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第3回 医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成15年12月18日(木)13:00〜15:00
2.場 所:知的財産戦略推進事務局 会議室
3.出席者:
【委 員】井村会長、秋元委員、上田委員、片山委員、北村委員、見城委員、澤委員、田村委員、平田委員、広井委員、森下委員
【参考人】岩尾医政局長、小野特許技監、竹田弁護士(竹田稔法律事務所)
【事務局】荒井事務局長、小島事務局次長
4.議 事:
(1) 開会
(2) 先端医療技術を巡る現状と課題について
(3) 討議
(4) 閉会


○井村会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」、第3回の会合を開催いたします。本日は御多忙のところ、しかも年末のお忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 まず初めに、報告をさせていただきます。昨日、総理官邸で「知的財産戦略本部会合」が開かれました。そこで、本専門調査会の検討状況につき説明を求められましたので、私からこれまでの検討状況をごく簡単に報告いたしました。まだ2回しかやっておりませんし、結論は何も出ておりませんが、こういうことを議論しておりますということについての説明を申し上げたわけです。
 本日は、これまで2回の会合で指摘されました法律的な論点について御説明をいただくために、竹田稔弁護士に参考人として出席をしていただいております。竹田参考人には、本日の議論にも参加をしていただこうと思っております。
 なお、厚生労働省の岩尾医政局長は所用のため、途中で退席されると伺っております。
 議事次第にもございますが、本日はまず秋元委員から、次いで竹田参考人から説明をしていただいて、その後、議論をすることにしたいと思っております。
 それでは、秋元委員、まずお願いいたします。

○秋元委員 それでは、時間も限られておりますので、早速本題に入らさせていただきます。
 まず、本日は私ども産業界としての立場からいろいろな話をさせていただきたいというふうに思っております。
 次、お願いいたします。

(PW)
 今までの製薬産業ということを振り返ってみますと、20世紀の場合には抗生物質を始めとして、いわゆるペニシリン、セファロスポリン、これらの誘導体が、それから、最近では生活習慣病というようなものまで、いろいろな医薬が非常に幅広く開発されてきまして、医薬の選択の時代であったのではないかというふうに思います。
 21世紀におきましては、これら医薬の研究開発も同時に行ってはいきますが、それと同時にいろいろな科学的技術に基づいてこれら医薬の新しい使用方法、あるいは治療方法、こういうように選択の巾を広げていきたいと。それが本当に国民の健康促進になるのではないかと思います。同じ医薬でも、その使い方によって毒性が出る場合もありますし、非常に効果的な作用を出すこともあるということで、医薬をどういうふうに使うかということが、これから極めて大事になってくるのではないかというふうに思っております。
 先ほど申しましたように、産業界の考え方としてどういうことを要望していきたいのかということでございますが、医師による手技、いわゆるスキル、テクニック、こういうものによる治療方法、これらを私どもが特許化したいのかというと若干違っておりまして、いわゆる企業が参加して研究開発し、非常に長い時間、莫大な金をかけて見出された高度な治療方法、あるいは医療機器を併用したような、そういう高度な治療方法、そういうような特徴のある新しい技術について特許化したいと。例えば、再生医療であるとか、遺伝子治療・遺伝子診断であるとか、あるいは細胞治療、薬物療法。医療機器の中には、例えば皮膚のシートとかも含まれますが、そういうものも含めた形で高度な使用方法、これを治療方法と考えるか、使用方法と考えるかは別として、新しい高度な使用方法について特許化を要望したいというふうに思っております。
 次、お願いいたします。

(PW)
 そこで具体的な例を出しますと、例えば現在、日本では剤という形で特許が認められておりますけれども、それではなかなかカバーしきれないような薬物療法というのを幾つか例を挙げたいと思います。
 まずは従来、抗がん剤を打つ場合、一般的に非常に重篤な副作用が出ますけれども、例えば、前もって他剤を打った後に一定の投与スケジュール、タイミングによって抗がん剤を投与すると非常に副作用が軽減されるというようなことで、こういうような時間的なタイミング、インターバルが入ったようなもの、この発明の本質を特許化するということは現在日本ではできません。
 それから、「薬物療法と薬物療法の組み合わせ」、これは実際に臨床の場で使われていますが、いわゆる抗潰瘍とか胃潰瘍の薬、それと抗菌剤の薬、こういうものを組み合わせますと、潰瘍になる原因のヘリコバクター・ピロリ菌というものを非常に効率よく防ぐことができる。これは現在、3剤併用療法という形で実際の治療法として使われておりますけれども、現実に特許という形では合剤という形でしか特許を取ることができない、実際の併用スケジュールに従ったような治療方法というものは取れないという状況にあります。
 次、お願いします。

(PW)
 次は、これはいわゆる、前もお話が出ましたけれども、ドラッグデリバリーシステム、薬物送達システム、あるいは、これに更に何かの加工をしまして、特定の臓器に行くようなターゲッティングを含めたようなドラッグデリバリーシステムというのがございます。例えば、非常に微小なマイクロカプセルの中に薬物を入れて注射してやると徐々に放出されていく、要するに、従来は注射薬で毎日注射していなければいけなかったようなものが、3か月、4か月に1回打てばいい、現在では6か月に1回打てばいいというような製剤がありますけれども、それは剤としての特許は取れますけれども、本当にメカニズムに基づくような、本当の効果的な使用方法についてはやはり特許を取れない。
 それから、これも何度も出ましたけれども、再生医療、遺伝子治療、あるいは細胞治療等、こういうものもやはり現在では、細胞を培養するところまでは特許は取れるようになりましたけれども、それをどういうふうに効果的に戻すか、どういうような投与部位に戻すか、これはまさに虚血部位に戻すところが一番、特に血管新生の場合は大事なんですが、こういうようなところの特許を取得することがやはり非常に難しく、実際には取れないというような現状でございます。 そういうことで、私どもは研究開発型の製薬企業が集まっている会社、上位15社にアンケートを取りました。その結果、近年ではやはり治療法に関する発明というもので米国に出願している件数、特許になっていないものについては詳しい内容を聞くことができませんけれども、いわゆる出願数というもののアンケートを取りますと、合計83件も出ていると。そのうち、製品に関わるものは6件、パイプライン、開発品に関わっているものは14件、研究開発段階での候補品、この辺については77件ということで、すべての研究開発型の製薬企業がこういう治療方法、あるいは使用方法というものについて特許化を考えている訳です。100 %要望しているということで間違いございません。
 次、お願いします。

(PW)
 それでは、米国等ではどういうことになっているかというのを1つ2つ例を出したいと思いますが、このインターフェロンαとリバビリン、これを併用すると非常に肝炎に効果があるということでございます。これにつきましては、アメリカでは特許になっておりますし、日本においてもこの治療方法は厚労省で認められており、確立された治療方法となっております。
 しかしながら、日本ではこの治療方法は特許できないという状況にございます。
 次、お願いいたします。

(PW)
 次は、タキソールの投与形態を改良することにより副作用を回避すること、タキソールというのは先ほど言いました抗がん剤でございますけれども、これはこのまま投与すると非常に副作用が出るということで、下にごちゃごちゃ書いてありますが、専門的なことは別にいたしまして、タキソールを投与する前に別の薬剤を投与する。それから、タキソールをあるタイミングである量を投与するということになりますと、これは非常に効果が出てくるということで、この方法はがんの治療現場で非常によく使われております。アメリカでは、実はこれが特許になっております。しかしながら、日本では特許されていない。
 それから、一方、これに関して非常に面白い事件がイギリスで起こっております。イギリスでは一時、これが特許として認められました。イギリス、ヨーロッパでは治療法というのは認められておりませんけれども、そういう作用とか効果を持ったもののユース、使用ですね、これは特許で認められております。これはユースという形で一時、イギリスで特許が認められましたが、侵害訴訟の過程におきまして、これはユースと言っているけれども、結局、治療法であると。しかも、タキソールは抗がん剤であり、タキソールという物質は既に特許は消えておりますし、用途というものも公知であるということで、一時、ユースとして認められていたんですが、そういうユースというものについては進歩性等がないということ、また裁判でこれは治療法であるから無効であるという結果になりました。要するに日本、ヨーロッパ等においては治療法というものは基本的に認められておりませんので、こういう特許が成立しないということになっております。
 次、お願いいたします。

(PW)
 医薬の開発のプロセスを考えますと、よく出てくるのはここにございますけれども、基礎研究から始まって製造承認を得て販売するわけですけれども、大体10年から20年、平均すると15〜16年はかかります。コストも100 億円とか300 億円ですが、これ以上かかることもございます。大体、この基礎研究で見出されてくるものが、統計にもよりますけれども、1万分の1とか3万分の1というような非常にリスキーのことをやり、最後は製造承認を得て医療に使うということでございます。
 ところが、先ほど言いました高度な使用方法というものはどういうことかというと、実際、臨床の場でいろいろデータを集めてそういう方法を開発するんだと。ところが、現在ではここでも非常に時間、金をかけるんですが、そうした結果であっても特許化されない。それで、実際にはこういう方法を開発して、次に臨床試験を行って承認を得るわけですが、そういう使用方法を持った薬剤という形で現実には承認を受けるわけです。これだけ金、時間をかけないとやはりここまで行き着かないのに、そうであったとしても、特許化されないというと、企業はやはりここをやらない、アメリカはここができる。そこに大きな違いがあるということでございます。
 次、お願いいたします。

(PW)
 そういうことをもう少しまとめて話させていただきますと、結局、治療方法の発明について保護が認められない、そうであると、医薬やその用途の発明については物として特許法が認められているけれども、方法の発明を物として表現することはもともと困難でございます。先ほど言いましたように、剤という形で表現することはございますけれども、剤で表そうと思うと、先ほどの投与部位であるとか、タイミングであるとか、併用であるとか、そういう発明の本質、これを剤ですべてカバーするということはできませんし、そういうものが現実には特許化されない。そうであると、もしそういうことをヒト・カネ・モノを投入して開発したとしても、保護がなければ他社が容易に入ってくる。そうであれば企業としてヒト・カネ・モノを投入することはできない。
 例えば、医薬の高度な使用方法については、特徴のある治療方法を発明したとしても、先ほど言いましたように、膨大なコストと期間がかかる。そういうようなインセンティブが起こらない。アメリカで基礎研究あるいは治療方法にまで、ベンチャー等を含めて、そういうところに非常に金が流れているということで、しかも新しい方法が数多く出てくるというのはやはり、ここにインセンティブが働くからでありまして、インセンティブが働かない限り、企業としてはヒト・カネ・モノを投入することができないというのが現状でございます。
 次、お願いします。

(PW)
 もう一つは、よく出てくる国際競争力の問題ですけれども、日本企業が生きていくためには、やはり国際競争に勝っていかなければいけないということで、もし今、日本がそういう基礎研究、あるいは治療方法というものをやっていかなかった場合には、どんどん格差が開いていくということで、是非、国際ルールに乗ったような、国際ルールというのはヨーロッパという意味ではなくて、私、アメリカ、なぜアメリカと言いますと、アメリカ1国で医薬の場合だったら60%ぐらいのシェアを取っているわけですから、国のマジョリティーではなくてインパクトという意味で考えたら、やはりアメリカに沿ったような、同じような土俵で闘えるような環境整備が必要だと。そうであれば、研究開発に重要な位置を占める特許制度、これをやはり整備してほしい。新しい高度な治療方法あるいは薬剤の使用方法を特許として認めていくことがやはり必要であって、これはまさに、国際競争力を強めていくことだろうと。
 現在、日本の製薬産業は国際競争力が低いという意見もございますけれども、第1回のときに私が申しましたように、昭和50年のときに製造法特許から物質特許に変わったときに、日本の製薬企業は壊滅するのではないかという話がありましたけれども、そこは何とか頑張って、現在、大人対子どもぐらいの比率になったかと思うんです。同じように、こういう同じ土俵で闘えるような環境整備が必要であり、そこで日本は勝ち残っていかないといけないだろうというふうに思います。
 製薬企業は、仮にこういうような、アメリカと同じような土俵を持って来ても、そこで勝ち抜いていこうという意識を強く持っておりますので、是非、この辺の環境整備、すなわち治療法の特許化というものをお願いしたいというふうに思っております。 次、お願いします。

(PW)
 最後でございますけれども、産業界としてはやはり、医師・患者へ医薬・医療機器、これは先ほど言いました細胞新生も含みますが、こういうような使用方法を、本当によい、高度な使用方法を提供していきたいと。そのためには再生医療であるとか、遺伝子診断・治療、細胞治療、薬物療法、いずれにしてもそれらを含みますが、こういうものの特許の保護を是非お願いしたいと。そして、こういうような特許の保護がなされた上で新たな医薬とか医療、機器の開発のインセンティブが与えられ、そして、医薬の本当の高度な使用方法、すなわち、患者のためになる高度な治療方法が開発されるというふうに考えております。
 一方、医師の方々でございますが、こういう本当によい治療方法が見つかれば、患者さんに対して最適な治療を実施することができるのではないかというふうに思います。
 特許権の効力でございますけれども、これは難しいことはちょっと別にいたしまして、剤というものがある限り、これは剤を提供する者、これは直接の侵害行為になります。 一方、特許方法、いわゆる治療法の使用についてでございますが、これにつきましては、この特許方法の使用に用いられる物とか、物を生産したり、譲渡したり、輸入したり、あるいはそういうことを示唆するような、こういう問題につきましては、間接侵害というのが出てくるかと思いますが、これにつきましては医療の現場ということではなくて、あくまでも企業対企業の争いであって、医療の現場には混乱をもたらさないだろうと。そして、こういうような間接侵害は残しますけれども、医療行為そのものについては、やはり医療の現場を乱すということがございますので、個々の医療行為については権利は及ばないというふうな制度設計が必要ではないかというふうに考えております。
 これは、いわゆる医薬品産業、あるいはライフサイエンスの産業からのお願いでございます。
 以上です。

○井村会長 ありがとうございました。
 いろいろ御質問があるのではないかと思いますが、竹田参考人に今日おいでいただいておりますので、お話を伺った後で、全体を通じて議論をしていただくことにしたいと思います。
 それでは、竹田先生、よろしくお願いします。

○竹田参考人 私は、我が国における医療関連発明の保護の現状と、現行特許法の規定及び特許法改正の必要について御説明いたします。
 あらかじめ資料を用意しましたので、まず「1. 特許取得のプロセス」をごらんください。
 特許出願は、出願人が特許権の付与という行政処分、これはこの右側に書いてある「特許査定」ですが、それを求めてする特許法上の行為でありまして、出願後3年以内に審査請求をすると審査官による審査が行われ、特許査定が成立し、所定の特許料を納付すると特許権の設定登録を受けることができます。
 審査手続におきましては、特許要件を備えているか否かが審査されますが、主な要件はこの1の<主な特許要件>として書かれているところの(1)(2)(3)(4)(5)(6)として挙げたことです。
 「(3)新規性がある」というのは、今まで存在しなかった新しい技術的思想の創作であることを意味しますし、「(4)進歩性がある」というのは、同業者が思いつかなかった従来技術の改良であることを意味します。
 具体的にどんな規定になっているかというのは、次の「2. 関連条文の一部抜粋(参考)」の資料を参考にしてください。
 これを医療関連発明について見ますと、かつては医療器具や医薬品は特許を受けることができない発明とされていましたが、昭和50年の特許法改正を契機に相次いで特許性が認められることになりました。これに対して、人間を手術、治療又は診断する行為の発明につきましては、特許法にはこれを許さないという明文の規定はありませんが、特許庁は審査基準において、産業上利用することができる発明に該当しない扱いをしてきました。
 「3.医療関連技術の特許取得プロセス(現行)」をごらんください。
 医療機器とか医薬については、特許要件を具備するときは特許権を取得することができますけれども、医療関連発明につきましては、原則として?の産業上利用することのできる発明であることの要件を満たさないものとして拒絶されることになります。
 しかし、研究開発の促進や産業振興の観点から、医療関連発明、特に再生医療とか遺伝子治療関連技術の中には新たに産業として成立し得るものがあり、医師以外の者の実施からその技術を保護するために特許性を認めるべきであるという意見が次第に強くなってきたわけです。
 そもそも産業上利用することができる発明は何かということを考えて見ますと、これは産業上の利用可能性であり、何らかの産業に利用できるものであればよく、学術的、実験的にのみ利用できる発明を排除する趣旨と解されております。
 また、次の「4.医療関連行為の特許保護(日米欧比較)」をごらんください。
 これをごらんいただければわかるように、米国法においては有用な発明であれば特許を受けることができるとされています。したがって、人の生存、あるいは尊厳という見地から医療関連発明の特許性を否定することは困難であろうと思います。
 このような状況において、医療関連発明保護の見直しに大きな影響を与えましたのが、東京高裁の平成14年4月11日の判決です。「5.現在の法解釈についての疑義」のところをごらんください。
 この判決は、医療行為に関する特許出願を拒絶した特許庁の審決についての判断ですが、医療行為が人の生存、あるいは尊厳に深く関わり、人類のために広く開放すべきであるならば、特許の対象とすることによりその発達を促進し、それが最終的には大きく人類に貢献すると考えるべきであり、少なくとも、医薬や医療機器に特許性を認めながら医療行為のみに否定するのは一貫性がないと考えることに合理性があると判断しております。
 それにもかかわらず、この判決はこの出願について特許性を認めなかった、つまり特許庁の審決を維持したわけですが、それは現行法の下においては、医師が特許権侵害の責任を追及されることを恐れさせるような状況に追い込むことになり、このような特許制度は医療行為の性質上、著しく不当であるから、特許法に特段の措置が講じられない以上、医療行為の発明を産業上利用できる発明としないと解する以外にないと判断しているからです。
 この判決を裏読みすれば、医師の行為に特許権侵害の責任が及ばない規定が設けられれば、医療行為について特許性を認めない理由はないということになるのではないかと思います。
 この判決に前後しまして、医療関連発明の特許性の見直しの動きが活発化してきまして、総合科学技術会議では知財戦略についての中で、先端医療技術に係る発明は特許されるべきであり、直ちに審査基準の改定と法改正の準備といった具体的措置が講じられるべきであるとしたのを始めとしまして、バイオテクノロジー戦略大綱や政府内部における各種の会議で見直しを求める要請がなされるようになってきました。
 日米欧の現在の状況は、先ほど見ました4の医療関連発明の特許保護の状況のとおりですが、特に米国におきましては、古くから医療関連発明が認められております。ただ、1993年に白内障の手術方法について特許権を有していた医師が、同様の手術方法を行っていた別の医師とか病院を相手取って特許権侵害で訴える事件が発生したことを契機としまして、1996年に特許法が改正されて、原則として医師などの医療行為には特許権の効力が及ばないとされております。
 「6.新審査基準により特許される具体例」をごらんください。
 我が国では、産業構造審議会の医療行為のワーキンググループの見解に従いまして、本年8月7日に審査基準を具体例のとおり、従来、認められなかったものであっても、人体から切除・摘出した皮膚を同一人に移植することを前提とする場合について特許の対象とする取扱いに改めました。しかし、法改正はいたしませんでした。
 私は、現在の状況は、医師がこのような治療行為を行う場合に特許権の効力が及ばないという規定はありませんので、医師が免責されるかどうかは裁判所の法解釈にゆだねられることになります。多分、裁判所に訴えた場合に、いわゆる不法行為の違法性阻却の正当行為の理論等を用いて、医師の責任を阻却する可能性は高いとは言えますけれども、これは裁判所の解釈にゆだねられることになっておりまして、このような状況は法改正によって早期に解決する必要があろうかと思っております。
 なお、産業上、利用できる発明という特許要件との関係で、安全性が産業上の利用可能性の要件と見るべきではないかという議論があります。しかし、一般論としては安全性は産業上の利用可能性の要件でないとするのが通説的見解です。
 よく引き合いに出される判決が、最高裁の昭和44年1月28日の判決です。これは、「7.特許と安全性についての最高裁判決」をごらんください。
 この判決は、原子炉に関する発明、つまり、中性子の衝撃による天然ウランの原子核分裂を利用して、その原子核分裂を起こす際に発生するエネルギーの爆発を惹起することなく、有効に工業的に利用できるエネルギー発生装置に関する発明でありまして、最高裁判決の理由とするところは、安全確保の手段がなければエネルギーを抽出できないので、その確認手段ないし装置が発明、完成の必須の要件とされるという特殊な事件です。
 つまり、本判決が指摘しますように、本願発明の実施に伴う危険は一般の動力装置におけるような通常の手段、方法で阻止できない特異なものであり、しかも、その装置の作用効果を発揮するために不可避なものであるから、その防止の具体的手段は発明の技術的内容を構成するものと言わざるを得ないとしましたもので、原審である東京高裁は工業的発明、これは旧特許法ですのでそういう規定になっておりまして、今では産業上、利用することができる発明ですが、これに当たらないとしたのに対しまして、最高裁判決は発明として完成していないとしたものでありまして、安全性を産業上利用できる発明の要件としたものではありません。
 本専門調査会の田村委員が著書の中で、医薬品や生物関連発明などにおいて製造が可能であるが、人がそれを摂取した場合の安全性に疑問があっても反復実施できる以上、この判決の射程は及ばないとされていますが、この考えは医療関連発明一般に妥当すると思われます。
 さて、そこで次に法的措置と医療発明特許権の行使の問題について述べますと、医療関連発明につきまして特許性を認める場合には、米国特許法におけるように、医師の行為に特許権の効力が及ばない旨の規定を、現在の特許法第69条に新たに第4項として新設するのが妥当な法措置であると思います。
 そのほかに、考え方としては、医師に法定の通常実施権を認めるという考え方や、逆に、医師が特許権者から実施契約の設定を受けられるものとする考えもありますが、妥当性を欠くと私は考えております。
 なお、更に注目しなければならないことは、医療関連発明全体について特許性を認めるということになりますと、特許法第69条の改正だけで足りますが、その一部だけを特許性を認めた場合には、特許性を認めない医療関連発明について規定を欠くことになってしまいますので、その場合には、一番最初のところに戻って第32条では、主な特許要件の(6)に当たる、これは特許を受けることができないとしているわけですが、その中に特許性を認めない医療関連発明も規定しないと整合性が取れない。全部について、医療関連発明に特許性を認めてしまうならば、そのような法的措置は不要であると考えます。
 最後に、医師の行為に特許権の効力が及ばないとすると、何のための特許権かという疑問が生じてくるかもしれません。そこで「8.医療関連行為発明についての特許権の効力」をごらんください。
 医師が直接、特許発明を実施するのであれば、先ほど言った免責規定が設けられる以上、直接侵害は成立しませんが、医療関連行為発明であっても医師以外の者の実施可能な発明、これはいわゆる人工骨等についても言われたことですし、例えば育毛方法などでもあると思いますが、そういう場合には直接侵害の問題も起きてきますし、また、多くの場合、実は間接侵害の成立が問題になろうかと思います。
 間接侵害については、独立説と従属説という2つの考え方に分かれており、判例も2つに分かれておりますが、この場合に独立説を採れば、つまり最終実施者が特許権侵害の責任を負わない場合であっても、その特許発明にのみ使用されるか、その特許発明に使用することを主たる用途とするもの、例えば、医療装置とか医薬品とかを提供するものに対しては間接侵害の責任を問うことができるということになります。
 そして、特許権を取得したものは、そういう財産的な利益等の問題とは別に、それがすぐれた発明であり、その技術を万人に開放することによって国民の健康の回復増進や生命の維持に貢献するということが発明者名誉権として保護され、たたえられることになるのではないかと思います。
 私の説明は、以上で終わります。


○井村会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのお2人の方の御意見に対して、いろんな質問、あるいは意見があろうかと思いますので、どうぞ自由にお尋ねいただきたいと思います。どなたからでも結構です。
 どうぞ。

○澤委員 秋元委員にちょっとお伺いしたいんですけれどもね、医療行為を特許対象としている唯一の国がアメリカですよね。それで、武田製薬はアメリカにおける特許権というのはもう何本も取っていらっしゃる。
 なぜ、日本はアメリカの特許制度を持ち込まなければいけないというふうにお考えですか。

○秋元委員 弊社について答えるのか、産業界全体として答えるのかという問題で、ちょっと答えが違うかと思いますが。

○澤委員 産業界全体のどちらでも構いません。

○秋元委員 やはり、日本の産業界全体の競争力を強化するためには、そこに金が流れないと強くならない、そこに投資しないと強くならない。そうであれば、すべての会社がアメリカで権利を取るということであればいいんでしょうけれども、そうでない会社もかなり多いし、同じ会社でもそうでない場合があると。そうであれば、そこにインセンティブを与えるという意味では、産業界としては権利が発生しない限り、先ほどのスライドでも申しましたけれども、他社が容易に参入するということであれば、どうしてもお金を投入することができないということでございます。

○澤委員 その開発費用は。

○秋元委員 先ほど、あそこに出しましたけれども、いわゆる最適な使用方法、高度という言い方をするかどうかは別として、最適な使用方法を見つけるためには臨床でのデータも集めないといけませんし、それについて幾つかのデータを集めたら厚生労働省の承認というものも必要になります。そうしますと、そこにはやはり5年、10年、場合によっては数十億、100 億のお金が投入されるということになります。
 そうした結果、本当にいい治療方法、使用方法を見出しても、権利がなければ他社がすぐそれをまねしてしまうということであれば、それをやろうという意欲が出てこないと思います。

○澤委員 よろしいですか。

○井村会長 どうぞ。

○澤委員 2002年だと、外国薬メーカーの売上高は1位、2位はアメリカではありませんね。ああいう、例えばグラクソ、ゼネカというところはどうやって対応しているんでしょうか。ものすごい大きい規模ですね。

○秋元委員 勿論、グラクソ、ゼネカが出している医薬に関して、それの治療方法、使用方法の特許は出されております。

○澤委員 それはアメリカにも出されている。

○秋元委員 アメリカに出されております。

○澤委員 だから、アメリカ型をなぜ日本に持ってこなければいけないかというのは、日本では、今、武田アンド アザーズになってしまいましたけれども、それも全然規模が違う。どれだけ追いつく追いこせといっても何となく、研究費にしてもファイザーとあれだけ差がついてしまっている現状から見れば、アメリカ型特許制度を日本に持ち込んだところでどうやっていくのかなという疑問はあるんです。
 それで、私はいつも疑問に思うんですけれどもね、新しい医療を認可する制度というのは、日本ではまず高度先進医療がありますけれども、これは最終的に皆保険制度に持っていくための制度でもあるわけです。皆保険制度があるということは、特許で何かを囲ってしまうことと正反対の制度なんですね。だから、なかなかアメリカ型のは確かにいい点もあるんでしょうけれども、日本の医療の現場は最初から合わないということはもうわかっている。産業構造審議会でもずっと討議していて、竹田先生のお話も産業構造審議会で話したことなんですけれども、日本にはやはりそれは向かないんだろうというふうな結論です。今度は竹田先生にお伺いしたいんですけれども、現場は少なくとも、特許の先生たちはみんな安全と特許はまるで関係がないと、これは別問題だというのがどこへ行っても言われるんですけれども、原子力と同じように、薬というのは患者さんの体に入ったら、それを回収する手段はない。もう二度と返ってこないものなので、そういう点では原子力以上に、安全性は完全に確認していかなければいけないのではないかというふうに思うんです。
 例えば世界医師会の宣言もありますけれども、これはアメリカ医師会から出されたものですけれども、医療プロセスの特許には反対だという国際声明を出していて、日本医師会も勿論それに批准している。だから、アメリカの医療現場の声も医療特許はなじまないだろうという結論を得ている。これは何度議論してもそこはちょっと譲れないようなところです。ましてや、もっと現実的なことを考えますと、アメリカで知財を国の競争力にしていこうと思って、アメリカで実際にCAFCですか、全米の特許裁判などを一挙に構造審に集中する制度がありますね。あれは1982年にできて、実際に動き始めるのに15年間ぐらいかかって、その間に司法の方も国家戦略として協力してやってきたという歴史があるんです。
 今、日本でもしやるということとしたら、司法側を一生懸命協力に持っていってというところを始めないと、何となくアメリカの上澄みだけ持ってきて、もし医療のプロセスに特許ができるとして、それを違反する、違反しないというところの裁判というものが裁判所の先生たちも多分、全然、今わからないというふうにおっしゃっていますから、そういうところから始めていかなければいけないのではないかなと思います。

○井村会長 それでは、どうぞ、秋元委員。

○秋元委員 今の澤委員のお話、確かにそのとおりでございまして、いわゆる産業界とアメリカの医師会、さっきWMAを言われましたけれども、アメリカの医師会が中心になって医療に特許を設けるべきではないと、いろんな訴訟事件がございましたから、1996年ごろにそういう議論が煮詰まってまいりまして、さっき竹田稔先生も言われたかと思いますが、産業界とアメリカの医師会の妥協の産物として薬と医療機器を絡む、そういうような医療行為についてはパテントの禁止事項から除外する、要するにパテントを与える、その代わり、いわゆる純粋な医療行為、医療機器とか医薬が関連しないような医療行為については特許を認めるという形で1996年に妥協した結果、現在のアメリカの状況になっているというふうに考えております。私どもはこの線でいきたいと、考えたいということでございます。
 それからもう一つ、安全性、これは確かに非常に大きな問題ですし、これは私どもも薬を開発するときは安全性でドロップすることは多々あるのでございますけれども、現在、アメリカがそういうような、1996年以前の状況はもっと広い権利範囲で特許が与えられているわけなんですが、それ以降、1996年には、先ほど申しました医療機器とか薬物が関係するようなものについてのみ、治療方法として特許が与えられるようになっておりますが、いずれのような状況下においても、アメリカにおいて、特許問題によって安全性の問題が非常に大きくクローズアップされてきたかというと、不勉強なのかもしれませんが、私は余り聞いておりません。むしろ、アメリカの産業の競争力、産業に対する投資というものが増えているというふうに考えております。

○井村会長 竹田参考人、何かございますか。

○竹田参考人 どういう切り口からお話ししていいかわかりませんけれども、私は確かに産業構造審議会のワーキンググループで話したときにも、医療関連発明については、基本的にはこれを認める方向で立法措置を講ずるべきではないかという意見を申し上げてきました。
 ただ、そのときに、私は今、すべて医療関連発明の特許性を認めるというのでは、あのワーキンググループでも議論が足りなかったのは、常に特許法の趣旨を考えて、特許法というのは何の目的にあるかというと、それは産業社会の発達に貢献するような技術を公開することによって、それに強い権利を与えていこうということで、これを医療関連の発明について当てはめれば、本当に健康の回復、健康の増進、生命の維持というようなことを通じて産業社会の発展に寄与する発明に、医療関連発明として特許性を認めることでなるのでないか。その点は、早くからこの発明を医療関連発明と認めているアメリカの実例等ももっと検討して、かつ、それぞれの医療関連発明について段階的に、今、特許性を認めていくべきものから段階的に実施していくという方向を考えた方がいいのではないかというのが私の基本的なスタンスで、そのことは今も変わっておりません。
 ただ、安全性の議論と絡めるということになりますと、最高裁判決が引き合いに出されて、このように裁判所は安全性を理由に特許を認めていないではないかという点については、先ほど私が報告したとおりのことであって、その切り口からこの特許性を認めるかどうかの問題を解決していくわけにはいかないというのは、これは特許制度の本質からいって、当然そうならざるを得ないのではないかというのが私の考えです。

○井村会長 どうぞ、北村委員。

○北村委員 ちょっと、秋元委員にお伺いしたいんですけれども、ヨーロッパは今、どういう状況に、例えば医薬品でも、ヨーロッパは日本よりも上位を走っている。同じような、ここで検討しているようなことがヨーロッパ諸国においても大きな問題として取り上げられているのか。例えばイギリスでもフランスでもスイスでも結構です。なぜ、日本より先にそういう動きが聞こえてこないのか、同じ悩みはあると思う。
 米国内の問題であれば、米国における特許においてのみ、そういうことをしようとしているのか、やはりヨーロッパ各国が同じような動きを今、示してきているのか、その辺をちょっとお教えいただきたい。

○秋元委員 まず、先ほどちょっと話に出ましたけれども、現状でございますけれども、日本は剤という形で、便法として何とか保護しようと。

○北村委員 それはヨーロッパでも一緒ですね。

○秋元委員 ヨーロッパは、ユースという形を、使用という形で取っております。ヨーロッパの場合は医療は産業として認めているけれども、医療行為については除外するという除外規定をEUの方で持っております。

○北村委員 こちらの利点と、アメリカの利点がありますね。

○秋元委員 そうしたときに、私、まだ調査不足でございますけれども、それではアメリカで、本当に発達しているような高度の医療、こういうような医療をヨーロッパの人がアメリカに行って受けているのかどうか、あるいは日本の患者さんが日本で治療できなくて、アメリカに行って受けているのかどうか、逆にヨーロッパはヨーロッパで、それで自分たちでできているのかどうかと、これについてはまだ調査不足でございますが、日本の場合は、先ほどの全体の保険医療制度の問題は別として、非常に重篤な病気で、アメリカで治療を受けなければいけないというようなことも多々、新聞等では出ているかと思うんですが、それはやはり、日本でそういうものが実施できないというところにある。なぜできないかというと、そういう技術なり産業が発達していないのではないかというふうに思っております。

○北村委員 ヨーロッパが。

○秋元委員 いいえ、日本が。ヨーロッパがそうであるかどうかについて、先ほど言いましたように、まだ現在、調査不足であって、ヨーロッパについては今後の課題と考えています。

○北村委員 そこを是非やっていただかないと、やはりヨーロッパがなぜ、もし早急にこういう対応をしていかないと米国と競争できないという感覚を持っているのか、あるいは60%の医薬品を米国は取っているから、早急に各国が決めてハーモナイズしたら当面の損害が大きいという判断をしているのか、その辺の本音のところもよく見ていただいて、そして我が国はどこを取ったらいいのか、米国一辺倒というと、やはりいろんなグローバルな問題でもいろんな違った考えが起こりますね。本当にそれでよいのかと。ですから、ヨーロッパがなぜ日本より先に歩み出さないのかというのはちょっと私にも疑問でして、やはり功罪があるのかなと思うんです。

○秋元委員 調べさせていただかないと責任ある答えが出ないんですが、ヨーロッパはどちらかというとエシックスの方が非常に強く出ているというふうに思いますので、それは医療の関連だけではなくて遺伝子の。

○北村委員 我々日本も、そうあるべきではないかと思うところ。

○秋元委員 あるべきかないべきかは、これは議論の分かれるところですが、これも先ほど申しましたように、アメリカが一国で大体60ぐらいのシェアを占めてしまっているだろうと。

○北村委員 それは、皆さんの産業界としてはよくわかるんですけれども、エシックスの方の関連が多いと言われると、やはり医療側としてはヨーロッパ型も参考にしたい、あるいは見習うべき点があるのかということもちょっと気になりました。

○井村会長 今の問題点は、ちょっとまた調べていただいて、もしわかればお願いしたいと思います。
 それからもう一つ、これは特許庁の方に伺いたいんですが、ヨーロッパと日本と少し違って、方法特許で診断方法でしたか、測定方法とかだけはヨーロッパが認めているという話だったんですが、現実にどういう特許が出ているのか、その辺、日本とヨーロッパの違いですね。余り大きな違いはないということだったんですが、それはわかりますか。

○小野特許庁特許技監 今、お答えできる範囲では、例えば、高度なX線の診断方法の事例とか、ヨーロッパ特許庁の基本的な審査基準の考え方、それから、ヨーロッパ特許庁の審決等を参照いたしますと、例えば人体に器具などを差し込むとか、そういう人体に直接絡むような診断方法の場合は、やはりお医者さんがどうしても関係するだろうということで、それ自体は一種の医療行為として、不特許事由としております。
 しかし、X線等、外からいわゆるエネルギー線等を当てて、診断を行うような場合には、医師が関係しないこともございますので、特許が付与される可能性がございます。ただ、これも最初から特許になっていたわけではありませんでして、当初はやはり同じように診断方法は全部拒絶しておりましたが、ぎりぎりの線として、判断を積み重ね、ようやく線を引いてきたというふうに我々は理解しております。
 以上でございます。

○井村会長 もうちょっと具体的にこれもわかりますか。ヨーロッパは治療方法は認めない。ただ、診断方法はある程度認めるということなんですね。

○小野特許技監 診断方法では、先ほど申し上げましたように、人体に直接適用する、つまり、メスとか何かを差し込んで行うということになると、どうしてもお医者さんがやらなければならないということになりますから、それは当然医療行為に該当するということで、特許から除いております。
 先ほども申し上げましたように、そうでない場合だけ例外的に特許を付与する、直接医師が触れていないということで、ぎりぎり線を引いてきたというのが我々の理解です。これも長い検討の中で、ぎりぎりの線として少しずつ認められてきたというふうに理解しています。

○澤委員 もう一度確認なんですけれども、私が知っているのは島津製作所がレントゲンのガントレーの方にセンサーを付けまして、一番効果的に撮影ができるところはどこなのかというのを。でも、実際はあれはものが既にあって、それでユースの方も両方提出するということになっていて、今、日本からも同様な申請が3件出ているんですか。必ずしも、頭の中だけで考えたというのではない診断方法で、実際、今も使われて、非常に連想しやすいといいますか、これなら多分大丈夫でしょうというぐらいの、それが今、日本とヨーロッパの違いなのではないかと思います。

○小野特許技監 今、澤委員の御指摘のとおりでございまして、やはり通常のX線診断とか、普通のエネルギー性診断、NMR等も既にございますが、新たな装置とセットで許可しているケースが非常に多うございます。
 ただ、理論的にはぎりぎり、その辺りが形としては、いわゆる診断方法として許される技術です。

○井村会長 これは方法の特許として認められるのですか。

○小野特許技監 方法特許として、ぎりぎりの線を引いています。我々が分析した範囲では、そのように理解しております。

○井村会長 ほかに、いろいろ御質問等あると思いますが、いかがでしょうか。

○北村委員 竹田先生にちょっとお伺いしたいんですけれども、やはり物と違って、医療行為的なものも含めた場合、先生が来られる前のプレゼンテーションでちょっとしゃべらせていただいた点なんですけれども、行為としての結果がいわゆる物ではありませんので、対象が患者という形になりますので、いろいろな同じ病気の名前が付いても、非常に初期的なものから末期的なものといろいろあるために、同じ特許が取られている手法を用いて治療を加えた場合でも、その結果はいろいろ変わってくるわけですね。
 ところが、その方法自身に特許が取られていると、一種の物に付く、もう廃止になりましたが、JISマークのようなものでお墨付き的治療法としてなった場合、物に対してはPL法、あるいは医薬品に対しては副作用救済措置、こういうものが取られてくるわけですけれども、その手法に対して特許という、患者側から見れば、お墨付きのある医療行為をなして治療をされた結果が極めて不十分である、不満足であるというときの救済措置的なものが要求されないのか、どう考えるのかということですね。
 それから、企業と医師の行為とは一応、分離されていますけれども、現在、ますます医師そのものが企業を設立する時代になって、その特許薬品を使った治療行為なり、あるいは特許医療機器を使った治療行為をやる。医師が企業の役人として参画するわけです。そこにおいて特許のある医療行為を、自らが自らの病院で治療をするということが可能、進める状況になってきておりますね。そういうときに、医療のエシックスという問題にひずみが生じないかということも医療側から見ると気になるわけなんですね。ですから、どうしても医療行為というものの特許には安全性、先生のペーパーでは?の公序良俗というようなことを含めた安全性というものが、やはり入るべきではないかと思います。そして、そこの点において、物と手法との特許の考え方を同じではなくて、プラスαが加わるべきではないかというふうな気がするわけなんです。

○竹田参考人 特許の権利の範囲というのは、明細書のクレームという特許請求の範囲で決まって、その発明を実施するに当たって、どのようにして実施するかという大要は特許の明細書の発明の詳細な説明に、これはどういう技術的課題を持って、この発明がなされたか、その構成はどうであって、実際の実施方法はどういうものであるか。そして、それの発明によって、どんな作用・効果が生ずるかということを掲げるわけですね。
 それで、第69条の第4項が新設されて、仮に免責される規定があるとする。その場合に、医師は少なくとも特許発明として成立して、特許公報が出ているものについて、どのような手術方法を取るかは全く自由にできるわけですね。それは薬にも副作用があるのと同じように、その治療方法、手術方法にも欠陥がある場合もあろうかと思います。ただ、それが技術的に見て、やはり新しい技術的創作だと言われれば特許される。そういうものがあった場合に、それを実施することの最終責任は、それは実施者である医師にならざるを得ないと思います。

○北村委員 それだけしかできないんですね。

○竹田参考人 そういうものが世の中に存在している場合に、更にその欠陥をいろいろ検討して、それを改良する手術方法であり治療方法が世の中に出てくれば、それが医療技術の進歩につながってくる。だから、そこのところの安全性をそんなにやかましく言うことはないのではないかと。これは私1人が言っているわけではなくて、一般に医療関連発明を認めようというときには、そういう意味の、更に改良、発明を促し、それによって医療技術が進歩し、それが社会に貢献することになるのではないかという視点からとらえるべきではないかと考えるのが普通だろうと思います。

○北村委員 やはり、医療手法における、特許ある医療手法を用いて治療をした場合の患者救済という面においては、それを選択した医師の責任であるという以外には、特に物に対するような救済措置、あるいは責任体制は取りにくいですね。

○竹田参考人 そうでしょうね。

○北村委員 そこで企業を兼任した医師がその企業の特許のある手法を優先的に行うと。前回申しましたように、米国の医師が自分が役員をしている会社のある種の弁を大量にその病院で使うというようなひずみが生じることを許してしまわないかと。それは特許があろうがなかろうが、おかしなことなんですが。

○井村会長 先ほどの治療手技の特許があってもなくても、現在でも新しい治療手技を開発してますね。それに対して何か問題が起こったときの救済措置は、今のところはありませんね。

○北村委員 だから、特許がある手法だとお墨付きにならないか。

○井村会長 特許があると、それがお墨付きになるかならないかという問題ですか。

○田村委員 今の点は、とても重要なことだと思うんですね。
 それで今日、私の著書を引いていただいたとおり、私も澤先生から批判された特許の専門家の1人でして、やはり基本的には安全性は特許と関係ないという立場を取っております。また、最高裁の判決の読み方も、あれは実験室でも安全性が確認されないと実験室でも実験できない原子炉に関するものでしたので、やはり特別なものであり、また、よく読むとクレームに内在するものとして安全に取り出せるということが、まさに定量的に取り出せるということがクレームの内容でしたから、特許発明の内容自体がそもそも安全性を要求しているという事案だったと理解しておりますので、今日、竹田先生がおっしゃったとおりの見解を取っております。
 ただ、澤先生、あるいは北村先生の御意見がよくわかるのは、我々特許法の専門家の理解と、特許に詳しくない、特に今までは余り特許とは無関係だった現場の方に特許というものが新しく登場したときに、何か特許を取られたということが確かにお墨付きを得たかのような印象を与える可能性は勿論あるわけで、私もそう思います。ですから、これはむしろ広報活動のような問題ではないかなと真剣に思っているわけです。例えば、新しく今度、この結論で特許に行く方向になったとしても、それで済ませてはいけないのであって、決して特許を与えるということが安全のお墨付きではないということを、やはりどこかで周知徹底していく必要があると思います。
 ただ、それを理由に、特許を認めないために従来の特許法の考え方は少し違いまして、先ほど副作用の話も出ましたけれども、医薬の場合も基本的には特許が出てから、後は臨床試験がどんどん進んで安全性が確認されるという状況で、特許の取得時点で安全を確認するわけでは決してありませんので、それはむしろ別の、特許行政以外の問題だと思っているところです。

○北村委員 そこなんですね。これがどうしても上流の特許になり得る。ですから、その下にあるべきものがまだ安全性も何もわからないときに、治療法の特許を上流で押さえてしまうということには充分な配慮がいる。そして患者に行う手法なんですから、物とは違った安全性、あるいは倫理性というものを少し加味しないと、医者側としては物と全く一緒かと不安がある。それを特許という経済的インセンティブからのみ判断してつくり上げてしまってよいのかと不安がある。先ほどのヨーロッパは、どう考えているんだろうというようなことも含めましてね。

○井村会長 片山委員が手を挙げておられるので、それではちょっと。

○片山委員 よく特許弁護士に、普通の方が聞かれるのは、例えば、そこにあるプロジェクターに特許登録済みとか、そういうような表示があるわけですね。特許登録済みと表示されていると一般の人はこれはいい技術なんだなと理解をされる。だからこそ、その特許登録済みというのが書いてあるし、それから、勿論まねしてはいけませんよという意味もあるんだろうと思うんですが。ただ、そこに例えば、その特許の技術内容に何か安全性上、問題がありまして、例えばプロジェクターでは加熱して火事が起こるかもしれないような実施例があって、どうも加熱の部分がまずいですね、何か措置を取らないといけないですねというようなものがあったときに、それでは、特許というお墨付きを与えたのが特許庁、つまり国であるから、それに対して国家賠償が、火事が出たときに請求できるか、あるいはそういうことを考えるかというと、一般の人は普通考えないだろうと思うんですね。
 今、議論しているのは、今の話とは少し違った医療の分野だと思うんですが、恐らくは医療の分野でも、この制度を導入した場合に、しばらくたったら、それは当たり前ですねということにまず間違いなくなると思うんです。それは、多分、昔、特許制度自体を導入したときに、例えば国がこのプロジェクターに特許を与えたというときにも同じような話がきっとあったんだろうなと思うんです。国が言うからには、それは立派な発明で、安全面でも何ら間違いのないものなんだというその観念が、特許制度を導入した当時はあったのではないかと思うんですね。
 以上です。

○井村会長 もう少し、ほかに御意見がありますか。まだ時間は十分ありますから。
 どうぞ。

○森下委員 竹田先生に御質問なんですけれども、先ほどのお話を聞いていますと、現在、我々医者の方は、実は訴えられる可能性に常にあると。要するに、現時点の特許法の範疇では、医師の行為というのは除外されていないということであれば、例えば医薬品を勝手につくってしまうとか、医薬品になっていないような発明であって、我々が勝手につくった場合、訴えられてしまう。あるいは、ある診断技術を使って、それを使った場合というのは訴えられるリスクというのは現時点の方がむしろ高いというふうに考えてよろしいんですか。

○竹田参考人 医薬については、たしか第69条の第3項で規定があったと思いますけれども、今度解禁したような皮膚の移植についても、それをだれかが特許を持っていて、医師が実施した場合には、特許法の規定上は免責する規定はないということになりますね。

○森下委員 つまり現時点では、逆に訴えられた場合は、裁判の結果ですけれども、損害賠償の対象にむしろなり得ると。

○竹田参考人 それはなり得るんですけれども、私はだから、すぐに法改正すべきだということを言ってきたんですが、ただ、まさか裁判所がそこで医師の行為云々を違法だとは言えない。それは、例えば特許権の侵害も不法行為の一種ですから、不法行為には正当行為の理論という違法性の阻却事由があって、社会通念上、正当と認められるような行為であれば、形式上は不法行為に当たっても違法性は阻却されますよという理論があるから、多分、その辺を裁判所が使って、医師に責任を負わせることはないだろうと。それは私が考えていることなんですけれども、ただ、それを法的に保証されているか、担保されているかというと、それはないと言わざるを得ない。

○森下委員 それでは、法理論上はもう改正をして、はっきり除外というのを書かないときには100 %の保証というのはないということですね。

○竹田参考人 ただ多分、この前のワーキンググループの議論のときにも、すぐ法改正にいかなかった理由の一つは、第69条の第4項に私がさっき言ったような規定だけをぽんと設けたら、今度は医療関連発明を、全部特許しないと理由が通らなくなるわけですね。すると、第32条をどうしても手当して、そこに特許を受けることのできない発明に、例えば医療関連発明、ただし再生治療を除くとか、そういう規定を書くと、後ろ向きの改正をしているような感じになってしまって、なかなか、これは特許庁に聞かないとわかりませんけれども、特許庁としても取りにくいところだろうと思うんですね。
 だから、その辺の問題があって、結局は法改正にまで至らなかったんですが、例えば、これは特許庁の方でもそういう考えのことを言う方もおられると思いますけれども、現行でも、うまくクレームすれば検査法や医療関連でも特許になり得ますよということがあるわけです。だけれども、そういうのもうまくクレームしたことによって、責任を医師に追及された場合にどうするんだということについては、規定上何もない。そういう状態があるべき姿かというと、私は絶対あるべき姿ではない。だから、早急にそこのところは特許法を改正すべきでしょう。ただ、それをやるのには、今、ここで議論をしているような医療関連発明をどうするのということをきちっと結論を出さないと、すぐにはやりにくいのはもっともだと私は思っています。

○井村会長 どうぞ、片山委員。

○片山委員 先ほど、澤先生の方から裁判所の能力の問題を若干お話しになったと思うんです。私もその法曹に属する者ですし、竹田先生は特に、裁判所に元、属しておられたんで、竹田先生の方で裁判所の能力で、例えば医療関連発明を仮に特許にした場合に、そこで裁判所の審理において、それをちゃんと審理できるのか、それだけの受け皿が整っているのかという御質問だったように思うんで、ちょっと御意見を竹田先生の方に聞かせていただければと思ったんです。

○竹田参考人 これは今、別の専門調査会で私も知財高裁の問題で議論しているところですが、いわゆる技術専門性が高い分野というのは、何も知財関係の侵害訴訟だけではなくて、それは公害の問題であっても、医療過誤の問題であってもいろいろあるわけですね。基本的には、裁判官は法律専門家ですから技術のことについて素人と言ったことがいろいろと批判されているようですけれども、技術専門家でないという点では素人なんですね。ただ、それは法律手続に乗って進めるわけですし、そこで技術的なところが争点になってきた場合に、それをカバーするものとして、法律制度としては一般に鑑定制度があるわけですね。そこで技術専門家の方、医療過誤では、よく医師の方に鑑定人になってもらっているわけですが、そういうものによってカバーする。それとは別に、知的財産関係では特許庁から審判長クラスの人が出向してきて、裁判官を技術的にサポートしている。そういうことによって、どんな新しい技術が来ても、それはやはりきちっと対応できると思うし、しなければならないわけですから、これは裁判所は何としてもやるということでは自信を持って言っていいのではないかと思います。
 ちょっと余談になるようで恐縮ですけれども、例えば、裁判所の前に特許庁が果たして医療関連の治療方法や何かの審査をして、ちゃんと審査できるのかということだって問題があれば問題なんですね。だけれども、そういうものは新規の技術、今まで特許を認めなかった技術、そういうものを言わば解禁して特許性を認めるときには必ず遭遇する問題だと思うんです。
 昨年、私、ワシントンに行ったときに、先ほど言った1996年の医師の特許権の効力が及ばないという規定をつくったのは、モッシングホフという特許庁長官ですが、もう今は辞めておられますけれども、モッシングホフ氏に会って、日本で果たして医療関連発明を、特許性を認めたら、特許庁はちゃんと審査できるだろうかという危惧と、いろんな不安もあるんだけれどもと言ったら、そのときに言われたのは、竹田先生、1902年にライト兄弟が飛行機の発明をした、出願をした。それでは、その新しい技術について特許庁の審査官で技術専門性を持っていたという人はいるか。つまり、特許制度というのはそういう新しい技術が生まれるときには、常にそういう問題に遭遇するので、それをやり切るのが特許庁の任務だし、同じように裁判所も、それが任務だと思います。

○井村会長 ありがとうございました。
 さっき、北村委員が言われた利益相反をどう考えるのか、心臓の弁を発明した人がその弁ばかりを使うという話の問題ですね。その問題について、何か御意見ございますか。

○片山委員 そういうコンフリクトの問題は、弁護士は実務上、日ごろから常にそういう役割を期待されておりまして、社外取締役にしても、そういう場面によく出くわすわけです。
 これは、倫理だけに任せていたのでは、やはり社会全体としては具合が悪い問題なんだろうと思います。それはやはり、そういうコンフリクトが生ずる場面では、その病院の中に委員会を設けるなり、そういう第三者のチェック機構を置くということで初めて、制度的には解決できるのではないかという感じがいたします。

○井村会長 特許を取ったから、すぐにコンフリクトが出てくるわけではなくて、それが何らかの形で実用化されたときに出てくるわけですね。だから、その辺りについては、まだ日本ではこれからの問題ですけれども、この特許とは無関係に、やはり大学や研究機関としては考えておかないといけない問題だろうと思います。

○片山委員 商法上も勿論、そういう場合には自己取引に当たるわけですね。必ずその取締役は、自分が持っているほかの会社と取引をする際には、取締役会の決議の際には自分は抜けて、そこでほかの人たちだけで議論をして決めなければいけないという制度がありますので、同じような話になるのではないかと思います。

○北村委員 商業取引も。

○片山委員 はい。


○井村会長 もう少し。どうぞ、それでは、平田委員。

○平田委員 この医療関連行為の特許に関するこういう調査会が開かれたのは、今、置かれているいわゆる生命科学というサイエンス、それからテクノロジーが非常に大きな進歩の中にある、そういう時代背景があると思うんですね。確かに、そういうものから発生する新しい医療行為、医療技術とかといいますと、エシックスの問題とか、安全性の問題とかいろんな意味で非常にしっかり考えなければならない問題があろうかと思うんです。
 それから、新しい技術に知的財産権を認めて、それが実際に運用できるかという先ほど指摘された問題ですけれども、これらは知的財産権の本質的な問題ではないと思うんですね。新しい技術の実用化では、知的財産権に関係なくそういうことは非常に大きな問題だと思うんです。
 ですから、知的財産権を与えるということと実用化におけるこれらの課題とを混同してしまうと何か先に進まないわけです。

ここで再生医療の問題を考えてみますと、人の組織の中に多機能に分化する、いわゆる幹細胞があるということがわかったことで、非常に大きな研究開発のドライブがかかりました。
 調べてみますと、例えば日本の血液関係の先生方にはそういう性質というものにいち早く目を付けて、世界に決して劣らないというか、むしろ進んでいる研究をなされているんですね。いろんな組織に分化させて、とても薬では治療できない、そういう臓器の修復とかの障害を根治させるという非常に大きな医療の革命的な、そういう技術開発をいち早く取り組んでいて、もう実績も上がっているわけです。研究論文なんかも随分あるんですけれども、例えば骨髄からの幹細胞が心臓の筋肉に分化したとか、それを心筋梗塞にアプライできるかという技術、これは動物実験も随分行われているわけですけれども、日本の場合、これらの新しい治療方法については知的財産権を付与されないということで企業がそこに参画しにくい、そういうインセンティブが働かないために、いつの間にか、アメリカがこの辺の特許を全部カバーしてしまったんですね。
 特にバイオロジーというか生命科学関係というのは非常に長期の研究開発が必要でして、またその成果というのも非常に不確実でございます。ですから、非常にリスクの高い研究開発の投資が必要なわけで、やはりそこにしっかりとした知的財産権というものを付与しないと、恐らく産業界はこれに参入できないわけですね。
 ところで、アメリカやヨーロッパの大きな製薬メーカーがそういう技術分野で進んでいるかというと、むしろ逆でして、彼らはそういうリスクのあるものは実は余り手をそめてないんですね。むしろ、小さなベンチャーのバイオテクノロジー企業が、非常にリスクをかけながら、しかもやはり、知的財産権というのを非常に意識しながら、そういう発明をしているわけですね。
 ですから、日本にそういう環境がないと、関連技術を日本に入れる場合でも、なかなか移転がしにくいわけですね。例えば、中国に一番先端の技術のものを持っていくというのは、やはり知的財産権保護面でのリスクが高いですからヘジテートしますね。それと同じで、アメリカと同じように日本にそういう技術が、日本の国民の医療改善に資するような新しい技術をスムーズに入るかという意味でも、そこに障壁があるわけで、そういう観点からも考えなければいけないのではないかと思います。

○井村会長 ありがとうございました。平田委員のお話、一般論として最終的に非常に重要な議論だろうと思うんですが、その前に少し、もうちょっとコンフリクト・オブ・インタレストの問題でだれか、特に現場におられる森下委員とか上田委員、何かありましたら。

○森下委員 国全体の話としては経済産業省、それから総合科学技術会議等で議論をしていただいていると思うんですけれども、大学レベルでも来年、独法化がありますので、それに向けて現在、大学の中での議論というものも進んでおります。
 ただ、アメリカでも確実にコンフリクト・オブ・インタレストのところを決定しているかというと、やはりそうでもなくて、各大学で非常に異なるんですね。そういう意味では、厳しいところもあれば緩いところもある。あるいは、それほど大きな問題になっていない分野もあると。ちょっと、かなりばらつきがありますので、日本の中でも例えば、工学部系と医学部系が一緒でいいのかとどうかという議論がやはり出ていますので、ここのところは各大学ごとに決定されてくる。恐らくそれは、来年4月以降には早急に決まると思いますので、特許とはまた別のところでの議論が出てくるのではないかと思います。
 先ほどの弁のお話にもありましたけれども、それこそ外科の先生方は御自分で発見された手術を必ず皆さんされるわけですね。そこに経済行為が出ていないから、ある意味関係ないのかもしれませんけれども、その方法が逆にほかの方法よりすぐれているかどうかというのはやはり、なかなか客観的には証明しづらいというところで、医師の論理というのは常にあるんだろうと。

○北村委員 お金はすぐ返ってくるけれども、それは歴史上の判断で、教科書に残るかどうかでやってきているわけだな。

○森下委員 そこは非常に長いお話になりますね。

○北村委員 お金は翌年に、売れた途端にもらえることがあるけれども。

○森下委員 ただ、患者さんが来るという点では、それだけで多くの利益を生むという考え方もあると思いますし。

○北村委員 同じたとえにされると、ちょっと。

○森下委員 ただ、心臓移植の歴史でもいろいろ批判もある中で新しい技術ができてきたと。そういう意味では多分、いずれは同じ議論になってくるんだと思うんです。ただ、現時点ではいろんな問題が絡んでいるというのは言われるとおりだと思いますし、そこはやはり、各大学ごとにポリシーを決めていって、今ちょうど整備をしている間ですので、もう半年以内には話としては決着がつくのではないかというふうに思っています。

○井村会長 これは、産学連携を推進するときに、利益相反というのは非常に大きな問題ですよ。だから、今、北村委員が提案されたような問題もありますけれども、それ以外にも、例えば企業からお金をもらって卒業生をたくさん送り込むとか、今までも日本の大学はそういうことをやってきた。だから、いろんな利益相反が出てくる。これをきちっと大学としては決めなさいということは言っているわけです。それは現時点では大学レベルで決めるということになっていると思うんですけれども。

○森下委員 もう一点、責務相反というのがあるんですね。

○井村会長 責務相反もあるんですね。

○森下委員 それぞれの各立場においては、責務に対する相反というのもありますので。

○北村委員 それが大きな問題で、今、いろんな省庁関係の権限を持っているところが責務相反するところを1か所に置くな、分けろというような議論が行われているとおりです。

○森下委員 どちらも同じ範疇の中で決めていく。

○北村委員 それは医者と医療行為と、それから、医療関連行為の特許を持つ社長さんと、そういうところはやはり複雑になってきているので、私はある程度プラスαを加えておけば、こういったものを承認していくのは今の時代としては必要なんだろうとは認識はしますけれども、物と一緒にやられたのではいけないのではないかと思うわけですよ。

○井村会長 上田委員、お願いします。

○上田委員 大学で、その利益相反のルールを今、私のところでも決めているんですけれども、やはり工学部系から出ている案件と、医学部系で起こりそうな事案は相当に違うであろうという認識は、あのルールをつくっている段階でよくわかっておりまして、特別な配慮を払うように名古屋大学ではしております。
 それで、森下先生は内科の先生で、私は外科系の人間ですけれども、心臓弁の話ですけれども、格段に性能がすぐれている弁をある医療機関の特定の人が使うということは、開発者であろうがなかろうがあり得るわけでありまして、私はそれでも、やはり今の医学部の利益相反では、そういう異様なことが起こらないような手だてをやるべきだろうと思うんです。つまり、道徳だけで縛るようなものではないだろうと思うんです。ですから、そういった現象としても出てくることで、社会の指弾を受けるようなことはやはりやめておいた方がいいと思うんですね。
 さて、これまでの議論をずっと聞いておりますと、この医療関連行為特許を認めた場合のポジティブな面とネガティブな面が、それぞれの立場で述べられているわけですが、ネガティブな面を強く認識しておいでになる方も、ポジティブな面を否定しておいでにならないと思うんですね。ですから、北村先生もおっしゃいましたように、それらが共存し得るようなことを何かうまく法律的に持っていけないものだろうかというふうに思うんですね。
 というのは、私のところで前も例に出しましたけれども、今は小さなナノプローベというもので、遺伝子自体にさわって、分化を調節して幹細胞として利用するという技術が開発されようとしているんですね。このナノプローべというのは、8オングストロームとかいう非常に細いファイバーであって、これはもともとは工学部の人たちが考え出して、恐らく、一番最初は自動車であるとかロケットであるとか、工業製品に応用するつもりで開発されたものが医学に応用できるとなって、こういった事例が出てきた。今までは、工業利用のものが医学に利用されるという時代がずっと続いてきたわけですが、これからはそういったものが逆で、生命科学で開発を目的とした、つまり医療行為というものが特許化されて、目的が明確になったものが工業社会に利用されるというようなことが起こり得るわけです。ここで、医療行為における特許性を保護しておかないと、生命科学が工学を引っ張るということが非常に起こりにくくなるし効率も悪くなる。だから、ずっと先になったときに、あの時代が転換点だったんだなというような時期が今、来ているんだろうと思うんですね。
 だから、これからの生命科学の重要性というのは、かつての産業革命時代と似たような状況にあるので、やはり非常に大きな問題だろうと私は思います。

○井村会長 ほかに。それでは、広井委員、それから、澤委員、お願いします。

○広井委員 今のに多少関連して、秋元委員の今日、4つほど具体例を示されておられるわけですけれども、医療行為の特許と一口に言っても、かなり千差万別といいますか、ちょっと素人的に見ると、1番の時間差で投与といった辺りは必ずしも、果たして特許というものにする必要性があるのかというような印象を持ちますし、3、4辺りになるとかなりそういう必要性も大きいのかなという気がするんですが、言わんとすることは、一口に医療行為の特許といっても、特に何か必要度の高いものというのは何かカテゴリー化したりすることができるのかどうかというような、あるいは今の上田先生の話とも関連するんですけれども、オール・オア・ナッシングで医療関連行為の特許を認めるか認めないかというのではなくて、何か部分的にというのか、基準を明確な形にして認めるというような方法があり得るのかどうかというようなこと。
 あるいは何か、この資料の注でも「『物』の形で特許が認められる場合があります」という注が出ているわけですけれども、何かうまくといいますか、物に関連づけて認めるというような方法はあり得ないのか、つまり、すべて医療行為の特許を認めるということのあり得べき弊害を考えると、何かそういう、もうちょっと絞り込んだ形の対応があり得ないのかということを思います。

○秋元委員 最初、2番目のページですか、フロントページの次に言いましたけれども、医療関連行為というと、純粋に医師がやるような行為と、それに薬、あるいは器材が絡んでやられるような場合、あるいは器材、薬剤の有効な使用方法、こういうふうに分けられると思うんですね。
 先ほどの世界医師会の声明のところでいろいろ議論があって、アメリカがいいかどうかは別として、アメリカが結局、医師会と産業界で妥協したところというのは、医師が純粋にやるものについては特許権が及ばない。ただし、薬とか機器、これが絡んでくるような、そういう薬や機器を使用するような治療行為というか、治療方法、これについては特許を与えるということで、そこにはっきりとお医者さんのスキルというものと、それから、そこに薬、あるいは機器、機器というのも、先ほども言いましたように定義は難しいんですが、細胞のシートなんかも実はこれは機器という範疇に入るんですけれども、そういうものを使ったものとはっきり線が引けるだろうと。
 そういったときに、最初のここの1みたいな例が本当に特許になるのかどうかという御質問もあったかと思うんですが、これは竹田先生の資料の最初のページで「1. 特許取得のプロセス」のところで、特許の要件というのがございます。このところに進歩性というのがないといけないんですが、ただ、時間差でやるというのはだれでも思いつくんでしょうけれども、そういうことをやることによって効果とか副作用が非常に低減する、普通の当業者、その業界の方が考えても思いつかないような効果が出るということについては、これはやはり進歩性があるということで、単純に組み合わせるということではなくて、それを組み合わせることによって非常に思いつかないような効果が出るというときには、やはりこれは特許を与えるべきだろうというふうに考えて、この絵から見ると、何だ、時間差でやっているんじゃないかと思うんですが、時間差にすることによって非常に効果が増すとか、あるいは副作用が非常に低減して、いい治療効果が出る、そういうようなときにはやはり、これは特許として成立するというふうに考えております。

○井村会長 この場合に、言わば医師の免責があるわけですから、そうするとどんな利益があるのかというのがちょっとわからないんです。

○秋元委員 例えば、そういうような形でこの2つの医薬品が使えますよということを示唆して物を提供したときには間接侵害になります。だから、そういうことを示唆しないでお医者さんが2つを買いまして、お医者さんの裁量権で自分がそのとおり、特許に書かれているようにやるとか、あるいはそこを更に改良してやるとか、これはまるっきり免責になります。

○井村会長 いいですか、広井先生。この辺、わかりにくくて。

○広井委員 物に関連づけてというのは、ここにも注で「『物』の形で」というのが出ていますけれども、何かうまく関連づけて、多少ブレーキをかけるといいますか、限定するというような方法はあり得ないのか。

○秋元委員 お医者さんの行為について、もう少しブレーキをかけるというと?

○広井委員 書いてありますように、特許する範囲が、認める範囲。

○秋元委員 これもなかなか難しい問題でございまして、それでは先端医療技術、あるいは高度な医療技術、あるいは医療関連行為、どこで線を引くかというのは、これは非常に線引きが難しいでしょうし、時代時代によって、その基準も違ってくると思います。
 竹田委員が言われたように、本当はそこをすぱっと切るのが、一番法律的にはすっきりしているのではないかと思うんですが、私どもが考えているのは、いわゆる先端とか高度とかそういう言い方をしておりますが、そこで非常に時間なり金をかけて開発して新しい、本当に有効な治療法が見つかったとすれば、それはやはり、それに対する投資とか、そういうものも含めたインセンティブを含めて権利を与えるべきではないかというように考えておりまして、実際の臨床の現場はそういうところで時間をかけ、臨床例を集めて、その結果本当の有効性がかなりきちっとわかる、そのようなところになったら、それはやはり、権利を与えるべきだろうと思います。

○井村会長 ちょっと澤委員が手を挙げておられるので、その次に片山委員、お願いします。

○澤委員 また利益相反の話に戻ってもよろしゅうございますか。

○井村会長 どうぞ。

○澤委員 今日、ちょっと用意できなかったんですが、今度、アメリカ医師会、また今、日本医師会でも医師の倫理行動プラクティスですね、倫理行動規定を定めて、国民から意見を求めているところで、そこでもやはり利益相反の部分というのはかなり問題になってきていますので、それを資料として皆さんにお配りしたいと思います。
 それで、やはり今、一番、先ほどの司法制度の問題にしてもなかなか、医療の特許というと、もうやらなければいけないというところで、鑑定人制度に頼らざるを得ないところがあるんですけれども、基礎研究を産業化するフロアが全然育っていなかったということもあって、基礎研究から商業ベースに乗せるまでは、本当はTLOができていますからTLOがやるべきなんだと思いますけれども、アメリカのビジネススクールなんて、それだけで単位が取れるほど非常に重要なところなんですけれども、今、それと行動機関とくっついてくるのは、この間からずっと言っているように、国税を補助金としてつくられた基礎研究から商業ベースに乗せるとき、かなりいろいろなことが問題になってきまして、今はそれをかなり細かくした規定があります。
 そういった部分も、井村先生がおっしゃるように、それは学問と産業と官が結び付くときの大きな設計の中の一つの問題なのかもしれませんが、医療というのは、そこに患者さんへの情報公開も含まれてくるというところで、TLOの中でも工学部からの知財のあれとは少し違うのではないかなというところがあります。だから、今、お医者さんが患者さんに全部言っていないことが多過ぎるんですね。

○井村会長 確かに、ほかの産学連携と医療の場合、やはり患者さんという人がおられるという点で違うところがありますから、一度医師会で検討されたのをここへ出していただいて、議論をするというのは必要ではないだろうかという気がいたします。
 産学連携でやったときは一般論ですからね、ベンチャーを起こすときの利益相反の問題とか、それから、産学連携の利益相反、勿論、責務相反も入ってくるわけですけれども、そういったことと医療の場合とどう違うのか。それから、違うとすればどういう配慮を我々はしないといけないのか、そういう辺りは、ここで議論をしていただいた方がいいのではないだろうかというふうに思います。
 それでは、片山委員、お願いします。

○片山委員 先ほどの話でも構いませんか。

○井村会長 結構です。

○片山委員 この秋元委員の1番の例で、ここのは実際の事件になっているのがあると思うんですね。それは、薬かどうかは別としまして、ある時間差でもって最初に投与されたものから、ある時間がたったら弁か何かが開いて、その次の薬が入っていくというような、実際には恐らくそういうような商品形態で売り出されるであろうと。
 それが果たして、この世の中ですから、そういう便利なものがあると、やはり2つわざわざ買ってきて、ある時間をはかって投薬するということをやるよりも、病院としてはできているものの方が便利だから使われるというようなことで、そういう事例があるだろうという御意見かなと思ったものですから。実際にそういう例は、例えば診断薬だとかそういうものではございますね。

○井村会長 小野技監、どうぞ。

○小野特許技監 今の御発言の点を補強するような例でございますけれども、例えば、先ほどの1番の例にあるようなものの場合、つまり、剤を混ぜたものとか、時間差みたいなものでございますけれども、先ほど片山委員から御指摘がありましたように、パッケージで順番に服用ようにする薬剤、そういう包装をされた剤という形態で、特許が与えられるものはございます。
 ただ、具体的にそれは同じパッケージで一つの非経口型、いわゆるリンゲルみたいなものに入れている製品としてであれば結構なのですが、そうではないもの、つまり、順番に飲んでいくというだけの、まさにお医者さんが治療をされるようなものになりますと、これは先ほどから御指摘がありますように、剤の形態で特許を受けることは不可能でございます。
 もう一つ、竹田先生がいらっしゃるので、私どもから、常々に疑問を感じていることをご質問したいのですが。この秋元委員の資料の6ページみたいな、具体的にいろんな薬剤が順番に投与されるようなものでございますが、これは先ほど秋元委員が御指摘のように、すべて知られている薬剤でございますし、ほとんどその特許権は消滅しております。これを順番に組み合わせることが仮に特許になった場合に、先ほど会長の方から御質問がありましたように、この組み合わせの投与方法は医師しか使えないわけでございますので、医師が全部免責になったとして、特許権として一体どういう効力があるのかと疑問を感じております。先ほど秋元委員からも御指摘がございましたように、それぞれの医薬に、例えばタキソールのパッケージ等に、こういうふうに利用しますと書いていれば、特許で押さえられるということになるのでしょうか。
 そうでない場合は、多分権利行使できないということになり、こういう組み合わせになったことが、ほとんど公知の技術の寄せ集めに過ぎないということになりますと、やはり間接侵害としても、実質上、このようなものを特許とすることは本当に意味があるのかと常々疑問を感じております。その辺、教えていただければと思います。

○井村会長 何かございますか。秋元委員、どうぞ。

○秋元委員 今、この例が出ましたんですが、今度は弊社の例になりますけれども、実はアメリカの時には、こういう併用という特許が一応、治療法として認められまして、これについては非常に強い権利行使ができます。これらをそれぞれ売っているようなところに対しても、やはり権利を行使することが可能でございます。まさに権利行使がないというのではなくて、できるということです。先ほどの広井委員の1番の例は、まさにこれです。

○澤委員 どこに対してですか。

○秋元委員 製薬会社に対してのみです。

○井村会長 はい。

○田村委員 先ほど、広井委員から物で限定した特許の可能性というお話があって、それに今、いろいろと関連する話が出ていると思いますが、例えば、先ほどから例に挙がっているこの2ページの1の例ですね。この場合は薬ということでしょうけれども、例えば、ちょっとこれでは考えにくいですが、薬という形の中で何か一定のものを投与する、時間差で投与する機械とか、そういう形のいろいろな医療関連機器みたいなもので特許を取れるわけですね。現に実は、今でも取れているわけです。
 逆に言うと、それでは今度、医療特許を特許方法として認めたとして、全部、医師免責で何がいいところがあるのかという、結局、最大問題点はそこにくる。だったら、今までと同じように物で認めればいいのではないかという話にもつながると思うんですね。
 竹田先生の8ページに明確に図が出ておりますけれども、医療関連行為、治療方法とか診断方法について特許を取るな取るなという話をしていますが、結局、医師免責、しかも、いろいろなタイプの医師免責がありますが、広範な医師免責を認めたとすると、実際はこの上の「直接侵害」というのはほとんど問題になりませんで、下の「間接侵害」の問題ということになります。 これと今やっている個々の医療機器、実は今、特許と言われるとどこが違うのかと言いますと、結局、だれがお金を一番取れるかというか、だれのところにお金が流れるかという違いなんですね。今ですと、一番最初に、この直接侵害に相当する特許方法をすごい御苦労をなさって開発した方がおられたとしても、そこに特許がされない、間接侵害もあり得ないということで、そうすると、次のその方が発明した、特許にならない医療方法について、医療関連機器を別の方が発明したと。その方のところが一番最初の特許になるということになります。
 それに対して、新しく今度、医師免責付きの、しかし、治療方法についての特許が取れるということになりますと、最初に御苦労なさった方が間接侵害でそこのところも押さえますから、そこについて、その方と協議なり何なりして、ライセンス料が流れ込むという形になります。それで一点ですね。
 それから、もう一つ大きな違いは、今ですと最初にこの治療方法を開発なさった方が特許を取れないにしても、そのときには医工連携ですから、恐らく最初の装置くらいはあるだろうという可能性もあります。ただ、その場合でしても、この装置の構造等で特許を取っておりますから、同じ治療方法に使われるのですが、構造が違うものについては効力が及ばないということになります。そうすると、私のような者から見ますと、2番目の方は装置をつくるには、それは御苦労なさったかもしれないけれども、フリーライドを一番最初のもともとの治療方法を開発した方にしているわけで、そこにお金が流れ込まないと、やはりちょっと、特許の感覚からいくとおかしいのではないかという気がします。 それが今度、今、提案なされているような治療法プラス医師免責の特許でありますと、構造が違っても、この治療方法についての間接侵害に当たるものは全部押さえてありますので、そこにライセンス料が流れ込むという違いになっている。ただ勿論、それについて、やはりそれは丸取りし過ぎだとか、いろんな御意見があるかもしれません。基本的には、そういう違いがあるということです。

○井村会長 竹田参考人、何かありますか。

○竹田参考人 間接侵害がどの範囲で成立するかという問題になると、それはさっき言ったように、判例、学説も分かれているようなところですし、問題はあるんですけれども、例えば、秋元委員の6ページのようなものは、そこで使われている薬が全部、公知の薬であるとしても、それを新たにこういう形で組み合わせることによって、がんに非常に著効のある治療方法を見出したというのであれば、それはそれで特許性は持つと思うんですね。ただ、それでは、医師が免責されると後はどうなるかということの問題になると、これはいわゆる、日本の間接侵害の第101 条の規定に当てはめてみると、ニノミ品ではありませんから、この特許発明のみに使うものでないから、それは従来のニノミ品のみが間接侵害だという考えからいうと、間接侵害の成立する余地がないということになると思いますね。
 ただ、今度は法改正になりまして、他の用途があっても、特許発明実施の用途に使うことが適していて、かつ、それを知って、提供するときに間接侵害になるという、いわゆる中性品と言われるものについても、間接侵害の範囲が広がりましたから、それでいくと、例えば、この薬をみんな、ある製薬メーカーが販売したものであって、それをすべて、提供することになると、他の用途があるからといっても、間接侵害の責任は免れないという場合も出てくるのではないかと思いますね。

○秋元委員 特に、例えばタキソールを使うようなお医者さんのところに併用するものを売るということは、非常に間接侵害の可能性が高いということにもなりますね。

○竹田参考人 そうなるだろうと思いますね。

○井村会長 売るだけでですか。

○竹田参考人 はい。そうなると思いますね。ただ、それには主観的要件とかいろいろあります。

○井村会長 見城委員、どうぞ。

○見城委員 済みません、いろいろお話を伺ってわかってくると、またわからなくなるという、申し訳ないんですけれども、一つひとつ、ちょっと整理させていただいた方がいいと思いまして、先ほどから出ています医療行為に、純粋な医療行為という言葉が出てきましたが。

○秋元委員 お医者さんのスキルだけという。

○見城委員 お医者さんの特許に関わるところですか。

○井村会長 機械とか薬物を使わないもの。

○見城委員 使わないという、それでは何を。

○秋元委員 例えば手術とか、そういう言葉がございますね。

○見城委員 どういうことですか。

○秋元委員 手術すると。

○北村委員 そういうのも違ってきますね。

○見城委員 機械、薬品が使われて。

○井村会長 機械を使いますけれども。

○見城委員 みんな使ってくるので、例えば、純粋な医療行為は関係ないというような言葉が出たものですから。

○井村会長 こうやって手で診察するなんてのは、新しい方法を考えても特許にならない。

○見城委員 というふうな解釈ですか。

○井村会長 手術でも、特別なものを使わなければ、ということ。

○見城委員 いわゆる、今のおっしゃった純粋な医療行為とは。


○秋元委員 特許がある機械を使って、もし手術をするといったときに、普通の場合はその機械を買うときに、もう権利が消尽しているという考えも、権利がもうなくなっているという考えもございます。
 そうであれば、お医者さんがその機械を買って使うことについては、侵害にはならないと。

○片山委員 アメリカで実際に事件になったのは、白内障のレンズの部分をどこから切って、どういうふうに切って取り出して入れ替えるという、そうすると縫わなくて済むので、予後に、視界がゆがまなくていいというような特許だったようなんですね。そういうものが典型的なものなのではないでしょうか。目の横のどの部分をどういうふうに切るというような発明だったという記憶です。

○見城委員 あと、やはり伺っていて、だんだん話が煮詰まりますと、結局、患者の立場というのはこの際、この検討する委員会では黙っていなければいけないのかという気がしてくるんですね。

○井村会長 いや、医療ですから、そんなことはない。

○見城委員 済みません。どうしてかというと、一番、この中で重要とするポイントは何かというところが、私伺っていて、結局、国際的に特許というものを取っていく場合に、国としての利益をまず考えているのか、本当は利益というのは最終的には同じところに行くと思うんですけれども、やはり企業なのか、それは医療を受ける国民にとっての利益なのかという、この辺りもできましたら、専門用語は取り替えますが、実際はそれを受けるのは全く一般の人ですし、その辺りのところでやはり、もう少しそこを明確に御説明いただける方がいらっしゃればありがたい。

○井村会長 できたら、ちょっと事務局で論点整理をしてもらいますから、その中でなぜ医療行為に特許が必要なのかということを整理していただこうと思います。その中で、今の見城委員の質問に対して、ある程度答えられるようにして、その上でまた更に異論があれば議論をしていただくということになると思うんです。
 医療行為ですから、私は患者さんの不利益になることはやってはいけないと思いますね。だから、その辺りは十分な配慮をしながら、しかし、今おっしゃったように、国際的にも競争が激しいし、企業も大事だし、それから、患者さんの利益になるような新しい医療が日本でできるだけ生まれやすい環境をつくるということも大事ですし、いろんなことがあるわけですね。
 なんでも全部、外国から輸入しないといけないということになってしまうと、やはり日本は数年遅れてしまうなど、いろんな不利があるわけです。

○見城委員 そのものの一つに、いつもこの中の議論では、アメリカを一つの理想像として、モデルケースとしてお話が出てくるんですが、私の小さな知識の中では、決してアメリカに住んでいる人たちから、いろいろなアメリカの情報を得ますが、医療の状況が受ける患者側として理想的であるとか、最新の技術をごく一般の人が簡単に受けられるかどうかということでは、むしろ疑問に感じるものがありまして、医療を受ける国民のレベルとしては、私は日本の方がよろしいと思っている1人なんですね。
 ですから、その辺が常に、アメリカの特許を認める、そのアメリカのやり方による医療制度の利益ということでは、どうしても企業、またはそれに関連する医療のお医者様の立場とか、そういうところが出てくるんですが、患者の立場で本当にアメリカでそういった制度の下に、大変メリットのある医療を一般に受けられているのか。保険の制度も違いますから難しいんですが、ただ、やはり例を出されるならば、それを受けている患者側のメリットですとか、それによって難病の人がどんどん日本の率と違って、わざわざ日本に来ないでアメリカの国内で治っていると、例えばそういう例がたくさんあるならば、むしろそういうデータを出していただいて、日本もこういうふうな形になるんだと、片方が動けば片方、患者側も動くはずですから、例えばそういったところも見せていただきたいと。

○井村会長 医療の全般をここで議論するわけではないので。

○見城委員 いや、そうではないんですけれども。

○井村会長 全体像を提示することは非常に難しいと思います。
 ただ、おっしゃるように、特許の問題を議論する中で、やはり患者さんが不利になるとか、日本の医療のレベルが低下するようなことは起こしてはいけないということは考えているわけです。医療の全体像は、それはどこにも出しにくいだろうという気はするんですが。

○見城委員 全体像がもし難しいなら、今、出ています、こういった秋元委員がお示しになっている4つの具体例として挙げられましたけれども、こういった抗がん剤ですとか、先ほどから出ています細胞移植のものですとか、そういった幾つか挙げられている例で、例えば特許が認められているために、大変効率よく、一般アメリカ市民が非常に回復しているとか、大変いい治療を受けているとか、そういうようなものはあるはずだと思うんです。この様に例が挙がっていますので、私たち患者の側がもし考えるとすれば、そういった例に対しての結果を見て、また日本も考えるという形になると思いますので、よろしくお願いいたします。

○竹田参考人 ちょっと追加して、一言よろしいですか。

○井村会長 結構です。

○竹田参考人 私がこの委員会で発言するのは今日だけだと思いますので、ちょっと最後にお願いを兼ねて申し上げておきたいんですが、今、見城委員がおっしゃったことは私も常々大事だと思っていて、そのために、私は、健康の回復増進、生命の維持に役に立つものであって、かつ、それが産業社会の発展に貢献するようなものであるというときに、医療関連発明は特許性を認めるべきだと常々思うし、そう言っているわけですね。
 そのためには、具体的な検証が少し足りないということはわかりますけれども、それを膨大な医療の分野全部についてやるということは非常に困難だし、これから先の医療関連発明を考えていく上には、私はこの委員会で医療関連発明を一蓮託生に特許性を認めるとか、認めないとかというのではなしに、先ほど広井委員が言われたことに私、基本的に賛成なんですが、もう少し医療というものを類型的にでも分けて、日本の産業社会の発達にも役に立つし、それが同時に、国民の健康にも寄与するんだというような分野として、早急にそこに着手しなければならないことは何かということの視点から、是非とも御検討をいただいて、前向きに対処していただけたらというのが、私のお願いです。

○井村会長 ありがとうございました。その辺りの問題、広井委員が一番詳しいかな、どうですかね。また、御発言いただいて、日米の医療制度が全く違いますから、単純比較が難しいですね。だから、その辺の比較はかなり難しいと思います。
 それから、もう一つ、やはり我々として気をつけておかないといけないのは、こういった特許を認めることによって、医療費が値上がりしてしまうということがあると、これは患者さんの負担が大きくなるとか、国の負担が大きくなるということで困るわけですね。今まで伺った範囲では、そういうことはないと考えて、秋元委員いいでしょうかね。

○秋元委員 この前、最初のときのどなたかの御提案だったと思いますが、新しいものを開発するためには、やはりお金がかかる。短期的には、特許料というもののみを考えれば、非常にミクロに考えれば上がるかもしれないけれども、それによって全体の患者さんが減る、あるいは将来、その技術が非常に普及すれば安くできるということになれば、トータルとしては安くなるのではないかという御意見が、最初のときか何かにあったかと思います。私もそう思います。

○井村会長 ほかに何か、ここで議論をした方がいいということがございましたら、お出しください。

○見城委員 もう一つだけいいですか。秋元委員の4ページ目に「治療方法の特許化に対する製薬企業のニーズ」、要望する企業15社とあって、要望しない企業ゼロと言っています。これはどういうことですか。

○秋元委員 それは、上位15社に聞いたら、すべて要望したという意味でございます。製薬協の中には80数社入っておりますが、上位15社に聞いたということで御了解をいただきたいと思います。ただ、上位15社で、恐らく研究開発費については、日本の場合は80%ぐらい、70%以上は、カバーしているということです。

○井村会長 それでは、これで3回議論をしていただきまして、まだまだ問題も残っておりますし、私にもわかったようでわからぬところもまだ残っておりますから、もう少し議論が必要だと思うんです。
 今までに出た議論を一度、事務局である程度まとめていただいて、どういう論点があるのか、今日は竹田参考人に来ていただいているんですが、先ほどおっしゃったように、全般をぱっと認めてしまうのか、そうではなくて、もっときめ細かく、いろんな医療の形態を見て、ここはかけてもいいのではないかというふうな形にするのか、そういう問題もありますし、先ほど利益相反については、医師会の考え方も次回に言っていただくということでもありますし、いろんな問題がまだ残っていると思います。
 だから、そういうものを少し論点を整理していただいた上で、これからどういう議論をするのがいいのか、どういう人を参考人として来ていただくのがいいのか、そういうことを議論することが必要ではないかと思っておりますので、次回以降はそういうことでよろしゅうございますか。
 それでは、次は少し間があきまして、2月5日木曜日でございます。大変お忙しいと思いますが、午後4時から、またこの場所で開催をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 どうも、大変ありがとうございました。