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第6回 医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会 議事録 | |||
1. | 日 時: | 平成16年5月20日(木)10:00〜12:00 | |
2. | 場 所: | 知的財産戦略推進事務局 会議室 | |
3. | 出席者: | ||
【委 員】 | 井村会長、秋元委員、上田委員、片山委員、北村委員、見城委員、野中委員、平田委員、広井委員、森下委員 | ||
【参考人】 | 高倉医政局経済課長、上野特許審査第二部長 | ||
【事務局】 | 荒井事務局長、小島事務局次長 | ||
4. | 議 事: | ||
(1) 開会 | |||
(2) 今後のとりまとめに当たっての論点の整理 | |||
(3) 討議 | |||
(4) 閉会 |
○井村会長 おはようございます。10時までちょっと時間がありますが、全員おそろいになりましたので、ただいまから医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会を開催いたします。
○野中委員 よろしくどうぞお願いします。 ○井村会長 また、本日は、国会の関係で厚生労働省の岩尾局長が出席できないということでございますので、代理として高倉信行医政局経済課長に出席をしていただいております。
○小島事務局次長 それでは、お手元の資料1「今後のとりまとめに当たっての論点の整理」をごらんください。医療関連行為の特許保護の在り方の問題につきましては、先ほど井村会長からお話がありましたように、専門調査会がこれまで5回開催され、さまざまな御議論をいただいてまいりました。また、先ほど井村会長のお話にもありましたように、取りまとめの議論について整理をするようにとの御指示がございましたので、これを受けまして事務局におきまして、これまでの5回の会議での議論を改めて振り返って分析をいたしました。前回の会議でも御指摘がありましたけれども、この会議で用いられた用語とか、その定義といいますかイメージというものが、さまざまであったことが議論を複雑にしていたのではないかと思い至ったわけでございます。
○井村会長 ありがとうございました。
○見城委員 一番シンプルなことなんですが、今の御説明を伺いましたら、論点としてこの特許に関しては皆無、全くあり得ないということではなくて、特許の設定の仕方によっては医療行為、医療関連行為も新しく特許として認める部分もあるというような方向でこれがこれから動くということなんでしょうか。 ○井村会長 実は、その点をここで議論していただいているわけです。 ○見城委員 そうなんですけど。 ○井村会長 それを全く否定するんだったら、もう議論は今日で終わってもいいわけですね。そうではなくて、やはり今までの機器とか薬剤だけの特許ではなくて、もう少し医療の方法に関連したいろいろな行為に関して特許を掛けた方がいいのではないかという意見があちこちから出ているので、その点を議論していただいているわけです。 ○見城委員 それはわかっているんですけど、今日から変わる部分があったのではないかと思ったんです。 ○井村会長 いや、そうではなくて、まとめに入りましょうということです。今まではいろいろな意見があり、それから、特許以外に非常に幅広く、先生の質問も後で答えていただこうと思います。そういう問題もいろいろ議論してきましたが、やはり特許の問題にこれから絞っていこうということなんですね。 ○野中委員 見城委員が言われていることの危惧も、ある面で私たち日本医師会も持っていますし、その分では議論すること自身がこれで終わりだということは、せっかく今まで皆さん方がいろいろな意見を交換されたということは大事なことだろうと思います。ただ、私としては、澤委員から引き継ぐために御説明をいただいたときに、最初にこの会議が始まるときに、いわゆる前文として「患者と医師の信頼関係のもとで等しく行われる医療行為等に悪影響を及ぼさないように十分配慮しつつ」という言葉が前段の条件にあるわけですね。そのことに関して、どれだけどうやって悪影響があるかという、それを悪影響だと判断する材料が何もない中で、どうやって判断するのかという方法も何もない中で、このことを議論していくということは、ある面ではこの国は、この悪影響ということを一旦棚上げにして議論をしてみようよということなのか、それとも、そうではないのか、その辺の議論が多分、見城委員が心配されているというか、その辺の話につながるわけでありまして、その辺の議論が、ある面では医師の行為はいつも免責だということですけれども、医師と患者さんというのは、患者があって初めて医師の行為があるわけですから、その行為が患者さんに対して悪影響を及ぼさないという部分をどう認識するか、それをどうやって見るのか。特許というものを少しですけど勉強してみれば、ある面では独占と排除ですね、その排除とすることによって本当に悪影響がないかどうかということが後になって裁判とかになるわけです。でも、そのことはむしろ患者さんにとって非常に不幸になるということを考えたら、いわゆる特許ということを言う人たちが、自らは何を悪影響ではないと言えるのかという議論が本当はなされなければ、そのものを持っていなければ、これからはいつも告訴のし合いになってしまうのではないだろうかと思いますし、その結果、国民が安心して医療を受けることができないと思います。
○井村会長 かなり議論はしてきたつもりなんです。例えば、こういう特許の幅を広げることによって、医療費が上がるのではないかという問題もここで議論になりました。それは直接、患者さんに悪影響が出る。これについては、慶応大学の池田先生という、その道の専門家に、ここでプレゼンテーションしていただいたんです。あの先生は、いろいろなケーススタディをたくさんやっておられて、結論としては、必ずしも医療費が高騰するということには結びつかない。むしろ新しい技術が出ることによって医療費の節減ができるという面もあると、そういうことであったと思います。
○野中委員 ただ、私とすれば、医療費が高騰するだけが国民にとってマイナスであるかどうかということは、それだけでは言えないと思いますし、やはり医療を受けられる機会均等とかそのものがどうであるかという部分を、例えば、そのことを考えたら研究が進まないのかどうか、あるいは特許がなければ研究が進まないのかどうか、その点は私はまた違うだろうと思いますし、逆に言えば、産業界がそこに研究費を出すという1つの方法だろうと思いますけれども、それでは、それがなければ研究は今まで進んでいないのかどうか。その問題は、もうちょっと考えるべきであり、誰のためにこの特許の制度をするのかということは、必ず私たちとすれば特に医療の分野に関しては、医療を受ける方、医療を受ける方は、原則としては不幸にも病気になられた方は好んで病気になられた方は誰もいないはずです。そのことが、ほかの方々と産業とかそういうものとは違うものだろうと思いますし、その辺に関する悪影響というものが、今現在、私たちが考えている悪影響以外に、また更に悪影響があるのではないかということが予想できるとは思えないんですね。予想しなければいけないだろうと思いますけれども、それに対して特許と言われる方がどれだけの配慮をするのかどうか、そのことをしなければ、最終的にはその技術が幾ら見つかったとしても、そのことが国民に対して利益になることはないだろうと私は思います。 ○井村会長 勿論、医療ですから、ほかの分野と違って、やはり国民の利益を第一に尊重しないといけない、それはよくわかっていることです。ただ、私もこの専門調査会の会長を引き受けた背景を申し上げますと、やはり過去数年間、日本の科学技術政策に携わってきて、日本においては、例えば、医療機器などでも輸出は全く増えないのに輸入はどんどん増えて、その赤字が非常に大きい。それから、医療に用いるいろいろな機材、特に治療用の機材はほとんどが輸入になってしまっていて、御承知のようにカテーテルにしろ、それから、ペースメーカーにしろ、すべて非常に高い。だから、このままでは日本の医療に悪影響がどんどん広がるのではないか。その中で、では、どうやって日本の医療関連の産業を振興していくのか。それは、やはり国民にとっても非常重要なことではないかと私は考えているわけです。当然、機器と薬剤に関しては既に特許が認められているわけで、それについてはここでは何ら議論をしておりません。ただ、それを踏まえて、いろいろな方法特許がヨーロッパでもアメリカでもあって、アメリカは御承知のように非常にブロードですけれども、ヨーロッパは今のところ診断に関連して日本よりは少し広い。だから、そういう方法の特許を認めるべきかどうかということを今まで議論してきたわけですね。だから、先生方がおっしゃるように、医療に悪い影響が出てはいけない。しかし、他方では、このまま日本の今の医療関連の産業を放置しておけば、ますます輸入過多、輸入超過になってきて、それが日本の医療を圧迫してくるだろうという心配があるわけです。そういう中で出てきた問題であるということです。 ○野中委員 それは重々よくわかりますけれども、それを認めれば本当に解決できるのかということは、私はそうではないだろうと思いますし、例えば、創薬に関しても現在、認められていることはわかりますけれども、その過程において、本当に悪影響を及ぼさなかったかということをどうやって検証されているんでしょうか。そのことが検証されずに、ただ単に、いわゆる広がったということだけで悪影響を及ぼさないということは言えないと思います。 ○井村会長 それでは、森下委員。 ○森下委員 これはやはり、この中でも以前議論があったんですけれども、2つの方向があるのは間違いないですね。野中委員が言われるように、悪影響が出る部分というのはやはり懸念されるだろうと。見城委員からも以前お話があったように、今の日本の皆保険というのは非常にいい制度なので、これに対しては影響を与えてはいけないというのは、恐らく先進医療をやっている側も同じ気持ちだと私自身は思っています。実際、そういう皆保険の中で日本の医療技術の進展というのは見られましたし、あくまでもそれを維持した中で今回の枠組みもあるということで、そこに影響がないというのは是非、私自身も確認をしていきたいとは思っています。
○井村会長 では、上田委員。 ○上田委員 私は、大学の研究の場と外科の立場から少しお話をさせていただきます。先ほど野中先生がこういった制度が認められないと研究が進まないのか、高度・先端医療を開発する研究の研究費の確保がうまくいかないのかということをおっしゃいました。結論から言いますと、企業から研究費を得るためにこの制度が活用されるのではないのだと思います。議論の中で何度も申しましたが、日本が医療目的ではなく開発してきたたくさんの技術が企業にはございまして、私は再生医療という医療行為をやっているわけですけれども、細胞を移植する方法に高圧ガスを使って、それを移植の手段に使うだとか、あるいはイオンを使う方法で薬剤の投与を行う、こういったものというのは、もともとは細胞移植のために使われたものではなかったわけですね。そういう技術を企業が医療に転用してくれることによって医療が発達したという面がございますので、産学連携、企業の技術を貸していただくためには、その目的が何であるかということをはっきりさせておかないと、それを供与していただけないわけです。自動車の技術であるとか、航空機の技術が医療に転用されているということが、非常に大きなメリットがあったわけです。ですから、そこの部分が医療転用することが目的であるということをはっきりさせておかないと、そういった技術を貸していただけない。
○野中委員 ただ、日本は確かに医療費は高いけれども、日本の医療制度という中で保険制度に入れれば、それは必要だと医師が判断すればできるという状況になっていますね。アメリカの医療制度は、むしろそこは5,000万人も保険に入れず、そしてお金を払えなければそれができないという状況になっている。その状況で語られている部分と、日本がこれから守る話という部分とは、多少その辺の中では違うだろうと。ただ、コストが高くなっているのをどうやって安くしようかという部分は、特許の中の一部は理解できないわけではないです。しかし、それが、本当に医療を提供する人たちに対してどうなのか。その医療を提供する人たちに対して提供する医療技術が、訴訟の対象となり得るようなことにして、本当に国民に幸せなのかどうかということだろうと私は思います。 ○上田委員 今回の論点整理は、私は非常にうまくいっていると思うんですね。私が最後に言ったので医療経済の面が強調されたような印象があったかもしれませんが、私が言いたかったのは、高度医療を国民に提供するというところだと思うんです。先生がおっしゃるとおり、何よりも患者さんが一番大事なわけですから、外国に行かなければ治療が受けられないという状況は何としても阻止しなければならない。再生医療の分野では、実は大変そういったことが起こりがちな状況が生まれつつありまして、例えば、中国で治療を受けるというようなケースが出てき始めているんですね。こういうことは、日本国内での議論だけでは済まないところが出てきておりますので、やはりある程度、日本の中での再生医療のメリットを生かすような特許制度をつくっていただかないと、外国で治療を受ける人がどんどん増えてくるという状況が生まれるのではないかと思うんです。 ○井村会長 今の問題に関連していますか。では、見城委員、それから、森下委員でお願いしましょう。 ○見城委員 ずっとこの委員会で問題点というのは変わっていないと思うんです。つまり、先端医療をなさる、例えば上田先生たちにしてみたら、特許がなければ使えない、または輸入して医療器具を購入して、しかも、それには医療行為までがついているということで、常に日本の国内でできないことも増えてきているというお話があるんですが、私がずっと疑問だったのは、これが特許がないと結局できないものなのかということと、それから、私は全く別のいろいろな委員会等に出ておりまして、外部研究評価委員会とかいろいろあるんですね。例えば、全く別なところなんですけれども、今後の新しい新エネルギーに関する燃料電池の問題ですとか、そういう一生懸命研究している研究者に対して、外部が入って非常に厳しいチェックを入れるわけです。それで、常に新しい研究を真面目に進めているのかなど、外部評価されることで、特許も出るように、それから、新しい研究成果が出るようにということを常にやっているんですが、この医療機器に関しましてはどうなっているんでしょうか。先ほどから医療機器は輸入が大で、日本の開発……。 ○井村会長 治療用機器は、もうほとんどなんです、完全に輸入です。 ○見城委員 それは研究者がいないのか。つまり、そこのところをもう一度はっきりしてください。ここでの発言はオープンになっていく、結局、国民がみんななぜということを聞きたいわけですから、医療機器はだめですと言うだけでは納得できないし、わからないと思うんです。 ○井村会長 医療用機器にも診断用と治療用があります。診断用というのはX線、CTとかMRIとかエコーとか、そういうものが診断用の医療機器ですね。診断用の医療機器は、国内の生産が大分増えてきております。 ○見城委員 だめという意味は……。 ○井村会長 増えてきておりますけれども、残念ながら、もともと先発はほとんどがアメリカです。 ○見城委員 ですから、だめというところが……。 ○森下委員 研究者はいるんですね。北村先生のところを初めとして、かなり医療機器でも多くの研究所もありますし、いい業績を出していると思います。ただ、実用化というところがかなりだめなケースが残念ながら多かったと。これは、この委員会でも出ていたと思いますけれども、研究の技術が高ければ実用化して世の中に還元されるかというと、やはりそこに協力してもらう人がいなければいけない。医者そのものが機械をつくって患者さんに直接売るというのは、やはりあり得ないわけですね。何か会社なりがそこへ入って、我々の技術を認めてもらって、それをつくって販売してもらわなければいけない。販売するために必要な条件というのは、結局は、その会社が実際に販売して儲かるかどうか。当然、企業ですから無償の行為としてはできなくて、それなりの経済的利益が出ないと会社はやってくれませんので、そのときに経済的利益が出る条件は何かというと、やはりある程度独占的に売れるかどうか。同じものをすぐほかの人がつくって入りますと、当然、価格が安い方が勝つということになる。そうすると、価格がどんどん安くなって誰も儲からないわけですね。その意味では、そのときに特許があることによってある程度守られるわけですね。これは20年間と期限が限られていますけれども。 ○見城委員 ですから、医療機器は特許があるわけでしょう。 ○森下委員 特許があります。 ○見城委員 だから、この問題は……。 ○井村会長 機器を使ったりする方法について今、議論しているんです。 ○見城委員 ええ、そうですけれども。 ○井村会長 機器そのものは勿論特許があります。 ○見城委員 わかっています。だから……。 ○井村会長 だから、日本で医療関連機器の開発が遅れたのは、特許がないからという理由は一部はありますけれども、大きな理由は違うと思います。もっとほかに……。 ○見城委員 1つずつ明解にしないと、もうずっと繰り返していますから、医療機器の開発に関しては特許があるので、これはもう研究の質そのものの問題ですか? ○井村会長 ただ、今までプレゼンテーションを随分していただきましたよね。それだけでは不十分だということを、ここでプレゼンテーションされた方は、森下先生も上田先生も、外から来ていただいた方も、皆さん言われたことなんですね。 ○見城委員 ですから、明解にしたいのは、医療機器の開発に関して研究力もあるし、研究はできるけれども、そこに医療行為がついていかないと、一つインセンティブが働かないということですか。 ○井村会長 そういう分野が確かにあるということです。 ○見城委員 では、1つずつ明解にしませんと、繰り返しになるので確認して……。 ○上田委員 見城先生がおっしゃっているのもよくわかるんですよ。確かに今まで何で医療用のデバイスがそんなに海外依存してきたのかというと、特許があるとかないとかというよりも、薬事の審査の厳しさだったと思うんですね。そこはこの話とは全然別です。過去そういった技術、例えば人工関節などは、あれは冶金の技術でございまして、金属材料を加工する技術がよければできたのだろうと思うんです。それには特許を成立し得ましたから、それを工業界が医療用に転用するということで済んできたわけですが、ここから先の医療技術というのは、そういった単純な技術だけではかなり無理なところまで来ているんですね。ある目的を持って企業がそれを開発する気にならないと、転用というレベルではもう高度医療には活用できないんですよ。細胞1個に1つの穴を開けて遺伝子をいじくるようなナノチューブというのは、ほかに転用のしようがないような技術を企業に依頼してつくってもらわない限り、私たちでは到底無理なんですね。しかし、アイデアはある。それを医療に活用するとこういうメリットが出てくる。そうすると、患者さんにこういった利益が供与できるということを説明できる。しかし、その目的に対して独占性を認めてくれない限り、協力していただきにくいわけですね。お金を出してくいただくことはできるかもしれませんが、そういった企業の持っている核心に迫る技術を供与していただくためには、やはりそこである程度の目的を含めた方法に特許を認めていただきたいというのが私の考えなんです。 ○森下委員 私自身は、上田先生の意見にプラスアルファとして、やはり機械に対してそれを使用する方法等に特許がないと、なかなかうまくいかないというか、新しい医療技術が出ないという部分があると思うんです。具体的な例で言うと、最近アメリカで開発されているカテーテルを入れるための機械なんですけれども、今は我々医者がカテーテルを入れてやっていますが、実はこれを全部コンピューター化していこうという動きがあるんですね。それはやはり人間ですから、どうしてミスが多いと。それをコンピューターを利用することで、例えば、カテを心臓のある部分にコンピューター上で誘導できないかというアイデアがあるわけです。それを具体的にやる方法として、MRIという診断用の機器を2台使いまして、これは磁場を発生する機械なので、その磁場を2つ掛けてやると方向が出ますので、それこそコンピューター上で心臓をつくって、そこへポッと点を置くと、自動的にそこまでカテーテルが送り込まれるような機械というのができてきています。これは間もなくアメリカで認可されますけれども、そうすると、今の医療ミスの問題も減りますし、例えば、過疎の地区でそういう専門の先生がいないというので、例えば風船療法ができないとか、そういう地区があるわけです。そこに対して遠隔操作ができるようになるんですね。これは実は、技術的に言うとMRI2台とカテーテルの装置だけなので、何も新しくないんです。ただ、方法としてはMRIを使ってカテーテルを誘導していくと。これは多分、方法的なものであって、特許としてはやはり従来のいわゆる医療機器の枠の中では難しいと。恐らくこれから新しくできてくる医療技術というのは、今あるものに何か新しいアイデアを加えていって、より患者さんに優しいとか、手間の掛からない低侵襲であるとか、あるいは人手を省いていくというところへどんどん流れていくと思います。そのときには、機械だけにこだわっていると、なかなかいいものが出ないのではないかと。そういうことに関しては、アメリカというのはある意味アイデアの勝負の国なので、非常に独創的なアイデアが出てきて、それに対してお金がつぎ込まれていって、実際に現実化されてきているという機械が幾つか出ていますから、そういう意味では、日本もそういう方向にだんだん行った方がいいのではないか。これが1つ問題としてあると思います。
○野中委員 ただ、もっと原点に入れば、日本の医療のカテーテルとかそういうものが輸入に頼っているということは、逆に言えば特許という制度があるからですね。特許制度というものを私は否定することはしませんが、そのことはいいことだけれども、逆に言えば、やはりそれは悪影響を国民に及ぼしているわけですよ。アメリカというところが特許をしたから。その原点の中で同じようにすれば、もっと同じことが起きるのではないだろうかという懸念が、いいことは、科学者の皆さんの心意気は私は大切にしたいと思います。だけれども、そのことがむしろ対象となる人たちに対して、それが選択とかそういうことに結果的にはなっているということを踏まえたときに、それを追従していくのがいいのかどうかということがありますよね。
○井村会長 では、片山委員どうぞ。 ○片山委員 根本にかかわる話だと思うんです。果たして特許制度そのものがいいことなのか悪いことなのかということに限らない話になってくるわけです。理屈の上で言いますと、例えば、医薬についても特許は認めないという制度はあり得るわけです。あるいは医療機器についても特許は認めないと。こういう制度をとった場合にどういうことになるかといいますと、日本が勝手にそう決めても、ほかの国は恐らくそれに追随するということはないわけですね。そうすると、アメリカは現行制度、日本は医療にかかわるものは一切やめましょうとやった場合には、日本では開発が行われなくなってしまいます。例えば、新しい薬を日本の医薬品メーカーがつくったって、結局、日本では特許が取れないということになると、つくった方が損になるんですね。つまり、一番手はそこでお金を掛けなければいけないんですけれども、二番手はただでできるわけですから。恐らくそういう制度というのは、理屈の上ではあり得るけれども、現実にはとり得ないだろうと思うわけです。それは、日本で医療産業というものも否定してしまう、すべてをアメリカにお任せしますという制度になってしまうのだろうと思うんです。そこは納得いきませんかね。 ○見城委員 ちょっと、そこのところなんですけれども、今でも特許は認めていますでしょう。 ○片山委員 だから、今は医薬品は認めているわけですね。だけれども、医療行為について認めるか認めないかというときに、理屈の話から言うと医薬品について、特許を廃止する、しないということとほぼ同じ話なわけです。 ○井村会長 先ほどの野中委員の発言の中には、ややそういうニュアンスのことがあったので、今、片山委員が話された……。 ○片山委員 つまり、本当に特許がいいんですかということになると、基本的にはやはりそういう話だろうと思うんですね。だから、そこは行き過ぎだと……。 ○見城委員 それは違うんですよね。 ○野中委員 私が言いたいことはそういうふうに理解されるかもしれないけれども、「悪影響を及ぼさないように十分配慮しつつ」ということは、そのことと違うはずですよ。 ○片山委員 それで、お話を申し上げたかったのは、この委員会の前提となっているのは、お医者さん自体が訴訟に巻き込まれるようなことはやめましょう、免責しましょうというのが前提になっているわけですね。十分な担保が基本的にはできているということで話を進めているわけです。それは、非常に大きな話でございまして、そこについても本来は議論があるはずなんですが、ただ、全体の合意点として、お医者さんの行為はやめておきましょうねという前提があるものですから、そうだとすると、そこである程度の担保がとれて、あとは医療行為、新しい医療技術について発展させるために特許という制度を使ったらどうなのだろうかという議論になっていると思うんです。 ○井村会長 広井委員どうぞ。 ○広井委員 私が1つ気になるのは、外国というときに外国が特許構成をと言うときに、やはり圧倒的にアメリカが専ら念頭に置かれていて、ヨーロッパとの違いをもうちょっと重視する必要があるのではないかと。アメリカというのは医療に限らず、あらゆる分野で特許ということを前面に打ち出して攻勢を掛けておるといいますか、それでグローバリゼーションとかいろいろな形で各国から反発を受けている部分もあるわけで、片やヨーロッパはこの間、拡大EUにもなって、これからいろいろな形でその存在感が大きくなっていくと思いますけれども、ヨーロッパは医療システムにおいても、それから、特許保護の医療における在り方においても違った対応をしているわけで、アメリカのように市場メカニズムや経済的インセンティブをどんどん前面に出して社会を進めていこうという方向か、また、違った在り方をとるかという、これはかなり基本的な考え方の選択にかかわるもので、医薬品・医療機器の特許を一切やめるということは当然もともと議論にはなっていないと思いますが、これをこれから医療方法に広げるという際に、アメリカのように全面的にそれを入れてしまうというのは、私はかなり慎重であるべきではないかと思います。 ○井村会長 それは、まだ決めているわけでも何でもなくて、ただ、方法に特許を掛けることについて議論をしましょうということなんですね。だから、全面的にやるということは言っていない。
○見城委員 もう一つ、今までに資料をいただければよかったと思ったことは、先ほどからずっと問題になっていますのは、開発できない、これでは日本は取り残されるということが一番大きな出発点になっているんですね。その開発できない理由が、どうしても皆さんのお立場として、特許という大きな石がそこに外国から既に落ちているから、これを取り除かなければいけないという、そこからスタートしているんですが、私ができればもう一度知りたい部分は、この国がどの程度、研究開発費を掛けているのか。つまり、さまざまなほかの事業というのは、それぞれに大変な予算を立てて国の補助が入って、プロジェクトチームを大学と組んで、企業がそこに入って、今そういうふうに動き出していますね。国立大学が独立法人になりましたから、そういうことでの本当に新しいプロジェクトが動いているんです。そういうものがほかの企業では見えるんですが、この業界の先ほどから弱い、弱いと言われているものが、本当に特許がそこに認められなかったために弱いのか……。あえて申し上げているんですけれども、例えば、研究費が圧倒的に少ないのか、そういうようなところが、もう少し資料として欲しいんですね。 ○上田委員 文部科学省の方がおいでになるとよかったんですが、私は研究費が不十分だとは申しません。本当はもっと欲しいですけれどもね。お金がないために研究が進まないということを実感したことはございません。
○井村会長 今、見城委員のおっしゃったことに少しまとめてお答えいたしますと、過去数年間の間に研究費は相当増えました。今、GDP費で見て日本が大体0.7%ぐらいを国が研究投資しております。欧米諸国はかつて1%以上投資していましたが、最近はGDPが伸びたこともあって、総体的にやはり0.7%台に下がってきております。日本はかつては0.5%ぐらいだったんですが、それが今0.7%ぐらいまで増えてまいりました。だから、研究費としては、そろそろ欧米諸国並みに日本の研究費が総額では入ってきているということは言えると思います。
○平田委員 産業界からということで発言します。私どもは医療機器のことは余りやっていないんですけれども、通常の医薬品とか診断薬というものだけではなく、最近は細胞を使うという新しい医療も進んでいるわけです。その背景には、とにかく今は非常にライフサイエンス、バイオテクノロジーが大きな進歩の中にあるということがあります。ですから、野中先生がおっしゃられたように、患者の救済という大きな目的ために、現在は患者が享受すべき技術開発の可能性が非常に大きな時代にあるといえます。
○見城委員 ここでの議論の中で、こちらにその特許が設定されていなければ関係ないということではなかったでしたか。 ○井村会長 今の問題にちょっと追加しますと、今、幹細胞の話を平田委員がされました。その幹細胞をどうやって治療に使っていくのか。幹細胞自身は特許を掛けられているかもしれない。しかし、治療するときに、例えば、それは末梢の血液に入れても有効なのか、それとも病気の局所に注射するのがいいのか、それとも別の方法を使って局所に行くようにするのか、いろいろなやり方があり得る。その辺りは、方法特許になるわけですね。今まで薬とか機器は確かに特許の対象になっていました。それ以外に新しい分野がいっぱい出てきている、森下先生の遺伝子治療とか今おっしゃったような細胞治療とか、いろいろなものが出てきているわけです。そういうものは単に材料の特許だけで済まないところがあって、実際にそれをどういう方法で適用していくのがいいかということが問題になる。それは、森下先生がここで言われたことになるわけです。やはり方法の特許というのが必要だということをおっしゃったわけです。それでは、その方法の特許をどこまで掛けることができるのかというのは、これからの議論になるわけですけれども、その辺りを今までかなり時間を掛けて皆さんから意見を聞いてきたわけです。
○上田委員 もうちょっと具体的な例を出させていただきますと、私は骨粗しょう症という病気の再生医療をやっているんですね。骨粗しょう症というのは、女性がある時期を過ぎるとほとんどの方がなられて、骨折を起こすことがあります。骨折を起こす場所が決まっていまして、腰椎と大腿骨の頚部の骨折。20万人弱ぐらいの方が年間自然発症している。それを治療する方法は、ボーン・セメントという一種のセメントを入れる。外科的に切開して、骨折部にアプローチして詰め込むわけです。それをやりました後で、6か月間ぐらい装具をつけなければいけないんです。その間、患者さんは非常に不自由な目に遭うわけですけれども、それを細胞移植することで早期に治すということを考えたわけですね。
○見城委員 そこなんですけれども、そこが医療の違いは4mm以下の、ミクロンにいくのかわかりませんけれども、それでは特許が取れないということなんですね、そのものだけでは。 ○上田委員 いえ、開発の過程が問題なんです。それに向かっていこうとするのは、取れることが前提ですよね。 ○見城委員 だから、医療機器に関しては、特許は勿論ずっと認められているわけですよね。 ○上田委員 でき上がっているものは取れると思います。何のためにそれをつくるかという問題ですよ。 ○見城委員 でも、結局ここが理解できれば、多分解決するんだと思うんです。そこが大事なところ。 ○井村会長 手を挙げて発言してください。そうしていただかないと、ほかの方が手を挙げられても発言できないので。 ○見城委員 すみません。 ○平田委員 ちょっと追加でいいですか。 ○井村会長 では、平田委員、北村委員、それから、秋元委員の順番でお願いします。 ○平田委員 正確を期すために補足しますが、先ほどの幹細胞の私の話で、技術開発のインセンティブにやはり特許というのが非常に必要であるということを言うためにちょっと簡略したんですけれども、実は、幹細胞そのものは今でも細胞を特定すれば一応特許になるんです。ところが、幹細胞というのは、例えば特定する表札といいますか、マーカーだけを特定しても、その取り出し方によって結構変わるため本当に物を特定したことにならないんですね。ですから、今の知的財産権の制度を少し変えて、これからこの幹細胞の技術を発展させるためには、やはりそういう細胞の人体からの取り出し方とか培養の仕方、つまり医療に関する方法についても、知的財産権が付与されるようにしないと、技術が特定されて守られないということになってしまいます。 ○井村会長 では、北村委員、手を挙げておられましたから。 ○北村委員 野中委員を説得する気はございませんけれども、やはり特許というのは産を立てるためのもので、医者をどうこうするとか、あるいは医師・患者の関係をどうこうするものではなくて、自動車などは大変進んでいるにもかかわらず、先ほど会長からもありましたように、我が国の医療を支える産業は非常に遅れている。しかしながら、新たな再生医療とかそういった芽生えが出てきているときに、やはり日本の医療界の産業を支えるのに強敵はアメリカなんですね。アメリカを変えろとおっしゃることは不可能です。アメリカに少しでも対抗できるだけの知財を日本は持つべきであるとするものです。しかし、アメリカ一辺倒になるのは問題もいっぱいありますし、それが患者のレベルまで上がってきたときに、日本の医療とアメリカの患者さんに与えられている医療の違いは、我が国の方がすぐれているではないかという議論に入ってしまいます。しかし、これは飛び過ぎだと思うんですね。しかしながら、今や患者の治療というのは医師だけではできないわけです。いろいろな研究者と新しい医療開発の産業を支えるということが絶対的に必要なわけで、そこで、この産業を支援する特許を今までの薬や機器というものに加えて、何らかの新しい方法というものが考えられます。皆さんいろいろなことをおっしゃっておられましたけれども、私自身は私見も少し入りますが、医者のみが行う行為はすべて特許にすべきではない。ですから、取り出す技術、注射する技術までも特許というのはちょっとおかしいのではないかと思うんですが、今、新たな、我々が考えられないような細胞レベルに穴を開けて、そこへものを注入する場合、そのときには機械も入りますが、機械プラスそういう新しい概念のアイデア的なものを知財として含めるかどうか、これが非常に重要なところだと私は思っているんです。それをやはり含めていかないと日本の産業は競争力が延びないのではないか。あくまでこれは我が国の医療関連産業を支えるために、医者だけでできない部分、産に戻すことによって、より多くの日本の患者さんたちにもメリットを与えることができるところを少し方法というものも明確に、例えば細胞を増やしたり、ある種の系列に変換したりする技術、これはもう特許になってきているわけですけれども、まだ明確に規定されたわけではないと思いますので、そこらも含めてどこまでを特許に入れていくかを議論すべきです。そして、それが医師・患者関係に悪影響を及ぼさないようにするにはどういう仕掛けが要るのか、それを決めた上で拡大しようではないかということなんだと思います。新しい委員の方も来られたので、しかも、また重要なので、議論を蒸し返すことは大変重要なことかと思いますけれども、私はどちらかというと、医師として医師の行為にはすべて特許を掛けるべきではなかろうと思っていますし、患者さんにその先端治療法の選択において特許を取った企業の医師たちが選択に入るべきではないと思っています。医師の倫理観を持つとは別に医療方法の中で産に戻せる部分、産に担ってもらいたい医療行為というものには、やはり特許を認めていかないと我が国の医療産業は振興しないと考えます。アメリカを変えることができればそれでいいのかもしれませんが、それは不可能なことですので、やはり対抗策は必要であろうと思っています。先生を説得しているみたいになったかもしれませんけれども、私の意見です。 ○井村会長 秋元委員。非常に説得力のある話だったので。 ○秋元委員 北村委員のお話ともかなり重複するんですが、まず、見城委員が言われた、なぜ医療機器でだめなのか、なぜ薬だけでだめなのかといいますと、発明の本質は、その医療機器を何に使うか、どういう目的で使うかというところにあるかと思うんです。医療機器だけの特許を取っても、幾らでもそれと類似した機器を生産し、発明の本質であるそれをどうふうに使うかということを真似して使われてしまう。そうしますと、そこに非常に長い時間なりお金を掛けたことがむだになってしまう。例えば、私ども医療機器は存じ上げませんけれども、薬で言えば、最初の私のプレゼンテーションでも出したかと思いますが、いわゆるインターフェロンとリバビリン、これは現在C型肝炎の通常の治療法になっています。それから、弊社がやっておりますアクトスと利尿剤との併用、これは非常に大規模な臨床をやっておりますが、この考え方はアメリカの考え方を導入しております。それはアメリカではそういうことが保護されているからになります。通常、薬の場合ですとやはり、これも最初のプレゼンでございましたけれども、5年ないし10年程度、特に併用とか新しい高度な使用というとそのぐらいの時間が掛かるし、お金も100億円前後掛かる。そうであれば、権利化でなきいと企業としては、やはりそれができない。
○井村会長 どんどんと新しい技術が出てまいりますので、まだここで予想できないようなものもこれから出てくるわけです。そういうこともある程度考えに入れながら、日本の医療制度に悪影響を及ぼさない範囲でどういうことができるのか、何を今やるべきかということを今まで議論してきたつもりなんです。ただ、時々話が非常に広がってしまって、医療一般とかそういうことになりますと、ちょっとここの専門調査会の枠は超えてしまっていますので、やはりそういうことを背景に考えながら、ここでは主として特許の問題を議論していただきたいとは考えています。
○野中委員 長い期間皆さんが御議論されて、その中では確かに科学者が真摯に、あるいはそういう部分の中でもっといい医療をということを探されている、その姿勢を私は否定するつもりはありません。ただ、先ほど何回も言いましたように、独占と排除というような一面がある部分の中では、私は少なくとも医療の中には、この前提となる患者と医師の信頼関係のもとで行われるという部分の「悪影響を及ぼさないよう十分配慮しつつ」という部分を常に頭に入れていただきたいんですけれども、ただ、どうしても話になるといつも出てくることは利点でしかないんですね。その利点でしかないということがこれに勝るんだという議論でしているのは、私はもう一回待ってくださいねという話をしているわけであります。ですから、例えば創薬で確かにこれだけのそういう部分があった、でも本当にそれが国民にとって、創薬ですら享受されるものすら患者さんに対してそれがなかったのか。私は自分の専門が人工透析というか、慢性腎不全の治療ですから、そういう部分の中で過去にいろいろな中で制限された部分があります。ですから、私にすればそれは発明という部分だろうと。だけれども、私は何もそういう特許を否定しろと言っているわけではありません。ただ、そういう悪影響に十分配慮しない国で特許が広がったから、今日本はそうではないから、それに引っ張られなければしようがないという状況はよくわかりますよ。でも、それに対抗するのはそれしかないのかということをもう一回考えなければ、最終的にはいつも訴訟の繰り返しになり、むしろそちらの方が多大な費用の負担になるのではないでしょうかということもあると思います。 ○井村会長 そういうことにならないように、やはりいろいろ我々は考えないといけないと思います。 ○野中委員 それはそうだと思います。 ○井村会長 見城委員。 ○見城委員 確認を1つずつさせていただこうと思います。現研究費規模は、アメリカに対しては日本の何社かが集まっても、例えばアメリカの1社に対抗できないぐらいの小規模であるという秋元委員からの御発言がありましたが、そのような本当に小規模な研究費、現状況で医療行為の特許が認められたら突然にインセンティブが働いて、既にもう大変な乖離が生じているアメリカの研究状況と、非常に小規模で研究費が少ない日本とが俄然変わって対抗できるのか、例えばそういうことも教えてください。 ○井村会長 それは簡単に秋元委員から。 ○秋元委員 では、どのくらいの差があるかといいますと、弊社は世界で14〜15位でございますが、1位、2位のところと比べますと、研究開発費総額では5〜6倍、場合によっては7倍ぐらいに最近離れています。では、企業はそれで勝つにはどうしたらいいか。やはり集中特化していかないといけないと思うんですね。例えば、5倍の研究費を持っているところと闘うのであれば、領域を1つに絞らなければいけない。向こうが5つの領域をやれば、こちらは1つの領域で絞らなければならない。そうすれば、頭が同じ程度であれば太刀打ちできるだろうと。企業としては、そういう戦略をまずとります。 ○見城委員 特化していくということですね。 ○秋元委員 はい。では、今度そういう医療特許が認められたらどうかといいますと、弊社がやるかどうかは別としまして、やはりそれをやろう、そこに投資しようということがアメリカと同じように、例えば、アメリカで10ぐらいの新しい研究が出まして、日本は日本独自の1つ、2つの研究が出るとすれば、先ほど言いましたように幹細胞のことですが、そのようなところに、これは非常にプロミシングであると言えば、そこにやはり企業なり一般の方が投資すると思います。そこで研究費が集まる。そうすれば、アメリカが例えば別なところで5つとか10ぐらいのベンチャーとかそういうところで研究しているとすれば、日本では1つのところに同じくらいの投資すれば、それも日本独自のプロミシングなテーマに投資すれば、これは太刀打ちできると思います。だから、研究費の総額であれば、やはり的を絞らなければいけない。
○森下委員 ベンチャーに至っては、秋元さんのところの更に100分の1ぐらいのサイズなので、企業のいわゆる使っている金額から言えば絶対勝てないという話になるんですね。では、そのときに、なぜアメリカでもベンチャーが頑張って、それこそ1万倍ぐらいの研究費の違う会社と一応やっていけるかというと、1つは勿論特化をしているというのはあるんですが、もう一つは、まさにこの話の特許のところをとれば、ある意味お金がなくても大企業と権利的には対等になっていくわけですね。そういう意味では、特許というのは貧者というか、貧しい者の武器であって、お金を持っている人たちというのはむしろ安いとか大量生産とかできますので、特許というのはどちらかというと本当は弱い方の味方なんですね。大学がなぜアメリカでも頑張ってやれるかというと、特許の部分で基本的な部分は大学がやっていますから、ちょっとしたアイデアでそれが本当は物すごく世の中に変化があるというのを見つけたときに、それを特許化していくと、少なくともその特許を大企業がもらわない限りは、それ以降進まないわけですね。そういう意味では、大学とかが逆にやっていける理由というのは特許をたくさん、特に基本的なところで独創的なアイデアを基にして出していっている。その中で、薬をつくるというのは我々実はほとんどできないです。ただ、薬を使って何をやるとか、あるいは医療機器を使って新しい用途を考えるとか、そういうところで皆さん取っていけると。そういう意味では、貧しい方の会社から言うと、特許があるがゆえに何とか対等にお話し合いができていると。現状はそういう意味では、特許というのは小さい方の会社がむしろ研究開発をする上での武器だというふうに我々としては思っています。 ○見城委員 もう一つの確認なんですが、初期のころに日本がまだ医療行為に特許を認めていない状況なので、すみません、間違っていたら申し訳ないですが、そういう状況なので、現状さまざまな医療行為は使うことができるというのでしょうか、ちょっと勘違いかもしれないんですが。最初のころの議論で、もし、日本がこういう医療行為に特許を認めていく場合には、今度は外からのそういった医療行為も含めて特許に対して支払わなければならない、何かそういうことは出ませんでしたか。つまり、今、日本が特許に対してフリーであるので、そのままいろいろなものを使える。しかし、日本に特許というものが存在すると、今度はそれと同じ領域のものは海外のものに対しても一時特許権が発生して、日本の方も支払っていかなければならないという、最初のころに……。 ○井村会長 その議論はないですね。 ○見城委員 なければ教えてください。 ○秋元委員 アメリカが進んでいるのに日本が特許を認めたら、アメリカ企業がどっと入ってきて勝てないのではないかという議論はあったかと思います。アメリカに特許を取られるのではないかと。 ○井村会長 アメリカが日本で特許を取っていたら、どんな問題であろうと、やはりそれはやられるわけですね。 ○見城委員 ですから、日本に特許の制度ができることで、新たにここで特許……。 ○秋元委員 だから、当初そういうふうにアメリカにとられる可能性はあるにしても、日本にそういうインセンティブが働けば、日本の力として対抗できるというか、例えば、さっき言ったように、アメリカの資本が50%ぐらいの力を持っている、日本が15%ぐらいしかないといったときに、今アメリカはそういうものは認めていますから、日本でもし認められるようになれば、アメリカの特許が当初は入ってくるかもしれない。でも、日本でそういうところで特許を取れるということになれば、日本の企業、日本のベンチャーも、例えば15%ぐらいの力を20%にしようと努力するだろうし、日本としてもアイデアはたくさんあるから、それについては勝てるのではないかという話です。 ○見城委員 それは、かなり勝てるという予測があるんでしょうか。 ○秋元委員 現在でも、例えば森下先生、上田先生……。 ○見城委員 いや、申し訳ないけれども、やはりそこは……。 ○井村会長 片山委員どうぞ。 ○片山委員 よろしいですか。開発途上国ではそういう議論はよくあるんです。つまり、特許制度をつくったら、全部外国の会社にとられるんじゃないか、それはおっしゃるとおりの議論があるんです。ただし、やはり日本はそこは自信を持っていいのではないでしょうか。 ○秋元委員 私がそのとき挙げた例はですね……。 ○見城委員 ですから、私を説得するのは構わないんですけれども、これは大事なポイントなんですね。 ○秋元委員 だから、私がそのとき言ったのは、昭和50年に日本が製造法から物質特許に変わったと。アメリカが物質をみんな持っていて非常に優位だったと。日本はAとBを入れ替えて製造法で逃げてやっていたと。では、そのときに物質特許が入ったために、日本の製薬企業は全滅するのではないかという議論は、まさに今言われたような議論がありましたし、発展途上国の議論と同じ議論がありました。でも、そのときに日本の製薬企業は、むしろ物質特許に変わったために非常に成長しました。それだけ日本は自信を持っているし、それをやっていく気概もあります。そういう意味で、先ほどの当初のころそういう話があったときに、日本の企業は十分太刀打ちできる自信がありますと私は答えたと思います。 ○見城委員 それは重要なことなんですね。はっきりと自信がありますとおっしゃったということは、もし、これが推進されていった場合に、言質をとったではありませんけれども……。 ○秋元委員 現実を考えますと、例えば、弊社もあるいは上位の製薬企業も森下先生、上田先生、ベンチャー、その他等も含めて、特許あるいは知財、経済そのものは国境がないんですよ。私どもはアメリカ、ヨーロッパでも闘わなければいけないんです、闘っているんです。ですから、日本でも同じように闘えるということです。 ○見城委員 重要なポイントだと思います。 ○井村会長 片山委員、途中で遮断してしまいましたが、何かございますか。 ○片山委員 いえ、結構です。 ○井村会長 今日はもうちょっと議論を進めたかったんですが、全般的問題のところでかなり引っ掛かっておりますけれども、2ページをごらんいただきたいと思います。今後の取りまとめの論点が書いてありまして、そこで考慮すべき主な要素として日米の医療制度の違い、これは先ほど野中委員もおっしゃったことで、これはすべての委員が十分理解しているところです。だから、そのことも考慮する必要があるだろう。それから、患者のための医療の推進、患者さんのためにならないような医療になっては困る。それから、医師と患者の信頼関係、ここを前回、見城委員が最後に質問をされましたので、それについては厚生労働省が準備をしてきていただいております。後で簡単に報告をしてもらおうと思っております。それから、医療コストと患者の生活の質、これは新しい技術が出てきたら医療コストが高くなるのではないかという意見が、ここで随分出ました。そこで、専門家の方の意見を聞いたわけですが、一方では、やはり生活あるいは生命の質が非常に大事であって、それも考慮に入れながら考えないといけない。例えば、短期的に医療コストが高くついても、その人が介護の必要がなくなれば全体としては決して高くつくわけではないという説明をされましたね。これにはいろいろな場合があり得ると思いますので難しいですが、そういうことも議論をしてきました。それから、患者さんの選択の重視、これは今の生命倫理、医療倫理では極めて当然のことだと思います。それから、あと、高度・先端の医療技術の享受という問題、それから、日本発の画期的な医療技術の開発、この2つが先ほどからかなり議論された問題点だろうと思うんです。だから、考慮すべき要素としてこのぐらいでいいかどうかということをちょっと考えておいていただいて、その間にせっかく準備をしていただいておりますので、厚生労働省から報告をしていただくということにしたいと思います。 ○厚生労働省 厚生労働省でございます。
○井村会長 どうもありがとうございました。忙しい中準備をしていただきまして、ありがとうございました。
○野中委員 1つ追加していいですか。医療保護の中のことに関しましては、実は第1条2の第1項というものはここに書いてあるとおりですけれども、その次の第2項には「医療は、国民自らの健康の保持のための努力を基礎として」という文章が入っています。
○井村会長 これは、この特許と直接関係のない問題ですが、バックグラウンドとして考慮すべきことと関係があるということで、ここで報告していただいたわけです。よろしゅうございますか。 ○見城委員 では、せっかく御説明いただいたので、今後特許にちょっと関係する部分としては、御説明の中の臨床研究の際の倫理指針のところなんですが、倫理審査委員会というところが倫理的、また科学的観点から審査を実施して、倫理審査委員会の了承を得ないと研究を実施してはならない、非常に簡単な例はよくわかるんですが、ヒトゲノムの問題とかそういう倫理上にいろいろ起きていますから。ここと今後のそういう新たな研究していくときの人が今まで触れなかったようなところにも研究アイデアを出して、そのことに対して投資してもらって、新しい特許に向けて今、機器を開発しようというところでは、その接点などは出てきますか。 ○厚生労働省 先生御指摘のとおり、この臨床研究につきましては、ここに対象範囲として書きましたとおり、医療における疾病の予防・診断・治療方法の改善などの医学的研究ということでございますので、もし仮に、例えば、特許化に向けて研究を進められるということであれば、こういったものも当然、倫理指針の範疇に入ってき得るのではないかと考えております。 ○井村会長 ちょっと追加しますと、研究機関にはそれぞれ倫理委員会を設けないといけないんです。そこの審査でゴーサインが出れば研究ができるわけですね。ただ、そういう審査機関がバラバラで困る問題もいろいろある。例えばゲノムだとか、胚性幹細胞とかそういうものは全国的な基準をつくって、そして、そこで審査をして認めているわけです。ただ、すべてがそうであるわけではなくて、かなりの部分は各機関の倫理委員会に委ねられている。それが大きな問題になるときには、国全体としての審査をしているというのが現状だと思います。よろしいですか。
○森下委員 進め方のお話なんですけれども、先ほども野中先生からお話があったように、影響の件あるいは特許の具体的にどういうふうに役立つかという見城委員からの指摘と、実は先ほど話を聞いて思いましたのは、特許そのものがいいか悪いかというところまでいったり、非常に範囲が広過ぎて、具体的にどういう影響が考えられるのかというのもなかなか決めづらいと思うんですね。その意味では、3ページにあります特許保護の対象範囲というのは、恐らく皆さん(a)の部分だけで、(b)(c)以降の話は考えられない部分というところで割とコンセンサスがあるのではないかと私自身は個人的に思っていまして、そこの範囲をまず決めた上で、最終的にある程度この範囲を特許化しますということが決まってから、再度影響のところをどうやって除外していくかというところのお話に戻った方が、具体的な影響というのを判断しやすいのではないかと。余りに範囲が広いので、具体的に何が考えられるのかというのが、現状のままですと思っている内容によって個々人の意見といいますか、委員の先生方でかなり幅がありますので、このままですと議論しても、どうも話がかみ合わないところも出ますので、まず、範囲を決めた上で最後に弊害といいますか、影響のところをやるという方向で進めたらどうかと思うんですが、いかがでしょうか。 ○井村会長 今の考え方対して、もうちょっと御議論があれば。それはそれでもいいと私は思っていますけれども。やはり、特許制度全体を否定するというような話は、ちょっとここでの議論の対象にならないと思うんです。そういうこともありますので、やはりいろいろな技術的な方法的な問題に対して特許を考えるというような基本的な方針でいいかどうか。それから、その上で範囲は考えていかないといけないし、メリット・デメリットは後で議論をしないといけないということになると思うんですが、その辺りも含めて議論があればお伺いしたいと思います。 ○北村委員 先ほども申し上げましたけれども、特許というのは産を中心に考えたものであるので、医療関連行為もいろいろありますけれども、産に戻すことによって普及させ、より安全に多くの人にいい医療、そして、それが一時的に自由診療のような形になっても、最終的には保険医療に還元できる。つまり、たくさんの人に使うには、やはり産に戻す必要があるわけですね。産に戻すことによって、よいという判断をあるものについては特許を与えるべきであろうと思います。3ページに「医療機器・医薬品の高度な使用方法」と書いてありますけれども、この方法とは新規の医療機器、医療薬品プラス方法なのか。方法単独というものも特許対象として考えるのか。それはケース・バイ・ケースで新たな技術の開発でいろいろ工夫したことが出てくるので、そこを審査する特許庁なりが、やはり医師の倫理面を含めたコンサルテーションをしつつ決定するような体制ができてきて、医師の行為そのものは免責ではなくて、自由意志の裁量でその機械を使ってやれるようにしたい。ただ、産に戻すことによって、日本の医療産業が活性化し、国際的にも立場を強くすることができ、かつ、一人一人の患者にも最終的にはいい治療が広くできるという、そのための特許による保護、それしかないのではないかと私は思っているんですけれどもね。 ○井村会長 制度の運用の問題はまた後で議論していただくとして、基本的に今、北村委員が提起されたように、日本の医療産業の振興のために必要だということを言っておられますが、それはそのとおりでありまして、研究者だけだったら余り問題ないわけですが、産業が参加してこないとできないことがどんどん増えてきている中で、どこまで掛けるのかということがこれからの議論になると思うんですが、基本的に北村委員がおっしゃったことに対して何か御意見があれば。 ○野中委員 基本的にはある程度理解できますけれども、私は医療というのは医師を免責するということだけではなくて、医療というのはさまざまな方々がおられて、医師だけが患者さんに対しているわけではないと思いますし、だけれども、それを切り離すということに危険なにおいを感じるということです。ですから、北村委員が言われたことが絶対にそういうふうに保障されているのであればという条件をどうやって担保するのかということを話し合わないといけないし、それは今まで皆さん方がその辺の話をされているのだろうと思いますけれども、ただ、それを具体的に実際にやっていくときにはどうするのかという部分は問題があると思います。ですから、医療としてとらえるのか、医師の行為としてとらえるのかということは、ある面では簡単なようで簡単ではないという部分があるので、その辺は是非注意をしていただきたいし、その辺をよろしくどうぞお願いしたいと思います。 ○井村会長 ほかに何かございますか。かなり特許の対象範囲まで入ってきたわけですが、そういう形でこれから議論していくのは、3ページのAの(a)「医療機器・医療医薬品の高度な使用方法」というものにつきまして、それが特許の対象となり得るのか、なり得るとすれば、どの範囲が認められるのか、そういう辺りを中心に議論をしていくということでよろしいでしょうか。何か御意見ございますか。 ○野中委員 もう一つ、このことの議論をするにおいて、しつこくて申し訳ないんですけれども、悪影響を及ぼさないかどうかということをどうやって考えるのかという議論にいつもなってきますけれども、いつもこういう利点だという議論しか出てこない。その悪影響というものが、対しては想像をどうするのかということ、これは前文に「しつつ」と書いてあるわけですから、そのことをどうやって議論するかということを是非お忘れないようにしていただかないと、その利点だけの話をすれば、もし、それが訴訟になった場合、容易に付け入れられるだろうと私は思いますので。 ○井村会長 これについては、今まで議論してきたことは、さっきちょっと申し上げたように、1つは医療費が高騰するのではないかという心配があって、専門家のケーススタディの結果を聞きました。それから、利益相反が起こるのではないかということで、これも少し議論をしたんです。ただ、利益相反は特許だけでなくて、もっと広くいろいろな場合起こり得るわけで、これはそれぞれの医療機関が今後、利益相反をきちんと考えて、そういう問題が起こらないようにするということになったわけです。
○森下委員 多分、今の方が訴えられる率が高いんだと思うんですね。今は免責されていないので、実は訴えられますと守られる法律は全然ない状況なので、そういう意味では、先ほどもちょっと言いましたが、免責範囲なり除外なりではっきりしておかないと、かえって訴訟リスクというのは今の時点の方が抱えているのではないかと。以前は私自身も野中先生が言われたように、かえって特許が認められた方が危険性が高いのではないかと思っていたんですが、この中の議論で得たことは、今の特許制度というのはそういうことは全然考えていなくて、今の医者の医療行為というのは実はかなり危うい状況にあるというのはわかってきたので、そこははっきりさせた方がいいのではないかと思っています。
○井村会長 今すぐには無理かもしれませんので、それでは次回に簡単に。 ○見城委員 多分そこと同じ部分だと思うんですが、本当にこだわって申し訳ないんですけれども、秋元委員と上田委員の先ほどのお話から、患者になる側として考えますと、例えば、骨粗しょう症でおかしくなって、やっていただく先生としては、細い何ミクロンかの針が欲しいと。今回、特許がもし認められれば、これは必ず先生が考え出したそういう使用法で使われる針なので、あなたの企業がつくれば、それは特許になって、もし、あなたの企業がつくった後、すぐB企業がそれよりも0.005ぐらい細いものをすぐ技術を真似してつくっても、この使用法に関しては、特許の範囲に入っているので使えないと、だからつくれないとなるんですか。 ○上田委員 それは決まってないんです。 ○見城委員 違うんです、何であえて伺うかというと、医師の行為は免責になると、そういうことがここに入ってきますね。1つずつ申し訳ないんだけれども確認しないと。 ○井村会長 では、北村委員どうぞ。 ○見城委員 教えてください。 ○北村委員 その医師のみが患者さんに針を刺す行為をできるわけです。医師のみができるわけです。だから、私も少し上田委員と意見が違うところは、その針は特許になりますよね。そして、企業間でやられる。しかし、その針を購入するときは特許の料金も含めて我々は購入するわけです。しかし、その針を医師が患者に突き刺す行為は特許にはならないと私は言っているんですよ。 ○見城委員 だから、ならないから……。 ○北村委員 それを含めた特許はおかしいので。 ○見城委員 では、私の言い方が間違っている。ならないから、B先生もC先生も使っていくわけですね。そうすると、B企業で秋元さんがつくったのに、次の企業がちょっとだけ変えてつくりますね。 ○井村会長 だから、そこは特許そのものの問題であって、方法だけの問題ではないわけですね。すべての特許でその問題はあり得るわけです。それは特許の新規性とか3つの要件があって、その要件を満たしていれば認められる。しかし、これは針だけの問題ではなくて、薬だってちょっとだけ変えてやったらいいか。すべてあり得るわけですね。 ○見城委員 ここが重要だと思うんです。 ○片山委員 重要な点なんですけれども、特許をそれに対して出願するとどういう特許になるかといいますと、何ミクロン以下の針の注射器を用いて脊椎に幹細胞を注入する方法、こういう特許になるはずなんです。そうすると、機器の特許で言いますと、何ミクロン以下の針を有する注射器というのは、新規性はタブンないはずなんですね。そんなものは世の中に多分あるでしょうし。ただし、それを脊椎に入れるというところが非常に大事なわけですね。したがって、そこは新しいわけですから多分特許になる。ただし、お医者さんが入れることについては、お医者さんは免責ですので、お医者さん自身に特許の侵害の問題は起こらない。
○見城委員 ですから、そこが一番ポイントで、同じようなものをつくっても、そういう使い方では使ってはいけないということになるんですね。 ○片山委員 そういうことになります。 ○見城委員 例えば、同じような針を、わかりやすく言うと模造品を第2企業が安くつくった場合……。 ○秋元委員 その針自身が新規性、進歩性があれば、それ自身も特許になります。今までこのぐらい太かったものが非常に小さいものができて、それが新規性、進歩性が満たされて特許になるというのであれば、その針自身も特許になりますが、例えば、通常ちょっと小さくしたようなものですと、まず特許にはなりませんね。真似した会社のものも特許にならない。それから、本来それを発明したところも特許にならない。片山先生が言われるそれを使う方法がもし特許になったとすれば、どういうことが起こるかというと、そういうふうに使うんだよと後の会社、別の会社が言えば、それは侵害になります。では、患者さんはそれを使えなかったら困るかと言えば、もともとそういうアイデアを出した企業はそういう針を提供しているわけですから、患者さんが困ることは一切ないわけです。それから、お医者さんが使うのは全然特許と関係ないですから自由に使える。でも、高度な使用方法であれば、そういうものをそういうふうに使えるんだよと最初に見つけたところに権利を与えないと、そういうことを発明することは日本では出てこない、そういうことなんです。 ○見城委員 ありがとうございました。非常にわかりすい、そこは常にポイントになってくるところだと思います。 ○秋元委員 患者さんが困ることはないと思います。ただ、フリーライダーと言って研究も開発も行わないで、これは儲かるからそういうふうに使いたいという企業はどんどん出てくる。そうであると、権利がないとやはり時間とお金を掛けて企業が開発して、より安全で有効で使えるようなものを一般化して早く患者さんに提供するということができなくなると。 ○見城委員 企業の論理はわかりました。初期のイニシアルコストを掛けてやったら、それはある程度大成するまでは独占したいという、これは当然の……。 ○秋元委員 独占と患者さんにそういうものを提供するバランスですよね。 ○上田委員 針を細くするなどというレベルの改良では、到底できないような特殊な用途と目的と効果があるんですね。だから、それをある企業が全く別の観点からやったら、これは新規性だと思いますから、競争がそこでまた加速するはずなんです。もっといいものが出てくるかもしれない。独占するわけではない。だから、そんな並外れた発明でないと、本当にいい医療にはならない、新規性のあるものにならないと思います。 ○井村会長 その辺は、またこれから実際に具体的に議論をする中でしていただきたいと思います。ただ、特許自身、基本的にそういう新規性とか進歩性がないと認められない、真似はそう簡単にはできないということになっているわけですね。 ○見城委員 ですから、ここに単純に「高度な」という一言ですので、その高度の範疇が何かということですね。 ○井村会長 それは、これから議論をしていただくことになると思います。
○小島事務局次長 資料3の今後のスケジュールについてというものをお配りしてあるかと思いますが、それをごらんいただきますと、あらかじめ委員の方々の御都合をお伺いしまして日程の調整をさせていただきますが、次回第7回は6月3日木曜日、10時から12時。その次、第8回は6月30日水曜日、10時から12時ということを予定しております。
○井村会長 それでは、今日の調査会はこれで終わりたいと思いますが、もし、いろいろな点で御質問とか御意見がありましたら、あらかじめ事務局まで出していただくのがいいのではないかと。そうすると、資料が必要な場合にはそれを準備して、ここで報告してもらうなり何なりするということにしたいと考えております。今日の会合はこれで終わりますが、何かございますか。 ○見城委員 では、次のときまでに一番ポイントになっております「高度な」という部分が、その言葉だけでは皆さんの解釈に大変な乖離があります。ですから、そこをもう少し具体的に、わかりやすくしていただきたい。 ○井村会長 この問題は、文章にするとなるとなかなか範囲が決められないと思いますが、事務局の方で少し議論していただいて、実例とかこういうものが高度ですよということは言えると思いますけれども、高度とは何ぞやという定義はなかなか難しいかもしれません。その点はどうですか。 ○小島事務局次長 ちょっと工夫してみます。 ○見城委員 お願いいたします。 ○井村会長 だから、わかりやすいように、こういうものを言うんですよという実例的なものを出していかないといけないし、基本的、最終的には特許庁の判断になる問題ですから。 ○見城委員 勿論そうです。ただ、解釈をしますのに全然違う「高度」を考えていましたら、これは問題ですので、標準が出るような形でよろしくお願いいたします。 ○井村会長 少し考えてもらって、例を挙げてこういうものですよということはできますね。
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