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第9回 医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成16年9月9日(木)12:58〜15:20
2.場 所:知的財産戦略推進事務局 会議室
3.出席者:
【委 員】】井村会長、秋元委員、上田委員、片山委員、北村委員、見城委員、野中委員、広井委員、森下委員
【参考人】松谷審議官、小野特許技監
【事務局】荒井事務局長、小島事務局次長
4.議 事:
(1) 開会
(2) 医療関連行為の特許保護の在り方について
(3) 討議
(4) 閉会


○井村会長 まだ、厚生労働省の松谷審議官がお見えになりませんが、ほぼ定刻になりましたので、ただいまから「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」第9回の会合を開催いたします。
 本日は、お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございました。
 なお、本日は、田村委員、平田委員から欠席の御連絡をいただいております。
 それでは、早速議事に入らせていただきます。
 前回の会合では、医療関連行為の特許保護の在り方について、とりまとめに向けて御議論をいただきました。できたら、パブリック・コメント辺りまで行きたいと思ったんですが、なかなか意見が割れており、そこまでは到達できませんでした。
 その際、事務局には前回までの議論の内容を踏まえて、とりまとめの案を委員の皆様方から御意見を伺った上で整理していただくとようにお願いをいたしました。
 このとりまとめ案の中には、これまで委員の皆様から出された議論、それをできるだけ取り入れたつもりであります。
 それから、意見の分かれているところにつきましては、選択肢として記載をしております。これを最終的にどのように集約していくのかということが本日の課題です。
そこで、まず、事務局から資料1のとりまとめ案につき説明をお願いします。その後、皆様に議論をしていただきたいと考えております。
 本日は、前回の議論に引き続いて、できるだけ具体的な点、特に意見の分かれている点につきまして、御議論をいただきたいと、そのように考えております。
 それでは、説明はできるだけ簡単にお願いいたします。

○小島事務局次長 それでは、資料1の「医療関連行為の特許保護の在り方について(とりまとめ)(案)」に基づきまして、御説明をいたします。
 まず、1ページ目の最初の(1)には「検討の経緯」が書かれています。
 一番下のパラグラフでございますが、(2)では検討に当たって、まず留意すべき事項を記載しておりまして、一番下のパラグラフの1)では、本専門調査会の検討対象である医療関連行為は、医師と患者との信頼関係に基づき行われる医療に密接に関わるものであること。
 そして、その下に医療の理念に関しては、医療法あるいはヘルシンキ宣言かつ書かれておりますけれども、2番目のパラグラフで、このような医療法やヘルシンキ宣言の医療や臨床研究の基本的な考え方に立てば、他により適切な医療技術があるにもかかわらず、医師が特許による経済的利益を得るために、自らの特許に係る技術を偏重したり患者を臨床研究の対象にすることはあってはならないこと、臨床研究を実施する場合には患者に対し特許の取得可能性等について十分説明を行うことが必要であるということが書かれております。
 その上で、本専門調査会はこのような医療や臨床研究の基本的な考え方に立って、患者と医師の信頼関係の下で等しく行われるべき医行為等に悪影響を及ぼさないよう十分に配慮しつつ、医師の行為の扱いや特許保護を拡大する場合の影響や懸念などについて具体的に検討をしてきたところでございます。
 その下の2)で、特許制度の基本的な考え方を書いておりまして、特許による発明の保護は、研究開発を促進させるとともに、それが広く公開・利用されることにより、他者のさらなる研究開発を誘発したり、技術の普及をもたらすものであるが、他方、公共の利益に反するような独占の弊害があってはならないということがその前提であり、特に、医療は、患者の救済が最優先になされなければならない分野であり、そこに独占の弊害が生じてはならないことは言うまでもないということが書かれております。
 (3)以下に概念の整理をしておりまして、2ページの一番下の1)では「物」の発明と「方法」の発明について、ここでも大分「物」か「方法」かという議論がありましたので、改めて書いてありますけれども、特に2ページの下から2行目「『方法』の発明は『時間的な要素』を含むものをいい、例えば、段階的工程などの時系列的なステップを含む製造方法や通信方法は『方法』の発明として保護される」としています。
 また、技術開発には、その発明の本旨に従って「物」の発明、「方法」の発明が生み出される場合があるが、特許法というものは、これらをどちらか一方で、「物」で保護されるからいい、「方法」で保護されるからいいということではなく、すなわちどちらか一方に限定して保護するということではなくて、「物」としても「方法」としてもその発明の本旨に従って、多面的に保護することを基本としているということが書かれております。
 その下、2)以下に「医療関連行為の定義」、それから「医療関連行為と特許制度との関係」が整理してございますが、次の4ページに図1で、それらの関係について簡単に、模式的に整理をしております。図1の中で真ん中に破線で囲んだ部分がございますが、ここが医療分野において、現在特許保護がされていない領域という、破線で囲んだ部分があり、5ページ目に、その部分を本専門調査会で広く検討の対象として検討をしてきたということが書かれております。
 先を急いで恐縮ですが、6ページ目の2.でございますが、検討の背景ということで、本専門調査会で、医療関連行為の特許保護の在り方を検討するに至った背景ということが書かれております。色々書かれておりますが、一番下の2行に、これまでも総合科学技術会議やBT戦略会議においても、先端医療技術に関する特許法の扱いについての検討が要請されてきたということが書かれております。
 続いて7ページ、3.で特許保護の現状ということで、医療分野における特許保護の現状、日米欧の状況について整理しております。
 この部分については、ここ数回かなり詳細に議論がされてきたところですので、詳細は省略いたしますが、1点だけ7ページの「(1)日本」の部分、日本では、従来、人間を手術、治療または診断する方法は、特許法29条における産業上利用することができる発明に該当しないと解釈することにより特許の対象とはされていません。これは、従来、医療業は産業ではないという実務上の解釈や人道上の問題への配慮と解されてきたことによるものでございまして、したがって、手術、治療、診断方法のような医師の行為に係る技術のみならず、その周辺技術についても、すべて一緒にして人間を手術、治療または診断する方法ととらえ特許の対象とはならないと運用されてきたということが書かれております。
 (2)(3)は米国、欧州でございまして、それらを比較したものが、この場の議論でも何回も出ておりますけれども、8ページ、9ページに図2として「日米欧における医療分野の特許保護の現状」として、8ページに医療機器、9ページに医薬が示されているところでございます。
 それから11ページでございます。
 11ページは、これまでの8回にわたる検討の経過と、議論の概要を整理したものでございます。
 11ページの(1)は検討の経過、1)2)と書かれておりますが、特に?の第1パラグラフでは、その検討の中で医学・医療分野の研究開発は国民・患者の視点を重視し人道的、社会貢献の精神に基づき進めていくべきであること、医療技術を支える産業の育成も重要であること、医師が患者を治療する行為には影響が及ばないようにすることが不可欠であることについて、共通の認識が得られたということ。
 また、その後のパラグラフでは、特許保護の拡大を必要とする意見が書かれておりますが、他方、下のパラグラフでございますが、医療方法を特許対象にする、特許保護の拡大をすることに対して、懸念を指摘する意見もあるということが書かれております。
 それから、11ページの一番下のパラグラフの?では、さまざまな問題、安全性や利益相反の問題を始めとするさまざまな問題について、参考人の方を含め、専門家から意見聴取を行いましたので、その要約が書かれております。
 こういう検討を経て、12ページの真ん中辺りの「(2)方向」というところでございますが、1)でこうした検討を経て、本専門調査会では、ここのi)、ii)という理由から医師の行為に係る技術を特許の対象とする必要性は、現時点では乏しいと判断し、むしろこれまで特許されていなかった医師の行為に係る技術の周辺技術のうち、「物」に由来する技術であって医療機器・医薬の機能や特性等に基づく作動、用法等に技術的な特徴があるものである医療機器・医薬の特定の使用方法に限って、検討対象とするということでございます。そこで、特定の使用方法というのが、第6回目辺りから出たわけですが、下の脚注の20にありますが、ここで特定の使用方法というのは、医師の行為に係る技術が含まれず、医療機器・医薬の作動・用法を始めとする物に由来する技術を記載するものと定義しております。
 2)は、これまでの検討を通じ、どの範囲を新たな特許対象にするにせよ、いろいろな問題に対する具体的な対応を図る必要があるということ。それから、新たな特許保護を導入する場合には審査体制の整備、あるいはその後のフォローアップをしっかり行う必要があるということなどについて共通認識が得られたということが書かれております。
 その上で、13ページの一番上でございますが、3)として、先ほどの特定の使用方法というもののうち、更に具体的に検討するとして議論されてきたものを改めてわかりやすく表現をしております。
 i)では、まず、医療機器については、個々の患者や症状などに応じて医師が医療機器をどのように操作して処置するか、あるいは人体にどのように作用するかという医師の行為に係る技術ではなくて、人体に対する作用や人体からのデータ収集などの一定の目的のために、医療機器自体がどのように機能的・システム的に作動するかという、最終的には医療機器の性能・機能として備わることとなる医療機器の作動方法を検討対象とするということで、下の脚注21にもありますが、この医療機器の作動方法は最終的に、今、申しましたように、医療機器のメカニズムとか、ソフトウェアとか、そういう形で医療機器に備わることによってのみ実現するものであるということでございます。
 ii)の医師の提示する医薬の用法・用量となる医薬の新しい効能・効果を発現させる方法ということでございますが、これは個々の患者や症状などに応じて医師が医薬をどのように処方・投薬するかという医師の行為に係る技術ではなくて、医薬がその特性に基づく用法・用量により人体メカニズムにどのように働きかけるかという医薬の新しい効能・効果を発現させる方法というものを対象とするということでございます。
 これは、下の脚注22にありますけれども、最終的には企業がその方法に基づいて研究開発を行って、薬事承認を取得し、それを製造して医師に提示するとなる医薬の用法・用量の基となるものだということでございます。
 その下でございますが、医療機器の作動方法あるいは、医薬の新しい効能・効果を発現させる方法は、いずれも最終的には薬事承認及び診療報酬制度の対象となる医療機器、医薬の形を取って具現化、具体化されるものでございます。
 したがいまして、この方法はいずれも企業の行為として実施されるものでございまして、また薬事承認、診療報酬制度の対象となるということで、安全性とか、コストの問題のこともそこでチェックされるということでございます。
 その下の4)には、なお、医師の行為に係る技術については、医療業は産業ではないという実務上の解釈や人道上の問題への配慮から特許に対象とならないのは、従来どおりだということが書かれております。
 14ページの5.でございますが、今までの議論の経過、検討の経過を経て、医療機器の作動方法、それから医薬の新しい効能・効果を発現させる方法について、更に突っ込んだ議論をしておりますので、それについて議論を整理しております。
 まず、(1)でございますが、これまでの会合では、特許保護を拡大する場合の影響や懸念に対する具体的対応について、議論を重ねてまいりました。
 その結果として、具体的対応が必要とされる方策を10項目にわたって整理しております。
 詳細な説明は避けますが、1)では「医師の行為への影響」、2)では「医師と患者との信頼関係への影響、次の15ページでは5)で「独占による弊害の問題」、16ページのHでは「制度の運用体制の強化」、Iで「フォローアップ調査の実施」という10項目にわたる項目を挙げて、それについて必要とされる具体的な対応方策というものを整理しております。
 それから、次に16ページ一番下の(2)のところでございますが、先ほど検討対象として定義しました「医療機器の作動方法」の特許保護について、更に詳しく記載されております。
 16ページの下の1)のところでは、まず、必要性として、医療機器の構造などのハード面だけでなく、その作動原理となる方法や制御などのソフト面からの開発が重視されてきており、こうした技術は医療機器の作動方法に関する技術であり、それは現在、特許保護がされていない部分であるということ。
 それから、17ページの第2パラグラフ、これは先ほどと同様のことが書いてありますけれども、そういう一定の目的のために、機能的・システム的に医療機器自体がどのように作用するといった方法は「物」に備わることになる、「物」に係る技術であるということが書かれております。
 その下に、こうした「物」に関わる技術であって、「方法」に関する技術の研究開発は、第3パラグラフぐらいに書いてありますけれども、機器の構造・機能そのものというよりも、機能的・システム的な方法論として進められることから、こうした成果を発明の本旨に沿った「方法」の発明として保護するよう求められているということです。
 18ページですが、そのためにどういう措置を取ったらいいかという選択肢が2つ挙げられております。
 1つは、案1でございまして、先ほどの医療機器がどのように機能的・システム的に作動するかという医療機器の作動方法を特許の対象とすべきであるというものです。
 その下に、これは医師の行為に係る技術は含まれない、「物」に係る技術が記載されること。また、その実施は、この作動方法を性能・機能として備える医療機器の製造・販売によってのみ具現化されるものだということが書かれております。
 案の1に対して、検査方法の一部は米国のみならず、欧州でも認められておりますし、この作動方法全体を認めることは欧州よりも広い領域を認めることになり、性急であるという意見もございましたので、案の2として、欧州と同様に検査方法の一部のみを特許の対象とすべきであるとして掲げております。
 続きまして、その下の(3)は、医薬の新しい効能・効果を発現させる方法で、その必要性、それから選択肢というのをここで挙げてございますが、1)のところで、ここでも具体例を挙げて議論がなされましたが、一番下のパラグラフ、複数の医薬を組み合わせることにより、個々の医薬では得られない相乗的な効果が見出されたり、あるいは投与間隔や投与量を従来とは全く異なる態様に変更することにより、効果が増強されたり、副作用が軽減されるということがあり、こういったものが新薬の開発に加えて、新薬に匹敵するような効果のある薬物治療を提供する基になるということが言われて、これに対する特許保護を求める声が出てきている。
 19ページの2)では、今、申しましたような新しい方法は、現状では特許保護の対象となっていないということが、書かれております。
 そうして、こういったものを特許保護にするために、どういう形で特許保護をしたらいいかということで、20ページに選択肢が挙げられております。
 案の1は、先ほど申しました、医薬の組み合わせ及び投与間隔・投与量に特徴がある、医師に提示する医薬の用法・用量となる医薬の新しい効能・効果を発現させる方法を特許対象とすべきであるというものでございます。
 この下に、書いてありますように、これは医師が行う医薬の処方・投薬ではなく、企業がこれに基づき研究開発を行い、医師に提示する、新たな用法・用量を作成するために行う方法であって、企業がこの方法に基づく医薬を製造販売することによってのみ、具現化されるものであるということであります。
 それに対して、案の2でございますが、投与量に特徴のある発明というものは、医師の裁量で行うべきものであり、特許すべきではない、あるいはテーラーメイド時代に多人数の患者の平均的な投与間隔・投与量を新たに特許対象とすることは時代の趨勢に合わないという意見がございましたので、これに対するものとして、案の2を掲げてあります。
 案の2は、中身は同じでございますが、その手法の違いにより、案の2−1と案の2−2に分かれてございます。
 案の2−1は、先ほどの案の1の方法のうちの組み合わせだけに限定する。すなわち、投与間隔、投与量は特許対象にしないというものが案の2−1でございます。
 案の2−2は、それを「物」の特許の拡大で行おうとするもので、組み合わせを「物」の特許の拡大として行おうとするものでございますが、この会議でも再三議論が出ましたが、従来の組み合わせの特許については、権利行使の範囲について問題があるので、その点を明確にする、その部分を改善するということで、案の2−2は、複数の医薬の組み合わせについて「物」の特許として法律上の十分な保護が得られるようにするとともに、その特許の権利が個々の医薬を別々に組み合わせて使用する場合にも権利が及ぶよう、法律上の取り扱いを明確にすべきだとする案になっております。
 以上がとりまとめ案についての御説明でございまして、その下に参考資料として、1から4の4つの資料を配付しておりますが、そのうち、参考資料3と参考資料4が、医療機器の作動方法と、それから医薬の新しい効能・効果を発現させる方法についての具体的な事例を挙げております。これは事務局でつくったものですので、必ずしも十分ではない、技術的あるいは医学的に十分ではないかも知れませんけれども、一応、事例として掲げております。
 以上でございます。

○井村会長 どうもありがとうございました。厚生省の松谷審議官は、今日は初めてですか。

○松谷厚生労働省審議官 遅れてまいりまして、大変申し訳ございませんでした。実は会議が重なっておりまして、大変失礼いたしました。
 7月23日に上田の後任で厚生労働省の技術総括審議官を拝命しました松谷でございます。
 医政局長が、本日は出張いたしており出席できませんので、代わりにまいりました。よろしくお願い申し上げます。

○井村会長 それでは、これからとりまとめ案につきまして、議論をお願いしたいと思います。
 このとりまとめ案のうちで、1〜4は従来の経過とか、あるいは議論した事実関係を述べたものでありまして、この辺りは前回にかなり御議論をいただいたところであります。
 5の部分につきましては、具体案を示しております。これは意見が分かれているところ等がありますので、そこは1案、2案とか、あるいは2−1案、2−2案というふうに分けて書いております。
 今日の議論の進め方ですが、具体的な問題点について、まず、御意見を伺って、更にその上でいろんな問題があれば、1〜4の今まで議論したところに、もう一度戻るということにさせていただきたいと考えております。
 そこで、資料1の14ページから始まる5.のところでありますけれども、初めの方はそれに関する説明的な文章でありまして、18ページに医療機器について、これをどう考えていくのかということで2案が書いてあります。この辺りから議論を始めていただければいいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
 これにつきまして、何か御意見があれば是非ともと思います。なかなか言葉が難しいんで、わかりにくいとろがありますが、資料3に例がありますので、それも見ながら議論をしていただければと思います。

○北村委員 大変御苦労されていろいろ整合されてきたと感じておりまして、機械については、この事例を見ましても理解できないようなくらい複雑な事例集が出ておりますけれども、作動という言葉に統一されて、それを実行する構造がありますね。だから、非常に医療関連行為というものの中でも私としては理解しやすいと思うんです。
 物としての特許を整備することによってカバーできるんではないかという気もするんですけれども、この委員会そのものが新しい知財として医療機器関連の方法特許の整備をしたいという委員会でありますから、従来のものを整備するのか、新しいもので囲い込むのかということで後者であるというふうに理解すれば、新しい方法の明確でなかったところを特許化するというのは大変理解しやすいと思います。機械の方は医療行為と申しましても、それを医師が行う行為を実行させる構造物があるということからは、非常に納得のいくような気もしているんです。薬の方については、多少また意見が違いますので、後ほど討論します。

○井村会長 機械につきましては、ほかに上田委員なども、これでは不満だという意見もあるかもしれないですね。

○上田委員 当初は細胞の投与の方法であるとか、採取の仕方について、非常に独創的なアイデアが生まれた際に、物のイメージがない段階で、それが保護されるべきではないかということを申し上げていたわけです。その後の議論を取り入れ、考えた結果、北村先生のおっしゃったように、多分にそのことを実現するための装置、物が明確になっていて、このアイデアが濃厚に取り入れなければ開発されないということがあるんであれば、結果的には非常に最初に言っていたようなアイデアの保護に近いものなるだろうという解釈をしております。
 したがって、この作動方法という言葉の中に、どれくらいの今言ったような意味合いがこめられているのか。これを多くの審議官の方の解釈という形ではなくて、あとでもう一度事例を挙げて御質問をしたいと思います。
 ですから、この状況で作動方法ということで理解できたと私は考えております。

○井村会長 いかがでしょうか。ほかに御意見をどうぞ。

○野中委員 はっきり言えば、なぜ特許を認めなければならないのか、私はまだわかりません。インセンティブがなければ技術が進歩しないと言われているが、逆に言えば技術を開発した人たちにとっては、本来は失礼な話と思っています。機会を与えたいということはわかるけれども、本当にそうか、今まで議論を蒸し返すようにして申し訳ないが、なぜ今まで医療は産業として認めなかった事に対する答えが私としては、わからない。
 ここに患者と医師の信頼関係の下で等しく行われるとき、医療行為等に悪影響を及ぼさないように十分配慮しつつという言葉がなく、例えば産業をもっと進めたくて、それに対して知的産業を守ろうというだけであれば、そんなことは議論する必要はないと思う。しかし、私はそこに十分配慮しつつという部分を入れているのであれば、なぜそれを変えなければならないか、今回まとめていただいたことは非常にありがたいことと思いますが、まとめていただくほど、何故特許を拡大しなければならないのかが、まだ理解ができないということです。

○片山委員 現状の物による保護では非常に苦労をして、本質は方法の発明であるのに、何とか物のクレームを書いて、それで保護を全うできないだろうかということで、これまで実務としては苦労をされてきた分野だろうと思います。それでもどうしても無理だったところがあったわけです。それを全部変えてしまうのか、それとも一部限定して変えるのかというところで、この委員会の大勢としては、やはり全部を変えてしまうのは時期尚早であろうと。どちらかというと、産業側、つまりメーカー側の視点に立って、そこで余り医師の側に影響がないような形で、しかも今までのねじれ現象のようなものを変えるためにはどうしたらいいかということでこういう案になったというふうに理解をしております。
 やはり本来、発明の本質が方法にあるものを、物で処理をしてきたということ自体が無理がありますので、そこを一歩前進させる。しかも、医師の行為にはほとんど影響与えないという意味で、私は案の1で十分その目的は達成できているのではないかと考えました。

○野中委員 言葉じりをとらえるようで申し訳ないですけれども、医師が免責であればいいと言っているというのではなくて、医療は、もともとここにも書いてありますように、医師と患者さんの信頼関係の下にあって、医療法にも規定されていることがあるから、医師の行為が保障されているのではなくて、医療を受ける患者に対して悪影響がないかということを配慮してほしいということを言っているわけです。発明には独占と排他と活用の部分があります。活用の面を見れば、確かに患者さんに対しては恩恵があります。しかし、その前に独占と排他ということを考えたときに、本当に治療を受ける患者さんにとって悪影響はないのかどうかを検討していただきたいということです。

○片山委員 おっしゃっているのは、この医療という分野に限らない、全般的なお話ではないかと思うんです。つまり、特許制度そのものが社会の役に立っているのか立っていないのか。この場面では確かに医療行為ですので、患者さんが対象になるわけですけれども、発明全般で同じようなことが言えるわけです。
 つまり、その発明で独占権を与えるのが、その発明の製品を利用する一般消費者、あるいは世の中の一般利用者のためになるんだろうか、ならないんだろうかという、いわゆる特許制度の本質にわたる議論ではないかと思うわけです。
 私自身はこれまでの歴史から見ると、それは役に立っているんだろうと思います。その理は当然医療分野の技術についても当たるんではないかという考え方をしています。

○野中委員 しかし、7ページの日本で、特許法第29条におけるという文章がありますが、それをなぜ変えるのか、どういう根拠で変えるかということと思います。

○片山委員 ちょっと議論にわたって恐縮なんですが、ずばっと申し上げますと、これまでの解釈はおかしかったんではないかというのが、前提としてはあろうかと思います。
 医療は特許法でいう産業ではないという、1つのドグマでございますね。だから、そういう意味から言うと、ここで逆にそこに絞りをかけて、ある限定されたものだけよろしいということは、ある意味では医療分野の特質性をより浮き彫りにしたということが言えるんじゃないでしょうか。

○井村会長 どうぞ。

○小島事務局次長 事務局でつくったものが言葉足らずで誤解を受けているとしたらいけませんので、ちょっと補足説明させていただきますと、7ページのところで、(1)のところで先ほど御説明しました、人間を手術、治療、または診断する方法は、産業上利用することができる発明に該当しないと解釈することによって対象とされていない。これは、現にそういうことなんですが、その下に書いてありますように、この人間を手術、治療、または診断する方法として、どういうものをとらえるべきかというのを、この8回の議論の中で、いろいろ検討してみたわけであります。本来、医療の世界、医療の行為としてとらえられるべき、医師の行為にまつわる問題と、それから、それを支える周辺技術、医療機器であったり、医薬であったり、そういうものとがすべて一緒くたになって、方法という言葉だけで一緒くたになって、特許対象とならないとされてきたのではないかということです。それをもう少し顕微鏡でよく微細に区分けをしてみたら、本来手術、治療、診断という医師の行為に係るものだけではなくて、その周辺にあった医療機器や医薬といったものあるいは、それに近いもの、そういうものが一緒くたになっていたので、それを区分けしてみたらというのがここで書かれていることです。その本来、人間を手術、治療、診断するという医師の行為に係る技術というものが、産業上利用できないものだということでありまして、これは13ページの一番下のパラグラフの?に書いてありますように、本来のものは、医療業は産業でないという、先ほどの実務上の解釈や人道上の問題の配慮から、特許の対象とならないということは、何も変わってないということを申し上げたわけであります。

○野中委員 だから、それは、片山さんが、それで納得されるんですかということです。

○片山委員 今、申し上げたのは、この改正を行うことによって、その点がより明瞭になるんではないかと申し上げたんですが。

○野中委員 でも、その前に言われたことは違いますね。その点を明確にしたいということであればいい、しかし、その前の特許部分に関しては、そうじゃないということを言われましたでしょう。その別途言われた根拠が、さっき言われたベースであれば、私はそれは違うと思います。

○片山委員 わかりました。ちょっと個人的な意見と、この場でどういうものがコンセンサスとしてこれまで来たかということを少しごっちゃにして議論しておりました。個人的な考え方は、さまざまあると思います。私もそれはあります。ただ、最終的にはこの改正によって、より先生がおっしゃっている、医療は特許の対象にならないんだと。つまり医師の行為は特許の対象にならないんだということが、はっきりしてくるように思います。
 これまで、実務的な取り扱いとしては、医療行為については特許にしてなかった、その結論は全く同じなんですけれども、その理論的な根拠という意味から言うと、学者の先生方がすべて、医療は産業でないからという理由でもって納得されていたかというと、それはそうではないと思うんです。これは学説の問題ですけれども、一方、実務は非常にはっきりしていたわけです。
 今回こういうことをやることによって、今回この場で非常に議論が深まりましたので、更にそこがはっきりしてくるんではないかというふうに申し上げたんです。


○井村会長 事務局の意図としましては、医療が産業であるということを言おうとしているわけでは決してないわけです。ただ、医療を支える産業はたくさんあるわけです。製薬もあれば、医療機器もある。そういう中で、今まではものでだけしか特許が取れなかったけれども、それでは不十分ではないか。だから、ものではなくて、方法、技術にも、一部特許をかけうるところがあるんじゃないか。それが、直接医師の技術でやるところは、それはもう今回は排除している。だから、その辺りさっきの上田委員の御意見ですと、少し不十分だとおっしゃるかもしれないけれども、今回医療は医師が直接自分の技術でやるところはやめましょう。ただ、機械をいろんな方法を変えたり、ソフトを変えたり、いろんなことでやれるところがある。そこは、必ずしも物ではなくて、方法として認めたらいい。だから、かなりはっきり切って、非常に限定をしているということは御理解いただきたいということです。

○野中委員 言われることはわかりますけれども、盛んに医師の行為、医師の行為と言われることが、医師の行為と医療は同じものではないはずですから、私は医療に対して悪影響ということを言っているわけでありまして、その点に関しては医師の行為に悪影響がなければ、それでいいという話ではないということを言っているわけです。

○井村会長 そんなことは言っていません。それは違うと思います。

○野中委員 だから、医師の行為という言葉を言うことはやめていただきたい。医療というものに対しての悪影響というものを言っているわけですから。

○井村会長 それは医療機器の話のときに、その医療機器には幾つかあって、医師が直接やるものもあるだろう。

○野中委員 ですから、発明、特許というものは、独占と排他と活用という部分があります。活用という部分は十分わかります。でも、独占と排他が本当に悪影響がないんですか、どうですかということを、どこで、どうやって言っているんですかということです。私の言っていることは。
 ある面では、最初の部分の中で、医療を正しく認識されていることはわかります。でも、最終的には活用があるからこそ、いいんだという話になっているということは、悪影響というものをちゃんと理解しているわけではないということを言っているわけです。

○小島事務局次長 医師の行為、医師の行為と書いているのが誤解を招いたようですが、これは医療の世界について代表的に技術をとらえ、あるいは特許は技術に係わるものですから、それで医師の行為に係る技術のところを代表的に書いているんですが、医療に悪影響を及ぼさないという観点から、それはこの8回を通してずっとそれを認識して、これを整理したつもりなんですが、医療に悪影響を及ぼさないという観点から、13ページの下から2番目のパラグラフに書いてあるわけですけれども、この作動方法も、医薬の効果発現方法も、最終的には医療機器、あるいは医薬という形になって、医療の世界に提供されるものに限定したということです。それ以外の純粋な方法が直接世に出るようになると、薬事承認もかかりませんし、診療報酬で価格を決められるということもないので、今回は医療機器、医薬という形を取るものに限定したということで、まずその医療の世界に対する悪影響が及ばないようにしたということです。
 加えて、これは特許保護を拡大するということであれば、それ以外の予期せぬこともありますので、14ページ以下の10項目にわたるいろんな影響、懸念と、それに対する対応をするということに加え、更にフォローアップをするということを考えて、医療に対する悪影響をいかになくするかということに最大限の配慮を払ったということでございます。

○野中委員 それは、最大限の努力を図って文書を書いていただくことに関しては、私は認めないと言っているわけではない。医師の行為、医師の行為と言われると、実際にはここから患者と医師の信頼関係の下で等しく行われるべき医行為等に悪影響を及さないように、十分配慮しつつということは違うと言っているわけです。
 ですから、医師の行為という言葉ではなくて、医師とともに患者という部分で表現してほしいと言っているわけであって、視点がどうしても医師の行為で、影響が及ばないだからいいと言っていることが、本当にいいんですかということですよ、私が言いたいことは。

○井村会長 どうぞ。

○見城委員 質問なんですが、今のことは多分すぐ答えがなかなか出ないことではないかと思うので、ちょっと質問を。まず、私も討議してくる中で、医薬品のことと一緒にやってしまうと、もう混乱するので分けてほしいということをお願いしてきて、今回ある意味ではすっきりと機器の部分と医薬品の部分というのが、はっきりしましたことはありがたいと思います。
 その上で、やはり両方一緒に、同時に認めるとかではなくて、やはり機器はどうなのか、薬品としてはどうなのかということを、ここでは冷静にまず考えるべきだと、改めてお願い申し上げますし、確認させてください。
 それから、質問としては、どうしてもわかりずらくなるところが、13ページと18ページなんですが、13ページでは、i)の「医療機器の作動方法」というところで、これは北村先生もかつて触れられていた、作動と動作という部分の明快な説明というか、それはどういうものかということを明らかにすべきだということもおっしゃっていましたが、ここの文章ではやはり、ちょっと私ではわからなくなるんです。この医療機器についてという文章で、医師の行為に関わる技術ではなく、人体に対する作用や人体からのデータ収集などの一定の目的のために、医療機器自体がどのように機能的、システム的に作動するかという、医療機器の性能、機能として備わることとなる、医療機器の作動方法というのはどういう事を意味するのでしょうか。
 そのことと、それから、18ページで「1案」になっています「医療機器がどのように機能的・システム的に作動するかという『医療機器の作動方法』を特許の対象とすべきである」という中に、最初の○のところでは、ここでも医師の行為に係る技術ではなく、医療機器自体がどのように機能的・システム的に作動するかというふうな表現があるんです。
 医療機器に、機構やソフトウェアなどの形で備わることとなる「物に由来する技術」が記載されると続くんですが、冷静に分析してみて、そこにもう既に特許を取っている機械がただ置いてあって、2つ、3つ並べたからといって、突然それ自体が共鳴し合い始めて、作動してしまうという事はない。やはり作動するにはだれかが動作をして動かしてということになりますね。その辺のところのところをもう少し明快にしていただきたいと思います。

○井村会長 確かに、私もこの文書、非常にわかりにくくて、何度も何度も質問しているんです。だから、文書をもうちょっと練らないといかぬと思いますが、どういうことを言っているかということを、例でちょっと説明してください。

○北村委員 さっきちょっと言わせてもらいましたけれども、この例を事務局が考えておられるとおっしゃったとおりだろうと思うのですが、余りにも難しくて、機械そのものの特許を整備すればよいのではないかと思うこと、医療機器の制御プログラムと、どこが違ってくるのかなという例題になっていて、上田先生から、我々が理解してきたことは、それよりももっと単純なんです。
 つまり、やけどの表面に、今までの技術ではピンチグラフトとか、外科医がしていた技術があるわけです。ところが、今度はそれを細胞にして、初めからばらばらにまいて、それを噴霧することによって、スピーディーに、均一に、よい効果を得るというときに、その噴霧器を作成する噴霧器の特許だけではなく、細胞にばらばらにして噴霧するという技術の特許を取りたいと。そうすれば、新しい、より効率に、1ミリの層にまくのか、1.5 ミリの層にまくのか、いろんな新しい機械が工夫されて、医者はスイッチを押すだけで範囲も全部機械が設定するという開発につながるわけです。そのいろんな会社が競争して、いい機械を開発するには、細胞を噴霧するという技術を特許として握っておくということを求められていると、私は理解してきた。その特許はあってしかるべきだろうと、つまりそれは産に戻すことができる特許であるし、技術の特許であると。
 だけれども、ここには全然そういうことは書いてない。そこが方法で制御に入らない方法なんだと考える。しかし、事務局の出しておられるこの難しいのは、みんな機械の制御プログラムとどこが違うのかというと、ちょっとわかりにくいような気がする。

○小島事務局次長 事務局は、機械にも医学にも、専門でない人間がやっているものですから、文学にも専門でないもので、言葉足らずで申し訳ございません。

○北村委員 だから、この審査過程に医者を入れないとだめだと言っているんです。

○小島事務局次長 申し訳ないんですが、そこは今は力不足の点で理解を妨げているということでおわび申し上げますが、今、北村先生がおっしゃられたことと、見城先生がおっしゃられた2つのことを合わせますと、上田先生がおっしゃったように、今までのように皮膚を張り付けるんじゃなくて噴霧するというものを、機械的・システム的に、あるいは仕組みとして特許にするというのが、作動方法の特許である訳ですが、ただ、そういうふうに細胞をばらばらにしたものを吹き付けるというアイデアだけでは、これは特許にならないというのはこの場でも出ていました。
 そういうアイデアをメカニズム的と言いますか、方式的に、例えば、特殊なノズルをつくって、それに特殊なガスの圧力をどういうふうに加えると、均一に、広範囲に広がるかという仕組み、ある程度技術的に具体化した仕組み、それが作動方法の特許だということです。
 それを、ただ、全く新しい概念でありまして、そこは発明家ではないので、新しいものを紙に書けないものですから、非常に古い特許の例を基にして、今のようなものを表わそうとしたので、ちょっとわかりにくくなっていると思うんですが。
 それで、ちょっと見城先生の御質問に対して、例えば、この事例5、これも古い技術なので、こんなの当たり前じゃないかということなんですが、例えば、内臓器官の中に遠隔操作で、この小さなロボットが入っていって、先の腫瘍をつまむというメカニズムを、そういう細胞をつまむ小さなロボットと、それがどうやって動くかという機械、機能的なものと、それからそれをどうやって制御するかというものとを合わせた、全体のシステムというか、その方式を作動方法としているものです。

○北村委員 それなら、不備だという機械業界の人があるなら、その制御プログラムという従来からあるものの特許を整備してでもいけるんではないかという意見が出てくるわけです。

○小島事務局次長 それぞれロボットメカニズム、それからそれを制御するもの、それぞれ物でありますけれども、今や陳腐になっているのであれですが、それらが体内で移動し、稼動するという全く新しいアイデアの下に、この切除機構が動くというのを初めて開発したときは、その切除マイクロロボットもいませんし、そういうシステムもないわけですが、こういうシステム、そしてそれを制御する、遠隔操作する、そういう仕組み、さっき上田先生が言ったような仕組み全体を保護するということなんで、それは物ではできないわけです。

○北村委員 ものとしては不備ならね。

○小島事務局次長 先ほど、片山先生がおっしゃった、方法でしか表現できない。あるいは、上田先生のおっしゃった、細胞をばらばらにしてのりと一緒にして噴霧する、しかも均一、広範に噴霧するのと同じように、新しい概念ですから、それはものの構造とか、機能には必ずしもならないけれども、そういうシステム、方式、仕組み、そういうものを特許にするということです。だから、それは物とは違うと。
 それがもっと更に進化すれば、それはまた物の特許にもなり得るんです。それは物の特許でも多面的に保護されるということであって、それとは別に、物の先駆的、前駆的な発明というのが、方法の発明だということです。

○見城委員 それでは、そういうアイデアが、上田先生のは大変具体的に、こういうものがつくれればということでわかるんですけれども、もっと近未来的に、こういうものが特許になったときに、更にアイデアが出て、こうこうこういうふうにしたらどうかと、例えば、アイデアが出ますね。それで特許は取れてしまうんですか。

○小島事務局次長 それでは、特許にはならない。それが、もう少しメカニズムとか、その方式とか、そういうものが技術的に具体化しないと、そしてそれがだれが動かしても同じ結果が出るような仕組みだということが明らかになるほどに技術的に具体化しないと、それは特許になりません。アイデアだけでは特許にはなりません。

○見城委員 なぜかというと、それで特許になっていくと、先にアイデアだけ抑えた人がいると、かえってつくる側の発展を妨げますから。

○小島事務局次長 具体性がないものは、特許にならないということは制度的にもう明確になっていますから。

○北村委員 だから、上田先生が町で霧吹きを買ってきて、自分で吹いていたら医療行為でいいんですよ。しかし、そんな霧吹きではいいかげんで、層も厚さも違ってくると。そこで、それをやる機械を開発しようと産に持っていくときに、その特許でこういうものをつくれということを産に戻すことによって、多くのやけどの人がいい結果を得るという場合に特許を取らせる。新規性があり、以前の方法よりもベターであり、そして産に戻して効果的な医療がより広げられるというときに、今まで細胞にして振りまくという技術そのものの特許を取れなかった。それは医者が吹き付けるんだからいいじゃないかとか、あるいは皮の一部を取って、みんな我々の若いときはピンチグラフトといって、このぐらいの固まりを張ってきたわけです。しかし、この方法の方がその技術よりもよいという結果が出てきたときには、細胞をばらばら噴霧法というのに特許を含めて、よりベターな医療機械の開発につなごうということでしょう。

○上田委員 そういうことです。ついでによろしいでしょうか。

○井村会長 どうぞ。

○上田委員 本来ならばお医者さんが試行錯誤して、工夫の中から生まれてきたものを、だれがやっても同じ結果が得られるような機構が組み込まれた装置として具現化する。そのためには、お医者さんの方法論が大いに取り込まれないといけないわけです。ここの部分は、限りなく医療行為に近いものだから、こちら側の技術開発する機構、どんな機構かというと、ほとんど方法特許自体が認められてないことには、これを具現化できないわけです。こういったものでつくってください。こういうことを達成するための道具にしてくださいということになりませんか。

○野中委員 でも、それがなぜ特許がなければ具現化できないんですか。

○上田委員 さっきから言っているように、具体的にだれが利益を得るからということではなくて、事実としてそういったものに実質的な価値があって、そういったものを特許という形で固定するというのが、一番普通の姿ではないかという感じがするんです。

○野中委員 普通の姿と言われるのはわかるけれども、従来の私たちの先輩は、さまざまな中に、これが特許ではなくても、医療機器屋さんと、いろいろ工夫されていることで具現化されてできていますね。だから、そこの部分がなぜ特許で、それは先生の言われることもわかるけれども、なぜそこに特許というものが絡まなければならないかということじゃないですか。

○上田委員 それは、霧吹きぐらいのことだったら、自分のところのラボでもできるでしようし、かなり技術的なレベルが低いような装置でできるんですけれども、産業界のかなりの高度な技術を使わないとできないような時代になってしまっているので、産業界の協力を得るために、そういったところで保護しないといけないんじゃないかという理屈がくっ付いてくると思うんです。医者ではなくてですね。

○見城委員 今のお話でいくと、医療行為と言われていることと、諸先生が、こうして噴霧したらいいんじゃないかとか、そのアイデアの段階は、それまでも医療行為に含めるからわけがわからなくなるので、やはりある種の産業機器と、医療機器でも産業機器ですから、物ですから、その物というのは用途があってこそ意味が出てくるのであって、その用途を先に考えて、だからこういう機器が必要と言っている、その用途を考えているときは、医療行為と一緒にするからおかしくなるんじゃないですか。

○北村委員 医者が、やらざるを得ない。

○見城委員 いや、だから、そこのところが。だって、現場にいる人が。

○北村委員 やけどの傷にあるものを吹きかけるという行為は、それは医師のみが許されている治療行為になるわけですね。

○見城委員 だけど、実際の治療行為ではなくて、それを使えるものをつくろうということのアイデアの段階も、すべて医療行為も治療行為も一緒になって、医療行為に含まれているというか、含んでしまうから。

○森下委員 でも、見城先生が言われているものを切り分けしたのが、今回の事務局案だと思うんですけれどもね。

○見城委員 違うんですよ。だから、そういうことまで含んで、まず医者が考えたら、特許にはならないとしていたことがちょっとおかしくて、実際に治療している行為と違って、先生が治療した後に考えますね、あのやり方よりこういう方がいいと、それに伴ってこういう機械が必要だという、その考え始めたところからは、物に対する特許に関わる部分で、そこで。

○北村委員 物が出てくれば、それが新規性であるものであれば、特許として取れていたわけです。それは現在でもできるわけです。

○見城委員 その形でできないんでしょうか。蒸し返すようだけれども、そこが何度もわからなくなるところなんです。

○北村委員 ただ、彼は、私がしゃべるのが早いから言うけれども、要するに、今はそういう機械をつくると言っても、町工場に持っていくことも可能かもしれないけれども、インテリジェントな機械、厚さを決めたり、自らベンチャーを立ち上げてやろうという場合には特許という保護がない限り全くできない状況ですね。
 だから、そういうものに特許を取って、どこの企業がたとえ参入できなくても、自らの信念で企業をつくり上げさせてやって、そしてそれがものになったら結構なことではないかと、ひいては患者さんにも役立つというものであれば、ベンチャーを立ち上げさせてやろうと。その立ち上げさせるために、彼に特許を持たせてやらない限りできないわけです。

○小島事務局次長 ということもありますし、先ほど、野中先生が、なぜインセンティブがないと、開発に向かわないんだとおっしゃられました。そういうアイデアがあり、そういう技術的な発想が出てきて、それで物をつくっていけばいいんじゃないかと、確かに、そういうこともあるかとも思います。ただ、霧吹き程度をつくる分には余り巨額の投資は要らないと思いますけれども、最近のこういうマイクロロボットなんかは開発に巨額の投資を必要とするわけですから、そういうアイデアがあって、それを技術的な方式として発明をして、開発をして、治験をしてそれで最終的な機器までいくわけですから、その途中の過程で、その技術的な方式が、ほかの人に簡単にまねされたら何にもならない。そこの技術的方式を機械にするまでの間に、かなりの投資と知恵が必要なわけです。それができ上がりつつあったところで、他人に、あるいは、他社にまねされて、横取りされたら、他社はただでこれをつくれるわけです。
 こちらは、100 億かけたのに、横取りされることがある。そうするとそういうことに対する開発の意欲がなくなるから、そこは独占させて、他社の安易な模倣などをさせないようにして、開発インセンティブを出すというのが特許制度のそもそもの考え方で、これは400 年前からそういうことでやってきているわけです。発明を特許で守ってやって、その発明した人に意味があるようにするというのが特許制度ということです。

○野中委員 それは、十分よくわかる話だけれども、ただ、いわゆる対象者、その利益を被る人は、私は医者ではなくて、その技術の発展によって助かる患者さんが対象であり、それは一般対象で買いたいとか、買えない、それができる人と、治りたいという部分とは、消費の構造が違うということを言っているわけです。
だから、そこに産業じゃないという話があるわけです。
 だから、ある面では、今の産業界がインセンティブをくれなければ、俺たちは協力しないよと、社会貢献度がない医療産業界になってしまったことを、私は言われているように思うんです。

○井村会長 しかし、国際的にも全く同じ状況ですから、やはり一定のインセンティブを与えるということは、特にさっきから北村委員がおっしゃったように、非常に高度化してくればするほど必要ではないかと思うんですね。

○見城委員 その考えを、上田先生がなさると、ベンチャーを立ち上げると、医師の医療行為と結び付くけれども、先生が、例えば、双子の弟さんか何かがいらして、しっかりと話をして、その方が同じことでベンチャーを立ち上げて、その段階からもう特許の範疇に入ってきますか、今の状況なら。
 そういうところがはっきりしないから、医療行為ということに全部制約されて、話がそこで終わってしますし、インセンティブが働かないといって終わってしまうので、もう決定的にこれからどうなのかとやっていくためには、それが先生のアイデアが出て、こういうものがあれば使いやすいし、もう本当に人を救えると。でも、先生がそのために御自分でベンチャーを立ち上げると、これは引っかかってきて、早い段階からアイデア、こういう機械をつくればできるといった、その段階で特許を申請しようとしても、医療行為とぶつかってだめになるということですか。
 先生が別な人にすっかり同じアイデアを話して。

○北村委員 なかなか理解できにくいですね。

○見城委員 その別な人がベンチャーを立ち上げるとどうなるのですか。

○小島事務局次長 上田先生がお医者さんであるかどうかとか、それと全く関係なしに、その技術の質が医療行為かどうかということ。

○見城委員 医療の行為だからということですか。

○小島事務局次長 はい。医療の行為であれば、いい方法だって特許は取れないし、今回もその部分はやめようと。

○見城委員 やめようということですね。

○小島事務局次長 はい。

○見城委員 伺いたいんですけれども、特許庁の方に。物の特許でできる部分。

○北村委員 だから、新しい霧吹きという特殊な皮膚にまく方法の機械が出てきたら特許を取れるんですよ。今までもね。しかし、この物の特許だけであれば、同じようなまね種の機械屋が、どんどんできてくると、だから最後ばらばらにまくという基本を1ミリにまくのがベストの結果を得られますという医者の行為として出てきたのを含めた形で特許を取っておけば、当面の間はまね種の機械を抑えられて、自分の成績と、そしてこれは1.5 の方がよりいいとか、真皮層のフィブロブラストを上にまいたら、もう少し早いとか、そういう研究を続けて行け、研究資金を獲得していけると。そのために特許を取らせて、最終的にはいい技術を患者さんのためになるよう普及させる。その間はほかの会社がまね出来ないようにする。上田会社だけやっているじゃないかという、けしからぬと言うのかもしれませんけれども、それは頭がいいから仕方がないわけです。それを特許でカバーしてやって、できるだけ育ててやるというのが、今、日本に必要だと云うことでしょう。

○見城委員 機械そのものが出て、特許を取るときに、噴霧の仕方から何から、こういうものだからこれは特許を取りたいという、特許を出願するときに、全部そのことを含めた上での特許ではないんですか。

○北村委員 今はないんですよ。

○見城委員 それであるならば、別にお医者様がやろうと何しようと、物としてすばらしい特許、機械、物であるということで特許が出るわけですから、よろしいかと思うんですけれども。

○小野特許技監 今の御質問の点でございますけれども、これは前回噴霧装置のときに御議論させていただいたことの繰り返しになるかもしれませんけれども、現行の考え方を再度御説明します。
 今、お話ございましたように、細胞をある一定量に細かくしてやると、非常に噴霧した後の治療効果がいいときに、いわゆる霧吹き、噴霧装置の構造を特定しなければいけないかという点です。いわゆる物になると、どうしても特定の形状の物になってしまうだろうという御懸念だと思うんですが、現在、細胞を特定の粒径まで細かくすればいいという機能で特定をした、いわゆる噴霧装置ということが許されております。
 ただ、再三申し上げておりますように、末尾が方法ということになりますと、実は噴霧するということは、まさにお医者さんが噴霧をして治療する医行為と考えています。特許の審査のときにどういうことを考えているかといいますと、特許出願をされまして、権利が欲しいという特許請求の範囲を方法で書くことになるんですが、方法の表現を検討するだけでなく、実質上、発明の本質は何かというところで検討するわけでございます。
 ただ、ものとか何かでは、先ほど言いましたように、今、御議論あるようなところはかなりの部分は機能的に特定して装置等の物の形態で許すということを今、始めておりますので、これらの技術はかなりカバーできます。使用方法等の方法に特徴がある技術は対象としていません。
 したがいまして、方法を、最初に1回薄く塗って、2回目に塗るとか、そういうところは、まさにお医者さんの治療行為、お医者さんが介在しないとできないという医行為が入ると我々は理解しております。そこは、まさに対象としていないということにしています。

○上田委員 まず最初に、1分間噴霧をして、細胞の数を10の8乗分噴霧をした後で、別の種類の細胞をやった方がいいというような、医者が経験上、徐々に知識として増やしていって、それを具体的にやれる機構を組み込まれた霧吹きというのはどうですか。

○小野特許技監 末尾が霧吹きという物の表現ならば、そのような機能で特定しても可能です。

○上田委員 それは、今の方法論でも。

○小野特許技監 今の方法論でも末尾が装置なら大丈夫です。

○上田委員 すると、どの段階から保護の対象になるんですか。

○小野特許技監 どこまでかといいますと、先ほど先生からございましたように、結局、細胞が細かくなるように、噴霧できるように機能を持っている噴霧装置というところで許されています。
 ただ、そこから先、噴霧すると末尾をした途端に、これは医行為ということで特許対象とならなくなると、理解しておりますけれども。

○上田委員 噴霧するときに、ある一定の厚さでつくらなければいけないというのは医療行為ですね。操作の仕方に入ってくる。それが機構として組み込まれた。

○小野特許技監 装置ならば大丈夫です。

○上田委員 それは、今の表現の中でも大丈夫なんですね。

○小野特許技監 はい。そういうふうになります。

○上田委員 そうすると、ここの作動という方法というのは、それが患者さんが今の皮膚の状態を見ながら、フィードバックされて機械が動き、また噴霧するスピードが変わるというふうなことが組み込まれた場合はどうなんですか。

○小野特許技監 その点は、先ほど小島次長が御指摘された事例の5を例として御説明します。これは先ほど、見城委員から御指摘ございました点、あと、北村委員等から御指摘ありました、いわゆる内部制御とどこが違うかというところの例だと思っておりますけれども、この事例5におきまして、(3)のところが医行為に相当すると考えられるので、我々は今までは許すことはとてもできませんでした。内部制御方法でもできないというふうに考えております。
 これはなぜかといいますと、(3)のところで第1カプセル、一番先っちょでございますけれども、その先端に備えられた処置手段が作動すると書いてあります。
 ただ、ここではお医者さんがする行為とは書いてございませんが、実質上モニターで見ながらマニピュレータで操作することに相当すると考えられます。
 実際の特許の審査のときは、特許請求の範囲に、医者がやるということを書いてあるかいないかではなくて、実態上、どういうことをしているかというところで我々は判断いたします。
 そうすると、これは、我々は今までの考え方では、末尾が方法である以上これは人体に直接、どうしても作用するということでは、これはまさにお医者さんの行為であると考えられます。

○上田委員 機械がやってもですか。

○小野特許技監 そうです。

○上田委員 機械がやっても、お医者さんがやることになるんですか。

○小野特許技監 はい。ただ、機械が全部自動で行う場合、プログラムを組み込んで動く場合、全部自動ならば、それは多分イエスかもしれないんですが、この場合ですと、この図にございますように、まさに上田先生が言われたとおり、やはり信号を見て操作をするということで、操作は普通、お医者さんがやられる範囲なので、どうしてもこれは、医行為がプロセスの一部に入っているので、全体の方法は医行為となると考えています。

○上田委員 もう少し抽象的な話に戻りますけれども、全自動化されて、医者の行為が全然含まれないような機構を持っている。しかし、それは方法としてお医者さんが本来やっていったものを機械化した。そうした部分はどうなるんですか。

○小野特許技監 そこは、非常に微妙だと思います。
 ただ、あくまでも末尾が装置である以上はどんなに医行為が入っていても、それは目的を記載しているだけと考えています。


○上田委員 そうすると、限りなくお医者さんがやっておられた行為が装置化されている。すると、そこの部分が出てきた段階で、方法も特許となると考えていいですか。

○小野特許技監 ですから、このような、私どもの理解として、これは、今の運用は一部の工程に医行為が入っていたということでして、末尾が方法の表現となっている以上、動作方法としても医行為であるとして特許対象としていませんが、ここに示された事例全体を見ますと、今、御議論がございますように、ほとんど、いわゆる医療機器の特性で動いておりますので、仮に、この程度の例ならば、実質上は医行為が一部入っていても、これは今後特許の対象とすべきとのコンセンサスが得られれば、そういう方向で許していくということにする必要があるというふうに考えております。
 ただ、現状は、特許法上の一般の考えとして医行為が入っているとみなしますので、今の事務局の御提案のように、一切医行為が入らないということを明記されてしまうと、このような取扱いをすることが非常にしにくいという問題があります。

○小島事務局次長 ちょっと補足説明させていただきますと、今、小野技監がおっしゃられたのは、私が先ほど、この資料の7ページの日本の運用というところで、小野技監も、今の運用はこうだということで御説明されているので、それでいいんですが、今の運用は、人間の手術、治療または診断する方法は特許の対象とされていないということで、そして、その特許の対象としているのは、医師の行為に係る技術のみならず、その周辺技術についても、すべて一緒くたにして、手術、治療、診断する方法としてとらえてということであって、先程申し上げたのはその点でございます。今、事例5で、これも先端ではさみのようなものが動くという、あくまでも機器の機能を示して、それを遠隔操作でどう動き、どう制御されるかという機器の作動方法を示しているだけですから、これは先ほど小野技監も、これは装置だったら問題ないとおっしゃられたんですが、我々が御提案し、あるいはここで議論になっているのは、まさにここの機器の機能であり、機器の作動方法だけをとらえようとしているわけです。したがって、これは現在の医療機器においてこういったものも認められるのというのと同じで、これが物の形を成しているか、更に物の特許ならいいが、方法だとだめだというのはちょっと理解に苦しむところですけれども、また全く同じことを、私、ここに医療機器の特許の実例を持っていますが、全く同じようなことが書かれていて、物では医療行為ではなく、方法になった途端、これは医療行為に見えるというのは、やはり先ほど言ったように、顕微鏡でよく見てみると、それは治療に使う方法という言葉に惑わされて、ここの部分を一緒くたにしていたのではないかと思われます。
 これはあくまでも、物の機能、物のシステムとして、あるいは物の作動方法ということだけ書いてあるものであれば、医療行為とは関係ない、医療行為の周辺にある物だというふうに理解できるのではないかと思います。
 これは、例えば特定の部位の腫瘍を取るために、こういう動き方をすれば非常に傷口は少なくなるというような操作方法、手術方法が書いてあれば、これは医師の医療行為に当たると思いますが、そうではなくて、この先端のカニのはさみのような長いものがどう動き、どう遠隔操作され、どう機能させるかということであれば、これは機械的、電気的なシステムを示しているだけであり、これはロボットの作動方法として明確に区別されたものとして整理できるのではないかと思います。

○井村会長 どうぞ。

○森下委員 普通に医者が見れば医行為ではないような話だと思うんですけれども、もしコンセンサスが取れれば、これは特許の対象となるというふうに理解していいわけですね。

○小野特許技監 その場合は、私ども、この事例を特許の対象とすべきではないと言っているわけではなくて、まさに今、小島次長が御指摘されたように、装置という物としてかなりの部分許してきているので、これはコンセンサスを得られれば、我々としてはそういう方向で検討せざるを得ないと考えています。
 ただ、そのときに、特許庁の現場として難しくなるというのは、ここに書いてございますように、特許請求の範囲に『医師の行為に係る技術』は含まれなければ、先ほどからも御説明ありますように、医行為ではないので、これを特許できると言われても、実質上で判断するという一般の特許の運用と異なるということです。
 いわゆる、どのように人体に作用するかというようなものが、医師の行為に係る技術という定義がある以上は、ここの(3)の部分は作動する、操作をすると書こうが、実態上は変わらないということになりますので。

○小島事務局次長 いや、それは全然違って、これはスティックをどう動かしたら、その先でどうはさみが動くか、つかむかという機械の機能を表しているだけでございまして、これをどのように操作するか、あるいは処置するかというのとは、日本語も違えば行為、機能も全く違うと思うので、それはちょっと言い過ぎではないかと思います。
 例えば、先ほど言ったように、ここにたまたま角膜のレーザー手術装置の特許公報があるのですけど、物の特許ですけれども、これがレーザーを照射して、角膜の光学部分から凹レンズ上の角膜組織を切除する遠視矯正手段を備えることを特徴とするレーザー手術装置というのが物の特許として、医療機器として認められているんですが、まさに角膜組織を切除する遠視矯正手段を備えることを特徴とするレーザー装置というのは、ここで言えば、こういう処置手段を備える手術装置を別に、物の特許の場合はそのものを医療行為と言う人はだれもいないわけでして、物の機能、構造だと言っているわけでございまして、この作動方法も同様に、先ほど上田先生がおっしゃられましたように、医療機器、物の先駆的な、前段階の機能、方式、方法ですから、それと同様で、これはお医者さんが使う前の段階のものですから、これが医療というのはおよそ考えられないと思いますけれども。

○森下委員 これが医者の行為というのは、普通、医者はおもわないと思うんです。そういう意味では、前からお話が出ているように、審査の段階に医者とか歯医者さんとか、実際の現場の審査官と相談できる方が入れば、今の問題というのは実はほとんど解決できるのではないかと思うんですけれども、ただ、問題はこういうのが特許の対象にならないということになると、これからこういったちょっと複雑な、もっとマニピュレートがきくものが中心になってくると思うので、こういうものが一切、特許の対象にならないという方がむしろ問題だと思いますけれども。コンセンサスが取れれば、あとは運用上の問題のところへ行けるのではないかと思います。

○小野特許技監 私どもは、特許するとかしないとか言っているわけではございませんで、今は、まず方法の場合ということになりますとまさに医行為という厚生省さんの定義、それから、判決等も同じように、人体に直接作用するというところは医行為だという定義で我々ずっと運営しておりますので、そうしますと、(3)の入るというところは医行為でないと、これだけはっきり書かれますと。

○小島事務局次長 作動方法は人体に作用するということではなくて、機械が動くということが作動方法なので、そこは、この8回の会議を通じて明確に区分すべきだということで、私どもは明確に区分しているわけですから、機械が動くということだけなので、そこは書いてあることと、あるいは、この報告書で苦労して整理したことと、別のことをおっしゃられても困るんですけれども。

○小野特許技監 そこは、何回も繰り返しになって恐縮でございますけれども、例えば次の事例6もそうなんですが、カテーテルが移動する、これは機械が自動的に動いているんだろうということとしても、やはり実態上は人体に作用する行為に相当しますので、部分的に、その部分すなわち医行為が含まれるので、末尾が方法である以上、医行為であると整理しています。実は、これは日本特許庁だけではございませんで、EPOも全く同じように考えているということでございますので、そこをもしやるとすれば、一部医行為が入っていても、全体として機器の作動に特徴があるのでこれらの方法を特許の対象とすべきだというコンセンサスが得られれば、我々は当然、やらなければと思っております。
 ただ、特許請求の範囲上の書き方として入っていない、だから大丈夫だというロジックは疑義があり取り難いと考えています。

○井村会長 医療機器ですから、全く医療行為と無関係というのはあり得ないわけです。だから、その中で機械のシステムとして非常に価値のあるもの、それを方法として認めようと。だから、それが全く医者が無関係にあるということはないと思うんです。
 普通の医行為と言えば、大抵、医者が自ら手を振るって、医者の技術によってやるものを医行為と呼んでいるわけで、機械自身のシステムにまで医行為というふうには言えないのではないかと。

○小野特許技監 これは私ども、今、御指摘した点でございますけれども、従来、そういうふうに、いわゆる審査基準をつくり、再生医療とかをつくったときの定義として、そういう整理をずっと厚生省等と御相談してやってきております。前回のときは、培養は医行為でないとして許し、それを人体に戻すところは医行為としていこうという話だったので、我々としても検討の方向は出せると思うんですが、これがいわゆる医行為ではない、医師の行為に係る技術ではないという条件付きになると例えば事例3を許すのは非常に難しいことになります。

○小島事務局次長 それは、先ほどの話では、さっきの4ページの図、あるいは7ページ、14ページ以降に書いてあるように、従来、一緒くたにされているところを厳密に分けようという努力をこの1年間してきたわけですから、従来、こういう運用をしてきたというのは、確かに一緒くたに運用してきたということを書いてあるわけでして、それを分析してどこまでやるかと。最初は一緒くたにしてきた全体をやろうという議論から始まって、それを分析的に区分して、医行為に係る部分と機械の部分とを峻別して、機械の部分だけにしようという議論をしてきたので、従来、どういう運用をしてきたかというのをいつまでも言われていても議論が進まないのではないかと思うんです。

○小野特許技監 従来ということではなくて、なぜ、そういう理屈になるかといいますと、末尾が方法である以上は、その機械に関連したところは、どうしても医行為が入るということになります。突き詰めますと、どういう理屈になっているかといいますと、先ほど、スプレー方法が非常にわかりやすい例だと思うんですが、機械でそういう装置がございます。それで、ほとんどそういう特定の機能を有するようなところは書けるわけでございますが、それをいわゆる末尾がスプレー方法となってしまうと医行為となるという整理になります。

○井村会長 そうしたら、診断でもだめですか。

○小野特許技監 はい。診断方法も、現行ではそのように整理しています。ただ、診断方法の場合、EPOのように、現行の装置を使う方法はあくまでも中間データを収集しており、最終診断ではないという解釈にコンセンサスが得られれば可能性はあります。

○井村会長 でも、最終的にはやはり患者さんを対象として医者が判断するんだから。

○片山委員 ちょっと議論が技術的な話といいましょうか、法技術的な話になっていて、特許庁の実務として、ある明確な線がないと審査ができないという実務の御懸念は大変よくわかるので、それはそれで解決すべき問題だと思うんですが、恐らく、この委員会で議論すべきなのはそれではなくて、これを特許にするかしないかという切り分けをはっきりさせれば、あとは実務は、皆さん優秀な方がそろっておられるので進むと思うんです。
 今のような話で、例えば例に出ているようなものを特許にしてはいけないと思うか、それとも、それはいいのではないというふうに思うかということなのではないでしょうか。

○見城委員 だから、その前に、今の特許でちゃんと保護されているかどうかの、ちょっと微妙なところですね。それを伺ったわけで。

○片山委員 ですから、一部は保護されていないという理解だったと思うんですけれども。

○小島事務局次長 今、小野技監が従来、現在もそうなんですけれども、手術する方法、治療する方法と書けば、あるいは処置する方法と書けば、それは医行為になるというのですが、ここでの議論は、手術する方法、治療する方法ではなくて、機械が動く方法をとらえようとしているわけで、同じ方法といっても全然違うものを指しているわけです。この作動方法はお医者さんが作動するわけではなくて、機械が動くのであって、だから、ここは同じ方法といっても全く違う、治療方法はお医者さんですけれども、作動方法は機械が動くわけで、お医者さんはエンジニアではないわけですから、主語は機械が動く作動方法で、手術方法はお医者さんが治療する方法なので、これは全く別のものを、それを方法という概念で、末尾が方法だからといって、従来はこうで将来もこうだというのは全く今までの議論と外れているのではないかと思いますけれども。

○小野特許技監 その点は、別に医療だけではなくて、他の分野においても特許法全体の中で、むしろ文面上、末尾が治療法だからだめということではなくて、実態を見て、これが実質上、治療方法、医行為に相当するかどうかという実質判断をしております。これは裁判所も同じような考え方でございます。
 すなわち、医行為という定義、厚生省等いろいろございますけれども、特許請求の範囲に、いわゆる主体はお医者さんと書いていなくても、実質上、それに相当する行為が一部でも入れば、方法としては医行為が入っているということになります。
 実は、我々は、内部制御方法で特許付与する際どのような苦労しているかといいますと、事例の3をごらんいただきたいと思うんですが、実はこれが表現を工夫すると内部制御方法で、特許できるという例でございます。
 これは、現実は(5)のところに、「電極を通じて網膜に伝える」というところがございますので、ここのところが現行の考え方では人体に作用するという点で医行為になるということなんですが、これを避ける方法といたしまして、この発明の実質上のアイデアとしては、この「受信信号を眼球内の信号処理回路により」というところの後に、「網膜に伝えるように電気信号に変換する方法または内部制御方法」という形にすれば、一切、医行為は入らなくて、実質上、この発明の一番のポイントのところはすべてカバーされるということで、そのような表現で現行は許しているというところがございます。
 ところが、先ほどありました事例5の場合は、(3)のプロセスが含まれているので、なかなかそういう内部制御方法では表現できません。

○小島事務局次長 だから、従来できないものを今、新たな基準でどうするかということを議論しているわけですから、事例では特許庁の今までの医療行為本体の技術も、周辺の技術も一緒くたにした運用では従来できないというのはわかるわけですけれども、この本体の技術、すなわち医療行為に係るものと、その周辺の機械、装置に係る、あるいは方式に係る、システムに係る技術とを峻別して、その周辺の技術だけを機械に近い部分、システム的な部分だけの技術を認めるということはどうかということをここで今、定義して、議論しているわけです。

○見城委員 2段階あるのではないですか。ちょっと続きなんですけれども、さっき上田先生と同じ、双子の弟さんがという表現をしたのは、全く医療に関係のない存在の人が同じアイデアをそのまま、ある表現をして、申請をして、それで同じものが機械としてはでき上がるとして、でき上がったものを今度、上田先生が全くそれを医療行為に使えば、例えば抜けてしまうというんでしょうか、先ほどからひっかかっている申請の段階で、医療行為のために発案されていくものではなくてということで、そういうことが成り立つんですかと伺ったんです。
 そうしたら、今の答えとして、この事例3の(5)の電気信号に変えるという表現であれば、例えばそれは通るということであれば、現在の状況でも特許を申請するに当たって、医療行為者である上田先生が全部、そういう医療行為のために最初から始めるのではなくて全く同じことを、私なら私で全く医療に関係のない者が全部アイデアを整理していって、こういうものをつくりたいということで特許申請していったら、それは申請できると。しかし、でき上がったものを上田先生が今度、医療行為として治療に使っていくということが成り立つということですねということを伺ったんです。
 例えば、そういうことですねと、今、作動方法とか医療関連行為ということにこだわって、非常に話がわからなくなっている部分を明快に、シンプルに言うとそういうことですねと。その確認さえできれば、その段階で今後、新しい特許の方法にするのか、現在のある特許の中で、それはこういう範囲の申請であれば可能であるということになるのか、それがもう少し一歩具体的に近づくと思うんです。
 それであえて、今、伺って、今の話からすれば、そういう同じものでも、人工眼システムの作動方法ではなくて、網膜に伝えるように電気信号に変えるというふうなことであれば通るということが今、わかりましたから、そうしたら上田先生もその方法を取れば非常に治療に役立つものが特許を取れてできるということではないんですか。

○井村会長 さっきから広井委員が手を挙げておられるので、ちょっと待ってください。

○見城委員 そういうことも確認したかったので。

○広井委員 議論がかなり錯綜してきていると思うんですけれども、私は報告書の中で、この12ページのところがかなり重要だというふうに理解していまして、12ページで方向というので示していますね。結局、物か方法とでずっと議論があって、これまでは物が特許の対象で、方法は特許の外だったのが、この検討会でとにかく医療方法全体を特許の対象にするのかという議論がずっとあって、最終的に一つの基本線として、ここの真ん中辺りのちょっとしたあれで、物に由来する技術という、あくまで物に化体というか、具現化された部分に限って認めるんだという、ここが何か、ある意味で一番、基本路線として重要なところで、あとはやや技術的なといいますか、どう表現するかの問題というような感じで、ここをどう扱うかをしっかりコンセンサスが重要なのではないかと。

○井村会長 おっしゃるとおりで、いずれにしろ患者さんを治すんですから医療行為には入るわけです。ただ、その中で、今、広井委員が言われたように、物というもののコントロールをする、システムをつくるとか、そういう方法論に限って認めていこうということになっているわけです。
 だから、その辺りを、細かい点で議論すると混乱をしてくるので、この点、もう一度整理をしていただいて、基本的に、今、広井委員のおっしゃったような方向でまとめていくということでよろしいですか。
               (「はい」と声あり)

○井村会長 あと、薬のことをちょっと議論したいので、次は薬に行きたいと思います。
 これも方法として認めることでいいかどうかということが問題になってくるわけですが、20ページをごらんください。だから、案1と案2−1と案2−2がありました。
 案1の方は、要するに方法として投与医薬の組み合わせ、投与間隔・投与量、そういうものに非常に特徴があるものが医師に提示できればいいという製薬関係の医療の希望もありました。結局、今までの一つひとつとは違って、非常に新しい効能が出てくるということを医師に提示できるように特許化したい。それが案1です。
 案2−1は、組み合わせに特徴があるものだけを認めようとするもの。
 案2−2の方は、物としての中に含めていく。これは今まで、基本的には認められてこなかったわけですが、それを認める。そういう幾つかの案が書かれているわけです。
 いずれにいたしましても、組み合わせることによって格段に新しい効能が出てくるとか、投与法を変えることによって予期しなかったような効果が出てくるというものに限られるわけで、そこに平凡なものでは勿論、新規性がありませんから特許の対象にはなりません。そういう辺りで薬のことをどう考えたらいいのかということで、少し御議論をいただきたいと思います。
 どうぞ、北村委員。

○北村委員 この案1、案2−1、案2−2というのは、特許庁から見ると、どの点でも可能なんですか。こっちから先に逆に入った方が早い。

○井村会長 しかし、規則の方を変えないといけない。

○秋元委員 ちょっといいですか。今、お聞きする前に1つ確認したいんですが、先ほど医療機器のところでも議論ございましたけれども、要するに、医療行為と薬、あるいは機器の機能、あるいは使用方法、これが何らかの意味できちっと分けることが可能であれば特許庁さんの方は方法というものを他の産業と同じように入れてもいいというふうに理解したんですが、それはそれでよろしいんでしょうか。

○北村委員 それが分けられない?

○秋元委員 だから、分かれる、分けられないのはちょっと別の話としまして、分けられるとすれば、それはよろしいのですか。

○小野特許技監 もし分けられればですが。ただ、先ほど御説明していますように、実態で見ますので医行為と区別が困難と思います。後ほど、必要に応じ詳しく説明します。

○秋元委員 その実態のところで従来の基準でいくのか、先ほど言ったように、もう少しイクスパンドして新しい基準で考えるのかというところも一つの議論があるだろうと。

○井村会長 それは、従来の基準だけにとどまるのだったら、この調査会は要らなかったわけです。
 だから、調査会を開いた以上は、やはり従来では不十分と考えられるところを少しでも広げたい。ただ、それが医療に悪影響を及ぼしては困りますから、そうでない範囲というのはどこなのかということを議論していただくためにやっている。

○秋元委員 それから、さっき委員長の方からお話が出なかったんですが、案2−1というのは、これに限って方法を認めようという、方法ですね。

○井村会長 そういうことです。

○秋元委員 わかりました。それをちょっと確認したかったことでございます。

○井村会長 どうぞ。

○北村委員 結局、すべて医療関連行為というものに医が関与しないところはないわけです。ですから、はっきりと、これはここで切り離せというポイントは非常に難しい。
 これは医の行為なのか、産にもたらすことによって特許というものの取得性が意味のある方法なのかというところは、スペクトラムをつくっておるような気がするんです。
 先ほどから機械の提示のあったようなところは、極めて機械の方に偏った、医行為と云える。例えば医者が手を動かしてコマンドは入れますけれども、作動している向こうは、はさみであっても機械でやっている。これは、機械がこの間に介在してやっている。そうしたら、医師が、はさみとピンセットだけを持って行っているとそれは手術となってこの委員会は初めから手術は特許の対象にならないとしているわけです。
 ですから、そこにはスペクトラムがありまして、どこが産でやるか。確かに、ピンセットとはさみだけは特許の対象にならないような当たり前のものでありますから、これは医行為として産に戻す必要はなかろうというようなことで判断せざるを得ないところがあると思うんです。
 そうすると、ここで何度も言っていますけれども、まだ文章を変えられてきて「医師に提示する」というような言葉ができていますけれども、投与法、投与間隔というのは非常に医療行為の方に偏ったものであって、医師に提示するということで産ですというニュアンスを付け加えられているお気持ちは理解できますけれども、やはり、これは医療行為そのものに寄ってしまっておっているのではないかと思うわけです。
 今は医師が特許取れるわけですから、別に医者がこういうことを認めれば新しい投与方法によって何かが得られれば、医者が特許を取る場合も勿論ありましょうし、そうしますと、今、ここに例示に出ておるようなものも、私も、これは何一つ新規性のあるものはないのではないかと思ってしまうんです。すべて予測できる薬の効果を、間隔を変えておるだけと。骨粗鬆症の薬は骨粗鬆症に使い、その用量を変えている。これは医行為そのものではないかと思うんです。
 ですから、この50%の線引きをした場合、こちらの方の用量・用法は医行為に近いし、先ほどの機械は機械が動いて操作するというところは非常に医療機器というか、産、物の方に近いというようなことで判断せざるを得ない。だから、その判断をぴっちりと2つに分けてしまうというのは、医行為の特許というものについては非常に難しいと思いますし、医を中心に考えられれば野中先生の意見になるし、産を中心に考えれば秋元先生の意見になる。
 どこで線引きするかというものは、やはり判断が必要だと思うんです。この用量・用法の特許を認めるということについては実際、三者併用療法とかいろんなものがどんどんどんどん進歩して、移植の治療法でも使われていますね。そういうところに三者併用というものを特許取ってしまうのかというと、それを投与して、臨床成績を集めるのは医の行為であって、産に命令されるもの、あるいは産の特許で動かされるものではなくて、医行為に近いというふうに思うんです。

○井村会長 どうぞ。

○森下委員 今の北村先生のお話と、これが産にどれだけ近いかという最大のポイントは、今回、多分新しく出てきた話だと思うんですが、20ページでこの方法の実施は、案1の一番下です。「企業がこの方法に基づく用法・用量の医薬を製造・販売することによってのみ具現化される」と。要するに、医者の処方箋でないということを意味していると思うんですが、この意味が産業界の利点として戻せるということで出てくるのがはっきりすれば、かなり医行為との差というのは出てくると思うんですが、ここが具体的にどういうことを意味しているかというのはこれだけではわからなかったので、その内容次第で今回の用法・用量が医行為かどうかという切り分けというのははっきりしてくるのではないかと思うんですが。

○秋元委員 私どもは、何も医の行為そのものに立ち入ろうというわけではなくて、やはり、できるだけ早く、そういういい方法、実際には日々アメリカと競争をしているわけですから、そういうところで本当にいい方法を早く日本で見つけて患者に提供したい。これは前から言っておりますが、そういう意味で例えばきちっと製造承認を得られるような、非常にレベルの高いことを考えています。
 北村先生は、ここに書いてある事例はみんな予想がつくと言いますけれども、現実問題としては、アメリカ等では特許になってしまっている。
 私ども、この場で例を出すわけにはいきませんが、例えば、ある化合物で、あるインターバルで単剤を投与すると、一般的な制がん剤の毒性が非常に下がるというような治療方法、実は、これはアメリカで特許が取られておりますけれども、日本では現在のところ、その化合物も公知ですし、通常の制がん剤の組み合わせというのもわかっておりますから、特許が取れない。そうすると、本当にそういういい方法を私どもは日本に導入できない。日本で臨床をやって、製造許可を取ってもまねされてしまうと。そうすると、やはり本当にいい方法が日本に早く入ってこないので日本の国民に提供出来ない。
 そこのところで、やはり私どもは何とか医療の行為と、その辺をできるだけ分けたい。そういう意味で、何も行為ということではなくて提示という方法を取らせていただいた。これでもあいまいだということもあるのかもしれませんが、今度、実際には、さっきの医療機器もそうですが、やはり発明の本質は方法である。何回も言っているように、どうしても、方法全体を物に化体するのは非常に無理が生じると特許庁を含めて関係者は認識しており、クレームをつくるときも非常にトリッキーな手段を使わないとなかなか難しい。
 そういう意味で、もう一つの問題は、これも実際にはわかりませんが、はっきりと基準その他等できちっとそれが書かれていない限り、法律上、権利行使のときも非常に不安定になる。やはり方法というのはむしろ、ある意味で区別できたり、あるいはその幅をお医者さん側の方で考えていただいて、こういう幅にしたらいいのではないかというようなことがあれば、やはり本当にいい使用方法、用量・用法であれば、これは特許にすることが日本の患者さんのためであると考えます。私ども、日々闘っている産業としては、ヨーロッパのこともございますが、相手はアメリカですから、そういうところと互角に勝負していきたいというようなことでこういう提案をさせていただいているということで、1つは区別できるかどうかを御判断頂きたい。
 それから、繰り返しになりますが、発明の本質は方法であるということです。
 もう一つは、区別したときに、本当にいろんな影響があるかないか。こういうことまで含めて区別していきたいというように考えております。

○井村会長 どうぞ。

○小島事務局次長 ちょっと資料との関係、あるいは表現との関係で御説明をいたしますと、北村先生の御指摘にあった参考資料の事例というのは、我々も限界があるものですから、古い特許の例を使っているので、よけいそういう印象があるかと思いますが。

○北村委員 新しいものが出せない。

○小島事務局次長 それは済みません、出せないので。

○北村委員 我々を納得させてくれる例が出せないものを今、決める必要はないと思うのですが。

○小島事務局次長 発明というのは常に、先に言わなければ発明にならなくなりますので、それは本質的に出せないというものです。

○北村委員 そんな理解困難なものをつくって、ややこしいだけですし、そうすれば、新しい手術法が付する特許にならないのかも問題になる。

○小島事務局次長 それで、先ほど森下先生から御指摘があったように、案1は何かわけのわからない日本語がいっぱい並んでいるという印象を受けているかと思うんですが、森下先生がおっしゃられたように、これは医師の行う処方投薬ということに立ち入らないで、企業が研究開発をして、薬事法の用法・用量の承認を取って、最終的には医薬を製造するための方法という、そして、先ほどの広井先生の整理で、それが物に由来する技術として、それを企業が研究開発をして、薬事承認を取って、用法・用量として製造販売するという方法をここで表現しようとしているのです。そういう意味で、お医者さんが医薬を処方投薬するという領域とは全く別の工場で行う行為を書こうとしているんですが、なかなかボキャブラリーの貧困さか、物に由来する技術であって、企業の行う行為であるということをちょっと表現し切れていないということもあって、物事を混乱させているんだと思うんです。
 物に由来する技術で物の効果を発現させて、それを企業が製造するというところに限定したものとして特許を認めるべきだというのが、医療機器と同じように、医療の世界と企業の世界と峻別するという考え方で書かれているんですが、ちょっと表現がし足りないというところはあるかと思います。

○広井委員 今の医薬については、私はかなり懐疑的というか、方法に踏み出すというのが、この参考資料4で見ましても、用途発明というのがヨーロッパなんかやっているものでかなり読めるというか、書けるというか、それで何か、この右下の、私なんかから見ればかなりマイナーなといいますか、それほど全体の中では大きなものを占めるとは思えないようなものを救うために、この物から方法へと、この大きなルビコン川というか、それを渡って踏み出すような、余りにもリスクが大きいという印象がぬぐえなくて、あくまで用途発明という範囲で読めるところで対応するというので、かなり医薬はいけるのではないかという、ここで大きく、全体から見れば小さな例を救うために方法に大きく踏み出すということのリスクをどうしても感じてしまうんですけれども。

○小島事務局次長 ただ、これはルビコン川みたいに見えている表現のまずさもあるんですが、別にここに大きな差があるわけではなくて、3ページのところで御紹介しましたように、特許制度には一般に物と方法があって、例えばここの、医薬の世界でも、方法の方の発明には書いてありませんが、医薬の製造方法という、医薬の世界でも現に方法があって、ルビコンを渡っていますので、決して渡れない川ではないんですが、そういう物の発明と方法の発明があるということと、それから、やはり物でできるから方法は要らないのではないかというのは、特許の世界からすると、物も方法も発明の本旨に従って、どちらでもというのが原則ですから、そうすると、その方法を、先ほどの北村先生がおっしゃるように、方法を認めることが医療の世界と区分けできるか、妥当かどうかというところの線引きをしていただくということだと思います。
 そのときの線引きとして、医療の世界、お医者さんと患者との関係で行う処方投薬行為ということと、企業が研究開発をして製造するという行為とは区分けができると思いますので、そちらの後者の世界に限定されたものであるということを、先ほどの処置方法、操作方法と作動方法で切り分けたように、もう少し書き分けるという、書き方のさらなる工夫ができれば御理解いただけるのかなとも思うのですが。ちょっと表現能力の不足が起因しているのかもわかりませんけれども、ちょっとわかりにくくさせているのかもわかりません。

○井村会長 もうちょっと御意見を伺いたいと思います。これは、やはり非常に重要な問題ですので、どなたでも結構です。
 どうぞ、森下委員。

○森下委員 やはり先ほどの機器もそうですけれども、なかなかものだけではすべてカバーできないというのは、別に機器でも医薬でも一緒だと思うんです。機器に関しては、既に方法まで入っていますし、医薬でも製造方法とか、あるいは貯蔵方法という形、いろんなところで方法論は認められているので、やはりものの本質という点では医薬の方法まで踏み込んでもいいのではないかと。踏み込むというか、実質的に方法論を形を変えて特許としては取れているので、それを本当の意味で実情にあったような状態にするというだけだと思うんですが、その中でも投与間隔、投与量に関しては医師の処方箋ということだけでなくて、結局、産業界として物を製造しながら提供するというお話だと思うので、その場合は、基本的には物としての提供になるので、あまり認めないことによってどうこうというよりも、むしろ認めることによって産業界が、それで新しいものが患者さんに提供できるというのであれば構わないのではないかと、私自身は思います。
 特に、実施としてなかなか配合剤というのは、同時に飲ませるものはいいですけれども、ずれたものに関しては配合剤というのはやはりあり得ませんし、それをわざわざ医者が処方してということになると、ややも間違えて別のものを出したり、数を多く出したりと、やはり医療ミスにつながりやすいことになるので、今、そういう意味ではいろんなものがパック化されているので、そういう中で提供されるという意味だと思いますので、それだったら、私はここまでは認めてもいいのではないかというふうに思います。

○井村会長 いかがでしょうか。ほかに。

○野中委員 私は、前回、北村先生が言われた「最近の学会の発表で、医師がそれ以上は発表できません」と言う、「帰れ」と言われているような行動をすること。私は一番、産業界に対してインセンティブを与えたいのはわからないわけではないけれども、医師の医療のインセンティブが目の前の患者さんを何とかしたいというにもかかわらず、学会では、それ以上しゃべれませんということに関しては、私はまさに、井村会長は9回討論したから、それ以上前に進めなかったら意味がないとおっしゃるけれども、私は、それは本当に医療の発展と、産業界にインセンティブを与える話とは、この場合は別だと思います。確かに、それはアメリカだとそういくかもしれないけれども、それが果たして、ここでは穴をあけること自身がそれにつながるとは、私は到底、それを超える根拠としてはまだまだ早いというふうに思います。


○片山委員 ちょっと質問なんですけれども、この案1でいくとクレームが、例えば事例のどれでもいいんですけれども、例えば事例7をとると、どういうクレームであれば、案1だと特許になるということになりますか。どなたか。
 医師に提示するというのがクレームの中に入るんですか。

○小島事務局次長 ここは、医師に提示するという書き方が適当かどうかわかりませんが、企業が医師に提示するという、あるいは企業が行うというようなところを、この方法の中に入れたら、医師の行為とは違うものだというのが明示できるのではないかという意味でございます。

○片山委員 止めようとするのが、企業の宣伝販売活動で、これはこういうふうにして使ってくださいと、例えば、その2つの薬を組み合わせで売るときに、これはこういうふうにして使ってくださいという、提示するというのはそういう意味ですね。

○小島事務局次長 そうです。

○片山委員 特許ができれば、そういうことを禁止しようと。

○小島事務局次長 新しい用法・用量の特許権者ではない企業が、この既存の薬を新しい用法・用量で使ってくださいと言うのを禁じようということです。そうでないと、既存の組み合わせたものがAとBがあって、新たに発明した人でない人が勝手にやられたら、新たな発明をした人の利益を損なうことになると。

○北村委員 しかし、このL−カルチニンそのものには特許が取られて、製造されているでしょう。取られて、第1回目、少なくとも改定前の薬効の検査や成績が全部調べられて、フェーズ1、2、3とやられてきた成績が載せられているわけでしょう。これが更によい方法というのは、だれが見つけたのか。
 医師が見つけた場合は、医師が特許を取るという形も起こり得るだろうし、それから、企業が見つけたと言ったら、企業はこちらの方がいいんですと訂正すべきです。何で新たな特許を更に与える必要があるのか。それはちょっと過度ではないかと思うけれども、同じ薬で、しかも既に特許で販売されている薬に対して、用法・用量を、しかも、これは同じ目的です。画期性も大してないんです。これの方がましだということで臨床データがよくなった。そんなことは山ほどあるわけです。
 それは三者併用のうち、1つずつ変えていくものなんか毎月、ジャーナルに取って、こっちの方が生存率が少しよくなったと。それは皆、医者が臨床試験をしてデータが出ているので、1回1回、特許を更に既存の販売薬で与えるということ、しかも、臨床試験をやった医師が自ら、これはいい、大分よくなった、あとは私が特許を取るというようなことも起こってくるわけで、必ずしも企業が全部利益になるとも思わぬけれども。

○小島事務局次長 それは既存薬の用法・用量なり、その効能・効果で、当然、その延長線上で当然予想されるような効能・効果である限りにおいては新規性・進歩性もございませんので、それは特許にはならない。

○秋元委員 この場合、もともと、経口投与でやっておりまして、許可も経口だったのでございますけれども、それを静注、インフュージョンにしたら非常に効果が出てきたということで、もともとの製造承認の。

○北村委員 そうしたら、注射薬として新しく特許を取らないとだめだと。そうでないと、その特許を申請して、いい方法ができて、副作用が減った方法をまた特許として申請した何年間情報を押さえるとかがおこる。そういう既に市販されている薬の悪い方法をやらせて、いい方法見つかったものにも新しい特許申請が完了するまで何年間か情報を隠しておくとか、それはやはり既に認められている薬に対しては許されるべきではないのと違いますか。

○秋元委員 ただ、静注で非常にいい効果があるということは、かなりの臨床試験をやらないとわからない。それをもし、保護されないということであると、やはりお医者さんがやることは当然、自由でございますけれども、企業としてはやはり参入しないのは当然だと思います。
 この逆の例が、日本では剤としては一応、成立しておりますけれども、弊社のリュープリンにつきましては当初、やはり注射剤として出したわけでございますけれども、現在では1か月、3か月、場合によっては6か月のデポというものが出されるようになってきた。これは今、確かに日本では剤で保護されておりますけれども、そういうような形でもし特許が取れればいいですが、取れないような場合として、やはり特に用法・用量というものが本当に著しい効果を上げる場合があります。それで、さっき言いましたように、取れないというものは、例えばものが公知である、それから、組み合わせも制がん剤と公知である、ただ、それをある間隔でやると非常にいい効果、毒性軽減が出てきたと。これはアメリカでは特許になっているんですが、それを日本に導入しようと思ったときに、日本では現在では特許が取れません。
 そういうような状況では、やはりいいものも入ってこないだろうし、場合によっては新しいものを日本で開発するということも非常に難しいだろうと。具体的に私ども、やはりフェーズ2ぐらいまで行かないと化合物を開示出来ませんので、アーリーな段階でのそういう交渉のところで、どうしても日本に導入するというところがネックになってきてしまう。すると、日本にいい薬が入ってこないということになります。

○北村委員 それは、アメリカが特許をつくっているから入ってこないということですか。

○秋元委員 いや、やはりそこでは、そういうやり方をしたら非常にいい効果が出るということをお医者さん達と協力して。

○北村委員 でも、医者は勝手に使っていいんだから、どんなペーパーでも優れておればすぐにやっています。

○秋元委員 ただ、そのときに、ほかの会社も出来てしまうと、もともとそういう臨床試験をやろうというところが動かなくなってしまう。

○見城委員 単純な質問なんですけれども、こういう組み合わせがいいと言って特許を取ったものを、お医者様がA、B、Cという薬は、こちらにAとBとCと全くばらばらであって、同じようにそれを投与するのは。

○秋元委員 お医者さんが使うことについては、一切、関係ありません。

○見城委員 関係ないわけでしょう。だから。

○小島事務局次長 先ほど片山先生が言った、別の企業が、特許権者ではない、あるいはライセンスを受けていない人が、この新しい方法で使えますと宣伝広告してはいけないということ。

○見城委員 だけれども、お医者様は。

○小島事務局次長 それから、先ほど、北村先生がおっしゃった、先ほどの経口剤を静脈注射剤でやるというのは、これはお医者さんは適宜自由に裁量でできるわけですけれども、それを新しい薬としてやるためには、これは静脈注射剤でやると、非常に別の効果が出るというのは、これはまた治験をして、薬事法の新たな用法・用量として承認を取って、それで初めて製造販売できるということなんで、その新たな治験開発をして、製造承認に至る、そういう投資に対して保護してやる必要があるかどうかと。

○秋元委員 そこまでは、方法として、投資したいから認めていただきたいと。

○北村委員 注射薬として出れば、それは物特許として認めている。

○小島事務局次長 だから、それは注射薬として出ればいいんですけれども、まずはそれをそういう方法としてですね認めてほしいということ。だから、これは物としてやるのか、方法としてやるのか、さっきの議論ですけれども。

○北村委員 それは内科医にとったら外科医の手術と一緒だと思うんですよ。処方をしたのを投法、用量、間隔、そして、ジャーナルに出てくる新しい投与でいろいろな成績をやっている臨床研究は、企業がお金を出しているのはあると思いますけれども、皆、医者の名前で出てきて、そして、載ったら、日本人もよかったら、日本の体格に合わせて、工面して工夫をやっているわけですよ。
 一方、この間ちょっと秋元委員とも個人的に話をしたんですけれども、日本では子どもの与薬法に対して、全くほったらかしになっているわけですよ。しかし、医者は自分たちの責任において、体重とか体表面積とか状態に応じて、大人の薬を工夫して使っているわけです。
 ですから、ここでそういう用量、用法は医行為そのもので手術と変わらないと思う。

○見城委員 あと、大変シンプルな疑問なんですが、過大なお金と時間をかけて、特許を先に取りますね。でも、それはどんなものの組み合わせかがわかっているわけですから、全く別なものの組み合わせでお医者様が全く特許を取ったキットには手を付けずに、もう少しAとBとCを違う形で調達して、しかも患者さんの状況に合った形での用量、用法を考えて、そのキットと同じようなこと、A、B、Cというのを別なA´、B´、C´だけけれども、同じ材料のもので、ただ、時間や用量をその患者さんに合わせたテーラーメイドとおっしゃいましたけれども、そういう形での組合せをなさっていく場合になると、せっかく特許を取られても、特許を取った意味がなくなりませんか。

○秋元委員 お医者さんがやられるのは、先ほども申しましたように、これはもう自由にできますし、製造承認を得た範囲でもできますし、それを超えて自由裁量でやることもこれは可能です。
 ただ、そういう組み合わせとか新しい使い方、これも陳腐なものではだめだと思うんですね。北村先生が言われるようなレベルがどこまで高いか低いか、もう高過ぎるのか、それは別としまして、やはり従来の新薬に匹敵するような効果、こういうものがやはり用法、用量でもし出てくるのであれば、そのためには企業がお医者さんと協力しながら臨床試験をやらないと、製造承認は取れないわけです。
 そういうものについて保護していただけないと、保護していただくというのは、他の企業がすぐ参入できないようにしていただくということですが、そこにやはり臨床試験をやる新しい、いい方法を見つけるということへのインセンティブが働かないと今の日本の現実はインセンティブが働かない状況でございます。でも、今の日本の方がまだ非常にインマチュアであるとか、文化とか社会とか、そういう面からまだ方法というのは非常に早いんだとか、認めるべきではないということになるとすれば、結局、私どもは今日でも明日でもアメリカと競争するわけですから、みんな向こうの方に逃げてしまいます。
 さっき、ヨーロッパの話が出ましたけれども、ヨーロッパの研究、あるいは新しい臨床試験も現実にはアメリカでやられるような傾向になっております。結局、日本に早くいいものは入ってこないということは、やはり日本の損失ではないか。あるいは、日本でできないということも日本の損失ではないか考えます。
 先ほどの最初の質問であれば、お医者さんはできるということですが。

○見城委員 お医者様が考えて、同じようなキットの形を取って投与するような、そんなものではなくて、もっと大変複雑でいうことです。

○秋元委員 北村先生だったら、かなりハードルが高いことを言われますけれども、やはり、言葉のあやではないんですが、やはり新薬に匹敵するような効果、効能、あるいは副作用の低減、こういうのが出る、そのためには、企業としても多額の投資をしなければいけないわけですから、そういうところについては、やはり方法という形で保護を認めていいだきたいというのが、私どもの考えでございます。

○北村委員 しかし、本質的に用量とか時間とかの投与試験で、そういう新薬に匹敵する画期的なものが出るとお考えですか、単剤で。皆さんは子どもに対しては用量・用法を医者にやらせているではないですか。

○秋元委員 小児の適用につきましては制度・運営上の違いなどの理由もありますので、その話はちょっと別に置きまして。

○北村委員 だから私が言うように、例に出ているような骨粗鬆症の薬はやはり骨粗鬆症で用いており、その前に抗アレルギー剤を投与するという方法。こんな方法は移植免疫の治療でざらですよ。こんなものを組み合わせてそれがみんな特許となっている必要はない。自分たちで工夫してやっているわけですよ。血中濃度をはかりながら。
 今、血中濃度をはかりながら、一人一人に用量・用法を決める。そういう難しい薬を使う時代に、こんな特許がいるのか。

○秋元委員 血中濃度というのは、血圧をはかりながらやることは、やはり医療行為と関連がありますから、実際には特許として認められていないという事例が一番後ろに出ているかと思います。

○北村委員 全部、アメリカに認められているというのか、何も画期性も新規性もないと思える。

○秋元委員 いえ、特に事例8−9というのは、逆に保護されない例になりまして、今言ったのは事例9ですが、これは血圧を測定しながらやるという方法については、実際には認められておりません。これはやはり医療行為ということで。
 事例8のところであると、これは要するに、血中のHCVRNAの量が高いか低くないかというところで、これはお医者さんの判断でやることになりますから、これは認められておりません。
 だから、それ以外のものは認められているんですが、北村先生が言うように、ハードルをどこに置くかというのは非常に大事かと思うんですが、やはり、先ほど言いましたように、新薬に匹敵するような効果とか、効能あるいは副作用の低減とか、こういうものについては、やはりそういう例があるかという例もございますが、先ほど言いましたように、現実にはフェーズ2ぐらいまで行かないと私どもは発表できないんでございますけれども、導入するところで日本で特許が取れないということで、それを導入できないということで、現実に今、逡巡しているというような問題もございます。

○北村委員 それは新規の薬のことをおっしゃっているの。今、フェーズ2とおっしゃったけれども。

○秋元委員 フェーズ2の場合は新規ですね。

○北村委員 皆さんがおっしゃっていたのは、もう薬事承認のおりた薬でも使い方と用量を変えれば、革新的なことがあれば特許ということだったでしょう。革新的なものの例題は出ていないばかりではなくて、それをやっているのは医師で、国のお金でやろうとしているんです。企業がやらないからです。厚労省がやろうとしているは、子どもにこの量でよいのかという問題です。大人用だけは提示されていますがね。それは新薬であれば、別な話なんですけれども。

○井村会長 ほかにも御意見があれば、もうちょっとお伺いしたいと思いますが。
 片山委員、どうぞ。

○片山委員 これはどちらから出発するかという、その考え方の問題だろうと私は思うんです。私などは、どちらかと言うと、特許制度に対する信頼がありますので、企業がそういう宣伝をする、コンペティターがそういう宣伝をするのは止めたいと。一方、お医者さんがやられるのがいいと。医師が論文に発表されて、全国のお医者さんが自分で時間差でやられるのは、そこは構わない。ただし、少なくとも企業はコンペティターがやられるのは困る。そこを何とか歯止めを付けてくれるのであれば、企業としては臨床試験もやりましょう、お金を投資して行きましょうというようなことですね。こういう具合に少しでも役に立つのであれば、それは特許制度を認めていいのではないかなという気が、私自身はするんです。
 ただ、そうした場合に弊害が、こんなしようもないものまで特許になるんですと、さっきおっしゃっていたような、そんなのどこだってやっていますよというものまで特許になるということであれば、それはやはり弊害の方を重視して、それはいけませんねということになるのではないかと思いますね。
 そこのところの実務上の弊害がそこまで高いものになるのか、それはそうではなくて、そこの辺りは審査でもって、本当に進歩性があるものでないと特許にはしませんよと、実務的にそこはできますよということであれば、少しでも役に立つわけですが、特許にしたらどうなんだろうかと思うのです。
 お医者さんがそれを自分で出願されるかどうかは、それはもうお医者さんのフィロソフィーの問題、理念の問題ですね。私は学会に発表して、一刻でも早く皆さんに知らせたいというふうにおっしゃって、特許とは無関係ですとおっしゃられる方は結構多数いらっしゃると思います。
 他方、いや、そうではない、これはやはり企業に頼んで臨床試験をやってもらって、その企業の方と提携して、このものを逆に特許として成立させることによって広めていきたいとおっしゃる方もあるんだろうと思います。そこは自由に選択されたらどうなんだろうかなという感じがします。

○見城委員 患者の側にしては、どうなんでしょうか。例えば、特許をもう既に取ってある薬のAとBが特許の量がかかっていて、それをまた組み合わせて、それに特許がかかって、それが患者に投与されるときは、薬代としてはどうなるんですか。例えば、そういうふうな恩恵はどうなるんでしょうか。

○小島事務局次長 それは、この新しい組み合わせで特許をとって、治験をして、薬事承認を取るということになりますから、この安全性はその薬事承認でチェックされ、またその診療報酬の中にその新しい組み合わせの医薬というのが入ってくれば、そこで薬価が与えられますので、そこはそういう薬事承認、診療報酬制度の中でチェックされる仕組みになってございます。

○北村委員 しかし、用量・用法を変えたって、薬事承認がおりているものはおりていますよ。新たに取る必要なんてだれもしないと思うよ。そんなお金かけて。通っているものを何でやる必要があるんですか。

○小島事務局次長 新しい効能になれば、用法変更で。

○北村委員 それは用法拡大ということで、今でも行けるわけです。だから用途特許で行けるわけですよ。現在あるもので行けるわけです。

○見城委員 カバーできるということですね。

○小島事務局次長 特許は物の用途というのもありますけれども、だからここで言っているのは、その用途特許でできない部分、現在の用途特許でできない部分。

○井村会長 予定の時間を大分過ぎましたので、今日は核心的な部分について、かなり御議論をいただきました。機器に関しては、大分いろいろ意見の混乱とかありましたけれども、多くの方がある一定の要件で切り分けられたら認めていいのではないかという御意見であったと思います。
 薬剤に関しましては、かなり議論がまだ分かれておりまして、今日、結論を出すことができませんでした。どうも私の座長の進行が下手で、今日もまた結論が出せませんでしたが、次回までにもうちょっと薬剤について、検討していただいて、どういう方向が一番いいのかということをまとめたいと思っております。
 どうぞ。

○野中委員 話をお聞きしていまして、インセンティブが活用だったらいいんですけれども、私は今のお話を聞いていてもどうしてもインセンティブが、やはり独占と排他としか思えません。ですから、幾ら片山委員が発明というものに対して信頼を置いて活用という部分でメリットがあるということで論じているが、企業のインセンティブは、どうしても独占と排他だと。その矛盾について説明をよくしていただかないと、私は前に行けないと思いますので、よろしくお願いします。

○井村会長 どうぞ。

○松谷審議官 初めて出させていただきましたけれども、1年近くかけて、なかなか難しい問題を御議論されて大変だと思います。今、まとめでは医療機器について大分進んだというお話ですけれども、顕微鏡で見て分けられるかどうかというところについて、まだ意見の一致を見ていないように思いますので、もうちょっとまだ議論が必要なのではないかと。
 厚生労働省としても、いろいろまた今日、考え方が出ていますので、今後、必要な意見を申し上げていきたいというふうには思っておりますけれども、国民・患者のために役立つような方向で結論が出るように御検討いただければと思います。

○片山委員 野中先生、済みません。活用と独占というのは、表裏一体です。一度、先生、お話をゆっくりしましょう。我々から見ると、それは切っても切り離せないものだという頭がありまして、是非一度。

○井村会長 我々はやはり日本の医療産業が発展して、ひいてはそれが国民の医療に大きく貢献するということを目的としてやっているわけですから、現在はこうだから、これ以上はできないということは言ってもらったら困るわけです。常に医学も進歩しているわけですし、特許の制度も変わっていっているわけですから、そういう中で今、我々がどういう方策を取るのが一番いいのか。そういうことを考えて、是非皆さん、これから詰めていただきたいと思います。

○小島事務局次長 それで、次回は10月13日の水曜日、午前10時から、本日と同じ場所で開催いたします。
 それから、その後の日程についても、また事務的に調整させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○井村会長 どうもありがとうございました。