コンテンツ強化専門調査会(第9回)議事録



  1. 日  時 : 平成24年4月23日(月)9:30~11:35
  2. 場  所 : 知的財産戦略推進事務局会議室
  3. 出席者 :
    【委員】
    中村会長、角川委員、久夛良木委員、杉山委員、別所委員、吉羽委員、
    中島本部員、中山本部員
    【事務局】
    内山事務局長、上田次長、芝田次長、安藤参事官、木村参事官、筬島企画官
    【担当府省】
    内閣官房内閣広報室 加治参事官
    内閣官房国家戦略室 小田企画調整官
    内閣官房地域活性化統合事務局 朝田参事官補佐
    総務省情報流通行政局情報通信作品振興課 竹村課長
    外務省広報文化交流部総合計画課 小野課長
    文化庁長官官房国際課 佐藤課長
    農林水産省食料産業局新事業創出課 太田課長補佐
    経済産業省商務情報政策局生活文化創造産業課 渡辺課長
    経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課 伊吹課長
    観光庁観光地域振興部国際交流推進課 墳﨑観光旅行促進官
    【有識者】
    株式会社出版デジタル機構代表取締役 植村 八潮 氏


○中村会長
 おはようございます。では、ただいまから「コンテンツ強化専門調査会第9回会合」を開催いたします。お忙しいところ、朝早くからお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。今日が本年度、平成24年度初めての会議、新ラウンドとなりますので、また新たにお願いいたします。
 なお、本日は、大﨑委員、大多委員、川上委員、末吉委員、谷口委員、佐藤委員から御欠席の連絡をいただいております。まだ遅れて来られる方、何名かおられると伺っております。
 また、知的財産戦略本部員からも、中島本部員、中山本部員に御出席いただくことになっております。
 さらに、今回は有識者として、株式会社出版デジタル機構の植村八潮代表取締役に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
 担当府省から、内閣官房内閣広報室加治参事官、国家戦略室小田企画調整官、地域活性化統合事務局朝田参事官補佐。
 総務省情報通信作品振興課竹村課長。
 外務省総合計画課小野課長。
 文化庁国際課佐藤課長。
 農林水産省新事業創出課太田課長補佐。
 経済産業省生活文化創造産業課渡辺課長、同じく文化情報関連産業課伊吹課長。
 観光庁の国際交流推進課墳﨑観光旅行促進官に御出席いただいております。
 今日、議事に先立ちまして、事務局に人事異動がありましたので御報告申し上げます。4月1日付で近藤知的財産戦略推進事務局長が退任されまして、新たに内山局長が就任されることになりました。

○近藤局長
 おはようございます。本当にありがとうございました。私、この知財事務局長になりまして約3年間、この知財計画に携わってまいりました。皆様のおかげで大いに進歩ができたと、本当に心から感謝しておるところであります。専門委員の先生方、勿論、本部員の先生方、本当にありがとうございました。また、各省の皆さんの御協力がなければ、ここまで来られなかったと心から感謝しているところでございます。
 私、この3月末をもちまして退官いたしまして民間人になりましたので、あと5年ぐらいしたらこちらに座ろうかなと思っておりますが、是非皆様方がますます知財関係の議論を深めていただくことを心からお願いしたいと思います。
 また、私の後任には内山さんという、私がこの局長に就任したときの次長でございまして、そういう意味では私よりももっと、この知財政策にも明るい人物がなってくれたわけでございます。これも心から安心し、期待しておるところでございます。
 もう、ただただ皆様方に感謝を申し上げて、お礼の言葉といたします。今回、これが今年度の最初の会合であり、また専門会議もいろいろとこれから御議論いただいたり、審議していただくことがたくさんあると思います。引き続き、御支援、御鞭撻を心からお願いし、お礼の心を込めて感謝を申し上げてごあいさつにかえたいと思います。本当にありがとうございました。

○中村会長
 では、続いて内山局長からごあいさつをいただきます。

○内山局長
 皆様おはようございます。内山でございます。先ほど近藤局長から御紹介いただきましたように、2年ぶりに知財事務局に戻ってまいりました。中村会長を始め、委員の皆様と、また御一緒に知財の仕事ができることを大変うれしく思っております。
 もう既に、このコンテンツ専門調査会でも、準備会合も含めて十数回にわたり大変活発な議論がなされまして、そして知財計画2012の骨子が取りまとめられて、ちょうど1か月前、3月23日には本部会合でその骨子が取り決められたと聞いております。改めて御礼申し上げたいと存じます。
 私、2年間、知財事務局を離れておりましたけれども、経済産業省で地域経済を担当しておりました。特にこの1年間は、東日本大震災の被災地の復興を担当しておりまして、とりわけ福島の産業復興対策に取り組んでおりました。風評被害等々、いろいろ大変な状況の中で、映像コンテンツを始めといたしまして、いろいろなコンテンツが持つ力といったものを大変実感いたしました。元気な地域経済なくして、日本経済の成長発展はないのだと思います。地域におきますコンテンツの重要性を大変痛感した次第でございます。
 そういった中で、北海道では、札幌コンテンツ特区が動き始めましたし、そしてまた沖縄では、国際映画祭が4回、大変大成功で行われているということで、それぞれの地域でコンテンツの力というものを生かしながら、いろいろな力強い動きが始まっているのだなと思う次第でございます。
 是非、このコンテンツ専門調査会におかれまして、ますます活発な御議論をいただきまして、2012の計画策定に向けてラストスパートをかけていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○近藤前局長
 では、失礼します。

○中村会長
 では、議事に入ります。前回の会議では、コンテンツ強化に関する知財計画2012骨子への提言を取りまとめたところであります。その後、先ほどお話にもありましたが、3月22日に企画委員会、23日に知財本部の会合をそれぞれ開催いたしまして、知財計画2012骨子を決定したところです。
 私も22日の企画委員会に出席いたしまして、この専門調査会で審議されている状況ですとか計画の骨子への提言内容について報告いたしました。その際に、ファンド、特区、いろいろ成果はあるのですが、この専門調査会を通じて関係各省が、今日もそうですけれども、同じテーブルに着いて、コンテンツ強化に向けた連携・協力、政策の推進が非常に活発になって前に動き出した、それが最大の成果ではないかということを伝えたところでございます。
 そのほか、知財本部会合の詳細については、事務局の方から説明をお願いいたします。

○木村参事官
 それでは、まず、資料の確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第に続きまして、資料1、先ほども御紹介があったところでございますが、本日御出席いただいております出版デジタル機構の植村様の配付資料。
 そして、資料2は、クールジャパン推進の取組として、関係府省の取組をまとめたものでございます。また、資料番号は付けてございませんが、机上配付資料としてお配りしている海外メディアを活用したクールジャパン発信事業に係るもので、中国の新華社環球から発行しました冊子。また、3月に北京で開催いたしました日本ブランド復興キャンペーンの国際シンポジウムにおける角川委員の講演資料、それと元財務次官の杉本和行みずほ総合研究所理事長のごあいさつの抜粋をお配りしているところでございます。
 また、参考資料1は、前回御議論いただきました主な意見でございます。
 参考資料2-1は、後ほど御説明いたしますが、先ほど会長からも御紹介がありました3月23日の知的財産戦略本部会合で決定いたしました「知財計画2012骨子の概要」。
 参考資料2-2は、その本体でございます。
 また、参考資料3は資料の一番下に置いているA3横長のものでございます。本部会合で報告いたしました知財計画2011の項目別進捗状況でございまして、3月末の時点で字句修正したものでございます。
 参考資料4は、本専門調査会の委員の皆様方に大変精力的に御議論いただき、3月におまとめいただきました知財計画2012骨子に盛り込むべき事項でございます。御提言いただいた内容は、ほぼそのままの形で、先ほどの知財計画2012骨子に反映されているところでございます。おまとめいただきまして、本当にありがとうございました。
 参考資料5は、今後のスケジュールでございます。本日を含め、あと2回御議論いただきまして、知財計画2012に盛り込むべき事項をおまとめいただきたいと考えているところでございます。
 それでは、知財本部会合で決定いたしました知財計画2012骨子につきまして、参考資料2-1を使って概要を御説明させていただければと思ってございます。A4横長の資料でございます。
 知的財産戦略の新たな挑戦といたしまして、グローバル・ネットワーク時代において、国際競争力の強化のために、今後の10年を見据えた2つの知的財産総合戦略を柱にしている内容になっているところでございます。
 第1に、2ページ目になりますが、知財イノベーション総合戦略でございます。
 グローバル・ネットワーク時代に対応するため、5大特許庁の枠組みを活用した特許制度の国際調和の推進。あるいは、特許審査ハイウェイの新興国への拡大といった施策を実施するものでございます。これによりまして、我が国の知財システムの競争力を高めるとともに、新たな時代に対応する知財人財を加速的に育成・確保する知財人財育成プランを強力に実行するものでございます。
 また、国際標準化戦略を含む総合的な知財マネジメントを通じまして、我が国が世界に誇る技術力、デザイン力、ブランド力を最大限に発揮してイノベーションを創成するとともに、中小・ベンチャー企業の知財活動を強化して、我が国産業の国際競争力の強化につなげるというものでございます。
 第2に、3ページ目となりますが、日本を元気にするコンテンツ総合戦略でございます。本専門調査会でおまとめいただいた部分になります。
 日本のソフトパワーである優れたコンテンツの世界展開を支えるため、著作権制度をめぐる環境整備、電子書籍の流通促進、人財育成システムの整備といったデジタル・ネットワーク社会の基盤を整え、日本の活力につなげていこうというものでございます。
 また、コンテンツの海外展開の成功事例の創出、あるいは訪日外国人の増大を始めといたしまして、日本が世界に誇るクールジャパンの発掘・創造、発信、拡大・定着といったところまで、好循環のサイクルをより大きく早く回すことで、クールジャパン戦略の強化を図ることにしておるものでございます。
 これらの骨子に記載いたしました施策例は、新規のもの、あるいは知財計画2011の施策を深掘りするものでございます。知財計画2011からの継続課題が勿論あるわけでございますが、今後、作成する知財計画2012本体の中で記載していくこととなります。また、知財関連の全施策を対象といたしまして、どの府省がいつまでにどのような施策を実施するのかといった戦略実施の工程表と、各府省が実施するクールジャパンの関係施策の一覧につきましては、次回の本部会合までに作成することになっているところでございます。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。

○中村会長
 ありがとうございます。本件について、質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、次に移りたいと思います。今日は、知財計画2012本体に盛り込むべき事項について御議論いただく予定なのですが、この後、個別事項について有識者や関係府省の方からいろいろと御説明いただく予定になっております。知財計画2012に更に盛り込むべき事項をどうするかという観点も踏まえて御議論いただければと思います。
 まず、デジタル・ネットワーク関係についてですが、コンテンツ関連の最近の動きの中で最も大きな出来事の一つは、書籍の電子化を支援する株式会社出版デジタル機構がこの4月に設立されたことだと思います。
 そこで、本日は、出版デジタル機構の植村代表取締役にお越しいただきました。植村代表取締役には、機構の業務や今後の展開、政府への要望などについて、いろいろとお話をいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

○植村氏
 よろしくお願いいたします。おはようございます。今日は、株式会社出版デジタル機構の代表取締役という肩書でお邪魔させていただきました。多分、この推進計画をまとめなければいけない、一番大事なお忙しいときに、今日のこの説明という形で関心を持っていただき、またお呼びいただきまして、感謝申し上げたいと思います。
 出版デジタル機構は、1年ほど前から計画はしましたが、また発起人として昨年9月に声をかけさせていただきました。その上で、今月の1日が日曜日でしたので、4月2日に株式会社として発起しております。それでも、3月ぐらいになって、本当にできるの、よくできるねというぐらい、とても難しいと思っていたよという声を随分多くの方から聞きました。それは、多分、この会社が株式会社と言っても、ある種理念先行、理念型の組織としてつくり上げたからだと思っています。
 ありていに言って、私どもは非競争領域における公共基盤になりたいということをずっと言い続けています。それは、日本に電子書籍のコンテンツビジネスというものを立ち上げるための背景、支援となる組織が必要だという考えからつくり上げたものです。とはいえ、でき上がったからといって、船出したとは言っても、岸を離れたばかりで、まだ湾も出ていない状況です。湾から出ると大荒波かなと思いますので、先生方の御尽力を是非いただきたいと思います。
 お手元の資料とパワポは全く一緒です。10分足らずで説明したいと思いますが、先ほど申し上げましたように、出版デジタル機構は昨年9月15日に声をかけさせていただきまして、ボランティアでずっと準備をしてまいりました。ただ、非常に注目をいただきまして、普通のビジネスであるならば、営業をかけて賛同会社への訪問があるのですが、そういう組織ではありません。あくまでも出版界の中から、必要、あるべき姿ということで考えていただいておりますので、説明会を昨年は東京2回、京都で1回、年明けして少し具体的になりましたといって、3回ぐらいやったに過ぎないのですが、現在までのところ、賛同出版社で300社を超えております。
 もう一つ、電子書籍がもし御提供いただけるなら、この1年間にどれぐらい提供いただけますかという賛同出版社へのアンケートをとったところ、9万3,000冊という冊数が集まっております。これは、今年度中につくる一つの目標として、経済産業省の御支援もいただいている枠組みですが、6万冊を考えておりますので、その6万冊を超える期待が集まっていると考えています。
 1つ手前に戻って、そもそも出版デジタル機構はどんなことを言っているか。サービス名はpubridgeとしております。まさにおわかりのとおり、publishとbridgeを結んでいるわけです。あらゆる端末、あらゆる書店、あらゆる出版社を結ぶ架け橋になりましょうということです。
 御存じのように、公共インフラというのは、今は民間の手で鉄道、電気、ガス、放送電波というものがつくり上げられているわけですが、その上で競争というものが行われているわけです。電子書籍を一たび考えたとき、急速な展開があって、日本的な電子書籍というのは私はある程度成功していると思っております。電子辞書市場というのは、世界で一番大きな専用端末をつくり上げておりますし、さまざまなサービスがある程度うまくいっていますが、こと、この二、三年話題になっている電子書籍、つまり文芸系を中心とした専用端末によるビジネスというものは、アメリカの話題ほどには日本は立ち上がってこなかったということです。
 ただ、1つ気をつけなければいけないのは、電子書籍というのは極めてアメリカ型のビジネス、もっと言うと、Amazonを代表とされるkindleのような端末によって、プラットフォーマーによるある種の垂直統合が行われている構図が強く見えて、それによる成功事例を聞きますが、例えば昨年、ヨーロッパに私、調査に行きましたけれども、ドイツとかフランスは全く違う様相を見せています。
 確かにAmazonは、ドイツ、フランスでも電子書籍サービスをしていますが、そのコンテンツ数はとても少ないですし、ヒアリングをすると、電子書籍そのものをどう売るかということにおいて、書店店頭で売るというニュアンスをとても強く出します。もともと紙の本が非常に強い文化ですので、ヨーロッパにはヨーロッパなりの書籍とのつき合い方があるように、日本には日本型の書籍・雑誌のつくり方があります。
 ですから、出版文化というのは言語依存ですので、各国固有の販売や戦略があるべきであると思っていますので、必ずしも米国型のチャネルを垂直統合するような方法がいいとはとても思わないというか、むしろそうあってはならないのではないか。もっと多様な表現というものを、多くの人たちの参加ができるような場にするべきじゃないかというのが、もともとの出版デジタル機構発足の理念です。
 ですから、現状において減ったとはいえ、1,500書店があります。多分、アメリカは国土が25倍で5,000書店ぐらいしかないと思います。日本は減りつつあると言いながら、圧倒的に書店がありますし、出版社は4,000社と言われる数があります。こういう出版という活動・産業に参入しようとしたときに、勿論、その身の丈に応じた表現活動をだれでもができることを、電子書籍だからこそ、なお実現できないかという気持ちがありました。そのためには、公共基盤的な流通を、だれでも参入できる枠組みをちゃんと国内で担保したいということです。
 その結果、ここで端末とか書店とか出版社を結ぶことができ上がれば、多分そこに多くの作家、著者、著述業と言われるような人たちが参入するし、読者にとって最もハッピーな環境ができるのではないかと考えているわけです。
 ですから、私どもが非競争領域と言っているのは、つまり直販、B to Cはしない。電子書籍というものを仮に集めたとしても、その販売は競争領域だからです。電子書店が競争していただくし、それはセールスプロモーションなり販売戦略なりして、例えば電子書籍をどう組み合わせるかとか、よく書店でブックフェアが行われていますが、そういうフェアを計画するかというのも全部競争していただきたい。出版社あるいは作家の先生方には、いいコンテンツをつくることで競争していただきたいと思っています。
 そういう両端の競争に対して、例えば各出版社の間でコストセンターとなっているような領域を集めるとか、あるいは今後立ち上がるであろう図書館に対するサービスというのは、これはなかなか難しいところだと思います。従来型の館における地域性という枠組みででき上がった、現状における公共図書館から、電子図書館というサービスに持ち込むのは大変じゃないかと思っていますので、そういう仕事がまず出版デジタル機構の仕事だと思っています。
 これは、3月中に1回発足して、4月2日、現段階では出版社の出資だけででき上がっていますが、産業革新機構から150億円の出資が決定しておりまして、これにあわせて、大日本印刷様、凸版印刷様からの出資も決定しております。これに関しては、5月早々に新たな出資を踏まえる形で新しい会社形態をスタートしたいと思っておりますが、現状においては、出版社によって、まずつくり上げました。そして、つくった形について、是非応援してくださいという形で出資を求めました。
 出版デジタル機構が実現したい5年後の姿ですが、とりあえず5年間で100万冊、100万タイトルの電子書籍コンテンツは必要じゃないかと思っています。数え方はいろいろあるのですが、現状において一番多く数えても20万。それは、写真とかコミックを含めて20万。しかも、それにかなりダブりがあります。大手の電子書籍が5万冊くらいかと思います。特に、その中の文字物を中心とすると3万強じゃないかと思います。この辺の数え方は明確ではありません。
 ただ、この四半世紀、25年から30年を考えて出版界がつくり上げた本は、書籍だけで200万タイトルぐらいあります。日本書籍総目録というデータベースには、出版社が全部スクリーニングして目録に載せているのが90万点あると言われています。だけれども、品切れ、絶版がその半分ぐらいあって、50万点ぐらいしか流通していないと言われています。毎年8万冊の本ができているのに、流通するのは50万点しかない。それは当然、書店に置ける棚の面積とか幅が決まっているわけです。
 一番わかりやすいのは、日本の方は教養新書のジャンルを大変好みますが、各出版社の書店における棚幅が決まっているので、新刊を出した分だけ棚から抜くのです。それは、ほとんど品切れ、絶版に落ちていく。文芸とかは、ある程度ロングセラーとして在庫を抱えますが、新書というのは棚になければなかなか回らないので、新刊を出せば出すほど品切れ、絶版をつくり続けなければいけない。これは、ある種物理的な紙の宿命ですね。  これを、電子書籍をつくることでシームレスに、つまり一度つくった本は品切れにならないということを実現したいということです。これは事実上、ある種電子図書館的な役割も担えると思っています。ですから、一つの目標として100万冊。
 その次の目標として10%としたのは、今、2兆円という市場があるならば、2,000億円くらいの市場創出を考えたい。2,000億円というのは、当然ゼロサムであってはならなくて、プラスサムでなければならない。これは、紙と電子のカニバリズムのようなことをよく言われますが、むしろ今の傾向から見ると、紙の本を有効に使うために電子というものが使われるのではないか。
 電子新聞サービスなどもそうであるように、電子データがあることによって紙の書籍との役割分担がうまく担える。最初に紙の本で線を引きながら読むけれども、先々へ行って個人的ストアが電子になるとか、幾つものサービスが今後考えられると思います。そういうサービスに対する背景を準備することで、プラスサムで2,000億円と考えました。  最後に1という数字があるのですが、日本国民は1億1,000万人とか2,000万人ですが、1人から出版活動ができなければいけないと思います。インターネット社会がだれでも発言できると言いながら、果たして発言することだけでビジネスになっているかというと、なかなか難しいですね。私もブログとかソーシャルネットで書いたり、写真を上げることはできても、それそのものを有料なビジネスとしてコンテンツ、例えば書き手が著述業であるとか出版活動をビジネスとするという枠組みがなかなかできない。ただ、出版活動というのはたった一人でもできる。紙の本がそういうものがあったとしたら、電子では更に推し進めていきたいと思うわけです。
 産業の将来を考えたときに、どれほど若い人たちが来ているかということが一つの尺度だと思いますと、この3年間ぐらい、東京都で新たに新刊書店を経営された個人の方はいないという話です。ナショナルチェーンの支店はできますよ。それはあるのですけれども、書店をやりたいと思っても、今、個人が書店をやれるような環境にないのです。古書店はできています。それは、書店ということの将来がとても危ぶまれる状況です。何しろ若い人たちが入ってこないのですから。
 ところが、現状における出版界の売上げというのは、再販制度とか、さまざまな枠組みがありますが、事実上、書店における売上げとほとんど連動してしまっています。書店の将来がないということは、当面において出版界全体の将来像が危ぶまれるのだとしたら、電子書籍あるいは電子、ITという技術によって、紙とリアル、電子を融合することで新たな将来をつくりたい。
 それが、お金はないけれども、アイデアを持っているという人たち、だれでもが電子出版ビジネスに参入していただきたい。そういう場として、ここにはとにかく100万冊の本があるのだから、あとは皆さんのアイデア次第だよということを提案したいと思っています。
 支援として、実際何をやるのかというと、もともと考えたのは日本の出版社は4,000社。アクティビティーがあるのが2,000くらいだと思います。現実に今、電子書籍ビジネスを明確にやっていらっしゃる出版社というのは、電子書籍出版社協会に43社、50社弱です。ところが、代表的な書籍出版社の団体の日本書籍出版協会は500社弱です。ということは、代表的な出版社と言われるところでも、450社ぐらいは電子書籍をつくっていないのです。アクティビティーがある出版社2,000社というと、1,500社くらいは電子書籍に携わっていない。
 この背景はいろいろあるのだけれども、ノウハウもなければ、つくるのも大変だよということなどから、最初は出版デジタル機構がつくりましょう。紙の本を持ってきてくださっても結構です。あるいは、DTPデータから持ってきてくださっても結構です。とにかく我々がつくって、それをちゃんと販売まで責任を持って担いましょうという出版社向けのサービスです。
 とともに、そういうものの先としては、出版社が許諾をとった電子書籍取次さん、書店主さんは、すべて出版社の判断でどこでも出せる体制をつくりましょう。勿論、ここには売りたくないというところがあれば別に売りませんし、ここだけで売ってほしいというところがあれば、そこだけチャネルで押しますし、あるいは私どもは電子図書館だけは是非お願いしたいというのならやります。そういう出版社の意向の中で我々がやるというサービスを考えています。
 それが当初、1、2年続けば、最終的にはすぐにでも出版社自らが電子書籍にできるような環境。これは、印刷会社でも対応できると思っています。日本の書籍出版社は小さな印刷会社と組んでいますから、そういう小さな印刷会社が電子書籍をつくるところまで、体制が2、3年で立ち上がれば、新刊と同時に電子書籍ができ上がるというフローは割と早目にできる。ということで、5年間くらいで電子書籍の環境に行きたい。だから、100万タイトルの紙の書籍の電子化というのをすぐにでもやることで、その制作支援、そして読者に対しては販売促進支援。
 これは、出版社が横断する電子書籍が集まることでさまざまなプロモーションができるのですが、実は今、出版社の皆さんに一生懸命声をかけて多くの賛同をいただいているのですが、今年中にかつて出した新書を全巻復活させようという目標に向けて準備しています。日本の教養というか、知識基盤が新書にあると思っていますが、その新書が圧倒的に手に入らないのだったら、その新書を電子書籍で全部復刊しませんか。復刊してしまえば、そこからの販売はさまざまなあるカテゴリーとかテーマに応じたフェアとかを、電子書店が競争してやってくれるのではないかと思います。
 そういう販売促進支援の後に、データの管理とか売上げ報告とか出版社向けの環境を整備して、その先、最終的には5年の100万はゴールじゃなくてスタートです。あくまでも多くのビジネスとかメディアというものがどう発展したかというと、従来扱っていたコンテンツの延長というのは一時的な話で、そこにしかないサービスとかコンテンツができ上がるまでの橋がかりでしかないのです。まさに架け橋ですから、5年ぐらいすると、電子書籍でしかできないコンテンツというものが充実していくのではないか。それによって市場を拡大したいと考えています。
 済みません、長くなってしまいましたが、以上ですので、御質問等あれば。

○中村会長
 ありがとうございました。では、御意見、御質問のある方は挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。では、株主がおられるから。

○角川委員
 画期的な会社だと思っています。しかも150億円という大きな金が政府から出て、こういうことができるのはすばらしいと思います。今お話がありましたように、出版社は中小・零細ですので、実際自らリアルな書籍、紙の書籍から電子書籍にするのは非常に資金的に困難です。例えば2,000社ある中で結果的に電子書籍出版社協会に入ったのは50社にとどまっております。そういうことで、このデジタル機構が出版界の近代化を下から持ち上げていただくことに意義があるのではないかと思います。
 収益を上げることは、ビジネスモデルとしては、株式会社でありながらなかなか難しいと思いますけれども、政府もその辺は是非長い目で、温かい目で見ていただいて、この出版デジタル機構が短命で終わらないように持続的な支援をお願いしたいと思います。
 それで、私は電子書籍の普及が日本で十分でないのは、まだインフラが十分ではないからだと思っていまして、そのインフラができるためには、黒船であるAmazonやAppleやGoogleも受け入れなければいけないと思っています。その中で日本の立場というものをきちっと主張し続ける、こういう会社があれば、出版界の電子書籍時代の健全な育成になると思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。

○中村会長
 ありがとうございます。どうぞ。

○別所委員
 済みません、聞き逃したのかもしれないのですけれども、今日、この御説明があったというのは、つまりこれが本体の私たちの話している骨子と何らかの大きな関連性があるということだと思うのですけれども、ごめんなさい、私だけが把握できていないのかもしれないですが、私たちの骨子とのリンケージというか、関連性を事務局の方から御説明いただけると本意がよくわかるかなと思ったのです。それが1つ。
 それから、ありがとうございます。お話、非常に画期的なことだと思うのですが、私自身はショートフィルムとか映画の世界に関わっていて、日本の子どもたちが映画館で映画を見る、あるいは映画から何かを学ぶことがなくなっているのは、ひとえに小さいときから映画を見る環境づくりが日本はないからだと思っています。フランスなどですと、何度もこの委員会で言っていますが、小学校から映画祭で小学校審査員というものを、暴力描写や性描写も含めたガイドラインをつけて実施しています。
 つまり、メディアリテラシーを含めて、未来の子どもたちがどういうふうに情報や映像に関わるかということを教えていくわけですけれども、このサービスもそうなのですが、私たちが議論している電子教科書の世界とどのように関係性を持っていくのか。そこがなければ、幾ら100万タイトルを紙から変えただけでも、ニーズに合った人たち、今の端末を使っている世代の人がそのターゲット層でなければ、多分リーチしないと思います。ですから、垂直志向ではないとおっしゃったのだけれども、ハードメーカーとどのように連携をとった電子書籍化を目指すのか。
 それから、ソフトの業界でも、いわゆる自炊が問題になっているような、今ある既存の紙媒体を、ただと言うと語弊があるかもしれませんが、電子化するということを5年間一生懸命やっただけでは、勝手な言い方かもしれませんけれども、電子書籍の世界は次のステージに行ってしまっていると思います。つまり、動画とか音声とか、既にボーンデジタルという言葉もこの委員会で何度か出てきているのですが、今ある紙を出版社の皆さんと一生懸命連携して電子化したことの次にある、新しいスタイルの電子書籍発のコンテンツづくりというものに対して、どのように国家戦略が練られ、御説明のあった団体などとの連携がとれるのかということがかぎを握るのではないかなと個人的には思いました。

○中村会長
 前半について。

○木村参事官
 失礼しました。出版デジタル機構と骨子との関係ということで御指摘があったので、その点を御説明したいと思います。
 今回、まとめてございます知財計画2012の骨子の中のデジタル・ネットワークの関係でございますが、特に27ページ目以降でございます。(ロ)電子書籍の本格的な市場形成及びコンテンツのアーカイブ化の中で、28ページの上に、ボーンデジタルを含む電子書籍の基盤形成を図るため、民間事業者による協同の取組に対する支援を通じて、著作物のデジタル化あるいはコンテンツ流通を促進するということがございます。こういった、いわば民間事業者による協同の取組みに対する支援ということ、まさしく出版デジタル機構の取組みが進んできているということで、この知財計画2012の骨子の趣旨を進めるものになっているのではないかということでございます。

○中村会長
 ありがとうございます。どうぞ。

○久夛良木委員
 すばらしいプレゼンテーションをどうもありがとうございました。理念はすごくすばらしくて、よくわかったのですが、1つわからないことがあります。
 まず、150億円というのはとてつもなく大きな金額だと思うのですが、これは何のために使われるのかということ。その一方で、この金額はバランスシート上に乗るものなのでしょうか。つまり、出版デジタル機構上に150億円+αのバランスシートがあるのか。それとも、これはオペレーションの中でどんどん何かに変わっていくものなのかということがよくわからなくて、さっきの別所委員の質問とあわせて、一体これがどういう形で回っていくのか。今後、ボーンデジタルのコンテンツを据える中で、この150億円はある意味で税金から来ているので、これがどうなっていくのかを端的に御説明いただきたいと思います。

○植村氏
 まず、今の質問からですが、150億円というのは、その多くは電子書籍を制作する、現状においては100万冊という電子書籍を、値段幅はいろいろあるのですが、普通3万円とか5万円と言われるのですが、仮に1万円だとしても100億円になってしまうのです。100万冊をつくろうとしたときに、圧倒的に品切れになっている本を電子書籍として持つのは、まさに国民の知的財産です。それが図書館に実際行っていただくとわかるのですけれども、ほとんど閉架の中に埋まっています。渋谷区立図書館でどのぐらいの本が並ぶか、20万冊ぐらいしかないのです。本は、圧倒的に私たちがアクセスできないのです。
 それをとにかく電子書籍に1回つくるための経費として100億円くらい。我々がつくったのは、我々がある種販売権を持ったものですので、それを販売することで制作費のもとがとれたときには出版社にお返しするということです。ですから、私たちの投資でつくった電子書籍を、一時的に私どもが専売的に売らさせていただいて、これは図書館とかさまざまなところに売れますので、売った結果として制作費の元が取れた段階で、それらはすべて出版社にお返ししようと考えています。ですから、当面においては、電子書籍をつくる制作費が一番かかる。
 なぜ100万かというと、さっきも言ったように、今、米国と比較したら、勝負にならないくらい冊数が違うのです。私どもは、先ほど別所先生がおっしゃられたように、ここにも書きました。電子書籍ならではのコンテンツができなければ、市場拡大はないと思います。だけれども、その手前として、明らかに勝負がないほど差があり過ぎる。現状において、3万、4万と、米国においてAmazonの100万冊を準備したことにおいては、とにかくまず数をそろえると、それなりに多くのプレーヤーや読者が来ることによって、市場がテイクオフするでしょう。テイクオフしたら、あとは上昇気流に乗るのは皆さん方のさまざまなコンテンツとかビジネスだと思います。
 それの有力なのは、御指摘いただいたように、例えばデジタル教科書だと思います。デジタル教科書というのは、長年の教育の知見の上に立つ、デジタルならではの教科書。こういうものを次に支援するので、先ほど100万冊はスタートですと申し上げたのは、その準備としてやるだけであって、ビジネスはすべてそうですけれども、今あることをやることによって、常にビジネスのあり方を変えていくことでしか5年後はないと思います。facebookでもGoogleでも、今の形を想像して会社をつくったと思っていなくて、常に見直していくことによって、出版デジタル機構はありようを変え続けたいと思っています。
 現状においては、とにかく滑走路から離陸するために、まず100万冊をつくってしまいましょう。そこから先に関しては、新たなコンテンツづくりの環境という基盤をつくりたいと考えています。答えになりましたでしょうか。

○中村会長
 ありがとうございます。どうぞ。

○久夛良木委員
 つまり、出版デジタル機構が電子書籍のフォーマットをして、そのプロモーションも含めていろいろ働きかけていただくでしょうから、利用価値が高まるということだと思います。しかし、ユーザーからすればメディアが違うだけで、そのコンテンツそのものの価値は変わらないわけです。ですから、これによる利用価値の向上というものが何年かの間にジャスティファイされないと、この事業そのものがなかなか難しくなると理解してよろしいですか。

○植村氏
 そう思います。そもそもデジタル教科書の議論でそうであるように、教育の知見は盛り込まれているけれども、それは紙でできなかったものをどうつくるかという議論があってでき上がるように、今のところ、文芸にしろ、日本はすごく実用書が多い。もっと言うと、世界の中で日本の書籍は最もレイアウトが強いのです。それは、多分表意文化で、欧米のようなアルファベティカルな表音ではなくて、日本はレイアウトにとても強くて、漢字とかの認識がすごく高いということで、日本の書籍を外国の方に見せると雑誌だと思ってしまうのです。それくらい、見開きとか実用書をレイアウトで見せるのにとても強いのです。
 それは、多分マルチメディア的なセンスに行くのだと思います。それに携わってきた編集者とかノウハウを、その先のマルチメディア的なビジネスに参入する人が移っていかなければ、将来はないと思います。ですから、紙をただ電子にするのは、極めて一時的な今の方策であって、そこから先に皆さん方が例えばマルチメディアコンテンツをどううまく、本というもの、あるいは物語に持ち込むかということが勝負どころかな。そこに対する支援はあると思っていますが、ストレートに我々が何かつくりましょう、さあ、こういうものをやりましょうということではない。

○中村会長
 どうぞ。

○別所委員
 これはお願いなのですけれども、私たちも電子書籍化という言葉の定義づけを、いろいろな形でここに集まっている方がお持ちだと思うのですが、既存の書籍のデジタル化、データ化ということと、今の21世紀における電子書籍を新たに生み出していくのだという、もうちょっとプラットフォーム寄りな、あるいは新たな出版の21世紀のリボーンみたいなこととは、少しニュアンスが違う。勿論、御理解されての事業展開だと思うのですが、私としてはいわゆる既存のデータのデジタル化、データ化という意味での書籍のデータ化というのは、勿論必要だと思うのです。
 鶏と卵だと思うのですが、今となっては、世界は次のステージに向かっていると思っていますし、現実にそちらに行ってしまっていて、勿論ゲームとも合流する。私のやっているショートフィルムとも合流する。ですので、情報コンテンツの未来の形としての電子書籍という部分の軸足を、潤沢な資金でどう国策として推進できるのかというのを、国がどう推し進めるのかということも含めてなのですが、開放区といか、それこそ特区になるような、若者が参入できて、自由に漫画でもゲームでも何でもいいのです。それを電子書籍がある種受けとめながらつくられるような環境に、御社がなるといいなと思っておりました。

○植村氏
 お願いごとをちょっと忘れました。二つか三つ、簡単に。
 やっていく私たちがすぐできないことは何か。出版社が著作権者の方と電子書籍の契約をすること。これは我々のやる仕事じゃなくて、まさに出版社の人なのですが、これが実はなかなかはかどらない。
 もう一つは、フリーにだれでもつくれるのですが、優良なコンテンツを自由につくり上げる方策がなかなか整っていないと思います。
 もう一つは、売上げを報告しようと思ったときに、著作権者がオーファンにどんどんなっていって、だれがどこにいるのかよくわからない。つまり、こういう時代ですから、しっかりした著作権データベースができ上がれば、オーファンブックスはいい形じゃないと思います。著作権者がわかれば、ちゃんとお支払いすることがいいことだと思うので、そういうことの充実というのを我々は支援できると思うのですが、我々が先頭に立ってやるわけにもいかない。著作権者の先生方がつくりたいという中で支援する。この辺は、是非お力添えをいただきたいと思います。
 その上で、御指摘のとおり、我々が紙の本をとりあえずやるのは、実は値段が決まっていて読者が買うという意識があるのは、まだこの辺にとどまっているのだと思います。一方、すごくおもしろいのは、無料でさまざまなものが向こう側で回っているのだけれども、お金を払うというと、ある有名な作家の本が1,800円で、電子書籍は半値で900円だったら買うという値付けは今のところ成立するのですが、全く何もなく、だれかがつくったときに900円という値付けにみんなが納得する方に向かっていない。
 あくまでも架け橋ですので、今のところ値付けというのは紙を利用するしかない、紙を担保するしかないという現実を、ボーンデジタルに対してお金を払える環境に早く移りたいと思っております。そこに対して、皆さん方のアイデアとかをいただきたいので、御尽力をよろしくお願いしたいと思います。

○中村会長
 ありがとうございます。本件について、関係省庁から何かコメントありますか。伊吹さん、お願いします。

○伊吹課長
 出版デジタル機構自体は、経産省だけじゃなくて、実は総務省から非常に大きな支援を得ています。それから、文化庁も入っていただいて三省懇というものがありましたけれども、そこから日本の電子出版の市場をそもそもどうやってつくるか。最初、立ち上げなければいけないということが1つ。それから、今、植村先生のお話にもありましたけれども、コストセンターのコストをどうやって日本でミニマイズするかというのが一つの大きな視点だと思います。
 いろいろ委員の方から御指摘いただいているように、このビジネスを拡大させていく出発点にようやく立ったということですので、既存の書籍をどうやって電子化していくかということに加えて、植村さんのプレゼンの中にもありましたけれども、書籍とか映像という区分けがあるコンテンツの世界が、電子になるとだんだん薄れて統合されていく世界になっていくと思います。そこが次のどうやって闘って勝っていくかというところだと思います。出ていく基盤は、とりあえずマッチングできたかなというのが、今、省庁側が考えているところです。

○中村会長
 植村様、お忙しいところ、どうもありがとうございました。大きな成果を上げていただきますように期待しております。この後も時間がございましたら、引き続き会議に御参加いただければと思います。
 では、次にクールジャパン推進の取組について議論を行います。今日は話題がたくさんあるのですけれども、押しておりますので、スピードアップしてまいります。クールジャパンについては、昨年度行われた第4回会合において、関係府省からそれぞれ取組を御説明いただいたのですが、その後、年度も改まりましたので、各府省から昨年度の取組に関する最終報告と、今年度の取組の予定について、それぞれ御説明いただければと思います。  その際、昨年度の取組については、東日本大震災への対応も含めて説明していただくとともに、今年度の取組については、準備会議を含めて、この専門調査会で、特に知財計画2012の重要事項とされたコンテンツの海外展開、及びインバウンド推進の観点を中心に御説明いただきたいと思います。
 まず、知財事務局からお願いします。

○筬島企画官
 知財事務局でございます。資料でございますけれども、横長の資料2をごらんいただきたいと思います。これは、各府省分も含めてとじてございます。ページの右下隅に通し番号を振ってございますけれども、表紙をめくっていただきまして1ページ目がクールジャパンの全体像でございます。
 中表紙がございまして、通し番号2ページから内閣官房知財事務局の方の資料になってございます。クールジャパンを活用した日本ブランド復興キャンペーンについての御報告でございまして、国内外のイベントでの発信、及び海外メディアを活用した発信を行ってございます。おかげさまで、3月末をもちまして、関係府省、関係機関、また国家戦略室のサポートをいただきまして、無事に事業の方を終了してございます。
 具体的には、通し番号3ページ、①海外イベントの結果概要ということでございまして、世界16か国で20のイベントを実施しまして、延べで約22万人の来場をいただきました。また、数多くのメディアの露出の方も行ってございます。後ほどダイジェストのビデオの方を上映したいと考えてございます。
 また、飛んで14ページでございますけれども、各イベントでの来場者のアンケートの結果を示してございまして、すべてで良好な反応を得ておるということでございます。  また、3ページの右下でございますけれども、中国で3つのイベントを行ってございます。このうちの北京の2つのイベントにつきまして、6ページから13ページまで、当日の写真等も含めまして報告を別途盛り込んでございます。こちらは、後ほど角川委員、別所委員の方からもコメントをちょうだいしたいと考えてございます。
 4ページ、②海外メディアを活用したクールジャパン発信事業の結果概要でございますけれども、米国と中国でテレビのスポットCM、おのおの約200本ずつでございます。プラス、雑誌を3つ枠を書いておりまして、クールジャパンの広告を掲載したということでございます。
 具体的にこちらを配ってございますけれども、「環球」を中国で発行してございます。このページにも小さくなってございますけれども、15ページでございます。これは日本のファッション雑誌の例の中国版を見開きで広告を出したということでございます。
 また、16ページが米国の「TIME」の見開きの広告でございまして、千住博さんを中心に日本のコンテンツ等の紹介を行ったということでございます。
 また、先ほどテレビCM、スポットの方をお話しましたけれども、スポットの内容は16ページの千住博さんの見開きの広告をベースにしまして、動画にしてスポットCM化したということでございます。
 お戻りいただきまして、5ページ、国内イベントを活用したクールジャパン発信事業の結果概要ということでございまして、3つの会場でイベントを行ってございます。延べで23,000人の外国人の来場がございました。
 資料は以上でございますけれども、引き続きまして、海外イベントのダイジェストのビデオ、4分程度のものをごらんいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 (ビデオ)
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。これに御参加なさった角川委員、別所委員からコメントをちょうだいできればと思います。

○角川委員
 先般、このビデオにありましたように、中国・北京に行ってまいりました。日中両国の関係をコンテンツを軸に深めていくという政府の方針に基づいて、日本のコンテンツのあり方をきちんと中国側に伝えてほしいという依頼を内閣官房から受け、コンテンツが経済をつくる、コンテンツエコノミーというテーマのもとで20分ほど講演を行いました。
 土曜日開催のイベントには、中国では人が集まらないと言われておりますけれども、オープニングから最後のレセプションまで参加者がほとんど減ることなく、コンテンツ産業、生活文化産業への関心がとても高いということを実感しました。私の講演の最中も、画面に投影されたプレゼン資料をデジタルカメラで写真を撮る姿が幾つもございました。私の講演資料は、別冊資料で用意してございますので、後で時間があったらごらんになっていただきたいと思います。
 中国の方は、コンテンツ産業や知的財産権は余り詳しくないのではないかと思っていましたら、実は逆に中国の方がよく知っているということがわかって驚かされた部分がありました。世界のコンテンツ市場において、アメリカは40%、日本は13~14%のシェアを占めていると言われていますけれども、そういうことも中国の人は知っています。そして、中国政府の高官は、自分の国のシェアは3%にとどまっているということを自覚しています。
 それでも、御存じのとおり、中国で漫画を出版しようと思っても、年に4点から5点程度の作品しか認められておりません。その中でも、例えば角川コミックスの「新世紀エヴァンゲリオン」が申請から半年で認可されたというのは、異例だと言われています。また、映画に至っては、外国映画として昨年度、従来の20タイトルに14タイトルが加味されて34タイトルになりましたけれども、そのうち日本映画はゼロでした。中国は、コンテンツ産業を詳しくわかっていながら日本のコンテンツに対して戦略的に門戸を閉ざしている、開放していないということを実感しました。このことは、非常に今後難しいハードな交渉が待っているということだと思います。
 日本の消費者は、GDPの15%をエンターテインメントに使っていますけれども、中国は3%から4%だということも中国人から説明がありました。中国国内でコンテンツを育成すれば、伸びしろが大きい。さらに、中国と日本が一緒になってアジアにコンテンツを展開していけば、大きなチャンスだということも中国から言われて、そのとおりだと私も思いました。コンテンツは多様性が大事ですから、私は表現の自由を是非認めてほしいということも主張しました。そして、同時に海賊版を取り締まり、著作権の保護に力を入れてほしいとお願いしてきました。
 このような取組を中国政府のおひざもとである北京で成功裏に終えたことは、とても有意義だと思っています。メッセージを送り続けることが大事だと思いますので、来年、再来年と是非継続していただきたいと思っております。
 以上です。

○中村会長
 ありがとうございます。別所さん、お願いします。

○別所委員
 私の方は、3月16日金曜日、この資料の11ページから13ページにありますが、日中文化交流フェスティバルというものに参加させていただきました。北京電影学院というのは、実は私どものショートショートフィルムフェスティバルという国際短編映画祭の方にも毎年作品が短編映画として送られてくる学校でもありますが、今回はそれとは関係ない形でお呼びいただきまして、実際に参加させていただきました。
 私の率直な、感覚的なことだけ先に申し上げますと、作品が流されたのは「ももへの手紙」という、今週公開される日本のアニメ。優香さんとか西田敏行さんが声で出演されているアニメーションの作品なのですけれども、この長編映画を中国の学生さんたちが本当に楽しく、笑ったり、泣いたり、拍手をしたり。要するに、日本がつくった作品が持っているユーモアとか笑いのセンス、それから感動に持っていく物語のつくり方が、専門で勉強している中国で精鋭のクリエーターの卵たちの心に刺さっているのだなと実感できるイベントでありました。
 同時に、今の紹介フィルムの中にあったのかもしれませんが、中国の学生が京都に来て、京都で制作したという、ショートフィルムのドキュメンタリー的な映像も流されました。これは、ここに参加された早稲田大学の教授でもいらっしゃる安藤先生を含め、日本で中国の方々の撮影を援助しながら制作するというスタイルでした。こういう交流が、技術的にも、あるいは考え方としても、お互いがお互いを知る機会になっていると感じました。
 若干課題だなと思うのが、私自身、まだ質問していないのですけれども、現地でこれがどのように反響を呼んで、学生たちからどう広がっていったのか。メディアを含め、いろいろな方々が取り上げてくれていたらいいなとか、あるいは現地では外務省の方とはお会いできなかったのですけれども、外務省とか、現地でプレゼンしている日本側の方々との具体的な交流がとれていたら、更に面的な強さを持ったのではないか。
 個人的に思ったことはたくさんありましたが、実際に参加して非常に体感できることがたくさんありましたし、角川委員もおっしゃっていましたが、一時的なことにならず、継続的にいろいろな形で世界とつながっていくものになったらいいなと感じております。
 どうぞ。

○中村会長
 ありがとうございました。先ほどの映像には谷口委員も映っていましたけれども、コメントをいただいているのですね。御紹介いただけますか。

○筬島企画官 では、代読させていただきます。谷口委員からのコメントでございます。  北京のシンポジウムは、大変貴重な経験をさせていただきました。日本から御参加のお歴々の中で、私だけ軽量級でいいのだろうかとの懸念を抱いての参加でしたが、結果的には中国側の皆さんも随分と熱心に聴講していただき、また懇親会などの機会にもいろいろな方と意見交換ができ、有意義な時間でした。このような機会を継続的に持つことの必要性を感じました。
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございます。国家戦略室からございますでしょうか。

○小田企画調整官
 国家戦略室の小田でございます。私ども、政府の成長戦略を取りまとめるという観点からも、このクールジャパンの推進を国家戦略の重要なものの一つと位置づけて、知財事務局との連携を強化させていただいているところでございます。
 今回、事務局が実施しました一連のイベントというものは、言うまでもなく、昨年の震災・原発事故後の風評被害を回避して、日本の魅力を幅広く諸外国に伝えるという意味で、大きな役割を果たしていただけたと思いますし、特に3.11から1年が経とうとしている時期に、世界が改めて日本に関心を持つこの時期に、海外・国内でのイベント、または海外でのメディアバイイングというものを集中的に実施できたことに、とても大きな意義を感じております。
 改めて成長戦略の取りまとめ役としての国家戦略室の指摘でございますが、これまでも知財事務局の方には、常に実施するイベントが単発にならないように、二の矢、三の矢を考えて是非実施していただきたいというお願いをしてきたところです。例えば海外でイベントを実施しても、そこに参加できる人はどうしても限られた人数でありますので、せっかくすばらしいコンテンツ、先ほど映像でも御紹介いただいたようなコンテンツを、会場に来られなかった人も後日、例えばYouTubeで見られるようにする。
 あるいは、CMや広告でクールな格好いい日本の印象を売り込むだけにとどまらず、その広告の最後にさまざまな情報をつけることを通じて、次には、どこに行けばよりクールな日本を知ることができるのか、あるいは体感できるのかという、次のアクションにつながるようなイベントにしていただきたいということで、それをうまく実施していただけたのではないかなと思っております。
 今後、政府としては、3.11から1年で日本に対する関心は高まったのですが、世界の関心がそこからどんどん低下していってしまうということでは、とても残念なことでありますので、よい意味での関心が継続できるよう、こうした海外への情報発信とかマーケティング、あるいは関係者の皆さんの組織化などを推進していきたいと思っております。
 3月1日には、全省庁や関係機関が参加する国際広報連絡会議という会議を立ち上げました。これは、単に会議で議論するだけではなくて、実際に日本のブランドを広く具体化して、日本経済の成長にもつなげていくように、しっかりとした連携体制をつくって、スピード感を持って成果を具体的に出していくという会議にしていきたいと思っております。
 後ほど広報室の方からも紹介があるかもしれませんが、例えば今年は5月の沖縄での島サミットとか、10月に東京であるIMF、世銀の総会、あるいは12月には福島において原子力安全に関する国際会議などもありまして、そうした日本から発信できるようなさまざまな機会もございます。こうした機会をきっちり使って発信していけたらなと思っております。  以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございます。はい。

○筬島企画官
 別所委員の御質問につきまして、若干補足いたします。
 先ほどの資料の3ページで、全部でテレビ・ラジオ20番組、新聞・雑誌74紙、Web627サイトで取り上げられておりますけれども、中国につきましても多くの取材を受けてございます。また、雑誌につきましては、発刊の関係でこれに含まれていないものも若干ございますので、最終的にはこれよりも多くの露出等があると考えてございます。
 また、外務省の連携も得まして、多くのイベントに在外公館の方から御出席いただきました。そういった意味で、在外公館を含めてのイベントになったと考えてございます。  以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございます。引き続き、各省からの説明をお願いしたいと思いますが、まず総務省及び経済産業省からコンテンツの海外展開を中心に御説明いただきます。次に、地域活性化統合事務局からインバウンド施策であるコンテンツ特区について説明をいただいた後、内閣広報室、外務省、文化庁、農林水産省、観光庁の順に、各府省三、四分をめどに御説明をいただきたいと思います。では、総務省から順にお願いします。

○竹村課長
 総務省ですが、資料の17ページから説明させていただきます。総務省のこれまでの主な取組でございますけれども、1つの柱としては、海外展開のための環境整備ということ。それから、環境整備から一歩踏み込んだコンテンツの海外発信を支援していくことに取り組んでございます。
 環境整備につきましては、1つは、放送コンテンツを海外に展開していく際にネックになっております権利処理の円滑化に取り組んでございます。これは3年計画の事業で取り組んでおりまして、昨年では2年目の施策ということで実現したところでございます。それから、海外展開に関する実演家の権利処理のガイドラインを策定いたしました。
 2番目がコンテンツ不正流通対策ということで、特に中国などで、日本のドラマが放映された翌々日ぐらいには、もうネットにアップされているという現状がございます。こういった現状に対処するために、放送事業者、実演家団体の方と一緒に中国に行ってまいりまして、中国のラテ総局、版権局、動画サイト運営事業者の方々と意見交換をしてまいりました。彼らの意見でも、正規コンテンツを出していただければ海賊版も取り締まれるということで、両者を一体的に進めることが必要ということで、今後検討していきたいと思っております。
 3番目は、先ほど角川会長からもありましたけれども、海外でコンテンツ規制が強い地域があるということで、これは各省庁と連携して粘り強く交渉していきたいということでございます。
 それから、コンテンツの海外発信強化につきまして、1つは地域コンテンツの海外展開。それから、昨年度は震災復興に係る海外への情報発信強化ということで、テレビ国際放送とか国際共同製作を通じて海外ヘの情報発信に取り組んだところでございます。
 次の18ページをごらんください。平成23年度の第3次補正予算におきまして、国際放送を通じた風評被害対策。それから、海外メディアと国内放送事業者とマッチングをいたしまして国際共同製作をして、海外メディアを通じて情報発信していくことに取り組んだところでございます。これは予算を繰り越してございますので、まだ現在進行形でございますが、今年2月に映像コンテンツの企画公募を行いまして、非常に大きな反響がございました。合計420件の応募がございまして、29件を選定いたしまして、この企画に基づいて番組の製作・発信に取り組んでいるところでございます。
 19ページが国際放送のイメージでございます。NHKワールドという国際放送のインフラがございまして、世界130か国、1億4,000万世帯で視聴可能になっております。そこに日本国際放送の枠を買い上げまして、そこで放送局、または番組製作会社によって製作したドキュメンタリー番組などを流しました。これは30分の枠でございますけれども、そのCM枠がございまして、ここで各省庁がつくったPR映像などを放映いたしました。これは、知財事務局を始め、外務省、観光庁、各省に御協力いただきまして、政府としてのPRをこの枠で行ったということでございます。
 20ページは、国際共同製作のビジネスマッチングを促進するためのイベントを行いました。これは、海外でドキュメンタリー番組を製作するときなどにプレゼンテーションを製作者側が行いまして、海外のメディアとかコンテンツバイヤーの方が、その企画のプレゼンを見てお金を出すということが一般的になっているわけでございますが、日本で初めて本格的なこういったピッチング・セッションを開催したところでございます。3月に汐留の方で行いまして、海外から非常に多くの方が参加され、特に震災特別ピッチング・セッションというのを設けまして、震災復興をテーマとした映像コンテンツの国際共同製作のマッチングを実施したところでございます。
 それから、これからの取組でございますが、21ページをごらんください。こういった国際放送とか国際共同製作などの取組を一過性のものに終わらせずに、継続して取り組んでいきたいと考えてございます。ここに書いてありますとおり、今後の課題につきまして、官民が連携して取り組む場が必要だろうということで、コンテンツ海外展開協議会というものを今年3月から開催いたしております。
 次の22ページに構成員が書いてございますけれども、放送局、製作会社、広告代理店、商社という関係者のほかに、オブザーバーとして関係省庁が参加いただきまして検討しているところでございます。ここに書いてございませんけれども、協議会の座長は中村先生にお願いいたしておりまして、ここでの検討結果をクールジャパン戦略にも是非反映していきたいと考えてございます。
 以上でございます。

○中村会長
 では、経済産業省。

○渡辺課長
 経済産業省でございます。
 23ページをごらんいただきたいと思います。去年5月にクールジャパンの官民有識者会議で提言を取りまとめいただきました。資生堂の福原会長、松岡正剛さんを中心に有識者の方に入っていただいて、関係省庁も入って、これをどうやってビジネスにしていくかという観点から提言をまとめていただきました。
 政策の柱は4つございまして、1つは、日本のブランドの強力な発信。それから、東日本の復興。それから、創造基盤といいますか、地域の活性化をしていこう。それから、大きな柱は、4番目の海外展開ということでございます。昨年5月にまとめていただきました。これに基づいて、23年度は具体的な事業を実施してきたということでございます。
 24ページをごらんいただきますと、世界でクールジャパンの分野で販路開拓の事業をやってまいりました。全部で13事業ございまして、中国、東南アジアを始め、アジアの国々、それから新興国のインド、ブラジル、欧米ということで、分野は、食、コンテンツ、ファッション、テキスタイルがあるということでございます。
 B to Cのイベント、それからB to Bの商談会等をやりながら、現地でのビジネスパートナーを見つけることが目的の事業でございます。一つひとつ事業の成果を評価いたしまして、何人来たのか、幾ら売れたのか。
 一番大事なのは、海外のパートナーが見つかったのかどうかを評価して、中間評価でございますけれども、私どものホームページに一つひとつの事業について掲載させていただいております。
 それから、25ページでございますけれども、そもそも日本というものをどうやってとらえるかということで、松岡正剛先生を中心にコンセプトブックをつくっていただきました。  それから、26ページは、いろいろなクリエーターの方に御協力いただいて発信サイトをつくりました。
 27ページは、クールジャパンということでアイデアコンテストもいたしました。
 28ページは、一例でございますけれども、伝統工芸の分野で海外への発信と売り込みをやったということでございます。ニューヨーク、パリで展示会をさせていただきまして、真ん中にございますように、クリエーターの方に目利きになっていただいて、日本各地の工芸品を選んでいただいたということでございます。
 29ページは、コンテンツの海外展開ファンド、ANEWの設立ということでございます。これは、つい先日、新しいCEOが決まりましたので、本調査会におきましても機会がもしありましたら、CEOの方を是非御紹介させていただきたいと思っております。
 それから、30ページは、後ほど説明があるかと思いますが、札幌のコンテンツ特区ということでございます。ロケ地のロケ撮影に伴う撮影許可とか、よりやりやすい仕組みをつくっているところでございます。
 今年度の事業について、紙がついておりませんけれども、私ども、2月からクールジャパン官民有識者会議を再開いたしまして、枝野大臣を中心に関係省庁に入っていただいて、更に次のステップを議論しているところでございます。3つぐらい柱を考えておりまして、去年、いろいろな事業をやって、種まきといいますか、いろいろなところで芽が出た感じはしているのですけれども、次のステップで、大きく稼ぐモデルをどうやってつくっていくかが課題だと思っております。
 3つぐらい考えておりまして、1つは、コンテンツと消費財の掛け合わせをつくるということでございます。3月に私どもの会議室を使いまして、コンテンツを持っておられる会社の方、片方で消費財、食品とか家電とかスポンサーになり得る企業の方にお集まりいただきました。コンテンツ企業53社、スポンサー候補36社、計200名を超える方に参加いただきまして、ビジネスマッチング。先ほど総務省のお話にありましたようなピッチングをやりました。
 大変反響がよくて、アンケートをとらせていただいて、このコンテンツ企業、こっちのパートナー企業、相思相愛になる組がどれだけあるかを私ども、整理いたしまして、今、このチームでインドへ行こうとかインドネシアに行こうという個別のマッチングをやって、コンソーシアムづくりをやっているところでございます。いいチームができれば、今年度の事業でも後押しをしたいと思っております。同じようなことを、商業施設と、そこに入り得る、食とかアパレルとか伝統工芸、いろいろなテナント候補になる方とのマッチングも、今週火曜日に開催する予定でございます。
 3番目は、地域の資源をどうやって発掘するかということで、これも今年度、力を入れてやっていきたいと思っております。
 以上です。

○中村会長
 お願いします。

○朝田参事官補佐
 地域活性化統合事務局の朝田と申します。よろしくお願いいたします。私どもの今日お話させていただく話は、先ほど経産省から少し話が出ましたが、札幌において、我々の方で所管させていただいている総合特区という枠組みを使って、いかに札幌の大地を、あるいは魅力的なまちを生かしてロケを誘致するか。そして、海外の観光客を誘致するかという取組が行われておりまして、それを支援する立場から、今日、簡単ではございますが、説明させていただければと思います。
 31ページをごらんいただきたいのですが、そもそも総合特区とは何ぞやというお話があろうかと思います。地域がいろいろ悩んでおります。不景気の中で経済があかん、あるいはその活性化のためにどうしたらいいだろう。中山間地の集落をどう維持したらいいかわからない。
 そういうものについて、これまで規制改革あるいは制度改革という観点だけ、あるいはお金を補助金という形で渡して頑張ってもらうといった、ばらばらに行われていたものを、その取組がすばらしい、あるいは日本の構造を変えていくのではないかという観点で選ばせていただいたからには、規制も財政も税制もトータルで支援していこうという枠組み、仕組みを持っているわけでございます。
 何か地域の活性化をやろうと思ったときに、規制が目的ではないのですけれども、世の中の安全を守るためにある規制を何とか緩和できないか。指定されたら、国と特区、それぞれが規制緩和できる部分がないか。そういうことを国と地方で対等なテーブルで協議する仕組みも持ち合わせているのが、この総合特区という制度でございます。現在、札幌も含めてですが、国と地方で協議を進めているところでございます。
 次のページに札幌市自らがつくられた特区の特徴の資料でございます。繰り返しになるので簡略にしますが、札幌にロケを誘致して、そこの現地の方々の食品、資材、材料を供給する企業。ひいては、ロケ地の観光業といった形で地域の元気につなげていくという話でございます。
 課題として何個か挙げてありますが、代表的なものだけ簡単に御説明します。ロケで海外から来られた映画産業の方々が、ここはいいね、ここでロケをしたいのだという話のときに、本来であれば場所を占用して使うものですから、道路管理者等に許可をいただく話がある。それをいかに効率的に迅速にやるかといった観点を、道路だけではなくて、例えば河川とか公園とか、札幌の持ついろいろな魅力的な土地すべてについて、簡素化・効率化できないかという話の提案がございました。
 現在、国と地方の協議をやっている場で、ロケの誘致があるから何でもかんでもやっていいというわけではなくて、記憶に新しいところでは、渋谷でヒロミ・ゴーがゲリラライブをやって大混乱が起こったように、一定のルールとか折り合いをつけながら、どういうふうにロケ誘致を活性化させていくかといった協議を進めさせていただいているところでございます。
 次、33ページです。実は札幌は、総合特区が去年6月にできて第1次指定を行ったところですが、第2次指定の手続が始まっております。3月末までに、ここに書いてございます国際戦略と地域の2つがあります。御注目いただきたいのは、上の国際でございます。京都府・京都市の連名でコンテンツ産業国際戦略総合特区というものがございます。これは、京都の中に漫画館や映画マニア、勿論時代劇の村がございます。そういった地域の資源を生かしてクロスメディアを展開して海外に向けて元気になっていくといった話でございます。
 この3月末に受け付けたものについて、既に評価手続に入っておりまして、予定では7月末までに客観的、透明性を確保した評価を行った上で、指定する、指定しないといった結論を出していきたいと思っております。大変申しわけございませんが、まだ評価の段階ということで、私の口から評価の話を詳細に述べることは御勘弁いただきたいのですが、既に京都を含めた11個の特区について、私どものホームページで申請書等は公表しております。かつ、御意見等があればということで御意見募集のページも設けておりますので、是非見ていただければと思います。
 説明、以上になります。

○中村会長
 広報室。

○加治参事官
 内閣官房内閣広報室の加治でございます。
 私ども、先ほど国家戦略室からもありましたけれども、国際広報連絡会議というものを3月1日に設定しております。こちらでは、去年4月23日、1年前を思うとどういう状況だったかと申し上げますと、震災の直後で震災に対応するのが精いっぱいである。そういう中で、知財本部とか経産省の皆さん、非常にいろいろな活動をされたというのが今年1年の総括であるかと思います。
 私ども内閣広報室も、ダボス会議等で日本のブランドを発信するという活動はしておりましたけれども、今年1年の反省としましては、それぞれの活動がまだまだ面に広がっていないという別所委員の御指摘のとおりであると思っておりまして、この国際広報連絡会議は、それぞれの活動をより有機的に結び、かつむだなく、効率的に、言うなればスリーディメンションに成長させていくという発想で活動をデザインしようとしております。
 具体的には、5月下旬の島サミット。それから、7月上旬の外務省によります大規模自然災害ハイレベル会議。それから、9月中旬、ダボス会議、サマーダボス。それから、10月中旬、こちらは非常に大きな会議になりますけれども、財務省主催によりますIMF、世銀の総会。それから、1月下旬のダボス会議といった国際会議体。
 それから、視点としてのクールジャパンとかコンテンツの推進といったものを組み合わせて、それぞれの会議でどうやって盛り上げていくかというのをサブグループごとに議論していくということで、実際に関与する省庁、それから事務局としての国家戦略室、外務省、それから内閣官房の内閣広報室が関与していくというところでございます。
 その中で、クールジャパン活動に関しましては、経産省と知財事務局を中心にサブグループを組成しまして、それぞれの国際会議でいかに効率よく告知していくか。そして、その構造を議論していくべく、活動を開始しているところでございます。引き続き御指導のほど、よろしくお願いいたします。

○中村会長
 外務省。

○小野課長
 外務省の小野でございます。外務省のクールジャパン推進に関しまして、簡単に御紹介させていただきます。
 資料はお手元の34ページになりますけれども、以前、この場でも御紹介させていただきましたとおり、昨年度、在外公館をハブということで、11か国13都市でクールジャパンの支援タスクフォースを立ち上げることにしておりまして、既にシンガポールを皮切りに10都市で活動が開始されております。関係省庁間の現場での連携をどういう形で強化していくか、オールジャパンでクールジャパンを含む日本の魅力をいかに発信していくかということの議論が始まっています。
 例えばパリでは、今年の夏、Japan Expoがまた開催されますけれども、それに向けてどう取り組んでいくか。また、ジャカルタでは、秋にジャカルタ日本祭というイベントがございますけれども、それに向けてどのように関係省庁及び関係者が連携していくかといった協議が開始されたところであります。
 また、外務省としましても、クールジャパンの各分野の専門家の方に実際に御参加いただいて、現地に行っていただくというクールジャパン発信事業というものも行ってきておりまして、前回、サンフランシスコの和装ブランドの方のファッションショーの話を簡単に御紹介しましたけれども、それ以降でも、こちらに簡単に書いてございますけれども、シンガポールでのアニメや漫画イベント、モスクワでの音楽分野のイベント、ロンドンにファッションデザイナーに行っていただいての活動、ロスでの日本食分野での紹介活動を行ってきております。
 また、大型発信事業を通じた連携例としましては、昨年のJapan Expoに際しまして、外務省として、国際交流基金や経産省、農水省、観光庁と連携しまして出展とか共同記者会見を行いまして、東日本大震災後の風評被害の払拭という点と、日本の文化の魅力を改めて発信するということで取組を実施したところでございます。
 今年度につきましては、引き続きましてタスクフォースを通じた戦略的な日本の情報発信とか、今、簡単に御紹介申し上げたクールジャパンの発信事業といったことも、関係省庁や関係の業界の方々と連携しながら実施していきたいと思っているところでございます。特に外務省として留意していきたいと思っております点は2点ございます。
 1点目としましては、クールジャパンの主役はあくまでも民間の方々でございまして、企業やNGO等の発信を、関係省庁及びJETROとか国際交流基金、JNTOといった関係機関が支えていくという構図が理想的であろうかと思います。外務省としてそこにどういった形で強みを発揮していくかという観点ですと、前回申し上げましたけれども、私ども、大使館や総領事館というネットワークを有しておりますので、そこを関係者が創意工夫を行うプラットフォームということで活用していただきたいと思っております。そういった構図を構築・強化していきたいと思っております。
 2点目に、私どもとして今年度留意していきたいと思っておりますのは、発信というのは、気をつけないと、どうしても一方通行といいますか、押しつけ的な発信になりがちですので、できる限り双方向の交流とか共同作業を通じて、パートナーシップというか、コラボレーションをつくり上げていきたいと思っております。そういった中で、私どもからクールジャパンを発信するのみならず、日本の魅力を相手国側からも口にしてもらうような、うまい仕掛けをつくっていきたいと思っているところであります。
 先ほど官邸国際広報室の方からも御紹介がありましたけれども、私どもも国際広報連絡会議事務局としてまた今年も努力を重ねていきたいと思っております。日本の魅力という観点では、クールジャパンから更に、例えば日本語の学習とか日本の製品を買っていただく、日本に来ていただくという行動につなげるための連鎖反応を起こすよう、是非関係者とも連携を深めながら事業を実施していきたいと思っております。
 そういった観点で、クールジャパン発信事業に加えまして、今年度は先ほども御紹介いただいたような主要な外交行事が非常に多い年でございますので、こういった場をうまく活用して、東北の復興とか日本ブランドを発信する行事を行っていきたいと思っております。まず、皮切りとしまして、6月にリオ+20という大きな環境の会議がございます。こちらはリオデジャネイロで行う会議でございますけれども、その機会に関係者の方々とも協力しながら、東北の復興とか日本の環境分野での優れた取組などを発信していって、クールジャパンも含む日本の総合的な魅力を発信していきたいと思っているところであります。
 以上です。

○中村会長
 文部科学省。

○佐藤課長
 文化庁でございます。
 お手元の35ページ、2011年度の当省の取組につきましては、国内的には優れた文化芸術の拠点を形成するとともに、若手の海外派遣あるいは人材育成を通して、更に海外とネットワークをつなげていくというのが主なところで、長期的に見て、そういう基盤をつくっていくことが当省の主な役割かと思います。それから、海外発信の強化につきましては、基本的には交流年等行事の一環として相手方の政府のコミットメットのあるイベント、あるいは国際文化交流・協力を推進する上で、政策的意義、必要性を有するものを持っていくという方針で定めております。
 これまで何回も説明しておりますので、昨年、特に国内的にはヨコハマトリエンナーレの国際イベントへの支援というものを行いました。それから、アーティスト・イン・レジデンスというものを新たに11年度から始めたところでございます。
 それから、海外発信につきましては、真ん中の四角にありますように、3月にサロン・ド・リーブルというフランスの国際書籍展。これは18万人ぐらい来るらしいのですけれども、書協等への支援で実施したということがございました。
 それから、36ページ、震災復興関係の取組ということで、クールジャパン関連イベントの復興メッセージということで、一番上にあります東アジア諸国の芸術家、関係者を集めた東アジア共生会議で、災害と文化をテーマに取り上げ、国際シンポジウムを行いました。
 2番目には、世界文明フォーラムということで、ノーベル賞学者等、知識人の参加を得て、21世紀の文明への震災からの教訓をテーマに、これからの社会経済のあり方や震災復興の過程での芸術文化の役割ということをしっかり議論しております。
 3番目の被災地における文化芸術活動の実施の中で、最後にありますけれども、被災地に芸術団体、芸術家の方々がどんどん入って文化芸術活動を行っていただいておりますが、昨年度末に文化芸術による復興推進コンソーシアムという、芸術家、芸術団体、企業、助成団体等を中心にそういう枠組みが発足しております。
 それから、37ページ、今年度における当省の取組になります。特に、右の緑で書いてある文化芸術の海外発信につきましては、日中国交40周年の関連で、優れた芸術活動を持っていく。あるいは、アーティスト・イン・レジデンスに力を入れておりますので、特に各国の拠点となっている人たちを呼んだ国際シンポジウムを実施していきたいと思っております。
 それから、茶色のところにありますように、今年度、日中韓の枠組みで東アジア文化都市という事業ができないかという相談をしておりまして、今後進めていきたいと思っております。
 以上でございます。

○中村会長
 農水省。

○太田課長補佐
 農林水産省です。お手元の資料の38ページから41ページにかけて、大きく2つ、農林水産物の食品等の輸出関係の話と、地理的表示の保護制度の導入に関する説明をしたいと思います。
 38ページですけれども、地震後、ここにありますとおり、諸外国でかなり輸入規制がかかっておりまして、我が国の輸出促進について、かなり問題となっています。データが右側にありますとおり、減っているということでございます。
 39ページをお願いします。こういった状況を踏まえまして、昨年、まず1つ目、諸外国等に対する働きかけということで、関係省庁の皆様方等々と連携させていただきまして、我が国がとっている措置や検査データの情報提供を図りつつ、いろいろな国際会議の場や、我が省の政務や事務方が出ていくときに説明して理解を求めていったということでございます。
 それから、左下でございますけれども、国内輸出事業者への支援も含みながら、輸入規制の対応をしてきました。
 それから、右側でございますが、輸出回復に向けて新聞、テレビを使った情報発信を図ってきたということです。例えば香港では、香港のタレントに日本に来ていただきまして、日本の農産品を食べて回るというテレビ番組をやっております。私たちがテレビで見ている逆のバージョンを放映したところ、平均20%超の視聴率があるという実態もあるので、引き続き今後もこういう活動を続けていきたいと思っております。
 40ページでございます。地理的表示保護制度の導入に向けた検討を開始しております。我が国の農産物、地名がついていて、地域に特有の自然的、伝統的な特徴を持ったすばらしい産品がいっぱいあります。こういった産品の品質とか特徴を正確に評価していくことが非常に重要でありまして、その評価を公的な仕組みで担保することが重要だと思っています。それをすることによって、一番右側にあるのですけれども、1つは、輸出市場で日本の産品だということで有利に販売できる。あとは国内の話になりますが、生産者の所得の増加や6次産業化の取組が進むのではないかと思っております。
 こういった制度は、実はヨーロッパの方で特に先進的に入っていまして、地名が前面に出て、いい産品だよというものがあります。こういったものを参考にしながら、我が国としてどういう制度がいいのかという検討会を始めたところでありまして、3月26日に第1回の研究会を有識者の皆様方に参加いただいてやっております。第2回を4月25日にやる予定にしております。これにつきましては、夏までに何回か研究会を開催しまして、一定の報告をまとめていきたいと思っているところでございます。
 以上でございます。

○墳﨑観光旅行促進官
 観光庁でございます。資料42ページからになります。最初に、震災後の状況と取組を簡単に説明させていただきまして、その後、24年度の予算について簡単に説明させていただければと思います。
 42ページ、2003年、520万人からスタートいたしましたビジット・ジャパン事業でございますけれども、2010年には861万人ということで、過去最高を記録いたしましたが、2011年、残念ながら東日本大震災の影響等ありまして、統計をとって以来、一番の落ち込みということで622万人になっております。
 43ページでございます。ただ、大きな落ち込みはございましたが、対前年同月比で震災直後からずっと追っていきますと、震災直後は5割、6割減の状況でございましたけれども、その減少幅は着実に縮小しております。1月、2月は1割減。先週金曜日に3月の数字も発表されましたけれども、マイナス4.4%ということでございましたので、比較的順調に回復が図られているのかなと考えております。
 次のページ、震災後、どういう取組をしてきたかということでございますけれども、我々はステップを3つに分けまして、主に進めてまいりました。
 1つ目は情報発信ということで、特に放射能関係の情報について、ホームページのほか、海外現地で関係省庁と連携して説明会をする。あるいは、日本政府から発信する情報が必ずしもそのまま受けとめられないという状況もございましたので、Lady GagaさんとかJustin Bieberさんという海外の著名人の方に、もう日本は安心だよということを発信してもらうということもやってまいりました。
 それから、ステップ2といたしまして、これはB to Bの働きかけということでございますけれども、海外のメディアあるいは海外の旅行会社に、とにかく日本に来てもらうということを1,000名近くやりました。この結果、海外メディアが、日本に行ったけれども、普通の暮らしがなされていたという記事を書いていただいたり、あるいは海外の旅行会社は、震災直後、販売を休止しておりました訪日旅行商品の再開などにつながったと考えております。
 3つ目、一番右でございますけれども、秋口から落ち込みの回復が見られてまいりましたので、B to Cの雑誌広告、テレビ広告を再開させていただいております。
 45ページからがその一例でございますけれども、我々、観光の魅力を訴えるに当たって、最近は従来の富士山、浅草といった伝統だけでは、海外の激しい観光誘致競争に勝てないということで、あわせてクールジャパンのスポットを紹介することも各市場で取り組んでおります。秋葉原、原宿、表参道といったところでございます。
 それから、50ページが24年度、観光庁の訪日旅行促進の取組の予算になります。回復してきているとはいえ、引き続き風評被害が残っている市場もございますので、特に韓国とかシンガポール、あるいは欧州諸国はまだまだ落ち込みの幅が大きいので、そちらは誤解の払拭に努めてまいりたい。他方、魅力の発信というのをしっかりやっていきたいと思いまして、その際に、観光分野だけではなく、食とかクールジャパンといった、ほかの日本が誇るべきコンテンツとの連携をしっかり図って、事業を進めてまいりたいと考えております。
 左側の中核事業というのが各市場別の事業ということになりまして、私どもの傘下にJNTOという組織がございますけれども、こちらが海外13か所に事務所がございますので、そこが中心となる事業でございます。B to Cにつきましては、今年度は訪日外客数の多い韓国、中国、台湾、米国、香港に特化して重点化を図ってやっていきたい。B to Bの事業、旅行会社向け事業は、ここに記載しております13市場でやることにしております。
 それから、右側の緊急対策事業は市場横断でやる事業のイメージでございますけれども、全部の紹介は控えますけれども、特に2ポツ、3ポツについて御説明させていただきます。
 2.海外現地オールジャパン連携事業というのは、先ほど来、関係省庁の方も連携が大事だということを言っていただいておりますけれども、我々も全く同じように考えております。観光のプロモーションだからといって観光庁とJNTOだけでやるのではなくて、在外公館のネットワークをお借りするとか、JERTOとかJFが持っているコンテンツもお借りしながら、現地での連携を強めて訴求効果を高める努力をしてまいりたいという事業でございます。
 2つ目は、連携は何も公的機関だけではないだろうということで、海外現地日系企業との連携事業も進めてまいりたいと思っております。日系企業の中にも、海外でたくさんの店舗を持って我が国の魅力の発信につながっている企業も多くありますので、そういうところと連携して、あわせて日本に来てください、ということも訴えていければということでございます。
 それから、3.時機を捉えた事業ということでございますが、先ほど来、紹介がありましたように、今年は大きな国際会議が日本で多数開催が予定されているということでございますので、その際に来日した外国人に対してのプロモーションというのをしっかりやっていきたい。
 それから、航空関係でございますけれども、特にインドネシアとベトナムについては、来年、2013年の夏、オープンスカイ協定の発効がありますので、そのときにたくさんの外国人が来ていただけるような形でのプロモーションを進めていく予定でございます。  以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。各省の説明が終わりましたところで、ほとんど時間が来ておりまして、残り5分を切っておりますが、今の説明を含むクールジャパンについて、あるいは知財計画全般について、質問、コメントなどがありましたら挙手をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

○角川委員
 3枚つづりの骨子、参考資料2-1の3ページ「コンテンツの世界展開を支えるデジタル・ネットワーク社会の基盤整備を進める」で、クラウド型サービスの環境整備ということで、著作権を巡る環境整備が取り上げられたのは、とてもよかったのではないかと思いました。
 この関連で、特区として札幌が選ばれました。私はコンテンツ特区で映画のロケーションの地域活性化総合特区、32ページを拝見しました。申請窓口がワンストップになるということはとてもいいことだと思っています。申請を出すと、関係部署を大概たらい回しされた上でだめになるという話をよく聞いておりますし、実感しておりますので、このワンストップ窓口、申請窓口の一元化というのはとてもいいことだと思います。
 前もお話したかもしれませんけれども、韓国などで撮影するときにはちゃんとマニュアルが既に地域行政に用意されていまして、こちら側が申請するときにそのマニュアルどおりやれば申請がおりるのです。それが日本の場合には、なかなかマニュアル化されていないということがあります。そのため、例えば東京都が窓口をつくったといっても、東京都で撮影ができない。ロケボックスというのを石原慎太郎さんがつくったのですけれども、それが実際にはほとんど実行されていないということもあります。
 それで、是非マニュアルを事業者に示してもらいたいと思います。その際、こうやってマニュアルをつくってほしいという話だと、言っただけで終わってしまうので、できれば知財本部でマニュアル化のための標準、標準的なマニュアルはこういうことだというものをつくっていただいて、それを地方の行政に配布していただく。それは、今回の札幌を中心として、そういうものをつくったらどうかということを提案したいと思います。くどいようですけれども、窓口をつくるだけでは足りない、マニュアルをつくるだけでは足りない。それを標準化するということが必要じゃないかと思いました。
 それから、外務省ですけれども、今までこういう話を何回も聞いてきたのですけれども、例えばイタリアもフランスも、ファッション関係の企業が大使館でイベントを開催しています。その点、残念だけれども、日本の外務省が個別企業を支援したというのは余り聞いたことがないのです。そこには、個別企業に対しては支援しないという原則があるのではないかと思います。先ほど大使館をプラットフォームにしたいというお話がありましたけれども、そうであれば、是非、個別企業についてもそういう支援をするということを明確に示してもらいたいなと思いました。
 最近は、この間の香港C3などについても、領事に出席していただき、そういう配慮をいただいてはいるのですけれども、必ずしもまだ十分ではない。例えば個別企業のクールジャパン展開については、外務省が後援していただいたらありがたいと思います。それは、同じことを観光庁にもお願いしたいと思います。個別企業が後援の対象になるのかならないのか、これについては、フランスやイタリアなどを是非参考にしてもらいたいと思います。
 それから、文化庁の場合、メディア芸術というものに賞を与えてくれております。これは、伝統芸術と違うものに対して、例えば漫画、アニメーションに配慮されておりまして、37ページのことです。メディア芸術に対して賞を設定されるのはとてもいいことだと思います。それに、先ほどから出ております、映画、漫画、アニメーション、ボーンデジタルのコンテンツを賞の対象として広げるということをお願いしたいと思いました。
 ちょっと長くなりましたけれども、よろしくお願いします。

○中村会長
 ありがとうございます。新しい提案をいただきましたので、また関係者で議論させていただければと思います。
 時間が来ておりますが、ほかにございますでしょうか。特によろしいでしょうか。済みません、時間が来ているのですけれども、私から知財計画2012に盛り込むという話ではないのですが、次回につながる話かもしれないので、最近、私自身がコンテンツ政策で気になっていることを3つ、頭出しだけさせていただければと思います。
 1つは、先ほど話がありました電子教科書。知財計画2012の骨子にも、教育情報化の推進というのが記述されておりまして、政府も実証研究を進めているのですが、韓国はもう制度を改正して、デジタル教科書を正規の教科書扱いにできるようにする。クラウドネットワークとかタブレット用の教育が進んでいるのですが、私が事務局を務めておりますデジタル教科書教材協議会でも、デジタル教科書を正規の教科書にできるような法改正をという提言を先ごろ出しました。
 これは、実は今、学校教育法など、制度上、紙しか教科書として扱われないものですから、その現状を改めるように求めたものでございまして、そろそろ実証研究から次のステップに進むという議論がここでもあっていいのかなというのが1つ。
 2つ目は著作権の関係で、海賊版ダウンロードの罰則化です。これは、国会に提出された著作権法改正にかぶせる形で、その罰則化というのが政党サイドから話が出てきて、賛成する業界側の声もあれば、反発するネットユーザーの声もあるということで、一まず、報道によれば先送りとされているのです。こうした政府が話し合ったことではなくて、議員立法の動きですから、それを政府側といいますか、知財本部でどう考えていけばいいのかというのが、現時点で1つポイントになっているのかなと思いました。
 3つ目が新しい市場の創出についてですが、ソーシャルゲームの問題がある。ソーシャルゲームが新しいコンテンツ産業として非常に拡大しておりますし、海外展開も期待される中で、同時に問題視する声も最近聞くところです。
 数年前に青少年のネット利用について、その安心・安全をめぐって法規制とかフィルタリングという議論が高まって、業界の対応もあったのですけれども、今回もゲームをめぐって似たような規制問題が生じるのではないかと懸念する声もまた聞くところでございます。これも複数省庁にまたがる案件でもありますから、こうした場、知財本部でどう念頭に置いておくべきかということが気がかりになっているところであります。
 済みません、ちょっと問題提起だけなのですけれどもね。

○杉山委員
 そのソーシャルゲームについては、研究会を立ち上げて、ここでお披露目します。内部的にやめてもらおうというのを始めています。

○中村会長
 次回以降もそうした議論があろうかと思います。ほかにも新しいテーマが動いておりますので、どんどん出てきているかと思いますので、省庁の方々もテーブルにお出しいただければと思います。
 ということで、進行がまずくて申しわけありません。議論が押してしまいまして、まだいろいろ御意見があろうかと思いますけれども、後ほど事務局までお寄せいただければと思います。
 連絡事項を事務局からお願いできますでしょうか。

○木村参事官
 それでは、事務局の方から御連絡申し上げます。次回、ゴールデンウィーク明けの5月15日火曜日10時からの開始を予定しているところでございます。知財計画2012に盛り込むべき事項について、最終的に取りまとめをいただくという予定になってございます。

○中村会長
 では、本日の会議を閉会いたします。皆様、よいゴールデンウィークを。ありがとうございました。