コンテンツ強化専門調査会(第6回)議事録

議 事 次 第
  1. 開 会 : 平成22年4月23日(金)10:00~12:00
  2. 場 所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【担当政務官】 津村啓介 内閣府大臣政務官
    【 委 員 】 中村会長、大﨑委員、角川委員、久夛良木委員、末吉委員、杉山委員、
    谷口委員、別所委員、吉羽委員、中山本部員
    【事 務 局】 近藤事務局長、内山次長、戸渡次長、小川参事官、奈良参事官
  4. 議事
    (1)開  会
    (2)「知的財産推進計画2010骨子」及び今後の進め方について
    (3)映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会における検討結果について
    (4)各省庁によるコンテンツ政策の検討状況の説明
    (5)「知的財産推進計画2010」に盛り込むべき事項(コンテンツ強化関連)について
    (6)閉  会 
○中村会長
 おはようございます。では、ただいまからコンテンツ強化専門調査会第6回会合を開催いたします。
 ご多忙のところお集まりをいただきまして、どうもありがとうございます。
 後ほど、事務局から今後のスケジュールについて説明がありますけれども、今日は先日、知的財産戦略本部において決定された「知的財産推進計画2010骨子」を踏まえまして、「知的財産推進計画2010」に盛り込むべき事項について議論を行いたいと思います。
 津村政務官は遅れてご出席の予定だということですので、お見えになった際にお言葉をいただければと思います。
 では、この3月30日に開催された知財本部で、その骨子が決定されましたので、それについて事務局から報告をお願いします。

○奈良参事官
 それでは、まず資料全体につきまして簡単にご紹介したいと思います。
 まず、資料1(概要)が2010骨子の概要でございます。資料1が、知財計画2010骨子の本体でございます。
 それから資料2のほうがこの調査会でもまとめていただきました盛り込むべき事項でございます。
 資料3が「コンテンツ強化専門調査会の今後の進め方について(案)」でございます。
 それから資料4(概要)でございますけれども、後ほどご報告いただきますが、「映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会報告書」の概要、それから資料4がその報告書の本体でございます。
 それから、資料5の①が文化庁からの報告事項ということで、「権利制限の一般規定の検討経緯等」ということ、それから資料5の②が中間まとめの概要ということでございます。
 それから資料6が「経済産業省及び総務省におけるコンテンツ政策の検討状況について」でございます。
 それから、資料7が本日ご意見をいただきたい事項でございまして、「今回の論点」でございます。
 それから、参考資料1といたしまして前回のこの会における意見のまとめ。それから、参考資料2といたしまして今回ご議論いただく際の参考資料。それから参考資料3ということで目標指標例でございます。それから、最後でございますけれども、参考資料4といたしまして、ACTA(模倣品・海賊版拡散防止条約)というものが今、交渉が進んでいるところでございますけれども、去る4月12日から16日まで会合があったということで、その概要をご報告したものでございます。
 なお、特に条約交渉といたしましては例外的に現在交渉中の条文案の公開が合意をされておりまして、その条文案が公開されておりますので、併せてご報告いたします。
資料につきましては以上です。
 それでは、骨子が去る3月30日に決定されましたので、ご報告いたします。資料1(概要)をご覧いただきたいと思います。
 この専門調査会でご議論いただきましたことを踏まえまして、3月30日に総理を本部長にいたします知的財産戦略本部におきまして、「知的財産推進計画2010骨子」が定められたところでございます。今回のポイントといたしましては、国際競争力の強化ということで、総合的な知財マネジメントを含めました戦略的な展開が今回の主な目的になってございます。
 重点戦略といたしましては、3つの柱からなっておりまして、1つは国際標準の獲得を通じた競争力強化、2点目がこの会で議論いただきましたコンテンツ強化を核とした成長戦略の推進、それから3点目といたしまして、知的財産の産業横断的な強化策というものでございます。
 なお、今後の進め方でございますけれども、5月中に知的財産推進計画、現在骨子のものを計画という形で決定をさせていただきたいと思っております。なお、その計画には着実な実施を担保するということで、具体的な取組のスケジュール、担当府省を明記した工程表を含むものということで考えているところでございます。
 それから1枚めくっていただきまして、戦略1は国際標準の獲得・知的財産を活用した競争力強化というところでございますけれども、例えばグリーン環境エネルギーの分野でありますとか医療・介護を中核にいたしまして、日本が強みを持つ分野に選択と集中を行って、国際標準化を含めた戦略を推進するということ、それから欧米のみならず、アジア諸国との戦略的なパートナーシップを構築するということなどが柱となってございます。
 1枚めくっていただきまして、戦略2でございますけれども、このコンテンツ強化専門調査会でご議論いただきましたことをすべて盛り込んでございます。特に、重点施策といたしましては海外展開の強化を図るということで、ファンドの形成あるいは税制の在り方の検討を含む支援措置、諸外国におけるコンテンツ規制撤廃によりアジア市場を確保するということなどを盛り込んでございますし、またコンテンツ版COE、あるいは小中学校へのクリエーター派遣など、人材育成というところにも着目したというところが大きな柱だというふうに考えております。
 この他、ネット上のコンテンツ流通に深刻な損害を与えている著作権侵害コンテンツの規制強化というところも併せて図ることにしてございます。
 1枚めくっていただきますと、4ページが戦略3ということで、知的財産の産業横断的な強化策ということでベンチャー、中小企業の特許料金の減免制度の拡充でありますとか、ユーザーの利便性向上のための特許制度の見直しを推進するということなどが盛り込まれているところでございます。
 なお、本体のほうでございますけれども、後半のほうでございますが、具体的な施策の詳細ということで、短冊のようにいたしまして具体的な施策を盛り込んでいるところでございまして、また担当省庁も明記をしているところでございます。この会でご議論いただきましたことにつきましては、すべて盛り込んでいるところでございます。
 先生方におかれましては、短期間で活発なご議論をいただきまして、おかげで新たな知財計画の方向性というものを打ち出すことができました。誠に感謝申し上げます。
 ありがとうございました。
 続きまして、今後の進め方につきましてご説明をいたしたいと思います。資料3をご覧ください。
 これまで、5回の専門調査会を開催したところでございますけれども、今後、5月末に「知的財産推進計画2010」というものを、現在骨子のものを計画にするということでございまして、そのために更に盛り込むべき事項、あるいは更にもう少し議論を深めたほうがいい事項につきまして議論を行っていただきまして、最終的に知財計画2010という形で取りまとめさせていただければと思っております。
 先生方にはお忙しいところでございますけれども、本日を含め、あと2回お時間をいただいておりますので、ご議論をお願いしたいというふうに思っております。
以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。あと2回煮詰めていって最終的な計画になるということでございました。何か質問など、ございますでしょうか。
 よろしいですか。また後ほど中身の議論になりますので、その際にでもご発言いただければと思います。
 続きまして、この調査会の第3回の会合においても中間報告していただいたんですけれども、テレビ番組のインターネット配信を促進するための民間の取組であります映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会において報告書が取りまとめられたということですので、そのワーキンググループの座長をお務めの末吉委員から報告をしていただきたいと思います。
よろしくどうぞ。

○末吉委員
 末吉です。よろしくお願いいたします。
 お手元の資料4(概要)というものと資料4本体と2つございますが、簡単にまとめております資料4(概要)のカラーぺーパーのほうでご説明を申し上げたいと思います。
既に、第3回の3月3日のこの会合におきましてテレビ番組のインターネット配信を促進するための民間の取組があって、それは映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会と申しますが、これについてお話をさせていただきました。その後、3月末に正式に報告書がまとまりましたので、再度ここでご報告をいたしたいと思います。
 前回ご説明申し上げましたとおり、現在の契約実務からいたしますと、放送番組をネット配信するという場合には、放送についての権利処理に加えて、更にネット配信をするための権利処理が改めて必要になるということになってございます、
 このたび、本委員会におきましては放送番組のネット配信におけるルール形成として、3つの分野のガイドラインを取りまとめております。そこに「3つの契約ガイドラインを策定」とあり、①、②、③とございます。この3つの分野のガイドラインを取りまとめております。
 従来はこれらの分野でルールが必ずしも明確でなかったということから、関係者による取組を促進するために自主的にガイドラインを定めたものでございます。この3つのガイドラインは報告書本体の方では10ページから15ページに掲載をしているところでございます。
 更に、権利処理の集中化ということにつきましても議論をいたしました。実演家に許諾を取る際の一元的な窓口として、一般社団法人映像コンテンツ権利処理機構、ARMAと申しますけれども、それが4月から業務を開始しております。円滑な権利処理を実施するということによって一元的な権利処理に向けて権利者団体及び放送局など関係者が協力をしているということが確認されたところでございます。
 併せまして、映像コンテンツ大国の実現に向けての今後の課題ということにつきましても、大きく3点に整理してございます。このペーパーの最後の方の枠でございます。
 1点目でございますけれども、放送番組のネット配信普及促進についてでございます。現状は、放送番組のネット配信につきましては、まだまだ採算の合うビジネスとして完全に確立したということまでには至っておりません。本委員会におきましては、よりユーザーのニーズに応じましたサービス展開のためには、やはり携帯機器への転送サービスなども可能にする、 あるいは新しいメディア、特にパソコンではなくて家庭のテレビで楽しめるようなIPTVの普及というものが大きな鍵となるというふうに考えております。
 IPTVの普及のためには、具体的にはネット接続のキャンペーン、使う人を増やさないといけない。加入者の増加でございますね。それから中高年層でも簡単に操作できるというような使いやすい利便性の向上、あるいは魅力のあるコンテンツの供給ということが必要であるというふうに考えております。また、かつて衛星放送分野を開拓してきましたように、IPTVの分野におきましても、放送事業者と機器メーカーなどが協働してサービスの普及に協力していくということが重要であるという意見がまとめられたところでございます。これが1点目でございます。
 それから2点目でございますけれども、著作権侵害コンテンツ対策でございます。これはこの専門調査会の場でもいろいろ議論されているところでございますが、これはやはり膨大な著作権侵害コンテンツの蔓延が、正規配信ビジネスの阻害要因となっている。正規ビジネスの確立には侵害コンテンツの排除が不可欠であるということであります。この点につきましては国内外ともに政府に対策を強く求めることが必要であるとともに、見たいコンテンツがすぐに出てこない、配信されないといったことが原因でユーザーが侵害コンテンツに流れる傾向ということも、これは否定できないというふうに考えまして、民間におきましてもユーザーニーズに応じたコンテンツの正規配信ビジネスに取り組んでいくことが重要であると考えております。
 以上が2点目でございまして、最後に3点目、すぐれた映像コンテンツの制作基盤の確保についてでございます。現在、製作費の減少によりまして制作基盤の弱体化が懸念をされておりまして、制作基盤強化のためには海外展開の強化による新しい市場の確保ということが必要です。このためには関係者が協力をして、あらかじめ包括的な権利処理を行うということが重要であると考えております。また、政府に対しては、コンテンツ分野以外、例えば教育、あるいは観光などのデジタル化によって、制作機会の充実などの施策を求めたいという意見も出されております。
 なお、報告書には記載がないのでございますが、3月末の会合におきましては、放送局の方から、ユーザーニーズに応じたコンテンツの提供や期間限定の割引キャンペーンなどの各局の積極的な取組によって、ネット配信サービスの会員数は少しずつ増加しているということでありまして、単年度あるいは単月で見ると黒字となった局があるという点が報告をされております。
 このように、放送番組のネット配信につきましては、本委員会のような民間での関係者間の話し合いや、積極的な取組により以前より明るい兆しが見えてきているというふうに思われるところでございます。
 私は、この取りまとめのワーキングをやらせていただきまして、1ついい成果だったなと思うのは、テーブルができたということでございます。テーブルに放送局の方々あるいはいろいろな権利者団体の方々がお着きになり、その会合の場だけではなく、その会合の前後いろいろな形でコミュニケーションが図られるようになったと。これは更にこういうコミュニケーションが発展をしていくことによって、なかなか一律には解決できないところを民間の力で解決をしていくという道も私はあると認識したところでございます。
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。
 放送番組のネット配信については、先ほどの私どもがまとめた2010骨子に盛り込むべき事項の中にも電子配信される放送の割合が8割程度といった非常に高い目標、指標を掲げたところでありまして、その必要性は従来から随分叫ばれて、取組も民間でいろいろ行われてきたにもかかわらず、なかなか展望が開けないできたところ、難しい課題かと存じます。それに正面から取組をいただいたということです。
 こうした課題に対しては、規制や法制度で取り組んでいくアプローチと、それから民間のこうした取組で進めていくアプローチとがあって、その後者を中心に今回議論いただいたということで、非常に重要な取組だと存じます。今のご報告について、何かご質問、あるいはコメントなどございますでしょうか。どうぞ。

○中山本部員
 自由主義経済においては民間の合意によってうまくいけばそれが一番いいんだと思うんですけれども、民間の合意だと往々にしてアウトサイダーといいますか、入っていない人がいて、それが混乱を招くという状況はあろうかと思いますが、その点については何か議論はありましたでしょうか。

○末吉委員
 まだそこまでいっていないと思います。ばらばらなので、まずは少しずつ歩調を合わせるというか、ガイドラインをつくって、あとはその個別の交渉にこれから入っていこうという段階で、今のご指摘は今後の課題になるのではないかと思われます。以上です。

○中村会長
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 では、続きまして、各省庁におけるコンテンツ政策の検討状況について説明をいただきたいと思います。
 まずは、文化庁から著作権法上の権利制限の一般規定に関する検討状況について、ご説明を永山課長からお願いします。

○永山著作権課長
 文化庁著作権課長でございます。私の方からは、文化審議会における権利制限の一般規定、日本版フェアユースの検討状況についてご説明をさせていただきたいと思います。資料5①と資料5②、その2つの資料をご覧いただければと思います。
 資料5①が権利制限の一般規定の検討経緯をまとめたものでございます。簡単に一番下のところだけご覧いただければと思いますが、この問題につきましては、知財計画2009に基づきまして、権利制限の一般規定、日本版フェアユース規定の導入に向けて検討を行い、2009年度中に結論を得て早急に措置を講ずるとされたことを受けまして、文化庁の方で検討を進めてきている事項でございます。
 2ページ目をご覧いただきますと、文化庁における審議会における検討状況を整理しております。昨年5月から小委員会での検討をスタートし、これまでの間、43の関係団体からのヒアリング、それを踏まえての論点整理、また10月からはワーキングチームということで、週1回くらいのペースで8回にわたり検討を行い、その結果を踏まえてまた小委員会で検討を行い、つい昨日、中間取りまとめということで、若干文言の修正を予定しておりますが主査一任という形で取りまとめを行いましたので、その内容についてこれからご説明をさせていただきたいと思います。
 資料5②、これが昨日の法制問題小委員会の中間まとめの概要でございます。
1枚めくっていただきますと、1枚目は検討の背景ということになっておりますが、今回の中間まとめの全体構成といたしましては、1が検討の背景、2が導入の必要性、また3が導入する場合の権利制限の一般規定の具体的な内容と、そういう3部構成からなっております。
 検討の背景につきましては今の経緯のところで若干ご説明をしましたので省略をさせていただければと思います。
 2ページ目をご覧ください。2ページ目からが権利制限の一般規定を導入する必要性について整理したものでございます。2ページ目が小委員会の方で43の関係団体からヒアリングを行った賛成の意見、反対の意見を整理したものでございます。賛成の意見としては、個別権利制限規定という形をとっている我が国の著作権制度ということで、いわゆる形式的な侵害行為など、利用者、新規ビジネスの萎縮効果、現行の規定、著作権制度についてはそういう萎縮効果があるのではないか。また、個別権利制限規定を実際に立法化するには時間がかかるのではないか。そういう形で新しい社会の変化、技術の変化に対応できないのではないかと。そういう観点から、権利制限の一般規定というものの導入が必要だという意見と、反対する意見としてはそもそも重大な問題が生じていないのだということとか、権利制限の一般規定を導入した場合には居直り侵害などが蔓延したり、結果として訴訟コストの増大という形につながるのではないかという、そういう意見が出されたというのが2ページ目でございます。
 それを受けて、3ページ目、これが法制問題小委員会としての必要性の結論部分ということになります。そのような賛成、また慎重なご意見を踏まえた上で、法制問題小委員会審議会としましては、一番下にございますように、権利制限の一般規定を導入する意義は認められるという結論を出しております。
 その結論を出した根拠といいますか、基本的な考え方が上の3点ということで、反対する論者から言えば、現行の規定の柔軟な解釈で対応できるのではないかというご意見があったわけでございますが、それについては当然、解釈論による解決ということについては、これだけ著作物の利用というのが広範に進む中で、やはり一定の限界があるだろうと。また、著作権制度の中に明確な規定を置くということは、萎縮効果の解消ということからも一定の意義が認められるのではないか。また、やはり個別の規定の改正というのには一定の時間がかかるのではないか。また、3番目になりますが、権利者側を中心にした居直り侵害が蔓延するのではないかという懸念に対しましては、権利制限規定の一般規定の要件、また趣旨を明確にすることなどによりまして、ある程度そういう懸念というものが解消できるのではないかということ、全体を総合的に勘案した上で、法制問題小委員会としては権利制限の一般規定を導入する必要、意義は認められるという結論を出しております。
 4ページが、具体的に権利制限の一般規定ということで、どういう行為について権利制限、権利者の許諾なく利用できる場合ということで整理するのかということをまとめているのが4ページでございます。
 最初の黒ポツにありますように、このページにあるAからC、この3つの類型の利用行為について権利制限の一般規定による権利制限の対象と位置づけることが適当というのが小委員会の考え方でございます。
 最初のA類型、Aという行為については例にございますように、典型的に写真、映像の撮影に伴う、いわゆる写り込み行為、それについては形式的な権利侵害ということで権利制限の対象にすべきということになります。それは概念的に整理しますと、そこに下線が引いてございますように「付随的に生ずる当該著作物の利用」という、そういう写り込みについては権利制限の一般規定の対象ということで整理できるのではないかということでございます。
 また、B類型につきましては、そこにございますように下線が引いてございますが、「適法な著作物の利用を達成しようとする過程において合理的に必要と認められる当該著作物の利用」ということで、具体的に想定しているのが、そこの例にございますように最終的には適法な利用、許諾を受けた利用であるとか権利制限により適法に利用できる場合についての中間過程での複製、様々な編集行為が行われることになります。当然、CDの録音許諾、プレスの許諾を受けた場合でも、実際に製品としてプレスする前段階で様々な編集行為があるということで、その途中過程での複製ということは明確、そういう行為とかもう一つのポツにありますように商品化を、いろんな著作物の利用ということを企画する際に、その企画書などに当該著作物を複製するような行為、そういう行為については適法な利用を達成する過程において合理的に必要と認められる範囲で権利制限規定の対象にしてもいいのではないかというのがB類型でございます。
 C類型につきましては、そこに下線が引いてございます。「著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用とは評価されない利用」ということで、少しわかりづらいと思いますが、著作物の利用というのは基本的に我々、著作物を「視る」、「聴く」、そういう行為を通じて著作物が持っている観賞価値というものを私どもが享受しているわけですけれども、形式的には複製とか送信、そういう著作物の利用が行われていても、そういう著作物の価値、表現そのものを享受するための評価とは評価されない利用、そういうものがございます。
 例として挙がっているのが2つございますが、1つ目が技術の開発検証のために利用する場合ということで、わかりやすい例で言いますと、録画技術を開発する過程、また様々な配信技術、そういうものを開発する過程において著作物を実際に利用してみて、使ってみてそういった技術がきちんと機能するのかどうかということを試験、研究の過程で、技術開発の研究の過程で著作物が利用される場合。それについては、やはりその著作物の価値そのものを利用しようとする、享受するための利用ということで評価されない利用ということで、権利制限の一般規定の対象としていいのではないか。
 また2つ目のポツにありますように、情報ネットワーク産業で典型的に見られる利用形態。今回、平成21年、昨年法改正いたしましたが、検索エンジン、そういった利用であるとか、また試験研究、情報解析、そういう形の著作物の価値、表現そのものの享受ということの利用とは評価されない利用については権利制限の一般規定の対象としていいのではないかということで、法制問題小委員会の考え方としては以上AからC、この3つの類型について権利制限の一般規定ということで対象と位置づけることが適当というのが考え方でございます。
 5ページ目、ここは簡単にご説明しますが、今回の検討に当たりまして、様々な関係団体からご要望がありました。ご要望の中に障害者の関係、また教育関係、またパロディの問題というのも含まれておりましたけれども、それ以外については、様々なそれぞれ課題がございます。それらについては一般規定での解決ということではなくて、それぞれの特性に応じて別途検討をして適切な措置を講ずるべきということをまとめてございます。
 最後に6ページがございます。これが実際に条文化、これから今後法制化ということを検討していく段階になっていくわけですが、その法制化に当たりましては、当然ベルヌ条約、国際ルールとの整合性の問題、当然、刑事罰がかかりますので、罪刑法定主義、明確性の原則、そういう原則に十分留意した上で法制化すべきということがまとめられてございます。
 以上が中間まとめの概要でございますが、今後の予定といたしましては、5月、来月に文化審議会の著作権分科会にご報告させていただいた上で、その後、関係団体からの意見も踏まえたパブリック・コメントを行って意見を聞いた上で、秋ごろを目途に法制問題小委員会としての最終的な取りまとめをいただければというふうに考えております。
 私からは以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。続いて経済産業省及び総務省の検討状況について、事務局から説明願います。

○奈良参事官
 それではご説明いたします。資料6をご覧いただきたいと思います。
コンテンツ政策で主要な役割を担っております経産省、総務省におきまして、知財本部による検討結果も踏まえながら具体的な検討を行っているところでございますので、現時点での概要を簡単にご報告いたしたいと思います。
 まず、経済産業省でございますけれども、コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会というもので具体的に検討を進めておりまして、本日、午後に報告書を取りまとめ予定だと伺っております。なお、角川委員にも委員をお願いしているところでございます。
 対応の方向といたしまして、アニメ・ゲーム等の現場制作者育成でありますとかプロデューサー育成といった人材育成、それから海外市場の獲得、あるいは違法コンテンツ対策、それから取引の環境整備、書籍の電子配信等、こういったものについて具体的な提言、対応を整理する予定だと伺っております。
 それから、総務省でございますが、総務大臣主催のもとに、グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォースというものを立ち上げて検討しているところでして、特にコンテンツについてはそのタスクフォースのもとにコンテンツ振興検討チームを設けて検討中でございまして、現在、取りまとめに向けて検討中ということでございます。
 なお、中村会長それから川上委員にも委員をお願いしているところでございます。
 具体的に今、検討している内容といたしましては、制作力の強化方策でありますとか、ネット上の違法対策でありますとか、あるいは二次利用の促進、それからテレビの番組販売、放送枠確保といったことを通じたグローバル展開の支援などについて具体的に方策を検討し、提案する予定だというふうに伺っております。以上でございます。

○中村会長
 どうもありがとうございました。では、ただいまの各省庁の取組状況の説明について、ご質問等ございませんでしょうか。
 権利制限一般規定の検討、この小委員会は末吉委員、中山先生も委員でいらっしゃいますけれども、何かコメント等ございませんでしょうか。

○中山本部員
 コメントはないんですけれども、やはりいろんな面の萎縮効果等を考えて、是非これを早期に実現していただきたいと願っております。

○中村会長
 他にいかがでしょう。よろしいですか。
 では、次にまいります。「知的財産推進計画2010」に盛り込むべき事項について、議論に入りたいと思います。
 先ほど、事務局から説明がありましたように、5月末に計画が取りまとめられる予定ですので、今回、それから次回の会合で具体化しておくべき事項や追加して盛り込むべき事項について検討を行いたいと思います。まず、これも事務局から資料の説明をお願いします。

○奈良参事官
 参考資料2をご覧いただきたいと思います。「コンテンツ強化専門調査会(第6回)参考資料」ということで整理をしておりますけれども、1枚表紙をめくっていただきまして、まず、今日ご意見をいただきたいのは、コンテンツ特区を設け国際的な場を創造する、推進するということになってございますので、更に具体的なアイデアにつきまして先生方からご意見をいただきたいと思っております。
 まず1ページ目でございますけれども、これまで特区というような名称で実施されてきたものの例でございます。1点目といたしまして、構造改革特区というものがございます。これは国の規制を、地域を限定して改革するということで、その成功事例を全国に波及させようというものでございます。例えば、先端医療産業特区ということで外国人研究者の在留期間を緩和する。あるいはロボットの開発を進める特区ということで、ロボットの歩行実験のための道路使用の容認等を行うといった例がございます。
 また、その他の特区といたしまして、下の総務省のユビキタス特区というもの、これは例えばある地域におきまして携帯端末の開発環境を整備し実証実験を行うというようなものでありますとか、更には右側のサイバー特区というもの、これは物理的な場所ではなくてサイバー空間上でのクローズなコミュニティで流通ルールなどの実証実験を進めようというものでございます。
 1枚めくっていただきまして、2ページ目でございますけれども、今後、具体化するに当たってのイメージということで幾つか掲げさせていただきました。
 例えば、①でございますけれども、特定の区域内で実験的なコンテンツを創作いたしまして、様々なメディアを活用して限定放送する。その際、様々な円滑化を図っていくというようなこと。あるいは②といたしまして、特定地域内におきまして撮影が円滑にできる環境を整備していく。③といたしまして、特定地域において街全体の景観を取り込み、それをコンテンツに活用するというようなことがイメージとしては考えられるのではないかというふうに思います。
 基本的な考えといたしましては、先駆的な取組であり今後発展が期待できるものでありますとか、しかしながらその実施に当たって関係者間の調整が必要であるもの、それから当該区域がコンテンツの本場として今後認められる可能性があるようなものが考えられるのではないかというふうに思いますけれども、これらについては必ずしも財政投入とか法律改正を前提にしなくても、国や自治体が総合的にサポートするというようなものでもよいというふうに思われます。
 以上、コンテンツ特区のイメージということで掲げましたので、アイデアをいただければというふうに思っております。
 それからもう一枚めくっていただきまして、この骨子の中におきましてはコンテンツ分野に関する国際標準、プラットフォームの獲得を通じた競争力強化を図っていくということがうたわれておりますので、これらについてご意見をいただければと思っておりまして、まず3D映像に関する全体動向でございます。ご承知のとおり、3D映像は映画を中心に普及する兆しを見せておりますけれども、特にコンテンツの部分でございますけれども、映画以外の放送でありますとかゲーム、音楽、こういったところの供給が今後の普及の鍵になってくるというふうに言われておりまして、またその他、教育、広告、医療分野での活用も期待できるということが言われております。
 それから、またブルーレイの再生機器の規格について国際的な標準規格ができておりますけれども、様々なコンテンツを家庭に届けるような送信方式に係る標準化が重要だと言われております。また、眼鏡なしで3Dを見ることができるテレビの精度、あるいはコスト面も含めて今後の技術的課題だというふうに言われております。それから、この他3D酔いというような安全面にも配慮する必要があるというふうに思われます。これらを戦略的に進めていく必要があると思われます。
 それから、1枚めくっていただきまして、IPTVでございます。テレビをネットにつなぎまして、様々なコンテンツを楽しむというものでございまして、先ほど末吉委員の方からも今後の課題ということでご報告があったところでございます。真ん中のところでございますが、一部で日本の規格も国際規格に採用されているということ、また高画質配信ということでいうと非常に日本が強いということで言われておりますけれども、一方、欧米の動きも加速しつつありまして、海外とのデファクト競争が激化するというふうに言われております。
 こうした中、課題といたしまして、足元の国内の普及ということが大きな課題と言われておりまして、ここを戦略的に進めながら、国際競争力を高めていくということが課題ではないかと思います。また、一方、コンテンツの充実ということも課題ではないかというふうに思っております。
 以上でございます。大変恐縮ですが、資料の方に戻っていただきまして、資料7をご覧いただきたいと思います。
 「今回の論点」ということで、まず1点目がコンテンツ特区について具体的にどのようなものが考えられるのかということについて、ご意見をいただきたいと思います。骨子につきましてはコンテンツ特区の創設ということが掲げられているところでございます。
 これまで、この会議で出た主な意見といたしましては、サイバースペースを特区としていくと広がるのではないかというようなご意見でありますとか、地理的な場所的空間、特定の地域において特例をつくって何かのテストベッドをつくるということで情報発信するということが考えられないかと。それから撮影しやすい物理的な特区も必要だということ。それから、大学も含めた実験的な取組を行うことができるのもよいということ。それから、産学協同の場を特区として考えたらよいということ。それから2ページ目といたしまして、若い才能を開花させるような場を認めるのがよいというご意見がございました。
 それから2点目でございますけれども、プラットフォームの獲得を通じた競争力強化ということで、我が国としてどのような分野で戦略的に取り組んでいくかということでございます。
 3Dにつきましては先ほどご説明したとおりでございますけれども、コンテンツの供給でありますとか、多眼式の技術開発ですとか、安全面を含めた国際標準の策定を総合的に進める必要があるのではないかという点。それからIPTVにつきましては、3ページ目でございますが、欧米の様々な独自企画との激しいデファクト競争が予想されているということで、仮に外国のプラットフォームが主導権を握るということになれば日本のコンテンツが不利になる可能性もあるということで、このためにはまず第一に国内の利用拡大を進めて足元固めていくと、そして国際競争力を高めていく必要があるのではないかというふうに掲げてございます。
 これまでいただいたご意見では、新しいメディアを整備して、新しい市場の獲得を考えていくべきというご意見でありますとか、IPTVの日本規格が整っているので、普及を更に促進させることが重要であること。それから、3Dテレビについては、気分が悪くなるというようなことについて早急に対応する必要があるといったご意見がありました。
今度は、参考資料3をご覧いただきたいと思います。
 これまでも目標指標につきまして、いろいろご意見をいただいたところでございます。基本的なところについては変えているわけではございませんけれども、例えば1のコンテンツを核として海外から利益が入る仕組みを構築するというところにつきましては、基本的な考え方といたしまして、現在約1.2兆円あるところが、2020年には2.6兆円を目指したらどうかということでございますけれども、考え方といたしまして、我が国の現行の海外収入比率は約5%でございますけれども、これに対してアメリカが17%ということでございます。これは今の5%から倍増ということで、10%まで高まることを目標としてはどうかというものでございます。
 なお、数字につきましては前回2008年の数字でございますけれども、2009年の数字に改めているところでございます。
 それから1点これまでと変更したところがございまして、2ページ目のコンテンツの海外支援のところの(イ)でございますけれども、目標指標例といたしまして、「日本が積極的な役割を果たした映像コンテンツ(日本が権利を有するもの)による世界的ヒット(海外売上が50億円以上)が年間5本となる」ということでございます。これまで10本というふうに掲げさせていただいておりましたけれども、なかなかハードルが高いのではないかというような委員の先生方の意見もございましたけれども、ここでは年間5本ということにさせていただいております。現行でも、50億円以上あるものは年に1本あるかないかということでございます。
 一方、今後、映画だけではなくて、ドラマ番組というものも非常に海外へ展開していく可能性というのは大きく秘めているんではないかというような意見もございました。そこで、映画だけではなくて、ドラマ番組等も含めまして、2020年に向けて年間5本となるように目標を設定してはどうかということで掲げてさせているところでございます。
 その他につきましては、大きく変更したところはございません。これらも含めまして、目標指標につきまして本来の目的に沿ったものとなっているのかどうか、現実的なものになっているのかどうかということなどにつきまして、ご意見をいただければと思っております。
 その他、特に資料はございませんけれども、これは先ほど見ていただきました骨子に盛り込んだこと、これまで議論いただいたことはすべて盛り込ませていただきますけれども、それ以外にもし何かあればご意見をいただければというふうに思っております。
 説明は以上でございます。

○中村会長
 どうもありがとうございました。
 3点ぐらいありますね。まず特区、それから国際標準化、そして目標の指標ということですが、ではテーマごとに議論をしていただければと思います。
 まず最初に、コンテンツ特区についてご意見等をいただければと思います。参考資料2と資料7をご覧いただいて、まず特区について意見、コメント等あれば、お願いいたします。いかがでしょうか。

○角川委員
 コンテンツ特区というのは、非常に魅力的なテーマじゃないかなと思います。是非推進してもらいたいと思うんです。ただ、コンテンツ特区はこういう制度をつくりましたよというだけでは十分ではないんじゃないか。なかなかこのコンテンツ特区のイメージが、地方の行政の人にはわかりにくいというふうなことがあると思います。
 もしこういうことが可能ならば、1つの提案としてで結構ですけれども、コンテンツ特区を募集するというのはいかがかなと思うんです。国がコンテンツ特区を地方に募集して、国の方から例えば5地区ほどの特区を指定して、そこにメリットを与えていくというふうな考え方だと思います。
 この考え方は割と最近の国のコンテンツ重視の流れのなかで、いろんな地方から映画のまちにしようとか、いろんな話が出てくるんですけれども、その割には非常に掛け声だけで、じゃ、そのまちが何を考えているのかというと、ほとんど内容がないというふうな感じがします。例えば、映画関係の裾野である産業を招聘するというふうな事例を見ても、その集中化に対して何らかの行政として手を打つのかというと、具体的には何もない。残念ですけれども。それで、すべて国に頼るみたいな形になっているんです。みずからの努力も、また足りないと。
 ですから手を挙げていただいて、ある種の、いい表現かどうかわかりませんけれども、競争環境をつくって、国がそこを指定すると。例えばそういうところで、その地域から映画をつくりたいといった場合でも、前回で決めていた、先ほど報告がありましたファンド形成とか、地方発の映画についてはコンテンツ特区には重点的に優遇するとか、そのいうような施策が必要なんじゃないかなと思います。
 中国のコンテンツ振興策は皆さんご存じのとおり、ネットワークゲームと、それからキャラクターと、それからアニメの育成にものすごい力を入れております。それが日本の水準に追いついたところで、結局そこで初めて日本のアニメを開放すると、受け入れをするというふうなことが見え隠れしているんですけれども、その場合に今5地区ぐらいの地区を選定しています。例えば北京、それから天津、広東、重慶、そういうふうなところには、本当に国から何十億円というレベルの支援金を出すし、その地域の方もそれにこたえようとして非常に熱心な活動をしておりまして、これならば特区というのは意味があるなと感じてきております。
 角川なども今度、広東にマンガの出版社をつくろうというふうに今、4月1日から始めました。これはもちろん特区の優遇にこたえたいと、こたえられるということで出ていくんですけれども、そのような形で、せっかくこのコンテンツ特区というのはすばらしいアイデアだと思いますので、これを中身のあるものにしていきたいなと提案したいと思います。

○中村会長
 ありがとうございます。いかがでしょう。どうぞ。

○中山本部員
 日本全体が閉塞感のある中で、この特区をつくって、そこが非常にうまくいけば、それを全国に及ぼすということで私は大賛成なんですけれども、ちょっと質問があるんですけれども、交通規制とか、爆薬を使いやすくとか、子役の問題とか、電波の割り当てとか、これは内容はわかるんですけれども、著作権とかあるいは商標権の調整を特別に円滑化するというのは、これは具体的にどういうことを考えているのでしょうか。

○奈良参事官
 これについては権利者の方々の許諾が必要になってくるというわけでございますけれども、例えばそこで国や自治体やらが間に入ってそういった場を設定して調整をするというようなことなどが考えられるのではないかなというふうに思っております。
 なかなか具体的にその制度を変えるということになりますと少し時間もかかるのかなというふうに思っておりますので、まずはできるところでそういった調整を図っていくということが考えられるのではないかなと思っています。

○中山本部員
 要するに、使用したい人と権利者との間を、国だかあるいは地方公共団体か知りませんけれども、それが調整をすると、仲立ちをするというだけの話ですか。

○角川委員
 いいですか。これは、ちょっと僕のジャストアイデアなんで、皆様にまたいかがかということでご相談したいんですけれども、このコンテンツ特区になったところが例えばマンガ、アニメのフェアをすると、国際映画祭のような、あるいはコミック、コミケみたいなものを開設する。その時に、そこの特区の、その認められたマーケットにおいては、例えば1日ライツフリーの日を設けるとか。民間の、結局どうしてもプロになる前のアマチュアの人というのは、やっぱり尊敬するプロのまねをすることから始まってきますよね。ですから、コミケから非常に多くの才能が出たように、コンテンツ特区で行われるそういうイベントに対して温かい目で見てあげる、1日著作権フリーの日とか、そういうふうなことを題目にすると非常にアマチュアの人がそのフェアに参加すると思います。そんなことはちょっとジャストアイデアでいかがかと思いますけれども、申し上げたいと思います。

○中山本部員
 実は私もコミケを見に行って、大変なエネルギーがあそこにあるということを感じましたけれども、あそこは著作権侵害の巣窟なんですね。私も基本的にはああいうのを認めて、やっぱり若い人の芽を摘んではいかんという気はするんですけれども、それを実現するためにやはり著作権法をいじくらないとちょっと、仮に1日でもフリーというのは難しいので、著作権法の改正ということになるんでしょうか。

○角川委員
 著作権法の改正にいく前の何か実験はいかがなんでしょうか。例えば、C3というアニメのイベントをしている会社があるんですけれども、ここでは1日だけガンダムのコンテンツはフリーになるんです。それはやっぱりガンダムの著作権を持っている会社がそこを主催しているからそれが可能なんですけれども、それをもう少し枠を広げたいな、広げたらどうかなと、いかがかという提案でして、著作権法改正にいく前の段階として何かあるんじゃないかと。

○吉羽委員
 特区に賛成をする立場ではあるのですが、今のコミックマーケットの話で言いますと、あれは著作権侵害の巣窟だけれども、とりあえず目をつぶっていこうというような寛容さは、著作権者も、その著作権者から著作権侵害を訴えなさいと言われる版元も一定理解をしながらやってきているところがあります。それを公的に認めますよということが起きると、実際コミックマーケットの中で売られているものの中で必ずしも創作性が高いものばかりでもないし、いわゆる非常に「やおい」とかと言われる、性的な表現のものがはびこってしまっている実態としてはあるわけです。それも含めて、多少なことは大目に見ていかないと文化は発展しないよねということはわかりつつも、ともするとこの手のことというのが何でもありというようなことにつながりかねなくて、僕は著作権法上パロディが認められていないというのはちょっとまずいなと思っているんですけれども、それはパロディ行為によって新たな創作物が生まれるということがあくまで前提として期待されているところがあるので、ここの部分だけ取り上げられて、特区が要するに著作権侵害をやってもいいんだというような誤解だけが走っていくというのはちょっと危険な印象は持っています。

○角川委員
 ジャストアイデアと申し上げたんで、やろうよと言っているのではないんですけれども、でも何かうまく知恵は働かせる余地はありますよ。

○中村会長
 それはその侵害をその区域で認めるというよりも、そういった例えばフェアとかイベントをやることに合意をして賛同した権利者が集まって、その範囲内でやるという、そういう趣旨ではないんですか。

○角川委員
 実施に当たってはいろいろと問題があるので、それは非常に丸めなければいけないんですけれども、ただジャストアイデアで、そういうことも特区の中で指定された例えば5地区なら5地区を決めれば、そんなところからそういう優遇策として権利者も出版社も認めてあげる方向で考えられないかということに限らせていただきたいと思います。ここは討論する場じゃないと思いますので。

○杉山委員
 実は参考資料の2にあります1ページ目の右下、デジタルコンテンツの管理流通ルール整備というのは、これは私の方でやらせていただきました。
 これは、反省としてはもうちょっと多くの権利者団体の方とか、権利を持っている方々にこれを知らしめることができればよかったのですが、予算がついてから、実施するまでに数カ月しかないという、よくありがちな、1年間でやるんだけれども1年間は現実には作業時間がないというお役所にありがちな時間の中で、それでも今お話が出たように幾つかの著作権者の方から有名なキャラクターをお借りしまして、仮想空間上でこれをクリエーターたちがアレンジしてよいというやり方をやりました。
 これに関して、現在の著作権の問題に踏み込まず、個々の契約と範囲によってその著作権者の人がここまではここでこういうふうにいいよとか期間とか決めていけば、民間のルールの中で解決できるだろうということで、このセカンドライフとか、他の日本のものとか、そういうものを幾つか使わせていただいたんですけれども、その中でやりました。時間がなかったので、小さな実験になってしまいました。ただし、そういう二次著作物、三次著作物がもともとのオリジナルなものから出てくるということはここで少し実験をいたしまして、やりようがあるんじゃないかというのが結論になりました。
 それから左側の下にある携帯端末向けマルチメディア放送の実証実験、これも僕の方でかかわらせていただいているんですが、福岡でやっておりますが、まだ3年間続くので、あと1年半くらいあると思うんですが、総務省さんからどんと降りてくる時に、もう少し事前に福岡市とか福岡県とネゴがあったら、もう少し大きなうねりの実験ができたのではないかなと思います。現実には福岡の大きなバス会社などがその気になってくれまして、携帯端末向けの電波の方でバスの中のデジタルサイネージを時間ごとに変えていくというようなこともできたんです。ですから、もうちょっとそういう特区をつくる時、地元がかかわる時はもっと巻き込み型でやると良いのではないかと思います。福岡でやっているといっても、本当に福岡の人は知らないですし、本当に一部の人が実証実験をやっているというふうになってしまうので、もったいないと思います。どちらにしろ、特区をやる時というのは、そういう告知の問題というのがあって、せっかくやるのであれば、なるべく巻き込んでやりたいなというのが、僕が実際かかわった感想です。

○別所委員
 僕は特区というのが、前回の概念が多岐に渡ってしまって、特にコンテンツ特区というと広がりが大き過ぎてわかりづらいのかなと思ったんですが、議論をしていく中で見えてくることがたくさんあって、僕も総論としては是非賛成で、やるべきだと思います。
 なぜかというと、やることによって問題があぶり出されて、その後どういう方向に進んでいくかということが、著作権においても、それから政策においても、あるいはアウトプットにおいても見えてくると思います。
 ただ、ちょっとお聞きしたかったのは、耳ざわりがいい言葉ですので、例えば経済特区とかそういうふうに言われている、他の分野の特区という政策は、具体的にどういうふうに成果をはかっているのかということ。それから、時限的にこの特区というのはあるんでしょうか。このあたり等、まず教えてほしいなと思いました。すみません、不勉強なんですけれども、少し基礎的なところを、具体的な例が既に別の特区であれば、教えていただきたいのですが。

○奈良参事官
 例えば、ここで1ページ目に掲げさせていただきましたけれども、構造改革特区ということで規制を緩和した例でございますけれども、そこの地域の中で限定をしてやって、それで問題点がない、あるいはうまくいったということであれば、それが全国展開をしたというような例もございます。
今の規制改革の話でいいますと、規制改革の評価調査委員会というものを設けて、それがうまくいったのかどうかということを評価した上で、それがうまくいけば全国展開するというような仕組みになってございます。

○別所委員
 具体的に全国展開したものもあるのでしょうか、あるいは時限的に何かあるのでしょうか。私が何を言いたいかというと、コンテンツ特区と言われているものの成果をどこではかるんだろうなという思いなんです。つまり、何本制作されたからいいとか、あるいはそれがどういった収益を得たからいいということになりますと、僕は映像というのはビジュアルビークル、情報を運ぶ牽引車だと思っていますから、例えばそこで国家政策的に観光を資源として開発した作品なんだとか、あるいは何度もここで言っていますが、国として新幹線であるとか、そういうものを売るために例えばつくられた作品が、結果的にその作品の収益ではなくて例えば観光でそこに収益が生まれたとか、そこで表現されたプロダクトプレイスメント上の商品が売れたとか、そういったところの、非常に多岐にわたる成果というか、そういったものではかっていかないと、コンテンツの本来の国家規模で考えるコンテンツ特区の成果は何かという、その成果目標というか、目標値がどこに置かれるかというのは非常に重要だと感じます。
 同時に、これも前回も言っていますけれども、インプットとアウトプットというのがやはりごちゃごちゃに議論されがちなのがコンテンツの世界だと思いますが、もちろんこれは、つながっている連続性のあるものですが、つくるというサイドのインプットの部分と、それを送信したり享受してそこで具体的な成果を出すという部分と、2つがこれは特区の中で裏表、表裏一体としてあるべきなのか、ばらばらであるべきなのか、議論の余地を残すまでもないかなと思います。
 それから、私どもの先ほどの具体的な例でいいますと、ショートショート・フィルムフェスティバルでは音楽でインスパイアされたショートフィルムをつくろうというのを昨年からやり始めているのですが、非常にやはりハードルが高くて、音楽著作権者の団体の皆さんからは、やはり勝手にその音楽にシンクロさせられる作品が、ショートフィルムが一体どんなものかわからない以上は音楽を提供できないと、そういうようなことをよく言われます。ポルノ映画がつけられたらどうするんだと。
 そういう、たられば、イフで始まることが非常にたくさんあってハードルが高いこともありますので、特区的なプロジェクトというものにも、地理的な特区とかサイバー的な特区もいいのですが、プロジェクトそのもので手を挙げたものにも特区的なインセンティブというか、猶予を与えるような、そういうこともあってもいいのではないかなと思います。

○中村会長
 今の期間と広がりの話なんですが、例えば先ほど杉山委員がおっしゃった福岡の例だと、あれはユビキタス特区ですよね。総務省のユビキタス特区というのは地デジが整備されるまでの3年間という時限が切られていて、各地で実験をやって、ですから福岡でやっている例って、たしかあれは今の法制度ではできないやつを認めて、そういう電波の使い方、1つの電波で通信をやったり放送をやったりしているので、今はできないんですけれども、そういったことをやって、成果が出てきたら法制度をごろっと変えて、そういった、いわばメディア融合の新しいサービスができるようにしましょうと。そうすると、特区じゃなくて全国でそれができるようになりますねと、そんなしつらえでやろうとしているものがあって、今、本当に成果が出るのかということを試しているという最中だと思います。
 ですから、このコンテンツ特区なるものが成果を出して日本全体がコンテンツ特区になるといいますか、それによって中国とか他の国との競争に入っていけるという、そういうことができれば意味がある特区になってくるんだろうと思いますが、他に特区についてのアイデアなど
 お願いいたします。

○久夛良木委員
 先回も意見を述べさせていただいたんですが、メディアが変わる時、もしくは新しいメディアが加わる時というのは、ある意味でコンテンツが花開くというか、爆発する時だと思うんですね。コンテンツ特区というものを考えた時に、例えば特定の場所を指定する、博多で映画を撮るとか、そういうことだけではなく、インターネットという場、ここの中で本音と建前みたいな議論があるとするならば、その本音と建前を使い分ける共通のコンセンサスがあるので、コンテンツ特区を導入するための具体的な方法論がわかりやすいと思うんですが、反面オフェンス側とデフェンス側、というような対立軸もあるというふうに思うんですね。
 この間、川上委員がすばらしい解説をされましたが、そもそも今の「インターネットそのものが特区」であるというふうに考えるならば、何も我が国でやらなくても、その上でどんどん実験はされていく。もしくはどんどん新しいコンテンツがつくられていく。そういう時に、インターネットという特区の上でいろいろな可能性が花開こうとしているのをあえて制限するとか、もしくは何とか引き戻そうとするような力ばかりが議論で働いてしまって、そもそも我が国としてコンテンツで競争力を高めよう、もしくはコンテンツをもっと伸ばそう、という本来の議論ではないところの議論になってしまうんじゃないかという危惧があるんですね。
 ですから、例えばタンジブルにやってみなさい、というようなものをもっと明確にして、それについて、先ほど角川委員の話もそうだったと思うんですが、ある意味寛容をちょっと通り越えるかもしれませんが、ここはぜひやってみなさいと促す。ただし、これ以上いったら、あるルールをつくりませんか?とか、何かそういう見えることをやらないと、後になっていったら多分、時代を押し戻す話とフラストレーションばかりたまるんじゃないかというように危惧されるので、是非ともその辺も含めて、起こりつつあることに対してもっと前向きに攻める、つまり我が国の競争力を高める、コンテンツの力を強めるというふうな方向で議論をしていただければと思います。

○杉山委員
 本当にそうだと思います。今回の論点の資料7のところに、大学というのが最後出てくるので、ここにちょっと意見を申し上げたいのですが、1枚目のところに、プロフェッショナルの技術を学生たちが共有できる産学協同の場を「特区」というのと、若い才能を開花させるべく「特区」というのがあるのだと思うんですが、うちの大学はそれなりにリスクをとってやっているんですが、よく芸術系の大学の学生から聞いても、どうしても大学は夜8時等で全部コンピュータが閉められて、ここからやりたいのに大学にいられない。それから、我々も届出制で、だれかそいつらについていないと24時間できないというような。それからまた、大学生とか若い人はほうっておくと自分の健康のことも気にせず3日4日徹夜して、それこそ死んでしまうみたいなこともあり得るんですね。
 ですから、なかなか大学だけでそういうリスクをすべて取り切って、若い才能が集まる場というのをやれない面があります。なぜかというと、今は非常に保護者の方も強くて、何かあると大変な訴えを起こされてしまうというリスクがあるんです。ですから、そういうのは何かそういったセンターを設けて、昔ソニーさんもゲームをやろうと何か若い人を集めて寝泊まりして、ずっと朝から晩までずっとゲームをつくれる場を確かやられたのを覚えているんですけれど、そういうようなものをきちんと24時間管理人などきちっとついて、それで今でしたら3Dのカメラとかなかなかまだ開発途中とか、売られているものでもないですけれども、ソニーさんとかパナソニックさんがどんどん新しいものをそこには置いて、若い人たちにどんどん使わせるようなことというのは、少しはお金がかかりますけれども、やるといいかなと思います。それはつまり、割と具体的にきちんと予算をつけて管理体制をつくればよいのではないかと。なかなか大学の枠ではそういう完璧オープン、24時間365日みたいのは、日本でやりづらいんですよね。

○中村会長
 他にいかがでしょうか。はい、どうぞ。

○中山本部員
 コンテンツに関することをすれば、やはりどうしても著作権問題というのはこれは切り離せないと思うんですけれども、先ほどの事務局のお話のように、権利者と利用者側の間を仲介するというだけじゃ、なかなかこれは特区としての効果は出てこないんじゃないかという気がします。
別所委員とか角川委員のおっしゃられたことを、もっともだと思うんですけれども、道路規制とか爆発物の規制は規制ですから、緩くすれば、どういう問題があるかは別として、許すだけで済むわけですけれども、著作権を緩くすると権利者の方の利益を今度は狭めるという作用があるので、これはなかなか難しい。これはやっぱり法律でやらないと、やろうと思った場合には難しいんじゃないかと思うんです。
 私は、やっぱり特区をつくる以上は、著作権法の改正も視野に入れて検討をしてもいいんじゃないかという気がいたします。そうでないと、なかなかコンテンツは特区をつくってもうまく機能しないんじゃないかという気はいたします。
 ただ、先ほど言いましたように、これは権利者の方の問題もありますので、法律をつくるといってもなかなか容易ではないということは言えるかと思います。

○角川委員
 今回推進計画をきちっとつくらなくてはいけない段階では間に合わないかもしれませんけれども、せっかくコンテンツ特区をやるんでしたら、実現するという方向に決まりましたら、あとワーキンググループをつくって、今日のこういう討論をワーキンググループに任せてもらったらいかがかなと思います。そうすると何か実りある話が出てきそうな気がしますけれども、いかがでしょうか。
 映画のフィルムロケーションの1つ例を申し上げますけど、『バベル』という映画があったのを皆さん覚えていらっしゃるかもしれませんが、あのバベルの監督が、カンヌ映画祭で、「東京ほど映画人にとってフレンドリーでない街はない」というふうなことを発言して、ちょっと日本が恥をかいたなんていうか、そんな感じがしないではなかったんですね。その時に、映画『バベル』には首都高速が出てくるんですけれども、そこで警視庁から2回ぐらい始末書をとられて、3回目は役所広司さんが頭を下げに行って、それでようやくあのシーンができたと聞いています。世界で一番、今世界中の映画人が映画のロケーションをしたいのは東京だと言ってくれているのに、その東京が世界で一番フレンドリーでない街だと言われるのは、やっぱり悲しいですよね。
 ですから、僕も東京国際映画祭の支援をやって感じたんですけれども、本当に消防と警察署が厳しいんです。厳しいですから、非常に努力してそれをクリアした結果レッドカーペットが敷けるとか、成果はあったんですけれども、何かそれが非常に大きな負担を与えているのも事実なんですね。ですから先ほど提案させていただいたように、特区として地方行政が手を挙げるとそこで指定を受ける、そうするとやはり街の人も誇りに思うし、そうやって我々が手を挙げた以上は交通規制とか、そういう問題も前向きに解決していこうよという機運が生まれてくるんだと思います。そういう意味で、先ほど冒頭に申し上げたようなワーキンググループをつくって、その中で手を挙げた行政の中で指定をしていって、そこで実りあるものにしていければいかがかなと。
 そうすると、皆さんの今までのご危惧だとか、大枠では賛成なんですよね。それがどこにいくのか心配だというのは、あるころ、きちっと位置づけられるかもしれないと思います。

○中村会長
 ありがとうございます。非常に建設的な意見が特区について出てまいりました。
ちょっと整理してみますと、まず別所委員からコンテンツ特区の成果はどう見るのだと、それは全国にどのように展開をしていくかということが大事だというお話があって、また同時にインプットとアウトプットをしっかり考えなくてはいけないというご指摘ありました。そのとおりだと思います。
久夛良木委員からは、その競争力を高めるという方向でやってみなさいと、タンジブルで見えることを明確化すべきだというご指摘がありました。私もそうだと思います。これは非常にいい施策なので、わかりやすくてちまちましたものでない、パンチの効いた取組に設計していく必要があるだろうなと思います。
 その際に、角川委員から募集型で、数は幾つにするかちょっと考えなければいけないんですけれども、例えば5なら5という地区を指定すると。その際に、地域の努力・競争という、そういうメカニズムが必要だということと同時に、どういう支援・施策をそこで国が打っていくのかという、どういう意味をそこにもたらすのかということも、これは我々の仕事として大事だと思います。
 その際に、例えばこれまでも議論してきたような様々な施策、電波を開放するとか税制の措置とか、大学のCEOをつくるとか、あるいは観光と絡めるといったものを重畳的にそこに集中配分するということになるのかなと。あるいは、その他のこれまであるような特区と一緒に何かを合わせてやっていくようなことというのも必要かもしれないですね。
 その上でそのアプローチといいますか、支援として特区の意味というのは幾つかあると思うんです。先ほど来、著作権法改正も視野に入れてというお話がありますように、制度とか、それから規制を緩和するというやり方もあるでしょうし、税制あるいは財政の支援によって持ち上げるというやり方もあるでしょうし、やってみましょうよということで集めるというアナウンスメント効果というのも結構大きいと思うんですね。この地域でやろうよという、そういったことをうまく組み合わせていく必要があろうかと思います。
最後に、角川委員からワーキンググループという話が出ました。実りある特区としようとすると、結構これはパワーが要ると思いますし、計画ができた後の継続した取組になっていくと思いますので、そのたてつけといいますか枠組みを別途相談を事務局ともさせていただければと思います。
 ひとまず、では特区の議論をそのあたりにしておいて、この特区を本当に設計しようとすると諸法令との関係というのもちゃんと考えてやっていかなければいけないと思いますので、今後、幾つかの省庁とも関係してくると思います。関係省庁においても検討をお願いしたいと思っております。
 続いて、次の課題であります国際標準化ですが、これについても意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
 3D、IPTVなどが今日、示されておりますけれども、このあたりについてもご意見があればお願いをいたします。

○角川委員
 テレビの3Dが今もう製品が発売されるところまで来ましたけれども、ここに来て、正面からテレビを見ないと、寝転がって見ると目に障害が起こるとか、いろんな問題点が出てきていると思います。それで、映連にも電気メーカーからそういう何かコンソーシアムをつくらないかという話があるんです。3Dのテレビが実際始まったらコンテンツが少ないんじゃないかという危惧があるというのも出ております。そのコンテンツ業者が3Dのコンテンツをテレビで流すというふうな状況を考えました時に、私はやっぱりコンテンツ事業者って零細なところが多くて、問題が起こった時にコンテンツ事業者が悪いんだというところで一方的にコンテンツ事業者に非難が集まるような構造が予想されるんです。私は、恐らくこの3Dテレビが始まっても、コンテンツ事業者からの3D番組の提供は余りないというふうに思うんです。また、あったところは非常に勇気があって、そういうトラブルを恐れずにやるところしか番組をつくらないんだと思います。消費者保護も大事なんですけれども、提供するコンテンツ事業者を保護する基準なり、何か対策をつくることが3Dテレビの普及に必要欠くべからずであるものだと思います。かつてピカチュウの件、具体的に申し上げると名前がわかってしまうので申し上げにくいんですけれども、そこでもコンテンツ事業者に非難が集中してしまって気の毒だったという話も聞いております。そういう点で映画館の方は、これは映画関係者の責任でやるということは非常に明確だと思いますので、それについては対策が必要だとは申し上げませんけれども、テレビの方はそういう対策が必要ではないかなというふうに思います。

○中村会長
 他にいかがでしょうか。

○久夛良木委員
 資料7の3ページの上から2つ目のポツなんですが、この「オープンインターネット分野では」という中で、最後に「我が国コンテンツが不利になる可能性もある」、これは私ははっきりとよく理解できないのですが、例えばどういったことを想定して不利になる可能性もあるというふうにお考えになっているのかな?と思うんですね。
 なぜかというと、オープンネットなネットワークとして、今のインターネットというのはどんどん進化していて、かつ今後もその進化の流れはとまらない。様々な技術開発も含めて、今後この上で動いていくと思われるんですね。そんな中で、何か日本や世界である規格を固定的に決めてしまう。例えばIPTVの仕様を決めるというような流れも1つあると思うんですが、ある意味で将来にわたる進化の芽自体をを摘んでしまう可能性もある。そういった中で、どんどん進化していくというオープンネットの流れというのは、必然的に存在するだろうと思われる。そうなった時に、何をもって我が国のコンテンツがオープンネットワークの世界の中で不利になるということを想定されておられるのか? ちょっと明快でないので、その辺の危惧の一端でもちょっとお聞かせ願えればと思うんです。
 それは例えば電子書籍でよく言われているような、例えば著作者や出版社の取り分が問題なのか? いやそうじゃなくて、例えば携帯電話で起こったような、我が国発のフォーマットがマイナライズされてしまったことからくるトラウマなのか? その辺はいかがでしょうか?

○奈良参事官
 1つ考えておりましたのは、やっぱり多様性といいますか、ある人気のあるコンテンツに例えば集中してしまうとか、どういうものを出していくというところまで、ある種コントロールされてしまうというようなこともあるのではないかというふうに思いますし、あとはもう一つ、先ほどおっしゃったように取り分の問題ということで、コンテンツ事業者が非常に一方的な立場におかれるということもあろうかと思っております。

○久夛良木委員
 わかりました。私の危惧は、だからといって何か決めてしまう、例えばIPTVまで決めてしまうと、今までの歴史がそうでしたが、それが進化を止めるということにもなりかねないので、ほとんど今まで、この流れで勝ったフォーマットはないですよね。物理的にメディアを固定して届ける時代だったらそれで構わないけれども、それでも長いレンジで見ると、パッケージメディアは10年とか20年しかもちませんよね。今度、放送というものがインターネットにいくのは間違いないわけですから、そこで議論を何か変な方向に持っていってしまわないようにされた方がいいというふうに思います。

○吉羽委員
 久夛良木さんのご意見は非常にもっともだと思いますし、もう一つちょっとこれは観点を変えると、国際標準ということよりも、例えば映像のビジネスだと、アメリカのサーバーにみんな物が上がっていってしまって、アメリカのサーバーの上に日本のコンテンツが乗っかっていて、そこで広告ビジネスがおこなわれると日本の収入ではなくてアメリカの収入になってしまうというようなことが起きているわけですよね。余りここのところでクラウド化の話とかって触れてきていないんですけれども、日本でのクラウドコンピューティングみたいなところの推進というのはかなり今後、私たちの抱えている電子書籍の問題なんかもそうなんですけれども、大きいのではないかなというふうに思うんですね。やはり日本の国際競争、国益ということを考えた時に、日本のコンテンツだけじゃなくて、世界のコンテンツを日本のクラウドの中に集めていって、そこで何かビジネスができるというような環境をうまくつくることが重要じゃないかという気がするんですけれども。

○久夛良木委員
 コンテンツを今インターネット上で配信しようとしている時に、我が国には目に見えない非常に大きなハンディキャップがあります。1つは世界のネットワークにかかわるサーバーコストが圧倒的に安くなりつつある中で、日本はまだまだ圧倒的に高いままであるという事実。
 これは特に米国を中心とするところのサーバーのホスティングコスト、もしくはサーバー機器そのもの、例えばクラスターであるとか、ブレードであるとか、ストレージの仕組みが非常に安い。多分、我が国と比較して1桁は安いと言ってもいいと思います。
 もう一つは、これはそれらの競争の結果ということになると思うんですが、サーバーの置かれている場所が特定の国に集中しようとしている事実。それで何が起こっているかというと、サーバー自体のコストだけではなくネットワークへの接続料そのものもトラフィックスが集中する事により安くなるというポジティブスパイラル。今や、接続料が、日本より圧倒的に安い。話にならない。つまり、日本にサーバーを置くということはもう経済的に検討にも値しないという状況なので、今後もしそこに我が国としててこ入れをするのであれば、接続料そのものも国際標準の中で議論すべきだと思うんですね。反面、家庭内へのインターネット接続料は、これは世界で一番安いことは間違いないですね。逆にみんなには見えないところ、例えばCDNであるとか、幹線の契約料や使用料、これは世界で一番高いというふうに思っていただければいいと思うので、ちょうどそこが今ご指摘あったところで、我が国として今後の大きな対応すべき課題であろうというふうに思っています。

○中村会長
 他にいかがでしょうか。

○杉山委員
 その関連なんですけれども、先ほど角川委員からもあったように、日本のコンテンツ制作者って、弱小の小さな企業が多いんですよね。クラウドコンピューティングみたいなものにコンテンツ制作においても非常にメリットがあるのはわかっているんですけど、とてもじゃないけど高くてそういうものをそろえられないということで、そういう物理的な設備みたいな、前も申し上げたんですけど、その設備でもハリウッドみたいなところにすごく負けてしまうんですね。ですから、そこにおいて人を幾ら投入しても竹やりで戦っている面みたいなものがありまして、特にそういうふうに感じますね。
 立体像になりますと、CG等含めて2倍じゃ済まないんですね。ステレオだから2倍ということはなくて、作業量が物すごく増えていきますし、計算力も物すごく要るんですね。なおかつハイビジョン化、更にもっと2K、4Kという構成サイドの映像になってきますので、完全にその設備が必要なんですよ。これを民間の努力で全部並べなさいということは、コンテンツの売り上げから考えても不可能なんですね。そうすると、本当に人を育てても戦えないという状態です。

○角川委員
 通信料金が高いという問題は、これはどちらかというとICTの論議になるんだと思うんですけれども、結構コンテンツ業者から見ると深刻な問題で、今、北海道でサーバーを、データベースを特区にしたらどうかというふうな話も出ていると思いますけれども、そういう中でやっぱり通信費の国際比較という、今、久夛良木さんおっしゃったところで、僕たち何もそういうものを示されたことがないというふうに思うんですね。
 そういう点では例えばiPodも、それから、きっとiPadもそうだと思うんですけれども、それからまたアマゾンのキンドルも、驚くほど安い通信料によって支えられているというふうに僕たちはよく聞いているわけです。実際そうなんだろうと思うんですけれども、そこら辺が僕たちはわからないという、結局、久夛良木さんみたいな専門家が見ればとても何か高いですよと、1けた違いますよと。やっぱりそうなんだろうと思うんですけれども、じゃ具体的にどうなんだろうかということについて、今ちょっと総務省でいろいろの光何とかというふうなことのテーマで討議されているようですけれども、やっぱりそういうことをコンテンツ事業者の方から見た通信費の料金を1回知りたいですね。
 そこを何か、これからはご存じのとおり、コンテンツが単独で売っていく時代から、アップルとか、それからアマゾンのように、ネットワークと端末とコンテンツとが一体に販売されていく時代ですから、これについて踏み込んで知財がいければ、やっぱり知財本部の価値があるんではないかと思います。

○中村会長
 いかがでしょうか。
この通信環境あるいはネットワークの環境が、コンテンツ競争力においても非常に問題だという問題提起が今日、出されたんですけれども、そのあたりについて他に何かお感じになっていることというのはありますでしょうか。
今日は3DとIPTVに関する標準化についてのテーマ、課題定義がなされているんですけれども、これらについては他によろしゅうございますでしょうか。はい、どうぞ。

○久夛良木委員
 本当にデータそのものを皆さんで共有できていない、というのが今は現実だと思うんですね。どうしてかというと、この手の数字は商品としてユーザーに届けるという類のものではなくて、B2Bで相対で決められているような値段体系であるがゆえに、20-Fであるとか、いろんな開示された財務諸表に出てこないんですね。ただ、今起こっていることというのは、今、角川委員がおっしゃられたように、ネットワークサービスというのが、その通信料の大幅なバルクディスカウント体系というものに乗って成り立っているという側面。何でこういうことになるかというと、1つはネットワークサービスを育てようというという国としての強い意志ですね。特に米国を中心に情報処理産業が非常に大事だとなると、やっぱり率先して育てようという動きが起きる。 もう一つは競争の存在。
 もう一つの理由としては、今後どんどんクラウド側にいろんなデータとか情報が集まってくるというのは間違いないわけですから、そうなると数の論理、つまり量が増えることによるコスト削減効果というものがどんどんそこに集まっていくということで、ちまちまやっているよりも集めてしまった方がコストが安いという、今、薄型テレビで起こっているようなことが、今、情報処理分野で起こっているわけです。ですから、我が国が手をこまねいていると、この流れはどんどん加速していますので、あっという間にインターネット業界においてはそのトラフィックスが安い、つまり情報量が多い、それで通信コストが安いというところにすべてが集まるという爆縮効果といいますか、1つブラックホールみたいのができつつあるんだなというのが1つと、そういった上で例えばグーグルに代表されるように、今度は彼らが自力で海底ケーブルまで引いていますよね。そうすると、今度は通信ですら自前でやってしまうということが起こってくるので、それでまた更に集中化が加速をする。そうなりますと、我が国が国として何かこれに対して具体的なアクションを起こすということがないと、3年とか5年とか経たずして、もう勝負は決まるというふうに思います。ですから早く、まずファクトファインディングといいます現状認識をすることから始めて、その上で、じゃ、どうするのか、という議論をもっとタンジブルに行った方がいいんじゃないかと思います。

○中村会長
 他は、どうでしょう。はい、どうぞ。

○別所委員
 具体的な例で、僕のかかわっている国際短編映画祭のことで言いたいんですけど、実はショートフィルムの分野でもフランスにクレルモンフェランという映画祭があるんですが、25年ぐらいやっている映画祭です。こちらが、国際短編映画際の世界中に広がっている約60ぐらいの映画祭に対して、エントリーと公募のシステムというのを持っています。実は世界中、私たちも含めてなんですが、そのフランスにあるデータベースだったりサーバーだったりプラットフォームというか、作品を集約して集めて、そこに個人情報を集約するというものを活用しています。
 つまり何を言いたいかというと、映画祭の分野でも実はそういうことのイニシアチブをとって国が予算をつけているようなところが、気がつけば世界中のビジネスといいませんが、具体的な情報を全部ネックとして握ってしまうということが、実際、映画祭の世界レベルの個人情報の集約の仕方の中でも起きていまして、非常に安価で、確か1年間やって80ユーロぐらいだったと思います。私の記憶が正しければですけれども、80ユーロだったか8,000ユーロだったかと思うんですが、いずれにしても何億円とかそんなようなお金を投じなくても、そのサーバーとそのシステムを使えば世界中の作品を集めるということができまして、私たちだけではなく、北欧、南米、いろいろな国々がそれを使っています。
 ですから、今皆さんがおっしゃっているように情報を集約する、これはエアポートの行政とか国策とよく似ているなと思うんですけれども、いかにして日本がデータハブになるかというようなことはコンテンツに関しても真剣に考えるべきですし、例えば得意分野で言うなら、アニメとかそういったものに評価基準を持った価値づけ装置をもっと世界にアピールをして、日本はアニメについて世界中のアニメを評価してやると、価値づけしてやるんだぐらいなランキングビジネスをちゃんと世界にアピールするような、出版業界や映画業界にみんなで集まってやるようなことを国と一緒にやれたら、気がつけば世界中のある個人情報やデータがハブとして日本の上、あるいは日本のどこかを通過し蓄積されているということになって、僕はこれは結果的には、前も言ったかもしれないですが、日本の国防論にもなると思います。コンテンツが、あるいは情報が日本のどこかにあるという、世界中の情報があるというふうになれば攻撃できないわけですから、そういう超越した国防論として文化国防論みたいなものに育てていただけたらいいなとは思います。

○中村会長
 はい、どうぞ。

○吉羽委員
 関連して、皆さんご存じだと思うんですけれども、グーグルブックサーチの時にレジストリーセンターをアメリカにつくるという話がありましたね。ブックサーチは日本語は外れたので、とりあえずは今のところ議論にはならなくなってしまったんですけれども、結局日本の作家の、要は配分が欲しければ日本の作家が自分で著作権情報の登録、個人情報の登録を全部アメリカのサーバーに向かってやりなさいという話だったわけですよ。これを本当に握ってしまえば、世界中の著作権者の情報を一手に握ることができるというようなことが起きてしまう。別所委員が本当に危惧されるのと同じようなことが文字の世界というか、書籍の世界でも起きようとしていたわけで、そのサーバーの環境の整備ということも片一方で重要だと思うんですけれども、その中身、データベースの話というのはきわめて重要だというふうに私も共感しております

○中村会長
 ちょっと大事な問題提起がありましたね。我々がここまで骨子でまとめてきたものの中にも、日本をコンテンツの本場にするという文字があるんですが、何か価値基準を日本の中でも持っておいてということが必要なんですけど、具体的な施策となると、なかなかこれまで出ていなかったと思いますので、具体的なアイデアを今後の政策にも設計することができればよいと思います。今のデータべースの話もそうですね。どうぞ。

○杉山委員
 あと、そういうサーバーといいますと、どうしてもデータを記録しておく場所というイメージが確実にありますけれども、クラウドコンピューティングの場合は計算するというものがあるわけですね。ですから、グラフィックのプロセッサーを積んだようなブレードサーバーを、例えば1台30万くらいのいいやつだとしても、1万台そろえても30億円くらいなんですね。こういうのがないと、本格的な3DCGと立体とかというのを計算できないんですよ。それをセンターみたいなものがあれば、それぞれのプロダクションの製作のピークはずれて違いますので、十分に共同利用できるんですね。そういう、例えば30億円の計算センターを一つ一つのプロダクションが持つなんていうことは日本では考えられないですよね。だから、そういうことをやれば、ものすごくこれから進んでいく立体とかそういうリッチコンテンツというのは、コンピュータの計算力も物すごい高いレベルがいるんだということもちょっと皆さんに覚えていただきたいなと。ハードディスクの容量とかという問題だけではなくて。

○中村会長
 これまでコンテンツの政策というと、どちらかというとコンテンツサイドの施策を中心に議論してきたんですけれども、この調査会ではコンテンツのために必要なネットワークとかプラットフォームとか、そちらのことを考えましょうということですので、そのようなアイデアも政策まで高められればよいかと思います。
 今日は、3DやIPTVに関する国際標準の話を問題提起していただいたんですけれども、国際標準というのは国際競争力を高めるための一アプローチといいますか、手段として考えているわけですが、じゃ、もう一回ひるがえって国際競争力というのは何かというと、コンテンツの競争力もあれば、人材の競争力もあれば、今日、議論になりましたような日本の制作環境とかビジネス環境あるいはクラウドの環境というのをちゃんと整えろという、そういうのもあろうかと思いますので、ちょっと広目にもう一回考える必要がありそうですね。
 この話は、もう一つ知財本部で走らせております競争力国際標準調査会の議論とも非常にリンクをしてくる話だと思いますので、連動させて深めていければと思います。
 ただ、今日、話に出ました通信環境、ネットワーク環境は、日本は実は劣っている面があるんじゃないかというのは余り多分、議論されていない話で、そういったことに対してコンテンツサイドから、日本のITとか通信を何とかしろよというのは非常に正当な要求だと思います。それの議論の場がここであるのか、あるいは総務省であったりIT本部であったり周りであるのかということも含んで、ちょっとこういう話があるよということを今後ここからも情報発信をして話をしていきたいと思いますし、それから、データがそもそも必要じゃないかということも事務局と相談をさせていただければと思います。
 他にこの国際標準等について意見、コメント等ありますでしょうか。

○津村政務官
 さっきの話と、途中から来て重なるかどうかわからないんですけれども、国立国会図書館というのがありますね。あれも国会図書館自体がデジタル化みたいなことはやっているんだと思うんですけれども、デジタルコンテンツの国立国会図書館みたいなものというのをつくっている国とかあるんですか。
 つまり、その国のデジタルコンテンツを1カ所に国のお金で集めていて、いざとなったら調べられるという。書籍について国立国会図書館が果たしているようなものを、デジタルコンテンツについてつくっている国はあるのでしょうか。

○角川委員
 結局、それを今、本来国がすべきようなことをアップルだとかグーグルとかアマゾンがやっているんだと思ってもらった方がいいと思うんですね。本当は、僕たち日本人から見れば、そういうものはどこかで国がつくるだろうなとか、国が関与するんだろうなと思ったことが、このクラウド時代というのですか、今の21世紀というのは、みんなアメリカの私企業である情報産業がやってしまっていて、1つの電子政府になってしまっているんです。それは苦慮しているんじゃないかと思うんですね。それに対するやっぱり、今日のこの場の話というのは、それではいけないんじゃないかということの危機感がコンテンツ事業者の方から出たというのは、今日は非常に画期的な日じゃないかなと思うんです。議長、どうですか。

○中村会長
 ええ、そうですね。

○角川委員
 これは、今までの知財ではなかったことです。今日の議論はですね。
そういう点で、僕も7年間ここの会議にいさせていただきますけれども、非常に今日は画期的な日だなと。この問題意識をどうか、この問題はIT本部の話だとか、そういうふうな話にならないで、知財の中でもう少しふくらませていく作業をさせていただきたいなとお願いしたいと思います。

○中村会長
 それから、文字情報じゃないんですけれども、放送番組でいいますとフランスはINAという機関がありまして、そこがフランスのテレビ・ラジオの番組、ほぼすべて蓄積して、400万時間ぐらいありますかね。それは国の機関です。国家機関です。国立視聴覚研究所というところがアーカイブを持っていまして、2006年から著作権がクリアできた作品をネットで公開しています。10万作品ぐらいやっています。ですから、アメリカなどのコンテンツ行政のあり方と違って、非常に国が前に出てきてずっと進めてきたという、そういうものもあります。

○津村政務官
 日本でまずそれを最初の一歩を踏み出すとして、例えばNHKには何か全部出せみたいなことを言う議論はないんですか。

○中村会長
 その議論は、最近出てまいりました。ですから、NHKオンデマンドがアーカイブの方を、著作権をクリアしたものを徐々に出していますけれども、それをもっと押し進めて、例えば教育部門には全面開放すべきという意見ですとか、ほぼすべて全部開放する必要があるんじゃないかという議論があちこちで出されるようになってきたと思います。

○津村政務官
 一般ピープル的に、NHKの番組は別にビデオを撮らなくてもいつでも見られるよみたいな感覚は、今はないですよね。ただ、テレビは、別にビデオなんか撮らなくてもいつでも見られるよという、過去のテレビも何チャンネルでもという世界をつくるみたいな話ですよね。

○中村会長
 はい。ようやく始まった論議だと思います。NHKオンデマンドは非常に苦労されて一昨年の末にオープンしたんですけれども、それでも著作権がクリアできたのが1,000本ですから、1,000本から始めた。フランスの場合はINAが2006年にオープンされて10万本から始めていますから。そのあたり、発射台がかなり違いますね。

○吉羽委員
 すみません、ご存知だったらどなたか教えていただきたいんですけれども、国立国会図書館がやろうとしている日本版のブックサーチの話でなんですけれども、これは何らかの例えばサーバーは国内に置くべしとか、国内の事業者でやるべしとか、何か規制みたいなものがかかっているんでしょうか。日本の大事な過去の遺産がアメリカやら、どこか外国のサーバーにしかないとかというような状況はちょっと恐ろしいなと思って、安い方へ流れてしまって予算もなかなか厳しい中で、いいのだろうかという心配をちょっとしていたんですけれども、どなたかご存知でしたら。

○角川委員
 それは、そういう可能性が大きいと思いますよ。大きいと思うので、これからそういう議論を是非していただきたいなというふうに思います。やっぱり国会図書館の百数十億円のデータべース化が日本のデータセンターにないというのは大きな問題だということを、是非民主党の皆さんに認識して、政府の皆さんに認識していただきたいと思いますし、それから、また必ずしも国会図書館のデジタル化が今、国会図書館法があって、国会図書館自身は無料で開放しなければいけないということになっていますね。これは無料になってしまうと、そこに提供している出版社の利益が、あるいは著作権が無料になってしまいますので、これはまた違う問題があって、是非国会図書館がデジタル化したものが無料で国民に提供されるというのだけは、やっぱり考え直していただきたいんです。そこでは、"広く""安く""あまねく"著作権者とそれから事業者に配分ができるようにシステムをつくっていただきたいんです。それを是非、この国会図書館のデジタル化の話の中には組み込んでもらいたいと思います。

○別所委員
 ご存知だと思いますけれども、僕もラジオのニュースで自分が読んだんですが、アメリカではツィッターの政治家が出すコメントも公文書としてファイルするというようなニュースがありました。つまり、ネット上でのいろいろなツールで出されているデータそのものも、ある種コンテンツとしてファイリングされる時代に入っていて、僕も議論の中では日本国内の基礎データ、コンテンツデータというものが日本国内でちゃんと保護され、ファイリングされるべきだと思いますけれども、やはり国家戦略という意味でいえば世界中の、少なくとも東アジア圏のいろいろな映像コンテンツであるとかデータが日本にファイリングされているというようなことも大事だと思いますので、鎖国的に国内だけのデータファイルをするというのではなく、むしろ戦略的には僕は海外のものは喜んで日本がファイリングしてやるぞというようなことが大切なのかなとも思いました。

○中村会長
 ありがとうございます。では、次の残されたテーマ、参考資料3の目標指標例について、これについても時間が限られておりますけれども、コメントがあればお願いいたします。いかがでしょうか。どうぞ。

○久夛良木委員
 すみません、時間がなくなってここで発言しないと機会がなくなってしまいそうなテーマがあるんですが、今日、文科省の方から権利制限のところでご報告がありましたね。そこで、ちょっとお聞きしたいんですけれども、例えばこの権利制限、言葉はともかく、例えば権利制限ということで考えた時に、例えば紙の雑誌であるとかでよくやっているように、コンテンツを紹介する。例えばコンテンツの一部を紹介するということが雑誌等では通常行われていますよね。それをネットに展開した時に、以前も問題提起をさせていただきましたが、音楽だと何小節分であるとか、本でいえば最初の1ページとか、さわりの部分とかという、そういう著作物の特定の部分について、これは著作物自体の紹介が目的であり、著作物の権利全体を提供するわけではないので、この範囲であれば、もしくはこうった表示を伴えば利用していいですよ、というようなある程度の指標がないと、なかなか萎縮効果というのが出てしまい二の足を踏んでしまうと思うんですね。これは、ネットワークで参照可能なコンテンツの時間だけではなくて、例えばコンテンツのクオリティというのも多分あるんじゃないかと思うんですね。例えば雑誌だと、小さく写真を載せているわけですから、それはもちろんフル解像度の写真ではない。それが欲しければ著作権者のところに行きなさい、ということになると思いますが、音楽だと例えば低音質で、画像だとサムネイルといってよく小さな画面が表示されますよね。あれであればいいとか、もうちょっと明快にガイドラインを出していただけると、もっと可能性が広がっていくというか、活性化していくと思うんですね。これは、是非議論していただきたいと思います。

○中村会長
 そのような議論というのは、これまで何かありましたでしょうか。

○永山著作権課長
 著作物の利用についてはいろんなパターンがあって、どういう形でやっていくかという、非常に難しい課題だと思っていますが、昨年の平成21年の改正であれば、インターネットオークションで写真とか、そういうものを載せてもいいよという形で権利制限しましたけれども、それを具体的に政令の中で、これは関係者間の協議をして、50平方センチメートルぐらいだったと思いますけれども、それ以下なら要するに許諾なく全く問題ないよという形でして、それ以上であれば、商慣行とかいろんな状況に照らして可能な場合もありますよねという、一つの関係者間で協議をして、これはインターネットオークションでの写真とか美術の掲載ということでルールをつくって、それを政省令という形で盛り込んだ例は部分的にはございます。

○久夛良木委員
 特に今ネットのイノベーションが早くて、多分1年ごとに対応をとっていくと間に合わないケースが多々あると思うんですね。インターネットオークションの場合もそうですが、ついこの間まで止まっていたと思っていた画像が動き出してみたりするかもしれない。それから雑誌媒体そのものが今非常に疲弊していて、場合によっては、そのある部分についてはネット側に移行しようとしているのかもしれません。こういうタイミングの時に、我が国は雑誌大国でもあったわけですから、是非もっとインターネットへの流れを先取りする形で、一定の指標の範囲というのを決めて明快に示して欲しい。この方向で皆さんお使いになるということは、今後検討してもいいんですよ、という何かしらのアナウンスというか、表になっていてもいいんですけどね。わかりやすくあると助かります。現状は、こんなことをやりたいということを一元的にどこに投げればいいのかという、投げる場所がわからない状況ですね。いろんな権利団体が複雑に絡んでおりますし、省庁ですらどこの省に投げていいのか良くわからないという状況なので、是非この辺もわかりやすい形で進めることができるように、是非お願いいたします。

○中村会長
 ありがとうございます。他に、この目標指標例でも結構ですし、その他全体でも結構ですので、何かコメント等ありましたら、お願いいたします。

○角川委員
 この目標については前も申し上げたかもしれませんけど、具体的にどうしようこうしようというものが今検討されている中で、ちょっと数字を出されてしまうと、こういう僕でさえもどきっとするみたいな。なかなか実現性がどうだろうかというふうな思いがするんですけれども、そういうことを乗り越えて何か合意としてみんなが頑張っていこうねということでこの数字が出てくるのであれば、意義があると思うんですね。ですから、この知財本部での合議の中で、こういうふうに話がきたのでこの数字が出てきたという、何かちょっとプロセスが欲しいんですよね。そうじゃないと、何か数字ありきで、この数字を達成するために議論をしたのだみたいになってしまうと、ちょっとまたこれも違うんじゃないかなと。うまく表現できないんですけど、議長、わかっていただけますよね。

○吉羽委員
 数値目標の5ページ目の、これはこの間もちょっと私は意見を言ったんですけれども、「コンテンツの電子配信を進める」の部分の、ちょっと表現として、これはどっちととれるのかがよくわからないんですね。流通する当該コンテンツの約8割程度になるというのが、8割のタイトルが例えば書籍でいえば紙でもどうしても手に入るという意味なのか、紙は2割でいいよと言っているのか、そこのところがどっちなんだろう。何もわざわざ紙を2割にしようとは思っていないわけで、デジタル化することで流通して手に取りやすくなることで市場が広がるという方向に行ってほしいわけなんですけれども、何かここがゼロサムに見えるんですけれども、いかがなものなのでしょうか。

○奈良参事官
 ここは事務局の趣旨としては、今、紙で出ているものの、紙でも出ているけれども8割程度は電子媒体でも見られるようにしようよと、そういう意味でございますので、そのシェアを食って紙媒体にとってかわるということを目標にしようということではございません。

○吉羽委員
 そうすると、ちょっと文案を修正していただいた方がわかりやすいかと思いますので、よろしくお願いいたします。

○中村会長
 他にいかがでしょうか。

○角川委員
 そうすると、その8割をデジタル化しようよというのは民間に任されるわけですよね。ですから、その面で、これは映画でもそういう議論があるんですけれども、事業者があえて膨大なデジタル化費用を負担してまで、これを推進していかなければいけないというインセンティブが今本当はないんですね。今、映画各社が持っている映画資産を、今は70年でありますけれども、どんどん今、著作権が切れかかっていて、その著作権が切れた時にデジタル化したら、自分がデジタル化したら500円でDVDを販売できてしまうようなことというのがあって、それがやっぱり何かデジタル化したら国として5年間の著作権延長を認めてあげるよとか、こういうふうな何か花も実もあるようなものがあるといいですね。これは恐らく出版社は、今は非常に出版環境が悪い中で電子書籍化をするために、今、電子書籍化したから、それがはっきり言って収入になるというふうな保証というのはほとんど、むしろないと思った方がいいと思うんですけれども、それを推進するのであれば、やっぱりそれが、じゃ、デジタル化するのが国がお金を出しなさいと、出してほしいというふうな要請をするのも僕は事業者としてうれしくないんですけれども、何かデジタル化するために事業者がインセンティブとしてこれは認めてあげるよというふうなことがあれば、違いますよね。ちょっと講談社さん、いかがですか。
 何しろ膨大な出版物を持っていまして、それを幾らかかるかなと計算すると気が遠くなるんですね。ですから、その時に、インセンティブとして出版社がこういうふうにしたらいいじゃないかというふうなことを国で考えていただけたらありがたいと思います。
 僕的に言うと、正直申し上げて、今度の電子書籍というのは非常にビジネスモデルをつくるのが難しいんですね。どうやってアップルに対抗したらいいのか。全く出版社は何も権利がない。みんな原作者に行ってしまっている。その時に、例えば本の方までというと著作権者の方からいろいろ難しくなるので、ちょっと僕も現職の経営者としてクレームがついて苦しいんですけれども、電子書籍については電子書籍の隣接権は認めてあげるよとか、そういうのをやると大分、じゃ、一所懸命電子書籍8割になるように目的を頑張ろうということがインセンティブの一つになると思いますけれども、そんな提案をさせていただきたいと思います。

○中村会長
 ありがとうございました。この調査会の血肉のところは、国がどのような施策を打つのか、それは随分これまでにない新しい施策も盛り込むことができたかと思います。それによって、この目標というのがどこまで達成できるのだろうか。結構インハイの球が投げられていると思うんですが、これをどこまで出すのか、リスクを伴うものがありますし、民間がどこまで負えるのかという視点もあろうかと思いますので、他にもご意見あろうかと思います。個別に事務局の方に、この数字はこうした方がいいんじゃないかとか、この目標はどうだねというようなことがあれば、ご連絡をいただければと思います。
 ということで、今日は特区にしろ国際標準にしろ、非常に活発な議論、活発なご意見をいただきまして、大事な提言もいただきました。今日の議論でまた計画2010策定に向けて一歩前進したかと思います。次回会合でも、この盛り込むべき事項について深めていただければと思います。
ということで、予定の時間がまいりましたので、会合はここで閉会をするといたしまして、最後に津村政務官からご挨拶をお願いします。

○津村政務官
 今日も活発な議論をありがとうございました。
 一番皆さんにお伝えするべきは、3月30日の本部会合で3月中にまとめていただいた骨子案を総理にご報告した際に、大変高くご評価をいただきまして、これからの年次の戦略と、それから成長戦略という10年計画も今同時にやっているわけですので、そちらにも是非盛り込んでいけるように議論をということでした。今ちょっと見ておりますと、単年度の2010年の骨子が5月末に予定されているものへの議論という建てつけになっていて、それはそれでもちろん大事で、必ずやっていくんですけれども、同時に5月いっぱいで成長戦略という10年計画の方もつくっていこうとしていまして、あと、こういう席で言うのが適当かどうかわからないのですが、参議院選挙マニュフェストも与党としてはつくっている時期なんですね。
 今、例えば私たち政務三役に対しても選挙のマニュフェストに盛り込むようなおもしろい政策は何かないのかという問い合わせがきているような状況なんです。ですから、私は是非こういう場で出てきた、多少お行儀よくはなかなか進まないけれども、思い切ってマニュフェストに載せれば進むかもしれないようなタマを持ち込んでやろうかなと思っているんですけれども、今日の議論もそうですし、これから5月の議論もまだそういう、今かなり動く時期ですので、そういう意味で引き続き活発な議論を今回の戦略に余りフォーカスし過ぎずに、活発に議論していただければいいのかなというふうに思っています。
 個人的にはこの数字のことで大分意見はあるのですが、それは後でということで、例えば、この学校訪問年間100件ってちょっと少ないんじゃないかとか、少し幾つかあるんですが、それは後で事務的に言わせていただくことにいたしまして、皆さんへのお願いとしましては、これからの1カ月、非常に重要な政府としての時期になってきますので、引き続き活発な議論、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○中村会長
 次回は。

○奈良参事官
 次回は5月14日金曜日に14時から行うことにしておりますので、よろしくお願いいたします。

○中村会長
 では、閉会いたします。どうもありがとうございました。