コンテンツ強化専門調査会(第3回) 議事録



  1. 日 時 : 平成23年12月21日(水)13:00~15:03
  2. 場 所 : 知的財産戦略推進事務局会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】
    中村会長、久夛良木委員、杉山委員、谷口委員、吉羽委員、中島本部員
    中山本部員、三尾本部員
    【事務局】
    近藤事務局長、上田次長、芝田次長、安藤参事官、木村参事官、筬島企画官
    【担当府省】
    総務省情報流通行政局情報流通振興課 黒瀬課長
    総務省情報流通行政局情報通信作品振興課 竹村課長
    総務省総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政課 玉田課長
    文化庁長官官房著作権課 永山課長
    文化庁長官官房国際課 佐藤課長
    文化庁文化部芸術文化課 山﨑課長
    経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課 伊吹課長


○中村会長
 では、ただいまから「コンテンツ強化専門調査会第3回会合」を開催いたします。御多忙のところ、また年末にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 前回の第2回から第4回までの会合では、知財計画2011の進捗状況に関する担当府省ヒアリングを行うこととしておりまして、前回は「コンテンツの海外展開の促進」「人財育成」についてヒアリングを行ったわけでございます。
 今回の会合では、「デジタル化・ネットワーク化」についてヒアリングすることとしております。
 なお、本日は、大﨑委員、大多委員、角川委員、川上委員、佐藤委員、末吉委員、別所委員から御欠席の連絡をいただいております。吉羽委員は、恐らく遅れて御到着のことと存じます。
 また、知財戦略本部員からは、中島本部員、中山本部員、三尾本部員に御出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 さらに、今日、担当府省から、総務省の情報流通振興課黒瀬課長、情報通信作品振興課竹村課長、消費者行政課玉田課長。文化庁の著作権課永山課長、国際課佐藤課長、芸術文化課山﨑課長。経済産業省の文化情報関連産業課伊吹課長に御出席いただいております。これだけの担当省庁の課長さん方にお集まりいただくのは、珍しい機会ですので、貴重な機会を生かしてまいりたいと思います。後ほど担当府省の方にも所管の枠を超えて、是非自由に発言していただければと思います。よろしくお願いいたします。
 では、まず近藤局長にごあいさつをいただきたいと思います。

○近藤局長
 本日は、年末のお忙しい中、お集まりいただきまして本当にありがとうございます。委員の先生方に心から感謝申し上げます。また、各府省の課長さんたちも、ちょうど予算の最終段階の忙しい中でお集まりいただいたことを心から感謝申し上げます。この人使いの荒い本部、専門調査会でありますが、年内最後でございます。クリスマスはゆっくり休んでいただくということでございまして、是非とも今日の御審議をよろしくお願いいたします。
 ちょっとだけ今年を振り返りますと、今年は震災がありました。円高もすごい勢いで進み、そのままの状況であります。ヨーロッパでは、PIIGSを初めとして経済がなかなかしんどい状況になっています。もう大分旧聞に属し始めましたけれども、中東ではチュニジアのジャスミン革命をスタートとして、エジプトやリビアも相当いろいろなことがございました。最近では、金正日の死去ということまでありまして、正直申し上げて、今年1年は随分いろいろなことがあったなという気がいたします。やや長かった1年のような気がいたします。
 ただ、こういう状況の中で、世界と日本の距離が縮まり、そしていろいろなことに閉塞感がある中であればこそ、コンテンツの関係をしっかりと伸ばしていく、知財政策をしっかり進めていくということが、これからの日本にとって大事なのではないかと改めて思っている次第であります。
 本日も、さまざまな案件を御議論いただきます。是非ともよろしく御審議をお願いいたしたいと思います。ありがとうございました。

○中村会長
 ありがとうございました。
 それでは、最初にコンテンツ強化専門調査会準備会議の検討状況について、事務局から説明をお願いします。

○木村参事官
 最初に、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
 本日、議事次第の下に資料1といたしまして、「準備会議の検討状況」の資料。
 また、資料2-1といたしまして、「担当府省ヒアリング説明資料」。
 また、資料2-2といたしまして、同じく「担当府省ヒアリング説明資料」がございます。
 また、資料2-3といたしまして、知財計画2011の進捗状況という資料。
 参考資料1といたしまして、専門調査会(第2回)における主な意見。
 参考資料2といたしまして、専門調査会担当府省の出席者のリスト。
 参考資料3といたしまして、専門調査会の進め方という資料。
 また、参考資料4として、今後のスケジュールの資料を付けさせていただいております。
 漏れがありましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
 続きまして、資料1に基づきまして準備会議の検討状況について簡単に御報告させていただこうと思っております。
 この準備会議でございますが、11月に開催されました第1回の会合におきまして、これまで、この専門調査会で各府省からのヒアリングを行いながら検討を進めてきたところでございますが、新たな課題や深掘りすべき課題について議論をより深めようということで、専門調査会とは別に意見交換を行う場を設けて、準備会議と称して進めることになったものでございます。
 テーマとしては3つほどございますが、コンテンツの海外展開・クールジャパン関係ということと、デジタル化・ネットワーク化関係という2つに整理して、それぞれ中村会長に担当の主査になっていただきながら、委員の方々にも自由に参加していただきながら検討を進めてきたところでございます。
 2ページ目が検討状況になっておりますが、コンテンツの海外展開・クールジャパン関係ということで、これまで3回会議を開催したところでございます。
 主な論点といたしましては、例えばコンテンツの海外展開ということで、韓国が国策で韓流ブームということを進めているわけでありますが、放送番組とか映画とか、日本は成功事例がなかなか乏しい、モチベーションも低い中で、モデル的にも成功事例をつくっていくことが必要なのではないかという論点がございます。
 また、国際プロデューサーとかエンターテインメント・ロイヤーといった専門人材、国際的に活躍できる人材が日本は乏しい。そういった人材の育成が急務であるということでございます。
 また、映画の大型ロケの誘致ということにつきましても、大きな経済効果が見込めるわけでございますが、韓国につきましては、日本語の誘致の冊子をつくって制作費の25%を支援ということをうたって、広く国内誘致に努めている一方で、日本を見てみると、窓口が一本化されていない、インセンティブも乏しい。そういった中での取組みをどう進めていくのかといった点も議論になったところでございます。
 また、海賊版対策の強化ということにつきましても、例えばアーティストと協力して海外で啓蒙活動を進めていくということが必要ではないかという御議論をいただいているところでございます。
 また、クールジャパンにつきましても、単体だけではなくて、例えばアニメとファッション、アニメとスポーツといったことを融合させながら展開していくことが重要ではないかという御議論もいただいているところでございます。
 また、デジタル化・ネットワーク化の関係につきましては、2回会議を開いているところでございます。
 これまでの主な論点といたしましては、コンテンツを流通させるためのインフラ整備という観点から、国際回線について、海外から見ると動画が遅い。多くのネット事業者は、その原因もよくわからず、調べる体力もなくビジネスチャンスを逃しているといった状況で、国際回線の強化が重要ではないかという点。
 あるいは、クラウドコンピューティングが進む中で、移動通信においてリアルタイムで通信できることが重要であり、低遅延になるように事業者が取り組んでいるのかもしれませんが、新たなビジネスチャンスを創出するような整備のあり方についても、ご指摘があったところでございます。
 また、モバイル用コンテンツということにつきましては、スマートフォンについて、プラットフォームから高額の手数料を課金されるという問題もあるという御指摘もいただいているところでございます。
 また、ネットによる海外配信ということにつきましては、日本ではなかなか著作権の処理ができないということで、海外に発信するのは難しい。日本の商習慣を変えるようなキャンペーンも必要ではないかという御意見もいただいているところでございます。
 また、海賊版対策ということについては、中国の大手動画投稿サイトと日本の政府の関係機関が勉強会を行うだけでも、対策が随分進むのではないかという御指摘もいただいているところでございます。
 クラウドと著作権法についても、法改正が必要かどうかという議論はあるわけでございますが、米国のプラットフォームが進出している中で、日米の著作権の差で出版社は現に困っているのではないか。法改正が必要なのか、運用の改善が必要なのかについて検討を進めていくべきではないかという御議論もいただいたところでございます。
 こういった点につきまして、年明けに更に意見の取りまとめを行った上で、専門調査会に報告する予定でございます。
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。この準備会議につきましては、お忙しいところ、何人もの委員及び本部員の皆様、更には関係省庁の皆様にも御出席いただきまして、どうもありがとうございました。
 私もこの2つ、海外展開・クールジャパンとデジタル化・ネットワーク化に分けられた準備会議に出席しておりまして、さまざまな有識者の方々のお話を聞いていたのですけれども、例えば海外展開については、工業デザインとかファッションとか音楽といったものを複合的に組み合わせる対策が必要ではないか。つまり、もっと視点・視野を広げるべきではないかという提案が耳に残りました。
 もう一つのデジタル化・ネットワーク化の方で言いますと、今も説明がありましたけれども、例えば税制とかファンドといったリスクマネーの供給などのビジネス支援措置のスキーム、具体的なアイデアがいろいろ出されました。それと同時に、クラウドサービスをめぐる著作権整備の問題であるとか、海外のプラットフォームに対するルール整備のような非常に難しいテーマも出てまいって、これをどのように消化するかということで、これから頭を悩ませるところかと思っております。
 それ以上に、私自身、強く耳に残りましたのが、こうした幅広い領域にまたがる施策について、政府全体の戦略が機能不全を起こしている面はないかという指摘がありました。また、こういう異なるジャンルを融合することが必要なのだという言葉もありました。このような指摘というのは、裏返せば政府にはいろいろ仕事があるぞという応援メッセージとも聞こえるわけで、そうしたことの具体的な策を練るのがこの場の課題かと思っております。引き続き、よろしくお願いいたします。
 今の準備会議の進捗について、御意見、御質問等ございますでしょうか。もしございましたら。準備会議については、よろしいですか。
 では、担当府省のヒアリングに入っていきたいと思います。今日のテーマの「デジタル化・ネットワーク化」では、4つの項目がヒアリング対象となっております。進め方としては、2つの項目を一括して担当府省からヒアリング及び質疑応答を順に行って、最後に余った時間で全体討論を行うことにしたいと思います。
 まず、デジタル化・ネットワーク化について、事務局から全体の説明をお願いします。

○木村参事官
 事務局の方からごく簡単に御説明させていただきたいと思います。資料2-1から資料2-3まで使って説明させていただきたいと思います。
 まず、資料2-1につきまして、これは担当府省ヒアリング説明資料でございますが、デジタル化・ネットワーク社会における知的資産の活用に関することにつきまして、電子書籍とか知的資産のアーカイブについてまとめた資料でございます。
 1枚めくっていただきまして、電子書籍に関する総務省、文科省、経産省の3省の懇談会で電子書籍の利活用のあり方について昨年提言をまとめており、それを踏まえ知財計画のもとで各省が連携して取り組みを進めているものでございます。
 権利処理の円滑化でございますとか契約の円滑化といった点や、日本語のフォーマットを統一していく。特に、標準は英文でつくられているフォーマットになってございますので、日本語フォーマットの統一を図っていく取組み。あるいは、国立国会図書館のデジタルデータの公立図書館への配信などについて、各省が連携しながら取組みを進めているという状況でございます。
 4ページ目以降につきましては、各省のデータでございますので、後ほど御説明いただくことにしてございます。
 また、少し飛んでいただきまして、17ページでございます。
 知的資産のアーカイブ化とその活用促進ということでございまして、我が国におけるアーカイブ化の状況。書籍や漫画、アニメ、映画、音源、ゲーム、放送番組を、国の機関や大学、その他の機関でアーカイブ化を進めているということがございますが、特に各省の取組みということで、18ページにございます。
 書籍であれば、国会図書館におけるデジタルデータ化や、総務省、経産省における支援の取組み。あるいは映画であれば、国立美術館でデジタルアーカイブ化を進めてございます。また、文科省において、漫画、アニメ、ゲームといったメディアの芸術もデジタルアーカイブ化の事業を進めている状況でございます。
 また、ちょっと飛んで恐縮でございます。資料2-2でございます。こちらの方は、デジタル化・ネットワーク化を進めていくための法的リスクの解消、あるいは違法コンテンツの排除という観点から、著作権制度上の総合的な検討やネット上のコンテンツ侵害対策といったものでございます。
 1ページ目にございますように、特に著作権制度につきましては幾つか課題があるということで、権利制限についても、今まで個別規定において私的複製とか教科書、試験における活用ということで、権利制限の定めがあるわけでございますが、それを社会の変化や技術をめぐる動向の状況の変化に応じて十分対応できるということから、一般規定の導入について法制度の整備に向けて取り組んでいるところでございます。また、それ以外にも補償金問題の在り方などについて検討を進めている状況にございます。
 また、ちょっと飛んで恐縮でございますが、12ページでございます。
 インターネット上のコンテンツ侵害対策でございますが、こちらにつきましても、文科省、総務省、経産省という関係省庁が連携しながら、中国・韓国政府への二国間協議で働きかけを進めるということや、権利者団体、事業者の関係者が集まる会合を設け、不正流通に関する検討を進めてございます。あるいは、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構のCODAでございますが、CODAを窓口として海外の著作権侵害コンテンツの削除要請をして100%削除できているという取組みを進めている状況でございます。
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。
 それでは、まず知財計画2011工程表の99から101番の電子書籍の市場整備の加速化、及び103から107番の知的資産のアーカイブ化とその活用促進について、総務省、文化庁、経済産業省の順に説明をお願いします。

○総務省黒瀬課長
 総務省でございます。資料2-1の1ページから3ページ、先ほど木村参事官から御紹介がありましたように、昨年6月まで関係3省で開催していた懇談会の内容でございまして、その課題ごとに担当省庁を決めて施策を推進したということでございます。ここは省略させていただいて、4ページから御説明させていただきます。
 その中で、知財計画に直接関わります課題、4ページに10ほど並んでおりますが、直接は左上の2つでございます。1つは、EPUB日本語拡張仕様を検討すること。それから、下の電子書籍交換フォーマットの標準化を進めることを中心に取り組んでまいりました。
 5ページ、最初の課題でございますEPUBの日本語拡張仕様策定プロジェクトということで、御案内のことかと思いますけれども、EPUB、国際的なデファクトとして広がっているものでございます。その縦書きの仕様がないということで、昨年度の事業でその仕様検討を行ったということを踏まえて、10月に標準化を進めておりますIDPFの方で検討結果を踏まえた仕様が、EPUB3.0ということで確定したということが現状でございます。
 6ページは、御参考までに報道等の記事を付けてございます。
 7ページでございますが、もう一つの課題であります電子書籍交換フォーマットの策定ということで取り組んだものでございます。
 ポンチ絵を付けておりますが、先ほどのEPUBを含め、国内では.book、XMDFといった仕様がある。あるいは、左側の方に印刷データという仕様もあって、デジタルコンテンツに対するアクセス機会を増やす、あるいは効率的に作成を促すという趣旨を考えると、ハブになるような交換フォーマットが必要ではないかということで、仕様の作成を行い、5月に公開したということが現状でございます。
 8ページは、関係の記事を御参考までに付けております。
 それから、9ページ、御参考でございますけれども、3省の懇談会を踏まえて、これは完全に民間の動きで、具体的にはまだこれからでございますが、1つ、民間企業の方で今、動き始めたということがございます。出版デジタル機構ということで報道されておりますけれども、主に出版社、中小を含め、多数ございますけれども、これからデジタルコンテンツの供給を増やすということでは、コストセンターになるところを共同でやっていくというのが非常に効率的ではないかということで、業務内容を真ん中に例示してありますが、そういったことを含め、今、ビジネスプランについて検討中と聞いております。
 20社で設立の動きを始めたところ、現在では120社ほどの賛同社が出てきているということで、来年4月に会社設立すべく準備をしていると伺っております。
 以下、文科省さんの検討等がありますが、担当が入り組んでおりまして、資料としては飛ばさせていただきます。今、書籍のことを申し上げましたけれども、アーカイブ関係のことにつきましては、19ページまで飛んでいただけますでしょうか。知のデジタルアーカイブということで、研究会を今年2月からやっております。
 趣旨のところにございますように、図書館とか公文書館あるいは美術館、博物館等々でデジタルのアーカイブの構築が進み、それらを連携して横断的に利用できるような仕組みづくりということで検討を進めているものでございます。年度内に成果を取りまとめるということでやっておりますので、現時点でまだ進行中でございます。
 20ページ、項目だけ書かせていただいて、まだ理念的なことにとどまっておりますけれども、提言の内容とか、あるいは1つアウトプットとして、中小の地方の博物館、図書館もアーカイブしやすいようにガイドラインをつくろうではないかということで、今、議論しておりますので、その概略の内容について21、22に添付させていただいております。
 もう一つ、具体的な動きとして、23ページにアーカイブ関係ということで、今年、東日本大震災を受けまして、復興の基本方針でございますけれども、記録を残して伝承していくことが大事である。さまざまな関係者がアーカイブ化ということで進めておりますけれども、だれもがアクセス可能な、一元的にそれを活用できる仕組みを構築していくことがうたわれております。
 総務省と国会図書館と連携させていただいておりますけれども、横断検索できるような仕組みづくりということで予算を確保して、これから具体的に仕組みづくりをやっていきたいと考えております。

○総務省竹村課長
 続きまして、私の方から放送コンテンツのアーカイブについて御説明いたします。24ページをごらんください。
 放送番組センターでございますけれども、これは放送法に基づきまして、放送番組に関する情報の収集、保存、公開を行っている法人でございます。横浜市の情報文化センターというところに視聴するためのブースなどを置いておりまして、そこで民放やNHKから集めた放送番組のアーカイブを一般の視聴に供しているということでございます。年間約10万人の利用があるということでございます。
 今後の取組みでございますけれども、この施設の中で視聴することが原則ということでございますが、更にこれを有効に活用するために、放送局の中でネットワークを通じて視聴することができるようになりまして、それを若手制作者の育成などに役立てていこうという取組みをしているところでございます。
 続きまして、25ページでございますが、放送コンテンツの権利情報の蓄積・一元化という観点から、権利処理の促進に向けた実証実験をしてございます。
 放送テレビ番組を二次利用する際に、実演家を初め、多くの権利者の方の許諾が必要になりまして、その許諾に時間とコストがかかることが、二次利用の進まない一つの原因になってございます。そのため、平成22年度から関係者で連絡会を開催いたしまして、許諾申請受付窓口の一本化、不明権利者探索の一元化という取組みをしているところでございます。本年度は、使用料の支払いまで含めた一元化ということを目指して実験を行ってございます。
 それから、26ページでございます。これは、平成20年12月からNHKオンデマンドサービスということで、番組アーカイブのネットでの提供をしてございます。
 下の方、配信本数の推移をごらんいただきたいのですが、年々増えているということで、利用者数も増加してございます。ただ、その右の収支の推移をごらんいただきますと、22年度でも18億円ぐらいの赤字で、早期に黒字化することが課題になっているということでございます。
 24年度から26年度までのNHK経営計画におきましては、平成25年度に単年度黒字化を目指すということで、更なる魅力を高めて利用者拡大に取り組んでいくということでございます。
 総務省からの説明は以上でございます。

○文化庁永山課長
 続きまして、文化庁著作権課でございます。お手元の資料の10ページをごらんいただけますでしょうか。
 先ほど御説明がありましたように、昨年3月から6月にかけまして開催されました3省懇におきまして、電子書籍に関する著作権法上の課題ということで、①から③の3つの課題について検討する必要があるという形で整理されました。これらの課題について検討するために、昨年11月、文化庁の方に、そこに書いてありますような検討会議を設置いたしまして検討を進めてきたところでございます。
 実は、本日4時からその検討会議の最終報告に関する会議を開催して、最終報告案に関する議論を予定しております。本日、以下、検討事項①から③について提示させていただいている資料の内容は、今日4時からの会議に御提示させていただく最終報告案をベースにしたものでございますので、当然、本日の議論によっては、若干の修正がある可能性があるということだけ御理解いただければと思います。
 検討事項①、10ページの下の方にありますが、これは現在、国立国会図書館の方で所蔵資料のデジタルアーカイブ化を進めております。現時点で210万冊ぐらいのデジタル化が完了していると聞いております。その貴重な資源というものをいかに有効活用していくかという検討課題について検討したのが、この検討事項①でございます。
 結論のところだけ申し上げますと、矢印の下のところにありますが、将来的な目標としては、国会図書館のデジタルデータを活用して、各家庭まで送信して見ることができるとしつつも、そのためには一定の条件整備、権利処理のための仕組みが必要になるということで、若干時間がかかります。
 その間、何もしないということではなくて、その第1段階として、そこの下線にあるように、国会図書館のデータを地域、地元にある公立図書館などに行けば利用可能になるように、著作権法の改正を行うことが適当とまとめ、方向性が示されております。
 一定の条件というのは下に書いてございまして、対象出版物の範囲。今、民間の電子書籍ビジネスというものがどんどん進みつつありますので、それに悪影響を与えないように官民の役割分担ということも念頭に置きまして、基本的には電子配信がなされていない、また絶版になっているなど、市場において入手が困難な出版物を対象にするということでございます。
 また、利用方法については、地域の図書館における閲覧とともに、一定の条件下におけるプリントアウトを認めるという方向性になってございます。
 1枚めくっていただきまして、11ページ。
 (2)では、国会図書館のデジタル化資料を検索対象として、本文検索、全文検索サービスの提供というものを図っていく必要があるということ。
 また、(3)は、国会図書館のデータを活用しながら、民間と国会図書館の方が連携した新しいビジネス、配信モデルの開発が必要ということで、これは具体的には、2ページ後ぐらいに、今、概算要求中でございますが、来年度予算の中でこういう取組みを後押しするような調査研究ということで、必要な予算を計上させていただいているところでございます。
 検討事項②でございますが、出版物の権利処理の円滑化に関する事項ということで、当然、過去の出版物、また権利者不明の出版物の電子書籍化というものが進んでいくわけですが、その際には権利処理を円滑に行うための何らかの仕組みを整備することが必要だろうということでございます。
 具体的な内容としては、そこに示された取組例①から③の機能を果たすような仕組み。例えば情報の集中管理であれば、既にある国会図書館のデータベース、また書協が持っているデータベースなどを活用して、それを充実していく方向の取組みも考えられると思います。また、先ほど御説明がありました出版デジタル機構という民間の取組みがございますので、そういう動きとも歩調を合わせながら、具体的な仕組みの整備に今後取り組んでいく必要があるということが検討会議の方向性でございます。
 1枚めくっていただきますと、3点目が出版者に対する権利付与に関する事項になります。
 ここも時間の関係で結論だけ申し上げますと、一番下の四角囲いのところになります。権利付与については今後の検討ということになりますが、1つの課題というのは、権利を認めた場合の電子書籍市場に与える全般的な影響については、経済的・社会的な検証が必要である。これについては、出版社などが中心になって文化庁が協力しなから実施していく。
 また、上の四角囲みの違法侵害への対応。さまざまな法的な対応策が考えられるわけですが、出版社が主体的に取り組む何らかの仕組み、法的な措置が必要だろうと思っております。ただ、法的には幾つかの選択肢が考えられるということから、そこにありますように、法制面における課題の整理については、文化庁において専門的な検討を実施することになっております。その上で、制度的な対応も含めて、権利付与の是非について早急な検討を行うということにしております。
 以上が電子書籍関係の現在の検討状況でございます。

○文化庁山﨑課長
 続きまして、文化庁の芸術文化課でございます。資料2-1の最終ページ、28ページをお開きいただければと思います。「メディア芸術デジタルアーカイブ」についてというタイトルの付いたページでございます。
 文化庁では、漫画やアニメーションといった我が国のすぐれたメディア芸術作品を保存する対策の一つとしまして、作品の所在情報等に係るデータベースを整備いたしますとともに、すぐれた作品や、散逸や劣化の危険性が高いものなど、特にデジタル化が必要な作品等のデジタルアーカイブ化を平成22年度から実施しているところでございます。このうちデータベースの整備については、作品情報や所在情報といった作品の基礎データの調査・収集を行っております。
 漫画の分野におきましては、主要な漫画所蔵機関5館。京都国際漫画ミュージアム、明治大学米沢嘉博記念図書館、川崎市民ミュージアム、そして国立国会図書館と大阪府立中央図書館国際児童文学館の5館でございます。これらの5館が所蔵する単行本や雑誌等、約43万件の統合データベースの整備を行っておるところでございます。
 このうち、22年度には京都国際漫画ミュージアム、明治大学米沢嘉博記念図書館、そして川崎市民ミュージアムの保有する単行本、雑誌関連のデータを統合いたしました。続いて23年度は、未統合であった国立国会図書館と大阪府立中央図書館の所蔵データを追加して統合作業を行っておるところでございます。
 また、アニメーションの分野におきましては、劇場版、テレビ用、そしてOVAのアニメーションにつきまして、22年度には3,500作品の基本データを収集いたしました。23年度も前年と同様に3,500作品を目標に現在データベースの拡充を行っておるところでございます。
 また、ゲームの分野におきましては、22年度は家庭用ゲームの基礎情報を収集いたしまして、引き続き23年度は、国内で発売されたファミコンソフトの1,525タイトルについて情報収集して、データベース化を行っておるところでございます。
 さらに、メディアアートの分野におきましては、22年度はメディアアート作品の所在情報調査を行いまして、今年度、23年度は西暦2000年前後を中心とした展覧会、作品情報の収集を行っておるところでございます。
 また、22年度は、これらの作業を通じて得られましたデータベースを横断的に検索ができるように、特に漫画・アニメーション分野で共通する35の作品について、分野横断データベースのプロトタイプを作成しまして検証を行っております。さらに、散逸や劣化の危険性が高い貴重な作品等のモデルアーカイブの検討も行っております。
 漫画の分野におきましては、デジタルアーカイブ化の諸課題について検討の場を設けて、漫画原画を例に適切な仕様策定のための検証、保管・管理するに当たってのメタ情報項目の検討、原画の借用手順の検証などを行いました。
 また、アニメーションの分野では、日本初のテレビアニメーションシリーズであった「鉄腕アトム」などの作品を例に、原版、フィルム、中間制作物等の情報収集、所在調査等を行うとともに、デジタルアーカイブ化の考察を行いました。
 今後でございますが、引き続きゲーム、メディアアートのデータベース化を推進しますとともに、登録件数の拡充を図って、更にその整理や登録内容を充実させてまいります。その際、各所蔵機関等との連携を強化して、データの集約・統合を推進する予定でございます。
 簡単ですが、以上でございます。

○経済産業省伊吹課長
 経済産業省から、最後、説明させていただきます。お手元の資料の14ページをごらんください。
 今まで随時説明がありましたように、いわゆる3省懇で、書籍デジタルについては3省協力してやっていく形で進んでおりまして、それを受けて経産省では、下の青いところにあります、上4つの事業をやっております。
 1つは、漢字について、作家さんはこの字を使わないと、この小説は出せないということが勿論ありますので、そういう難しい漢字について、どういうふうに電子書籍の世界で表現していくかということについて取り組んでいます。
 2つ目は、これは特にアジア向けに配信するときに、例えばエンドユーザーに対してどういう課金の仕方をすればいいか。その前提として、権利処理をどういうふうにすればいいかということを、実証試験を行いながら課題を抽出して、民間にフィードバックするという形の事業をしています。
 3点目は、先ほど交換フォーマットをつくられた話を総務省の黒瀬課長の方からされていましたが、それの普及促進。実際には、電子書籍化するときの手順についてガイドラインをつくって、実証試験をやりながら確認していくというプロセスをやっています。
 4点目は、電子出版そのものというよりは、電子書籍をやっていったときに、例えばアメリカであれば、今、最大2割ぐらいが電子書籍のマーケットになっていますけれども、紙を売っている書店さんが電子書籍というものに対して非常に脅威を感じる面がありますので、彼らが守りだけじゃなくて、電子出版というものをどう活用していくか。
 一例を挙げますと、実証試験をしたものの中では、書店に絵本を、ためほんくんというデジタル化したテレビ画面みたいなものを置いて親子で見てもらって、おもしろいと続きを買おうかという活用の仕方をするとか、書店サイドからこの問題に対してどういうふうに取り組めるのか。
 もう一つは、今まで紙の世界ですと、出版社があって流通する取り次ぎさんという方がいて、書店は末端の消費者に一番近いところにあるわけです。その中には、返本率が4割とか非常にむだが多い世界なので、書籍デジタルになるということは、ある意味で消費者と直接つながる形になるので、そこでの経験を紙の世界にどうやってフィードバックして書店を活性化していくかということを取り組んでおります。
 資料を2ページ、めくっていただきまして、以上は3省懇を受けてやっていた事業ですが、3省懇を受けた以外の事業が1つあります。
 先ほど出版デジタル機構の御説明があったかと思いますけれども、いろいろ推進していく中で、出版社がもともとのものを持っているわけですから、彼らが本気になって取り組まないと、マーケットとしてはなかなか広がっていかないわけです。デジタル機構ができて百二十数社、そこに加盟して、彼らがやる気になっている中で、1つの課題は、中小の出版社は書籍をデジタル化するコストを自分ではなかなか担えない。大手は自分でどんどんやるということが実態ですので、その中小出版のデジタル化をすることによって、マーケット全体でデジタル化されている書籍をできるだけ多くする。
 そうすると、消費者からすると、デジタル書籍を売っているサイトに何回も行く誘引になりますので、そこのエンドを少し広げていきたいということです。今、ちょうど公募をしていますけれども、ここから1年半ぐらいかけて中小の書籍のデジタル化をできるだけ推進していきたいと考えております。
 簡単ですが、以上です。

○中村会長
 どうもありがとうございました。次の著作権制度及びコンテンツ侵害対策の説明が終わりました後で、全体についての議論をいただきたいと思いますが、まずここまで御説明いただいた電子書籍、そしてアーカイブ化について、質問、意見、コメントなどがありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
 最初、私からちょっと質問させていただいていいですか。どなたでも結構なのですが、電子書籍の市場整備を加速化するために、3省懇なども開かれていろいろな手を打たれているのですけれども、我が国の電子書籍のコンテンツ数が少ないといった指摘があるのですが、そもそものボトルネックは何であると皆さんお考えでしょうか。どこを解決していけば早い。

○経済産業省伊吹課長
 各省、それぞれ考え方があると思いますけれども、1つ、まず大もとにあるのは、紙の世界と市場の食い合いになるのではないか、全体として縮小するのではないかということが、いろいろな人が心配していた最初だと思うのです。
 もう一つは、どのフォーマットにしていけばいいのか。というのは、マーケットが動いて技術が動いている中で、そこに幾つものフォーマットで物をつくっていくことに対して、投資の負担感がある。
 3つ目が、予算を手当てしますけれども、デジタル化する初期費用がかかる。
 それがコスト的に見た問題だと思うのですけれども、1つは、先ほどちょっと申し上げたように、種類がたくさんないと買いに行かないという問題があるので、種類を増やさなければいけないというのが根本的な一つの大きなボトルネックだと思います。
 もう一つは、新刊本がたくさん電子書籍化されないと、消費者からすると行く誘引が。それだったら、本屋に行って新しい本を買うという話になるので、それが大きな2つ目の問題だと思います。
 その1つ目の数を増やさなければいけないということについては、出版デジタル機構ができて、彼らがこれから力を入れてやりますし、それは各省も応援するということですので、来年に向けてだんだん解決していくと思いますし、一部の大手の出版社も随分デジタル化して、何十万部も売れているような例も出ていますので、それは進んでいくと思います。
 もう一つの新刊をやるということについても、幾つかの出版社は同時に発売するという決断をし始めていますので、マーケットが広がるなという感覚と出版社の取組みと、その2つが両方シナジーを持って進んで拡大していくという印象を持っています。
 今年がデジタル書籍元年ということですけれども、出版デジタル機構ができたことによって離陸をする準備が徐々に整備されてきているなという印象を持っています。

○中村会長
 ほかによろしいですか。今、聞いてみたかったのは、音楽や映像はデジタル化やネットワーク化が進んできているじゃないですか。それに比べると、文字とか書籍の方が本来はデジタル化しやすいのではないかと感じるのが普通だと思うのですけれども、音楽や映像に比べても、なお出版の世界というのは解くべき特殊な事情があるということなのか。
 あるいは、今お話のように、このまま施策を打っていけば、順調にデジタル化、ネットワーク化が進んでいくと見ておいていいのか、どちらなのかなと思いまして、特に答えが必要ということでもないのですが、その辺りで何かコメントがあれば。どうぞ。

○吉羽委員
 進捗状況というのは伊吹さんがおっしゃるとおりで、出版社の大手から中小へかけて、電子書籍が必ずしも紙と食い合うものではないという印象は少しずつ広がりつつあるのかなと思います。最初は、恐る恐るという部分がかなりあったのが、少しずつ解消されてきているのかなと思っております。
 今、中村会長の御質問で言うと、何で紙というか、出版物の電子書籍が進まないのというときに必ずお答えしているのですけれども、映像と音楽は再生機器がなければ見られなかったという、そもそもの原点がある。紙の上に載っているものというのは、どんな過程をとってこようと、基本的には最後は非常にアナログなことになってしまうので、そもそもデジタル化というのは、余り進む必要がなかったというところが根本にあると思います。
 製造過程は、見えないところでデジタル化はかなり進んでいたのですけれども、そうは言っても、エンドユーザーに手の届くところは非常にアナログな商品だったので、1つにはいろいろなコストの面とか権利処理の問題が勿論あるのですけれども、ユーザー側にとっても、わざわざ何かのデバイスを持って見るということのメリットがそれほどなかったというところがあるかと思います。
 ただ、例えば大量の本を持ち歩けるとか、だんだんユビキタス的にいつでも買えるようになるという、特に3G以降の通信環境が存在していない時代で電子書籍をさんざんやって失敗してきているわけですけれども、環境が整ってきたから市場もできてきて、そのニーズに合わせる形で、出版社もそこを恐れずにコンテンツを出していけるという環境がだんだん整い始めたということなのだろうと思います。
 そういう意味では、遅れる理由というのは、根本的に本というのは何なのというところに戻ってあったのではないかと思っています。その障害のようなものは、3省懇に関して言うと、各省庁まとまって懸命にやっていただいたかなという印象は、出版社としては持っております。そういう意味では、除かれてどんどん進んでいく環境が整ってきているのではないかと感じております。

○中村会長
 ほかにいかがでしょうか。アーカイブのところでもお聞きしてよろしいですか。資料19ページの知のデジタルアーカイブというものと、それから28ページで御説明いただいたメディア芸術デジタルアーカイブというのは、これはお互いに何か関係があるのですか。

○総務省黒瀬課長
 19ページの研究会の方ですけれども、趣旨は先ほど御説明したとおりですけれども、アウトプットのポイントになる部分は、MLA連携と言っているのです。ミュージアムとライブラリとアーカイブの連携ということで、これまでのデジタルコンテンツについては、メタデータということが利用のキーになって、MLA連携を進めるためにメタデータの、共通化というのは難しいですけれども、相互運用性を高めていくために、一歩進める仕組みづくりを具体的に検討しているということでございます。
 ですので、何か具体的なものを除いて考えるということはしておりませんけれども、主に想定しているのは、既存の図書館とか美術館・博物館といったところのデジタルアーカイブを進める、横断検索ができるための仕組みづくりをやっているという非常に横断的な仕組みづくりを考えているということでございます。

○文化庁山﨑課長
 文化庁芸術文化課でございますが、28ページはメディア芸術という特定の分野にターゲットを絞って、そのためのデジタルアーカイブで、今、MLA連携ということがございましたが、情報収集する施設の対象の中には、当然、美術館、博物館、図書館等も入ってございます。文書関係はございませんが、メディア芸術に特化したものでございます。
 一方、メディア芸術の進行に関しましては、デジタルアーカイブと並んでコンソーシアム事業も並行して行っております。その中で関係機関が連携してネットワークづくりということも並行してやっておりますので、今後の展開としまして、必要に応じて総務省さんとも連携させていただきながらやっていきたいと思っております。

○中村会長
 ということは、文化庁さんの方は、どちらかというとメディア芸術という分野のコンテンツに着目していて、総務省の方はいろいろなジャンルの横串のネットワークの仕組みとかプラットフォームづくりといったところの関係と見ておけばいいですか。つまり、総務省の方でいろいろ成果が出てくれば、その上でメディア芸術のアーカイブもそれに乗って機能するという関係なのですか。

○総務省黒瀬課長
 考え方としては、おっしゃるとおりだと思います。

○中村会長
 ほかに。どうぞ。

○近藤局長
 今日は、なぜか議論がたくさん出ないので、あるいは後で聞いた方がいいのかもしれませんけれども、デジタル書籍元年というお話があったのですが、昨日から、例の自炊の話が大分出ています。これは、文化庁さんはどんなふうに考えていけばいいと思っておられるのか、教えてもらっていいですか。あるいは、この後の著作権制度の総合的検討のところでお話になるというのなら、そのときでも結構です。

○文化庁永山課長
 自炊そのものについては、今日の朝刊の新聞報道にありましたように、裁判、訴訟という段階に移行していますが、自炊行為の議論を著作権法の観点から言うと、30条、私的複製の問題とその主体論、間接侵害の問題ということが、自炊の問題の背景にある著作権法上の課題だと思っています。その課題については、また後ほど御説明しますが、現在、審議会の方で中心課題として検討を進めている段階にあります。

○上田次長
 先ほど中村会長から御指摘があった点ですけれども、電子書籍がなかなか流通しないということと、今ございましたデジタルアーカイブの話というのは、非常に密接に結び付いているものだと理解しています。例えば、先ほど伊吹課長からお話がありましたし、吉羽委員からもお話ありましたように、電子書籍元年ということで、それなりに皆さん、官民、非常に努力されて、初期の心配というところから、いよいよ中小を含めて本格的に動き出しているということだと思うのです。
 一方、消費者あるいは読者の方から見ると、やはり新刊、新しく書籍として出てくるものはあるけれども、コンテンツは少ないのではないかというところがある。文科省さんの資料2-1の13ページにあるような、国立国会図書館のデジタル化の資料をどこまで、ここにありますように、各家庭あるいは各タブレット、端末まで持っていくことに対する検討が進んでいけば、消費者から見ればデジタル化された本というのを見る機会が非常に増えることだと思うのです。
 資料2-3にもありますけれども、去年の知財計画の方では、民間ビジネスへの圧迫を避けながら、インターネットを通じた外部への国立国会図書館のコンテンツの提供のルール設定等を進めるかということがあります。
 まさに、これはそのための実証実験だと思うのですけれども、この実証実験を通じて、民間が自主的に進めるものとのすみ分けといいますか、これをはっきりさせながら、国立国会図書館の方からデジタル化していけるものは、どんどん手元のタブレットの方に届くようにするということも非常に重要なことではないかと思いますので、コメントさせていただきました。

○中村会長
 どうぞ。

○久夛良木委員
 ユーザーの目線ということで考えると、我々が元やっていたゲームの分野ですと、昔はソフトウェア供給の為のメディアが半導体カートリッジというもので1本、1万円以上したわけです。それが20年ぐらい前から光ディスクに代わって、このメディアの交代によって何が起こったかというと、価格が半分ぐらいになって、かつユーザーにとっても、ゲームソフトウェア会社にとっても、ソフトがより買いやすくなるとか、販売のオポチュニティロスがなくなるとか、在庫負担の問題が減るということで市場が大きく伸びたという経験があります。ユーザーにとってみれば、値段が半分になるわけですから、更に多くのゲームを買えることになった。
 今のネットワークゲームとかソーシャルゲームがどうなっているかというと、皆さん御存じのように、当初は無料のものが多くて、その中でアイテム課金とか少額課金を積み上げることでビジネスモデルが成り立っているわけです。ここでは、新しいメディアの登場によって革命が起こっているわけで、更にユーザーが世界規模で増えていって市場が大きくなっているというのが現状だと思います。
 音楽の場合は、もともとアルバムが3,000円近くもしたわけですが、それをアップルが1曲99セントとしたことによって、当初大きな反対意見もあったと思うのですが、流通による革命が起こり、お客さんのもとに1曲毎にコンテンツを届ける効率が上がったわけですから、市場が大きくなったということが言える。
 でも、書籍、特に我が国の書籍は、皆さんなかなかここに触れられないのですが、再販制度で守られていて、電子化しても同じ値段。もしくは、そうじゃないことをしようと思っても、それができるかできないかという権利をだれがお持ちなのかということで、大分戸惑いがあるのではないかと拝察するのです。出版社にとれば、自分のところに明快な著作隣接権も含めた権利がないかもしれないということと。そもそもとっかかりでは、コストがプラスαで更に電子化にかかるのに、何で安くしなければいけないという見方があると思うのです。
 一方で、海外ではどうかというと、アマゾンも含めて、売れなくなったもの、もしくはたくさん出たもの、いろいろな理由があると思いますが、値段はハードカバーよりも安い。それによって市場が増えているという側面もあると思います。となると、我が国だけが少なくともハードカバーにおいて電子書籍が伸びていない要因の一つに、この再販制度というものが恐らくはあるのではないかと思うのですが、それについて議論がこの場でされていない。
 今の経産省の方から、原因はということにそこに触れられていない。一番大きな原因の一つではないかと思います。これは、出版社側からは触れてほしくない問題の一つかもしれないですが、この辺について皆さんの御意見はどうなのでしょうか。

○中山本部員
 おっしゃるとおりだと思うのですけれども、この問題は実は公取の再販委員会で長年検討をしてきましたが、決着がつかない問題です。なかなか難しいのではないかという気がします。
 アナログダラー、デジタルセントという言葉があるらしくて、アナログ時代はドル単位で商売していたのに、セント単位で商売しなければいけない。しかし、セント単位で商売しても、今おっしゃったように、すそ野を広げれば十分成り立ち得る可能性があると思います。そのためには、中間のいろいろなものを整理することもやむを得ないと私は思います。
 例えば、音楽だってレコード店は減っていますね。靴をはけば下駄屋は売れない、洋服が盛んになれば呉服屋は売れない、橋ができれば、はしけ船はだめになる。昔から新しいものができれば、どこかが衰退していくというのは当たり前で、激変はちょっと困るかもしれませんけれども、そこら辺を整理して、かつ再販も議論するということが私は必要なのではないかと思っています。

○久夛良木委員
 今回の電子書籍は、私はハードカバーと言いましたけれども、恐らくはストック系のコンテンツを主体に皆さんお考えになっていると思いますが、一方で雑誌に代表されるようなフロー系のコンテンツもあるわけで、日本では広告モデルで成り立っていることも含めて、余り元気なカテゴリーになっていないのですが、海外においては雑誌というのは非常に売上金額も発行部数も多いわけです。
 これも重要なコンテンツを含んでいると思うので、この部分についての議論とか、もしくは各省庁の方も含めて、これも電子書籍の中に含むべきなのか、そうではなくて、今は時期尚早なのかということについて御意見はございますか。

○中村会長
 雑誌についての施策もありますね。

○経済産業省伊吹課長
 まず、経産省の予算は何を対象にしてデジタル化支援をするかというのを、まだ実は決めていなくて、書籍でも雑誌でも、それはこういうものをデジタル化するとマーケットが広がるというものを、出版社の方が中心になって選定委員会みたいなものをつくっていただいて、その中で議論を進めていきたいなと思っております。
 それから、もし間違っていたら吉羽さんに修正してほしいのですが、再販制度については、デジタルの部分は再販の対象になっていないはずなので、ある意味アマゾンなどはそれを自由に値決めしようとしているので、出版社さんが価格を決めるのか、それとも流通を担うであろう、楽天さんとかソニーさんが担うのか、それとも例えば紀伊国屋さんとかもデジタル書籍を売るサイトをつくっていますけれども、そういうところが担うのか。
 それは、これからマーケットが動いていく中で多分決められていくと思いますし、実際に同じレベルになるのか、例えば先駆けになるのかというのも、マーケットとそれぞれ売る方が見ながら考えていくことになるのだろうと思っています。

○中山本部員
 再販とデジタルについてはおっしゃるとおりなのですけれども、現在、紙の本が再販で守られていると、デジタルの方に出て行こうということが減るのではないか。そういう意味で、再販が関係しているということを申し上げたのです。

○総務省黒瀬課長
 フローの雑誌ということについて御質問いただきました。
 4ページをごらんいただきたいのですけれども、3省の懇談会の中でも雑誌のことも視野に入れて検討しました。先ほど御説明したEPUBというのは、雑誌にも適用できる仕様として検討されています。
 それ以外に、左側の一番下ですが、次世代電子出版コンテンツID推進プロジェクト。雑誌というと、1冊丸ごとということより、むしろ記事単位で入手できるのが大事になりますので、その記事単位のコンテンツIDということを、これはデジタル予算事業としては、雑協さんになりますけれども、そこで御検討いただいてガイドラインをつくっていくということが1つ。
 それから、右上でございますけれども、アクセシビリティを考慮した出版サービスということで、これは音声読み上げに対応できるように、コンテンツをつくる段階からルビを振った形でコンテンツをつくり上げていくことが大事になりまして、そのためのガイドライン。これは雑誌も想定したものとして検討しているところでございます。

○中村会長
 はい。

○久夛良木委員
 ストック系のコンテンツの場合は、電子ペーパー等を用いた白黒表示というものが、アマゾンとか日本ではソニーもそうですが、使われていると思います。雑誌になると、カラーになるということも含めて、iPadとかアンドロイドタブレットのようなものがこれから標準のプラットフォームになるのではないかと言われているのは、皆さん御存じだと思います。
 そういうふうになったときに、今の雑誌社は予算がないのか、それとも気力がないのかわからないけれども、そのままの段組でPDF化して、それを全冊もしくは記事単位でディストリビューションする形をやっておられるケースが多いかと思います。ところが、これは皆さん見てわかるとおり、それだったら紙の雑誌を見た方がはるかに便利だ、たとえ重くてもよほど便利だと感じるぐらい、すごくつまらないアプリケーションに今なっている。
 世界じゅうそうかというと、必ずしもそうではなくて、例えば電子タブレットに特化したようなつくり方をしている雑誌。例えば海外だと「WIRED」のような雑誌があります。そうすると、逆に紙の雑誌よりはるかにこちらの方がいいと、多分かなりの人が思われると思います。この部分については、もはやボーンデジタルであるが故に最新のテクノロジーを使う。例えば最新のhtml5等を駆使すると、ボーンデジタルでどんどん斬新なコンテンツが生まれていくと思います。
 そういうふうに考えると、コンテンツという側からとると、新しい市場、新しい可能性が生まれたということで、この委員会の中ではそこに対してどういうふうに振興策をとるかという議論がもっとあっていいと思うのですが、そこがすぽっと抜けてしまっているような気がします。紙の本をどうやって電子化するか。それに対して、今までの考え方の中で電子書籍をどうすべきかという議論が比較的先行していて、今起こっていること、もしくはこれから起こるだろうことにより、更に大きな可能性をみんなが何となく感じている部分について、議論が少なかったかなと思います。

○杉山委員
 実は今、全く同じことを言おうと思った。「WIRED」マガジンを見たことがある人はいますか。結構いい値段をとるのです。でも、すごくおもしろいからサブスクライブしてどんどん読むのです。我々は学校で、これこそ電子出版だと教えているのです。こういうものになるのだよ。今までの編集と全然違う概念が入って、エディトリアルから見てもすごくおもしろいと教えています。大学生たちだって、ただPDFになったものをPadで見るのが電子出版だとは、まさかだれも思っていないということは言っておきたいです。
 教育の現場も、私たちだけじゃなくて、多分どこの大学の先生もそうやって電子出版の未来を語っていると思います。

○中村会長
 その辺り、新しい政策をどのように組み立てていくか、後でもし時間がありましたら、全体討議というところでお話をしていただければと思います。
 次に移りたいと思います。次に、工程表108番及び132から134番の「著作権制度上の総合的な検討」、そして111から113番及び127番の「インターネット上のコンテンツ侵害対策」について、文化庁、総務省、経済産業省の順に説明をお願いいたします。

○文化庁永山課長
 それでは、文化庁著作権課でございます。お手元の資料2-2の1ページをごらんいただけますでしょうか。著作権制度に係る総合的な検討ということで、知財計画の中で多岐にわたる事項が盛り込まれております。
 その中の1点目、権利制限の一般規定につきましては、今年1月に審議会の報告がまとめられております。それを受けまして、まだ法改正までは至っておりませんが、できるだけ早い段階での著作権法改正の実現に向けて、現在、準備作業を進めているところでございます。
 続きまして、クラウドの関係でございますが、資料の11ページをごらんいただけますでしょうか。クラウドコンピューティングと著作権に関する調査研究という資料になります。
 知財計画2011を受けまして、文化庁におきましては、下の調査研究の内容の方になりますが、今年7月に点線で囲っている5名の委員からなる調査研究会を構成いたしまして、クラウドコンピューティングと著作権の関係について課題の整理を行っているところでございます。現在、報告書取りまとめ中ということで、詳細については今日の段階では御紹介できないことは申し訳なく思っております。
 今後のスケジュール的なことから先に申し上げますと、現在、取りまとめを行っている段階でございますが、年明け1月12日に法制問題小委員会の開催を予定しておりますので、そこでクラウドコンピューティングに関する報告書の審議会への報告をさせていただく、それに向けて作業を進めているところでございます。
 下の方に、現在、報告書を取りまとめている内容のエッセンスを若干書いてございます。クラウドコンピューティングの概念については、諸外国、また各省さんにさまざまな形で定義を行っていただいていますが、非常に多義的であって、画一的に定義することは困難だということでございます。
 この調査研究では、典型的なクラウドサービス、例えば特定の音楽などのコンテンツのロッカーサービス、また汎用型のロッカーサービス、またソフトウェアなどを提供するようなSaaSのようなスタイルのクラウドサービス、さまざまな形のサービスがありますが、それらを一定程度、類型化しまして、それぞれの類型ごとに著作権法上の課題について整理しているところでございます。
 現在の方向性としては、現段階において一番下の矢印のところに簡単に書いておりますが、本当に結論のところだけ申し上げますと、クラウド固有の新規の課題を明確にすることは難しいものの、従来からインターネットサービスに関する課題というものはございます。著作権法上の課題というものが指摘されております。
 具体的にはそこの課題例に書かせていただいておりますが、例えばクラウド上で行われる複製行為について、その主体はだれなのか。複製主体、利用主体の問題。また、利用主体との関係もありますが、複製行為の主体がユーザー、利用者であると評価される場合には、私的使用、30条との関係をどう整備していくのか。当然、事業者との関係では間接侵害の問題が出てきます。そういうこれまでインターネットサービスに関して指摘された課題というものが、今後、クラウドサービスが進展することによって、そういう著作権法上の課題が助長され、顕在化していくということになるだろう。
 クラウドコンピューティングの著作権ということでは、これまで課題として指摘されたことが、従来にも増して顕在化していくということになるのではないか。それが現在の調査研究の方向性でございます。1月12日の報告に向けて、現在、最終とりまとめ調整中ということになります。
 もう一つの課題、間接侵害の問題につきましては、現在、審議会の中にワーキングチームを設けまして検討してきております。これもたたき台、素案というものを現在取りまとめているところでございまして、これにつきましても年明けの1月12日の法制問題小委員会にワーキングチームで取りまとめられたたたき台というものを御報告する予定にしております。法制問題小委員会では、先ほど局長からの御質問の際に御説明したように、著作権法30条の補償金の問題も含めた私的複製を中心に検討していただいております。
 今回、1月、年明けの会議で、クラウド関係の研究の報告書、また間接侵害に関するワーキングチームのたたき台が報告されることになります。したがって、30条の問題というのは、間接侵害のクラウドの問題と密接に関わってくる部分がありますが、これらの課題について検討する材料が一通り整う形になると思っております。法制問題小委員会において、今後、30条の問題を中心に、クラウドとか間接侵害の問題も含めて、1月以降、精力的に御検討いただく予定にしております。
 また、保護期間の問題につきましては、具体的に審議会で検討しているということは、現時点ではございませんが、今後の国際的な動向も見据えまして、適宜、必要に応じて検討していきたいと思っております。
 私からは以上でございます。

○文化庁佐藤課長
 引き続きまして、文化庁国際課でございます。お手元の資料の13ページをごらんいただきたいと思います。番号111から113、インターネット上のコンテンツ侵害対策ということで、ここに主なこれまでの取組みと、今後の具体の予定を書かせていただいております。
 次の14ページをおめくりいただきたいと思います。
 基本的には、今年度、特に二国間協議ということで、緑の2つ目のポツで、第7回日中著作権会議、これは中国の版権局とのバイの会合でございます。権利者団体からのヒアリングをいたしまして、改善要望等、このバイの協議の中で侵害対策の要請をしっかりしてきているところでございます。
 それから、最後のポツの日韓関係では、特に著作権及び隣接権の関係で覚書を結びまして、今後、更なる連携強化を図っていく方向で進めようと思っております。
 それから、経産省さん主催の知的財産保護あるいは知財のワーキングに関係省庁として参加させていただいておりまして、連携強化を進めているところでございます。
 それから、特にWIPOとの事業では、今年度、著作権等に関するWIPOアジア地域会合ということで、著作権の担当課長以上の方々を集めましてエンフォースメントの重要性、あるいはここでは特に条約加入の促進、それから著作権の集中管理の整備の強い要望があるということがわかったところでございます。それから、著作権思想の普及の関係では、特にWIPOではネパール等において教材作成、あるいはその関連のワークショップも実施してございます。
 それから、官民関係では、CODAさんの支援あるいは連携等で引き続き進めていきたいと思っております。
 最後、15ページでございますが、新年度の概算要求でグローバルな著作権侵害への対応ということで、今後、侵害発生地域の著作権に係る執行の法的枠組み、あるいは執行状態、あるいは著作権関連の侵害状況等を調査するとともに、特に法制面での著作権法制担当者等を対象に、権利者とかユーザーとのネットワークもここで結んだらどうかと思いますけれども、そういうフォーラム、セミナーをする開催経費を概算要求している状況でございます。
 あとは、今後、東アジアでの著作権思想の普及・啓蒙を進めることも重要な課題ではないかと認識しております。
 以上でございます。

○総務省玉田課長
 それでは、総務省の消費者行政課でございます。私の方からは、プロバイダ責任制限法の関係でございまして、お手元資料2-3の進捗状況の方で申しますと、6ページ、127番でございます。
 施策内容の一番左から2つ目の欄ですけれども、その後段でございます。「併せて」というところから、現行のプロバイダ責任制限法の検証を図った上で、実効性を担保するための制度改正の必要性について検討し、2010年度中に結論を得る。
 この部分でございまして、右の方にございますけれども、短期的には、プロバイダ責任制限法の検証結果を踏まえ、必要な取組みを実施。さらに進捗状況、右の方でございますけれども、この検証について、制度改正の必要性についての検討を受け、本年9月にプロバイダ責任制限法の省令を改正いたしました。その状況を注視してまいる状況にございますという件に関しましてです。
 お手元の資料2-2で御説明させていただきます。
 16ページをごらんいただきますと、プロバイダ責任制限法、念のため簡単に概要を用意しております。
 インターネット上に他人の権利を侵害する情報が流通した場合に、プロバイダというのは権利を侵害されたと言われる側、それから発信者のいずれからも法的な責任を問われるおそれがあるということで、それぞれ被害者の救済、発信者の表現の自由という2つの権利・利益のバランスに配慮した対応が必要であるという観点からつくられているものでございます。平成14年度から施行されてございます。
 また、中ほど下にございますけれども、この責任制限法の関係では、各種ガイドラインが制定されておりまして、これに基づいて運用が進められている状況にございます。下の絵にございますけれども、免責要件の明確化というのが左側の3条で、被害を受けた方から削除の申し出があった場合に、プロバイダは削除しないという方策と、削除するという対応がございます。
 左側、削除しないといった場合に、3条1項に該当すれば免責。これは、具体的には技術的にそれが対応可能である場合であって、情報流通によって権利が侵害されていると知っていたとき、あるいは情報流通を知っていた場合で、権利侵害を知ることができたと認めるに足りる相当の事由があるときでなければ、賠償責任は生じない。
 それから、右は、削除してしまった場合です。3条2項に該当する免責とありますが、これは不当な侵害があったということを信じるに足りる相当の理由があった場合、また、削除してほしいという申し出があってから、発信者側に意見照会をするわけですけれども、7日間を経過しても同意しませんという連絡がない場合に賠償責任は生じないこととなってございます。
 右の方は、第4条発信者情報開示関係、請求関係がございますけれども、こちらは被害を受けた、侵害されたと言われる方から、プロバイダ等に対して発信者の情報を開示してくださいということです。これは、権利侵害が明らかであるという条件と、例えば損害賠償請求など、開示を求めるに当たって正当な理由がある場合に、発信者情報の開示が請求できるということでございます。
 これに関連しまして、次のページからでございますが、利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会でございます。この中に4つのワーキングをつくった中の1つとして、プロバイダ責任制限法検証WG、この中ほどにございます。こちらで検討を行った経緯がございます。
 中身については18ページでありまして、平成23年度にプロバイダ責任制限法ができましてから10年の節目を迎えてございまして、昨年の知的財産推進計画2010も踏まえながら、事業者等による同法の運用状況、もろもろの環境変化等を踏まえながら検証を行ったということでございます。
 中ほどでございますけれども、学識経験者の方々に加えまして、オブザーバーとして知的財産推進事務局の方等にも御参加いただいている中で、月1回から2回、以下のように検討を進めてまいりました。中では、関係事業者あるいは関係団体の方々からヒアリングをさせていただきながら、御意見をいただきながら検討を進めたということでございます。
 19ページですけれども、本WGでの検討結果と提言です。幾つかダッシュがございます。
 法律そのものについては、もろもろの運用状況を踏まえて検証したという結果、現時点で法改正をする必要性自体は特段見受けられないということでございます。ただ、幾つか改正すべき点がある。
 例えば2つ目のダッシュでありますけれども、基本的にこの法律ができたときはPCからの発信がベースに考えられておりましたけれども、昨今では携帯電話による掲示板等への書き込み等も増えている中で、発信者情報開示に関して、携帯電話端末から発信された場合の発信者情報をもっと流通すべきではないかという御指摘から、今年9月15日に発信者情報開示に関する省令改正におきまして、携帯電話端末のいわゆる個体識別番号を開示される発信者情報の範囲に追加する改正を行ってございます。
 また、その下でございますけれども、冒頭申しましたけれども、このプロバイダ責任制限法の運用に関してはガイドラインがたくさんございまして、これを検討する協議会、民間の団体の方で検討いただいております。そちらに係るガイドライン改正を何点かしております。
 例えば、名誉毀損、プライバシー関係のガイドラインが1つありますが、これについては、更に昨今の裁判例の新しいものを追記すべきだということで、その追記をしております。
 また、発信者情報の開示に関するガイドラインにつきましては、裁判例追加、更にはP2Pによって権利侵害がなされた場合に、従来は裁判例に基づいてやるべきだとなっておったところについて、プロバイダが侵害を確認したときには、プロバイダにおいて判断してもよいという趣旨の改正を追加しております。
 また、開示請求を代理人が行う場合の規定があるわけですけれども、これは一般的な代理人ということで委任状の添付が必要とされていたところ、弁護士さんが行う場合にはそれは不要であるという追記改正をしております。
 以上でございます。

○総務省竹村課長
 引き続きまして、ネット上のコンテンツ不正流通対策に関する実証実験について、20ページの資料で御説明させていただきます。
 総務省では、平成22年度から動画投稿サイトとかP2Pのファイル共有ソフトを使いましたコンテンツの不正流通に関する検知・削除のための実証実験を行ってございます。平成22年度におきましてわかりましたことは、早い段階での検知、照合、削除依頼が重要であるということでございます。
 あと、動画投稿サイトにつきましては、国内とかアメリカのサイトでは比較的削除要請にこたえていただける例が多かったのでございますけれども、中国については、削除依頼をしても削除してくれない、あるいは削除してもすぐまたアップされるという事例が検証されました。
 そこで、今年度については、引き続きまして不正流通の検知の迅速化のための実証実験。それから、中国のサイトにつきまして、CODAと連携しまして削除依頼を実施するということを予定してございます。さらに、P2Pユーザーへの啓蒙・警告、注意喚起のための検証等を行うことにしてございます。
 私からは以上でございます。

○経済産業省伊吹課長
 最後、経産省から簡単に説明します。資料は12ページの下の4行だけですが、口頭でちょっと補足しながら説明させていただきます。
 CODAを通じて取り組んでいることは、著作物のデジタルのものをお預かりして、それを違法にアップされているかというのを自動的に検知して、検知したら違法のものを載せているサイトに対して削除要請を出すという活動をしてきています。今、ちょっと御紹介があったように、一、二年前は中国のサイトはほとんど無視するという対応だったのですが、この1年ぐらい、そこにも書いてありますが、CODAと例えばku6とか56とかsinaという中国の大手のサイトと覚書のようなものを結びまして、しっかり対応してくださいということをやっています。
 実際にこの1年やってきまして、この1年でやった削除要請に対しては100%、そのまま削除していただいているという状態になっております。これは恐らく、1つは中国のそういう大きいサイトが例えばアメリカで上場するとか、アメリカの企業からもコンテンツが欲しいということで、海賊版対策を自分としてやらなければいけないとなってきたこと。
 もう1つは、海賊版を削除すると流すものがなくなるので、正規のものをきちんとライセンスして商売させてくれということで、いわゆるビジネスのディールとして成り立つ形になってきているので、彼らが対応を変えてきているという状態になっていると思います。
 一方、日本の権利者からすると、過去のいろいろな対応の悪さというものが記憶に残っているわけなので、そんなにすぐに信じられないこともあると思います。そういうサイトと日本のコンテンツホルダーの方が相互に何をやって、どういうふうにビジネスになるのかということをセミナーのような形で開催して、その中からビジネスが生まれていったり、交渉を開始したりしている事例も少しずつ出てきているというのが今の実態です。
 以上です。

○中村会長
 ありがとうございました。ただいまの各省庁の説明に関しまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。先刻の質疑の中でも全体論議に入っておりますので、全体に関するコメント等でも結構でございますし、担当府省の方々も何なりと御発言いただければと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

○芝田次長
 済みません、事務局から総務省さんにお伺いしたいのですけれども、プロバイダ責任制限法の検討の中で、私も一通り読んでみたのですが、十分理解していないのかもしれません。アップロードする人あるいはダウンロードする人に対するスリーストライク制という制度が外国で導入されつつありますけれども、インターネット侵害については決め手がない状況の中で、韓国が唯一、スリーストライク制を成功例として実施しつつあると理解しています。
 通信の秘密の制約等があって、アップロード、ダウンロードのところで口座を閉鎖したりアクセス制限したりするのは難しいという結論だったように思いますけれども、悪質なサイトそのものに対する制裁ということは検討されたのでしょうか。
 また、今、アメリカでは、海外の悪質なサイトに対するアクセス制限に関する法案が検討されていると聞いていますけれども、そういったことも視野に入れた議論が行われたのかどうか、あるいは今後そういった点について検討する余地があるのかどうか、御意見を伺えればありがたいと思います。

○総務省玉田課長
 プロバイダ責任制限法の関係で御質問いただきました。
 このWGで検討した事項は非常に多様にわたりますけれども、今いただきましたスリーストライクの関係で申しますと、その前に悪質サイトの関係で、制裁について議論したかどうかということに関しましては、プロバイダ責任制限法自体がいわゆるプロバイダの民事的な責任について、どういう場合に免責になるのかという民事的な部分での制度でございまして、検討はされてございません。
 このスリーストライク制につきまして、各国によってもろもろの対応、勿論ドイツを初めとしまして、こういうストライク制をとらないということもあるわけですけれども、文化的背景、その他もろもろの状況によって、かなり差異があるのかなということでございます。
 1つ大きな問題としましては、スリーストライクなりの最終的な部分というのが、インターネット通信への接続の遮断ということになってきますと、今、御指摘もいただきましたけれども、通信の秘密を非常に侵害することにもなりますし、また表現の自由に対しても非常に大きな制約になるということで、結果としてはネガティブなトーンでの検討になったということがございます。
 そんな中で、例えばフランスのように文化的なものを非常に強く守っていこうという背景のあるところについては、刑罰という観点でスリーストライクの検討がされているということではあるのですけれども、そういう点で言うと、日本のプロバイダ責任制限法、民事を相手にしているということで、方向も少し違ってくるのかなと思ってございます。

○中村会長
 ほかにいかがでしょう。どうぞ。

○三尾本部員
 インターネット上のコンテンツの侵害対策についてお伺いしたいのですけれども、私が海外にいます日本人留学生を中心に調査した件がございまして、そのときに中国の動画投稿サイトから日本のコンテンツにアクセスできるかどうかということだったのです。放送番組のドラマについては、実際見られなかったのですけれども、中国国内でのみ見られるという状況にあるという報告を受けました。
 さらに、ドラマ以外の、例えばバラエティーについては、自由に見られる状態にあったということだったのですけれども、その辺りはジャンルによって削除要求を変えていらっしゃるのかどうかとか、見られる国・地域を限定しているような削除要請なのかということについて、お伺いしたいと思います。

○経済産業省伊吹課長
 多分、それは違う理由で国によって分かれているのだと思うのですけれども、削除要請するときには本当に落としてくれということなので、そこにそもそも載っていないという状態を目指して削除要請します。

○三尾本部員
 調査によりますと、実際には載っているということだったものですから、その辺がどういうことなのかなと思ってお聞きしたのです。

○経済産業省伊吹課長
 CODAがやっている削除要請は、権利を持たれている方からそのコンテンツをお預かりして、それについてやっているわけですね。だから、そこにかかっていないコンテンツというのも勿論あるので、資料の方にも書いておきましたけれども、その対象になるコンテンツというのをこれから増やしていく。
 それから、中国のサイト自体も、大きいところはそうやって正規配信に移っていくと思うのですけれども、そうするとまた中小が出てくると思うので、それはイタチごっこですけれども、チェックをしなければいけないサイトの数というのもこれから増やしていかなければいけないということだと思います。

○中村会長
 どうぞ。

○吉羽委員
 海賊版対策は、これはモグラたたきなので本当に時間がかかって、じわじわとやっていただくしかないのですけれども、同時に、心を入れ換えたプロバイダさんはコンテンツが欲しいと多分おっしゃってきているだろうと思います。片一方で輸入コンテンツに関する規制が存在して、正規版は出ないわ、海賊版はなくなるわということで、エアポケットになっていってしまうことも危惧されるわけです。
 特に、出版物に対する規制というのはかなりきつい国もあるのですけれども、この辺のコンテンツの参入障壁であるとか侵害物を正規版で置き換えていくという作業は、総合的に進める必要があるのですけれども、その辺は各省庁間でどのようにおやりになられているのかをお聞きしたいのです。

○総務省竹村課長
 まず、輸入コンテンツにつきましては、国によって文化政策的な観点からクォータ制みたいな形で外国製の放送番組とか映画については、総量制限を設けるみたいな制限や、あるいは韓国のように、地上波では日本製のドラマを流してはいけないといった、いろいろな理由によって規制がございます。そういったものについては、関係省庁と連携しながら二国間協議などで粘り強くやっていくということでございます。
 それから、不正流通をなくすのに正規流通にも力を入れなければいけないのではないかというのは、全くおっしゃるとおりでございます。ただ、先ほど伊吹課長からもお話がありましたとおり、まず正規流通の方を先行させるということにつきましては、権利者側の方からも、動画投稿サイト等に対する不信というものがあるものですから、そこは現地の状況などをよく調べながら、理解を得て進めていくべきではないかと考えております。

○経済産業省伊吹課長
 正規版を流通させるのはトータルで進めていくというお話だと思いますけれども、CODAがやっている活動は、今までは海賊版対策中心にやってきて、ku6とかsinaと協力していく中で、海賊版対策と正規版をそういうところにライセンスするというのをセットでやっていくと、両方がメリットを受ける。そういう状態になると、中国のサイトが自分で権利をライセンスしてもっている状態になる。そうすると、そのほかの人が海賊版を流すことというのは、彼らのビジネスを毀損する状態になるので、彼らの利害として海賊版を抑えていく形にだんだんなっていくのだろうと思います。
 まだ、その辺の彼らの状態というのと、日本のコンテンツホルダーさんからすると、彼らはまだちょっとと思うところがあるので、海賊版対策とビジネスと両方がセットになるように、その両者が理解し合えるような場をできるだけ設定していきたいと思います。
 実際、アメリカもそういうことをやっていまして、映像については中国ではいろいろな参入規制がありますので、彼らもインターネットでの配信の収入の方が、基本的にはDVDを売るよりも多くなっている状態になっていますので、今の規制体系ですと、そこを主体にしてビジネスを攻めていくということ。
 それから、総務省から御説明があったように、参入規制については、国としても粘り強く取り組まなければいけないということだと思います。

○総務省竹村課長
 ちょっとだけ補足しますと、アメリカのMPAA、映画協会はかなり中国の不正流通対策について熱心に取り組みました。その結果、正規ビジネスを育てて、正規ビジネスの配信者の方で不正対策をやってもらうことが一番の早道だということも聞いておりますので、そういった例も参考にしながら、関係省庁が連携してやっていきたいと考えております。

○中村会長
 はい。

○杉山委員
 ちょうどMPAAのお話が出たので、ついこの間、北京でMPAAの大きなフォーラムがあって、日本の学生も招いて、中国とかアジアの人を招いて、映画づくりの話から含めて著作権の権利意識を向上させるという活動をやっているのですね。それは映画の協会じゃないですか。そういう地道だけれども、日本だとアニメの人たちもそういうことを中国へ行ってやるとか、一歩一歩ですけれども、重要なのではないかと思いますね。
 準備会議でも参考人の人たちから非常に意見が出たと思うのですが、国益という大きな観点で考えると、そうは言っても、中国の子どもたちが海賊版を大量に見てくれたおかげで、日本に対して心を寄せているということが、物すごく多くの人数いるわけです。ですから、取り締まるというだけじゃなくて、勿論正規版も必要なのだけれども、それに対してのコストがもしあるのであれば、これは実は国益にかなっていることもある。
 そういうところもちょっと考えてあげないと、日本のアニメ制作会社という、会社単位で見れば非常に小さな会社ばかりですので、そういう人たちが全部打って出るということは、ハリウッドの資本と同じようには勿論できないので、その辺も考えてあげた方がいいのではないかと思います。

○中村会長
 今日は、デジタル化・ネットワーク化がテーマなのですけれども、先ほど来の輸入規制などの話は、我々のもう一つの柱である海外展開の方で非常に重要な課題となっていて、それを整理しなければいけないわけです。しかしながら、今の話を聞いていますと、こうしたデジタル化・ネットワーク化という動きと、海外展開という2つが非常に密接不可分になっているということでとらえていくべき問題かなと。
 その際に、今、御指摘があったように、海賊版のもたらす国益のようなものも、普通の議論とはメタな視点で知財本部としては持っておかなければいけないということなのかもしれないですね。ほかにいかがでしょう。
 著作権について、私が聞き逃したのかもしれないので、永山課長にお伺いしたいのですが、資料の中にあります日本版フェアユースの権利制限の一般規定の今の状況をお聞かせいただけないですか。法律の運びがどのようになっているか。

○文化庁永山課長
 明確なことは申し上げられないのですが、早ければ来年の通常国会への提出を目指して、今、準備を進めています。最終的に提出するかどうかは、また政府全体としての決定ということになりますが、一応、提出が可能なような準備は、我々として鋭意進めさせていただいております。政府内の調整があります。

○中村会長
 もう一つ、保護期間の延長の問題も、TPPに参加するとなると議論になるのではないかなどと指摘されておりますが、この問題というのは、今どのように扱われていますか。

○文化庁永山課長
 先ほど国際的な状況も踏まえてと申し上げた中には、当然、今、御指摘のTPPにそもそも日本が参加するのかどうか、また、仮に交渉に参加したときに、どういう議論が行われているのかということで、この保護期間については議論になっている可能性が非常に強いと考えております。そういう動向を踏まえつつという話と、韓国が隣接権も含めて70年に改正する法案が通っているとか、EUでも隣接権については70年にするという欧州委員会決定がなされている。そういう国際的な動向を踏まえつつ、今後検討していきたいと思っております。

○中村会長
 ありがとうございます。どうぞ。

○中山本部員
 電子出版でもよろしいですか。

○中村会長
 はい。

○中山本部員
 先ほどの電子出版について、3省、どちらでも結構なのですけれども、お伺いしたいのです。
 書籍と雑誌について話を伺ったのですけれども、新聞については話が出ていないのはなぜでしょうかということです。書籍に比べたら、新聞の方がよほど電子出版に親和的だと思います。1日2回しかニュースが見られないのを随時更新できますし、そうすると、場合によってはテレビのニュースにも対抗できるかもしれない利便性があると思うのですけれども、抜けているのはなぜでしょうか。

○文化庁永山課長
 3省懇のメンバーの中に新聞社の代表の方も入っていただいておりますので、別に議論として排除しているということではないのですが、課題としては書籍とか雑誌などを中心に検討してきたということは事実としてあると思います。

○中村会長
 それは、新聞側から政策として発動してほしいという要請がないということなのかもしれないですね。

○中山本部員
 電子出版については新聞のほうが書籍よりも利便性が高いですね。なのに、どうして出てこないのかという話を3省の方に伺いたいということです。

○経済産業省伊吹課長
 恐らく、日経さんはああやって有料化していますけれども、ほとんどが無料でネットで見られるので、そこから有料にしてビジネスにするという形態に移るというのは、多分物すごく難しいのではないかと思います。消費者も無料のネット新聞に慣れてしまっている。例えば、無料で見られる電子書籍はそんなにあるわけじゃないので、その辺のそもそもの前提が大分違うのではないかという気がします。
 海外でも、FTとかTimes、あの辺が大分有料化して、Timesなどはほとんど見られないようになっています。両方やると、確かにカニバライズして紙の方が売れなくなるという心配を、大手の新聞社の方は勿論お持ちだと思います。

○杉山委員
 少し議論がずれるのですけれども、新聞の話で。今、若い人も含めて、エコとか省エネとかもったいないとやっている中で、新聞が発行部数と実際に我々に届くもの、そして毎日、そのままもう一回紙に戻さなければいけないとか、溶かしてもう一回使うという部分があると、消費者も随分気が付いていると思うのです。そういうところになぜだれも公的なところで話が行かないのか。
 あれだけ印刷して大型トラックで運んで、どこかにまたたまって、実際に届く量と、相当もったいないですね。40%ぐらいロスしているといううわさもあるわけですね。でも、そういう議論はだれもしてくれない。でも、消費者は割と気が付いていて、消費者運動でそういうことを展開している人もいるわけですね。なので、若い学生でそういう意識を持つと、新聞は電子で読んだ方がいいよねというのは、そういう観点からです。話はよく出ます。

○中村会長
 はい。

○中山本部員
 確かにネットで無料の新聞を一部読むことができるのですけれども、なかなかあれだけでは満足しないので、満足しないような部分しか出していないのではないかという気がします。

○中村会長
 ほかにいかがでしょうか。はい。

○芝田次長
 経産省さんにお伺いしたいのですけれども、先ほどデジタル化の助成予算を補正で確保されたというお話をお伺いしましたけれども、これは先ほど来お話があるように、紙のものを電子化するというときの助成ということでございますね。むしろボーンデジタルのものを小さな出版社がチャレンジしてみようというときに、リスクマネーの助成という形での支援というのは、可能性としてないのでしょうか。
 再販制度で守られているということでございますけれども、紙で出して、当座の操業資金を次から次へと新しい本を出して確保するというのが、一つのビジネスモデルになっていると思うのですけれども、そうじゃなくてボーンデジタルのものをどんどん出していくという環境を整えていくというためのリスクマネーを支援するような検討の方向はないのでしょうか。

○経済産業省伊吹課長
 今、初めて言われた話なので、にわかにはちょっとお答えできないのですが。次の課題として、そういうことがあるというのは、次長のおっしゃるとおりだと思うのですけれども、まず今、電子書籍をしっかり広げていくということについて言うと、電子化されているものというのは数万部ぐらいしかないわけです。世の中には60万とか80万、細かいものまで入れると150万部という数の本の種類がありまして、それを少なくとも40万、50万とか70万ぐらいまで冊数が増えていかないと、マーケットが成立しない。
 実際、我々が買う本も、別に全部新刊本を買うわけじゃなくて、夏目漱石を買う人もいるし、10年前の村上春樹を買う人もいるわけです。そういうものを広げていくというのがまず第1、このマーケットが大きくなっていくために絶対必要だろうということで、今回はこれを優先して予算化したというのが経緯です。

○中村会長
 ほかによろしいでしょうか。どうぞ。

○吉羽委員
 電子書籍と図書館の話なのですけれども、本は全部一まとめに語られてしまうのですけれども、娯楽とか教養のための一般書と、本当に専門書で、基本的には大学図書館も含めた図書館を中心として、そういったところにおさめることがかなり中心になっている専門書とでは、商業的な立ち位置が大分違うので、図書館に対する向き合いというのも随分違ってくるのだろうとは思っています。
 この辺で、まさに専門書というのは、一般の方々も、1万円とかする本はそんなに個人で買うわけではないので、基本的には図書館を中心とした利用になるだろうと思うのですけれども、この辺の図書館での専門書の利用。それから、電子的になった場合に、実際に今、専門書の出版社というのは、図書館に買っていただくことで再生産しているわけですけれども、こういった図書館での専門書の電子書籍の取り扱いについての議論というのは、一般論を離れてやられているのかどうか、この辺はいかがなのでしょうか。

○文化庁永山課長
 文化庁で今、検討しているのは、国会図書館のデータの活用という中で、今おっしゃっているような論点もございます。当然、これから今回の報告を受けて、実際に国会図書館のデジタルデータを地方の図書館まで送信できるように権利制限したときに、その対象はどこまでなのか。
 要するに、専門書とか辞典とか、さまざまなものがあって、民間のいろいろなビジネスに悪影響がないように、具体的にその範囲をどう画定していくのかということについては、今後、法改正が行われた後に具体的に、今回の送信の部分については検討していきたいと思っています。

○吉羽委員
 済みません、悪影響がないようにというのはそうなのですけれども、例えば千代田図書館でやられたときは、図書館がリアルな本だったら2冊買いますと。電子書籍でも同様で図書館が2冊分の購入した場合、アカウントは2つまでしか貸出ができないという制限をかけたかと思うのです。今、北米の公共図書館もある一つの仕組みを使っているのですけれども、あるところで登録すると、世界のどこにいてもPCがつながっていれば閲覧はできるけれども、アカウントが2つまでしか許されていなければ、貸出が終わるまでの間、待たなければいけないという仕掛けになっていたりする。
 これが一般書であったとしても同じなのですけれども、貸出行列が10人も20人もいるのだったら、じゃ、本を買おうかということで、本への購入導線が引っ張ってあったりして、お客さんと出版社と図書館という3者にとっての、ある種のウィンウィンの関係みたいなものを築けるような形を目指しているように受けとめるのです。議論としては、そっちは民で、こっちは公で、なるべく侵害しないようにしましょう、侵食しないようにしましょうというところでとまってしまうと、前に進みづらいのかなという印象は持っています。

○中山本部員
 今、改正の議論がされているのは国会図書館の話なのであり、しかも一般に入手が難しいものについてやろうということなので、今のような御心配はないと思いますけれども、これからは、先ほど著作権課長がおっしゃったように、各家庭まで送る、あるいは新刊も送るとなるとすれば、その場合は多分有料にならざるを得ないでしょう。
 では、値決めはだれがするか、幾らにするかという難しい山を幾つも越えなければいけないことになるわけで、今回はとりあえず国会図書館の蔵書で入手が難しいものを他の図書館に配給するだけですから、今のところ余りそういう心配はないだろうと思います。

○吉羽委員
 心配しているのではないです。考えていますかと聞いています。

○中村会長
 そこは、是非新しいサービスが生まれるように、そういう意味での官民、図書館を含めての連携みたいなものを新しいテーマとして進めていきたいですね。

○中山本部員
 その意味では、例えば国会図書館の長尾館長辺りが非常に努力していまして、おっしゃるとおりウィンウィンの関係でやらなければいけないのだけれども、何がウィンウィンかというところが非常に難しくて、大きな山であると考えています。

○上田次長
 今、吉羽委員、中山先生からのお話は非常に大事だと思います。この2月ぐらいに専門調査会の方でも電子書籍について大分議論したと思いますけれども、その結果を踏まえて、今日の資料の方にも提示してありますが、知財計画で、先ほど私、読み上げましたけれども、民間ビジネスの圧迫を避けながら、しかし図書館だけじゃなくて、家庭とか外部への配信というのも考えていく。
 文科省さんが2011年度では、そのようなことについて議論していく。2012年度においては、これについて必要な措置を実施していくという、2012年度まで、まだはっきりしていないのですけれども、計画に若干芽が出ている状態ではありますね。今のお話というのは、電子書籍全体あるいは本を利用する国民の立場から、非常に大事な知財の政策だと思うので、もう少し検討を深めて、今度、2012年の工程表を改訂するときに、議論をもう少し先に進めることができれば、建設的かなと思います。

○中村会長
 お願いいたします。
 どうもありがとうございました。今日は、再販制度への言及とかボーン・デジタル・コンテンツへの支援の在り方、あるいはスリーストライクのような侵害対策のエンフォースメントをどうするかといったさまざまな意見をいただきました。難しい問題・課題が多々残っている中で、また新しい課題もどんどん生まれてきている状況でございますが、予定の時間が参りましたので、今日の会合をひとまずここで終了といたしたいと思います。
 今日いただいた意見以外にも、意見、コメントなどがありましたら、後ほど事務局までお寄せいただければと存じます。
 最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。

○木村参事官
 次回でございます。来年1月18日水曜日の13時30分から、今度はクールジャパンということで議論を行うとともに、本日、少し御紹介させていただきましたが、準備会議での検討などを整理して本専門調査会に報告する予定でございます。詳細につきましては、決まり次第、また皆様に御連絡を差し上げます。
 以上でございます。

○中村会長
 次回は新年ということでございます。皆さん、どうかよいお年を。