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第5回 医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会 議事録 | |||
1. | 日 時: | 平成16年3月17日(木)14:00〜16:15 | |
2. | 場 所: | 知的財産戦略推進事務局 会議室 | |
3. | 出席者: | ||
【委 員】 | 井村会長、秋元委員、上田委員、片山委員、北村委員、見城委員、澤委員、田村委員、平田委員、広井委員、森下委員 | ||
【参考人】 | 上田技術総括審議官、小野特許技監 平井東北大学客員教授、弁護士・弁理士(レックスウエル法律特許事務所) 池田慶應義塾大学医学部専任講師 相田審査基準室長 | ||
【事務局】 | 荒井事務局長、小島事務局次長 | ||
4. | 議 事: | ||
(1) 開会 | |||
(2) 先端医療技術を巡る現状と課題について | |||
(3) 討議 | |||
(4) 閉会 |
○井村会長 それでは、まだ委員でお見えにならない方がございますが、定刻になりましたので、ただいまから「医療行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」の第5回会合を開催いたします。本日は、お忙しい中お集まりいただきありがとうございました。 今日は2人の方に参考人として御出席をいただいておりますので、御紹介申し上げたいと思います。
○相田特許庁審査基準室長 ただいま御紹介をいただきました特許庁の相田でございます。前回は、欧州における医療方法の取扱いということで御説明をさせていただきましたが、本日は米国における医療方法の取扱い、それから昨年8月に審査基準の改訂をしましたけれども、改訂審査基準の実施状況、この2点につきまして御説明をさせていただきます。(スライド)
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○井村会長 どうもありがとうございました。それでは、討論はまた後ですることといたしまして、次に東北大学客員教授で弁護士でいらっしゃいます平井明光弁護士においでいただきました。ここで問題になりました利益相反の問題についてお話をいただきたいと思います。 ○平井参考人 遅くなりまして、大変申し訳ございませんでした。それでは、私の方から「医療方法特許と利益相反について」ということで、利益相反の話をさせていただきたいと思います。 (スライド)
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○井村会長 どうも大変ありがとうございました。いろいろお尋ねしたいことがあろうかと思いますが、後でまとめて議論をしていただくことにしたいと思います。
○池田参考人 慶應義塾大学の池田でございます。よろしくお願いいたします。
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(スライド) 次の事例は、今までのものと若干異なっております。アルツハイマー型痴呆に対する日本で承認されている治療薬でありますが、この薬を飲めばアルツハイマー型痴呆が治るといった根治的治療ではありません。痴呆の進行を遅らせるという薬です。広井先生の御本にも書いてありますいわゆる途上的な技術、ハーフウエイテクノロジーに当たるようなものではないかと思います。こういうものについてこそ経済的な評価をしていくことが必要かと思います。具体的には、患者さんを完全に治せる技術ではないけれども、こういったものに果たしてどれだけのお金を社会として投入していくべきか、あるいは投入する価値があるかということを判断していくことが重要かと思います。
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○井村会長 どうも大変ありがとうございました。臨床的根拠以外に経済的根拠を導入するというのは、いかにもイギリスらしい非常にプラグマティックな考え方だと思います。 それでは、今3人の方からアメリカの医療方法特許の現状、利益相反の問題、それから医療費の問題について御報告をいただきました。あと1時間弱ございます。今日は今、御報告をいただいた3つの課題を中心にこれから議論をしていただくことにしたいと思います。どの問題からでも結構ですから、自由に御意見をどうぞ。 ○秋元委員 特許庁さんに確認なんですが、最後に成立したHR3610法案、これが成立して以降、AMAや医療団体、BIO、それからファルマとの妥協の産物で出たということを私は何度も申し上げたかと思いますが、これ以降この問題について顕著な問題は出てきていないと思いますが、この辺はいかがでしょうか。 ○相田室長 問題が出てきているかどうかはわかりませんけれども、少なくとも裁判の観点などからいたしますと、調査した範囲では事件化したものはなかったという状況でございます。 ○秋元委員 ありがとうございます。それからもう一つ、これは弁解ではないんですが、私の本意と、先ほどの私の前回の発言に対する御回答が若干違っているというふうに思いますのでコメントさせていただきます。
○井村会長 2剤を使うというのは特許の対象として認められているわけですね。どうですか。 ○相田室長 私はその点は承知しておりません。恐らく複数の薬剤の投与間隔とか、投与の量で発明の内容を規定しようというものかと思いますけれども、欧州特許庁の審決によりますと、薬の投与方法は用途発明としては認められないというのが多くの審決の結果だというふうに私どもは理解しております。 ○秋元委員 前回のイギリスのタキソールとほかの薬剤の併用特許は単に新規性で否定されているのであって、投与方法が否定されたわけではないというふうに一般的には理解されています。 ○相田室長 それについてコメントいたしますが、タキソールの例は一たん欧州特許庁で特許になりまして、それで異議申立てがありまして、異議申立ての審議の結果、新規性がないとされたものでございます。これは異議の決定でございまして、先例としての価値は低い。ほかに併用剤を扱った、多くと言いましても数例しかないのですが、審決がございますが、多くの審決の中では投与時間であるとか投与量によっては用途を規定することができない。したがって新規性がないんだというふうな判断をしております。 ○秋元委員 また少し反論しますが、インターバルについてはヨーロッパで審決で幾つかありますが、現実にはインターバルも含めて、これは産業界ですけれども、事実既にどんどん出しております。それから、インターバルを含めない2剤の投与については既に欧州では認められております。日本では合剤という形です。 ○井村会長 ここは前回でしたか、中尾参考人からもちょっと出たポイントですね。 ○秋元委員 インターバルについてはまだ決まっておりません。それから、従来の審決では否定されているものもありますが、現在ではどんどん出しております。だから、将来どうなるかはまだわかりません。それで、2剤の併用同時投与については既に認められている。日本では合剤でしか認められないという状況です。 ○井村会長 ほかにどうぞ。 ○平田委員 先ほどの特許庁からの発言の中で、米国で成立した最後のHR3610法案の中にいわゆる医師の免責の例外規定の対象としてバイオテクノロジーという言葉がありましたね。恐らくこれからの未来のものも含めて非常に定義が難しいのかと思いますけれども、先ほど遺伝子治療とかという話もありました。法律ですから何か定義らしいものがあるはずと思いますが、どうなっているんでしょうか。 ○相田室長 特許法の287 条ですが、このバイオテクノロジー・インベンションの定義はございません。全く別の条文で、103条の進歩性を規定しているところに若干定義はありますけれども、それと同じかどうか、あるいはそれを含めてどう解釈されるのかということについては明確にわかっておりません。ただ、議会の記録によりますと生物材料を使った発明ということでかなり幅広く解釈されるという記録は残っておりまして、余り射程についてははっきりしないと思います。 ○井村会長 バイオテクノロジーというのは明確な定義はない……。 ○平田委員 ライフサイエンスの新しい知識を使った物とか、テクノロジーというのは比較的、物と結び付いていますけれども、サイエンスの進歩との関係でも全く規定がないわけですね。 ○相田室長 法律上は全く規定はありませんで、議会の記録に生物材料を使ったものを含とあります。ただ、それに限らないんだという記載もありまして、射程については必ずしもはっきりしておりません。 ○小野特許庁特許技監 今の点は相田からお答えしたとおりでございますけれども、注意すべきことは生物材料が広く解釈されることでございます。平田委員が御指摘のような先進的なテクノロジーはすべて入るというのが、正しい理解ではないかと思っております。もともとバイオインダストリー協会(BIO)自体がそのような趣旨で非常に強く免責の例外を主張してきた背景には、将来的にどのように発展するかわからないバイオ技術の場合は、予期できない新しい物の開発がたくさん絡んでくるということで、そういうものが特許侵害から外されるのはおかしいという趣旨があったと思われます。ですから、むしろバイオテクノロジーの古いものからすべて入るのではないかと考えております。 ○森下委員 特許庁の方にお聞きしたいんですが、審査基準改訂後の細胞培養に関する審査を17件したという8ページの図なんですけれども、この内訳として海外と日本国内とどういう状況で増えてきているかということに関して何か情報はないでしょうか。 ○相田室長 左側の再生利用関連技術のグラフですと、最近のスタンスとしましては国際特許として出願された場合には国内移行猶予期間は30か月ありますなどとはっきりしませんけれども、少なくとも1999年ごろまでの出願は8割方、外国出願でございます。
○秋元委員 平田委員の御発言を補足させていただきますと、アメリカというのは御存じのように非常にある産業について、産業政策をきちんとやっていく。それで、バイオテクノロジーのものもこの場合、医療特許に関してもそうでございますけれども、94年か95年だったかと思いますが、バイテク法案というものが別に出まして、従来アメリカでは製造法が陳腐なもの、従来のものであると特許にしないとクレームの一つひとつを解釈していた。
○井村座長 それでは、北村委員どうぞ。 ○北村委員 今、森下委員からもありました特許庁の8ページのところです。拒絶12件と多いですね。言葉も今日の説明では「医療方法の特許」となっていますし、会議そのものは「医療関連行為の特許」となっていまして、ややこしいところあると思うんです。つまり、医療関連行為の中に医療行為は含まれているのかどうか。含めているということも関係してくるんだと思いますけれども、この拒絶理由の12件の中にもしも医療方法の特許あるいは医療関連行為特許というものが承認されたならば、認めることになるものがあるのか。
○相田室長 詳細に検討したわけではありませんけれども、少なくとも特許になった5件につきましては人体の外における処理方法でございまして、人体から取り出したりとか、人体に戻すステップが含まれているものはございません。
○北村委員 今までのデータをずっと見させていただいたり、いろいろな方々の御意見を賜っておりまして、医療関連行為の中に医療行為というものを含めると、最終的には手術方法の特許というところに行き着いてしまうわけですね。ですから、これは医師のみが行うような、切る、注射する、移植する、置換する、縫う、つなぐといった医療行為に関してはやはり医師を免責するのではなくて、アメリカは全体を包含してつくりましたから医師免責をつくっているわけですけれども、ここは医師免責ではなくて医療行為というものはやはり特許にしない。
○井村会長 今のポイントはこれからまとめをしていく上に非常に重要でありますから、また改めていろいろ議論をいただきたいと思いますが、今日はアメリカの今の特許の問題と、それから利益相反、あるいは医療費の問題についてできるだけ御議論をいただきたい。私の個人の考えですけれども、参考人の方をお願いするのは今日ぐらいで一応最後にして、ある程度皆さんの意見のまとめをしておいて、次回からこの会議としてどういうふうにまとめるのかということを議論しようと思います。
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○北村委員 先走りまして申し訳ございません。 ○片山委員 平井先生にお伺いしたいんですが、この委員会で問題になった利益相反というのは臨床試験をやるかやらないかというような場面よりは、どちらかというともう少しプリミティブな話で、それは例えば医療機関の関係者が特許を出願して、あるいはその関連でビジネスを自分で起こして、例えば医療器具を製造し始めたというような事例において、もしそういうことが頻繁に起こるようになると、その医療機関ではその機械ばかり使うようになりはしまいか。基本的にはそれは具合の悪いことだと思うけれども、そうなりはしないだろうかという点が問題として提起をされています。
○平井参考人 今、御指摘があったような事例というのはまさしく利益相反の問題だと思うんです。研究者御自身の個人としての利益相反か、あるいは医療機関、組織としての利益相反か、どちらかを招来する可能性がある問題です。ですから、理想的にはその組織において利益相反委員会を設けてきちんとそういうことをハンドリングする。あるいは、いろいろな形でそういう利益相反問題をコントロールできるような仕組みづくりをしていくことが重要だと思います。
○片山委員 もう一つ出た問題として、これはなかなか難しい問題かもしれないんですが、ある医療方法を発明をして、それを率先をしてやるという場合に、機器の売買の利益というようなものとは離れて、その医療方法がいいに決まっているではないか。この医療方法を是非とも広げたい。したがって、自分のところの医療機関は必ずその医療方法でやるんだと、そういうようなベクトルが働くことは十分あり得る。これは特許制度のあるなしにかかわらず働く話だろうと思うんです。そういうものについて、それも広い意味で言うと利益相反であるから、その点についてアメリカではどんなチェックをしている、あるいはしていないということは何か御存じでしょうか。 ○平井参考人 そういう問題は基本的にインテグリティの問題に絡むんですね。個人の尊厳というか、プロフェッショナルとしてのインテグリティという問題ですね。だから、研究者であろうが、弁護士であろうが、大学の教官であろうが、皆さんインテグリティをお持ちである。したがって、自分の見出した技術はもちろん信じておると思いますけれども、そのインテグリティをどうやって守っていくかということは一番大事だと思うんです。それがしっかりしてくれば、今のようなケースでも基本的には問題はないはずだと思うんです。
○澤委員 インテグリティですとか、コンフィデンスとかという言葉がよく出てくるのは、ジョンズポプキンスみたいな私学の大学ではそうですね。それで、先生が今日お示しになった州立の、例えばUCLAなどの場合は、いずれにせよ最初に公務員倫理法が大前提にくるわけです。それがまずあって、その後、大学の中でのポリシーを決定するという順番なんですけれども、医療に関してというのは先生も先ほどおっしゃっていましたが、やはり一つの医療技術に対してそれを施行する医師と、それから被施行者としての患者さんがおられるわけですね。そういう点で、例えば連邦の資金などを得て行われる医学研究などに関しては非常に情報公開を徹底させるということが当たり前のように行われている。むしろその辺を聞きたいんですけれども、DHSとかFDAの文章の前に利益相反に至る部分までのものすごいNIHの徹底したコントロールぶりがあるのが実際なんじゃないでしょうか。余り関係ないでしょうか。 ○平井参考人 まず国家公務員倫理法の問題を言いますと、向こうは州立の公務員の方が多いんですけれども、やはり倫理法の問題は非常に重要で、そこはボトムラインで物事が決まっております。それで、基本的にそのボトムラインを超えてそのグレーゾーンをどういうふうに扱うかということが利益相反の問題です。日本でも同じです。やはり国家公務員倫理法はございますが、そこはもちろんやってはいけない。それはわかっているわけです。しかし、そこに違反していないんだけれども、例えばこういう場合はどうしましょうかというのが利益相反の上で問題になるわけです。
○澤委員 もう一点よろしいですか。今、最初にプリミティブなお話をなさって、工学系の研究の場合と、それからいわゆる被施行者である患者さんがいる医療の研究の場合というものは、アメリカで実際に基本的に差はないんですか。 ○平井参考人 差がないかと言えば、差はある可能性があると思います。言い方が微妙で申し訳ないんですが、臨床研究とか、あるいは患者さんが絡むケースで利益相反を少し厳しくとらえようとしている大学はございます。そういう意味で差はあると思います。
○森下委員 池田先生にお伺いしたいと思います。初めて聞いて面白い話だったんですが、最初の医療費の増加の要因のところで、この中で実際に今回の場合ですと医薬品なり医療用具という形のことも絡むと思うんですが、医療用具そのものの費用というのは増えてきているのか。それとも、そこは抑制された形で介護保険などの部分がどんどん増えているというのが国民医療費に貢献しているのかという点が1つ。
○池田参考人 大変難しい御質問ですが、例えば薬の場合ですと非常に技術革新が早い分野であって、新薬というのが次々登場しているとなりますと、その統計資料などから分析いたしますと日本の場合は特に新薬の方へのシフトが非常に大きい。それはもちろん患者さんのためでもあるけれども、経済的な要因もいろいろこれまで指摘されてきたわけですが、そういう意味では新規医療技術の普及浸透というのは日本の場合は国民皆保険という制度もありますので、諸外国に比べますとむしろ早い方である。
○森下委員 たしか世界の中で市場を見た場合、日本の市場がパイとしてはどんどん小さくなっていましたね。そういう意味では医療費としてはかなり総額が抑えられて、中でいわゆるジェネリックが増えたり、あるいは新薬の部分の予算が付いたりというので、バランスが変化していてトータルは一緒だという認識を持っていたんですけれども、基本的にはそういう認識でよろしいんでしょうか。 ○池田参考人 医療費の対国民所得費の比率が近年、特に平成元年くらいから大きく伸びておりますが、医療費の増加の程度というものはむしろ鈍化している。これは一部介護保険が入ってそちらに慢性的な医療費の一部がシフトしたという見掛け上のものもあるんですが、医療費の伸びというものがいわゆる公定価格によって、これまでは上手にコントロールされてきたという部分があるのではないかと思います。
○広井委員 今のことに関しては、やはり最近の医療費の増加要因として特に大きいのは高齢化関係といいますか、技術革新や医薬品関係よりは高齢化に伴う医療費増の部分が相対的には大きいということが恐らく一般的に言えるかと思います。 ○井村会長 この表には介護費用は入っていないんですね。これは医療費だけですね。 ○広井委員 そうです。
○池田参考人 まず第1点目でございますが、こうした医療方法特許を始めとする今回議論されているようなさまざまなライセンス関係により、先端医療技術の開発が促進するか否かという問題につきましては、私なりにヒアリング調査をいたしまして、特許制度が導入されていなければ開発できない、あるいは特許制度が整備されていないがために今、開発が非常に止まっているとか困難な状況にあるという情報を収集しておりましたが、少なくともそれらの中にはいわゆる再生医療のような先生の御本の中にある純粋技術、つまり、根治的な治療であり、これを導入することによって患者さんの完全な回復が見込まれるというようなものがかなり含まれておりましたので、基本的には特許制度により先端医療技術、特に費用削減につながる純粋技術の開発が進むであろうという前提でお話をさせていただきました。ただ、この前提が変わってきますと結果も変わってまいりますので、その辺りの先のことの予測というのはなかなか難しいわけであって、こうした純粋技術というのは今まで非常に古典的な例は幾つか知られておりますけれども、例えばH2ブロッカーが出て手術が減ったとかあるんですが、余りに古典的なので、シミュレーションとして適当かどうかという問題がございましたので、その辺りは今後先生が御指摘のように更に検証していく必要があると思います。
○広井委員 今のことに関して、ライセンス料などで逆に特許という手法がそれに伴うコストを上げるということがこの会議でも何回か出ているんですけれども、その点は既存の調査研究とかデータみたいなものはありますか。 ○池田参考人 特にアメリカ等でこのライセンス料の問題等が指摘されているかと思うんですが、日本といわゆる医療費の支払いの仕組みは違っておりますので、前回澤先生の方から御提示になった自由診療の部分でもしこういうものが入ってきますと、いわゆる患者としての支出が増えていくということは私も同感です。
○井村会長 この前の北島さんのお話で、例えば内視鏡で手術をする。今日は大腸がんの話がありましたが、胃がんを取っていく。そのときに、袋に入れて取るというアイデアが特許になるのではないか。これはアメリカでは現になっているんだろうと思うんです。その場合に、結局それが方法特許になると、その手術方法そのものに将来ライセンス料を払うのではなくて、結局その物の開発、それからうまく袋に入れて取るような技術開発が進むということで、それは特許の対象になって企業がもうけるかもしれませんけれども、その方法そのものではそれほど医療費が上がらないのではないかというふうに私は理解していたんです。そういう方法特許で、大腸がんを内視鏡で取るときにどういう方法特許があり得るか、何かお考えがありましたらお願いします。 ○池田参考人 なかなか難しいんですが、今の保険点数の仕組みからいきますと、技術料という形で手術の費用というものが幾らと決まっております。その中で、先ほどのような技術を使った場合も含めて幾らという形での設定がなされるといたしますと、別途ライセンス料をだれかがだれかに請求するという形にはならない可能性があります。それで、例えば公定価格で決められた費用の中でライセンス料まで負担し切れないということになりますと、患者さんには気の毒な結果になることもありますが、その医療技術は必ずしも広くは普及しない、あるいはそうしたものを効率的に安上がりに行える医療機関のみが採用していくということが起きる可能性があります。
○井村会長 それでは田村委員、それから片山委員にお願いします。 ○田村委員 今の池田さんの御意見の前提条件の確認なのですが、今、結果的にそれほど影響ないだろうとおっしゃったときの前提で、ライセンス料とおっしゃっていたのですが、それは、医療特許が認められた場合に、個々の医師の手術法に特許の効力が及んだとしても、余り影響はないだろうというお話と理解してよろしいですか。 ○池田参考人 医師のものは免責になるという前提でお話をしておりました。 ○片山委員 我々はその辺は素人なので教えていただきたいんですが、そういう根治医療の方法、患者に非常に大きな利益をもたらす方法、前回御説明いただいた開腹せずに手術して袋に入れて取り出すというような方法も、根治という意味からは違うのかもしれませんが、非常に大きな利益をもたらすという意味では同じだと思いますが、そういうものの値段の付け方としてこんな理解でよろしいんですか。
○池田参考人 公定価格の決め方は、薬の場合、材料の場合、あるいは技術の場合とそれぞれ考え方が違うように聞いております。薬の場合ですと、既存に似たような薬があった場合には類似薬効比較という方法で、その既存薬とほぼ同じだけの1日当たりの値段がつく。ただ、余り新規性のないものについては安くなっていくというようなこともあるようなんですが、そうした御指摘のような方法がベースになっていると思います。
○上田委員 先生のおつくりになった資料の第1ページでGDP比のグラフが急上昇しているわけですが、これは全部保険診療のデータからこういうグラフをつくられるんですか。私はよくわからないんですけれども、全体の医療費という計算をするときに、自由診療の部分というのはこういう保険診療の部分には到底影響を与え得ないような非常に小さなインパクトしかないものなんでしょうか。そもそもそういうものを把握されているんでしょうか。 ○池田参考人 OECDで各国同じような範囲での医療費の国際比較のデータを作成しておりまして、そちらの中では日本でも自由診療部分、あるいは薬屋さんで売っている薬の費用なども推計したものが出ております。自由診療部分につきましては必ずしも大きな部分は占めていないと理解しておりますが、広井先生の方がお詳しいかと思います。 ○広井委員 資料にあります医療費の実データは日本の厚生労働省の発表している国民医療費のデータで、池田先生の言われた対GDP比を含む医療費のデータはOECDのということですね。それで、自由診療の部分というのは、私が以前に推計したところでは、大体公表されている国民医療費の10から15%とか、それくらいのイメージです。今、言われたOTCであるとか、差額ベッドであるとか、最近問題になった医師への謝礼とか、そういうものを含めて、それは把握が難しいですけれども、今の時点でそう大きくないと言えるのかどうかもあれですけれども、その程度ということです。 ○上田委員 先生のお考えで、医療費全体が上昇していくということに関しては絶対額なんだというふうなとらえ方をしてこういったものは論理を組み立てていくんですか。QOLを改善していくということが国民が望んでいることですよね。 ○池田参考人 今回の議論の枠を超えてしまうかもしれませんが、例えば橋を架けるのに公共工事に幾らかけてどれだけの経済効果があるという問題とこの医療費の問題というのは実は同列で考えられるものでありまして、医療により追加のお金をかけたときに得られる見返りの健康結果、あるいは便益というものと、ほかの部分に予算を使うことと、どちらの方が国民にとって価値があるかという判断をして医療費の範囲というのは決めるべきであって、これが上がっていくからけしからぬということではないと思います。
○井村会長 GDPが減ったということですね。 ○池田参考人 そうですね。そちらの方の問題が大きいのではないかと思います。 ○井村会長 ほかにどうぞ。 ○澤委員 薬価の中の医療特許のライセンス料というのはアメリカでも、余り大した額ではないですね。要は、当然医師は免責されていますので、むしろ間接特許でさまざまな新しい技術をつくり出すときに訴訟対策費用とかがものすごくかさむ。おっしゃるようにアメリカの医療の支払いのシステムと日本と全く違いますから一概には言えないんですが、その部分がアメリカの医療費の薬等が高くなる一つの理由にはなっていますね。ライセンス料そのものはすごくネグリジブルかと向こうの方に聞くと、大したことはないんだということは何回も聞きます。 ○井村会長 平井参考人から何かありますか。 ○平井参考人 訴訟のことについてさまざまな要因がございますので、アメリカと日本はそもそも訴訟の数や状況はいろいろ違いますし、どういうふうに私も言っていいか難しいのですが、訴訟はある意味でやむを得ない場合に起きる事例でして、通常企業はなるべく訴訟を回避するように回避するように動いていますから、普通であれば最初にパテントのマップをつくって研究開発を行う。あるいは、研究中に常に他社の特許を気をつけておく。それで、もし仮に抵触があった場合にもライセンスでそれを解決するとか、さまざまな手を打っていきますので、それほど訴訟というのは、これは特異事例ですので、そこに余り重きを置くとなかなか議論が難しくなるかという気がいたします。 ○井村会長 ほかに何かございますか。 ○上田厚生労働省技術総括審議官 先ほどの池田先生の薬価制度についての御説明で、基本的には先生の御指摘のとおりなんですが、2点補足説明させていただきますと、類似薬効比較方式の場合ですと既存薬よりも優れているものについては補正加算を付けるという方式をとられているということ。それから、原価計算方式の場合ですと安いというお話はございましたが、そうではなくて、特に輸入品などの場合は逆に高いというようなこともあるということで補足させていただきます。 ○池田参考人 早口で、しかも時間が限られていたもので不十分で申し訳ありませんでした。重要なものについては加算の方式があるということを言い忘れておりました。
○厚生労働省 今の原価計算方式の点につきましては中央社会保険医療協議会、中医協における議論の中での指摘といたしましては、特に輸入品の場合に原価で提出していただく資料の中で、まさに輸入の原価という部分につきましては内訳が出てこない。本社は契約書1枚で、日本にはこれで出しますという一筆だけでして、その内訳はわからないということになっておりまして、結果としてどうも高いのではないかという批判が支払い側などからあるという部分が大きな議論になっているところでございます。
○池田参考人 私の発言が不十分で失礼いたしました。
○森下委員 直接関係ないんですが、原価算定方式でいくとやはり画期的な医療はかなり安くなるんですね。 ○井村会長 技術料とかアイデア料が入らないからですね。 ○森下委員 そうなんです。一応、かなり限られた利益が必ず乗る仕組みに今はなっていますね。そうしますと、新しいものの場合、売っていくときにかなり安全性を含めて担保の部分というものが出てきますので、通常以上に費用がかかってきて現状の方法ですと反映されないような形になっていると思うので、是非これから日本でいろいろ新しい画期的なものが出ますので、その辺も少し考えていただけたらと思います。この委員会と関係ないので申し訳ないんですけれども。 ○北村委員 平井先生にお聞きしたいんですけれども、前回私は欠席したんですが、議事録を読ませていただきますと、特許の間接侵害という言葉が何度か出てきているんですが、アメリカでそういうものがあるのか。法的に見て特許の間接侵害とは一体、何で、侵害したと言われるものはどういう責任を取ることになるのか。間接侵害という言葉が書いてあるんですけれども、間接侵害というのは何なんですか。 ○平井参考人 日本とアメリカはかつてはかなり違っていたんです。今は日本は法改正がありましたので大分近付いたんですが、アメリカにおける間接侵害の発想というのは簡単に言うと侵害者を助けているということなわけですね。 ○北村委員 医師の免責と関連したものとして位置付けられているわけですね。いわゆる医療行為における特許に対して医師がそれを行う場合、あるいは病院内で行う場合には免責されていると。 ○平井参考人 医師は直接免責されていますので、間接侵害は例えばある医療方法の特許があるとすれば、それに用いるための何か物をつくる、機械をつくる、そういうようなことですね。だから、間接的にある特許方法を侵害しているというのが間接侵害なんです。従来は日本は割と厳しくて、その物に用いるような、だからある方法の特許があればそれだけに使うような機械を間接侵害品としてこれはやめましょうということだったんですが、若干それを広げて少し汎用性を持たせるようにはしております。
○北村委員 そうしたら、我が国でいろいろな名前で呼ばれていてちょっと私は不愉快だと言いましたけれども、医療方法の特許というものができた場合には間接侵害というものに対応するものも決めなくてはならないのでしょうか。 ○平井参考人 決めなくてはならないと言うかどうかはあれですけれども、もともとの本体がもし免責になれば、つまり医療方法を実施する者が免責になれば、当然ですが、それを間接的に侵害する者に対して責任をとろう。何らかの権利行使をしたいということはあると思うんです。
○北村委員 やはり対応として考える必要も出てくるということでよろしいですね。 ○平井参考人 難しいですけれども、医療方法の特許の実施の過程の中でそういう間接侵害者を訴えるというケースは出てくると思います。 ○小野特許技監 本件は田村先生の方が詳しいと思いますけれども、私の方で少し補足させていただきますと、特にアメリカでは、特許化された医療方法を実施した場合に、先ほどお話がありましたように、医療方法で使う器具とか薬剤などを提供する者は、その方法の実施を助けているということで、いわゆる間接侵害を構成していると考え方がございます。
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○片山委員 今の点ですが、ここで議論をしているのはまさにそういう間接侵害者に対して、もし医療方法の特許を認めた場合に追及ができないということでは意味が全くなくなってしまうので、これは前提としてはそういう間接侵害者に対して損害賠償はできるんだ、あるいは差止め請求ができるんだという前提で考えていかなければいけないのではないでしょうか。ただし、医師は免責というところは恐らくコンセンサスがあるんだろうと思うんですが。 ○平田委員 今の点で特許庁にお聞きしたんですけれども、アメリカで間接侵害というのは、医療方法の直接侵害で医者が免責されるようなケースで実際にどういう事例があるんですか。 ○小野特許技監 先ほど相田が御説明しましたように、96年にこの法律がアメリカでできておりますけれども、具体的に医師免責が伴う事例で訴訟になったというものは我々の見ている範囲ではまだ見つからないということでございます。
○井村会長 この問題はいずれ、どの範囲に特許を認めるかによって変わってきますので、また改めて議論が必要だと思います。
○見城委員 今のHR3610法案のところなんですが、どうしても言葉のあやというか、同じことを言っているようで事実扱いが違っている部分のように私には受け取れるので、ここをもう一度だけお願いします。
○小野特許技監 一般的にはこの資料に書いてございますように、医師はいわゆる免責になっているのですが、その対象自体がバイオテクノロジー、例えば森下先生の遺伝子治療とか、そういうものに関しては医師や医療機関を含む医療関係者であっても免責にはならないのです。すなわち権利行使ができるということになります。 ○見城委員 では、ポツの3の1も2もバイオテクノロジーに関してということですか。 ○小野特許技監 そうことではございません。3がバイオテクノロジーですし、医薬品の使用方法、投与方法は前からいろいろ議論されておりますが、そういうものも実は免責にはなっておりません。それから、もちろん特許になっている物そのものを使用した場合、当然免責にはなりません。
○見城委員 言葉のあやというか、わかりづらいのでもう少し一言で言ってくれたらと思いますが。 ○小野特許技監 向こうの法律ですので。 ○見城委員 ただ、今回日本が取り入れようとしているところにも先ほどから北村先生もおっしゃっているように、大きな範囲でこれを進めていって、しかしその中でどの行為がその行為なのかという大変重要な問題がありまして、もしこのような形での法律なり法案になるようでしたら、これは問題だと思いまして確認させていただきました。 ○井村会長 まだまだ御意見があろうかと思いますが、予定の時間を過ぎましたので、今日は1つは利益相反の問題で、これは特許ももちろん絡みますけれども、それ以上にこれから産学連携とか、ベンチャーとか、いろいろなことが出てきますから、大学等の機関がそれぞれきちんとした利益相反の在り方を決める必要がある。それから、委員会はまだ余り日本では行われていませんか。 ○平井参考人 これからというところです。 ○井村会長 日本ではまだ利益相反委員会というのは大学には余り置かれていませんか。 ○文部科学省 できつつあります。 ○井村会長 これからそういう形で利益相反の問題は解決していくのではないかと思います。もちろん非常に複雑な問題はいろいろあると思いますけれども、だんだんといい方向にいくのではないかと思います。
○見城委員 間に合わないといけませんので、今いろいろと出されている御説明をいただきました法案、それから出ているものというのは、どちらかと言えばというか、はっきりと医療者側、製薬会社側の方だと思うんですが、受ける側を守るという法律とかは定められているんでしょうか。今、全部御説明いただきましたのはお医者様の側であり、医薬品業界の利益とか今後の進展に向けてそれをどう守っていくかということでしたが。 ○井村会長 平井先生はどうお考えですか。 ○平井参考人 私には少し荷が重いことかと思うんですが。 ○見城委員 これだけ医学、医療に関係する方々が進展していくために、また業界が発展するためにそれを守っていこうというものがあるならば、同時に保健治療の医療費だけの問題で患者側を語られるのではなくて、同時にどういう形でそういう中で患者側、国民の方は守られていくのか、また権利が存在していくのかという部分も、他国のものもあれば御説明も入れていただき、日本のことでももう少し御説明いただいて、今後決めていく中にどう国民が医療を受ける権利というものを盛り込んでいけるかということも含めて検討させていただきたいと思います。 ○井村会長 これについては特に厚生労働省から何かありますか。
○見城委員 この議論を通して守られていると思って進んでしまいますと、新たな法律が定められたことによって実は患者の側、国民の側がその枠外にあったということがあっては大変だと思うんです。ですから、それも合わせて検討できる資料をいただきたいと思います。 ○平井参考人 私は、利益相反の立場で述べましたので、その観点から御説明したいと思うんですが、この問題はこの委員会では基本的に特許の関係から考えるべきだと思うんです。それで、いろいろな観点があるのでそこをまず切り出して考えて、特許とか、経済的利益とか、あるいは責務とかという問題に関して患者をいかに守るかとか、あるいは患者さんにいかに事前に開示するかとか、そういうことは非常に重要だと思うんです。
○井村会長 今おっしゃったようにここでは特許の問題を議論しているわけで医療一般ではありませんので、特許に関して今のようなことが何か問題になるようだったら、そういうものがあれば調べていただきます。ただ、余り広げてしまうと、それはここの委員会の目的ではありません。
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