております。

○渡部参考人 例えば、民間的な運用にすごく任せてしまうとか、そういうふうなこと、私が申し上げているGOCOはそれを言っていますので、一応申し上げておきます。

○阿部会長 悪い例のTLOではなくてですね。
 そろそろ時間も迫ってまいりましたけれども、全体を通して何か、是非付け加えたいということがございましたら。
 どうぞ。

○下坂委員 済みません、活用のところで、1点。
 先回、今日お休みの竹田委員の方から個人輸入、個人所持の禁止法案というのが出ましたけれども、これは今後、是非前向きに検討していただきたいと思います。
 それから、先回、私、罰則を付すことについて主張したのでございますけれども、その後、2〜3の方から意見を頂戴しました。それは、例えば、偽の万年筆を知らないで所持していて取り上げられて、もし、罰則で10円取られたとします。私、10円でもいいから罰金を付けるべきだという主張をしたんですが。そうすると、その方のキャリアは、10円で傷が付いてしまうということになるそうで、これは大変です。私は自由業ですから余りぴんとこなかったのですが、大会社などにはいろんな規則とかがありまして、罰金刑ということでまずくなる。しかも10円でまずくなるのもどうかということもありまして、それで、罰金の主張はちょっと検討させていただきたい。先回主張は留保させていただきます。
 ただ、個人所持の禁止法は検討を是非お願いしたいと思います。

○小島事務局次長 竹田案につきましては、今、関係省庁の方で検討をお願いしていますので、またそれを踏まえて、次回か次々回の専門調査会でお示ししたいと思います。

○阿部会長 それでは、山田委員、お願いします。

○山田委員 先ほど、中小企業も努力が必要でございますけれども、私どもやっている金型産業というのは7,000 社ぐらいあると言われているんですけれども、94%が34人以下という中小なんです。
 ですから、やはり努力だけではなかなかあれなので、国におねだりしてはいけないということがあるんですけれども、でも、先ほどの知財立国ということを銘を打ってお話しされているわけですから、これは思い付きではないんですけれども、中小企業知財保護法というか、そういったものを、法的なものが何かあれば非常によろしいのではないかというふうに、先ほど久保利委員のお話もお聞きして、そういうふうに思いました。

○阿部会長 どうぞ。

○根本参考人 先ほど、私どもの実例に即してお話し申し上げましたけれども、損害賠償金の問題について、最終的には払っていただいたんですけれども、その金額はだんだん少なくなっていって、ほとんど補償が何の足しにもならない。逆にいえば、相手はやり得の感じがするわけです。
 そういうところで、やはり懲罰的な、何かそういうものをきちんとさせなくてはいかぬ。あるいは、訴訟費用を持たせることでもいいと思うんです。そういうことをきちんと明文化すべきではないだろうかと。訴訟期間短縮効果もあると思いますので、是非それをお願いしたいと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。そろそろ時間になりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきます。
 なお、本日の議論を踏まえまして、事務局において改めて論点整理をしてもらいたいと思います。それから、併せて対応策の案についても整理をしていただきたいと思います。
 次回の専門調査会は、更に4〜5人ほどの参考人の方をお招きしまして御意見をいただいて、今日と同じように参考人を交えて御議論をいただくことを考えております。
 次回の専門調査会は、最初に申し上げましたように、3月15日です。16時から18時ということで、本日と同じ場所、ここで行います。
 それから、今日御出席いただいた橋本参考人、山田参考人、渡部参考人のお三人の方は、次回も御出席いただけるようですので、よろしく御議論に参加していただきたいと思います。
 以上ですが、事務局、何かありますか。よろしいですか。
 それでは、本日は御多忙のところおいでいただきまして、本当にありがとうございました。またよろしくお願いいたします。