○阿部会長 前田委員は若干遅れられるという連絡をいただいておりますので、ただいまから第7回の「知的創造サイクル専門調査会」を開催させていただきます。座ったまま進行させていただきます。
本日も、お忙しいところ御参集いただきまして誠にありがとうございます。
なお、加藤委員と八田委員は御都合により御欠席との連絡をいただいております。
また、本日も知的財産戦略本部の野間口本部員に御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。
加えて、本日の議題である国際標準総合戦略の審議に御参加していただくために参考人の方にお越しいただいておりますので、最初に御紹介を申し上げます。
田中正躬 ISO会長、日本化学工業協会副会長でございます。
高柳誠一 IEC前会長、東芝技術顧問でございます。
平松幸男 ITU−T第11研究委員会議長、大阪工業大学大学院知的財産研究科教授でございます。
加藤幹之 経団連知的財産権委員会企画部会長、IEC活動推進会議議長、富士通法務知的財産権本部長でいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。
参考人の皆様には国際標準総合戦略の議論に関して御意見をちょうだいすることになっております。
それでは、まず事務局から本日の資料の確認をしてください。
○藤田次長 今日は、資料の数が多うございますので御紹介申し上げます。
資料1−1が、田中参考人の資料でございます。
1−2が、高柳参考人の資料でございます。
1−3が、平松参考人の資料でございます。
1−4が、加藤参考人の資料でございます。
資料2が、国際標準総合戦略の案文でございます。
資料3が、国際標準総合戦略に関しまして意見募集をした結果でございます。資料3と、それから資料3の別添というものと2つ付いてございます。
資料4−1が、野間口本部員から前回の会合以降にいただいたコメントでございます。
資料4−2が、経済産業省の前回参考人で来られた小島局長からのコメントでございます。
資料5が、知的創造サイクル推進のための意見募集の結果についての資料です。資料5の別添はその本文でございます。
資料6が、知的創造サイクルに関する今後の課題、創造分野でございます。
その後ろに参考資料の1、2というものがございますけれども、これは前回の会議で妹尾委員から御質問のございました国際標準化活動で現に活躍している人たちの人物像に関する経産省及び総務省からの回答でございます。
資料は以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。それでは、早速ですが、議事に入らせていただきます。前半は、国際標準総合戦略についての議論でございます。
議論に先立ちまして、参考人の皆様からプレゼンテーションをお願いしたいと思います。大変恐縮でございますが、お1人5分以内でお願いいたします。申し訳ございません。
最初に、田中参考人よろしくお願いいたします。資料1−1をごらんください。
○田中参考人 本日はこういう機会を与えていただきましてどうもありがとうございます。それでは、資料1−1に基づいて説明をさせていただきたいと思います。
この下のスライドを見ていただきますと、今、日本の研究開発は非常に高いレベルになっていまして、研究開発をすることによっていろいろ得た知識、そういったものを商品化するわけですけれども、こういう研究開発の中で出てきた知識というのは必ずしも世の中の仕組みと合わないわけで、そういうものを高度化するとか、世の中に適合するように商品設計をしないといけないわけです。こういう技術の普及の段階で必ず標準の問題というものは大事になってくるわけですが、過去日本というのは非常に高水準の研究開発とか知識をつくるということを余り経験したことがなかったものですから、この標準ということに対してそう積極的なことをやってこなかったというのが問題かと思います。
次のページを見ていただきます。標準戦略の観点からすると、過去は比較的アメリカとかヨーロッパの強力な企業がいて、そういう企業が商品設計をしてそれを売ることで、おのずと標準というものができ上がったわけです。現代の環境というのは非常に変わってきていまして、パブリックドメインでいろいろなインターフェースの問題があります。ソフトウェアとかサービスの提供者、それから韓国を始めヨーロッパ、アメリカ、日本、非常に多くの企業が競争をして、インターフェースや標準が決まるということでありますし、研究開発と標準の距離が非常に短くなる。また、ユーザーからのクレーム、要求がいろいろあり、標準の環境というものが非常に変わってきました。そのため特に標準戦略というものが大事になっております。
標準というのは、デファクト標準という市場で決まる標準と公的な標準と2つあるわけですけれども、私が今、会長をやっていますISOというのは公的な標準の典型です。公的な標準の経営戦略にとっての意味というものは、国際標準とすることによって企業の商品がよりスムーズに売れること、また、デファクトの場合は独禁法の問題等があります。それから、よりユーザーの支持が得られるということで、国際的な標準機関の重要性が非常に増しているわけです。
そこで、5ページの「ISOの有用性」を見ていただきますと、皆様方は既によく御存と思いますが、ISOは、非常に多方面に活動していまして、強力なネットワークとか調整能力を持っているということでございます。
以上を前提に最近の動きを見ますと、6ページの下ですけれども、今ISOの会員というのは156か国がメンバーになっていまして、急速にこの会員が増えています。国際標準づくりというのは仲間をいかにつくるかということが非常に重要です。これは委員会等で最後は投票の数で決まるため、仲間づくりをうまくやっていかないと、最後は自分がいい技術を提案しても負けてしまうということがあります。発展途上国のメンバーは非常に増えており、そういう人々の間でうまく仲間づくりをやらないといけないという課題があります。
次を見ていただきますと、ISOの規格というのはここ5、6年の間にものすごい勢いで増えていまして、年間1,000件を超える数が国際規格になっています。従来の分野は互換性とか、コンパティビリティとかが中心だったのですが、現在は社会的責任とか地球環境問題とかホームランドセキュリティとかサイバーセキュリティなどのセキュリティ、それからサービスといった分野にどんどん標準づくりの範囲が広がっています。これは単にマネジメント規格の問題ということだけではなくて、規格自身の考え方というものを非常に広くとらえなければいけないような課題になりつつあります。
こういうことから考えますと、規格づくりをリードしてビジネスに有利にするためには、幹事国の業務とか、議長とかを引き受けるということが不可欠でありますし、世界的な課題、先ほどのエンジニアリング的なことを超えた課題をやるためには、それなりの知識と教養を持った人材とか事務能力というものが必要です。
こういう動きに対して、ヨーロッパというのは市場統合ということでISOとかIECの規格、標準を一つのベースにしてやっていこうという考え方でもう20年近くやっており、ヨーロッパの企業のビジネスのやり方はこういうヨーロッパの仕組みの上に乗ってやっている。
次のページを見ていただきますと米国、中国の取り組みということで近年、非常にISO等の取り組みを重視してやっています。
日本の課題ですけれども、いろいろJISCを中心に支援策は充実してきていますが、今からは民間の努力というものが非常に不可欠だと思います。なかなか標準が大事だと言っても皆、納得しないわけで、知財本部を始めとする政府の強力なメッセージとか、政府の強力なリーダーシップが必要だと考えます。
特に先ほどの国際標準をめるぐ状況変化から、人材の育成と確保が重要です。その中で、大学における教育というものが最近世界中で非常に強力に行われていまして、こういうものに取り組む必要があるのではないか。今、知財に関してできている各種の仕組み、そういったものに標準を加えてやっていくことが一番現実的だと思います。そのほかに各種の文科省の大学教育のプログラムとか、日本技術者教育認定機構等に認定する基準に標準という項目を入れてやっていくことも大きいインセンティブになるのではないかと思います。以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。御質問があろうかと思いますが、一通りプレゼンテーションをお願いしたいと思います。
続きまして、高柳参考人よろしくお願いいたします。
○高柳参考人 高柳でございます。先日、9月21日に開催されました第6回の専門調査会の大変立派な資料と議事録を拝見させていただきました。私は、今日どういう付加価値のあるコメントをさせていただけるかと悩んだわけでございます。結論はどうも6年にわたって会長と会長代理を務めましたIECのトップマネジメントでの体験を中心としたコメントを差し上げるのが一番よろしいのではないかと、こんなふうに思いまして、お手元の資料をつくらせていただいた次第でございます。
さて、私は一昨年の夏にIECの会長として東南アジア4か国を回って講演と対話会をいたしました。そのときに、日本企業の現地工場の日本人の責任者の方も何人か出席をしていただいておりました。その人たちの異口同音の訴えを御紹介しておきたいと思います。 それは、「日本の親元は技術移転を認めませんので、工場の技術が育たず、この国のIEC標準化作業に参画できないで大変歯がゆい思いをしている」というものでございました。資料の1ページ目の2)のe)項に書いてありますように、欧米の世界企業との態度の差をしみじみと感じて帰ってきた次第でございます。
さて、私も実は日本の経営者のはしくれでございましたので、御多分に漏れず現場主義でございます。そこで、IEC会長就任を前にしまして、電機工業会と電子情報技術産業協会にお願いをいたしまして、IEC標準開発の第一線で働いている技術者の方々にお集まりいただいて率直な意見を拝聴させていただきました。
そのときの技術者の声を集約したのが2ページの8行目、a)に書いてあるとおりでございます。これを聞いておりまして、突然東芝の本社研究所の次長から本社特許部長をやらされた時の事を思い出しました。約20年前のことでございますけれども、そのときに感じた特許関係者の嘆きと全く同じだったということでございます。そういう意見を拝聴してから6年が経過しましたけれども、私の感じでは徐々に改善されているように思います。
しかしながら、特許の場合のようなインパクト、特にメディアからのインパクトは国際標準の場合にも必要なのではないか。前回の会議で前田委員が、これをブームと表現しておられたように私は受け取っております。
さて、御案内のとおり、第一線のIEC標準開発作業というのは全くの国際交渉の場でございます。単に技術が優れているからと言っても決して通るわけではございません。仲間として信頼されませんと、発言の機会すらなかなか与えられないということも事実でございます。
3ページの2行目、c)に書いてありますような人材を長期にわたって張り付けること、これが理想でございますが、そのためにはそのすぐ下のd)項に書いてございますように活動の成果を適切に評価し、処遇しなければ、優秀な人材が落ち着いて仕事ができないだろうと思います。ここでも特許人材に関する過去の例が大変参考になるのではないかと思っております。
資料には書きませんでしたけれども、IECの上級マネジメントに参画できる人材層の充実も我が国にとっては大きな課題だと思っております。
さて、私事で恐縮でございますけれども、1970年代の初頭に私は東芝の技術アタッシェとしてニューヨークに駐在をしていたことがございます。非公式な先行的な情報、柔らかい段階での情報は、人間の信頼関係が成立して初めて得られるということを体験いたしました。そうでないと、何も情報をくれません。それから30年たちましてIECの会長、あるいは会長代理を務めて全く同様の経験をいたしました。これに基づくコメントが、3ページ目の「5)情報力の強化」のa)及びb)の項目でございます。
時間がまいりましたので、これで発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○阿部会長 どうも短い時間でありがとうございました。
それでは、続きまして平松参考人お願いします。
○平松参考人 それでは、資料1−3に基づいて御説明いたします。
私は、昨年の3月末までNTTの研究開発の部署におりまして、そこで20年強のITUの活動をしております。現在もSG11の議長として継続しております。
前回のこの調査会の中で総務省の方からITU絡みの御説明がありましたので、私は現場で感じている観点から御紹介いたします。右下のスライド番号で参照いたします。 スライド2は技術標準化の一般的な意義ということで、いろいろな立場の方にとって意義深いものである。ただ、これは間違えますとこの意義が欠点になるということで、適正な運用をした場合、こういう意義があるということを言っております。
スライド3ですが、過去は技術標準というのはITU、IEC、ISOのような国際標準化機関が中心にやってきましたけれども、1990年代の前後からいわゆる民間のフォーラムが急速に活発化しました。
スライド4ですが、その原因はスライド3にも一部ありますように対象とする技術範囲が拡大したこと。それから、スライド4に書いてあるような理由なのですけれども、特に3点目の技術開発のスピードが早まりまして通信自由化により競争が活発化した。これにより、標準化も競争になったということが一番大きいかと思います。
あとは、最後のポイントですが、国際機関に寄書を出す場合はその国の中で意見をまとめなければいけませんけれども、多くの場合、特にこのIT分野の企業にとっては意見というのは企業ごとに違うのであって、国ごとに違うのではないということで、ちょっとマッチングしないのでやはりフォーラムの方がやりやすいという意見が多いです。
スライド5ですが、ITU離れというちょっとセンセーショナルな言い方をしているのですけれども、実際に、最近産業力の活性化で重要なモバイルとインターネットが外へ出てしまっている。その原因もここに書いていますが、モバイルのときは第2世代から第3世代の移行期にITUで統一したものをつくろうかという議論がありましたけれども、結果的には第2世代からのイナーシャがかなり大きくて、大幅な変更をヨーロッパやアメリカが嫌ったということ。それから、ITUのスピードが当時遅くて標準化において求められていたスケジュールを満足できないということが原因でした。
インターネットについては、ITU−Tの方がシーズとニーズの見誤りをしたと私は思っているんですけれども、ISDNというものが一時普及したと思いますが、これが思ったほど伸びなかった。それで、そのころにIETFという米国を本拠地とする標準化団体が、皆さんが今お使いになっているインターネット、軽機能なパケットですけれども、これがやはりニーズをつかんだということでございます。
したがって、最近の傾向としてはツーステップの標準化という傾向が出てまいりました。第1ステップはまず民間のフォーラム・コンソーシアムによって技術標準化される。この段階は市場競争段階なので、基本的には相手を殺そうという活動なわけです。したがって、知財権もメンバーにしか許諾しないということもあります。もちろんフォーラムの中で公にもっと広く許諾するというものもありますが、メンバーと非メンバーで扱いを差別するものもあるわけです。。第1ステップの例としては、例えばDVDとか、第3世代の携帯があります。
第2ステップでは、やはりWTOの関係から国際標準が欲しいので国際標準に提案してくる。この場合にはフォーラムやコンソーシアムで標準化したものを再検討するのは無駄なので国際標準ではこれらの規格をノーマティブに、つまり標準の本文として参照するという傾向が出ています。ITU、IEC、ISOの中でこのための加速化承認手続というものも整備されているところでございます。
このような中で日本に求められる対応は、やはり戦略的な標準化だろうと思います。一言で言いますと、日本がリードできる場を選ぶということ。あるいは、なければ設立するということ。それから、知財権を確保した上で標準化するということが大事かと思います。特に国際標準を行う場合には1か国だけの意見では弱いので、近隣のアジア諸国との連携が重要だと思います。
スライド7は、そういったことでITU−Tがすべてをやるという時代はもう過ぎ去りましたので、ITU−Tではこれからどういった傾向の課題に重点化されていくかというと、やはり公共的なものに集中していく。具体例としては、電話網の後継機種としてのNGN、ネクスト・ジェネレーション・ネットワーク、これの関係の標準化が重要になっております。特に通信品質の制御とかセキュリティの保証ですね。こういった今のインターネットではちょっと弱い分野、あるいはNGNを活用するようないろいろな分野ですね。そういったものが重要になっています。
最後に標準に含まれるIPRのルール整備ですが、基本的にはポリシーの共通化というのがISO、IEC、ITUで進んでいまして、更に地域標準化団体でもRANDとかFRANDの支持というものを繰り返し決議しています。また、ITUの中にはフォーラム・コンソーシアムとの協力のルールがあって、この中にIPRの整合というものが条件になっています。こういったIPRポリシーの共通化をフォーラムを含めて広めていけば、企業にとって非常に利便性が高くなるし、活動リスクが減るわけです。もう一つは、アウトサイダー特許とかホールドアップ問題の緩和とか、あるいはパテントプールの推進といったものが企業リスクの低減の点から重要だと思います。以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。それでは、加藤参考人お願いいたします。
○加藤参考人 それでは、国際標準化に対する産業界の考え方について、資料1−4に沿って説明させていただきます。
まず基本的な認識ですが、我が国の国際標準化活動は、これまでの政府、関係団体の皆様方の御努力により、環境整備が着実に進んでいると思っております。
ただ、一方ではいろいろな新しい状況が発生しており、例えばアジア諸国においても積極的に標準化活動が進められておりますし、また、知財を確保して標準化に取り組むといった新しい問題が出てきており、更に一段と取り組みを強化していく必要がございます。
次に3ページですが、具体的に諸外国の動きを見ますと、特に中国は13億人という巨大なマーケットを背景にしまして独自の規格をつくるという動きがございます。そういうことに対して、我が国もいろいろな対応が必要になると認識しております。
次に4ページですが、知財と標準という問題も非常に重要になってきております。排他的な独占権としての知財、一方では許諾権として広く普及をする標準化、この2つをどうやってうまく共存させながら企業自身が収益を最大化させていくか。これが我々の課題だと思っております。
次に5ページですが、標準化を進める場合にはそれぞれの分野の個別の事情を斟酌していくべきだということがあります。特に技術革新が激しいエレクトロニクス、通信等の分野では、どうやって新技術を出していくかということと標準化をうまく組み合わせていくことが必要になりますし、鉄鋼等、伝統的に日本が非常に強い技術、標準を持っている分野については日本が主導権を発揮して積極的に標準の維持、改定に貢献することが必要になると思います。
経団連では6ページにございますとおり、2004年の1月に「戦略的な国際標準化の推進に関する提言」を出させていただいております。ここに大きな項目は書かせていただいておりますが、これらの課題について引き続き啓蒙活動に取り組んでいきたいと思っております。
次に7ページですが、今後も経団連としていろいろな取り組みをさせていただきたいと思っております。まず、その前提としまして、新たなアクションプランを作成することを念頭において、検討中の内容をあげさせていただいております。
最後に3ページほど、政府を中心としまして関係の方々に是非お取り組みいただきたいことを提案させていただきたいと思います。一部重複がございますが、特に今回御検討いただいております戦略案に余り触れられていない内容を中心に申し上げたいと思います。
まず、対外的ないろいろな政策を強化していただきたいということでございます。世界の国際標準に関する情報の収集・共有を行うとともに日本からも情報を発信していく。こういう機能を強化することが必要だと思っております。また、4つ目に「オープン化の推進」と書きましたけれども、先ほども申し上げたとおり、特に中国等において独自の規格が積極的につくられております。そういうものに対して、標準をできるだけオープンにしていただくという働きかけをする必要があると思います。
次に研究開発、知的財産政策と標準化戦略は密接に連携する必要があります。当然この分野でもこれまでの取り組みを強化し、特に標準に詳しい方々が知財にも知識を持つことがこれからますます重要になってくると思っております。
最後でございますが、「インフラのさらなる整備」がございます。これは先ほどのお話にも関係いたしますが、何よりも人材育成という点が重要かと思います。例えば、企業をリタイアした後にいろいろな公的研究機関、標準団体等に新たなポストを確保していただき、再雇用していただいてそういう力を活用していただくとか、ベテランと一緒になって若手が標準活動に参加して知識を確立していただくというようなことも必要だと思います。
また、3つ目にありますとおり、大学の教官等の方々が国際標準化の活動に更に参加していただけるような制度づくりも是非お願いしたいと思います。以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。
それでは、次に国際標準総合戦略の案について、事務局から説明をしていただきます。
○藤田次長 それでは資料2でございますけれども、前回の事務局の問題提起にいろいろ御議論、御意見を賜りまして、前回の取り組みの方向性に肉付けをしたものが今回のこの戦略案でございます。
4ページをごらんいただきたいと思います。「概要」でございますけれども、まず「総合戦略の必要性」として今もお話が出ましたけれども、「世界市場の一体化」、「WTO/TBT協定の成立」、「特許権を含む国際標準の増加」、「対象分野の拡大」、「諸外国の戦略的な標準化活動」という中で、我が国も戦略的な対応が必要ではないか。総合的な国際標準戦略を立案するということで、折しも今年は国際標準化参画100年という記念すべき年でもございますので、次の100年に向けて大きな戦略を描いていければと思っております。
次の5ページをごらんいただきますと、この戦略の「3つの目標」ということで、第1に「イノベーションを促進」する。国際標準により、技術革新の成果を社会に還元し、イノベーションの促進につなげる。
第2に「国際競争力を強化する」。我が国の先進的技術を国際標準化し、産業競争力を強化するとともに、不適切な国際標準化を防止し、国際貿易の促進を図る。
第3に「世界のルール作りに貢献する」。国際標準化により、社会に役立つ技術の普及と環境・安全・福祉の向上を促し、世界に日本のルールメイキングで貢献をする。
次の6ページをごらんいただきますと、5つの戦略を挙げてございます。5項目立ててございますけれども、これが本文の第1章から第5章にそれぞれ対応してございます。第1が「産業界の意識を改革し、国際標準化への取組を強化する」。経営者の意識改革、企業の組織体制の強化を図るとともに、多様な国際標準化スキームの戦略的活用を促進するなど、企業の国際標準化活動への自主的な取り組みを強化する。
第2が「国全体としての国際標準化活動を強化する」。国際標準化機関における議長・幹事の積極的な引き受けや、環境・安全・福祉等の分野における取り組みの強化により国際的な貢献を果たす。また、国の研究活動と国際標準化活動を一体的に推進し、国全体としての標準化活動を強化する。
第3が人材の育成でございまして、経験者の知識、ノウハウの活用、大学等における標準化教育の充実により、次世代の国際標準化人材を育成する。合わせて顕彰制度の充実やキャリアパスの確立により、標準化活動に対するインセンティブを高める。
第4がアジア等の諸外国との連携の強化でございまして、アジア・太平洋諸国と連携を強化するための「アジア・太平洋標準化イニシアチブ」を作成するとともに、中国・韓国との協力を推進する。
最後が、標準化のための環境とルールの整備でございまして、より公平でオープンな国際標準化システムの実現に積極的に貢献するとともに、知的財産の取扱いルールを明確化するなど、標準化のための環境とルールを整備する。こういう構成になってございます。 既に委員の皆様には事前にこの本文の方もごらんをいただいてございますので、詳細な説明はこの場では省かせていただきます。以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。実は、この「国際標準総合戦略(案)」の検討に先立ちまして国民の皆様から意見募集、パブリックコメントを行いました。その結果についても、事務局から簡単に紹介をしてください。
○藤田次長 資料3をごらんいただきたいと思います。意見募集は官邸のホームページを使いまして9月22日から3週間行われました。提出された意見は合計で14件、団体が2件、個人が12件でございます。
資料3の4.で「意見の概要」を取りまとめ、事務局として整理をしてございますけれども、資料3の別添の方では意見そのもの、全文をまとめさせていただいております。内容の説明は省略をさせていただきます。
それから、先程御紹介申し上げましたが、資料4−1と4−2は野間口本部員、経済産業省の小島局長からお寄せいただいたコメントでございます。以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。それでは、お待たせいたしましたが、議論に入りたいと思います。野間口本部員、または参考人の4人の方々も御意見を御遠慮なくいただければありがたいと思いますし、先ほどのプレゼンテーションに対して委員の皆さんから御質問がありましたら合わせてお願いします。どうぞ。どなたからでも結構です。
○下坂委員 質問ですけれども、資料2の20ページのところに「特許の無償開放を前提とするのが常識であった」から始まる文章で、「しかし」とその次のパラグラフ「制度面においても」というところの2つのパラグラフに関することでございます。
最初のパラグラフについては下から3行目に「次世代技術の標準を定めた後に実際の製品開発を行う事前標準の考え方がさまざまな分野に広がってきており」とございます。それで、それが「常識化しつつある」という前提になっておりますが、次の制度面の方におきましては下から2行目に「今後は、知的財産権を適切に確保した上で、国際標準化活動を行うとの考え方が重要である」ということで、この箇所が矛盾をしているのではないかと取れるのです。
それから、いろいろなヒアリングをなさいました中では、個人の意見としては特許に制限をするべきであるというような意見なども出ているのです。特に20ページの矛盾のように思える箇所を御説明いただければありがたいと思います。
○藤田次長 前回の資料の中に、知的財産権を含む国際標準の例という表が入っていたかと思うのですけれども、今回の参考資料にそれが入っていなくて申し訳ございませんが、事実として次世代DVDはここに例示されてございますけれども、特許を含む標準というものが大変に増えてきているというのが、この「しかし」から始まるパラで書いてございます。
一方、そうした動きの中でホールドアップ問題ですとか、さまざまな問題も起きてきてございまして、そうした中で独禁法上そういうパテントプールというのはどのように扱われるべきであろうか。あるいは、その3つの標準化機関でそのポリシーが一致していないのは好ましくないということで、共同のワーキンググループをつくって今、議論が進み、例のRAND条件等について取扱いが明確化されつつあるとか、明確化の努力が図られているということでございます。
そういう状況の中で、日本企業においても特許を乱用するというのは許されないわけですけれども、知財権を適切に確保した上で国際標準化活動、つまりどういう知財を持っているのか、それをどういうふうに生かすべきなのかということを十分に戦略化した上で標準化活動に参画することが重要ではないか。そういう趣旨で書いてございます。
よろしければ、参考人の方から補足していただければと思います。
○阿部会長 先ほど後半についておっしゃった方がおられたと思いますが、質問は少し矛盾しているのではないかということですから。
○平松参考人 ツーステップの話をさっき申し上げましたけれども、第1パラグラフのような観点と、第2パラグラフは国際標準ということなのですが、やはり両方あるのではないかと思うんです。標準ということで表に出る前に知財権の確保というのを企業もどんどんやっていますので、標準を定めた後に製品開発をしているようなんだけれども、実際には標準化と並行して開発はしていると思います。その結果、国際標準になる段階でその特許を含む規格というものが当然出てくる。主な分野はさっき省略しましたが、オーディオビジュアルとか、符号化とか、そういった分野が多いと思います。
一見すると矛盾のように確かに見えるんですけれども、ステップ1とステップ2と両方あると思います。
○阿部会長 ありがとうございました。文章の誤解をしないように、中身はそのとおりだとしても配慮する方がいいかもしれないですね。
ほかはいかがでしょうか。
○野間口本部員 今の下坂先生のような御意見がかなり出ると思うんです。私はそもそも論の最初の標準はすばらしいとらえ方といいますか、まとめ方で、本文の第1ページの書き出しになっていると思うのですが、国際標準が大いに変容してきている。これまでの標準と最近の標準のとらえ方が違ってきているんだという表現だったと思うのですが、本文の中身の方にも事後標準から事前標準という形の表現も出ておりますし、事前標準的なものが広がってきている。そうしますと、R&Dの最先端のところで標準の話を始めるということになりますので、当然知財がそこでは絡んでくるということで自然に理解できるではないかと思います。
ですから、経営者の意識を改革するというところでしたが、そのそもそも論のところをきちんと論点整理していただいたら、なぜ知財で標準を論じるかというところがはっきりするのではないかと思います。
○阿部会長 ありがとうございました。流動化しているだけに、立場、立場で少し古い意識をお持ちの方と違っている場合もあるでしょうね。
○野間口本部員 先日、技術同友会という会合で日本規格協会という国際標準に大変頑張っておられる団体のお話を聞いたのですが、いろいろな質問が出た中で、標準というものを決めると技術進歩がしなくなるんじゃないかと、いろいろな分野の権威の先生方が言っていました。昔はそういうとらえ方もあったかもしれないですが、分野によっては全くそれとは逆で、R&Dの投資を早く回収して次のR&Dに向けるという形で、より多くの人がその成果を享受する手段として標準が位置付けられる時代ではないかと思いますので、その辺がわかるような整理といいますか、前段の方であるといいのではないかと思った次第であります。
○阿部会長 ほかにいかがでしょうか。
では、妹尾先生どうぞ。
○妹尾委員 3点ほどコメントします。第1に野間口先生のお話とも関連すると思いますが、5ページの3つの目標の1番目で「イノベーションを促進する」とあります。国際標準により、技術革新の成果を社会に還元し、イノベーションの促進につなげる。すっと読むと分かったつもりになるのですが、よく考えとる実はわかりにくいところがあります。反対という意味ではなくて、これをもう少し整理して解説があるとより良いかと思います。 といいますのは、今イノベーションばやりですが、イノベーションとプロダクティビティの概念の整理がどうもうまくできていないように見えます。これは、産構審の方でも申し上げさせていただいておりますけれども、プロダクティビティ、生産性を幾ら高めてもだめになってしまうような新しい革新を起こすことをイノベーションと言うわけですから、イノベーションと生産性というのは両輪でいかなければならない。だから、イノベーションによって発展性を確保して、発展した後でそれをプロダクティビティにより成長性につなげるという関係性があるはずなんです。
そして、生産性はもちろん標準化によってなし得るものですから、標準化とイノベーション、あるいはイノベーションと生産性、あるいは生産性を確保するときの標準化の問題みたいなものが整理できていなければならないのです。ところが、いろいろな議論でわかりにくくなっているので、ここではそういうものを整理していただけると普及するときにわかりやすくなるのではないかと思います。標準化ということ自体の戦略性と、標準内での戦略性についても整理するともう少しわかりやすいのかなという気がします。
第2点は人材育成のところ、15ページです。国際標準人材を育成するということですが、せっかくなので知財人財育成のところと絡まなければいけない。今日の参考人の方々も皆さん知財の標準化との関係で人材育成とおっしゃってくださっています。
標準人材と知財マネジメント人材というのは実は同形だと前回指摘させていただきました。科学技術と知財法務と経営商務、この3つの分野の融合領域は標準についても知財マネジメントについても全く同じなのです。
なので、現在まで続いている知財人材の育成等との有機的連携についてここで触れていただくとよいのではないかと思います。残念ながら15ページ、16ページを見ても、今までの知財人材の育成を生かすとか、あるいはそれとの連携をするというところの文言が見えないので、その辺を入れていただくと良いという気がしました。
3点目は、16ページです。3.の「具体的取組」の中で、各企業、日本知的財産協会、日本弁理士会に対し研修を実施することを促す、と書いてあります。先ほど下坂先生が、私がPRするのは嫌だから妹尾先生が言ってくれると助かる、と言われたので私が代わりに申し上げます。日本弁理士会はこの11月から国際標準のゼミを2つ始められるということで今、受講生を募集中です。傍聴人の方も含めて、受講されたい方は是非というPRを私が代わりにしておきます。以上です。
○阿部会長 もう促す必要はないということですか。
○妹尾委員 もう既に募集を始められているそうです。
○阿部会長 ありがとうございました。イノベーションの定義がすごく人によってとらえ方がばらばらで、技術革新というのは余りにも短い言葉で言っているだけでいろいろなとらえ方をしていて、さっきおっしゃったような技術改良的なものも含めて考えている方も少なからずいますので、第3期基本計画はそこを相当意識したのですが、意識すればするほど長くなって、定義が長くなるとだれも覚えてくれないというジレンマがございますが、何かありましたらお願いします。
○藤田次長 1点目でございますけれども、5ページの1.で書いた趣旨というのは、せっかくすばらしい技術革新というか、人間の生活とか社会のあり方を大きく変えるようなものをイノベーションと言うと思うんですけれども、そういう研究成果が出てきても、それが国際標準とならなければ無に帰してしまうというか、それまで投入した多額の研究資金が生きないことになるのではないでしょうかという意味でここでは書かせていただいております。 したがって、標準化と言うと一定のルールを決めて生産性を上げるんだということももちろん標準化の意義ですけれども、今、我々は国際標準化と言ってイメージしておりますのは、生産性を上げるにとどまらず、それがいわば市場を獲得するための重要な戦略の一つであるという意味でここでは書かせていただいております。
○妹尾委員 それはすごくよく理解できるのですが、できれば知財がサイクルで動いていくということと同様に、イノベーションが標準化により普及し、普及したことによって生産性が上がって、更にイノベーションの源資が出てくるというようなサイクルのコンセプトとして表現されると良いのかなというところが1点です。
仮にそこまでいかないにしても今、阿部先生がおっしゃったようにいろいろな理解があるわけですから、少しそこを整理して書いていただくとよりわかりやすくなるのではないかということです。
○田中参考人 ISOで去年、イノベーションと標準の問題についてシンポジウムを開きました。5ページに書かれている国際標準により、イノベーションの促進につながるという言葉の解釈ですが、、特に技術が非常に変わっているような分野というのは、国際標準をつくるとルールははっきりするから、そのルール、すなわち標準にのっとって、いろいろなことをやれば、どんどん新しい商品とか、イノベーションが起こるということで、不確実性というものが標準により減ることによって、かえってイノベーションが進むのではないかという議論がありました。
それから、今の標準というのは基本的にはイノベーションのステージで考えると、技術が普及をするときにだれにでも使えるようなルールを決めるわけですから、技術の普及を促進するという効果があると思います。したがって、先ほどから御意見が出ているように、ちょっとここの文章の書き方を工夫すれば非常によくわかるようになるのではないかと思います。
それから、私もコメントをしてよろしいでしょうか。マネジメント分野における標準化の動きということですけれども、10ページ、それから22ページの参考のところにマネジメント規格の出現というものがうまく整理されているんですが、今、我々はISOでいろいろ新しい分野の標準化をやっております。確かにマネジメント規格というのは一つの大きい分野なのですけれども、今の社会的責任とか、セキュリティのビジネス・コンテュニティとか、こういう標準化というのは必ずしもマネジメント、ある組織をいかにうまくマネージするかということに基づく標準ではないんです。
むしろ、いろいろなチェックポイントを整理するとか、そういうことで、新しく標準化を手掛けなければいけない分野というのは、マネジメント規格ということよりももう少し分野が広くなっています。サービスとか、食品の安全の分野とか、いろいろな国際機関でやっているものと連携をして標準化をする必要があるというのが世界的な課題だということです。6.のマネジメント分野というのは非常に日本には大きいインパクトがあったわけですけれども、少し書き方を工夫された方がいいんじゃないかと思います。
最後に、16ページの大学における標準教育の問題です。私も標準の問題というものをやっていて、もうかなり長く大学でいろいろ講義をさせていただいているんですけれども、先ほど私のスライドの具体的な取り組みのところでコメントしましたが、具体的に文部科学省でいろいろやっている要綱とか、日本技術者教育認定基準という大学の認定をするときのルールの中に標準とか知財とか、こういう項目を入れるというようなことを知財の調査会でリコメンデーションとして出していただければ、非常に具体的に何をやったらいいかがわかるのではないかと思います。以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。これは工夫させていただきたいと思います。
では、吉野委員どうぞ。
○吉野委員 私は自動車の世界なものですから、比較的標準ということとは余り縁がなかった世界にいたのでまだぴんとこないことがたくさんあります。
例えば、最初のページの前文で2行目から3行目にかけて、「いかに優れた製品を作ろうとも、その製品が世界標準に合致していなければ、あるいは」という文章はちょっと言い過ぎではないかという感じがいたします。
それから、今5ページの目標の話が出ていましたけれども、目標というのは普通は、今はこの辺にいるんだけれども、いつごろにここまでにいきたいというようなことがもう少しクリアになるとわかりやすいと思います。しかし、私は残念ながら代案を出すことができないんですけれども、そうでないと達成したのか、しないのかという評価もできないだろうし、もうちょっと何とかならないのかなという感じがいたします。
それには多分いろいろなデータがありまして、人数のデータなどもありますが、そこまで細かくはないとしても、現在の状況をこういうレベルだというふうに認識し、ここまでいきたいんだということがもう少し書けないかという感じを持ちました。以上でございます。
○阿部会長 2番目は、吉野委員が総合科学技術会議の議員のときにおっしゃっていて、どうも役所の文書は全部そうだとおしかりをいただいて。
○吉野委員 強化するというような表現が多いんです。推進するとか、整備するとか、この戦略の方を見てもそうですが、もうちょっとはっきりできないかなという意味であります。
○阿部会長 ありがとうございました。今の前文はちょっと考えてみてください。これが間違っているわけではないですけれども、ちょっと自動車に合わない。
○吉野委員 分野によってみたいな話だと思うですけれども。
○阿部会長 もしかしたら自動車がかなり特殊なのかもしれませんけれども。
○吉野委員 自動車は売れているんですから。
○藤田次長 自動車は上手にやってきたということではないでしょうか。標準に反したらやはり売れないわけですから。
○吉野委員 それは世界標準というのが余りないんです。例えば、大きな話でいくと右ハンドルでもいいし左ハンドルでもいい。国によって当然、交通法規が違いますから。
○田中参考人 ISOでは、自動車に関する標準を非常にたくさん策定していまして、結構日本の自動車もそういうものをうまく使っています。ITSのように情報技術と自動車の係りとか、アタッチメントのいろいろな表示とか、国際標準で自動車に関係したものが多くあります。その意味では日本の自動車産業はそういうものを非常にうまく使っていて、プラスアルファでいろいろ利便性とか価値を付けているということだと思います。
○阿部会長 多分、吉野さんの代弁をすれば、まずはいい製品をつくっていくということが本道である。それにプラスしていろいろな標準化の問題があるということをおっしゃっているのではないか。ここはかなりいい線をいっているところと、否定的に書いているところがありますので、多分そこは合わないとおっしゃっているのではないかと思います。
○吉野委員 ぱっと読んだときにそういう感じがするものですから。
○阿部会長 では、田中委員お願いします。
○田中委員 私どもで扱っている複写機は、現在はほとんどネットワークにつながるようになっています。複写機の中にあるドラムなどはすべて独自仕様で開発していますが、ネットワークにつながった途端にインターフェースやデータフォーマット等の国際標準にきちんと合致しない限りは使えない、売れないということになります。そういうことを1ページでは言っているのではないかと思います。
それから、かつては事後標準的なものが中心であったわけですけれども、これからは事前標準、言葉を換えて言えばトップランナー方式という考え方が重要になってくると考えています。日本の中に世界で一番進んでいる技術があれば、全力を挙げてその技術を世界標準に持っていかなければ日本の産業競争力が失われていく、そのような考え方の大きな変化が明確にうたわれていて、この1ページ目は非常によくできた文章だと思っております。
次に、12ページの「国費を原資とする研究活動においても」というところで、国際標準を視野に入れた活動について書かれております。国際標準に関係する知的財産活動というのは海外での特許出願が中心になります。現在大学等で行われている特許出願はどちらかというと国内が多いわけでございまして、まさにこの国際標準化というものをターゲットにした国費原資の研究活動に関しては、世界的にきちんとした特許権を確保していくことが必要である、ということを明確に記載していただきたいと思います。
次は、15ページの国際標準人材についてです。これは非常に大事な点であると思います。高柳参考人が言われましたように、長い期間にわたって信頼を勝ち取っていくというのが、人材のネットワークをつくるときのポイントだと思います。したがいまして、特に若手を中心としたネットワークづくりが必要になります。15ページの下段に「産業の枠を越えて交流し、情報交換とネットワーク作りをする機会を拡充する」とあります。国際間の人材ネットワーク構築も同様だと思いますが、各省の標準担当の方と企業の標準担当のできるだけ若い人たちが交流する場を積極的につくっていくということも大事なポイントだろうと考えます。そういう中でお互いに切磋琢磨し、あるいは信頼感を醸成することが必要であると思います。
それから、17ページです。中国等では独自の国家規格の策定が活発に行われておりまして、先ほど経団連からの話にもありましたけれども、産業界ではそれに適切に対応する必要がでてきています。このような動きに対応するためには、情報をいかに早く収集し、その情報を集約して迅速に産業界に流すような体制、こういったことが必要です。情報収集能力の向上、それをいかに皆に知らしめるかという2点が重要になります。
それから、ここでは国際標準をお互いにアジア地域と協力してつくりましょうということが中心になっていますが、中にはなぜそんなことを国家標準や国際標準にしなければいけないのか、というものもあります。ですから、「標準化すべきもの」と「標準化すべきでないもの」について、お互いに議論できるような場をきちんとつくっていく必要があるのではないかと思います。以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。ほかにどなたかいかがですか。
○高柳参考人 今、田中委員から中国に関する言及が有りましたので付け加えさせていただきます。情報を集めて戦略をつくるときに、例えば今、日本ですとJISCが中心になっていると思うのですが、JISCは、専ら交渉の場に正面から向かう部隊でもあるわけです。中国の場合はもう一つ、標準研究所というような名前だったと思いますけれども、日本で言いますとJISCの附属機関のような研究所を持っております。ここが非常に専門的に標準に関する情報を集めて分析をしております。
私は会長として北京に行ったときにびっくりさせられました。たしか副所長さんが日本専門の方で、私にぴったりと寄り添ってくださいました。彼は英語はしゃべれなくて日本語が堪能でした。副所長は、私が国内でお話をしたこと、あるいは新聞記者に答えたこと、紙になっていることは全部知っているようでした。あなたが、あの時に発言された内容を大変私どもは評価をしておりますと言っておりました。そのくらい分析をしているわけです。情報に基づいて研究所が後ろで総合戦略を練っているように感じました。
どうも日本の場合はJISCという表部隊しかございませんので、非常にやりにくいのではないかと感じています。そういう組織の必要性に関して、一度御検討いただけたらどうかという気がいたしております。
○阿部会長 ありがとうございました。それでは、最後に前田委員どうぞ。
○前田委員 最後に締められるような内容ではないのですが、私が企業のときに関わった狭い範囲の技術のことでお話しさせていただきます。例えば、リチウム電池のように形や大きさを、あえて規格化しないという分野もあると思います。
先日、ソニーさんの火災の事故がありましたが、回路での安全化という方法があります。形が決められていないからこそやれる、新しい安全性の方策というものもあります。リチウム電池を各社が長いこと、もう20年近く研究をしてきて、高性能化のため大容量化していくと、形が決められることによって、安全機能を盛り込む余地がなくなるのではないかと思われます。形が自由で、シートで巻いているものもあれば、積層型もあれば、いろいろな形が許されているからこそ、何かあったときに今度は安全機能を工夫することができる余地が残っているのではないかと思いまして、分野によっては標準化しないからこそ工夫が出てくる分野もあるのではないかと思いました。
また、戦略的に同じ形で安い電池がどこででも手に入りますということにならないからこそ、国内でのリチウム電池の業界があるのかなというような気もしながら関わっていたものですから、やはり標準化した方がいい分野と、しない戦略の分野というものが存在するのではないかと思っています。この分野は、しないようにしましょうという場を設けましょうと、先ほど田中委員がおっしゃっていましたけれども、私も全く同じ意見です。
○阿部会長 ありがとうございました。それでは、そろそろ時間ですのでこれで議論を終わらせていただきます。国際標準総合戦略については次回、第8回において取りまとめる予定でございます。つきましては、本日のさまざまな御議論、プレゼンテーションを踏まえて、事務局において国際標準総合戦略の案を修正して、次回の専門調査会に提出していただきたいと思います。
ここで、参考人の皆様は御退席をされます。本日はお忙しいところどうもありがとうございました。
(参考人及び参考人関係者退室)
○阿部会長 それでは、知的創造サイクルに関する議題に移らせていただきます。知的創造サイクルの、特に創造分野ですね。これについてこれから御議論を賜りたいと思います。検討に先立ちまして、国民の皆様から意見募集、パブリックコメントを行いましたので、まずそれについて事務局から説明をお願いします。
○藤田次長 資料の5でございます。先ほどの標準の分野と同様に、9月22日から3週間ホームページによって意見の募集をいたしました。提出された意見が全部で14件、団体7件、個人7件でございます。
「4.意見の概要」のところで、それぞれの分野ごとに寄せられた意見を整理をしてございます。なお、意見本体は資料5、別添というその次の資料に掲げさせていただいております。本専門調査会の取りまとめの参考とさせていただきたいと存じます。以上です。
○阿部会長 ありがとうございました。次に、「知的創造サイクルに関する今後の課題(創造分野について)」、事務局から説明をお願いします。
○藤田次長 資料6をごらんいただきたいと存じます。創造分野についての今後の課題ということで、まず先ほど来イノベーションという言葉が何度も出ておりますけれども「イノベーションを支える知財戦略の展開」ということで、第3期科学技術基本計画で「科学の発展と絶えざるイノベーションの創出」ということがうたわれ、5年間で25兆円の投資総額の目標が掲げられております。
また、本年6月には総合科学技術会議におきまして「イノベーション創出総合戦略」が取りまとめられております。それから、「経済成長戦略大綱」の中でもイノベーションハイウェイ構想の構築が謳われ、また安倍新総理の所信表明演説の中では、2025年までを視野に入れた「イノベーション25」というプロジェクトも謳われているところでございます。
こういうイノベーションを種から実に育てるために基礎研究を強化するとともに、発明・発見の段階から知財の保護・活用を念頭に置いた戦略を展開することが不可欠ということでございます。
次の2ページでございます。まず「大学等の知財活動体制の抜本的強化」ということで「背景・基本認識」の2つ目の段落にちょっと書いてございますけれども、近年、大学等においていろいろな知財活動が進展してきたわけでございますが、一方では2006年度末で国立大学等に対する特許料減免の特例措置が終了する。あるいは、大学の知財本部整備事業が2007年度で最終年度になるということで、これまで構築されてきている知財活動体制が逆に弱体化する懸念もあるわけでございます。
そうした中で、下の「検討課題」でございますけれども、大学の知財関連活動にブレーキをかけることのないよう、戦略的な知財の創造・保護・活用に取り組む大学に対し、特許経費のほか、人材派遣や人材の育成確保など、体制整備に必要な支援を充実させるべきではないか。あるいは、大学知財本部は未整備の大学に対しても適切に知財を扱えるような体制を構築できるように支援していくべきではないか等のことが課題として掲げられてございます。
次の3ページをごらんいただきますとグラフが載っておりますけれども、これは産業界と大学研究機関等でそれぞれ1億円の研究費の中で知財活動費がどれくらい手当てされているかという比較をした試算でございますが、基礎研究を除きましても右側のグラフでわかりますように、大学は産業界に比べて4分の1くらいしか知財活動費が手当てされていないという実態が伺われるかと思います。
次の4ページをごらんいただきますと、やはりグラフが載っておりますけれども、「大学における特許関連経費の推移」ということで、例えば2005年度をご覧いただきますと、全体で60億円強かかっている中で、4割は文部科学省の知財本部整備事業が財源になっているということでございまして、こうした財源が仮に抜け落ちると大学の知財活動にかなりの影響が起きる懸念があるということでございます。
次に5ページをごらんいただきますと、「大学等やTLOに係る各種の課題」ということで「検討課題」の四角の中でございますが、大学の知財本部とTLOとの一本化あるいは連携強化の促進をすべきではないか。あるいは次の行で、大学等による国際的な知財関連活動の戦略的な展開を更に促進すべきではないかというようなことを課題として挙げさせていただいております。
次の6ページで5つのパターンが書いてございますが、最近大学によっていろいろな動きが出てきておりまして、その大学の個性あるいは置かれた環境によってさまざまなパターンがこれから生まれていくのかということをひとつ示してございます。
次に8ページをごらんいただきたいと思います。「知財を活用した研究開発の戦略化」ということで「検討課題」のところですけれども、1つ目のポツでは科学技術の戦略策定や実施に当たって研究分野ごとの特色を生かした具体的な知財戦略を組み込んでいくべきではないか。
次に、各省庁やファンディングエージェンシーが目標達成型の競争的資金を提供する場合に、知財を活用してイノベーションを進めていくための経費の確保あるいはその実用化に向けた特許等の取得、活用の戦略を適切に評価すべき。
次の行でございますが、特許・論文情報統合検索システムの整備が進むに伴って、パテントマップの作成などによって特許情報による研究開発の戦略化を図るべきではないか。
あるいは次のポツでございますけれども、企業においても技術開発が知財戦略に結び付けて推進されるように関係する取り組みを進めるべきではないか等の課題を挙げてございます。
少しページを飛んでいただきまして、12ページで「産学官連携に係る人材の確保」でございます。これも「検討課題」のところを御紹介させていただきますが、大学、TLO、研究開発を行う機関等が産学官連携人材について適切な処遇を提供し、業務の魅力を拡大して優秀な人材をこういう分野に誘引すべきではないか。
大学、TLO等が産学官連携の分野における人材育成を強化して将来を担う若手を育てるべきではないか。
イノベーションの触媒的機能を果たすものとして、研究開発独法が技術支援や人材育成を実行し、国際的に通用する人材や融合人材といった知財人材を育成すべきではないかということを掲げてございます。
以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。それでは、議論に入らせていただきます。野間口本部員も含めて、委員の皆様から御意見あるいは御質問をちょうだいしたいと思います。 では、前田委員、吉野委員の順番でどうぞ。
○前田委員
平成16年から大学が法人化しまして、多くの大学に知的財産本部ができ、特許の数は大分増えてきたけれども、ただ単に大学に特許をたくさん取らせて正解なのかという話が出ているかと思います。
本学においては、特に医学系だということもあるのですけれども、国有特許数件しかなかった学校ですが、今は発明届出が100件くらい出るようになっていて、特許を取ることでそれを商品として(要するにシーズとして)企業の方にお見せして共同研究、受託研究、寄附講座につなげることが可能となっております。
特許1件幾らというライセンス料は、それこそ先が長い分野ですから、たかだか100万、200万という話にしかならないです。もちろんうまくいったら、ランニングロイヤリティをいただくという契約は全部取り付けておりますが、私たちが初めてまだ、3年目ですので、ランニングロイヤリティをいただいているのは、まだ僅かです。
ただし、億単位の寄附講座等をもらうことはできます。ですから、ここにまさしく書かれていたように、研究開発につなげることができていると思っています。ライセンス料だけで知的財産本部の意義を図っていただくのはつらいかと思っております。
そして、活発な先生ほどいろいろな企業と共同研究しているのですが、かなりきわどい範囲で研究を行なわれている場合もあります。この場合、特許マップを作成して、どの分野がどちらの企業と関わっているかとか、どこがまだ研究領域として空いているかをマップでお示ししています。それによって先生の発明が新たに生まれてきて、まだここにこんなところがあったねというものが必ず出てまいりますので、知的財産本部で特許マップを示して先生とディスカッションをすることで、いろいろな共同研究やその契約が危なくなることを防ぐというメリットもあると同時に、先生の研究の生み出しの手助けにもなっております。知的財産本部が存在しているのは、このような意味で研究を生み出すというところのお手伝いをさせていただけているのではないかと思います。
もう一点、長くなって申し訳ないのですけれども、先日、知的財産本部整備事業で文部科学省から追加予算をいただきました。「国際的に通用する知財人材の育成」というプランで採択されました。本学は、具体的には2か月の米国でのインターンシップのプランで採択させていただきました。今、学内に公募をかけているんですが、単に、知的財産本部に入りませんかという呼び掛けでは、研究からちょっと外れてきたのでしょうがないから知財で働こうかというイメージで、何となくプライドのある研究者たちは行きたくない場所だったのですが、とりわけ優秀な人、英語能力もあり、交渉能力もあるような人にしかこれはお金を付けられませんよという、見せ方だと思うのですけれども、上手に謳っていけば、優秀な人がこの分野に入ってきてもらえると思います。ですから、このような国際人材のためにお金を付けるというプランがあるからこそ、今回のような公募ができるんだと思っていますので、プランの付け方によっては優秀な人材を確保していくことができると思っています。
○阿部会長 ありがとうございました。もし文章をこういうふうに変えた方がいいとか、そういうことがありましたら後でお願いしたいと思います。
では、吉野委員お願いします。
○吉野委員 3ページのグラフですけれども、これは本当にアップル・ツー・アップルで比較しているのかという質問なんです。
というのは、企業の場合にはずっと下流までの費用が入っていると思うんです。登録されたものを維持していく費用を過去にいっぱい出していますし、しかも年数がたつとどんどん高くなるわけですね。そういうものから、係争も相当やっている。あるいは、買っているものもある。今、大学はまだどちらかというと前の方のフェーズの費用ですね。そういうものとダイレクトに比較していいのかという質問です。それから、特許料などは免除されている部分もあると書いてあるから、それは上乗せして比較しないとだめなんじゃないかという感じもあります。
○藤田次長 御指摘の通りでございます。今までは国立大学はそもそも全部が免除されていたわけでございますし、御指摘のように特許登録料というのは年を追うごとにどんどん高くなっていきますし、大学というのはまだ自分で知財を持つことは緒に就いたばかりでございますので、そういう意味では確かに同じように比べるのは乱暴なところはあろうかと思いますけれども、瞬間風速で、比べてみればこういうことでございますという一つの参考の指標とお受け取りいただければと思います。
○吉野委員 そういうものがないと、ダイレクトに見ちゃうから。
○下坂委員 でも、ここは研究費となっていますね。その研究費の内容が何か……。
○阿部会長 それは大学ですから、今、事務局から説明があったように、特に平成16年に法人化してからということになりますと、極めて新しい最近の使われ方だけを挙げているのはやむを得ないと思います。会社でもできて2年くらしかたっていないと余り古いものはないかもしれませんけれども、大学と企業ですから内容の違いはもちろんありますが、これはそういうことを全部丸めた形で表現しているということだろうと思います。
あるいは1行ぐらいエクスキューズを書いておいた方がいいかもしれないですね。ほかにいかがでしょうか。
○妹尾委員 大学の産学連携はようやく立ち上がってきたところなので、ここで妙に「早く自立しろよ」と言うのもいかがなものか。たしかに、ここに書かれているように、大学の知財活動でいろいろ改善したり、改編しなくちゃいけないところはたくさんありますが、、是非ここで力を入れ直さないと、せっかく今からホップ・ステップでぐっと上がっていくところで水が差されてしまうというような感じを非常に強く持ちます。そのためにも、ここに書かれたようなことを是非強化していただきたいと思います。
もう一つは、12ページの「産学連携に係る人材の確保」というところで、恐らく産学官連携に関わる人材についてはそろそろバージョン2.0なのかなという感じを受けます。TLOだとか、そういう関係の方の人材育成研修等を随分やらせていただきました。やはり最初のバージョン1.0の時期には様子がわからないので、企業から出てくる方だとか、あるいは役所から出てくる方がここを支えてくださったのですが、正直申し上げて玉石混交だったということは否めないと思います。これから先、日本の産学官の連携が育っていくためには、ここに書かれているように特に若手をプロパーとして生かすとか、あるいはここを非常に魅力的なキャリアの土壌だと思っていただくような施策が打たれるべきだと思います。なので、方向性としてはこの12ページは非常にいいというふうに拝見しました。
ただ、もう一つ、検討課題の3.の「触媒的機能を果たすものとして」と書いてある部分には意見があります。ここでいう、いわゆる「技術移転人材」は、私は2種類いるのではないかと思っております。
1つは、もちろん技術移転自体をマネジメントしていく人材で、これは産学連携だとか、知財本部だとか、TLOだとか、いろいろなところの方がいらっしゃいます。これを強化しなくちゃいけないというのは確かで、研究開発独法などでもそういう方々を更に強力にしなくちゃいけません。もう一つは、実際の技術を持って企業の方に移転する人材です。単に知財を移転しても技術移転にはなりません。技術と人材のセットでいかないと本当の技術移転にはなりません。
ですから、例えば産総研だとか理研だとかで、企業の側から技術者が入って育成されて技術をお土産に持って帰るということがある。あるいは例えば産総研などで研究していた人が技術を持って企業へ行く。そういう技術というバトンを受け渡しするバトンゾーン、あるいはのりしろと我々が呼んでいる部分を行き交う人材育成をもっと強化しなければいけないのではないでしょうか。
その意味では、研究開発独法はどちらかというと教育機能ということについてはネガティブに見られるケースが多いのですが、私は研究開発独法も技術移転のために人材育成機能を持ってもいいのではないかと思います。
ですから、繰り返しになりますが、整理すると、技術移転人材というのは実は技術移転をマネジメントする人だけでなく、知財と共に技術を抱えて持っていく人もいるので、この2つをやらないとうまくいかないのではないかと思います。その意味で、ここのところの話については方向性は大賛成なんですけれども、少しそういうところをきめ細かく見ていただくと良いという気がします。
長くなって恐縮なのですが、ここに書かれていないことで、創出で非常に重要なアイテムがあると述べさせてください。「イノベーション25」とは今から19年たってということだと思います。そうすると、今の小学生が30歳近くなって、本当に若手の研究者でイノベーションを起こしてくれるかもしれないわけです。先日小学生が初めて特許を取ったと新聞をにぎわせて、今ウェブサイトでも騒がれています。富山の小学生です。実際に発明したものを見るとほほえましいものですけれども、でもこういう子たちがたくさん出てこないといけないわけで、その種は今まいておかなければいけない。つまり、知財の創出分野というのは今やっている研究者だけでなくて、若い世代の研究について今から手を打つことが非常に重要かと思います。
そこで、2つほど述べさせていただきます。今、創造力を育成するために子どもたちの教育がどうなっているかというと、音楽もあるでしょうが、例えば図工の時間は平成元年の段階では1、2年生が70時間、3、4年が60時間、5、6年が50時間あったのですが、これが総合学習との絡みによって実態としては今、減りつつあります。図画工作みたいなものは子どもたちにとって一番評判のいい科目ですが、しかし親はもっと算数、国語をやらせなさいという受験指向になってしまっています。
短期的にはそうかもしれませんけれども、長期的には日本のこういう知財創出、創造性を育むものとしてはいかがなものかということがあります。小学生、中学生、高校生を含めて、もう少し創出分野に長期で効くような施策を打って欲しいと思います。
それから、これは御紹介ですけれども、今、特許庁の方で知財人材の育成の次の段階をやろうということで、私は委員長を拝命して、制度的な支援をどうするかということの議論をしています。その中で子どもたちの創意工夫の奨励のために、例えば子ども発明博士3級みたいな制度的な応援を検討しています。発明博士で3級、2級があるというのも変な話ですが。どういう名前になるかはわかりませんが、そういうような創意工夫を大いに奨励するような制度を作り、将来的な種まきについて、是非何かこういうところで言っていただけたらうれしいと思います。以上です。長くなってすみません。
○阿部会長 ありがとうございました。では、板井さんどうぞ。
○板井委員 4ページの頭に、国立大学に関する特許料免除の問題が書かれております。ここに書かれている推計値は、まだ制度が始まって3年ということで、多分国内出願がほとんどであって海外が少ないと思います。海外に出願するとなると、桁違いにお金がかかりますので、こんな金額ではとても足りないと思います。全部の特許について海外への出願費用を国が面倒見てあげるのは無理ですし、、税金でやる以上は実用化への道筋とか、資金効率といった問題も考えなければならないと思います。
大学で出している特許の大きな問題は、出願するだけで自分の研究成果みたいに思っている面があることです。ただ出願するだけでは他人に情報を提供するだけに終わりますので、薬で言えばシード化合物などは幾つ見つけても製薬企業では特許は出願せず、その周辺の化合物を何百とつくって特許が容易に抜けられないにするというところまで手当てしてからでないと出願しません。
他の分野でも、周辺の研究分野を固めておくということは必須ですから、つまり研究者の方も相当長期間その研究に力を入れる覚悟が必要だと私は考えます。特許出願費用を海外の分まで国が助成するとなると、現地の代理人の費用というのは相当高いですから、相当厳しい選別をしていただくしかないかと思います。何割かの自己負担なども、更に実用化に向かって努力するモチベーションになるのかもしれません。
いずれにしても、1桁上の金額を考えておかないとまずいのではないかという気がします。
○阿部会長 おっしゃるように現在は国内特許がほとんどだと思いますが、海外についての特許を取るという動きもかなり出てきております。
ただ、それはどうやって選別するかというのが大きい課題で、JSTがそういう選別も含めてお金を出しているということがありますし、各大学でやっている部分も例外的に一部あると思いますが、まさにこれからの課題であると思います。それに対して国がどれだけサポートしていくかですが、これは国立大学に限らないことでありますので、今まさに極めて重要な視点だろうと思います。
海外特許については多少は書いてありましたか。
○藤田次長 海外特許は、5ページの検討課題の2つ目のポツのところで「国際的な知財関連活動の戦略的な展開をさらに促進すべき」ということで、御参考まででございますけれども、資料6の13ページをごらんいただきますと1つ目の丸のところですが、文科省が「国際的な産学官連携ポリシー」に基づいて2007年度より以下の施策を実施予定ということで今、予算要求をしております。これはまさに国際的な分野に着目をして、国際的に通用する知財人材の育成・確保、国際法務機能の強化と紛争予防、国際産学連携・情報発信機能の強化、海外特許の戦略的な取得と出願支援の強化ということで今、板井委員から御指摘があったようなことも踏まえながらこういう施策が検討されているということかと存じます。
○板井委員 海外のものも踏まえて、もう少し予算も必要であるということをおっしゃったらいいのではないかと思います。
○阿部会長 今まで非常に優れた仕事をした人で、大学の先生で、海外特許をやっている人はあまり国に頼らないでやっていたんですね。
それからもう一つは、それでも紛争なども個別にはいろいろ出てきていまして、どちらかといいますと国の政策よりも先行して個別にやっているということなので、そういう人たちをどうやって国としてサポートしていくか、あるいは応援していくかというのはこれからの課題だろうと思います。
では、吉野委員お待たせいたしました。
○吉野委員 創造分野の今後の課題に関しては、純粋に民間の話はほとんど書かれていないですね。
それで、何かないかなという観点で申し上げますと2つありまして、1つは一番の特効薬は中長期的な研究開発減税なんです。それはともかくとして、2つ目は意外と民間の研究開発を阻害している要素の中に規制というものがあるんです。例えば、日本では試験をすることすらほとんど不可能というものがアメリカに行けば自由自在にやれるようなことが私たちの範囲でも結構ありまして、多分あらゆる分野を見ると相当あるのではないか。それが知的創造サイクルの創造分野にややネガティブな影響を与えているという面がかなりあると思いますから、規制の改革はほかのところでもいろいろやっていますけれども、知的創造サイクルの創造ということに関する規制の問題みたいなもの、これは行政指導も入りますけれども、そういうものを少しこのテーマの中でも洗って整理してみることが有効ではないかと思います。
○阿部会長 吉野さんの分野はよくわかりませんが、例えば治験とか臨床研究みたいなものは今おっしゃったように、減税はともかく規制とか慣行に関わることがたくさんありまして、これは第3期基本計画をベースにして総合科学技術会議でも第3期はそういう構造改革を積極的にやろうということになっておりますので、知財戦略本部とも連携をして、そこは少しというか、大いに強調してもいいんじゃないかと思っております。
○妹尾委員 今の話のしりうまに乗らせていただきます。我々が現場で見ていて同感なのは、今の試験だとか、そういう規制の緩和だけでなく、同時に実証フィールドがないということがすごく問題なのです。実際の街をテストベッドあるいはテストマーケットにする。つまり、開発された技術を実装した製品やサービスを街で試してみる。これはテストベッドという言い方をします。それから、それについての実際の市場の受け入れがあるかどうかを確かめるテストマーケットですね。この二つができる実証フィールドが許されないで、規制でがんじがらめなんです。
我々は現場でそういう実際の技術の事業化のお手伝いをしていると、その規制がすごいことがわかります。それこそ本当に秋葉原を特区にしたいというような話になってきているわけです。そういう創造された技術などが本当に社会に出るまでの道筋について、どういう改革になるかわかりませんが、是非強調していただけるといいと思いました。
○阿部会長 久保利委員、どうぞ。
○久保利委員 今のこととも絡むんですけれども、規制の中でいろいろな実験等に対して非常に制約があります。この間あるガムの比較広告の事件で、私はあるガム会社の代理人をいたしました。それで、ガムが虫歯の再石灰化に、ある会社のガムの5倍効くという宣伝がありました。言われた方は、とんでもない、こちらの方が本当は効くんだという係争をしていたわけでありますが、その実験を本気でやろうと思うと実は倫理委員会を通したり、人間の歯でどうなるかという実験をすること自体、ものすごく大変なんです。
実は、5倍効くというふうに言った広告の実験は牛の歯でやっているわけです。そういうことで、裁判所もあるときは、人間の歯でやったら大変なバリア、ハードルを超えてやらなきゃいけないから牛でやってもしようがないんだということを言ったくらいの難しさであります。ですから、そういう意味でこれから知財をどんどん改革していくときに、本当に合理的な規制なのか、だれを守るためにつくる規制なのかということをもう一回根本から見直してみないと、何かの風潮でわっといってしまって、あれほどのことが必要だったのかどうかということが私はあり得るように思います。
もう一方で、イノベーションというものが2025だとすると本当に20年も後の話です。そうすると、実は今、法律家の方で一生懸命やっているのは小学生に法教育をしようというので、人権であるとか、民法の知識だとか、これを含めた法教育をやっているのですが、知財法教育というのは果たしてだれがどこでやっているのだろうか。先ほど妹尾先生はおっしゃいましたけれども、小学生が特許を取ったと。はたして小学生が特許の明細書を書く必要があるかどうかは別にいたしまして、少なくともそういう特許権というのは法律上の一定の権利登録をしないと確保されないんだということをまず学ぶということと、それをするためには特許料というのを払わなければいけなくて、場合によるとそれを頼むと弁理士さんというプロにお金も払わなければいけないんだよ、ということを本当に学んでいかないと、砂上の楼閣といいますか、本当に権利として守られない。
今日、私は東京のフィルムフェスティバル、東京映画祭に行ったんです。それで、エンタメロイヤーズネットが無料相談コーナーというブースをいただいてやりました。これも知財本部のお陰だと思います。そうしたら、何人か相談にお見えになります。その人たちは今日は無料なんです。ところが、そこで1時間相談した挙げ句に、以後これは無料でやっていただけるんですかという質問がありまして、それはやらないよと。
要するに、ああいうところへ来て本当に売買の取引などに絡むような人が、少なくともリーガルの問題についてただでやってくれるかもしれないという期待を持っている。だれかに期待をする。これはNPOだからただでやってくれるんじゃないか、国だからお金を出してくれるんじゃないかというふうな期待が余り強過ぎると困ります。さっき会長がおっしゃったように、国に頼らず自分の責任でそういうことをしっかり考えてやっていくんだというのがあった上で、できるだけの補助は私はいいと思いますが、その根本を忘れている。
発明というのは、実は発明しただけでは何の価値もなくて、それがしっかり特許権で保護されたときに初めて価値を持ってくる。あるいはさっきの標準化の話もそうでしたけれども、そういう根源的な認識を小さいときから植え付けないと、幾つになってもだめなんじゃないかという気がいたしまして、法律家は法律ばかでございますし、一方、技術者は技術オンリーだとすると、その両方の接点をどこかで作るには、やはり小学校の教育からいかないといけないんじゃないか。こんな感想を持った次第です。以上です。
○阿部会長 では、田中委員どうぞ。
○田中委員 2点あります。1つは2ページでございまして、この検討課題の中の2つ目で「大学知的財産本部が未整備の大学に対しても」というところです。ちょっとネガティブな発想になるかもしれませんが、必ずしも皆が一律につくる必要はないんじゃないか。必要性のないところは作らなくてもいいんじゃないか。本当に必要とするところが、必要な人を集めてきちんとした活動をやっていくようにした方がいい、という考え方もあるのではないかという感想でございます。
それからもう一つは、大学から特許がたくさん出され、産学官連携の中で実用化されていく。そのときに大きな問題は、必ずしもライセンス料とかお金だけではなくて、本当に大学で生まれた技術が産業界でどの程度役に立っているかという評価基準がないという点です。
これは企業においても同様です。研究して新しい技術を生み出すのは本社研究部門の役割で責任なわけですが、私どもの場合、実用化して実際に事業化するときには、特許の管轄権を事業部の方にすべて移します。従いまして、結果だけから見ますと本社研究部門からは何も成果が出ていないように見えてしまいます。当然ながら、表彰等についても事業部門の方が受けることになります。
そういった場合、事業化のもとになった特許や発明が本社部門でどの時期に生まれたのか等、いろいろなデータを取りまして、こういう形でこういうふうに役に立っているということが見えるように具体的にデータを整理したこともあります。国全体でも、大学発の技術あるいは知的財産が関係していても、どうしても実際に事業をした人達の方が目に止まりやすい。表彰もそちらの方がされる。そのようなケースも多いのではないかと思います。
もともと大学の中で行われ、知的財産権についても事業に移転された、そういった点も含めて評価の考え方なり仕組みというものも工夫していった方がいいのではないかという感じがいたします。以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。非常に重要な御意見だと思います。
前半の方だけちょっと申し上げますと、多分趣旨はこういうことだろうと思うのは、今、知的財産本部が未整備の大学の方が圧倒的に多いのですが、それはいろいろな理由はあると思いますけれども、いい知的財産権を取るような研究をしている人が非常に少ないために、組織をつくる意味が極めて薄い。そのごく少数の人のために大学でこういう組織をつくるというのは無駄なことになる。
ただし、日本全体から見ると非常に大ざっぱに言うと75%くらいの大学が未整備ですので、その中に散発的に出ている人たちのいい成果をどうやって拾ってやるかということが趣旨だと思っていますが、そういうふうに読めないとすればちょっと考えた方がいいと思うんですけれども、そういうことでしょう。
○藤田次長 はい。
○田中委員 地域TLOとか、いろいろな仕組みがあるかと思います。わかりました。
○阿部会長 中山先生、御発言がありませんでしたのでどうぞ。
○中山委員 4ページのグラフですけれども、2005年度で実施料収入、ライセンス収入の部分が余りにも少なくて、これでは何%かわからないんですけれども、具体的にはライセンス収入というのは何%ぐらいでしょうか。
○阿部会長 今わからなかったら、後で。
○中山委員 結構です。いずれにしてもかなり小さいということは言えるわけですね。特許はすぐには金にならないという点もあると思いますけれども、私は法学部にしかいたことはないので理系のことは詳しくないんですが、大学というところはしょせんは利益追求型の組織ではないわけで、元来、儲けようというのが難しいだろうと思うんです。 しかしながら、補助金を付けるとなるとどこでも手を挙げるのは当たり前です。アメリカの例などを見ていましてもTLOで本当に利益を上げるなどというのはそう多くはないだろうと思います。そういう意味で、これから国が援助していくものはやはり集中化していく必要がある。あるいはTLOの中でつぶれるもの、あるいは統合するものが出てきても、それは当然だろうと思います。ですから、ばらまき的な援助は次のTLO援助では好ましくない、援助するにしても集中していくような援助が好ましいのではないかと私は思っております。
○藤田次長 実施料収入は3%でございます。グラフでは少し太めに書いてございます。
○阿部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はいかがでしょうか。
○妹尾委員 度々恐縮なのですが、先ほどちょっと言い忘れたことがあったので補足をさせてください。
12ページの「産学官連携に係る人材の確保」というところなのです。ここで産学官連携の人材育成について先ほど技術移転人材と絡めてお話をさせていただいたのですが、恐らく産学官連携人材のバージョン2.0が始まるとするならば、13ページの下の方の資料に書いてあるようなことから少し抜け出ないといけないのではないかと思います。
というのは、どうしても研究所や大学では、産学連携人材とは技術出身者が中心になりがちです。技術者に産学連携をという方向ばかりが強くのです。しかし、実際に現場にいる人間として見ると、重要なことは市場サイドの人間が産学連携に携わることなのです。。どうしてもポスドクの生かし方とか、そういう理由から、技術系の人材に産学連携をやらせようという傾向が今まで非常に強かったんですけれども、結局は技術サイド、つまり技術の出口を内側から見るだけの話になってしまうんです。
そうではなくて、マーケットサイドから、つまり技術が出てくる出口を外から見て手を突っ込んで引っ張り出すということをやらなければならないのです。是非今後の産学連携人材には市場サイドの人間を誘引するようなことにしていただいた方がいいのかなと。もちろん技術系の方がそれをやるのはいけないと言っているわけではないし、活躍している方もいらっしゃるのですが、いかんせん内側の技術論理で技術移転を皆さん考えられてしまいます。問題とは言いませんけれども、残念というか、もっとどうにかできないかと思いますので、そこのところを少し補足させていただきます。
○前田委員 まさしく今、妹尾先生がおっしゃられたように、マーケットのことを知っている人を大学の中に引き込む文章を入れていただきたいと思います。
例えば、医学系の大学などですと博士号を持っていなければ企業で知財のトップにいる人でも一番上で特任講師です。やはり、マーケットを知っている人が高い位置付けでこの分野に入っていけないのが実情で、何億の契約を取ったとしてもモチベーションが上がっていかないのです。本当にビジネスにしたいと思ったときに優秀な人材が残っていかないと、続けることはできないと思いますので、ダブルメジャーなり、マーケットを知っている人が入りやすくなるような文言をたくさんいろいろなところにちりばめていただけたらという、切なるお願いです。
○阿部会長 ありがとうございます。これは企業からしかられるかもしれませんけれども、私も大学におりましたときに企業の方にいろいろ来ていただくという話がTLOも含めて出てくるのですが、そのときに企業にいれば何でも知っていると思って、研究だけをしていたような人に来ていただいたんですけれども、私はだめだということをしょっちゅう言ったのですが、ものすごい少数意見で、今お2人に言っていただいたことは全くそのとおりだと思います。そこの書き方を少し工夫してください。もちろん研究を企業で長くやっていた方に来ていただいてプラスになることは幾らでもあるのですが、それはどちらかというと今のようなマーケティングではない世界で、むしろ純粋な研究開発の面で大学のプロフェッサーになっていただいて非常に成功している例は幾つもあります。
ありがとうございました。それでは、予定の時間がまいりましたので、本日の会合はこの辺で閉会をさせていただきたいと思います。もし何かアディショナルな御意見なり修文の御意見があったら、恐れ入りますが、メモを事務局までいただければありがたいと思います。
次回の専門調査会は、11月17日金曜日10時から12時にこの会議室で行います。次回は国際標準総合戦略の取りまとめと、今日は創造分野をやらせていただきましたが、この次は模倣品・海賊版対策を含めた保護分野の推進方策について御議論をいただきたいと考えておりますのでよろしくお願いします。
何か御連絡することはございますか。
○藤田次長 特にございません。
○阿部会長 それでは、本日は御多忙中のところを大変ありがとうございました。
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