○中村会長
おはようございます。
では、ただいまから「コンテンツ強化専門調査会第10回会合」を開催いたします。
お集まりいただきましてどうもありがとうございます。
今回で「知財計画2012に盛り込むべき事項」を取りまとめる会合となりますので、よろしくお願いいたします。
今日は、後ほど古川担当大臣にも御参加をいただく予定となっておりまして、大臣がお見えになりましたらごあいさつをいただいた後、皆さんから大臣に対する意見なり、質問、コメントをいただきたいと思っております。
今日は、大ア委員、谷口委員から御欠席の連絡をいただいております。
また、知財戦略本部員からは里中本部員、中島本部員、中山本部員、三尾本部員に御出席をいただいております。ありがとうございます。
さらに、今回、有識者として株式会社All Nippon Entertainment Worksの黒川裕介代表取締役COOに御出席をいただいております。ありがとうございます。
担当府省からは、外務省知的財産室彦田室長、文化庁著作権課永山課長、経済産業省文化情報関連産業課伊吹課長、独立行政法人日本貿易振興機構生活文化産業企画課原課長に御出席をいただいております。
では、早速ですけれども、議事に入りたいと思います。
まず、事務局から本日の資料確認をお願いします。
○木村参事官
それでは、資料の確認をさせていただきたいと思います。
議事次第に続きまして、資料1、本日御出席いただいてございます株式会社All Nippon Entertainment Worksの黒川様の配付資料ということで、席上のみの配付となっているところでございます。
資料2、これは谷口委員が副理事長を務めます音楽産業・文化振興財団と日本貿易振興機構が官民連携で実施しておりますジェトロ・アジアキャラバン音楽連携事業という資料でございます。
資料3、今次通常国会に提出中の著作権法の改正案とACTAということになってございます。
資料4、IT本部と知財本部の有識者会議の開催についてという資料でございます。
資料5−1、本専門調査会としておまとめいただきます知財計画2012に盛り込むべき事項案の主要施策となっておりまして、資料5−2はその本体でございます。
資料5−2については、併せて3月に専門調査会で決定いただきました知財計画2012骨子に盛り込むべき事項からの修正分を赤字でお示しした資料も席上のみ配付させていただいております。
資料6は知財計画2012の工程表、資料7はクールジャパン関係施策一覧でございまして、それぞれ暫定版でございます。現在、関係府省と調整中でございますので、席上のみの配付とさせていただきまして、会議終了後回収させていただきたいと存じます。
参考資料1、前回御議論いただきました主な意見をまとめたものとなっております。
参考資料2、中国三大ビジネス誌の1つの新華社『環球』に掲載されました角川委員、谷口委員、近藤前局長のインタビュー記事でございます。著作権の保護や国民の意識啓発といった課題につきまして、予算をかけずに多方面から対中アプローチを進めているというものでございますので、お時間があるときにご覧いただければと存じます。
以上でございます。
○中村会長
ありがとうございます。
さて、先ほども御紹介申し上げましたけれども、今日は、株式会社All Nippon Entertainment Works、通称ANEWの黒川さんにお越しをいただいているのですけれども、コンテンツの海外展開に向けた支援を行うANEWについては、この会議でもたびたび話題になっておりまして、一度お話を伺いたいという要望も出ていたところでございます。
黒川様には、ANEWの業務あるいは今後の展開についていろいろお話をいただければと思います。
よろしくどうぞお願いいたします。
○黒川氏
改めまして、All Nippon Entertainment Works、略してANEWと申し上げておりますが、共同の代表取締役をやっております黒川と申します。よろしくお願いいたします。
済みません、着席させていただきましてプレゼンテーションをさせていただければと思っております。
まず、今、申し上げましたANEWというのは、いわゆる生まれ変わるという意味でございまして、ここの表紙に書かせていただいておりますように、日本のエンターテイメントに関して是非ここで世界に向けて更に新たな形で展開できないかを私たちは考えておりまして、このような名前を付けさせていただきました。
簡単に今回、会社の御説明をさせていただければと存じております。
表紙をめくっていただきまして2ページ目、もう皆様、御存じだと思いますが、グローバルに展開する、あるいは通用するポテンシャル、潜在力のある日本のコンテンツは非常に様々あると存じております。ここに挙げておりますもの以外にも様々な分野で、コンテンツだけではなくて、クールジャパン全ての分野において日本は非常に力があるものだと存じております。
ただ、3ページ目、コンテンツ、メディアエンタテインメントという市場で見た場合には、日本の市場そのもので申しますと、世界の第2位、いわゆる北米に続く国としては第2位の市場という非常に大きな市場ではございますが、逆に言いますと、世界の約10分の1という大きさを示しております。
この5年間ほどの棒グラフを出させていただいておりますし、その後、2015年、約数年先のフォーキャスト、予測を載せさせていただいておりますが、基本的には変わらず、日本が約10分の1の市場ということになります。それに対しまして、ここで見ますと上から3番目、4番目といったいわゆる中近東あるいはアジアといった市場がこれから伸びていくことも見えておりまして、グローバルの市場、世界の市場はますます非常に重要になってくると存じております。
これまで日本のコンテンツというのは、勿論幾つか既に輸出なども行われてはおりますが、基本的には日本の市場で収益を稼いできたということが現状だと存じております。それに対しまして、本当に世界に、いわゆる日本の10倍の世界の市場からきちんと収益を稼いでくるというのが私たちが課題としております意識、認識でございます。
4ページ目、それでは世界のエンターテイメント市場のなかでどこに根差すかを定めるためにここに幾つかの産業分野を示させていただいております。上からテレビ、映画、ゲーム、本、新聞、雑誌、音楽、ラジオといったいわゆるエンターテイメントのジャンル、セグメントをここに示させていただいております。
それを左から市場規模、成長性、いわゆる年平均の成長率です。参入の難易度。特に難易度というよりは1つのコンテンツ、1つの作品が全世界にどのぐらい展開していくかを定性的に見させていただいたものです。こういったものからの観点で見ますと、いまだに映像分野、映画、テレビといった分野が非常に大きな市場規模あるいは市場成長率というものを持っていることがご覧になれるかと思っております。そして、勿論その更に先にはビデオゲームあるいはソーシャルゲームといったゲームというのが今後の成長率として控えているということでございまして、私たちが日本のコンテンツ、IP、知的財産というものを世界のエンターテイメント市場に広げていく、展開していくときの最初の主要な市場として、主要な産業として私たちとしては、この映画、テレビ、ゲーム。特に最初は映像市場を主要な市場として考えているということでございます。
それでは、映像を展開するということで、次のページ、これは煩雑な資料で大変恐縮ですけれども、赤の点がいわゆる日本映画が字幕あるいは吹き替えでそのまま輸出された場合、そのまま公開された場合を示しております。それに対して青の点は日本のいろいろな作品、小説ですとか映画、そういったものがリメイク、映画化されて公開された場合というものも示しております。これは米国でございますが、横軸が米国の上映館数、いわゆる劇場で上映された館数、縦軸が米国内での興行収入ということでございまして、一目でおわかりになられるかと思いますが、一部勿論そのまま輸出されても、米国でも非常に興行収入も高く、広く公開されているという作品があるかと存じておりますが、一般的には、やはりリメイクする、映画化するといったものの方が圧倒的に世界での広がり、世界からの収益の稼ぎ方ができるかと存じております。あるいは既にもう民間会社さんではこうした字幕あるいは吹き替えでの輸出は更にされているかと存じておりますので、特になかなかハードルが高いと言われておりますリメイク、実写化、映画化といったものに対して私たちANEWとしてはお役に立てればというのが私たちの考えです。
6ページ目は非常に煩雑な資料になっておりまして大変恐縮でございますが、縦軸、左側に日本のIP、コンテンツ、知的財産がグローバルコンテンツ、特に世界の映画になるまでといったフローを示させていただいております。最初に、世界の映画になるためのコンテンツの発掘、収集が第一段階。その次に、これは特に日本において特徴的なものではございますが、権利関係の交通整理、専門用語で申し上げますと、チェーンオブタイトルのクリアランスというものがございます。このチェーンオブタイトルのクリアランスということをしていかなければいけないというのが2つ目。
もう1つは、実際に世界の映画をどうやってつくっていくか、世界のコンテンツをどうやってつくっていくかということに関して制作会社さんとのパートナリング、信頼できる方を見付ける、あるいは信頼できる方との交渉。そして実際に脚本を開発する、企画開発する。そしてそのための資金調達をするといった問題が全てクリアされたところでようやく制作に向かう。これもまた専門用語で恐縮ですが、私たちはグリーンライトと呼んでおりますが、このグリーンライトが起こるということで、この4つのフローを日本側、世界側どちらにも障壁がございました。この障壁をクリアしていって、日本の知的財産、IPが世界のコンテンツになるために是非後押しをさせていただこうというのが私たちの考えでございます。
具体的にどのような価値、機能を御提供できるかをその次のページに書かせていただいております。
まず、一番上からでございますが、1つは、原作者あるいはクリエーターの方々、実際に作品づくりに携われた、出資された制作会社さん、権利者の方々に喜んでいただけるようなプラットフォーム、そういう機能を提供させていただく部分です。
もう一つ、左側に行きますが、長期視点でリスクをとれるファイナンス機能とありますが、特に先ほども申し上げました企画開発というところは多分日本にはなかなかない仕組みではございますけれども、世界映画をつくる場合にどうしても企画開発、ディベロップメントという部分で数千万あるいは数億円というリスクマネーが必要になってまいります。この数億円、数千万円というリスクマネーをなかなか日本の事業会社さんが今までとりにくかったという現状があると存じております。そちらに関してANEWとして、まず投資負担をさせていただこうというのが2つ目でございます。
そして3つ目でございますが、世界の、ここに非常にたくさんありますが、グローバルトップスタジオ、グローバルトッププロダクションといったアメリカを中心としたメジャースタジオ、あるいは独立系の制作会社さんで数百億円、数千億円という企画開発、制作をやっている方々がいらっしゃいます。こういった方々との、特にトップの方々とのネットワークは、なかなか日本の方々が持つことができないものがございました。今日ごあいさつに伺えなかったのですが、米国の代表を中心といたしまして、今回は日本のために働くと言っておりますこういったトップのネットワーク、ホットラインを有しているネットワークがございますので、こちらも是非御活用いただければと存じております。
もう一度、上に戻らせていただきますが、こちらに今、14社さん。日本のメディアエンタテインメントを代表する企業様にコラボレーションパートナー様という形で御参加いただいておりまして、2月末に私ともう一人、米国の代表が着任させていただきまして、皆様にごあいさつをさせていただいている次第です。今、14社さんで各社さん、10作品から20作品、IPをお預けいただいておりまして、現在、私どもの方で100以上の作品をお預かりして進めさせていただいているということで、本当にありがたい、大変うれしい悲鳴を上げているというのが現状でございます。こういった中から1つでも多く、あるいは更にコラボレーションパートナーの方々に、更に多くの日本企業様に御参加いただきまして、更に多くの日本のIP、作品が世界に展開されるよう、私たちとしてはお役に立てればと存じております。
最後のページでございますが、改めて会社の概要をこちらに示させていただいております。
All Nippon Entertainment Works、日本の会社でございまして、産業革新機構さんより60億円の御出資を100%でいただいております。
取締役会は今、産業革新機構さんと米国の代表、私で入らせていただいております。
東京とLA、勿論米国にオフィスがございまして、その下に非常にフラットに企画開発担当者、プロデューサーというものが働いております。非常にカジュアルで、ファミリーのような小さな組織で、スピーディーに動いて、日本の作品が是非世界に飛び出すようにお役に立てればと存じております。
右側の真ん中にございますが、投資委員会というところがございまして、こちらはまだまだ決まっていないのですけれども、産業革新機構さんと御調整させていただきながら決めさせていただき、ここで全ての投資、全ての動きを調整させていただくと考えております。あるいは今後こういったプロデューサー、世界映画をつくるプロデューサーという方々をここで育てていければと存じておりますので、ANEWの社内だけではなくて、コラボレーションパートナーの皆様も御一緒に、いい形で調整、共同作業をさせていただきながら、是非ここからコンテンツが出るだけではなくて、人材も含めて世界コンテンツをつくられるプロデューサーの方々が旅立っていかれる、あるいはここをスプリングボードとしていただけるように頑張らせていただければと存じております。
済みません、駆け足でございましたが、簡単に御説明させていただきました。
ありがとうございました。
○中村会長
どうもありがとうございました。
では、御意見、御質問などがありましたらお願いいたします。
いかがでしょうか。
どうぞ。
○大多委員
質問を幾つかさせていただきます。
この会でも、私も非常に興味を持っておりまして、何度か聞いておりますけれども、もう14社のコラボレーションパートナーということで、私自身詳細は聞いていないもので、あえて質問をします。
ここに書いてある中で、グローバルのトッププレイヤーとのネットワーク、アレンジメント力と書いてあるのですけれども、例えば当然テレビドラマ、映画は『リング』みたいな成功例もありますが、テレビドラマは我々はいろいろな向こうのメジャースタジオの人たちと話をしていると、基本的には、全く日本のテレビドラマには、アイデアには興味があっても、だから、ネタだけくれなんですね。別にそこにクリエーターも要らなければ、日本人がADですら入ることすら要らないのですね。それでも、ADぐらいでもいいから働いて、そこからいろいろ芽を見付けさせてくれないかといっても相当、それですらハードルが高い。それぐらいハリウッドのメジャーというのは、日本の映画的なクリエイティブとか、インターネット的なクリエイティブに関しては何か、あと、アニメに関しては興味がありますけれども、テレビドラマにはもう全く期待はしていない。つくり手に関しては。ただ、ネタだけください。1話100万円ぐらいの非常に安価なリメイク料とか、とりあえず抑えさせてくださいということで抑えられて、でも、どこかでクリエーターたちもハリウッドでリメイクされるならという、うれしいものですから、それぐらいでも手を打ってしまっているというのがあって、少なくとも、映画は何本かありますけれども、テレビドラマにおいて向こうで成功した例はないし、たとえ行ったとしても、日本の企業なりに入ってくるお金は相当低いというのがあって、例えば向こうのトッププレイヤーであるJ・J・エイブラムスとか、そういう人たちとネットワークをつないでもらっても、もらえるのは本当に安価なリメイク料だけという中で、こういうのをどうしていこうとお考えなのか。それはそのままもう1つの権利者の方に喜んでいただけるプラットフォームといっても、喜んでもらえるような、少なくともビジネス上はマネーはないんですね。だから、そういう名誉だけで喜んでいただけるというプラットフォームをイメージされているのかというのが疑問に思いました。
もう1個、会社で米国の代表の方も入っていると聞いておりますけれども、どういう方なのか。向こうのメジャーのどういう方なのか。どのぐらいの力があるのかということもお聞かせ願えればと思います。
○黒川氏
ありがとうございます。
2つ御質問をいただいたと思っております。まず1つ目からお答えさせていただこうと思っております。
まず1つ目です。きちんとここで御説明させていただいていなくて、今日はフレームワークをということで御説明させていただきましたが、今ちょうど別紙を簡単にお配りさせていただいておりますけれども、私どもがまず今ここで参加させていただこうと思っているのは企画開発という、企画開発ポストという部分です。これは立ち入りますとかなり複雑になっておりますので、簡単に申し上げます。
今、まさに日本の企業様が今まで参加してきた、あるいは海外の方々とやってきたのは、リメイク権料、映画化権料を売り切ってしまう。ライセンスして、そのライセンス料をとっていただいて、その代わりあとちょっとプロデューサーの名前ですとか収益を少しとるといった形で、ライセンスをするモデルだったと存じております。それに対しまして、ライセンスをする先、あるいは私個人としては、日本映画の方々、日本のIPの方々がリメイク権料を売る、ライセンスするという考え方をされずに、御自身で保持して、御自身で企画開発をしていく、その肩代わりをANEWとしてさせていただいていると思っておりまして、シンプルに申しますと、絶対に米国の制作会社さん、あるいは米国のパートナーさんに、それはJ・J・エイブラムスのようなどんなに強い方でも絶対に渡さない。こちら側で全て保持して、日本の代表として、日本のIPホルダーの方と御一緒に、常に対等あるいはそれ以上に主張していくというモデルを、これはなかなか難しいことは御存じだと思いますけれども、挑戦していきたいというのが今回のANEWの試みでございます。
したがいまして、アメリカのパートナーさんというのは常にパートナーであって、私たちがまずは主であるということです。余りここでアメリカの方に聞かれると困るのですが、そういうつもりです。
御質問の2番目ですが、米国の代表は、きちんとプロファイルもお送りさせていただきますが、1970年代の後半にMGMというメジャースタジオの幹部でキャリアをスタートしまして、その後にCAAという、御存じの方も多いかと思いますが、その当時は特に非常に巨大であった米国のタレントエージェンシーで、マイケル・オーヴィッツという、その当時は巨大であった方の右腕をやっていらっしゃった方です。まさにその方の薫陶を受けて、ロバート・レッドフォード、ロバート・デニーロという、この方々ももう大御所の方々ですが、その当時はまだ少し若くいらっしゃって、その方々のエージェントをやっていらっしゃった。その後にCAAが企業部門を立ち上げて、それこそソニーさんがコロンビアを買収されたり、松下さんがユニバーサルを買収されたときにCAAがアレンジしているのですけれども、そのアレンジのところに立ち合った方です。その後、CAAを辞めまして、ユニバーサルという映画会社、これもメジャースタジオさんですが、メジャースタジオの幹部をやられまして、更に独立系の制作会社さんに行かれまして、更にここ10年はエンターテイメントメディアベンチャーズというテクノロジーとエンターテイメントの境界線にありますベンチャーキャピタルの社長を務めておりました。数年前、2、3年前に「U2 3D」という、3D映画としては、ライブコンサートの映画としては一番初めの映画のプロデューサーをやるなど、常にエンターテイメントと新しい切り口というものを模索されてきて、今回、日本のIP、日本の強さと世界のエンターテイメントという掛け算を日本側に立ってリードしたいと考えてくださっている方々で、私が見付けたわけではなく、産業革新機構さんに見付けていただいた方ですけれども、ハリウッドのコア中のコアでありながら、日本のために働く。ハリウッドの中でもブラックボックスがあったり、ハリウッドの中で変なディールがあることは承知しているけれども、自分は絶対そういうディールはしないと言い切って、今回代表についてくださった方です。その人と一緒に、先ほど申し上げました対等の交渉力、あるいは日本が全てリードするような収益を稼いでいくという形を実現していければと存じております。
○大多委員
大体対等と最初は始めるのですけれども、私も結構ひどい目に遭っているので、是非頑張っていただきたいと思います。
○黒川氏
私も気持ちはすごく強いのですけれども、まだ一個も実績を出させていただいていないので、是非頑張らせていただきたいと思います。今後、応援をよろしくお願いいたします。
○中村会長
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。
○吉羽委員
日本側に満足してもらえるようにというようなお話で大変心強いのですが、実際、私たちも作家の先生の原作を預かりながらハリウッドと交渉していくわけですけれども、最終的には著作権を譲渡しなければ映画の制作をしませんという交渉が始まったりとか、基本的には原作料を最初に一括払いをして、あとはロイヤリティが戻ってこないことの方が多いのです。大多さんもおっしゃっているように、その極めて高いハードルを一体どういう形で乗り切っていけるのかというのは、正直、交渉当事者をやっている者からして、つまりそんな不利なディールをしてまでもハリウッドが日本のプロパティを欲しいと思うのだろうかという極めて素朴な疑問はどうしても感じてしまっている。やはりIPからのリターンがきちんと日本に返ってくる形をどこまで実現できるのかがすごく重要なポイントで、そこのところを是非頑張っていただきたいなと思いつつ、どうやってやるのかなというのはすごく心配なところではあります。
○黒川氏
ありがとうございます。頑張らせていただきます。
おっしゃるとおりで、私も今まで日本のIPホルダーさんの下で海外事業ということで、リメイク権をお売りするとか、あるいはリメイク権を基にした共同開発を何度かやらせていただいております。ここにいらっしゃる佐藤社長の下でも私はいろいろと御指導を受けさせていただきまして、幾つか多分今後そういった形のものができてくるのではないかと存じております。私もその経験を少し持ちながら、今回一番大きいのは、別紙でお配りさせていただきましたディベロップメントのコストを持つというところでは存じておりまして、御存じかと思いますが、今、ハリウッドのメジャーあるいは独立系のアメリカの制作会社さんでもディベロップメントのコストが非常にリスクなので、なかなか投資しないという状況に陥っています。逆に言うと、米国の代表のサンフォード・クライマンという人間からしますと、なぜ今さらここに出すのだというぐらいに逆に言われるぐらいリスクなところです。
ただ、このリスクなところを出すことで主張は非常に強くできるかと思っております。これは日本の事業会社さんからすると、数千万円から数億円を1つの作品にかけるというのはなかなか大きなリスクだと思っておりまして、これを今回、産業革新機構さんがゴーサインを出してくださったというのは当社にとっては非常に大きい。あるいは日本のIPホルダーさん、権利者さんにとっても非常に大きいことかなと存じております。
○吉羽委員
ここに期間が1〜3年と書いてあるのですけれども、大体、企画が早いやつで5年とか10年ぐらい塩漬けをくらっちゃうことの方が多くて、その間、例えば日本でもう1回別の同じプロパティのリメイクだったりとか、新たな映画化とかというのが今度止まってしまうことも多々あるので、期間の塩漬けはちょっと厳しいなといつも現実的には思っているところです。
○黒川氏
おっしゃるとおり、一般的には日本の作品の権利をあちら側に、アメリカのプロデューサーにお渡ししている形になっておりますので、そうするとそのスピードのコントロールも含めてアメリカの方々、普通に考えられても買った方々というのはしようがないかとは思いますが、そちら側にコントロールされている。ここも私たちの方で当然コントロールしますし、今回、産業革新機構さんからキャパシティ、ケイパビリティとしていただいておりますのは、最悪、自分たちで全てを100%リードすることができるような投資あるいはコントロール力ですね。勿論私たちとしてはなるべく実現させるためにパートナーとしてのアメリカの制作会社さんを必要とはしております。ただし、最終的にはそれがいなくても自分たちでもつくるということで、ここのスピードアップ、コントロール力も図れるかと存じております。
○中村会長
どうぞ。
○別所委員
ちょっとお伺いしたかったことが幾つかあるのですが、私たちが関わっている若手の映像作家から見ますと、若い映像作家はどういう形でこういった新しいムーブメント、プロジェクトに関われるのか。個々人であったりすると、パートナーの企業さんがいて、その企業が広く募ってくれたりすればいいのですが、とかくこういう場合ですと、それぞれの各社が持っている企画で既に資金繰りというか、資金があれば動かしたいという企画が当然プールされているわけですけれども、それに資金を充てて、それぞれの企業の企画がゴーするという形になりがちだと思うのですが、こういった新しいプロジェクトの中で広く募る、公募をするというのがクローズドな企業ではなくて、例えば広く求められる可能性があるのでしょうか。それが1つ目です。
これは会社ですから、収益化を目指すと言っているのですが、収益化の目標が具体的にあるのでしょうか。このチャートはわかるのですが、何か具体的な目標値が定められて、収益というのは具体的にこの企業に戻るということを企業ですからやっていかれるのでしょうか。
意思決定ですが、黒川さんとクライマンさんが決裁を各企画にされていくのでしょうか。そうではない場合はどなたなのでしょうか。そして、それがディスクローズされた、情報開示された形で決定されたということがわかるようになっているのでしょうか。
○黒川氏
ありがとうございます。
1つ目から御質問にお答えさせていただきます。
まず、そういう意味でいいますと、この表現で齟齬を生んでいるところがあるかと思っておりますが、私たちとしては、日本の知的財産が世界に羽ばたくお役に立てればというのが私たちのミッションでございますので、既存の日本の作品、既にでき上がった日本の作品を世界映画化する、世界コンテンツ化するということだけをミッションとして働いているわけではございません。まさに日本の才能の方で、そのままもう世界映画をつくりたいのだとか、世界映画に羽ばたかれたいという方々も是非応援させていただければと思っております。
これは幾つかのコラボレーションパートナー様に限らず私たちがお話させていただいている、いわゆるプロデューサーの方々あるいは監督の方々で、自分は今まで日本市場に向けて日本のコンテンツをつくってきた、ところがあるアイデアを思い付いたけれども、これは最初から世界にしか向かない、世界の投資規模でしかできないと思っていたので諦めていたものがあると。そういった原案でもいいのかというお話をいただいたことがあります。まさにそういったものを是非私たちとしては応援させていただければと思っております。逆に言いますと、世界のコンテンツをつくる企画開発制作会社だという形になればと思っております。ですので、日本の才能の方がアイデアを持ってこられて、企画開発を御一緒されたいという形で是非そこは大変歓迎させていただければと思っておりますし、是非そういうお話をさせていただければと思っております。
そういう意味で申し上げますと、コラボレーションパートナーの方々だけに限っていることではございませんので、コラボレーションパートナー様以外の方々とも広く、あるいはクリエーターそのものの皆様とも広くお話をさせていただければと思っております。それが1つ目です。
2つ目の収益化目標に関しましては、普通の企画開発会社としての収益を目指すべきかと思っております。これも別紙をご覧いただければと思いますが、一般的に企画開発の投資をしております。したがいまして、最初のその後の制作者としての、日本では制作委員会がありますが、アメリカではないので、制作投資よりももっと前のリスクマネーを投資している形でございますので、それに対するプレミアムな収益を各作品から得る形になっております。
そのシミュレーションを産業革新機構さんの方でされていると思っておりますが、リスクマネーが多いですし、当然ボラティリティというか、変動も多いので、余り短期的に収益を求めるという形をしておりません。むしろ短期的には、私たちの最初のミッションは日本のコンテンツが世界に羽ばたくためのグリーンライトを得ること、ここで言う、青信号みたいなものを得ることが数年以内に起こることがミッションとなっております。
ただし、おっしゃるとおり、私たちとしては事業会社ですので、最終的には、例えば10年あるいは15年といった長いレベルで普通の企画会社、世界の一般的な企画会社が投資したときに求める収益と同じ収益を求めていきたいと思っております。その副次効果としての日本映画、日本のIPホルダーさんへの収益ですとか、日本の人材の育成が副次効果としてあるということでございます。
3つ目、投資委員会というのが8ページの資料にございます。私とサンフォード・クライマンという人間は、そういう意味でいいますと、オペレーションを回している人間でございまして、基本的な投資、意思決定は投資委員会でなされます。投資委員会というのは、産業革新機構さんがこれから立て付けをお付けになられると存じておりまして、まだでき上がっていないものですので、今ここでどういう形かを私が申し上げることはできないのですが、投資委員会でフェアに公正につくられるという形です。ですので、若干クリエイティブな目利き力でやられるというよりは、私たちとしては、恐らく市場ニーズですとか、パートナーする方々のトラックレコードですとか、そういったかなりインベストメントに近い形の投資委員会が行われるのではないかと個人的には推察しておりますが、まだちょっと立て付けができておりません。ですので、先ほどおっしゃられたディスクロージャーの面も含めて今後の課題かと存じております。
○中村会長
どうぞ。
○別所委員
とかくこういう投資の話になると投資委員会も顔が見えなかったり、情報開示が決定上どうなったのかがわからなかったりするので、これは御提案とか要望ですが、どうしてそういう形でこの企画に決定が落ちたのかということがわかるような形であるとすばらしいなと思います。
また同時に、これは要望ですが、幾つかの枠の中にマーケットインというか、もう既にこのベストセラーの漫画で主演俳優がAクラスのこういうキャストだから、興行収入がこう見込まれると、当然ヒットメイキングはそう考えられるところは数学上あると思うのですけれども、そうではない新たなインディーズの映画であるとか、フェスティバル、映画祭などで生まれてくるような新しい、これからを担う人間たちをどのようにこの仕組みの中で生み出し、育てるかというサクセスストーリーの仕組みも是非枠としてはつくっていただきたいなと要望します。
もう1つは、これを見ていますとどうしてもハリウッド、ハリウッドとハリウッドを見ている感じがするのですが、例えばヨーロッパであるとか南米であるとか、ほかの地域とどのように関わって収益を出すと考えていらっしゃるか。要するにハリウッド経由で全てを考えているのではないと思うのですけれども、その辺りのビジョンがおありだったら教えてほしいなと思います。
また、海外の事業者が日本の漫画であるとかそういうものを日本の事業者ではない人間がやりたいと手を挙げた場合は、この場合は、ガイドライン上は投資の対象にならないという理解でいいのでしょうか。
○黒川氏
まず、投資委員会の立て付けに関しましては、産業革新機構さんとお話しさせていただいて、御要望をいただいたことに関して私も持ち帰らせていただきますし、経済産業省さんと一緒にお話しさせていただければと存じております。
2つ目のマーケットインのお話でございますが、マーケットインだけでは本当にだめだということはまさにおっしゃるとおりで、過去の数字だけに頼っても仕方がないわけですね。私たちも勿論そういったセンス、目利きという形を持ちたいと思っていますし、日本の当社の人間、これから入ってくるプロデューサーになる人間の方々がそういった目を持つことも非常に重要だと思っていますが、同時に今は、私たちがパートナリングするはずの制作会社の方々の目利き力をひとつ重要視したいとも思っております。
3つ目でございますが、海外の、グローバルかリージョナルなというお話をこの間、角川さんからも御指導いただきましたけれども、私たちとしては、ハリウッド映画をつくりたいわけではないですね。そうではなくて、世界から配給をフラットに収益を稼ぎたいと思っています。
私ももともとソニーの出身ですけれども、普通にソニーの製品をつくると、全世界で、全世界の市場に併せて収益を稼いでくることが日本の製品でできていたものがあると思っております。それと同じことが日本のコンテンツでできないかと考えたところ、今のところハリウッド映画というのは、ハリウッドでつくられているのでハリウッド映画だと思いますけれども、御存じかと思いますが、今、トップの作品になりますとアメリカの市場からは30%ぐらいしか稼いでいなくて、全世界から70%ぐらい稼いでいる。こういった全世界から稼ぐモデルを日本のコンテンツで実現したいというのが私たちの願いです。ですので、フォーカスした、エリアフォーカスのコンテンツは勿論是非と思っておりますし、それはもしかしたら今、既に日本の会社さんでやってくださっている、やっていらっしゃる会社があられるかと思っています。それよりは、私たちとしては、ちょっととてつもないぐらいに全世界に向けた収益を稼いでくる映画というものにこだわっていきたいと思っています。
最後ですが、IP、才能に関しては、今はまずは日本のIP、日本の才能ということにこだわっています。これが俳優さんあるいはクリエイティブのことを考えていらっしゃるいろいろな機能を持たれる方々、どんな方々でも結構です。日本の才能のある方々が参加するもの、作品にこだわりたいと思っております。
○中村会長
ほかによろしいでしょうか。
伊吹さんはコメントありますか。よろしいですか。
○伊吹課長
多分、今まで日本にはなかったビジネスの形を新しくやるということなので、普段ビジネスをされている方から見ると本当にそんなことできるのかなということを多分思われる方も結構いらっしゃると思うのですけれども、LAに行っていろいろな人に聞いた感じでは、IPをちゃんと持つということと、クライマンさんの人脈があるということで、リスクと著作権を持ってビジネスをするという形になるので、今までメジャーがやっていた機能を日本のコンテンツについてある意味で肩代わりするというか、ジュニアメジャーみたいな、企画についてのジュニアメジャーみたいな形のビジネスになりますので、十分可能性はあるのではないかというのが向こうの専門家の人とか、エンタメのロイヤーさんに聞いた印象でした。
日本のコンテンツをここに預けないとそもそもここは仕事をできないところなので、日本のコンテンツ企業さんとどうやってうまく関係を築いていって、ちゃんと儲かるんだなということを理解していただけるかが非常に大事なことなので、最初の3年の間にちゃんと成功するという事例を、それこそ別所さんがおっしゃるようにサクセスストーリーをちゃんと示すということが非常に大事だと思いますので、皆さん是非温かい目で見守って、かつ一緒にお仕事をしていただければと思います。
以上です。
○中村会長
どうもありがとうございます。
ANEW様は知財戦略の1つの成果として多いに期待をしているところでございまして、今、お話がありましたように是非とも成果を上げていただきたいと思います。
黒川様は御退席になるということでございます。
お忙しいところどうもありがとうございました。
○黒川氏
ありがとうございました。
○中村会長
さて、次にコンテンツの海外展開の事例について紹介をしたいと思います。
以前の専門調査会でアーティストやコンテンツを市場開拓のモデルとして海外展開を進めたらどうかという議論がありました。
このときの議論をきっかけにいたしまして、谷口委員が副理事長を務める財団法人音楽産業・文化振興財団と独立行政法人日本貿易振興機構、ジェトロが連携し、日本人アーティストによるJ-POPと日本の消費財をマッチングして中国への市場開拓を進めるという取組が現在、上海で行われています。
このイベントの関係で今日は谷口委員が御欠席ということでしたので、ジェトロの原課長から説明をお願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○原課長
ジェトロの原でございます。本日はよろしくお願いいたします。
今、御紹介にありましたとおり、私からは本調査会の谷口委員が副理事長、そして会長を務めます音楽産業・文化振興財団(PROMIC)と日本音楽出版社協会(MPAJ)とジェトロが連携して行っています取組、こちらにありますジェトロのアジアキャラバン音楽連携事業について報告させていただきます。
お手元の資料は2でございます。
ジェトロは、2010年度より中国全土で日本の優れた日用品・雑貨等、消費財の市場開拓を目指す「アジアキャラバン」と称する事業を展開してまいりました。今回の取組は、音楽業界と連携した中国市場開拓の初めての取組になってございまして、いわゆるクールジャパンの一端を担うコンテンツの産業と消費財産業が連携したビジネス推進のための取組と考えております。J-POPを通じて集客される若者世代の消費行動を把握することで、効果的なマーケティング手法、あるいは新たな顧客、販路の開拓を目指すというのがこの目的でございます。
事業概要にありますとおり、事業はまさに今、上海で進行中でございまして、今週の日曜日、13日の音楽ライブと音楽ビジネスの商談会を皮切りに、昨日14日からは1週間、上海の若者が多く集まります商業施設におきまして、いわゆるバーリンホウ、ジューリンホウと呼ばれる若い世代に対しJ-POPを中心とした音楽の紹介であるとか、デザイン、機能性に優れた若者向けの日用品の紹介、試験販売あるいはモニタリング調査を行っております。
13日の様子あるいは一部、14日の様子も出ておりましたけれども、NHKの昨日の朝のニュースであるとか、あるいはテレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』でも報道されましたので、こちらをご覧いただいた方もいらっしゃるかもしれません。
ライブ会場には、キャパシティいっぱいの800人の観客、それに先立ち開催しました商談会におきましては、日本側の音楽関連企業6社に対しまして、資料には数十社と書いておりますけれども、中国側からジェトロが発掘しましたプロモーターあるいは広告会社、ラジオ、テレビ局などの音楽関係のバイヤー30社が参加したと聞いております。
音楽ライブの出演アーティストにつきましては、資料の一番後ろに紹介されていますとおり、音楽業界側から中国で売り出したいアーティストとして紹介いただいた3組を選定させていただきました。当日は、3,000を超える応募者の中から選ばれた観客が、小雨の中、良い場所の確保のために昼過ぎから列をなして、会場が開くのを待ったと聞いております。
こうした状況を中国側のバイヤーにも示しつつ、CDであるとか、あるいは音楽配信などで稼ぐことが非常に難しくなっていると聞いております日本の音楽業界に対しまして、音楽のビジネス商談会において、ライブあるいはキャスティングであるとか、フォーマットの販売であるとか、そういった多様なビジネスの売り込みということをやっていただいたところです。
参加いただいた企業からは、聞くところによりますと、是非次回があるのであれば、次回もこういった官民連携でやってもらいたいとのポジティブな評価もいただいていると聞いております。
また、音楽関係業界の企業のトップの方にも多くお越しいただいたようで、ライブ、商談等、実際の現場を見ていただくことで中国でのビジネス展開に弾みがつくことも私どもとしては期待しているところでございます。
ジェトロとしましては、これが単なるイベントで終わることなく、稼ぐことを目的にしまして、音楽産業と消費財分野が協力して市場開拓を行えるよう、本事業の結果を十分分析しまして、広く日本政府あるいは業界へフィードバックしていければと考えているところでございます。
以上、簡単ではございますけれども、ジェトロからアジアキャラバン音楽連携事業の紹介でございます。
○中村会長
ありがとうございました。
何かコメントがありましたらお願いいたします。
よろしゅうございますか。
どうもありがとうございました。
では、今日は議題が盛りだくさんですけれども、次に移りたいと思います。
次の議題は、第180回国会提出の知的財産関係法律案についてです。
今国会に知財関係として法律案が1本、条約が1本提出されているということです。
そこでまず、「著作権法の一部を改正する法律案」について文化庁から、次にACTA、「偽造品の取引の防止に関する協定」について外務省から、それぞれ現在の状況を含めて御説明をお願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○永山課長
文化庁でございます。
お手元の資料3をご覧いただければと思います。
1ページ、著作権法の一部改正案の概要でございます。
今回の著作権法改正案につきましては、3月9日に閣議決定をいたしまして、国会の方に提出させていただいております。ただ、御承知のように国会の情勢がこういう情勢でございますので、まだ審議には入っていない状況にございます。
改正の内容といたしましては、大きくは1ポツにありますように、権利を制限することによる利用の円滑化といたしまして@〜Bの3点、また2ポツにございます権利の保護の強化という観点から技術的保護手段に係る規定の整備という4点の改正を予定しております。内容につきましてはこの次に御説明をさせていただきたいと思います。
2ページが知財計画との関係ということで、改正の権利制限の1点目のいわゆる「写り込み」に関する規定の整備でございますが、これは知財計画の中の権利制限の一般規定の具体化、法案化という内容でございます。
また、国立国会図書館の関係につきましては、知財計画の中に国会図書館が有するデジタル・アーカイブの活用の促進、推進という観点からの改正と位置付けております。
また、2番の技術的保護手段の関係につきましては、ACTAの関係の締結のために必要不可欠な国内法の整備ということで、知財計画の中でアクセスコントロールに関する規定、規制の強化ということに対応する改正内容となっております。
3ページ、改正の1点目、権利制限の一般規定の具体化、法案化ということで、いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備ということで、具体的には4点について新たに権利制限の対象にするということにしております。
1点目がいわゆる「写り込み」に代表される付随対象著作物としての利用でございます。2点目が許諾を得るための途中の検討過程において必要とされる利用行為。これが2点目でございます。3点目が著作物の利用技術、例えば録音・録画技術、また3Dの上映技術、そういう著作物の利用技術の開発、実用化のための素材として著作物を利用するような場合については新たに権利制限の対象にするということでございます。4点目がSNSなど新たなインターネットサービス、様々なインターネットサービスにおきまして、データの利用速度、処理速度を高めるために現在、バックエンドなどで大量の複製行為が行われております。そういう行為につきまして権利制限の対象にするものが4点目の内容でございます。
改正の大きな4点のうちの2点目でございます。
国立国会図書館の関係でございますが、今回改正をいたすのは、下の絵の方にございますが、国立国会図書館が有するデジタル・アーカイブ化資料につきまして、現在は東京と関西にある国立国会図書館に行かないと閲覧ができないということでございますが、今回の改正が成立後につきましては、地域にある公立図書館、大学図書館にデータを送信することによって、近くの図書館に行けば利用者が閲覧でき、必要なものについては図書館においてコピーができ、その提供ができるという形の権利制限規定を置いてございます。ただ、対象につきましては、民間の電子書籍市場とのバッティングを避けるという観点から、市場では手に入らない絶版等の資料について対象にするということにいたしております。
5ページ、3点目の改正でございますが、これは公文書管理法に基づく利用に関する権利制限規定の新設ということでございます。
@につきましては、国立公文書館が国民からの請求に応じまして写しを交付する際に一回一回権利者の許諾を得ずに交付ができるようにしようとすること。また、永久保存、デジタル・アーカイブ化するために複製権の制限をするものがAでございます。
最後、4点目、技術的保護手段に係る規定の整備ということで、今回の改正では著作権法の規制対象になる技術的保護手段の範囲を、真ん中にございますように、現在、DVDなどに用いられている暗号型技術、また放送などで使われているスクランブル技術、そういう新しい技術に対応することといたしております。技術的保護手段の範囲を拡大し、規制の内容については現行と同じでございますが、そういう技術的保護手段を回避する、破る装置・プログラムの販売、製造等の規制。また、そういう技術を破って複製する行為についても刑事罰の対象にはなりませんが、違法化するという形で、基本的には現行の規制と同様の規制を新たな技術的保護手段についても科すということを予定しております。
改正の概要については以上でございます。
○彦田室長
それでは、外務省からACTAについて御説明します。
同じ資料の最後の1枚でございます。
偽造品の取引防止に関する協定ということで、一昨年に実質的に合意に至りまして、昨年の5月から現交渉参加国は11か国ございますけれども、11か国・地域でございますが、その間で署名のために開放されてございます。そのうち8か国につきまして昨年10月1日に東京において署名式を行いまして、本年になりまして、1月26日にEUと27か国の加盟国のうち22か国が署名をしているという現状でございます。
著作権法改正と同じく3月9日の閣議決定で本国会に提出することを決定いたしまして、国会での審議を待っているところでございます。
協定の中身でございます。3月9日の閣議決定とともに協定の和文仮訳を外務省のホームページでも紹介をさせていただいてございますけれども、基本的には、WTOのTRIPS協定で定められている、典型的には商標とか著作権といった知的財産について、そういった種類の知的財産について執行を強化するという形の内容でございます。ですので、具体的には民事、水際国境措置、刑事上の執行、デジタル環境における執行という4つの分野についていずれもWTOのTRIPS協定よりも少し執行の度合いを強化した内容の協定になってございます。
○中村会長
ありがとうございました。
ただいまの説明について御質問やコメントのある方は挙手をお願いいたします。
いかがでしょうか。
どうぞ。
○中山本部員
著作権法のいわゆる権利制限、フェアユースの問題ですけれども、ここでいろいろ議論されてきて考えられてきたフェアユースと比べますと、全く骨抜きになっておりまして、単なる個別制限規定を増やしたというだけで、およそフェアユースとは言えないような規定になっているのではないかと思います。
ここに挙げられているようなことは世間で普通に行われておりますし、恐らく裁判になっても従来の複製概念を柔軟に解釈するとか、あるいは権利濫用を用いるということによって多分セーフになったであろうと思われることばかりです。つまり、これは新しいことを規定したのではなくて、従来普通に行われていたことをセーフだということを確認したというだけのことにすぎない。
これはもう国会に出されていますので、今ここでどうこうしてほしいというわけではないのですが、このままでいきますと、フェアユースをてこに発展してきたアメリカのAppleだとか、Google、Facebookとか、そういうものに対して全然競争にならないという側面がある。新しいビジネスが出てきたときは、アメリカの企業はとにかくトライをする。日本の企業は官庁にお願いして、審議会を開いて、条文をつくって、それから実行する。全然競争にならないわけですね。
したがって、今回の法案はこれでもうしようがないのですけれども、こういう醜い制限規定の山積みを毎年のようにやっていくことはもうやめて、次からは是非本当のフェアユースというものを検討してもらいたいと思います。
もう一点、ここに書いていないのですけれども、今日の新聞によりますと、出版社の隣接権について書かれておりましたが、これはどうなっているのか。これは文化庁に聞くのがよろしいのか、あるいは戦略本部の方に聞くのがよろしいか。新聞だと戦略本部となっておりましたけれども、この辺をお願いいたします。
○中村会長
今の質問について新聞記事も配られていますか。これには知財計画云々ということも書かれておりますので、どうしましょう。どちらからお答えをいただきましょうか。
○木村参事官
本日、日経の方でも記事になってございました。今、御指摘がございましたのは、知財本部におきまして出版社に著作権に準じた権利を与える方針だというような記事になっているところでございます。これにつきまして従前からこちらの方でも会議で御議論いただいたように、出版社の権利付与について法制的な面も含めて検討して、必要な措置を講じるということになっているわけでございまして、そういう権利を与える方針が決まったということではないところでございますので、そこは御理解いただければと思っているところでございます。
○中村会長
文化庁でも検討会が開かれていましたね。その状況をお教えいただければと思うのですが。
○永山課長
現在、文化庁では検討を進めておりまして、電子書籍に関わる様々な課題について検討する会議の報告書が昨年12月にまとまりまして、その中で当然大きな検討事項の中の1つに出版社の権利問題というものがありまして、12月の段階では出版社の権利付与につきまして更に検討を進めると。
1つは反対といいますか、慎重な意見の中には新たな権利が認められることによって新たな電子書籍の流通が阻害されるのではないかという問題提起が1つ。もう1つが法的な観点から、出版社が違法利用、違法行為に対して主体的に対応できるようにする必要はあるけれども、そのための方策として、当然隣接権の付与というやり方もありますし、それ以外の現行の出版権規定の見直しとか幾つかのやり方があって、それらをまず一旦整理をして最終的どうするかを判断すべきだということが昨年12月段階の整理でございます。
その報告を受けまして、現在、文化庁では、特に2点目の法的な観点からの選択肢、対応方策の整理を現在進めさせていただいております。
またもう1点の電子書籍市場に与える影響につきましては、今、書協さんを中心に研究を進めている段階でございます。現在検討中ということでございます。
以上でございます。
○中山本部員
ということは、この国会に出すということではないという理解でよろしいでしょうか。
○中村会長
そうですね。したがって、この日経の記事、出版社に著作権に準じた権利を与える方針だとなっているのは誤報ということでございます。
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。
○川上委員
今の中山さんの発言に関して、IT業界側で発言しなければいけないのは私だと思いますので、一言申し上げます。
フェアユースの規定だけの問題ではないと思うのですけれども、基本は今、やはり日本のIT企業というのは米国のIT企業に比べて非常にハンデキャップを負った状態で勝負している。ハンデキャップがなかったときもアメリカが世界のIT産業の中心ですから、同じ条件でやってもアメリカは有利です。にもかかわらず、日本のIT企業はそれにハンデキャップをつけた状態で競争しなければいけないのが現状です。そして、それに対して日本のコンテンツ産業というのが基本的にはITに対して受け身でやっているわけですけれども、それが私には正直それはコンテンツ産業の首を絞めていることにしか見えないことが多いわけです。
日本のITの歴史でも、例えばレコチョクというものがありまして、これはIT業界側にコンテンツ業界側が反撃をした事件で、そして成功した事例だと思うのですが、こういったことを今の日本のネットでやろうとしても、もともと日本のIT企業というだけでハンデキャップなわけですから、コンテンツ業界が反抗することも難しい。そういうことを日本のコンテンツ業界というのは、どうもそういうところにこだわっていて、要するに何がIT業界での勝負のポイントなのかというのは、余りわかっていないと思います。
こういう機会だから言いますけれども、そういうことを言っても余りいいことはないので普段黙っておりますが、何で得にならないことをしているのかなということを実感として思っているということをここで述べさせていただきたいと思います。
○中村会長
ありがとうございました。
著作権法体系を大きく変えようという議論は、文化庁の著作権分科会で起こしていくのはなかなか難しい面があると思いますので、まず、知財本部の場で議論をしていくということが必要かと思いますので、引き続き問題提起をしていただければと思います。
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。
○吉羽委員
ACTAのお話で、まさに知的財産権に関する民事上の執行と故意による商業的規模の商標の不正使用云々、この辺が海外展開を行っていく上での大きな課題ということです。とりわけ御存じのとおり、中国及び東南アジアの華僑圏で、台湾とシンガポール以外の地域ですが、その辺が一番の大きな課題であるという御認識は当然外務省さんがされている中で、是非ともこういった地域を頑張って条約の中に入れていただけるように進めていただければ大変ありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○彦田室長
ありがとうございます。
御指摘のとおりでございまして、中国、香港、東南アジア等を見て、国内法は発展段階がそれぞれでございまして、ACTAとの距離感もそれぞれでございますし、一部には対話という形で、ACTAについて話を始められるあるいは紹介を始められるという事案のところもございますし、これからというところもございますけれども、問題意識はまさに委員御指摘のとおりでございまして、我々としてもその方向で努力はさせていただきたいと思っております。
一義的には、まず、我が国自身の締結も含めて協定を発効させて、それと並行してアウトリーチというか、参加国を増やしていくという取組になろうと思いますけれども、その方向で努力したいと思っております。
○中村会長
どうぞ。
○角川委員
私は「出版者の権利」の獲得の問題についてちょっと申し上げたいのですが、今日の日経新聞では「隣接権」という言葉が使われていて、既成の著作権法の中の枠組みに入っていくような言葉遣いをされているような気がします。今、川上さんもおっしゃったようにこのまま従来の著作権法の枠組みの中で考えていくと、海外の巨大なIT事業者にばかり利して日本のISPがますます苦境に立つという形になってしまうことも恐れているのです。
私は言ってみると、隣接権という言葉にとらわれないで、新しい「電子書籍権」ということをイメージしております。それによって、出版者が著作者とインターネットサービスプロバイダーの人との間に立って、違法な著作権のダウンロードがされないとか、模倣品が出ない、海賊版が出ないようにするために出版者が義務を負うという内容であるべきですし、逆に海外勢に対しては、YouTubeだとか、中国のネットのサービス事業者の人たちが日本で著作者の了解もなしに電子書籍化した場合にはシャットダウンできると。日本のマーケットに入ってこさせないという条文があるべきだなと思っているのです。是非その辺を文化庁で考えてもらいたいと思うのです。
新しい枠組みは立法の上で時間がかかるのではないかといって出版界で心配している人もいるのですけれども、世界が今、電子書籍の法律はどうあるべきかと迷っているところだと思いますので、「世界標準」になるような部分があっていいのではないか。例えば外務省の方からお聞きしたことがあるのですが、ACTAの推進については、映画館盗撮防止法が非常に日本の立場を強化したという話を聞いたことがあります。これはまた、アメリカや先進国から映画館盗撮防止法も日本が率先してつくったことがとても良かったと言われました。つまり、ある種の日本が世界に先行した著作権法の事例になったのだと思うのです。
そういった面では、今回のせっかくの出版者に権利を付与するという検討の中で、海外のネット、海賊版を平気でするような人たちを日本のマーケットに入れさせないということを意図すれば、これは日本の健全なIT事業者をむしろ育成することができる法律になるのではないかと思っていまして、その辺の検討を、是非既成の著作権法の中の枠に入れることにこだわらず考えてもらったらありがたいなと思いました。
○中村会長
ありがとうございます。
この著作権法改正については、報道によれば、海賊版ダウンロード違法化というものも盛り込まれるかのように書かれているのですけれども、その辺りの動きは何かありますか。
○永山課長
今、お話に出たのは違法ダウンロードにつきまして、現在、21年の著作権法改正で違法サイトからダウンロードする行為については刑事罰のない形の違法化というのを行いましたが、それについてはやはりネット上の違法利用についてまだまだ懸念すべき状態が続いているということから、議員修正という形で刑事罰化ができないかということで、今、与野党の方で協議が進められている状況だと承知しております。
○中村会長
その件について、政府としてこの場で議論をしたというものではありませんが、国会の方でそのような立法措置がなされるということとなると、政策決定メカニズムとしてどう考えておけばいいのか我々サイドでも検討しておかなければいけないのではないかと考える次第です。
今、古川大臣にお越しいただきましたので、ちょうどきりもいいところですので、早速で恐縮でございますけれども、ごあいさつをいただきます。
○古川大臣
知財戦略担当大臣の古川でございます。
済みません、会議の途中で恐縮でございます。
まず、中村会長を始め委員の皆様には知財計画2012の策定に向けてこれまで御尽力をいただいておりますことを心から感謝を申し上げたいと思います。我が国のコンテンツというのは世界に大変通用する優れた知的財産であります。
先日もシリコンバレーに行ってまいりまして、帰りにサンフランシスコの空港を見ましたら、キティちゃんが、これは日本ではなくてロンドンの人がキティちゃんを使って、そして新たなプロダクトをつくっていると。そういう意味では、キティちゃんなどももう既に日本のブランドから世界のブランドに進んでいるなということを感じたわけでございます。こうした優れたコンテンツを活用していくことは日本の再生のためにも、そして経済成長のためにも大変重要な分野であると考えております。
こうした思いの下で、皆様方には、実は、私は副大臣のときにも知財を担当させていただきまして、中村先生にお願いをして、皆様方にこうして委員になっていただいて、これまで議論をしてきていただいたわけでございます。そうした皆様方の御尽力もいただいたおかげで、今年3月の企画委員会では、コンテンツの海外展開の成長モデルの創出を始めとします知財戦略の推進が重要であると。そうしたことも決めさせていただいております。
また、これは従来から、ここの中でも多分御議論も、ちょうど角川会長もいらっしゃいますけれども、今や知財とITとの連携は極めて重要でございまして、知財とIT戦略本部をどううまく連携させていくか。こうしたことを考えていく上で、先週10日には、知財本部とIT本部のそれぞれの委員の方、一緒にお集まりいただきまして御意見を伺いました。これはそれぞれの本部がそれぞれ別の法律でできておりますものですから、一緒にしたりとかすると法律改正が必要なものですから、そこまで一足飛びには行けないのでありますけれども、まずはしっかり連携をとっていこうということで、先日、皆様方にお集まりいただいて御意見を伺っておりますし、また事務局ベースでもしっかり連携をするように私は従来から指示をいたしております。IT戦略の方も私の担当でございますので、そういう意味では、私の下で知財とITを一体的に進めていきたいと思っております。
また、この専門調査会におけます熱心なやりとりにつきましては、中村会長から私も直接お話を伺っておりました。
これまで皆様方の御尽力によりまして、知財計画2010、2011の施策に基づいて、今日お越しいただいておりますANEWさんや出版デジタル機構の設立、そして札幌コンテンツ特区の指定やACTAの日本での署名など、これまで多くのことが進んできたと思っております。これも皆様方の御協力だと心から感謝をいたしております。
今日は、知財計画2012に盛り込むことを御議論いただいていると承知をいたしておりますが、是非ここでまとめたことを、計画をすることが目的ではなくて、計画をしたことをしっかり実行していくということが目的でございますので、その実行に向けてまた引き続き皆様方の御協力を賜ればと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○中村会長
ありがとうございます。
この場に政治リーダーにお越しをいただいて議論を聞いていただきたいという意見がこの場でもこれまで何度も出ていたところでございまして、大臣にお越しをいただいて非常に心強い限りでございます。
15分ほど時間をいただいて、自由討論をここで行いたいと思います。
委員の皆様からコンテンツの強化に関して日ごろからお持ちになっておられる意見などをいろいろといただければと思います。
まず、冒頭私から、今、大臣が御紹介されました5月10日に開かれましたIT戦略本部、知財本部の有識者会議について簡単に報告方々申し上げます。
この会議からは、私と角川本部員、川上委員の3名が出席致しまして、IT本部からは慶應大学の村井教授を始め4名が出席をされました。知財本部とIT本部の政策のすり合わせをやりましょうよというのもこの場から何度も出てきたことでございました。
私からは3点その場で申し上げました。それは、ネットワークの整備と教育環境の整備とクールジャパンについてであります。
最初のネットワークの整備でいいますと、NHKのコンテンツを全世界にネット配信することの義務づけですとか、周波数オークションの収益を新しいメディアを開発したり、コンテンツを開発したりすることにつぎ込みましょうという財源の話です。つまり、通信、放送の融合だとか、ITとコンテンツの結合を進めようというお話をさせていただきました。
2つ目のデジタル教育環境の整備については、デジタル教科書に関して、これを正規教科書にするための制度改正を行うということを申し上げました。これは、端末やLANのようなITとデジタル教科書といったコンテンツの結合の話であります。
3つ目、日本のポップカルチャーを推進しましょう。そのために知財本部、IT本部の一層の連携が必要と。
全てこのコンテンツとITの連携の重要性を強調してきたということですけれども、この知財本部から御出席いただいた角川さんからも日の丸クラウドサービスの推進。これはITの話です。川上さんからも海外との回線環境の整備を進めるべきだと。これもIT戦略に関することでございまして、知財側からITに対して物申すという話でありました。
IT本部側から出席された方々の意見からも、フェアユースのための制度の見直しという意見が出てきたり、教科書の電子化、そのための著作権の取扱が大事だということでしたり、公共データの利活用のルール、これもコンテンツの話であります。それを整備するとか、ブロードバンドの利活用のための規制緩和を進めるといったお話。あるいは動画コンテンツに対応できるように海外の通信環境を整備しましょうというコンテンツ関連の意見が相次いだということでございまして、これまで以上にIT政策とコンテンツ政策のすり合わせが重要になってきているなということでございます。
では、皆さんから何かコメントがございましたら是非お願いいたしたいと思いますので、どうでしょうか。
どうぞ。
○杉山委員
今、中村先生がおっしゃったところと関連するのですが、私も3年間この委員をやらせていただいて、例えばANEWであったりとか、今日のジェトロの取組であったり、いい面も出てきていると思うのですけれども、私の感覚で言うと、やはりそれはこれまでのアナログの世界での戦いだなと。まだ同じような戦いというのは、これは勿論必要ですが。
ここで常々出ているのは、今、言ったように、これからの世界を考えると、インターネットの中ということも重々見ながら全てを考えていかないと何もできないですね。ですから、ここでコンテンツ強化専門委員という中だけでやっていると、IT戦略には立ち入れないというのがあって、そこをやるような、ANEWみたいなとは言いませんが、何かそういうことをやって打ち出していかない限り、日本のパフォーマンスはどんどん落ちてしまうと思うのです。
私は大学をやっていて、18歳、19歳、20歳、21歳ぐらいの子たちを見ていると、どっちかというともうネットの中で暮らしているんです。デジタルネイティブの世界です。映画館に行かないし、ほとんどニコニコ動画とかYouTubeの世界の中で、自分たちもつくって活動している状態です。
全世界で見れば70億人の人たちのうち50%以上がもう30歳以下です。ですから、そこをこれからなんだというところで見ていただくと、ネットの中での知財の重要性は、これまでのハリウッド映画は勿論今でも力はあるけれども、2050年ぐらいまでを考えていったときに、全く違う世界観が出てくると思っているので、そこをやれば日本はまだリードできる面がある。やはり何度もこの中でも出ているように、すばらしい原作とかクリエイティビティを持った日本人がたくさんいるということですね。これを世界に生かすには、ITとコンテンツの融合しかないですね。ですから、法律が違うからということがあったら、法律を直してくださいとしか私たちは言えないので、古川さん、よろしくお願いします。
○中村会長
ほかにどうでしょうか。
どうぞ、中山さん。
○中山本部員
私は法律家ですので、著作権法のお話をしたいと思います。著作権法というのは、基本的には19世紀の社会を前提としてでき上がっている。デジタルの社会というのは、これと革命的な違いがあるわけで、デジタルのことを中心に考えていかなければいけない。先ほどからコンテンツとITが出ていますけれども、全部同じだと思います。
今回、国会に提出されました著作権法の改正の中のフェアユースも換骨奪胎されまして、およそフェアユースということは言えないような規定になっている。フェアユースも大事ですけれども、あともう1つは流通。現在の著作権というのは中世の土地制度のようなもので、1つの著作権に対していろいろな権利が重畳的に存在している。これは民法では基本的なことですけれども、これは流通の最も大きな妨げで、近代法の大原則は一物一権主義、なるべくシンプルが良い。しかし、著作権をシンプルにするのは難しいのですけれども、デジタル時代において権利の処理がしやすいような立法をする必要があると思います。本来なら著作権法の全面改正が必要だと思いますし、アメリカでも著作権法をリフォーム、このリフォームは改修ではなくて全面改正という意味で使っているようですけれども、議論が盛んになっています。しかし、これだけ技術の発展が早いと、数年かけてなかなか全面改正は難しいので、毎年少しずつ改正していかざるを得ないかと思うのですが、やはりそこはデジタルをにらんで、今回のようなフェアユースの規定ではなくて、デジタルに適合するようなフェアユースの規定というものも出していただきたい。とにかく著作権法と何とかデジタル時代にも適合していく改正を考えていただきたいと思います。
○中村会長
どうぞ。
○吉羽委員
何度か申し上げているとおり、顔の見える海外戦略というお話をさせていただいているのですけれども、やはりトップの皆さんが日本のコンテンツを海外に出していくというときに、総理大臣を始めとした大臣の皆様の発言、御活躍が重要だと実感しております。
先般、4月30日にインドのデリーで日印クリエイティブ産業協力という経済産業省さんが主催をしている、日本とインドのコンテンツ産業やファッション業界なども含めたクリエイティブ産業の共同事業の覚書の締結というのを枝野大臣とインドのシャルマ商工大臣とでやられて、そこに私たちの、何度か話題になっていますインド版の『巨人の星』も一緒にさせていただくということで、一緒に調印式の中に入らせていただいたのです。経済産業省さんもジェトロさんも非常にこれに関しては支援をしていただいていて、インドで経産省の大臣が、これからの日本のコンテンツ産業を一緒にインドと進めていきましょうというアピールをされたというのはひとつ画期的なことだったなという印象があるのです。
インドに限らず、いろいろな国々の中で、トップの方が外交されていくところでの日本のコンテンツビジネスの展開の手助けをしていただけるということは、日本が力を入れているのだなということを世界にアピールしていく場になると思いますので、是非古川大臣にもそういったところでいろいろな活躍をしていただけるとありがたいなと思います。
○中村会長
川上さん、どうぞ。
○川上委員
日本のIT産業を世界に広げていくという観点から考えますと、まず、世界のIT産業はどうなっているかといいますと、今、GoogleからFacebookに覇権が移ろうとしているというのが1つ大きな流れとしてあるのですけれども、では、このFacebookがこのままどうなるのかというのが1つの焦点なわけです。
日本の場合ですと、パソコン通信の時代から、一時期、ニフティサーブというものがありまして、それがインターネットになって、2ちゃんねるがあったり、その後mixiがあったり、今、Facebookというものも出てきたりしているわけですが、基本的にはこれは世界でも同じで、コミュニティというのは永続しないのです。数年すると新しいコミュニティが誕生するというのがこれまでの流れです。それを防ぐためにFacebookが実名制ということを行いまして、現実との関連性で、すたれることのないインフラになろうというのを戦略にしているわけですが、これが果たして成功するかどうかということはわからないわけです。
今までの例で言うと、そういうインフラ化したものというのは、本当の人間のコミュニケーションの場所ではなくなりますから、そうするとFacebookに変わる世界的なコミュニティというものが誕生する可能性がある。それが果たして今度はアメリカから誕生するかどうかというのはわからないと思います。それは今のFacebook、Googleとかというものは、社会システムから来てはやったという側面があるのですけれども、もともとコミュニティというのは草の根からはやるものなのです。そういうものにおいては、日本においてもチャンスがあるということを思っております。
そういうことが果たしてできるかどうかですが、まず、そこは今のインターネットを見ている限り、まだ向こう10年ぐらいは日本のインターネットのユーザーのレベルは世界でトップなのです。恐らくこの10年ぐらいというのは、日本というものは世界を引っ張るコンテンツを生み出す力を持つだろう。その後は、最近はひょっとすると中国とかというのが、インターネット、サブカルチャーの文化においても非常に伸びていますからわかりませんけれども、向こう10年ぐらいというのは日本はやはりチャンスがあるのです。それが日本から世界に対するネット文化を起こせる環境を是非つくっていただきたいと思います。
そのための制限もしくはそれを推進する方法ですけれども、1つはインターネットの回線の問題。これはずっと言っておりますが、インターネット回線は世界中が簡単につながるようにいずれなるのだと思うのです。その段階で日本のインターネットサービスは世界に打って出るチャンスがあるわけです。そのときの障害になるものは一体何かと言ったら、移行期間の間は回線があるだろうし、もしくは言語があるだろうという問題です。
言語ということに関しては、是非考えていただきたいのは、この草の根のユーザーの人たちが海外の人とコミュニケーションをするということを支援していただきたいのです。インターネットにおいて日本のユーザーは世界に出ていますし、世界の人たちとコミュニケーションをしているのです。これはユーザーレベルでやっています。
そういうものは、日本人は控え目と言われていますけれども、ネットでは必ずしもそうではないのです。世界的に、勿論仲良くしているばかりではなくて、世界のネットに迷惑をかけていることの方が多いような気がするのです。ずっと昔ですと、タイムのマン・オブ・ザ・イヤーの投票でトップを田代まさしにしたりだとか、そういういたずらを世界中でやっているのが日本のネットユーザーですが、日本のネットユーザーは世界に出ようという気持ちがあるんです。ここを促進していけば、そういう人たちは日本のネットの世界展開において、恐らくは非常に重要な人材になるだろうと思っています。
そして、そういうことが起こるかどうかのもう一個重要な点というのは、今、インターネットは自由です。自由であるから日本にもチャンスがある。それが本当にこのままそうなのかというところで今、大きな分岐点に立っているのは、スマートフォンとかタブレットとかの時代です。今、パソコンプラスインターネットの環境は非常に自由で、世界中のどの国でも、基本的にはチャンスがある世界ができているのだと思うのですが、今のスマートフォン、タブレットの時代になりますと、それをGoogleだとかApple、Amazonだとか、そういう企業が抱え込んでしまう構造になっています。この環境では、それを覆す存在は基本的にできないのです。そこで、ちゃんと自由な競争ができるようにするというのが日本のIT戦略にとって非常に重要なポイントになるなと思っています。これからのITとネットのインフラが本当に自由であるのか。
そのためには、これは日本の、もともとスマートフォンとかプラットフォームベンダーが囲い込むというのは日本が始めたのです。日本の携帯キャリアが始めたことなのです。そこで起こったことが1つヒントになると思っています。日本でも公式サイトというものがありました。そして、その公式サイトに入れないとお金が稼げないという仕組みができたのですけれども、そのときに勝手サイトというものがあったのです。当初は勝手サイトというのは、アクセスしにくいし、ほとんどの人が使わなかった。でも、結局そこで公式サイトにはできないようないろいろな自由なサービスが生まれて、そこから例えばモバゲーとかが登場したわけです。そして、勝手サイトのアクセスが公式サイトを抜く状況が、その囲い込んだプラットフォームができてから7年後ぐらいに起こったのです。
これはそういう勝手サイト的なそういう自由な部分が残っているのであれば、恐らくこれは世界的にも起こり得ることだと思います。今はAppleのアプリマーケットに入らないとビジネスできないとなっていますけれども、そこにそうではない抜け道の自由な空間があるのであれば、そこに可能性はあるだろう。そういうところが確実に起こるように、そこはある意味、プラットフォームホルダーがそんなものはだめだと締め付ける可能性は非常に大きい分野ですが、そこは是非法律とかでも締め付けてでもそういう自由な空間を少しでも残していただけることをやっていただけるとうれしいですし、多分それが日本のコンテンツだったり、ITサービスとかが世界に打って出る唯一の道になると思います。
○中村会長
ありがとうございました。
タイムマガジンのパーソン・オブ・ザ・イヤーの田代まさしは2001年ですから、もうそれから10年経っていまして、私もそのころから日本のネットユーザーの力は世界一ではないかと思っておりましたが、先日、私も参りましたニコニコ超会議を見まして本当にそうだなということを実感した次第です。
さて、いただいた時間が来ているのですけれども、もしもう一方。
どうぞ。
○別所委員
何度もこの会議で、私も3年関わらせていただいていますので、いろいろな形で申し上げていることの繰り返しになる部分もありますが、議事録をお読みいただいているとわかっていただいていることもあると思うのですが、私が関わっている中で海外に出てよく言われるのは、日本はものづくりはよくわかるのだが、物語が何も見えない、聞こえない。物語が製品の裏側にもあるはずですが、あるいは先ほど大臣がおっしゃったキティちゃんに関しても、日本のものだと知らない。知る知らないが必要なのか、あるいは利益、収益を求めて全世界に広がっていけばいいのかどうかということはあると思うのですけれども、非常によく言われるショッキングな言葉です。
私がアメリカで言われたのは、日本人はランキングビジネスができない、アーカイブビジネスができない、オークションビジネスができない。つまり、ゼロから、あるいは加工文化国家、加工産業国家としていろいろなものを日本に持ち込んで組み立てるアレンジはできるけれども、あるいはものをつくることはできるけれども、仕組みやプラットフォームで覇権をとることはできないとはっきり言われたことがあります。
映画祭の現場では、黒澤明監督や小津安二郎監督を出すのはなぜかわかるかと。これはイギリス人に言われたことですが、Who's Nextだと。要するにそのほかに誰がいるんだという皮肉を込めて言っているんだとよく言われます。
勿論私も反論、異論がありまして、そうでない人がたくさんいると思うのですが、要はそれが世界に伝わっていない。コミュニケーションという部分がまずあると思います。実際にある能力がちゃんと伝わらないというのは、日本のコミュニケーション下手をどう直すか。是非この会議の中でもいろいろな議論がされているのですが、世界に向けてどう発信するのか。クールジャパンとは世界でどれだけ認知されて、どう成果が出ているのかということを大胆に、例えば知財アンバサダーを立てるとか、オピニオンリーダーを立てて世界に向かって発信してほしいなと、是非担当大臣としては古川大臣にお願いしたいと思っています。
また、ここの議論でよくあることですけれども、いつも視点として、では、海外はどう日本に呼び込むのかという視点がこの知財の骨子の中でも、日本の国内の既得権益者に対して、あるいは著作権をどう法整備するかということの議論と、ボーンデジタルの人たちをどう育てるかという2つの議論が大きく分けて、先ほどの仕組みとコンテンツを育てること以外にもあると思うのですけれども、どうしてここにはインド人やシンガポールの人が東京に来てこぞって頑張ろうと思う仕組みがないのか。かつて画家や音楽家がパリやオーストリアのウイーンを目指したような仕組みがないのか。要するに仕組みや潮流づくりが全くないのかなというのが残念に思います。海外を呼び込むという形も国家戦略の視点の中で入れてほしいと思います。
私自身は今、カタールのドーハのフレンドシップ基金の大使もやらせてもらっているのですけれども、やはりドーハとかドバイなどに行くと、ジョージ・クルーニーのオフィスがあったり、ルーカスのオフィスがあったり、それはお金だけではありません。結局、中東あるいはイスラム社会に対してどうエンターテイメントあるいはコンテンツの力を伝えていくか、そこでどうビジネスするかということを模索していますが、日本はどうなんでしょう。
いずれにしても、日本国内での既得権益の法整備、これは重要なことですが、それを3年かけてやっている間にいろいろなことがもう追い抜かれているのではないかなと思ったりします。
また、電子教科書のことも私は大賛成ですけれども、その教科書の中で動く仕組みであったり、考え方が検索機能も含め海外のもので全ていいのでしょうか。GPSにしてもクラウドにしても、仕組みについては世界と共同でやっていってもいいと思うのですが、日本の強みになる部分は一体このITにおいても、あるいはこのコンテンツにおいても一体どこなのか、何なのか、焦点を絞って具体的にアクションを、もう既に遅いぐらいですけれども、起こしてほしいと思います。
これも何度も言いましたが、副大臣にもお伝えしたのですけれども、私の周りでは電子書籍関連の方々は、日本人も含めて、日本では法律もそうだし、投資家も少ないので、シンガポールでやって日本人のマーケットに出せばいいと。インターネットの時代はもう完全に御承知のとおり国籍がありませんので、どこにあっても日本のマーケットは知らない間に海外にとられ、そちらでお金がとられている時代になってしまっていると思います。
これも何度も申し上げていることですが、ここで金融に関して、あるいはネット上のポイントシステムとか電子マネーに関して議論が体系立ててされていくのが必要なのではないかと思うのですが、もう既にアジア圏では日本のマーケットも含めてインターネットのポイント制度であるとか、電子マネーに関して次にどうあるべきかを話し合っているような人たちもいらっしゃいます。
是非国家戦略の中心に古川大臣がこのコンテンツに関して据えていただけるようにお願いしたいと思います。
○中村会長
ありがとうございました。
自由討議はここまでとさせていただきます。
大臣、このようにいつもたくさんの意見が出てまいりまして、政策だけではなくて、政治への要望なども多数出てくるものですから、是非とも今後ともここの議論に御注目をいただいて、政府を御指導いただければと思いますので、よろしくどうぞお願いいたします。
○古川大臣
皆さんから大変貴重な御意見をいただいてどうもありがとうございました。
是非これは今の御意見をしっかり私も受け止めたいと思いますし、同時に皆さんにも私が常々思っていることで考えますと、さっき別所さんからストーリーという話もありましたけれども、日本は個々で、パーツパーツを見ると物すごくたくさんいいものがあるのですが、うまくそれをきちんとストーリー立てする、あるいは1つのパッケージにするということができていないのではないか。
また同時に、隣の韓国辺りはもともと自分の国内マーケットが小さいから最初から世界を前提にしたマーケティングとかを考えているのですけれども、日本の場合には中途半端に国内マーケットがあるので、まず国内で考えてから、それから世界へというところがあるのではないかと思うのです。
しかし、今後のことを考えていきますと、最初からグローバルにどう展開するかを前提にして、日本人が、先ほど別所さんの話にありましたけれども、このまま放っておくと外からどんどん、韓国に象徴されるように日本に入ってくる。ですから、日本人が最初からグローバルマーケットを前提にした展開とかを考えて、その上で、その一環として日本の国内もという視点を持つということも大事ではないかなと思っております。
うちの子どもも今、すっかりONE PIECEにはまって、家に帰るとONE PIECEものだらけですけれども、あれなどは、私が見ているにどこの世界に行ったって、もう無国籍ですからね。私の子どものころのドラえもんなども、出てくる人物とか風景が日本というものがありますけれども、ONE PIECEの世界になったら完全にもともと国籍のないような世界でやられている。だから、あんなものは最初からグローバル展開を考えてやってもいいことではないかなと感じております。
そういった意味では、是非そうした今、世界が大きく転換をしていく中で、日本の強み、先ほど川上さんからもお話がありましたけれども、特にITの分野で言うと、これだけスピードの速いインターネット環境がある国は世界の中でないわけでありますから、逆に言えば、その環境だからこそ生まれてくる、クリエイトされてくるものもあるわけで、そこの先行しているところをどううまく生かしていくかということがこれからの戦略になっていくと思います。
そういう意味では、是非皆さんのお力もお借りしながら、同時に、ここにいらっしゃる方を見ると、多分この世界で言うと、もう20年ぐらい下の若い人でやった方が本当はいいのではないかなと思ったりもするくらいでありますけれども、そういうデジタルネイティブの人たちだからこそわかる発想とか出てくる発想といったものを戦略にも加えていくように努力をしてまいりたいと思いますので、また引き続き皆様方の積極的な御議論をいただければと思います。
よろしくお願い申し上げます。
○中村会長
どうもありがとうございました。
さて、知財本部とIT本部の連携について先ほど少し紹介いたしましたけれども、それについては、その場でもいろいろ意見が出ましたので、本年度の知財計画2012にも反映できるものは反映して、他の論点についてはこの場ですとか、関係府省との協議を進めていきたいと思っております。
それについて何かコメントはございますでしょうか。
よろしゅうございますか。
では、最後の議題になりますけれども、知財計画2012に盛り込む事項の取りまとめについて事務局から説明をお願いいたします。
○木村参事官
それでは、事務局の方から知財計画2012に盛り込むべき事項(案)について御説明申し上げたいと思います。
お時間が押してございますので、やや駆け足になるかと思いますが、御容赦いただければと思います。
まず、資料5−1、知財計画2012に盛り込むべき事項の主要施策でございます。
これにつきましては、それぞれの施策はどれも重要なものでございますが、特に主要な4つの施策を取り上げているものでございます。
1点目、デジタル・ネットワーク化の関係でございまして、社会経済の変化に柔軟に対応するという観点から、クラウド型サービスの環境整備といった著作権に関する環境整備を図っていくというものでございます。
2点目、電子書籍の本格的な流通の促進でございまして、出版デジタル機構の設立といった電子書籍をめぐる国内外の動向が加速する中で、民間事業者の協同の取組への支援といったことを進めていく。あるいは先ほども議論がございました出版者への権利付与に関する検討といったことが重要になっているというものでございます。
3点目、クールジャパンの関係でございまして、海外展開の成功事例の創出ということで、アジアを中心に海外展開の成功モデルを創出すること。また、本日、ANEWのお話がございましたが、世界市場を狙ったコンテンツの企画開発を行うということでございます。
4点目、インバウンドの推進でございます。海外ロケ撮影誘致を先導的に実施する札幌コンテンツ特区、こういった重点的な推進を図っていくと同時に新たなコンテンツ特区の形成支援も行うということでございます。
以上、主要施策でございますが、コンテンツ強化専門調査会といたしまして知財計画に盛り込むべき事項の全体について資料5−2と見え消しの資料をご覧いただきたいと思います。
前回の会合で御議論いただきました意見、あるいはIT本部と知財本部有識者会議、先ほど御議論もあったところでございますが、こちらの方の意見、更には施策の進捗状況を踏まえまして骨子に盛り込むべき事項を修正したものでございます。
見え消しの資料に基づいて修正箇所を中心に概略を簡単に御説明申し上げたいと思います。
情勢認識のところにつきましては、単純な字句修正のみでございますので、飛ばさせていただきます。
具体的な施策例の修正点といたしまして、5ページ、2段落目のところでございます。IT防災・オープンガバメント推進に向けた著作権制度の整備の項目を新たに設けているところでございます。これにつきましては、IT戦略本部におきまして災害時などの被災者の安否や避難所といった情報をわかりやすく伝えていくというインフラとして、IT防災ライフラインの構築を行う。あるいはインターネットを活用して政府を国民に開かれたものとしていく取組として、オープンガバメントの推進について議論を進めているところでございまして、IT本部と知財本部が連携を進めまして、ITを活用した防災情報や行政情報の国民への提供といったことを進めていくために官民が保有する公共に資するデータの活用、そういったものに関して著作権処理上の課題について整理・検討するというものを加えておるものでございます。
8ページの中段、教育の情報化の推進といったところで、デジタル教材の活用などの実証実験などの状況を踏まえながらデジタル教科書・教材の位置付けや関連する教科書検定制度などの教科書制度の在り方、更には著作物のデジタル教科書への掲載といった著作権制度上の課題について検討をするというのを加えておるところでございます。
12ページの最後、在外公館を中心とするクールジャパンの活動支援体制でございますが、大使館などの在外公館施設の活用を含めた民間ビジネスの海外展開支援といったものを追加しているところでございます。
知財計画に盛り込むべき事項につきましては、以上でございます。
次に資料6、知財計画2012の工程表でございます。
こちらにつきましては、知財計画に盛り込まれる施策を対象としてどの府省がいつまでにどのような施策を実施するのかを示したものでございます。本資料につきましては、現在各府省と調整中でございます。委員限りの資料とさせていただきまして、恐縮でございますが、会議終了時に回収という扱いにさせていただければと思います。
主な施策には黄色でマーカーを付けているところでございます。先ほどと重複して恐縮でございますが、1ページ目に著作権制度の整備、2〜4ページ目にかけて電子書籍の本格的な市場形成、そして7〜8ページに官民を挙げた海外展開の成功事例の創出、10〜11ページにインバウンドの推進といったことをそれぞれ施策内容ということで記述しているところでございます。
なお、先ほど御説明申し上げたところでございますが、IT本部と知財本部有識者会議の議論を踏まえて修正した施策で、IT防災・オープンガバメントの推進といったところにつきましてはまだ調整中のために施策内容が記載されてございません。御容赦いただければと思います。
この工程表につきましては、企画委員会を経て本部会合で決定されるものでございますが、御意見をいただければ幸いでございます。
最後に資料7、クールジャパン関係施策の一覧でございます。
知財計画2012の参考資料といたしまして、工程表に掲載してございますクールジャパン関連施策につきまして、2012年度における施策の内容、実施スキーム、予算、実施時期といったことを更に工程表からブレークダウンしてお示ししておりますとともに、関連のイベントカレンダーを最後のところですが、添付させていただいております。
本資料につきましても、まさしく今、各府省と調整中でございますので、委員限りとさせていただきまして、恐縮でございますが、こちらの方も会議終了時に回収という扱いにさせていただければと思っております。
クールジャパン関連施策につきましては、関係府省が様々な施策を進めているところでございますが、各府省がばらばらに対応するということではなくて、連携を図りながら積極的に取り組んでいく必要があるということから、具体的な内容を明らかにしつつ進めようというものでございます。
こちらの方につきましても、企画委員会を経て、本部会合に提出されるものでございますが、御意見をいただければと思っているところでございます。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
○中村会長
資料6と7は後ほど回収ということですけれども、これはいつかまとまったらもらえるのですか。
○木村参事官
説明不足で恐縮でございます。
今、まだ調整中ということで回収いたしますが、勿論まとまれば公表した上で、委員の皆様にもお示しするものでございます。
○中村会長
ありがとうございます。
残り10分程度であります。今の説明あるいは今後のこの会議の進め方などを含めて何でも結構ですので御意見、コメントがあればお願いいたします。
いかがでしょうか。
どうぞ、角川委員。
○角川委員
資料5−2の電子教科書のデジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度といった教科書に関する制度の在り方をというのは、著作権制度の課題を検討するということで、これは中村先生が強調された部分がここに入っているのではないかと思いましたけれども、私はこの部分でもフェアユースの拡大が必要ではないかなと思います。これを電子書籍の中で著作物の全ての権利者をクリアするのは非常に難しいと思っておりまして、これもある点でフェアユースあるいは管理機構というものがあって、その管理機構に使った人が権利金を支払ったら権利者や出版者にお金が戻っていくという考え方が必要ではないかなと思っていまして、先ほどから出ている著作権法のデジタル的な規制を緩和するという方向では是非このこともまた検討していただきたいと思いました。
○中村会長
実はこの部分をちょっと解説いたしますと、私が事務局を務めているデジタル教科書教材協議会が先月提言を出しまして、デジタルの教科書も正規の教科書になるような制度改正を求むと。実は、これは言い出すのが非常に勇気の要ることでありました。協議会は民間企業が百数十社入っているのですけれども、従来から教育の情報化に携わってきた企業がなかなか言い出せなかったことであります。それは検定の制度とか著作権に切り込むことに対して政府からの反応を恐れて、一種タブー視されていたことだったのですが、言い出してみまして、今回このように明確に検定制度あるいは著作権ということも書き込まれるということが出てくるというのは、非常に大きな前進で、関係筋にとってみたら非常に大きな出来事ではないかと私は受け止めております。是非この線で進めていただければと思っておるところでございます。
ほかにいかがでしょうか。
計画2012の文章についてはこれまで何度もここで議論をしていただいて、てにをはレベルまでチェックをいただいたので、もしこれはこれでということであれば、今後の次のテーマですとか、今後の進め方などについてももしこの場でコメントなどがありましたらお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
今日も次にこういうことを考えるべきだという意見はこれまでもたくさん出てまいりましたから、それらも踏まえて次の設計に進みたいと思います。
どうもありがとうございました。
ここまでの議論によって、この知財計画2012本体への提言については、おおむね意見の取りまとめが図られたということと認識をいたしまして、この議論を踏まえた最終的な取りまとめについては会長の私に御一任いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
(「異議なし」と声あり)
○中村会長
ありがとうございました。
では、必要な修正がありましたら、それも行った上でこの専門調査会としての提言を取りまとめまして、企画委員会と知的財産戦略本部会合に提出をするという運びといたしたいと思います。
貴重な意見を重ね重ねいただきましてどうもありがとうございました。
では、そろそろ時間が迫ってまいりましたので、今日の会合をこの辺りで閉会をしたいと思いますけれども、何かこの取りまとめを終えるということで、皆さんから何かコメントなどありますでしょうか。
よろしいでしょうか。
どうぞ。
○加治参事官
国際広報連絡会議というのを設定したということをお知らせしたかと思うのですけれども、国家戦略室と国際広報室と外務省で運営しております。
本日までのいろいろな議論をできるだけ早く実行に結び付けるという意味でまた個別にお伺いするかもしれませんけれども、先日、マーク・ザッカーバーグが来たときにこういうことを言って帰りました。Done is better than perfect、とにかくやってみて、完璧よりもそれが意味があるということで、我々は実行をする部隊でございますので、個別に御連絡、御相談に伺うかもしれませんけれども、その節は御協力いただきたいと思います。
○中村会長
ありがとうございます。
他によろしいでしょうか。
先ほども連絡がありましたけれども、資料6と7は要回収ということですので、席上に残していただければと思います。
では、最後に内山局長からごあいさつをいただきたいと思います。
○内山局長
どうもありがとうございます。
中村会長始め委員の皆様には、本日も大変活発な御議論をいただきまして、そしてまた大変立派な御提言をいただきました。心より感謝を申し上げます。
本提言につきましては、次回の本部会合に報告をいたしまして、その上で知財計画2012ということで取りまとめ決定をする予定でございます。
皆様方からたびたびお話がございますように、スピーディーに実行するということで、関係省庁とよく連携しながら是非やっていきたいと思っております。そしてまた、新しい課題に併せてチャレンジをしていくことも大事でございますので、それに向けても頑張ってやっていきたいと思いますので、引き続き、皆様には御指導、御協力のほどをお願いしたいと思っております。
最後に、これまでの多大なる御尽力につきまして、中村会長始め委員の皆様方に御礼を申し上げて、改めて感謝を申し上げます。
本当にありがとうございました。
○中村会長
どうもありがとうございました。
ということで、本年度の取りまとめということになりますので、この辺りで閉めさせていただければと思います。
一本締めでもやりますか。
最後取りまとめになったということで、皆さんで拍手でお送りいただきたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)
では、閉会といたします。