○中山会長 まだ若干の委員の方お見えでないようでございますけれども、時間でございますので、ただいまから第7回デジタル・ネット時代における知的財産制度専門調査会を開催いたします。
本日は、ご多忙中のところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、ネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化に関する議論を進めてまいりたいと思います。
まず、事務局のほうから説明をお願いいたします。
○関事務局次長 それでは、資料の説明をさせていただきます。まず、配布資料の確認でございますけれども、本日お配りをしておりますのは3点でございます。資料1といたしまして、ネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化。それから、参考資料として2点ございまして、1つ目が参照条文でございます。それから、参考資料の2つ目が関係者の意見の束でございまして、これは「2007」の見直しに関する意見ということでお寄せいただいたものの抜粋でございます。
それでは、以下、資料1につきましてご説明をさせていただきたいと思います。
資料1につきましては、今回のテーマでございますネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化ということで、私ども事務局としてご議論いただきたい点、それを抽出するような形でまとめさせていただいたものでございます。
まず、1ページ目と2ページ目が総論でございますけれども、1ページ目の真ん中のあたり、ことし5月29日におまとめをいただきました検討経過報告の抜粋を掲げてございます。これを踏まえましての検討でございますけれども、1ページの上に書いてございますのは一般的な背景ということでございまして、背景の一番下に書いてございますように、ネット上にではコンテンツの流通が容易であり、被害が瞬時にグローバルに広がることに加え、多数の個人がユーザーとして関わっていることなどから、違法コンテンツの対策については従来のパッケージメディアを前提とした対策とは異なる新たな枠組みが必要と考えられる、という意識でございます。
それから、1ページ目の下から検討事項でございますけれども、検討事項を絞り込むに当たりまして一応その1ページの下に書きましたような4つの要素、権利保護、事業者保護、消費者(利用者)保護、それから国際協調の必要性と、こういったことを考慮しつつ、最新の被害の実態を踏まえまして、主として既存の制度等が十分かどうかについて検討を行っていただいたらどうであろうかということでございます。
2ページでございますけれども、2ページの冒頭、点線で囲みました中が本日ご議論いただきたい内容ということで4点掲げさせていただいております。
それから、その下に2つ掲げてございますのは、既に文化庁の文化審議会のほうで検討が進んでいるものがございますので、これについてはこの2点があるということで掲げさせていただいております。
それでは、個別の内容について少しご説明をさせていただきます。
3ページでございますけれども、検討事項の1点目といたしまして、コンテンツの技術的制限手段の回避に関する規制の在り方についてということでございます。
冒頭にまずお断りしておきますと、この内容の構成でございますけれども、例えばこの1つ目の論点で見ていただきますと、3ページの冒頭に(1)として問題の所在、それから続きまして(2)として現行制度等といたしまして制度等の解説をしてございます。それから、1ページめくっていただきまして4ページの真ん中辺でございますけれども、(3)現状等といたしまして、例えば制度がつくられた後の現状等の変化といったようなものをここに書かせていただいております。それから、5ページを見ていただきまして真ん中のあたりでございますが、(4)国際的な動向といたしまして、国際的な各国の動き等に触れてございます。その上で5ページの一番下でございますけれども、論点といたしましてこういった観点からご議論いただきたいということを書かせていただいております。全体このような構成になってございます。
それからまた、参考資料との関係でございますけれども、この資料1の中に適宜参考資料の何ページに書いてあるといったようなことを触れさせていただいております。私ご説明する際に必ずしも一々ご紹介をしない場合があろうかと思いますけれども、適宜ご参照いただければというふうに思っております。
それでは、この論点1でございますけれども。(1)問題の所在につきましては、平成11年の法改正、不競法と著作権法がそれぞれ改正されて、不競法におきましては営業上用いられている技術的制限手段の回避、著作権法におきましては著作権等を侵害する行為の防止又は抑止のための技術的保護手段の回避がそれぞれ規制対象となっているわけでございます。
しかしながら、近年のデジタル化の進展等によりまして、この現行制度で十分かどうかということを改めてご検討いただく必要があるのかということでございます。
続きまして、(2)の現行制度等でございますけれども、丸1不競法、それから丸2著作権法というふうに分けて書いてございます。もう先生方ご案内のとおりでございますけれども、不競法におきましては技術的制限手段というふうに規定されてございまして、何を制限するかということについては視聴・実行、記録等ということになっておりまして、広く対象になっていると。
それから、何が規制の対象になっているのかということ、機器につきましては、回避の機能「のみ」を有する装置とプログラムということになってございます。
それから、規制の対象につきましては、流通系の行為ということでございます。
それから、救済措置は民事上の差止請求、それから損害賠償。
それから、著作権法でございますけれども、技術的保護手段ということでございますけれども、そこで保護するものにつきましては著作権法上の支分権、人格権が前提となっている。
それから、規制の対象となる機器等につきましては、「専ら」その機能ということでございます。
それから、規制の対象とする行為につきましては、製造でございますとかあるいは輸入でございますとかそういう行為とあわせて、サービスの提供も対象になっているということでございます。
それから、救済措置につきましては刑事罰の対象になっております。
それから、技術的保護手段を回避して個人が行う行為、その私的複製につきましては、権利制限規定の対象から除外をされているということでで権利が及ぶということでございます。
4ページ目にいっていただきまして、冒頭は比較表でございます。
それから、(3)の現状等でございますけれども、これが近年の動向ということでございます。まず、ゲームソフトでございますけれども、ゲームソフトにつきましては正規品のCD−ROM等の特殊箇所に一定の信号を記録しておき、ゲーム機のほうでその信号を読み取ることによってプレイが可能になる仕組みというのが採用されております。したがいまして、違法コピーをすれば本来はその信号が記録されませんので、通常であればゲーム機においては実行することができないので、海賊版をつくっても本来は無駄であるということになるはずなのでございますけれども、ゲーム機のほうに特定の回避装置をセットするということによりまして、違法コピーされたソフトであっても実行ができてしまうというふうになっているという現状でございます。
それから、2つ目の○でございますけれども、DVDソフトやBlu−rayディスク等にございましては、コピーコントロールの技術が施された特定の機器においてのみ視聴が可能になるような暗号化技術が施されておるわけでございますけれども、その暗号化技術を回避した上で、ほかの機器でも見られるようにした上で複製をする。そしてそれがインターネット上でばらまかれるという形で被害がふえているということでございます。
それから、5ページ目の冒頭の○でございますけれども、ネットを通じてコンテンツをダウンロードするということもパッケージによらない場合としてあるわけでございますけれども、そういった場合には視聴期間あるいは回数、そういったものを制限をする場合がほとんどでございます。すなわちそういった技術が前提になってサービスが展開されているということでございます。
それから、「また」以下に書きましたのは、いわばそのパッケージとインターネットを組み合せたようなものでございまして、鍵をかけたDVDを販売しておいて、その後具体に視聴するというときには必要な料金を払って暗号を解除するといったようなサービスを提供しているということで。
こういったことを踏まえますと、技術的手段の重要性、特にアクセス・コントロールの保護というのがさらに重要になっているのではないかということでございます。
(4)は国際的な動向でございまして、アメリカとEUの例をご紹介をしてございます。
その上で論点でございますけれども、コンテンツ保護技術の最新の被害実態や、諸外国の動向等を踏まえ、アクセスをコントロールするための技術的手段の回避行為に対する規制を強化すべきではないかと、こういった観点からご議論いただければという趣旨でございます。
続きまして、2のインターネット・サービス・プロバイダの責任の在り方についてということでございます。
まず、(1)が問題の所在でございますけれども、このインターネット・サービス・プロバイダの損害賠償責任につきましては、平成13年にプロバイダ責任制限法が制定をされまして、一定の範囲で免責をされるということが法定をされたわけでございます。しかしながら、実態として考えますと、デジタル機器の発達あるいはインターネットの通信速度が向上したということによりまして、インターネット上で情報流通することに伴う権利侵害ということに関しましては、著作権侵害が格段に増加しているという実態があるわけでございます。こういったものに対しまして、ネット上の著作権侵害に対する対策の強化を求める意見がある一方で、プロバイダ側からは安心して事業を運営するため責任範囲を一層明確化してほしいという声があるわけでございます。
このような状況を踏まえまして、著作権侵害に対する対策、それから健全な通信サービスの運営という両方の観点から、プロバイダ責任制限法が十分に機能しているかどうか改めて検討する必要があるのではないかということでございます。
続きまして、(2)現行制度等でございますけれども。丸1はプロバイダ責任制限法の規定でございます。プロバイダ責任制限法におきましては、情報の流通により権利の侵害が発生した際に、プロバイダが責任を負う場合というのを規定しておるわけでございますけれども、「送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能」な場合であって、かつ「権利が侵害されていることを知っていたとき」、又は「侵害されていることを知ることができたと認めるに足る相当の理由があるとき」でなければ、損害賠償責任を負わないというふうになっているわけでございます。
しかしながら、どのような場合が「知ることができると認めるに足る相当の理由がある」かどうか、上記の(イ)のケースでございますけれども、こういった場合には具体的なことが定められてございませんので、例えば動画投稿サイトや掲示板等において、プロバイダが通常行うサービス管理運営等を通じて侵害が発生しているということの推定が可能である場合、例えばこのような場合に「相当の理由に該当する」のかどうかということは法律上必ずしも明らかになっていないということがございます。
それからまた、プロバイダ自身が権利を侵害した情報の発信者である場合には免責されないということが規定されてございますので、ここもまた問題になるわけでございます。
丸2に書きましたのは、プロバイダ責任制限法の運用という面でございますけれども、権利者の側からいたしますと、違法なものが早急に取り除かれるということが重要になるわけでございますけれども、プロバイダ責任制限法の運用におきましては、事業者と権利者におきます取り決めといたしまして、ガイドラインが定められてございますので、ガイドラインに沿って削除の申請をしますと、「相当の理由がある」というものとして自動的に削除をするという運用がされておるわけでございます。
したがいまして、違法コンテンツの迅速な削除という観点からいたしますと、この法律に加えましてガイドラインが補完的な役割を果たすことによって、それが実施できているという状況にあるわけでございます。
それから、7ページの真ん中から(3)現状等ということでございますけれども。まずは、関係者の意見でございます。事業者からは事業の法的な安定性のためにプロバイダ責任制限法3条1項のただし書き、すなわちプロバイダ自身が権利侵害情報の発信者である場合は免責されないという、この規定の明確化を求める声があるわけでございます。
その理由でございますけれども、著作権法のいわゆる「間接侵害」の法理と関連いたしまして、間接侵害の法理が適用されてしまいますとプロバイダが権利侵害情報の発信者とされてしまうと、こういう可能性が出てまいりまして、そうなると免責が受けられないということになってしまいますので、そこを明確化してほしいという要望でございます。
8ページでございますけれども、丸2でございますが。コンテンツ識別技術の発達ということでございます。これも最近の動向ということでございますけれども、動画や音声の識別技術の発達によりまして、あらかじめ指定をいたしました映像、音楽、そういったものと同一の内容を含むファイルの流通を防止する技術というのが実現をされてきているということでございます。そして、現にそういったものを活用している事業者もあるという状況でございます。
それから、丸3は文化庁の文化審議会における検討ということのご紹介でございますけれども。そちらでは間接侵害についての議論とあわせまして、プロバイダのためのセーフハーバー規定の導入に関する検討も行われているという状況でございます。
それから、8ページの下、(4)国際的な動向でございますけれども、ここではアメリカの制度、それから丸2といたしましてEUディレクティブの話。それから9ページでございますけれども、丸3韓国でございますけれども、おととしに改正された著作権法のご紹介。それから丸4フランス、丸5ベルギーにつきましてはそれぞれの国におけるいわば判例、そういったものをご紹介をさせていただいております。
その上で論点でございますけれども、2つ書いてございます。1つ目が、著作権法侵害防止の観点でございまして、動画投稿サイト等特定のプロバイダには標準的なレベルの技術的な侵害防止措置の導入を義務付けるべきではないかということでございます。
それからもう1つが、通信事業者の予見可能性を高める観点でございまして、プロバイダ責任制限法、それから著作権法の関連規定を見直しまして、技術的な侵害防止措置を含めたプロバイダの免責事由、それを法律上明確に規定すべきではないかという論点でございます。
それから続きまして、3、著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応についてということでございます。これは今申し上げました2の論点ともかかわるわけでございますけれども。
まず(1)問題の所在といたしましては、最近いろいろなサービスが出てきておるわけでございますけれども、そのようなサービスの中には従来で見られなかった侵害行為を幇助するようなものも存在しているのではないか。それに対して、著作権法の規定がどうなっているかといいますと、差止請求に関する明確な規定がないと。さらに、裁判例においてもなかなか一致した認識があるとは言えないのではないだろうかと。そういうことを考えますと、当然ではございますけれども、ユーザーの著作権侵害を助長するような行為を抑制すると、それとあわせまして、新たなサービス等を提供する者の予見可能性を確保するということが必要になっているのではないかということでございます。
それから、(2)の現行制度等でございますけれども。ご案内のように著作権法112条で差止の規定があるわけでございますけれども、その対象者は侵害する者、又はそのおそれのある者ということになっておるわけでございますけれども。侵害する者とはだれを指すのかにつきましては明確に規定をされておりませんので、みずから、すなわち物理的に侵害行為を行っていない者に差止請求ができるかどうかということについては明確になっていないわけでございます。
(3)現状等でございますけれども、丸1として裁判例のご紹介をしてございます。これももうよくご案内のとおりでございますけれども、ピア・ツー・ピアあるいはファイル共有サービスを提供する行為、それから放送番組の録画・転送を伴うサービスを提供する行為、こういったものにつきましては、管理支配性、それから利益帰属性を要件といたします「カラオケ法理」を発展させて適用している裁判例が見られるわけでございます。
それから、一方、類似のサービスであっても差止請求を認めないという例もあるわけでございまして、そのように分析をした場合に、侵害行為の主体について一致した認識があるというふうには必ずしも言えないのではないだろうかということでございます。
それから、ストレージサーバーへの複製につきまして、利用行為の主体はユーザーではなくて事業者であるというふうに認定した裁判例もあるわけでございますけれども、こういった事例につきましては、それはむしろ私的使用のための複製の問題ではないかという指摘もなされておるわけでございます。
それから、私的使用のための複製ということに関連して申しますと、公衆用自動複製機器を用いた場合には権利制限はされないということになっておるわけでございますけれども、そのサーバーというのは何に該当するのかということで、サーバーが公衆用自動複製機器に該当するとすれば権利制限の対象にはならないのだろうという事例もあるわけでございます。
このように、侵害行為の主体に関する問題が複雑化しておりますので、繰り返しになりますけれども、侵害行為を抑制するとともに、利便性の向上によるコンテンツの新たな需要を喚起するようなサービス、そういったものにつきましては安心して提供できるようにすることが必要なのではないだろうか。そのためには差止請求の対象となる範囲につきまして、立法等により明確化することが必要なのではないだろうかということでございます。
それから、丸2は文化審議会における検討をご紹介をしてございます。2の論点で申しましたように、従来からご議論がなされておるわけでございますけれども、ここでは昨年の中間まとめをここで引用してございます。そこでは、裁判例の状況や民法における物権的請求権等の基本理念との整合性にも配慮し、慎重に検討を進めると、このように整理がされておるところでございます。
それから、(4)国際的な動向でございますけれども、アメリカの判例の動向、それからドイツ、それからフランスの動向、それからイギリスの法律、こういったもののご紹介をしてございます。
その上での論点でございますけれども、行為主体の考え方を始め差止請求の範囲を明確にすること等により、新たなサービス等を安心して提供できる法的な環境を早急に整備すべきではないかということでございます。
それから、13ページでございますが、4といたしまして、国際的な制度調和等について、最後の論点でございます。前3者が国内の問題であるのに対しまして、この4番目は国際的な問題という切り口でございます。
(1)は問題の所在でございますけれども、インターネットにおきます著作物の流通、これが権利者、発信者、プロバイダ、サーバー等、そういったふうに考えていきますと、世界各国にまたがっていると。かつ、各国の法制度が異なっているということで、どこの国の法律が適用されるのかという準拠法の問題。それから、国際裁判管轄が問題になるわけでございますけれども、こういったものについての国際的なルールが存在していないと。その結果といたしまして、権利保護の実効性確保するのに支障を生じているのではないかということでございます。
それから、「また」で書きましたのは、海外における著作権侵害におきましては、国によって法制度等が整っていない場合もございますので、日本の著作権者が権利執行しようと思ってもなかなか速やかにできないといったような問題点の指摘がございます。
(2)現状でございますけれども、丸1準拠法及び国際裁判管轄についてご紹介をさせていただいております。(@)につきましては準拠法についてでございますけれども、法の適用に関する通則法、それからベルヌ条約5条の2項をご紹介してございますけれども。繰り返しになりますが、インターネット上の著作権侵害におきましてはどのようにそれを事実関係といたしまして適用していけばいいのかというのがなかなか明確になっていないということでございます。
それから、(A)でございますけれども、国際裁判管轄につきましても同様でございまして、国際裁判管轄がなかなか不明確であるということでございます。これにつきましては、1ページめくっていただきまして14ページでございまして、法務省におきまして法律案が検討されているということでございますけれども、知的財産、特許等につきましては登録が前提になってございますので独自の条項の検討が進められているというふうに聞いておりますけれども、著作権は登録ではございませんので、一般として取り扱われているということでございます。
それから、丸2は外国政府に対する働き掛けでございますけれども。具体的な例といたしまして、関係省庁と民間団体とで構成をいたします国際知的財産フォーラムが中国あるいはインド、そういったところに働き掛けをしてきていると。具体例といたしまして、中国に対する働き掛けでございますけれども、違法なコンテンツを早急に削除するということにつきまして、なかなかだれが権利者かということが認められないようなのでございますけれども、日本の権利者団体についてはそれを認めて手続を簡略化してほしいという要請をしていると、こういった事例があるということでございます。
それから、(3)国際的な動向といたしましては、丸1といたしまして、かつて提案をされた統一的なルールの検討の状況ということのご紹介。それから丸2といたしまして、模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の検討状況、これをご紹介をしてございます。
その上で論点でございますけれども、1つ目の○が、インターネット上の著作権侵害に関する準拠法や国際裁判管轄の問題についての検討を進めて、国際的な制度調和を図ることを促進すべきではないか。
2つ目の○が、日本のコンテンツが適正に保護されるよう、海外政府に対して、制度面・運用面での改善を行うよう積極的に働きかけるべきではないかということでございます。
以上、雑駁な説明で大変恐縮でございますけれども、この資料1、こういったことをご検討いただければという趣旨でまとめさせていただきました資料についてのご説明でございます。
○中山会長 ありがとうございました。
それでは、議論に入りたいと思います。の違法コンテンツの対策というのは非常に難しい問題でして、違法コンテンツが氾濫すれば当然コンテンツビジネスが成立しないし、若い人を中心にコンテンツは無料だという意識が出てきてしまうので何とかしなければいけないんですけれども、他方、インターネットは元来これはフリーの世界である、自由な世界であるという意識解も非常に強いわけです。またこれ家庭内あるいは個人的に行われるものもたくさんあります。それから知る権利・表現の自由というような憲法上の要請もある。いろいろな要素が絡まっている中で議論をしなければいけないので非常に難しい問題ではあると思います。
まず最初に、1番目のコンテンツの技術的制限手段の回避に対する規制の在り方についての議論を進めてまいりたいと思います。どなたからでも結構でございます。ご発言は一人五、六分程度でお願いをしたいと思います。何か意見ございましたらお願いいたします。
○苗村委員 1番のこの論点については私はやはり規制強化が必要だろうと思っております。具体的には、この資料のすぐ上の(4)でアメリカ、EUの場合について書いてありますが、それと同じレベルの程度のといいますか、規制をせざるを得ないのだろうと思っております。
その上で確認のための質問なんですが。この書かれていることですと、複製を不可能にするあるいはコントロールする技術についての問題ではなくて、視聴をコントロールするアクセスコントロールであるということですので、結果として複製物ができるわけではないわけですね、この今回の議論の対象となっている行為の結果で。
そういうふうに理解したとき、中身の問題じゃないんですが、単に今日の資料のタイトルが「ネット上に流通する違法コンテンツへの対策」と書いてあるんですけれども。多分この一番の問題は、結果として違法コンテンツができてネット上に流通するわけではなくて、例えばネット上では暗号化されたコンテンツが適法に流通している、それを例えばダウンロードして視聴するときは本来は有料の復号鍵を購入するとかそういったことが必要なのに、そうしないである装置によって自動的に復号してしまうとかそういう行為を規制しようとしているんだと思うので。
そういう理解でよろしければ、私の誤解はないと思うんですが、単に表現上の問題だと思います。いずれにしても1番は必要なことだと思います。あと、どちらの法律で対処するかの問題は残ると思います。
○中山会長 総合タイトルが違法コンテンツの対策とあって、この1がアクセス回避の問題になって、ちょっとずれがあるんじゃないかと、こういうご指摘ですね。
○苗村委員 そうです、確認だけです。
○中山会長 結局アクセスコントロールしてしまうと、おっしゃるとおり違法でないものもコントロールできてしまうかもしれないですね。
○苗村委員 ちょっとすみません、細かく補足しますと。多分誤解はないと思うんですが、もし今先生おっしゃったように、アクセスコントロールを回避すると違法でないコピーができるかもしれない、それはおっしゃるとおりなんですが。コピーはできない、しかし画面で表示がされるとか音が演奏される、あるいはできるにしても一時的なメモリ上の蓄積にしか限らないというような場合について、この規制の対象にしないというのだと何か非常に限定されているし。また、今の著作権法の規定で十分ではないかという議論になると思うので。むしろそういう違法なコピーができない場合についても規制するというのがこの1番の趣旨だと思ったので、それを確認しただけです。
○関事務局次長 タイトルでは確かに「ネット上に流通する違法コンテンツ」と書いてございますけれども、今の先生のご指摘は、要するに違法ではないというところもこの視野に入っているのではないかということだと思いますけれども、そこはおっしゃるとおりでございます。
○中山会長 どうぞ、大谷委員。
○大谷委員 今の苗村先生からのご指摘の延長線上で、その内容を確認させてください。アクセスコントロールといった場合に、そこのアクセスの対象となるのがいわゆる違法コピーされたものなのか、それともいわゆる正規品なのかという点はどうでしょうか。被害の実態を見ていきますと、やはり違法コピーされたものがその暗号を解除されていることによってアクセスが容易になり、それによって被害が発生しているという被害実態があると認識しておりました。それとは別に正規品を解除するというような形での視聴行為から被害が発生しているような実態があるのでしょうか。
前者、つまり違法コピーが暗号解除されていることによって違法コピーが流通し、しかもそれを視聴することができることによって被害が拡大しているというのが現状なのであれば、その点に的を絞った規制にするべきではないでしょうか。でないと、やはり中山会長がおっしゃったように、知る権利、情報そのものにアクセスするということについて著作権法は何ら規制をかけていない。もともと著作権法のミッションではないわけですから。やはり問題を限定して、どこに問題が発生しているのかということを十分見極めて議論していく必要があると考えております。
そういう意味でもちょっと被害実態がどこに集中しているのかということを教えていただければありがたいと思います。
○関事務局次長 今のご指摘ですと、この4ページの(3)の現状等の○が3つ書いてあるわけでございますけれども、特に3番目、つまり5ページの冒頭に書きましたようなものにつきましてどの程度被害が発生しているのかということになろうかと思いますけれども。率直に申しまして、いろいろなサービスが展開されてきている状況でございますので、今この部分について具体にどれほど被害が出ているのかということは私どもとして十分に把握できていない状況にあるわけでございます。
そういったこともあるわけでございますけれども、一応私どもとしては最近の問題状況を広く提示させていただきまして、その上でどういった部分についてどの程度の規制が必要なのかということにつきましてご議論いただければというふうに思っております。
○中山会長 ほかに何かございましたら。
どうぞ、上山委員。
○上山委員 要するに著作権法でアクセスコントロールについても対策が打てるようにという問題なんだろうと思いますが。その点に関して、不正競争防止法でカバーしきれない具体的な不都合な事案というのがあるんでしょうか。
○関事務局次長 具体的な事案ということでなくて、すみません、抽象的なお答えになってしまうわけでございますけれども。例えば不競法で刑罰の対象になっていないということでございますとか、あるいはどういった機器が対象になるかということについては法律上のみと規定されてございますので、この「のみ」によってかなり限定されてしまうのではないかといったようなことが不正競争防止法につきましては議論になるのかなというふうに思っております。
○中山会長 どうぞ、苗村委員。
○苗村委員 今の点については私も正確な情報は持っておりませんが、デジタル放送のアクセスコントロール機能を回避する装置が実際に販売されているというようなケースはどうもあるようでして。このケースは、その装置そのものを販売することは違法であるということが仮に確定したとしても、その装置を利用して視聴する行為は全く合法的であるというのが現状なんだろうと思うんです。入手した一般の視聴者がですね。そういうたぐいのことがインターネット上でも今後十分起こり得ることだと思いますし。
つまり、例えばインターネット上で暗号化したコンテンツを自由に流通させて、それをダウンロードしたものが料金を払って暗号を復号するための鍵を入手したときに初めて視聴できるようにした、あるいはプレイでもいいんですが、というようなサービスがあったときに、それを回避するような、場合によってはソフトウェアかもしれませんが、それを提供するというようなことがあり得ると思いますので。現実に起きていると思われるのは先ほどのデジタル放送だと思いますが、ほかにもどうもあるのではないかと思います。
それから、先ほどちょっとご指摘があったので、私の発言が少し極端すぎたかと思って、最初のほうの質問に戻りますが。確かにインターネット上で違法なコピーが出回っていて、それをこのアクセスコントロール回避手段によって視聴するというケースがかなりあることも間違いない。それはそのとおりだと思うんですが。そのインターネット上で既に流通している、わかりやすい例として暗号化されたコンテンツというのは合法的であれ違法的であれ、ともかくそのままの状態であれば視聴ができないので、実際に権利者に被害を与えることは余りないと。ところが、それを視聴する段階で復号または何らかの制限手段を回避する行為が自由に行われてしまうということがコンテンツの経済価値を損なうのではないかという意味でこれを入れるべきだと思います。
そのときに、著作権法を改正するのは確かに何か理念的に苦しいところがあって、むしろ不競法を改正したほうがいいのかもしれない。そのあたりの検討は別途いるだろうと思います。
○中山会長 どうぞ、上野委員。
○上野委員 今この論点に関して問題になっているのは、回避行為それ自体の規制ということだと理解して間違いないでしょうか。つまり、資料4ページ目の「現状等」の1つ目にマジコンの例が挙がってございますけれども、例えばユーザーがマジコンを利用してプレイをするという行為それ自体が規制の対象になる、このように理解してよろしいでしょうか。
もしそうだとしますと、問題点といたしまして、私人の行為自由だとか、あるいは規制の実効性といったようなことが論点になろうと思います。
またそれをどういう手段で規制するのかということにつきましても、もし現状でイメージがございましたらお伺いできればと思います。もちろん著作権法という手段もあるわけですけれども、回避行為それ自体、そしてアクセスコントロールの回避行為それ自体を対象にするということになりますと、著作権法という手段が適合的かどうかという問題がありましょう。また、不正競争防止法を活用するといたしましても、先ほどの例のように、ユーザーの行為まで対象とするものだといたしますと、不正競争防止法という手段も、これまた適合的なのかどうかが問題となるように思われるからであります。
もしそのあたりで既に何らかの具体的なお考えがございましたら、お伺いできればと思います。
○関事務局次長 事務局のという意味ではございません。そこはすみません、これはご議論いただければというふうに思っておりますので、そこは私どもがどうこう言うというより、先生方にご議論いただければと思っておるところでございます。
今のところはこの4ページの下に注をつけてございますけれども、不競法に基づく訴訟ということで既にそういったことが提訴されているということもあるようでございますので、こういったものの帰趨というのも1つの判断要素になろうかというふうに思っております。
○上野委員 ただ、資料5ページには「回避行為に対する規制を強化すべきではないか」と書かれておりますので、ここにいう規制の「強化」というのは、先ほどの脚注1に挙がっているような例でいえば、ユーザーを規制の対象にする趣旨であるように読めるのですが、このように理解してよろしいでしょうか。
○関事務局次長 すみません、そこはどこまで対象にするかというのもご議論いただければというふうに思っておるわけでございます。そこは例えば著作権法で言えば私的複製というのが権利制限でありつつ、こういった場合には私的使用のその範囲から除くと。こういった機械を使った場合はだめであると、例えばそういった形で一度抜いた上でさらに抜き返すというような形で調整をしておる例もあるわけでございますので。そこは論点としてまたご検討いただければというふうに思っております。
○中山会長 そこはこの不競法をつくるときかなり問題になりまして、刑法の学者からかなりいろいろな意見が出されました。ユーザーの行為がもし違法でないのなら、それを助けた人、つまり機器等を提供した人だけがなぜ有罪になるかという、議論がありました。イシューの1つだと思いますけれども。
あと、著作権法でアクセスコントロールをしてしまうと、著作物であるかどうかわからないのにコントロールしてしまうという問題点も出てくるだろうと思いますね。アクセスコントロールを解いてみたら著作物でなかった場合も侵害ですかとか、という問題が出てくると思います。
ほかに何かございますでしょうか。
どうぞ、宮川委員。
○宮川委員 私は11時から裁判があるものですから、そろそろ失礼しなくてはいけないので、この問題にだけコメントさせていただきます。私もコンテンツの技術的な制限、保護手段の回避に対する規制を強化するという方向には賛成しております。
そして、今苗村委員や上野委員がご質問投げていただいたので非常に明確になったと思うんですが、やはりアクセスコントロールを回避をするという、その問題についての規制が著作権法の改正によって果たしてできるのかというのはやはり非常に議論が多いところだと思います。むしろ不正競争防止法の規定をどのように変えていくか、強化していくかということのほうがこれまでの流れからいけば非常に進めやすいのではないかと考えております。
私は文化審議会の著作権分科会でもいろいろ議論を伺っておりまして、違法コンテンツの個人のダウンロードを私的複製の範囲から外すというような話が出た際、やはりユーザー側から非常に強い抵抗がありまして、なかなか思ったように話は進んでいないというのが現状だと理解しております。
ですから、不正競争防止法でこのアクセスコントロールの回避に対する規制ということを議論する場合は、実際にユーザーのご意見を聞きながら、なおかつやはり多くの被害を受けている方たちのことも配慮しながら、できるだけ前向きに規制強化の方向で議論していただきたいと思っております。
○中山会長 ありがとうございました。宮川委員、11時にご退席ということで、もし後ろのテーマについて何か述べておきたいことございましたらお願いいたします。
○宮川委員 この時点で申し上げるのも何となくちょっと抜けた話のようですが。特に私が仕事をしています上でよく依頼者の方からご相談あるいは悩みということで聞く点では、著作権法におけるいわゆる間接侵害の対応についてということです。ネット上でいろいろと動画を配信したり、それから動画共有サービス、あるいは音楽ファイルの共有サービスというビジネスを考えていらっしゃる方は、確かにプロバイダ責任制限法があるけれども、他方で、著作権法の間接侵害、カラオケ法理がどんどん大きく広がっていくような印象を持っておられます。自分たちがやっていることがもしかしたら著作権侵害に当たるという判決が出るのではないかということを常に心配していらっしゃるようにいろいろご相談を受ける中では感じております。今ここに問題提起されております責任の明確化あるいは著作権法の間接侵害のある程度枠組みを明確にするという点がネット上のビジネスをもう少し安心してやっていただくためにはいいことにもなりますし、権利者の方にもまた1つの指針が与えられるのではないかなと思っております。
あとは委員の方の議論をお任せいたしますので、よろしくお願いいたします。
○中山会長 ありがとうございました。
それでは、今のこの手段の回避の問題に戻りたいと思いますけれども。何かご意見ございましたら。
どうぞ、大谷委員。
○大谷委員 資料の1ページの部分で検討事項として検討の視点を全部で4つ挙げていただいております。これは、いずれも重要な視点だと思います。ただ、丸3のところの消費者(利用者)保護の観点ということについて述べますと、利用者の単なる利便性の問題にとどまらず、情報を適切に流通させ、その情報に十分にアクセスできる機会を保障するという憲法上の権利、ということを中山会長がおっしゃいましたので、その観点がやはり落ちてはいけないと思っております。特に、その観点で議論すべきなのが技術的保護手段の強化あるいは技術的制限手段の見直しという部分に端的にあらわれていると思いますので、検討の視点としてぜひ加えておきたいものだと思っております。
以上でございます。
○中山会長 恐らくその問題は後で大きな問題になってくるだろうと思いますね。例えばサムエルソンは、著作権はもう著作権の関係者だけに任せておけないような非常に大きな価値を含んでいると言っておりますし、確かに非常に大きな問題を含んでいるので、著作権法上の細かい点だけを議論していると後で足をすくわれるという可能性がございますので、大きな視野で議論してもらえればと思います。
ほかに何かございましたら。
よろしいでしょうか。まだほかに議題も残っておりますので、この点についてはこのくらいでよろしいでしょうか。
それでは、2番目にインターネット・サービス・プロバイダの責任の在り方は、3番の著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応についてと関連が深いと思われますので、あわせて議論をちょうだいしたいと思います。
それでは、どうぞご自由にご発言をお願いいたします。
どうぞ、大谷委員。
○大谷委員 たびたびありがとうございます。質問とも意見ともつかない形でお話しします。1つは、プロバイダ責任制限法で定められている特定電気通信役務提供者というものの位置付けについてです。この資料の中ではプロバイダという言葉で言われているんですが、プロバイダにもさまざまな種類がありまして、ホスティング等のサービスで実際に自分の支配下、管理下に情報そのもの、コンテンツそのものがある場合、それから実際には導管としての役割にすぎないと思うんですけれども、インターネットへの接続サービスを提供している事業者などもあり、これらを区別して論じる必要があると考えます。言い換えれば、いわゆる通信事業者としてのプロバイダと自分のサーバにコンテンツを置くという形で場所を提供しているプロバイダとのやはり違いを明確にしながら議論を進めていかないと、一律にプロバイダと言ったときにイメージするものが異なると思いますので、その意味付けを明確にしていただきたいという意見です。
それからもう1つは、問題の所在というところで書いていただいている部分で、プロバイダの果たす役割、機能の変化、あるいはネット上の問題がプロバイダ責任制限法のときよりも相当変わってきているという現状分析が記載されていることについてです。それはもう実際にコンテンツ量がふえている、違法コピーのコンテンツがふえているという量的な問題なのか、それとも質的にプロバイダ責任制限法が前提としていた仕組みが根本的に変わるような変化があったのかという質問です。私は量的な変化にとどまるものだと考えておりまして。質的な変化は起きていないと認識しております。
またその違った意味での法的な枠組みを大きく変えなければいけないような質的変化があったという前提で記載しているのであれば、やはり先ほど申し上げたように侵害の実態を教えていただきたいなと思っております。こちらはご質問としてお尋ねします。
○関事務局次長 それでは、今2点お尋ねがあったと思いますけれども、1点目、プロバイダにもいろいろあるのではないかということは全くご指摘のとおりかと思っております。そこは、例えばこの、すみません、若干逃げのようなことを申しますと。9ページの一番下に論点というのを書いてございますけれども。その論点の1つ目の○を見ていただきますと、著作権侵害防止の観点から、「動画投稿サイト等特定のプロバイダには」というふうに書いてございまして、そこはきちんと自分で管理ができるようなそういったところには必要になってくるだろうという意味合いでここは書いたものでございます。
それから、2点目のお尋ね、量的な変化なのか質的な変化なのか、その本質的な相違が生じたのかということでございますけれども。いろいろなサービスが当時からもあったではないかということから考えますと、そこは量的な問題という部分が大きいのではないだろうかというふうに思っております。
ただ、動画投稿サイトなどは最近になって非常に出回ってきてございますので、そういったものはかなりインパクトとしては大きいのではないだろうかというふうに思っております。
○中山会長 どうぞ、上山委員。
○上山委員 今の大谷委員の質的な問題か量的な問題かという点について言いますと、量的な問題よりも質的というか、判例の傾向がここ数年になって明確になってきたということだと思います。この資料の10ページの脚注にも、インターネット関係の新しい判例、これらは大体平成17年以降に出てきているわけですが、大半がいわゆるカラオケ法理の利益帰属性と支配管理性の2点さえ認められれば、プロバイダ自身が直接侵害者であるということになってしまって、結局プロバイダ責任制限法3条1項ただし書きの適用ないということになります。動画投稿サイトの場合で支配管理性や利益帰属性が否定されるかというと、判例の認定基準というのは非常に緩やかですから、多くの事案ではその2つの要件は認められてしまうだろうと思われます。そういったところが最近のプロバイダ事業者等の懸念であるというふうに理解しています。
したがって、そういう観点からすると、この9ページの論点に書いてある2点というのは非常に重要であるというふうに認識しています。
○中山会長 ありがとうございます。
ほかに何かありましたら。
この技術的な侵害防止措置というのは、これは完備すればかなり有効だと思うのですけれども、現状はどういうことになっているんでしょうか。
○ 上山委員 私が実際にお付き合いをしているクライアントの中でも、幾つかの有力な候補技術がいろいろなベンダーから出てきていて、かなり実用化レベルに達しているということで、近々にサービスを始める会社もありますし、それからYouTubeは自社で独自開発した技術を既に利用しているという状況にあります。
ただし、そこで検知できるものは、やはりオリジナルのCDの音源などをきちんとデータベースに登録をするという前作業が必要になります。したがって、そこからある程度自分で改変をした、自分でパソコンで簡単に音楽つくれますから、そういったものまで捕捉できるかというと難しい問題はありますけれども、少なくともデッドコピー的なものは自動的に検知することが可能なレベルになってきているというふうに認識しています。
○中山会長 では、その装置を入れることは業者にとってはそれほど難しい問題ではないわけですか。
○上山委員 費用負担とかを考えますと、必ずしも簡単ではないと思います。それは現在のシステムの構成がどうなっているかということとも関連して導入のしやすさが変わってくると思います。ただし、経済的な観点から見て不可能であるというふうな状況ではなくて、ある程度合理性のある範囲内で導入可能なものが出てきているというふうに聞いております。
問題点としては、やはり権利者側が音源などのデータベースの作成に協力をしていただかないと、プロバイダだけではできないのですが、日本の現状ではそこについてなかなか首を縦に振っていただける状況までまだ至っていないというふうに聞いております。
○中山会長 ほかに何かご意見ございましたら。
どうぞ、大谷委員、遠慮なく。
○大谷委員 プロバイダ責任制限法の運用に関して、私自身もガイドラインの策定にかかわって、著作権関係ではなくてどちらかというと名誉毀損ですとかプライバシー関係のガイドラインの整備にかかわった経験に即して申し上げます。やはり著作権特有の間接侵害の法理に関して、その帰趨がどちらかというと先ほど上山先生がご指摘になったように、3条1項ただし書きの発信主体として免責の対象にならないというその問題があるのは、どちらかというとプロバイダ責任制限法自身の問題ではなくて、やはり著作権法の間接侵害についての議論とやはり整合性が整っていない部分で見られるということだと私自身は認識しております。また、プロバイダ責任制限法は著作権侵害にとどまらず、権利侵害全般、即ち、民事的な不法行為、違法行為を全般的に対象としているので、著作権だけの観点でこのプロバイダ責任制限法の運用というか規定を変えていくというのはいいのかどうかというのは十分に議論すべきと考えております。
逆に、著作権法側の規定とか考え方が整理されることによって変わってくる部分があると思います。どちらかというと海外の法制もEC指令なども著作権法の中で解決している問題でもありますし。プロバイダの免責範囲を明確にするという総論の点では全く賛同するものですが。その方法として、プロバイダ責任制限法そのものに手を入れるということがいいのかどうかということはもう少し考えてみるべきだと思っております。
○中山会長 プロバイダ責任制限法をつくるときは著作権の審議会でもかなり議論しました。そのときはもう既にカラオケ法理はあったのですけれども、カラオケ法理がこんなふうになるなどとはだれも思っていなかったもんですから、カラオケ法理の議論は、プロバイダ責任制限法に関しては当時全くやってなかったわけですね。それが、カラオケ法理が発達してしまったのでこう問題になってきたわけですけれども。
これが著作権法特有の問題ならば著作権法の中でも何か処理できるかもしれませんし、あるいはプロバイダ責任制限法全体にかかってくるならばそちらのほうに改正を要求するということもあり得るかもしれませんし。あるいは、間接侵害自体を著作権法の中で明確化しておくということもあり得るだろうと思われます。
現在、著作権分科会のワーキングチームで大渕委員をヘッドにこの間接侵害についての議論を進めてもらっておりますので、場合によってはそっちのほうで何とかなるかもしれないという、こういう状況ではないかと思いますけれども。
何か大渕先生、その点ご意見ございますか。
○大渕委員 今ご説明いただきましたけれども、特に意見ということではなくて、今回のペーパーで申しますと、2.の論点も踏まえつつ3.の論点について粛々と進めております。2.のISPの論点と3.の間接侵害の論点は相互に関連している面がございますので、その点も踏まえつつ両者について検討を進めております。
○中山会長 どうぞ、北山委員。
○北山委員 今の文化庁の立法案、立法案ですね、今11ページに載っている立法案を見ますと、専ら侵害の用に……他社に侵害行為をさせることにより侵害をする者と、侵害をさせることにより侵害をする者が対象になると、こういう方向を今考えておられるようなんですが。この規定でいった場合でも、プロバイダ法の3条の1項のただし書きの権利を侵害した情報の発信者ということと同じになって免責されなくなってしまうという問題が残るのではないかなというように僕は思うんですが、そこはうまくクリアできるんでしょうか。ということを質問したいんですが。
○中山会長 これは別に文化庁案ではなくて、これを例示として引き続き検討しているということだろうと思います。
○北山委員 こういう方向で検討されているわけですよね。違うんですか。
○大渕委員 当時、このような案を一例としていろいろ検討していたという、そのような意味での一案としてお考えいただければと思います。
○北山委員 ほかにもいろいろ案があるんですね。
○大渕委員 ええ。これも、「侵害する者」というのをどう考えるのか、発信者ということになるのかどうかという点も含めて、前広に検討している一つの例でありまして、ペーパーにもはっきりと一案としてと書いてあると思いますが、前広にいろいろ検討しておるということでございます。
○北山委員 はい。いろいろある案の中のこの立法案によるとこういうことになりますよと。
○大渕委員 これは検討案のうちの一つの例とお考えいただければと思います。
○中山会長 この文章は誤解を招かないようにお願いいたします。
どうぞ、上山委員。
○上山委員 プロバイダ責任制限法について、免責範囲の明確化との関係では、近時の動画投稿サイト等の状況を見ていると、侵害されていると知ることができたと認めるに足る相当の理由という規定の削除も含めて検討する必要があるのではないかというふうに考えています。
なぜかといいますと、動画投稿サイトですと1日数万件とかの膨大な件数が投稿されています。そのすべてがでは違法なものかというとそうではなくて、YouTubeとかニコニコ動画含めて、権利者と個別にライセンス契約を結んで許諾を受けている適法なものもありますし、それから、販促につながるということで、明示的にライセンスは与えないけれども黙認をしているものなど、権利侵害でないものも多々含まれていると考えられます。
したがって、プロバイダにとってはどれが侵害品でどれが明示的なもしくは黙示の許諾を受けているものか必ずしも判別できない状況にあります。
そのような状況の中で、特定の権利者が後日、この動画については違法である、大量に違法なものがあがっていることは周知の事実なんだから、侵害を知ることができたと認めるに足る相当の理由があったというふうな主張をされるのではないか。現にそういう主張に基づく交渉がなされているようです。
したがって、現在大量にコンテンツがアップロードされており、プロバイダにとってはその1件1件について侵害の有無を確認する術が実際上はないという状況を踏まえて、その責任範囲、免責範囲の明確化を検討する必要があるのではないかというふうに考えております。
○中山会長 それはプロバイダ責任制限法自体を変えてほしいというお話ですね。
○上山委員 はい。そういうことです。
○中山会長 どうぞ、大谷委員。
○大谷委員 上山委員がおっしゃるように、プロバイダ責任制限法は損害賠償の責任の免責規定を定めたものですので、損害賠償の責任の限定のため、それから本当に責任を負うべき範囲を明確にするためには、プロバイダ責任制限法に手を入れていくということも選択肢の1つだと私自身も考えております。
それとはまた別に、差止請求が可能かどうかということについては、やはり著作権法での判断基準というのが明確になりつつ、そして差止請求権の対象になる得るものであっても、例えば事後的に気づいて削除をした場合に損害賠償の責任が免責されるような仕組みということをやはり2段構えで考えていかなければならないのではないかと思います。責任が発生する時点、差止請求と損害賠償の責任が発生する時点がそれぞれ違っていると考えることも可能だと思います。最終的に、プロバイダの損害賠償責任の問題がどうしても残ってしまうことになりますので、そこを解決するためにプロバイダ責任制限法に手を入れるということについては基本的に考えていかなければいけないことだと認識しております。
○中山会長 ほかにご意見ございましたら。
今まで伺っている範囲だと、プロバイダ責任制限法は少し変えてほしいという意見と、あと著作権を越える問題として間接侵害のほうを何とかしてほしいというこの2つがあったかと思いますが、ほかに何かご意見ございましたら。
よろしいでしょうか。
それでは、時間が余ったらまた全体につきご意見を伺うといたしまして、最後に4番の国際的な制度調和等について審議を進めたいと思います。ご意見ございましたらお願いいたします。
ご存じのとおり、この問題は極めて難しい問題ではあるのですけれども、しかしこれほど国際化が進んでいる以上、議論をしておかないというわけにはいかないと思いますので、何かご意見ございましたらお願いいたします。
どうぞ、上山委員。
○上山委員 特許法の分野では、国際裁判管轄については判例上一定の明確な基準が出てきています。具体的には民訴法上の管轄が我が国に認められるか、認められるとして、我が国で被告に応訴させることが不公正と言える特段の事情がないか等の観点から判断されていますので、実務的にはある程度予測可能性があると言える状況になってきているというふうに思っております。
それから、準拠法の問題に関しては、これは著作権に限らず、例えば契約関係に基づく紛争であっても準拠法は常に問題になることですので、著作権法についてだけ取り立てて問題視するほどの弊害が現状あるのか、疑問に感じているところです。
○中山会長 そうすると、余り議論はいらないということですね。
○上山委員 実務家の感覚からすると、係争になった場合、当事者は必ず訴訟で自己に有利な管轄もしくは準拠法を主張します。したがって、日本の法律で管轄や準拠法について定めた場合に、ある事案が争いようのないぐらいドンピシャリその規定に該当するという場合であれば別ですが、ある程度解釈の幅があって争う余地がある場合であれば、まず訴訟の冒頭で準拠法や管轄が争われるでしょう。したがって、実務からすると、今後制定法を定めたからといってそれほど実務の負担が軽くなるのかというと疑問があるように思うということです。
○中山会長 確かに国内法で定めても、おっしゃるとおりだろうと思いますけれども。これもヘーグでうまくいかなかったということもあって、なかなか日本だけではどうしようもないという状況にあると思うんですけれども。
この4番のテーマの中で日本でできることは、外国政府に働き掛けをするとか、あるいはACTAを頑張るとかそのくらいかなという気はするんですけれども。
どうぞ、音委員。
○音委員 その外国政府への働き掛けということですけれども、2つほど。1つは、インターネットということを考えますと、まさに国境を越えてどこでもということだとは思うのですが。具体的にそのコンテンツがどういうふうに展開されるのかということで言うと、やはり途上国や中進国というような国々と、アメリカやEU等の諸国とでは、やはり随分状況が違うので、その協力関係の作り方も違ってくるだろうというのが1つです。
実は私が今から15年ほど前に台湾ですとか韓国ですとかのメディア事業者たちの調査を随分したことがあったんです。当時、台湾のケーブルテレビで日本の映像コンテンツがいろいろな形で入りはじめていたりですとか、日本の出版物が大量に出回りはじめたころでした。その過程で、正常な知財の取引に向け、一方で政府への働き掛けをするという手もあるんですけれども、もう片方で事業者同士のやりとりがより活発になってくると、向こうの事業者の向き合い方が随分変わってくる。あちらの事業者の中で、権利処理をちゃんとして、表に出て仕事をするほうが、その後の事業展開が活発になるんだと思う人たちがポツポツ出てくるのです。そうすると、市場の雰囲気がガラッと変わってくるというようなことを、あちらの事業者にヒアリングをする中で随分お聞きいたしました。
今考えてみますと、台湾のケーブルテレビというのは東アジアの中で相当大きな力を持っているまでになっているかと思います。韓国においても同様なことが言えるのかなというふうに思います。
その意味でいいますと、2方面作戦といいましょうか、相手国の政府ということもありますが、もう片方で相手国の事業者に向けた展開に、行政がある種の支援をしたほうがいいのではないか。それから先ほどの1つは、エリア別に少しやり方を変えていくといことが必要なのではないのかなというふうな印象を持っています。
以上でございます。
○中山会長 ありがとうございます。
ほかに何かございましたら。
どうぞ、上山委員。
○上山委員 準拠法に関して言うと、今の議論は結果発生地を準拠法を定める判断基準としているところが実態と整合しない部分があるということだと思うんですが、通則法では不当利得と事務管理については利得発生地法というのが旧法の定めでしたが、それについても不法行為の結果発生地と同じように実態に則しない、関連性の薄い準拠法が選択されてしまう可能性があるという批判がありました。通則法においては1条追加されて、従来の利得発生地の規定に加えて、より密接な関連地があるという場合はそちらの地の法律によるという規定が追加されました。
著作権侵害でも13ページの脚注にあるような場合は、ではこの2つの地のどちらがより密接な関連があるのかというと、多くは主たるユーザーのいる地、例えばサーバーをアメリカに置いて、日本語で日本のユーザー向けにサービスを提供しているという場合には日本とより密接な関連性があるということになって、日本法が準拠法となるように実態に則した準拠法の選択も可能になる、といった観点での改正、検討というのはあるのかなと思います。
○中山会長 ありがとうございます。
ほかに何かございましたら。
ACTAについての情報がございましたら、皆様にご連絡するようなことございますか。今現状どうなっているかと。
○関事務局次長 ACTAについての現状ということでございますけれども、とりあえず私が把握している限りで申し上げますと、この14ページに書いてございますけれども、年内の合意形成に向けた検討ということで意気込みとしては進んでおるという状況でございます。ご案内のように、平成17年のグラインイーグルスサミットで提案をいたしまして、それを踏まえて熱心に検討が続けられてきているということでございます。
幾つか事項に分けまして検討を続けてきておるわけでございますけれども、順次民事でございますとか順番に検討してきて、さらに刑事でございますとか、あるいはインターネットに特有の問題でございますとか、そういったものについて、さらにその議論した上で最終的に結論を取りまとめたいということになっておりまして。その意味ではまだまだ実質的に詰めるべき点は残っておるという状況ではないかと思っております。
すみません、とりあえず雑駁なんでございますけれども。
○中山会長 これは日本発というか日本の提案の条約ですので、何とかうまくいけばいいなと思っておりますけれども。
ほかに何かご質問やご意見ございましたら。
もしないようでしたら、最初から全部の話で結構ですけれども。1から4までの間でご意見、ご質問ございましたらお願いいたします。
どうぞ、苗村委員。
○苗村委員 項目でいうと、多分3番が主に関係すると思うんですが。先ほど来議論があった中で、1ページ目の検討の視点といいますか、4つの視点があって、そのうちの3番目の消費者(利用者)の保護の観点というのが、単に利便だけではなくて、憲法で保証された表現の自由、それに絡むむしろ情報にアクセスする権利といったようなこともあるというお話があったと思いますが。
その関係で、3番で間接侵害の規定をより明確にするということは私はもちろん重要だと思いますけれども、たまたまここで例として例示されているものの中で、例えば外国を旅行している、あるいは外国に住んでいる日本人が日本のテレビ番組にアクセスをしようとすると著作権侵害をせざるを得ないというようなケースがどうも幾つか出ていると。それがカラオケ法理を拡大適用して、もちろん視聴者が違法ではないんですが、そのための装置を提供するものが違法であるとなってしまったケースがどうも幾つかあって。これを何とか救済できないかなという感じがいたします。
例えば国内といいますか自宅にいる者が自分の家で録画機を使ってテレビ番組を録画して、タイムシフトで見るのは当然合法であるわけですが、外国にいる、しかし日本の例えば政治であれ何であれテレビ番組を見たい、外国では放送していない。それを放送するための機器を自宅に置いて、それを1日中電源を入れておいてネットを介して送ることは、今までの判例を見ても適法だということになっているわけですが。その装置を預けると、そこでカラオケ法理が適用されてしまって違法だと。これは何か不自然な運用だと。
つまり、本来のユーザーの行為が著作権侵害に当たると評価されること自身が何か私は不自然に思うんですが。仮にそうであるとしてもそれを預けて管理する行為が、間接侵害であれ何であれ著作権侵害であるとなってしまうのは大変何か不都合だなという感じがいたします。
これはもちろん先ほどの国際云々の問題と直結するとは思いません。あくまでも日本の国民が外国で視聴する行為という問題なんだと思うんですが。日本の著作権法の運用解釈で何か不合理なことが起きているなという感じがしております。ちょっとどう解決していいのかよくわからないんですが。
○中山会長 日本のテレビをアメリカの駐在している家族に送って損害を被る権利者というのは多分いないはずですね。これ形の上だと、どこで複製があって、その機械をだれが所有して、だれが支配して、利益はどこかとギリギリやっていくとカラオケ法理になってしまうのですけれども、恐らく権利者は損害を被ってなくて、実態は、県単位の免許制が崩れるかどうかという放送行政の問題ではないかと私は思っています。
これは、現行法では今のような解釈になってしまう可能性強いんですけれども、フェアユースの規定を入れればかなり変わってくる可能性あるんじゃないかと思います。条文の立て方にも関係しますが、アメリカでもこういうものをフェアユースとして扱っているとも聞いてます。
ですから、今の苗村委員、恐らくそういう例は今後多数あると思うので、多分フェアユースが入ったときの関連で議論されてくるのかなという気はしておりますけれども。
どうぞ、上山委員。
○上山委員 私もそういうふうに期待はしているんですが。ただ一方でカラオケ法理という現状では確固たる判例と言わざるを得ないと思うんですけれども、それが判例法として一方であるという中で、フェアユースはそれ以外の部分をカバーするんだという解釈になってしまうと、結局インターネット関係の新しいサービスはフェアユース規定の適用がなくてカラオケ法理ですべて侵害主体であるという解釈が今後も維持されることを危惧しています。
その点でフェアユースの規定とあわせて、この間接侵害のセーフハーバーの範囲を明確にするということも早急に必要な課題なのではないかと思っています。
○中山会長 おっしゃるとおりで、それはそれで間接侵害のほうできちんとやってくれないと、今言ったような危惧が起きるわけですね。1週間前ぐらいに裁判官70名ぐらいに講義したときも、ぜひこういう方面にフェアユースを使ってくれということを伝えてまいりましたので、期待はしております。
そういう意味で大渕先生のところの間接侵害、よろしくお願いいたします。
ほかに何かご意見ございましたら。
よろしいでしょうか。ちょっと時間が余ってしまってもったいないんですが、何かご意見。
どうぞ、上山委員。
○上山委員 では、もう1点だけ。苗村委員から先ほど海外でのテレビ視聴の問題が違法とされていることについての不合理性を感じるというご意見で、私も実は全く同感なんですが。何もそれは海外だけじゃなくて、ここに挙がっている10ページのMYUTA事件というのは、恐らく一般の個人ユーザーからするともっと違和感のある事案だろうと思うんですね。
これは、音楽のCDを適法にユーザーが買ってきて、それを事業者のサーバーにアップロードして、外出先なんかでも携帯電話などで聞けるようにするというサービスです。自宅だけにとらわれずどこにいても聞けるようにする、自分で直接携帯電話にコピーするんじゃなくてサーバー等にコピーするというだけで、個人が通常従前からやっていた行為を利便性を高めるサービスを事業者が提供した途端に違法になってしまう。こういったことも現在のカラオケ法理の適用の拡大によって生じているということで、ここら辺も間接侵害の規定の見直しが必要な重要な要素の1つではないかというふうに考えています。
○中山会長 今のシフティングサービスも複製サービスも、恐らく次々と新しいサービス出てくると思いますので、同じような問題が次々と出てくるのではないかと思います。やはりそれはフェアユース、間接侵害のところをきちとやって手当てをしていかなければいけないのではないかと思います。
ほかに何かございましたら。
上野委員、どうぞ。
○上野委員 カラオケ法理につきましては、私もとりわけその理論的な根拠に問題点があると考えてきたわけですけれども、最近の裁判例においては、実際の適用範囲がかなり拡大しているという指摘はごもっともだろうと思います。
そしてまたそのことがさまざまな新しいビジネスの発展を阻害している可能性があるというご指摘も検討を要する点だろうと思います。
そうすると、これからどのように対処すべきかということになるわけですけれども、今ご指摘になられましたような間接侵害に関する立法論によって、このカラオケ法理の拡大を――それが過剰であるとすれば――防ぐというのがたしかに第1の方法だろうと思います。
ただ、そこではどうしても従来の裁判例におけるカラオケ法理は過剰であるという判断なり決定なりをしなければならないわけでありまして、そのためにはそれなりの政策判断が必要になるのではないかと思われます。
また、第2の方法として、先ほどセーフハーバー規定に関して議論がございましたけれども、これはプロバイダの責任を制限することには機能するようにも思うわけですけれども、先ほどのような例えばテレビ番組を国外で視聴できるようにするサービスであるとか、あるいはストレージサービスなどといったものを救済するために機能するかというと、なかなか難しいのではないかという気がいたします。
第3の方法といたしまして、フェアユースの規定を設ければそうした新しいネットビジネス、とりわけテレビ番組を国外で視聴できるようにするサービスであるとかあるいはストレージサービスといったものに適用されて、それが適法になることを期待できるかと申しますと、これはもちろんフェアユースの規定としてどのような規定をつくるかというところにもかかっているわけですけれども、現実にどれほどの効果を期待できるのかにつきましては、必ずしも確信が持てないところがあります。
いわゆる間接侵害につきましては、私も司法救済ワーキングチームのメンバーに入らせていただいて検討しているわけですけれども、間接侵害の問題について最終的にどのような立法論を打ち立てればいいのか日々悩んでおりますので、この機会にいろいろご意見を伺うことができたことは大変参考になりました。
○中山会長 ありがとうございます。
ほかに何かございましたら。
よろしいでしょうか。ちょっと時間は余りましたけれども。
本日の議論を通じまして、ネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化については、大体意見が出尽くしたのではないかと思われます。
また、5月に取りまとめました検討経過報告書におきまして、今後の検討課題として示しましたコンテンツの流通促進、日本版フェアユース規定の導入、ネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化の3つのテーマにつきましてはこれでひととおり議論をしていただいたということになるわけであります。
この調査会のスケジュールといたしましては、年末を目途に取りまとめるということにしておりますので、次回の会合ではこれまでちょうだいいたしました意見を整理いたしまして、取りまとめに向けた検討を行うということを考えております。
それでは、ちょっと時間が早いのですけれども、本日の会合はこれで閉会にしたいと思います。
次回の第8回の会合は、10月14日火曜日、10時から、本日と同じこの会議室で行います。
本日はありがとうございました。
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