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第5回 医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成16年3月17日(木)14:00〜16:15
2.場 所:知的財産戦略推進事務局 会議室
3.出席者:
【委 員】井村会長、秋元委員、上田委員、片山委員、北村委員、見城委員、澤委員、田村委員、平田委員、広井委員、森下委員
【参考人】上田技術総括審議官、小野特許技監
平井東北大学客員教授、弁護士・弁理士(レックスウエル法律特許事務所)
池田慶應義塾大学医学部専任講師
相田審査基準室長
【事務局】荒井事務局長、小島事務局次長
4.議 事:
(1) 開会
(2) 先端医療技術を巡る現状と課題について
(3) 討議
(4) 閉会


○井村会長 それでは、まだ委員でお見えにならない方がございますが、定刻になりましたので、ただいまから「医療行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」の第5回会合を開催いたします。本日は、お忙しい中お集まりいただきありがとうございました。 今日は2人の方に参考人として御出席をいただいておりますので、御紹介申し上げたいと思います。
 慶應義塾大学医学部の池田俊也専任講師でいらっしゃいます。後でお話をしていただきます。
 それからもう一人、東北大学客員教授でレックスウェル法律特許事務所の平井昭光弁護士においでいただく予定になっておりますが、ちょっと用ができて15分くらい遅れて来るということでございますので、お見えになれば御紹介をしたいと思っております。
 お2人には今日、意見の陳述をしていただいた後、議論に参加していただく予定であります。
 それでは、議事に入らせていただきます。まず、前回は特許庁から欧州の特許の状況について御説明をいただきましたが、本日は米国の状況について説明をいただきたいと考えております。その後、お2人の参考人から御意見を伺うということにいたします。
 まず、米国における医療方法の特許の取扱いにつきまして、特許庁の相田義明審査基準室長から説明をしていただきたいと思います。それでは、相田さんよろしくお願いします。

○相田特許庁審査基準室長 ただいま御紹介をいただきました特許庁の相田でございます。前回は、欧州における医療方法の取扱いということで御説明をさせていただきましたが、本日は米国における医療方法の取扱い、それから昨年8月に審査基準の改訂をしましたけれども、改訂審査基準の実施状況、この2点につきまして御説明をさせていただきます。(スライド)
 まず、米国における医療方法の取扱いであります。後で御紹介しますが、1996年に法改正がなされております。まずそれに至る歴史的な経緯について簡単に触れてみたいと思います。
 1950年ごろまでは、米国特許商標庁は医療方法を特許の対象としないという実務をとっておりました。しかしながら、1950年ごろから医療方法を特許の対象とするという方向に変わってきております。その後、この実務が定着しておりましたけれども、またこれも後ほど御紹介しますが、1993年にパリン事件と言う医師が医師を訴えた事件が発生いたします。これが法改正の契機となりました。
 そして、すぐに米国医師会が動きます。年次総会で医療方法の特許化に反対を表明し、そして、短い期間に幾つかの法案が出されまして、最終的に1996年の9月に下院に出された法案ですが、HR3610法案が成立を見ております。

(スライド)
 それでは、若干詳しく説明をしたいと思います。1950年ごろまで、医療方法は特許の対象とされていませんでした。例えば注の1にありますが、エーテルを使用する麻酔方法は特許の対象でないとされました。理由は幾つかあるのですが、1つは人がエーテルを吸引すると麻酔作用があるというのは人体が自然に備えた機能であって人間が創作したものではないという理由であります。それから、同じ医療方法であっても患者の個体差によって効果が異なる、つまり、再現性の点で問題があるという理由もありました。それから、特定の治療方法に特許を付与すると、すべての患者で治療効果があるという誤解を国民に与えるという公衆衛生上の観点での理由もありました。このような理由から1950年ころまでは医療方法は特許の対象でないとして扱われてきたわけですけれども、これらの理由はだんだん立ちにくくなってまいります。
 そして、1950年ころからは米国特許商標庁は医療方法を特許の対象とするという方針に転換をしております。
 1つの象徴的な例といたしまして、1954年の審決の中から簡単にその理由を御紹介します。例えば、治療効果の不確実性、再現性がないということですが、これは特許の対象かどうかの問題とは切り離して考えるべきだと意見です。それから、アメリカの特許法には医療方法を類型的に特許対象から除外する明文の規定はございません。また、医療方法を特許対象から除外するという解釈を導くような一般的な規定もないということです。日本とかヨーロッパの場合には産業上の利用性という規定があるのですが、アメリカにはないということです。

(スライド)
 そして、1950年以降は医療方法に特許を付与するという実務が定着していたわけですけれども、そこで発生したのが1993年のパリン事件でございます。これは、白内障手術方法に関する特許について、特許権者でありますパリン博士がシンガー博士を訴えるという事件でございます。パリン博士自身は、白内障の手術方法について最初は学会に投稿したのですが、学会から却下されまして、そのために特許出願をしたと聞いております。このパリン事件そのものは、3年後の1996年にパリン博士の特許について裁判所が無効を宣言いたしまして終結するわけですが、この事件が終結を見る前に、まず翌年の1994年に米国医師会が動きます。AMA年次総会において議会と共同して医療方法特許の問題を解決することを表明いたしております。そして、95年、96年にかけまして相次いでAMAレポート、それから倫理綱領を発表いたしまして、医師は医学的知識を追求するとともに、得られた知識を分かち合う倫理的な責任があり、医師が医療方法特許を求めることは倫理に反するというふうな考え方を表明しております。背景には、例えば医療方法に特許を認めると医師の裁量を制限し、医師からの自由な情報伝達を阻害するということであるとか、あとは医師の研究インセンティブは特許がなくても確保されているというふうな理由が挙げられております。

(スライド)
 最初に下院に提案された法案はHR1127法案であります。これは特許法の101条を改正しようとしたものです。101条というのは特許の対象について規定している条文であります。この法案の内容は特許可能な機械や医薬品等を使用する医療方法のみを特許方法の対象とし、それ以外の医療方法の発明は特許保護の対象としない、つまり、特許可能な物との抱合せで方法特許は認めるけれども、方法特許単独では認めないという法案の内容になっておりました。
 10月に公聴会が開かれまして、賛成意見、反対意見がいろいろ出されております。医療方法を特許の保護の対象としないという法案に対する賛成意見といたしましては、例えば医療方法を特許の対象といたしますと医療方法がなかなか公開されなくなってしまう。それから、一旦特許を付与されますと特許権を侵害するのではないかという考え方が当然あります。そうすると、医師同士が開発された医療方法を再評価したり、それを改善したりする契機が奪われてしまい、結果的に医療の質を低下させてしまうのではないかという意見がありました。これは賛成意見です。
 それから、この法案に反対する意見といたしましては、例えばバイオインダストリーを代表いたしまして表明された反対意見ですが、この法案ですと特許可能なものとの抱合せでないと方法特許が認められない。そうすると、もう既に知られた物質の新しい発見に基づく発明、要するに、医薬用途発明が保護されなくなってしまうのではないかということがありました。前回御紹介しましたように、アメリカでは医薬用途発明は物としては書けませんので、方法として書くほかないのです。ところが、この法案によりますと、方法発明の道も閉ざされてしまう。そうすると、この分野で非常に強いアメリカのバイオインダストリーにとっては大きな打撃になる。つまり、この法案は目先の問題は解決できるかもしれないけれども、それを超えてこれまで保護されてきた重要なものも保護されなくなってしまうので、これは問題だというわけです。

(スライド)
 続いて出されましたのが上院で出された法案ですが、S1334という法案であります。これは271条を改正しようとするものですが、271条というのは特許権の侵害行為について規定している条文です。この法案によりますと、医療方法は従来どおり特許の保護の対象とする。しかしながら、医師等が方法特許を使用する行為、それはそもそも特許侵害を構成しないというふうな内容のものです。この法案によれば、これはこれまでの特許付与の実務には全く影響を与えず、なおかつ商業的な活動に対しては権利行使ができる。しかも、医師は特許から自由になれるというわけです。
 また、これについてもいろいろ反対意見が出されまして、バイオインダストリーを代表いたしまして、例えば医師の行為が直接侵害を構成しないということになりますと、医師を通じて商業的な活動を行う競業者も免責されてしまう。そうすると、せっかく特許権を持っていてもそれが迂回されてしまうという反対意見がございました。

(スライド)
 そして、最終的に成立を見たのがこのHR3610法案と呼ばれる法案でございます。実は、この医療方法発明の取扱いにつきましては、最初にS2105法案として出されたわけですけれども、それがすぐにHR3610法案に引き継がれます。もう少し詳しく言いますと、S2105法案が提出されてすぐに包括歳出予算法案HR3610の修正といたしましてS2105法案が取り組まれております。そして、S2105法案が提出されてから4日後にHR3610法案というのは下院を通過いたしまして、その2日後の9月30日に上院を通過しまして、その日の晩にクリントン大統領が署名して成立したというわけで、提案から成立まで1週間かかっていない法案でありまして、このHR3610法案自体は膨大な予算関係の法案でして、そこにこっそり忍び込ませたという意味でステルスレジスレーションとも呼ばれております。
 この内容でありますけれども、医療方法は従来どおり特許の保護を対象とする。ここは前に出されましたS1334法案とその点は同じです。S1334と違うところは、医師の行為は特許侵害を構成する。しかしながら、特許侵害を構成するけれども、特許権者は医師等に対して権利行使、例えば差止請求や損害賠償請求ができない。つまり、特許権は侵害するけれども、免責されてしまうという内容なのです。
 ただ、これには大きな例外がございます。「但し」のところなのですけれども、この医療方法の実施が医薬品の医療機器などの物の特許、医薬品の使用方法の特許、それから物と方法とにかかわらずバイオテクノロジーの特許を侵害する場合には免責されないということです。非常にわかりにくい複雑な法律なのですが、これから言えることは、例えば従来の機器、従来の装置を使った手術方法、メスを使った手術方法のようなものは免責されるが、遺伝子治療方法のようなものは全然免責されないというふうな内容のものになっております。

(スライド)
 これはHR3610法案が成立した法律の内容です。特許法の287条というのは特許権の効力の制限について規定している条文でして、アメリカの領空を一時的に通過する飛行機とか、領海に一時的に入る船舶内での権利行使について規定しているものですが、(C)というところに先ほどの条文が入ってきております。ごらんになったらわかるように非常に複雑な条文でして、あるコメンテーターによれば法律のできとして余りよくない。どんなことを証明したらいいのかもよくわからない。範囲もはっきりしないということで、予見可能性という意味でも非常に問題があって、なおかつ訴訟費用、訴訟負担がかなり多くなるのではないかというコメンタールもございます。
 ただ、幸か不幸か、この法律の改正法が争いになった事件というのは調査した範囲内では今のところはございません。

(スライド)
 以上でアメリカの医療方法発明の特許法の状況について説明を終了しまして、次に審査基準改訂後の状況について御紹介をいたします。
 最初におさらいをしておきたいと思います。改訂審査基準のポイントでありますけれども、ヒトから採取したものを原材料として、例えば遺伝子組換え製剤などの医薬品あるいは培養皮膚シートなどの医療機器、それを製造するための方法は同一人に戻すことを前提としている場合であっても特許の対象とするということを改訂審査基準で明確化したわけであります。
 次に関心があるのは、それではこの改訂審査基準が関係してくるような特許出願はどのれくらいあるんだろうかということなのですが、特許出願がなされますと国際特許分類というものがあって、それがコンピュータに入力されます。そうすると検索ができるようになるのですが、残念なことにこの改訂審査基準の部分に一対一に対応する国際特許部分というものはございません。
 そこで、この分野を代表する技術分野といたしまして培養細胞を用いた再生医療関連技術、これは特許の分類でいいますとC12N5/00というのと、それからA61L27/00というものを掛け合わせると大体補足できますので、これで代表してみたいと思います。この培養細胞を用いた再生医療関連技術の出願の伸びを見ますと大体このような感じになっております。これを見ると2000年辺りから急激に出願数が増加して、最近では恐らく70件を超えているのではないかと思いますが、そういう状況になっています。2001年のところは少し凹んでおりますけれども、実は先端技術分野の特許出願というのは最初、国際特許出願という形でなされまして、その後、国内段階に入ってくることが多いのですが、国内段階に入るのに30か月の猶予期間がございます。したがって、2000年以降のこのデータは十分に反映されていませんので、今後この数はもう少し伸びることが見込まれます。いずれにいたしましても、2000年ごろから急激に伸びているという傾向はつかめるかと思います。
 右側の表でございますけれども、これは昨年の10月から今年の2月にかけて審査された案件で、この改訂基準の部分が関係してくると思われるものを拾ったものであります。これを見ますと全部で処理案件が17件、そのうちで特許査定をしたものが5件、例えば何らかの拒絶理由、例えば新規性がないとか進歩性がないという理由で拒絶の理由が発見されて、それが出願人に通知されたものが12件という内訳になっております。
 以上が今回のプレゼンテーションなのですけれども、最後に一言申し上げたいと思います。前回、秋元委員の方から、欧州特許条約が改正されてそれが発効すると医薬の投薬方法のようなものについて特許の方が手厚くなるのではないかという御指摘がありまして、欧州特許庁に問い合わせましたので、その結果だけ御報告して終わりにしたいと思います。
 欧州特許庁に問い合わせたところでは、条約改正によって保護範囲が変わることはないということのようです。つまり、これまでは第2医薬用途発明はスイス・タイプという特別な形式でしか許容されていなかったのですが、それを例えばイギリスの裁判所では無効としているということで法的安定性に欠けていたわけですが、それが条約改正によって物の発明として書けるようになるだけであって、それによって投薬方法によるものまでその保護が手厚くなるかというとそうではないということのようです。
 ただ、もちろん改正条約はまだ発効していませんので、新しい条約に基づく運用というのはこれから定まるものですから、将来のことは確約はできないというのは言うまでもないところであります。以上が欧州特許庁からの回答でございます。
 これで私のプレゼンテーションは終わらせていただきます。

○井村会長 どうもありがとうございました。それでは、討論はまた後ですることといたしまして、次に東北大学客員教授で弁護士でいらっしゃいます平井明光弁護士においでいただきました。ここで問題になりました利益相反の問題についてお話をいただきたいと思います。

○平井参考人 遅くなりまして、大変申し訳ございませんでした。それでは、私の方から「医療方法特許と利益相反について」ということで、利益相反の話をさせていただきたいと思います。

(スライド)
 まず「産学連携の推進と利益相反の関係」なんですが、基本的にアカデミアの世界、それからプライベートセクターの民間企業との関係は非常に難しい問題があります。ここにありますけれども、大学は教育、研究、その公表、こういったものを使命としております。逆に企業の方は利潤の追求、営業秘密などはしっかり守るという性格を持っております。こういうふうに非常に異なった2つの性格があり、その間に起きる問題が基本的に利益相反の問題でございます。
 ここ最近、知財立国ということもあって産学連携の推進は非常に叫ばれております。これは大学の知を活用するという意味で非常に重要なことだと思うんですが、この2つのセクターの間の関係をより近いものに、より緊密なものに持っていくという中で、この利益相反という問題はよりクローズアップされてくるということになります。

(スライド)
 言葉で説明すると非常にわかりにくいところもありますので、まず最初にイメージをつかんでもらうということでこういう一つの例を挙げさせてもらいました。車で言えば産学連携の推進というのは例えばアクセルである。前に進める。利益相反はハンドルだ。車で言えばアクセルとハンドルの関係にあるということなんです。以前、私はよく、利益相反というのは馬の手綱でという説明をしていたんですが、ある方から、手綱はブレーキに使いますよと言われまして、これはまずいというのでハンドルに変えました。決して利益相反はブレーキではないんです。アクセルを踏むに当たって、当然ハンドルがなければちゃんとした方向に進めない、あるいは適正に進めないということでハンドルが必要であるということになります。
 次の項ですけれども、利益相反はグレーゾーンを皆で理解し、管理し、よりよい方法を目指そうとするものとあります。もちろん法律には、これをしてはいけないということは書いてあります。逆に、これをしてもいいですとも書いてあります。問題は、そのグレーゾーンなんです。これをしてはいけないという黒ではなくて、しかし社会の信頼を得るため、あるいはアカデミア、研究者の尊厳、インテグリティを守る意味で非常に重要な部分があります。それが利益相反、このグレーゾーンですね。ここを扱うのが利益相反ということです。

(スライド)
 では、そういうグレーゾーンを扱う利益相反というのは一体何を目指すのかということを端的に申しますと、こういうことです。認定証です。ある先生に、先生は非常に頑張っておられました。非常にいろいろお考えになってすばらしくやっておられます。是非このまま研究を進めてくださいという認定証を先生に差し上げるということが利益相反ポリシーのゴールです。これはどういうことを意味しているかというと、仮に利益相反委員会のお手伝いがなければ、先生は多分御自身でいろいろ悩んだり、苦労されたり、あるいはいろいろな方の力を借りて研究を進めると思うんです。しかし、組織としてその先生をお助けする、あるいは組織のアカウンタビリティを守るという意味で利益相反は非常に重要で、研究者にとってコンフリクトが明確になって、しかもそのボーダーラインが明確になるというのが利益相反のゴールであります。

(スライド)
 これは参考なんですが、例えば従前は国立大学の先生が会社の役員になりたいということであれば、こういった103条兼業というものがございました。これによって人事院が申請書類をチェックして、OKですということで先生に兼業を認めていたんですね。ですから、ある意味こういった形で兼業、利益相反というのはもう既に一部きちんと行われていたということも言えます。
 ちなみに、この103条兼業の場合には毎年1回、更にレポートの提出が義務づけられていますので、人事院ではきちんと1年に1回、先生方の行動をチェックしているということが言えると思います。

(スライド)
 日本における利益相反に関する取り組みなんですが、これは平成14年に文部科学省の中におきまして利益相反ワーキンググループというものを形成しました。私もこのグループの一員であったんですが、ここにおいてさまざまなディスカッションを行って利益相反の在り方、あるいは考え方、ルールといったものを検討しました。そこにはこういったルールづくりと、体制整備に向けた取り組みを行うよう提言がなされております。この提言に基づいて、現在東大、東北大学を始めとして全国各国立大学、私立大学では利益相反のルールづくりが既に始まっております。私が関わっております東北大学でも既にスケジューリングはされております。今年はなるべく早いときにこういうふうなものをつくりたいと考えております。

(スライド)
 これは一例なんですが、今回のこのグループの中で医学・医療の分野についてこういったコメントがなされております。ポイントを読ませていただくと、臨床研究にかかる利益相反については患者の生命・身体に関わるとともに、医学研究の現場で治療法が考案され、その現場の研究者が知見を実施し、かつ、研究者自らが考案した治療法を商業化するベンチャー企業の事業に関わることが多いという特性がある。したがって、通常のスタンダードな利益相反のマネジメントシステムに加えて、更に厳格な対応策をとることも考えられる。ここは別に考え方ですけれども、そういう2段階の仕組みを考えることもできる。本報告書の内容を踏まえつつ、医学・医療関係者を交えて十分な議論がなされることが望まれるということでございます。
 では、翻って米国ではどういう状況にあるかということを御説明したいと思います。御存じのように、米国は産学連携では日本よりもかれこれ20年ぐらいは先を進んでいたと思います。日本は一生懸命キャッチアップをして大分追いついてきていますが、米国の方が先に進んではきております。しかし、そういう米国でも実はこうでなければならないという法律的な利益相反のルールというものは存在しません。これは各大学がそれぞれ自分の大学の理念、あるいは環境、状況、そういったものに応じて、各大学でつくっていただきたいということがアメリカの基本的な状況でございます。
 ちなみに、今月の最初に私はアメリカに行ってAUTMというカンファレンスに出てまいりましたが、そこでもやはり利益相反の問題について議論をしておりました。正直言って、まだアメリカでも議論をしています。組織としての利益相反はどうあるべきか、あるいは臨床試験はどうあるべきか、まだ議論をしています。ですから、アメリカでもこれが本当の答えだというものはできていないという状況でございます。
 余り細かいところはあれですけれども、大学関係団体でAAUとかGAOが包括的というか、ある一定の指針というものは示してはおります。

(スライド)
 カリフォルニア大学の例としてこういうものが挙がっておりますが、例えば一定の金額を超える金銭、これは1万ドルあるいはエクイティ5%、こういったものがある場合には開示をする。ジョンズポプキンスもこういったルールを設けています。

(スライド)
 臨床試験と利益相反ですが、やはり通常の利益相反の問題に加えてここでは患者さんが入っております。患者さんの生命と安全という要素を考えなければいけません。したがって、1.患者の安全、2.データの客観性、3.私的な利益、これをどうやって調和を図って、どうやって社会に信頼されるすばらしい研究を打ち立てていくか、成果を得るかということが目標でございます。
 ゲルシンガー事件というのは非常に不幸な事件で、先端の研究の中で臨床試験を行いながらゲルシンガーという患者さんが亡くなったという事件がアメリカでありました。臨床試験と利益相反のポリシーというのは米国ではもちろん、世界じゅうで、もちろん日本でも重要な問題ですので、これから是非いろいろな形で議論を進めていきたいと思っております。

(スライド)
 臨床試験に関する利益相反ルールの例を幾つか挙げたいと思います。ここにあるのはスタンフォード大学の例ですが、ここでは例えば2)の2番目で、臨床研究において利益相反があるにもかかわらず、研究者が当該研究に関与しなければならない場合には正当な理由が必要となる。正当な理由というものをきちんと見ながら、その方が臨床研究に関与できるか考えましょうとなっております。

(スライド)
 こちらはペンシルバニア大学の例ですが、スタンフォードとは若干異なっております。ここは、研究者はこういう関係する企業の取締役になってはならない、あるいは研究に参加してはならないということで、実は利害関係のある研究者と臨床研究を引き離すポリシーを取っております。これはゼロトレランスルール、つまり全くマージンがないというルールなんですけれども、アメリカではこのゼロトレランスルールをとるか、それともスタンフォードのような正当な理由を要求するシステムをとるか、このどちらがいいのか一生懸命議論していたんです。それで、どちらがいいかはアメリカではまだ決まっていません。(スライド)
 これは参考ですので特に申すまでもありませんが、日本では臨床試験研究に関する倫理指針というものが実は昨年度出ておりまして、こういう中で一定の利益相反をコントロールする方法がとられております。例えば臨床研究計画にこういったことを記載する、あるいはインフォームドコンセントをきちんと行う。こういったことを要求されております。(スライド)
 利益相反への対応の仕方なんですが、最近大学の研究者の方でベンチャー企業への取締役を兼業する者が増えてきている。これはある意味、望ましいことでもありますし、研究者の方がベンチャー企業に入って取締役という立場で、あるいは技術顧問という立場でその研究を指導していただく。間違っていない正しい方向に指導していただく。これは非常に重要なことだと考えています。
 しかしながら、そういうことが増えるに従ってだんだんエクイティの問題、あるいはライセンスの問題、いろいろな利益相反の問題が出てまいります。したがって、このような利益相反の問題について適切な対応が求められております。
 しかし、大事なことは、これは研究者の活動を糾弾するためのものではない。むしろ促進を図る方策なんだ。皆さんに頑張ってもらいたいというための一つのツールであると言えます。特に医学、医療の分野における臨床研究にかかる利益相反については非常に慎重な対応が求められます。これはアメリカにおいてもそのとおりであります。日本でも現在そういった形で東大、東北大で検討が進められております。
 産総研では実はかれこれ1年半か2年くらいになるかと思うんですが、利益相反の検討委員会をつくりまして、その後、利益相反委員会をつくって利益相反のシステムを実際に回しております。その中で一定の成果は出てきておりますので、今後そういった産総研の例を見て各大学あるいは国研といったところで利益相反のルールが進められていくと思われます。

(スライド)
 これが最後になるかと思いますが、利益相反の問題というのは非常に重要な問題です。しかし、これは医療行為特許、医療方法特許という問題だけではなくて、物の発明だろうと、医薬の発明だろうと、機械の発明だろうと、医療器具の発明だろうと、医療方法の発明だろうと、すべてに対して関わってくる重要な問題なんです。したがって、兼業の問題とか、あるいは産学連携の仕組みの中で、あるいは倫理の問題を含めて全体的な枠組みの中できちんと考えて是非適切に進めていきたい。なかなか難しい問題もあって遅々とした歩みになるんですが、アメリカでも悩んでいますし、私たちも悩んでいます。情報交換をして、是非少しずついい仕組みをつくっていきたいと考えております。以上です。

○井村会長 どうも大変ありがとうございました。いろいろお尋ねしたいことがあろうかと思いますが、後でまとめて議論をしていただくことにしたいと思います。
 次は、慶應義塾大学の池田先生にお願いします。これは、特許の幅を広げて医療方法にまで特許を認めると医療費が高くなるのではないかという議論が出ましたので、先生はその道の専門家で、医療政策管理学教室におられますのでお話を伺うことにいたします。では、よろしくお願いします。

○池田参考人 慶應義塾大学の池田でございます。よろしくお願いいたします。
 私に与えられました課題は、医療方法特許導入の経済的な影響ということでございます。(スライド)
 こちらに示しましたように、いわゆる保険診療で使われている医療費、国民医療費というのは増加の一途をたどっておりまして、最近では年間30兆円ほどとなっております。
 この増加の要因を広井先生の本で勉強させていただきましたが、幾つかの要因というものが挙げられています。1つ目は人口の増加、2つ目が人口構造が高齢化していくこと、そして3つ目が日本の場合は保険診療で支払われるお金、値段というのは公定価格となっておりますので、こちらの値段が上がる下がるということによっても全体の医療費に影響が及ぶ。そして、4つ目にいわゆるそれ以外の自然増の部分です。広井先生の御本によりますと、これは費用誘発型の技術革新といったようなものなどが含まれるものである。
 こうしたさまざまな要素によって医療費がこれまで上がってきているということであります。

(スライド)
 医療方法特許を入れることによって医療費に対する影響というのはいろいろな側面が考えられますが、主な検討課題として、本日は新規医療技術の開発が進むことにより、医療費にどれだけの影響があるのかということについての考え方をお示しをしたいと思っております。

(スライド)
 いわゆる医療技術の費用対効果を定量的に計算をする方法というのは、一般にはこちらに示すような方法で行われます。新しい医療技術を導入することによって追加して発生するお金がある。一方、新規医療技術を使うことによって患者さんの健康結果、アウトカムが向上していく。具体的には、例えば悪性腫瘍の治癒率が向上する。あるいは患者さんが長生きできる、生存年数が延びる。あるいは最近ではいわゆる生活の質、QOLというものに大変関心が集まっておりますので、障害を持った1年と完全に健康で生きる1年はやはり価値が違うのではないかという考え方に基づいて質調整生存年、クオリティ・アジャステッド・ライフ・イヤーという単位になりますが、これがいわゆる費用対効果を測るときの健康結果の指標としてよく使われてきています。
 更に、この医療技術を入れることによって将来的に病気の再発が減るとか、あるいはさまざまな障害が減ることによって医療費が将来的に減っていくような医療技術もあります。一方で、患者さんが長期に生存することによってむしろ医療費が増えていく。あるいは、月々の治療費が非常に高いので医療費が増えていくというような医療技術も存在はしています。
 そこで、費用対効果を定量的に計算するときには分子と分母で割り算をします。分子の方にはかかった費用、つまりこの新規の医療技術を入れることによって追加でかかってしまうお金、そして長期的な医療費への影響、この部分の差し引きをとります。そして、分母には患者さんがどれだけ健康改善が得られるかという部分であって、例えばここに投入される費用が多少高くても、患者さんの健康水準が極めて上がっていくということであれば、この費用対効果というものを考え合わせれば決して割高な治療ではない。むしろ費用対効果は優れている。こんな計算の結果の評価をするということになります。

(スライド)
 幾つの事例を御紹介したいと思います。実は、これが医療方法特許に直接関連のあるものかどうかといいますと、そうでないものも含まれておりますが、新規医療技術を導入した場合にどのような計算方法を使って、どのような結果が出てくるかということの例として御紹介をしたいと思っています。
 1つ目に、我々が実施しました研究で、再発・進行胃がんの患者さんに対します経口の抗がん剤、飲み薬で治療するというような新しい薬について経済評価を実施しました。比較対照は、この薬が開発される前に普通に行われていた注射による治療、つまり入院して行う治療ということになります。実際にかつてこういう従来治療で治療された患者さんの診療報酬明細書を手に入れまして、一方で新しい治療で行われた患者さんのものも手に入れて、その両方を計算し比較いたしました。

(スライド)
 ところで、この2つの治療法、従来治療と新しい治療では直接対決して比較した臨床試験というものは今のところありませんが、過去の臨床試験の結果を比べてみますと奏効率、つまり治癒率あるいは生存月数に大きな違いはない。つまり、かつての治療に少なくとも遜色のない治療だということが臨床的に明らかになっています。

(スライド)
 これは実際の結果でありますが、いわゆる従来治療群でいきますと、これは治療を始めてから毎月毎月幾らだという平均を取ったものなんですが、少し変動はありますけれども、月当たり80万、100万くらいの水準で推移しています。大きく変動がありますのは、患者さんによっては状態が急に悪くなって輸血をしたり、さまざまな追加的な治療が発生するようなものもあるので非常にばらつきが大きいという結果になっています。
 一方で、新しい飲み薬の方の治療で見ますと、最初のうちは治療のために入院していますが、何か月かしますと外来で通院しながらの治療に切り換えることができるということで、月当たりの治療費も減ってまいります。

(スライド)
 それで、飲み薬の場合と従来の注射の薬の場合で毎月毎月平均幾らかかるかを集計いたしますと、飲み薬の治療だと大体30万円前後、従来の注射代でいきますと80万円を超えるような平均的な値段がかかってくる。飲み薬の方が費用が半分以下に抑えられるということがこの分析で明らかになりました。

(スライド)
 薬代だけ取り上げてみますと、薬代そのものはこの飲み薬の治療の方が、新しく開発された薬でもあるので高い値段がついています。しかしながら、ほかの薬代も全部含めて考えますと、実は従来治療の方が高い値段が毎月毎月かかってきます。なぜかといいますと、従来治療では副作用の点からも、例えばはき気止めとか、輸血とか、造血剤とか、いろいろなものを使ってまいりますので、結局薬代だけ取り上げても割高になってしまう。新しい薬の方が、薬代そのものは高くても全体としての薬剤費は安く済むというような結果が出ております。


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 2つ目の事例です。前回のこちらの会合で医学部長の北島の方から紹介がありました内視鏡下の大腸切除術の場合の計算です。北島医学部長の事例を使ったんですが、ここの費用、効果費用、シミュレーションというところはよそのものがそのまま張り付いてしまっているようなので、こちらは削除をお願いをいたします。申し訳ございません。
 分析対象といたしましては内視鏡下で大腸の切除手術、侵襲の少ない治療をした場合の医療技術に対する評価。比較対照としては、従来おなかを開けてやる開腹手術。方法は、診療報酬点数、病院に支払われるお金が幾らになるかという費用の比較を一入院について行っています。

(スライド)
 前回、北島の方から提示しましたのが両群の無作為化比較試験を行ったところ、平均在院日数が大きく減少し12.7日から7.1日という短縮が見られたという報告であったかと思います。

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 実は今、我々の大学病院を含む特定機能病院等には1日定額支払いというものが導入されております。これはどういうものかといいますと、在院日数が短い間は1日当たり支払われる値段が全国の平均的な値段よりも高い値段で支払われる。去年の実績よりも高い値段で支払われる。ある一定期間を過ぎますと、これが平均並みで支払われる。そして、全国のこの病気で入院した患者さんの平均的な在院日数を超えていきますと、1日当たりの支払いが減らされるという定額支払い制度が導入されています。

(スライド)
 この制度の下で実際の試算を行いますと、おなかを開ける手術は従来法でいきますとおよそ70万円の費用が発生する。ところが、内視鏡でやりますと50万円くらいということで、1患者さんの入院から退院まで手術料を含めて20万円くらいの費用の節約につながるような医療技術であるということになります。

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 3つ目の事例でありますが、これはヘリコバクターピロリ、つまりピロリ菌の除菌状況によって消化性潰瘍の再発を抑制することができるという治療技術に関する経済効果の試みであります。これも我々が行ったものでありますが、胃潰瘍の患者さんに対して従来のようないわゆるH2ブロッカーという薬を主体とした維持療法と、新たに開発された除菌療法とを比較したわけです。除菌療法というのは一定のコストがかかります。しかしながら、長期的に見ると費用が上がるか、あるいは下がるかというところを比較しました。
 ただし、この分析を行った時点では長期的な予後、患者さんが長い間、経過したときにどれだけ再発を起こすかという長期的な予後に関するデータがまだ存在しておりませんでしたので、短い期間での臨床試験の結果を参考にして長い期間のものを予測する、シミュレーションする方法としてマルコフモデルという方法を使っています。ですので、この推計については後に長期的な患者さんの予後のデータが入りますと見直していく必要があるかもしれません。いずれにしても、この時点で手に入る最善最良のデータを使って分析をしたということであります。
 費用の方は、やはり病院に入ってくる公定価格で決められた医療費を算出対象としています。
 効果指標としては、患者さんが5年間に何日間、薬も飲まず、症状もなく過ごすことができたかということを効果指標として比較をしています。つまり、費用の面と効果の面の両方の比較を行っています。

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 このモデルの詳細の説明は割愛いたしますが、このように一定期間ごとに患者さんがどのようによくなっていくか、悪くなっていくかということをさまざまな臨床試験の結果などを使いましてモデル化したということであります。

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 結果だけお示しをしますが、除菌療法の1年目では除菌療法そのものに一定のお金はかかりますが、それでも再発率が極端に減りますので、それによって薬剤費、検査費、診療費、合計してみますと年間におよそ6万5,000円程度の値段になる。ところが、従来療法ですと9万円程度かかっている。これが2年目、3年目といきますと更にますます差が開いてくるという結果です。

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 長期的な5年間の費用の累計を見ていきますと、従来療法というのはおよそ40万円程度、除菌療法をいたしますと17万円程度ということで、費用の削減につながる。つまり、こうした除菌療法というものが日本で早く承認されていれば、それだけ医療費の削減に早くつながったということが言えるのではないかと思います。
 一方で、患者さんが症状を訴えない期間を比較しますと、やはり除菌療法をした方が患者さんが症状を訴えずにいられる期間が伸びる。臨床効果としても優れているというような推計結果でありました。

(スライド)  次の事例は、今までのものと若干異なっております。アルツハイマー型痴呆に対する日本で承認されている治療薬でありますが、この薬を飲めばアルツハイマー型痴呆が治るといった根治的治療ではありません。痴呆の進行を遅らせるという薬です。広井先生の御本にも書いてありますいわゆる途上的な技術、ハーフウエイテクノロジーに当たるようなものではないかと思います。こういうものについてこそ経済的な評価をしていくことが必要かと思います。具体的には、患者さんを完全に治せる技術ではないけれども、こういったものに果たしてどれだけのお金を社会として投入していくべきか、あるいは投入する価値があるかということを判断していくことが重要かと思います。
 このドネペジルという薬でありますが、これを使った場合と、いわゆる従来療法、この薬を使わず経過を見ていくという場合で医療費がどれだけ違うか、あるいは患者さんの健康結果がどれだけ変わってくるかということを比較してみました。具体的にはマルコフモデルという先ほどのようなシミュレーションモデルを使いまして、半年ないし1年で得られた患者さんの予後に関するデータを40年まで引き伸ばして、どのような医療費に対する影響があるかということについてのシミュレーションをしました。
 この場合、医療費のみにとらわれておりますと結局薬代だけかかってしまうということになるわけですが、実は社会として支出する費用というのはいわゆる保険診療で発生する医療費のみにとどまらず、例えば痴呆の場合ですと介護の費用なども入ってまいります。今回はいわゆる支払い者としての立場から医療費及び介護費用というものを推計に入れてあります。
 効果指標としては質調整生存年、先ほど少し申し上げましたが、患者さんの障害の程度と、そういう状態で何年生きるかというQOLを加味した生存年数、障害度で重みづけをした生存年数というものにしておりまして、少し専門的なやり方になってまいります。

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 具体的には、質調整生存年といいますのは患者さんが健康なときは1、状態が悪いときはゼロということで、それぞれの患者さんの状態、健康状態についてゼロから1の間でまず重みづけをいたします。そして、患者さんの障害の程度で何年生きていくかということによって、この面積を計算するというのが質調整生存年の考え方です。
 例えば、ある患者さんが元気でここまでおりましたが、ここで病気をされてQOLがどんどん悪くなって、ここで死亡されたという場合には、この面積がこの患者さんの質調整生存年ということになります。ここで画期的な治療があって、それによってQOLも上がり長生きをすることができたという場合には、この部分で追加して投入した費用によって得られた追加的な患者さんの健康結果ということになります。費用対効果の計算のときにこの面積を測っていくということを行っていくわけです。

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 それで、今回のマルコフモデルというのはこうした患者さんの自然の予後ですね。これは1年間に患者さんがどのように病気が進行するかということを疫学的なデータからこちらに示したものですが、こういう形で患者さんがどんどん病気が進んでいく。そして、そこに薬を使っていけばどれだけその進行が遅くなるかということで今回シミュレーションをしております。

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 時間の関係で結果だけで恐縮なのですが、これはいわゆる自然予後、患者さんに薬を投与しなかった場合に、最初に軽度痴呆だった方が例えば2年たちますと半分くらいの方はもう中等度まで進んでいるとか、10年たちますと死亡されている方が半分以上になってくるというよう患者さんの病態、推移の予測であります。

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 薬を投与した場合、臨床試験の結果から患者さんの痴呆の進行の具合がどれだけスピードが遅くなるかということをシミュレーションしてみますと、例えばこの50%というところを横に見ていただきますと、平均的な経過をたどる患者さんがどれだけの病気の進み方になるかを見ることができるんですが、先ほどに比べまして病気の進行が遅くなっているということがおわかりいただけるかと思います。

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 これを医療費として介護費用を40年にわたって推計し、その累積の値をこちらに書いてみました。抗痴呆薬を投与しない群の方がお金がかかってくる。どうしてかといいますと、その患者さんというのは痴呆が進行し、介護の費用などがたくさんかかってくるので、その費用としては上回ってくるということがわかります。
 ところが、抗痴呆薬を投与した方の患者さんの方がむしろ長生きするわけで、長期的に見ていくと実は費用というのはむしろこの薬を使った方が患者さんが長生きする分、高くなっていくということでありまして、非常に短いスパンで見ると費用節約的な結果なのだけれども、このシミュレーションというものを長くやってみますと、実は費用としては患者さんが長生きする分、予後がいい分、医療費あるいは介護費用は増えていくということが示されます。
 一方、患者さんの健康結果というものを質調整生存年という単位で表しますと、薬を投与している群の方が非常に健康結果としては高いというような計算になります。

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 このように費用が上がってしまう一方で健康結果も上がってくるという場合に、この治療技術は果たして費用対効果の点からどうなんだろうということを議論するときには、増えた費用を増えた効果で割り算することによって、増分費用対効果比と言うんですが、これを追加してかけるだけの価値が患者さんにとって本当にあるのかということを見ることが一般的です。この場合ですと、1年分の健康な命の価値、1質調整生存年を得るために252万円の追加投資が必要なような医療技術である。この値が高いか安いかといいますと、国際的な基準というのはおおよそ、例えばイギリスでは1質調整生存年当たり3万ポンドぐらい、アメリカでは5万ドルぐらいなどと言われていまして、大体500、600万円くらいのところよりも安上がりなものであれば、それぞれの先進諸国では費用対効果は良好という判断をしていることが一般的なようであります。
 そういうわけで、この場合には諸外国の水準で見ますと費用対効果に優れているという言い方ができるかと思います。

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 実際にイギリスではさまざまな新規医療技術に対してこうした費用対効果の分析を行っており、その結果が治療指針の中に数字が書いてあるんです。それを元にこの治療というものはイギリスのNHS、国民健康サービスの中でこの薬を使うべきか使わないべきか、この薬を推奨するのかしないのかという判断に役立てています。
 例えば、3万ポンドよりも安い水準であるようなものについては、この治療指針の中ではおおよそ推奨されています。一方、割高なものについては多くの場合、推奨せずという書き方がなされていますが、例えばほかに代替的な治療がないようなものについては条件付きで、具体的には患者さんの経過をよく見ていくとか、そういう条件付きで推奨がなされています。つまり、この経済評価の値が割高だったら自動的にこの薬はだめというのではなくて、ほかに代替的な治療があるのかといったさまざまな、あるいは公平性、倫理性の観点なども含めた判断がなされているわけですが、この数字そのものもイギリスにおいてNHSの中で税金で賄うべき薬であるかどうかという一つの判断に役立てています。

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 では、先ほどの抗痴呆薬の場合はどのようなことが治療指針に書いてあるかといいますと、実は長期的な予後予測や推計というものが難しいので、ぱっと1つ数字が治療指針に書いてあるわけではありませんで、むしろこんな書き方がしてありました。MMSEという痴呆の認知機能点数がどんどん悪くなって零点に近付いていく場合、この薬を投与してよい点数の範囲というものが示されています。臨床試験では10点よりも良好な患者さんであればこの薬は効き目があるという結果は出ているが、重症になるに従って薬の効き目も悪くなるし、費用対効果というものも悪化してくる。
 そこで、臨床的には10点まで効き目があるとされているが、経済的な立場から10点まで薬を使い続けるのではなくて、12点までにするということが治療指針の中には書いてあります。つまり、臨床的なエビデンスだけではなくて経済的なエビデンスも加味した上でイギリスでは診療指針が作成されているということがわかります。

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 さて、まとめであります。医療方法特許の導入により先端医療技術等の開発が促進されるとなりますと、これによって医療費が必ずしも高くなるとは言えないと思います。むしろ医療費が安くなるという事例は既存の医療技術でも数多く存在しているわけですし、遺伝子治療、再生医療などを始めとしますいわゆるジェニュイン・テクノロジー・純粋技術あるいは根治的な治療というものが医療方法特許の対象として多く含まれると思われますので、医療費はむしろ下がることが予測されると考えます。 ただ、先端医療技術の開発は国の各種の政策により推進しておりまして、患者の健康改善にもつながるわけですから、医療費そのものが上がるか下がるかということだけでこうした開発促進が不要ということはむしろ言えないのではないかとも思います。
 ただ、イギリスその他、オーストラリア、カナダ等、たくさんの国で先ほどのような費用対効果の値を出した上で、その技術を保険収載するか否か、あるいは開発を進めるかということを判断をしてきておりますので、我が国においても代替治療が存在するような医療技術についてはこうした費用対効果の定量的な算出結果も考慮に入れた上で開発の優先順位付けや、あるいは場合によっては保険収載の可否の判断をしていくべきではないかと私は個人的には考えています。
 ただし、今回提示いたしました医療方法特許導入の影響というのは、先端医療技術の開発促進という面に焦点を絞っておりますので、医療方法特許の導入により、例えば後発品の参入が遅れてくる等々の問題につきましては、今後十分な検証が必要と考えます。 私見ではありますが、現在我が国では後発品のシェアというものが非常に限られておりますので、当面は後発品の参入抑制による医療経済的な影響というのは大きくはないと思っておりますが、これらについては今後データを収集し、検討していく必要があるのではないかと思います。以上でございます。どうもありがとうございました。

○井村会長 どうも大変ありがとうございました。臨床的根拠以外に経済的根拠を導入するというのは、いかにもイギリスらしい非常にプラグマティックな考え方だと思います。 それでは、今3人の方からアメリカの医療方法特許の現状、利益相反の問題、それから医療費の問題について御報告をいただきました。あと1時間弱ございます。今日は今、御報告をいただいた3つの課題を中心にこれから議論をしていただくことにしたいと思います。どの問題からでも結構ですから、自由に御意見をどうぞ。

○秋元委員 特許庁さんに確認なんですが、最後に成立したHR3610法案、これが成立して以降、AMAや医療団体、BIO、それからファルマとの妥協の産物で出たということを私は何度も申し上げたかと思いますが、これ以降この問題について顕著な問題は出てきていないと思いますが、この辺はいかがでしょうか。

○相田室長 問題が出てきているかどうかはわかりませんけれども、少なくとも裁判の観点などからいたしますと、調査した範囲では事件化したものはなかったという状況でございます。

○秋元委員 ありがとうございます。それからもう一つ、これは弁解ではないんですが、私の本意と、先ほどの私の前回の発言に対する御回答が若干違っているというふうに思いますのでコメントさせていただきます。
 もともとヨーロッパの特許法ではいわゆる私ども製薬企業、産業界が要望しております2剤の併用は認められている形になっておりまして、今度はっきり明文化されているわけですが、日本ではいまだに合剤という形でしか認められていない。その辺が私どもは非常に大きな問題でありましたので、この前に発言いたしましたのはもともと三角のものが丸になったという一般的な表現ではなくて、併用という面においてはもともとヨーロッパでは既にある。それが今回きちんとはっきりした。日本ではいまだにそこはないということで、単純に丸、三角の問題ではないというようなことが私の前回の発言の趣旨でございます。

○井村会長 2剤を使うというのは特許の対象として認められているわけですね。どうですか。

○相田室長 私はその点は承知しておりません。恐らく複数の薬剤の投与間隔とか、投与の量で発明の内容を規定しようというものかと思いますけれども、欧州特許庁の審決によりますと、薬の投与方法は用途発明としては認められないというのが多くの審決の結果だというふうに私どもは理解しております。

○秋元委員 前回のイギリスのタキソールとほかの薬剤の併用特許は単に新規性で否定されているのであって、投与方法が否定されたわけではないというふうに一般的には理解されています。

○相田室長 それについてコメントいたしますが、タキソールの例は一たん欧州特許庁で特許になりまして、それで異議申立てがありまして、異議申立ての審議の結果、新規性がないとされたものでございます。これは異議の決定でございまして、先例としての価値は低い。ほかに併用剤を扱った、多くと言いましても数例しかないのですが、審決がございますが、多くの審決の中では投与時間であるとか投与量によっては用途を規定することができない。したがって新規性がないんだというふうな判断をしております。

○秋元委員 また少し反論しますが、インターバルについてはヨーロッパで審決で幾つかありますが、現実にはインターバルも含めて、これは産業界ですけれども、事実既にどんどん出しております。それから、インターバルを含めない2剤の投与については既に欧州では認められております。日本では合剤という形です。

○井村会長 ここは前回でしたか、中尾参考人からもちょっと出たポイントですね。

○秋元委員 インターバルについてはまだ決まっておりません。それから、従来の審決では否定されているものもありますが、現在ではどんどん出しております。だから、将来どうなるかはまだわかりません。それで、2剤の併用同時投与については既に認められている。日本では合剤でしか認められないという状況です。

○井村会長 ほかにどうぞ。

○平田委員 先ほどの特許庁からの発言の中で、米国で成立した最後のHR3610法案の中にいわゆる医師の免責の例外規定の対象としてバイオテクノロジーという言葉がありましたね。恐らくこれからの未来のものも含めて非常に定義が難しいのかと思いますけれども、先ほど遺伝子治療とかという話もありました。法律ですから何か定義らしいものがあるはずと思いますが、どうなっているんでしょうか。

○相田室長 特許法の287 条ですが、このバイオテクノロジー・インベンションの定義はございません。全く別の条文で、103条の進歩性を規定しているところに若干定義はありますけれども、それと同じかどうか、あるいはそれを含めてどう解釈されるのかということについては明確にわかっておりません。ただ、議会の記録によりますと生物材料を使った発明ということでかなり幅広く解釈されるという記録は残っておりまして、余り射程についてははっきりしないと思います。

○井村会長 バイオテクノロジーというのは明確な定義はない……。

○平田委員 ライフサイエンスの新しい知識を使った物とか、テクノロジーというのは比較的、物と結び付いていますけれども、サイエンスの進歩との関係でも全く規定がないわけですね。

○相田室長 法律上は全く規定はありませんで、議会の記録に生物材料を使ったものを含とあります。ただ、それに限らないんだという記載もありまして、射程については必ずしもはっきりしておりません。

○小野特許庁特許技監 今の点は相田からお答えしたとおりでございますけれども、注意すべきことは生物材料が広く解釈されることでございます。平田委員が御指摘のような先進的なテクノロジーはすべて入るというのが、正しい理解ではないかと思っております。もともとバイオインダストリー協会(BIO)自体がそのような趣旨で非常に強く免責の例外を主張してきた背景には、将来的にどのように発展するかわからないバイオ技術の場合は、予期できない新しい物の開発がたくさん絡んでくるということで、そういうものが特許侵害から外されるのはおかしいという趣旨があったと思われます。ですから、むしろバイオテクノロジーの古いものからすべて入るのではないかと考えております。

○森下委員 特許庁の方にお聞きしたいんですが、審査基準改訂後の細胞培養に関する審査を17件したという8ページの図なんですけれども、この内訳として海外と日本国内とどういう状況で増えてきているかということに関して何か情報はないでしょうか。

○相田室長 左側の再生利用関連技術のグラフですと、最近のスタンスとしましては国際特許として出願された場合には国内移行猶予期間は30か月ありますなどとはっきりしませんけれども、少なくとも1999年ごろまでの出願は8割方、外国出願でございます。
 それから、右側の審査処理件数でありますけれども、17件のうち16件が外国出願でございます。

○秋元委員 平田委員の御発言を補足させていただきますと、アメリカというのは御存じのように非常にある産業について、産業政策をきちんとやっていく。それで、バイオテクノロジーのものもこの場合、医療特許に関してもそうでございますけれども、94年か95年だったかと思いますが、バイテク法案というものが別に出まして、従来アメリカでは製造法が陳腐なもの、従来のものであると特許にしないとクレームの一つひとつを解釈していた。
 ところが、バイオテクノロジーにおきましてはプロダクトが新規であればプロセスは陳腐なものであっても特許にするという特別立法が成立しております。そういうことで、バイオテクノロジーあるいはアメリカの政策に合致したというものにつきましては、知財におきましても特別な立法を講じるということでアメリカはきております。そういう意味では、バイオテクノロジーを特別に扱っているというのがアメリカのこの当時の政策で、現在も続いているというふうに私は考えております。

○井村座長 それでは、北村委員どうぞ。

○北村委員 今、森下委員からもありました特許庁の8ページのところです。拒絶12件と多いですね。言葉も今日の説明では「医療方法の特許」となっていますし、会議そのものは「医療関連行為の特許」となっていまして、ややこしいところあると思うんです。つまり、医療関連行為の中に医療行為は含まれているのかどうか。含めているということも関係してくるんだと思いますけれども、この拒絶理由の12件の中にもしも医療方法の特許あるいは医療関連行為特許というものが承認されたならば、認めることになるものがあるのか。
 あるいは、この拒絶理由の12件の中に物というものが一切含まれていない純粋の方法、あるいは投与方法といったものがあるのか、お聞かせ願いたいと思います。

○相田室長 詳細に検討したわけではありませんけれども、少なくとも特許になった5件につきましては人体の外における処理方法でございまして、人体から取り出したりとか、人体に戻すステップが含まれているものはございません。
 それから拒絶理由通知でございますが、これは通常出願しますと明細書の記載が不備だったり、あるいは出願された発明に近い従来技術があるということで拒絶理由通知が出願人の方に通知されることが多いんですけれども、請求の数がたくさんありますので全部確認しているわけではありませんが、この12件のうちで全く物が関係しないというのはなかったように思います。
 少なくとも物が関係していて、物の製造とか、それが問題になっている。そして、2、3件につきましては特許の対象とならないという拒絶理由が出ていますけれども、アメリカの出願でアメリカ流に請求の範囲を書いたために拒絶理由が発生したという事情が考えられます。

○北村委員 今までのデータをずっと見させていただいたり、いろいろな方々の御意見を賜っておりまして、医療関連行為の中に医療行為というものを含めると、最終的には手術方法の特許というところに行き着いてしまうわけですね。ですから、これは医師のみが行うような、切る、注射する、移植する、置換する、縫う、つなぐといった医療行為に関してはやはり医師を免責するのではなくて、アメリカは全体を包含してつくりましたから医師免責をつくっているわけですけれども、ここは医師免責ではなくて医療行為というものはやはり特許にしない。
 それより上のもの、あるいは下のものかもしれませんが、医療関連行為と医療行為と、医師の行う行為とは明確にやはり分けていただかないと、その時々で「医療関連技術」という名前と「医療方法」という名前といろいろになってきているんです。私はこれをちゃんと整理していただかないと、いわゆる医師の行う医療行為というものと、そこら辺が一緒くたになっていると皆、意見が交錯しているような気もするんです。

○井村会長 今のポイントはこれからまとめをしていく上に非常に重要でありますから、また改めていろいろ議論をいただきたいと思いますが、今日はアメリカの今の特許の問題と、それから利益相反、あるいは医療費の問題についてできるだけ御議論をいただきたい。私の個人の考えですけれども、参考人の方をお願いするのは今日ぐらいで一応最後にして、ある程度皆さんの意見のまとめをしておいて、次回からこの会議としてどういうふうにまとめるのかということを議論しようと思います。
 だから、今、北村委員のおっしゃったことはそういう意味でまとめていく上に非常に大事な問題だろうと思いますが、今すぐにこれをやらないで、せっかく参考人にも来ていただいていますからそうした点の議論をしたい。


○北村委員 先走りまして申し訳ございません。

○片山委員 平井先生にお伺いしたいんですが、この委員会で問題になった利益相反というのは臨床試験をやるかやらないかというような場面よりは、どちらかというともう少しプリミティブな話で、それは例えば医療機関の関係者が特許を出願して、あるいはその関連でビジネスを自分で起こして、例えば医療器具を製造し始めたというような事例において、もしそういうことが頻繁に起こるようになると、その医療機関ではその機械ばかり使うようになりはしまいか。基本的にはそれは具合の悪いことだと思うけれども、そうなりはしないだろうかという点が問題として提起をされています。
 アメリカでそういう切り口で物を見たときに、統一されてはいないようですけれども、例えばどの大学のどういうものではどういう解決の仕方をされるんだろうかということについて何かお考えがあればお聞きしたいんですけれども。

○平井参考人 今、御指摘があったような事例というのはまさしく利益相反の問題だと思うんです。研究者御自身の個人としての利益相反か、あるいは医療機関、組織としての利益相反か、どちらかを招来する可能性がある問題です。ですから、理想的にはその組織において利益相反委員会を設けてきちんとそういうことをハンドリングする。あるいは、いろいろな形でそういう利益相反問題をコントロールできるような仕組みづくりをしていくことが重要だと思います。
 アメリカではもちろんそういうことをやっておりますし、日本でもやっておりますし、私が関与した案件などでも、そういう物品の購入とか、あるいはライセンスを適正にするために、例えば価格が適切であるかとか、購入の期間が適切であるかとか、あるいは他の業者をちゃんと検討しているかどうか。そういうことをきちんとヒアリングによって判断して、それで適切な形で行っていただく。もしバイアスのおそれがあると思われたら、そこは修正をお願いするというようなことはしていくと思います。それはアメリカでも同様です。

○片山委員 もう一つ出た問題として、これはなかなか難しい問題かもしれないんですが、ある医療方法を発明をして、それを率先をしてやるという場合に、機器の売買の利益というようなものとは離れて、その医療方法がいいに決まっているではないか。この医療方法を是非とも広げたい。したがって、自分のところの医療機関は必ずその医療方法でやるんだと、そういうようなベクトルが働くことは十分あり得る。これは特許制度のあるなしにかかわらず働く話だろうと思うんです。そういうものについて、それも広い意味で言うと利益相反であるから、その点についてアメリカではどんなチェックをしている、あるいはしていないということは何か御存じでしょうか。

○平井参考人 そういう問題は基本的にインテグリティの問題に絡むんですね。個人の尊厳というか、プロフェッショナルとしてのインテグリティという問題ですね。だから、研究者であろうが、弁護士であろうが、大学の教官であろうが、皆さんインテグリティをお持ちである。したがって、自分の見出した技術はもちろん信じておると思いますけれども、そのインテグリティをどうやって守っていくかということは一番大事だと思うんです。それがしっかりしてくれば、今のようなケースでも基本的には問題はないはずだと思うんです。
 ただ、そのインテグリティをどうやって国民とか社会に見える形に持っていくかというので、一枚仕組みが必要になるわけです。そこにIRBであり、利益相反委員会であり、あるいは人事院の検討であり、こういう仕組みが一枚絡んでいくわけですね。そこが現在求められているところで、アメリカでも日本でもそこをどういうふうにしたら一番よくできるかということを考えているところだと思うんです。

○澤委員 インテグリティですとか、コンフィデンスとかという言葉がよく出てくるのは、ジョンズポプキンスみたいな私学の大学ではそうですね。それで、先生が今日お示しになった州立の、例えばUCLAなどの場合は、いずれにせよ最初に公務員倫理法が大前提にくるわけです。それがまずあって、その後、大学の中でのポリシーを決定するという順番なんですけれども、医療に関してというのは先生も先ほどおっしゃっていましたが、やはり一つの医療技術に対してそれを施行する医師と、それから被施行者としての患者さんがおられるわけですね。そういう点で、例えば連邦の資金などを得て行われる医学研究などに関しては非常に情報公開を徹底させるということが当たり前のように行われている。むしろその辺を聞きたいんですけれども、DHSとかFDAの文章の前に利益相反に至る部分までのものすごいNIHの徹底したコントロールぶりがあるのが実際なんじゃないでしょうか。余り関係ないでしょうか。

○平井参考人 まず国家公務員倫理法の問題を言いますと、向こうは州立の公務員の方が多いんですけれども、やはり倫理法の問題は非常に重要で、そこはボトムラインで物事が決まっております。それで、基本的にそのボトムラインを超えてそのグレーゾーンをどういうふうに扱うかということが利益相反の問題です。日本でも同じです。やはり国家公務員倫理法はございますが、そこはもちろんやってはいけない。それはわかっているわけです。しかし、そこに違反していないんだけれども、例えばこういう場合はどうしましょうかというのが利益相反の上で問題になるわけです。
 NIHやFDAは、確かにいろいろな意味で自らの公的な資金が適正に運用されるように配慮はしております。例えば、論文にどういう記載をするかとか、報告書にどういう記載をするか、あるいはインフォームドコンセントをどうするか。日本でもそういう規制は行われていますし、NIHと日本の規制を比べて本当に同じかどうかはあると思うんですが、例えば臨床試験の倫理規則もそうですし、いろいろな倫理委員会が各組織でちゃんと頑張っておりますし、IRBもございますし、そういう意味で日本でもある程度はされていると思うんです。
 だから、要するに階層構造で一番下に法律があって禁止していて、それから国研とか省庁のある程度のガイドライン、指導があって、更に利益相反の自主規制というか、皆で考えようという部分があってというような構造になっているのかと思います。

○澤委員 もう一点よろしいですか。今、最初にプリミティブなお話をなさって、工学系の研究の場合と、それからいわゆる被施行者である患者さんがいる医療の研究の場合というものは、アメリカで実際に基本的に差はないんですか。

○平井参考人 差がないかと言えば、差はある可能性があると思います。言い方が微妙で申し訳ないんですが、臨床研究とか、あるいは患者さんが絡むケースで利益相反を少し厳しくとらえようとしている大学はございます。そういう意味で差はあると思います。
 ただ、先ほどスタンフォードの例を示しましたが、決してすべてを禁じるわけではなくて、やはり利益相反委員会で考えていこうというポリシーを取っている大学では、基本的なスタンスは通常の利益相反と同じか、近いと思うんです。もちろんその中で若干程度が違うというのはあるかもしれませんけれども、少し厳し目に考えようかなとか、それはあると思います。

○森下委員 池田先生にお伺いしたいと思います。初めて聞いて面白い話だったんですが、最初の医療費の増加の要因のところで、この中で実際に今回の場合ですと医薬品なり医療用具という形のことも絡むと思うんですが、医療用具そのものの費用というのは増えてきているのか。それとも、そこは抑制された形で介護保険などの部分がどんどん増えているというのが国民医療費に貢献しているのかという点が1つ。
 もう一点は、実際に人口は高齢化しますから自然増の部分というのがこの中にも多少出ていましたけれども、費用誘発型の技術革新だけではなくて人口構造そのものから自然増がくる。それも調整した場合というのは、実際上は増えているのか。それとも、それを貢献しても個々の事例で増えてきているのか。その辺はどうなんでしょうか。

○池田参考人 大変難しい御質問ですが、例えば薬の場合ですと非常に技術革新が早い分野であって、新薬というのが次々登場しているとなりますと、その統計資料などから分析いたしますと日本の場合は特に新薬の方へのシフトが非常に大きい。それはもちろん患者さんのためでもあるけれども、経済的な要因もいろいろこれまで指摘されてきたわけですが、そういう意味では新規医療技術の普及浸透というのは日本の場合は国民皆保険という制度もありますので、諸外国に比べますとむしろ早い方である。
 ただ、それが医療費にどれだけの影響を与えているかといいますと、いわゆる診療報酬及び薬価というものが基本的には2年に1回改訂され、そちらで調整がされているので、本来の技術の価値とか、あるいは薬の価値が適切に反映されているかどうかについての議論はいろいろあるんですが、全体として見ますと、それによって新規のものが入ってきたからといって大きく医療費がコントロールがつかない状態で伸びているという形にはなっていない。恐らくこれは国民皆保険の下で公定価格による統制がなされているということによるんだと思います。

○森下委員 たしか世界の中で市場を見た場合、日本の市場がパイとしてはどんどん小さくなっていましたね。そういう意味では医療費としてはかなり総額が抑えられて、中でいわゆるジェネリックが増えたり、あるいは新薬の部分の予算が付いたりというので、バランスが変化していてトータルは一緒だという認識を持っていたんですけれども、基本的にはそういう認識でよろしいんでしょうか。

○池田参考人 医療費の対国民所得費の比率が近年、特に平成元年くらいから大きく伸びておりますが、医療費の増加の程度というものはむしろ鈍化している。これは一部介護保険が入ってそちらに慢性的な医療費の一部がシフトしたという見掛け上のものもあるんですが、医療費の伸びというものがいわゆる公定価格によって、これまでは上手にコントロールされてきたという部分があるのではないかと思います。
 ただ、もう一つの要素としては費用誘発型の技術でなく、むしろ根治的な技術というものも近年導入されてきておりますので、それによる効果ももちろんあるわけですが、純粋に市場が医療費あるいは単価を決めているのではなくて、国による公定価格による操作があるので、その部分を分けて考えるというのは非常に難しいと思います。数年前に我々が行った研究ですと、薬に関しては少なくとも新規のものにかなり早いスピードで置き換わっているけれども、既存の薬はどんどん値段が引き下げられ、新規のものも2年すれば価格が改訂されていくので、そう大きな薬剤費あるいは医療費全体としての増加にはつながっていないという結果でした。
 広井先生の方で何か補足いただければと思います。

○広井委員 今のことに関しては、やはり最近の医療費の増加要因として特に大きいのは高齢化関係といいますか、技術革新や医薬品関係よりは高齢化に伴う医療費増の部分が相対的には大きいということが恐らく一般的に言えるかと思います。

○井村会長 この表には介護費用は入っていないんですね。これは医療費だけですね。

○広井委員 そうです。
 この機会に質問も合わせてさせていただきますと、池田先生のお話は私も大変印象深く伺ったんですが、池田先生のお話は基本的には医療技術革新と医療費との関係ということで、それは特許という手法によって促進するかどうかはまたちょっと別の側面があるかと思うんです。つまり、技術革新を促進するというのはいろいろな手法があるわけで、基礎研究に対する公的な投資であるとか、その手法の一つとして特許という手法があるわけですが、その点はいかがなものでしょうか。
 つまり、技術革新と医療費の関係という意味では全く共鳴するんですけれども、それを特許という手法ですることのもたらす意味といいますか、例えばライセンス料などの問題でありますとか、特許という手法が医療費にどう影響を及ぼすかという点が1点です。
 それからもう一つは、池田先生が今日4つほど出された例は、大きく言うと大体いずれも医療費を削減する方向の例だったと思うんですが、最後のページのまとめのところでは医療費への影響は一概には言えないということで、割と慎重なといいますか、両方あるというような書き方をされて、私もこの結論は全く同感なんですけれども、あえてこういうふうに書かれたのはどういう点を考慮しているのかという点をもう少しお願いします。

○池田参考人 まず第1点目でございますが、こうした医療方法特許を始めとする今回議論されているようなさまざまなライセンス関係により、先端医療技術の開発が促進するか否かという問題につきましては、私なりにヒアリング調査をいたしまして、特許制度が導入されていなければ開発できない、あるいは特許制度が整備されていないがために今、開発が非常に止まっているとか困難な状況にあるという情報を収集しておりましたが、少なくともそれらの中にはいわゆる再生医療のような先生の御本の中にある純粋技術、つまり、根治的な治療であり、これを導入することによって患者さんの完全な回復が見込まれるというようなものがかなり含まれておりましたので、基本的には特許制度により先端医療技術、特に費用削減につながる純粋技術の開発が進むであろうという前提でお話をさせていただきました。ただ、この前提が変わってきますと結果も変わってまいりますので、その辺りの先のことの予測というのはなかなか難しいわけであって、こうした純粋技術というのは今まで非常に古典的な例は幾つか知られておりますけれども、例えばH2ブロッカーが出て手術が減ったとかあるんですが、余りに古典的なので、シミュレーションとして適当かどうかという問題がございましたので、その辺りは今後先生が御指摘のように更に検証していく必要があると思います。
 2点目でございますけれども、技術がまず多様であるということ、すべてが費用削減につながる技術でないし、もし根治的な技術であったとしても、例えばがんがすべて治るとなりますと患者さんは長生きするわけですから、そうした意味での費用が含まれてくることが予想されます。例えば、我々は糖尿病の長期予後予測のシミュレーションソフトなどを開発したことがあるんですが、糖尿病患者さんが全員治癒しますとむしろ長生きして一般的な医療費の方が増えてくるんですね。必ず将来何かの病気で亡くなるわけですから、そのときの医療費というのは絶対出てくるわけです。
 そういうわけで、その辺りも計算に含めていかないといけないので、そういう意味では医療費への影響というのは一概には言えない。患者さんの健康結果が上がれば、それによる高齢化の影響による医療費も増えてくる。
 また、もう一つはいわゆる今後の医療政策にも影響されるという側面があるわけで、こうした画期的な技術には思い切っていい公定価格を付けるという考え方もあるし、あくまでも費用削減でいくというやり方もありますし、これ次第で実は医療費全体に対するインパクトは変わってくると思います。
 例えばイギリスのようなやり方で、ある一定の費用対効果を満たさないものは原則として保険から外すとか、いわゆる国営医療から外すというような非常に思い切った考え方もあるにはあると思うんですが、今の日本ではそういう考え方はなじまないと思っておりますので、そういう意味ではいわゆる費用対効果の問題とバジェットインパクト、財源への影響というのは少し分けて考える必要があるのではないかと思っております。

○広井委員 今のことに関して、ライセンス料などで逆に特許という手法がそれに伴うコストを上げるということがこの会議でも何回か出ているんですけれども、その点は既存の調査研究とかデータみたいなものはありますか。

○池田参考人 特にアメリカ等でこのライセンス料の問題等が指摘されているかと思うんですが、日本といわゆる医療費の支払いの仕組みは違っておりますので、前回澤先生の方から御提示になった自由診療の部分でもしこういうものが入ってきますと、いわゆる患者としての支出が増えていくということは私も同感です。
 しかしながら、この技術が幅広く普及していくという、いわゆる保険診療にこれが取り入れられてというところになりますと、日本の場合には基本的には公定価格の下で費用が決まってきておりますので、そのライセンス料の影響を受けてその価格が膨大な値段になっていくということは、今の医療政策の状況では考えにくいのではないかと思います。
 例えば、特定療養費等の考え方が大きく今後変わっていかない限りは、保険診療の範囲内ではライセンス料の影響で医療費に対する大変なインパクトがあるということは考えにくいのではないかとは考えています。

○井村会長 この前の北島さんのお話で、例えば内視鏡で手術をする。今日は大腸がんの話がありましたが、胃がんを取っていく。そのときに、袋に入れて取るというアイデアが特許になるのではないか。これはアメリカでは現になっているんだろうと思うんです。その場合に、結局それが方法特許になると、その手術方法そのものに将来ライセンス料を払うのではなくて、結局その物の開発、それからうまく袋に入れて取るような技術開発が進むということで、それは特許の対象になって企業がもうけるかもしれませんけれども、その方法そのものではそれほど医療費が上がらないのではないかというふうに私は理解していたんです。そういう方法特許で、大腸がんを内視鏡で取るときにどういう方法特許があり得るか、何かお考えがありましたらお願いします。

○池田参考人 なかなか難しいんですが、今の保険点数の仕組みからいきますと、技術料という形で手術の費用というものが幾らと決まっております。その中で、先ほどのような技術を使った場合も含めて幾らという形での設定がなされるといたしますと、別途ライセンス料をだれかがだれかに請求するという形にはならない可能性があります。それで、例えば公定価格で決められた費用の中でライセンス料まで負担し切れないということになりますと、患者さんには気の毒な結果になることもありますが、その医療技術は必ずしも広くは普及しない、あるいはそうしたものを効率的に安上がりに行える医療機関のみが採用していくということが起きる可能性があります。
 そうした患者さんへの不利益につながっていくような価格設定がなされたり、あるいは一部の医療機関がそういった技術を独占したりというものについては十分な対応が必要とは考えております。ただ、医療費全体を大きく押し上げるかといいますと、今の日本における医療の物の値段の決め方からいきますと、大きな影響はないのではないかというふうに予想しております。

○井村会長 それでは田村委員、それから片山委員にお願いします。

○田村委員 今の池田さんの御意見の前提条件の確認なのですが、今、結果的にそれほど影響ないだろうとおっしゃったときの前提で、ライセンス料とおっしゃっていたのですが、それは、医療特許が認められた場合に、個々の医師の手術法に特許の効力が及んだとしても、余り影響はないだろうというお話と理解してよろしいですか。

○池田参考人 医師のものは免責になるという前提でお話をしておりました。

○片山委員 我々はその辺は素人なので教えていただきたいんですが、そういう根治医療の方法、患者に非常に大きな利益をもたらす方法、前回御説明いただいた開腹せずに手術して袋に入れて取り出すというような方法も、根治という意味からは違うのかもしれませんが、非常に大きな利益をもたらすという意味では同じだと思いますが、そういうものの値段の付け方としてこんな理解でよろしいんですか。
 それまで、ないものがある日突然できてくるわけですから、それについてある公定価格を付けるとすると、一体幾らが適正なんだという議論になり、価格の付け方は非常に難しいですね。そうすると、これまでそれに対してどういうような治療方法があって、それについてはどういうような結果として公定価格を付けていたのか。それを参考にして、それに近いような値段をとりあえずは付ける。
 そうすると、逆にいいますとそれにかける手間からみると非常に高い値段、これまでは不効率な方法であって非常に高くついていたとすると、新しい方法についても非常に高い値段になる可能性があるのではないかと想像したんです。
 そういう高い値段がついたものは、今日の御説明ですとそれはある程度そういうふうにつくかもしれないけれども、何年かすれば日本の制度では保険薬価の改訂でそれがどんどん下がってきて、長期的に国民経済の目から見れば相対としては低いところに落ち着くのではないか。そういうような考え方でよろしいのでしょうか。

○池田参考人 公定価格の決め方は、薬の場合、材料の場合、あるいは技術の場合とそれぞれ考え方が違うように聞いております。薬の場合ですと、既存に似たような薬があった場合には類似薬効比較という方法で、その既存薬とほぼ同じだけの1日当たりの値段がつく。ただ、余り新規性のないものについては安くなっていくというようなこともあるようなんですが、そうした御指摘のような方法がベースになっていると思います。
 ただ、最初に出てきた薬というのは自動的に市場の価格を反映した形でどんどん下げられてきておりますので、それに比較して同等の値段がつくということは結局は割と安い値段に落ち着くというようなことで、2番手、3番手の薬についてはそのように考えていいのではないかと思います。
 一方で、従来に似たような既存の薬がないという場合には原価計算方式という方法が今は使われておりまして、原価の積上げでやっております。こちらについても非常に画期的な薬で、患者さんが全員治ってしまって医療費が非常に安くつながるものであっても原価をベースにして値段がついているので、むしろこれは安く算定されているということもあると聞いています。材料の場合などもやはり既存のもの、あるいは同じグループのものを同様の値段にしていくという考え方が今、基本になっているということであります。
 ただし、この医療方法特許等が関連してくる、特に新規性の高い、あるいは根治的な技術あるいは純粋技術に関しましては、従来のこうした値段の決め方ではさまざまな矛盾といいますか、事態を反映しないような価格設定になっていくのではないかと私自身は危惧しておりまして、先ほどお示ししたような費用対効果の考え方を取り入れてとにかく画期的ないいもの、そして将来の医療費を安くするようなものについては思い切った高い値段を付けるような政策にしていかないと、逆にそのような技術が育ってこない。そのような技術の開発を促進するための政策にはなっていかないのではないかと考えております。

○上田委員 先生のおつくりになった資料の第1ページでGDP比のグラフが急上昇しているわけですが、これは全部保険診療のデータからこういうグラフをつくられるんですか。私はよくわからないんですけれども、全体の医療費という計算をするときに、自由診療の部分というのはこういう保険診療の部分には到底影響を与え得ないような非常に小さなインパクトしかないものなんでしょうか。そもそもそういうものを把握されているんでしょうか。

○池田参考人 OECDで各国同じような範囲での医療費の国際比較のデータを作成しておりまして、そちらの中では日本でも自由診療部分、あるいは薬屋さんで売っている薬の費用なども推計したものが出ております。自由診療部分につきましては必ずしも大きな部分は占めていないと理解しておりますが、広井先生の方がお詳しいかと思います。

○広井委員 資料にあります医療費の実データは日本の厚生労働省の発表している国民医療費のデータで、池田先生の言われた対GDP比を含む医療費のデータはOECDのということですね。それで、自由診療の部分というのは、私が以前に推計したところでは、大体公表されている国民医療費の10から15%とか、それくらいのイメージです。今、言われたOTCであるとか、差額ベッドであるとか、最近問題になった医師への謝礼とか、そういうものを含めて、それは把握が難しいですけれども、今の時点でそう大きくないと言えるのかどうかもあれですけれども、その程度ということです。

○上田委員 先生のお考えで、医療費全体が上昇していくということに関しては絶対額なんだというふうなとらえ方をしてこういったものは論理を組み立てていくんですか。QOLを改善していくということが国民が望んでいることですよね。

○池田参考人 今回の議論の枠を超えてしまうかもしれませんが、例えば橋を架けるのに公共工事に幾らかけてどれだけの経済効果があるという問題とこの医療費の問題というのは実は同列で考えられるものでありまして、医療により追加のお金をかけたときに得られる見返りの健康結果、あるいは便益というものと、ほかの部分に予算を使うことと、どちらの方が国民にとって価値があるかという判断をして医療費の範囲というのは決めるべきであって、これが上がっていくからけしからぬということではないと思います。
 それからもう一つ、このグラフで対国民所得費が急激に上がっているのは医療費の伸び方が急に最近増えているわけではなくて、それを支える経済基調の低迷が原因になっているわけなので、これを見て急に最近医療費が上がっていてけしからぬというとらえ方をする一般の方もいるんですが、そうではないということです。

○井村会長 GDPが減ったということですね。

○池田参考人 そうですね。そちらの方の問題が大きいのではないかと思います。

○井村会長 ほかにどうぞ。

○澤委員 薬価の中の医療特許のライセンス料というのはアメリカでも、余り大した額ではないですね。要は、当然医師は免責されていますので、むしろ間接特許でさまざまな新しい技術をつくり出すときに訴訟対策費用とかがものすごくかさむ。おっしゃるようにアメリカの医療の支払いのシステムと日本と全く違いますから一概には言えないんですが、その部分がアメリカの医療費の薬等が高くなる一つの理由にはなっていますね。ライセンス料そのものはすごくネグリジブルかと向こうの方に聞くと、大したことはないんだということは何回も聞きます。

○井村会長 平井参考人から何かありますか。

○平井参考人 訴訟のことについてさまざまな要因がございますので、アメリカと日本はそもそも訴訟の数や状況はいろいろ違いますし、どういうふうに私も言っていいか難しいのですが、訴訟はある意味でやむを得ない場合に起きる事例でして、通常企業はなるべく訴訟を回避するように回避するように動いていますから、普通であれば最初にパテントのマップをつくって研究開発を行う。あるいは、研究中に常に他社の特許を気をつけておく。それで、もし仮に抵触があった場合にもライセンスでそれを解決するとか、さまざまな手を打っていきますので、それほど訴訟というのは、これは特異事例ですので、そこに余り重きを置くとなかなか議論が難しくなるかという気がいたします。

○井村会長 ほかに何かございますか。

○上田厚生労働省技術総括審議官 先ほどの池田先生の薬価制度についての御説明で、基本的には先生の御指摘のとおりなんですが、2点補足説明させていただきますと、類似薬効比較方式の場合ですと既存薬よりも優れているものについては補正加算を付けるという方式をとられているということ。それから、原価計算方式の場合ですと安いというお話はございましたが、そうではなくて、特に輸入品などの場合は逆に高いというようなこともあるということで補足させていただきます。

○池田参考人 早口で、しかも時間が限られていたもので不十分で申し訳ありませんでした。重要なものについては加算の方式があるということを言い忘れておりました。
 あとは原価計算方式でございますが、これが必ずしも安くならないというのは、つまり海外薬価に影響されて、それが高く決まってくるということも一部、問題点として指摘されているようにも思うんですが、それはそういう理解でよろしいですか。

○厚生労働省 今の原価計算方式の点につきましては中央社会保険医療協議会、中医協における議論の中での指摘といたしましては、特に輸入品の場合に原価で提出していただく資料の中で、まさに輸入の原価という部分につきましては内訳が出てこない。本社は契約書1枚で、日本にはこれで出しますという一筆だけでして、その内訳はわからないということになっておりまして、結果としてどうも高いのではないかという批判が支払い側などからあるという部分が大きな議論になっているところでございます。
 その上で、外国薬価調整等についても種々の議論がございますが、根本はその辺りに不満があるということでございます。

○池田参考人 私の発言が不十分で失礼いたしました。
 私が原価計算方式で安く算定される場合があるのではないかと申し上げたのは、実はある免疫抑制剤についてこうした経済評価を試みました。その薬は結果としては原価計算方式で算定されたんですが、仮に市場が働いていたとした場合、つまり仮想市場法という方法で薬の価値を求めたところ、それで求められた値よりもかなり安い薬価が原価計算方式で付いたので、安くなってしまう事例もあるのかなということで発言させていただきました。

○森下委員 直接関係ないんですが、原価算定方式でいくとやはり画期的な医療はかなり安くなるんですね。

○井村会長 技術料とかアイデア料が入らないからですね。

○森下委員 そうなんです。一応、かなり限られた利益が必ず乗る仕組みに今はなっていますね。そうしますと、新しいものの場合、売っていくときにかなり安全性を含めて担保の部分というものが出てきますので、通常以上に費用がかかってきて現状の方法ですと反映されないような形になっていると思うので、是非これから日本でいろいろ新しい画期的なものが出ますので、その辺も少し考えていただけたらと思います。この委員会と関係ないので申し訳ないんですけれども。

○北村委員 平井先生にお聞きしたいんですけれども、前回私は欠席したんですが、議事録を読ませていただきますと、特許の間接侵害という言葉が何度か出てきているんですが、アメリカでそういうものがあるのか。法的に見て特許の間接侵害とは一体、何で、侵害したと言われるものはどういう責任を取ることになるのか。間接侵害という言葉が書いてあるんですけれども、間接侵害というのは何なんですか。

○平井参考人 日本とアメリカはかつてはかなり違っていたんです。今は日本は法改正がありましたので大分近付いたんですが、アメリカにおける間接侵害の発想というのは簡単に言うと侵害者を助けているということなわけですね。

○北村委員 医師の免責と関連したものとして位置付けられているわけですね。いわゆる医療行為における特許に対して医師がそれを行う場合、あるいは病院内で行う場合には免責されていると。

○平井参考人 医師は直接免責されていますので、間接侵害は例えばある医療方法の特許があるとすれば、それに用いるための何か物をつくる、機械をつくる、そういうようなことですね。だから、間接的にある特許方法を侵害しているというのが間接侵害なんです。従来は日本は割と厳しくて、その物に用いるような、だからある方法の特許があればそれだけに使うような機械を間接侵害品としてこれはやめましょうということだったんですが、若干それを広げて少し汎用性を持たせるようにはしております。
 それで、アメリカはもともと少し広くて、それだけに用いるものではなくて、割と広くそれを促すような効果があるような場合にはそれも間接侵害として認めることがあったんです。判例上、若干広くなったんです。

○北村委員 そうしたら、我が国でいろいろな名前で呼ばれていてちょっと私は不愉快だと言いましたけれども、医療方法の特許というものができた場合には間接侵害というものに対応するものも決めなくてはならないのでしょうか。

○平井参考人 決めなくてはならないと言うかどうかはあれですけれども、もともとの本体がもし免責になれば、つまり医療方法を実施する者が免責になれば、当然ですが、それを間接的に侵害する者に対して責任をとろう。何らかの権利行使をしたいということはあると思うんです。
 だから、さっき御指摘がありましたけれども、例えば袋を使って手術をするということがあれば、それに用いるような特殊な袋、普通の袋ではなくて縛り方がちょっと違うとか、それ自体では特許は取れないんだけれども、その手術の方法に使える袋として非常に有効なものがあればそれをつくっていく。それで、ほかの権利がないものがそれをつくって売れば、当然それは抑えにいきたいということはあると思います。

○北村委員 やはり対応として考える必要も出てくるということでよろしいですね。

○平井参考人 難しいですけれども、医療方法の特許の実施の過程の中でそういう間接侵害者を訴えるというケースは出てくると思います。

○小野特許技監 本件は田村先生の方が詳しいと思いますけれども、私の方で少し補足させていただきますと、特にアメリカでは、特許化された医療方法を実施した場合に、先ほどお話がありましたように、医療方法で使う器具とか薬剤などを提供する者は、その方法の実施を助けているということで、いわゆる間接侵害を構成していると考え方がございます。
 ただ、アメリカの場合はあくまでも現実の侵害があって初めて間接侵害が成立するというのが基本的な考え方でございますので、先ほど相田が説明しましたように、現在は施行されているHR3610法案はもともと医療方法を医者が実施することは侵害に相当するのだけれども、差止請求や損害賠償請求はできないという、権利行使の面を免責にしているわけでございます。
 HR3610法案の前に提出され廃案になったS1334法案のように、医師が医療方法を行った場合には侵害そのものに相当しないとしてしまいますと、もともといわゆる直接侵害がないので間接侵害もないことになります。これでは結局、何も中身のない、実質上の意味がない特許になってしまうので廃案になったということでございます。
 それでは、日本の場合はどうかといいますと、先ほど平井先生からご説明がございましたように、従前はいわゆるその方法にのみ使える物という非常に狭い解釈でしたが、これではソフトウェア関連発明の適切な救済が図れないといういろいろな問題がございましたので、その方法以外に使えそうな中用品にも間接侵害を認めるよう救済範囲を広げております。
 ただ、その場合に直接侵害、いわゆる現実の侵害があって初めて間接侵害に問われるのか、そうではなく直接侵害がなくても間接侵害が成立するのかという点は、実は学会の中でもどうも意見が割れているということでございますので、実質上、間接侵害の考え方が侵害訴訟の場でどのように判断されるかを予測することは学者の方の間でも難しいということは聞いております。それはむしろ田村先生の方がお詳しいかと思います。


○片山委員 今の点ですが、ここで議論をしているのはまさにそういう間接侵害者に対して、もし医療方法の特許を認めた場合に追及ができないということでは意味が全くなくなってしまうので、これは前提としてはそういう間接侵害者に対して損害賠償はできるんだ、あるいは差止め請求ができるんだという前提で考えていかなければいけないのではないでしょうか。ただし、医師は免責というところは恐らくコンセンサスがあるんだろうと思うんですが。

○平田委員 今の点で特許庁にお聞きしたんですけれども、アメリカで間接侵害というのは、医療方法の直接侵害で医者が免責されるようなケースで実際にどういう事例があるんですか。

○小野特許技監 先ほど相田が御説明しましたように、96年にこの法律がアメリカでできておりますけれども、具体的に医師免責が伴う事例で訴訟になったというものは我々の見ている範囲ではまだ見つからないということでございます。
 おそらくその背景には、もともと白内障の手術方法がきっかけでこのような法律ができたわけでございますが、一般にはそもそもお医者さんを訴えるということはしないだろうという背景が多分あって、現実にはそういう形の訴訟はまだ出てきていないのだと思います。
 法律はできたのですが、実は現行の96年の法律は、バイオテクノロジー特許が除かれています。それから、物の発明、用途の発明、例えば医薬の投与方法も、全部免責にはなってございません。ですから、実情は法改正前のままですから、医師の方は特許侵害に気をつけているということです。唯一除かれているのは先ほど北村先生からお話がありました純粋な目の手術方法などになります。純粋な医療方法であれば、明らかに特許は侵害しているけれども、医師は免責であるということで、医師を訴えるということは恐らく起こらないし、それ以外の場合はやはり特許権があるという前提にたって、皆さんは多分お仕事をされているのではないかと私どもは理解しております。

○井村会長 この問題はいずれ、どの範囲に特許を認めるかによって変わってきますので、また改めて議論が必要だと思います。
 では、簡単にお願いします。

○見城委員 今のHR3610法案のところなんですが、どうしても言葉のあやというか、同じことを言っているようで事実扱いが違っている部分のように私には受け取れるので、ここをもう一度だけお願いします。
 6ページのポツの2番目ですね。「しかし、医療関係者や医療機関が医療方法を実施して特許侵害したとしても、特許権者は権利行使(差止めや損害賠償を請求)できない」とあって、これはわかるんです。それで、その次のポツの3の(2)の「医薬品の使用方法の特許」は医療関係者や医療機関に対して特許権者は権利行使できるとつながるわけだと思いますので、私の頭が混乱するんですが。

○小野特許技監 一般的にはこの資料に書いてございますように、医師はいわゆる免責になっているのですが、その対象自体がバイオテクノロジー、例えば森下先生の遺伝子治療とか、そういうものに関しては医師や医療機関を含む医療関係者であっても免責にはならないのです。すなわち権利行使ができるということになります。

○見城委員 では、ポツの3の1も2もバイオテクノロジーに関してということですか。

○小野特許技監 そうことではございません。3がバイオテクノロジーですし、医薬品の使用方法、投与方法は前からいろいろ議論されておりますが、そういうものも実は免責にはなっておりません。それから、もちろん特許になっている物そのものを使用した場合、当然免責にはなりません。
 ですから、逆に免責になっているものは本当の純粋な手術方法みたいなものだけです。バイオテクノロジーを含むようなものは免責されず、純粋な医療方法以外はどうも権利行使できると思われます。非常にわかりにくいことでございますが。

○見城委員 言葉のあやというか、わかりづらいのでもう少し一言で言ってくれたらと思いますが。

○小野特許技監 向こうの法律ですので。

○見城委員 ただ、今回日本が取り入れようとしているところにも先ほどから北村先生もおっしゃっているように、大きな範囲でこれを進めていって、しかしその中でどの行為がその行為なのかという大変重要な問題がありまして、もしこのような形での法律なり法案になるようでしたら、これは問題だと思いまして確認させていただきました。

○井村会長 まだまだ御意見があろうかと思いますが、予定の時間を過ぎましたので、今日は1つは利益相反の問題で、これは特許ももちろん絡みますけれども、それ以上にこれから産学連携とか、ベンチャーとか、いろいろなことが出てきますから、大学等の機関がそれぞれきちんとした利益相反の在り方を決める必要がある。それから、委員会はまだ余り日本では行われていませんか。

○平井参考人 これからというところです。

○井村会長 日本ではまだ利益相反委員会というのは大学には余り置かれていませんか。

○文部科学省 できつつあります。

○井村会長 これからそういう形で利益相反の問題は解決していくのではないかと思います。もちろん非常に複雑な問題はいろいろあると思いますけれども、だんだんといい方向にいくのではないかと思います。
 それから医療費の問題ですが、今日は池田先生から、私もこういう話を初めて聞いて非常に興味がありました。もちろん一概にいい技術が出たから医療費が減るというわけではなくて、いろいろな場合があるということですけれども、やはり短期的な視点だけではなくてもう少し長期的に、しかも健康の在り方とか、クオリティ・オブ・ライフとか、そういうものまで見ながら考えていく必要があるだろうということではなかったかと思います。 それから、今日は北村先生からかなり早くに指摘された問題は、これからの課題として議論をしないといけないと思うんですが、私といたしましてはいろいろ提起された問題につきまして専門家の意見を何回かにわたって伺いましたから、これはこの辺でやめまして、あとは委員会としてどういう範囲まで医療方法に特許をかけ得るのかということの議論に入りたいと思っておりますが、それでよろしゅうございますか。まだもっとこんなことを調べろということがなければ、そういう形でできるだけ早くこの委員会として結論に持っていきたいと思っております。

○見城委員 間に合わないといけませんので、今いろいろと出されている御説明をいただきました法案、それから出ているものというのは、どちらかと言えばというか、はっきりと医療者側、製薬会社側の方だと思うんですが、受ける側を守るという法律とかは定められているんでしょうか。今、全部御説明いただきましたのはお医者様の側であり、医薬品業界の利益とか今後の進展に向けてそれをどう守っていくかということでしたが。

○井村会長 平井先生はどうお考えですか。

○平井参考人 私には少し荷が重いことかと思うんですが。

○見城委員 これだけ医学、医療に関係する方々が進展していくために、また業界が発展するためにそれを守っていこうというものがあるならば、同時に保健治療の医療費だけの問題で患者側を語られるのではなくて、同時にどういう形でそういう中で患者側、国民の方は守られていくのか、また権利が存在していくのかという部分も、他国のものもあれば御説明も入れていただき、日本のことでももう少し御説明いただいて、今後決めていく中にどう国民が医療を受ける権利というものを盛り込んでいけるかということも含めて検討させていただきたいと思います。

○井村会長 これについては特に厚生労働省から何かありますか。
 これは極めて基本的な権利なんですね。だから、それだけが法律になっているということはないのではないかと思うんですが。

○見城委員 この議論を通して守られていると思って進んでしまいますと、新たな法律が定められたことによって実は患者の側、国民の側がその枠外にあったということがあっては大変だと思うんです。ですから、それも合わせて検討できる資料をいただきたいと思います。

○平井参考人 私は、利益相反の立場で述べましたので、その観点から御説明したいと思うんですが、この問題はこの委員会では基本的に特許の関係から考えるべきだと思うんです。それで、いろいろな観点があるのでそこをまず切り出して考えて、特許とか、経済的利益とか、あるいは責務とかという問題に関して患者をいかに守るかとか、あるいは患者さんにいかに事前に開示するかとか、そういうことは非常に重要だと思うんです。
 それを定めているのが、まず最初の段階ではインフォームドコンセントです。これはアメリカでもそうですけれども、日本でもきちんといろいろ考えられておりますし、もちろん倫理規則もあるし、倫理委員会でどういうインフォームドコンセントを出すべきか。その中には、例えばこの研究で特許が生まれたらどうするかもちゃんと書くんです。それから、何か経済的利益が生まれたらどうするかも全部書きます。こういうふうにその段階では処理されるし、更に臨床になれば臨床の段階でどういう研究者の方が入ってこられるか、どういう利害関係があるか、これはIRBとか臨床の倫理規則できちんとコントロールされているんですね。
 更に言えば、一般的に利益相反の問題として利益相反委員会がありますので、その組織がきちんと先生をウォッチしてコントロールしているという中で、殊、特許とかという面に関してだけですけれども、そういう意味では患者さんをいかにお守りしようかというシステムづくりはつくっていると思うんです。それ以外のことはもしかしたらあれですけれども。

○井村会長 今おっしゃったようにここでは特許の問題を議論しているわけで医療一般ではありませんので、特許に関して今のようなことが何か問題になるようだったら、そういうものがあれば調べていただきます。ただ、余り広げてしまうと、それはここの委員会の目的ではありません。
 それでは、ちょっと予定の時間を超えましたので、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。2人の先生方も、ありがとうございました。