コンテンツ強化専門調査会(第1回)議事録

  1. 開 会 : 平成22年2月19日(金)10:00〜12:00
  2. 場 所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【担当政務官】 津村啓介 内閣府大臣政務官
    【委 員】 中村会長、大多委員、角川委員、川上委員、久夛良木委員、佐藤委員、末吉委員、杉山委員、谷口委員、別所委員、吉羽委員、佐藤本部員、中山本部員
    【事務局】 近藤事務局長、内山次長、戸渡次長、小川参事官、奈良参事官
  4. 議 事 :
    (1) 開  会
    (2) 会長の選任
    (3) 専門調査会の運営について
    (4) 今後の進め方について
    (5) 知的財産戦略に関する論点整理(コンテンツ関連)について
    (6) 閉  会


○戸渡次長 それでは、ただいまからコンテンツ強化専門調査会の第1回会合を開催させていただきたいと思います。
 本日は、ご多忙のところ、ご参集いただきまして誠にありがとうございます。
 私は、内閣官房知的財産戦略推進事務局次長をいたしております戸渡と申します。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 後ほど、委員の互選によりまして本専門調査会の会長をお決めいただくわけでございますが、それまでの議事の進行を務めさせていただきたいと思います。
 まず、開催に先立ちまして、知的財産戦略担当の津村啓介内閣府大臣政務官からご挨拶を申し上げます。
○津村政務官 おはようございます。
 ただいまご紹介いただきました内閣府で大臣政務官をしております津村啓介と申します。国家戦略室と知財担当、両方させていただいているんですけれども、今回、この知財関係の専門調査会がここ数週間で次々と立ち上げているところでございます。毎年、この時期といいますか、5月、6月に向けて知財の戦略の議論を、これまで自民党政権のもとでも行ってきた経緯がありまして、大体翌年の予算に反映していくというのが1つのタイムスケジュールになってきたわけですけれども、今年は多少色合いが違うといいますか、もう少し違う趣旨がのっかっておりまして、鳩山政権のもとで12月30日に新成長戦略の基本方針というものをまとめました。政権ができて100日でまとめたものですので、いろいろご批判もありますし、粗々の基本方針ということでもう少し中身を詰めてはどうかと。特に、知財についてはさらっと触れられている程度でなかなかまだ肉づけができていないというところでございます。今年の5月、6月に向けて新成長戦略というものをきちんとまとめていこう。そして、その新成長戦略は2020年、10年先を見据えた計画にしていこうと、こういう話になっておりまして、その肉づけ作業を議論いただく1つの舞台がこのコンテンツ強化の専門調査会というふうに思っています。そういう意味では、来年の予算に何がとれるかという目先の議論だけではなくて、5年、10年先の日本の姿というものをぜひ第一線にお立ちの皆さんの立場から私どもにインプットしていただければなと、そんなことも考えておりますので、ぜひそれぞれのお立場から率直なといいますか、できれば少しとがったご意見をたくさんいただければなというふうに思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
○戸渡次長 それでは、今回、委員をお願いいたしました方々をご紹介させていただきたいと思います。
 資料2の委員名簿をご参照ください。
 大ア委員でございますが、本日は所用のためご欠席ということでございます。
 次に、大多亮委員でございます。
○大多委員 よろしくお願いします。
○戸渡次長 角川歴彦委員でございます。
○角川委員 よろしくお願いいたします。
○戸渡次長 川上量生委員でございます。
○川上委員 よろしくお願いします。
○戸渡次長 久夛良木健委員でございます。
○久夛良木 よろしくお願いいたします。
○戸渡次長 佐藤直樹委員でございます。
○佐藤委員 よろしくお願いいたします。
○戸渡次長 末吉亙委員でございます。
○末吉委員 よろしくお願いします。
○戸渡次長 杉山知之委員でございます。
○杉山委員 よろしくお願いします。
○戸渡次長 谷口元委員でございます。
○谷口委員 よろしくお願いします。
○戸渡次長 中村伊知哉委員でございます。
○中村委員 よろしくお願いします。
○戸渡次長 別所哲也委員でございます。
○別所委員 よろしくお願いします。
○戸渡次長 吉羽治委員でございます。
○吉羽委員 よろしくお願いします。
○戸渡次長 また、本日はオブザーバーとして、知的財産戦略本部員にもご出席をいただいております。
 中山信弘本部員でございます。
○中山本部員 中山でございます。よろしくお願いします。
○戸渡次長 佐藤辰彦本部員でございます。
○佐藤本部員 佐藤でございます。
○戸渡次長 続きまして、事務局をご紹介いたします。
 近藤事務局長でございます。
○近藤局長 近藤でございます。よろしくお願いします。
○戸渡次長 内山事務局次長でございます。
○内山次長 内山です。よろしくお願いいたします。
○戸渡次長 奈良参事官でございます。
○奈良参事官 よろしくお願いいたします。
○戸渡次長 それでは、次に、本専門調査会の会長をお決めいただきたいと思います。
 資料1をご覧ください。
 資料1の3にございますように、会長は委員の互選により選出するということとなってございます。政務三役からは中村伊知哉委員でいかがかと推薦があるところでございますが、いかがでございましょうか。 (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。
 それでは、中村委員に会長をお願いしたいと思います。
 ここからの議事進行は中村会長にお願いを申し上げます。
○中村会長 会長の大任を拝命いたしました中村と申します。よろしくどうぞお願いいたします。
 先ほど津村政務官から短期の予算の話、それから5年、10年先の長期的な話ととがった話という言葉がございました。特に、3つ目のとがったというところには心がけてまいりたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。
 さて、議事に入る前に手続的な事項を決定したいと思います。この専門調査会の運営に関する事項は、資料1の6のとおり、会長が定めることになっております。そこで、委員の皆様には事前に事務局から送付しておりますけれども、具体的な運営については資料3、またこの調査会の公開手続については資料4のとおりとさせていただきます。また、急な事情などによって私がこの調査会に出席することができなくなった場合に議事を進行していただく方として、副会長をあらかじめ決めておきたいと存じますが、これも政務三役からは末吉亙委員でいかがかと推薦があるところでございますが、いかがでしょうか。 (「異議なし」の声あり)
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 次に、今後の進め方等について事務局から説明をお願いします。
○戸渡次長 それでは、資料5をまずご覧いただきたいと思います。
 コンテンツ強化専門調査会の今後の進め方について(案)という資料でございます。
 今後の進め方でございますけれども、昨年12月8日に開催をされました知的財産戦略本部会合におきまして、新たに専門調査会を立ち上げまして、知財推進計画を取りまとめるという旨が合意をされ、本専門調査会におきましては、新たな知財計画の策定に向けまして、コンテンツ産業の強化に関する課題について検討を行うということになっておるところでございます。また、インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に係る法的課題につきましては、本専門調査会のもとにワーキンググループを設置して、集中的に検討を行うということとされてございまして、参考資料の3にございますとおり、ワーキングにつきましては、本専門調査会の設置と同日付で別紙のとおりの委員11名の方々に委員をお願いいたしまして、ワーキングを立ち上げているというところでございます。
 今後、具体的には当面3月末に知的財産戦略本部で取りまとめる新たな知財計画の骨子に検討結果を反映すべく検討を進め、4月以降、6月ごろの知財計画策定に向け、さらに検討を深めていくということで、当面の日程は資料5の2にあるとおりでございまして、本日第1回目の会合を開催させていただきました後、次回を2月24日、3月1日、3月12日という資料にございますような日程と議題によりまして検討を進めさせていただければと思っておるところでございます。
 4月以降の日程につきましては、また後日調整をさせていただきたいと思っております。
 ワーキンググループ、法的問題についてのワーキンググループのほうは参考資料4にございますような日程で専門調査会の日程と歩調を合わせながら検討を進めていただき、またご報告をいただく予定になっておるところでございます。
 大変、日程が詰まっている部分また精力的な審議をお願いすることになるわけでございますが、このような進め方でいかがかということでよろしくご検討をお願いしたいと思います。
○中村会長 ありがとうございました。
 今説明のありました今後の進め方等について、何かご意見等ありますでしょうか。
 よろしゅうございますか。 (「異議なし」の声あり)
 では、今の説明のとおり、資料5のとおり検討を進めてまいりたいと思います。非常に短い期間で濃い議論をしていかなければいけません。よろしくどうぞお願いいたします。
 では、次にコンテンツ分野における知的財産戦略に関する論点、中身に入ってまいりたいと思います。まず事務局から説明をお願いします。
○奈良参事官 それでは、資料6をご覧いただきたいと思います。
 コンテンツ関連の知財戦略の論点につきまして、ご説明をいたします。
 事務局におきましては、これまで準備のために100人以上の関係者の方々からご意見を伺いまして、それらをもとに論点について整理をさせていただいたところでございます。これまでいただいたご意見は参考資料の2にございますので、それも後ほどご覧いただければと思います。
 1枚めくっていただきまして、2ページ目をご覧いただきたいと思います。
 全体の概要でございますけれども、今後のコンテンツの強化のために大きく3つの方向性を目指すべきではないかということで整理をいたしました。1つ目が海外展開、2つ目が人材育成、3点目としてネットビジネスの拡大という視点でございます。
 1つ目の海外展開でございますけれども、これまでの国内志向から脱却いたしまして、アジア市場等への積極的な展開を図り、いわゆるグローバルコンテンツ大国を目指すべきではないかという観点でございます。具体的には日本発のメガヒットを出す、あるいはアジア市場を日本発コンテンツで席巻するというようなことで海外収入を大幅にふやすということを目指してはどうかという視点でございます。
 2つ目の人材育成という観点でございますけれども、世界で通用するような人材を育てる。また日本に魅力を感じ、世界中からクリエーターが集まるようにする、またそしてクリエーターの裾野を拡大するというようなことを通じまして、いわゆるクリエーター大国を目指すべきではないかという視点でございます。
 これによりまして、毎年当然のように日本人が世界的な賞を受賞する、あるいは海外から多くのクリエーターが日本を目指す、こういうような日本を目指すべきではないかという視点でございます。
 3点目のネットビジネスでございますけれども、新たなビジネスモデルの構築を通じまして、世界中どこでもコンテンツが楽しめるようにすると。いわゆるデジタルコンテンツ大国という視点でございます。
 1つ目といたしましては、すべてのコンテンツが海外を含めてネットで購入可能となる、あるいは日本発のコンテンツだけではなくてプラットフォームを世界標準とする、そしてネット配信ビジネスの障害を除去するために著作権侵害コンテンツを激減させる、こういうことを通じまして、デジタルコンテンツ大国を目指すべきではないかという視点でございます。
 3ページをご覧いただきたいと思います。
 ここからは3つの方向性につきまして、それぞれ内容について述べたものでございます。
 1つ目の海外展開でございますけれども、現状を申しますと我が国の海外コンテンツの海外収入は米国に大きく見劣りをしておりますし、一方、アジア市場は急速に拡大しているという状況がございます。右にございますとおり、最近、海外と組んで海外展開を図ろうという動きも出てきておりまして、こうした動きを加速する必要があるというところでございますけれども、しかしながら、我が国はそれらを促進するようなインセンティブがないというのが現状でございます。
 これらを踏まえまして、日本単独主義というものを捨てまして、国際共同製作、あるいは撮影誘致促進、海外に対する規制緩和の働きかけ、こういったことを通じてグローバルコンテンツ大国を目指すべきではないかというふうに考えているところでございます。
 続きまして、4ページをご覧いただきたいと思います。
 2点目の人材育成という視点でございます。
 人材を取り巻く状況といたしましては、もともとクリエーターには資金が回りにくい構造である上に近年製作機会の減少、あるいは二次利用収入の落ち込みということによりまして、海外展開どころか、人材基盤が危機的状況にあるのではないかというふうに思います。最近、各省庁の人材関連予算も増えてまいりましたけれども、まだまだ十分とはいえない状況かと存じます。
 また、右にあるとおり、世界的な賞の受賞も数える程度ということでございますし、また関心が高いにもかかわらず、マネジメントも含めました高度な人材養成機能というものもまだまだ十分ではないというふうに考えているところでございます。
 一方、誰でも作品をつくり、世界に発信できるような環境も整いつつあるところでございます。
 こうしたことを踏まえまして、人材関連予算の抜本的拡充、あるいは人材受け入れ体制の整備、それから教育というようなことを通じまして、人材のクリエーター大国というものを実現すべきではないかという論点でございます。
 続きまして、5ページをご覧いただきたいと思います。
 3点目のネットビジネスの拡大、デジタルコンテンツ大国の実現という視点でございます。ここは大きく3つに分かれてございます。そのうちの1つ目は、すべてのコンテンツをネット購入で可能とすることを目指してはどうかというものでございます。例えば、現状、最近では海外では電子書籍に関する動きが急ピッチで進んでいるところでございます。我が国でも民間ベースの取り組みが始まったところでございますけれども、大きく遅れをとっているのではないかというふうに考えています。
 また、右側のテレビのネット配信も始まったところでございますけれども、まだまだビジネスモデルとしては確立していない状況ではないかというふうに思いますけれども、しかしながら、民間におきます権利処理のルール化、あるいは権利処理の集中化といったような民間ベースにおける取り組みも出てきたところではないかというふうに思います。
 こうした状況を踏まえまして、あらゆる分野において電子配信の促進、あるいは電子化の推進、こういった事柄につきまして、民間の取り組みを基本としながら、国としても積極的に進めるべきではないかというふうに考えていると思います。
 あわせまして、デジタル化・ネットワーク化に対応した知財制度のあり方ということにつきましても検討を進める必要があるのではないかというふうに考えております。
 6ページをご覧いただきたいと思います。
 デジタルコンテンツ大国の2点目ということで、コンテンツのプラットフォームで世界標準をとるということでございます。日本のゲームが世界で成功したようにコンテンツの成功はプラットフォームと一体となった戦略が必要ではないかというふうに考えております。例えばテレビをネットにつないで見るIPTV、あるいは3Dで今世界的な競争が始まっておりまして、ハード・ソフト一体となった戦略が必要ではないかというふうに考えます。また、駅、電車で見られるデジタルサイネージでございますけれども、これも今後の大きな市場規模の拡大が期待されるところでございます。
 こうした観点でコンテンツだけではなくて、日本発のプラットフォームを育てていくという観点から、国としても戦略的に支援していく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
 最後、7ページをご覧いただきたいと思います。
 3点目といたしまして、侵害コンテンツの激減でございます。膨大な著作権侵害コンテンツが無料で流通しているというのが現状でございますけれども、そういった中でビジネスを進展するというのは非常に難しい面がございます。一方、ビジネスが進展しないとユーザーのモラルが低下いたしまして、ますます違法コンテンツが増えているというような、いわゆる悪循環に陥っているのではないかというふうに考えます。こうした中、違法行為には適切に対処するとともに、同時に正規ビジネスというものも伸ばしていく必要があるのではないかというふうに考えてございます。また、この問題、国内だけで解決する問題ではございませんので、新しい国際的な法的規律、また諸外国への働きかけといった点で世界的に網をかけていくということも必要になってまいります。
 このように、国内外で適切な対応を図るということとともに正規ビジネスを促進させると、この両面であわせて取り組んでいくということが必要ではないかというふうに考えているところでございます。
 以上でございますけれども、これらの論点、あるいはそのほかの論点などにつきまして、広くコンテンツの強化という観点につきまして、委員の皆様からご意見を伺いながら、効果的、実効的な戦略をつくっていきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○中村会長 では、議論に入りたいと思います。
 まず、初めに委員の皆様から今後のコンテンツ分野における知財戦略に関する論点、それに関して自由にご意見を順に伺っていきたいと思います。
 恐縮ですけれども、最初ですので、大多委員から順にということにさせていただきたいと思いますが、後で第2ラウンド、第3ラウンドもありますので、まずはお一方3分以内でお願いできればと思います。
 どうぞよろしくお願いします。
○大多委員 フジテレビの大多です。よろしくお願いいたします。
 今論点の整理の中で出てきておりますけれども、やはり私、自分の経歴がほとんどテレビ局の中でドラマ製作のほうのプロデューサーを長くやっておりまして、去年の6月からテレビのネット事業というところのデジタルコンテンツ局という全くテレビ局の中では全然違うところに行ったんですけれども、コンテンツビジネスは海外で稼ぐとか、日本のコンテンツ人材を世界最高レベルにするということに関して、非常に現場、それからずっと番組をつくってきた立場から幾つか発言させていただきたいと思うんですけれども、もちろん、自分が入社したころから比べて、今テレビのクリエーターだけではないと思いますけれども、非常に海外志向が強まっております。ドラマでいうのであれば、やはりここ数年のアメリカテレビドラマの隆盛というのは衝撃的な感じで伝わっておりまして、今まで日本で言えばゴールデンタイムのドラマを当てたりとか、視聴率とりたいとかというようなことで結構満たされていたんですが、このところの20代、それから入社してくる人間、それから製作会社の人たちとも話しても、やはり何とか世界で通用するような人間になりたい。言ってみれば、アメリカですけれども、アメリカで番組をつくるようなことにならないか、当たるようなことにはならないか、そのためにはどうしたらいいかという相談がこれ5年、10年前ではちょっと考えられなかったんですけれども、そういう機運が非常に強まってきているなというのは感じております。ですので、何といいましても、そういう視点の人材がどれだけ物をつくれるところに入ってきてくれるのか、そして2点目はやはりそういった人間が次に出ていく場としてその間に入る人─これ大変古い話で恐縮なんですけれども、私がつくっていたドラマが日本でヒットして、そして海外というときに必ず間に入って、中国や韓国に持っていってくれる人、そしてアメリカに持っていっていろいろプレゼンテーションしてくれる方はほとんどが韓国の方だったんですね、日本の方は一人もおりませんでした。やはりそういう間に入って世界に広めていってくれる人、人材を育成することと広めていってくれる人が本当に両方で、両輪でやっていかないと、なかなかこれはお題目になってしまうんじゃないかというふうに思って、ある意味期待もしていますし、不安もあるというのが、かなり現場に近い気持ちというか、現状じゃないかなというふうに思っております。
 まだいろいろ、その辺から私としては話していきたいなというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。
○角川委員 今大多さんの話にあったものでちょっとつけ加えさせていただきますと、映画もアメリカにハリウッドでつくるときに、日本のコンテンツをアメリカで展開する場合については、やはり韓国の人が間に入っているということが多いんですね。別に韓国の人の独壇場ではないんだけれども、結局、英語が得意で、しかもハリウッドに飛び込んでいけるような度胸のある人というのは韓国人が多いということじゃないかと思うんです。それを僕たちはサードマンと言っているんですけれども、つまりこちらと向こう側のニーズの溝をうめる役割をサードマンと言っているんですけれども、そういう業務がきちんと向こうにあるんですね。そこが我々にはまだ人材育成ができていないから、そのノウハウがないからそういうサードマンを使わざるを得ない。またサードマンの使い方に対するノウハウもまだないというのも現状じゃないかと思います。
 それから、せっかく前回知的財産戦略本部を首相官邸で再開されまして、それで知財保護ももう一回従前とは違う形で展開すべきじゃないかという話が菅大臣からあったと思うんですけれども、私はそういう点ではこの今度の議論が繰り返しになってほしくないなというふうに思います。7年間の中のどこかで前回やったなというふうなことにならないようにするためには、私たちも一生懸命頑張りますけれども、ぜひ政務官におかれて、民主党がこういうふうにしたいんだというメッセージが欲しいんですね。そういう政治のメッセージをきちんと我々に伝えていただけると、繰り返しにならない。長期の展望に立ちながら短期でも効力を発揮するという、今会長がおっしゃったようなことも、政務官がおっしゃったことも実現できるんではないかと思います。今のところ、まだ仕分けをされた段階で映画祭の予算が3分の1削られるとか、ネガティブな報道ばかりが出ていて、民主党は文化がわかっていないんじゃないかというふうな気持ちもあるんですね。今度の知財における成長戦略というのは、文化をメイクマネーしていくということですので、ぜひそこら辺のメッセージ性をいただきたいなと思います。
 よろしくお願いします。
○川上委員 ドワンゴの川上です。
 私のほうは、大体割合明るい方向でこういう方針を出すとこういうふうになってしまうかもしれないんですけれども、現実はもっと暗いというところを踏まえてやらないと、多分現実的な話にならないのかなと思っています。というのは、今コンテンツビジネスの中核になっているような映像にしても、音楽にしても、ゲームとかにしても、このままいくと、もう日本のコンテンツ産業は今壊滅するだろうと、多分、向こうは5年、10年のコンテンツ産業のあり方というのは、多分普通に考えると悲惨な状況になっていると思うんですよね。例えば、音楽においてはディストリビューションが、リアルなパッケージはAmazonが寡占化をする可能性が非常に高いし、それでネットにおける音楽配信はiTunes Music Storeが恐らくとってしまう。それで、書籍のほうは日本が取り残されるか、解放すれば多分Kindleがとっちゃうんだろうなみたいな状況になっているわけですよね。それで、ゲームのほうも今任天堂さんが頑張って、Wiiでは勝ちましたけれども、その次勝てるかどうかというのは正直わからないです。というのは、実際、皆さん思っているよりも、任天堂さんが次負ける可能性も高いと思うんですね。そうすると、5年、10年後で、それで映像のほうではテレビ局を中心としたそういう広告の市場もあるわけなんですけれども、それもネットにいくと恐らくそこで市場をとっていくのはGoogleです。と考えると、コンテンツの成長する云々かんぬん以前に、海外に売る以前に、国内においても恐らく日本のこの市場は海外に持っていかれる構造になって縮小してしまうというのが多分実際の現実です。海外から多分、今唯一稼いでいるだろうゲームというものも本当に10年後維持できているかどうかはわからない。実際、ゲーム機のプラットフォームにおいても任天堂が勝てるかどうかわからない現状ですけれども、ほかのネットの分野で今はやっているソーシャルゲームという、フェースブックを中心にはやっているゲームがあるんですけれども、そこで活躍しているゲーム企業というのは中国企業、韓国企業が中心です。これは、日本においても実はそうで、今mixiのほうでフェースブックのまねしたmixiアプリというサービスが始まったんですけれども、そこで一番人気のサンシャイン牧場、その2位のいろいろな牧場系と言われるサービスがあるんですけれども。これはほとんどすべて中国企業がつくっています。まず、こういった現状を僕は踏まえて議論をしないと、多分本丸のデジタルサイネージとかIPTVはすごくいい話だと思うんですけれども、新しくマーケットを獲得していくためには。でも、既にあるビジネス自体が崩壊しかかっているということに対して、対策はそれは打たないのかというと、それはこれはちょっと違うんじゃないかなというふうに思っています。といったことで、ほかのところでもそういったお話はさせていただいているんですが、そういった観点からの話をさせていただきたいなというふうに思っています。
○久夛良木委員 ソニー・コンピュータエンタテインメントの久夛良木です。
 このゲーム産業が強い強いと言われていますが、生まれたのはつい最近の話で20年ぐらい前です。まだまだコンピューターがみんなのところに来ていないときに、たまたまそれを遊びに使おうということで、任天堂さんとかセガさんとかが進められたんですが、言ってみればまだまだ子供の遊びの1つであって、ある意味少人数でアパートの一室でつくれるような「箱庭」の世界だったわけですね。それをPlayStationであるとかセガさん任天堂さんが進化させてきて、今は映像ソフトも入ってきて、あるティアーに引き上がってきた。つまり世界市場というものにも対応できるようになってきた。新しい技術であるとか、アーティストマネジメントとか、流通、例えばCD−ROMによる流通の整備によって何が起こったかというと、要するに箱庭のビジネスではなくなって、世界の人たちが入ってくることができるビジネスになった。その中で、流れに乗って日本のゲーム産業はクリエーターも含めて強いという時代がついこの間まであったことは間違いないんですが、それは今どうなっているかというと、余りにもそれが急激に世界中に広がった結果、川上さんが言われたように、クリエーターも日本よりはどちらかというと海外のほうが今では元気かな?というようなところもあります。プラットフォームそのものがそれまで箱庭どころか箱そのものが世界のプラットフォームになっていったわけですね、PlayStationとかXboxのように。それが今ネットワーク側に物すごい勢いで移行しようとしている。検索エンジンがGoogleも含めてネットワーク化を加速しているように、ゲームも間違いなく、100%ネットのほうに移行する。それはネット対応ゲームという流れだけではなくて、プラットフォームそのものがネット側に移行しようとしている。そういうふうになると、国境はまさにないわけで、そうなったときに、まずプロアクティブに競争力をどうやって醸成するかということと、それからそこで起こる技術革新において、守りだけでは全くだめ。例えばプロバイダーへの接続を幾ら規制したところでGoogleによる検索がとまるわけではないわけですから、そういった意味からすると、そこに向かってプロアクティブに我々がもっとある意味で陽気になってもいいんですが、攻めていくというような議論もあってもいいかなというふうに思います。
 例えば、パッケージメディアにより今までいろいろなものを配ってきたわけですが、映画にしろ、音楽にしろ、放送にしろ、ゲームにしろ、パッケージの時代はもう明らかにネットのほうに移っていくのは間違いないわけですから、そういったときに規制ばかり考えていては全くだめで、いかに規制よりも、逆にネットワークのいいところを使って攻めていこうかと。
 例えば、子供たちに限らずみんな、著作権があるものを意図してかせざるか、いろいろなことにコピーして張ってしまうわけですね、ネット上に。それというのは、それ以外に方法がないからそういうふうにするわけで、本当は紹介したいだけかもしれない。ところが、紹介するときに、この部分は使っていいよというような明解な、例えばルール付けがあれば、こんなのがあったからこれをみんなで見ようよということで、当該のサイトに行くとかということもあるでしょうけれども、なかなかそこができていない。著作権者とか隣接権を持っている人は、守ろう守ろうとすることで、すべてだめだとということになっている。ネット上のディストリビューションコストというのは今無限にゼロに近付いているので、やろうと思えば技術的にも経済的にも幾らでもできてしまう。かつ、どんどんスピードも速くなっているわけです。法整備を考えるとか、さあどうしようかとか、プロバイダーにこんなものが引っかかったから削除させようなんて言っているときには、もう瞬間的に世界中に広がっていますから。
 そういう意味で、使っていいものといけないものを考えた方がいいのではないかと。例えば放送も含めて、映画もそうですけれども、トレーラーのある部分は引用していいんだと決めてみる。これはみんなでディストリビューションしてくださいと。本だったら、最初の1ページはいいよとか。何かそういうようなことも含めて、これはいい悪いという、みんなそれぞれご意見があろうと思うので、議論をそういうところにまず向けていかれるのがいいかなというふうに思います。
○佐藤委員 日活の佐藤でございます。
 日活という会社は、先ほど下請けというお話がありましたけれども、現実的には今、邦画、メジャーということよりは、このテーブルにもいらっしゃるフジテレビさんや角川さんから、直接現場のお仕事をいただいたりとかするようなことがビジネスの中心になっております。撮影所を有しているということで。ですから、私としては、現場に最も近いところ、制作プロダクション、先ほど下請け、人材のところでもお話がありましたが、そういう視点のところから、果たして本当に日本のコンテンツ・クール・ジャパンというような形で、マネーメーキングをしていくような環境に現場が今あるのか、という危機感を持っているということをちょっとお伝えしたいなと思っておりました。
 といいますのも、昨年「ヤッターマン」という日本のアニメーションのリメイクのタイトルをやったんですけれども、裏表のドラゴンボールという、20世紀フォックスから来た大きい、でか玉タイトルでした。コンテンツの根っこになっているようなアニメーションの原作であったりだとか、コミックの原作というのは、スタジオの、いわゆる北米メジャーの方々に大変高いプライスで落札され、ワールドワイドでお金を稼ぐというような、例えば「トランスフォーマー」もそうですね、というようなことが行われております。日本のコンテンツを世界に売っていくということであれば、プロダクション、現場の視点としては、ぜひそういったコンテンツの根っこを、私たち制作現場のほうにうまく提供できるような流れをつくれないのかなということをとても強く思っております。
 と同時に、北米メジャーのスタジオだけではなく、例えば「仮面ライダー」であったりだとか、これは東映さんのコンテンツですが、こういったタイトルがおもちゃを売るためのコンテンツと言いながら、例えばハズブロさんとかマテルがこれから積極的にワールドワイドでおもちゃを売るために映像コンテンツを展開するという動きが出てきています。こういった議論とかテーブルは、そういった映像を使って何かを売るという方々も含めた形で論議をするというのは、実はお金を稼ぐ上では、より前向きな論議になるのかなというような感想もちょっと持っておりました。
 最後に、ちょっとプロダクションという観点から申し上げますと、私どもは北米のビデオメーカーや中国の監督からもお仕事をいただいております。そういった中では、昨年日本ではほとんど公開されませんでしたが、「片腕マシンガール」というタイトルが、先ほど来配信というお話がありましたけれども、エックスボックスの配信で全米のランキングで4位にチャートされると。ただ、日本では多分誰も知らないと思います。
 先ほど来、文化というお話がありましたが、正直申し上げますと、バイオレンスアクションです。北米のマーケットのニッチ、ワールドワイドのニッチのマーケットを刈り取っていくためのコンテンツという発想をした場合には、必ずしもかつての溝口監督の映画や、小津監督、黒澤監督の映画というような視点ではないビジネスもあろうかと思います。
 世界のニッチのマーケットを全部足していきますと、少なくとも日本のメジャーのマーケットに匹敵、もしくはそれ以上の収益、売上げを上げることができるという視点も、私自身、日活というプロダクションがタイトルを進めていく中で、カンヌで賞をとる、北米のマーケットで1位をとるということではない視点で、日本のコンテンツを展開するという方法論もあるのかなというふうにちょっと最近感じておりました。
 以上でございます。
○末吉委員 弁護士の末吉でございます。
 私は今コンテンツのネット送信のときの権利処理、これは法律をつくったり制度をつくったりするのではなくて、利害関係団体の話し合いの場というのがありまして、そういうところで行司役みたいなことをやらせていただいております。
 今日は論点整理の中で、例えばグローバルとか、デジタルをうたっていますけれども、グローバルにしても、デジタルにしても、必ず引っかかってくるのが権利処理でございます。これは著作権法の観点からは、また別のワーキンググループが働くようでございますが、私が思いますに、今なかなか「法律でこう決めてしまうとうまくいく」というような、簡単なモデルはできないのではないかと個人的には思っておりまして、非常に時間はかかる中で、何とか当事者間でウィンウィンのモデルをつくっていく。つまり法律だけではなくて、話し合いの場をつくったり、そういう協議を促進するということが今一番必要なのではないかと思っています。
 このような著作権法の運用の局面といいますか、著作権法をつくるというだけじゃなくて、その運用の局面をどういうふうに整備していくかが重要です。例えば、クリエイティブ・コモンズというのもその1つ。これは発信側がマークをつけていくわけですけれども。それに限らず、例えば先ほどもちょっとご意見がありましたように、自由に使える素材とか、自由に使えるコンテンツとかをデータベース化するとか、権利者情報をデータベース化するとか、いろいろ制度的な面でもこういう著作権法の運用にプラスになる制度の整備をもっとやる必要があるのではないかと考えています。
 以上でございます。
○杉山委員 杉山です。
 ちょっと場を読んでいたか、読まないかわかりませんが、資料を僕だけ提出しているようなので、資料7をちょっと見ていただきたいんですが、僕はこちらの資料6にあるような論点整理というのは、これまでも再三述べられてきたことなのではないのかなと思いまして、ちょっと違う視点でというふうに思いましたので、クリエーター側から見てみると、こういう世界はおもしろそうなんだけれども、やはり余り評価をされないという土壌があると思うんです。例えば、お父さん、お母さんに、コンテンツクリエーターになりたいと言ったら、止められるほうが多いんじゃないかと思います。ということなので、優秀な人材がまずコンテンツ制作者を目指していないという流れがあります。
 僕は15年前にデジタルハリウッドという学校を始めまして、合計しますと4万5,000人以上の人を育てたというふうに思っておりますけれども、初期、15年前というのは、ちょうど94年10月なんですけれども、久夛良木さんたちのあのSonyPlayStationが出るのがちょうど94年の年末なんですね。そのときは、やはり非常にショックを受けた優秀な人たちが多くて、一気に私たちの学校に、いわゆる一流企業に勤めているような人とか、銀行であるとか、普通だったら絶対一生そこで骨を埋められるような会社に勤めていた人がやめて、CGを習って、SEさんにどっと入って、いっぱいいたというのがありまして、やはり優秀な人たちがこういうものに向いていくというのは非常に重要だなというふうにまず思っています。
 その中で、僕は教育者なので、非常に長いんですけれども、初等教育からやっぱり知財の価値というのを、小学校、中学校ぐらいできっちり教えていかないと、幼稚園からやってもいいんですけれども、なかなか意識は変わらないなと思っているので、ここはぜひ遠くを見て、きちっと入れていかなければいけないと思います。なぜかというと、日本がクリエイティビティを保つということで国を設計していくとすれば、例えばクールジャパンという言葉がありますけれども、それは単にアニメとか、漫画とかだけがクールというわけではなくて、海外のセレブも来て驚くように、例えばウォシュレットであるとか、そういう非常に高い文化レベル、そういう中から全体的にクリエイティビティが高いというふうに感じるというところが重要なところなんです。
 ですから、実は次に出てきますけれども、13.7兆円とか14兆円というのがちょっと狭いんじゃないかなと僕は思っています。多分こういう産業を足してみると14兆円なんですよということなんですけれども、さらに次のページに行っていただいて、2009年のデジタルコンテンツ白書でこんなふうに出ています。こういうふうに出ると、例えばデジタルは6兆円ぐらいなのかなというふうに見るわけなんですけれどもクリエーター側から見ると、この緑で示した部分も実はデジタルコンテンツクリエーターがつくっているんですね。つくっていますけれども、本になっているとか、アナログで配られている。それから、デジタルコンテンツ市場というのは、テジタルでつくって、デジタルで配っている。だから、こっちはDVDは入っていませんみたいな話なんですが、全体に14兆円というものは全員クリエーターがつくっているという認識です。
 しかし、もうちょっと考えていただくと、これはBtoCの市場だけを拾った数字なんですね。コンテンツクリエーターが現実に関わっている仕事は、BtoBがものすごく多いです。先ほどの佐藤委員のお話にもあったとおり、何か物を売るためにコンテンツをつくっているというようなことがありますので、そういった人たちの市場、本当にそれが津々浦々、町々でウェブクリエーターとかそういう人もいるわけですけれども、クリエーターたちが関わっている仕事というのは非常に大きいんです。ですから、14兆円で区切ってしまうと、ちょっとクリエーター側視点からいうと、これは一部なんだなという感じがしてしまいます。売り上げで見れば、主要なものかもしれないですけれども。
 よく言われるように、GDPと比べると低いので、前の政権では19兆円市場にしようというようなことを言っていらっしゃったんですけれども、それは確かにこの論点整理に掲げているようなことをやるとできる可能性があるのかもしれないんですけれども、5ページ目に、僕はもうちょっと広くコンテンツが今とらえられているなと思っています。これは皆さんもアグリーだと思うんですけれども、別にデジタルじゃなくても、芸能界とか演劇とかも含めてコンテンツというような感じになっていますし、アニメ、玩具、お菓子、それから自動車のカーナビゲーションシステムに出てくるあらゆるコンテンツ、それからプロスポーツ等々を含めて、非常に裾野は広いです。
 これまでの政府でなかなか扱ってこない数字ではありますけれども、パチンコ・パチスロ産業というのは本当に知財産業そのものになっていると思います。末端売上げは30兆円ということですけれども、コンテンツをつくっている分はもっと小さいですけれども、それでも私たちの卒業生は多くここの部分に今勤めてもおりますし、非常に大きくとらえていただきたいなと思います。
 広告自体もコンテンツのようになっておりますし、これが新聞、テレビ、ラジオ等に主に配られていたものが移動しているわけですね。これは実際パワーポイントなので、本当はそういうふうに動くような図になっているんですけれども。
 ですから、一説によれば、これは14兆円というより、コンテンツクリエーターたちが関連してやっている産業を全部合わせると80兆円ぐらいにはなるんじゃないかと。関連ですよね、直接稼いでいるというわけではないんですけれども、そういうもうちょっと規模を見たい。
 それはなぜかというと、コンテンツクリエーターの関わっている仕事というのは、コンテンツ産業だけじゃないんですね。横に崩し出している産業なので、何か1本だけ切り出してしまうというのはちょっともったいないなというふうに思っています。
 最後なんですけれども、つまりコンテンツ産業を1個の、緑色に示したところですけれども、産業と見るのではなくて、実はすべての産業界がお客様との第一の窓口というのが、デジタルコミュニケーションに移っているということですね、ネット側に。BtoBの仕事であろうと、BtoCの仕事であろうと、お客様と企業をつなぐのはもうデジタルコミュニケーションになっています。そこの表現というのは、デジタルコンテンツクリエーターがやっています。なおかつ、企画もやっています。下手すると、ウェブの制作会社は広告代理店のようなことすらもうやっています。
 ですから、キャリアパスの話に戻るんですが、若いときはゲームとか映画とかテレビとかで活躍しても、今ご存じのように、20代から70歳ぐらいまで働かなきゃいけない。そういうキャリアパスを見たときに、彼らが年齢が上がっていったときにもあらゆる産業界に、自分たちがデジタルで物を表現できる力というのを使えるのであると。ですから、安心してコンテンツ産業にかかわって、また時が来たら、スーパースターにみんながなるわけではないので、いろいろな産業で自分たちが活躍できるというようなことをもっと示してあげないと、なかなか安心して才能ある人材たちが集まってこない。
 やはり、多くの人が集まることによって頂点が高くなるというのは皆さんもご存じだと思いますし、もちろんインフラも大事なんですけれども、天才たちが起爆剤になるということはあるわけです、当然ながら。ですから、そういう大きな視点を持って、クリエーター達が本当にこういう世界に飛び込んで、日本で、自分がずっとやっていけるんだなというようなメッセージも含めてやっていかないと、根本は解決しないのではないかということで、資料を提出いたしました。
 以上です。
○谷口委員 エーベックスの谷口と申します。よろしくお願いします。
 先ほどご説明いただきましたA3の資料の2ページのところにあります、1番のコンテンツビジネスは海外で稼ぐとか、2番の日本のコンテンツ人材を世界最高レベルとするとか、3番のコンテンツ、ネット対応の新たなビジネスモデルを構築するとかというのは、まさに私どもが最近社内で議論している大きな3つのポイントでございます。特に私は国際戦略室と知財戦略室という部署を担当しております関係で、私の周りでこの3つのポイントが議論になっているんですけれども、3つ目の下のほうに書いてあります著作権侵害を激減させる云々、これはまさにすぐにでも対応しなければならない課題として、自分たちのビジネスモデルを変えていくということもそうなんですけれども、それと同時にどういう対応が考えられるのかということも議論しております。杉山先生が今申されたような知財教育の徹底とか、ルールとか法律とかだけではなくて、考え方をもっと徹底させていく、啓蒙活動とかも含めて、そういうことも必要なのではないかなと。
 そもそも、目の前でのビジネスが消滅していくので、それを何とかしたいという気持ちももちろんあるんですけれども、もうちょっと長い目で見て、今度著作権侵害がなくなっていくということも含めた、クリエーターに対するするインセンティブのようなものがもっと徹底されていくと、おのずとクリエーターがこの業界に増えてきて、新しい人材が活発に活動するようになって、その結果、そこから出てくるコンテンツビジネスというのが日本から海外に出ていけるんじゃないかなというふうにも思います。
 また、海外に出て行く日本発コンテンツというのが、そもそも日本発コンテンツは何をもって日本のコンテンツと言うのかというところも議論かと思うんですけれども、日本人がつくるということにはこだわらずに、権利について日本国籍があれば、それは日本発として考えていいんじゃないかなと。そういうことでいうと、最後2番目のところにもあります世界のクリエーターが日本に集まってくるというような環境が整えば、自然にそういうクリエーターも集まってくるのではないかと。
 一昔前に、絵を目指す人たちはパリに行くとか、ジャズを目指す人たちはニューヨークに行くとか、そういう何となくの雰囲気でクリエーターの皆さんが日本に集まってきたいと思ってくれるような、そういう環境が5年後、10年後にできていると、我々も胸を張れるんじゃないかなと思っているんですが、多分それは大仰な言い方をしてしまうと国家デザインの一種なのかなと思いまして、そういう国家デザインを考えたときに、どなたにどういうふうにご相談申し上げればいいのかなとちょうど思ったところでございましたので、この場でそういう議論がなされればすてきだなと思っております。よろしくお願いします。
○別所委員 別所哲也です。
 ふだんは俳優もしているんですが、別に俳優をやめたわけではなく、ショートショートフィルムフェスティバルという映画祭を実は12年前に立ち上げまして、今年の6月に12回目を数えます。この映画祭は、若干説明をしますと、世界中の25分以内の短編映画、ショートフィルムを集めて、ここ、日本で価値付けしようという大胆な発想のもとスタートした映画祭なんですが、初年度からアメリカのジョージ・ルーカス監督が応援をしてくれまして、これもだめもとで僕たちがメールをして、ジョージ・ルーカス監督が、応援してやろうじゃないかと、そういったところからスタートしまして、現在はアメリカのアカデミー賞の公認映画祭という位置づけをいただいて頑張っている映画祭です。
 そういった立場もあって今日ここに呼んでいただいたのかなと思うので、僕はショートフィルムという映像コンテンツを中心に今日はお話をしたいなと思っていたんですが、僕自身は、皆さんの議論の中にもあると思うんですけれども、世界に攻めて出ていくという以上に、日本に迎え入れるべきという発想で、コンテンツビジネスについて考えられるほうがいいのかなと思っております。僕自身が映画祭を始めたのも、世界の皆さんのコンテンツを日本に呼び入れて、そこで価値づけし、価値づけビジネスとしての映像コンテンツ、あるいは産業を支援するというようなスタイルをとる。なぜならば、結局視点を変えますと、アメリカのアカデミー賞も、映画祭で言えばですけれども、カンヌでもベルリンでも、彼らは世界を受け入れて、迎え入れているんですよね。ですから、私たちが攻めて出ていって、何かを獲得してくるという発想ではないところから議論していただきたいなと思います。
 私はショートフィルムに着眼したのは、ちょうど十数年前、アメリカがインターネット社会で音声配信の次は映像配信だと色めき立って、映画そのものを、君の映画は何ギガになるんだろうねとか、そんな議論で、容量で話すようになっていた、それがちょうど15年前ぐらいです。その時期に僕自身も、ショートフィルムに対する偏見があったんですが、これから日本が小型車で世界を席巻したように、映像コンテンツもひょっとしたら原点に帰って、燃費のいいコンテンツ、つまりショートフィルムのように短い時間で人々の心をつかんだり、僕はビジュアルビークルと呼んでいるんですが、情報を運んでいく装置として、あるいは車として、世界に日本の文化とか考え方、価値観を発信していくには、ショートフィルム、ショートフォーマットコンテンツなのではないかなと思ってスタートしました。
 始めてみていろいろ感じることがあったんですけれども、例えば印象的な言葉は、本にも書いたんですけれども、海外の方に必ず言われるのは、日本は映像ジパングだと。つまり日本中にたくさんのコンテンツになるべき金塊は既に埋まっているぞと。実際もうハリウッド映画はそれを勝手に掘り起こして磨き、盗んだとは言いませんが、そこからアレンジメントした作品をつくっているのが現状ですし、お隣、韓国は日本の漫画を映画化して、カンヌ映画祭で「オールドボーイ」という作品で、数年前になりますが、グランプリをとっています。パルムドールではないんですが、これももともと日本の漫画を映画化をして、韓国が世界で評価されるという、そういう状況が起きています。
 つまり、民話とか、今ハリウッドはこぞって落語を研究しているんですけれども、落語とか、昔話とか、祭とか、日本の価値観とか映像、物語のつくり方というのに非常にもともと興味を持っていて、僕が二十数年前にハリウッドの映画に出たときも、ハリウッドのスタッフというのは、世界中から迎え入れられて、それこそ集まっている多国籍軍なんですけれども、日本の漫画は言葉がわからなくてもカット割りを、こんなカット割りが実写でできたらどうなるだろうねとか、コンピューターグラフィックスでやるにはどうしたらいいだろうねと、本気で議論しているのをアトリエで見てきていたので、大変映像ジパング日本としてもったいないなと思いますし、もうちょっとその辺のコンテンツを自分たちで掘り起こして、金塊として磨き直すという作業を国家レベルでやるべきだと思います。
 また、印象的だった言葉は、黒澤明さんのことを世界の人はいろいろ評価しますが、これはダブルミーニングなんだと言われることがよくあります。特にイギリスの方に言われたり、ヨーロッパの方に言われるんですけれども、要するに黒澤以降は誰なんだと問いかけているんだと。日本映画界やコンテンツ界に対して、宮崎駿先生とかいろいろたくさん、僕も尊敬する例えば北野武さんとかいるんですけれども、やっぱり発信されて、それが世界的なレベルでネームバリューとして評価を受けない、評価を受けないというのは、各部分では受けているんでしょうけれども、国家戦略的に受けないというのは、国家PR上やっぱり非常に残念なことなのではないかなと。黒澤明以降いないだろうというダブルミーニングで言っているんだということを、もっと日本人がしっかりと受け止めるべきなのではないかなと思っています。
 それから、私たちがショートフィルムで携わっていることで非常に感じるのは、先ほど既に大多さんとか角川さんがおっしゃっていましたが、もうアジアでは圧倒的に韓国が強くて、映画祭も、それからあらゆるものも韓国にすべて持って行かれているような状況を実際に感じます。それと同時に、今マレーシアは国家戦略的に映画、映像、コンテンツをエンターテイメントハブ化するような事業を始めていまして、私たちも声をかけていただいていますが、これはアジアを中心にしたイスラム圏とグレーター・チャイナとか言われますが、チャイナ圏の人たちをマレーシアという比較的ソフトな、そういうものを受け入れやすい国の中で集約して、映像産業にまとめていこうというような動きをされています。
 先ほど杉山さんもおっしゃっていたんですけれども、僕はエンターテイメントコンテンツを切り出して、それだけで議論するのではなくて、例えばほかの省の方から、世界に別所君、新幹線を今売ろうとしているんだけれども、それで何かいいアイデアはないかと言われたことがあるんですが、だったら新幹線を本当に国のセールスポイントにするのであれば、それに伴う国家戦略的に映像コンテンツをつくって、漫画をつくって、ドラマをつくって、映画をつくって、そして世界に売るんだというような、縦割りじゃなくて、そういう議論のあるところとくっついて、コンテンツをつくるということが必要だと思います。
 また、メディアリテラシー的にも、僕はショートフィルムを読書感想文のように小学生ぐらいから見て、映像の向こう側には意図があるとか、映画というものはこうやって見るんだとか、アレルギーから避けるように、あるいはセックス描写やそういう暴力描写を小学生から避けるのではなくて、むしろ見せることで議論させるということをするべきだと僕は思っています。
 実際、フランスのフレルモンフェランというショートフィルムの映画祭では、小学生が審査員をしています。もちろんそれだけではないんですが、小中高というところが映画祭にやってきて、実際に映画を見て議論し、あのシーンはどういう意味があるんだろうねとか、これはうそだよねとか、こういう価値観は私はついていけないとか、真剣に議論している小学生のフランス人たちを僕は目の当たりして、全く文化レベルも、それから映像産業をとらえる力も違うんだなと思いました。
 それから、コンテンツビジネスでいうなら、先ほど大多さんが言ったみたいに、間をつなぐ人がいらっしゃらないので、コンテンツアンバサダーのような人を国家レベルでもっとアポイントをして、世界中をわたり歩き、日本のコンテンツをセールスし、世界の声を吸収するというような人を、きっちり20代、30代の人から選んでやるとか、そういうことをされない限りは、変わっていかないのではないかなと思います。
 いずれにしても僕自身は、日本がいずれ、ずっと前にも経済産業省で言ったことですけれども、映像甲子園のようなものをちゃんとつくって、サッカーとか野球がスポーツコンテンツとして日本の中でヒエラルキーがちゃんとあって、サクセスストーリーがあるように、映像を目指す人が、少なくとも自分が1億円プレーヤーになれるんだとか、世界に打って出る後押しを国がしてくれるんだというような、そういったPRがきっちりとある国になってほしいなと思います。
 以上です。
○吉羽委員 講談社の吉羽でございます。
 私は出版社におけるライツ事業というのをやっているんですけれども、皆さんご承知のとおり、本体部分、出版の部分でつくっている文芸の作品であるとか、漫画の作品をゲームも含む商品化であるとか、映像化、アニメーションを映画化、それから海外でのコミックの進出というのも随分前から起きていますけれども、先ほどお話があったように、日本の漫画のコンテンツを利用して、海外で、特にハリウッド、また韓国というお話もありましたけれども、そういったところで映像化をするというようなことも進んできております。
 ただ、一方で、大本になっている原作の部分をつくっていくというところで、先ほど川上委員のお話にもありましたけれども、このままいくと出版産業自体が、2兆円と言われる産業が壊滅的になってしまうのではないかというような危機感も同時に感じています。当然黒船の話があるんですけれども、実はEペーパーの端末というのは04年ぐらいに日本が先に出していて、そのときにほとんど普及しなかったという歴史があります。メーカーさんなんかから出版社がコンテンツを出さなかったんだという言い方をされるんですけれども、お話ししたいのは2点ありまして、1つは著作権の利活用の部分で、出版社がネットであるとか、海外に向かって出版系のコンテンツを利活用する上では、非常に制約を現状持っているという部分を何とか打開をしたいなというふうに思っております。
 先般のGoogleの問題のときにも、出版界としてはほとんど声を上げることができなかったんですけれども、我々にはネットにおける利活用に関して、複製や送信に関して、そもそも文句を言う権利が現状存在していないというところがあって、やはりそこは著作権団体に任せるしかなかったというところで、非常に忸怩たる思いをしております。今般またKindle等々が入ってくる中で、出版社としての立ち位置みたいな部分をきちんと固めなければいけないというふうに思っております。その一方で、日本発のやはりプラットフォームという話がありましたけれども、そこが育成し切れていないというところで考えていくと、電子流通に移っていったときの流通を今後大きく外資が担っていってしまうということになると、日本での書籍の流通、それから書店を初めとする小売り、リテールのところも含めて、非常に大きな打撃を受けるのではないかと思っておりますので、やはり日本産でのプラットフォームの育成というのも非常に重要な問題であろうというふうに考えております。
 さらにもう1点、著作権の部分部にもかかわるんですけれども、やはり海賊版の問題がこれからさらに出版系でも大きくクローズアップされるだろうなというふうに思っております。既にスキャンレーションの話とかというのがありますけれども、今後Kindleであるとか、ソニーリーダーのようなものが普及していくと、当然ながらスキャンレーション自身が、今はインターネットでの閲覧というところにとどまっているんですけれども、これがまたピアトゥピアに乗っかって、端末向けに流通していくというようなことも既に起きております。こういったことも含めて、余り強い規制ということも僕も言いたいとは思わないですけれども、やはり全くコントロールできない、そこから収益が奪われていくということは間違いないと思いますので、この2点についてちょっと議論を深めていただけないかというふうに思っております。
 以上です。
○中村会長 ありがとうございました。
 本部員の方々からもコメントありましたらぜひお願いいたします。
○佐藤本部員 私は3点だけ申し上げます。
 この知財戦略本部でコンテンツのテーマを取り上げて、もう7年目に入ります。その中で、じゃ、どれだけ変わったのかというと、私はあまり変わっていないのではないかと思っています。今お話があったように、猛烈にコンテンツの世界は変わっております。国のほうが対応し切れていないというのが現状だと強く思っています。そういう意味では、今日のお話を伺っていても、もう待ったなしだという状況だということをしっかり受けとめて、成果を出さないといけない時期だというのが1点目です。
 2点目は、私は弁理士ですので、いわゆる知的財産権というのにかかわってきています。知的財産権というのは基本的にものをつくることを中心としたものが進んできており、その面では法制度は充実しているんです。ただし、このコンテンツに関しては、守るべき法律そのものが時代の流れについてこられなくなってきてしまっているのではないかと思っています。もともと知財の法律というのは私は競争ルールだと思っているんです。だけど現状は、競争ルールとして機能するものがない。そうすると何が起こるかというと、力わざで勝った者が強いという、そういう世界になってしまう。せっかく自分がいいものを考えても、きちんとそれが先行優位として保護されない。これが今、このコンテンツの世界だというふうに思っています。
 そういう意味では、実際には力がある者が勝つ。それしか残らないというのが現状だろうと思っているんです。そういう意味では、制度的にこれを守っていくというのは現状では非常に難しい。そうすると、どうやって勝つかということしか今のところは手がないというふうに私は思います。
 ものづくりは、やはりスキルアップをしていくのには非常に時間がかかります。日本の技術力が強いのはやっぱり100年以上の技術の集積があって、それで勝てている。それでも勝てなくなってきているというのが現状ですけれども、このデジタルコンテンツ系のほうは、むしろ才能とツールさえあれば誰でも先駆けになれると。さらに前にやった人の真似をしても誰も問われないという世界であるとすれば、能力があって、チャンスさえつかんでうまくやれば勝てるという世界になってしまうんじゃないかというふうに思っているんです。それはまさに韓国、中国が今やっている世界だと思うんです。
 また、中国あたりも、最近私、中国の関係者の人たちとも話をするんですけれども、彼らは今、アニメーションに猛烈に力を入れています。それはなぜか。そこは絶対に中国がトップをとれるというふうに思っているんですね。そういう意味で、いわゆるものづくりの知財の戦略とこのコンテンツの戦略というのは全く違うということをしっかり受けとめた上でやらなければいけないというふうに思っております。
 3つ目は、昨年5月に韓国の国会に呼ばれまして、日本の知財について話せと言われて話をしました。国会議員が28名来ました。ちょうどあのときは盧武鉉大統領が亡くなられた後で、会議をやるかどうかもめたんですけれども、それでも28名が来たし、国会の議長も来ました。そこで何が話されたかというのは、1つは知財で韓国がどうやって勝つかという話の中に、一番テーマが大きかったのはコンテンツです。
 それだけ韓国も国ごと全体でそれをやろうという意気込みが明らかに非常に強くあるし、中国もそうだということを我々はしっかり受けとめて、とにかくスピード感を持ってこの問題に取り組むということがぜひ大事だなというふうに思っております。
 以上です。
○中山本部員 このコンテンツの問題は恐らく法律、技術、ビジネスモデル、それを支える人、いろんな方面から攻めていかなければいけないと思うのですけれども、私は法律家ですので、法律の話をしたいと思います。
 このコンテンツに関係する法律は、不正競争防止法もありますけれども、著作権法が一番大きな問題だろうと思っております。今、佐藤さんもおっしゃいましたけれども、基本的には著作権法がデジタル時代についていけていないのではないか、というような発想をしております。著作権については文化審議会でいろいろ議論をしているわけですけれども、どうも議論が学者的というと非常に失礼ですけれども、世界中の法律を調べて、論理破綻のないように、非常に論文としてはすばらしいものをやっているんですけれども、私はこの問題はそうではなくて、日本のこの分野の産業をどう引っ張っていくか。もっとはっきり言ってしまうと、どうしたらアメリカに負けないようにするかということだろうと思うのです。
 ところが、著作権法というのは、成り立ちからしまして、産業政策的な要素というのは余り入っていない。そういう側面を余り考えない法律だったわけですけれども、今やデジタル時代になって、著作権法というのはビジネス・ローの一種になっていると私は思っております。
 特にネットに関しましては、日本でだめと言ったって、アメリカへ行ってしまうだけです。検索エンジンを見れば明らかですけれども、日本のサイトは全部アメリカでコピーされて、日本人はそのコピーされたアメリカのサイトを使っているという情けない状況です。日本には産業がなくなってしまう。それだけでなく、新卒の優秀な人を初め、一流企業の若い優秀な技術者は向こうに、つまりGoogle等に引っ張られていってしまう。産業は取られるわ、人は取られるわ、何も残らないという状況になりつつあるのではないかと思っております。
 先ほど言った細かい世界中の法律を調べて論理的にどう破綻しないかではなくて、アメリカでできて日本でできないということでは、これはもうどうしようもない。理屈のいかんを問わず、日本は負けてしまう。少なくともアメリカ並みの規制の緩和というものをしていかなければいけないのではないかと思います。そういう大きな戦略的な観点を持って著作権法というのをこれから考えていかなければいけないと考えております。
 以上です。
○中村会長 ありがとうございました。一巡しました。
 先ほど角川委員から、繰り返しにならないようにしようと。アクションが大事だというお話がありました。私もそのとおりだと思います。また、佐藤本部員からも、待ったなしだという声がありました。そのとおりだろうと思いますので、アウトプット志向で議論を進めたいと思います。
 また、これも佐藤本部員から、知財の政策は余り変わっていないという話がありました。そうした目で今日の事務局の資料を改めて拝見すると、少しこれまでとは違った面も出てきているなというふうに感じます。
 例えば国内志向だったこれまでの政策以上に、海外に重点を今回の資料では置いています。また、人材に重点を置くというのも違いの1つでありましょうし、しかもそれが子供のレベル、あるいは海外からの人材誘致にも広げているという点が目立ったところであります。それから3つ目には、コンテンツの政策なんですけれども、コンテンツ政策にとどまらずに、プラットフォームとかネットワークの整備などにも言及をされているというところも挙げられるかと思います。また、4点目としては、制度論よりも民間ベースの取り組みを重視するというのが色濃くにじんでいるかというふうに思いますけれども、果たしてそのような方向でよいかということを後ほど議論いただければと思いますし、また同時に、この室内には今、かなり強い緊張感といいますか、危機感が漂っているように拝聴いたしました。必ずしもコンテンツ産業というのはバラ色の未来だけではないぞということだろうと、そういったことが共有されているかと思いますので、そうした認識のもとで議論が進められればと思います。
 では、またさらに意見を伺ってまいりたいと思いますけれども、個別のポイントに入ります前に、まず2ページ目ですね、全体のたてつけについてご意見がありましたら伺いたいと思います。今回の論点の整理では3つの柱、海外と、人材と、それからネットワーク化ということになっておりますけれども、そういった認識でよいか。あるいは、我々のアウトプットの出し方としてはさまざまな政策の目標と、それから政策の施策、アクションというのが求められるんですけれども、そういった方向でよいかということです。このあたり全体の枠組みについてご意見があればご発言いただければと思います。ここからは自由にご発言いただければ。
○角川委員 先ほど佐藤さんからお話がありましたように、この知財本部で議論をしてきて、もう7年がたつわけです。そのときに、最初の感想としては、国がコンテンツに注目して国策とすると。知財を国策とするということについて非常に委員全体が感銘を覚えていたと思います。明治政府以来、重厚長大というか、重商主義でやってきた日本が、ようやく無形の知財というものを正面にとらえてやっていこうということについて、非常に大きな転換を迎えたなというふうなことを感じておりました。そのことについて、コンテンツ促進法とか、この知財本部は法律制定についても非常に功績があると僕は思っております。
 その中で取り残してきたことは、やっぱり政府の具体的な支援ということであったのではないかと思います。つまり、言ってみれば、知財については民間がやってくれて、お金は無理だけれども、制度はついていくよというふうな話で、お金についての話はほとんどなかったですね。今回はこうやって海外に出ていかなければいけないということになって、合作映画の奨励となると、「アバター」が興収何百億円、しかし日本の「おくりびと」は何億円、2けた違うんですね。せめて何十億円のコンテンツをつくり出すような制度を、今回この[2]の中でありますけれども、提案して、決定していただけないかなというふうに思うんですね。一歩踏み出して、そういうファンドをきちんと国がつくると。海外映画制作ファンドをつくって、そういう合作映画をつくろうということに踏み出してもらいたいというふうに思うんです。
 実は外国は全部、国でファンドを持っています。フランスもそうですし。そういうところは、日本が、国がファンドを持っていれば、お互いに国同士のファンドで出し合って、そこで初めて合作映画ができるんですけれども、日本にはそのファンドがないために、例えばカンヌ映画祭で日仏映画協力覚書というのをつくったときも、これも向こうは合作協定にはできないと言うわけです。日本にはそういうファンドがありませんから、フランスは国がお金を出すけど、日本政府がお金を出せないのであれば、合作協定にはならないと。合作協定の前の協力覚書というふうなことになったわけなんです。ですから、どうか外国の制度と日本の制度の足並みをそろえるという点でも、そういうファンドをつくっていこうということを明確に打ち出していただきたいと思います。
 それからもう1つ、今皆さんのお話を聞いていて、本当にそうだと思うんですけれども、コンテンツというのはネットで配信されていくとなると、ネットに配信されていくソフトウェアの部分というんですか、プラットフォームと言ってもいいかもしれませんけれども、そこら辺がほとんどアメリカ勢に抑えられてしまうんです。今、川上さんの話にありましたように、音楽のほうはiPodでアップルにとられてしまう。
 そして今、電子書籍リーダーが出てきました。出版のほうは、僕も出版人ですから、緊張しておりますけれども、緊張して今の事態を見守っているんですけれども、Kindleと、それからアップルがiPadを出してきました。
 音楽の世界はここに出ているように、コンテンツ産業が14兆円としますと、1.9兆円の規模なんです。1.9兆円の規模でこれほどアメリカ勢にやられてしまって大きなショックを覚えている段階で、出版という場合には、新聞も電子書籍リーダーが入ってきますから、こいつは6兆円の市場規模なんですね。ですから、この6兆円の世界をアメリカ勢に牛耳られてしまうと、本当に日本の活字文化は衰退に向かうと思います。その後には恐らく映画配信プラットフォームの問題が出てくると思うんですけれども、これも大きなマーケットなんですけれども、実は日本のコンテンツ産業の規模で言えば4兆円ということですから、本当はこの出版・新聞の市場で勝たないと、生き残らないと、日本コンテンツ産業の未来はないというぐらいのつもりで僕たちも取り組みたいと思いますので、ぜひ知財本部でもそのような気持ちで、このプラットフォームの問題を検討していただきたいと思います。
 そういう点では、川上さんは非常に全体を俯瞰した、いい意見を言っていただいたので、川上さんの意見をもう一回よく皆さんと咀嚼し合っていただけたらなと思いました。
○中村会長 ありがとうございます。
 今、海外の政策、それからプラットフォームのお話が出ましたけれども、全体の枠組み、我々の議論のスコープについて、ほかにご意見ありませんでしょうか。
 どうぞ。
○川上委員 この2番の日本のコンテンツ人材を世界最高レベルにするということなんですけれども、ここについては少し認識が違うんじゃないかなと思っていまして、僕は既に日本というのは個人レベルでは最高レベルのクリエーターがいる国だと思っています。
 我々はニコニコ動画という動画サイトをやっているんですけれども、これはユーザー側が勝手に投稿して、みんなに見てもらえることが唯一の報酬という、何の得にもならないことなんですけれども、世界中の動画サイトの中で、ニコニコ動画の水準レベルというのは群を抜いているんです。これは明らかに世界一です。それで何かもう勝手な進化をしているんですよ、世界の流れを無視して。日本好きな人というのは、我々、世界にこびないということをモットーにしていますので、利用規約も日本語のみで、英語とかは全くないんですけれども、各国に翻訳サイトがあって、みんな見に来ると、そういうことになっています。
 それで、やっぱりそういうのを見ていても、日本は個人の制作レベルというのは既に今でも世界一なんです。ただ、ビジネスモデルがついていないんです。それで多分、稼ぐ手段をつけてあげれば、どんどんやってくると思うんですよね。大体、多分クリエーターになりたくないというのは経済面だけだと思うんですよ。なりたい人はたくさんいて、ユーザーがいるところにクリエーターがなるので、実際に人気があるコンテンツ、アニメだったり、ゲームだったりというところは、やっぱり給料が安いんですよ。
 やっぱりなりたいから人が集まるので、優秀な人が安い給料で働いてしまうというのがあって、きっとこれはもっと産業規模が大きくならなければいけないんですけれども、なりたい人がもっと多いので、なかなか給料水準は上がらない。一方、ネット産業というのは給料が高いんですけれども、多分、おもしろいものをつくっていないんですよね。クリエーターを育てるというよりは、クリエーターが世に出るための場所、ビジネス基盤をつくっていくという観点が重要じゃないかと思います。
 それと大事なのは、クリエーターもそうなんですけれども、ユーザーが大事なんです。日本がコンテンツとかクリエーターが強いのは、クリエーターが強いんじゃなくて、ユーザーのレベルが高いんですよね。今ツイッターとかはやっていますけれども、その前はYou Tubeがはやって、その前は、ゲームの世界ではウルティマオンラインというのがはやったんですけれども、世界ではやったネットサービスは言語の壁を越えて、日本で最初にはやるんです、世界中の中で。日本の中の一番のコアユーザーというのが、世界中からこういうおもしろいコンテンツがあると探してきて、それがまず日本ではやるんです。
 You Tubeとかは最初、アクセスの3分の1ぐらいが日本だったと言われていて、日本からのアクセスがブロックされたりだとか、ウルティマオンラインというのも英語版しかなかった時代に、アメリカ人の次に多いユーザーが日本人だったりだとか、日本は言語の壁でとにかく海外に出ていけないと言っていますけれども、実はもうユーザーは世界中のコンテンツを消費していて、その中で一番すばらしいものを見つけているんですよ。そういうユーザーがいるから、日本の中でやっぱりコアなコンテンツというのが生まれてくる土壌というのができているというところの認識が僕は必要だと思います。
 だから、いいものができていないからどうこうというような感じの議論というのは、僕はちょっと違うんじゃないかなというふうに思っています。
○中村会長 今の人材のお話で、私も大賛成で、ユーザー力というのが1つのキーワードになってくるかなと思いますが、さて、たてつけとしては、では、この3つの柱をひとまず基本として今後議論を進めるということでよろしいかと思いますが、全体のスコープで言うと、先ほど杉山さんがおっしゃったコンテンツの範囲といいますか、我々がどういったコンテンツを念頭に置いておくかということのご意見がある方がおられれば。
 先ほど杉山さんがおっしゃったように、エンターテインメントのコンテンツの周りにファッションがあったり、おもちゃがあったり、観光があったりと。非常に見ておくべき産業も広いのではないか。あるいは、これは私の意見なんですが、コンテンツの問題をなぜ内閣官房のど真ん中で我々しなければいけないかというと、非常に横に裾野が広くて、数字で出てきているような15兆円規模という、2%産業ではない、もっと大きなものがあるからだろうと思いますので、そのあたりも何かコメントとか意見とかありましたらお寄せいただければと思いますが。
 よろしゅうございますか。では、個別のテーマに入ってまいりたいと思います。
 まず最初に3ページ目、1.グローバルコンテンツ大国の実現という論点に関してご意見が重ねてある方はお出しいただけますでしょうか。何でも結構です。
○杉山委員 じゃ、ちょっといいですか、海外ということで。
 川上さんの意見に僕は物すごく賛成で、アマチュアのレベルも本当は世界最高峰で、あの中にプロの人もいると思うんですけれども、実例として、今、フルCGのアニメーションとかというものが世界で非常に大きな規模であると思うんですけれども、実際に日本でも一部請け負ったり、つくったりしてみて、その予算、要するに現場の制作予算と、出しているクオリティーを比べると、本当に世界一なんです。それは我々、CG制作会社の社長さんたちといつも計算してやってみて、このクオリティー、この制作時間、これでここまでつくれるというのは、アメリカというか、ハリウッドでは絶対できないレベルだなというふうに思っています。
 ですから、クリエーターを育てるというより、そこで何が苦しいかというと、日本の制作会社は物すごくみんな経済基盤が弱いので、1つはそういう大規模なデジタル作品をつくるとなると、装置産業の面があるんです。ですから、彼らは1万台のサーバーを並べて計算している。そんなものは日本の制作会社は絶対買えないですし、それも2年たてばもう古くなってしまうような、そういうようなことがあるので、我々も研究レベルで、クラウドコンピューティングを使って産業界の人がみんなで一緒に使えるような映像制作用の、プロ用のそういうものを持ちたいなというふうには思っているんですけれども、そういうものをなかなか民間の弱小レベルでそろえるというのも大変なので、そういったことも考えていただかないと、やはり一人一人が強くなっても、大作をつくるには物すごく装置産業という面もあるんだというふうに思っていただきたいんです。
 それから、当然、配信の産業もありますけれども、これも装置産業なんです。サーバーを10万台持てるかというような話の部分もあるわけです。ですから、そういう点でも見てほしいなというふうに思います。
○佐藤本部員 今のお話なんですけれども、ものづくりのほうはほとんどの各県に工業試験場からできた研究機関というのがあるんです。そのコンテンツのほうも、そういうインフラ整備というのはコンテンツの部分ではまだできていないのではと思います。そういう点では、ものづくりのほうのやり方を真似るのも1つかなというふうに今、伺いながら思いました。
 それから、川上さんのお話を聞いていて、私非常にいいなと思ったのは、我々知財の世界で一番考えているのは、日本が知財のウインブルドンになろうよというのを、言っています。それは世界中の知財が日本にいつも最初に入ってくる、そこで競争しながら世界に発信していくような世界がつくれたらいいねという、そういう夢を我々は語ろうとしています。それが今のコンテンツの話だと、それができる要素が日本にあるということで、大変今日はうれしいお話を伺ったと思っています。
 それをやはりしっかりとこれからも維持できる構造をどうやったらつくれるのかということを考えなければいけないのではないかなというふうに思います。You Tubeの問題についても、やはりあそこで必ず、投稿するのはいいけれども、そこで違法なコピーが行われたりする。それをまた禁止するということになると、逆にそれをつくる力を抑えるということとぶつかってしまう。この辺をどうするんだという問題もきちんと政策的に考えないと、片方で悪いと言うし、片方は、あそこがいいものが生まれるところだという話になっているので、ここも一回整理する必要があるんじゃないかなというふうに、今、川上さんのお話を聞いて思いました。
○中村会長 この海外のところですけれども、2020年の目標として売り上げを何兆円か増やそうという目標の立て方。それに対して、下のほうに取り組むべき課題ということで、共同制作を促進するとか、アジア市場などを開拓するという方法が書いてあるんですんですけれども、このあたりはいかがでしょうか。これが実現可能なのか、あるいは適しているのか。
 どうぞ。
○大多委員 ちょっと数字に関してはいろいろあると思いますけれども、今の話を聞いていて、結局、本当にレベルが高いところにソフトはあるわけで、角川さんからもサードマンですか、初めて聞きましたけれども、やっぱり営業していないんですよね。一生懸命つくっているけれども、結局営業ができていないから売れない。売れないと、結局今、僕はたくさんのクリエーターといろいろ話しますけれども、思っているのは、別にもう日本でいいやという人間も多いんですよ。海外で生きたいという人間と、そこそこそれで食えるようにもなったしというような感じで。でも、そこの先に、何か向こうにコネをつけてきてくれて、こんなことをしてくれるという人はほとんど見当たらないんです。今アメリカのメジャースタジオは日本の物語を物すごく欲しがっています。これは皆さん共通認識なんだけれども、結局話をしている人がどれぐらい、国の人でも、どこの人でも、アメリカのメジャースタジオ、もしくはそこの日本のメジャースタジオの支社がもちろんありますから、その人たちとどれだけ話をしているのかと、余りそれも聞かない。
 じゃ、どうやって海外なんかに出て行ってお金を稼ぐのかという、最低限の営業体制みたいなものが、どこの会社でもまずありますよね。一生懸命に物をつくったって営業していないんですから、どうやって物を売っていくのか。結局、国策と称してやっている中国や韓国はもうその部隊がすごいわけですよね。じゃ、その人たちが全員プロかといったら、僕は何人か会いましたけれども、そうでもないです。意外と普通の何てことない映画ファンやドラマファンの中で会社を立ち上げて、ハリウッドに売ったらお金になると思って言っているんでしょうけれども、そういうレベルの人から、かなり国の高いレベルでこれを売るんだというふうな人まで、結構さまざまにいるんですね、人が。
 営業体制なくして、どうやってその最高レベルのコンテンツを発信できるんだということになっていると思います。だから今、結構若い人たちは、もうその辺に関しては多少あきらめかけているところもあって、ここでやっぱりネットが大きいですね。インターネットでいけばいいんだと。まさにこれはグローバルですから、自分が150万でつくったコンテンツが、アメリカの「パラノーマル・アクティビティ」という映画が今大ヒットしていますけれども、あれはアメリカで100億の興行収入を上げているんですよね。こういうのがあります。たまに出てきます。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」とか、何本かそういう作品って出てくるんですんですけれども、5万でも10万でも100万でもいいから、自分でネットでつくって世界に配信して、ここで成功してしまえば、もういいやと。いろんな人に応援されて、国にいろいろ応援されて出ていったって、なかなかそんなの売ってくれる人もいないし、うまくいかないよという中で、もうネットを利用しちゃおうよという動きも出ているぐらい、やはり外に出ていく、いわゆる営業マンみたいなものが相当必要じゃないと、もうネットで勝負という若いクリエーターが出てきて、それはそれで成功すればいいと思うんですけれども、ここで話す海外でお金を稼ぐという点で言うと、それが非常に大きいなというふうに常々感じております
○佐藤委員 今、大多さんからお話がありましたけれども、具体的にコープロ(共同製作)の話をしたときに必ず障壁になってくるのが、チェーン・オブ・タイトルのクリアの問題なんです。
 権利に関する概念が彼らに売ろうとするときにどうしても変わってきてしまう。あとお金です。彼らは、先ほど申し上げたような日本のすぐれた根っこのコンテンツに3億円とかでホールドしてきます。日本の内需のマーケットで、原作権をホールド、例えば5年間するために3億円を出すというのは現実的に無理です。と同時に、著作権の問題に関しては、財産権という問題と人格権という問題との2つの観点があると思うんですが、大変私たち、実は、ごめんなさい、ライツの方とかもいるところで、人格権に関して苦労します。彼らと同じ土俵で勝負をしよう、商売をしようというとき、今ある原作のをクリアして、海外の著名な監督と一緒にやろうというプロジェクトが幾つか進行している現場の声としては、チェーン・オブ・タイトルをクリアする上での法的な整備、外で外貨を獲得するための支援みたいなことは必須だと思います。重ねて意見として、大多さんもそういうニュアンスのことも含めて出たと思うんですが。
 あとは営業の体制ということが再三出ていますが、ごめんなさい、僕ちょっと違うことを言うかもしれません。僕はアナログのコンテンツの現場にかかわっています。もちろんCGのスタッフとも連日打ち合わせはしながらです。制作の現場は劣化していると思います。今はピークかもしれません。ピークはもう過ぎたかもしれません。僕は劣化しているような気がしています。
 なぜか。明確に労働条件の問題というのはあると思います。先ほど来言っていますけれども、すぐれたクリエーターにすぐれた報酬や成果というのを導入するような方法論が果たして整備されているのかという問題。ギャランティーを含めて。明確にこれは今あると思います。当然彼らは、例えばホラー映画で、清水崇監督なんかは外で稼いだほうがよっぽど稼げますから、ハリウッドは世界中の才能を消費するというシステムの中において、彼らのもとに駆けつけると思います。
 労働条件といいますか、最低賃金の制度というのは一応あるんですが、守っている制作会社というのは見たためしがないです。先ほど言ったデジタルの根っこのCGの制作会社に関しても、基本的にはベースでやっているのは労働集約型の最たるものだと思います。現場は。寝袋に入って、ほぼ徹夜で映画のCGパートをつくっているような劣悪な現場であるということも言えると思います。こういったところにメスを入れる。営業の体制ももちろん大事ですが、制作の現場に関しての何らかの整備というのも必要なのではないかと。でなければ、僕は劣化するのではないかというふうに思います。
○中村会長 ほかに海外展開について何かご意見ありますでしょうか。
○別所委員 僕はショートフィルムの世界で海外を見てきているんですけれども、例えば小回りのいい短編映画、ショートフィルムの世界中のものを日本にアーカイブして、ファイリングして、どんどんそれがリメイクできるような環境をつくるとか、その人たちが日本でクリエイティブなことを展開して、日本のセールスポイントを世界に発信する物語の中に入れ込んでいくというような、要は何を言いたいかというと、日本人が日本人だけで完結して世界に売り出していこうというのは所詮無理なんです。
 ですから、味方をつけるという意味で言いますと、先ほど僕も最初に迎え入れるということを言いましたが、もっともっと海外のクリエーターが頭脳流入してくれたり、それからビジネスマンがこちらにやって来て、日本の政府がお金の補助もしてくれるし、その結果生まれたサクセスストーリーに関してはしっかり国の機関がちゃんとその部分の一部を、税制なのか何かわからないですけど、受けとめ、そのお金は目的税としてちゃんと次のクリエーターを育てるものに使うというような、ちゃんと循環したシステムを、グローバル化というんですけれども、例えばばらばらに営業マンがもし出ても、1つの大きな力にならないだろうなと思うのは、結果、一部そういう方々も実際に若干いるんですけれども、これは日本人の国民性なのか何なのかわからないんですけれども、中国の方とか韓国の方って物すごく結束されて、世界でつながってコンテンツビジネスをされるんですけれども、日本の人というのは、海外旅行でも、外で会うとそっぽを向き合うという、そういう気質があるのか何なのか、つまりビジネスでもタグを組むようなシステムと、迎え入れるという形をつくってほしいなと思います。
 これもまた議論されてきたことなのかもしれないんですけれども、ショートフィルムの世界でもそうなんですが、日本の1つの武器はオーディオビジュアルのハードメーカーのすばらしいテクニックだと、テクノロジーだと思うんですけれども、そのテクノロジーを若い世界中の映像作家にどんどん無償提供するとか、あるいはそういう人によってつくられたものに関してはある程度の権利を日本サイドがホールドするような仕組みをつくるとか、世界の人が、それこそ先ほど谷口さんもおっしゃっていましたけれども、日本を画家で言うところのパリだと考えると、映像コンテンツのハリウッドだと考える、ショートフィルムの世界だったら東京へ行こうというように思ってもらうような潮流をつくらない限りは、一生懸命、面にならず、点であちこちに世界に出ていっても、全く有効なことにならないような気がしています。
 もう1つは、これもここで議論されるべきかわかりませんが、寄附制度みたいなものをきっちりとしてほしいなと思います。やっぱりそういう映像コンテンツを応援したいという金銭面、あるいはボランティア面という人はたくさんいるんですけれども、エキストラで参加するぐらいが今のところできることが関の山というか、それもすごいことなんですけれども、それ以上に、映像コンテンツにみんながコミュニティー的に参加するとか、世界中の人が逆に言えばお金を寄附できて、それが税的に優遇されているとかということが全く、僕が不勉強で、ないのか、あるのか、これから勉強しないといけないですけれども、そこをもうちょっと不正のないような形でできるシステムはつくってほしいなと思います。
 そういうことがあった上で、グローバルという議論が、先ほどの繰り返しになりますが、打って出るというより、たくさん迎え入れて、日本中にそういう人がいれば、国防論にも僕は大きく言えばなると思うし、日本を攻撃できないと。そういう人たちが日本にいる以上は、情報もアーカイブ化されているし、コンテンツや、あるいはそういうことで非常に情報発信力のあるアーティストが親日派であるというものを、もうちょっと若手ショートフィルムのレベルぐらいのところから国が育てていただけたらなと思います。日本人だけではなく、世界中の人を育ててほしいなと思います。
○中村会長 今、人材の話も出ましたので、次の人材のところに進みたいと思います。今のお話のようにすぐれた作品や人材を外に出していくことと同時に、日本を本場にする、ここの地場を高める、ブランド化するということもここでのテーマになろうかと思います。
 それからもう1つ付言しておきますと、先ほど杉山さんからコンテンツには広がりがあるという発言がありました。そのとおりで海外に出ていくコンテンツもネットでバーチャルで消費されているという面がある。これは同時に海外でコンテンツビジネスをなさっている方は、そこでそれに引っかけてライブやファッションあるいは観光などで稼ぐといったリアルビジネスの方で儲けようという面もありますので、そういった横串の総合戦略も考えていく必要があろうかと思います。
 では次に2.、4ページ目の人材、クリエーター大国について意見、コメントがありましたら改めてお願いします。
○杉山委員 では人材ということなので。もう6年前ですけれども、コンテンツプロデューサー専門の大学院大学をつくらせていただいたのですが、そのときに文部科学省とやり取りをいたしました。専門職大学院というのはもともと法科大学院をつくりたいためにできてきた制度だと思います。非常にびっくりしました。そんなものがいるのかという形で趣旨をわかっていただくのに物すごく苦労をいたしました。
 大学人と言われるような人たちはこういったものを本当に大学で取り組む必要があるのであろうかと思っている方の方が多いのではないかと思います。学長、理事長レベルは大学の経営を考えておりますので、こういうことをやったら若い人たちが集まるのではないかと思っておやりになりたい方は多いと思いますが、現実にはその教育法というのはそんなに甘いものではないと思います。相当本腰を入れてやっていかないと。なぜかというと、これまでの学識経験者にはないものを教えていかなければいけないので、基本的には産業界の人たちがきちっと人にものを伝えていくというレベルで組み直していかないと伝授できないですね。これまでは現場に入って盗めと言われてきた世界ですから、全然確立されていないものです。ですから、急に予算を振りまいてそういう学科をつくりなさいといっても教育人たちができていないということが非常に問題です。
 もう1つは本場感というのはもちろんあります。私の大学は四年制大学もその次、5年前につくらせいただいたのですが、非常に多くの中国の学生が受けに来ます。それはなぜかと彼らとはいつも話します。確かに中国はアニメ産業に力を入れています。でも中国政府が非常に気にしているのは12歳までのところのアニメ産業です。つまり日本のアニメを小さいときからネット等でどんどん見てしまうと、思想が日本人化してしまう。なぜかというと、日本のアニメには色濃く日本人の考え方が入っています。なので、これは阻止したいというところがあって、子供向けのアニメをつくる会社はベンチャー企業としても見ているわけですから、どんどん政府はお金を出して物すごい数をつくっています。
 それはそれでいいんですが、中国の学生たちが大学で何十校とアニメを教えていますし、産業もどんどんお金を政府が入れているにもかかわらず、なぜ日本に来るかというと、簡単に言えばそういう子供向けのアニメはつくりたくない。日本がやっているような大人も楽しめる、そういうものを本場で習いたいと言っているわけです。ですから、本場感というのはまだ現実に残っています。特にアニメとかゲームにおいては海外に押されているとは言え、本場感があります。だから、本場という部分ではもっと我々も意識して、先ほどからお二人がおっしゃっていますが、そういうことを学びに来るなら日本だねというところで囲っていくということは非常に重要だと僕は思っています。以上です。
○川上委員 先ほど言いましたように日本のクリエーターのレベルは最高レベルだと思いますので、コンテンツ人材を育成するときに重要なのは個人のすぐれた能力をいかにうまく活用するかという方向に誘導するかということだと思います。それはどういうことかと言いますと、いろいろなコンテンツが今どんどん細分化されていって、個々のレベルでやはり上がっていっています。CGにしても、普通に絵を描くことにしても、例えば何かコンテンツをプログラムとして表現する場合でも、どんどん個人でできなくなっているんです、音楽とかにしても。そうすると分業ということに当然なります。その分業をしていく際に、分業を押し進めて企業でやってしまうと、だんだんクリエーター性というのが損なわれてしまいますので、そこが円滑になるような形がきっと望ましい。
 ニコニコ動画でコンテンツのレベルが高いというのは、ユーザー同士がみんなで共同作業をしてつくり合っているからです。それぞれ得意な自分の能力を持ち合ってやっている。そのときに重要なことは2つあると思っています。みんな得意なことをやはり分業しているのですが、とは言えほかの分野のことも全く知らないでいると、やはり分業そのものも成立しないんです。幅広い裾野の技術が必要です。そこら辺が今の日本のコンテンツとかには欠けているところで、多分ネット時代というのはネットのプログラミングの知識などを持っているCGクリエーターにせよ、グラフィッカーにせよ、そういったネットの知識のあるゲームのプログラムの開発者とか、そういうのは多分必要なんです。それがいろいろなところのキャリアパスの中ではちょっと専門化しすぎているのかなというところが1つです。
 それともう1つ、そのときにネット時代というのはやはりプラットフォームが変わるわけです。プラットフォームが変わるとコンテンツが変わります。新しいコンテンツをつくるときに、そこの著作権の問題ですとか、そういったところで冒険ができないような状況になっているというのは、僕は競争的にはまずいと思います。実際、日本の方でネットコンテンツというのが、日本のユーザーはすばらしいので本当は世界でユニークなネットサービスというのも日本からどんどん登場してもいいと思うのですが、GoogleにせよYou Tubeにせよ、あれは日本でつくっていたら多分つぶされていましたね。単純に訴えられて。実際、ニコニコ動画もYou Tubeがあって、これはどうしようもないなという環境の中で、微妙な力学の中でたまたま許していただいているサービスです。
 今、現状どういうふうになっているかというと、例えばYou Tubeというのは、今ランキングページというのがYou Tubeのトップページにありますので、見ていただければわかりますが、今でもテレビ番組がベストテンのほとんどを占めています。例えば音楽番組、すみません、谷口さんのいるところでこういうことを言うのはすごいあれなんですけれども、これは音楽界の公然の秘密ですが、PVの多くは事務所が出ています、宣伝のために。それが現実です。なので音楽PVもYou Tubeにはたくさんあります。テレビ番組もたくさんあります。それと我々はいろいろな権利団体と真摯にお話し合いをさせていただいて、自主的に削除させていただいているのですが、基本的にはテレビ番組もそのままのものはありませんし、アニメとかそういった音楽PVというのもほとんど存在しません。これは実際にいろいろなところで調べられた統計もあります。ほとんどありません。現実、ユーザーもあきらめていて、上げる人もいません。そういった状態で動画サイトとして闘っているわけです。別に泣き言を言っているわけではないのですが、それはそれで闘い方はありますので、別にニコニコ動画はYou Tubeに対して負けているとは思っていませんし、日本国内においては優位にしているとは思っていますが。
 多分、こういう状況下で普通のネット企業というのはすごく大きなハンデキャップを負って闘っているわけです。これでは日本から新しいネットのコンテンツというのは生まれないですね。日本でいろいろな規制をするにしても著作権侵害とかで、それを守らなければいけないのですが、そのときに一つ考えていただきたいのは、コンテンツをつくるためのルールを世界標準にしてほしい。世界標準にしてほしいというか、世界標準でなくてもいいのですが、日本標準でも何でもいいけれども、日本の国内においては外国のサービスだろうが、コンテンツであろうが、同じルールでやってほしいのです。そうしないと、日本の企業だけがハンデキャップを負って海外と闘えと言われる、これはひどい話で、コンテンツ育成も何もならないと思います。
 というより僕はずっと言っているんですが、日本はネットにおいては主権を放棄するつもりなのかと本当に思っているんです。ネットの世界でコントロールすると、結果的にネットのところというのはどんどん外国になっていくわけです。治外法権の場所がどんどんふえていっているというのが今のネットの現状です。日本国内で海外と違うルールを制定するのであれば、海外の企業に対してもそれを守らせるような施策を同時に打っていただきたいと思います。そうしないと日本のクリエーターから新しいアイデアも出せません。出ても実現できません。大組織ではなくて、できるだけ個人の力の範囲内でもそういったことができるような環境整備してあげるということがすごく重要だと思います。なので、特に権利処理ですとか、その辺のところは当然マルマルのコピーはだめにしても、ニコニコ動画とか、マットというものがニコニコ動画で一時期はやったことがあります。パロディ作品であったりですとか、そういったものに関しては自由な利用を認めていくことが日本のコンテンツ能力を上げることになります。
 結局、日本で優秀なのは個人ですから。とにかくグループでコンテンツをつくるというのは日本はそんなに得意ではないです、正直言いまして。個人の才能に頼っています。なので個人ができる範囲を拡大していくという方向にぜひ考えていただきたいなと思っております。
○久夛良木委員 人材という点を考えて、さっきのゲーム業界を振り返ってみますと、昔々はマンションの一室で数人でやれましたから、例えばシナリオをやったり、キャラクターでやったり、音楽でやったり、全部一体となって手触り感がある中でつくっていた。今、川上さんが言われたように今の時点で、これはたまたま不幸かもしれないのですが、日本というのは大量生産時代に大成長してきた国でもあるので、いろいろなクリエーターが、例えば杉山さんのところから送り込まれて、本当に個々では優秀ですがそのマネジメントはどうかというと、大量生産時代と全く同じような方法をとって流れ作業的に、かつ細切れのパートパートをクリエーターが担当する。それが何年もたってくると、つくっている本人が何をつくっているのかわからないというのが1つと、スキルのレベルが分散化されて、何人かではできるけれども1人2人では何もできない。これが今、多分、ゲームコンテンツで海外に押されている大きな理由の1つだと思います。
 海外ではまだ少人数ですごいものをつくる人がいらっしゃるんです。そういった天才肌の人が、日本のアイデアであるとか原作とかいろいろなものを手に入れると、はるかにいいものができる。これを阻害しているのはやはり教育なのかなと思います。日本の制作現場を見ると、少なくとも相互交流というものはほとんどない。ゲームの会社でほかのゲーム会社のチームと共同しながらいろいろなものをつくるとか、まして海外の方がそれほど多く入っていらっしゃらない。日本のオーケストラというのは海外の人はまだまだほとんど弾いていないなぁと感じます。ウィーンフィルやベルリンフィルに行くと、いろんな国から来られた方々が一緒に演奏されていますよね。このコンテンツ業界もゲームに限らずいろいろなところでそういうのがあって、もっといろいろな意味で交流した方がいい。
 その意味ではネットというのは本当に多様な人々が自由に交流できて、かつビジブルですから、お互いが何をやっているか手にとるようにわかるわけです。メディアが変わるときというのは革命が起きる。革命が起きるときには守るだけでなくて、革命を温めるような新たなユーセージルール創りをぜひともみんなで考えていただきたいなと思っています。
○中村会長 時間が迫ってまいりましたので、最後に3.目の、既にそうした議論に入っておりますが、ネットあるいはプラットフォーム、さらには著作権侵害コンテンツなどについて追加的にコメントがありましたらお願いいたします。
○吉羽委員 繰り返しになりますが、もう少し各論に入って出版コンテンツのデジタル化の話で言いますと、我々も少しずつデジタルの対応ということでコンテンツのデジタル化を進めていますが、これにまず第一にかなりコストがかかっているというのが現状としてあります。今、出版不況と言われる中でかなりの大手の版元さんでもそういったところにコストを出している余裕がないということをおっしゃられているようなところもあります。そうするとどうなるかというと、アマゾンにしろ、他社さんにしろ、自分たちのところでコンテンツ化してあげますよという話になってくると、当然それがほぼその会社に独占されていくという結果にもなりかねない。片一方で国会図書館みたいな流れというのも起きてきているのですが、これはこれでまた図書館さんが自らビジネスをおやりになりたいみたいな話も上がっていたりします。そうすると、どっちに転んでも民間としてなかなかやっていけないなというようなことにつながってしまうのではないかと危惧しております。
 デジタルの制作の部分ですが、日本の出版社は多く印刷会社に依存しているところがあります。特に中小が多いわけですが、中小は完全に大手の印刷会社にそういった部分を依存している。しかし、印刷会社は紙に向かってものをつくることしかまだ考えていないという状況の中で、やはりワークフローの変更をある程度、印刷産業の側の部分にてこ入れしてやる必要があるのではないかと思います。先ほど装置産業化しているというところがありましたが、装置の部分を何か救う手がないと、ものをつくる側のところも相当厳しくなってくるのではないかということを1つ思っています。
 それからもう1つ、これは別の観点の著作権法の話で、やや規制が強すぎると厳しいねということにつながるのですが、今、雑誌業界で雑誌のネット配信の実証実験をやっています。その渦中にネットベンチャーのエニグモという会社が雑誌を通販しますよ。通販ですが、雑誌のリアル本を要らない方はスキャンデータをご覧いただけるようにします。本は自分たちの方で処分しますというサービスを始めて、当然ながら権利処理の問題等々であっという間に終わってしまったんです。
 公的な場でなかなか難しい発言ですが、雑誌協会の中でいろいろ話をしているところで、こんなことができればとっくにやっていたよということが言われたんです。つまりどういうことかというと、さまざまな雑誌というのは権利の固まりになっているので、そのクリアのコストだけでビジネスが成立しなくなってしまう。その部分が解消されれば、雑誌のデジタル化というのは進むし、そこを無視した会社というのは、ユーザーからはかなり画期的だと評価されたのですが、先ほどの上川さんのお話にもつながるのですが、やはり進める上での障害というのをうまく取り除いていかないと、海外勢の中で日本の出版社が闘っていくのは相当厳しいなと思っております。
○中村会長 ありがとうございました。いただいた時間になりましたので、次回以降、また議論を深めていただくことといたしまして、最後に津村政務官からコメントをいただけますでしょうか。
○津村政務官 今日は本当にありがとうございました。さまざまな角度から非常に現場感覚溢れるお話をお聞きできまして、今、私たちがどこにいて、どういう状況に置かれているかという、立ち位置と危機感を共有させていただけたのかなと思っております。
 初回ですので、自由闊達にできるだけご議論をいただければということで、若干、中村会長に交通整理をしていただきながらも、ゴールを急がずにお話をしていただいたつもりではありますが、それなりにタイトな日程でこれからご議論をいただく中で、やはり1つ意識しなければいけないのは、言いっ放しに終わらせないためにも国がやるべきことは何で、民間で頑張るべきことは何で、一緒にやるべきことは何なのか、恐らく一緒にやるべきことという部分がこれからご意見をいただきたい部分かなというふうに、これは個人的な今日の印象ですが、思っております。
 そして、そのためにも一方では議論を膨らませていただきたいなという思いがありますが、一方では落としどころを間違えてはいけないなというふうに思っております。着実に前進するためにもポイントとなるのは、今日はそういう議論をあえて余り詰めませんでしたが、目標設定はこういう形で本当にいいのかということ。1つ1つの数値目標的なものをあえて掲げていますが、本当にこういうものでいいのかということと、やはり一番最後の取り組むべき課題例というのは、議論のたたき台ですから出していますが、こんなのは逆に要らないとか、もっとこういうこともやるべきだという、こういうことを国がやるといろいろなものが広がるというプラスもあれば、こういう規制が障害になっているから取り除くべきだという、マイナスを取るという作業もあるでしょうし、ぜひ個別具体的な提案も次回以降お聞きできたらなと思っております。
 これから成長戦略にコンテンツ産業をどういうふうに盛り込んでいくかというときに、私は2つ視点があると思っています。1つは1つの産業として海外を意識しながらどれだけ稼いでいくかという稼ぐ手段ということも確かに1個あります。それは重要な視点ですが、もう1個私は国をキャラ立ちさせるための手段というか、日本というのはこういう国だよね。海外から見て、先ほども角川さんだったか、川上さんだったか、別所さんかな。日本にはショートショートでこういうのをやっている人たちがいて、やつらは日本では何か盛り上がっているぞというある種尊敬されるというか、一目置かれるいろいろなものがあっていいと思うんです。コンテンツ自体ということもさることながら、ここの中に出てくる社会の風景であるとか、漫画とかを見ると日本というのはこういう国なんだと、「おしん」でもいいのですが、こういう国なんだというのが海外に伝わっていくわけです。
 実は今日は時間が足りなくて、また別の機会にでもお話ししたいのですが、成長戦略で描いている日本の国家像というのがあります。世界で最初に高齢化が進んでいる国。そして、これから地球温暖化問題に取り組まなければいけないときに、これだけの大国であるにもかかわらず、エネルギーが全然自前ではない国、資源のない国、そういう非常に困難な立場にある日本がそれを10年間で、高齢化というのは日本の問題として深刻に言われていますが、10年後、20年後には中国やインドでさえも高齢化になっていくわけです。そういう意味では最初に課題を克服することをもしうまくやれれば、その課題克服ということ自体が今後30年、50年の日本の財産になって、日本みたいにやればうまくいくよ。日本みたいに社会を変えれば、中国もインドも30年後、50年後にそれが役立つよ。新幹線の話とちょっと似ているかもしれません。そういう国家モデルを未知の世界でつくらなければいけない。まだアメリカの直面していない状況ですから、日本が最初にそういう国家像、社会像を定理しなければいけないときです。それをコンテンツとして載せていろいろなところに発信していただくことで、中身もある、そしてコミュニケーションも成り立っているというものが1つの理想なのかなと思いながらお聞きしていました。
 最後にそんなことを言っても、この7年間と先ほど佐藤さんはおっしゃいました。何度も議論してきたのではないか。何が今年の新しさなんだ。新政権の新しさなのだというところが最後は問われて、結局ここでも言いっ放しになるのではどうなんだということがあると思います。政治主導という言葉は少し手前味噌過ぎるのかもしれませんが、今回、かなり意識して、最初事務方から挙がってきました調査会のメンバーの皆さんの人選案を半分ぐらいは入れ換えさせていただいて、今日の皆さんにお願いをさせていだいたということがあります。
 古川元久副大臣ですが、国家戦略室長も兼ねられている方で、大変この知財の問題に関心を、これは民主党の一野党議員の時代から持たれています。今日は政務官の私が来させていただいていますが、これからも誰かはここにずっと座り続けて、しっかりお話を聞いていこうというのも1つの私たちの思いです。
 民主党政権自体がどこまで頑張れているかは別として、心がけているのはこれまでこういう種類の議論が役所ごとの縦割りに結局終わってしまって、あるいは1年だけの予算獲得合戦に終わってきた。そういう弊害をなくしていきたい。だからこそ国家戦略室と私も兼務していますが、そういう省庁を超えた枠組みでこの議論をしていこう。あるいは先ほど申し上げたように5年、10年規模の成長戦略として位置づけていって、逆に言えば来年の見直しというのは最低限しかしない。そういう少し長いスパンのものをやっていきたい。
 そして、最後にこれは成長戦略全体についても言っていることですが、PDCAサイクル、古い言葉ですがしっかり回していこう。Planばかり立てるのではなくて、Doももちろんですが、Checkをしっかりやっていこう。Checkをするということは本当に政府というのは苦手です。これは先ほど皆さんにお願いした目標や課題例、これで本当にいいですかということです。国がどうにもできないような、例えば賞をたくさん取ると言っても、それは国のせいではないから、頑張ったけれども取れませんでしたと言ってしまえばで終わってしまうような話です。それも大事な1つの目標の立て方ではありますが、言い逃れのできない目標を立てないとCheckできないこともあると思うんです。
 あるいは課題例にしても将来こんなことをやればいいよねという話が、そのころには多分政務官も変わっているでしょうし、やはり今年、来年の工程表がきちんとつながっていないとCheckに耐え得るものにならないので、そういうこともまた次回以降議論させていただければと思いました。政治的なメッセージもしっかり発信するべきというご意見もあったので、、今思いついたことだけ申し上げました。
○中村会長 どうもありがとうございました。とても力強いお話をいただきまして、力が沸いてまいりました。今日はいろいろな意見が出ましたが、ひとまず大きな方向性については共通の理解が進んだのではないかと思いますけれども、今、政務官からお話がありましたように目標ですとか、施策の内容について次回以降、掘り下げられればと思います。
 では、次回の会合について事務局からお願いいたします。
○戸渡次長 次回でございますけれども、次回の専門調査会は2月24日13時から本日と同じこの知財事務局の会議室で開催させていただく予定でございます。次回も引き続きコンテンツ分野における知的財産戦略の論点につきましてご議論をお願いしたいということで予定をさせていただいております。
○中村会長 では閉会いたします。今日はお忙しいところをありがとうございました。