知的財産政策ビジョン検討ワーキンググループ(第4回)



日時 : 平成25年4月12日(金)14:00〜16:00

場所 : 知的財産戦略推進事務局会議室(フレンドビル7F)

出席者 :
【委員・本部員】妹尾座長、中村座長、足立委員、荒井委員、角川委員、川上委員、 久夛良木委員、國領委員、高橋委員、野間口委員、村井委員、山口委員、 奥山本部員、宮川本部員、山本本部員
【事務局】内山事務局長、山根次長、作花次長、畑野参事官、木村参事官、安田参事官  林企画官

  1. 開会
    山本大臣より冒頭ご挨拶
  2. 議事(知的財産政策ビジョン(案)について)
    事務局から主に資料1をもとに概要を説明した後、自由討議。
    委員等の発言概要は以下のとおり。

    【競争力強化・国際標準化関連】
    ○村井委員
    ・ グローバル知財システムとの記載があるが、この言葉中のグローバルはアジア地域を意識しているように見受けられる。2013年の課題として、アジア地域を意識するのは重要だと思うが、知的財産政策ビジョンは、今後10年を見据えた視点を持って議論すべきものであるので、アジア地域だけでなく、全ての地域を意識したグローバルな視点が重要である。

    ○野間口委員
    ・ 現代はオープンイノベーションの時代であるので、産学官連携はこれからますます重要になってくる。特に国費を投じた大きなプロジェクトの成果としての知的財産をどうマネージするかが重要となってくる。例として、官民連携の知財ファンド的なものの活用が考えられるが、こういった観点を産官学連携機能の強化の観点で読み取れるようにするべきである。
    ・ コンテンツパートでACTAの話が出てきているが、模倣品には優れた部品や材料といった領域もあるので、競争力パートにおいても、ACTAの活用、広がりを促すような観点を入れ込むべきである(中小企業の経営者はコンテンツパートを読まない可能性があり、また、せっかく競争力パートに模倣品に対する記述があるので、ACTAの活動の重要性を指摘しておくべきである)。

    ○荒井委員 
    ・ 「中小・ベンチャー企業」パートについて、「中小・ベンチャー企業にとって更に利用しやすく」という記載から「更に」を削除するべきである(現状利用しやすいものではない)。
    また、「広く減免対象とする制度に」の部分に「シンプルで効果的」という文言を追記し、方向性を出していくべきである(シンプルで効果的なものであればベンチャーの人々も歓迎する)。
    ・ これからの10年をみたときに、グローバルの観点はアジアだけでなく、知財先進国も含めていくべきである。これからいろいろな分野で新しいルール作り(条約等)が始まり、特に標準など情報関係などでいろいろな問題が発生すると思われる。したがって、先進国も視野に入れ、日本が国際的なルール、法律、あるいは条約、そういうもののモデルになるものを総合的に作ることが、「国際知的財産システムを、我が国が知財先進国としてイニシアチブをとって構築していく」ということではないだろうか。
    またこの観点はコンテンツパートについても言えることである。

    ○山口委員 
    ・ 「中国語特許文献の急増」についての対応策として、日本側の対応策が記載されているが、これはこれで大事だとは思うが、同時に国際的なルール作りの観点で、こういう審査対象になるような文献については、自国語と国際公用語に近い英語と2つのバージョンを作るといった国際ルール作りを行っていくべきである。
    ・ 紛争処理に関して、EUの中の1国で特許侵害訴訟に勝訴したとき、その相手方が隣国に逃げて同じ侵害を繰り返されている。これを解消するにはEUに対して、侵害訴訟の解決について一元化をさせることが有効なので、そういった観点も盛り込むべきである。

    ○足立委員 
    ・ 職務発明について、産業競争力に資するという目的事項を追記したこと及び、「使用者と従業員との契約に委ねて産業の競争力に資する措置を講じる」並びに「法人帰属」にするなど、明快な記載に修文されており、この観点について今後とも議論を進めていただきたい。

    ○山本本部員 
    ・ 職務発明について、雇用関係のない学生の発明について、素案の「取り組むべき施策」では「職務発明以外の自由発明」と定義しているが、国のお金で大学の設備を使った発明に対して、雇用関係のない学生が関わった場合にも職務発明の対象になり得るのかどうか検討を行っていただきたい。例えば外国人留学生が発明に関わった場合、日本の技術は国の資金で行われていても、大学の設備を使っていても、持ち帰ることが可能になってしまう。

    ○妹尾座長 
    ・ 職務発明以外の自由発明の記載について、「促進させる」との記載があるが、「措置を講ずる」とまで記載するかどうかは検討する必要がある。

    ○奥山本部員 
    ・ 村井委員・荒井委員の意見のとおり、グローバルの視点についてやはり欧米が抜け落ちている。日本がアジア新興国に働きかけをするような記載だが、知財先進国間で協調していかないと上手くいかない。グローバルの視点を冒頭にはっきり出すこと及び、アジアの新興国についても「先進国間の協調努力」ということを追記すべきである。

    ○妹尾座長 
    ・ 新興国の知財先進国化を加速するために先進国連携は必要だと思うが、一方で、先進国競争、先進国間の産業競争においては新興国と知財連携をするというモデルも動いており、アジアと直接連携することの方が他の先進国との競争力関係上は重要だということも認識しておかなければならない。

    ○山本本部員 
    ・ EPにグレースピリオドの導入を働きかけるといった記載を行うことはできないだろうか。
    アメリカも先願主義に変わり、EPがグレースピリオドを認めれば、大学の先生はどこで発表しても日米欧では特許を取得することができ、また、発表した後に産業界がこの技術は面白いと思えば日米欧に市場化を抑えられるという意味では産業のメリットも大きく、大学の先生も出願するまで発表を待たなくていいというメリットも生じる。

    ○村井委員 
    ・ 「世界で戦えるグローバル知財人財の育成」とあるが、知財人財というのは戦うものだけなのかという気がする。「活躍できる」などの文言を用いるべきである。

    ○足立委員
    ・ パテントボックス制度が今回書きこまれていないのは大変残念である。知的創造サイクルの充実・円滑化のために大変重要であり、この制度は必要である。今後10年を見据えているのだから、こういうものを検討するというぐらいのことは書き込むべきである。

    【コンテンツ強化関連】
    ○村井委員
    ・ 文化資産のデジタル・アーカイブ化の促進について、日本の知財戦略としてデジタル・アーカイブ全体がどうなっているか、全体を把握する必要があるのではないか。全省庁にまたがる視点のアプローチが必要で、役割としては内閣官房となるのではないか。

    ○荒井委員
    ・ コンテンツの輸出、海外展開について、取組の一番の主体であるビジネス関係者を記載すべきではないか。
    また、取り組むべきことは輸出や二次利用を前提にした契約の推進であり、モデル契約みたいなものを作って、コンセンサスを作りやすくし、輸出展開、二次利用をしやすくするべきではないか。
    アメリカは映画や放送番組の輸出が非常に多い。日本の法律はあまり遜色ないのだが、運用がうまくいっていない。権利処理については、権利処理の一元化ができなくても契約で対応できる部分があるのではないか。他国との競争の中で日本もスピード感を持って取り組んでいく必要がある。
    また、ここでは放送番組だけ記載されているが、映画などコンテンツはいろいろなものがあるので、放送番組以外も含めて取り組むことが必要ではないか。

    ○角川委員
    ・ 健全なアジアにおけるコンテンツ市場の育成が非常に重要である。日本の文化を受け入れている人というのは知的水準の高い層だとか、限られているところに日本の文化を受け入れる人が集まっている。その人たちが一時的なファンになってしまって、クールジャパンも一時的なブームで終わるという危険性がある。市場の育成と、現地における日本文化の指導者の育成に取り組む必要があるのではないか。
    日本の文化施策というのは、日本の文化人を向こうに送るということに力点が置かれてきたが、逆に現地の指導者層や学生をもう一度日本に呼んで、その人たちを学校の指導者層として育成していくということが非常に重要ではないか。
    ・ ACTAについては、EUでは議会で否決されたという状況にあるが、推進していかなければいけないという書きぶりがほしい。また、ACTAをTPPで取り上げるべきではないか。

    ○久夛良木委員 
    ・ プラットフォームの形成の推進について、ここでOSやブラウザなど、プラットフォームと言われるものが幾つか挙げられているが、今後10年を見据えた時に個々のOSがプラットフォームになるのではなくて、もっと別の競争になるだろう。フェイスブックやグーグルといったプラットフォームをも凌駕する新たな大きなプラットフォームが今後生まれ、新たにそこで生まれる競争力というものが必ずある。その時に我が国の取り組むべき施策として、これまでのコンテンツだけでなく、10年先を見据えた強力な戦略の必要性を記載する必要があるのではないか。
    例えばここに記載されているようなスマート端末のOS競争などはあっという間になくなり、包括的にもっと大きなサービス群としてまとめ上げるような新たなプラットフォームを具体的に仕掛けようとしている人たちが、欧米だけでなく中国でも同じようなことが考えられていて、我々がその上のプレイヤーだけでいいのかということを危惧している。

    ○國領委員 
    ・ プラットフォームが非常に重要であり、ビジネスモデルが変化していく中でどのくらいついていけるのか、往々にして既存の制度が新しいビジネスモデルの創出を妨げることもあるので、新しいビジネスモデルがどんどん創出できるような柔軟な制度設計が何なのか、しっかり考えていく必要がある。

    ○村井委員
    ・ 「はじめに」のところの「マルチスクリーン」という言葉の定義が曖昧である。「多様な表示デバイス」とした方が明確ではないか。 ・電子化が進む中、日本語の縦書きをどう取り扱うかという議論が必要ではないか。

    ○角川委員
    ・ 縦書きの文化について、民間の人たちの頑張りによりEPUB3という世界標準の中に縦書きが位置づけられた。これは非常に価値のあることである。それまではフォーマットが何種類もあって、あるところで買った電子書籍が他では読めないといった問題があったが、EPUB3により他の端末でも読めるようになった。政府もEPUB3を支援し、今後も縦書きの文化について堅持していく働きかけをするといったことが必要ではないか。

    ○國領委員 
    ・ コンテンツの中に著作物的な話と、データという話が混在しているように感じる。今まで言っていたコンテンツ、つまり著作物系の話がUGCで変化するという話の一方で、今までだと著作権すらないかもしれないいろいろなセンサーデータやビッグデータが経済的価値を持つという話もあり、UGCや公共データ、教育コンテンツ、そういったものが混在しており、整理することが必要ではないか。

    ○足立委員
    ・ 電子書籍の普及促進について、前回電子出版権の新設という経団連の提言を提示したが、出版権の拡大による模倣品対策という方向性が示されている。これについては、文部科学省の文化審議会でも検討を開始するとのことであるので、早急に結論が出るように知財本部としても強力なサポートをお願いしたい。経団連としても、引き続き、電子出版権の新設も含めて著作者と出版社、ユーザーの関係によってよりよい著作権法の在り方について検討を深めて参りたい。

    ○川上委員
    ・ これからはパッケージ型のコンテンツではなくて、クラウド上に存在しているコンテンツがビジネスチャンスを持つようになる。今後拡大するマーケットということを考えるなら、ソーシャルゲームのようなユーザーとの関係性をふまえた新しいタイプのコンテンツにどう対応していくのかということを考える必要がある。ここでは、プラットフォームとコンテンツが分離された書き方になっている、つまりコンテンツはコンテンツで頑張る、プラットフォームはプラットフォームで取りに行くということだが、この考え方はおそらく間違っていて大きなプラットフォームは日本は取れない可能性が高い。そこで必要となるのがコンテンツそのもののプラットフォーム化である。コンテンツとプラットフォームが別だという考え方ではなくプラットフォーム事業者が担っている機能をコンテンツ業者の方に委譲するような形が必要となるのではないか。
    ・ デジタル・アーカイブは非常に重要であるが、昔の作品だけでなく、新しいタイプのコンテンツ、従来ではアーカイブ化できないと思われるインターネットのコンテンツも日本が先駆けてアーカイブ化してはどうか。LINEにしても、ソーシャルゲームにしても、10年後、20年後はサービスを受けられない。着メロも100年後は残っていない。それらは、パッケージ型コンテンツと違ってアーカイブは非常にしにくいが、そういうものの記録を何らかの形で残すということは、将来そういう新しいクラウドコンテンツで勝負しようとする日本にとって重要な資料となる。過去の学術的な資料というのではなくて攻めるための資料になるはずである。

    ○角川委員
    ・ 漫画と同様に、ソーシャルゲームのコンテンツが散逸されるのではないかということが危惧される。国会図書館がそういうところまで範囲を広めて収集することも検討すべきではないか。
    ・ 巨大プラットフォーマーが顧客の囲い込みによってそれぞれの分野、OSのアプリ事業者やコンテンツ事業者に対してプレッシャーをかけているということがある。今ヨーロッパではドイツなどを中心にしてプラットフォーマーに対する独占禁止法という問題が出てきている。日本の公取が、プラットフォーマーが健全な文化の育成に阻害することがないのかどうかということも検討するような働きかけをするということも検討すべきではないか。

    ○高橋委員
    ・ 第3、第4の柱においても、第1、第2の柱で論じられているように、ベンチャーに関する記述が必要ではないか。具体的には、「コンテンツ産業の市場拡大に向けた環境醸成」、こういったところでベンチャーへの支援のスタンスを打ち出すなど、4つの柱がお互いに全部つながっていることを示すべきではないか。

    【全体】
    ○野間口委員
    ・ 本ビジョンは10年間これで打ち止めということではなくて、適宜新しい知恵も入れて見直していく必要があるということを、「はじめに」のところか最後のまとめに入れて、将来これはどんどん進化していくものだというニュアンスを出すべきではないか。

    ○中村座長
    ・ 川上委員、國領委員がおっしゃったコンテンツが変わっていくという視点は非常に重要である。ビッグデータもあれば、ソーシャルゲームのようなユーザーの関係性を生かしたコンテンツもあり、コンテンツのジャンルそのものがこれから10年かけて変わっていく。それから久夛良木委員がおっしゃった競争領域の変化、新しいレイヤーやビジネスモデルになるかもしれないということを想定して、あるいはそれに先駆けるという視点も重要である。

    ○妹尾座長
    ・ コンテンツとテクノロジー系、ものづくり系が同じ動きだということが明らかになってきたということが最大のポイントではないか。従来、ものづくりは製品を作って競争力を高めるということであったが、今や商品競争力は製品だけでは可能ではないという時代になった、つまり何が価値を生むのかというのはまったく変わってきたというのと同様に、コンテンツでも同様のことが起こっており、両者が融合するところでどう見るのかが重要である。

    以上の議論の後、妹尾座長より、概ねワーキンググループとしての議論が出たこと、本日の議論をふまえて事務局と必要な修正を行うこと、最終的な取りまとめについては妹尾座長、中村座長にご一任いただくことが提案され、了承された。また、ワーキンググループとしてとりまとめたものを、知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会及びコンテンツ強化専門調査会へ報告する旨報告された。
  3. 閉会
    内山局長よりご挨拶

以 上