コンテンツ強化専門調査会(第6回)議事録
○中村会長 では定刻になりましたので、ただいまから、コンテンツ強化専門調査会、第6回の会合を開催いたします。 ご多忙のところ、ご参集をいただきましてどうもありがとうございます。 前回は、「知財計画2011」の策定に向けて、大きな課題である電子書籍について、関係者の方々からヒアリングを行いまして、議論をしたということですが、今回は前回のテーマも含めて、知財戦略の論点を整理して、知財計画2011に向けた全体的な議論、取りまとめへの船出をしていきたいと思います。 なお、本日は、大ア委員、大多委員、それから角川委員からご欠席の連絡をいただいております。また、知的財産戦略本部員からは、佐藤本部員と中山本部員にご出席をいただいているところであります。よろしくどうぞお願いいたします。 では、新たに知的財産戦略担当政務官にご就任された阿久津幸彦大臣政務官から、開会のご挨拶をいただきたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。 ○阿久津政務官 皆さん、こんにちは。 ただいまご紹介いただきました、和田政務官の後を受けまして、知財担当の内閣府大臣政務官をさせていただいております。阿久津幸彦でございます。 これまで、防災や国家戦略など大臣政務官として、他の分野は担当しておりましたが、今回、科学技術等新たな分野として知財が加わりまして、私のほうも非常に興味がある分野ですので、是非ご指導いただきたいというふうに思っております。 それから、菅直人総理大臣は、この知財戦略については並々ならぬ関心と期待を寄せております。今後ともなお一層のご指導を賜りたいと思っております。 さて、我が国の、コンテンツはご存じのとおり、世界でも高い評価を得ておりまして、今後の我が国の経済成長の原動力となり得るものだというふうに考えております。新成長戦略におきましても、重要な柱の一つとして位置づけられておりまして、クールジャパンとして世界への発信にも努めておりますが、具体的に成長に結びつけていくためには著作権の制度など、さらに一層の改善が必要でございます。本調査会において、方策を活発にご議論いただけることを期待しております。 今回から、知財計画2011に盛り込むべき事項について議論を開始していただきますが、3月には計画の骨子を取りまとめていきたいと考えております。本日も、是非先生方の活発なご議論をよろしくお願いいたします。 どうもありがとうございます。 ○中村会長 ありがとうございました。 引き続きまして、近藤局長からもご発言をいただきます。 ○近藤局長 ありがとうございます。 今、委員の先生方、皆様のお机の上に、総理からの任命書を置かせていただいております。早いものでございまして、ちょうど1年前にこれをスタートさせて、この1年の間、本当に集中的にご議論をいただきまして、ありがとうございます。皆様方、本当にお忙しい中、本当に申しわけないのですが、是非もう1年これをやっていただくということで、お願いの文書でございます。ご多忙な中、お引き受けいただいてございまして、ありがとうございます。 今後とも引き続き、ご審議、ご協力のほどよろしくお願いを申し上げます。 ありがとうございました。 ○中村会長 ありがとうございました。 では知的財産に関する論点整理及び「知的財産推進計画2011」骨子に盛り込むべき事項について議論を進めていきたいと思います。 まず、事務局から説明をお願いします。 ○奈良参事官 まず、資料の確認をさせていただきたいと思います。 資料の1が、前回の電子書籍につきまして議論いただいたもののまとめでございます。それから資料2が、論点整理ということで、本日はこれを中心にご議論いただきたいと思っております。それから資料3が、今の論点整理を文章化しますと、大体骨子のイメージとしてこういうふうになっていくのではないかということで、具体的なイメージを掲載したものでございます。 それから参考資料の1といたしまして、昨年の知財計画2010の概要でございます。ちなみに、2010におきましては海外展開、人材育成、そしてデジタル化・ネットワーク化への対応という、この3本柱で構成されているところでございます。それから参考資料2といたしまして、これまで第1回から第5回まで、委員の先生からいただいたご意見をまとめたものでございます。 それからあと参考資料3が、今後のスケジュールについてということでございます。7回、8回、9回と。3月23日は予備日ということにさせていただいておりますので、本日を含めまして、骨子提言まであと3回のご議論をいただければというふうに思っております。 それから最後、資料番号を付してございませんが、参考ということで、「番組転送サービスをめぐる最高裁判決の概要」ということでつけております。これはまねきTV、あるいはロクラク事件、いわゆる番組を海外に転送するサービスにつきまして、最高裁のほうで1審、2審を覆しまして、著作権侵害に当たるという判断を示したものでございます。これは後ほど出てまいりますけれども、クラウドコンピューティングの環境整備とも関係することではないかということで、間接的なサービス事業者の声がどこまで適法かということで、関係深いというふうに思われますので、ご紹介をさせていただきたいと思います。 それでは、早速資料のほうをご説明させていただきたいと思います。 まず資料1をご覧いただきたいと思います。これは前回、電子書籍につきまして、有識者の先生方を交えましてご議論をいただきましたけれども、それを事務局のほうで概ねこういう方向性だったのではないかということで、整理をさせていただいております。 まず1ページをご覧いただきたいと思いますけれども、この四角囲みのところで、大体こういう方向性だったのではないかということということでまとめてありますけれども、まず全体的な総論といたしましては、電子書籍を議論するに当たりましては、新しいプラットフォームづくり、いわゆるボーンデジタルと言われる部分と、それから既存の枠組みをどう変えるかということを分けて考える必要があるのではないかということでございました。 それから2ページ目にまいりまして、契約関係につきまして、デジタル化・ネットワーク化時代に対応して、出版社への権利付与の是非、これの検討も含めまして、契約の促進の構築ということを考えるべきではないかというご意見でございました。 それから3ページ目にまいりまして、あらゆる端末で本が読めるようにする、いわゆるマルチプラットフォーム戦略のための中間的なファイルフォーマットを策定する。あるいは最終フォーマットのところで日本語対応化を進める必要があるんじゃないか。また、海外向けの電子書籍、マンガ・雑誌対応のフォーマットの策定、こういったことにつきましても検討が必要ではないかというご意見でございました。 それから4ページ目にまいりまして、電子書籍の分野におきましても著作権侵害対策、グローバルなコンテンツ対策、著作権侵害コンテンツ対策が必要なのではないかという意見でございます。その他といたしまして、新しいコンテンツを産み出せるクリエーターの感性を育成する。こういうことも重要ではないかというご意見でございます。 それから5ページ目のほうにまいりまして、国立国会図書館の関係でございますけれども、6ページにまいりまして、国立国会図書館で蓄積したデジタルデータ、90万冊ございますけれども、民間ビジネスとのすみ分けができるルール設定を行いながら、公立図書館への提供も含めた外部提供を進めていくべきではないかというご意見でございました。それから権利処理につきましても、集中的な権利処理の仕組み、こういったことについて、あるいは長期的にはその種類に応じたルール整理も必要なのではないかということでございました。 それから最後、7ページでございますけれども、今、紙の納本で進めておりますけれども、さらには電子納本のための環境整備も進めていくべきではないか。あるいは電子書籍だけではなくて、それ以外のコンテンツも今後視野に入れるべきではないか。こういうご意見だったかというふうに理解をしているところでございます。また、これにつきましては後ほどご意見があれば、いただければと思っております。 それから資料2のほうにつきましてご説明をさせていただきたいと思います。 1枚めくっていただきまして、知財計画2011に向けた検討の枠組みということで、概ねこういう方向性で議論を進めてはどうかというご提案でございます。まず、四角囲みのところでございますけれども、コンテンツを取り巻く基本的認識といたしましては、グローバルネットワークの急速な進展が経済社会に変革をもたらし、ビジネス、あるいは消費者の行動をも変えつつある。その中で、コンテンツのネットビジネスをめぐる国際関係の本格化、あるいは我が国が強みを有するクールジャパンを展開するチャンスが到来している。こういうことにつきまして戦略的な対応を図っていく必要があるのではないかという認識でございます。 このため、具体的な以下の3つの柱で整理できないかというご提案でございますけれども、さまざまな端末、あるいはサービスの登場、それからITビジネスの本格化を背景といたしまして、もはや国内外を区別する意味がなくなっている。そういう環境の中でデジタル化・ネットワーク社会の先端を我が国が切り拓いていく。そういう国となるべきではないかという視点でございます。 それからコンテンツにつきましても、従来地域性が高かったものから、グローバルな競争への時代となっておりまして、そこに総合的な取組をする必要があるのではないかということで、クールジャパンを推進するというのが大きな2点目。そして、1番、2番に対応するための人材。この基盤となる人材育成につきましても加速して進めるべきではないか。こういうような3つに重点を置きまして、これによりまして、我が国の経済成長の実現につなげていきたい。そういうようなことで整理をできないかというご提案でございます。 3ページ目にまいりまして、具体的な3つの柱のイメージでございます。まず1番目のデジタル化・ネットワーク化のところにつきましては、先ほどもご説明いたしましたけれども、電子書籍を初めといたしましたコンテンツの電子配信の促進。また、過去の知的資産をデジタル化・ネットワーク化して活用するということ。それからその基盤を戦略的に整備する。例えばクラウドコンピューティング、あるいはプロットフォーム戦略、また3Dへの対応。こういった基盤を整備すべきではないか。また、グローバルな著作権侵害につきましても対応を強化すべきではないか。 2番目のクールジャパンにつきましては、クールジャパンにつきまして創造・発掘、そしてそれを発信する。そしてさらには定着させる。このサイクルをきちんと確立していくべきではないか。またそのための基盤整備、あるいは障害について取り除いていく必要があるのではないかという観点でございます。さらにはそのための基盤となる人材育成ということで、今、ソーシャルネットワークサービスの個人が発信できるような状態になっておりますけれども、そのための創作基盤を強化するべきではないか。また、世界に打って出るための国際的なプロデューサーなど、世界に通用する人材育成を強化する。こういう必要があるのではないかということでございます。 以上が全体構成のイメージでございます。 それでは、4ページにいっていただきまして、各項目ごとの基本認識でございます。まず、1番目のデジタル化・ネットワーク化のところでは、いろいろな端末やサービスが登場し、グローバルなネットビジネスが本格化しつつあるということで、我が国にとってはチャンスであると同時に大きな正念場であるということでございます。また、クラウドサービス、あるいは世界的にもデジタル化・ネットワーク化の動き、また、世界的な海賊版のグローバルな流通、こういった新たな動きも出てきているところでございます。こうした状況に対応する必要があるという認識でございます。 5ページ目のクールジャパンにつきましては、従来コンテンツのような文化的な産業は非常に地域性が高かったわけでございますけれども、最近ではグローバルな競争に突入しつつあるということ。各国とも非常に力を入れているということでございます。一方我が国のクールジャパン、非常に人気が高く、ポテンシャルはありますけれども、それは必ずしも経済成長に結びついていないのではないかということでございます。また、個々に売っていくということではなくて、トータルとしてクールジャパンの発信、また創造・発掘・発信、定着、こういった一貫とした流れで進めていくべきではないかという視点でございます。 続きまして、6ページでございます。人材育成に関しましては、この人材育成を取り巻く状況、引き続き製作機会が減少したり、あるいは制作工程の高度化、またアニメ、ゲーム分野においても各国の追い上げといったところで、非常に厳しい状況にあるということでございますけれども、一方で海外展開の機会というものも増えてきているということでございます。また、個人クリエーターによる作品を公表・共有する場というものも拡大しておりまして、そのための環境整備の動きも一部出てきておりますけれども、まだ十分ではないというものではないかと思っております。 以上の認識に立ちまして、具体的に、ではどういう方向性で進めたらいいかということにつきましては、以下から記述してございます。まず、デジタル化・ネットワーク化のうち、電子書籍の関係でございますけれども、今後の取組の方向性としてデジタル時代に対応して、契約基盤の整備を図る。それにつきましては出版社への権利付与ということも検討していくべきではないか。それからマルチプラットフォーム戦略を可能とするような中間ファイルフォーマットの策定を進めるべきではないか。また、グローバルな著作権侵害対策ということも進めるべきではないかという方向性でございます。 電子書籍につきましては、8ページをご覧いただきたいと思いますけれども、さらには我が国の経済社会の活性化に大きくつなげる必要があるのではないかということで、電子書籍になりますと海外展開ということも要因になってくるわけでございます。また、電子教材に使用することによって、教育の質の向上ということにもつながるわけでございますし、また、障害者、高齢者を含むすべての人に優しい、そういうようなアクセスの向上ということも考えていかなければならないのではないかというふうに思っております。 デジタル化・ネットワーク化のもう一つの論点で、アーカイブの活用ということで、9ページをご覧いただきたいと思います。まず国立国会図書館の関係でございますけれども、国立国会図書館が有する豊富なアーカイブ、蓄積したデジタルアーカイブでございます。これを、例えばどのようなものを流通して提供していくか。あるいは料金設定とか、権利者への対価還元をどのようにしていくべきかということのルール設定をしながら、民間ビジネスのすみ分け、あるいは権利者、利用者、出版社、それぞれがwin-winの関係となるようなルール設定をしながら、外部提供を進めていくべきではないか。また、国立図書館を通じて提供していくべきではないか。こういうような方向性で考えてはどうかということでございます。 それから10ページをご覧いただきたいと思います。書籍以外の分野でございますけれども、左の図にございますとおり、それぞれの分野でさまざまな機関による取組にゆだねられて いるというのが現状かと存じますけれども、テレビなどそれぞれの機関におきますアーカイブ化をさらに進めるとともに、それぞれのネットワーク化というものも進めていく必要があるのではないかということでございます。また、アーカイブ化するに当たりましては著作者に対する権利処理ということも必要になってくるわけでございますけれども、従来の手続によりますと、時間費用の面で非常に負担が大きくなっている。ここも簡素化、迅速化を図っていくべきではないかという方向性でございます。 それから11ページをご覧ください。デジタル化・ネットワーク化の対応ということで、3点目として基盤整備ということでございます。そのうちの一つがクラウド型サービスに対する環境整備という観点でございますけれども、例えばそのコンテンツを預かるようなサーバー、こういった事業者が著作権法上との関係がどうなるのか。こういったことについて整理をする必要があるのではないか。また、本やCDで持っているのとは違いまして、サービス提供事業者が永続的に提供できるかどうかということにつきましては、かなり不安定な面がございますので、このための一定の規律が必要ではないか。こういうようなことにつきまして、あらかじめ検討しておく必要があるのではないかということでございます。 それから12ページをご覧ください。基盤整備ということで、もう一つ、プラットフォーム戦略を挙げてございます。コンテンツプラットフォームの影響力が非常に高まっているわけでございまして、そうしますと例えばそのコンテンツを載せる、載せない、こういったところの基準がかなりそのプラットフォーム側にゆだねられてしまって、コンテンツ事業者が非常に弱い立場になってくるのではないかと。また、そのコンテンツ事業者が課金するシステム、こういった事柄も制限されていくのではないかということで、こういった懸念について検討する必要があるのではないかということでございます。 それから13ページでございます。基盤整備の3点目としたしまして、3Dを挙げてございます。テレビ、パソコン、ゲーム等を初めといたしまして、3Dのハードの面ではかなり出てきているところでございますけれども、いずれにしろ、コンテンツにつきましては圧倒的に少ない状況でございます。また、今後は医療でありますとか、建設あるいは教育、こういった分野への波及も期待されているところでございます。こうした中で戦略的に進める必要があるのではないかという視点でございます。 それからデジタル化・ネットワーク化のところで、最後の問題としまして、グローバルな海賊版対策ということでございます。国境のないネット世界におきまして、やはり海外のサーバーに対しまして、権利執行をしていくということは非常に困難な面がございます。また、国内の事業者であればともかく、海外のプロバイダー、あるいはプラットフォームに権利情報を知らせていくということは、なかなか難しい問題がございます。そうした事柄につきまして、国際的な枠組みにおいて検討を進めるべきではないか。こういうような方向でございます。 それから2点目の大きな柱、クールジャパンの関係でございます。まず、クールジャパンのうち、発掘・創造に関してでございますけれども、一つは中小企業、あるいは地域産品といった新たなクールジャパンというものをどうやって発掘して、海外展開につなげていくかということでございます。例えばショートフィルムで観光と絡めながら、海外提供するということは行われておりますけれども、こういったものをどのように発掘し、それを海外展開のステップにつなげていくか。こういうことでございますし、またコンテンツの分野について申しますと、やはり海外と一緒になってつくるということが、海外での輸出を増やす上で非常に重要な役割を果たしていると思いますので、そのための支援でありますとか、あるいは国際協定、こういったことを進めるべきではないかという視点でございます。 それから16ページでございます。発信の点につきましては国内でのイベントというものがあるわけでございますけれども、まだまだ世界的な認知度が低い。また、海外でもいろいろな日本関連イベントが行われているわけでございますけれども、こういったところを積極的に活用する必要があるのではないか。また、放送番組につきましてはまだまだ海外展開が進んでいないという状況でございます。また、韓国のように単体で売るのではなくて、音楽、ファッション、それから映画、家電といったマーケティングのイメージが一体となって売っていく。こういうようなイメージ戦略というものも必要ではないかという視点でございます。 それから17ページでございますけれども、クールジャパンの最後で、定着・基盤整備ということで、一過性のものに終わらないようにするためにどうしたらいいだろうかということでございまして、観光客を増やすためにクールジャパンと関連した旅行商品を進めるということでありますとか、あるいは海外に非常に影響力が高いネットワークを構築する。こういったことでありますとか、あるいは現地における体制ということで、情報収集体制、そしてまた発信体制、こういった体制を強化すべきではないかという方向性でございます。 大変長くて恐縮です。最後でございます。人材育成の観点でございますけれども、デジタル化・ネットワーク化対応、またクールジャパン推進の基盤となる人材育成の加速をどのように進めるべきかということでございます。制作工程が高度化しているけれども、それに対する対応が十分ではない。あるいは二次創作につきまして、ソーシャルネットワークサービスなど、情報が個人でも瞬時に世界に発信できる、そういう状況にあるわけでございますけれども、そのための環境整備というものもまだまだ十分ではないというふうに思っております。また、世界を見据えて、総合的にプロデュースできる人材。あるいは対応できる法律家ということもまだ十分ではないのではないか。また、大学等における教育におきましては、産学連携、あるいは大学レベルの国際交流、こういった面でまだまだ進めていく必要があるのではないかという方向性でございます。 大変長時間にわたりまして恐縮でございますけれども、以上、これまで先生方からいただいたご意見などを踏まえまして、このように整理をさせていただきましたけれども、このような方向性でよいのかどうか。あるいはさらにこういったことも進めるべきではないかといったことなど、忌憚のないご意見をいただければというふうに思っております。 それから資料3のほうが、今申し上げたことを概ね文章にしてみますと、大体このようなことになるのではないかということで、それから3つの柱ごとに、現状認識と主な施策の方向性ということにつきまして記載をしているところでございます。これにつきましては、知財計画2010に、特に追加、それから強化すべきということについて強調することを書いてございまして、もちろん知財計画2010に盛り込まれている事項につきましては、引き続き着実に実行していくということで考えているところでございます。 以上でございます。 ○中村会長 ありがとうございました。 では、議論に移りたいと思いますが、前回の電子書籍に関する議論については、全体の中でまとめてご議論をいただきたいと思います。 今日の議論は、今ご説明いただいた資料2の論点整理をもとにしまして、資料3の骨子に盛り込むべき事項もご覧いただきながら、4つに分けてご議論をいただきたいと思います。まず最初に全体の状況認識と検討の枠組み、具体的な構成について、このような方向でよいかということ。それからその後、3つの柱それぞれ、1つ目がデジタル化・ネットワーク化、2つ目がクールジャパンの推進、3つ目が人材育成ということでございますけれども、それらそれぞれの施策について、順を追って議論をいただければと思います。 また時間が最後残りましたら、全体についての議論の時間もとれればと考えておりますが、まず、最初に、知財計画2011の検討の枠組み、具体的な構成について、意見交換を行いたいと思います。今、資料2の2ページ、3ページが全体の構成ですので、4、5、6と柱立てが書いてあるわけですけれども、その柱立てとしては、最初にデジタル化・ネットワーク化、2番目にコンテンツ以外も含めた海外展開を見据えたクールジャパン、3番目としてそれらの基盤となる人材育成という構成に、今年は事務局案としては出てきているんですけれども、まず基本認識ですとか、こういう構成でよいかどうかについて、ご意見をいただければと思います。 ちなみに、参考までに、去年2010は参考資料1にありますように、最初に海外展開、2番目に人材育成、3番目がデジタル化・ネットワーク化という順番だったんですけど、今回はその順番といいますか、メリハリを大きく変えるということと、それから海外展開というところが、コンテンツだけではない。例えばファッションとか食とか観光なども含めましたクールジャパンということでメッセージを出すというのが事務局案でございます。このあたりについて、ご意見、質問などありましたら、お願いをいたします。いかがでしょうか。 事務局に確認なんですが、2010の知財計画というのがあって、今回2011というのはそれに上書きをしていくというイメージなんですか。全体をつくりかえるのではなくて。 ○奈良参事官 そうですね。基本的に2010に書かれたことについては、引き続き着実にやっていくということかと思っております。それにさらに強調するべき部分。もちろん2010に書かれている部分で、さらに加速して進めるべき部分ということにつきましては、やはり修正して、記述する必要があるだろうというふうに思っておりますし、また、新しい視点ということになれば、また新しく追加をしていく。こういうようなイメージで考えているところでございます。 ○芝田次長 あと一言つけ加えさせていただきます。クールジャパンの部分については、必ずしもこの委員会で十分議論していただいていない部分でございますけれども、事務的には各省の担当局長、あるいは課長クラスの会を階層的につくりまして、その場で具体的なアイテムについて議論をしております。また、その結果も、こちらのほうにフィードバックしながらご議論をいただきたいと思っています。 以上です。 ○川上委員 構成については、異論はないのですが、「クールジャパン」というのが、既に何回も世の中に出てきまして、スローガン化、昔はスローガンだったのかもしれませんけれども、具体的にクールジャパンとは何なのか。日本のクールジャパンの強みとは何なのかということの、そういう議論や定義が明確じゃないと思うんです。そこについてはもう少し、一体、「クールジャパン」とはそもそも何なのか。日本のどの部分が強みになっているかということの分析をしたほうが、その後の具体的な施策とかももう少し具体的なものになるんじゃないかなというふうに思います。 ○中村会長 そのあたりの議論を検討というのはされている部分はあるんですか。 ○芝田次長 今、局長等の会議の成果物を最終集約する段階に入りつつありまして、その中で理念的な部分も少し整理してみようということでございます。それからちなみに、経済産業省のほうでも、クールジャパンの有識者会議というのをつくっていて、そちらのほうの議論も、局長等会議のほうにフィードバックして、さらにこの会議にもフィードバックさせていただく。そちらの会議でも、今おっしゃったような、どの部分が我が国の強みかというのはかなり議論が行われていますので、またインプットさせていただきたいと思います。 ○中村会長 そこで捉えられているクールジャパンというのは、我々が検討しているコンテンツ、日本の表現力とかコミュニケーション力のところとは別の、例えばものづくり力とか技術とか、そういったものも合わさった概念になっているんですか。 ○芝田次長 おっしゃるとおり、今そちらのほうで議論しておりますのは、もっと広い概念になっていまして、ここで言っているコンテンツというのは映画であったり、あるいはアニメであったり、そういったような若干定義としては小さくなっているのかもしれませんが、ファッションも食も観光も含めた、あるいは文化ですね。文化的価値そのものも含めた、我が国が海外にブランド的に売り出せるもの、というようなものを広く議論しています。 ですから、そういったもの、全体をまた改めてインプットさせていただきたいと思います。 ○別所委員 すみません。少しおくれましたので、聞き逃している点なのかもしれないんですが、先ほど中村会長もおっしゃったように、2010年度のときにも同じような話をして、ここにもその冊子があるのですが、2011年を組み立てる上で、2010年に、どこまで何が達成できかというようなことというのは、どのように私たちが情報共有したり、検証したり、あるいはそれに担当された方々が、民間では成績表のようなものが必ず突きつけられるわけですけど。どういうふうに効果測定をされていくんでしょうか。 たしか10年度を取りまとめたときも、最終回だったと思うんですけれども、数値目標がないなんていう話も、出たと思いますし、現実に非常に抽象的な推進計画を幾ら上書きしても、どこまで誰が何をやったかという責任の所在が見えなかったり、各省庁に振り分けられたものが工程表であるんですけれども、2010年度もこれが、どういうふうに、誰の責任において、どう統括されて行われたかがわからないと、2011年の計画を立てるということ自体が、非常に何ていうんでしょう。泥の上に、何かまた基礎工事をするようなイメージに、僕は捉えてしまうんですが。その辺はいかがなんでしょうか。 それからもう1点は、実際2010年にあったコンテンツ特区という考え方、この特区は画期的だとか何とかという話に、2010年のミーティングでなったかと思うんですが、じゃ、具体的にどこから何らかの着手をされたんでしょうか。あるいは着手をすべき担当官がついて、動いているんでしょうか。その辺をまず教えてください。 ○上田次長 それでは、第1点のほうをお答えさせていただきたいと思います。 まさに2010年の工程表をつくりまして、そこでいつまでに、どういう責任を誰が持って、何をするということを明らかにしたわけでございます。これをどうなっているかというのをきちんと見ていかなければいけないというのはおっしゃるとおりでして、そういうこともありまして、11月、12月に、この専門調査会の場でも主要なところについて、途中の進捗状況についてヒアリングをしたわけです。2010年のこの工程表に載っているものはどうなったかということは整理をしまして、これはこちらのほうでもご覧いただいて、この2011年、今日提示しているものはむしろそこから先、深掘りをしたり、新たな課題だったりするものですから、それとこれというのを合わせた形で計画というのをつくっていくということになると思います。 つまり、2010年の計画、工程表も、もう一度そこはリバイスをかけるということになりますし、同じように、新たに2011年のものについても工程表をつくるというような形を考えております。それは骨子の段階というより、最終的に計画の段階、5月か6月にまとめるときに、そういう形で最終的には整理をしていきたいと思います。 ○近藤局長 少し言葉を補いますと、もともと2010をつくったときに、これだけ明確に、この項目について何年度に何省が何をやると書いたのは、効果を測定するためのものであります。従いまして、この工程表に沿って、それぞれ本当に言ったことができたかどうかというのは、全部リストにいたします。できなかったところは、なぜできなかったのか。そしてそれができなかったとしたら、それは今後どうするのかということについても、全部明示をしようと思っています。 したがって、2010については評価をきちんとさせていただいて、その上でつくらないと、今、別所さんがおっしゃったように、毎回毎回、基礎工事もやっていないのに2階をつくっている状態になると。相当真剣にやろうと思っています。こういう形でもともと工程表を書いたというのは、そういう腹づもりでありますし、各省にもそれは去年から言ってありますので、明確にわかるようにしていきたいと思います。今まで見ている限りでは、各省2010年度にやると約束したことは、幾つか細かいところは別にして、概ね大分できつつあるのではないかと私は思っています。 それから、特区のところはまた別途説明してもらいますけど、これも色々な議論が今行われていて、具体的な特区構想の中身についても検討が行われているはずでありますが、私が全てを説明しきるだけの自信がないので、参事官から説明させます。 ○奈良参事官 総合特区につきましては、現在、政府のほうでいろいろな分野を包括して、総合特区制度ということで、その中でさまざまな規制を緩和していく、あるいはその中に資源を集中、予算、税制等の措置を集中的にやっていこう。こういったものをつくろうということで、この国会に法案を提出するべく、今調整をしているところでございます。その中で1つ、コンテンツを含めた、いわゆるクリエイティブ産業につきましても対象となるという方向でございまして、例えば映画撮影を誘致する場合の手続の簡素化でありますとか、あるいは外国人のクリエーターを呼ぶときの円滑化、こういった事柄ができるようにというような仕組みにすべく検討しているというところでございます。また、この進捗状況につきましても、きちんとご報告したいと思っておりますが、法案が成立して順調にいけば、来年度から募集をするということになるかと思いますけれども、地方ともよく情報共有を図りながら進めていく必要があるというふうに思っております。 ○中村会長 今、法案とおっしゃいましたけれども、それは何か新しい新法を立ち上げる。 ○奈良参事官 そうですね。新法を今検討中でございます。 ○中村会長 予算関連法案ですか。 ○奈良参事官 予算もついてございます。 ○中村会長 わかりました。今、別所委員からご指摘があったことは、アウトプットのイメージを我々が共有する上で非常に重要なことだと思います。2010年の知財計画に我々が盛り込んだ事項でも、仮に例えば進んでいないものなどで大事な問題があれば、2011の中にも明確にもっと進めろということを書いていいだろうと思いますし、そのあたりも念頭に置きながら、今後具体的に個々の項目について何を入れ込むかについて、議論をいただければと思いますが。 他に全体について、何かございますでしょうか。どうぞ。 ○佐藤(直)委員 柱の2本目のクールジャパンを推進するというところで、先ほど川上委員のほうからお話がありましたけれども、前々回ですか、進捗の状況等を各省庁の方から報告を受けたときに、具体的に進捗をチェックできるような印象を受けたのですが、今回、非常に分散化しているといいますか、このクールジャパンという定義であるとか、今ここでこの柱というのを論議するに当たっては、やはりクールジャパンというのはどういうものなのかというのを、具体的な形でご提示いただかないと、なかなか論議も進まないのかなというふうに思いました。 もう1点。先ほど進捗の状況というところで、特区という話が出たのですが、ファンドに関しても、極めて具体的に3月末という形で、金額、スケジュールというのが論議されたというふうに記憶しております。特にこれに関しては担当の省庁の課長の方からも報告があったと思います。今日現在、既に2月に入っておりますし、先ほど、資料の中でも、具体的なスケジュールに関しても提示がありましたので、本件に関しての進捗の状況等というのをご報告いただきたいと思います。 ○芝田次長 最初のクールジャパンのところについて申し上げたいと思いますが、15ページのチャートで示してありますけれども、今、クールジャパンの定義というか、どこまでターゲットにするかということ自体、少し我々も議論をしているんですが、とりあえず今ぼんやり考えている状態で申しわけないのですが、ここにおける議論のために少しご提案させていただきますと、1つには先ほど申しましたような狭い意味でのコンテンツ、映画ですとかアニメですとか、そういったもの。それからそれ以外にファッション、食、それからあとはやはり観光、インバウンドというんでしょうか、外国から人々に来てもらう。それから、もう一つは文化的価値といったようなやや抽象的なものも含めた、そういったものがこの関連施策のターゲットになるというふうに思っています。 ですから、そういった関連施策の対象になるようなものについて、ここでどんなことができるかご議論いただければありがたいと思います。また、厳密なというか、もう少しきっちりとした定義なり考え方を、改めてお示しさせていただければありがたいと思いますが。 ○近藤局長 クールジャパンって正直言ってどうしていいか難しいものです。それで我々の知財だけで議論していいのかというと、多分そうではないんです。先ほどどなたかもおっしゃったように、日本のものづくりの素晴らしさなんていうのは、ある意味知財なんですが、ある意味科学技術であり、日本の地域中小企業の活力だったりする。そんなのがたくさんあるものだから、それからいろいろなものの中で、何が日本にとってクールなのか。格好いいのかというのはだんだんその判断も難しいので、ここからここまでが定義で、法律上こう決めますということに、多分ならないと思うんです。 従って、少しやや漠然としながら、やっぱり日本をしっかり世の中に打ち出して、世界に打ち出していかないと、この少子高齢化の中でやれないんじゃないか。従って、まず走れるところから走ろうよという感じになっているんです。その議論の中で各省で議論をしながら、我々のところでも議論をするし、それから国家戦略室のほうでも議論をするし、それから他の各省のところでも議論するしというのを議論しながら考えようと、こんな感じになっていまして、少し議論がいろいろな場面で議論をしていることが見えてきたら、またご報告しますが、まずコンテンツを中心とするような格好いい日本を世界に出せるところをどうするかというのは、ここの我々のところでまず議論をして、やれることからやりましょうと、こんなつもりで私はいます。 従って、その定義がきちんとでき上がるかというと、できないかもしれません。やってみないとわからない。少し本音過ぎるかもしれませんが。 それからさっきのコンテンツファンドのところは、ファンドをつくることについて相当いろいろなトラブルがあったり、議論がありましたが、今産業革新機構との協議も相当程度進んでおりまして、これは経済産業省のほうにも、2010年度につくると約束をしたんだから、2010年度につくれということを強く言ってありまして、まさに2010年度中につくり上げる方向で、今最終調整をしております。恐らく何とかなるのではないかと私は思っています。 ○杉山委員 ここにいらっしゃる方はほとんど気がついてはいると思うんですけど、基本的に日本の現代文化の特異性というのが、完全な強みになっていて、日本の歴史を踏まえた上ですが、戦後に一度アメリカが来て、憲法を置いていったんだけれども、割とそこで社会通念が自由になって、割とクリエーターにとっては何でも発想できるという状態になったので、それはどこの産業にいる人でも、例えば余り一つの宗教に縛られない倫理観とか、そういうものが全部醸成して、マンガでもアニメでも、表現であったりとか、通常、西洋の人ではあり得ないような、今ヒットしているマンガにも、仏陀とキリストが一緒に同居するみたいな話があるんですけど、そんなこと絶対描けないなんですよね、やっぱり普通は。 僕はいつも大学生に言っているんですけど、最も心が自由でいられる国なんですよ。こんなに自由な発想が自由にできて、それが、何か俺はいけないことをしているんじゃないかと思わなくて済むという、とんでもない、素晴らしい60年間ぐらい実は過ごしているんです。と僕は思っていまして、そこから物すごくいろいろなものが生まれているので、いろいろな、日本から見たら、物すごいたくさんの制約がある諸外国の人たちではやっぱりできないものができちゃうというのは、もう明らかだと思うんですね。これがクールジャパンの源泉になっているんですよね。 だから、ちゃんと歴史を振り返れば、当然そこが強みだってあるんだけど、一番の問題はそんなにいい状態だったりとか、そういう強みがあるということを、国民全員が知らないということが一番問題で、ここが強みだということをもう少し何とか海外に知らせるんじゃなくて、海外の人が勝手に、我々がというか、皆さんがつくった制作を写したもので、喜んで見ていただいて、わかっているんです。差異があって、これはすばらしい、おもしろい。感動する。涙が出た。いろいろなことがあります。でももともとの国内が、そこが強みであるというのがわかっていない、どんどんその強みであるものを捨てている状況が見えるんです。 一番、今悲惨な状況だと思うのはアニメ産業です。実は最近劇場版エヴァンゲリオンというのが最近出たんですけれども、アニメをつくっている人たちが、ここはもしかして、日本のアニメの質的、技術的頂点かもしれないとも言うわけですよ。なぜかと言うと、もう作画している人たちは名人なんですけど、かなり高齢になってきている。それを現場で次世代が育っているかというと、うまくなった人でも、やっぱり飯を食っていけないのでどんどんどんどん離脱しているんです。だからやっぱりこの10年を過ぎると、今の日本のアニメの量、質は無理だろうと。ただ書くだけだったら技術はほとんど中国とかに移転されている。そこはじゃ、向こうへ行ったとしても、まだ日本の源泉というのは、そういう自由な発想に基づいたキャラクター設定、ストーリー設定みたいなものがやっぱり諸外国は出ない。オリジナリティーというものが出ないので、もうしばらくは優位性があったとしても、そこをみんなで大事にやっていこうという感じがなくて、非常に悲惨な状況にあるんですよ。 例えば我々の大学でも、大学ですから、それなりに頑張って勉強して、アニメ産業に行く子はいるんですけど、1年ぐらいでどうしても、もたなくなるんですね。やはり休みがとれないし、給料もほとんど10万円ももらえないような状態が続いてしまうので、体も壊れてしまうというようなこともありますので、非常に悲惨な状態にあるんですね。 ですからゲーム産業と、例えばアニメ産業と同じようにここで語っちゃうんですけど、全然違って、僕が育てたゲーム会社に行った子は、30過ぎたりすると今度一軒家建てますぐらいのことを言っているんですね。物すごく違うんですよ。さらに特にデジタル映像のほうは、人材がグローバルに動く時代になってしまっていますので、日本のゲーム産業で育って優秀な人で、ある程度の年齢が来たんだけど、まだ物をつくりたいという人は、日本の会社ってどうしても管理職をやれとかなってきますので、どんどん海外の、イギリスとかアメリカのいいデジタル系の会社に流出しています、物すごい人数です。日本のゲーム産業、少し調子悪いので、そこで育った物すごい高度な新人クリエーターたちは、非常にいいお金で有名なところにどんどん行っちゃうんですね。 ですから、非常に、何だかんだ言っても、国際的に我々が物を売るということを強めて、少しでも日本にお金が戻ってこないと、クリエーターも流出してしまうし、継いでくれる人たちもいなくなるなという、強い危機感はあります。それをここのどこに入れられるかはわからないのですが、海外からお金を戻ってくる仕組みをきちんとつくったりするとか、我々、制作している人たちも、日本だけで売るのではなくて、最初から世界のマーケットで、世界で儲けてやるみたいな気持ちが非常に実は重要なのではないかと思います。 ○近藤局長 私どもはこの議論のたたき台をつくるときに、我々の法律をつくる常識で言うと、まず定義を決めて、ここからここに決めて、こうやってああやってこうやって、これは割と簡単なのですが、そうでない、今おっしゃったような日本の強いところを伸ばそうではないかと。一体どこからどこまでが日本が本当に強いのか。ないしはこれから強くなるのかよくわからないけど、まず伸ばせるところから伸ばそうじゃないかと。伸ばせるものは伸ばすし、ボトルネックがあるところは、それを除外して、それでとにかく世界に打って出ようというのが、我々の気持ちなものです。クールジャパンの定義というのもいろいろな議論をしているので、少しずつこんな感じというのが出てくるのかもしれませんが。 恐らく先ほど次長がまたご報告しますと言ったのは、ぴたっと決まって、法律上の定義のようなものが決まるというのではないと思います。それはそこでもうしようがないなと思いつつ、まず中身でどんなことをしたら、日本が世界に打って出られるんだろうか。あるいは世界の人たちが日本にもっと期待してくれるんだろうか。そういうところを、伸ばせるものを伸ばして、それで発掘して、育てて、出していって、それを定着させていくというのを、やりながらまた考えるという、余り法律的でない頭のプロセスでやりたいと思うので、何となく頭から極めて演繹的にお話できませんが、そんな気持ちです。 ○中村会長 役所が苦手な政策領域ですね。 ○近藤局長 苦手な政策領域なので、この知財本部でやっているのであります。 ○中村会長 ありがとうございます。全体の枠組み、構成については大体よろしいかと思いますので、クールジャパンはまた後で戻ります。これから各項目について、少し議論をしていただきたいと思います。 最初に、デジタル化・ネットワーク化、次にクールジャパン、3つ目に人材育成という順で、その施策の中身について意見をいただければと思います。 まず最初にデジタル化・ネットワーク化についてです。資料2の7ページ目から14ページ目までに、今回の施策案などが組み込まれているんですけれども、この部分について、ご意見、ご質問などあればお願いをいたします。特に、それぞれのページの下の箱の中、これが取組の方向性の例ということで、施策のアイデアなわけですけれども、これが我々のアウトプットの素案、卵になっていきますので、このあたりでご指摘があればと思います。 いかがでしょうか。どうぞ。 ○別所委員 全体とつながっていることなので、お話ししたいのですが、この一つ一つの項目を議論するときに、私、2010年のときにも言ったと思うんですけれども、対国内向けの話と、対海外向けにアピールすべき話と、それから海外のいろいろなものを日本に呼び込む話は、3つ連携はしているのですが、それぞれ3つにカテゴライズした表現が一歩踏み込んで2011年はしていただきたいという願いがございます。そうでないと、この切り口で3つ柱があるのですが、多分、国内向けにやらなければいけない。この次に話す、ボーンデジタルとボーンアゲインの話ですけが、既存のものをデジタル、この知財で話すときの交通整理、法改正などを含めた整理が必要なことと、新しく始めてゼロ地点からつくっていくもの。既に海外では始まっているんだけども、そういうものとはやっぱり性格が違うのではないかと思うので、まずはドメスティックに国内の話、海外に出ていって打って出ようという話。それから海外を日本に呼び込もうとする話。戦略的に全く方向性もベクトルも違いますから、分けた議論をこの1つ目の柱でも組み立ててほしいなと思います。 それからちょっと今言いましたボーンデジタル、ボーンアゲインの話で言うと、やはりアーカイブの話もそうなんですが、既存の過去あるものをどう処理していくか、整理していくかという話と、今こういう新しい環境の中で生まれている産業を、ゼロ地点からどう育てるかという話はまた違ってくると思うので、2つに分けた議論になるといいなと思います。 ○中村会長 ありがとうございます。そのあたりもう一度整理し直す必要がありそうですね。 どうぞ。 ○川上委員 非常に具体的な話をさせていただきたいんですが、12ページのプラットフォームについてなんですが、差し迫った問題として、コンテンツのデジタル化において、実は日本というのは世界の中でもマーケットの確立に成功しています。それは大体携帯コンテンツです。その携帯コンテンツで今現時点、まさに何が起こっているかと言いますと、スマートフォンの台頭です。スマートフォンの台頭で、携帯コンテンツマーケットが今崩壊しかかっているんです。という事が現実問題としてあります。これをどうするのかというのは、結構緊急的なコンテンツ業界にかかわる知財計画に盛り込むべき課題じゃないかというふうに思っていますが、この辺でも課金の問題について触れられていますけれども、1つ大きな問題としてあるのが、例えばアップル社が決済においては携帯課金を認めていない。世界共通の課金システムしかアップル社は認めませんので、クレジットカードしか認めていないんですけれども、それが実際に今の携帯コンテンツというのが、彼らガラケー(ガラパゴス携帯)と呼んでいるものでは、携帯電話の料金から課金される仕組みというのが普及していまして、それで今の携帯コンテンツの市場というのは形成されているんですけれども、それがiPhoneの場合は全く使えないということも、これも大きな理由になっていまして、そういうスマートフォンに買いかえたユーザーが全くコンテンツを買わないということが起こっています。 それで今、新規購入者の大体30%から50%ぐらいがスマートフォンになっているわけなんですが、今新しく生まれつつある新規ユーザーの半分ぐらいは、コンテンツを買わないユーザーになっている。多分これは1年、2年すると、世界でデジタルコンテンツのマーケットというのは携帯というものにおいて、電子書籍も音楽も日本が世界最大規模だったのですが。ここで言うならこの1年、2年で崩壊する可能性が高いんですね。ですので、この携帯コンテンツのプラットフォームの課金システムの問題というのは、これは電子書籍とかアマゾンが自社の形成資産に影響されそうだとか、そういう問題もありますけれども、もっと差し迫った問題でもそういったことが起こっている。もう今まさに起こっている問題だということを、少し意見として言わせていただきたい。 またもう一つ。これは他のところでも言っているのですが、多分大抵の日本のプラットフォームもこれから頑張ると思うのですが、多分負ける可能性が70、80%あるような気がするんです。そのときに日本のコンテンツ業者というのが、もうほとんど奴隷のような存在になってしまう可能性が高いのですが、そのときの競争力を高める方法としては、そのコンテンツをつくっている人が買ってくれたユーザーに直接コンタクトできるような手段を提供するということに尽きると思います。 これは簡単に言いますと、前回もこの場で言ったような気がするんですが、アマゾンと楽天との差なのです。楽天もアマゾンもショップを中にできるんですね。中に、例えば地方のお店とかが楽天とかアマゾンにお店を出すことができるのですが、楽天とアマゾンの違いは何かと言いますと、楽天のほうは自分のところの商品を買ったユーザーに、お店からDMを送れるんです。ところがアマゾンの場合というのは、そういうことが基本的にはできない。情報というのをアマゾンは提供しないわけです。楽天は少なくとも自分の商品を買ったユーザーに対してはDMを送ったりだとか、何らかのアクセス、手段を提供します。これが楽天とか、個人の商店とかが大きなビジネスを得られる大きな要因になっている問題でして、コンテンツをつくっている人が売ったお客さんに対してサポートができる。もしくはDMができるというのがおそらく将来的に奴隷産業になる日本のコンテンツ産業にすごく重要な問題ではないかと思いますので、これも長期的な日本の政策に組み込んでも妥当なものではないかと思います。 以上です。 ○中村会長 非常に重要な問題提起で、12ページの中のプラットフォームの開放性のところが、今、実は非常に喫緊の問題じゃないかということなのですが、国内のこれまでの閉じたガラケーの世界でも、通信キャリアのプラットフォームのところを、例えば顧客情報の管理や、課金を開放すべきだという議論があったんですが、それがいきなり海外からもっと大きなプラットフォームが来ているということで、これを今回どのようにクローズアップして捉えるか。あるいは施策として何か打ち出すのかということは重要な課題という提起でございますが、他にどうぞ。 ○久夛良木委員 今の話にも絡むのですが、ここに書いてあるデジタル化・ネットワーク化の中で、みんな議論しているのは「情報の流通」の話をしているんですね。例えばアニメにしろ、ゲームにしろ。いろいろな情報の流通をする過程において「著作権法をもっと強化しなくちゃいけない」と懸念する一方、クリエーター側からすれば、「もっといろいろな人にリーチをかけたい」とも考える。そういった中でせめぎ合いが今起こっているんだと思います。これは課金の問題にもつながりますが、「情報の流通」言い換えれば「何らかの物理的なメディアに固定された情報の流通・販売」から「ネットワーク上のダイナミックな情報やコンテンツの利用」にフェーズが移っている過程で起こっている状況なのだと思います。従来のクライアント機器、例えばゲーム機もそうですが、機能が端末機器内に概ね閉じていた。パソコンの場合もネットにつながってはいても、アプリケーションソフト自体は主にPC上で動いている。そういった時代からかなりの部分、ひょっとしたらほとんどの部分が、つまり情報の蓄積及び処理を担う主体が、遠くない将来に雪崩を打ってサーバー側に移行するものと予測されています。 今、ユーザーが便利に使い始めているスマートフォンであるとか、具体的な商品名で言うと、iPhoneとかiPadとか、ああいったリッチなクライアント機器がこれから単純に伸びていく時代というのは実はそんなに長くなくて、ひょっとしたら、もっともっと軽快な、極端なことを言うと情報処理を担う部分がクライアント機器側に殆ど入っていない、という事が起ころうとしている。そういった役割分担の中で、人間とのインターフェースを担う、マン・マシンインターフェースはクライアント側で一段とリッチになるだろうけれども、ほとんどの情報処理がリアルタイムでサーバー側で実現されるという時代って、そんなに遠い話ではなくて、割と早いかもしれないというふうに、今みんな気づき始めているというか、何かちょっとそういう気がし始めているんじゃないかと思います。多分、近い将来「知的財産推進計画 2012」に盛り込むべき事項を議論するというようなフェーズがあるとしたら、もう起こってしまいましたねという議論を多分ここでしているのではないかと思うんです。課金も決済も端末機器ベースではなくて、個人に紐づけられて全てサーバー側で処理されるような時代になるでしょう。 パッケージ化されたコンテンツというのは、20世紀におけるコンテンツの流通形態として大きく発展してきたわけですが、パッケージされたものはいい意味でも、悪い意味でもコピーしやすい。先程来、議論に出ていた「クール」というのは、何も日本だけがクールなんじゃなくて、いろいろなところにクールなものがあるんですね。「これ、クールだね」と言うと、他にないということなんです。要するにコピーできない。コピーできないがゆえに、「これはクールだね」ってみんな思うわけで、そういったものが比較的日本に多いのは間違いないのですが、世界中にもたくさんあるわけで、そういったクールなものというのは、これから、大事なコンテンツになってくる。つまり「クールジャパン」とは、コピー可能な20世紀のモノやサービスだけじゃなくて、コピーできないユーザ体験までも含むものだと思います。コピーできないものを産み出すクリエーターであるとか、多種多様にわたるサービスであるとか、そういったものがこれから伸びてくる。今までモノが主体だった時には、輸出するとか、輸入するとか、買うとか、貸すとかで回っていたビジネスが、デジタル情報ネットワークの時代が到来して、サーバーを経由して一気に様々な情報やコンテンツ、そして多様なサービス群が世界中に飛び交う時代になると、Bのデジタル化・ネットワーク化というものはもはや当然の事として、コピー可能なものがそのままの形で流通するという時代は、経済的には実はもう終わっているかもしれない可能性が高い。同じものであれば、一番効率のいいところで一番安く供給できればいいわけで、既に音楽配信で起ったように、書籍も映像もいずれは飲み込まれる。いずれにしても容易にコピー可能なものは、いつかは似たような状況になるということで、今後はコピーできないものがよりクールであるという事になるかも知れない。@の「コンテンツを核として海外から利益が入る仕組みを構築する」と、Aの「海外からも優秀な人材が集まる魅力的な「本場」を形成する」って、そういう定義での議論じゃないのかと思います。 実は日本にはコピーされにくいクールなものがたくさんあって、一例ですがネット上で展開している「楽天市場」に行くと、全国に散らばるショップの方々が従来地産地消だったものをネットを介して広範なユーザに紹介しているわけですね。本当に今まで流通できなかったような珍しいもの、ひょっとしたその地ではただただ当たり前のものが、他の地に持っていくと、すごくクールに思える。そういうものを、それぞれのお店の人が自分の声で、全国の人々に訴えかける。これと全く逆でいい例かどうかわかりませんが、例えば米国へ行って典型的なショッピングモールに行くと、どこを行っても同じようなもので、言い換えるとクールじゃない。どっちがいいかと言われたら、私は多様性があるほうがより良いと感じる。 残念なことに、今、世界規模で急速に発展しているネットワークサービス群を見てみると、グーグルであるとかアマゾンであるとか、もしくはフェースブックもそうですが、ああいった世界規模のサービスを支える巨大サーバ群が存在している場所が、日本ではなくて主に米国や、近年では中国であるという事実は、日本の今後の競争力を議論する上で、極めて深刻な問題だと捉えざるを得ない。前回、別の競争力強化・国際標準化専門調査会でもご意見を述べられた委員の方がいらっしゃいましたが、日本では法的にも経済的にも、そういったクラウドサーバーシステムというものが極めて運用しにくいような環境になっている。日本って、黒船来訪のようにタンジブルなもの、目に見えるものはイメージできる国民だと思うんですが、目に見えないものをなかなかイメージできないのかも知れない。だから、将来の成長可能性を睨んだ法整備や、世界規模の競争に打ち勝つ為の先行投資で、大きく後れをとってしまっている。 結局、誰にでも判る程の変革が起こるまで気が付かない。一方、新たなイノベーションに積極果敢に挑戦しようとする企業群や国からすると、法整備が十分整ってから追っていくなんていうのはもう絶対間に合わなくて、前へ前へと攻めて行く。物理的なモノを動かしている時代にはまだまだ時間差がありましたけど、今ではイノベーションは加速度的に進んで行くし、情報って1分1秒で動きますから、慎重になり過ぎると法整備が凡そ間に合わないですね。だから不謹慎な言い方をすると、法整備をつくる前に先にやったほうがいいというぐらいの状況なので、コンテンツ強化と競争力強化・国際標準化調査会では、そういった見方で今年1年、いろいろな議論をスピード感を高めて議論していただければいいなと思います。多分議論し終わった後に、やはり相当遅れていたなと、次の2012年でみんな感じると思うんですね。 ○中村会長 今、川上委員も久夛良木委員もおっしゃったことなんですけれども、私は個人的には結構、去年から今年にかけて、大きな場面転換があったなと思います。それはこれまでの10年とこれからの10年を大きく分けるようなことが結構出てきたと思っていまして、例えばテレビ、パソコン、携帯に次ぐ第4のメディアと言えばいいんでしょうか。先ほど来、話にあるようなスマートフォンだとか、iPadだとか、新しいデバイスがどんどん出てきたということ。それからコンテンツ、コンテンツと議論をしてきましたけれども、ここのところは非常にソーシャルメディア、ソーシャル、ソーシャルというコンテンツを真ん中にすえながらも、それらを取り巻くコミュニケーションとか、コミュニティというものがクローズアップされてきていて、形が変わってきたことですとか、あるいは今年は地デジが完成して、それから全国的なブロードバンドも整備されるということで、結構大きく動いているなと思いますので、今回このデジタル化・ネットワーク化、あるいはクラウドということを加えてもいいかもしれませんけれども、これが第1のテーマに出てきているというのは、新しい認識だろうと思います。 今、先ほど来ご指摘があるように、その中で何をどうとらえて、何を書き込むかということが改めて問われているのかという気がいたしますけれども。 ここで政務官が公務でご退出されるということです。何かコメント、ありますでしょうか。 ○阿久津政務官 今日は聞かせていただいて、大変勉強になり、ありがとうございます。 (阿久津政務官ご退室) ○中村会長 ありがとうございました。 他にこのデジタル化・ネットワーク化の部分でいかがでしょうか。前回、電子書籍ですとか、あるいは国会図書館の話なども結構議論をしましたけれども。そのあたりについても、追加的にコメントなどありましたら、お願いいたします。 ○吉羽委員 国会図書館の話なのですが、「国会図書館の話」というようになってしまっているところが、やっぱりずっとひっかかっていて、基本的には民間でできる部分は民間でやりましょうという話のほうが、何となく書いてはあるのですが、何か後ろのほうに行っているなという印象がありまして、この辺り民間がやろうとしていることをどれだけサポートしてもらえるのかというような観点が、もう少しあってもいいのかというのは、思いとして1つ感じているところです。 それと今のクラウドの議論の中で言うと、前回のときに、特区話の中で、クラウド特区みたいな話があったかと思います。別に日本の国内にあればいいというものでもないのですが、サービスを日本の事業者が進める上で、安心して使えるような設備というのを、日本の国としても進めていただけるようなことが考えられないのかという話をしたかと思います。その辺はその後、進捗はいかがになっていらっしゃるのかということが少しお聞きしておきたいと思います。 川上さんから先ほど話がありましたけれども、ガラケーの中でのiモードとかezwebのサービスというのも、やっぱり僕らコンテンツプロバイダー側がきちんとユーザーにリーチをできるという環境の中でやっていて、非常にキャリアの垂直統合だ、垂直統合だと非常に悪口を言われていたのですが、今のアップルなどの垂直統合度に比べれば、まだまだゆるかったという印象がありまして、そういう意味では民主的な運営というと変ですが、民主的な運営がされていたという印象があるので、ここのところ、OSの開発競争みたいな話の中で言うと、コストの問題からどんどんグーグルのほうにアンドロイドのほうに行ってしまっていますが、やはり先ほどのクラウドの話にしろ、プラットフォームの話にしろ、コンテンツの乗り物なのでやはり上下の部分というのを一緒に考えていっていただきたいなと。この場合は、知財の話なので、何か上の話ばかりしているのですが、やはり基盤の部分が揺らいでしまうと、奴隷になってしまうという話のとおりなんだと思いますので、その辺、是非視点として考えていただければと思います。 よろしくお願いします。 ○別所委員 このデジタル化・ネットワーク化のアーカイブの電子書籍のことって、この間も話を聞いていて思いましたが、日本の国内のものを整理していこうということや、国内の産業を振興していこうというのは、もちろん国家戦略ですからあると思いますが、例えばいろいろな産業にも外資系があるように、海外の例えば情報を日本がアーカイブして差し上げようとか、あるいは電子書籍をつくっているベトナムの企業やタイの企業を日本に誘致して、税制優遇しながら育て、国内企業、日本に税金を落としてもらう企業に育てようとか、そういうことは戦略的にはないのでしょうか。 ○中村会長 いや、あり得ると思いますが。 ○別所委員 そういうことはどこかに書かれるべきことなのか。もちろん国内の産業もいろいろあると思いますが。要は迎え入れていくということがない限りは、日本の国内の閉じた世界をどうつくるかということと、外にある海賊版をどう対処するかとか、法整備をどうするかということに、本当に終始してしまいがちだと思うんですが、日本の国力が上がるためにはこの情報産業のハブになるということをやるのであれば、具体的にはクラウド型のコンピューターのハブを世界に向けて、オープンソースのように大きく開いて迎え入れるというような発想が何か大切なような気がいたします。 ○中村会長 それは2010のときには、参考資料1にありますように、例えば海外展開で外に出ていくというところの、1ページ目の上から2つ目の枠に、海外から資金・制作を呼び込んで、協働する仕組みを構築しましょうということで、国際共同製作を促進しましょうというのは昨年議論しましたと。それから2つ目の人材育成のところで、海外から、優秀な人材を呼び込んで日本を本場にしましょうよ、というのが、最初のメッセージでありましたということだったのですが、その辺の色彩が今回少し出ていないということと、今、別所委員がおっしゃったのは、もう企業を日本に呼んできて、日本をハブにしてという、そういったもっと踏み込んだイメージですね。 ○別所委員 そうですね。前回も言ったかもしれませんが。出版・電子書籍のことで、僕のような門外漢が言うのは失礼なのかもしれませんが、僕の周りで起きていることは、出版会社のように大きくなった世界観の企業とは別に、ウエブ制作会社みたいなものがどんどんeマガジンを電子書籍の分野に参入してきていて、実は小回りがきいて、どんどんやろうとしているんですが、日本国内だといろいろな法規制であるとか、いろいろなことがあってできないと。だから法人を海外につくってしまって、結局日本人のエンドユーザーがシンガポールにアクセスしていることは全く知らない。あるいは制作拠点もベトナムにあるけれども関係ないという状況に、もう本当に来年にはなってしまっていると思うのですが、ですからそういった日本国内で、小さくても頑張ろうと思っているアントレプレナーとかベンチャー的な世界観の人。あるいはそういう人たちが大手の出版社と組んで、何かできる自由な発想のある、もっと許される仕組みがないと。もっと言えば大胆に北欧の企業が日本で大きく展開していて、ヨーロッパの情報産業が、実は日本のどこでもいいですけれども、僕のふるさとの静岡県でサーバーがあって、がんがん仕事をしているというような、迎え入れ作業をしない限りは海外に流出してしまうばかりで、国家戦略的に国で育てるということに結びついているのかなと思ったので、ちょっと聞いてみたのですが。 ○中村会長 わかりました。 ○上田次長 今の点、確かにおっしゃるところは非常に大事な点をご指摘いただいたと思います。どうしても法人税引き下げの問題もそうですけれども、一般的にアジアのほうからというようなところで企業誘致のような政策というのがあって、なかなかこの日本のコンテンツとの関係、あるいは、例えば今具体的にお話のありました電子書籍というところで見たって、日本が独自でやっていくなら、もしかしたら、それは北欧でも使えるかもしれない。一つの同じようにやっていくという可能性もあるかもしれないと。そういうところの企業をこちらのほうに、魅力があるところとすれば、日本のところにも誘致することができるかもしれない。 非常にそれは新しいご指摘、視点だと思いますので、そこはよく関係のところと受けとめまして、検討したいと思います。 ○中村会長 ありがとうございます。新しい提案ですけれども、それとこのコンテンツ調査会だけではなくて、国際競争力のほうの調査会とも連動すべきテーマかもしれませんが、外から呼び込むというのが、もしここでの一つの柱になり得るとすれば、それをどのように書き込めばよいのか。あるいは具体的な政策として、その予算、今話があった税制、あるいは制度面でどのようにそれを消化することができるのか。あるいは特区というものを生かすことができるのかということを、少し事務局のほうでも検討いただければと思いますけれども、他に何かありますでしょうか。このデジタル化・ネット化のところで。どうぞ。 ○末吉委員 7ページのところに、環境整備というのが2つぐらい出てきたり、一番下ですね。それから9ページのところにも、権利処理とか合意の形成とかいうのが出てまいります。このテーマのときにはやはりどうしても関係者間の協議とかいうことも必要で、民間でできるところも多々あると思うんですが、放送番組をネットに流すというところで、いろいろやらせていただくと、関係者間の協議を促す政府の役割というのは非常に大きいんじゃないかと私はまず思います。 だから、テーブルをつくって、そこに関係者が集うというところをまずつくるのをやらなくちゃいけないところが、この中に幾つかあるんじゃないかと思っていることと、それからそうは言っても、国が金が出さないとだめなところが多分あって、例えば7ページ目にある「集中的な権利処理の」というところは、ちゃんとシステムを組んで、権利処理が簡便にできるようにならないと、これはまさに放送番組もそれを実験的に総務省が始められているところですが、そういうような形をとってでも、この電子書籍の周りの権利処理についてもシステム化を促す。これはなかなか民間の自助努力ではできなくて、実験的な仕組みのつくり方でも結構なので、そこにやはり国の予算をつけていただくような仕掛け、これが是非必要ではないかと思います。 そういう意味で、特に著作権周りとか、法的なところは一刀両断でなかなか前進しないということが、この間に随分わかってきたので、税制の優遇なども含めて、もう少し違った観点、あるいはシステムづくりとか、そういうことを政策として組んでいただけたらという意見でございます。 以上です。 ○中村会長 ありがとうございます。どうぞ。 ○中山本部員 いろいろ書いてあって、みんなごもっともなのですけれども、この電子ブックを初めとするデジタル化・ネットワーク化で最も大事なのはスピードではないかと思います。もたもたすると、グーグルにやられてしまうのではないか。今度のグーグルブックの和解案では日本は外れるようなのですけれども、そんなので喜んでいられないので、そのうちグーグルにお願いして載せてもらわなければ、世界で見てもらえないという時代が来るのではないかと思う。従って、とにかくスピードが大事であるということもどこかで書き加えていただければと思います。 特に日本の場合、民間ができることは民間でやるのは結構で、話し合いも結構なのですけれども、話し合いをしていると、いつまでもだらだらと行ってしまうという傾向にあると思うので、とにかくスピードが大事であるということが重要だと思います。 ○中村会長 ありがとうございます。10ページ目に、先ほどの末吉委員のご指摘なさったことから関連して、事務局に質問ですが、ここでもその放送番組のアーカイブなどがあり、他にも映画のアーカイブ、書籍のアーカイブ、マンガなどがあって、それらを機関同士の連携の強化が必要といったことが書かれているんですが、これは以前、文化庁にも少し話を聞いたことかと思いますけれども、こういったそれぞれのジャンルのコンテンツのアーカイブの連携強化というのは、今政策として進んでいる面があるんでしょうか。 ○奈良参事官 これは文化庁におきまして、それぞれの機関についてネットワーク化をするという方向性、まずそのためにどういうようなことをしたらいいかということで、まず関係者間のすり合わせというか、意識共有のためのそういう場を設定しているというような段階であります。 しかしながら、スピード的には若干のんびりしている面もありますので、これは来年度に向けても引き続き加速して、具体的に、何をどこまでやるのかということを少し明確にする必要があるのかなと思っております。 ○中村会長 どうぞ。 ○久夛良木委員 そのやり方の一つとして、ジェネリックな話をずっと話していると、毎年毎年の事でちょっと疲れてしまうので、何か判り易いベンチマークというのを見つけませんか?例えばそれぞれにおいて、世界で最も効率的にやっているチームは何処だというのを見つけて、それに対していいところは学ぶし、そこにみんなの力を合わせたほうがよければやる、問題があるんだったらそれを改良するというふうにやらないと、本当にみんなごもっともですという中で、何か実行に移されない言葉だけが書いてあるような気がするんですよね。もっと世界を眺めて、例えば将来の新たな競争力を産み出すかも知れない巨大クラウドサーバ群が、何処に置かれるか。ただ冷却効率や電力事情がいいだけじゃなくて、その国が著作権問題に対して非常に柔軟であるとか、もしくはネットワーク課金に対しても非常に有利であるとか、補助金が出るとか、そういったことでそれらのサーバーが置かれる場所が決まる。それは言ってみれば、昔でいう企業の法人登記みたいなもので、どこを拠点に活動する事が有利かということになる。そこから、新しいサービスであるとか、新しいユーザエキスピアリエンス生まれるのだとすると、最先端もしくはさらに先の世界までちゃんと予測できるぐらいのところまで、きちんとベンチマークして、我が国としてスピード感を持って動いていかないと、キャッチアップしたときには、競合相手はさらに先に行っているということになりかねない。是非その辺の議論もできたらよろしいかと思います。 ○中村会長 よろしくお願いいたします。 他にデジタル化・ネットワーク化の分野、ひとまずよろしいでしょうか。もし後でもう一度ということであれば戻れますので。 では、次に、クールジャパン。15ページ、16ページ、17ページですけれども、改めてご意見、ご質問などがありましたら、お願いいたします。 ○川上委員 クールジャパンの定義というもの、日本の強みというものは、明確化しないとだめだというふうに、思っているんですが、先ほど杉山さんのほうからも指摘がありましたけれども、一つの要素としては、日本のサブカルチャーの魅力というのは、明らかに日本の自由に支えられているというのは、すごく重要な指摘だと思うんですよね。そういう自由ということで考えた場合、東京都の青少年育成条例なんかに見られますように、今、コンテンツの内容とか表現とかを規制するような動きがあるわけです。これは別に東京都以外にも、他の都道府県にも波及する可能性があるわけなんですが、じゃ、これが知財というのは、これは日本の競争力を高めるという、経済的に高めるという視点だと思いますが、そういう視点で見たときに、ああいうようなコンテンツの規制というのが果たしてプラスかマイナスかという議論は、すごく重要な議論だと思うんですね。 そういったところも、ここでも話し合うべきではないかというふうに思います。クールジャパン、クールジャパンと言っていますけれども、実際に東京都の首長の方は、ある意味コミックは、いわゆる下賤な文化だというふうに断言されているわけですから、つまりこの下賤な文化を推進する話し合いを今ここでしているということです。 ○杉山委員 それはすごい重要で、あれが出たら、うちの学生たちが心配になってしまったんですね。自分たちがこれからやることを本当にやって大丈夫ですかという質問が幾つも来たんです。大学1年生から。またコンテンツ系のベンチャーをやっている30代ぐらいの社長たちも、みんな、これこそ日本の源泉なのに、源泉をつぶすことは何事か。これを誰も声を上げて戦わないのかというような意見もたくさん出たんです。非常に根本的な問題をはらんでいて、「ああ、何か都知事がそうしたんだね」みたいなもので、済まないと思います。ああいうことは、若い人たちにも非常に敏感に、これからのクリエーターの心に刺さってしまうんです。自分たちがやっていることがどういうふうになるんだというのは。 でも、都知事も若いときに書いた本を読むと、非常に過激なことを書いていると思います。 ○別所委員 クールジャパンのところに、私たちの映画祭のことも多少掲載されていますので、一つの例を挙げますと、実は今、日韓プロジェクトという形で、ショートフィルムを日本と韓国で、観光庁の事業の名のもとに制作をしているんですが、その中でおもしろかったのが、私たちが思っているクールと、韓国の人が思っているクールが違うということです。つまり、私たちは技術に裏づけられた新幹線が格好いいと思って、売りに出るわけなんですけれども、韓国の人が、かかわったクリエーターたちから出てきた情報でなるほどなと思ったのが、鎌倉に走っている電車ありますね、江ノ電。江ノ電がクールだと。どうしてだと言ったら、韓国には路面電車がないんだそうです。ですから、本当にないのかどうかちょっとわかりませんが、韓国の人から見たときに、日本の情緒の中に路面電車のある風景というのがとてもクールだと。これは別に50代、60代、70代のシニアの方がおっしゃったのではなくて、20代、10代の中からサンプリングされた情報なので、非常に驚きました。 逆に僕たちが驚いたのは、お誕生日には、韓国の人はワカメスープを飲むんだとか、あるいはひざを立てひざでご飯を食べるのは韓国では礼儀に反しないんだとか。ですから、クールというのを議論するときに、私たちが世界に発信したいクールと、このクールジャパンもたしか僕の記憶が間違っていなければ、海外のジャーナリストが言った言葉が最初だと思いますが、海外と言っても十把一からげに言えなくて、アメリカが私たちを見て思っているクールと、北欧の人が思うクールと、ブラジルの人が思っているクールは全く違うわけで、川上委員が言ったように、クールジャパンという大きな括りで何かを何でも取り入れられるように、掲げる言葉としては美しいのですが、その辺をうまくここに関わられる方々が分けて議論できるようになっていくといいなと思うのと、私は日本のクールというのは、個人的には、久夛良木さんがおっしゃった「コピーできない」というのは非常に賛同なんですけれども、同時に非常に「ベストアレンジャー」だと思うところ、「応用力」があるところです。 例えばイタリア人が来て驚くのは、日本のたらこスパゲティーであり、要するに自分たちの文化だと思っていたオリジンが海外にあるのに、日本というジパングに来るとめちゃくちゃアレンジされて、フュージョンアップされて、違うものになると。機能だけではなくて、多機能になる。これも一つのクールだと思います。電話であればいいはずのものがどんどん違った機能を持っていくとか、一見無駄に思えるようなストラップがどんどん変化して、ファッションになっていくとか、そういうことだと思うので、応用力とか名アレンジャーである日本ということにおいても、私はずっと言い続けているのは、僕たちは世界に出ていくというのは大事なのですが、世界をもっと日本に取り込むというか、呼び込んで、先ほどのデジタルアーカイブも日本がハブになって、日本なしでは語れないと。 スイスがすごいのは、金融防衛をしているところだと僕は思うのですが、この中でもそういう方がいらっしゃるかもしれませんが、世界中の大金持ちの資産を、自分の金融資産を預けると。だから世界中の国々はスイスを攻撃できないと。ですから情報防衛をするような防衛戦略にもつながると思うので、出ていって何かをというのはもちろん大事なのですが、世界中の非常に重要な情報や機能が日本にあって攻撃できないというような防衛戦略につながる提言になるといいなと思います。 ○中村会長 他にクールジャパンについて、いかがでしょうか。なかなかクールジャパンとか、先ほど来、話がありますように、じゃあ施策としてこれという、明確に打ち出していくのは難しい面があるかもしれませんけれども、それも先ほど来いろいろご指摘があるように、今回きちんと捉えてメッセージを出していくということは、さらに非常に大事ですね。 ひとまずよろしいですか。 では、3つ目のテーマであります人材育成、18ページですけれども、ご意見がありましたら挙手をお願いします。どうぞ。 ○中山本部員 人材育成については戦略本部の前の戦略会議からずっと言われてきていることなんですけれども、なかなか思うように進まないようです。 私はこの話は簡単だと思うのですね。要するに待遇を上げること。いい給料を出せば、いい人が集まる。待遇が悪ければ集まらない。先ほど杉山さんがおっしゃったように、小遣い程度の金で優秀な人なんか絶対集まらないわけですね。知財のほう、あるいはコンテンツのほうに、人を集めるためにはそれなりの手当てをしなければいけない。 給料をだすためにはどうしたらいいかということを考えなければいけないんだろうと思います。いかにいいことを書いて、いかに大学で人材養成をしたって、現場で安くこき使われたのでは、決して人は集まりません。 現に、今、知財の弁護士、あるいは弁理士になりたい人は結構いるのですけれども、マーケットがいっぱいといいますか、特許出願も減っているし、どこの事務所でも雇ってくれないという状態なんですね。これでは幾ら人材、人材と言ったって始まらない。そう思います。 ○中村会長 人材育成のところは、今回は1ページになっているというのは、前回の2010の中でも結構人材育成については議論がなされて、考え得るさまざまな施策が打ち出されたという面もありまして、それがどのように実施されていくのかと。そしてさらにその上に何か上書きする部分があるのかということで、上書きの部分が他の2つの柱に比べて少ないということかと思いますけれども。前回打ち出した施策なども含めて、何か意見がありましたら。 よろしいでしょうか。もしよろしければ、人材育成に限らず、全体を通じて、もう一度これを言っておきたいというようなことがありましたら、お願いしたいと思います。 どうぞ。 ○佐藤本部員 声が壊れているので話さないでおこうかと思ったんですけど、せっかく来て何も言わないのも何かということで、1つ。まず今日の議論を伺っていまして、一番感じたのは2つあります。 1つは時間軸。このペーパーの中に時間軸がないということをすごく感じました。先ほど来出ているのは、非常にスピードの速い流れの中で、このコンテンツビジネスが変わっているにもかかわらず、この中で時間軸で物を考えた、プログラムが何もできていないというのを、皆さんの話を聞きながら、すごく強く感じました。そういう意味ではもっと事務局サイドとしては、これから1年先、2年先何が起こって、その先に何があるんだということをもっと専門家の方たちとディスカッションして、その時間軸を見えるようにされたらいかがかというのが1つです。 2つ目。その時間軸が見えないというのは、このペーパーにリアリティがないからだと思います。具体的な施策を検討された上の形の上でのペーパーになっていないというのが、すごく問題だろうと思います。今、先ほど来、お話があるように、日本が奴隷になってしまうような話がリアリティがあって、語られる状況にあるにもかかわらず、それに対して具体的に何をすべきだということが明確に共通なものとして出てこない。つくれない。というのが、この今の知財戦略の閉塞状況じゃないかなというふうに思います。 今回、私ももう2期4年やっていまして、コンテンツ絡みも私が専門じゃないですけど、ずっと中山先生とご一緒して参加させていただいているんですけど、やっと初めてそのコンテンツ問題がビジネスモデルとして語られるようなペーパーになってきた。これは今までとまた1つ前進したと思うんですけど、ただ、今皆さんのご議論を聞いている限りでは、そのレベルではまだ何も本当に日本が強くなるため、また将来のためになるというのが具体化されていないということじゃないかというふうに思います。 やはり是非、今、我々が置かれている環境の状況に対して、もっと厳しい現状分析をされたものをまず最初に、どーんと出されて、だからこそこうやらなきゃいけないんだという、訴えるものを是非つくっていただけたらいいなというふうに思いました。 感想みたいなことを申し上げて恐縮ですけど、一言申し上げました。 それからもう一つ。人材のところですけど、先ほど中山先生が、やっぱりちゃんと待遇をされなきゃ、いい人材が集まらないという話。実は昨年、私、韓国の国会に呼ばれまして、コンテンツについて国会議員を前に、韓国の人たちとシンポジウムをやりました。そこの中で私が言った言葉で、一番韓国で受けたのは、「クリエーターがもっと報いられる世界をつくらないと韓国は滅びます」と言ったのが一番受けました。それは全く韓国も同じで、たしか今、韓流という形で、世界中でいろいろ受けていますけど。実際のクリエーターは非常に韓国も冷遇されていて、なかなか人が育たないという状況になっているということを、韓国の方も言っていましたので、まさに本当にいいクリエーターをつくるのには、その人たちが報いられるような制度設計、仕組みをどうやってつくるかということがすごく大事じゃないかなと。あえて、つけ加えさせていただきます。 以上です。 ○中村会長 ありがとうございます。 ○杉山委員 細かいことでも結構影響があるという話で、大学をやっている身として言いたいんですが、実は大学生の就職率というのは、文科省が4月末日ぐらいで締めて、この大学は何%就職率でしたというふうな発表になるんですが、実はコンテンツを一生懸命勉強している学生というのは、卒業制作をぎりぎりまでずっといいものをつくろうとして、本格的に就職活動を始めるのというのは、そこからポートフォリオをつくりまして、連休明けぐらいから出ていくんですね。ですから、余り新卒とかそういうところにこだわらない制作会社が普通なので、そこから就職活動をして、3カ月、4カ月、10月ぐらいまでに、いわゆる一般の方は知らないけど、いい仕事をしているような制作会社に入っていくということになるんです。どうしても通常の流れがそこで就職率だとか、あとは通常の企業がすごく早目に3年生から手をつけていたという現状が今までありましたので、そういうことというのはやっぱり、大学の運営とか人の育て方に結構影響するんですね。やっぱり大学の経営人というのは、なるべく就職率を上げなきゃいけないみたいなことになるし。ですから、何かコンテンツ産業を応援するという話と、今までのそういう慣習みたいなのがちょっとずれているんじゃないかなという。 ここにも書いてあるように、現場が高度化しているので、4年間みっちり教えて、やっと採ってくれるか採ってくれないかみたいな感じなんですよ、一生懸命やった子たちが。やっぱりレベルが高くなっていますから、パソコンをいじれればいいよというのは15年前の世界ですね。今とんでもなくて、かなりできないと入れない。それは3年生からの作品なんかでは入れないレベルなんですよ、この世界は。なので、物すごくそういう就職も、今までの問題とかも、コンテンツ産業を持ち上げていくためには、やっぱり違う方向を向いているんですよね。なので通常の上場会社に入っていくような就職の話と、制作会社に入っていくような話を別途に考えてくれないと、僕たちの大学なんかも、卒業してから1年間追いかけると、学生たちが自分たちが勉強したことを生かして、制作会社、コンテンツ系の会社に何とか入っているわけですよ、中途の形で。そういうところまでちょっと就職というのを見ていただかないと、ばさっと切って、何だ、この学科はちっとも就職できていないんじゃないかみたいな評価を世間的に受けると思うんですね。非常に不本意というか、そういうのはあります。 ○中山本部員 大学というのはいろいろあっていいのではないでしょうか。うちはこうだっていうことをアピールすればよろしいじゃないでしょうか。 たとえばかつての東大の法学部なんて、就職率、物すごく悪いんです。うちの大学ではこういうことをやっているんだということで、良いのではないでしょうか。それがむしろ多様性に繋がるのではないかという気がします。就職率や偏差値だけで大学を見るという風潮自体を改めるべきでしょう。 ○杉山委員 いわばそういう評価なんですけどね。 ○中山本部員 ネットワーク化・デジタル化についていろいろ施策が出ているわけですけれども、規制の問題がかなりあるのではないかと思います。例えばこの前、ある専門家に聞いたら、サーバーなんか日本に置けない。建築基準等があって、アメリカの10倍ぐらい金がかかる。競争にならないとか。例えば金融界などにもいろいろ企業法の規制があって、とてもクラウドを使えるような状況じゃない等々、いろいろ規制の問題があると思うんです。それは恐らく分野によっていろいろ違うとおもいますが、規制の問題もここに書いていってはどうかと思うんです。 ○中村会長 どうぞ。 ○川上委員 もう既に今日の話ですけど、クールジャパンというものに関して、この表現の自由というものが、クールジャパンの競争力の根源になっているので、これの自由に関しては十分留意する必要があるというものは、政府の施策として是非この中に盛り込んでいただきたいと思うんですが、それについて検討をお願いしたいんですが、いかがでしょうか。 ○中村会長 そういう自由があると。是非メッセージとして検討いたしましょう。 ○別所委員 人材育成のところに関しては、似たような表現というのが2010年にもあるんですけれども、メディアリテラシーを上げるということなのではないかと思いますので、そこは具体的にどのように、例えば小中高、いろいろなエデュケーショナルレベルにおいて行われるかということだと思います。 もう何度も言ったことですが、私がフランスの映画祭に行ってショッキングだったのは、小学生が短編映画のショートフィルムで、かなり過激な暴力描写や性描写を見て、あるいはいじめのショートフィルムを見て、自分たちが議論をして審査するということをしています。つまりもう時代が読書感想文を書くことも活字から離れないために重要なんですけれども、映像を見て、これはつくり物なので、自分で判断すると。あるいは周りと議論をするという免疫力を上げることが大事で、マンガの一部の表現を規制することでは追いつかないと思います。結局それをどうにかして違法に入手するとか、ネットはそういう特性を持っているので、規制しているというのを、僕も少し東京都の考え方は非常にショッキングだったのですが、逆の立場で言えば免疫力を上げるその人材育成の中には、国内においては特にメディアリテラシーを上げる政策が、具体的に表現されて盛り込まれることが、遠い道のりのような感じがするんですが、全体的には人材育成になっていくのではないかなと思いました。 それから、そろそろ終わってしまうのだと思うので、是非次回以降の提案なんですけれども、7回、8回、9回とある中で、11年を組み立てる上で、10年までにどこまで何ができたかということは、年度末前なのですが、ある程度新規で10年度に立ち上がったものと、10年度以前から引き継ぎながら各省庁がやっていることというものが、どういう成果があったかということは、それぞれ何か、私たちが情報共有ができないものかなと思います。久夛良木委員が言ったように、ベンチマークをつくるという意味では年度末にそのことを評価するのではなくて、普通、民間ですともうウィークリーベース、マンスリーベースですが、毎月のこのミーティングのときに、10年度のものはここまでこう進んでいますとか、こういう新しいアイデアが進行していますとか、あるいは各省庁でそれは議論されているだけで、検討されたまま終わっているのか。具体的な事業に着手されているのか。こういうことというのは、この先、多分皆さんにお聞きしたいんですけど、委員が何を11年に組み立てるかというのを考える上では非常に重要なファクターというか、情報なのではないかと思います。 ○中村会長 どうぞ。 ○奈良参事官 ご指摘ごもっともでございますし、今日はご提示できなかったのですが、やはり2010と2011との関係ということについて、やはり整理する必要があろうかと思っていますので、次回2月25日で、どこまで整理できるか、また事務的な作業もありますが、可能な範囲でご提示できるようにしたいと思っております。 ○中村会長 他にいかがでしょうか。どうぞ。 ○吉羽委員 先ほどの中山先生のお話の待遇の話というのは、本当にもっともで、物をつくっている中小企業なんかにはさまざまな支援が行われているわけなんですけれども、例えばアニメーション産業、中小零細だらけのところに、それこそ練馬区と杉並区はアニメ特区にするんだぐらいのことで、さまざまな税制的な措置をするとか、それから人材を雇った場合の優遇を何か考えられないのか。それは僕が昨年申し上げたと思いますが、学校を出るところまでは一生懸命書いてあるんですけれども、出た先のこと、3Dの機材など非常に高価になっているものに対しての、やはり投資への優遇というような、少し具体的な施策が、書いていないというところが、実際に今アニメーションの番組もなかなかスポンサー問題とか、それからおもちゃが少子化の中で売れにくいとかというようなことで成立しにくくなっている中で、やはり非常にその制作環境が悪くなっているということがありますので、やはりそこの部分で底上げをしてあげないといけない。そうしないとなかなか人の流出、人材の人件費も安く、どんどん海外の人材だけになっていって、空洞化が起きていくのではないかというのは、もう本当に京浜工業地帯と同じような状況になるのではないかなということは、少し危機意識として持っておきたいというふうに思っています。 ○中村会長 ありがとうございます。ひとまずそのようなところでしょうか。 様々なご意見、今日はいただきまして、いろいろと宿題もいただきましたので、事務局のほうでも検討作業をしていただければと思います。今日いただいたご意見、コメントを反映させて、今日の資料3、骨子に盛り込むべき事項をさらに具体化するなどして、次回もまた改めてご議論をいただければと思います。ただ、今日いただいた意見以外にも、他にありましたら、後ほど事務局までお寄せをいただければと思います。 若干早目ですけれども、このあたりで今日は閉会したいと思いますが、近藤局長、何かありますでしょうか。 ○近藤局長 ありがとうございました。今日は随分ご議論いただいて、私もできれば、そちらに座っていたかったなと思いながら聞いておりましたが、おっしゃることは、ごもっともなんですが、一方で何かまとめなきゃいけないタイミングと、それからまとめ方、それを含めて少し工夫をしたいと思います。それからやっぱり今までのことをきちんと振り返って、評価をしながら次に行かなければいけないというのは、まさにそのとおりですから、そういった点であるとか、それから日本が恐らく、この知財の計画、これまでずっと競争力もコンテンツも議論していると、きっとあらゆることがグローバルというかボーダーレスになったんだと思うんです。今までは日本国内で何かやればよかったとか、日本と外で分けて考えたらよかったんだけど、もうこれからは日本の中か外かって余り関係なくなってきたような気がいたします。 ボーダーレス社会の中で、日本は何をしなければいけないのか。中国に負けたと言ってびっくりしたとみんな言っているし、私もびっくりしますが、それよりあと10年だか20年だかたつと、インドネシアにもブラジルにもインドにも負けると。インドに負けるほうが先なのかな。インドに負けて、ブラジルに負けて、インドネシアに負けると言われると、ちょっともうどうにかしなきゃいけないなと思うわけでありまして、やっぱりそういうことにならないために、一体何をしなければいけないのかというのを考えたいと思っていますので、今皆さんがおっしゃったことをしっかり受けとめて、どんなふうにまとめられるか。もう一度、改めて中でも議論したいと思います。今日の議論は非常によくわかりましたし、難しい宿題をもらいましたが、提出期限もあるので、一生懸命やります。 ありがとうございました。 ○中村会長 事務局から連絡事項をお願いします。 ○奈良参事官 ありがとうございました。次回、2月25日の金曜日の1時からでございます。引き続き、今日の議論を深めていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中村会長 では閉会いたします。どうもありがとうございました。 |