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第3回 医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会 議事録 | |||
1. | 日 時: | 平成15年12月18日(木)13:00〜15:00 | |
2. | 場 所: | 知的財産戦略推進事務局 会議室 | |
3. | 出席者: | ||
【委 員】 | 井村会長、秋元委員、上田委員、片山委員、北村委員、見城委員、澤委員、田村委員、平田委員、広井委員、森下委員 | ||
【参考人】 | 岩尾医政局長、小野特許技監、竹田弁護士(竹田稔法律事務所) | ||
【事務局】 | 荒井事務局長、小島事務局次長 | ||
4. | 議 事: | ||
(1) 開会 | |||
(2) 先端医療技術を巡る現状と課題について | |||
(3) 討議 | |||
(4) 閉会 |
○井村会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」、第3回の会合を開催いたします。本日は御多忙のところ、しかも年末のお忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
○秋元委員 それでは、時間も限られておりますので、早速本題に入らさせていただきます。
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○井村会長 ありがとうございました。
○竹田参考人 私は、我が国における医療関連発明の保護の現状と、現行特許法の規定及び特許法改正の必要について御説明いたします。
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○井村会長 ありがとうございました。
○澤委員 秋元委員にちょっとお伺いしたいんですけれどもね、医療行為を特許対象としている唯一の国がアメリカですよね。それで、武田製薬はアメリカにおける特許権というのはもう何本も取っていらっしゃる。
○秋元委員 弊社について答えるのか、産業界全体として答えるのかという問題で、ちょっと答えが違うかと思いますが。 ○澤委員 産業界全体のどちらでも構いません。 ○秋元委員 やはり、日本の産業界全体の競争力を強化するためには、そこに金が流れないと強くならない、そこに投資しないと強くならない。そうであれば、すべての会社がアメリカで権利を取るということであればいいんでしょうけれども、そうでない会社もかなり多いし、同じ会社でもそうでない場合があると。そうであれば、そこにインセンティブを与えるという意味では、産業界としては権利が発生しない限り、先ほどのスライドでも申しましたけれども、他社が容易に参入するということであれば、どうしてもお金を投入することができないということでございます。 ○澤委員 その開発費用は。 ○秋元委員 先ほど、あそこに出しましたけれども、いわゆる最適な使用方法、高度という言い方をするかどうかは別として、最適な使用方法を見つけるためには臨床でのデータも集めないといけませんし、それについて幾つかのデータを集めたら厚生労働省の承認というものも必要になります。そうしますと、そこにはやはり5年、10年、場合によっては数十億、100 億のお金が投入されるということになります。
○澤委員 よろしいですか。 ○井村会長 どうぞ。 ○澤委員 2002年だと、外国薬メーカーの売上高は1位、2位はアメリカではありませんね。ああいう、例えばグラクソ、ゼネカというところはどうやって対応しているんでしょうか。ものすごい大きい規模ですね。 ○秋元委員 勿論、グラクソ、ゼネカが出している医薬に関して、それの治療方法、使用方法の特許は出されております。 ○澤委員 それはアメリカにも出されている。 ○秋元委員 アメリカに出されております。 ○澤委員 だから、アメリカ型をなぜ日本に持ってこなければいけないかというのは、日本では、今、武田アンド アザーズになってしまいましたけれども、それも全然規模が違う。どれだけ追いつく追いこせといっても何となく、研究費にしてもファイザーとあれだけ差がついてしまっている現状から見れば、アメリカ型特許制度を日本に持ち込んだところでどうやっていくのかなという疑問はあるんです。
○井村会長 それでは、どうぞ、秋元委員。 ○秋元委員 今の澤委員のお話、確かにそのとおりでございまして、いわゆる産業界とアメリカの医師会、さっきWMAを言われましたけれども、アメリカの医師会が中心になって医療に特許を設けるべきではないと、いろんな訴訟事件がございましたから、1996年ごろにそういう議論が煮詰まってまいりまして、さっき竹田稔先生も言われたかと思いますが、産業界とアメリカの医師会の妥協の産物として薬と医療機器を絡む、そういうような医療行為についてはパテントの禁止事項から除外する、要するにパテントを与える、その代わり、いわゆる純粋な医療行為、医療機器とか医薬が関連しないような医療行為については特許を認めるという形で1996年に妥協した結果、現在のアメリカの状況になっているというふうに考えております。私どもはこの線でいきたいと、考えたいということでございます。
○井村会長 竹田参考人、何かございますか。 ○竹田参考人 どういう切り口からお話ししていいかわかりませんけれども、私は確かに産業構造審議会のワーキンググループで話したときにも、医療関連発明については、基本的にはこれを認める方向で立法措置を講ずるべきではないかという意見を申し上げてきました。
○井村会長 どうぞ、北村委員。 ○北村委員 ちょっと、秋元委員にお伺いしたいんですけれども、ヨーロッパは今、どういう状況に、例えば医薬品でも、ヨーロッパは日本よりも上位を走っている。同じような、ここで検討しているようなことがヨーロッパ諸国においても大きな問題として取り上げられているのか。例えばイギリスでもフランスでもスイスでも結構です。なぜ、日本より先にそういう動きが聞こえてこないのか、同じ悩みはあると思う。
○秋元委員 まず、先ほどちょっと話に出ましたけれども、現状でございますけれども、日本は剤という形で、便法として何とか保護しようと。 ○北村委員 それはヨーロッパでも一緒ですね。 ○秋元委員 ヨーロッパは、ユースという形を、使用という形で取っております。ヨーロッパの場合は医療は産業として認めているけれども、医療行為については除外するという除外規定をEUの方で持っております。 ○北村委員 こちらの利点と、アメリカの利点がありますね。 ○秋元委員 そうしたときに、私、まだ調査不足でございますけれども、それではアメリカで、本当に発達しているような高度の医療、こういうような医療をヨーロッパの人がアメリカに行って受けているのかどうか、あるいは日本の患者さんが日本で治療できなくて、アメリカに行って受けているのかどうか、逆にヨーロッパはヨーロッパで、それで自分たちでできているのかどうかと、これについてはまだ調査不足でございますが、日本の場合は、先ほどの全体の保険医療制度の問題は別として、非常に重篤な病気で、アメリカで治療を受けなければいけないというようなことも多々、新聞等では出ているかと思うんですが、それはやはり、日本でそういうものが実施できないというところにある。なぜできないかというと、そういう技術なり産業が発達していないのではないかというふうに思っております。 ○北村委員 ヨーロッパが。 ○秋元委員 いいえ、日本が。ヨーロッパがそうであるかどうかについて、先ほど言いましたように、まだ現在、調査不足であって、ヨーロッパについては今後の課題と考えています。 ○北村委員 そこを是非やっていただかないと、やはりヨーロッパがなぜ、もし早急にこういう対応をしていかないと米国と競争できないという感覚を持っているのか、あるいは60%の医薬品を米国は取っているから、早急に各国が決めてハーモナイズしたら当面の損害が大きいという判断をしているのか、その辺の本音のところもよく見ていただいて、そして我が国はどこを取ったらいいのか、米国一辺倒というと、やはりいろんなグローバルな問題でもいろんな違った考えが起こりますね。本当にそれでよいのかと。ですから、ヨーロッパがなぜ日本より先に歩み出さないのかというのはちょっと私にも疑問でして、やはり功罪があるのかなと思うんです。 ○秋元委員 調べさせていただかないと責任ある答えが出ないんですが、ヨーロッパはどちらかというとエシックスの方が非常に強く出ているというふうに思いますので、それは医療の関連だけではなくて遺伝子の。 ○北村委員 我々日本も、そうあるべきではないかと思うところ。 ○秋元委員 あるべきかないべきかは、これは議論の分かれるところですが、これも先ほど申しましたように、アメリカが一国で大体60ぐらいのシェアを占めてしまっているだろうと。 ○北村委員 それは、皆さんの産業界としてはよくわかるんですけれども、エシックスの方の関連が多いと言われると、やはり医療側としてはヨーロッパ型も参考にしたい、あるいは見習うべき点があるのかということもちょっと気になりました。 ○井村会長 今の問題点は、ちょっとまた調べていただいて、もしわかればお願いしたいと思います。
○小野特許庁特許技監 今、お答えできる範囲では、例えば、高度なX線の診断方法の事例とか、ヨーロッパ特許庁の基本的な審査基準の考え方、それから、ヨーロッパ特許庁の審決等を参照いたしますと、例えば人体に器具などを差し込むとか、そういう人体に直接絡むような診断方法の場合は、やはりお医者さんがどうしても関係するだろうということで、それ自体は一種の医療行為として、不特許事由としております。
○井村会長 もうちょっと具体的にこれもわかりますか。ヨーロッパは治療方法は認めない。ただ、診断方法はある程度認めるということなんですね。 ○小野特許技監 診断方法では、先ほど申し上げましたように、人体に直接適用する、つまり、メスとか何かを差し込んで行うということになると、どうしてもお医者さんがやらなければならないということになりますから、それは当然医療行為に該当するということで、特許から除いております。
○澤委員 もう一度確認なんですけれども、私が知っているのは島津製作所がレントゲンのガントレーの方にセンサーを付けまして、一番効果的に撮影ができるところはどこなのかというのを。でも、実際はあれはものが既にあって、それでユースの方も両方提出するということになっていて、今、日本からも同様な申請が3件出ているんですか。必ずしも、頭の中だけで考えたというのではない診断方法で、実際、今も使われて、非常に連想しやすいといいますか、これなら多分大丈夫でしょうというぐらいの、それが今、日本とヨーロッパの違いなのではないかと思います。 ○小野特許技監 今、澤委員の御指摘のとおりでございまして、やはり通常のX線診断とか、普通のエネルギー性診断、NMR等も既にございますが、新たな装置とセットで許可しているケースが非常に多うございます。
○井村会長 これは方法の特許として認められるのですか。 ○小野特許技監 方法特許として、ぎりぎりの線を引いています。我々が分析した範囲では、そのように理解しております。 ○井村会長 ほかに、いろいろ御質問等あると思いますが、いかがでしょうか。 ○北村委員 竹田先生にちょっとお伺いしたいんですけれども、やはり物と違って、医療行為的なものも含めた場合、先生が来られる前のプレゼンテーションでちょっとしゃべらせていただいた点なんですけれども、行為としての結果がいわゆる物ではありませんので、対象が患者という形になりますので、いろいろな同じ病気の名前が付いても、非常に初期的なものから末期的なものといろいろあるために、同じ特許が取られている手法を用いて治療を加えた場合でも、その結果はいろいろ変わってくるわけですね。
○竹田参考人 特許の権利の範囲というのは、明細書のクレームという特許請求の範囲で決まって、その発明を実施するに当たって、どのようにして実施するかという大要は特許の明細書の発明の詳細な説明に、これはどういう技術的課題を持って、この発明がなされたか、その構成はどうであって、実際の実施方法はどういうものであるか。そして、それの発明によって、どんな作用・効果が生ずるかということを掲げるわけですね。
○北村委員 それだけしかできないんですね。 ○竹田参考人 そういうものが世の中に存在している場合に、更にその欠陥をいろいろ検討して、それを改良する手術方法であり治療方法が世の中に出てくれば、それが医療技術の進歩につながってくる。だから、そこのところの安全性をそんなにやかましく言うことはないのではないかと。これは私1人が言っているわけではなくて、一般に医療関連発明を認めようというときには、そういう意味の、更に改良、発明を促し、それによって医療技術が進歩し、それが社会に貢献することになるのではないかという視点からとらえるべきではないかと考えるのが普通だろうと思います。 ○北村委員 やはり、医療手法における、特許ある医療手法を用いて治療をした場合の患者救済という面においては、それを選択した医師の責任であるという以外には、特に物に対するような救済措置、あるいは責任体制は取りにくいですね。 ○竹田参考人 そうでしょうね。 ○北村委員 そこで企業を兼任した医師がその企業の特許のある手法を優先的に行うと。前回申しましたように、米国の医師が自分が役員をしている会社のある種の弁を大量にその病院で使うというようなひずみが生じることを許してしまわないかと。それは特許があろうがなかろうが、おかしなことなんですが。 ○井村会長 先ほどの治療手技の特許があってもなくても、現在でも新しい治療手技を開発してますね。それに対して何か問題が起こったときの救済措置は、今のところはありませんね。 ○北村委員 だから、特許がある手法だとお墨付きにならないか。 ○井村会長 特許があると、それがお墨付きになるかならないかという問題ですか。 ○田村委員 今の点は、とても重要なことだと思うんですね。
○北村委員 そこなんですね。これがどうしても上流の特許になり得る。ですから、その下にあるべきものがまだ安全性も何もわからないときに、治療法の特許を上流で押さえてしまうということには充分な配慮がいる。そして患者に行う手法なんですから、物とは違った安全性、あるいは倫理性というものを少し加味しないと、医者側としては物と全く一緒かと不安がある。それを特許という経済的インセンティブからのみ判断してつくり上げてしまってよいのかと不安がある。先ほどのヨーロッパは、どう考えているんだろうというようなことも含めましてね。 ○井村会長 片山委員が手を挙げておられるので、それではちょっと。 ○片山委員 よく特許弁護士に、普通の方が聞かれるのは、例えば、そこにあるプロジェクターに特許登録済みとか、そういうような表示があるわけですね。特許登録済みと表示されていると一般の人はこれはいい技術なんだなと理解をされる。だからこそ、その特許登録済みというのが書いてあるし、それから、勿論まねしてはいけませんよという意味もあるんだろうと思うんですが。ただ、そこに例えば、その特許の技術内容に何か安全性上、問題がありまして、例えばプロジェクターでは加熱して火事が起こるかもしれないような実施例があって、どうも加熱の部分がまずいですね、何か措置を取らないといけないですねというようなものがあったときに、それでは、特許というお墨付きを与えたのが特許庁、つまり国であるから、それに対して国家賠償が、火事が出たときに請求できるか、あるいはそういうことを考えるかというと、一般の人は普通考えないだろうと思うんですね。
○井村会長 もう少し、ほかに御意見がありますか。まだ時間は十分ありますから。
○森下委員 竹田先生に御質問なんですけれども、先ほどのお話を聞いていますと、現在、我々医者の方は、実は訴えられる可能性に常にあると。要するに、現時点の特許法の範疇では、医師の行為というのは除外されていないということであれば、例えば医薬品を勝手につくってしまうとか、医薬品になっていないような発明であって、我々が勝手につくった場合、訴えられてしまう。あるいは、ある診断技術を使って、それを使った場合というのは訴えられるリスクというのは現時点の方がむしろ高いというふうに考えてよろしいんですか。 ○竹田参考人 医薬については、たしか第69条の第3項で規定があったと思いますけれども、今度解禁したような皮膚の移植についても、それをだれかが特許を持っていて、医師が実施した場合には、特許法の規定上は免責する規定はないということになりますね。 ○森下委員 つまり現時点では、逆に訴えられた場合は、裁判の結果ですけれども、損害賠償の対象にむしろなり得ると。 ○竹田参考人 それはなり得るんですけれども、私はだから、すぐに法改正すべきだということを言ってきたんですが、ただ、まさか裁判所がそこで医師の行為云々を違法だとは言えない。それは、例えば特許権の侵害も不法行為の一種ですから、不法行為には正当行為の理論という違法性の阻却事由があって、社会通念上、正当と認められるような行為であれば、形式上は不法行為に当たっても違法性は阻却されますよという理論があるから、多分、その辺を裁判所が使って、医師に責任を負わせることはないだろうと。それは私が考えていることなんですけれども、ただ、それを法的に保証されているか、担保されているかというと、それはないと言わざるを得ない。 ○森下委員 それでは、法理論上はもう改正をして、はっきり除外というのを書かないときには100 %の保証というのはないということですね。 ○竹田参考人 ただ多分、この前のワーキンググループの議論のときにも、すぐ法改正にいかなかった理由の一つは、第69条の第4項に私がさっき言ったような規定だけをぽんと設けたら、今度は医療関連発明を、全部特許しないと理由が通らなくなるわけですね。すると、第32条をどうしても手当して、そこに特許を受けることのできない発明に、例えば医療関連発明、ただし再生治療を除くとか、そういう規定を書くと、後ろ向きの改正をしているような感じになってしまって、なかなか、これは特許庁に聞かないとわかりませんけれども、特許庁としても取りにくいところだろうと思うんですね。
○井村会長 どうぞ、片山委員。 ○片山委員 先ほど、澤先生の方から裁判所の能力の問題を若干お話しになったと思うんです。私もその法曹に属する者ですし、竹田先生は特に、裁判所に元、属しておられたんで、竹田先生の方で裁判所の能力で、例えば医療関連発明を仮に特許にした場合に、そこで裁判所の審理において、それをちゃんと審理できるのか、それだけの受け皿が整っているのかという御質問だったように思うんで、ちょっと御意見を竹田先生の方に聞かせていただければと思ったんです。 ○竹田参考人 これは今、別の専門調査会で私も知財高裁の問題で議論しているところですが、いわゆる技術専門性が高い分野というのは、何も知財関係の侵害訴訟だけではなくて、それは公害の問題であっても、医療過誤の問題であってもいろいろあるわけですね。基本的には、裁判官は法律専門家ですから技術のことについて素人と言ったことがいろいろと批判されているようですけれども、技術専門家でないという点では素人なんですね。ただ、それは法律手続に乗って進めるわけですし、そこで技術的なところが争点になってきた場合に、それをカバーするものとして、法律制度としては一般に鑑定制度があるわけですね。そこで技術専門家の方、医療過誤では、よく医師の方に鑑定人になってもらっているわけですが、そういうものによってカバーする。それとは別に、知的財産関係では特許庁から審判長クラスの人が出向してきて、裁判官を技術的にサポートしている。そういうことによって、どんな新しい技術が来ても、それはやはりきちっと対応できると思うし、しなければならないわけですから、これは裁判所は何としてもやるということでは自信を持って言っていいのではないかと思います。
○井村会長 ありがとうございました。
○片山委員 そういうコンフリクトの問題は、弁護士は実務上、日ごろから常にそういう役割を期待されておりまして、社外取締役にしても、そういう場面によく出くわすわけです。
○井村会長 特許を取ったから、すぐにコンフリクトが出てくるわけではなくて、それが何らかの形で実用化されたときに出てくるわけですね。だから、その辺りについては、まだ日本ではこれからの問題ですけれども、この特許とは無関係に、やはり大学や研究機関としては考えておかないといけない問題だろうと思います。 ○片山委員 商法上も勿論、そういう場合には自己取引に当たるわけですね。必ずその取締役は、自分が持っているほかの会社と取引をする際には、取締役会の決議の際には自分は抜けて、そこでほかの人たちだけで議論をして決めなければいけないという制度がありますので、同じような話になるのではないかと思います。 ○北村委員 商業取引も。 ○片山委員 はい。 |
○井村会長 もう少し。どうぞ、それでは、平田委員。 ○平田委員 この医療関連行為の特許に関するこういう調査会が開かれたのは、今、置かれているいわゆる生命科学というサイエンス、それからテクノロジーが非常に大きな進歩の中にある、そういう時代背景があると思うんですね。確かに、そういうものから発生する新しい医療行為、医療技術とかといいますと、エシックスの問題とか、安全性の問題とかいろんな意味で非常にしっかり考えなければならない問題があろうかと思うんです。
ここで再生医療の問題を考えてみますと、人の組織の中に多機能に分化する、いわゆる幹細胞があるということがわかったことで、非常に大きな研究開発のドライブがかかりました。
○井村会長 ありがとうございました。平田委員のお話、一般論として最終的に非常に重要な議論だろうと思うんですが、その前に少し、もうちょっとコンフリクト・オブ・インタレストの問題でだれか、特に現場におられる森下委員とか上田委員、何かありましたら。 ○森下委員 国全体の話としては経済産業省、それから総合科学技術会議等で議論をしていただいていると思うんですけれども、大学レベルでも来年、独法化がありますので、それに向けて現在、大学の中での議論というものも進んでおります。
○北村委員 お金はすぐ返ってくるけれども、それは歴史上の判断で、教科書に残るかどうかでやってきているわけだな。 ○森下委員 そこは非常に長いお話になりますね。 ○北村委員 お金は翌年に、売れた途端にもらえることがあるけれども。 ○森下委員 ただ、患者さんが来るという点では、それだけで多くの利益を生むという考え方もあると思いますし。 ○北村委員 同じたとえにされると、ちょっと。 ○森下委員 ただ、心臓移植の歴史でもいろいろ批判もある中で新しい技術ができてきたと。そういう意味では多分、いずれは同じ議論になってくるんだと思うんです。ただ、現時点ではいろんな問題が絡んでいるというのは言われるとおりだと思いますし、そこはやはり、各大学ごとにポリシーを決めていって、今ちょうど整備をしている間ですので、もう半年以内には話としては決着がつくのではないかというふうに思っています。 ○井村会長 これは、産学連携を推進するときに、利益相反というのは非常に大きな問題ですよ。だから、今、北村委員が提案されたような問題もありますけれども、それ以外にも、例えば企業からお金をもらって卒業生をたくさん送り込むとか、今までも日本の大学はそういうことをやってきた。だから、いろんな利益相反が出てくる。これをきちっと大学としては決めなさいということは言っているわけです。それは現時点では大学レベルで決めるということになっていると思うんですけれども。 ○森下委員 もう一点、責務相反というのがあるんですね。 ○井村会長 責務相反もあるんですね。 ○森下委員 それぞれの各立場においては、責務に対する相反というのもありますので。 ○北村委員 それが大きな問題で、今、いろんな省庁関係の権限を持っているところが責務相反するところを1か所に置くな、分けろというような議論が行われているとおりです。 ○森下委員 どちらも同じ範疇の中で決めていく。 ○北村委員 それは医者と医療行為と、それから、医療関連行為の特許を持つ社長さんと、そういうところはやはり複雑になってきているので、私はある程度プラスαを加えておけば、こういったものを承認していくのは今の時代としては必要なんだろうとは認識はしますけれども、物と一緒にやられたのではいけないのではないかと思うわけですよ。 ○井村会長 上田委員、お願いします。 ○上田委員 大学で、その利益相反のルールを今、私のところでも決めているんですけれども、やはり工学部系から出ている案件と、医学部系で起こりそうな事案は相当に違うであろうという認識は、あのルールをつくっている段階でよくわかっておりまして、特別な配慮を払うように名古屋大学ではしております。
○井村会長 ほかに。それでは、広井委員、それから、澤委員、お願いします。 ○広井委員 今のに多少関連して、秋元委員の今日、4つほど具体例を示されておられるわけですけれども、医療行為の特許と一口に言っても、かなり千差万別といいますか、ちょっと素人的に見ると、1番の時間差で投与といった辺りは必ずしも、果たして特許というものにする必要性があるのかというような印象を持ちますし、3、4辺りになるとかなりそういう必要性も大きいのかなという気がするんですが、言わんとすることは、一口に医療行為の特許といっても、特に何か必要度の高いものというのは何かカテゴリー化したりすることができるのかどうかというような、あるいは今の上田先生の話とも関連するんですけれども、オール・オア・ナッシングで医療関連行為の特許を認めるか認めないかというのではなくて、何か部分的にというのか、基準を明確な形にして認めるというような方法があり得るのかどうかというようなこと。
○秋元委員 最初、2番目のページですか、フロントページの次に言いましたけれども、医療関連行為というと、純粋に医師がやるような行為と、それに薬、あるいは器材が絡んでやられるような場合、あるいは器材、薬剤の有効な使用方法、こういうふうに分けられると思うんですね。
○井村会長 この場合に、言わば医師の免責があるわけですから、そうするとどんな利益があるのかというのがちょっとわからないんです。 ○秋元委員 例えば、そういうような形でこの2つの医薬品が使えますよということを示唆して物を提供したときには間接侵害になります。だから、そういうことを示唆しないでお医者さんが2つを買いまして、お医者さんの裁量権で自分がそのとおり、特許に書かれているようにやるとか、あるいはそこを更に改良してやるとか、これはまるっきり免責になります。 ○井村会長 いいですか、広井先生。この辺、わかりにくくて。 ○広井委員 物に関連づけてというのは、ここにも注で「『物』の形で」というのが出ていますけれども、何かうまく関連づけて、多少ブレーキをかけるといいますか、限定するというような方法はあり得ないのか。 ○秋元委員 お医者さんの行為について、もう少しブレーキをかけるというと? ○広井委員 書いてありますように、特許する範囲が、認める範囲。 ○秋元委員 これもなかなか難しい問題でございまして、それでは先端医療技術、あるいは高度な医療技術、あるいは医療関連行為、どこで線を引くかというのは、これは非常に線引きが難しいでしょうし、時代時代によって、その基準も違ってくると思います。
○井村会長 ちょっと澤委員が手を挙げておられるので、その次に片山委員、お願いします。 ○澤委員 また利益相反の話に戻ってもよろしゅうございますか。 ○井村会長 どうぞ。 ○澤委員 今日、ちょっと用意できなかったんですが、今度、アメリカ医師会、また今、日本医師会でも医師の倫理行動プラクティスですね、倫理行動規定を定めて、国民から意見を求めているところで、そこでもやはり利益相反の部分というのはかなり問題になってきていますので、それを資料として皆さんにお配りしたいと思います。
○井村会長 確かに、ほかの産学連携と医療の場合、やはり患者さんという人がおられるという点で違うところがありますから、一度医師会で検討されたのをここへ出していただいて、議論をするというのは必要ではないだろうかという気がいたします。
○片山委員 先ほどの話でも構いませんか。 ○井村会長 結構です。 ○片山委員 この秋元委員の1番の例で、ここのは実際の事件になっているのがあると思うんですね。それは、薬かどうかは別としまして、ある時間差でもって最初に投与されたものから、ある時間がたったら弁か何かが開いて、その次の薬が入っていくというような、実際には恐らくそういうような商品形態で売り出されるであろうと。
○井村会長 小野技監、どうぞ。 ○小野特許技監 今の御発言の点を補強するような例でございますけれども、例えば、先ほどの1番の例にあるようなものの場合、つまり、剤を混ぜたものとか、時間差みたいなものでございますけれども、先ほど片山委員から御指摘がありましたように、パッケージで順番に服用ようにする薬剤、そういう包装をされた剤という形態で、特許が与えられるものはございます。
○井村会長 何かございますか。秋元委員、どうぞ。 ○秋元委員 今、この例が出ましたんですが、今度は弊社の例になりますけれども、実はアメリカの時には、こういう併用という特許が一応、治療法として認められまして、これについては非常に強い権利行使ができます。これらをそれぞれ売っているようなところに対しても、やはり権利を行使することが可能でございます。まさに権利行使がないというのではなくて、できるということです。先ほどの広井委員の1番の例は、まさにこれです。 ○澤委員 どこに対してですか。 ○秋元委員 製薬会社に対してのみです。 ○井村会長 はい。 ○田村委員 先ほど、広井委員から物で限定した特許の可能性というお話があって、それに今、いろいろと関連する話が出ていると思いますが、例えば、先ほどから例に挙がっているこの2ページの1の例ですね。この場合は薬ということでしょうけれども、例えば、ちょっとこれでは考えにくいですが、薬という形の中で何か一定のものを投与する、時間差で投与する機械とか、そういう形のいろいろな医療関連機器みたいなもので特許を取れるわけですね。現に実は、今でも取れているわけです。
○井村会長 竹田参考人、何かありますか。 ○竹田参考人 間接侵害がどの範囲で成立するかという問題になると、それはさっき言ったように、判例、学説も分かれているようなところですし、問題はあるんですけれども、例えば、秋元委員の6ページのようなものは、そこで使われている薬が全部、公知の薬であるとしても、それを新たにこういう形で組み合わせることによって、がんに非常に著効のある治療方法を見出したというのであれば、それはそれで特許性は持つと思うんですね。ただ、それでは、医師が免責されると後はどうなるかということの問題になると、これはいわゆる、日本の間接侵害の第101 条の規定に当てはめてみると、ニノミ品ではありませんから、この特許発明のみに使うものでないから、それは従来のニノミ品のみが間接侵害だという考えからいうと、間接侵害の成立する余地がないということになると思いますね。
○秋元委員 特に、例えばタキソールを使うようなお医者さんのところに併用するものを売るということは、非常に間接侵害の可能性が高いということにもなりますね。 ○竹田参考人 そうなるだろうと思いますね。 ○井村会長 売るだけでですか。 ○竹田参考人 はい。そうなると思いますね。ただ、それには主観的要件とかいろいろあります。 ○井村会長 見城委員、どうぞ。 ○見城委員 済みません、いろいろお話を伺ってわかってくると、またわからなくなるという、申し訳ないんですけれども、一つひとつ、ちょっと整理させていただいた方がいいと思いまして、先ほどから出ています医療行為に、純粋な医療行為という言葉が出てきましたが。 ○秋元委員 お医者さんのスキルだけという。 ○見城委員 お医者さんの特許に関わるところですか。 ○井村会長 機械とか薬物を使わないもの。 ○見城委員 使わないという、それでは何を。 ○秋元委員 例えば手術とか、そういう言葉がございますね。 ○見城委員 どういうことですか。 ○秋元委員 手術すると。 ○北村委員 そういうのも違ってきますね。 ○見城委員 機械、薬品が使われて。 ○井村会長 機械を使いますけれども。 ○見城委員 みんな使ってくるので、例えば、純粋な医療行為は関係ないというような言葉が出たものですから。 ○井村会長 こうやって手で診察するなんてのは、新しい方法を考えても特許にならない。 ○見城委員 というふうな解釈ですか。 ○井村会長 手術でも、特別なものを使わなければ、ということ。 ○見城委員 いわゆる、今のおっしゃった純粋な医療行為とは。 |
○秋元委員 特許がある機械を使って、もし手術をするといったときに、普通の場合はその機械を買うときに、もう権利が消尽しているという考えも、権利がもうなくなっているという考えもございます。
○片山委員 アメリカで実際に事件になったのは、白内障のレンズの部分をどこから切って、どういうふうに切って取り出して入れ替えるという、そうすると縫わなくて済むので、予後に、視界がゆがまなくていいというような特許だったようなんですね。そういうものが典型的なものなのではないでしょうか。目の横のどの部分をどういうふうに切るというような発明だったという記憶です。 ○見城委員 あと、やはり伺っていて、だんだん話が煮詰まりますと、結局、患者の立場というのはこの際、この検討する委員会では黙っていなければいけないのかという気がしてくるんですね。 ○井村会長 いや、医療ですから、そんなことはない。 ○見城委員 済みません。どうしてかというと、一番、この中で重要とするポイントは何かというところが、私伺っていて、結局、国際的に特許というものを取っていく場合に、国としての利益をまず考えているのか、本当は利益というのは最終的には同じところに行くと思うんですけれども、やはり企業なのか、それは医療を受ける国民にとっての利益なのかという、この辺りもできましたら、専門用語は取り替えますが、実際はそれを受けるのは全く一般の人ですし、その辺りのところでやはり、もう少しそこを明確に御説明いただける方がいらっしゃればありがたい。 ○井村会長 できたら、ちょっと事務局で論点整理をしてもらいますから、その中でなぜ医療行為に特許が必要なのかということを整理していただこうと思います。その中で、今の見城委員の質問に対して、ある程度答えられるようにして、その上でまた更に異論があれば議論をしていただくということになると思うんです。
○見城委員 そのものの一つに、いつもこの中の議論では、アメリカを一つの理想像として、モデルケースとしてお話が出てくるんですが、私の小さな知識の中では、決してアメリカに住んでいる人たちから、いろいろなアメリカの情報を得ますが、医療の状況が受ける患者側として理想的であるとか、最新の技術をごく一般の人が簡単に受けられるかどうかということでは、むしろ疑問に感じるものがありまして、医療を受ける国民のレベルとしては、私は日本の方がよろしいと思っている1人なんですね。
○井村会長 医療の全般をここで議論するわけではないので。 ○見城委員 いや、そうではないんですけれども。 ○井村会長 全体像を提示することは非常に難しいと思います。
○見城委員 全体像がもし難しいなら、今、出ています、こういった秋元委員がお示しになっている4つの具体例として挙げられましたけれども、こういった抗がん剤ですとか、先ほどから出ています細胞移植のものですとか、そういった幾つか挙げられている例で、例えば特許が認められているために、大変効率よく、一般アメリカ市民が非常に回復しているとか、大変いい治療を受けているとか、そういうようなものはあるはずだと思うんです。この様に例が挙がっていますので、私たち患者の側がもし考えるとすれば、そういった例に対しての結果を見て、また日本も考えるという形になると思いますので、よろしくお願いいたします。 ○竹田参考人 ちょっと追加して、一言よろしいですか。 ○井村会長 結構です。 ○竹田参考人 私がこの委員会で発言するのは今日だけだと思いますので、ちょっと最後にお願いを兼ねて申し上げておきたいんですが、今、見城委員がおっしゃったことは私も常々大事だと思っていて、そのために、私は、健康の回復増進、生命の維持に役に立つものであって、かつ、それが産業社会の発展に貢献するようなものであるというときに、医療関連発明は特許性を認めるべきだと常々思うし、そう言っているわけですね。
○井村会長 ありがとうございました。その辺りの問題、広井委員が一番詳しいかな、どうですかね。また、御発言いただいて、日米の医療制度が全く違いますから、単純比較が難しいですね。だから、その辺の比較はかなり難しいと思います。
○秋元委員 この前、最初のときのどなたかの御提案だったと思いますが、新しいものを開発するためには、やはりお金がかかる。短期的には、特許料というもののみを考えれば、非常にミクロに考えれば上がるかもしれないけれども、それによって全体の患者さんが減る、あるいは将来、その技術が非常に普及すれば安くできるということになれば、トータルとしては安くなるのではないかという御意見が、最初のときか何かにあったかと思います。私もそう思います。 ○井村会長 ほかに何か、ここで議論をした方がいいということがございましたら、お出しください。 ○見城委員 もう一つだけいいですか。秋元委員の4ページ目に「治療方法の特許化に対する製薬企業のニーズ」、要望する企業15社とあって、要望しない企業ゼロと言っています。これはどういうことですか。 ○秋元委員 それは、上位15社に聞いたら、すべて要望したという意味でございます。製薬協の中には80数社入っておりますが、上位15社に聞いたということで御了解をいただきたいと思います。ただ、上位15社で、恐らく研究開発費については、日本の場合は80%ぐらい、70%以上は、カバーしているということです。 ○井村会長 それでは、これで3回議論をしていただきまして、まだまだ問題も残っておりますし、私にもわかったようでわからぬところもまだ残っておりますから、もう少し議論が必要だと思うんです。
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