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第1回 権利保護基盤の強化に関する専門調査会 議事録 | |||
1. | 日 時:15年10月8日(水)16:30〜18:30 | ||
2. | 場 所:知的財産戦略推進事務局 会議室 | ||
3. | 出席者: | ||
【委員】 | 阿部会長、伊藤委員、久保利委員、下坂委員、高林委員、竹田委員、中川委員、野間口委員、山田委員、吉野委員 | ||
【事務局】 | 荒井事務局長 | ||
4. | 議事 | ||
(1) | 開会 | ||
(2) | 会長の選任 | ||
(3) | 専門調査会の運営について | ||
(4) | 今後の進め方について | ||
(5) | 自由討議 | ||
(6) | 閉会 |
○荒井事務局長 ただいまから、権利保護基盤の強化に関する専門調査会の第1回会合を開催させていただきます。本日は、御多忙のところを御参集いただき誠にありがとうございます。
○野間口委員 阿部先生が最適だと思いますので、推薦させていただきたいと思います。 ○荒井事務局長 ただいま、阿部委員という御意見がございましたが、いかがですか。 (異議なし)
○荒井事務局長 それでは、阿部委員が会長と決定いたしました。
○阿部会長 ただいま御指名をいただきました阿部でございます。私は大学の工学部に長くいただけでございまして、極めて限られたことしか存じあげませんので、今日から委員をお務めいただく諸先生方のお知恵をお借りして何とか進行させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
○荒井事務局長 資料2に戻っていただきまして、資料2の1に、3つの専門調査会を置くとなっておりまして、「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」、「模倣品・海賊版対策、知的財産の専門人材育成、知的財産権利化促進や司法制度等、知的財産の権利保護基盤の強化(エンフォースメント)に係る課題に関する調査・検討を行う」となっておりますので、資料6「今後の進め方」につきましては、このテーマのうち、国会の日程その他を考えたときに、こんな順番を案として書いてございます。
○阿部会長 ありがとうございました。大変忙しいスケジュールのようでございますが、何か御質問等がございましたら伺いたいと思います。
○久保利委員 弁護士の久保利でございます。知財高裁について意見を申し述べたいと思います。
○阿部会長 ありがとうございました。
○竹田委員 私も知財高裁の設置に関しての意見を述べさせていただきます。
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○阿部会長 今、いろいろな課題についてもお話がありましたが、下坂先生、御指名で恐縮ですが、いかがでしょうか。 ○下坂委員 会長、ありがとうございます。
○阿部会長 法学部の先生方が3人おられるのですが、その前に産業界のお話を伺いたいと思いますので、吉野先生からどうぞ。 ○吉野委員 いろいろ難しい議論がこれから行われる予感がいたします。私は実務の点で当然一部知財に関係してきた者ですが、このところの大きなトレンドの変化に注目する必要があると思います。それは幾つかありまして、一つは、大学の改革が行われようとしていることです。それによって大変多くの研究開発のアウトプットがどんどん出てくることになりそうです。これは当然知財に絡んでくる傾向であります。
○阿部会長 ありがとうございました。
○野間口委員 私も本部員としていろいろ議論をさせていただいた中で、知財高裁ということが出てきましたときに、知財のマネージメントに関する法体制のあり方に関する理論といいますか、哲学といいますか、この辺、私の手の届く範囲ではないなと思いながら参加していたのですが、実際に私どもが現実に直面している問題から考えてみますと、昨年になりますか、今年に入ってからになりますか、私ども、知財紛争が解決してやれやれとなったのですが、これが11年かかりました。スタートしたときの心意気といいますか、問題意識ももう風化しかけたころにやっと決着がつくということでは、何のための審判かなということがあります。したがいまして、こういったことをスピーディに専門性高くできるものがありますと、侵害は創造性の覇気を阻害することになりますので、ちゃんとした権利がきちんと保護されるとなりますと、創造する環境をサポートするという意味でも大変重要なことだと思いまして、そういった狙いでこの知財高裁の議論が出てきたと認識しておりますので、基本的には大賛成です。
○阿部会長 ありがとうございます。今お2人の委員からお話がありましたけれども、お2人も日本を代表する企業のトップであられたわけです。一方、山田先生から御覧になって、ベンチャーという立場と伺っておりましたので、今の件について御意見を賜れればと存じます。 ○山田委員 今御紹介がありましたように、ベンチャーですが、知財紛争があったとかそういう経験がないのでわからないのですけれども、私たち自身が感じていることは、今から起きるのは、今までになかった新しい形の特許が出てくる。というのは、90年までは、日本は基本的な発明はほとんどしていないわけです。例えば、テレビをつくったとか、ビデオを発明したとか、そういった発明はなくて、アメリカその他の国で発明されたものに対しての周辺の特許が多く出願されました。となると、現在見てみますと、特許庁の審査官あるいは弁理士の方等を見て、改善に対する特許には非常に詳しい知識をお持ちですが、全く新しい概念の特許とかそういったものに対して対応する力は、私が勝手に感じることですが、ないように思います。
○阿部会長 ありがとうございました。産業界の3人に共通しているのは、今、まさに時代がどんどん変わり始めているということだろうと思います。
○中川委員 自己紹介も兼ねて申し上げますと、私は行政法を専門にしております。これはどういう分野かといいますと、法律の執行は普通は裁判所がやるわけですが、行政機関にやらせようということが現代では非常に多い。行政法学では、役所が法律を執行する場面すべてを扱います。知財の場面でも、特許庁、あるいは、水際の関係で税関の話が出てくるかと思いますが、そこら辺、行政機関の活動をどのように仕組むことが一番合理的かといったことを法制度から研究することをやっております。それから、行政機関は法律を執行するためのものですから、違法なことをやると必ず裁判で是正されなければいけないという観点もあります。この2点が私の専門です。
○阿部会長 私の方にイメージがあるわけではありませんので、これもいろいろ議論していかなければいけないのですが、高林先生は最高裁に長くおられたと伺っていましたのでお願いします。 ○高林委員 私は今、大学で知的財産権法を教えておりますけれども、昔、17年間ほど裁判官をやっておりまして、竹田委員よりも短い経験ですが、知的財産訴訟も担当しておりました。ですから、半分学者、半分裁判官のような立場かと思います。
○阿部会長 お名前が出ましたが、伊藤先生は法制審議会の方でも知財の御担当をされていると伺っておりましたし、今そういうリクエストもありましたので、あわせてよろしくお願いいたします。 ○伊藤委員 今までのお話の流れがございますので、知財高裁の問題につきまして私の意見を申し述べさせていただきたいと存じます。
○阿部会長 今、伊藤先生の御説明で一渡り御意見をちょうだいしたわけですが、最後に伊藤先生からおっしゃっていただいたように、まさに伊藤先生の方の検討会が非常に大きいイニシアチブを持っておられるところがございますので、私どもとしても、ぜひできる限りの意思の疎通ができればありがたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
○野間口委員 反論というわけではないのですが、先ほど高林先生が知財裁判の特殊性といいますか、被告人になることもある、原告になることもあるというお話がありました。私どももまさにそのとおりだと思っておりまして、今までにもいっぱい権利行使されたことがありますし、私どもが権利行使したこともあります。件数で言いますと、私どもが権利行使して、我が社の特許に触れていますよという数よりも、我が社がそういうアピールを受ける方が、世界が相手ですからはるかに多いわけです。
○高林委員 私はそういう趣旨で申し上げたわけではなく、訴訟制度は、通常は角突き合わせる関係ではあるけれども、今おっしゃったとおりで、知的財産訴訟というのは、むしろ原告の立場、被告の立場がよく理解し合える訴訟の形態なのだと。ですから和解も成功率が高い訴訟でもあります。私は、原告と被告が同じ土壌に立ち得る、理解し合える訴訟類型なので、そこを考えながら制度設計をしていくべきであると申し上げただけであって、ちょっと誤解を生じたならば、そこはおわびしたいと思います。 ○阿部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○下坂委員 今の高林先生の制度設計というのは、いわゆる訴訟の手法ではなくて、制度そのものの何か基盤的なものでございますか。 ○高林委員 私は、知的財産法制一般に関してそのような考えを持っていますので、あらゆる知的財産関係の解釈論や立法論もそのような観点からやるべきだと思っております。たとえば,特許発明の技術的範囲の解釈論であっても,発明の成立要件であっても、攻める側と攻められる側が常に逆転し得るところから、調和のとれる解釈や立法をすべきだと思います。また,知的財産訴訟制度も知的財産制度の中の一つですから,知的財産訴訟制度も同様なものとして位置付けられるものだと思っております。ですから、知的財産訴訟制度における管轄の問題,特に職分管轄の問題もそうですし,また、証拠開示の手続についてもそうでしょうが,あらゆる面で原告,被告双方の立場を勘案しながら制度として設計すべきではないかと申し上げたつもりでおります。 ○荒井事務局長 今出た御意見の関係で、資料7で経緯を補足説明させていただきたいと思います。
○阿部会長 全部ここの専門調査会ですね。 ○荒井事務局長 そうです。どうぞよろしくお願いいたします。 ○阿部会長 それでは、ほかにどうぞ。 ○中川委員 私が先ほど申しましたのは、まさにその「あり方」の部分について幾つかの選択肢が各委員の中でちょっとずつ違うバージョンが出てきているのではないかということです。例えば9番目の高裁と考えるのか、それとも、今回の平成15年の民訴法改正でできた東京高裁に集中したものを知財高裁と呼ぶという話なのか。これは実は法科大学院でやっている手法ですが、一専攻だけど、対外的には法科大学院と言われている。そのほかにも、行政法の世界の例で、自治体の話をしますと、消防局という一部局だけれども、対外的にはそこの局長は消防長ということで、消防組織法ではまた独立の権限を持ったものとする。2枚看板と言うと語弊があるかもしれませんけれども、そういうテクニックは法律ではよく使いますので。だから、まずここで2つの選択肢があるわけですよね。
○竹田委員 今、中川委員がおっしゃった最初の点については、荒井事務局長が言われた資料7にあるように、知財高裁の創設について必要な法案を提出するということだから、何も東京高裁の知財部をそのまま一つの知財高裁と見ようという問題では全然ないと思いますし、今までそういう形で議論が行われてきたことはないと私は認識していますが、それでよろしいでしょうか。
○中川委員 そこは重要なところですよね。 ○久保利委員 結局、中川先生がおっしゃるとおり、今までの戦略本部の議論で、野間口さんや僕、下坂さんは関与していたからそういうものだと思っていますけど、新しくこの専門調査会にお入りになると、今おっしゃったような疑問が当然出てくる。まして行政法規の専門家でいらっしゃる方から見れば、そのように見えると思います。
○阿部会長 非常にいい御提案だと私は思いますが、事務局は大変かもしれませんが、がんばっていただきたいと思います。 ○荒井事務局長 はい。 ○阿部会長 もう少し時間がありますから、事務局が整理する論点について、もう少しいろいろ御意見をいただければと思います。 ○高林委員 最初に久保利委員は,今回改正された新しい民事訴訟法で言う東京高裁を知財高裁という第9番目の高等裁判所として位置付けるとご提案されましたが,そのご提案では、裁判官の技術的、専門的知識を補強する調査官制度などにも言及されたわけですので,ここで言われた知財高裁は,今回東京高裁の専属管轄となった特許とか意匠、半導体チップ保護法あるいはプログラムの著作権についてだけ扱うということでよろしいのでしょうか。 ○久保利委員 プログラムの著作権は入るけれども、いわゆる美術とかそういうものは含まないということでいいのではないかという私の意見を申し上げただけです。これは必ずしも、どこまでどうなるかということがリジッドに決まっているわけではないと思いますけれども、基本的には、今申し上げたような管轄という意味で申し上げました。 ○竹田委員 今の点は非常に問題があるところで、知財高裁を9番目の高裁として設置する。しかし、その職分管轄は、今度専属管轄になった特許等の部分に限って、商標や著作権は入らないとなった場合、現実を考えてもらいたいのですが、今、東京高裁の知財部はそういうもの全部含めて担当しているわけですね。そうすると、今まで東京高裁管内の事件は全部東京高裁の知財で担当していた部分が知財高裁ではなく、東京高裁の通常部に行くことになります。それでは何のために知財高裁をつくるのか非常に疑問です。
○久保利委員 そこは議論の対象になる部分だと思います。
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○阿部会長 そこは整理が必要ですね。わかりました。 ○伊藤委員 私、今回初めてこの場の議論に参加するわけですので、従来の議論の経緯を必ずしも正確に把握しているとは思いません。そういう意味で、先ほど会長が事務局に指示して、どういう考え方があるのか整理してもらうことについては、ぜひお願いをしたいと思います。
○中川委員 先ほど竹田先生から、9番目の高裁はもう決まっているというお話でしたが、そうであれば、ここで議論することはほとんどないのですが。 ○竹田委員 決まっているというのではなくて、それを設立することが是か非かの議論をここですると。 ○中川委員 是非も選択肢ですか。 ○竹田委員 もちろんそうです。 ○中川委員 非もありですか。 ○竹田委員 非もありだと思います。 ○中川委員 それならよろしいんですが。 ○竹田委員 そういう意味で言っているので、つくらなければならないということを言っているわけではないんです。それは誤解です。 ○中川委員 わかりました。失礼しました。 ○久保利委員 ただ、「創設を図る」と書いてあるから、図る方向で議論して、その結果、図るべきではないとなったときにどういうことになるのかわかりませんが、少なくとも戦略本部での認識は、そういう9番目の高等裁判所という理解が議論が進んでいたことは事実ですね。そういうものをつくろうよということであって、それは竹田先生がおっしゃったような認識で。ただ、問題は、9番目のものをつくるときに、今のような、本当の意味の職分管轄をどこにどうしていくのがいいのか、あるいは、そうではないのかという議論はもちろんするべきだと思いますが、基本的には図る計画でこの計画自体はつくられている。創設の方向でつくられていることはそのとおりだと思います。 ○中川委員 その場合の選択肢として、9番目の高裁か、何もないかの中間項ということが先ほど私がちょっと申し上げたことですけれども、そういうものもあり得ると。 ○久保利委員 あり得るのではないでしょうか。
○竹田委員 言葉ではあるかもしれないけど、実態としてそういうものがあり得るはずがないと。どういうものがあるでしょうか。 ○久保利委員 先ほどの議論ではありませんけど、高林先生もおっしゃっていた、じゃ、商標の部分についてどうするか。そうすると、それについては東京高裁のあれに置いていくという意味では、新しい9番目の高裁だけれども、細かい部分についてはどっちに振るかということは、議論としてはあり得るのではないか。しかし、それは、竹田先生もおっしゃるように、そんなものを置いていったら意味がないじゃないかとおっしゃられれば、それはたぶんだめということになるでしょうし、逆に、そうしないと商標とかそういう問題については地方の問題があるから、それはむしろ置いていった方がいいというお話があるかもしれないし、巡回でやるからそれも全部できるからいいんだという議論になるかもしれないし、たぶんそういう議論になっていくと思います。だから、議論の対象にはなるけど、最終的には、9番目の高等裁判所というところに、論理必然的に行くかどうかはわかりませんが、たぶんそれが一番座りがいいことになるのかなと私自身は思っていますが、それはむしろ座長のもとで議論すべきテーマなのかもしれません。 ○阿部会長 知財高裁がどういう役割を負うかとか、どういう性格であるかとか、そういうあり方の問題は、ここで鋭意御議論いただかなければいけなくて、そのための専門調査会ですので、そのためにも、先ほど久保利委員がおっしゃったように、どういう論点があるか。つまり、知財高裁といっても、中川委員がおっしゃったように、イメージがかなり統一されてきたとはいえ、まだ、ここは違うのではないかとか、いろいろな選択肢があると思いますので、その辺も整理していただいて議論がしやすいように。 ○荒井事務局長 はい。 ○阿部会長 こんなものだったらやめた方がいいということも出てくるかもしれませんけど、そこはまさに資料7のような方向で御議論いただくということだろうと思いますので、よろしくお願いします。
○伊藤委員 私はまだ十分に内容を理解していないのですが、私の専門との関係で申しますと、裁判迅速化法ができまして、若干、発想が似たところがあるのかなという印象を受けております。ただ、先ほどもいろいろ御発言がございましたが、訴訟の迅速化を考えるとき、これはあくまでも両当事者がいろいろな訴訟上の行為をする主体であり、裁判所はそれを整理し、判断する役割を担うものですが、そこが特許審査の迅速化とは持っている意味合いが違うのではないかという気がいたします。当事者対立構造などと申しますけれども、訴訟、裁判と特許の審査の手続との質的な違いを整理していただいて、その上でどういう形で迅速化を図るのか、その方策として何が最も適切かということを、今後ぜひ議論させていただければと存じます。 ○阿部会長 資料8にありますけれども、裁判の迅速化はもちろん大切ですが、それとともに、特許庁にかかわる文言がたくさん書いてあるように思いますので、ちょっと説明していただけますか。 ○荒井事務局長 背景を説明させていただきます。先ほど山田委員からもお話がございましたし、吉野委員からも御発言がございましたが、技術開発がスピードアップしてきて、早く決めて、特許になるなら、きちんとそれに基づいて製品を売るとか事業化する。ならないのであればもっといい研究開発をするということで、技術開発と特許審査のスピード感が大事ではないかと。それから、吉野委員から御発言がございましたように、今、大学をはじめ、こういうことについての関心が高まってきたときに、新しい分野、基本的な分野について、しっかり早く判断できる体制をつくっていかないと、せっかく科学技術の振興をやっていただいても申し訳ないということからこういう議論が出てきているわけでございます。
○阿部会長 かなりお金のかかることも書いてありますね。 ○荒井事務局長 と思います。これは、お金をかけて日本の仕組みを、先ほど山田委員からもお話がございましたように、特許について、できるだけ受けさせないようにするのか、そうではなくて、いいものは合格させて、これで世界中で活躍してもらうように応援するようにするのか、姿勢も変えていかなければいけないので、たぶんお金も人もかかると思います。 ○竹田委員 私は、東京高裁時代から弁護士時代まで10年余、この特許行政に関する法制度の改正問題等に、審議会や知財研、その他もろもろのことで関与してきましたけれども、確かに、特許を出願した人の立場、特に現在のように技術が高速度に進歩していく時代に、ゆっくりやっていればいいというものでないことはだれにも明らかなことだし、現実に特許庁に審査の請求をされてから相当な滞貨があることは客観的事実だと思います。
○久保利委員 今の点についても、実は、本部のときに私は聞いたのだと思いますが、遅い、滞留しているというけど、実は審査をしているのは1日だとかおっしゃっていましたよね。実は、2年間でしたか3年間でしたか、寝て待っている時間がすごく長い。裁判というのは、遅くとも、とりあえず毎月やって転がって動いてはいるけど、これだけは実は寝ているんだということがあって、寝ているものを早く滞貨一掃しなければいけないというところに一番の問題があって、そのためにはお金もかかるというお話を聞いて、それはとんでもない話だ、早くどんどんやってほしいということでこの迅速化が出たと記憶しております。決して、充実した審査をなしにして早くやれということではなくて、寝ている部分を早く起こしてとっとと始末しろという話だと理解しておりました。間違いだったら訂正してください。 ○荒井事務局長 特許審査迅速化法は、決して拙速という意味ではないわけでございまして、確かにそこのところの誤解を解くのに私どもも必要な努力はしたいと思いますが、同時に、今の久保利先生のお話は、実は日本の特許庁の人は、さっき、世界でもよく働いていると申し上げましたが、年間で平均 200件審査していますので、 250日働くとすると1日に大体1件です。平均です。もちろん、長くて時間のかかるものもありますが、多くのものはもっと短くできているわけです。もちろん、何度もやりとりしたり、難しいものもございますが、平均すると1日1件。
○阿部会長 下坂先生、いかがでしょうか。 ○下坂委員 この部分は、言えば言うほどこちらの身にも降りかかる点がございますけれども、やはりスピードの時代でもありますので、早期権利化は非常に大事だと思っておりまして、これが24か月待ちというのは由々しき問題であると考えております。
○野間口委員 私は、この表現を見てちょっと心配になったのですが、特許審査迅速化法ではなくて、特許審査迅速化の方法を検討しようと、産業界の立場で見ますと、滞貨が50万件もあって遅れているのは非常に問題だということで、そういうことからこういう形で進んできたかなと思います。先ほどの伊藤先生のお話にありましたように、法としてこれをどのように定めるか、あるいは、法が対象としない範囲をどうするかという議論をやっていると、本当の迅速化が遅れてしまうのではないか。だから、例えば、任期付審査官を増強するということは、今のルールでもできるのではないかと思いますし、今のルールでできるものはどんどんやっていく。それでどうしても、日本の国のシステムとしてちゃんと位置付けようというものは法で定めるとか、何か工夫をしながらプライオリティをつけてやっていただきたい。そういう議論を、ぜひこのワーキンググループの中で含めてやっていただかないと、これが整備されるまで待ちましょうでは遅れてしまいます。ですから、その辺はぜひないようになっていただきたい。
○吉野委員 私も、さっきからこれを読んでいて、よくわからないなと。かなりオペレーショナルなイシューが多いでしょう。何と何が法律というか、それが絡むのかということが、これを読んでいてもわからない。やればいいじゃないかと思う項目が非常に多いんですよね。 ○阿部会長 荒井さん、資料8は、法律のことだけがクローズアップされていますが、実際は、特許審査を迅速化するというタイトルの中にこの迅速化法があって、そのほかにも (2)、 (3)というものがあるわけで、これは本当はすべて我々のテリトリーですよね。 ○荒井事務局長 そうです。 ○阿部会長 ですから、法律を制定することだけではないと思いますし、本部で決めていただいたものも、そういう文言になっていますが、「知的財産権利化促進」と書いてありますので、法律も大切ですが、法律以外のことも大切ですので。 ○荒井事務局長 その辺、整理してみます。 ○中川委員 法律にかかわることだと思うのですが、先ほどから、幅広に選択肢をとってはどうかということを申し上げております。なかなか難しいかもしれませんけれども、人が少ないので審査官を増やすという話が挙がっておりますが、別の一つのあり得る工夫として、民間開放ということもあると思います。ここに「先行技術調査の外部発注」ということがありますけど、査定そのものも外に出してしまう選択肢もありうるのかなと。実例では、建築基準法の建築確認は民間開放されています。行政もやるけど、民間の会社でもやるという形でやっています。
○阿部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○山田委員 次回までに事務局の方で、知財高裁のあり方としていろいろな方法があるというものを整理してこられるということですけれども、その中で、知財立国ということでいっているわけですから、知財をもって日本を豊かにしようということが目的だと思います。そうなると、日本を豊かにする知財とは何かということを、あまり大きく知財全部に広げてやっていくと焦点がぼけてくると思います。日本を豊かにする知財は何か、明確に切れないかもわからないですけれども、個々の知財をこういうふうにやるんだということ、この知財を守っていく、この範囲を守っていく、そこの定義をある程度していただきたいと思います。
○阿部会長 極めて重要なことですが、難しい点もいろいろございまして、私も素人ですけれども、知的財産と知的財産権は違っているわけですが、知的財産権も年代とともに随分広がってきているということもありますので、その辺を弾力的に対応できないと、あまり固定化しないようにしないといけないということも一つの性格ではないかなと思います。 ○高林委員 今のお話を聞いていて、ちょっとした質問をしたいのですが,例えばコンテンツ産業とかの分野は、日本が守るべき知的財産ではありますけれども、技術的な面というのはあまりないわけですよね。 ○山田委員 そうですね。 ○高林委員 アニメーションとか技術的側面のないコンテンツ産業も日本が守るべき知的財産であるわけですが,今の御提言は、知的財産高裁で扱うべきものからこれらの分野は切り分けろというご趣旨なのか、その辺はいかがなのでしょうか。 ○山田委員 基本的な姿勢として、そこはあまり明確に、私は政治的なことはよくわからないのですが、全部を語ると、非常に小さい部分で全体を語る場合もあるわけです。ですから、そうではなくて、基本的には、こういう範囲のところ、この辺の財産を守ろうよというものである程度定義してほしいというので、そこは今、コンテンツ産業がどうなのかということは、今ここで発言すると皆さんがいらっしゃるからあれですけど、それほど大きな産業にはなり得ないかもわからないですね。そういうものと、ものすごく大きな、日本を支えるような産業になるようなものと、両方の知財を一緒に語ることはなかなか難しいのではないかというのが私の感じです。 ○高林委員 今回の検討テーマ中の第3分野の模倣品・海賊版対策のところでは,商標商品とか海賊版の音楽CDとかの水際取締りなどの問題も出てくると思います。ですから、ここで扱う知的財産としても、知財高裁問題や特許審査迅速化法の問題でしたならば,技術的,専門的なものですが、それ以外の知的財産全般をも結局は扱わざるを得ない状況なのかなと思っています。 ○山田委員 そうであればそれを明確にしていただきたいと思います。 ○高林委員 それと、裁判の迅速化法については私は十分な知識がないのですが,私が裁判官として過ごしている間にも、裁判を迅速化するためにいろいろな方策が裁判官仲間から提案されていましたし,それに沿って民事訴訟法が逐次改正されていって、裁判官のツールとしていろいろなものが用意されてきて、当事者の協力もあって裁判の迅速化がある程度達成されてきて,そのような素地ができた後になって迅速化法が成立したのだろうと思います。しかし,今回の特許審査迅速化法は、トップダウンで迅速化法をつくって、迅速化法があるのだから迅速にしろというスタンスで提案されているのか、もしくは、下坂委員がおっしゃるように、特許審査手続も共同作業的なものがあるので、出願人も審査官も、外国の調査機関も,お互いさまで協力していきなさいよという趣旨を込めて,そのような素地を今回の法律で作っていこうとするものなのか,いずれなのでしょうか。 ○荒井事務局長 まさに裁判と同じだと思います。裁判の方も、迅速にという国民からの要望があって、いろいろな工夫はされたけど、日本の司法全体のカルチャーというか、そういうものを変えようということで、文化、風土、カルチャーが変われば、関係者の意識も変わる、進め方も変わる、あるいは、必要があれば、それに基づいていろいろな手当をさらに行うということでできたのだと思います。
○竹田委員 今の点に関連して言いますと、裁判の迅速化に関する法律は、どちらかといえば、裁判をするに当たっては、裁判手続を運営する裁判所も、当事者も、代理人も、皆が協力してできるだけ早く審理をして紛争が解決できるようにいたしましょうという、一種の精神規定的なものですよね。
○荒井事務局長 この考え方は、風土全体の気持ちを変えるというときに、行政府の人が集まって、政府の方針はこうだと決めるのか、あるいは、国家として国民の代表が国会で決めるのとは、国のいろいろな手当のときにやはり違うだろうと思います。それから、政府が決めたから、ぜひ会社の人も協力してくださいとか、大学の先生も協力してくださいと言っても、それは政府の仕事だということになるので、やはり今の議院内閣制のもとで国民の意思として決めるか、そうではなくて、行政府の意向として決めるかは、まず質的な違いがあるのではないかと、理屈の面ではそう思います。
○阿部会長 私も法律は知りませんので難しいことだと思いますが、やはり法律を制定するのとあわせていろいろな仕組みをつくっていかないと、先ほど下坂委員がおっしゃった協力体制も含めて進めないと、単なるお説教文で終わるのでは、あまりかんばしくないということにもなります。
○荒井事務局長 わかりました。 ○阿部会長 ということですが、何か特に御発言がございますか。
(異議なし)
○阿部会長 ありがとうございました。
○荒井事務局長 特にございません。 ○阿部会長 それでは、どうもありがとうございました。 ○荒井事務局長 ありがとうございました。 |