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コンテンツ強化専門調査会(第2回)議事録
○中村会長 おはようございます。明けましておめでとうございます。よろしくどうぞお願いいたします。「コンテンツ強化専門調査会」第2回の会合になります。お集まりいただきどうもありがとうございます。 今日は、後ほど知財戦略担当の山本大臣と島尻大臣政務官にも御参加をいただくことになっておりますので、御到着後に御挨拶をいただこうと思っております。 この専門調査会では、今回「知財計画2013」及び「知的財産戦略の今後の10年」に向けた検討の方向性に関する議論を行うことにしております。 今日は、別所委員からは御欠席の連絡をいただいているのですが、他にも少し遅れてみえる委員の方がおられるということでございます。 また、いつものように知財戦略本部員からも、角川本部員、中島本部員、三尾本部員に御出席をいただいているところでございます。 早速ですけれども、この調査会の進め方等について事務局から説明をお願いいたします。 ○木村参事官 まず、配布資料の確認でございます。 資料1、2、5、参考資料が事務局から用意させていただいた資料でございます。 資料3、4が委員から御提出いただいた資料となってございます。漏れがありましたら事務局までお申しつけ願いたいと思います。 それでは、専門調査会の進め方について御説明いたします。資料1、横の紙でございます。 前回会合におきまして、専門調査会の6月までの当面の日程と議題、また、知的財産政策ビジョン検討ワーキンググループの設置、それぞれについて御承認いただいたところでございますが、本資料は専門調査会とビジョン検討ワーキンググループの連携した検討の進め方ということについてお示しをさせていただいたものでございます。 専門調査会におきましては、過去10年の取組の検証を行うことと、新たな課題や、更に深掘りすべき課題につきまして検討を行い、その主な検討内容をワーキンググループに報告するものでございます。 ワーキンググループにおきましては、知的財産政策ビジョンにつきまして検討し、その検討状況や取りまとめの結果を専門調査会のほうに報告することで、更に議論を深めていこうとしているものでございます。専門調査会とワーキンググループが連携しながら、次期の知財計画と知財政策のビジョンの両方の検討を進めていくことになるものでございます。 簡単でございますが以上でございます。 ○中村会長 ありがとうございました。 今、説明がありましたように、私たちは資料1の緑のところにいるわけですけれども、ワーキンググループが来週に始まりまして、そちらでは過去10年、今後10年といった大まかな大括りの議論をするということで、こちらの専門調査会では具体的な知財戦略・計画に盛り込むべき事項を議論していくというミッションを帯びているということでございます。 これについて、御質問・御意見・コメントなどありますでしょうか。 よろしいですか。では、この資料1のとおり今後、検討を進めたいと思います。 では、次に知財計画2013及び戦略の今後の10年に向けた検討の方向性です。これも事務局から説明をお願いします。 ○木村参事官 資料2、論点整理案をごらんいただきたいと思います。 1ページ、これは前回の御議論などを踏まえまして、今後10年を見据えた重点課題を含めまして、知財計画2013という次の知財計画に向けた検討の方向性について、事務局で検討用の材料として用意したものでございます。 全体の情勢といたしましては、グローバルネットワーク時代が到来する中で、グローバルな市場での競争激化といった波を積極的にチャンスと捉え、コンテンツをめぐる国際競争を勝ち抜くためのコンテンツ総合戦略に取り組むとした上で、戦略の柱を「デジタル化・ネットワーク化に対応した環境整備」「クールジャパンの一層の推進」という2つで整理したものでございます。 2つの柱のもとの各項目につきましては、具体的な論点ということで、2ページ以降でお示ししておるものでございます。各項目につきましては、基本的に前回の第1回の会合で御議論いただきました過去10年の取組の検証の項目に対応しつつ、論点を少し絞らせていただきまして、関連データの委員から御指摘いただいたものを追加し、関係者の意見についても専門調査会での御議論を加えるということと、議論の参考といたしまして、団体や実務家などの意見を追加してございます。 今回、新たに追加した論点といたしましては、2ページのところでございますが、コンテンツ関連の予算が近年減少傾向にあるという中で、限られた資源配分をいかに行っていくのかということを取り上げております。このあたりは新しい論点でございます。 7ページ、公共データの二次利用促進に向けて、著作権処理上の課題をいかに整備すべきかという論点も御意見を踏まえて追加しております。 10ページ、最先端の情報通信技術の活用促進に向けた環境整備をいかに進めていくのかという点。また、11ページ、デジタル・アーカイブの活用や、クラウド型サービスの制度整備といったことをどう進めていくのかという点もつけ加えてございます。 さらに、クールジャパンのほうでございますが、20ページ、21ページでございます。こちらでは魅力あるコンテンツ開発など、クールジャパンの発掘や創造をいかに進めていくのかということをそれぞれ論点として独立させておるところでございます。 資料2につきましては以上でございますが、コンテンツ強化の関連施策として、参考資料も本日お手元にお配りさせていただいてございます。 こちらは先週、閣議決定されました「日本経済再生に向けた緊急経済対策」におきまして、日本企業の海外展開支援等としてクールジャパンの推進が盛り込まれているというものでございます。具体的な施策としては、コンテンツの海外展開支援による日本の魅力発信や、クールジャパンを体現する日本企業への資金援助などを行う機関の設立など、コンテンツ、観光などの海外展開を官民一体となって行うものでございます。内容は一昨日に閣議決定された補正予算案に反映されたところでございます。先ほどの論点整理とあわせまして御議論の参考にしていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○中村会長 では、しばし議論を進めてまいりたいと思います。 議論の進め方としては2つございまして、1つは、この専門調査会から知財本部に対して提言を行う知財計画2013に盛り込むべき事項と、検討ワーキンググループで検討するビジョンに盛り込むべき事項の全体の構成です。構成をどうするかということと、その中に具体的に書き込んでいく内容をどうするかの2つがございます。 まず最初に構成について今、説明をいただいた資料2の1ページ目に事務局提案があるわけですけれども、ここでは「デジタル化・ネットワーク化に対応した環境整備」と「クールジャパンの一層の推進」という二本柱にしてあります。海外展開をどう進めるかということと、国内のデジタル化・ネットワーク化という基盤整備をどうするかという大まかな2つに戦略の中身が分かれるわけですけれども、こうした全体の構成のあり方について、まず御意見があれば伺いたいと思います。いかがでしょうか。 今度の取りまとめに対しても、この二本柱で議論を進めていって良いかというのが1つの提案なのですが、もしそれについて御意見があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。 特にありませんか。そうであれば、このような基本構成で今後議論を進めていって、中身に入っていきたいと思いますがよろしゅうございますでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○中村会長 では、実質的な中身の話に議論を進めてまいりたいと思います。 今、軽く説明いただいた中身を参考にして今後、我々としてどこに重点を置いて、何を書き込んでいくべきかという御意見をいただきたいと思います。 今、お認めいただいたように、デジタル化・ネットワーク化ということと、クールジャパンの2つに分けて議論を進めたいと思うのですけれども、まず、デジタル化・ネットワーク化関係について意見、コメント等があればいただきたいと思いますが、資料で言いますと2ページ目から13ページまでのところになります。 実は事務局からシナリオがありまして、デジタル化・ネットワーク化についての情勢認識について会長から発言しろと書いてありますので、私から口火として私見を申し上げたいと思います。 デジタル化・ネットワーク化というものが本格化して20年になると思います。そこで随分新しいビジネスチャンスが広がってきて、この知財本部でもコンテンツに注目して議論が始まった。特に知財本部ができて10年、コンテンツというものが注目を集めて、この知財本部の場でも著作権法を改正してデジタル化に対応するという政策もとられてまいりました。 しかし、ここの資料にもありますように、コンテンツの利用ですとか情報の生産というものは爆発的に増大してきているのですが、その一方でコンテンツの産業というのは拡大するどころか縮小傾向にあります。さらにこの数年で、マルチスクリーンとかクラウドネットワークとかソーシャルサービスといったメディア全体の刷新が世界的に起こっていて、デジタル化やネットワーク化という意味合いも大分変ってきています。新しい段階に入ったと考えます。その中で日本のコンテンツ産業は、プラットフォームのグローバル競争にも勝利できていないという状況にありますし、最近この場でもよく話題になっています教育とか行政といった分野でのコンテンツの生産や利用もおくれているという状況にあります。 こういう状況の中でもちろん権利の保護、著作権の保護というのは重要な課題なのですけれども、世界的なデジタル化あるいはネットワーク化に対応して、新しい産業を発展させる、あるいは文化を興していくということを続けるためには、私は権利者と利用者の対立構造ですとか、ハードウェアとソフトウェアの対立といった構造を超えた総合的な制度設計とか、新しい分野の創造といったものがもはや必要になっているのではないかと考えております。 コンテンツを我が国の経済と文化の原動力として推進をするための戦略を実行せよという意見を委員の皆様からよく聞きます。また、政策のプライオリティーもこの国の中で高めていく必要があるのではないかと考えているところでございます。 以上、私の私見でございます。 皆様から、2ページから13ページについて参考にしていただきながら、次の戦略は何に重点を置いていくべきかについて、コメント、意見、質問でも結構です。何なりと発言いただければと思います。國領委員、どうぞ。 ○國領委員 慶応大学の國領でございます。たしか昔メンバーだったので久しぶりです。よろしくお願いします。 恐らくデジタル化・ネットワーク化に対応したというところについて何か発言せよということで、また戻ってこいということになったのだろうと思われるのですが、その観点から考えると、ひょっとするとコンテンツという言葉をやめてしまったほうがいいのではないかという問題意識を持っていまして、暗黙のうちに何か媒体というのがあって、媒体の上にコンテンツが流れるというモデルでこの10年間ぐらいずっと来たわけですけれども、現実の世の中の流れを見ていると、むしろ例えば言葉で言えばユーザーエクスペリエンスとかいうところへどんどんシフトしてきているのではないか。 例えば、ネットワーク上でのソーシャルゲームのようなことを考えましても、もちろんキャラクターを売ったりとか、いろいろなことがなされているわけなのですが、最終的にユーザーが何に対してお金を払っているかと言うと、そこでの経験であり楽しみであり、そういうところに対してお金を払っていまして、それをプラットフォームとかコンテンツとかに切り分けて議論していっても多分見えないことなのではないかと思います。 これは実を言うと、クールジャパンというのとコンテンツというのが別のトピックというのも、その切り口を変えることによって1つの座標軸の上で語れるのではないかと思っております。 今年の知財戦略に何を書くかという話と、今後10年どう考えるかで、今、申し上げたのはどちらかというと今後10年のほうなのかもしれないのですけれども、ただ、今年を出発点として今後10年を考えるということを考えるとすると、そもそもコンテンツがゴールという戦略の立て方でいいのかというところから問い直していいのではないかという気がいたします。 ○中村会長 ありがとうございました。 冒頭、非常に重い問題提起をいただいたところでございますけれども、後ほどその辺も含めて議論をさせていただきたいと思いますが、ここで山本大臣、島尻大臣政務官が御到着されましたので、早速ではございますけれども、御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○山本大臣 昨年12月に発足しました安倍内閣におきまして、内閣府特命担当大臣知財戦略担当に任命されました山本一太でございます。 私の担当分野は多岐にわたっていまして、北方・沖縄対策、科学技術政策、IT政策、知財戦略、宇宙政策、海洋政策、領土、遺棄化学兵器、原子力委員会と、今、よく自分でも覚えていたなと思っているのですけれども、実は私は知財戦略に大変興味がございます。この有識者本部員として参加されているオブザーバーの皆さんもそうですし、今日コンテンツ強化専門委員会の委員の先生方の名簿を見ながら、お一人お一人と知財戦略担当の大臣としてお茶を飲みながら何時間でもお話を伺いたい方々ばかりで、本当にすごいメンバーだなと思いながらここにやってまいりました。 実は私は、安倍総理はコンテンツ・知財戦略についても大変問題意識を持っておられると思っています。私は政治家になった後に韓国との若手議員交流というのをずっとやってまいりまして、ずっと韓国の政治を見てきたのです。釈迦に説法ですけれども、韓国が経済危機に陥って、本当に国がなくなるのではないかと思われていた97年、98年くらいに金大中大統領は、トニー・ブレアのクール・ブリタニア宣言に触発されて、文化大統領宣言というのをやりました。たしか宣言の名前はデザイン何とか宣言だったと思います。 私は先般、安倍総理にもちらっと申し上げたのですけれども、安倍総理に是非文化総理宣言というのをやってもらいたい。もし文化という言葉が余りふさわしくないのであれば、コンテンツ立国創造宣言とかです。やはり日本の総理が、日本の優れたあらゆる分野のコンテンツ、伝統文化からいわゆるクールジャパンと呼ばれているものまで、これをリーダーとして率先して世界に発信していくというメッセージを出していただくことによって、私はこの知財戦略に弾みがつくのではないかと考えておりまして、実は皆さんのいろいろなアドバイスもいただきながら、是非安倍総理に日本の総理として初めて、コンテンツで食べていく、コンテンツをしっかり海外に売り込んでいくという政治メッセージを発信していただきたいと思っています。 実はクールジャパン担当は私の敬愛する稲田朋美大臣でございまして、先般、稲田大臣にもお目にかかってきたのですが、特にクールジャパン戦略については稲田大臣に主導権をとっていただいて、名前は何でもいいのですけれども、是非安倍総理の文化総理宣言、コンテンツ立国宣言みたいなことをどこかでやっていただきたい。 全く決まっておりませんし、事務方とも全く相談しておりませんので、事務方の方々が大騒ぎになるかもしれませんが、私は頭の中でずっとそれを実は大臣になる前から考えておりましたので、是非それを実現させていただければと思っています。 もう少し話をさせていただきたい。科学技術担当をやってはっきりわかりました。日本の基礎研究のレベルは実は世界最先端でございます。しかしながら、安倍総理の問題意識というのは、世界最先端のレベルにありながら、それを商業化する、経済活性化に結びつけるルートのところが日本は決定的な弱点がある。宇宙政策でもそうなのですけれども、これを国際競争力の強化に結びつけて、産業振興に結びつけていくところで、恐らくマーケティングがなかなかうまくいっていないところがある。 日本のコンテンツはクールジャパンも含めて素晴らしいものがいっぱいあるのに、それを海外に展開していく、売り込んでいくための戦略に弱い部分があるのではないかという問題意識がありまして、恐らく著作権の問題とか、いろいろコンテンツをめぐる法律のシステムの問題とか、そういう枠組みをつくってサポートするのが知財戦略本部の目的なのではないかなということを考えております。 いろいろ生意気なことを申し上げましたけれども、この会議には大変注目をしております。こんなに所掌事務が多いので分刻みのスケジュールになってしまいまして、本来であればここに2時間ぐらいいて皆さんの御意見も伺って、お一人お一人とお茶を飲みながらクールジャパンのお話やコンテンツのお話をさせていただきたい気持ちはあるのですけれども、今日も滞在時間が10分くらいですので、話すのはこれぐらいにいたしまして、議論の一端でもお聞きして帰りたいと思います。外に言っていないので事務方にはまた御迷惑をかけると思いますが、安倍総理のコンテンツ立国宣言、文化総理宣言、こうやってリーダー自ら外にコンテンツを発信していく姿勢を是非お願いしようと思っていますので、皆さんのほうからも後押しをいただきますようにお願い申し上げまして、まとまりませんが、私の御挨拶にかえたいと思います。ありがとうございました。 ○中村会長 政務官、よろしくお願いします。 ○島尻政務官 安倍内閣で知的財産戦略担当の大臣政務官を拝命いたしました沖縄県選出の参議院議員、島尻安伊子でございます。山本大臣をしっかりと支えて頑張っていきたいと思っております。 私の仕事の中の大変重要な部分は、今日お集まりの皆様方がしっかりと発言ができる、しやすい環境をつくっていく、仕事をしていただくために環境を整えていくということも大変大事な私の仕事だと思っております。是非御忌憚のない意見をお聞かせいただいて、我が国のためにお力添えいただきたいと思っております。 よろしくお願いいたします。ありがとうございます。 ○中村会長 どうもありがとうございます。 前回のこの会合でも大臣、政務官にお越しいただきたいという意見が委員から出ていたところでございまして、実現いたしました。ということで、いらっしゃる間に委員の皆様から、しばし自由討議とさせていただいて、日ごろ思っておられること、お伝えしたいことなどコメントがありましたら自由に御発言をいただければと思います。いかがでしょうか。 齋藤委員、どうぞ。 ○齋藤委員 京都から来ました齋藤と申します。 前政権でコンテンツ特区構想というのがありまして、京都もそれに書類を出しているのですけれども、政権が変わるとその辺がシャッフルされて変わってしまうのか、それともそういう構想が続いていくのかというのを、この機会にお聞かせ願いたいと思います。 ○山本大臣 大体、政権が交代すると前の政権がやってきたことを変えようという力が働くのですが、コンテンツ特区の話はちらっと伺いましたけれども、もうちょっとこれまでの成果とか現状を確認させていただきたいと思います。 今、おっしゃったように特区が本当に意味があるのであれば御意見を聞きながら、例えばこれを続けるとか、あるいは更にバックアップを強めるという選択肢もあると思いますし、むしろ違うほうに力を入れたほうがいいということであれば変わる可能性もある。現時点では、もう一度よく特区のことは確認させていただければと思っております。 ○齋藤委員 一言プラスします。京都は観光特区とかグリーンイノベーション等いろいろ取っているのですけれども、コンテンツ特区を申請したときに何を言われたかといいますと、京都ばかり特区を取ると不公平だという言い方をされたのです。これはそもそも間違いであって、特区というのはまばらでないから特区だと思うのです。それを不公平だという観点でやられると、なかなかいいところを伸ばせないということになりますので、その辺だけは記憶にとめていただきたいと思います。 ○山本大臣 今、おっしゃった話は私も共通認識です。今までみたいにボヘミアンではないので、大臣として余り軽々なことは言えないのですけれども、同じような問題意識を持っておりますから、そこはしっかり踏まえて検討させていただければと思います。 ○中村会長 角川本部員、どうぞ。 ○角川本部員 コンテンツ特区について一言申し上げたいのは、外国から是非日本を舞台にして映画を撮影したいという声とニーズがある。ところが、日本で撮影したいのに、例えば東京だとか京都だとか、あるいは北海道だとかが、余りにも規制が多くて非常にアンフレンドリーな国だと。首都高速で撮影したいと思ったら警察がすぐ出てきてだめだと言って、どうしてもしたいということで敢行したのです。それで役所広司さんが始末書を3枚書いたというのです。石原慎太郎さんのときも東京都は映画作りを奨励する方針で、撮影を許可するロケーションボックスをつくったのですけれども、これが1回でも活用されたことがない。「踊る大捜査線」もレインボーブリッジを封鎖せよと言いながら、実際に撮影したのは滋賀県か何かの小さな橋を拡大して見せたという状況なのです。 ですから、特区というのは、警察の規制だとか消防庁の規制だとか、道路の規制というものを乗り越えて京都で撮影する、あるいは東京で撮影するということですので、そこら辺のことを是非、日本で映画が撮影できるような環境をつくるという視点で特区を考えていただきたいのです。よろしくお願いします。 ○山本大臣 いろいろと御示唆のあるお話ありがとうございました。 これは以前からずっと問題になっているというのはお聞きしていますし、たしか映画のロケーションについては札幌で特区があった気がするのですけれども、欧米に比べると余りにも映画を撮りにくいという話があるので、いろいろな各省の関係が絡んでいるのですが、一応内閣府の特命担当大臣ですから、いろいろな意味でしっかり発信していきたいと思います。総理にもよく問題意識を持っていただいて、日本でもうちょっと映画が撮れる環境をつくれるようにします。 ○角川本部員 海外の撮影隊が日本に来るようになれば、観光にも非常に貢献しますので、お願いしたいと思います。 ○山本大臣 ありがとうございます。 ○中村会長 川上委員、どうぞ。 ○川上委員 ネットの一部では、今度の新しい内閣はネット規制シフトではないかという憂慮も上がっているのですけれども、どちらかと言うとネット規制は賛成派なので、ネット規制は何らかの形ではしなければならないと思っているのですが、それがみんなが心配しているような、例えば言論の自由の弾圧みたいな方向とかにならないかということを非常に心配しているのです。 私がネット規制をやるべきだと思っていますのは、例えばネットの経済活動の面において、日本の企業と海外の企業との間で競争が公平にできていない。例えばAmazonみたいな企業は日本に税金を納めないといった問題が起こっています。そうすると、ネットが今、完全な治外法権のところになっていて、そういう意味で国がネットをちゃんと統治する意思があるのかどうかということに疑念を持っています。 それの短所が規制の強化みたいなところで、いろいろしがらみがあって、例えば日本のネット産業の競争力というか、日本のネット文化の競争力というのは一般ユーザーの自由な行動によって支えられている部分が多いですので、そこら辺、どういう感じでネットに関するガバナンスを考えていかれるかについてよろしければお願いします。 ○山本大臣 ありがとうございます。 私、一応数多くの担当分野の中にITというのが入っていまして、安倍総理はIT戦略についてはすごく興味を持っておられます。IT戦略本部を是非やってくれと。科学技術総合会議をしっかり活性化して、科学技術がきちんと経済成長に結びつくようにしてくれというのと同時に、IT戦略本部も活用してくれと言われていますので、まずはITについてはICTですかね、言い方は何でもいいのですけれども、非常に関心が高いと思います。 今、おっしゃったこの政権はネット規制政権だという意見の根拠はどこから出てくるのかよくわからないのですけれども、歴代の自民党政権に比べたら最もネットに対して前向きだと思うのです。だって、安倍総理自身がFacebookをやっているわけじゃないですか。もちろんSNSが発展してきたというのは最近ですけれども、Facebookでこれだけ発信している総理はいないと思いますし、ニコニコ動画をここまで活用した自民党総裁もいないと思います。 問題意識としてきちんとガバナンスという意味で言うと、余りアナーキーになってはいけない部分というのは国家戦略の中でもあると思うのですが、いわゆるネットユーザーの人たちの自由な発言を妨げる歴代の政権に比べて、私は逆ではないかと思っていますので、IT政策担当大臣としてもネットのメリットと、ある程度コントロールをきちんとしないといけないというところのバランスを持ってやっていかなければいけないと思います。 少なくとも安倍総理はインターネット選挙もここまで踏み込んで、もちろん立法府の話なのですけれども、ここまで踏み込んでおっしゃった人はいませんし、総理としては、夏の参議院選挙までに是非インターネット選挙実施の状況をつくってほしいということまで言っていますから、そこは決して後ろ向きではないと思いますし、今、言った御発言はIT担当大臣としてしっかり踏まえ、頭に入れておきたいと思います。 ○川上委員 ありがとうございます。非常に期待していますので、それゆえの若干の不安ということで発言させていただきました。 ○山本大臣 改めて個別にお話を聞かせてください。どういうところの規制に懸念を抱いておられるのかということも含め、個別に是非時間をとって教えていただければと思います。 ○中村会長 ITのガバナンス、情報のガバナンスをどう効かせていくかというのも、これからこの本部でも重要な課題になってきますし、今、御指摘いただいたことというのは、IT本部と知財本部の連携をどのようにとっていくかという非常に重いミッションとして我々は議論しておりまして、それも引き続き議論をしていきたいと思います。 大﨑委員、どうぞ。 ○大﨑委員 大﨑と申します。 川上会長がつくられたニコニコ動画は日本唯一無二のプラットフォームだと思いますので、ひとつよろしくお願いします。たまたまなのか、川上さんはこの2、3年は遊んでいたのですけれども、今年は仕事をするとお正月に明言なさったみたいなのでよろしくお願いいたします。 私どもも、今年で5回目なのですけれども、沖縄で沖縄国際映画祭というのをさせていただきまして、その関係で知事さんやいろいろな市長様とも面談する機会をいただきまして、沖縄の基地跡も含めいろいろな土地があるので、何か吉本としても提案を、みたいなことをお茶を飲みながらお話ししていただきまして、そのときに特区ということももちろんあるのですが、例えば基地跡でということなのですけれども、新しい地方自治体、エンタメあるいはコンテンツのことだけを考えたような、市長以下全員がそういうことを考えるムラをつくったらどうでしょうかという話を沖縄でさせていただきまして、内輪ではそれなりに盛り上がっていまして、琉球新報さんやタイムスさんにもプチ記者会見をしたりしているのです。そのぐらい真剣にというか本業でもあるのでやっているつもりなのです。ですので、政権が変わられてもそこはぶれずにというか、私が言うことでないのですけれども、国家の新しい方向性の大きな1つだと思いますので、大幅に修正するところは修正していただいてもぶれずにしていただければありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山本大臣 大変いい御意見をありがとうございました。 私は沖縄振興も担当していまして、そろそろ出発しろというメモが入ってきたので短く申し上げますと、島尻政務官は沖縄の御出身なのですが、沖縄を振興する理由は、もちろん過去のいろいろな沖縄戦を含めた歴史の問題もありますし、基地が集中しているという社会的な状況もありますし、もともと離島を多く抱えて地理的な条件もあるのですけれども、実は自立した経済の先に、少し時間はかかっても沖縄の大きな可能性があると思うのです。釈迦に説法ですけれども、那覇を中心にして円を描くと1,500キロメートル圏内に、東京、ソウル、北京、香港、全部入ります。 ですから私は、沖縄を牽引する存在にすることによって、沖縄振興することが日本の未来につながるみたいな、そういうサイクルにもっと光を当てていきたいと思うので、いろいろな知恵が出てきていますから、今、おっしゃったようなことも含めて、沖縄担当大臣としても頭に置いておきたいと思います。 次の予定があって出ろと書いてあるので、もう一度参りますので、今度はもうちょっと長くここにいさせていただいて、是非こういう形で皆さんが日ごろから考えていることも伺いたいと思いますし、総理にも機会を設けてお伝えしたいと思います。事務方は慌てていると思うのですけれども、是非コンテンツ立国、文化総理宣言もやっていただきたいと思っているので、また是非御意見を伺わせていただきたいと思います。 とにかく分刻みのスケジュールになったのですが、よく事務方に頼んで、今度はもうちょっと長く参加させていただきたいと思いますし、どこかで川上さんとお茶を飲みたいので時間をつくってください。お願いします。どうもありがとうございました。 (山本大臣、島尻政務官退室) ○中村会長 どうもありがとうございました。 では、引き続き先ほど来の議論の続きでデジタル化・ネットワーク化関係について、その他のことでも結構でございますけれども、意見がありましたらお出しいただければと思います。いかがでしょうか。 先ほど、冒頭に國領さんからコンテンツという言葉自体、そのアプローチ自体を考え直したらどうかという御意見をいただきました。確かに私も先ほど情勢認識のところで申し上げましたように、この10年、コンテンツということを議論してきたわけですけれども、メディアの状況は変わっておりますし、コンテンツからソーシャルサービスへ重心が傾いているところもございます。コミュニケーションとかコミュニティという言葉のほうが重視されている場面も多くなってきております。 また、先ほど川上さんからも御指摘いただいたように、IT戦略と知財戦略というのを別々に検討してきたのですけれども、そろそろ一体化と言いますか、ビジネス自体はどんどんハードとソフト一体のビジネスと言いますか、プラットフォームというのが進んできている現状もありますので、そのあたりのアプローチそのものも見直すことも我々にとっては必要になっているかもしれません。 角川本部員、どうぞ。 ○角川本部員 その点では、國領先生がおっしゃっているところは、コンテンツの中にアプリという部分が出てきていて、日本でアプリ革命がAppleのもとで今、行われているのだと思うのです。そのアプリの実態については、実は余り知財本部で検討したことがないのです。やはりアプリだけを取り上げるのも必要であると思います。そのアプリの中にコンテンツの要素も入っているのですけれども、やはり私たちの考えている知財のエコシステムの頂点というのはコンテンツだと。端末、ネットワーク、端末に付属するアプリだとか、そういうものとコンテンツレイヤーはきちんと分けていかないと話が混乱すると思うのです。あえて混乱をしてみんなの頭をシャッフルしたらどうかという意味ではわかるのですけれども、そこら辺、是非コンテンツとアプリというのを分けてきちんと通していったらいかがかと思います。 ○中村会長 川上委員、どうぞ。 ○川上委員 角川本部員が今おっしゃられたアプリということは非常に重要なポイントだと思っていまして、これは私が勝手に言っているのですけれども、インターネット時代に何が重要になっていくのかと言うと、動的なコンテンツというのが重要になってくるであろう。今、ネット時代で危機に瀕しているのはパッケージコンテンツと呼ばれている分野で、これは静的なコンテンツなのです。 今、ネット時代においても、どういうパッケージが売れているか。例えば「エヴァンゲリオン」というソフトがありますけれども、これは非常にDVDパッケージが売れるソフトなのですが、これは映画で公開されているものと、実際にブルーレイになって発売されるものと中身が違うのです。更に言えば変えているのです。そしてそれを見に行くのです。最近のテレビアニメとかでも最終回を放送しないとか、テレビ放送よりもパッケージになったときに絵がきれいになっていたりとか、実際に中身が変わっているものが今、ユーザーさんがお金を出してくれるものになりつつある。 今、一番儲かっているゲームと言うとソーシャルゲームと呼ばれるもので、これはアプリなわけなのですけれども、これは遊んでいる最中にデータそのものというのもサーバーにあって、実はパッケージ化されていないコンテンツなのです。そうするとパッケージ化されていないコンテンツというのが、ネット時代でコピーが繁栄していてパッケージソフトがどんどん売れなくなっていく中で一番儲かるコンテンツになっているのです。そうすると、今までのコンテンツ振興とかの議論というのが、従来型のパッケージ型のコンテンツに偏っているのではないかと私は思います。 今、恐らくネットの時代にどういうコンテンツを議論しなければいけないかと言うと、新しい、パッケージではない動的なコンテンツです。例えばソーシャルゲームのようなものにも代表されていますし、従来のパッケージコンテンツでもそういうふうに、実際に放送するものと売るものを変えるだとか、おまけをつけたりとか、それこそ握手券をつけたりだとか、要するに、ああいうものを邪道と言う人もいますけれども、実はそれは静的なパッケージコンテンツでは勝負できなくなっていっていることを反映しているのだと思うのです。そういうことをひとつ議論していただきたいなと思います。 ○中村会長 ありがとうございます。 川崎委員、どうぞ。 ○川崎委員 テレビ東京の川崎でございます。 コンテンツということで、以前からこのような場で数回お話をさせていただいたことがあるのですけれども、以前と今の明らかな違いは、以前はコンテンツという意味がライツビジネスとかライセンスビジネスの意味から始まっていると思うのです。それをいかに日本のものをライセンスしてどんどん広めていくかという意味合いが、ここ十数年の間にどうもコンテンツイコール商品全般と言いますか、デジタル素材も含めていろいろな形で日本がつくるものが全部コンテンツという意味合いに広がっていると思うのです。ですので、これはもう一回いろいろなものについて、今の御意見もそうですし、いろいろな形でものについてやり方が違ってくると思うので、それをまとめて議論するのはもうちょっと細分化したほうがいいのかなとは率直に思います。 ○中村会長 平澤委員、どうぞ。 ○平澤委員 今日初めて寄せていただきました平澤です。 小泉政権のときに知財本部で1つお話をさせていただいたことがありまして、いわゆるグローバルスタンダードという言葉です。当時、着メロとか着うたをしていたときに、結局日本でこれだけ育ったコンテンツビジネスが海外に出て行かない。その理由の中に、ハードにおけるプラットフォームを共通化することを検討する、要するにグローバルスタンダードは何かということを考える。もう1つは知財の流動化を図るためにいわゆるグローバルスタンダードを考える。これは法律的に考えていくということを言ったことがあるのですけれども、今、話題に出ているパッケージビジネスが減少している。私は日本コロムビアで、日本で一番古い、今年で100年以上の歴史があるのですけれども、パッケージビジネスというのはもちろん減っていっている。 ただ海外、例えば欧米を見たときに、アメリカの場合はデジタルパフォーマンスライツと言われている分野というのが、音楽でも2割、2桁成長しているのです。パッケージとダウンロードが減っているにもかかわらず成長している。これは何かと言うと、デジタルミレニアム法という法律がアメリカでできて、コンテンツをウェブで配信していくというのが、法律に基づいてであれば自由に参加できる。そこの分野だけは伸びているのです。 こういったものを学ぶと言うか倣って、国際的にどうやればコンテンツの活性化を図れるのかということを検討していくべきではないかなと。これはパッケージというものからネットというものに明らかにシフトしていっているので、そういった観点で物事を見ていくのが非常に重要ではないかなと思います。これが大きな1つです。 今、私が申し上げたのはいわゆる産業だと思っているのです。もう1つは文化という観点で見なければならないと思っていまして、弊社、日本コロムビアの中には戦中、戦後、いわゆるSPレコードと言われているものがあります。これは産業に使えるかと言うと、デジタル化したところでなかなかビジネスとしては厳しい。ただ、これは保存していかなければならない対象物だと思っているので、これは文化だと思うのです。ですので、まずコンテンツという言葉の定義を國領先生が言われていましたけれども、言葉をちょっと措いておいて、多分このグループの方向感というのは産業というものが非常に大きいと思います。これを活性化しないと国際競争力というのが低下していくので、そういった観点で見ていければなと考えております。 ○中村会長 ありがとうございます。 先ほど来、皆さんから出ている意見をお聞きしておりますと、コンテンツ以上にユーザーエクスペリエンスが大事であるとか、パッケージからアプリに光を当てるべきだとか、ソーシャルゲームのようなダイナミックなコンテンツを重視するとか、今、御指摘いただいたようなパッケージからネット、何が起きているのかということをもう一回ちゃんと点検せよということかなと。構造変化が起きているので、それに沿った戦略に我々もきちんと見方、アプローチを変えなければいけないという御意見かと思います。どちらかと言うと、今後10年どのような戦略を立てていくかという場面によって、相当これまでと見方を変えなければいけないよという御指摘をいただいているのだと思います。 また同時に、資料2に示されているようなデジタル化・ネットワーク化に対応した環境整備と言いましても個別の項目、例えば権利処理の円滑化だとか、デジタル・アーカイブ化の推進だとか、電子書籍。その個別の項目についてもどうするかということも、同時に我々は解答を出していかなければいけないのでありまして、その両方について引き続き御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。 新山委員、どうぞ。 ○新山委員 NHKの新山と申します。 最も古典的な、静的なコンテンツの話をさせていただきますと「おしん」が放送されて今年で30年。「おしん」は30年前に放送されたのですけれども、この間、15分×297話が68か国で放送され、今も各地で放送されています。これはそもそもODAの一環として、国際交流基金が無償で配ったものなのです。このエピソードでいつも思うのは、NHKという1つの企業で言うと、優秀なコンテンツがいまだに世界で観られていることはうれしいことなのですけれども、無償配布で止まってしまっているわけです。先ほどおっしゃっていた総合的な戦略という中で、これをどう日本全体のコンテンツ波及に位置づけていくか、全体の戦略にどうつなげていくのか、ということがなかなか議論されてこなかったのではないかと思います。 無料から有料へ、「おしん」が持っている日本人の勤勉さとか実直さというものが今、アジアで受ける、世界で受けるならば、それに付随するいろいろなサービスがあるだろうと。それをつないでいく作業がまさにパブリックディプロマシーにつながるものだと思うのです。次はこのサービスだという個別なものに飛びついていく考え方はそろそろやめるべきだと思います。1つの日本が売り出したい戦略のものをまず無償で送り出して、その付随するものを展開していくという総合的な戦略が必要になると思います。 ○中村会長 ありがとうございます。 野口委員、どうぞ。 ○野口委員 そういう意味では、多分ビジネスも変わっていくでしょうし、コンテンツであったり、具体的な例えばそれをアプリにするのか動的なものなのかということについては、多分ビジネスセクターに今、置かれている有識者の皆様のほうが私よりもはるかに詳しいと思うので、私は法的な制度という観点から意見を申し上げさせていただくならば、「環境整備」とタイトルがなっているのですけれども、それが本当に非常に大事であって、要するに今後どんなサービスが出てきて、もしくはどんなコンテンツの展開をするのが一番お金が儲かるのかということの試行錯誤ができる環境をつくることがやはり競争力という意味では一番大事なのではないか。その一方で、先ほど平澤委員からも御指摘がありました文化の保存という観点でも、やはり志高くアーカイブをやりたいとか、文化を保存して例えばパブリックドメインになった暁に保存されたものをみんなに広く見てもらったりとか、もしくは古い作品のリバイバルだったりリメイクだったりいろいろな問題があると思うのですが、やはりそれをやりやすい環境をつくるという観点から法整備ということを考えるのが非常に重要かなと思っています。 そういう意味では、こちらで取り上げられている例えばフェアユースについてもこれでどうだったのかというのが5ページに取り上げられておりますけれども、先ほどアメリカのコンテンツの活発化がDMCAによって非常に進んだというお話がありましたが、例えばDMCAのおっしゃっているのは、ノーティスアンドテイクダウンとかによって例えばユーザーが発信するようなコンテンツをサポートするようなサービスについて非常に競争力が出たというお話なのかなと思って拝聴していたのです。 例えばフレキシビリティを導入するという意味でのクラウドに対応することについて、どう法的に整備をしたらいいのかということについて、またそのクラウドに対応する例外規定を入れるのか、もしくは、例えばクラウド化を推進するというようなことが書いてあるのですけれども、具体的にどういう法的な手段を用いればそれを推進できるのかというところは、まさに私どもなどがここで議論しなければいけないことなのかもしれないのですが、それについて具体的な手段として各国がどんな手段をとっているのか、日本はどんな手段がとれるのかということについて、ここで議論するというよりは、むしろ1つ下の審議会等で具体的に議論すべき問題かもしれませんけれども、そういう意味では、そのための環境整備、制度整備をどうするかという問題意識は非常に重要なのかなと。 先ほど、山本大臣もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、技術をマネタイズ化する、コンテンツをマネタイズ化するということのための環境整備で、決してコンテンツをただで勝手に使えるようにするのが良いという趣旨ではないのですが、フレキシビリティなり設計の余地を入れていくということは非常に大事なのかなと思いました。 もう1点、文化の保存という意味では、デジタル・アーカイブ化というのは8ページに取り上げていただいているのですけれども、それに関連して私のほうで資料4というのを出させていただいているのですが、ちょっとこちらを御説明させていただければと思います。 デジタル・アーカイブ化と、あとは3ページの権利処理の円滑化というところの権利者不明の著作物については、文化庁裁定制度の円滑な活用等も課題であるということが書いてあるのですけれども、この孤児著作物というのは要するに権利者がわからない著作物で、古い著作物になればなるほど、権利者はわかるのだけれども連絡先がわからないものが非常にふえておりまして、私の資料に書かせていただいているのですが、一番最後に添付していただいております国立国会図書館提出の資料によれば、明治期に刊行された図書の71%については、もう権利者がわからないということでございます。 また、海外での調査なのですけれども、英国で行った調査においては、1870年から2010年までの140年間で出版された作品をサンプル調査したところ、その43%、一番新しいものですと1990年代に出されたものでももう権利者がわからないものがある。こういうものについて文化の保存を進めるという観点から、最近ヨーロッパで非常に意欲的なディレクティブが発表されておりまして、こちらで私のほうで簡単に要約したものを御紹介しております。 これは、非営利の図書館であったり、教育機関、アーカイブなどについては、日本の裁定制度のような申請をして何か月も待って文化庁の裁定を得るという制度ではなくて、自分で調査をしてデータベースに登録をして、誠実な調査に基づいて自分のリスクで進めることができるという非常に意欲的な内容になっています。 これをそのまま日本に導入すべきかどうかということを、そのまま提案させていただくという趣旨ではないのですけれども、やはり、今の日本の裁定制度は制度を改良していただいても年間に30件しか使われていないという現状で、使われていない理由については、申請をしてから許可を得るまで何か月もかかって、例えばこの放送でこれを使いたいと言っても、放送があと1か月後とかに迫っているのに、そんなに何か月も待てないということから使われていなかったりとか、もしくは適正な対価を供託するという制度の適正な対価が何かということを決めること自体に先例がなかったりして、担当者がノイローゼになると言われるくらい非常に難しい問題であるということを聞いたことがあるのです。 せっかく制度があっても非常に使いにくいということなので、そこを抜本的に見直すことができれば、文化の保全であったりとか、もしくは最近の著作物でも、例えばほとんどの権利者についてはちゃんと許諾が取れたのだけれども、一部の権利者がどうしても不明であるために、コンテンツ全体の権利処理ができなくて外に出せないという問題が解決できるのではないかなと思うので、是非取り上げていただきたいと思います。 済みません、長くなりました。 ○中村会長 御提案をいただきました。ありがとうございます。 今の御提案について何か意見のある方。文化庁、どうぞ。 ○文化庁田口課長 文化庁でございますが、補足で説明をさせていただきたいと思います。 裁定制度については、委員の先生御指摘のような課題ということもあるかと思いますが、平成21年度に制度を改定しまして、裁定前利用ということで、裁定後でなければ利用できないということについては改めております。 また、件数の御紹介ということがございましたけれども、これは主体として申請件数が何者からあったという数え方でございまして、裁定利用の対象著作物で言いますと、平成20年度は15件で対象著作物は556件という形でございましたが、平成22年度は裁定件数27件、そのうち対象著作物の数としては67,912件、国立国会図書館の申請した著作物が多かったということがこういう数につながっております。平成23年度につきましては、裁定件数としては20件、対象著作物等の件数につきましては60,230件という状況でございます。 以上でございます。 ○中村会長 野口委員、どうぞ。 ○野口委員 ありがとうございます。 そういう意味では、一番最後におつけした国立国会図書館の別紙を見ていただきたいのですけれども、ただいま御指摘のあった著作物6万何千点の申請について、経費が1億3,000万円。これはやはり国がそういうことは事業として意義があるということでお金をつける国立国会図書館であればこそできることであって、民間の小さなアーカイブがこれをできるかと言うと相当厳しいのではないかと思いますので、そこについて例えばヨーロッパでは、営利企業に孤児著作物をライセンスするということはもちろんできないのですが、例えば営利企業から寄附を受けてデジタイズ化するお金を儲けてもいいとか、自分がデジタイズ化してアーカイブを保持する範囲では、ある程度ユーザーからお金を取ったりしてもいいというところまで踏み込んで、一般の努力で文化を保全することについても認めるような内容になっているわけでありまして、こういう文化の保全を、税金を持っているような大きな幾つかの限られたところだけにずっと頼っていいのかというところも含めて、政策として検討いただければという趣旨でございます。 ○中村会長 わかりました。 提案いただいた内容をどのように取り上げるか引き続き整理をしたいと思います。 野間委員、どうぞ。 ○野間委員 講談社の野間でございます。 ちょうど9ページ目に電子書籍のことが書いてありますので、少しお話しさせていただきますと、こちらに書いてあるとおり、総務省さんですとか経産省さんの支援もありまして、コンテンツのデジタル化が大分進んできているという状況にあります。 昨年後半から電子書籍の売上が非常に伸びているのですけれども、正直なところ10月後半から始まったAmazonの力が非常に大きいと感じています。想定はしていましたが、やはりここまで売れるんだ、というぐらい強力です。 既にGoogleさんも電子書籍サービスをやっていらっしゃいますし、この後Appleさんも始めるというところで、それぞれ巨大プラットフォーマーと呼ばれるところとも、親しくおつき合いをさせていただいております。ただ、我々が危惧するのは米国の巨大プラットフォーマーによる寡占状態というのは、やはり言論の自由とか情報管理といった面も含めてリスクにつながるおそれがあると思っております。 また、巨大プラットフォーマーの寡占によって、読者、消費者の選択の幅が狭まるのではないかということも含めて考えますと、(ドワンゴの)川上さんのところをはじめ、日本のプラットフォーマーとも是非一緒に頑張っていきたいと思っております。もちろん、そういったことも含めて、電子書籍に限ったことではないと思うのですけれども、プラットフォームの重要性というものを、改めて痛感しているところでございます。そのあたりを踏まえて、今後どう取り組んでいくかというのはかなり大きな課題なのではないのかなと思っております。 ○中村会長 ありがとうございます。 先ほど川上委員が御指摘なさったネットのガバナンスということとも共通する課題だと思います。 他にいかがでしょうか。齋藤委員、どうぞ。 ○齋藤委員 アーカイブ化に関しては、どうやって残しておくかという手法がまだなかなか確立されていないと思いまして、本だったら残しておきますけれども、パッケージのないものをどういう形で残していくのだという問題を早いこと検討しないとどんどん消えていくのではないかと思います。パッケージのあるものも、例えばファミリーコンピュータでも30年経っています。あれぐらい売れるとどこかに残っているのですけれども、その後に出てきた例えばMSXであるとか、カシオさんがつくったTV-1000とか、ソードさんのM5というハードとかそういうものもパッケージと一緒に残していかないと、コンテンツだけ残しても動かないのです。そういうことを含めて、早いことやっていかないとどんどん消えていく運命にあるので、その辺の検討を早くしていただきたいというところです。 2年ほど前から国立国会図書館さんがうちの会社にも来られて、そういう話はあったのですけれども、2年間ほぼ進んでいないような状況だと思いますので、できるだけ早く検討していただきたいなと思います。 ○中村座長 他にいかがでしょうか。井上委員、どうぞ。 ○井上委員 アーカイブの問題から少し離れてもよろしゅうございますでしょうか。 私のほうでもペーパーを用意させていただきまして、資料3「オープンデータ戦略における国の著作権の取扱いについて」というものを配らせていただきました。第1回の調査会のときにも、オープンデータ戦略をこちらのコンテンツ強化専門調査会でも扱ってほしいとお願いしたのですけれども、その内容について、できましたら簡単にここで紹介させていただきたいと思います。 オープンデータ戦略とは何かということなのですが、紙に書かせていただいたように、政府の保有する情報について、目的の営利、非営利を問わず、その利活用の推進をしていこうという動きでございまして、その目的としては行政の透明性を確保する、官民協働を推進しよう、あるいは行政の業務を効率化し、高度化していこうということも挙げられておりますけれども、それに加えて昨今重要だと考えられておりますのは、さまざまなデータ、例えば気象ですとか地理空間情報ですとか、地質、交通といった情報を組み合わせて、マッシュアップして新しいコンテンツビジネスの創生につなげていこう、そして経済の活性化を図っていこうというお話でございます。 先ほどから、コンテンツとはそもそも何なのだと。クラシックな意味でのコンテンツを越えてアプリですとか、あるいは静的なものから動的なものへと広がりを持つ概念だというお話がありましたけれども、オープンデータ戦略で問題となるコンテンツというのは、そういう広い意味での動的でかつアプリとして展開されるようなビジネスが多いだろうと思います。 また、ビックデータ戦略というのも昨今いろいろ話題になっておりますけれども、政府の持っている情報は使い出のある非常に価値の高い情報ですので、こういったものを活用した新規ビジネスの創生も期待されるところでございます。 諸外国を見ますと、2003年あたりから欧州で議論が本格的に始まったのですが、2010年前後で各国非常に積極的な施策を推進しておりまして、既にいろいろ仕掛けをつくっているところでございます。 日本でも昨年の7月にIT戦略本部において、電子行政オープンデータ戦略というものが策定されておりまして、IT戦略本部のほうで実務者会議というものを立ち上げて議論しているところなのですけれども、先ほど中村会長からお話がありましたように、IT戦略というのと知財戦略というのはこれから融合していく方向にあるのではないかということがございますので、こちらの知財戦略本部としてもオープンデータ戦略について十分意識した検討をしていく必要があるのではないかと考えるわけでございます。 公共データ、政府の持っている情報に関しては、今、著作権の処理をめぐっていろいろ議論がされております。ペーパーの2のところに書かせていただいたのですけれども、今、既にホームページなどで政府の情報というのはいろいろ公開されておりますが、いろいろ細かい字で利用条件が書いてあるところがございます。それを見てみると、データの再利用ですとか改変については個別の許諾を要するなどと書いてあるものが多くて、実際にビジネスを始めようとすると、個別に部局に連絡をとらなければいけないことになっているのですけれども、その部局の方も著作権をちゃんと管理しようというほどの意欲を持っているわけではありませんから、連絡されても恐らく担当者ベースでどういう対応になるかが決まってくるというのが今までの現状だったわけです。利用者としては、せっかく使い出のあるようなデータが十分に利用できないということで、著作権、そしてそれを根拠とする利用条件、利用制約というものがオープンデータ戦略を進める上で阻害要因になっているというのが現状でございます。 現行の著作権法を見てみますと、国が作成した著作物であっても著作権を与えられることになっている。アメリカなどは、連邦政府のつくった著作物には著作権はないとなっているのですけれども、日本はヨーロッパなどと同じで、一応著作権はあることになっているわけでございます。 しかし、そもそも著作権法というのは、創作を奨励するためのインセンティブとして独占権たる著作権を与えようという制度なわけでございまして、国民の税金を使って、行政目的等で作成されている政府の有する公共データについては、創出へのインセンティブを著作権という形で与える必要性というのはそもそもないと言えるわけでして、そういうものに著作権が何か形式的にあるとなっているので、やはりお役所として管理しなければいけない、だとすると余り出し過ぎたくないなという姿勢になってしまうのは、非常に残念な結果であると思っております。 本当は情報のガバナンスの問題としては、公共機関の有する情報について、本当に実質的な根拠があって出してはいけないもの、あるいは出し方に工夫が要るもの、利用条件を付さなければいけないものといろいろあると思うのですけれども、そういう問題が著作権の陰に隠れて見えづらくなってしまうという問題も指摘されるだろうと思います。そういうことがありますので、公共データの国の有する著作権について、これからどういう考え方でいくのかということを検討していく必要があると考えております。 細かい話はここではこれ以上いたしませんけれども、ペーパーの2ページに書きましたように、1つの考え方としては、A、B、C3つの方向性を書かせていただきましたが、著作権法を改正してしまって、国が保有する公共データには著作権による保護を与えない、アメリカ型でいってしまうということも考えられますし、Bは飛ばしてCは、国は著作権を有するという現行法の状況を前提としつつ、二次利用を促進する、そして内容のわかりやすいライセンスを採用して、個別の交渉なしにオンラインで公共データの著作権処理ができるようにする仕掛けを早急に導入する。具体的には、クリエイティブコモンズのような既存のパブリックライセンスの活用が考えられると思いますが、こういうことを是非積極的に検討していただきたいと考えております。 IT戦略本部のほうでも取り組んでいるところでございますけれども、その側面から知財戦略本部のほうでも著作権法改正、あるいは権利処理の仕組みをつくるという点で応援していくべきではないかと思っております。 以上でございます。長くなりまして失礼いたしました。 ○中村会長 ありがとうございました。 これも重い提案をいただきましたが、これについてどなたかコメントはありますでしょうか。角川本部員、どうぞ。 ○角川本部員 公共データを活用しようというのは、実は知財本部がコンテンツ促進法をつくったときの条文の中に入っていると思うのです。それが全然活用されないままに、今日またお話を聞くと、10年経って変わらなかったのだなとやはり寂しい気がします。実は私たちに政府がどういう公共データを持っているか自身も知らされず公開されていないのです。ですから、活用の仕方がなくて、元々出版社ですから、そういうものがあればデータベースとして出版したいくらいなのですけれども、その方法を教えてください。 ○中村会長 野口委員、どうぞ。 ○野口委員 私も他の委員会でこの問題をいろいろ検討させていただいているのですけれども、まさに海外では今、角川会長がおっしゃったような政府の持っているものを営利活動も含めて企業が自由に使って良いと出すことによって、企業がそれをもとに付加価値をつけてビジネスをすることを応援しているという形ですので、そういう意味で井上委員から御提案があった方向性を是非積極的に検討していただければと思っております。 ○中村会長 このオープンデータは、ここに来て政府全体としても非常に前のめりに積極的に提供していこうという動きになってきておりますが、全官庁にかかわる話でもありますし、政府だけでなく自治体の絡みもありますので、まさにその議論というのは内閣官房の場で進めていくべき話ではないかと感じています。 また、それと同時に政府、自治体などが持っている情報をどのように扱うかというのは、最近はやりのビックデータの問題でもありまして、さまざまなデバイスから上がってくる情報をコンテンツと捉えて、それを社会、経済にどう生かすかという話でございますので、これも先ほど来、井上委員から御指摘いただいているようにIT本部との連携も非常に重要なポイントとなっております。 1つの新しい項目と言いますか柱として、このオープンデータあるいはビッグデータというものも知財本部で捉えることができればと考えますので、引き続き議論をお願いしたいと思います。 中島企画官、どうぞ。 ○内閣官房中島企画官 IT戦略本部の中島でございます。 オープンデータの取組について御意見をいただいたところなので、先ほど井上委員から簡単に御説明いただいているので重複は避けますが、私たちIT戦略本部の取組を簡単に御説明させていただきます。まさに電子行政オープンデータ戦略が7月にできまして、早急に取り組むことになりまして、既に今週の火曜日にも第2回目の実務者会合がありました。本取組につきましては、同じ山本大臣のもとで、前回は年末の会議でありましたが、スピード感を持ってという意見があったのですけれども、スピード感ではなくてスピードを持ってオーブンデータの取組を進めていくことになっております。また、今まで御指摘があったどんなデータがどこにあるのかということについての対応だったりとか、入手方法だったり、先ほど井上委員からも御指摘ありましたけれども、役所のデータを扱うときに一報が欲しいとか、承諾が欲しいとかいろいろ書いていますが、実は余り担当者もなぜそうやっているかという根拠も、どこにあるかという意識も曖昧だったりしますので、その辺のところのルールづくりだったりとか、今、直近の話としてはそういう公共のデータをどのように扱うかについて各省庁統一的なガイドライン、指針をしっかりつくって、先ほどのどこにあるかということも含めながら、早急に対応していきたいということになっております。著作権の御指摘もありましたが、そういう点では著作権の扱いも含めて、知財本部さんと連携しながらIT戦略本部としても取り組んでいきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○中村会長 よろしくお願いします。 他にいかがでしょうか。新山委員、どうぞ。 ○新山委員 3ページにオンデマンドのことが書いてありますので、現状をお伝えします。 全録のシステムができたりすることで、確実に選択視聴の時代に入っていることは皆さん御承知だと思います。NHKもオンデマンドをやっていますけれども、この1月に無料のPCの会員が100万を超えました。売上のほうなのですが、現在13億の事業収入に対して、事業の支出が大体27億で、その多くが権利処理にかかる経費なのです。権利処理の手間とコストは非常にかかることは皆さん御承知ですけれども、これを何とかしなければいけないというのは我々の喫緊の課題です。 3ページの下のほうに企業の方がアンケートに書いていらっしゃいますけれども、例えば海外で放送を売ろうとするとネット権はあるのかと聞かれます。ネット配信権がないと売れない状況です。ヨーロッパでは御承知のように著作権法で、同時再送信は放送とみなしましょうということで、権利処理は一括で済む。見逃しの1週間くらいまでも、徐々に権利処理が1つで済むような国もあると聞いておりますので、このあたりの著作権の考え方を変えていくというのは非常に重要で、冒頭、中村会長がおっしゃっていましたけれども、やはりここを権利者と利用者がタイアップして1つの方針を決めていくというのは、いろいろな利害関係があるわけですが、非常に重要なことだと思いますので、是非一歩前に進めるような結論を出していただきたいなと思います。 ○中村会長 ありがとうございます。 久夛良木委員、どうぞ。 ○久夛良木委員 久夛良木です。 1ページに戻って、○の2つ目のところで「高速インターネットなどデジタル・ネットワークで連結された消費者」という言葉が書いてあるのですが、先の20世紀の時代は大量に物をつくってそれを消費者に届けるであるとか、コンテンツをパッケージ化してそれを消費者に届けるといった意味で「消費者」という言葉が使われたと思うのですけれども、ネットワークがここまで発達してくると、そういった一方向の消費だけの時代ではもうなくなっていて、今や双方向で多様なコンテンツが産み出されたり、自分の考え方とかエクスペリエンスを広くネットワーク共有できる時代になっているときに、その中の大事なコンテンツの一つかもしれないUGC、人々の体験とか、複数の人々がグループで創作するコンテンツに対しては、まだ一言もこの中で述べられていないのではないか、という危惧がちょっとあります。例えばページで言うとアーカイブのところも従来型のメディアコンテンツ群が示されているのですが、この中にやはりUGCへの言及がない。 このUGCというのは、何も手を打たないと消えていってしまう可能性があるわけです。例えばそれがビデオテープであるとすると、今後再生手段自体がなくなってしまうわけです。テープ自体にも寿命がある。そのまま家の中のどこかに埋もれてしまい、将来廃棄されてしまうかも知れない。誰かの文章が大学ノートに書きとめてあっても、そのままで終わってしまう。これはもったいないと思いますし、これら広範な人々が創り出すUGCも、我が国の文化のある意味大きな宝でもあると思います。例えばライトノベル化を図るとか、今日も新聞に載っていましたけれども、Twitterで書いたものを書籍化していくとか、ニコニコ動画で紹介するといったように、是非今後我が国として、広く人々が制作する、もしくは過去に創作したUGCも含め重要なコンテンツの1つとして捉えていってもらいたい。これからスマートフォンも含めてどんどんネットワーク環境が整備されてくる中で、まだまだこれらのUGCを、まだ世界のどこでもうまくコンテンツとして汲み上げることができているとは言えないと思うのです。ここはある意味では完全なブルーオーシャンの領域だと思うので、我が国として世界に率先して引っ張っていく、という指針をこの中に是非盛り込んでいただきたいと思います。 ○中村会長 それも非常に重要な御指摘かと思います。コンテンツ産業として見た場合の売上規模というのが大きくなっていない、減っているという一方で、今、おっしゃったようなUGCのところは、情報量としてその間数十倍にふえているわけでして、それを国の戦略としてどう捉えるかという視点というのは、これまで余りなかったものですから、それもきちんと捉えることができればと思います。ありがとうございます。 三尾本部員、お願いします。 ○三尾本部員 先ほど会長や久夛良木委員のおっしゃったように私もそれはすごく賛成しておりまして、10年前を振り返りますとデジタルコンテンツのネットワーク上の流通というのが爆発的に現在ふえていると思うのです。当初は全然流通していないということが問題になっていたかと思うのですが、今は電子書籍もそうですし、映像も音楽ももちろんそうですけれども、ネットワーク上の配信が非常にふえている状況にあると思います。それはただ外的な圧力とか、ネットワーク環境が整備されたということが大きな要因であって、個々の事業者や国の努力によるもの、もちろん事業者の努力によるのですが、政策的に何かいいことをしたからという結果ではないと思うのです。やむにやまれずこうなってきたという気がいたします。 その中で流れていないデジタルコンテンツは何かと考えた場合、やはりユーザーがつくるコンテンツ、そもそも最初から商品価値がわからないような漠とした形のコンテンツが流れていないのではないかと思うのです。それに対するユーザー側から手を挙げるということがなかったので見過ごされてしまっていたということだと思うのです。 でも今後は、先ほど井上委員もおっしゃったようにオープンデータの活用とか、いろいろ素材と言いますか、デジタルコンテンツを利用できる素材をたくさん提供することによって、それをユーザーが利用して、新たにデジタルコンテンツを創作していくというような環境づくりが必要ではないかと思います。オープンデータでデータベースをつくるというのであれば、その中に統一的な形でユーザーがつくったデジタルコンテンツを入れてあげて、それを他のユーザーが使えて、更に二次利用して別のものをつくっていくという横断的なデータベースをつくって、それを新規のデジタルコンテンツの創作につなげていくという仕組みづくりが必要なのではないかと思うのです。 さらにコンテンツがネットワーク上で売れる、取引できるというところも、値段をつけたりとか無料の場合もあるかもしれませんけれども、それを利用して更に業界として商売をしていくというような、ネットワーク上での取引市場というものをつくれたらいいのではないかと思っておりまして、なかなか各業界では難しいことですので、是非国として取り組んでいただいて、そういう横断的なデータベースをつくっていただければなと思っています。 ○中村会長 ありがとうございます。 川上委員、どうぞ。 ○川上委員 UGCに対する取扱は是非やっていただきたいと思っているのですけれども、もう1つ、コンテンツの振興のために今後、米国の巨大プラットフォーマーがネットの市場にかなり接近すると思うのですが、そのときにコンテンツ制作者側が不利にならないような環境整備をどうやっていくのかといった議論を是非していただきたいなと思います。 具体的な話もしたほうがいいと思いますので、私が今、問題だなと思っているのがNDAの存在です。NDAというのは実はすごく良くなくて、NDAを是非廃止してほしいと思っています。 従来、ネットとかにコンテンツフォルダが出さなかった大きな理由は、儲からなかったということだと思うのです。もしくは取引条件が非常に不公平なものだったから出さないということだったのです。儲からないから出さないというのは非常に正しいことだと思うのですけれども、実際にはプラットフォームに入ることを検討するために結ばれるNDAでは、そういう取引条件というものも公開することができないような条件というのが多く含まれていまして、例えばネットの中では、なぜ日本のコンテンツフォルダは考え方が古いのだ、旧時代だ、ネットに未来があるのにそこに進まないのは何てばかなんだみたいに一方的に非難をされて圧力をかけるというような状況に何年間も置かれてきたわけです。 ところが実際にそこでどういうような駆け引きだったり交渉事が行われてきたかというのはネットの中には一切出てこない。それの大きな原因というのはNDAで、このNDAにより全てがユーザーから見えないところでそういう話が行われていることが、コンテンツフォルダの立場を著しく不利にしていると思うのです。ここの状況というのは、私はNDAはだめとか言うのが可能なのかわからないのですけれども、そこには何らかの対策が必要ではないかと思います。 もう1つ思うのは、やはり卵みたいに売られることがコンテンツフォルダにとって一番つらいのだと思うのです。せめて誰がつくった卵ぐらいかは表示してほしいと思うのですけれども、今、ネット上のプラットフォームが使っているコンテンツの扱いというのは、要するにどれでも構わない、誰がつくっても構わないのだけれども、とにかく適当に並べるわけです。ユーザーへのアクセスができるのはプラットフォームフォルダだけであって、コンテンツフォルダは購入者にアクセスできないという仕組みに大体なっているのです。私は、ここら辺はすごくコンテンツフォルダには不利に働くと思っていて、コンテンツをつくった人が、エンドユーザーに対してちゃんとアクセス手段というのを確保するというのは目標として掲げていいのではないかと思います。 基本こういうのは、余り行政とか国とかが介入しないで自由競争のほうがいいと言われますけれども、多分自由に任せておくと単純にコンテンツをつくっている人たちがプラットフォーマーの奴隷になるだけなので、力関係的には圧倒的に流通とエンドユーザーを押さえている側が強いですから、そこのバランスを改善するような仕組みづくりというのは是非検討していただきたいなと思います。 ○中村会長 これも新しい提案です。ありがとうございました。 このデジタル化・ネットワーク化については、今日いろいろと御意見をいただきました。大きく2つあるかなと。1つは、これまでのコンテンツの見方を変えて、例えばアプリであるとかソーシャルであるとかダイナミックなコンテンツというものにきちんと光を当てましょうということ。もう1つは、UGCであるとかオープンデータといった、これまで重点を置いて我々が検討してきたエンタテインメント以外のもっと広い範囲のさまざまなところから生み出されてくるコンテンツというものにも非常に戦略として目くばせをしなければいけないのではないかという御指摘をいただいたと思います。そういった筋のことも盛り込みながら進めてまいりたいと思います。 そういう意味で言いますと、今日まだ言及がないのが例えば13ページの教育の情報化の普及というのもありますけれども、このあたりもそういう文脈できちんと戦略としても、つまりデジタル教材というコンテンツをどのようにしていくかということも重要な戦略になってこようかと思います。 このあたり、先ほど山本大臣もおっしゃっていましたけれども、韓国が非常に教育の情報化というものを輸出産業として捉えていて、ODAを使ってアジアやアフリカに進出するという動きを見せているところですので、我々もそこはきちんと捉えておく必要があるかなと感じております。 デジタル化・ネットワーク化について他に何か御指摘ありますでしょうか。妹尾委員、お願いします。 ○妹尾委員 妹尾でございます。少し遅れてきて申しわけございません。ですので、國領先生がコンテンツの見直しをしろとおっしゃったのは実は伺っていないのですけれども、多分同じ方向だと思います。 今、中村会長がおっしゃられたことを私のほうでこう理解していいかなということです。私は、コンテンツ強化専門調査会と並行して行われていますテクノロジー系、モノ系と言ってもいいのですが、その知財標準専門調査会の会長をしておりますので、その観点から今までの皆さんのお話をこう整理させてもらえればいいかなと思います。 ほとんど同じだなと思いました。何かと言うと、産業生態系が極めて10年前と違っていて、10年後は恐ろしく変わるという認識を共通して持つべきだということが皆さんのおっしゃったことだと思います。 1つは何かと言うと、コンテンツとサービスとハードウェアないしはメディアデバイス、これの関係が全然変わってきたということだと思います。前回も言ったかもしれませんけれども、私はテレビを見るという言葉が死語になっているということを随分申し上げています。テレビ番組を、テレビ放送サービスを通じてテレビ受像機で見るというのを我々の世代はテレビを見ると言うのですけれども、そんなことはなくて、ラジオ番組を、ラジオ放送をラジオで聞くという世界はなくなってしまって、これは1対1対1の垂直統合的な分野別の産業生態系が、n対n対nの横断的な混沌とした生態系になる。ここの理解をまずしないといけなくて、その中で知的財産的な観点はどうなのかと議論しなくてはいけない。ビジネスモデルが産業生態系とともに急速に変わるときに、従来の1対1対1を前提にした知財の法体系から何からを見直さなければいけないということが第1点だと思います。 第2点は何かと言うと、我々がこの10年間の総括をするということは、そもそもコンテンツという分野をどう捉えていたかということに遡ると思うのです。 我々の調査会とコンテンツ調査会がなぜ違っていたかというと、私どもの製造系とか通信情報系でも、産業財産系と著作権法系で分けていたというのがそもそものここの成り立ちだと思うのです。つまり、法的な分類によって調査会が分かれている。しかし我々もそうではなくて、知的財産というのが産業競争力だということを考えると、産業財産権が産業振興であるとか、著作権法が文化振興であるという従来型の枠組みを外すべきだということだと思います。 著作権法は御存じのとおり、アルゴリズムの関係から言えば、ソフトウェアもほとんど産業競争力になってきているわけですし、あるいはその逆もあるわけです。国の力という観点で見れば、ハーバードのジョセフ・ナイ的な議論をすれば、例えば文化振興はソフトパワー、産業振興はハードパワーだと言うのですけれども、はるかにそれをどうやってミックスするかというスマートパワーの時代に入っているという全体の認識ですから、国力とか国の競争力という意味では、これら両方が融合した政策にまず展望を持って、そこからここで何をやるかという御議論をしなければならないということかと思います。 第3点、何が変わってきたかということについては、先ほどからお話があるように、コンシューマー自身が産業生態系に入る。従来のベンダーが提供する、ここにいらっしゃるほとんどの皆さんは出版だとか、放送、コンテンツをつくって販売するというB to Cを前提にしているのですが、C to Cが始まっている、B to Bも始まっている、いろいろな入り乱れが始まっているということであります。 これを区分すると先ほどの公共データのような公共のコンテンツリソース、個人もコンテンツリソース、皆さんのようなプロフェッショナルもコンテンツリソース。コンテンツリソースがあったらあとはオーサリングツールがあれば全部コンテンツになってしまうのです。それがメディアネットワークの中で全部動くという事実を見なければいけない。全てのものはコンテンツ化できる。anything can be regarded as contentsというところに我々はもう踏み出さないといけないと思います。全てのものはコンテンツ化できる。ライフログが出てきている時代です。全てのこういうようなリアルなものから、メディアに対するパフォーマンスの芸術も、一旦映してしまえば全部コンテンツになってしまうわけですから、そういう時代に入っていることを考えなければいけないと思います。 この総論をやっているとまたあれなのですが、法的なことを言うと、文化庁さんが主体でやられているメディア芸術基本法などというのは今の時代ではもう見直しをしなければいけないと思います。メディア芸術とパフォーマンス芸術を分けた上でどう融合するかという観点をしないと、文化振興も文化保護も、あるいは産業振興もできなくなる。写真が全然入っていないようなメディア芸術みたいな捉え方の基本法は、もう直すべきだと思いますし、全ての人々のコンテンツリソースがコンテンツになるときにメディア芸術ということの観点ももう一回見直しをしなければならないのではないかと思います。 いずれにせよ、今日先ほどまでお聞きした範囲では、コンテンツ強化ということが一体何を意味するのか。コンテンツ産業の強化なのか、コンテンツ自体の強化なのか、産業生態系を全部俯瞰的に見た上で、どのレイヤーに日本は勝負をかけるべきかという議論がなければ動かない。産業生態系のどのレイヤーを欧米に牛耳られたらまずいのか、どのレイヤーを新興国に押さえられたらまずいのか、この産業俯瞰的な議論がきちんとなされなければ、個々の施策の羅列で終わってしまうという懸念があるわけであります。産業生態系の未来図を1回きちんと整理することが、この調査会の大きな課題ではないかと改めて思った次第であります。 個々について言えば、例えば10ページ、デジタルコンテンツ(電子書籍等)と書いてあって、電子書籍を読むための機器が並んでいるのです。iPadは情報端末で下に置いてあってもかまわないわけです。つまり、デジタルコンテンツと言って、リーダー関係が並んでいるという認識自身を我々はもう変えなければいけないということなので、事務局のほうでもこういう資料については少し新しい観点で整理をし直していただいたらいかがかと思います。 例えば、我々は本を読むというのと、本を棚に置くということを平気で言います。それはハードウェアと中のコンテンツをごっちゃにした話なのです。先ほどのテレビを見ると言うのと同じ話。しかし、我々はここで全てが分離して融合するn対n対nの関係に入ってきている以上、ここの整理の仕方自体ももう変えなければいけないのではないかと思います。 例えば8ページにおいても、アーカイブの中になぜ写真のアーカイブが全く入っていないのだろうということが不思議でたまりません。この先に先ほどあったように、個人のものが全てライフログでアーカイブ化されるという事実を考えたときに、アーカイブとその利活用という概念はもっともっと広い中で見なければいけないのではないかということです。しかも8ページの図は全て日本を前提にして組み立てられている。そうなのでしょうか。今、我々はグローバルに日本のコンテンツをどうするかということを考えたとき、こういう図のつくり方一つひとつを是非事務局に新しい観点から工夫していただければと思います。 個々の中身の細かいところに入ってしまうと、マイクを持ったら離さない人間なのでこのぐらいでやめておきます。抜本的な検討を事務局が頑張ってやって、ここでもめるようにしていただけたらありがたいなと思います。 以上であります。 ○中村会長 ありがとうございました。 デジタル化・ネットワーク化の議論でかなり時間をとってしまったのですけれども、今日はもう1つ、残りの時間を使って後半のクールジャパンの議論を進めていただければと思います。よろしくお願いいたします。 これについても情勢認識をというシナリオがあるのですけれども、クールジャパンという言葉は使われるようになって10年になるのです。日本の現代文化というものは、クールジャパンとして共感を世界から得ているわけですけれども、それはもう形を変えてきていて、かつてのような漫画・アニメ・ゲームといったコンテンツにとどまらない。ファッションとか食とか観光などに広がっているわけです。さらに最近ですと、工業デザインだとか、サービスの水準だとか、生活様式だとか、そういったもの自体も日本に注目が集まっているということだろうと思います。 ここでのミッションは、そうした日本の持つソフトパワー、ハードパワーも一体となってソーシャルパワーというお話が先ほどありましたけれども、そういったものを経済成長につなげていくために海外市場をどのように取り込んでいくのかということだろうと思います。そのための手法としては、これまでこの場でも、インバウンド、アウトバウンドの両方が必要だ、海外のメディアも押さえるべきだ、国内での基盤整備も進めるべきだというような御指摘がありました。 私見を申し上げますと、私自身2つあると思っていまして、1つは日本の総合力は何かということをきちんともう1度見直す必要がある。文化の力、ここで議論しているコンテンツとかデザインを生み出すという力と、もう1つ、技術の力、妹尾委員が対処なさっているほうと高品質の製品とかサービスを生み出すものづくりの力です。この文化力と技術力を両方持ち合わせているという総合力が日本の強みではないかと私は思いますので、それの総合戦略がひとつ必要だろうと。 もう1つは、今日もいろいろと議論になりました国民全体のと言いますか、庶民のと言いますか、みんなの力というのが日本の強みではないかと私は思っています。日本のポップカルチャーというのは、どちらかというと、アメリカ型の限られた天才がつくるというよりも、みんなが庶民文化として育んできたものでありますから、言わばソーシャル力であります。それをどのように生かしていくのか、ネットワークでみんながつながる時代には大きなチャンスが日本には来ているのではないかと思っています。 しかしながら、大きな問題もまだありまして、その状況を恐らく日本人が認識をしていないということではないかと。これはアメリカのAdobeがした国際調査の結果によると、世界で一番クリエイティブな国はどこかと先進各国に聞いたところ、日本が圧倒的に1位だった。そういう評価を海外からされているのですけれども、同じ調査で、日本人だけが日本のことをクリエイティブだと思っていないという結果も出ておりまして、クールジャパンという言葉も海外から入ってきた言葉なんですね。その言葉自身もどうやって使っていくのか、日本がどうやって自らを評価していくのかというのは、大きな宿題なのではないかなという気がしておりまして、先ほど来、世の中が変わってきているということでもありますので、どのようにクールジャパンなるものを、前回もクールジャパンとは何なのだという問いかけがありましたけれども、どのように点検をして評価をして外に出ていくのかということを議論いただければと思います。 残り時間は少ないのですけれども、クールジャパンの一層の推進というところでコメントなどがありましたらお出しいただければと思います。いかがでしょうか。角川本部員、どうぞ。 ○角川本部員 今の会長のお話ですけれども、クールジャパンの概念論とか、そういう文化論みたいなものは、もう今年はいいのではないか。今、ここに配られている参考資料を拝見しますと、緊急経済対策について私たちは答えを出さなければいけないのではありませんか。こういう資料が配られている以上、事務方もそういう意識を持っていると思うので。 具体的にクールジャパンのところを読ませていただきますと、このクールジャパンで推進とは出ていますけれども、ここについては、外国人旅行者の増大に関する取組とか、非常に具体的なことを期待しているのだと思うのです。つまり、クールジャパンを実現することはメイクマネーになるのだと。日本の経済力を増大させるのだというところで、更に各論としての話をここでもし取りまとめないと、またクールジャパン論で間口を広げ過ぎてしまって、議論が煮詰まらないままに終わってしまうという危険を感じるのです。そういう点では、日本の文化の海外販売戦略、流通戦略というものを私たちが答えを出さなければいけないのではないでしょうか。 ○中村会長 新山委員、どうぞ。 ○新山委員 会長がおっしゃっているのは、クールジャパンについては、日本が売り物にする陳列棚はまだあるのではないかという、日本の可能性のことをおっしゃっているのだと思います。 日本にはまだ日本人ですら気づいていない魅力、海外の人がお金を出しても手に入れたい、経験したいものが各地にあります。1つの事例を挙げます。人口2万5千人の広島県熊野町で今も手作業で作られている「化粧筆」がハリウッドのメイキャップで使われ俄かに高い人気になっています。こうしたお宝を世界に気付かせる映像カタログ・データベースが必要ではないか。既に世界の大手放送局・映画スタジオはクラウドサービスを利用した映像フッテージのデリバリーを始めています。ウェブサイトで検索・試写・発注を行うものです。そういう映像をテープレスでデリバリーできる仕組みをオールジャパンで検討してはどうでしょうか。 ○中村会長 ありがとうございます。 他にいかがですか。中島本部員、どうぞ。 ○中島本部員 インバウンドとアウトバウンドのことなのですけれども、特に観光立国と知財戦略本部とITの3つの融合を更に進める必要があるのではないかと常々思っていますし、昨年も発言させていただきました。またまだ観光が独自で動いていて、ITと観光の融合が十分でないという感じがいたします。 観光につきましては、観光立国基本法という立派な法律があって、観光立国推進戦略本部もあって、観光立国推進基本法があって、推進計画もあるわけです。その中にはここで議論しているものよりも、ものすごくたくさんの施策が載っているわけです。そういう意味ではここで取り上げるものは、そのほんの一部でしかないという感じになっております。せっかくそういうものがあるので、これは国土庁さん、観光庁さんですけれども、そちらともっと協働して、少なくとも観光、インバウンド、アウトバウンドと知財戦略とICT活用というのをもっと進めるべきであると思っております。よろしくお願いします。 ○中村会長 ありがとうございます。 他にいかがでしょうか。妹尾委員、お願いします。 ○妹尾委員 先ほどのいろいろなものがあるよねという話は、日本で昔何があったかと言うと、柳さんがやったような民芸運動なのです。要するに各地にある無名の人がつくっていたものを全部取り上げたら世界的になったということなのです。だからある意味では白樺派ではないですけれども、当時の民芸運動をテクノロジーの世界になったときにどう再活性化するかという話だと思うのです。 私がずっと提唱していますのは、私は秋葉原の再開発のプロデューサーをやっていましたから、そこで言っていたのは、工芸国家論なのです。工芸というのは民芸という意味ではなくて、工はテクノロジー、芸はアートなのです。 今、秋葉原で起こっているようなことは実はテクノロジーとアートの融合なのです。これがやはり日本の特徴のクールジャパンの1つになるだろうという意味では、具体的な施策としては秋葉原だとかああいうところを特区的な、新工芸国家の先端都市的な活用をしてもらうというのがありまして、そういうところへ全部一旦先導的なモデルケースをつくるということをやってもいいのではないかなと思っています。 ちょっと話題を提供しますと、前回言ったかどうか忘れてしまったのですけれども、ファッションの世界ですごいことが行われ始めました。 1つはOn to OffのビジネスがOff to Onに変わってきたということです。ニューヨークのデパートなどは全部Off to Onに変わってきました。 もう1つファッション関係で言うと、一番面白いのは皆さん御存じのユザワヤだとかオカダヤさんがやっている手芸の世界市場が1千億円を超えたと言われています。それを聞いて私は思わず「しゅげい」と思ったのです。こういうところで最もすごいのはC to Cが動き始めたということなのです。どういうことかというと、個人の奥様がつくられた手芸品がネット上を使ってC to Cで流通するようになってきたのです。これは明らかにコミケの一番最初のビジネスモデルと同じものが動き始めているのです。 ネット上、サイバー上のC to C、リアル上のC to C、これは例えば秋葉原のボックスで売る販売所です。こういうリアルとサイバーが一体化したC to Cが動き始めたということがあって、こういうところをもっと見ていくと、クールジャパンのネタがまたまだあるし、先ほど角川本部員がおっしゃられたような具体的な施策が欲しいというときに多分あるのだろうと思います。だからこれはちょっとした素材の話題提供です。 3番目に食に関してなのですけれども、食は日本食でいいよね、これクールだよねと言うのですが、私はもっと食の振興を思い切ってやるべきだと思っています。それはコンテンツとどう関係するかと言ったら、「銀の匙」あるいは「百姓貴族」またはその類です。ここのところへ来ている食のアニメだとかコミックだとかがもっと振興されていいと思うのです。ということは制度的に言えば、日本のクールな食をプロモーションするようなものについて是非振興したい。それはアニメでも何でもいいわけです。それこそ一般的にニコ動にコンテンツが出てきてもいいわけです。だから食についてだとか、ファッションについてだとか、民芸についてだとか、要するクールコンテンツをプロモートすることを振興するような政策というものをもっとやったらいいのではないかなと思います。 私は食の漫画の殿堂をつくってもいいと思っているくらいですから、そういうフェイムなところをいろいろな分野でつくっていく。例えばファッションについてのクールなプロモーションをしたアニメとコミックをもっと振興、奨励するようにして世界に発信するというような制度をもっとつくってもいいと思うのです。全部が一まとめになってしまうと薄れてしまうのです。もっと分野別にきちんとしたほうがいいと思います。 話題提供でした。以上です。 ○中村会長 久夛良木委員、どうぞ。 ○久夛良木委員 クールジャパンの議論をしていると、今までというのはアニメであったり漫画であったりサブカルであったり、そういったものは日本の中に当然あるわけで、それを外に出していく話は当初から随分されてきたと思います。しかし、それだけではなくて、日本を日本たらしめている我が国のユニークなところは「おもてなし」の文化ではないかと思うのです。まずインバウンドにかかわりますが、日本のおもてなし文化というのは本当にすばらしくて、「食」はただおいしいだけではなくて、その場所その場所でレストランも含めて独自の「おもてなし」があって、一方心温まる旅館のおもてなしがあったり、20ページにも書いてありますが「テルマエ・ロマエ」で言うと、日本だけではなく古代ローマも舞台なのですが、温泉というのは思いっきり日本のおもてなしの文化そのものを凝縮して表現している。海外の人は日常的に温泉に入るわけではないのに、やはりこれが世界的に受けるのですね。このおもてなしは何だということで驚いて、ひょっとしたら、これで日本を訪れてみたいとかケロリンの洗面器を買いたくなったりするのかもしれないのですけれども、この我が国が誇る「おもてなしの文化」を、今後更に伸ばしていくような文言が欲しいと思います。例えば、商品名ですけれども「ウォシュレット」などは最高のおもてなしです。これも、いい意味でテクノロジーと「おもてなし」が一緒になった事例だと思います。皆さんがおっしゃられたように、今やネットワークで個人やコミュニティが世界に向けて発信していける時代なので、是非日本の中に生き生きと根付いている「おもてなし」と「多様性」の文化を、アウトバウンドとインバウンド双方に向けて発信していきたいと思います。 以上です。 ○中村会長 川崎委員、どうぞ。 ○川崎委員 クールジャパンの一層の推進の点で思いますのは、どんどん前向きにというのはいいのですが、今、懸念していることが2つあると思いまして、1つは別所さんもこの前おっしゃっていましたが人材の流出です。 もう1つは産業の空洞化。いわゆるコンテンツというところでも、明らかにこれから10年を考えると進んでしまうと思っていますので、その2つの点、例えば人材の流出だったら人材へのインセンティブです。海外に出て行くときには何かのインセンティブを与えてあげるというのは必要なのかなということと、空洞化対策で言うとやはりビジネスモデルの輸出というのは日本の1つには進んでいるところでありますので、国内に留まりつつ、海外に出ていくビジネスに対してはこれもインセンティブを考えるとかです。やはりそういった意味で人材の流出と空洞化対策ということを念頭に置いて議論したほうがいいのではないかなと思っております。 ○中村会長 國領委員、どうぞ。 ○國領委員 会長にお尋ねしたいのですけれども、学校はだめですか。食にしたってコンテンツにしたって、もっと教育と留学生みたいなものをふやしていくとか、そういうのは今までこの中に入っていないのでしょうか。 ○中村会長 計画の中にも入っているのがあります。インバウンドでどんどん人財を寄せましょうということもあります。それも計画の中でより強化することを盛り込んでいます。 外務省さんからお願いします。 ○外務省岸守首席事務官 外務省の広報文化外交戦略課の岸守と申します。 冒頭、角川会長がメイクマネーの個別具体的な戦略ということをおっしゃっておられたので、22ページの戦略的展開について1点だけ提案がございます。 ここにいろいろ書いてあることというのは、基本的にはプッシュファクターだと思うのです。日本企業が日本のコンテンツを海外に売るときに、どう日本企業をサポートしたらいいかということはすごく精緻化されていると思うのですけれども、これは外国人を消費者あるいはサービスの享受者としか書いていないと思うのです。これにもう一工夫加えたらというのが私の提案でありまして、それはプルファクターをつくり出すということであります。具体的には外国人を、特に元留学生など日本シンパとか日本ファンの方を企業から見たときの企画側というか発信側というか、それを取り込んで、共に創る形で展開することでやったらどうかということであります。 1つ例を挙げると、明日18日ジャカルタで日・ASEAN40周年のキックオフ・レセプションがあって、安倍総理に来ていただいてレセプションをやるのですけれども、実はうちの課はそこで東北のアピールをやろうと思っているのです。具体的には歌なのですけれども、福島の安積黎明高校というコーラスで非常に有名な高校から2名ジャカルタに行っていただいて「Tomorrow~Love Song」という歌詞をつくっていただいたのです。それだけだと東北からASEANへの一方的なベクトルになってしまうので、音楽は国際交流基金が育ててきたユニットアジアという、日本とタイとマレーシアでジャズバンドを組んでいるのですが、そこに音楽をつくっていただいて、その楽曲に福島の安積黎明の生徒がつくった歌詞をのせて安倍総理が来られたときに一緒に歌うというだけの話であるのですが、その後、国際交流基金が4月以降ユニットアジアを展開させるときにその歌を紹介して、ASEANを回っていくという形をとっております。 1つの例ですけれども、先ほど「おしん」の話がありましたが、68か国で売れているということで、実は私の前任地はエジプトでして、2年前までいたときに「おしん」のおかげでいい思いをさせていただきました。先ほど新山委員がおっしゃったように「おしん」のイメージというのは、頑張るとか、あきらめないとか、まじめであるということなのですけれども、私はそうではないのですが、日本の外交官ということで頑張る、まじめである、勤勉であるといったイメージでエジプトの人は受け取ってくれて、アメリカとか中国の外交官がスタートを切るときよりはいい形で入ることができたのです。 そういったプルファクターをどうつくっていくかということで言えば、妹尾委員が先ほどおっしゃった工芸国家論に非常に共感するのですけれども、それを具体的に進めるときの個別具体的な方法ですが、例えば国際交流基金は今回2億円ですけれども予算をつけまして、ASEANの人材育成をやろうと思っているのです。今までJICAが途上国に対して技術協力の推進、人材育成というのをやってきましたけれども、これの文化版を今後始めることにいたしました。例えばインドネシアの映画監督とスタッフを日本に呼んでいろいろ研修してもらったり、一緒にテーマを考えて一緒に映画を制作したりすることを考えています。そうして彼らが本国に帰国した後、例えば日本の角川映画とかそういったものを売り込むときには、何もないときに比べるとプルファクターが強い形で売り込める素地を創れるのだと思います。外務省もこのようにいろいろ取り組み始めておりますので、個別に御相談いただきながら、是非一緒にクールジャパンをうまく展開していきたいと思っております。 ○中村会長 ありがとうございました。 クールジャパンについては、産業界も政府全体も大きく動き出しているところであります。先ほど角川本部員から具体論をという話がありました。これは前回の知財計画でも成功例を出せということが明記されておりますし、去年開いたこの会合でももう実行段階だと、あるいは絞込みをしてメリハリをつけなさいという御指摘もいただいたところでありまして、そのような具体論をさせていただければと思います。 前回、野間委員が御紹介された「巨人の星」のインド版を、私も年末から正月にかけてインドに行ってテレビで見てきました。ああいった個別のタマの話がもっとできたらなと思っておりますし、今、御指摘いただいたような、我々はアウトバウンド、インバウンドという言葉を使ったりしておりましたけれども、プッシュとプルの両方をクールジャパンの観点で施策を重ねていくことができればと思います。今日は余りクールジャパンのところについては時間がなくてできませんでしたが、引き続き皆さんから御意見を、五月雨的にでも結構ですので、事務局のほうにお寄せいただければと思います。 今日の御意見、議論を踏まえて、次の調査会では知財計画2013の骨子に盛り込むべき事項の素案について議論をしていただきたいと思っております。 では、次回の会合について事務局からお願いいたします。 ○木村参事官 次回の専門調査会でございますが、3月に開催する予定でございます。後日、日程調整をさせていただきますのでよろしくお願いしたいと思います。 ○中村会長 ありがとうございました。 では、ここで閉会いたします。どうもありがとうございました。 |