○阿部会長 それでは、まだちょっと時間が早いですけれども、皆様お集まりいただきましたので、5月13日以来7か月ぶりの「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」第10回でございますが、開催をさせていただきます。座ったまま進行させていただきます。
本日は、御多忙のところを御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
若干復習をさせていただきますと、昨年10月から本年の5月にかけまして、知的財産高等裁判所、特許審査の迅速化、模倣品・海賊版対策についてとりまとめをいただいたところでございますが、このうち、知的財産高等裁判所と特許審査の迅速化につきましては、既に御案内のように法律が成立して、着実に進んでいるものと理解をいたしております。
一方、模倣品・海賊版対策につきましては、各省それぞれ対応していただいている状況でございますが、本日の会議の目的でございますけれども、各省の対応や進捗状況をお聞きした上で、それに対する御意見をこの席でいただきまして、よりよい対策につなげていくことで、そういう方向に持っていければと考えているところでございます。忌憚のない御意見をいただければありがたいと思います。
なお、本日の会合の議論については、特に報告書としてとりまとめることはいたしませんけれども、12月中旬に予定されております本部会合に、本日の議論の概要につきまして簡単に私から報告をさせていただきたいと考えております。
さて、お手元の議事次第にもございますが、本日は、まず、事務局から模倣品・海賊版の最近の状況、これは各国いろんな動きがあるようでございますので、それについて簡単に紹介をしていただいて、次に各省の取り組み状況について御報告をちょうだいすると。その後で、まとめて意見交換をさせていただきたいと、そういうことで進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
本日は、実は、全員の御出席というわけにいきませんで、伊藤委員、中川委員、山田委員は、やむを得ない御事情で御欠席というふうに聞いております。
お三方御欠席でございますが、一方、オブザーバーとして角川本部員と中山本部員には御出席をいただいております。
また、4人の参考人の方にお越しいただいておりますので、最初に御紹介だけさせていただきたいと思いますが、外務省の鈴木庸一審議官でございます。よろしくお願いいたします。
鈴木審議官は、国会等への対応のために、途中御退席をされるということですので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。
経済産業省の奥田真弥次長でございます。よろしくお願いいたします。
財務省の青山幸恭審議官でございます。よろしくお願いいたします。
総務省の武田博之課長でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、早速ですが、議事に入らせていただきます。
先ほど御紹介しましたように、事務局から模倣品・海賊版対策の最近の動向について説明をお願いします。
では、小島次長からお願いします。
○小島事務局次長 それでは、お手元の資料1の模倣品・海賊版対策の最近の動向について御説明いたします。
先ほど会長から御紹介がありましたように、この5月までの議論の後、この半年間におきまして、模倣品・海賊版問題について、海外においてもさまざまな動きが急速に展開してきておりますので、まず最初に国際的な動向について御説明いたします。
1ページの1.の(1)でございますが、1)にありますように、5月には世界税関機構と国際刑事警察機構が主催して、第1回の世界模倣品撲滅会議が開かれました。そこでは、世界の模倣品取引は、年間で約65兆円に上ると推定され、巨大犯罪組織やテロ組織も関与しているということが指摘されております。この会議では、18項目にわたる勧告を採択しております。
6月には、シーアイランドのサミットで首脳ベースで、知的財産の不正使用及び海賊行為と闘う必要性を認識したということで合意がなされております。
更に、その下の3)の10月のASEM、それから次のページの5)のAPECの首脳会議におきましても知財に関する合意がなされております。
2ページの真ん中辺りの(2)でございますが、2国間でもさまざまな政策がとられておりまして、まず、1)でございますが、4月には米中のエバンス商務長官、ゼーリック通商代表と呉儀副総理との間で通商共同委員会が開かれ、中国側に対して模倣品・海賊版問題の是正のためのアクションプランの提示がなされております。
中国側ではそれを受けて、8月に権利侵害に対する罰則の強化等のアクションプランを決定しております。
6月には、日・EUの定期首脳会議において、日・EUの共同イニシアティブが合意されまして、次の3ページにございますが、日・EU合同で中国における知的財産セミナーが10月に開かれております。
それから、民間ベースでもいろいろな動きがございまして、11月には日米財界人会議におきまして、効果的な罰則の適用や税関におけるエンフォースメントの強化などを中国政府に促すということを決めております。また、電子電気業界でも日中間で知財保護会議が開かれております。
それから、つい先日でございますけれども、日中韓の首脳会合が開かれまして、そこで採択された「行動戦略」におきましても、日中韓の3国間での知的財産保護の重要性が再認識されております。
それから、各国の動きも活発化しておりまして、3ページの(3)でございますが、まず、1)でフランスはサルコジ経済・財政・産業大臣のイニシアティブによりまして、模倣品対策を最優先課題として取り組むことを決定し、司法税関の強化や、あるいは法改正が進められております。
4ページにまいりまして、この10月には更に米国で、3行目にありますけれども、STOPイニシアティブという模倣品・海賊版対策のイニシアティブを発表しておりまして、そこでは模倣品・海賊版の製造流通業者の氏名の公表や刑事訴追の活発化、それから刑罰を中心とする知財法の改正ということを決定しております。
また、11月にはEUでも同様な動きがございまして、知的財産権エンフォースメント強化戦略というものを採択しておりまして、特定の国を知財エンフォースメント強化優先国として指定し、集中的に取り組むことなどを決めております。
5ページ目は、我が国企業を巡る最近の知的財産権の係争事例でございまして、新聞報道等で既に御承知のことかと思います。
それから、資料2についてちょっとコメントいたしますと、お手元に資料2「模倣品・海賊版対策の主な取組状況」という資料を用意しておりますけれども、これは今年の5月に出されました専門調査会の提言を基につくられた推進計画の各項目について、各省の取り組み状況を整理したものでございます。
内容につきましては、後ほど各省から説明がございますので省略しますけれども、1ページから3ページまでが外国市場対策の強化、4ページ、5ページが水際対策の強化、それから、6ページ以降が国内取締り、中小ベンチャー対策、官民体制強化というような構成になっております。
また、知的財産推進計画の模倣品・海賊版対策の47ページから61ページまでの14ページの抜粋が席上に配付してありますので、適宜御参照いただければと思います。
以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。御質問があろうかと思いますけれども、後に回させていただきまして、早速ですが、各省のプレゼンテーションに移らせていただきます。
今回は、資料2にありますように、模倣品・海賊版対策でございますが、外務省、経済産業省、財務省、総務省から順に御説明をいただきたいと思います。
なお、その他の省庁の担当者にも来ていただいておりますので、必要に応じてお答えをお伺いすることがあろうかと思いますので、各省の担当者の皆様、よろしくお願い申し上げます。
各省に対する御質問等については、4省の御説明をちょうだいした後で、全体で議論の際にお願いしたいと思います。
それでは、早速でありますけれども、外務省鈴木審議官から5分程度でいただければと、よろしくお願いいたします。できれば、資料2にちょっと沿っていただくとありがたいと思います。
○鈴木外務省経済局審議官 外務省の鈴木でございます。今、阿部会長の方から5分でというお話がございましたので、簡単に御説明をさせていただきます。後で御質問があればお答えをしたいと思います。
大きな動きにつきましては、今、小島次長の方から御説明がございましたが、特に外務省がやっておりますことについて資料2及び外務省が作成いたしました資料3に従って御説明をさせていただきます。
まず、資料2の最初でございますが、外務省といたしましては、知的財産推進計画に基づきまして、本年7月に外務省経済局の中に、知的財産権侵害対策室を設置いたしました。
今、知的財産権侵害対策室におきまして、その次にございます、知的財産権侵害対策マニュアルを作成しているところでございます。
マニュアルの主な内容につきましては、お配りいたしました資料3の3枚目に付けてございますが、まだ確定しておりませんので未定稿ということになっておりますが、なるべく早くこれを完成いたしまして、今年度中に全在外公館に配付する予定でございます。
それと同時に、全在外公館におきまして、知的財産権侵害に関する窓口ということで、各館、知財担当官を指名することにしております。これもマニュアルと同時に今年度中にやる予定でございます。
これによりまして、各在外公館における知財侵害について、特に我が国企業の苦情その他、要請の受付の窓口を明確にしたいということでございます。
ちなみに、これまでも各在外公館におけます、日本企業支援窓口というのがございまして、そこにおきまして、知的財産権侵害に関する苦情、あるいは先方政府に対する要請を在外公館、特に大使館を通じてやるということで活動はしておりますが、いろいろな事情がありまして、まだ、現在あります企業支援窓口に対する各企業からの申し入れというのは、それほど多くございません。これが、在外公館で今後体制強化ということで予定しているところでございます。
次に1枚めくっていただきますと、2国間の取り組みということで書かれておりますが、
ここにおきましても、関係省庁の協力の下に、例えば、本年9月に締結いたしました日・メキシコ経済連携協定の中における知財関連条項の盛り込みですとか、あるいは現在交渉中でございます、韓国・タイ・マレーシア・フィリピンとの経済連携協定における知財関連条項の盛り込みの交渉ということを進めております。
これによりまして、先方の注意喚起、具体的に事務レベルでの注意喚起を促すとともに、エンフォースメント、知財保護のための執行体制を2国間の協力の枠組みの中でも整備をしていくということを考えております。
同時に、2国間で、先ほど小島次長からも御紹介がありましたが、首脳レベルも含めて、先方の注意喚起、特に模倣品・海賊版対策に対する注意喚起ということをしております。
それから、次でございますが、欧米の協力ということで書かれておりますが、その前にもう一つ申し上げますと、2国間の中では、特に中国との間では日中経済パートナーシップ協議ということで、次官級の経済協議を毎年やっておりまして、本年も12月20日に北京で開催することになっております。私どもは、外務審議官の藤崎がまいりまして、中国の商務部の副部長と協議をするわけでございますが、そこにおきましても知財関連の問題を取り上げて、先方の注意喚起あるいは取締り体制の強化について協議をするということにしております。
それから、3番目の点でございます。欧米との協力でございますが、これは1つには先ほど小島次長からもお話しがありましたように、EUとの間では、本年の日・EU定期首脳会議におきまして、日・EU共同イニシアティブということを合意しておりまして、それに従いまして、本年度は10月に北京で取締り強化のためのセミナーを開催しております。
現在のところ、今月課長級で日本とEUの間で来年度の計画、具体的に何をやるかということを話し合っているところでございます。
それから、アメリカとの間におきましては、日米規制改革イニシアティブの中の情報技術作業部会におきまして、情報交換あるいは共同作業ということをやっております。
先ほども小島次長から御紹介がありましたアメリカのSTOP事業についての日本の協力、参画というような問題について話し合っているところでございます。
また同時に、中国を中心としたアジアにおける知財問題についての情報交換ということをしているところでございます。
もう一枚めくっていただきますと、多国間協力というのが出てまいりますが、ここにおきましては、特に今年度につきましてはG8サミット、APEC、ASEMといった首脳レベルの会合で、各国における首脳レベルの問題意識を高めていったということで働きかけを行ったところでございます。
以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。それでは、続きまして経済産業省の奥田次長さんからお願いいたします。
○奥田経済産業省製造産業局次長 経済産業省の奥田でございます。日ごろ模倣品・海賊版対策を始めとします知的財産権保護政策に大変御協力いただきましてありがとうございます。今日お配りいたしました資料の4を使いながら、適宜資料2にも言及しつつ、簡単に御説明をさせていただきます。
資料4に経済産業省の取り組みをまとめてございますが、まず、第1に書いてあります知的財産権の海外における侵害状況調査について御説明をいたします。本調査につきましては、知的財産推進計画2004の中で、2004年度中に必要に応じ整備を行うように提言をされてございます。資料2では、2ページ目の一番上にあります「3」侵害状況調査を実施する」に対応するところでございます。これにつきまして、現在、資料4の1ページ目にございますようなスキームでの実施に向けて、関係省庁で詰めの作業を行っているところでございます。
資料4の1ページ目真ん中やや上に「申立」とありますが、これができますのは日本国内の企業、団体等でございまして、必要な証拠を示して申立をしていただきます。申立先につきましては、今年8月に経産省内に設置をいたしました、いわゆるワンストップショップ機能を持っております「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」が当たることにいたしております。実際に調査をするか否かの決定は、原則45日以内に、また調査の結果につきましては、原則6か月以内に回答することを考えております。更に、調査の結果、要しますれば、2国間協議でございますとか、あるいはWTOをはじめとする国際約束に基づく解決を各省とも連携をとりながら図るという形になります。その結果につきましては、事後報告書の作成をするということを予定いたしております。
また、今、申し上げましたのは、申立てに基づく調査でございますけれども、(2)に書いてございますように、それとは別に知的財産権侵害発生が多い国や地域などの状況を政府が定期的、または必要に応じ調査し、公表するということも併せて行いたいと考えているわけでございます。
続きまして、2ページでございますが、2ページの2.で「政府の一元的相談窓口の設置」を書いてございます。
これは、今、申し上げましたように、いわゆるワンストップショップ機能を持つ窓口でございまして、経済産業省の製造産業局内に本年8月31日に開設をいたしております。開設以降、相談問い合わせにつきまして、大体毎月約10件程度ございまして、この資料では11月26日現在、34件の問い合わせなり相談があったと書いてございますが、本日現在では39件という状況になっております。
相談に回答した結果、あるいは海外において大使館やJETROなどを紹介し、具体的な行動に結び付いたもの、あるいは国内において警察と連携して対応し、告発に結び付いたもの、いろいろございます。この政府窓口につきましては、ここに書いてございますように、親切、迅速、適切ということを標語といたしまして対応いたしておりまして、相談を受けてから原則10営業日以内に回答するという申し合わせも関係省庁間で取り決めておりまして、迅速な対応に心がけております。結果といたしまして、好評をいただいておりまして、これまで多くの相談者の方から感謝のメールでございますとか、ファックスなどもいただいているという状況でございます。詳しい相談内容例につきましては、4ページに「3.相談内容例」ということで書いてございますが、いろんな形で解決に導いている例をここに整理いたしております。
次の3.に書いてございますが、日中韓特許庁長官会合についてご説明いたします。11月29日にビエンチャンで行われました日中韓首脳会合によって採択されました「行動戦略」を受けまして、11月30日の日中韓特許庁長官会合において、三国の協力の一層の推進を確認いたしております。
それから、4.でございますが、コンテンツに関する海外輸出統一マークの導入の推進ということでございます。これは、コンテンツ海外流通促進機構という組織がございまして、ここが作成いたしました「コンテンツ海外流通マーク」、これは事務局の方でお配りいただいております資料の「知的財産推進計画2004」の抜粋という一番最後に付いている資料の最後のページにマークが付いてございますが、こういうマークを既に定めておりまして、このマークを海外において商標登録をする、あるいはその普及を行うという形で適法なコンテンツの海外流通を促進しようということでございます。
それから、5.に途上国の知的財産保護能力の構築について触れてございます。途上国につきまして、これまでも知財関係の技術協力を行ってきたところでございますけれども、今年度中を目標に、知的財産権の付与機関でございますとか、あるいは取締機関、税関、民間団体、こういったところに対します技術協力の強化をしていく方向で、具体的な知的財産保護キャパシティビルディング戦略というものを策定したいということで、現在、知的財産戦略推進事務局等と策定の作業を急いでいるところでございます。
次が6.でございますが、不正競争防止法改正等を通じました模倣品・海賊版取締りの強化でございます。これにつきましては、産構審の不正競争防止小委員会におきまして、例えばマーク切除による脱法行為でございますとか、部分品・部品取外しによる脱法行為、あるいは形態模倣行為、著名人の顔写真等の商品等へ表示する冒用行為に対する取締りを強化いたしますとともに、ノウハウの海外の流出を防止するために、不正競争防止法の改正について検討を行っておりまして、本年度中に結論を得ることといたしております。来年の次期通常国会に法案提出を念頭に置きまして、現在、作業を急いでいるところでございます。
更に意匠の早期審査制度の強化でございますけれども、模倣品が発生したことを理由といたします。早期審査申請があった場合には、その申請の日から1か月以内に一次審査結果を通知する運用を本年度末までに策定するということで、現在、作業を急いでいるところでございます。
最後に、中小企業の知的財産権保護対策事業の創設でございますけれども、平成17年度から新規に知的財産権の侵害状況調査などを中小企業の個別要望に基づいて実施する制度を創設すべく、現在7,000 万円の予算でございますけれども、予算要求をしているというところでございます。
以上、駆け足でございますけれども、経済産業省の関係情報を御説明いたしました。
どうもありがとうございました。
○阿部会長 どうもありがとうございました。では続きまして、財務省の青山審議官にお願いします。
○青山財務省関税局審議官 財務省の青山でございます。いつも大変お世話になっております。
お手元に配られております資料2の4ページ辺りと、資料5を適宜対照していただいて、説明させていただきたいと思います。
知財推進計画2004の中の水際取締りの強化に関する事項への対応ということでございまして、資料2の4ページのところに幾つか掲げられてございます。
これらの案件に対し法改正の方向を検討するため、私どもの関税・外国為替等審議会関税分科会の企画部会の下に、知的財産権侵害物品の水際取締りに関しますワーキンググループをつくらせていただきました。
9月以降、鋭意いろいろな議論をさせていただいているという状況でございます。メンバー表を付けていなくて大変恐縮ですが、東大の石黒先生を座長といたしまして、本日御出席の中山先生、それから本日御欠席の伊藤先生、中川先生に入っていただきまして、あとは関税分科会の委員の方々ですが、伊藤委員、村上委員、渡辺委員、これらの方々の間でいろいろ議論していただいているところでございます。
第1回は9月21日に開催しまして、2回目はヒアリングを行いました。これは、東芝、中小企業の方、日弁連あるいは弁理士会の方々からヒアリングを行ったものです。焦点となっております、いわゆるサンプルの提供制度をどういうふうにするかという点を中心にいろいろ議論させていただいているというところでございまして、先週座長のとりまとめ案につきまして、討議をさせていただいているというところでございます。
いろんな御意見がございますけれども、いずれにしましても、恐らく法律を改正するところが出てくるかなというふうに思っておりまして、資料5の方の2枚目でございますけれども、12月中旬の15、16日ぐらいに多分行われると思いますけれども、私どもの審議会の中で一応取りまとめ報告を行った上で、必要に応じまして、来年度制度改正を行うというふうに思っておるわけでございます。
あと、もう一点でございますが、2番目の2国間の税関相互支援協定締結対象の拡大等です。言わば、日本の税関が水際で見ているだけではなくて、相手国税関との関係で知財関係も少しやってみようかなという議論でございます。
1つは、ここに書いてございます(1)でございますが、韓国との間で実質合意済みというふうになってございます。これは大分時間がかかったのですけれども、韓国との税関間の相互支援協定ということで情報交換を行うような規定を明示的に入れております。早ければ、来週ぐらいに閣議でセットしたいなというふうに思っておりまして、こういう中で知財を含めた情報交換が大分変わってくるのかなと思います。
あと、中国及びEUと書いてございますが、中国税関当局とは2000年から知的財産の情報交換等を含めまして、いろいろな議論をさせていただいておりますが、今日現在、私どもの木村局長が中国の方へ行っておりまして、その議論を含めまして先方との会議を行っているという状況でございます。協定を早く結べたらいいかなという感じでございます。
あと、EUとの間につきましても、同じように結んでいこうかなということでございます。
あと、先ほど鈴木審議官の方からありましたように、FTAの中で、知財の重要性を指摘しておりますが、FTAを受けた形で、それぞれの税関間の約束・協定という中で、やはり同じように知財の情報交換規定も入れているということであります。
それから、(2)のところは、先ほどと重複で恐縮でございますが、WCOというのがございます。これは世界税関機構といいまして、税関手続等に関する、やや技術的な国際機構ですけれども、ここで5月にブラッセルで第1回の世界模倣品の撲滅会議がございました。これは来年は秋にフランスでやるというふうに伺っておりますけれども、こういうことに参画したり、あるいはちょうど真ん中ぐらいに書いてございますけれども、アジア太平洋地域フォーラムに参画と書いてございますが、これは実は11月22日、23日と上海で行ったのですけれども、200 名ぐらいの参加ということで、50社ぐらいの企業の方々と、あと26か国・地域の代表の参加ということで、かなり盛大にやったということで、中国側もかなり知財対策に本腰を入れているという感じはいたしております。いずれにしましても、こういうところで各国との税関当局間の協力強化ということでございます。
あとは、キャパビルの観点で言いますと、先週でございますが、知財の取締りに関する研修も実施させていただいております。
あと、大変恐縮ですけれども、2枚おめくりいただきまして、参考2でございますが、最近の税関での輸入差止申立て件数はどうかといいますと、特許権が16件、先ほど新聞記事にございましたようなものも含めて16件ということでございます。特許を含め合計で200 件というふうになっております。
参考3の差止実績でございますが、これはいわゆる件数と点数でいろいろありますけれども、こういう数字になってございます。
とりあえず、最近の状況報告をさせていただきました。
以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。それでは、最後に総務省の武田課長からお願いいたします。
○武田総務省情報通信政策局課長 総務省情報通信政策課長の武田でございます。本来でありましたらば、担当審議官松井が対応させていただくところでございますが、ちょうど今日から日中韓の会合がございまして、ちょうどそちらの方に行っております関係から、本日私から説明させていただきます。
お手元の資料の2で言いますと6ページ、それから資料6でございますが、こちらの資料に即しまして説明させていただきます。
海賊版対策ということで、資料2の6ページのところのインターネットを利用した侵害の取締り強化ということで、私ども総務省といたしましては、この中のa)の部分でございます。オークションサイト等における出品者の本人確認、権利侵害品の削除等を円滑に行う方策による取締り強化ということでございまして、これにつきましては、経済産業省さん、あるいは警察庁さんと、それぞれ役割分担を連携しながら取り組まさせていただいております。
特に、私ども総務省といたしましては、権利侵害品の削除を円滑に行う方策、ここに特に着目いたしまして、関係業界と連携、あるいはそれを支援しながら取り組ませていただいているというところでございます。
お手元の資料6でございますけれども、1枚めくっていただきまして、2枚目以降、ちょっとページが振っていなくて恐縮でございますけれども、私どもは平成14年5月から施行されておりますプロバイダー責任制限法がございます。こちらの中で、こういったネットワーク上に流れる個人の権利侵害をするような情報、これに対しまして関係事業者が円滑に対応できるような、そういうルールづくりということでプロバイダー責任制限法というのが施行されているわけでございまして、この法律の周知徹底、それから法律に基づいて関係事業者が取り込まれることに対するいろいろな面でのサポートという観点で取り組ませていただいております。
御専門の先生方がいらっしゃる前であれですけれども、簡単に申し上げますと、こういったネットワーク上の侵害情報につきましては、真ん中にありますけれども、当事者間で解決しようとしましても、なかなか削除要求に応じないとか、あるいはそもそも発信者がだれかわからないといった問題がございます。
片や、これをプロバイダーに対して情報流通の防止を要求するとか、あるいは発信者情報会議の請求をするということがあるわけですけれども、この辺りもなかなか個人のプライバシーでありますとか、表現の自由の問題との絡みもありまして、なかなか微妙な問題があるという中で、プロバイダーによる自主的な対応を促し、その実効性を高める環境整備ということで、1枚の紙をめくっていただきまして、プロバイダーなどの責任の明確化を図ろうということで、幾つかの要件をこの法律の中に明記したところでございます。
プロバイダーなどが、ネットワーク上の侵害情報をどういう場合に削除しなくても免責されるのか、あるいは削除しても免責されるのかと、こういった規定を法律の中に盛り込んだところでございます。
この法律の法案審議でも、国会の中で相当表現の自由でありますとか、通信の秘密とか、そういった観点からいろんな問題提起もございました。そういう中で成立された法律でございますけれども、何分にも、やはり表現の自由、プライバシーの保護との兼ね合いがございまして、規定内容はかなり抽象的になっております。
そういったことで、こういった規定に沿って、事業者が対応するための判断基準をつくるというのが求められてくるわけでございますけれども、そういったところを、今、関係業者あるいは関係者が一緒になりまして、具体的な取り組み活動をしているところでございます。
既に御案内のように、名誉毀損、プライバシーに関する関係ガイドライン、あるいは著作権関係のガイドラインというものが、こういった事業者関係者間の協力の下に取り組まれていると、そういったものを私どももサポートさせていただいているところでございます。
資料6の1枚に戻っていただきますけれども、こういった枠組みの中で、今、特にネットオークションに関わる問題点につきまして、まさにこの法律の枠組みの中で関係事業者間で、今、いろいろと議論がされ、新たな取り組みがスタートしようとしているというところでございます。
実際に、今、事業者団体、サイト管理者あるいは権利者団体、ここに学識者の方々も入りまして、ネットオークションの場合の侵害情報をいかに円滑に削除できるかというための具体的なガイドラインづくりをこれからやろうということでございまして、私ども総務省といたしましては、こういった協議会の取り組みを積極的に支援していくという観点から、まずはこの検討の場ができるだけ早く設けられるようにということで、働きかけをさせていただいているところでございます。
早ければ、年内、今月中には立ち上げることになるんじゃないかなということでございますけれども、また引き続きこういった取り組み活動を支援させていただきながら、早期に具体的な方策が得られるように、私なりに努力していきたいと思っております。
以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。今、4省から説明をしていただきましたので、それを踏まえて全体の議論に入りたいと思います。
議論の対象がかなり幅が広いようですので、資料2に沿いまして、これを3つに分けて御議論いただいたらいかがかと考えております。外国市場対策、水際対策、国内対策その他の3つのパートでございます。
また、後で戻っていただいても結構でございますが、とりあえず、外国市場対策ということで、資料2の1ページ、2ページ、3ページにつきまして、意見交換をお願いしたいと思います。どなたでも結構でございますので、よろしくお願いします。
どうぞ。
○久保利委員 どうもいろいろ御説明ありがとうございました。
外務省に質問と意見なんですが、抜粋の部分の計画2004の48ページというか、2枚目のところを見ると、外務省がやるべきこととしてマニュアルをつくるというのが書いてあります。
それから一行おいて大使自ら先頭に立ってフォローとか取締当局への要請など、支援活動を積極的に行うということが書いてあるんですけれども、今、ちょうだいしました外務省のペーパーにマニュアルの目次が載っているようですが、そこに大使の役割というのがどうもないような感じがするんです。こういうのは大使自身にリーダーとして、率先してやれというふうに言わないと、なかなか担当官だけ任命しても動かないと思うんですけれども、その辺りについて、マニュアルでどんな記載をされるおつもりがあるのか。また、マニュアルと離れてでも大使にどういう役割を期待して、それをどんな形で各大使にお願いできるのか、その辺りについて御説明いただけるとありがたいんですが。
○阿部会長 では、済みませんがお願いします。
○鈴木審議官 確かにマニュアルには、大使の役割というのが書いてございませんが、実はマニュアルができたときに、外務大臣の名前で各在外公館の大使、あるいは総領事館の場合は総領事あてに訓令という形で出しますので、形の上ではあくまで外務大臣が各大使及び総領事に指示を出すということになっております。
したがいまして、それを受け取りました各在外公館の大使、あるいは総領事は当然のことながら、必要に応じて自分も出ていくということでございます。
マニュアルの基本的な考え方は、在外におきまして日本人の方、あるいは日本の企業の方から、いろいろな苦情あるいは相手国政府に大使館あるいは総領事館として申し入れてほしいという御要請があったときに、答えやすいようにということで、実務的な観点からつくるものでございますが、当然のことながら、その中には大使も入っております。今のところ、実は先ほど申し上げましたように、現在も実は企業支援窓口ということで、知的財産権侵害も含めて、大使館で対応するということになっているわけでありますが、その中には、例えばトルコにおいて、日本のおもちゃの特許に関する侵害が見られると。これは中国製だったと思いますが、それが違法に輸入されていると。水際で取締ってほしいというような御要請がありまして、これに対しまして、大使館として高いレベルで働きかけをトルコ政府にして、取締りが強化されたということがございます。
その場合、大使が任意国政府の担当大臣あるいは担当局長に直接働きをすると、途上国の場合往々にして下から上げていってもなかなか話が伝わらないということがございます。必要があれば、それはやるようにしておりますし、また、今、御指摘がございました点はマニュアルを各在外公館に送る際に、改めて注意喚起をしたいと思います。
○阿部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。
○下坂委員 質問でもよろしいでしょうか。
○阿部会長 どうぞ。
○下坂委員 外務省の方に知的財産権侵害対策室をおつくりいただいたそうでありがとうございます。それから、知財担当官というのがございますけれども、これは例えば外国で中小企業なり、ある企業なりが困ったときに、直接そこで御相談ができるということでございましょうか。それとも、外務省は国と国とのことになるので、通常はJETROで相談を受けるというような形になるわけでございましょうか。
○鈴木審議官 外務省の方からお答えいたしますと、基本的な考え方としましては、各在外公館に、これは実務レベル、一等書記官とか参事官というレベルになると思いますが、知的財産権担当官ということを指名する趣旨は、在外におきまして日本の企業の方が大使館においでになられたときに、対応する責任者を明確にしていくということでございまして、想定していますのは、日本の企業の方、あるいは日本の知的財産権をお持ちの方が自分の権利を保護するために、大使館を通じて相手国政府に働きかけを求められた場合、あるいはこういう苦情があるので何とかしてくれという場合の窓口を想定しております。
直接在外公館、大使館なり総領事館が動いて、相手国政府の担当部局に働きかけをして、例えば水際の取締り強化を要請するような場合もございます。もう少し制度的な問題、例えば、執行体制に問題があるとか、あるいは法令が不備であるというような場合には、いろいろな形で政府間協議に取り上げると、本省に報告をしてもらって、それを基に2国間協議あるいは数国間協議の場で問題を提起していると。
それから、更に深刻な場合には、WTOを通じて、貿易関連知的財産権協定違反ということで、パネル提訴ということも考えられると思います。
当然のことながら、JETROと大使館は現地で緊密に連絡をとっていますので、大使館で高いレベルに働きかけをした方がいいというお話があれば、JETROの担当の方と相談をして動くということで考えております。
○阿部会長 高林委員どうぞ。
○高林委員 この手続は相談、調査、それから最終的にはWTOの紛争処理手続の提訴へ進むということを伺うと、民事訴訟における手続が、相談、調査、訴えの提起と進むのと似ていますが、在外公館が相談を受けたときに調査をする能力と言いますか、権限と言いますか、その辺はどうなっているのでしょうか。最終的には公的なところにまで交渉に持っていこうというからには、何らかの権限がなければ調べられないというふうに思いますが、知財担当官というものがどのような立場に基づいて調査ができるのかという点についてお伺いしたいと思います。
○阿部会長 これは財務省でしょうか。では先にお願いします。
○奥田次長 経済産業省の方でこの制度をつくらせていただいていますので回答させていただきます。今の御質問ですけれども、個別の申立内容によってどこまで調査するかというところは変わってくると思いますので、一概に申し上げにくいところはあるのですけれども、一応、窓口といたしましては、資料4の1ページ目に書いてございますように、「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」、経済産業省の中にございます一種のワンストップショップになっておりまして、全部ここに持ってきてくださいということでございます。そこから先、内容に応じまして、経済産業省で対応できるものであれば、省内の関係部局、それから他省庁にまたがっているようなものであれば、他省庁の協力も得てやっていく形になります。一般的に設置法で色々な形の権限もございますし、それらを活用してやっていきたいというふうに思っております。
ただ、実際にやってみないと、どこまで権限が必要になって、どこまで踏み込む必要があるかというところも、現段階ではよくわからないところがあります。ケース・バイ・ケースで対応して、それでも足りないところは、将来的な検討課題ということで、それを踏まえて適切な対応ができるようにいろんな改正なりをしていきたいというふうに考えております。
○阿部会長 ありがとうございました。どなたかございますか。
どうぞ吉野委員。
○吉野委員 国際的に知財問題がいろんな場で議論されて、認識が深まり、実際のいろんな対応も進んでいくという感じはいたしますけれども、実行はこれからだということだろうと思いますが、2つばかり指摘したいのは、1つは、例えばオートバイは中国が模倣品を非常に盛んにつくっていたということで、これは多少改善の兆しはあるわけですが、一方、中国の国内でいじめられると、彼らははけ口をほかの国々に求めていくということもかなり盛んになってきているように思うんです。
それは、例えばカンボジアであったり、ナイジェリアであったり、それでまだまだ法体系も全然できていないような国々がまだいっぱい世界にありますから、そういう国々も含めて、あらゆる場で理解と認識と、それから制度の確立みたいなものを引き続き投げかけていっていただきたいというのが1つです。
それから、2つ目、中国は我々の感じでは、非常に中央と地方の格差といいますか、それが非常に大きいように思うんですね。
したがって、中央とは建前上、それなりのことができていても、地方では全然進んでいないというのは実態だと思いますので、そういうところを推進していくようなことに尽力をいただきたいということです。
もう一つ申し上げますと、海外での紛争事件というのは、私は当事者の自助努力みたいなものが、まず出発点だと思うんです。したがって、我々も自分でできるところまでは結構やるわけですが、しかし、これが大使館との話になると、もうそれは訴訟が始まっているんですかと、ではもうそちらで頑張ってくださいというので大体今までは終わりなんです。
では、最初から相談に行ったらいいのかということになると、それは私はある程度疑問だと、自助努力が出発点だというふうに思うんですけれども、それをやったことが、むしろあだになるというと変だけれども、こっちは頑張れないから言っているわけで、その辺の考え方みたいのはどういう感じなのかというのをちょっとお聞きしたいんです。
○阿部会長 何かございますか。
○奥田次長 まず、最初の点なんですけれども、また鈴木審議官から補足をしていただければと思いますけれども、吉野委員おっしゃるとおりでして、中国だけではなくいろいろな広がりを持ち出しているわけです。そういう意味では、11月のAPECの首脳会議の場で、APECとしてIPRにもっと取り組んでいこうと、広域的な取り組み強化の動きが出てきていますので、これを是非我々としてもサポートしてやっていきたいと考えております。
あと、資料1の2ページ目にも書いてございますように、2国間協力とか、多国間協力というのは結構重要でございまして、私もいろいろ機会がありまして、資料2の2ページの一番下に中国等アジアにおける知的財産権保護協力に関する日米情報交換会議というのを10月にワシントンで行いました。その後、アメリカの商務省やUSTR等が、中国に行く途中に日本によって、2回目の会合もやったんですけれども、アメリカと話をしていますと、中国だけではなくて、ロシアもブラジルも非常に重要だというんです。
我々日本にいますと、ロシア、ブラジルというと、あまり関係ないのではないかという感じになってしまうんですけれども、結構国によって関心を持っている国が違いますので、日本、アメリカ、それからEU、そういったところが協調することによって、グローバルな取り組みができるんだと思います。そういう連携を是非図っていきたいなというふうに思っております。
それから、2つ目のご指摘の中国における中央と地方の格差ですが、そういう意味で、我々も地方の税関でございますとか、実際に取締りをやっている当局とか、そういったところを中心にいろんな技術協力などもしておりまして、地方と中央の格差について、十分認識をした上で対応して、効率のいい協力をしていきたいというふうに思っております。
最後の点は、結構難しいお話なんですけれども、ホンダさんのような立派な会社は結構先に進まれるというケースが多いんですけれども、一方で中小企業の方なんかは、どこから手を付けたらいいか、何からしたらいいかというのがまずわからない方もいらっしゃいますので、そういう意味で、いろいろな相談窓口というのは、非常に重要だというふうに認識をしております。
それから、今、お話がございましたように、既にそれなりに自助努力といいますか、当事者の自助努力でやり出して動いた結果、例えば訴訟になって、その段階でいろいろスタックしているんだとか、そういうことについても、我々相談窓口といたしましては、ご相談を受ければ、それは訴訟だから勝手にやってくださいということではなくて、対応させていただきたいというふうに思っております。いろんな形のアドバイスができるんじゃないかと。いろいろ相談案件が集まってくれば、過去こういうケースがありましたから、是非こういうケースを参考にしたらどうですかというような御説明も十分できるんじゃないかというふうに思っております。
○阿部会長 鈴木さん、何か一言ございましたら。
○鈴木審議官 今、吉野委員からお話がありました点というのは、一番在外公館の担当者にとっても難しい点ではないかという気がいたします。自助努力をされて、国内の司法手続、救済手続に訴えられるということを受けて、側面的に大使館なり総領事館なりが、相手国政府の担当部局と話をするというのが、恐らく最も重要なこれからの活動になってくるのではないかという気がいたしますので、その辺はマニュアルの中でもちょっとどういうふうに工夫して書いたらいいかわかりません、書きたいとは思っていますが、自助努力で皆さんが国内の救済手続を取られること、あるいはそれ以外に政府として一番やりやすいのは、政府間協議にもっていくなり、あるいはWTO提訴なりするという形ではっきり表に出すということが1つあると思うんですが、中国の場合難しいのは、なかなかそういうところへ持っていってしまうと、却って、先ほど話がありましたように、中国当局から嫌がらせをされるという話も、日本の企業の方だけじゃなくて、ほかの国の企業の方からもよく耳にするところでございますが、その間を埋めるというのは、恐らくこれからの努力だろうと思いますが、大使館として中国なり、相手国政府の知的財産権保護を担当している部局の人間とよく連絡を取り合って、普段から非公式にものが言えるような形をつくっていくということではないかと。それが1つのやり方ではないかという気がいたします。
○吉野委員 相手のペースですと、えらくどんどん時間だけが過ぎていって、結局はどうにもならないというケースがほとんどなんですね。だから、それをいかに加速して短い時間で決着を付けていくかというところだと思うんですけれども、そんなに専門的なことをお願いしてもしょうがないというふうには思っているんですけれども。
○鈴木審議官 御指摘の点はよく踏まえてやりたいと思います。1つは、WTOを使ってパネルに行かないで、60日間の2国間協議をやるということで、時間を限定して協議をやるという手もあると思うんですが、これをやると話が表に出てしまうものですから、なかなか難しい面があると思いますので、2国間の枠組みを使って、まさに先ほど御紹介がありましたように、日中韓で首脳レベルで、これから知財保護のための枠組みを考えていこうという動きも出ていますので、そういったところも使って、少し考えていきたいと思います。
○阿部会長 ありがとうございます。時間の関係で、また戻らせていただきたいと思いますが、とりあえず進ませていただきたいと思います。
資料2の水際対策、4ページ、5ページに入らせていただきたいと思います。皆様の御意見、では竹田委員お願いします。
○竹田委員 私は、具体的推進計画の模倣品対策に関しましては、産業構造審議会の商標制度小委員会と、同じく不正競争小委員会と並行して進めております知的財産研究所の不正競争防止法に関する調査研究委員会に属して、この問題の議論をしてきておりますが、後者につきましては、主として模造品対策のために2条1項3号の商品の形態についての規定を整備することが目的です。
そして、2条1項2号の著名商品等表示についても刑罰規定を設ける方向で議論が進んでおりますし、また同時にその方向で進むことには、関税定率法での禁制品として不正競争の組成品が含まれるという方向で進められることを期待しているわけですけれども、この点は、経産省の担当部門と財務省との話し合いも行われているように聞いておりますので、そこでの解決を期待することにして、商標制度の方ですけれども、個人の模倣品の輸入や所持を禁止するということにつきましては、商標法には、商標権侵害罪は勿論でありますし、そもそも商標の使用となるのは、いわゆる業としてという要件が加わっておりますので、業要件を外さない限りは、商標法で個人の模倣品の輸入処理について水際措置を取る方向に行くことは、まずできない問題です。
その点については、商標制度小委員会での議論は、業としてという要件は、知財4法並びの要件であり、個人の模倣品の輸入・所持の問題だけで、商標法を改正して、その要件を外すということは困難ということでは大方の意見は一致しているのではないかと思います。そうなると、その方向での対応というのができなくなるわけです。
それと、海賊版につきましては、私、著作権法には関係していないので、どんな議論が行われているかわかりませんけれども、少なくとも著作権法の30条で私的使用についての複製物の使用は認められているわけですし、著作権侵害罪にも該当しないことになるわけですから、同じような問題があるのではないかと思います。
しかし、個人の模倣品海賊版の輸入・所持を水際措置で止めるということができない以上は、模倣品問題、海賊版問題の根本的な解決はできないと思いますので、それであるならば、模倣品や海賊版の輸入・所持を禁止する独立の法律をつくった方がいいのでないかということで、私の関係しているところでは、今まで何度も提言してきたんですが、当局側は、御説は傾聴するに値するけれども、省庁間縦割の行政の中では、それをやることはなかなか困難という答えばかりですので、そうであれば、横断的事項であるし、知財戦略の全体に関わることであるから、一度知財戦略本部で提案してみようというときに、ちょうどこの会が開かれたので、資料7をつくりまして提案させていただいたわけです。簡単に説明させていただきますと、「模倣品・海賊版の輸入・所持禁止法」ということになっています。要項について、試案の上に暫定版とまで付けてあるのは、基本的方向はこんなことで、更に議論を深める必要があるという認識の下につくったものです。
まず目的は「この法律は、模倣品・海賊版を不法に輸入し、所持すること等を禁止することにより、知的財産権侵害行為を助長する行為を未然に防止し、不正な商品の蔓延を防止することで知的財産権者の正当な利益の確保に資することをもって、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」。
2番目は、定義として「模倣品・海賊版とは真正の商標権者又は著作権者から使用等に関する正当な許諾を受けずに製造、販売及び譲渡等された製品等をいう」。
3番目の禁止される行為は「何人も、模倣品又は海賊版であることを知って、私的使用のために模倣品又は海賊版を輸入し、輸入した模倣品又は海賊版を所持し、第三者に譲渡又は引き渡してはならない」。
4番目に、その処分として「前記3に該当する行為をした者又は該行為者からその情を知って当該模倣品又は海賊版を譲り受け又は引き渡しをうけた者が所持する模倣品又は海賊版は、行政の処分によってこれを没収又は廃棄することができる」ということです。
若干コメントをいたしますと、このような単独立法ができますれば、国外に対して我が国の模倣品・海賊版対策を、言わば宣言するという意味で、非常にインパクトのある法律になるのではないか。
2番目に国内に対しても、国民の啓蒙、意識の向上に資するところが多いのではないかと思います。
3番目に、私としては非常に重要だと思っているのは、先ほどの4でありまして、つまり行政処分としての没収、廃棄にとどめることによって、国内法で著作権の複製の私的使用や、業としない商標の使用が、著作権侵害や商標権侵害とならないこととのバランスを取っていく。あくまでも行政処分であって、刑罰権の行使ではないということで、そこのバランスを取ることが重要ではないかと考えているわけです。
最後に検討事項として書いてありますのは、検討すべき事項はいろいろあるかもしれませんけれども、まず第1に3の「何人も、模倣品又は海賊版であることを知って」ということ。それから、4の「その情を知って」という、この認定手続をどうするかというのが、1つの問題点。
それから、次に行政機関として、どの機関を指定するかという問題があります。これは、まさに水際措置ですから、財務省は驚かれるかもしれませんけれども、これは税関が入らなかったら意味がないだろうと思いますし、今度は国内に入ってしまった後のことを考え行政処分で没収、廃棄をすることになれば、司法警察機関も必要になってくるだろうと。この点について、どの機関が規制することがいいか、更にそれ以外にも必要かということを含めて検討する必要があると思います。しかし、先ほど言ったような趣旨で、この際本当に水際措置について腰を据えた対策をするならば、個々的な対応も大事だろうけれども、こういう独立立法でしっかりとした方針を示すということが重要ではないか。そういうことで、このような提案をさせていただきました。
以上です。ありがとうございました。
○阿部会長 ありがとうございました。今日、この文言まで議論することは難しいと思いますけれども、何か御意見ございましたらいただきたいと思います。
どうぞ。
○中山本部員 刑罰規定は入れないんですか。
○竹田委員 はい、刑罰規定は入れないということです。
○中山本部員 それでは、輸入はだめだということですね。
○竹田委員 はい。参考に申し上げますと、行政の処分としての没収というのは、未成年者飲酒禁止法とか喫煙禁止法にも現実に規定としてありますし、関税定率法では行政の処分としての廃棄等もあるわけですから、全く新しい制度をつくるのではないと思っております。
○阿部会長 どうぞ。
○高林委員 啓蒙に資することであるということですけれども、そうすると何も水際に限ることではないように思います。国内で海賊版、模倣品がつくられて、それを所持していることというのも、道徳な意味で言えばよろしからぬことであろうかと思うわけですが、水際ではそれは取り締まるけれども、国内の場合は取り締まらないという仕分けがされている法律なんでしょうか。
○竹田委員 まずは、水際措置としてそれを考えることが、今の時点では非常に重要ではないかと思って、水際措置を念頭に置いて、こういう規定ぶりを考えているわけですけれども、将来的に言えば、何も水際措置に限ることではないだろうかというのは、おっしゃるとおりだと思います。ただ、そこまで広げて立法するなんていうことになったら、今の時点ではなかなか容易でない、このぐらいに限ったって容易ではないと私は思っていますので、そこまでいけるものだったら、それは勿論そういう方向での対応もお考えいただければと思います。
○中山本部員 もう一つだけ簡単にいいですか。輸入、所持、譲渡、引き渡しはいけないと。だけど、没収は輸入だけという趣旨なんですか。3で禁止されるのは。
○竹田委員 故意でこういう行為をしてはならないということですね。
○中山本部員 所持もいけないんですね。
○竹田委員 はい。それは、全部私的使用のために輸入した、その海賊版を所持するというところに全部かかってくるわけです。
○中山本部員 それで、没収するのは。
○竹田委員 没収するのは、だから、水際で止められれば一番いいわけですけれども、止められないで輸入した人が所持しているもの。それから、輸入している者から、そこで先ほど言った「その情を知って」という言葉が入っているわけですけれども、輸入者が海賊版あるいは模倣品であることを知って輸入したということを知って第三者が譲り受けて所持していると。
○中山本部員 それも没収されるんですね。
○竹田委員 はい。
○中山本部員 そうすると、国内で作成された違法な物を所持している人は没収されないけれども、輸入された違法な物を所持している人は没収されるということになりますか。
○竹田委員 はい。この限度ではそうなります。ですから、先ほどの高林委員のような質問があるのは、当然だと思います。
○阿部会長 大変いい御提案のように見えますけれども、今日時間的にこれを議論するゆとりがありませんので、これを事務局の方で受け止めていただいて、もし御説もっともだとなったときは、ちゃんとやるように持っていく必要があると思いますけれども、そういうことで取り扱わさせていただいていいでしょうか。
○竹田委員 結構でございます。
○阿部会長 どうぞ。
○青山審議官 一点だけ、今の私どもの水際の規制というのは、基本的に国内でやっている規制について、その実効性を担保するために水際で規制するのが、より効率的だと思うものに限って規制しているということでございますので、今の議論を聞きますと、少し直観的な言い方では、なかなか今の私どもの水際規制という頭になじみにくいかなという気がいたしますので、それだけコメントとして申し上げます。
○阿部会長 また、具体化の過程で、進むとすれば財務省に御意見を聞くことがあると思いますから、またそのときよろしくお願いいたします。
○久保利委員 1点いいですか。今の大変いい提案だと思いますけれども、逆に高林さんおっしゃったような問題もある。中山先生が御心配の問題もあるということで、私、修正案で、竹田先生の案に更に国内でつくられたものについても、所持、譲渡等を禁止するという形も、逆に先生が心配しておられる、ちょっと広くなり過ぎるので大変難しいんではないかというものも、事務局では御検討いただきたいと。その上で、これが、今、財務省もおっしゃったように、海外のものに限るからよくないんだみたいに言われたんでは、全く竹田先生の本旨が生きない話だと思いますので、そこを含めても検討できるかどうか。もうちょっと拡大する方向でも1つお願いしたいと思います。
○下坂委員 私もお願いしたいと思います。それから、そのときに罰則も含めて考えていただければありがたいと思います。というのは、例えば、酔って運転してはいけないと、すごい罰金額が決められましたら、誰もやらなくなったというのがありまして、啓蒙的なものだけだとちょっと無理かなと。10円でもいいから罰金を付けていただけるような罰則というものがあったらと思っています。
○竹田委員 1つだけコメントをさせていただくと、私はこれに罰則を付けないということが、言わばこの法案の命みたいなものだと思っています。それはさっき説明したとおりです。だから、私としては、あくまで行政処分にとどめたい。それで十分効果はあると思います。
○阿部会長 また、御相談させていただく機会があると思いますので、とりあえず事務局の方で、今のいろんな御意見を踏まえてよろしくお願いいたします。
○荒井事務局長 わかりました。
○阿部会長 これ以外の点で、4ページ、5ページについて御発言いただきたいと思います。ほかの点、いかがでしょうか。
どうぞ。
○久保利委員 質問なんですが、技術判定機関を活用した侵害認定をどんどん進めるようにという話が計画には載っておったと思いますけれども、現状は今どんなふうに進んでいるんですか。
○青山審議官 現在、問題がありました都度、弁護士、あるいは特許庁等を活用しておりますし、実務上かなりこれを積極的にいろいろな形でやっていこうかなと思っております。
したがいまして、実際に例えば、私どもの出先の東京税関で認定をどういうふうにするかというときに、先ほど申し上げたのですけれども、現在検討しておりますサンプル分解制度、こういうのを新たに活用できるのではないかと思っておりますので、そこら辺の制度を、早期に導入したいと思っております。そういうものを含めまして、全体として御判断いただきたいと思っております。
○久保利委員 私が聞きたかったのは、むしろ技術的な判断部分です。これは弁護士に聞かれても大体だめな話で、そういう技術的なものをしっかり判定するようなもの、これは税関の中に置く、税関内でいいわけですけれども、そういうものをおつくりになるとか、そのための組織づくりだとか、それは今お考えになってらっしゃるのか、それはまだ進んでいないのかということです。
○青山審議官 そのような考えは今はありません。むしろ、それは外部のいろいろなところに鑑定なり、あるいは一番わかっておられるのが権利者でありますから、権利者の方に見て頂いてどうだということをやっていただくのが、一番はっきりしております。
そういう前提で考えると、ここにございますような、いわゆる分解制度でございますけれども、これを権利者の方から申し出てできるような制度をつくることが、まずは一番効率的ではないかと思っておりますので、これを中心に、来年度の改正等をどうするかという議論をしているところでございます。
○久保利委員 ちょっと昔の議論で、細かいことは忘れたんですが、要するに、日本版ITCをつくろうという話が、だんだん小さくなっていったみたいなイメージを持っていたので、少なくとも技術的なものぐらいは、自前でばしっとしたものがやれますよというのがないと、サンプル分解にしても何にしても、迫力が出ないのではなかと。そういう意味では、むしろ積極的に財務省がそこまではやりましょうと、そこの判定からあとどこまでやるかという問題はあるにしても、逆に債権者に何を持ってこい、かにを持ってこいと行っていると。結局さっきの吉野さんの話じゃないけれども、裁判所にも持っていかなければいけない。こっちにもやらなければいけない、あれもしなければいけない、これもしなければいけないというと、もう債権者の方もほとほとへばってしまう。その辺はうちがちゃんとした機関で認定しますから、必要な資料だけ持ってきてくれれば、やりましょうというふうに言っていただくようにという趣旨の計画だったんではないかと私、思い出したんですけれども、違いましたかね。
○青山審議官 補足いたしますと、結局やはり権利の中身というのは権利者と、それからやはり特許庁が一番知悉していると思います。
そういう意味で、私どもとしましては、現在特許庁への照会をやっておりますし、更に、もともとわからないときどうするかということでありますから、権利の中身が一番おわかりになっている権利者に対し、これをまずはやっていただきたいというふうな形で考えたいということでございます。
○阿部会長 どうぞ。
○高林委員 中山先生はこれを検討しているワーキンググループのメンバーだということですので、お伺いしたいんですが、確かに、今、久保利委員がおっしゃったとおり、これまでの会議では、ITCの話も出たし、私も裁判所の仮処分の活用という話をした記憶があるわけですけれども、その辺はワーキンググループではどのようなとりまとめの方向に協議されていくということなのでしょうか。
○中山本部員 実は、大変申し訳ないんですけれども、第1回の会合の直前に入院いたしまして、つい最近退院したばかりで、一番大事な会合には出ていないんです。したがって、議論の内容を申し上げる資格はないんですけれども、ただ私個人の意見を言えば、余りばしっと税関でやっても困るなという気がします。というのは、今、事件が起きているのを見ていますと、プラズマだとか、液晶だとか、フラッシュメモリーだとか、こんな事件を税関が特定の機関を使ってばしっと判断しても、同じ事件がほぼ間違いなく裁判になります。あるいは、韓国の事件なら韓国の裁判所でも裁判になります。場合によってはWTO提訴という話にもなります。そのときに、ばしっとやった判断と、裁判所の判断とで齟齬が生じた場合どうするかという、日本の法体系においては非常に大きな問題が起きるわけです。したがって、ばしっとやる機関をもしつくるとすれば、民事と行政とをどうするかというのは、これは何と言いますか、日本の国の在り方を変えるような大議論をしないとできないのではないかという気はしています。
○阿部会長 どうぞ。
○下坂委員 その先生の御欠席なすった会議の議事録が出たんですが、自由討論等の検討内容につきましては、現在審議しているのでこの段階で発表しないという文章が付いておりまして、わからないんですが、私は、中山先生のご意見と違っております。前にITCの話を出しまして、そのときはやっつけられて引っ込んだといういきさつがあるんですが、まだ捨てておりませんで、それでITCとまではいかなくても、当事者の納得がいく解決を図る何かを設けるべきではないかと。
税関でのいろんな模倣品には、非常に専門的な分野に対応するというのが必要な場合と、そうではない簡単な事案の場合もあると考えますので、専門分野に対応するようなもののときには、特別な組織とか機関というのを設置していただきたいという主張をいまだに持っております。模倣事件の場合には、複雑で時間がかかるケースというのが勿論あります。そういうのは、そちらに回していただく。
また、簡単なものは、簡便で適正で迅速にということで、現状のやり方でやれるんであれば、それはそこでやっていただく。その特別な組織、機関の設置というのは、1つにはそれを目に見える形でつくることによって、国内外の模倣品、模倣企業に対する抑止力を高揚させることができるんではないかというふうにも考えております。勿論、日本人にとってもそこできちっとやっていただくことは非常にいいと考えておりまして、そこでかなりちゃんとした結論を出す。あと裁判所で齟齬した場合という御心配がおありのようでございますけれども、それは当然あり得ることで、債権者なり輸入者なりが納得いかなければ、裁判所に持ち込んでまいりますし、裁判制度はそもそもそういうものではないかというふうに思っております。
作るものとしては、例えば、財務省内に税関長の権限からある程度独立した技術判定機関、もしくは第三者機関として設けるという方法とか、税関内に当事者双方の主張を反映させられる審議機関を設けるという方法もあるかと思います。特に中小企業にとりましては、費用だとか、先ほどの大使館ではないですが、裁判所というのもまた大変気の重いところがありまして、行政でやっていただければ迅速にいけるんではないかと考えておりますので、もう一度、ITCとまではいかなくても、それらしい第三者機関というものがあればということを、ここで提案させていただきます。
○阿部会長 ありがとうございました。私の記憶では、この議論がありまして、明快な結論に必ずしも至っていなかったような気がしますので、というのは逆に言うとこれからの課題がたくさんあるということなんですが、我々の記憶を整理するために、事務局から簡単に、我々5月にどうだったかということを。
○小島事務局次長 お手元の推進計画の抜粋の52ページの真ん中以降、52ページ、53ページに、前回の議論のポイントが書いてあるわけですけれども、先ほど来出ていますように、この春に議論したときは、日本版ITCで模倣品海賊版の専門的に判断する機関をつくったらどうかということから議論が始まって、それの功罪を議論した結果、この(1)の4行目ぐらいにありますけれども、模倣品・海賊版対策は、そのスピードが重要である、それから、今、下坂先生からありましたように、中小企業にとって手続や費用の負担が少ないことが実際上不可欠であるといった、事案の性質や権利者のニーズに応じて多様な手続を活用できるように、イからヘ、更にその下のなお書きのさまざまな手段について検討して制度整備を行うことになっていたわけでございまして、その中にサンプル分解制度も1つの活用の方策であるし、ここの53ページのニの技術判定機関で、きちんと専門的に技術面での判断をするというものもその1つであるわけです。
それから、ホの裁判所の仮処分命令も活用するということもあります。裁判所を活用できる人はそういう活用をするということ。
それから、その下になお書きでありますが、税関内審議機関による侵害認定、これは日本版ITCを税関内に入れたような審議機関でありますが、これについては、より温度差が大きかったので、なお書きという形になっていますけれども、こういったいろんな案があるので、こういったものを含めて侵害判断が迅速かつ適切にできる、あるいは、権利者のニーズや事案の性質に応じて多様な手続が取れるよう検討するということが、前回の最終的な結論としてこういう報告書になっているということでございます。
○阿部会長 最終的な結論なんですけれども。
○小島事務局次長 結論というか、そのようなことで、以下のようなさまざまな手続について検討を行い、必要に応じ制度整備を行うということで、これがそれぞれの担当のところに検討が委ねられたということです。
○阿部会長 そういうことなんですが、ここに4つの省に検討が委ねられたことになっているわけですね。
○小島事務局次長 はい。
○阿部会長 その経緯を見て、あるいはこの知的財産戦略本部でもう一回議論をした方がいいかもしれませんので、その辺、どうですか。今、各省の御意見をちょうだいしても、多分我々の議論を丸投げしたようなことになっても申し訳ところもあるものですから。
どうですか、事務局、取り扱い。
○荒井事務局長 今、出た御意見等もう一遍進捗状況を調整して、その後の進め方を会長に御相談いたします。
○阿部会長 どうですか。久保利先生、下坂先生、せっかくの御提案ですが、現在のところは、今日議論して詰めるという状況には、私はなってないと思いますので。
○久保利委員 少なくともこの計画でつくったときに「イロハニホヘ」とあって、少なくともこういうものはむしろ積極的に考えていこうよと。どうしても難しい点があるならば、それはそれで考えるというのが、なお書きのところにあったわけで、したがって、ニはどうしてだめだという検討を、この4つの省庁が本気で検討したのかどうか、今までのお話だと、財務省は検討したと、そういうワーキングチームをつくったという話は聞きましたけれども、ほかの省はどういうふうにおやりになったのか、みんな4省で相乗りでおやりになっているとすれば、その人選については私は若干問題はあるんではないかと。何で学者先生ばっかりなるんだということも含めて、もう少し民間の人も入れたっていいんじゃないのというところもあって、それも含めて見直すというのもあり得るのではないかと。別にここで議論するつもりはありません。
○阿部会長 そうだと思いますので、まず今日ここにおいでになってない省もありますので、調査してもらいまして、少し整理していただいて、またこういう会に御議論いただくとしても、それがまず、久保利先生おっしゃったように、こういうふうに書いてある以上は、これについてどこまで進んだかということを、まずきちんと把握した上でということで、お願いします。
○荒井事務局長 状況を調べてみます。
○阿部会長 事務局に余りばんばん押し付けてしまうのも問題ですけれども。
どうぞ。
○角川本部員 今、話題になっている財務省のワーキンググループの中の侵害物の水際政策の件ですが、この中にはCD、音楽パッケージの逆流が今度措置をすることが認められましたけれども、これも入っているんでしょうか。
○青山審議官 検討対象には入れておりません。
○角川本部員 この中には入ってないんですね。
○阿部会長 それは、もともと余り意識してなかったところもありますので。
○荒井事務局長 それは、法律に基づいて従来の税関の仕組みでも、きちんとできるという前提です。
○青山審議官 そこは元来改正する必要がないという前提で対象と考えなかったということです。むしろ、ここは専門機関をどうするかとか、そういう議論の中で現在の法律をどういうふうに改正するのか、法制的にどうなのか、それをちょっと議論させていただくということでございます。
○角川本部員 そうすると、例えば、今、経産省さんで担当しているCJマーク、パッケージコンテンツの商標権による海外の取り締まりをやってもらっているものもまた、逆に向こうからCJマークが付いたパッケージがまた海賊版として、そのまま還流されてくる可能性がありますけれども、これについても一応、これはこれでCDと同じような形でここには入れない方がいいというお考えですね。
○青山審議官 入れないほうがいいといわれるとちょっと即答しにくいのですけれども、法改正の必要がない、そういうことになろうかと思います。
○角川本部員 恐らくこのCJマークが各コンテンツメーカー、映画ソフトだとか音楽ソフト、あるいはゲームソフトに適用されていく過程の中で、今度はコンテンツ・ジャパンというマークが付いたものの海賊版が日本に還流してくると。そのときには、恐らくDVDのリージョナルコードも解かれてしまっている時代で、それをどうやって抑えていくかということも是非、このCJマークの普及とともに明示しておいていただきたいんです。
○中山本部員 ここに入れないという意味は、当然入っているということなんです。つまり著作権とか商標権に乗っかっているものは当然入っているので、ワーキンググループでは議題にならなかったという意味です。議論するまでもないという意味で入れない訳です。それを税関で押さえられないという意味ではなく、逆に当然押さえることができると言うことです。法施行されたら押さえるんです。ですから、議論しないという意味です。
○角川本部員 そうなると、老婆心ながら、そうですか。
○阿部会長 次の商標の議論もやっていただいて、それに関係あると思いますので、どうでしょうか。
○角川本部員 わかりました。確認だけさせていただきました。
○阿部会長 まだ御議論いただきたいと思って、そういう御質問もあると思いますが、時間の関係で3の国内での取り締まりを強化する、6ページから9ページにとりあえず入らせていただきます。是非御意見をちょうだいしたいと思います。
いかがでしょうか。
○角川本部員 発言してよろしいですか。この3番目の中の冒頭に出てきますけれども、インターネットにおいて、プロバイダー法ができ上がっているわけですけれども、一方で昨今、御存じのとおり、ブロードバンド上でネットワークゲームというのも、非常に盛んになってまいりました。もしかすると、このネットワークゲームがパッケージゲームソフトを駆逐して、ほとんどのゲームソフトがネットワーク上を持って展開される時代が来るんではないかというふうに想定されている状況で、この世界は日々新たに変わっております。
そういう中で、本来ゲームソフトメーカーがネットワークゲームの中で、家庭内で普通の人に遊んでもらうようなレベルでつくったゲームソフトが、そこがプロが介入してきて、そこでレアカードゲームってありますね。今はもう、例えば、遊戯王というは、世界で大変な、日本の成功だけではなくてアメリカでも施行して今、ヨーロッパでもブームになっていますけれども、例えば、これのネットゲームのレアカードゲームに値段が付いて、ネットワーク上のバーツの値段だけではなくて値段が付いて、これが例えば中国人とか韓国人が介入してきて、日本の物価の高さと、それから中国の物価の高さで、要するに、日本では5,000 円とか1万円とか10万円というレベルのレアカードゲームが、向こうでは大変な価格になるわけです。そういうふうな事例が起こってきているんです。そういうものまで、現実に今、ゲームの中で起こっていることが、現実の中で混在してきているようなことを、総務省さんが御存じかどうか聞きたかったんですけれども。
○武田課長 今、角川本部員が言われたところは、私もお話を聞きながらすぐ具体的なイメージが湧きにくかったんですけれども、仮にそれが、実際日本のサイト管理者なりプロバイダーが関わっておって、まさに権利侵害だという情報で確認できるんであれば、まさに今のプロバイダー責任制限法の中で、事業者対応が期待されるわけでありますし、また関係者が発信情報の制御をするとか、そういった取り組み対応はできるのかなと思っておりますが、ただ具体的な事例が今どうあるかというのは存じ上げませんし、また仮に中国のサイト管理者とかになりますと、それは制限法の対象外になってしまいますので、そこには限界があるのかなと思っております。
○角川本部員 国内法ではあるということですね。
○武田課長 はい。
○角川本部員 ネットワークの問題というのは、もう日本と中国と韓国が入り乱れてくる時代なものですから、そこら辺も含めてこれからどうしていったらいいかということですね。
それから、普通、例えば、今、任天堂がつくっているゲームみたいなものを、家庭内で楽しむ形になっているわけですけれども、それもネット場の中で、ゲームセンターで遊ばれているゲーム、あるいはパチンコみたいなものと、混在してくる時代になんだと思います。従前であれば、これは家庭内で遊ぶものだとか、従前であればこれはパチンコ屋さんでやっているようなパチスロの問題だなとか、それからゲームセンターのものとか、そういう点で風営法だとか、いろんな法律によって規制されているんですけれども、ネットワークの中でそれがもう混在としてくる時代になってくると、現実の法律をネットワークの中で適用されていくのか、そうでないのかというのが、ちょっとこういう場で是非イメージしていただきたい時代がもう来ていると思います。
そういう点で、この調査会でもバーチャルの世界でどこまで物が売買されたり、オフ会と言うんですか、オフの仲間たちの会合が行われていて、そこでものが売買されているという、また異常な世界が既にできている。ですから、そういう点で1回ヒアリングをしていただいて、もうそういうところまで来ているような気がするんです。恐らく皆さん呆然として、本当にこのままで日本はどうなっていくんだろうと。あるいは、世界がどうなっていくんだろうと。
○荒井事務局長 もう少し今の話の実態を調べてみまして、専門調査会で対応できるのか、あるいはどういう問題なのかも含めて、実態の問題、それから著作権法のなど、あるいはそういうサービスプロバイダー法的な話なのか、あるいは国際司法のお話、法律化とか、もう少し実態を教えていただいて考えます。
○阿部会長 推進計画を頻繁に改定していかなければいけないですね。
○荒井事務局長 御指摘のとおり、今年の2004年には、そういう意識での計画にはなっておりませんので、もう少し教えていただきたいと思います。
○阿部会長 ありがとうございました。あとどこでも結構です。
どうぞ。
○高林委員 形態模倣に対する刑事罰ということで、前回もここで形態模倣の構成要件というのが話題になったと思います。どのような形態模倣行為が、不正競争防止法で言う競争行為なのかということ自体が、かなり曖昧だけれども、それに刑事罰を加えていくことがうたわれているわけですから、構成要件を明確にするのが困難であるとの指摘もありました。先ほど竹田先生が、そのような小委員会のメンバーであるということも伺いましたので、その辺はどのような議論がされているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
○阿部会長 それは竹田先生にお伺いした方がいいですね。
○竹田委員 私は小委員会の委員ではないですけれども、同時並行的に知財研で同じことをずっとやっていて、そこの議論は大分煮詰まってきたところですが、まだ結論が出ている段階ではないですね。ただ、例えば、期間の問題にしても、3年の現行説が有力だし、一番問題になったのは、規定では模倣ですが、そこのところをいわゆる類似まで広げるかどうかというところについては、広げるという意見は全くなくて、現行法でいく。ただ、形態については、この専門調査会でも問題になったような、内部の構造であっても外から認識できるような構造も形態の中には含むという方向で、3号を整備しようという意見が今のところ有力だということぐらいで、まだ結論が出てないので、私がこうなりますというは権限を超えることですから言えませんけれども、そういうことと、刑事罰を入れるのであれば、不正の目的、あるいは不正競争の目的を持ってということを入れる。その辺のところであれば、構成要件的にはかなり絞られているし、それをかなり広げて刑事罰にするんだと問題が大きいけれども、3号の改正をその辺で考えていくならば、刑事罰の点も今、言ったような方向で対応するということでいいのではないかという意見が比較的有力であるということだけ、今の段階ではお話しておきます。
○阿部会長 よろしいですか。ほかに、どうぞ。
○久保利委員 いろいろ文句ばかり言っていて申し訳なかったんですけれども、評価するところも幾つもあるわけでありまして、特に肖像権についての取り締まりと言いますか、不正競争防止法の改正で、これは何とかクリアーしてほしいというのに対して、迅速に御準備をいただいているようで、非常にありがたいというふうに思います。
以前、本当にまだ、あのヨン様があんなに有名になる前に、委員会で私、ペ・ヨンジュンの話をしたことがあると思うんですけれども、もう本当にあれよあれよという間にこういうふうにブレイクしてきて、相変わらず竹下通りでは、その無許諾商品が売られている。韓国あるいは中国の批判をする前に、日本自身の対応がうまくいってないという実態もあるわけです。そういう意味で、非常に迅速に立法の準備を進めていただいて大変ありがたいと思います。
それから、警察も昨日辺りの報道を見ていても、ブランド品のにせものの見極め方をおそわって、素早く露天商のところに行って取り締まれる捜査官を何十人もつくったということもあるようです。
そういう意味では、非常に一生懸命やってらっしゃると。これもまた高く評価できると思います。
やはり決めたことは早くどんどんやっていただくというのが必要だと思いますし、我々もそういうふうに頼もしい行動を取っていただくことについては高く評価したいと思いますので、是非前向きに各省庁ともお願いしたいと思います。
ところで、どうも今日の角川さんのお話も聞いていて、世の中のスピードが年度単位で考えている時代じゃなくなってきているのかなと。
それから、国際的にも、韓国とも中国とも日本が連携したり、EUと組んだり、いろんな形でドラスティックにスピーディーに動いているなという感じがしまして、年度にこだわらず、我が国独自の行動計画みたいなものは、随時発表していっていいんではないかと、ですから四半期決算の時代ではありませんけれども、計画の方も適当な時期がもしあったらば、できるものはもう早く見直して、もっと追加していってもいいのかなという感想を持ちました。
以上です。
○阿部会長 どうぞ。
○下坂委員 済みません。終わりの方でお願い申し上げようと思っていたんですが、今、久保利先生の方からお話が出ましたので、私の方も、模倣品・海賊版対策等は緊急の課題ですから、来年の推進計画2005というのを待つのではなくて、できるだけ早くアクションプランとか、行動計画のような形で政府がとりまとめて公表いただくというような方向でお進みいただきたいというのが、大変強い要望でございますので、ここで発言させていただきます。
○阿部会長 わかりました。是非そういう方向で事務局にもよろしくお願いいたします。
○荒井事務局長 はい。
○阿部会長 かなり温度差があるかもしれませんね。相手によってですね。そういうことも踏まえて進める必要があるんだろうと思います。
さっき御説明かあったのか忘れましたけれども、7ページのノウハウ等の海外への流出の防止の御検討は、経産省はどんな状況でございましょうか。
○奥田次長 現在産業構造審議会の知的財産政策部会不正競争防止小委員会で、この営業機密の保護に関しまして、営業秘密の国外での使用開示行為を刑事処罰の対象に加えるということで検討を進めております。前向きに取り組んでいきたいと思っております。
○阿部会長 本年度中に結論を得るというふうに。
○奥田次長 先ほどいろいろなものにつきまして、次期通常国会と申し上げましたけれども、その方向で現在作業を急いでいるところでございます。
○阿部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
それでは、どこでも結構でございますので、先ほどの方、あるいは御質問のタイミングを失しられた。
どうぞ、野間口委員。
○野間口委員 小島次長始め、お4方の説明、大変勉強になったんですが、その取り組みが日本で始まりましてから、大きく変わってきたなというのは、国際会議とか、APECもそうですしASEANもそうですし、そういう場で政府の意見、日本国の意見としてどんどん出していただくと、これはアメリカとかヨーロッパとの協調という面でもそうですけれども、やっていただいて、知財に関する取り組みの格が上がったという感じをしておりまして、私ども産業界としても大変これは喜んでおります。
では、その効果がこれからどういうふうに出ていくのか。これは一定の効果、中国におきましても、私どもも認めております。しかし、次の本当の意味の解決につなげるには、今のようにもっとしっかりしろと、これは国際的なルールだという形で、厳しく当たるというのも必要なんですが、日米欧で連携してやればやるほど身構えて対応を考えるという面もあるなと思っておりまして、北風と太陽の話でありませんけれども、悪いところを指摘するとともに、やはりそれに対する発展途上国の自ら改善していこうという取り組みをサポートするような国際協力的な視点も併せて提案させていただくことが必要なんではないかと。
なぜこういうことを言うかと言いますと、発明協会の100周年のレセプションで、マレーシアのマハティール前首相と会食をしましたときに、知財のWIPOを始めとして国際ルール、世界的な取り決めはもうそのとおりだと、理論的、法律的に言っても我々もそれに対する合理的な反論を持ってないと。だけど、それを先進国対発展途上国という場に持ち込んだ場合、我々としてはもう全く将来の展望を持てないように思ってしまうんだと。だから、そういう形に追い込みながら、これは世界共通のシステムにしようとか何とか。日本、あるいはEU、アメリカが言っても、我々としては特に医療の分野は、はいそうですかというわけにはいかないと。私はヒアリングで、大体そういうことを言ったんじゃないかと思うんですが、その意見はこの知財に対して、一昨年の大綱のときから関係したものとしてずしりと来ました。
やはりこれは何とかそういう発想で、知財という面でも発展していこうと、発展途上国の取り組みと言いますか、これは何らかの助けが要るんじゃないかと。そういうのも含めて、特に外務省、経産省連携しておやりになると思いますが、意見、提案、指導されるときは、是非そういう視点も入れていただきたいと思っている次第でありまして、国としての方向性を示すところで、そういう考えも是非入れていただきたいと。そうすると、よりグローバルな意味での本質的な解決につながるのではないかと思います。それを感じながら、お4方の話を聞かせていただきました。
○阿部会長 ありがとうございました。どうぞ。
○高林委員 私、実は昨日バンコクから帰ってきまして、IPITコートというところで行ったシンポジウムと、それからそこが主催した英語による知財の模擬裁判のコンペティションで裁判官役をやってきました。この模擬裁判はブリティッシュカウンシルが支援しまして、ロースクールの学生が二人ずつチームを作って英語によって知財の裁判のオーラルアーギメントを30分ずつやっていくというもので、18チームが応募して1か月かけて争っていくというものでして、私は最終決戦の裁判官役を務めました。私は英語力が弱いのですが、相陪席の英語のうまいドイツ人の方がいろいろ厳しい質問をしていくと、それに対して間髪入れずに答えていくような、非常にハイレベルな英語によるオーラルアーギメントでしたが、この企画はIPITコートが主催し、ブリティッシュカウンシルが支援して、勝者は3週間イギリスに招くということをやっているわけです。今の野間口委員のお話を聞いて、私は非常に感銘を受けたのですが、日本もアメリカ、ヨーロッパに学ぶということはやっていますけれども、これからはタイとかそちらの国々とも相携えて一緒にやっていくということも必要だと思います。タイなども知的財産の保護という点では、まだまだ教育も不十分なところもいっぱいあると思いますけれども、上層部はむしろ非常に進んでいるところもあるように思いました。
それから、IPITコートというのも、アジアで初めてできた知財裁判所だと思いますけれども、創立7周年で毎年国際シンポジウムをやっています。今回のシンポジウムでは、会場の入口で、1村1品運動のような国の政策をアピールする展示をやっていまして、裁判所が知的財産を保護する国の政策に密接に関与しているという印象を受けました。私は、今度日本でも知財高裁が来年できますので、日本もアジアの国々を指導するというばっかりの立場ではなくて、これからはお互いに勉強していくような姿勢が必要ではないかという思いを抱いて昨日ちょうど帰ってきました。タイなどは今、日本と同様の知財戦略計画をつくりたいと言っているようなのですけれども、日本が範になるということもありますし、逆に教わるということもあるのかなと。一緒にやっていくと、そういう姿勢をここでも打ち出していくというのには、私は大賛成です。
○阿部会長 ありがとうございました。大変いいお話で、私も5月13日の最後に、ちらっとそれに関わるようなことを、今の両先生よりはるかにボキャブラリーが少ないですから、余りインパクトはなかったと思いますけれども、これは各省にお願いするだけではなくて、知的財産戦略本部として今のような視点を明記していくようなことがあってもいいような気がしますので、それはまたいろいろ御相談させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○角川本部員 その点について、今日外務省さんからそういう知的財産監督官の制度を今度つくるんだと、任命するという話がありましたけれども、現実に外国に行って問題を起こす場合には、外務省、経産省、警察庁みたいなところが関与していますね。そういう、省庁横断から、それぞれが同じ問題を抱えていくんではなくて、何か今回の我々のテーマである、創造、保護、活用という、その3つの分担においても、お役所が、例えば、外務省は教育、創造、保護、活用という点では、創造、保護の方を外務省が担当するとか。それから、経産省と警察庁が一緒になって活用における問題ですね。海賊版の取り締まりはそっちに行くんだと思いますけれども、そんな分担をしていくみたいなことが明確になると、もっと何か省庁の横断的な組織が生きてくるような気がするんですけれども。
今は何しろすべてが、全員が当たるということになっているだけに、逆に全員がやらないのではないかという逆に不安になったりするわけですので。
○阿部会長 どうぞ。
○下坂委員 かなりいろいろおやりいただいている各省には、心から厚く御礼申し上げます。それから、先ほど外務省の方にJETROについてちょっとお伺いしましたのは、私ども仕事柄、よく外国ではどこに相談すればいいのかと聞かれまして、今のところJETROだけを薦めています。外務省の入口の門を考えましたら、かなり厳めしいので、通常の中小企業の人たちには入りにくいだろうなと思いまして。今日、担当官をおつくりいただけるということで、それらが大使館の外のビルになるのか、中になるのかわかりませんが、一般の人にとりましては在外公館の門というのは、大変敷居が高いところで、入りにくいところであるということを念頭に置かれまして、企業が相談をしやすい環境、特に中小企業に親切な環境ができれば、大変ありがたいと思います。
それから、私ども官庁に対して一生懸命、ああやってほしい、こうやってほしいと言っておりますけれども、8月に実施されたという偽物の購入についてどう思うかという調査で、偽物の購入容認派46.9%という数字が出ています。これは憂慮すべきであるという段階を通り越しまして、恐るべき数字であると言わざるを得ないものと思います。この46.9%の表によりますと、公然と売っているので購入してもよいと思う、というのが6.7%。これは、もう随分前になりますが、偽物を偽物として売っているのだからいいではないか、というような議論が当時随分ありまして、その時代の名残だと思うんですが、今は変わっていると思いましたら、まだこれが6.7%います。
それから、正規品にはないデザイン、仕様の品もあるので、購入するのは仕方ないと思うが10.3%、正規品より安いので購入するのは仕方ないと思うが29.9%になっております。正規品にはないデザイン、仕様の品もあるので、購入するのは仕方ないというのは、本物の、例えば、200万円、2,000万円もするような腕時計のメーカーの名前を使いまして、2,000円〜5,000円くらいで売っている。それは本物のメーカーにはない形なんです。例えば、秒針のダイヤルが4つぐらい付いているとか。そのメーカーではそんなものは出していないと。それらをマニア的に集めてらっしゃる方もいらっしゃるらしいんですけれども、200万円のが2,000円か3,000円なら買うのかもしれませんけれども。いまやちょっとマニア的になっているんじゃないかと思います。
これは、官庁の方々にお願いするというよりも、もっと日本人が知財意識を高揚していかなければならないことで、どのようにすれば変わっていくかという方法を考えていかなければならないと思っているんですが。竹田先生の御提案はその1つになると思います。
前にユニオン・デ・ファブリカンの人が見えまして、日本人は非常に遵法精神に富んだ国民だから、向こうのロンゲ法のようなものをつくれば、もうすごい効果を発揮するであろうという御説明がありまして、一日本人としていささか、失礼じゃないかと思っていたんですけれども、この46.9%を見ましたら、やはりロンゲ法風のものが必要なのかもしれないと考えております。
これらが、先ほど罰則、10円でも100円でもいいから、それも含めて御検討いただきたいと言った1つの理由です。
ありがとうございました。
○阿部会長 ありがとうございました。
どうぞ。
○中山本部員 先ほど野間口委員と高林委員からお話あった問題というのは、極めて重要だし、恐らくこれから21世紀の知的財産制度はどうあるべきかという問題だろうと思うんです。
高林委員おっしゃったように、これから協力していく、あるいは援助していく等々の専門家同士の交流、専門家を中心とした交流は絶対必要ですし、戦略の中でも出すべきだと思います。しかし基本的には知的財産というのは、強いものが勝ち、弱いものが滅んでいくという制度なんです。これはもう自由主義・資本主義の権化のような制度でして、西洋的なこの制度がある限りは、これはしようがないという認識を持たないといけないんです。しかし、しようがないで終わってしまうと、これまた先ほどの野間口委員の話と同じになりますが、何が起きるかというとを考える必要があります。今問題になっているのは、遺伝資源とか伝統的な知識だとか、我々の持っている法体系からすると、これは保護になじまないというような提案が途上国から出されています。そういうものにも耳を貸していかなければいけないのではないかと思います。やはり知的財産というのは強い者、先進国の論理なんです。日本は恐らく100年前だったら知的財産制度の強化という主張はしないでしょう。まねさせてくれという主張をするに違いないんですけれども、やはり我々はここまで来てしまった以上は、その制度はもうしようがないんですけれども、弱者にも何かハンディを付ける、ハンディを付けると言ったら失礼なんですけれども、我々の持っている制度だけが制度じゃないという認識を持つ必要があるという気がします。
○野間口委員 私もそういう意味ですから。
○中山本部員 はい。同じ趣旨だということはわかっています。
○高林委員 私は多少違うのかもしれませんが、まだ理想に燃えている人間なのかもしれません。今お話にあった商標、偽ブランド商品についても罰則を科していくとか、今日の話は特に海賊版、模倣品の水際取り締まりということで、非常におどろおどろしい怖い話ばかりだと思いますが、私は知的財産というのはウィンウィンシチュエーションのバラ色のものであって、楽しいものであるということを十分にみんなにわかってもらうべきなんではないかと思っています。下坂委員のお話になった偽ブランドに対する大衆の意識の点につきましても、ブランドをつくった人がどれだけ苦労して、どれだけ汗水流して売っているのかということを教育者がちゃんと教えていないのがいけないのであって、罰則でやっていくというのは怖いことだなというのが実感です。ですから、知財というのは怖いものだと思われる、まさに後進国にとって知財は怖いものなんです。先進国がむちを持ってきて守れというものであると、嫌々守らさせられているという意識があると思うんですけれども、私はタイとも今、知財の判例英訳データベース構築のプロジェクトで協力関係を持ってやっておりまして、特許の先端技術になってきますと多少の問題があるかもれませんけれども、やはりもうちょっと知財が、みんなが豊かになっていけるバラ色の良いものであるということを、ここがアピールしていくべきだと思います。ちょっと中山先生に比べますと、理想主義者なのかもしれません。
○阿部会長 ありがとうございました。いずれにしても、共通部分はかなりあると思いますので。時間がまいりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。模倣品・海賊版対策の強化につきましては、いろんな御意見をちょうだいいたしました。本日の議論を踏まえて、各省には検討を更にスピードアップして、今年度中に実施していただくとともに、次期推進計画にも反映するように対策を練って、よりよいものにしていただきたいと思いますので、4省の方せっかく来ていただいた最後にこういうことを申し上げては恐縮ですが、もう一段よろしくお願い申し上げます。
それから、一部の委員から御提案がありましたけれども、次回の推進計画を待たないで本部決定をすべきものがあったら、どんどん考えるべきだということについても、是非考えさせていただきたいと思います。
それから、最初にも申し上げましたとおり、本日の議論のポイントにつきましては、知的財産戦略本部会合において私から簡単に報告をさせていただきます。
それでは、本日の専門調査会につきましては閉会にさせていただきたいと思います。今後の予定は、現時点では特段決めておりませんが、必要に応じて開催をさせていただきたいと考えております。
事務局何かございますでしょうか。
○荒井事務局長 特に結構でございます。
○阿部会長 それでは、どうもありがとうございました。
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