○藤田事務局次長 そういうことでございます。
○阿部会長 ありがとうございました。では、妹尾先生どうぞ。
○妹尾委員 まず、書き方で気が付いた点です。四角の中が重点項目ですが、その下にそれを実施するに当たっての問題点が列挙されています。それを課題と呼んでいいのかどうかということがあります。課題というと何か「タスク」を書くことをいうので、そこのところに違和感があります。
しかも、中に事実を書いているような文言と、「べき」というふうに書いている文言が混在しています。「べき」と書いたら、問題解決の方向性を課題として扱うということなので、どちらなのかということがわかりません。
例えば、8ページの地域の最後のところに「地域の多様性を活かした地域政策がなされていない。画一的な支援をやめるべきだ」と、ここだけ「べき」が突然入ってくるんですね。そうすると、何か強いなという感じをうけます。さらに、これは読みようによって支援は全くやめちゃえというふうにも読めるし、個別具体的な支援をするようにしようよとも読めるわけですね。ですから、この「べき」的な表現が幾つか混在していることはいかがなものか。
それから、例えば地域の多様性のところなんですが、地域政策がなされていないというか、私も今、地域の面倒を見ている現場を持っていますので思うのですが、地域政策の形成能力は地方の自治体には残念ながらありません。県レベルでも、ましてや市町村レベルでもない。それから、政策・施策を書いたけれども、それを実施できるのか。これもないわけで、その辺のところのトレーニングがものすごく重要だなという感じを受けます。それは、ここの2つ上の知財不足ですね。知財を振興するのに弁理士さんを増やせば知財が増えるかという議論はありますけれども、これは全くあり得なくて、要するに商工会議所だとか県庁の商工課だとか、そういうところが知財を生かした経営を指導できなければならないんですが、そういう実力がない。ここのところは是非重点を置いていただければと思います。
それから、産学連携の9ページです。恐らく最近は、産学連携に関する契約の際に先ほどのお話、JSTなどもあるんですが、各大学でも事務手続きの硬直化が随分言われてきています。我々大学人も随分それを企業の方々に指摘されていますので、この辺はそろそろ現実に対応できるようなものにしていくべきかと大学の一人としては思います。
それから、10ページの人材の育成です。先ほど田中委員から御指摘があったのですが、これは具体的に言えば知財を経営貢献、経営活用できる人を育成すべきということです。そういう部分について関心が薄くて、知財のための知財になっている。あるいは、弁理士さんは弁理士業務の専権業務のための専権業務になっているみたいなところがあるので、ウイングをもう少し広げましょうよということになればいいと思っています。
次に、その下の方に知財翻訳者の不足が指摘されていますが、これは人材育成の先ほどの戦略の中にも書いたとおり、従来、何となくうやむやになっていた知財周りの人たちのプロフェッショナル化が進まなければいけないというふうに読み取れると思うんです。ですから、その一例として知財翻訳者が書かれているわけで、それ以上に例えばIPサーチャーだとか、IPパラリーガルだとか、それからこのIPトランスレーター・インタープリターみたいな人たちが必要なのです。そういうふうに読むべきかと思います。
ちなみに、翻訳者そのものについて言えば、これはやはり国際化の最初の項目とリンクをするような形になるのではないかと思います。その下に書いてありますけれども、国際的に闘える人材は本当に名前で挙げられるぐらいしかいらっしゃらないので、これは大変な問題だと思います。
最後の「世論調査によれば、模倣品・海賊版の購入」ということですが、これは私が提唱させていただいている「知財民度」に非常に大きく関わってくると思います。ここのところも従来型の知財ではなくて国民全体の問題として大きく取り上げていただければといいと思いました。以上、意見でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。文章上の問題と、それよりもう少しきちんとした説明をした方がいいということと、いろいろあると思いますが、文章については後で妹尾先生に少し助けてもらった方がいいかもしれませんけれども、現時点で何か事務局からありますか。
○藤田事務局次長 特にございません。
○阿部会長 ありがとうございました。八田委員、下坂委員、何かございましたらどうぞ。○下坂委員 私は先ほどたくさんしゃべらせていただきましたので。
○八田委員 今、妹尾委員がおっしゃったことですけれども、例えば翻訳者に関しては、検定試験のようなものを整備しようという御主張だと考えてよろしいですか。
有能な翻訳者が足りなければ、賃金が上がると思います。もちろん本当にできる人かどうかが判定できなかったら賃金の上げようがありません。しかし有効な検定試験があり、だれが優秀な翻訳者であるかわかるようになれば、優秀な翻訳者の賃金が上がります。賃金が上がれば当然その分野にはいろいろな人が入ってきます。
こういう検定試験のようなものは、民間の自発的な組織化を期待できるので、何も全部官が主導すべきことではないと思います。しかし、「こういう検定をやっています」と世間に言っていることがそのとおりになされているかどうかというチェックというのは、やはり官がしなければならないことだと思います。
検定試験自体の信頼性のチェックがないと、なかなか民でも検定をやりにくい。制度をつくってもだれも信用してくれないためです。今度の建築偽装事件では、それがなされていなかったために問題が起きたと考えられます。ここでの官の役割というものは必ずしも翻訳者に対して奨学金を出すとか、そういうことではなくて、むしろ市場を整備するというような形で行われたらいいんじゃないかと思います。
○阿部会長 ありがとうございました。ほかに何かございますか。
○田中委員 9ページの四角の中で、これは今後の推進方策とも絡む部分でございますが、「出願前に先行技術調査を行い、出願を厳選する」。この出願前の厳選あるいは出願数の厳選、それから審査請求の数の問題、これがきちんと区分けして議論されていないと思います。
出願前というのは、日本は先願主義ですから、思い付いたらいち早く出願しなければいけないということと、すべて先行技術調査をしていたら間に合わないということが絡むんだと思うんです。
ただ、審査請求前であれば、ある程度先行技術調査をきちんとやって審査請求するという行為はとれるだろう。したがいまして、出願の厳選なのか、あるいは審査請求数の厳選なのかという点と、それから出願数をある程度抑えていくということに関しましては、技術流出問題とも絡むわけで、この視点からの議論をしているのか疑問が残ります。いろいろずっと見ていくと、出願数なのか、審査請求数なのか、その背景が何なのかというのが、ちょっとあいまいに議論されているという感じが私にはいたします。これらの点を十分に検討していただければと思います。
○阿部会長 ありがとうございます。おっしゃるとおりだろうと思います。ほかにどうぞ。○加藤委員 今、田中委員がおっしゃった同じ所で、国際的な特許取得戦略云々と書いてあります。日本とアメリカでは特許制度が異なりますので、米国ではサブマリン特許が突如現れて対応を迫られるケースがあります。
また、当社は米国において2つ特許係争を抱えていますが、米国は先発明主義のため、特許係争になるとノートブックを提示するところまでいってしまいますので、その時点でないと特許権の有効性が決まりません。ですから、先発明主義は後出しじゃんけんのような方法で、多くの方が不満をもっていると思いますが、米国は先発明主義をやめないと聞いていますが、米国企業も困っているのではないでしょうか。。後出しじゃんけんをやられますと幾ら先行調査を行っても、調べようがありませんし、米国で特許係争になると、お互いに全く前向きでない費用を浪費します。弁護士事務所だけがもうかるというどうしようもない構造ができ上がっているんです。
政府も話し合いをされているのは知っていますが、日本は発言力があると思いますので、先発明主義に関してもっと大変な問題だということを言ってもらわないと困ると考えています。以上です。
○阿部会長 政府もやっているんだろうと思いますけれども、どうですか。
○荒井事務局長 御指摘のとおり、まだまだ不十分だと思いますが、アメリカの中にも今の先発明主義は問題が多いというので、去年アメリカの議会に出たパテントリーフォームアクトの中には先発明主義を先願主義に変えるという条項も入って、そういう問題がアメリカの中では始まっております。
ただ、日本からもっと働きかけをすべきだというのは全く同感です。
○阿部会長 これも、我々のメッセージとしてもうちょっと強く書いておいた方がいいかもしれないですね。
そろそろ時間になってきて、まだほかにいろいろ御意見をいただかなければいけないことがあるのですが、実は次回の専門調査会でこの修正版を御提示して御決定をいただくということになっているのですけれども、随分修正点が多いような気がいたしますので、特に今後の在り方の方ですね。少し事務局で工夫していただいて、委員の先生方の意見を上手に反映するような努力をしていただくようにお願いいたします。
なお、ちょっと関連事項を申し上げますと、総合科学技術会議の中に知的財産戦略専門調査会というものがございます。ここにもこちらと重複して委員になっている方もおられますけれども、主として大学であるとか、科学技術の側面に近いテーマで議論をしております。これは毎年、知的財産推進計画の中にも入れていただいているのですが、今、御議論いただいたところは別個にやっていますけれども、若干重なっているところもありますので、事務局においては本日の修正版に加えて、総合科学技術会議の専門調査会の議論をも踏まえて修正版をつくっていただいて、宿題のステップがたくさんあるようで恐縮なのですけれども、委員の方々及び関係省庁との調整をしていただいた上で次回の専門調査会に修正案ということでよろしいですか。
では、そういうことで、途中の段階でもまた委員の先生と御連絡を取っていただきたいと思います。それでは、今日のところはこのくらいにさせていただいて、第3の議題に入らせていただきます。「知的創造サイクルに関する重点課題について」の御議論であります。前回までの御議論、これまでに寄せられたパブリックコメント等を踏まえまして、事務局が推進方策の案をつくってくれました。これについて、藤田次長から説明をお願いします。
○藤田事務局次長 資料5でございます。「知的創造サイクルに関する重点課題の推進方策」ということで、これまでの本専門調査会における御議論あるいは今までいただいたパブリックコメント、あるいは事務局でいろいろな場面で実施しておりますヒアリングの結果等を踏まえまして、今後の重点課題について取りまとめました。
5ページからが本体でございますけれども、項目が多岐にわたりますので、特に論点として大きなものではないかと私どもが考えたものについて星印を付してございますので、この星印を付けたものを中心に概要を御説明申し上げますけれども、もちろんここに書いてございますほかの項目についても委員の皆様方には御意見を賜りたいと思います。
まず5ページでございますが、「創造分野」ということで、1の(1)の(1)ですが、「知的財産情報の活用による研究活動の効率化を促す」。「大学等が、特許データベースやパテントマップ等の活用により、研究動向の的確な把握と研究対象の効率的な絞り込みを図ることを奨励し」と書いてございます。
それから(2)ですけれども、「研究における他者の特許発明の使用を円滑化する」。リサーチツールの問題の解決などについて、これは現在の総合科学技術会議で検討をいただいておりますけれども、早急にその結論を得ると書いてございます。
次に6ページですが、(3)の(1)で「大学知的財産本部、技術移転機関の総合的体制を整備する」。先ほども御議論がございましたけれども、各大学の状況に応じ、大学知的財産本部とTLOの一本化や一層の連携強化を含めた総合的かつ効果的な体制整備について検討すると書いてございます。
それから下の(3)ですけれども、「特許発明のライセンスを促進する」。大学等の特許発明のライセンスを促進するため、共有に係る特許権者の第三者へのライセンスに共有者の同意を必要としている現行規定、これは特許法の73条という規定がございますが、この規定の見直しについて検討をすると書いてございます。
次の7ページですが、「保護分野」、特許審査の迅速化。(1)は昨年の12月に経済産業省に設置されました特許審査迅速化・効率化推進本部による取り組み、これは既に1月17日に行動計画というものが発表されておりますけれども、その取り組みを徹底するということ。
それから、下の(2)のところですけれども、「審判請求規模を適正化し、審査・審判の適切な人員配置を行う」。日本の特許の審判事件数というものはアメリカやヨーロッパに比べると1けた多い数になってございまして、この審判の在り方について検討すべきではないかということでございます。
例えばということで、次の8ページの2)のところに、審判官は3人で審理を行うことになっておりますけれども、例えば単独で審理を行えるように、現在の合議体による審理を見直すということが案として書いてございます。
それから、次の9ページは「特許の出願構造改革を推進する」。(1)の(1)でございますけれども、「国内出願偏重の出願構造の是正を促す」ということの中で「グローバル出願5割の目標を掲げる」。あるいは(2)ですが、「出願上位企業の海外出願比率を公表する」。それから(3)ですけれども、「国内出願と国際出願の手続上の差異を減らす」ということで、これの意味はこの2行目の途中から書いてございますけれども、「国内出願の明細書の記載様式をPCT国際出願の様式に合わせて変更することを目指す」ということでございます。
次の10ページをごらんいただきまして、「権利取得に至らない出願の削減を促す」。例えば(3)でございますけれども、「出願上位企業の特許率等を公表する」ということで、ここでは「審査請求数に対する特許率のみならず、特許出願数に対する特許率も公表することにより、厳選された質の高い特許出願を促すとともに、技術流出を防止する」というふうに書いてございます。
次に11ページでございます。「特許審査の安定性を確保する」。例えば(3)でございますけれども、「無効審判の蒸し返しを防止する」。「同一人による、同一発明についての無効審判を原則1回に制限するなど、無効審判の蒸し返しを防止するための方策について検討し」と書いてございます。
次に12ページで「ユーザーの利便性を向上する」という中では(1)でIPDLにおいて提供される情報を拡充し、あるいはその使い勝手をよくすることによって、審査官が利用するシステムと同等の検索機能を外部の方に提供するということでございます。
(2)は星が付いてございませんけれども、特許料や登録料の更新時期について、これは例えば運転免許証と同じように特許庁から事前に通知を行う制度を導入するということも書いてございます。
次に13ページで世界特許システムに向けての取り組みでございますが、(1)の(1)は「特許審査ハイウェイ構想における他国の審査結果の利用を制度化する」ということ。それから(2)は「特許出願明細書の記載様式を統一する」ということで、日米欧三極の特許長間において特許出願明細書の記載様式の統一を目指す。これはさっきPCTに近付けるということが書いてございますけれども、それと同時に日米欧三極でも、ということでございます。
それから15ページ、「技術流出を防止する」。「(2)営業秘密の管理を強化する」、海外への技術流出の防止を徹底するために諸外国には幾つかこういう立法例がございますけれども、国外における営業秘密の不正な使用・開示に対しては国内に比べて刑罰を加重するということを検討するということでございます。
それから、次の16ページでございます。商標の保護強化ということで「(1)不使用商標についての対策を講じる」。登録された商標が使用されていない割合が大変高いと言われておりまして、こうした状態を解消すべく方策を検討するということでございます。
17ページからは模倣品・海賊版対策でございまして、(1)は外国市場対策ということでございます。(1)が在外公館の体制強化、(2)が偽造防止技術の活用の奨励、(3)は「模倣品・海賊版拡散防止条約を推進する」ということでございます。
次に18ページの(2)が「水際での取締りを強化する」。例えば(4)ですけれども、「個人輸入等の取締りを強化する」ということでございます。 次に、20ページはインターネット・オークション対策の強化でございますが、(1)の特定商取引法のガイドラインはもう間もなく決定されると聞いております。
それから(2)で、今オークション事業者の自主的な取り組みが行われて大分効果を上げておりますけれども、そうしたことを踏まえて更に必要であれば措置を講じるということが書いてございます。
次の21ページは、今度は知財の活用の分野ですけれども、知財信託の利用を促進するということで、いろいろ今、指摘を受けております知財信託の使い勝手の悪いところを改善していくということが書いてございます。
それから、23ページが「標準化活動を強化する」。例えば(1)の(2)ですけれども、標準化の成功及び失敗事例、あるいは企業の国際標準化への貢献度ランキング等を公表するということをしてはどうかということでございます。
それから、26ページです。中小・ベンチャー企業支援あるいは地域における知財戦略の促進でございますけれども、「(1)審査請求料・特許料の減免対象の拡大と要件の簡素化を図る」ということで、中小・ベンチャー企業を対象とした審査請求料、特許料の減免制度の対象を拡大し、あるいは適用対象となる要件を簡素化するということが書いてございます。
あるいは(3)知財駆け込み寺の整備、次のページで「(6)弁理士の地方展開を促す」、さっき御議論がございましたけれども、そういうようなことも書いてございます。
それから次の28ページ、「創造・保護・活用の連携」ですけれども、CIPO、これは最高知財責任者ということでございますが、CIPO等の設置あるいは知的財産部門の社長直轄組織化を促すということで、企業においてこういう対応を促進してはどうかということでございます。
次の29ページは人材でございますが、これはさっきお決めいただきました人材の総合戦略を確実に実行するということで1行だけ書いてございます。
次の30ページ、知財の関連分野の広がりに対応した国際ルールの構築ということで、これまで遺伝資源とかフォークロアとか、あるいはIT、バイオ等の問題について御議論をいただきましたけれども、例えば(1)の(1)のところですが、「相互理解と国際的なコンセンサスづくりへ積極的に貢献する」ということで、いろいろな国際シンポジウムの開催の推進、あるいはさまざまな研究活動を行っている機関におけるそうした研究の促進というようなことを提案してございます。以上、御説明いたしました。
○阿部会長 ありがとうございました。それでは議論に入りたいと思います。御意見を頂戴いたしたいと思いますが、先ほど田中委員からこちらのことでリファーがありましたから口火を切っていただければありがたいと思います。
○田中委員 幾つかあります。最初は、6ページ、(3)「特許発明のライセンスを促進する」というところになりますけれども、これは目的がよくわからないといいますか、明確ではない。大学等の特許発明のライセンスを促進するために共有に関わる特許権、現在は共有者の同意を必要としているわけですけれども、これを見直さなければいけない。ライセンスをどんどん出すということをただ目的としているのか。それとも基本的に産学連携等を促進しようとしているのか。その辺の議論があいまいかなと思います。
つまり、企業から見ますと一緒に共同研究、共同開発をして共有特許になっている。その共有特許が勝手にどんどんもう一方がライセンスをしていくということになりますと、共同研究なり共同開発をするチャンスを逆に避けようとする企業が多く現れるのではないかという感じがします。それから、企業間でもこういうことになりますとどういう影響が出てくるか。非常に広範な視点できちんとした議論をしていく必要があると私は思います。大学のことだけを考えていますと、逆に産学連携を阻害するということにもなりかねないということで、心配しているわけでございます。
それから、8ページの上のA)ですが、審判官が単独で審理を行えるよう、現在の合議体による審理を見直すというところですが、単独で審理をすることになりますと一人だけの偏った考え方で結論を出していってしまう可能性が出てくるのではないか。権利の安定性ですとか明確性というものをきちんと担保するために、合議制によってやる今の制度の方がよろしいかと私は思っております。
それから、10ページの(2)の(1)の特定登録調査機関です。このときに、先行技術との関係を明確化するために、特許庁に出願する際に先行技術調査そのものの義務付けが一部うたわれているわけですが、企業によっては、調査すべき技術分野が明確ですから、自分たちで先行技術調査をした方がはるかに精度が高い場合が多いと思います。このようなこともきちんと考慮して検討する必要があるのかなと。登録機関だけに頼るというのは必ずしも得策ではないと私は思っております。
それから、その下の(3)で「出願上位企業の特許登録率等を公表する」です。公表するのは一向に構わないと思いますが、先ほどもお話をしたように出願数に対してなのか、審査請求数に対してなのかをある程度明確にしておく必要があると思います。
次は、11ページの3の「特許審査の安定性を確保する」というところです。ここに、無効審判と侵害訴訟における無効の抗弁を原則一本化する。これは非常に効率を図る上においても一見いい感じの方策のようですが、私ども実際の現場でやっておりますと、先行技術調査はやればやるほど新しい事実が見つかったり、更に、英語文献だけではなく、ドイツ語文献あるいはロシア語文献等、いろいろな文献をも全部調査いたします。そういたしますと、かなりの時間が必要となります。ですから、無効審判を原則1回に制限するというのはちょっと危険かなと。ただ、蒸し返しを防止するというニュアンスであれば、同一理由でまた審査を求める、審判を求めるということでなければ、新しい客観的な資料に基づいてやるということはきちんと担保していかなければならないと思います。
それから、次のページでIPDLです。これは先行技術調査に関係する部分だと思います。私どもの企業の場合には比較的大きな検索システムを導入することができますが、費用等を考えると、そういうものを導入することは大変だと思います。したがって、「IPDLの提供する検索機能を強化する」ということには大賛成です。更に推し進めるのであれば端末の無償提供ですとか、あるいは検索の研修とか、も必要かと思います。検索も案外難しいですから、検索のための研修もきちんとやって皆さんが使えるようにしていったらどうかと思います。
それから、15ページで先使用権に関するガイドラインの作成というところです。ガイドラインを作成することは大変いいことだと思っております。ただし、ガイドライン作成だけですべて解決するのかという懸念を持っており、それにつきまして是非もう少し踏み込んだような議論ができる、あるいは場合によったら法改正を必要であればするというような形で是非検討していく方がいいのかなと考えています。そうでなければ、企業としては安全のためにどうしても大量出願という方向に走らざるを得ないという局面が継続してしまうのではないかということを懸念しております。
それからもう一点でございますが、26ページの「知財駆け込み寺を整備する」というところでございます。これは取り立てて言うことではございませんけれども、その中の記載に「大企業から知的財産権侵害を受けた場合等」とありますが、これは別に大企業から受けた場合でなくても「知的財産権侵害を受けた場合等」という表現で十分ではないかと私は思いますけれども、いかがでしょうか。 ちょっと数が多くなりまして申し訳ありません。以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。字句のようなところと、それから6ページの第三者への特許権のライセンスのように非常に議論を呼ぶところと、いろいろ御指摘をいただきました。事務局から今の段階でよろしいですか。大変重いものもたくさん入っていたとは思いますけれども、ありがとうございました。
では、ほかの委員の方どうぞ。前田委員、お願いします。
○前田委員 議論を呼ぶところのお話をさせていただきたいと思います。
その前に5ページで、先ほど申し上げたこととの重複になりますが、大学における特許戦略の構築を促進するという意味でも、他の機関のプロジェクトで、マップ化した特許を大学の産学連携の人が自由に扱えなくなるという問題が生じておりますので、この点の整備等も是非お願いできたらと思います。
それでは、本題の特許法73条についてコメントさせていただきます。今大学では、共同研究から生まれた、共同出願のライセンスについての話で、困っていらっしゃる大学が多いと思います。大学独自で出している特許と、企業と共同出願している特許の比率は、どこの大学も半分半分位ではないかと思います。
そこで、73条3項の内容についてですが、第三者へのライセンスも相手の同意なしでさせてほしいという意見を大学知的財産本部の方からよく聞かれます。
ただし、私の個人的意見を申しますと、医科歯科大学のようなライフサイエンスの独占実施を中心に行っている大学の場合は、第三者へは実施できないからこそちゃんとお金をくださいねという形で、むしろ条文を逆手に取って、第三者へライセンスが自由にできないことを交渉の一つにして共同出願相手に実施料なりお金をいただいているというのが実情です。
むしろ、2項のところで共同出願の相手の企業は別段の定めのない場合、相手に同意無しに実施できるという部分が、私たちの大学では時々引っ掛かっております。本来何も言わずに実施できるものになぜお金を払わなければいけないのですかという意見を言われます。きちんと契約で決めれば良いことですが、自己実施に対価をいただくことを交渉するのは現状ではたいへん骨の折れることです。文言上では、原則は相手の企業は何も言わずに実施していいということになっておりますので、例えば1、000社くらいある日立さんのようなグループ企業で、どこかで実施をされていても、私たちの知らないところで利益が上がっていても、ロイヤリティーをいただくことができない状況になりかねないというような泣き言も聞いています。
結論から申しますと、良いシーズであればどのような法律になっていてもお金をいただくこともできますし、事前に契約できちんと決めごとをしてお金をいただける状況にあります。知財部の方や法務の方とのやり取りで、「文言上はこう書いてありますから応じられません」とおっしゃられましても、「すみません、研究の方にこれは本当に必要か必要じゃないかを聞いてきてください。どちらがやりたいと思っているのか、だれがやりたいと考えているのか、必要性を考慮して契約を結びましょう。」ということで柔軟に結ばせていただいていますので、法律が立ちはだかって前に進まないというものは今のところはそれほどないのが現状です。けれども、全部の大学にネゴシエートする人がいるわけでもありませんし、全てのシーズの善し悪しを判断できるかといったら難しいことだと思います。そうしたときに、ベースとなる特許法の文言がどう書いてあるかで、交渉のやり易さが変わってくるのは事実です。
しかし、仮に条文を変えた場合、企業同士のやり取りだったり、第三者へ黙って実施できるようになったら、企業の方は必死になってお金をかけて実施化のための検討をされているわけですから、これはこれで混乱が起きると思いますので、共同出願者が大学のように自己実施できない場合の配慮がどこかで加わればいいのかなという感じを持っています。法律を改正してもらっても大きな問題が生じるのは明白で、悩ましい問題だと思っています。
○阿部会長 ありがとうございました。短い時間で結論を出すには相当の議論が必要なところかもしれません。
○妹尾委員 時間も短いようなので端的に申し上げます。
まず24ページの(3)の(2)の「教育機関による標準に関する教育を強化する」、これは大変結構なことだと思うのですけれども、今、標準化はどうしても理工系を主にした書き方になっているのですが、むしろ標準化の問題は事業戦略、経営戦略の問題、例えばMBAだとか、経営教育が全く無関心という点が問題だろうと私は認識しています。なので、事業戦略、経営戦略を教えているような教育、その中で標準化を取り上げてもらう時期ではないかと思います。標準の問題は技術の問題を超えてきているということが我々の認識だと思います。
次に、ここに書かれていないのですが、タイムリーに取り上げてはいかがかということを提案させてください。3点ほどです。
1点目は、以前の委員会で述べていますけれども、リサーチノートの問題です。リサーチノートは少し軽視され過ぎていないか。
第一に不正防止です。韓国での例の問題、それから私のいる大学でのねつ造疑惑の問題など、やはりエビデンスが全くないということが大問題になっています。あるいは、エビデンスとしてのリサーチノートをちゃんと取る規則になっていないということです。これは恐らく総合科学技術会議でも御議論されると思いますけれども、そのことを考えて、リサーチノートが盗用、ねつ造、改ざんの3つの不正を防止する意味を強調したい。
第二にインベンターンシップ、すなわち発明者認定の問題です。職務発明の騒動がこれから相当予想されますけれども、そのときにはやはりラボノート、リサーチノートがなければ紛争はますます大変になってしまいます。
第三に、今度はそのリサーチノートができたけれども、これが盗まれるという、いわゆる産業スパイ的なものが今、復活している話を皆さんお聞きだと思います。これらを考えると、リサーチノートの問題は従来の、例えば2005推進計画にも書かれていましたけれども、時期的にタイムリーにここでもう一度、大学、それから企業に促すということが必要なのではないかと思います。
2点目は、これも書かれてはいないのですが、活用の分野で、従来言われていたかもしれませんし、2005辺りで言われていますが、ゼネコン等が入札をするときに特許を使った技術が排除される、外されてしまうという問題への対応がなかなか進展していないということがあります。知財教育のセッションでゼネコンの関係者から必ず挙がってくるのがこの問題なんです。うたってはいるけれども、実施はされていない。技術開発をやって特許をせっかく取っても、それが外された入札をされては何のために知財をつくったのかわからないという声が非常に多いのです。こういうようなものが調達の中でやはり考慮されるべきだというのが2点目です。
3点目は、これまた同じなのですが、大学などで使われた特許は日本版のバイドール法で切り出していけるようにはなりましたけれども、それ以外の機関では意外とまだ拘束されている。例えばNTTなどの場合、NTT法でだれでも使えなければいけないということですから、だれもが使わないという特許の状況になっています。
それで問題は何だという意見もあるのかもしれませんけれども、恐らく日本版バイドール法その他で進めている以上は、ある程度の公的な関わりがある特許は、社会的に本当に活用される形に変わらなければいけないと思います。その辺は具体的にどうだという御議論はあると思うんですが、課題としてはその辺を洗い出す時期に入っているのではないかという点を指摘させていただきました。以上です。
○阿部会長 ありがとうございました。いずれも重要な御指摘なのですが、3つおっしゃったうちの1番目と2番目は従来ありますけれども、多分もう少し踏み込んでもう一回きちんと書いたらどうか、しかも、現状の問題点を踏まえた上でということだと思います。3番目は私は記憶がないんですが、新しいですね。ありがとうございました。
ほかの方からいただきたいと思います。では、吉野委員どうぞ。
○吉野委員 1つだけ、既に動き出しているようですけれども、特許審査の迅速化・効率化等、それから出願構造改革の推進ということと両方に絡むのは、どんどん処理が大変だから力づくで抑え込もう。その部分ですね。そういうものが余り強くなり過ぎると、せっかく知財のムードが高まっているのに、それを冷やすことになると思うんです。
したがって、そのバランスをきちんと考えながらやらないと、とにかくどんどんたまっちゃうから力づくで抑えようというような感じのところがありまして、是非ともそこはバランスを取ることに気を配りながらやらなければいけない、やっていただきたいということを申し上げます。
○阿部会長 ありがとうございます。吉野さんの会社から見ても、相当強いんですか。
○吉野委員 例えば、先ほど海外出願の話が出ましたね。あれも結局、国際性がない出願みたいなものを抑制しようという意図だと思うんです。できるだけ多くのものが国内だけではなく海外にも通用するような出願の質というか、そういうものに変えていこうという意図があるんだと思いますが、相当これからそのプレッシャーはいろいろなところへ出ていくことになるんじゃないか。
○阿部会長 ありがとうございました。その他、どうぞ。
○加藤委員 追加的な話で、何度も言いますが、当社はアメリカの先発明主義に対抗するために15年前から第三者のサインをしたノートブックの作成を義務付けています。
一方で、様々な特許を出願されている日本のある教授の研究室ではノートブックがルーズリーフだと聞きました。これでは全然だめです。その先生に、そういうことをやっていてはだめですよと言うと驚かれていましたが、まだその程度です。それが一流大学の教授です。
ですから、やはり妹尾先生が言われるように、これははっきり書いておいた方が、黄教授じゃないですけれども、いろいろな意味で防衛できる。その代わりものすごく煩わしいですね。1週間まとめてノートブックを確認しようとかということも出てきます。これは別の細かい話ですが。
○阿部会長 ありがとうございました。八田先生、何かありましたらどうぞ。
○八田委員 審査を単独でやるか合議でやるかについてですが、今まで合議の場合はほとんど意見が一致しているのでしょうか、、割れているのでしょうか。これが1つの基準になるのではないかと思います。
第2に、田中委員の御指摘があったようなことを考慮すると、「単独でやるけれども、時々それを別な人たちが抜き打ちのチェックをやる。それで、有能さが判明した人には単独でやり続けてもらうし、そうでない人は合議でやる。」というような仕組みが要るのではないかと思います。
それから、特許の件数が多過ぎる理由の1つは、日本の特許料の方がアメリカよりも安いんじゃなかったですか。我々経済学者から見ると出願数が多すぎるならば特許料を高くして、自信がある人だけ出願して頂戴ということが普通の話だろうと思います。
重複も同じことです。2回申請してもいいけれども、相当な料金を取るよという仕組みになっていれば、自分のケースに自信がある方だけが出願してくるでしょう。この問題も価格機能を入れることでかなり改善するのではないかと思いました。
それから、最後の大学と企業の共同研究のときにどうするかというのは、ここではとても言い切れないですが、大学が間接費をどれだけ取っているかということが基本的な問題です。もし民間の企業が大学と共同研究するならば、それ相応の間接費を大学に対して払う。全体で研究費のちょうど倍ぐらいの額を払う。大学は間接費をそこの研究室だけではなくてほかのいろいろなことに使ってもいい。その代わり、成果はかなり企業が優先して使えるようにする。そういうような一種の支払いをきちんとすることによって両方ともメリットがあるような仕組みを考えることが必要なのではないか。以上です。
○阿部会長 ありがとうございました。今3つおっしゃったのですが、事実関係はどうなっていますか。単独の場合と、あとは価格の問題ですね。
○藤田事務局次長 定量的なデータは今ございませんけれども、3人合議体でやっている場合にも、その原案を書く方というのは3人のうちの1人ですが、その1人が中心になって検討をし、あとの2人の方に相談をして結論を出すということになっているようでございます。もちろん中には意見が違う場合もあるでしょうけれども、多くの場合はその担当の方の結論にほかの方も同意をするというふうに聞いております。
それから料金ですけれども、これもなかなか一概に比べにくくて、例えば出願と審査請求と、それからその後に払う特許の年金と、それぞれ高い低いがあります。総じて、日本はアメリカなどに比べると安いという面はございます。
○阿部会長 オーバーヘッドは御意見で、競争的研究資金も30%ということになっているのですが、一部は導入していますけれども、まだ全体に浸透しておりませんので、その辺がまずいかないと、多分民間も乗ってくれないかもしれません。そういうことで、総合的にやっていく必要があるというのはおっしゃるとおりだと思います。ありがとうございました。
下坂委員、お待たせいたしました。
○下坂委員 まず意見ですけれども、6ページの(3)の(3)の「特許発明のライセンスを促進する」ということにつきましては先ほどからいろいろな意見が出ていて、現状の73条のままでも契約などをすることによって解決がつくのではないかという御意見とかいろいろありますが、事案などの検討を私はちゃんとした覚えはありませんで、継続的に是非検討していっていただきたいと思いますので、このままこの形でお残しいただきたいと思います。
それから、10ページの「出願上位企業の特許率等を公表する」というところがございます。これは審査請求に対する特許率だけでなく、特許出願数に対する特許率も公表するということなのですが、これと似たようなものがございまして、私どもが代理をした出願に対して成功率のいい代理人を発表する。脅しっぽいものもあるのですが、余り動じないことにはしておりますけれども、ただ、特許出願数に対する特許率を出して、一体どういう意味があるのか。
会社によりましては開き直りまして、こちらは出したいものを出していく、知財立国と言うならば発明をしていくのだからそれをどんどん出していってもいいじゃないか、それを代理人段階で、これはだめだとか、いろいろ言うのはけしからんとか、いろいろ意見がありまして、大変つらい立場にあります。特許出願数で審査請求をしなければ特許庁は出願料だけもうけますから、別に大したことではないんじゃないかと思っておりますが。特許出願数に対する特許率を出すのは特許出願の内容がこれほど悪いということのために出すのか。その辺りの理由がはっきりわかりません。
それから、出願請求料のことが出ましたので、経済学者の御意見に抵抗するようですが、十分今の審査請求料は高いものです。この審査請求料を改定します何年か前に経済学者の方からやはり同様の意見がありまして、それで結局、審査請求料が現在のように値上げされました。
だからと言って出願は減っておりません。会社によっては、必要なんだから出願は予算を幾ら付けてでも出していくんだということなのです。そこの心理を経済学者の方々がどのようにコントロールできるとお考えか。そこら辺がわかればお教えいただきたいと思います。日本の料金は安いかもしれませんけれども、私どもがやっておりまして審査請求が何件も重なりますと印紙代だけで大変な値段になってまいりますから、決して中小企業などにとって安い金額ということは言えないと考えております。
金額を上げるだけ上げれば出願が減ってしまうということであれば、そして、出願を減らすことだけを特許庁が目的となさるのであれば、おやりになってみたらいいと思います。 ただし、そのときは、納付される出願金額の方もそれだけ減っていくのではないかと思います。 それから、無効審判を重複してやらないために1人1回という表現が11ページにございましたけれども、経験上から言いますと1人同一人が1回ということは違う人を使って何回も出せるということでございます。先ほど田中委員は自社のみをお考えでしたので、大変まじめな御疑問でございましたけれども、現実の仕事では、無効審判の大変難しい事件が、ある一地方の八百屋の御主人が出されとか、いろいろなものがございまして、重複的に何回も出てきます。だから、もしそういうことを阻止するのであれば1人同一人1回ということ以外にも何か考えていかなければいけないのではないか。余りやり過ぎると、今度は国民の権利を阻害してしまうことにならないかなど、その辺りのこともあるというふうに考えております。
それからもう一点だけ、18ページに「個人輸入等の取締りを強化する」ということがありまして、インターネットの関係でございますが、それに関係しましてプロバイダーの方にいろいろ要求をして、その方たちが今インターネット・オークションに出す人たちに対して働きかけをしていっていただいていると聞いています。身分証明書の提出をしたりしていただいているということで、一時は随分インターネット・オークションの模倣品汚染率が減ったそうです。ただ、ちょっとリバウンドしてしまっているというところがあるそうです。
もう一つは、オークションに出す人が大変厳しいプロバイダーのところには真正な商品をまともに出し、それから、にせものに関してはプロバイダーの甘いところ、これが幾つもあるそうですが、そこら辺に出していくという傾向が出てきたと聞いております。そこまでどのように取り締まっていけばいいのかという問題があります。以上です。
○阿部会長 ありがとうございました。
○八田委員 出願が増えるとどれだけコストがかかるかは精査しなければいけないのですが、とりあえずアメリカから日本に出願する方が日本から向こうに出願するよりはるかに多いというのは、特許出願料の差が一つの要因ではないかと思います。
それから、今おっしゃったように一遍だめだと言われても何遍でも要求をする。これも現在の出願料はやはり安いということです。
それから、中小企業が困るではないかということですが、本当にいい発明ならばその中小企業の発明に対してシンジケートを組んでサポートしてやろうという人が出てくるはずです。
もちろんこんな簡単なオブザベーションだけでは最終的な判断はできませんけれども、出願料が低すぎる可能性はかなり高いといえるでしょう。実際のコストとどの程度見合っているか、やはり慎重に検討されるべきではないかと思います。
○阿部会長 ありがとうございました。
○田中委員 再確認だけですけれども、6ページの「特許発明のライセンスを促進する」ということで、下坂先生は、そのまま残した方がいいのではないかということですが、ライセンスを促進する目的と、「共有特許のライセンス見直し」が出てきた意味合いとがどうもはっきりしないんですね。不実施補償ですとかを意識してこういうことをどなたかが言い始めたのか、あるいはほかの目的なのか。
例えば、キヤノンとある大学とが共同研究をやり、大学がキヤノンのコンペティターに勝手にそのライセンスをどんどんするという状況を想像すると、大学と共同研究する企業はまずいなくなりますね。ですから、共有特許についてのライセンスは大学はどんどん外部に対して促進はできるんですけれども、発明を創出する共同研究自体が場合によってはなくなってしまうのではないでしょうか。全体を見据えてきちんと議論をしていく必要があると私は思っております。
それから、インターネットの18ページですけれども、これは下坂先生も御指摘のとおりでございます。最近インターネット・オークション等で、個人輸入なのか、あるいは業としてやっているのかという境が明確ではなくなってきました。外国のネットオークションでにせものを買ってくる。これは個人輸入だ。それを、今度は違うオークションで自分自身が他人に売るというようなことも実は行われているんですね。ですから、私は、個人といえどもにせものを売り買いするという行為については明確に規定を設けて禁止していくべきだと思っております。以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。今、御発言がありましたように、非常に議論を重ねて結論に達すべきところと、それからそういう必要は必ずしもなくてこの文言でほぼ良いのではないか。あるいは、字句の訂正ぐらいで済むというところと、たくさんいろいろな項目がありますので、そこについてどうこれから整理していくかということだと思います。
やはり相当時間をかけて検討しなければいけないものについては、それがわかるように書いていただく必要があるのだろうと思いますが、今日のところはもう時間になってまいりましたので、とりあえず終わらせていただきますけれども、委員の先生方にお願いしたいのは、今日いろいろ御発言をいただきましたので後で事務局で整理をしてくれると思いますが、御発言されない部分について是非ということが後で出てきましたらメモを頂戴できればありがたいと思います。御発言されたところでも結構ですけれども、今週中だそうでございますので、今日は月曜日ですから時間だけで言えば多少ゆとりがあるかもしれませんが、お忙しい先生方で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
事務局においては、本日の御議論を踏まえて、更にいただいたメモを含めて案文を修正して、また委員の方々及び関係省庁と御調整をしていただいて、次回の専門調査会にリバイズドバージョンを出していただくということで、大変忙しいところですが、よろしくお願い申し上げます。
それでは、予定の時間がまいりましたので、本日の会合はこの辺で閉会にしたいと思いますが、もう一回申し上げますと、次回は先ほど申し上げました知的財産基本法の施行状況及び今後の方針の報告書案及び知的創造サイクルに関する重点課題の推進報告の報告書案について御決定をいただくところまで持っていきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
なお、報告書案に対する相談の方法やスケジュール等につきましては、事務局より後日先生方に御連絡をさせていただくと聞いております。
次回の専門調査会は2月17日金曜日14時から16時、この場所で行います。
それでは、本日はどうもありがとうございました。
|