インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ
(第5回)

 
平成22年3月24日(水)
13:00〜15:00
於:知的財産戦略推進事務局会議室
議 事 次 第

 
1.中間取りまとめ(案)について

(配布資料)
【資料1】中間取りまとめ(案)
【資料2】國領委員資料
【資料3】平野委員資料
【資料4】前田委員資料
(参考1)これまでの主な意見について
午後1時01分 開会
○土肥座長
 ただいまからインターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ(第5回)会合を開催いたします。本日はご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は中間取りまとめ(案)を決定したいと考えておりますけれども、まず、事務局から中間取りまとめ(案)についての説明をお願いします。

○奈良参事官
 それでは、ご説明いたします。
 まず、資料全体につきましてご紹介いたしますけれども、資料1がきょうご議論いただきます中間取りまとめの案でございます。それから、資料2以下は先生方からご提出いただいた資料でございますけれども、資料2は國領委員のご意見でございます。本日ご欠席ということでございますけれども、内容につきましては、前回ご紹介させていただいたものでございますけれども、プロバイダ等に自主的な措置を促す方向については妥当なものと考えるということで、具体的に設計する上で十分気をつけたいのは、だれが侵害と判断するかということが重要だということ。それから、自主的なパトロールを行うのはだれでもアクセスできる公然通信を行っている範囲にとどめることが適当というような意見をいただいております。それから、資料3につきましては、平野先生からいただいたご意見、それから、資料4が前田先生からいただいたご意見ですので、後ほどの議論の際に適宜コメントいただければと思っております。
 それから、参考1といたしまして、これまでワーキンググループで委員の皆様からいただいた主な意見につきまして、項目ごとに整理をさせていただいたものでございます。
 それでは、資料1の中間取りまとめ(案)についてご説明をいたしたいと思います。特に前回と変更点があったところを中心にご説明をさせていただきたいと思います。
 まず、アクセスコントロール回避規制の件でございますけれども、1点目といたしまして、回避規制ということでございます。要約の部分については大きな変更はございませんけれども、「製造」、「回避サービスの提供」を対象にするということ、それから、対象機器を拡大するということ、それから、回避機器の頒布等に刑事罰を設ける、回避機器の水際規制を設けるということが書いてございます。
 なお、前回意見がございましたことを踏まえまして、上記それぞれの措置を講じるに当たっては、相互に与える影響を踏まえ、必要以上に規制範囲を広げないよう留意することが必要であるということで、今後の法制度設計にあたっての留意点を追加してございます。
 以下同様の記載を、3ページのところでは、対象行為の拡大についても必要な対策を留意事項のところで記載してございます。
 同様に、5ページの機器の拡大のところでございますけれども、機器の拡大につきましては、必要な対策のところで、「権利者の立証負担を軽減し、柔軟に対応できるようにするため、現在の『のみ』要件よりも広い範囲の機器を規制することが必要である」ということが書いてございまして、留意事項といたしまして、必要以上に規制範囲が広がらないよう留意することが必要であるということ、それから、具体的法制度設計に当たってのご意見を記載しております。「のみ」を「専ら」又は「主たる目的」に改正するというご意見、あるいは、特許法の間接侵害規定を参考に主観的要件を付加した規制を設けるべきとの意見を付加してございます。
 それから、6ページでございますけれども、これも先ほどとも同様でございますけれども、「刑事罰を設けるに当たって必要な刑事罰の範囲、明確性の原則との関係等を今後さらに検討することが必要である」としてございます。
 それから、7ページでございますけれども、水際規制の関係でございます。現在、コピーコントロールの回避機器の輸入等が水際規制の対象となっていないということが書いてございまして、こういったことも踏まえながら検討する必要があるということを記載してございます。
 それから、2番目の回避行為規制の関係でございます。ここも要約の部分につきましては特に大きな変化はございませんが、「回避行為が横行していることを踏まえ、正当な目的で行う回避行為は適用除外とした上で、一定のアクセスコントロール回避行為を規制することが必要。ただし、適用除外規定については、正当な著作物の利用を阻害しないよう、今後さらに検討することが必要。なお、個人が私的に行う回避行為に対して刑事罰を設けることについては慎重に検討すべき」ということにしております。
 9ページをごらんいただきたいと思います。内容は変わってございませんが、前回ご意見ございましたので、真ん中あたりの必要な対策のところでございますけれども、「著作物を保護するアクセスコントロールについて、正当な目的で行う回避行為は適用除外とした上で、一定の回避行為を規制することが必要」ということで、わかりやすく記載をしております。
 それから、留意事項のところでございますけれども、2つ目の○でございますが、「企業等が業として行う回避行為に対する刑事罰については、国際的動向を踏まえて検討することが必要」ということにしてございます。
 それから、具体的制度設計に当たっての留意事項といたしまして、「回避行為規制を個人に及ぼすに当たっては、例えば消費者による団体訴権を設けるなど、個人の自由利用を確保する手段が必要であるとの意見があった」ということを記載してございます。
 それからもう一つ、「回避行為規制を設けるに当たっては、バランスを図るため、国際的動向も踏まえ、複製権の範囲あるいは私的利用の範囲と併せて考えることが必要であるという意見があった」ということを記載してございます。
 それから、(3)の適用除外規定でございますけれども、これは特に変更点はございませんけれども、諸外国の例にならいまして、事例といたしまして、セキュリティ検査目的というものを上げてございます。
 それから、3点目の保護法律のところでございますけれども、これにつきまして、「不正競争防止法と著作権法のいずれにおいても対応することが可能ではないかと考えられるが、それぞれの法で規制した場合の違いに留意しつつ、具体的な制度設計を行うことが必要である」としてございますけれども、複数の先生方のご意見を踏まえまして、「なお、その検討に当たっては、関係省庁が共同して検討を行う場を設けることが必要である」という意見を追加してございます。
 それから、具体的な法律に当たっての留意事項といたしまして、「支分権として認めると、幅広い範囲の回避行為を規制してしまうおそれがあるため、慎重に検討すべきという意見があった。一方、みなし侵害とした場合も同様であり、慎重に検討すべきとの意見があった」ということを追加してございます。それから、「一方、アクセスコントロールがデジタル・ネットワーク社会における著作物の保護方法となっている以上、支分権として広く規定することが必要である」という意見を書いてございます。
 さらに、「回避する権利を譲渡あるいはライセンスすることは考えにくいので、支分権を設けなくても、みなし侵害規定でよいのではないかという意見もあった」ということを記載してございます。
 これらについては、今後の法制度設計に当たっての留意事項ということで記載しているところでございます。
 続きまして、12ページ、大きな論点の2つ目のプロバイダの関係でございます。まず、1点目の侵害対策措置の実施を促す仕組みというところでございます。ここにつきましては、非常にご意見をいただいたところでございます。要約のところでございますけれども、真ん中あたりのところでございますけれども、「こうした観点から、プロバイダと権利者が協働し、インターネット上の著作権侵害コンテンツに対する新たな侵害対策措置を図る実効的な仕組みを構築することが必要」ということで、この点について、皆さんの総意は図られていたものというふうに考えております。
 具体的には、現行のプロバイダ責任制限法の運用と同様、関係者が協議してガイドラインを策定し、類型ごとにプロバイダの行動基準を定めて運用する仕組みを構築する必要があるということにしてございます。
 さらに、上記措置を促すに当たりましては、民法の過失責任主義を前提として、例えばということで、プロ責法において、一般的な監視義務は負わないものの、適切な侵害対策措置を講じていなければ損害賠償責任を負い得ることを明確にするなど、現行制度の検証も含めて、上記措置を促すための法制度の必要性について、今後さらに検討することが必要ということで、まずは、運用する仕組みの構築、併せて法制度の必要性についても検討するということでまとめてございます。
 前回、何が一般的監視義務に当たるかということで議論がございましたけれども、各国で何が当たるかということはいろいろ議論があるところでございますが、ここで申し上げているのは、結果、回避責任の可能性がないようなことについてまで責任を求めることではないというような意味で記載させていただいているところでございます。
 それから、ずっといきまして、15ページの国際的動向というところでございます。真ん中より下の「なお書き」あたりのところでございますけれども、アメリカのDMCAにおける規制、規定、それから、機能の状況を記載してございます。EUについても同様に、一番下の「なお書き」のところで記載を追加してございます。
 16ページにまいりまして、(5)の必要な対策のところでございますけれども、先ほどご説明したとおり、まずはガイドラインを策定していくという仕組みを構築する必要があるということが書いてございます。
 さらに、法制度の必要性の検討ということで記載をしてございますが、先ほど申し上げたとおり、これにつきまして、現行制度の検証も含めまして、今後さらに検討することが必要ということでございます。ただし、検討に当たりましては、民間の取組の進捗状況、あるいは、法制度による萎縮効果を考慮することが必要であるというふうに書いてございます。
 それから、具体的に法制度に当たっての例ということでございますが、これまでご議論いただいた内容、すなわちプロ責法におきまして、民法の過失責任の範囲内で侵害対策措置を講ずるということを位置づけることが考えられるということで、これも含めて検討するということでございます。
 それから、17ページの(6)の留意事項のところでございますけれども、法律に位置づけるのかどうかということを中心に先生方から出てきたご意見を列記してございまして、今後の制度検討に当たっての留意事項にさせていただきたいと思っております。
 最初は、侵害対策措置については、自主的に協力して取り組むアプローチが世界的な動向という慎重なご意見。それから、萎縮効果を踏まえて慎重に検討すべきとの意見。一方で、プロ責法で一定の責任を負えることを明確にした上で、ガイドラインをつくることが必要だというご意見。あるいは、接続プロバイダについて、観念的にプロ責法の対象となり得るが、事実上適用となっていないという意見。
 一方で、接続プロバイダであっても、責任を問われることがあるとの意見を、両論併記してございます。それから、もう一つは、プロバイダに対して義務を課すことが必要であるという意見。一方で、プロバイダは多種多様であって、内容を法律で定めることは難しいという意見、両方の意見を併記してございます。
 それから、國領委員からいただいた意見といたしまして、著作権侵害であるかをどのように判断するかを検討するということと、大学等のプロバイダの性格に応じた対応を考えることが必要だということを記載してございます。
 それから、さらに費用負担の問題、あるいは、名誉毀損、プライバシー侵害等他分野への影響を考慮するというようなご意見がございましたので、その旨記載してございます。
 17ページの2の迅速な削除手続のところでございますけれども、ここにつきましては、大きな変更点はございません。
 18ページのところでございますが、国際的に透明性を高めるとの観点などから、例えば削除手続を法律上明確化する等の対応について今後検討することが必要。国際的な調和の観点を踏まえると、ガイドラインの英誤訳を公開するなどの透明性を高めることが必要であるということにしてございます。
 それから、21ページにいっていただきまして、3の迅速な発信者情報の開示の前の○でございますけれども、これも新たに追加した部分でございまして、「迅速な削除を進めるに当たって、違法なものまで誤って削除される可能性があることに留意することが必要であるとの意見があった」ということで、迅速な削除に対する懸念についてのご意見を記載してございます。
 3の迅速な発信者情報の開示のところでございます。これについても大きな変更点はないわけでございますけれども、裁判外における発信者情報の開示につきまして、ガイドラインを見直すことが必要。警告につきましては、警告メールの転送を促す仕組みを設けることが必要。また、具体的にどのような場合に警告メールを転送することができるかについて検討することが必要ということでまとめてございます。
 22ページにまいりまして、(3)の問題点のところでございます。3つ目の○でございますが、問題点といたしまして、最初のころご議論がございまして、また、団体からもいろいろとご意見ございましたけれども、請求があって、開示するかどうか回答するまでの期間が大きく異なっているということで、標準処理期間のようなものを定めるべきとの指摘がございましたので、それを記載してございます。
 23ページでございます。警告メールの点でございます。3つ目の○でございます。前回も、通信の秘密の侵害に該当するかどうかというご議論がございましたけれども、少なくともプロバイダが警告メールを転送するということが一部のプロバイダで行われているわけでございますけれども、どのような場合に行うことができるかということについては明確になっていないという現状がございます。なお、警告メールの転送につきましては、通信の秘密の侵害に該当すると考えられておりますけれども、正当業務行為として認められる場合は、その違法性が阻却されると考えられているというふうにまとめてございます。
 それから、24ページでございますけれども、国際的な動向ということで、アメリカにおける発信者情報開示につきまして、正確に記載するということで、書記官の形式判断で出すことができるという点、あるいは、接続プロバイダについてはその対象となっていないというご意見がございましたので、その旨記載してございます。
 (5)の必要な対策のところでございますけれども、ここにつきましては、ガイドラインを見直すことが必要とした上で、特に個人の特定に直接つながることのないIPアドレスやタイムスタンプの扱いについては、柔軟に対応することが望ましいということでまとめてございます。  それから、必要な対策の3つ目の○でございますが、諸外国の立法例やその運用実態ということで、検討するに当たっては法律の規定だけではなく、運用実態等も十分参考にする必要があるということを記載してございます。
 (6)の留意事項のところでございますけれども、ここにつきまして、新たにつけ加えてございまして、発信者情報開示請求については、プロ責法が定める要件の充足について、特別な事情がある場合を除き、プロバイダが自身の判断のみで開示すべきではなく、裁判所の審査を経た上で開示すべきという意見がございましたので、それを記載してございます。
 一方で、発信者情報開示につきましては、権利を守ることではなく、裁判を受ける権利を保障することが重要だというご意見がございました。
 以上でございます。できるだけ先生方のご意見の集約を図ったつもりでございますけれども、さらにご審議をいただきたいと思っております。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、中間取りまとめ(案)を踏まえまして、今後の取組について、関係する法律を所管している各省からのコメントをお願いしたいと存じます。
 まずは、知財事務局からお願いできますか。

○奈良参事官
 法律の所管課ということではございませんが、全体を取りまとめている観点から、本日もさらにご意見をいただくわけでございますけれども、先生方からいただいたご意見を踏まえまして、引き続き関係省庁と連携いたしまして、今後具体的な制度設計、あるいは、対策を進めていきたいと考えているところでございます。
 特にアクセスコントロールにつきましては、どのような法律で規制するのかというところが大きな問題点としてあるわけでございますけれども、この点につきまして、文化庁、それから経産省と連携して制度設計についての検討を進めていきたいと考えているところでございます。
 それから、プロバイダの関係につきましては、まずは総務省を中心に関係者の自主的な措置というものを進めていくということでございますけれども、さらに法制度の必要性についても検討するものと考えておりますけれども、この点につきましても連携して進めていきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 それでは、今も出ましたけれども、文化庁、お願いします。

○永山課長(文化庁著作権)
 文化庁の著作権課長でございます。アクセスコントロールの規制の問題につきましては、これまで文化審議会著作権分科会のほうでも過去検討してきた経緯はございますけれども、なかなか難しい問題ということで結論は出なかった課題の一つでございます。その大きな課題についてこの場でさまざまなご議論をいただきまして、今後一定の方向性を打ち出していただけると、大きな方向性を打ち出していただけるということについては、非常に大きく感謝をいたしております。
 それを受けて我々としてはどう立法面で対応していくのかということでございますけれども、それは今、知財事務局のほうからお話がございましたように、この場でもさまざまな議論がありました。それを踏まえまして、どういう形の対応が可能なのかということについて、知財事務局のリーダーシップの下、関係省庁と協力して対応についてきちんと検討をしていきたいと考えております。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、経済産業省、お願いします。

○中原室長(経済産業省知的財産政策室)
 経済産業省の知的財産政策室長の中原でございます。当ワーキンググループにオブザーバーとして参加させていただきまして、関係者皆様のいろいろなご意見を拝聴させていただき、私もコンテンツの重要性等について新たに思いをいたしたところでございます。今、著作権課長からもお話がございましたとおり、今後、コンテンツの重要性や技術開発に与える影響といったようなことを勘案しながら、皆様が満足できるような制度整備が図れるよう、知財事務局、文化庁と協力して進めてまいりたいと思っております。
 以上でございます。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 それでは、総務省からもお願いします。

○二宮課長(総務省消費者行政課)
 総務省消費者行政課長、二宮でございます。インターネット上の権利侵害対策につきましては、さまざまな観点からのご意見、さらには非常に難しい論点もあるということを、この場を通じまして理解しているところでございますけれども、関係者の皆様方が協力して前向きに取り組まなければならない重要な課題であるというふうに考えております。
 総務省におきましては、従来よりインターネットの利用環境整備ということで、霞が関の中でも最も早くから、また積極的な取組を行ってきたところでございます。インターネット上の著作権侵害の問題につきましても、その中で重要な取組分野の一つだというふうに考えております。持続的な経済成長に向けまして、その重要なインフラでありますインターネット環境の整備と、そこで流通するコンテンツの充実の双方が不可欠というふうに考えております。
 その観点から申し上げれば、本来、著作権者とプロバイダは対立関係に立つというものではなく、共通の課題であるインターネット上の著作権侵害に対して協力して取り組んでいくことが重要であろうと考えております。総務省といたしましては、こうした関係者間の協力体制の構築を図る上で、その基礎ともなっております現行制度の検証も行いつつ、権利者とプロバイダが目標を共有して、ともに力を合わせて協働できるような関係を構築できるように取り組んでまいりたいと考えております。
 これまでのワーキングでの諸先生方のさまざまなご意見を踏まえまして、また、関係者、関係省庁の方々のご協力も得ながら、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

○土肥座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、意見交換に入りたいと思います。
 まずは、アクセスコントロールについての委員の皆様のご意見をお伺いしたいと存じます。何人かの委員の方々からは意見書を頂戴しておりますので、それを踏まえたご意見をお願いできれはと思います。どなたか、特に意見書を頂戴した方、ご意見ございますか。
 では、自由にご発言いただければと思います。まずはアクセスコントロールのお話ということでご意見をいただければと思っておりますが。アクセスコントロールはよろしいですか。
 先ほど事務局の説明があった部分ですけれども。1ページ目の下あたりの括弧書きの中にあるような方向性で今後検討を進めていただくということでございますが。回避規制についてということで、この中にございますように、「製造」及び「回避サービス」、そういう行為についても規制の対象を拡大していく。それから、「のみ」要件も見直す方向で検討をしていくということでございます。何よりも大事なのは水際規制ということでございますので、水際規制に伴う所要の措置は必然的に必要になってくるということだと思いますが。

○宮川委員
 ちょっと質問をよろしいですか。

○土肥座長
 はい。

○宮川委員
 大変細かい点で申しわけないんですけれども、4ページ目の真ん中ぐらいですか、○が2つありまして、「フラグ方式」から始まる部分の最後のところなんですが、「しかしながら」以降ですね。このフラグ方式によるアクセスコントロール及びコピーコントロールについては、いわゆる「無反応機器」の問題があるというところのワンパラグラフなんですが、前段から読んでおりますと、アクセスコントロールの規制対象の拡大についてを議論しているようにずっと読んでいるんですが、ここにきまして急にコピーコントロールの話とか、特に「しかしながら」以降は、アクセスコントロール及びコピーコントロールの組み合せによって、コピーコントロールに関する特殊な無反応機器の流通が大きな問題になっているという形で、ダビング10等ということで出ているんですが、前からのアクセスコントロールと、ここのコピーコントロールの無反応機器という部分がうまくつながっていないような印象がありまして、従前から読んでいて非常に違和感があったのですが。確か前回大谷委員のほうからもこの点についてはご指摘があったように思うのですけれども、この内容で問題ないのかをご検討いただけたらと思いました。
 この問題は、5ページ目の4項の一番最後の○のところの2行目、3行目に「特殊な無反応機器を販売しているケースを限定的に規制することについて、今後さらに検討する」ということでまとめていただいておりますが、無反応機器の制限について必要性がある事例として4ページ目で上げていることだと思っていますので、矛盾がないように書いていただければと思っております。私の懸念かもしれませんが、何か大谷委員からフォローしていただけたらと思いますけれども。

○土肥座長
 ご指名ですので、大谷委員。

○大谷委員
 ありがとうございます。前回のワーキンググループの会合の際に資料を提出させていただき、従前、無反応機器の問題というのは、アクセスコントロールを回避するという問題の一種として取り上げられてきているところを、その事実関係、被害実態を見ていきますと、実はコピーコントロールに対しての無反応であって、アクセスコントロールに関する規制を導入して、その規制の形をどのようにするかという議論には直接関係のない問題ではないかという意味で問題提起をさせていただきました。
 その点について、事実関係と、実際に用いられている技術に即して正確に記載していただいたところが、この4ページ、5ページに記載されているコピーコントロールに関する記述になったということですので、私はこの資料の整理でよろしいかと思いますが、このワーキンググループで議論を進めていくに当たって、前提としている事実関係をできるだけ明確にしながら、実際に被害実態が起こっているところに十分な規制がかかり、なおかつ、その規制についての副作用も併せて検討していきたいというのが、私の終始一貫した考え方であります。
 けれども、これはコピーコントロールの問題ということになりますと、コピーコントロールについての在り方を見直すということであって、アクセスコントロールに関する回避規制、それから、回避行為に関する規制を無制約に拡大していくという方向で考えるのは適切ではないのではないかということを前回確認いただけたものと考えておりまして、技術的に細かい話であろうかとは思いますが、このワーキンググループの議論全体を通じて、事実を重視しながら進めるという事務局の姿勢を、細かい論点についてもこだわりながらまとめていただいた成果ではないかと思っております。
 ありがとうございました。

○土肥座長
 宮川委員、よろしゅうございますか。

○宮川委員
 ありがとうございました。

○土肥座長
 それから、回避行為それ自体についても、前回検討いただいたところより変更はないんですけれども、一定のアクセスコントロールの回避行為を抑制することは必要であると、そういう方向でまとめようというのが提案でございますけれども、このあたりのところについては、前回皆さんにご議論いただいてご了承をいただいかなと思っておりますので、前段のほうはよろしいですかね、取りまとめの方向性としては。
 それから、事務局の説明があった前回と違う、変更部分についても特にご異論なければ、方向性として了解させていただきますけれども、よろしゅうございますか。
 では、森田委員。

○森田委員
 前回意見を申し上げまして、それを反映させる形で取りまとめをしていただきまして、ありがとうございました。
 個人の回避行為についての規制の問題でありますけれども、この囲みの中のまとめはこれでよいと思いますが、どこまで規制の対象とするか、それから、その前提として個人回避行為を規制の対象にすることの実効性と言いますか、規制の必要性がどこまであるかということについては、立法事実があるかという指摘がありましたけれども、この点はいまだ確認が十分になされておりませんので、その前提も含めて今後の検討の中で詰めていく必要があるというふうに理解しております。したがって、結論についてはいろいろな可能性がなお留保されているというふうに、この囲みの中の文章を私自身は理解しておりますけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。

○土肥座長
 そのとおりだろうと思います。
 ほかに。もう一点、はい、どうぞ。

○森田委員
 先ほど出ました無反応機器の問題ですが、無反応機器を規制の対象とするということは、ある機器に反応するような機能を付加することを義務づけることが必要になるわけでありますけれども、それを義務づける法律の根拠なくして無反応機器を規制の対象とするというのは難しいのではないかということが4ページに書いてあって、その先に「しかしながら」以下の文章が続きます。この「しかしながら」の後で、「特殊な無反応機器」という概念が出てきて、また、5ページの「必要な対策について」という部分でも「特殊な無反応機器」という概念が出てきますけれども、「特殊な」無反応機器とは一体何なのかは、はっきりしていません。最終的にこれを法律の条文にするときには、「実質的に回避を行うことを目的とする機器」とか、「特殊な無反応機器」ということでは、規制の対象を明確に示すことはできないように思いますので、この問題を詰めて考えていくと、無反応機器の中で、ここで「特殊な」と呼んでいる中身を法制的にうまくつかまえることが可能なのかということについても、まだ結論は出ていないというふうに理解しております。
 それから、この無反応機器の問題は、アクセスコントロールだけではなくてコピーコントロールにも関係する問題であって、この点も今後さらに検討することが必要であるとされています。そうしますと、囲みの中の文章では、まとめとしてはアクセスコントロールの問題のみを挙げているわけでありますけれども、個人の回避行為についても、前回、コピーコントロールとアクセスコントロールとの双方を視野に入れて、それぞれの規制の範囲について適切なバランスを考慮していただきたいということを申し上げて、そのことはこの報告書の各所において留意事項として挙がっていることでありますので、無反応機器の問題についても、規制の対象としてはその両者を視野に含めながら、ここでねらっているようなものをどういう形で対象とすべきなのか、「特殊な無反応機器」というのを法律上括り出すようなうまい要件設定が可能であるかということを今後詰めていって、いずれについても肯定できるような方向で意見集約が図られるのならば、「特殊な無反応機器」を括り出すことが可能だと思いますが、それが果たして可能なのかどうかというのは、この段階ではまだわかっていないことだと思います。
1ページの囲みの中には無反応機器について明示的には言及がないのは、そういうご趣旨なのではないかというふうに私は理解しておりますけれども、この点もこのそういう理解でよろしいのでしょうか。

○土肥座長
 私はそういうふうに思っておりますけれども、委員の皆さんはいかがでございましょうか。そういう認識でよろしゅうございますか。
 そういうことでございますので、今、森田委員がおっしゃったような認識を本ワーキンググループとしては持ちたいと思います。
 ほかにいかがでございましょうか。
 よろしければ、後段のほうに入りたいと思いますけれども、プロバイダ責任の在り方についてでございます。プロバイダ責任の在り方につきましては、12ページ以下でございます。括弧書きの中等、かなり前回とはニュアンスが変わっているのかなと思いますので、ご意見をお聞かせいただければと思います。いかがでございましょうか。先ほどの総務省をはじめ関係官庁のご意見だと、大体ここに書いてあるようなことを今後進めていきたいということかなと認識しましたけれども、委員の中で特にご意見があれば。
 北川委員、どうぞ。

○北川委員
 すみません、前回ちょっと出られませんでしたけれども、意見書だけはつけさせていただいて。まさに単独の組織と言いますか、著作権者だけとか、ISPだけでは解決できない問題というのが中核にありまして、それがゆえに著作権侵害を防ぐことができないような状況になっているという認識の下で、ではどうすればいいのかということで、意見書の中で、3、4として幾つかの方向性を書かせていただきました。
 それについて、奈良参事官との直接のヒアリングの時間もとっていただきまして、かなり反映されたものになっていると思いますけれども、ここで2点だけコメントさせていただきたいことがあります。今、総務省の方からもありましたけれども、自分の利害を超えたところでの何らかの組織づくりが行われて、それによって解決の方策を探っていかないと、この問題はなかなか解決しないということが実際にあると思います。それで2点、私が申し上げたいことは、その中でどうしても避けることができないことがあると私は思っていまして、ある種の発見と発明ということが絶対に必要だと思います。
 1つは、今CCIF(Consortium for Copyright Infringement via File sharing software )というところが立ち上がって、著作権侵害に対するガイドラインをつくり、実施している最中でございますが、その前の協議会の技術者という立場にあって、CCIFの運営委員会のアドバイザーという立場にあります。ちょっと手前味噌で申しわけありませんけれども、今、グーグルで「著作権侵害」というふうに引いていただきますと、1,400万件ほどヒットが出ますが、その1、2、3、トップ3は、今言った協議会とCCIFのものになっております。
 という意味で、かなりな一般性と期待値はあるのではないかということでお話させていただきますと、この場合、著作権者側のメリットというのは明らかです。もちろん著作権侵害を防ぐというインセンティブは十分あるわけです。ところが、プロバイダ側、ISP側はそのことをともにやるインセンティブというのはほとんどないわけで、非常に手間ひまがかかる。いろんな法的なリスク、いわゆるユーザーの情報を開示しなければいけないといったことが起こり得ます。実はそのことばかり話していたんですけれども。
 その中でどのようにして回避したかと言いますと、1つは発見があったわけですね。それは何かと言いますと、これはいわゆるP to Pというフルスペックです。ですが、動画配信サイトなどはかなりグレードダウンした映像しか出しておりませんが、P to PというのはフルスペックのDVDだから流通してしまうわけで、著作権者の方々が非常に困っておられるわけですが、その中でP to Pの流通というのはブロードバンドの帯域の6割から8割を占有してしまっているんだということがあります。
 これは何に基づいてそういった警告メールを発することにISP側がオーケーを出したかと言いますと、「業務遂行を妨げるものについては、何らかの警告を出すことができる」と、約款の中にそういうものを含めることによって、実際の帯域の6割から8割というのは非常に大きなものです、ブロードバンドに対しては非常に大きな投資をしておりまして、世界一の水準にありますが、その中の6割か8割がそこで毀損されていると事実ですね。この事実によってISP側もこれを健全化したということである種の賛同を得られた。
 しかも、このことは非常に重要なことでありまして、今、P to P側でだれが違反しているかというのを見つけるソフトがありますが、それによって非常に多くの帯域を使っているユーザーを特定することは実際にはできていません、できないです、わからないです。ところが、ISP側がユーザーの履歴とどのソフトを使ったということからその人を特定して、警告を出すことはできるんです。
 これはまだCCIFはやっておりませんけれども、そういう可能性は十分あります。そういうことで、ある種の共通課題と言いますか、両者の間でコンセンサスをとれるような大義といいますか、そういうものがない限りはなかなかうまくいかないというのが一つあると思います。それによって、一応、3つ段階を考えている中の第1段階までは具体的に進んだという状況あるということをお知らせしたいと思います。
 2つ目は、この中で森田委員とか大谷委員からいろんな提案が出ているんですが、動画配信サイトに対するフィンガープリンティングとウォーターマーク、そういう話がここで出てきています。それを動画配信サイト側に貸そうという話が出てきていますが、ここに対してはある種の発明が必要だと思っています。それは何かと言いますと、実際にはフィンガープリンティングをやろうと思うと、指紋の照合と一緒ですから、リファレンス、本物の情報がないと判定できないわけですね。ですから、この作業が、ただソフトウェアを導入するだけではなく、例えばテレビ会社がものすごい量の、BS、CSいろんなものがありますが、それを放送するたびに、すべてを真正のコンテンツをすべてのISPに与えるのかという問題がありまして、これは途方もない労力を必要とします。
 これは2008年、9年の間に、そういった技術を使って世界的な海賊版の実態を調べる調査が経産省の下でありまして、その評価委員をやっていたんですが、そこにはいろんな著作権者の方、テレビ会社の方、アニメをつくっておられる方、いろんな方々が集まっておられましたが、積極的に自分のところの真正のコンテンツを出して実験したんですけれども、実験に供与された方はそんなにはおられませんでした。本音を聞くと、これは発明がどうしても必要で、その中においてきちんとコスト管理と言いますか、ビジネスモデルが回るようなものを発見しなければならない、つくらなければいけないということが絶対にあります。
 これは実例がありまして、ちょっと長くなってすみません、これは非常に重要なことだと思いますので。今、例えばどういう発明があるかと言いますと、1回上がってしまうとしょうがないということはいろんな方々が言われています。非常に重要な概念はオン・ザ・フライという概念なんです。とにかく上がる前にその真贋を調べてしまって、上げる前にとめなければ意味がないというのが一つあります。そういうのがオン・ザ・フライという概念で、非常に高速性が要求されるんですね。
 それから、今、世界中に40社以上のフィンガープリンティングの技術を出しているところがある、日本ではNTTも出していますし、幾つかあります。それは事務局が出している資料にありますが、一つの事実は、そういう中できちんと真贋を、本物か偽物かを判定する能力が全く違うということです。これは公表されているものがなくて、とある著作権団体の方に覆面で結果だけ見せてもらったことがあるんですが、高いものは100%近いものがありますが、ひどいものになると80%、60%、50%を切るようなものまであります。その精度という問題と速さですね。
 上げる前にリアルタイムで真贋を調べて、上げるべきでないものは取り下げるということが必要ですので、上がってしまうとしょうがないということがありまして、これはテレビ会社の事例ですが、このビデオが上がってきますよね、ビデオが上がってきたときにその真贋を証明して、これはこのテレビ会社のこの番組であることはわかります、リアルタイムで。そのときに、スポンサーがいますので、そのビデオを上げるときにスポンサーの広告を挟み込むということをやるんですね。これがオン・ザ・フライのいいところで、上げる前に何らかのビジネスモデルをつくっておいて、それに相当することを、例えば広告を挟み込んで上げるというようなことが、実際に行われたり企画されたりしているところがありまして、そうであれば、テレビ会社の人はこれを上げてきます。
 ここで売上が立って、ビジネスモデルとして回っていくわけですから。ということが実際には行われつつあるわけで、これはビジネスモデルとかその著作権者とISPの関係の中で回るモデルを発明しない限りは、皆さんやってくださいといっても、どんなソフトを使うんですか、真贋の率はどのくらいですか、どのぐらいのスピードですかと、次から次へ非常に大きな負担がISP側にかかってきますので、ISPの協会の方はものすごくそれをおそれて、こんなことをやれと言われたら、とんでもないことになるというような意味のことを言われて帰っていかれたんですけれども、そういうところはもう少し技術的な内容とかビジネスモデルについての精査をした上で、今後のアクションを考えていくということが非常に重要だと思います。
 以上2点だけコメントさせていただきました。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 今から1時間15分、まだ時間があるんですけれども、政務官、ちょうどおいでいただいておられて、今後の予定もあろうかと思うんですが、ここまでの議論をお聞きになって何かご発言がありましたら、お願いできますか。

○津村政務官
 すみません、議論の途中に口を挟むようになって申しわけありません。
 本日、平成22年度予算が成立する運びでありまして、その最後の議論がありまして、この後失礼をしてしまうんですが、実は大変象徴的なタイミングでもあって、皆さんにもかなり伝わっていると思うんですが、私たち新政権が、細川政権の轍を踏まず、しっかりと政治主導の政治を軌道に乗せられるかどうかという一つのメルクマールというか試金石が年度内予算成立ということで、そのために成長戦略のプロセスも含めていろんなことが影響を受け合いながら、ここまできたというのが政権側の人間としてはございます。
 そこで、きょうこの節目から、まさに皆さんのこのワーキンググループもきょうが第5回、取りまとめということなわけですけれども、ここからいよいよ次のステージに進むわけで、「新成長戦略」というのがことしのキーワードなわけですけれども、これからの単年度予算の話にとどまらず、5年、10年後の日本をどちらの方向に持っていくのかという議論がいよいよ本格化する、それがきょうからだというふうに思っていまして、それに先立って皆さんの議論をここまで積み上げてきていただいたと。
 最初のとき、私は2つの専門調査会とこれと3つを掛け持ちしているものですから、そのうち二、三の場合で、恐らくここでも申し上げたと思うんですが、今回のこの議論は、今まで毎年ある種似た議論もしてきているんですけれども、ことしの大きな違いは5年、10年先をにらんだ成長戦略にかかわる議論をしていただきたい、つまり、少し先の話もしていただきたいということを私は申し上げたつもりなんです。実際そういうお話をたくさんいただいたと思っていまして、これから、まずは来週の3月30日、総理を含めた中間取りまとめですけれども、4月、5月、そして、6月の成長戦略取りまとめというところに向けてさらに議論を本格化させていきますし、既に成長戦略の基本方針の中で、ITや科学技術と並んでこの知的財産権の問題は成長のプラットフォームとして、大きく位置づけもしているところでございますので、引き続きお願いをしたいと思っています。
 個人的には、競争力強化専調やコンテンツ強化専調のほうでは、毎回1〜2回の発言はさせていただいたことがあったんですけれども、このワーキンググループは、基本的に出席させていただいてきたつもりではあるんですが、非常に専門性の高い、レベルの高い議論をされているので、私自身が貢献する場面が少なかったことは本当に申しわけないんですけれども、ここからが私たち政務三役の出番で、きょうも4省庁の皆さんから力強いご発言をいただいたわけでありますし、また、事務局も、私この数カ月一緒に仕事をさせていただいて、出向者ばかりの混成チームなわけですけれども、皆さん大所高所から議論をなさっていて、非常に心強い事務局でもあります。
 きょうは4省庁の事務方の皆さんに来ていただいていますが、政務三役レベルも含めて、これから企画委員会というのも副大臣級で立ち上げていくという議論も知財本部全体としてはしていますので、省庁の壁をどれだけ越えられるかということが一つ大きいのと、もう一つは、ここで議論されたことを本当にやっているのかということを、PDCAサイクルというのを私たちは最近よく使うんですが、"plan Do"だけではなくて、そもそも"Do"があやしいんですけれども、"Check Action"のところをしっかり回していくというのが、これからの役割だと思っていまして、4月以降もこの皆さんのメンバーでワーキンググループ、引き続きご議論いただくということになると思っていますので、ぜひこれから私たちの背中を引き続き押していただけたらなと思っています。
 議論の途中に水を差した格好になりましたが、これまでの5回の議論のお礼を申し上げたくて、マイクをとらせていただきました。どうもありがとうございました。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 それでは、今の政務官のご意見も受けて議論を継続したいと思いますけれども、北川委員のおっしゃっておられた発見と発明、そういう仕組みについては、先ほど意見を表明していただいた中で、プロバイダと権利者が共同のプラットフォームをつくって、侵害対策措置についてのガイドラインを詰めていくということになっていこうと思います。ですから、北川委員がおっしゃっていただいたところはその中で検討されていくんだろうと思います。
 それから、侵害対策措置については、こういう取りまとめの仕方になっているんですけれども、プロ責法もできて10年、ネットの時間でいうと、10年というのはドッグイヤーというと70年に相当するわけですから、相当な時間がたっているはずで、プロ責法の10年前の規定の仕方について、「検証」という言葉を使っていただいたかと思いますけれども、検証をしていただくと。そして、もし何かあればさらに次のステップに入っていただくというふうに期待をしているところでございます。
 まずは、侵害対策措置としてどういうことができるのかということについては、関係者間で 十分協議をする場を、ぜひ総務省をはじめとして関係の省庁においてバックアップをしていただきたい、こういうふうに期待をしたいと思います。
 それから、侵害対策措置のところで皆さんの中でほかにご意見ございましたら、いただきますけれども。山本委員、どうぞ。

○山本委員
 先ほど北川委員からお話がありました後段のほうなんですけれども、例えばフィンガープリントを使って侵害物を排除する仕組みというのは、ご指摘のとおり法律制度を簡単につくればいいかという問題ではなしに、技術を開発して、それを乗せるためのシステム、かなり大きなシステムですね、例えば登録制度などを伴うような制度設計が必要なんだろうと思います。つまり、現行法を前提にしたガイドラインで解決できるような話ではないと思いますので、今後の検討課題として、先ほど政務官からご指摘もありましたように、5年10年先の課題として検討課題に乗せていただきたい。北川委員から今お話があったような問題ですね。そういうふうに希望いたします。

○土肥座長
 事務局におかれましては、よろしくお願いします。そういうご要望が出ておりますので。
 ほかに。前田委員、どうぞ。

○前田委員
 今回のまとめ案では、まず関係者間の協議によりガイドラインを策定していくということが述べられているかと思いますが、先ほど北川先生から、協議に参加するインセンティブについて、プロバイダには本来的にはインセンティブはないけれども、たまたま帯域の問題があって、それがインセンティブになっているというお話をいただきました。
 接続プロバイダについてはそういうインセンティブが働くことになるかと思うんですが、接続プロバイダ以外のプロバイダについてはどうなのか。そういうインセンティブが働くのだろうかという疑問もございまして、そうすると、さしあたりは関係者間の協議によりガイドラインの策定を目指すべきだとしても、関係者に十分なインセンティブが働いて、協議が成立するのかどうか。それから、仮に協議の結果、何か結論が得られたとしても、それに参加しない人、アウトサイダーは必然的に発生する可能性があって、そのアウトサイダーにどうやってガイドラインを押し進めていくのかという問題が残るかと思います。
 そうすると、さしあたっては関係者間の協議に期待するとしても、その協議がうまくいかない場合、あるいは、アウトサイダーに協議の結果を押し進めていくことができない場合には、プロバイダに一定の侵害防止措置をとることを法的に義務づけるということが必要になるのではないかと思います。

○土肥座長
 ありがとうございます。
 いずれにしてもネット上の侵害コンテンツの総量を減らすと、それが目的でございますので、その侵害コンテンツをどうやって減らすか、それはガイドラインというものが有効であればそれが一番いいわけですし、それで効かなければ次の手を打たなければいけない。たった一つ、例えば抗生物質のようなものを一つ注射すればすべてオーケーになるような場ではないと思いますので、いろいろな手を考えていって、法的な仕組みというのは単にその一つにすぎないのではないかというふうに思います。
 森田さん、ありますか。はい、お願いします。

○森田委員
 ただいまの取りまとめについては、それでよろしいかと思いますが、政務官はもうおられなくなりましたけれども、「成長戦略」という観点から若干のことを申し上げておきたいと思います。
 このワーキンググループでは、当初から著作権侵害コンテンツに対する対策をどうすべきかというのをまず目的に掲げて、目標としては著作権侵害コンテンツの流通量自体を減らしていくことが重要であるという前提に立った検討を行ってきたわけであります。このように、著作権侵害コンテンツの流通量を減らすための対策を社会的なコストをかけてやっていくわけでありますが、そのことが将来の成長戦略として何かを生み出すのかと言いますと、必ずしもそうとは言えないように思います。違法なダウンロードがなくなれば、その分だけ正規版が売れることになるかというと、そのような計算で被害額を算定したデータがこんなに甚大な被害があるということを示すものとしてよく示されるわけですが、特にお金のない若年層がそういう違法なコンテンツを安易に利用しているという実態がありますので、実際には、侵害が減少したらその分だけ正規版が売れるという関係にはないわけです。したがって、社会的に相当なコストをかけて著作権侵害コンテンツの流通量を減らしたからといって、それに見合っただけの利益が得られて、今後の成長戦略につながるかというと、必ずしもそうでないわけです。
 その点で、先ほど北川委員のおっしゃったビジネスモデルの問題という観点が重要ではないかと思います。一言で申し上げますと、インターネットがこれほど発展することを想定していなかった既存のビジネスモデルがそれにうまく対応できていないことに起因する面があります。ここで行っている対策というのは、後ろ向きといいますか、既存のビジネスモデルを守るために、著作権侵害コンテンツの流通量を減らそうという方向で検討を行っているわけでありますけれども、むしろインターネットを活用して、新たなものをそこから生み出すような新たなビジネスモデルを考えるという前向きの方向での対策を検討するという視点が重要ではないかということです。
 先ほどのフィンガープリントという技術も、単に著作権侵害を理由に削除するというだけでは何も産み出しませんが、それよりもむしろ、コンテンツを検出してそこに広告モデルを挟むとか、コンテンツの視聴等から得られる広告収入を権利者とで分かち合うといった方向で、こうした技術を活用することを検討したほうが有益な面もあります。そのような試みは、実際に権利者とプロバイダの協働の仕組みとして構築されてきているわけでありまして、何も侵害コンテンツを削除することだけが対策ではないわけであります。そういう意味で、インターネットでは著作権侵害が横行しているからといって、将来に向かってインターネットをなくすことはできませんし、インターネットのもつ社会的な有用性は皆さんが認めるとおりでありますので、むしろそれを前提とした新たなビジネスモデルを考えていく方向で問題の解決を図る、そちらに向けたインセンティブというのも重要ではないかと思います。  それとの関係で、自主的に協働の仕組みを構築するだけではなくて、プロバイダに法的な責任を負わせるべきだという意見があるということは私も承知しておりますけれども、この種の問題は日本だけでうまく解決できるわけではありませんので、諸外国で負わせていないような重い負担を日本のサービスプロバイダだけに法的に負わせるということになりますと、諸外国で、例えば、動画共有サービスを提供する者はそういう規制の外で自由にビジネスができるけれども、日本で同様のビジネスを展開しようと思うと、著作権侵害を回避するために重い負担を法的に負わされ、相当の初期投入コストがかかって、日本ではうまくビジネスを展開できないということになりかねません。日本版フェアユースを導入することが必要であるという理由として、検索エンジンのサービス提供は、諸外国では可能であっても、日本ではできないという法的障害を取り除くということが挙げられたわけですが、それとちょうど同じ問題がここでも出てくるわけであります。
したがって、国際的な動向を踏まえないで、日本だけで過重な負担をプロバイダに負わせるというのは適当でない。国際的な動向も踏まえながら、というのは、インターネットにおけるさまざまなサービスを提供することをむしろ阻害する要因になってはいけない、現在考えられないような新たなサービスを提供しようとする者が出てきたときには、一定の措置を講じなければ、そのビジネスに参入できないといったような参入障壁を設けることになってはいけない。そういう観点も、成長戦略という点では重要だと思います。
このワーキンググループは、著作権侵害の対策措置をとるということを目標に掲げて、それとの関係で、どういう手段をとりうるかということばかり議論してきましたけれども、本当はそのもう一段上の視点に立って、つまり、著作権侵害コンテンツの流通量自体を減らすということだけではなくて、もう少し高い視点に立って、今後の成長戦略として何が必要なのか、何が重要なのかを議論していくべきであろうと思います。
 このワーキンググループでは、そのような観点から議論する機会はあまりなかったと思いますけれども、重要な視点だと思いますので、先ほどの北川委員の意見に触発されまして、その点を申し上げておきたいと思います。

○土肥座長
 それは今後の検討課題ということになろうかと思います。
 いずれにしても、一方においてACTAというものがあって、要するに、先ほど申しましたように、いろんな対策措置というものが考えられるわけで、外国のプロバイダにもこういう検討の場に入ってもらう、そういうところは十二分に考えられるわけでありますので、単にプロバイダと権利者の協働の場というのは、日本のプロバイダだけではなくて、外国のプロバイダも入ってもらって、より効果的な侵害対策措置についてのガイドラインをそれぞれ考えてもらう、そういう方向に進めばいいかなというふうに思っております。
 どうぞ。

○平野委員
 平野でございます。私、大分プロボカティブなことを申し上げてきましたが、事務局樣のほうでも取りまとめていただきまして、今回、ガイドラインを前置していだたくということで、非常にご努力いただきありがとうございます。
 津村政務官からもお話がありましたが、成長戦略、長期的、中期的に見るべきだということから見ると、インターネットというのはまさに新しいビジネスモデルがいろいろ出てきていますと。ユーチューブしかり、フェイスブックしかり、ツイッターしかりですね。ですから、そういう成長の芽を摘んではいけないという視点も、森田先生おっしゃったように、大所高所の部分もありますねと。
 それから、フィンガープリントの話なんですが、最近見たアメリカの論文ですと、アメリカのユーチューブではこういうのを開発して、法的義務はないんだけれども、自主的にこういうのを入れようかという議論もあると。ただ、これは初期投資が非常にかかって、ユーチューブ、グーグルグループだからできるのであって、ほかの皆さんがやるとなると大変ですよねという議論もアメリカでも出始めていると。ですから、こういった話も含めて、法規制というよりもう少し大きな話で議論をするというのが今後必要かなと私的には思っております。
 それから、細かい話で、最後に資料3という私の意見書を今回出させていただいて、反映させていただいたんですけれども、細かいところはプロボカティブですから、言いませんが、ちょっと最後だけ、Exhibit1とExhibit2という私の拙考をつけましたが、Exhibit1は大分昔の判例の紹介で、前から言っているRIAA対ベライゾン事件なんですね。
 Exhibit2は原稿としては非常に新しく、これ、即ちベライゾン事件と同じような判例も出ていますよということで、申しわけない、見にくいのは、これはゲラ刷りの段階で提出期限になったので、ちゃんとしたものは、宣伝になりますが、『国際商事法務』に出ています。毎月、連載でインターネット判例、今後まさに一般監視義務は負わないけれども、どこまであるのかというのはグレーエリアですから、この判例の紹介等々を通じて今後も研究してまいりたいと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。

○土肥座長
 ありがとうございます。
 ほかに。宮川委員。

○宮川委員
 今回、プロバイダの責任の在り方についてということで、侵害対策措置の実施を促す仕組みについていろいろここで議論をさせていただきましたが、結論としては、まずは関係者協議の上ガイドラインを策定して、どのような対策をとるかということを決めていくということが前に置かれ、でも、その後さらにこのような措置が実効性をもって実施されていくのかというのをよく見ながら、それがうまくいかなければ、先ほど前田委員もおっしゃっていたように、プロバイダ責任法において一般的な監視義務を負わないものの、状況に応じては結果回避義務があることを規定していくと、そういうことも検討するぞという点を明記していただいているので、まずはこのステップでやってみてはいかがかなと考えております。よくまとめていただいてありがとうございました。
 もう一つは、侵害コンテンツの流通を減らしていくということで、メールアドレス等の個人情報を開示しなくても、警告メールをプロバイダが転送するというような対応もここで議論をいたしまして、そのような対策も検討していただけるということをはっきり書いていただいたのは、とてもいいことだと思っております。以前は総務省の方が、転送するということで個人の情報を使うことも問題があるような観点もあるというようなこともございましたが、それは適法にできるような方向で検討していただけたらなと希望しております。
 以上です。

○土肥座長
 警告メールの転送につきましては、どういう場合に転送が可能なのかということについてよく検討していただくということでございますので、よろしくお願いいたします。
 前田委員、どうぞ。

○前田森員
 先ほどの平野先生のお話と、今の宮川先生のお話は、関係者間協議が先行で、それがうまくいくかどうかがわからない段階ではプロ責法を改正する必要がないというご趣旨のご発言だったのかもしれないのですが、必ずしもそうではないのではないと私は思います。つまり、プロバイダと権利者間の協議を促進するためにも、少なくとも諸般の事情から結果回避義務があると判断できる場合に、その結果回避義務違反と相当因果関係のある損害が発生した場合には、現時点でもプロバイダは損害賠償責任を負い得るのだと私は思います。
 このワーキングの前提では、プロ責法の規定というのは過失責任の原則を規定したものということですから、現在のプロ責法の下でもそういうふうに読めるのかもしれません。現在のプロ責法でもそう読めるんだったら、法改正の必要はないということではあると思うんですけれども。
いずれにしても結果回避義務違反があると、具体的な諸般の事情の下で結果回避義務があると言える場合には、損害賠償責任を当然負うことが前提として必要なのではないか。それはプロバイダと権利者間の協議を促進していく上でも必要なことではないかと思います。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 どうぞ、平野委員。

○平野委員
 あまり各論に入りたくないので。先ほどの各省庁さんのお話からすると、今後、現行法も含めて見直しをという話なので、セットで。ここは解釈の部分で、まだ司法判断も出ていませんし、はっきり言ってグレーエリア。私自身も、アメリカとEUの調査のグレーエリアで、今のファーストインプレッションでは彼らもグレーエリアだと思っていると。一般監視義務はないということは明確に私の意見書にも書きましたが、もう制定法的に規定されているんですね、EU指令とDMCAで規定されていますと。
 だけれども、特定の場合どこまでというのはあいまいで、これは判例も少なくてという世界だと思うんですね。そういう意味では、例えばACTAさんの動向なんかも見ながら、もっと詰めるべきかとは思っていますけれども、時間切れの問題もありますし、各省庁でこれからの話になるのかなという感じを受けております。

○土肥座長
 あと、17ページの迅速な削除手続については、従来から、どなたか承知しておりますけれども、ご意見からすると、かなり謙抑的なまとめになっておりますが、迅速な削除手続につきましては、米国でどのぐらいああいう手続が機能しているかどうかという検討も必要でしょうし、このワーキングチームではこういうまとめにしたいと思っております。
 それから、発信者情報開示についても、先ほどから出ております警告メールの転送の仕組み等について検討していただくわけでございますし、どういう場合にIPアドレス、それから、タイムスタンプといったものを開示できるのか、そういうこともここで検討していただいて、ガイドラインの見直しにつながればというふうに期待をしているところでございます。この点について何かご意見ございましたら、お伺いしたいと思います。
 北山委員。

○北山委員
 1点だけ。23ページの裁判上の開示なんですが、24ページの真ん中の(5)必要な対策についてということで、○が3つ上がっています。この3つの○のうちの一番の最後の○の箇所ですが、第一義的にはここはできたら削除していただきたい、削除は難しいという場合には、例えばこの○の「例えば」以下を「より迅速に発信者情報が開示されることにより、より迅速に権利者の救済が図られる制度」というようにしていただきたいという意見でございます。
 その理由なんですが、まず削除していただきたいというのは、24ページの3つ目の○は、25ページの留意事項の真ん中の○のところに書いてあるのが、今いった24ページの(5)の3つ目の○のところの実態だと思うんですね。だから、ここに留意事項として上がっているので、「必要な対策」からはできたら削除していただけないかなということでございます。これは従前の会議において、座長のほうで「こういう問題は司法全体にかかわるようなことになるとなかなかここに踏み込んでいくことができないから、そのあたりはご了承いただきたい」ということで整理していただいておりますので、今、私が言ったようにしていただくとありがたいということでございます。

○土肥座長
 今、委員のご提案ですけれども、他の委員、いかがでございましょうか。
 森田委員。

○森田委員
 24ページの(5)の3つ目の○ですが、前回の会合の最後で、これは何を検討することなのか明確にしてほしいという要望を私から出しまして、それに対して、この下線部の「やその運用実態」という部分が加わったというのが、それに対する応答だと思います。
只今の北山委員のご発言の前提となっているのは、ここで検討するというのは、被告を匿名のまま訴訟を係属させる仕組みを、民事訴訟法を改正して日本でも導入することを検討するという趣旨であるという理解に立った上で、この部分全体を削除して欲しいということだと思いますが、この部分を残すべきかどうかという議論に入る前提として、そもそもこの部分が何を言おうとしているのかが、依然としてよくわからないところです。
 「その運用実態」という語句が加わったことによって、前回と何が変わったのか、その点が少なくとも私にはよくわからないので、まずそのあたりの説明をお願いしたいと思います。

○土肥座長
 すみません、事務局、お願いできますか。

○奈良参事官
 具体的にこれまで議論がなされていたのは、例えば匿名訴訟でありますとか、ディスカバリーによる開示ということなどが議論されていたかと思いますけれども、何を検討するのかというところにつきましては、おっしゃるとおり必ずしも合意できているところではないかと思います。ただ、実際に裁判手続を起こそうと思ってもなかなか難しいという指摘があるところは事実かと思いますので、例えばということで例示を掲げさせていただきましたけれども、裁判の中でも改善できるところがあるのではないかというところの指摘があったという趣旨で、この旨を記載させていただいております。
 さらに、北川先生のご趣旨にございましたけれども、その点につきましては、最後の行で「慎重に検討することが必要だ」ということで、その趣旨を込めたつもりでございます。

○土肥座長
 北川委員がそもそも最初にご発言になった部分でありますけれども、今、事務局が説明をいたしましたように、一つは、「例えば」という例示で上がっていて、「ただし」で受けて、「慎重に検討することが必要である」と、そういう一気通貫で読んでいただいたときにもやはり問題ありますか。

○北山委員
 やっぱり「ただし」が入っているのでわからないわけではないんですが、できたら今言ったようにしていただけるとありがたいなと。

○土肥座長
 わかりました。事務局と検討させていただきます。
 ほかにいかがでございましょうか。

○森田委員
 いまの点は、慎重に検討する中心となるのは、やはり匿名訴訟なのでしょうか。「例えば」以下の文章で、「裁判手続の中で容易に発信者を特定できる」というのが、現行のプロバイダに対して発信者情報を開示せよという裁判手続を指しているとすると、これは既にあるわけですから、そのような制度の導入を検討することは考えられないところです。したがって、ここで検討すると言っているのは、それ以外のものを考えていると読むほかないわけです。そうすると、匿名者を相手に訴えを提起することによって裁判手続は係属して、その裁判手続の中で匿名者を特定するということになると、これは匿名訴訟を前提とした制度ということになります。
 したがって、論理的な可能性として、ここでいう制度というのは、匿名訴訟以外には考えにくい文章になっているわけですが、それ以外に何がありうるのかがよくわからないわけです。さらに、「運用実態」というのを加えることによって何を意図したのかも、よくわかりません。運用実態によっては、法制度としては匿名訴訟を認めてないような国でも、実際には運用として匿名訴訟を行っているというような実例があるということなのか。そうではないとすると、やはりよくわからない文章だと思います。

○土肥座長
 そこは、恐縮ですけれども、座長に一任していただいて、事務局と相談の上取りまとめをさせていただければと思います。

○奈良参事官
 すみません、先ほどの御質問に答えていなかったので。「運用実績」というところにつきましては、いろんな諸外国の手続がありますけれども、そもそも諸外国と我が国は司法制度が違うという面もございますし、実態としてそれがどう機能しているかという面もございまして、むしろそれは慎重に進めるという意味で、そのあたりをじっくり検討したほうがいいという趣旨を含めているわけでございます。そういう意味で、直ちに今すぐ検討の俎上に乗るということではなくて、ここはいろんなことを併せて慎重に検討するということでまとめさせていただいたつもりでございます。

○土肥座長
 今の点は別にいたしまして、全体としては、本日、事務局から説明があった資料1の内容に基づいて、ワーキングチームの取りまとめの方向性としてまとめたいと思いますけれども、よろしゅうございますか。
 どうぞ。

○大谷委員
 これまでの議論をうまく整理していただきましたことにまず感謝を申し上げたいと思います。
 そこで、法制度を含めた長期的視野での検討というか、検証といったものも並行して進むということですが、侵害対策措置についてはもちろん引き続きの課題だとは思いますけれども、その周辺の課題として、海外の制度で機能していること、逆に機能していないことの検証などもしていただきつつ、例えば米国の復活要求制度ですとか、あるいは、裁判を受ける権利を保障するためにすぐに開示できないとしても、IPアドレスなどの情報を一時的に保全しておくというようなことですとか、周辺の幾つか課題として一度か二度は議論に上がったようなものについても、それが実際の運用にどれくらい影響を与えるものなのかというようなファクトを積み上げていくというか、事実関係についての調査、それから、関係する者の間での情報共有といったことが引き続き進むような仕組みをこれから維持していただきまして、その上に立ってガイドラインを中心とした取組が円滑に進んでいくようにぜひご支援をいただきたいと思っております。
 特に気になっている点としましては、今まで何度か発言させていただいたことの繰り返しになりますが、権利侵害といっても、例えば名誉毀損とか、プライバシーといった、プロ責法が広く対象としている民事責任全般に与える影響なども勘案しながら、ご検討いただきたいということで、最終的には取りまとめの中にも入れていただいた項目ですけれども、その点については特に引き続き意識していただきたいポイントと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○土肥座長
 奈良さん、今の要望を受けて何かありますか。

○奈良参事官
 おっしゃっている趣旨は、留意点のところ等にも、若干ではございますが、書かせていただいたつもりでございますし、引き続きその点には留意したいと思っております。

○土肥座長
 それでは、ごく一部、ご意見を頂戴した部分については座長一任ということにさせていただいて、その余の部分については皆さんご了解いただいていますね、この方向性について。
 ありがとうございました。
 それでは、そのように進めさせていただきたいと思いますので、今後、事務局におかれましては、この方向性についてぜひ推進していただければと存じます。
 時間的にはまだ若干あるんですけれども、よろしければ、最後に局長からごあいさつを頂戴して、本ワーキングチームを閉めたいと思っております。

○近藤局長
 ありがとうございます。近藤でございます。このワーキンググループで5回にわたって非常に突っ込んだ議論をしていただきました。実質的には7回ですかね、突っ込んだ議論をしていただいたことを心から感謝を申し上げます。
 インターネットの世界はとりわけ技術が本当に速く進んで、なかなか規制が追いつかないという実態があります。また、日本国内だけではなくて世界が相手であると、また非常に裾野の広い、対象の広いものであるという難しい点がございますが、きょうのここの議論でもまずやるべきことはきちっとやろうということを明確にしていただいて、その後、並行してこういうことも勉強したり、諸外国の状況も見ながら検討しようじゃないかというご提言をいただいたことを心から感謝する次第であります。
 先ほど政務官からもお話をいたしましたが、コンテンツの関係のワーキンググループ、さらには、コンテンツの関係の専門調査会、そして、競争力の調査会、そういったところでの議論を踏まえて、私どもの知的財産の戦略をつくってまいります。さらに、それを我が国の成長戦略につなげていきまして、これから少子・高齢化の中でも日本がめしが食っていけるように、どういう道を歩むのかということにつなげていきたい、こんなふうに思っている次第であります。
 このワーキンググループも一端ここで、きょう取りまとめをいただきますが、まだ、引き続きご議論いただくことがたくさんございます。4月以降もまたお力をお借りしなければいけないと思っております。本当にお忙しい中、ほとんど講師謝金も払うことなくお願いをしていることを改めておわびを申し上げながら、また引き続きよろしくしたいと思います。
 また、各省がこういう形で参加しているというのも非常に珍しいケースでありまして、まだちょっと借りてきた猫のように各省は黙っていますか、各省もこれからはもう少し発言をしてもらって、議論をさらに深めたいと思っているところでございます。
 改めまして、このワーキンググループの取りまとめに当たりまして、心からの感謝を申し上げてお礼のごあいさつにしたいと思います。本当にありがとうございました。

○土肥座長
 局長、どうもありがとうございました。
 それでは、今後のスケジュールについてお願いします。

○奈良参事官
 次回以降でございますけれども、できるだけこのようなタイトではスケジュールではお願いしようにとは思っておりますけれども、これ以外の課題についてご議論いただきたいと思っておりますので、日程をまた調整してご連絡を差し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○土肥座長
 それでは、本日はこれで閉会いたします。ありがとうございました。
午後2時22分 閉会