知的財産政策ビジョン検討ワーキンググループ(第2回)



  1. 日時 : 平成25年2月26日(火)10:00〜12:00
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】妹尾座長、中村座長、荒井委員、角川委員、久夛良木委員、國領委員、高橋委員、野間口委員、渡辺委員、相澤本部員、里中本部員、中島本部員、中山本部員、三尾本部員、山本本部員
    【事務局】内山事務局長、山根次長、作花次長、畑野参事官、木村参事官、安田参事官
  4. 議事 :
      (1)開会
      (2)今後10年の知的財産政策のビジョンについて
      (3)その他
      (4)閉会


○中村座長
 おはようございます。
では、ただいまから「知的財産政策ビジョン検討ワーキンググループ」第2回の会合を開催いたします。御多忙のところ、お集まりをいただきまして、どうもありがとうございます。
 本日は私、中村が進行役を務めさせていただきます。
 今回のこのワーキンググループでは、今後10年の知的財産政策ビジョンの策定に向けた議論を行うこととしております。
本日は、足立委員、川上委員、村井委員、山口委員から御欠席の連絡をいただいております。
また、知的財産戦略本部員から、相澤本部員、里中本部員、中島本部員、中山本部員、三尾本部員、山本本部員に御出席をいただいております。ありがとうございます。
では、今後10年の知的財産政策のビジョンについて議論をしたいと思いますので、まずは事務局から説明をお願いします。

○畑野参事官
 中村座長、ありがとうございます。
 それでは、私、畑野のほうから本日の配付資料の確認方々、冒頭の御説明ということで10分ほどお時間をちょうだいしたいと思っております。
 右肩に資料番号が付されております。本日の議論の材料でございますけれども、資料1、資料2の2つが中心になろうかと思います。大変大部の資料でございますが、お付き合いの方、よろしくお願いしたいと思います。それは後でまた私のほうから簡単に中身を御説明申し上げます。
 それでは、資料3でございますけれども、こちらはせんだって1月25日に開催されました本ワーキンググループの第1回の議論の取りまとめということでございます。発言された各委員の方々には、事前にお目通しをいただいておりますので、御確認いただければと思います。
 資料4は枝番が付いておりますが、資料4から一番最後の資料10で合計7種類の資料がございます。こちらは各委員のほうから御提出をいただいた資料でございます。本日出席の委員の方から提出していただいているもの、本日御欠席でございますけれども、ペーパーの提出で意見にかえるといったような御希望の委員もいらっしゃいました。本日御出席の委員のペーパーにつきましては、御本人のほうから後ほど御発表があるかと思いますので、私のほうから、後で本日御欠席の方々の内容だけ簡単に御紹介をさせていただきたいと思っております。
 本日は説明からは省きますけれども、参考資料が2種類ございます。参考資料1はせんだって國領委員から過去10年間、この知財という分野でどういう変化があったのか。数字に落とせるものについて集めて紹介をしてもらいたいといったような御要望がございました。必ずしも國領先生の御期待に沿っているものかどうか自信はございませんけれども、拾えるデータで歴年、できれば10年くらい前から追えるもののデータといったところで集めてみたものでございます。後ほど御議論の際に資料となれば、幸いでございます。
 参考資料2は今後のスケジュールでございますので、こちらはこの会議の一番最後に私、畑野のほうから御案内をさせていただきたいと思います。
 このまま続けさせていただいて、よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、資料1、資料2、資料4以下につきましては先ほど申し上げましたように、本日欠席されている委員の方の御意見の御紹介を申し上げたいと思います。
 資料1、資料2についてでございます。本日の資料を通じまして、あるいは御議論を通じまして、本日、事務局として各委員の方々に議論をしていただきたい、あるいは議論を深めていただきたいポイントをまず御紹介申し上げたいと思います。3つ御紹介をさせていただきたいと思います。
柱の立て方でございます。具体的に申し上げますと、例えば資料1でございますが、大きく2つのナンバーが記されていると思います。「1.産業競争力強化のためのグローバル知財システムの構築」、「2.中小・ベンチャー企業の知財マネジメント強化支援」といったような大きな項目の立て方をしていただいております。
資料2の目次をごらんいただきますと「1.デジタル・ネットワーク社会に対応した環境整備」、「2.クールジャパンの戦略的展開」、こういったような大きな柱の立て方をさせていただいております。
申し遅れましたが、資料1はどういう資料かと申し上げますと、これまでこのワーキンググループは1回でございますが、競争力専門調査会をこのサイクルに入って2回こなしました。それを踏まえた資料という形になっております。資料2は、コンテンツ専門調査会、このワーキンググループの第T回の議論を踏まえた資料の構成という形になっております。
戻りますけれども、本日御議論いただきたい3つのポイントのうちの1つは、今の柱の立て方ですね。合計4つございます。これがゆくゆくは、このビジョンの第1章、第2章、第3章、第4章といったような組み立てなっていくといったようなことを念頭に事務局は資料をつくっております。このような柱の立て方がよろしいのかどうなのかといったことについて、御議論をいただきたいというのが第1点でございます。
第2点が、それぞれの柱につきましての基本的な視点をどう置くかという話でございます。具体的に申し上げますと、資料1の2ページ目でございます。こちらは先ほど申し上げました、比喩的に申し上げれば、その第1章ということになりますが、「1.産業競争力強化のためのグローバル知財システムの構築」、こういった課題を考える際の基本的な視点、視座でございます。1ページにまとめさせていただきました。このような基本的な視点の置き方ということで、果たしてよろしいのかどうなのかといったようなことでございます。これにつきましてが、本日御議論いただきたい2つ目のポイントという形になろうかと思います。
今、申し上げました1番目の章立て、2番目の基本的な視点につきまして、できれば本日の議論で、先生方の議論の集約といったところまで話を進めていただければと思っております。
3番目のポイントは、次回以降のワーキンググループでの話との関連でございます。例えば資料1の3ページをごらんいただきますと「(2)施策方向性」という文字が見えます。こちらは第1章の知財システムの構築というキャプターをさらに構成するそれぞれの課題を記しているものでございます。
 まず、グローバル知財システムの構築でございまして「【課題1】海外における知財取得支援」といったような課題を設定させていただきました。四角の枠囲みがそれをもう少しエラボライトした課題の記述という形になっております。
 その後いろいろなデータ、ファクトが並んでおります。こちらのほうは、きょうの資料で少し付加価値をつけさせていただいているものもございますけれども、これまでのワーキンググループあるいは専門調査会のほうで御紹介させていただいたデータといったものも、あわせて記載させていただいております。
 ポイントはその課題につきまして、6ページ、アジアの図が描かれているページでございます。この課題につきまして、今後の検討の方向性といった枠囲いをさせていただいております。この課題につきましては、3つのポツが並べてあります。いちいち読み上げませんけれども、ごらんいただいておわかりのとおり、いずれも何とかするべきではないかといったような問いかけで、きょうは御提示をさせていただいております。
きょうの議論の3つ目のポイントで議論を深めていただきたい点は、この何とかすべきではないかといったような問いかけを、できれば次回のワーキンググループの資料では、何とかするべきだ。もう少し、そのするべきだという中身につきまして、具体的なアイデア、施策の中身もさらに充実をしていきたいと思っております。これから関係省庁、関係団体とも事務局は議論をする予定ではございますけれども、できますれば、きょうの限られた時間の中で、この検討の方向性につきまして、より肉付けをして、さらにこれをどんどん進めていくべきだといったような形で、私ども事務局の背中を押していただく。こういったような御議論を展開していただけると大変ありがたいと思っております。
まことに手前勝手ということではありますけれども、今、申し上げました3つの議論のポイントに加えまして、きょう資料として用意できなかったもので、1つ議論をいただければと思っております。これはかねてから妹尾先生から御指摘をいただいている点でございます。
資料1の競争力関係のテーマと資料2のコンテンツ関係のテーマということで、専門調査会に分けて議論を進めさせていただいておりますが、この10年の総括、今後の10年の展開ということを考えるに当たっては、この資料1と資料2の壁、言い換えれば、コンテンツと専門調査会の事務局あるいは本部のほうで取り組んでいる今の仕事のやり方といったことも含めて、より資料1と資料2をどういったコンセプトでつないでいくのかというところ。
これから次回のワーキンググループまでの間には、事務局のほうも必死に考えたいと思いますけれども、この2つの資料をつなぐブリッジは一体何なのだろうかといったことにつきましても、これは資料をきょうは用意できなかったのでまことに恐縮ではございますが、先生方の御議論を深めていただければよろしいのかなと勝手ながら思っておりますので、そこら辺もよろしくお願いしたいと思っております。
以上が資料1、資料2でございます。中身につきましては、事務局から各委員に事前に1〜2週間あらかじめ回させていただきまして、資料のほうはお渡ししてございますので、きょうは特に御関心の強いところでテーマをそれぞれお選びいただきまして、御議論をいただければと思っております。
資料4〜資料10まででございます。これは各委員からのプレゼンメモで御用意いただいているものでございます。繰り返しで恐縮ですけれども、本日御出席をいただいている委員の方は、後でこのペーパーに基づいてのプレゼンを期待させていただくということで、きょう御欠席の委員のペーパーにつきまして、簡単に御紹介させていただきたいと思います。
資料5でございます。本日御欠席の足立委員からの意見でございます。こちらは足立委員が務めていらっしゃいます経団連の知的財産委員会が1週間ほど前でしょうか。2月19日に経団連さんの知的財産政策ビジョンを策定したということでございますので、こちらを本検討ワーキンググループのぜひ参考にしていただきたいといった要望をあらかじめ承っております。概要で十数ページの提言のポイントが1枚にまとめております。これもまた御議論をいただきながら、本日の議論に臨んでいただければと思っております。中身につきましては説明を省略いたします。
資料6は荒井委員、資料7は角川委員、資料8は高橋委員からのペーパーでございます。
資料9は、本日御欠席の山口委員から御提示のペーパーでございます。山口委員にも事前に御説明の機会をいただきまして、本日の議論の事務局としてのお願いを申し上げさせていただきました。山口委員のほうからは、それぞれの課題、今後の検討性の方向でかような肉付けをされたらいかがかといったような御意見をちょうだいしておりますけれども、山口委員のほうからはそれに加えまして、2枚紙の1枚目の1ポツを強調されておられました。
「1.産業競争力強化のためのグローバル知財システムの構築」で、これまでこの検討の最中で少し抜けている論点ではないかということでおっしゃっておられましたのが、この知財面での教養あるいは教育をできれば若いうち、ないしは幼いうちからきちんと根づくように仕組みを考えてもらいたいということでございまして、特に1ポツに合計6つありますが、最初の2つないしは3つのポツです。初等教育段階あるいは大学教育といったところにおいて、きちんとこの知財といった話が根づくような工夫をしてもらいたい。こういうところが広く知財の重要性を理解してもらうところで重要ではないかといったような話を私が事前に御説明をさせていただいたのですけれども、強調されておられました。このところをぜひ紹介してもらいたいといったようなメッセージを預かっておりますので、御紹介させていただきたいと思っております。
資料10は中島本部員からのペーパーでございますので、後ほどお話があろうかと思います。
長くなりましたけれども、冒頭の説明というところで御紹介をさせていただきました。ありがとうございました。

○中村座長
 どうもありがとうございました。
きょうは、この先はもうシナリオがありません。先ほど説明がありましたように、産業競争力とコンテンツの2本柱で、それぞれ2つのトピックというツー・バイ・ツーの各論をこなしていくということでございます。
また、この2つをどのようにまとめて1本のビジョンに組み立てていくのか。ブリッジも重要なテーマだという説明がありました。委員の何名かの方々からはペーパーもお出しいただいていますので、それも今日の議論の中で皆さんに御紹介をいただければと思います。
後で時間があれば総論をやろうと思っていたのですが、この各論、資料1、2に入ります前に、総論的に御意見がある方がおられれば、まず出していただければと思います。いかがでしょうか。

○妹尾座長
 おはようございます。きょうは座長は花粉症で悲惨な私ではなくて、中村先生にやっていただいているので、私は委員として発言をさせていただこうと思います。総論ということなので、私が総論をさせていただきます。
 事務局の用意した案は、さらに柱建てを工夫されているのですけれども、基本的な考え方を皆さんと擦り合わせをしておきたいと思います。それは何かというと、これは過去10年の総括、今後10年の展望ということは、10年前は前提として何を考えていたのか。現在はそれがどう変わったのか。10年後にはどう変わっていくのか、どう変わるべきなのか。これを明確に対比させければいけないと思っています。その前提のコンセプトやモデルとか世界観の対比表をぜひ事務局につくっていただきたいと思います。
 それがなければ、施策は何ら変わりがないではないかとか、あるいはそうではないのではないかと、といった批判を受けかねない。10年前に知財立国をやられたときと状況が様変わりしているわけですから、それについての総括と見通し、10年後はどうなっているか。これをきちんと前提条件といいますか、前提になる考え方を整理しておかないと、また単に施策をくっつけただけかという批判を招くおそれがあるだろうと私は思っております。
 総論的に私の考えを申し述べます。10年前はどうだったかというと、技術基点型モデルを前提にしていた。すなわち知的創造サイクルで技術をつくって権利化して活用するとする、このモデルを前提にイノベーションが進むのだと思っていた。ところが御存じのとおり、スティーブ・ジョブズはそんなことはやらなかった。アップルで出てきた技術を活用するためにiPodをつくったわけでは全然ない。すなわち全く逆に、まず価値を形成して、それを競争力のデザインに落として、知財を調達するということをした。ここで知財と言っているのは技術も権利も含めてです。つまり、全く逆回しのモデルで動いてきた。これが現在ですね。
 10年前は、知財の権利化に重点を置くことが知財力全体を高めるという前提になっていた。しかし、今は活用力のほうがはるかに重要になってきている。さらに言うと、人材についても国際化という、日本の人材がいかに国際化をしていくか、を議論していた。しかし、今はそうではなくて、グローバルな人材、アフリカの方だろうが中国の方だろうが、どこの方だろうが活用すべきだと変わってきている。
 こういうふうに全ての前提条件が変わっていることを明示的に出すべきだと私は思っています。
なぜか。理由は大きく分けて2つあります。1つは、デジタル・ネットワーク社会が想定以上に加速してきている。もう一つは、今まで前提にしていたG7の7億〜10億の世界市場が現在はG20プラスBOP(ベース・オブ・ピラミッド)の40億〜50億人の市場に変わってきた。こういうことになります。
結果的に何が行われているか。今や、競争と呼ばれているものは、既存のレイヤー内のお互いの競争ではない。産業生態系をまたがるレイヤー間の主導権争いに全く変わってきている。アップル、アマゾン、グーグル、インテル、マイクロソフトが生態系を形成している。ソニー、パナソニック、シャープ、サムソンが実は全部弾き出されて、従属関係に入っていることを直視しないと、もう何もできないということだと思います。そういう意味では我々は、少し総論に走るかもしれませんけれども、総論として状況の分析をきちんとしておかないと、また施策の羅列に終わってしまうという懸念があると思います。
資料4−1と4−2をごらんいただきたいのですが、資料4−1に関しては、私が会長を拝命しております、知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会のほうで前回出させていただいたペーパーを少し改訂したものであります。この内容をもう一度繰り返しはしませんが、ここで共通すべきは2点あると思っています。
1つは、新興国が模倣するという前提での議論はもう少ないということだと思います。しかしながら、どうするか。新興国の知財先進国家を果たさなければいけない。そうしたときに初めて日本の企業が新興国において、先進国におけるのと同様の振る舞いが可能であるようにする。ここでは何かアットホーム感覚のように書かれていますが、そういうものが出てくるだろう。すなわち先進国は知財先進国をふやして、一緒に市場経済の中で動きたいと思っているはずだから、そういった共通の基盤づくりにどう貢献できるかというのが第1点だと思います。
第2点は、しかし、欧州と米国と日本と韓国と中国の微妙な違いがありますから、どこが新興国の準拠モデルになり得るか、ということがあります。この準拠モデルの主導権争いで日本が今、落ちそうになっているというのが我々の認識です。世界の知財について日米欧の3極で決めている時代から、5極の日米欧中韓になった。そのとき、日本は落ちて4極化しそうになっている。これではまずい。では、5極化するのか。そうではないですね。国際的には1極化を目指すわけで、その1極は日本が準拠したほうが好ましいだろうから、そういう状況により近づけられないかということかもしれない。ですから、新興国の知財先進国家と知財におけるジャパナイゼーションをどうやっていくかということが、政策としては極めて重要だろうと考えております。
資料4−2は、中村先生が会長をされているコンテンツ強化専門調査会で、検討の方向性について、私は委員の1人として申し上げていることです。ここについては、コンテンツに対して、10年前と基本的なコンセプトは変わってきているということを私は述べたいと思います。全部について詳しくは述べませんが、5点あります。
1番目は、コンテンツ・サービス・デバイスの関係が1:1:1であったものが、現在はN:N:Nの関係性になっている。このときに同じようなコンテンツの知財政策の議論で良いのだろうかということですね。
2番目は、従来は放送・通信・出版等、プロのクリエーターやプロフェッショナルのプロバイダーが提供するコンテンツを中心に考えられていました。しかし、御案内のとおり、ユーザーがそこに関与し、公共セクターが公共のデータを持って関与するとなっている以上、プロのベンダーのみを対象にした知財政策で良いのかということです。
3番目、コンテンツと言ったときには、必ずエンターテイメント系と文芸系が中心でありました。御存じのとおり、欧米は教育系のコンテンツで国力、ソフトパワーを増そうとしております。このときに日本の教育コンテンツは極めてガラパゴス化しているということとをどう見るのか。これを見ないと知財政策も実は大きな役割を果たせないと思っています。
4番目には、従来は、国内の法制度に配慮しつつ、クールジャパンとして海外に輸出モデルを展開するというのが前提でした。それで良いのでしょうか。いまやグローバルにコンテンツビジネスが動いているときに、クールジャパンというのは輸出型モデルだけで良いのでしょうか。輸出型モデルではないモデルだとすると、知財政策はどう変わるべきなのでしょうか。こういうことであります。
5番目、従来の知財権の政策はコンテンツ、イコール著作権による排他的な保護モデルを前提にしています。それで本当に文化振興と産業振興のベクトル合わせができるのでしょうか。決定的に国内のガラパゴスの整合性を保つだけの政策では、やっていけないのではないでしょうかと。こういうことが、私の問題提起であります。
以上、少し長くなりましたけれども、総論として、総論を述べることは何を意味するのか。頑張ろうねという話が総論ではありません。全体の方向性の背後にある前提となる基本モデル、基本コンセプトを明らかにして、それで良いのか、そうではないのかという議論をすることだろうと思っています。10年前の御苦労を現在もう一度確かめて、そして10年後にどうなるかをもう一度整理し直すことが、この柱立ての根底にあるべきだと思います。その上で各論がマッピングされないと、結局は当面の各施策の羅列に終わってしまうのではないかという懸念があります。まず最初に、総論としての意見を申し述べさせていただきました。どうもありがとうございました。

○中村座長
 どうもありがとうございます。
野間口委員、お願いします。

○野間口委員
 いきなり総論と話が出ましたけれども、これは基本的視点が2つに分かれていますね。それをまとめた総論がもう一つあるという意味ですか。最初の参事官の会議の進め方で、柱の立て方、基本的視点、各課題、座長のほうから総論に関して意見はないかというお話だったのですが、総論というのは基本的視点のことですか。それとも、これも包含した、まとめた総論という意味ですか。

○妹尾座長
 参事官が言われた総論と、私が言った総論は意味が違います。私は参事官が両方のものを整理させるときに、どういう考え方で整理をし、何の点を注意して、対比的な表とか具体的なものをつくっていくべきか。そこのところを総論と申し上げました。

○野間口委員
 この資料には入っていないですね。

○妹尾座長
 入っていません。

○野間口委員
 妹尾先生の4−1と4−2をじっくり読んだわけではないですが、私も大いに賛成するところがありますが、総論と基本的視点の絡むところだと自分では思っているのですけれども、そもそも論、なぜ知財戦略かという4−1のほうは、それなりにカバーしているなと。妹尾先生がおっしゃったことの視点も含めて、あえて付け加えるとすると、知財戦略を担う部隊、例えば特許庁とかそういうのがあるわけですけれども、そういうところがこの時代の変わり目に、我々の期待もまた変わってきている。それにどう応えてもらうかというところも明示的に入れたほうが、パンチが効くのではないかと。我が国の重要な戦力部隊ですからね。例えば特許庁、各省庁の知財戦略、妹尾先生がおっしゃったことに100パーセント同意するわけではないですけれども、知財戦略はイノベートしていかなければ、従来型の戦略だけではいけないと思いますので、その辺の注意喚起というかガイダンスというか、それにつながるようなことが入ったら、総論に持っていく上でもいいのではないかと思います。
 資料4−2のコンテンツについて言いますと、10年前と余り本質的に変わっていないなと。この資料はぱっと見ただけですけれども、例えば重要なコンテンツは文芸やエンターテイメントのみではなくなっている。まさに同感ですけれども、そういう時代に合ったコンテンツの知財マネジメントになっているのかというと、甚だなっていないのではないかと言わざるを得ない。これはコンテンツと言えば、特許庁もあるでしょうし、文化庁もあるでしょうし、在来のそういう見方だけではカバーできないようなクリエイティブな現象が起こっているのに対して、新しい制度設計も含めて考える必要もあるのではないか。
 中山先生がおられるから言うわけではないけれども、中山先生も何年も前から、ネットワーク上のコンテンツを効果的に使うための仕組みづくりを日本も考えなければ遅れるぞということを言っておられたのですが、私が見るところ余り進んでいない。それを進めるための基本的視点でなければいけないし、各課題でなければいけないと思います。全体論についての意見です。

○中村座長
 荒井委員、どうぞ。

○荒井委員
 総論ということでお話しさせていただきたいのですが、10年前に比べて技術が非常に変わった。国際化が大変進んで、企業の方も大学の先生も活躍のあれが物すごく変わったということだと思いますので、その前提でこの知財を考えたときに、やはり知財は国ごとのことを考えている時代ではもう合わなくて、やはり国際的なソフトのインフラをつくるのだという発想に切り替えるのが、今は一番大事なときではないかと思います。
 ですから、日本の仕組みをどこかの外国へ輸出するというよりも、ぜひ日本では世界のモデルになるような仕組みを提案していって、それをみんなが扱ってくるということになって、初めて知財戦略として意味があると思います。それをやるときに知財は法律もあるけれども、運用とか人材とかを含めたサービス産業全体として機能しているかという発想に切り替えて、今まではどうしても法律のどこを直せばどうとかいうことだったのですが、各国でやっていることは自分のところへ来れば、きちんと契約書をつくって保護してやる、ビジネスモデルとしても成功させるというサービス産業になっているのだと思います。
ですから、ぜひこの知財が世界じゅうの人々にとって役に立つようなサービス産業として、法律、人材、運用、その他で日本がモデルになるのだというような発想で今回の戦略をつくっていただくのがいいのではないかというのが総論的なコメントというか、希望です。国内の国益という発想の段階の知財は終わったのではないかと。今お話があったみたいに、世界じゅうのユーザーを私らもインターネットで見るようになっていまして、外国のユーチューブで見たものをみんな見ているわけですから、そういう時代にすっかりフレームワークが変わった。
もう一つは、世界じゅうでやっていることは、そういうリーガルなエキスポートというか、自分たちがこういうのがいいのではないかという提案競争をやっていますね。ですから、ぜひこの知財も国益を守るとか従来の整合性を守るとか、そんな議論ではなくて、新しい仕組みで世界の模範になるような仕組みをつくるという発想を出していただきたいというのが総論的なコメントです。

○中村座長
 角川委員、お願いします。

○角川委員
 いみじくも今、荒井さんがおっしゃったとおり、過去10年間の総論は、「国益」として知財をどう考えるかということをやったことだったと思います。その成果の上でこれからは、ここにきちんと書いてありますように、「競争力強化」をこれからの10年の総論にすべきだと思います。比較対象するのは基礎資料としては大事ですけれども、知財本部が今、内閣から求められているのは、基礎資料としての総論ではなくて、競争力強化のために何をすべきかをどれだけ対外的に発表できるかであって、私は知的財産戦略本部の鼎の軽重の問われるとも思います。これをこれからの10年の日本復活のキーワードに置いていただきたいと思います。

○中村座長
 どうぞ。

○中島本部員
 それでは、総論ということですので、私はきょうは資料10を提出しておりまして、1枚紙でございます。これに沿ってお話をさせていただきたいと思います。この政策ビジョンワーキンググループをなぜつくられたのかということに、基本的には関係すると思います。せっかく2つの専門調査会が別にあるわけですので、ともすると同じような戦略戦術レベルの項目を挙げがちになってしまうのですけれども、やはりそこは違うと常々思っております。前回も申し上げましたけれども、この政策ビジョンワーキンググループでは、もっともっと上の戦略戦術ではないポリシーや政策。先ほどお言葉がありましたような世界観というものをきちんと定めるべきではないかと思います。
 そういうポリシー政策をきちんと決めておかないと、どうしても枝葉の戦略戦術部分でぶれが生じてしまう。ちぐはぐな戦略が出てきてしまうと考えております。したがって、その土台の幹となる部分をきちんと決める必要があるということです。
このペーパーの5つの四角の中の一番上の知財立国ビジョンで、これは1例として挙げさせていただきましたけれども、「世界一の創作と利用・世界一のビジネス成果」、こういう世界観、ビジョンをしっかりと挙げる必要があるのではないか。
2番目の四角ですけれども、先ほどのものが基本的視点、次が国民生活将来像で、「知財戦略によって、次世代のハイレベル充実社会を実現」ということが成果としてないと意味がないのではないか。
一番最後の四角に「世界一のビジネス成果」と書いてございますが、これは「日本人の特質を活かし世界に例のない繊細で安全安心な高付加価値社会を構築」、知財立国は知財立国が最終目的ではなく、これは我々国民がどうなるのかが一番最後の目的だと感じております。
3つ目の箱、4つ目の箱は、1番目にあります世界一の創作社会をどうやって戦術戦略レベルに落としていくのかというところです。今回、資料を見ますと皆さんの前回にはないすばらしい意見が出ておりますけれども、ハイテク分野、ハイテクでない現実の創作分野、この目標をしっかりと定める。これは今まで官学の目標しかありませんでしたけれども、民間の目標も中堅企業に限らず、きちんと定めることは大切だと思います。
2つ目の○では、重点分野をしっかり定める、日本が一番やらなくてはいけない分野です。それらの積極的な融合を図るということ。何よりも大切なのは、そういう創作人材をきちんと優秀な方を集めるということだと思います。そのためには発明者をしっかり保護する。創作者、クリエーターをしっかり保護するというところが、私はかなり上位の政策だと思います。
ただし、その中で行き過ぎた職務発明訴訟があります。これはどうするのか。これはきちんと対応しなければいけないということだと思います。いきなり職務発明制限をするのだということになりますと、これは発明意欲を減退、発明者の冷遇ということつながって、ますます理系離れということになるのではないかと思います。やはり優れた人材がこの分野に入って、優れた創作をしなければいけないというものが基本ではないかと思っております。さらには、技術的な問題でなくて、ほかにもデザイン、ブランドの保護価値も世界一にしなくてはいけない。それによってコスト競争から離れて、価格決定力を獲得することは大変重要でございます。
次の箱に行きますと、実現行動体制。これも今はいろいろな戦略本部ができておりまして、本当にこれが国として、きちんと方向性を統一してできているのかというところは、再検討しなければいけない。各組織の共同とか統括、一緒になってやるというところが大事だと思います。積極的かつ迅速な権利化とハイレベルの保護ということですけれども、こういうところがあってユーザーフレンドリーな体制をどうすればいいのか。人材も世界一のハイレベル知財人材国家という方向に向けるにはどうすればいいのか。今、審査官がせっかく増えて、育成するのに大変な手間ひまがかかるわけです。そういったところを今後、英語審査を充実するとか、アジア諸国の審査を肩代わりするとか、そういう方向に今度は戦略的に落としていけばいいと思います。したがって、総論から各論のほうに入りますけれども、そういう仕組み、枠組みをきちんと定めるということを提案させていただきました。
以上です。

○中村座長
 ありがとうございます。
よろしいでしょうか。私たちのミッションは骨太なビジョンをつくるということですけれども、どうぞ。

○渡辺委員
 渡辺でございます。おはようございます。
 初めて参加をさせていただいたわけですけれども、総論という意味で、私が思っていることを少しお話させていただきたいと思います。
 世界の中の日本という意識が、これからますます重要になってきていると思っておりまして、グローバルな展開の中で、知財戦略をどうするかという前提として、やはり日本が4つのテーマ、環境に強い日本、エネルギーに強い日本、安心・安全な社会をつくるのに強い日本を構築すべきではないか。それは科学技術の開発だけではなくて、ものづくりの生産、あるいは販売とかサービスの面にも強いものを持って、これからの10年をやっていかなければいけないのではないか。環境、エネルギー、安心・安全というテーマで、世界をリードする日本になるべきではないかと私は思っております。
 そういう観点から、自動車ももっと開発、生産、販売、サービスをしなければいけないと思っていますが、あらゆる産業でそういう意識を持ってやっていくとすれば、今までのような知財戦略で本当にいいかどうかという分析をしっかりし、先ほど妹尾先生がおっしゃった、今までの10年とこれからの10年を考えたとき、何をしなければいけないかということを考えていくことに大賛成でございます。
 そのときに、今、申し上げた環境、エネルギー、安心・安全というテーマで、日本は開発から生産、販売、サービスという機能軸で何をすべきかということを、技術開発だけではなくて、ソフトウェアもハードウェアも開発をしていく。そういう中に知財がたくさんある。そういう知財をしっかりと担保していって、世界に示していくという努力をもっと強烈にすべきではないか。そのための新しい知財戦略の仕組みは何か、あるいはそのための人材育成は何をすべきかということを大前提として、総論として表記をしておいて、進めたらいかがかと思っておりますので、そのことだけを最初に申し上げたいと思いました。
 以上でございます。

○中村座長
 ありがとうございます。
 山本本部員、どうぞ。

○山本本部員
 山本です。
 こういう議論は、だんだん拡散しがちなところがあるので、例えば先ほど荒井委員からありました、世界のモデルとなる知財制度の確立というのは賛成なんですけれども、そうだとすると、資料1とか資料2を見たときに、日本の知財制度は、今、世界のモデルとなり得る状況なんでしょうか。議論して、検討して、これはモデルですということであれば、それを広げようというのはいいんでしょうけれども、そこの視点がこの中にはないような気がします。
 それと、妹尾座長がおっしゃった、海外で知財を取ることではなくて、活用ですというのは私も賛成なんですけれども、例えば資料1に海外における知財活用支援というものが入っています。入っていますが、7ページの海外における知財活用支援というところを見ると、模倣品対策をしましょうということぐらいしかないわけです。あとは、在外公館に知財担当官を任命しましょうとか、JETROのところで書いてあるのも、基本的には模倣品対策をやりましょうという話で、これだと活用を促すための環境整備ではあるけれども、活用支援ではないです。
 そういう意味では、そこはちゃんと議論をして、これだけ多くの人がいると、言い放って、どんどん論点が変わっていくような気がするんですが、例えば荒井委員の意見については、皆さんどう思っておられるのかとか、そうではなくて、日本の制度が一番いいので、日本の制度を広めようという御意見があってもいいと思うんですが、そこをちゃんと詰めていただいた方が、方向性のある議論になるのではないかと思っております。

○中村座長
 ありがとうございます。
 それでは、そろそろ資料1、資料2の中身に入って、議論をしていった方がよさそうです。
 ここまで、我々がビジョンをつくっていく上でも、大事なコメントをいただいています。共通して2つの指摘があったかと思います。
 1つは、グローバルという視点が非常に重要だということを皆さん強調しておられる。資料1の競争力強化では、グローバル知財システムの構築という柱がありますし、資料2のコンテンツでは、クールジャパン、対外政策をどうするかという議論でありまして、両方に共通の柱としてあるものですから、それにどのように横ぐしをさしていくのかということが、1つの論点になろうかと思います。
 また、10年前の知財も検証すべきだという指摘もいただいております。原点に返ってみますと、10年前にできました知的財産基本法の第1条、目的ですが、新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するためというのが、法律の目的となっています。そういった経済社会が実現したのか、あるいは途上にあるのか、まだ実現をしていないのか、その辺りの認識をどうするのかということかもしれませんし、同時にそうした目的で、我々がこれから10年進んでよいのかどうかということを見直すということかもしれません。
 ありがとうございます。
 それでは、本題の資料1、資料2の議論に入っていきたいと思います。
 資料1、競争力強化・国際標準化関連についてです。先ほど畑野参事官から切り口を3つお出しいただきました。
 1つ目は、グローバル知財システムの構築と中小・ベンチャー企業の知財マネジメント強化支援という柱立てでよいのか。
 2つ目は、それぞれに掲げてあります、基本的な視点の書きぶりでよいのか。
 3つ目は、各課題に関する方向性ということでございます。
 どちらからでも結構ですので、意見、コメントがある方はお願いしたいと思います。
 荒井委員からお願いします。

○荒井委員
 資料1の関係で、この10年を振り返ってみたときに、日本全体でいろんな知財の制度、基本法ができて、知財の本部ができて、知財高裁ができて、そういう意味では世界の模範になるような国家の仕組みはできたんだと思います。
 あとは、10年間を振り返ってみて、非常に進んできたのは事実ですが、しかし、グローバルという目で見たときに、一番に掲げてある@A、特に国際的な知財の制度間競争を勝ち抜くための基盤整備、今、政府がやっている成長戦略、産業競争力強化、企業の皆さんが国際競争をやっておられるときに、例えば日本の職務発明、営業秘密、あるいは裁判所へ行っての権利更新は、外国と非常に違っているわけです。商標法とか意匠法も、外国では新しいものをいろいろ保護しているけれども、日本ではやっていないとか、そういう意味で、企業の皆さん自身は、できるだけ国際的にグローバル展開をしたいのに、日本の制度が古い。あるいは先ほど渡辺委員がおっしゃったような、新しい環境、エネルギー、安心・安全をやったりするときに、国ごとに知財が違って、大変御負担がかかっているわけです。そういう目、非常にやりやすい、日本の企業、大学の先生方が能力を発揮しやすいような仕組みで見ると、おのずから@とかAは方向性が出てくると思います。ですから、是非そういう観点から、もうちょっと国際活動をしやすいような観点にするということをしっかり出していただいた方がいいと思います。
 私が10年間で一番残念に思うのは、日本において、紛争処理機能、特許は取っても裁判所で保護されないという認識が広まってしまって、日本では特許裁判は起こさない。だから、件数が減ってくる。したがって、弁護士にお願いするのも減っているということで、やるなら外国へ行くということで、特許裁判の空洞化が起きています。結局、日本では保護されない。したがって、活用化もしにくいというのが、10年間で一番欠けている点ではないかと思います。
 アメリカのように、特許裁判においては、特許庁で取った特許は、権利の有効性を推定するんだという規定を入れて、日本でも特許が保護されるという風潮を認識に変えるというのは、これからの10年間にとっても大事な点だと思います。
 第2点の中小・ベンチャー企業が大事だというお考え、柱立ては、賛成でございます。資料6をごらんいただければと思いますが、成長戦略の中において、中小・ベンチャー企業は非常に大事な役割を果たすという認識で、第2の柱をつくっていただいているんだと思います。
 東京商工会議所でも、知財委員会というものがあって、イノベーションのためにどういうものがいいかということで、1ページの下にございますが、中小企業の人は、技術が流出して、営業秘密の保護に困っているというのが実態でございます。そこをやって、今の中小企業・ベンチャーが持っている技術が発揮されて、イノベーションを受けるようにしていただく。そのためには指針とかマニュアルの策定を希望しますが、同時に、それだけでは不十分なので、不正競争防止法から独立させた営業秘密保護法というものの制定が、象徴的にもメッセージ的にも必要なのではないかと思います。
 第2点は、偽物対策でございまして、これは先ほどお話がございましたけれども、国際化とともに偽物の被害に遭っているわけです。大企業に比べて、中小企業は自分で保護できないわけですから、これは政府、在外公館がしっかり応援する、強力な支援が必要だと思います。
 第3点は、中小企業の技術の関係では、特許を取って、保護して、活用していくというのが大事な局面ですし、これからも続くと思いますので、アメリカのように、従業員500人以下の中小企業については、全ての特許の費用を50%割引にするという、シンプルで効果のある制度が必要だと思います。日本のものは、仕組みが精緻過ぎてしまって、誰も使わない。そうではなくて、シンプルで、効果のある制度をつくっていただきたい。
 4点目は、中小企業のコンテンツですが、コンテンツ産業の中小企業比率は非常に高いわけです。コンテンツは、大企業のものもいろいろ議論がございますけれども、是非中小企業のものも世界中に広げて、それがヒットすれば大企業になっていくわけですし、文化の輸出、文化の普及にもいいと思いますので、クールジャパン戦略の中でも、もっと中小企業のコンテンツの海外展開の支援を強調していただきたいと思います。
 以上です。

○中村座長
 どうぞ。

○畑野参事官
 大変失礼いたしました。冒頭、申し上げればよかったのでございますけれども、資料1の1の@ABの立て方でございますが、先ほど山本本部員からの指摘もございましたので、ちょっと話をさせていただきます。
 ここでは、日本の知財システムというものを、いかに海外でも使ってもらうかという、全体的なコンセプトで準備させていただきましたが、@は海外で使ってもらうための手段です。例えば日本の特許システムを東南アジアでも使っていただくためには、一体何が必要なのかということでございます。
 Aは、今、山本本部員からもお話がありましたように、さはさりながら、日本の特許システムというのは、海外に誇れるような中身になっているのか。なっていないのではないか。そのためには、一体どういったところを直さなければいけないのか、あるいは議論しなければいけないのかというところを、Aで整理させていただきました。
 繰り返しですけれども、@は広めるためには何が必要なのか、Aは広める前提として、日本の特許システム、知財システムを優れたものにするためには、どういった検討が必要なのかといった切り分けで、ここはまとめさせていただきました。
 議論の活性化のためにということで、少しコメントさせていただきました。

○中村座長
 ありがとうございます。
 中山本部員、どうぞ。

○中山本部員
 荒井委員が、今、おっしゃいました中小企業の問題は、極めて重要だろうと思っています。荒井さんは、東京商工会議所の知財戦略委員長ですから、恐らく一番御存じだと思いますけれども、中小企業が日本の足腰になっていることは間違えない。従来からも戦略本部で中小企業問題はやっておりました。
 例えば知財駆け込み寺というものをつくりました。今、あるかどうかわかりませんけれども、ほとんど利用されていないどころか、存在自体も余り知られていないという状態だと思います。
 あるいは特許料の減免もありますけれども、これも手続が大変で、利用している大半はパチンコ企業ということで、ほとんどの中小企業が利用していない、あるいはできないという状況ではないかと思います。荒井さんがおっしゃいましたように、やはりシンプルな制度が一番大事だと思います。
 これは知財に少し関係しますが、大学に出されている科学研究費などをうっかりもらうと、書類の作成で研究時間がなくなるという情況に陥ります。したがって、これはなるべくシンプルにする。
 シンプルにすれば、悪い奴が必ず出ます。悪い奴が出たら、そこで厳罰に処すというシステムにしないと、書類の山でもって、本当に利用したい人は利用できないことになってくるのではないかと思います。


○中村座長
 國領委員、お願いします。

○國領委員
 総論で申し上げようかと思ったんですけれども、各論で言った方が、かえって迫力が出るかと思って、待っていました。
 資料1の3ページの囲み「アジア新興国が」というところの真ん中の行に「日本企業が」という言葉が書いてあります。7ページの課題2のところも「日本企業の」と書いてあります。9ページの囲みも同じく「日本企業の」と書いてありまして、問題提起させていただきたいのは、20世紀の日本の工業製品で世界に進出していったような、とにかくまずは日本から輸出しましょうという感じがするんです。その次は日本企業が現地へ行って、現地生産しましょう、こういうモデルになっているような気がするんです。
 今、こここそが戦略の部分だと思うんですけれども、日本全体で目指すべきは、経常収支の黒字なのか、貿易収支の黒字なのかと言っているところと近いと思うんです。今や圧倒的に投資で稼ぐ国になりつつある。そうだとすれば、ひょっとすると、日本企業でなくてもいいのではないか。
 今、私はアジアの大学とアジアのベンチャーを育成するみたいなことをして、いかに日本からそこへ投資していくかということに取り組んでいるわけですけれども、アジア側のベンチャーが世界に打って出るときに、どこに知財をファイルすると、一番彼らが発展するか。発展した企業に、日本がきちっとプレゼンをするというか、持っていて、そこから日本国内へ収入が戻ってくるというような、多分全然違う発想になってくるんだろうと思います。
 その辺りの話は、参考資料1、データをつくっていただきました。1ページを見ていただくと、貿易収支は結構堅調で、まだ日本の技術力があって、稼いでいるんだと、何となく安心したりするわけですけれども、一番最後のスライドにいくと、日本のコンテンツの海外展開状況というのは、映画は結構頑張っているんです。テレビはずるずる落ちてというのがわかったりして、一体我々は何を目指すのか。何を指標として、それを評価しながら、政策を評価していくか。そこのスタンスをはっきり決めないと、だめではないでしょうかということです。
 その上で、時代が変わったので、昔ながらの日本から輸出する、貿易輸出が増えればいいという発想では多分ない。一体何なのかといって、ちょっとだけ極論を言わせていただきます。本当は信じていない極論を言わせていただくと、ひょっとしたら、日本の特許制度ではなくて、海外の特許制度に便乗してしまった方が、現実的には収入が増えるんだったら、そちらでいくべきではないかというぐらいの発想をするべきであって、今、ここで目指しているのは、日本の特許制度の輸出を最大化することではなく、知財収入を最大化することなのではないかと思います。
 以上です。

○中村座長
 高橋委員、お願いします。

○高橋委員
 きょうの中の論点整理のところで、従来は項目の1つだった中小・ベンチャー企業から始まる部分を、大きく骨組み的に捉えていただいていて、非常に賛成というのが、基本的なスタンスです。
 そういった立場で、私の意見は、資料8、2ページほどで述べさせていただいています。資料8の[1]は、どちらかというと、きょうの総論よりの立場、2ページの[2]は、個別の課題で、従来議論の延長で優先順位の高い一例、そういう観点で表現させていただいていますけれども、これをごらんいただきながら、きょうの全体の総論について、補足の意見をさせていただきます。
 知的財産の政策ビジョンということで出ておりますので、このワーキンググループを通して、総論というよりも、ビジョンを方向づけして、今後の10年でやっていくかということについて、従来は表現がいろいろあるかと思いますが、創造・保護・活用というところからの循環創出モデルで、スパイラルアップしていく、そういったことを描きながら議論していこうではないか。そこに分類された各論がついてくる。過去10年は、そんなに単純に総括できないと思いますけれども、今後の10年も同じように表現するとしたときのビジョンは何なのかといったときには、戦略的にビジョナリーにというときにはっきりしているのは、いろいろ御意見がありましたように、従来以上に知財・知財権にかかわる内容が、技術的にも、あるいはハードからソフトからコンテンツと広がり、産業の創出論も使い方が急に逆になったり、いろんな会社にまたがっている。これは議論がし尽くされている。そうすると、今後10年のビジョンというのは、そう単純な表現ではないのか。これは皆さんもよく御存じです。
 それでは、どのようにビジョンをビジョナリーにもっていくか。昔のように、この方向であるべき姿というときに、例えば今までは日本のおうちはこんな家でありたいですと言った。建築様式としたら、家のこれからのたてつけの基本的な骨組みは、こんな骨組みのたてつけがありたい姿で、その骨組みに沿って、各論をやっていこうではないか。骨組みは全部が関係し合っているということは、もう言うまでもなく、意味がある。そういった表現なので、ビジョンの表現方法について、ここの中でどう表現していくか。
 きょうの論点整理という意味では、グローバルの話、中小企業、総論的には従来にない新たな議論が大きく追加されていますけれども、そろそろ全体的なビジョンイコールそれは骨組みの表現でいくのか、戦略的方向という表現でいくのかといった、ビジョンの表現イメージというか、ありたい姿イメージが必要だという前提です。そういうわけで、きょうの資料の中では、ビジョンの骨組みという表現をしています。
 1ページ目は、骨組みのほんの一角しか、中小企業という立場、観点でしか表現していないですけれども、全体について言えば、骨組みは、メーンの柱、強度を支える全体の関連項目に展開されてくると思いますので、その前提で、資料を見ていただければと思います。
 次に、そういった総論についての意見とあわせて、資料の中では、急に部分的な話になりますけれども、ビジョンの方向、骨組みである創造・保護・活用は、消すものではない。順番が逆になるとか、基礎部分のところで存在しているという前提に変わりはないと思うんですけれども、きょうも論点整理に挙げていただいていますように、中小企業・ベンチャーが、日本の産業競争力という観点で認識されて、骨組みのどの部分に持ってくるかは非常に大きく、立場上でいきますと、今後10年の重点注力対象の骨組みであってもいいのではないか。これが1番目です。
 これに補足として、骨組み議論という前提の中ですが、中小・ベンチャーということで、いろいろ御意見が出ていますように、アメリカも含め、よりスモール、ミクロ、余り厳密にせずに、大きく、できるだけ自由闊達にいけるようにやろうではないけれども、この議論は既にスタート、あるいは御意見もいろいろ出ていると思います。
 一方、逆方向ですけれども、あえて大企業と中小・ベンチャーと分類しがちです。その間に民間系で、主に金融系などでよく使われていますけれども、中堅企業という表現があります。どう定義されているかというのは、非常に曖昧な領域ですけれども、具体的には、戦後間もなく、いろんな形ででき上がり、時間軸で言いますと、創業50年とか60年とか、そういったところもあります。
 産業界の中で、いろんな形で、中小・ベンチャーの1つの中心になっているとか、中堅企業とは何ぞやと言われると、ちょっと時間をとりますので、省きまして、結論から言いますと、中堅企業も含めたドライビングフォースとしての議論が、ある位置づけで、全体のビションの中の骨組みに追加されてもいいのではないか。これが2番目です。
 3番目に、これも同じく骨組みの1つの追加策としてということで、国の観点から流通政策ということを、今後のビジョンという表現の中の大きな骨組みの中に位置づけで、企業間とか、あるいは大学から企業に向けるという従来の議論の枠からもっと広げて、社会における流通の政策、こういったことが骨組みの中にも加わっていいのではないか。骨組みの中には、またそれをサポートする細かい骨組みが、議論としては追加されてくるかと思いますけれども、それは各論の方に回せる。要は、従来になかったような、日本の産業競争力を有効にしていくために、複雑に幅広く議論しかなければだめな部分を、骨組み表現をちゃんとすることを通して、従来、議論されていなかった各論施策が生まれ、このビジョンに連動して動いている委員会の方で各論が展開されていくのではないかということで考えております。
 以上でございます。

○中村座長
 ありがとうございます。
 これまでのところ、全体論に関する問題提起、個別論の御意見、両方混ぜて出していただいているんですが、ちょっと拡散してしまうかもしれませんけれども、きょうはテーブルに全部お出しいただければと思います。資料1について、もう少し伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
 お願いします。

○野間口委員
 先ほどから各委員の御意見を聞いていて、ちょっと気になりましたのは、国益の時代は終わって、グローバルだというお話がありましたけれども、国益は大事です。荒井さんの2回目の発言で、荒井さんの仕事からくる、こうあるべしという話がありまして、安心しました。グローバルなハーモナイゼーション、グローバルな視点、グローバルな場で知財戦略を展開するというのは、そのとおりだと思うんですが、やはり日本を支えている、産業界を初めクリエーターも含めて、ほとんどが日本国土の中に住んで、ここで日々創造的活動をやっているわけですから、そういう人たちが期待感を持って使う制度でなければいけない。そこのところは、国益はどうでもいいんだみたいな表現は入らないようにしていただきたい。各委員もそういう意味でおっしゃったのではないと思いますけれども、ちょっと表現ぶりがね。
 各論にいきますと、10年前と今後を考えた場合、大いに積み残したという気がするのは、やはり職務発明です。先ほどどなたかも指摘されましたけれども、これは発明者の貢献をどう評価するか。一方、企業の中で言うと、発明が生まれる環境を整える努力をどう評価するかなど、発明を評価する仕組みが、世界的に見てどうなっているかということをよく調査して、日本の職務発明制度を見直すべきではないかと思います。
 日本では、この問題が生じた場合、どういうふうに決着するかというと、予見不可能です。そういうこともありますから、海外からのR&D人材、あるいはR&D拠点を日本にこしらえようということに対して、大きなブレーキになっているのではないかという気がします。今後10年、抜本的にもし踏み込むとしたら、これは大きなエポックになる。
 それから、これは39ページとか、それ以後、いろいろ出てきますけれども、人材の問題です。これまでは知財専門人材の層を厚くしようということで、一定の効果はあったのではないかと思いますけれども、各論の中でところどころ出てくるんですが、大学あるいは企業のOBの活用、国内だけではなくて、海外で活用する話などが出てまいります。知財専門人材の強化だけではなく、知財推進にかかわる人材について再定義して、日本で生まれた知財、あるいは日本と海外で連携して生まれた知財とか、そういうものが有効に活用されたり、人材の裾野は広いんだということを知らせて、企業なり自治体なり大学なりが、そういった人材を有効に活用し得るんだということを、ガイドしてやることも大事ではないかと思います。知的人材の雇用対策という意味でも、重要ではないかと思うんですけれども、そういったことが、もうちょっと表に出るようなことを、まとめてもいいですから、どこかにしてほしいと思います。
 ほかにもいろいろありますけれども、荒井さんが手を挙げておられるから、やめます。

○中村座長
 荒井さん、どうぞ。

○荒井委員
 国益はどうでもいいと言っているわけではなくて、今までの議論で、国益保護というのは、戦後、外国の技術が非常に進んでいて、日本でキャッチアップするときに、国内で特許を発明して、奨励して、国内だけで守っていくという風潮が、制度として確立してしまって、残っているわけです。スポーツと一緒で、国際ルールが変わったら、それに合わせていった方が、日本人や企業の皆さんも活躍して、日本の技術者も発揮しやすいんです。結果として、そちらの方が国益になりますと言っているわけです。
 1ページのAにある制度も、従来からの整合性ばかりで議論しているんですが、今、お話のとおり、企業の活動には足かせになっています。ですから、そこは、結果として、そちらの方が国益になりますということを申し上げているわけです。

○中村座長
 国益というのは、非常に大事だと思います。先ほど國領委員が御指摘なさったことも、結局、国益というのは何なのかということを問い直そうという御指摘だっただろうと思いますので、そこのところが、我々の総論になって出てくるということなのかもしれないです。
 渡辺委員、どうぞ。

○渡辺委員
 国益議論というのは、大変重要なテーマだと思っていまして、先ほど申し上げましたようなテーマで、日本が技術開発も生産も販売もサービスもきちんとできる力を持って、それが知財として保護され、国際標準になるというのが、我々ものづくり側から言えば、理想的な話だと思っています。ですから、日本でまずそういうものを確立しておいて、海外にそれを移転していくというやり方が、今の日本に大変重要ではないか。しかも、環境、エネルギー、安心・安全という国際的なテーマにこそ、しっかり力を入れて、知財を保護していって、中小の方々も一緒になってシステムとして力をつけていくという、産業政策あるいは成長戦略が大変重要だと思っています。
 確かにGDIのように、投資だけやって、リターンをもらえばいいというやり方もあると思いますが、今、日本の政府が言っているハイブリット型、貿易立国としての日本、それから、海外へそういうものを移転して、投資をして、それをリターンとして再開発をするというやり方、その2本立てが絶対に必要だと思っております。そういう意味で、知財は、産業の発達ということが本来的な目的になっているわけですから、その観点で日本がオープンでフェアな知財の基盤をしっかりと構築していく、そしてそれが国際的なスタンダードになれば一番いいと思います。そんなふうに思って、進めていくべきだと思っています。

○中村座長
 どうぞ。

○國領委員
 渡辺さんに是非そういうふうに言っていただきたい。つまり日本国内で研究し、開発し、製造し、それを持っていく、それでやる。その気概はもちろん持ち続けるべきであると思います。
 一方で、世界の状況を眺めて、アジアの大学のレベルは急速に高くなってきていて、その辺の技術であるとか、彼らのセンスをどう取り込んでいけるかということも、戦略的に極めて重要だと思います。
 先ほど私が自分で、本当は信じていないけれども言い放ったことを、自分で否定しますが、結論から言うと、今、世界で闘うために、日本で特許申請しようとアジアの連中に思ってもらえることは、テクノロジーのインテリジェンスという意味で、決定的に重要だと思っています。今、アジアのどんなところで、どんな動きがあって、アジアだけでなくていいんですけれども、面白い技術をつくろうと思っている変な奴がいるということがちゃんと把握できて、コンテンツを世界に配信してもらおうと思ったら、日本のプラットホームの上に乗せると、世界に届くんだと彼らに思わせることがすごく重要だと思います。結論から言うと、アジアでコンテンツをつくったような奴らに、日本のプラットホームに乗せたいと思ってもらったり、アジアで面白い技術をつくって、これを世界のマーケットに持っていきたいと思った連中に、日本で特許を成立させたいと思わせることが、とても大事だと思います。その上で、アジアの知財の基盤みたいなものに対して、いろいろ情報発信をしていく。なので、私は先ほどの表現が気になったんです。「日本企業の」と繰り返し書いてあるんですけれども、ひょっとしたら、現地の企業に対して、日本で特許申請をさせる支援をする方が、かえって、今は戦略的に大事なのではないかと思ったりしております。

○中村座長
 どうぞ。

○渡辺委員
 ここで討論するつもりはないですけれども、おっしゃるとおり、知財という意味でいけば、技術開発のいろんなノウハウも世界から吸収しなければ、日本は負けると思っています。日本だけで全部自己完結すると思ったら、私は傲慢だと思っております。だから、アメリカでも、ヨーロッパでも、中国でも、東南アジアでも、いい技術者がいますし、そういったいい技術やノウハウを持っている者から、どんどん吸収していかなければいけない。
 それは、環境、エネルギー、安心・安全というテーマでやっていっても、いろんな状況があるわけですから、グローバルベストとローカルベストというのは、絶対にあるわけで、それをよく見て、我々が知財として吸収していく、あるいは現地に置いておくということをやらなくてはいけない。だから、世界の中の日本という意識は、絶対に必要だと思います。

○中村座長
 ありがとうございます。
 アウトバウンドをどうするか、インバウンドをどうするか、これをどう組み立てるのかということは、競争力の方も、コンテンツの方も、共通課題になっています。
 後で戻っていただいて構わないんですけれども、もう一つのきょうのテーマである、コンテンツ、資料2の方もこなさせてください。
 資料2、コンテンツ強化関連について、先ほど畑野参事官からありました3つのアプローチ、柱の立て方、基本的な視点、各課題の方向性について、コメントがありましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 野間口委員、お願いします。

○野間口委員
 コンテンツの方で議論が沸騰する前に、資料1とコンテンツに若干絡むと思うんですけれども、今、國領先生と渡辺委員の話を聞いていても、それから、過去10年と今後を考えも、グローバルな体制が我が国で十分かというと、例えば英語出願、海外出願の比率とか、英語審査の能力とか、そういったものは、これから強化していかなければいけない領域だと思います。そういったことも、今後の10年の大きな視点として必要だと思います。日本語で審査をするだけではなくて、英語でも審査をするという形にすると、海外からもどんどん呼び込めるわけです。そういった日本としての体制上のグローバル化、各企業もそうですし、特許庁を始め国もそうです。そういった視点も総論の方に入れていただいて、資料1にも、資料2にも、ここが入るようにしてほしいと思います。

○中村座長
 ありがとうございました。
 いかがでしょうか。角川委員、どうぞ。

○角川委員
 きょうは足立さんがいらっしゃらないので、経団連の資料と私が用意しました4スクリーンの資料もあわせて見ていただけたらと思います。
私も、さっきの国益の話を蒸し返すわけではありませんけれども、国益を指摘したことが最初の10年の価値だということを申し上げただけで、これからも国益は本当に重要ということを改めて申し上げます。
その上で、私はコンテンツのこれからの10年というのは、「社会全体がデジタル化する中でコンテンツ自体もデジタル化したときの環境がどうなるか」ということではないかと思います。コンテンツがデジタル化したときに、最初の10年で非常に重要なテーマであった創造、保護、活用という知財のサイクルが、デジタルコンテンツの創造、保護、活用というふうに読みかえますと、今、IT企業の大きなテーマになっている「エコシステム」という言葉に行き当たるのだと思います。エコシステムの中でデジタルコンテンツの創造、保護、活用がどうあるべきかということに思い至るわけです。
経団連の資料を1ページめくっていただきますと、「『知的財産政策ビジョン』策定に向けた提言」ということで、明らかにこれは知財本部のことを意識して書かれた言葉ですけれども、2月19日、経団連でこれを機関決定しております。そこの中の冒頭でも、産業競争力強化が経済再生の最優先の課題であると位置づけた後に、基本認識として、企業の競争力は技術力に加え「戦略的ビジネスモデルの構想力」が決め手になっていると書かれています。この戦略的ビジネスモデルの構想力というのは、実はエコシステムそのものなのですね。
この経団連の指摘はすばらしいのですけれども、この本文の中を見ると、実は、このエコシステムということが余りよく書かれていないのです。つまり、日本の産業が今、エコシステムの構築になかなか成功していないということの苦悩がこの経団連の資料に読み取れるのです。
その中で、経団連の資料の9ページだと思いますけれども、「複線型著作権制度の整備」というのが入っております。この複線型著作権制度の整備に、デジタル化・ネットワーク化の進展により、著作物の創作、利用、流通の形態が大きく変容していると指摘しておりまして、これがデジタル・ネットワーク時代の著作物の創造、保護、活用も大きく変容しているというふうに読みかえることができると思います。そこで経団連は、現行著作権法制を基礎としつつ、著作物の利用目的に応じた2つの制度、「産業財産権型コピライト制度」及び「自由利用型コピライト制度」を新たに創設することが、「複線型著作権制度の整備」という言葉を使っておりまして、今回、この知財本部で検討していただく価値があるのではないかと、まず指摘したいと思います。
私の資料に移らせていただきたいのですけれども、私は4枚の絵を用意しております。
最初のページは、今、「スマートイノベーション」という言葉が非常に重要になってきているのですけれども、このスマートイノベーション戦略をどう考えているかということが、このグーグルの絵を見るとよくわかるのですね。これはグーグルが出している資料で、グーグルは、スマートイノベーションは、これからは4スクリーンの中をデジタル化されたコンテンツが自由に行き来するということを前提として、この絵をかいています。スマートフォンとPCとタブレットとテレビジョン、これを4スクリーンと言っているのです。この4スクリーンで1人の毎日の時間が4.4時間占められている。対するラジオと新聞と雑誌は26分だと。つまり、4スクリーンは90%で、ラジオとニュースペーパーとマガジンは10%に過ぎない。私は出版社ですから、多少不愉快なのですけれども、これからはグーグルは4スクリーンのほうに戦略をかけていくのだと、こういうふうに言っているのです。この4スクリーンの発想、これをスマートイノベーションと言います。私は9対1ということは絶対容認したくないのですけれども、それでもあえて敵方の資料を見ながらお話を進めると参考になるのではないかと思って申し上げるのです。
その次のページが、これを私なりに置きかえるとどうなのかといいますと、この4スクリーンに、日本ではゲーム専用機が大きなシェアを占めておりますので、ソニーなどは5スクリーンと言っていると思いますけれども、ここに1つのデジタルコンテンツが自由に行き来する。つまり、テレビのコンテンツも、PCでもタブレットでもスマートフォンでも見られる。クラウドがそういうものを可能にしました。
そうすると、4スクリーンの間を自由に行き来するためには、HTML5という技術が非常に重要になってきます。ですから、これからのコンテンツをつくる人は、コンテンツはもちろんアプリですね。アプリという世界では、HTML5みたいな技術が非常に強くならないと、スマートフォンでは使えたけれども、テレビでは使えないとか、タブレットでは使えないということになったりします。当たり前ですけれども、大型テレビで見たものをスマートフォンでそのまま持ってくれば小さくて読み切れないわけですけれども、こういう技術があると、どのテレビの中のどの部分を1ページ目に持っていって、補充的なものは2ページ目に持っていくみたいな、そういうことが自動的に非常にうまく流れるようになります。
もう一つは、今、総務省で大きな問題になっていますのは、4Kテレビということがあります。この4Kテレビも、これから1〜2年の間に大きな問題になってくるのではないかと思います。
こういう中で、先ほどから申し上げていた創造、保護、活用に変わるエコシステムというのを、次のページに私なりに絵をかいてみました。ここでは、左側のスティーブ・ジョブズが目指した、アップルが大成功したエコシステムをエコシステム1.0と申し上げたいのですけれども、これは要するに究極の顧客の囲い込みをする、垂直統合型のエコシステムです。ここでコンテンツ、アプリというのが、創造、保護、活用ということで考えると、実際には、アップルの中では、アイパッド、アイフォンの端末の中で囲い込まれていて、オープンな発展がなかなか望めなくなっております。
ところが、これが大成功したものですから、プラットフォームという考え方では、アップルは端末をもとにプラットフォームをつくるわけですけれども、その成功を見て、グーグルもアンドロイドというふうな、OSを利用してプラットフォームをつくろうとしております。それから、アマゾンはeコマースのプラットフォームをストアでつくろうとしている。最後は結局、ストアになるのですけれども、入り口としては、端末でプラットフォームをつくるのか、OSでつくるのか、ストアでつくるのかということで、アマゾン、グーグル、アップルのプラットフォームのつくり方が少し変わっています。しかしながら、アマゾン、グーグル、アップルは全部、顧客を囲い込む、垂直統合しようとしていて、これがやや成功しているように見えるけれども、では、これはこのままこれからも成功するのかということについて、私は非常に疑問に思っています。
それはなぜかと言いますと、かつてマイクロソフトがインテルと組んだパソコンの囲い込みは非常に閉塞感があって、その後、グーグル、アップルが出てきて、それが新しい世界をつくったのですけれども、そのグーグル、アップルがまた顧客の囲い込みを始めて、今、再び閉塞感の中にあります。そういう中で、グーグルやアップルに対する過度のオープンイノベーションへの期待というものは、今、しぼんできていると感じます。
どうしてこんな形になるのかというと、ITの世界は独占しやすい、独占になりやすい特徴を持っています。それがIT技術社会だと。つまり、独占になるというのがIT技術社会だというふうに逆に思ったほうがいいくらいです。
しかし、一方でクラウド事業者が多様化してくるとか、決定的な端末というものがもう既にコモディティー化して廉価になってしまって、端末競争が非常に激しくなって、アイフォンの独占的な地位が、サムスンだとか、それから、グーグル自身の端末によって、もう乱れてきている。そういう点では、ユーザーを囲い込む究極のエコシステム1.0というものが、今、限界が見えてきていると私は思っております。しかも、そこの中では、デジタルエイジのユーザーの端末の利用の仕方が非常に技術が発達してきて、アイフォン、アイパッドというアップル一社の端末だけで満足しなくなってきているということもあります。
そこで私は、エコシステム2.0ということをこの知財本部で提案させてもらいたいのです。これは、日本の誇るプレミアコンテンツを中核に置いてエコシステムができないかということなのです。そこでは、コンテンツと、先ほど妹尾先生がエンターテイメントコンテンツに限らずに、教育コンテンツもあるのではないかとおっしゃいましたけれども、もう一つ大きなコンテンツがアプリだと思いますので、アプリというものを中核にして、こういうものがプラットフォームにならないか。
そういうことで、コンテンツ、アプリをプラットフォームにして、ストアがあって、クラウドがあって、そしてOSも、ここにOS書かれていませんけれども、新OSというので、アンドロイドとiOSによらない第3のOSというのを日本は支持していかなければいけないのではないか。例えば、モジラ財団が提案しているFirefoxOSだとか、サムスンが提案しているTizenみたいなOSが出てきておりますので、そういうものを意識しているのですけれども、新しいエコシステムができないかと思っているわけなのです。
プレミアコンテンツでないと、つまり、ユーザーが喜んでお金を払ってくれるコンテンツでないと、エコシステムはできないと思います。エコシステム1.0では、コンテンツがプレミア化ではなくて、コモディティー化して、コンテンツを消費するようなシステムが中心になっています。このままだと日本の大事なコンテンツが消耗するだけで、使い捨てられていくということで、新たな創造的なコンテンツをつくる作家を育成することはできない。やはりプレミアコンテンツというものをこの知財で推し進めていただいて、そして、そこでは著作者が報われる世界が必要なのだと。その著作物は何かというと、デジタルコンテンツですから、デジタルコンテンツを創造する著作者が守れる世界。そのデジタルコンテンツをつくった著作者が、創造、保護、活用、事業者と一緒になって育成されていく、それのエコシステムでもあるというふうなことで、こういう絵をかいてみて、これが可能かどうかというのをぜひ検討してもらいたい。これが産業競争力になるのだろうと私は思っています。できればコンテンツの世界でも、成長戦略にもかかわるものになれると考えております。
長くなって恐縮ですけれども、最後のページに、もう一回、それを具体的に絵に落とし込むと、日本はコンテンツ事業者の結束が必要だと思っていまして、まとまった人たちが「メガ・コンテンツ・パブリッシャー」という言葉で置いてありまして、出版、音楽、映画、アニメ、テレビ、ゲーム、このような本当に多様なコンテンツを持っている人たち、もちろん、この中にはプロの作家も入っていますし、CGMの大衆から生まれてきた作家も入ってイメージしております。
そういうものを中心として考えたときに、逆にストアレイヤーとしては、キンドルのストア、アップルのアイチューンストア、グーグルのグーグルプレイというストア、こういうふうにしてストアが流れます。そしてそれをクラウドレイヤーとして、アマゾン、アップル、グーグル、楽天、ソニー、NTTドコモ、KDDI、日本ではキャリアが力がありますので、そういうところもクラウドレイヤーとして参加してもらって、この多様な端末とコンテンツが一体となった、こういうふうな絵がかけないかと思っております。
ここでは、ごらんになっていただいてわかると思いますけれども、どこの部分でも決して独占事業者というのはなくて、全てのレイヤーで横断的な利用ができる。これを「コンテンツの水平展開」と言ってもいいかもしれません。さっきのエコシステム1.0は「垂直統合」、こちらのほうはコンテンツの水平展開という言葉で言っていいと思いますけれども、こういうイメージでコンテンツ産業が振興されたらうれしいなということで、長くなりましたけれども、提案させていただきます。

○中村座長
 ありがとうございます。提案いただきました。
 では、久夛良木さん、お願いします。

○久夛良木委員
 もう時間がなくなりそうなので、総論に近い話をさせていただきたいのです。私は、知財の1つであって、かつ最大の知財は何かというと、それは「人」ではないかと思うのですね。才能があふれる人がとにかく集まる。それがシリコンバレーであっても、シティーであっても、例えば、シンガポールであっても、世界にはいろいろ人が集うところがありますよね。きのうだとアカデミー賞授賞式がありハリウッドに集まる。きょうは通信関係の人がみんなバルセロナに集まっている。そこに行くと、いろいろな人が、例えばアイデアのある人であるとか、野心のある人とか、才能がある人が集まって情報交換がされる。それが加速度的にいろいろな可能性をたくさん生み出していくのだと思うのですね。それらを可能にする風土とか、カルチャーとかいうのは、もはや国というボーダーの中に囲われているわけではなくて、それぞれの中心地に向かって、加速度的に情報がどんどん行き交うような時代になっているとき、果たして我が国が、そういったような人が集う、才能がある人がみんな集まってくる場所であるかと。
もちろん、そういったところはまだ残っていると思うのですね。例えば、我が国には、素材であるとか、もちろんiPS細胞の研究であるとか、それから、中小企業を中心とした職人の方々が長年培ってこられたノウハウ、技術群。これらは我が国は今でも非常に強いものがあって、何かあると、まずそこに行かれるということだと思うのですが、残念なことに、電子立国であるとか、戦後、官民挙げてフォーカスしたところは、どちらかというとコピーがしやすいものをつくってきたがゆえに、ノウハウと人、事業、いろいろなものが今、世界に拡散しつつある。
自動車は頑張っていただいているのでうれしいのですが、自動車も動く装置というだけではなくて、今後、情報機器、ひょっとしたら車輪がついたiPadになってしまうかもしれないということを考えると、20世紀のさきの時代が大量生産、大量輸送、大量販売の時代だったとすると、今はまさに巨大な情報処理革命の中にいるわけで、この部分においては、我が国の本当の意味での実力、それから、多様性であるとか、もしくは世界から才能が集まってくるかということに関しては、非常に心配しているわけです。
このような我が国の状況の中で、どこに我々が貢献できるかということについては、残念ながら、資料のまとめの中の大きな枠組みの競争力の中にも、それから、コンテンツの中にも、それほど大きく出てきていない。どちらかというとデフェンシブな、デフェンシブというのはちょっと言い過ぎかもしれないけれども、何とかしなくてはいけないというのはありながら、これをチャンスと捉えての攻めの姿勢に転じるというのが見えて来ない。これをオフェンシブに考えている人たちは、もう世界は1つになったわけだから、国境もないと考える。しかも、サーバーとか、アプリケーションとか、プラットフォームとか、いろいろ言い方はしますが、人が集う1つの大きなプラットフォーム、それは世界規模の情報処理を担うサーバーの集積体になるかもしれない。そういったところに、どんどん吸収されようとしているわけですね。
我が国は戦後コピー可能なものをたくさんつくって、それらを外に向かって輸出していったわけではないですか。今後、ネットワークアプリケーションとか、クラウドサービスとかを考えたときは、世界規模の情報処理システムでは、それらを反対に吸収しているようにも見えるわけです。世界中の人々、世界中の関心、才能がある人たちをどんどん、どんどんそれらプラットフォーム内に吸収していく。あっと気がついたときには、国という立てつけそのものの意味が昔と変わってきてしまう。役割も変わってきてしまうという状況に今あると思うので、今後の10年ということを考えたら、恐らく今までの10年で起こったことが今後の10年で起こるのではなくて、ひょっとしたら2〜3年で起こってしまい、今までの50年で起こったことが今後の10年で起こせるかもしれない、という時代だと思うので、ぜひこの視点で、これから10年の話を考えるのだったら、もっと大きなピクチャーをまとめて、そこに従ったグランドデザインをみんなでシェアして、それを官民挙げて、わかりやすい言葉と共に可視化して、そこに持って行くシナリオと共に、それらを可能にする各年度毎のロードマップをきちんと策定して、みんなで強力に推進するということをやっていただきたいと思います。
以上です。

○中村座長
 ありがとうございます。
 ちょっと待ってください。お3方から手が挙がっているので、順番に指名いたします。まず、高橋さんから。

○高橋委員
 今のコンテンツに関しましては、もう言うまでもなく、IT、ICT、コンテンツ、今後の成長を牽引するというのは非常に重要で、ビジョンの骨組みの中により新たな位置づけで組み込むという、これは議論の余地がないと思うのですけれども、ビジョンに組み込むに際して、ちょっと気になったのは、さっきの国益議論で、余りに自明なので議論の必要はないかと思うのですけれども、ただし、コンテンツ議論になると、いわゆる物理的な局在性というのですかね、これが、まずコンテンツ系自身はそうですし、当然、端末はどこか別なところでつくられていますし、それから、クラウド、サーバー、ネットワーク関連、これも雇用関係も含めてインドでやっているかもわからない。こういうあたりは産業としては描かれる。局在性がない。
そこにおいて、さっきの「国益」という言葉は古いかもわからないけれども、言いかえると、このビジョンは、誰による、誰のための云々とありますね。このあたりの3つ及び何のためにという、ここのところをしっかりしておかないと、産業とか競争力という話とリンクしようと思ったときに、非常に多様な意見、場合によっては、コンテンツ産業ならいいのですけれども、特定のコンテンツ企業という、非常に大きな企業を含めて、そこという方向での議論に陥りやすいという、非常に危機感を持ちまして、したがって、具体的には、きょうの資料2の2ページ目、このあたりの冒頭にはちゃんと、誰の、誰による、誰のための、何のためのという、3プラス1あたりをしっかりと再認識しておかないとというのはビジョンの観点では非常に危惧したので、ぜひよろしくお願いしますという意見です。

○中村座長
 渡辺委員、お願いします。

○渡辺委員
 ICT、情報通信に関して、先ほど角川委員からも経団連云々という話が出ましたけれども、私も経団連で今、情報通信の委員長をやっておりまして、このことは、新しい産業をおこすとか、新しい事業をおこすという意味で大変重要なテーマだと思っています。ここに書いてあるのはどうもコンテンツだけのような気がしますので、情報通信、ICTの技術によって、例えば、ビッグデータとか、オープンデータとか、クラウド技術がどんどん進展してきますと、これは医療、介護だとか、あるいは街づくりのところに大変大きく役立ってくるだろう。事業としても、産業としても、大きな手段となってくるのではないかと思います。そういう意味で、これを知財戦略の1つとしてどう位置づけるかというのは、大きな基本的な視点として入れておくべきではないかと私は思います。それをぜひお願いをしたいというのが1点。
 それから、企業の立場として、少し細かいのですけれども、先ほど野間口委員からも出ました職務発明制度だとか、あるいはパテントトロールに関連した差止請求権のようなものは、こういうものの中できちんと位置づけて、できたら国際標準的な話につなげるとか、考え方をしっかりとさせるということも、ぜひ入れておいていただきたいと思います。
 以上です。

○中村座長
 三尾本部員、お願いします。

○三尾本部員
 角川の委員の御発表に関連してなのですけれども、私、IPTVフォーラムというスマートテレビの規格をつくっているフォーラムの幹事をしておりまして、ここ5年ぐらいで規格を標準化してきたのですけれども、ことし、とうとうスマートテレビ元年ということで、実際に製品化されるということが具体的に決まったのですね。したがって、市場に出ていくということになるのですけれども、今、一番大きな課題は、スマートテレビに流れるコンテンツが足りないといいますか、そんなにないということなのですね。スマートフォンの場合ですと、一般の方々が簡単にアプリケーションをアップロードして、みんなで使うというシステムをつくっていますけれども、テレビの場合はやはり公共性がありますので、誰でも参加できるということは非常に問題があるだろうということで、アプリケーション制作者をどうするかというところ、さらにはコンテンツをどうするかというところが非常に大きな課題になっているのですね。
こういった課題を解決していかなければいけないのですけれども、1つ問題と思いますのは、今までものづくりの現場、テレビのメーカーですね、現場と、あと、コンテンツ制作者との接点というものが余りなかったのではないか。プレイヤーが違っていたので、そもそもどういう方々がそれぞれ存在するのかという、お互いが知り合う機会が少なかったのではないかと感じます。そうしますと、今後、コンテンツということと、ものづくりということを融合して、さらに大きな日本産のいい製品をつくって世界市場に出していくということについては障害になるのではないかと思いますので、そのあたりを、マッチングの場を考えていただけたらいいのではないかと考えます。
 もう一点なのですけれども、角川委員の発表に便乗させていただいて非常に申しわけないのですが、私も角川委員の最後から2枚目のページに書かれていますメガ・コンテンツ・パブリッシャーというのは非常に重要ではないかと思っています。これまでパブリッシャーはそれぞれの業界ごとに個別にコンテンツを流していて、デジタル化はかなりされているとは思うのですけれども、やはり世界のアップルとかアマゾンに比べますと全然太刀打ちできない状態だと思うのですね。日本のコンテンツはいろいろすぐれた面もありますので、一体化して、一本化したパブリッシャーとして、デジタルコンテンツをネットワーク上に流していくという、そういうシステムが必要ではないか。それがないと、なかなかブレークスルーできないのではないかと思っています。メガコンテンツのパブリッシャーはどうあるべきかというのは難しいと思うのですけれども、やはりデータベースみたいなものをつくって、そこにはオープンデータとか、行政データとか、ユーザーがつくったデータとかも全部ひっくるめた形で一本化して大きく流していくという、そういう大きなシステムづくりをぜひ考えていただきたいと思います。
 以上です。

○中村座長
 妹尾座長、時間が迫ってきているのですけれども、私、委員としてコメントさせてもらってよろしいですか。

○妹尾座長
 きょうの座長は中村先生ですから、中村先生が御自身を御指名されればいい。どうぞ。

○中村座長
 指名します。済みません。
コンテンツのところで一言申し上げたいのですが、先ほども指摘出ておりました資料2の2ページのところをご覧いただきますと、「基本的な視点」というのがあります。この視点のところは、もともと私のコメントをベースにしてまとめていただいているのですけれども、現状認識に過ぎません。これから10年のビジョンを書こうとするならば、このあたり、大胆に変えていく必要があるだろうと私も思っています。過去10年のコンテンツというのは、今日もいろいろ議論出ていましたけれども、どちらかというとエンターテイメント中心で、人と人のコミュニケーションをベースに、それをどのように産業化していくかということを議論してきたのですが、これからの10年を展望すると、恐らくそれは大きく広がり、変わっていくだろうという気がします。それはエンターテイメントだけではなくて、教育ですとか、医療ですとか、あるいはコマースといった、コンテンツ業界だけではなくて、コミュニケーション全体に広がっていくであろうというのが1つ。
もう一つは、これも先ほど渡辺委員からお話がありましたけれども、これまでのコンテンツというのは人と人のものだったのですけれども、ビッグデータ、つまり、さまざまなセンサーから大量の情報が出てきて、それが電力であるとか、自動車であるとか、都市設計だとか、産業の各般で利用されているということになりますので、これはパーソン・ツー・パーソンからマシン・ツー・マシンにも広がっていくということになります。そうすると、ますますこのコンテンツの議論というのは、産業競争力とオーバーラップして直結する話になっていくだろうと思われますし、また、これまでのエンターテイメント産業、14兆円ぐらいを見ていたものの、産業規模、政策の客体でもありますけれども、それが非常に大きくなっていくのではないかということも考えられますので、そのあたりも含めて10年後ということを考えていく必要があるなと感じております。
ほかにコンテンツの分野、あるいはもう最後ですので、全体含めて御指摘、コメントなどがあれば。中山本部員、お願いします。

○中山本部員
 極めて簡単に1つ。人材問題、実はこれは知財戦略本部の第1回から極めて重大な問題として議論されてきて、10年間にわたって立派な作文ができているのですけれども、なかなか進んでいない。私はそのポイントは1つだと思っております。要するに、知財人材の処遇、これは収入が中心です。あと、プレステージはありますけれども、収入ですね、これが確保されなければ人材は集まらない。逆に言えば、収入が十分確保されれば、放っておいたって人材は集まるものです。例えば、アニメの制作の現場の人などは、ほとんど生業、なりわいとは言えないような金で働いている。こういうことでは集まるわけがないので、どうしたら処遇を上げることができるかという、そこのところも検討してもらいたいと思います。

○中村座長
 では、角川委員。

○角川委員
 私、スマートイノベーションと申しましたけれども、今までの知財本部では、コンテンツ、特許の、こういうものを使ったスマートイノベーションということだったのですけれども、最後に渡辺さんがおっしゃったのは、スマートイノベーションは実はそういうものに閉ざされていないので、スマートシティーだとか、スマートカー、そういうふうにして社会に広がっていくイノベーションが起こっているのですね。渡辺さんがおっしゃりたいと思ったことは、そういうものも知財本部で、医療もそうです、扱っていくかどうかということを事務部門できちっと一回総括してもらえませんですかね。私は、ビッグデータということ、今、中山先生がおっしゃったのは、そこも広めていこうという意味だと受けとめましたけれども、このままだと言いっ放しになってしまうおそれがありますので、スマートイノベーションというキーワードに、コンテンツ、特許から、スマートシティー、スマートカー、そしてスマートハウス、そういうところまで広げるかどうかを、スマートの医療ですね、そういうことまで検討してもらいたいと思います。

○中村座長
 では、渡辺委員。

○渡辺委員
 せっかく角川委員におっしゃっていただいたのでお話させていただきますが、経団連の情報通信委員会でもその話を随分しておりまして、各省庁に、総務省、IT担当大臣、総務大臣、経産大臣とか、そういうところに行って陳情しております。街づくりの話ですから、防災、減災だけではなくて、角川委員がおっしゃったように、スマートコミュニティー、スマートタウン、その中にITS(Intelligent Transportation System)とか、あるいはスマートグリッドのようなところに大変大きな知財が含まれていくと思います。その知財戦略をきちんとやりながら、世界にそれを売っていくのだというぐらいの気概で進めていくことが今、大変重要な時期ではないかと思っておりますので、ぜひよろしくお願いします。

○中村座長
 では、山本本部員。

○山本本部員
 何か違和感をずっと感じていたのですが、中村座長がおっしゃった資料2で、これから10年という視点のお話をされましたけれども、資料1のほうも恐らく、10年後はどうなるかというのはなかなか予測は難しいと思うのですが、普通に考えれば、オープンイノベーションはこれからどんどん加速しそうでという中でどう考えるかという視点がもう少し求められるのではないかと思っています。
 以上です。

○中村座長
 では、妹尾座長から。

○妹尾座長
 いえ、私は座長ではないので、きょうは一員なので、発言を最後にまたさせていただきます。3点ほどあります。
 最後の国益論というのがあるのですけれども、皆さん、これの力点が違うのはなぜかなということは、私は意外と簡単かなと思っています。10年前と比べて、知財の、国益に関する意味と方法論が多様化したからだと思います。いわゆる古典モデルだけではない。皆さんの御発言が各分野ごとの先生方によって力点が違うということは、事業ごとにビジネスモデルが変容と多様化してきているからです。なので、皆さんがごらんになっている国益につながる方法論が違うということだと思います。
これは、事業ごとにビジネスモデルが変容と多様化しているのをそのまま反映していることだと伺わせていただきました。当然、自動車のビジネスモデル、情報通信系、あるいはコンテンツ系ビジネスモデル、それぞれ全然違いますから、どうすれば日本の国益になるかの道筋が異なる。直接的な国益論もあるでしょうし、間接的なやり方もあるでしょうしということなのです。では、何を重要視するかといったら、変容と多様化した、マルチになったものをどういうふうに扱うかということです。要するにメタレベルに議論が移ったということだと思います。だから、ここの書きぶりも、実はメタレベルを許容するような書きぶりでないと、もう耐えられない。どっちかではなくて、どっちも可能になるようなメタの書き方をしなくてはいけないというのが第1点です。
 第2点は、先ほど角川委員がおっしゃられたものと関連します。私はここのところずっと産業生態論というのをビジネスモデル論とくっつけてやっております。ちょうど1対1対1がN対N対Nであると申し上げたのを裏づけるようなことを書いていただいて、我が意を得たりと思いました。ただ、細かい点はちょっと異なります。まずダウンロードですか、いやいや、アップロード・アンド・アクセスではないですか、みたいな点はあります。けれども、これはまた別な機会に御議論させていただければと思います。いずれにせよ、産業生態系を見ないと、もうどうしようもない。企業の事業そのものだけを見て、それに知財がどうのこうのという段階ではないということはおっしゃるとおりだと思います。
 3点目、野間口委員がおっしゃられたこと、あるいは最後のところで中山委員がおっしゃられたことと同じなのですが、資料1の43ページ以降に人材が入っています。昨年、専門調査会で専門人材育成プランというのを書いて、かなり強烈に我々は方向づけをしたはずなのです。何かといったら、もう専門人材重視ではない、活用人材重視だとウェイトを変えるべきだと。それから、もう一つは国際化ではなくて、グローバル人材だろうと。日本人の国際化を言っている段階ではない、もうグローバルな人材の調達と育成だろうというふうに踏み込んでいるのです。しかし、ここを拝見すると、かなり後退してしまったのではないか。昨年一年、我々は何をやったのだろうというふうに、極めて残念な思いをしています。人材については、ぜひ、もっともっと大胆に書き込んでいただきたいと思う次第です。
 最後に補足をしますと、先ほどから「スマート」という言葉が出ているのですが、スマートは、スマートフォンから、スマートグリッドから、スマートシティー、あるいはスマートパワーまで、5つあります。これについての共通項については、ぜひ私の『東洋経済』の連載をお読みいただければ、そこに書いてありますので、最後にコマーシャルタイムを入れさせていただいて、私の発言を終えさせていただきます(笑)。どうもありがとうございました。

○中村座長
 ありがとうございました。
 時間がまいりました。ほかにもきょうやりたかった、こなしたかったことが幾つかあったのですけれども、持ち越しとさせていただければと思います。1つは、冒頭で事務局からも話がありましたように、2つのテーマをつなぐ横串をどのように設計をしていくか。グローバル化というのは共通の課題として認知をされているわけですけれども、きょうの議論にありましたとおり、人材というのも共通している部分がありますので、それを切り出していいのかもしれません。中小ベンチャーのことですとか、あるいはデジタルネットワーク化といった個別論をそこでどう扱っていくかというのを引き続き議論させていただければと思いますし、きょうは、もし余力があればTPPについてもコメントをいただければと思っていたのですけれども、これも積み残しにさせていただければと思っております。
 ということで、皆さんから、こなせなかった意見など、コメントなどありましたら、事務局にお寄せいただければということです。
 次回のこのワーキンググループでは、ビジョンの取りまとめに向けた素案について御議論をいただく予定としております。
ということで、次回の会合について、事務局からお願いをいたします。

○畑野参事官
 中村座長、ありがとうございました。
 次回の日程を先に御紹介いたしますと、3月29日の金曜日でございます。今度は時間が午後となっておりまして、午後1時半から約2時間の予定となっております。引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 それから、きょう、意見を必ずしも言い尽くせなかったとお感じの委員は、できればペーパーで追加的なコメントをいただければと思います。今後の取りまとめの作業もございますので、できれば今週中ぐらいをめどに事務局に御提出をいただければありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○中村座長
 よろしくどうぞお願いいたします。
 では、これで閉会といたします。ありがとうございました。