コンテンツ強化専門調査会(第4回)議事録
○中村会長 では、ただいまから、コンテンツ強化専門調査会、第4回の会合を開催いたします。 ご多忙のところ、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。 今日は、コンテンツ分野のデジタル化・ネットワーク化に係る課題について議論いたします。今日は、非常に盛りだくさんでございまして、こなせるかどうかというところですけれども、まず知的財産推進計画2010の進捗状況について、担当府省からヒアリングを行った上で、知的財産推進計画2011に向けた検討を進めていきたいと思いますので、活発な議論をお願いいたします。 今日は、大崎委員、大多委員、角川委員、佐藤委員からご欠席の連絡をいただいております。それから、川上委員と谷口委員が遅れてご参加ということだそうです。また、知的財産戦略本部員からは、佐藤本部員、中山本部員にご出席をいただいております。 なお、担当府省からでございますけれども、順に読み上げますと、内閣官房地域活性化統合事務局小浪補佐、総務省情報流通行政局情報流通振興課安藤課長、総務省情報流通行政局情報通信作品振興課新井課長、総務省総合通信基盤局消費者行政課鈴木課長、財務省関税局業務課上川知的財産専門官、文化庁長官官房著作権課永山課長、経済産業省経済産業政策局知的財産政策室中原室長、経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課高柳補佐、国立国会図書館総務部企画課田中課長、国立国会図書館電子情報企画室湯佐室長にご出席いただいております。どうもありがとうございます。 担当府省の方にも所管の枠を越えて、自由にご発言いただいて、議論に参加いただければと考えております。よろしくどうぞお願いいたします。 では、まずコンテンツ分野のデジタル化・ネットワーク化の現状と課題について、事務局から説明をお願いします。 ○奈良参事官 まず、説明の前に資料の確認をさせていただきたいと思います。 まず、議事次第をめくっていただきますと、資料1が、コンテンツ分野のデジタル化・ネットワーク化に係る課題ということで、全般的な状況を示したものでございます。それから、資料1参考が、知的財産推進計画2010の項目別進捗状況ということで、デジタル化関連部分のところでございまして、黄色の網かけの部分が今回ヒアリングをするものでございます。 それから、資料2以下が各省庁の資料でございまして、資料2−1が著作権関係の権利制限の一般規定に関する資料、資料2−2が書籍の電子配信の促進に係る取組ということで3省の取組、資料2−3が国立国会図書館における取組、資料2−4がアクセスコントロールの規制強化に係る取組ということで、文化庁、経産省の取組、それから資料2−5がプロバイダ関係の取組、それから資料3にまいりまして、吉羽委員から提出資料をいただいております。 それから、参考資料といたしまして、参考資料1が前回の主な意見、参考資料2が今回の出席者、それから参考資料3が今後のスケジュールということでございます。 それから、経産省から特区の関係で、e空間プロジェクトという1枚紙を後から追加してございます。 それから、封筒に入った資料があると思うんですけれども、前回、アーカイブ化を議論するときに、国立近代美術館のフィルムセンターのことが話題になりましたので、パンフレット等を配付させていただいております。ご覧いただくとおり、12月は黒澤明監督の展示、上映などが行われているようでございまして、毎日上映が行われているということで、前回ご質問がございましたけれども、子供のための企画も数は多くありませんが、行われているということです。ちなみに小・中学生は、展示室は無料、一般の上映会は100円、子供のための企画上映は無料でやっているということでございます。 それから、前回ご質問がございましたけれども、フィルムセンターのデジタル保存の状況でございますけれども、基本的にはフィルムセンターのほうでは、昔の技術をデジタル技術で修復して、フィルムで保存するということを基本で行っておりまして、現在、昭和30年代の映画まで行っているというところでございまして、HDでのデジタル保存ということになりますと、費用が高額なこともございまして、重要文化財級など特に重要な作品のみということになっているところだということでございます。 それから、前回、クリエーターの学校派遣につきまして、デジタルコンテンツ関係が全体でどのぐらいあるかというご質問がございましたけれども、資料はございませんが、今、大体1,300校ぐらいやっているところのうち全体の1割ということで、学校の希望もありまして音楽、演劇、伝統芸能などが多く、大体1割程度ということでございましたので、報告させていただきたいと思います。 それでは、資料のほうを説明させていただきたいと思います。今日は、非常に濃い内容になってございまして、ちょっと駆け足になるかもしれませんけれども、ご容赦いただきたいと思います。 資料1をご覧いただきたいと思います。 デジタル化・ネットワーク化の状況ということで、目次をめくっていただきまして2枚目からでございますけれども、1ページ、デジタル化・ネットワーク化の状況ということでございまして、左の表にございますとおり、ビジネスの市場規模ということでいいますと、5年前に比べると2倍ぐらいになっているということでございます。しかしながら、内容を見ますと、分野によってばらつきがあったりだとか、あるいはプラットフォームをめぐる競争ということにつきましては、米国が優位な状況にあるということが言えるのではないかというふうに思っております。 2ページにまいりまして、復習になりますけれども、知財計画2010の項目でございます。大きな3本柱の一つとして、デジタル化・ネットワーク化の促進ということが掲げられてございまして、ご覧のような項目が掲げられているところでございまして、今回はこの黄色の網かけの部分につきまして、重要な課題等につきましてヒアリングをしていただくものでございます。 それから、3ページでございます。今回、ヒアリングの項目の全体の状況でございます。ヒアリング順に申しますと、まず42番〜44番が著作権制度上の課題の総合的検討ということで、権利制限の一般規定、いわゆるフェアユース規定の導入につきましては、導入の方向で報告書をまとめる予定ということでございまして、その他の制度上の課題についても、検討していく必要があると認識しております。 それから、27番の書籍の電子配信関係でございます。これは、総務省、文科省、経産省で報告書を6月に取りまとめており、これに基づいて、検討あるいは実証実験が行われているところでございまして、これにつきまして早期に成果を出す必要があるというふうに認識しております。 それから、36、37は違法対策関係ということでございますけれども、36番がアクセスコントロール、いわゆる違法ゲームソフトを起動させるマジコンなどに対する規制の強化ということでございます。これにつきまして、経産省、文科省、財務省におきまして、強化の方向で、今、検討を進めて、取りまとまる予定になってございます。着実に進めていく必要があると認識しております。 それから、37番、プロバイダの関係でございます。これは、総務省におきまして、プロバイダ責任制限法の検証を実施しているというところでございます。また、プロバイダと権利者が協働し、新たな対策措置を図る実効的な仕組みの構築ということも、早急に進めていく必要があるというふうに認識しております。 それから、24番が「コンテンツ特区」ということで、コンテンツの地域活性化、あるいは経済成長につなげるための特区の創設ということでございます。これは、現在、政府のほうで、政府全体として「総合特区制度」ということを検討してございまして、ここでコンテンツに関する特区ということも対象になり得るものでございまして、現在、調整しているところでございます。今後、地域からの応募を促すとともに、指定された場合には、資源を集中的に投入していく必要があると認識しているところでございます。 4ページをご覧いただきたいと思います。 知財計画2010の他に、さらに深掘り、新たな検討課題の例でございます。1つは、デジタル・アーカイブの外部提供の拡充ということでございまして、本日も後ほど話題になると思いますけれども、国立国会図書館のアーカイブにつきまして、外部提供を拡充していく必要があるのではないかと。民間ビジネスとのすみ分け等、様々な課題がある中で、どういうふうにしていったらよいかという課題。それから、書籍あるいは放送番組などの「古い」コンテンツにつきまして、提供を拡充していく必要があるのではないか。文化庁の裁定制度による改善も図られてきているわけでございますけれども、どうしても費用、時間などを大きく要しているところでございまして、解決策が何か考えられないのかどうかということでございます。 それから、新たな形態への対応ということで、今後、クラウド型のサービスが出てくるということでございますけれども、これに対応するためにどういうふうなことが考えられるか。例えば、自分の保有するコンテンツを外部サーバーに預ける、そういうサービスが著作権法上、どういう問題があるのかどうか。あるいは、利用者側の権利の保護というのはきちんとなされるのかどうか、こういった問題を含めてどのように考えるべきかという問題があろうかと思います。 それから、5ページにまいりまして、コンテンツのプラットフォームというものが非常に重要な役割を果たしているわけでございますけれども、例えば特定のコンテンツが排除されるといったような問題でありますとか、あるいはコンテンツホルダーの課金を許さないような課金の仕組み、こういった問題を指摘されているところでございまして、これらについて何らかの措置が考えられるのかどうか。あるいは、村上春樹の著作のように、新しい著作権侵害の形態というものも出てきているところでございます。これらについて、どういうふうに考えられるか。 それから、ちょっと話は変わりまして、3Dコンテンツの戦略的推進ということで、韓国は戦略的に取り組んでいるところでございますけれども、例えば我が国としても、NHKが先導的な取組をする、あるいはクールジャパン推進という観点から観光映像を3D化して配信する、こういうような取組などは考えられないのかどうか。 さらには、個人の創作活動を活性化するという観点から、ソーシャルネットワークサービスでの引用紹介、あるいは二次創作といったところで、このぐらいであれば著作者の承諾を得ないで自主的に使ってよいというような範囲を明確化して活性化を図る、こういうようなアプローチが考えられないのかどうかという観点でございます。 それから、6ページにまいりまして、この他知財事務局で関係者からヒアリングをしたときに出た主な意見でございます。詳細は省略いたしますが、例えば電子書籍・アーカイブの関係でいうと、いわゆるオプトアウト方式も一考に値するのではないかという意見でありますとか、オプトアウト方式とまではいかなくても何らかの措置が必要だという意見。 それから、新たな動向への対応というところでは、クラウド型サービスについて、整理・対応が必要だということ。それからプラットフォームについて、競争を促すという環境整備が必要だということ。それから、3Dについては放送だけではなくて、医療・教育分野等総合的に進めることが必要だということ。 それから、著作権制度関連におきましては、将来的には一定期間経過後は、登録しなければ権利が維持できないというようなことも考えられるのではないかと。それから、映像であれば30秒までは利用してよいというような基準を考えられないか。このようなことを奨励する制度ができないかどうか。それから、プロバイダについては、インターネットビジネスの発展のために免責する一方、重大な侵害に対しては、やはり協力を義務付けるということが必要ではないかというような意見などが出ておったところでございます。 それから、7ページでございますけれども、これは後ほどヒアリングとも関連いたしますけれども、まずは著作権法に関する主な課題ということでございます。権利保護と利用の円滑化のバランスというような在り方をめぐりまして、以下のような課題があるということで、「創造」のところでは二次創作の法的整理でありますとか、あるいはその権利保護ということでありますと、アクセスコントロール、あるいは著作権保護期間の在り方、それから利用の流通の多様化、円滑化という観点でいうと、権利制限の一般規定、あるいはいわゆる間接侵害の明確化などの課題があるということでございまして、文化庁のほうで検討を進めているところでございます。 それから、8ページにまいりまして、その中で例えば特に権利者と利用者の対立が先鋭化しているような問題もあるという例でございまして、補償金制度につきましては、補償金の支払いは必要だという権利者に対しまして、消費者あるいはメーカーにつきましては不要であると。こういうようなことで、議論がまとまっていないということでございます。 それから、著作権保護期間の延長につきましても、国際的調和が必要だということで、50年から70年まで延長することが必要だというような意見、それに対しまして、これ以上、保護期間を延長すると、著作物の円滑な利用に反するというような意見などが対立しているという状況でございます。 それから、9ページでございますけれども、電子書籍の流通における課題例ということで、知財事務局のほうで少しごく簡単に図式化したものでございます。 上のほうの著作者、出版者との関係でいいますと、出版者への権利付与の問題、あるいは契約促進の問題、あるいは左側が主に公立の公共セクター、右側が民間ビジネスと大きく分けますと、左側のほうでは国会図書館における電子納本の在り方でありますとか、あるいは国会図書館における外部の提供の在り方、それから公共図書館―公共と書いてありますけれども、これは公立でございます。市町村、あるいは県立の図書館、あるいは大学図書館に対する送信、提供の在り方、こういったことが課題になってこようかと思っております。 右側のほうにいきますと、オープンな電子書籍を目指すということでございますので、中間ファイルフォーマットの標準化でありますとか国際標準化、こういったことが今後の検討課題ということになろうかというふうに思っています。 それから、10ページを見ていただきますと、インターネット上の著作権侵害に対する課題ということでございまして、今、あらゆるコンテンツ、侵害コンテンツが氾濫している状況でございまして、コンテンツ産業に大きな影響を与えているという状況でございます。これにつきましては、様々な面での総合的な対応が必要であるというふうに考えておりますけれども、特に今回、制度的対応ということで、アクセスコントロール回避規制の強化、あるいはさきに対外対策ということで、ACTAにつきまして10月に実質合意を図っておりましたけれども、12月に条文確定したというようなことなどがあるわけでございます。さらに、正規版の流通といったことも進めていかなければならないというふうに認識しております。 それから、11ページでございますけれども、その中で特にアクセスコントロール回避規制の強化ということでございます。これは、いわゆる違法ゲームソフトを、マジコンという機器を使って遊ぶことが可能になるというものでございまして、非常にこれも大きな問題になっているわけでございます。これにつきまして、経産省のほうでは公正な競争の確保という観点から刑事罰の導入など、それから著作権法におきましては違法コピーを防ぐという観点から追加規定の導入ということ、それから財務省におきまして関税法で水際規制の導入、こういったことを今検討し、こういう方向で進めているということでございます。 それから、12ページにまいりますが、「総合特区制度」の概要ということでございます。これにつきましては、後ほどヒアリングの際に、もう一度、私のほうから説明させていただきたいと思います。12ページ、13ページは飛ばさせていただきます。 それから、14ページでございます。これは、現行制度ということでございますけれども、アーカイブの関係でございます。著作権法上、著作権者が不明の場合には文化庁長官の裁定手続というものを利用して、著作物を利用することが可能ということになってございます。権利者が不明である場合には、まず権利者を探すという相当の努力をしていただきまして、日刊新聞への広告掲載、あるいはホームページへの掲載ということを経まして、文化庁の裁定を申請するということで利用が可能になっているということで、この1月には実演家も対象にするなど、改善を図っているところでございます。 それから、15ページでございます。今後の課題ということで、クラウド型コンピュータサービスに関する課題例ということでございます。例えば、課題例@といたしまして、自分が購入したコンテンツを外部サーバーに預けるというようなことを行った場合、その事業者は著作権法上、問題がないのかどうかというようなことがございますし、また、課題例Aのところでは、クラウド型視聴サービスということで、従来はパッケージあるいはプログラムを購入して自分が所有するというような構成でございましたけれども、今度は一定の利用する権利を購入するというような構成に変わってくるのではないか。そうしますと、事業者の都合によりまして勝手にコンテンツが見られなくなるというようなリスクなども指摘されているところでございます。また、これを回避して不正利用するというケースも今後増えるのではないかというふうに考えられます。 それから、16ページでございますけれども、プラットフォームをめぐる課題例ということでございます。コンテンツプラットフォームの重要性が高まりつつあるわけでございますけれども、まずはコンテンツ審査基準をめぐる問題ということで、特定のコンテンツだけが載る、あるいは勝手に落されてしまって、その理由がよくわからない、こういうようなことで、非常にコンテンツプラットフォームの側の優位性というものが指摘されているところでございますし、また独自課金ができないようなことも懸念を指摘されているところでございます。また、右側にありますように、また新しい海賊版の形態というものも出てきているところでございます。 最後になりますけれども、3Dの関係で、韓国におきまして2015年までに3Dコンテンツを全コンテンツの20%まで高めるということを主な内容にするような戦略を定めるということでございます。 以上、大変駆け足で恐縮でございましたけれども、概況につきまして、私のほうから以上でございます。 ○中村会長 ありがとうございました。 では、担当府省からのヒアリングを進めます。前回と同様に、今、説明いただいた資料1の3ページにある項目ごとに担当府省から説明をいただいた後に、それぞれ質疑を行ってまいります。ヒアリングが一通り全部終わりましたら、後半戦としてまとめて今後の課題について、それは4ページと5ページに頭出しがされておりますけれども、そうしたものについて議論を行ってまいりたいと思いますけれども、その際にも担当府省には引き続き議論に加わっていただく予定ですが、前2回とも同じようなやり方でやりましたところ、前段のヒアリング、質疑で多くの時間をとられてしまいまして、後段の議論というのは非常に時間が少なかったのですが、今日もそうなるかもしれません。 なお、ヒアリングは知財計画の番号とは異なるんですけれども、内容等の都合を勘案いたしまして、この3ページにありますように、まず著作権制度上の課題の総合的検討、そして次に書籍の電子配信の促進、3つ目に違法対策、4つ目にコンテンツ特区の創設といった順番で進められればと思います。 なお、これまで近藤事務局長から数度にわたって指摘がありましたけれども、このヒアリングというのは政府の取組努力を我々が仕分けるというのではなくて、我々と意見の合うものについて応援し、またプッシュするということのための質疑でございますので、「こういうことを本当は進めたいんだけれども」ということがありましたら、是非ともそういったことをお教えいただければと思います。 では、まず最初に、工程表42番、43番、44番の著作権制度上の課題の総合的検討について、文化庁永山課長からご説明をお願いいたします。 ○永山課長 それでは、私のほうから説明させていただきます。 資料2−1をご覧いただけますでしょうか。著作権制度上の課題のうち、権利制限の一般規定に関する内容について、この場をお借りしまして説明させていただきたいと思います。 この問題は、知財戦略本部での検討を受けまして、文化庁文化審議会での検討が昨年5月にスタートいたしました。以降、1年8カ月にわたりまして検討を行い、その間、2回にわたりまして、延べ61団体のヒアリングを行い、去る12月3日、その資料の表紙にありますように、法制問題小委員会の最終まとめというものがまとめられ、12月13日の先週の著作権分科会で了承されたものでございます。 お手元の1ページをご覧ください。 1ページは検討の背景ということで、この権利制限の一般規定を検討するに至った背景ということで簡単に説明しますと、現行の著作権法、これは権利制限につきましては個別権利制限規定ということで、教育とか障害者福祉、そういう目的を一定のものに限定して、その範囲で一定の権利制限を行う個別権利制限規定というのが現行の著作権法の立法形式でございます。そういう形ですと、真ん中ほどにございますように、個別の権利制限規定のいずれにも該当しないような利用行為については、それが権利者の利益を不当に害しないものであっても、形式的に侵害行為に該当してしまうのではないかとか、また急激な変化に迅速に対応できないのではないかという課題のご指摘があり、権利制限の一般規定の導入の方向が打ち出されたものでございます。 2ページを飛ばしまして、3ページをご覧いただけますでしょうか。 法制問題小委員会のほうで、1年8カ月に渡りまして様々な角度から総合的に検討した結果、3ページの一番下のところだけご覧いただけますでしょうか。現状の分析といたしまして、一番下のところに下線が引いてありますように、「権利者の利益を不当に害さず、社会通念上、権利者も権利侵害を主張しないであろうと考えられる著作物の利用であっても、企業をはじめとして法令遵守が強く求められている現代社会においては、権利制限の一般規定の導入によりかかる萎縮効果が一定程度解消されることが期待できる」ということで、「権利制限の一般規定を導入する意義は認められる」という結論でございます。 4ページをご覧いただけますでしょうか。 4ページが、権利制限の一般規定として、具体的にどういう行為を権利制限の対象にするのかということで、最終まとめの中では、以下のA、B、Cと、この3つの類型について権利制限の一般規定による権利制限の対象と位置づけることが適当というふうにされております。これはA類型という言い方をしていますが、A類型が著作物の付随的な利用ということで、例にありますように、まさに典型的な写り込み、そういう著作物の付随的な利用については、権利制限の一般規定、要するに利用目的を問わず、権利制限の対象と位置づけることが適当というのがA類型でございます。 B類型につきましては、適法利用の過程における著作物の利用ということで、最終的には権利者の許諾を受けたり、また現行の権利制限規定により適法となる利用行為の途中段階での利用行為について、合理的に必要な範囲で権利制限を認めようというものでございます。例えば、例の2つ目にありますように、例えば漫画のキャラクターの商品化を企画した際、当然、社内で許諾を得るための前提になる様々な企画会議が開かれるわけでございます。そういう過程における当該キャラクターの複製などについては、最終的には適法な利用、その前提になる段階での利用ということで、権利制限の一般規定の対象とすることが適当ではないかというのがB類型でございます。 C類型が、著作物の表現を享受しない利用ということで、著作物の利用のうち、見る、聞く、そういういわゆる視聴行為によりまして、著作物の価値を享受する目的、そういう目的ではなくて、著作物を一つの情報とか素材、そういう形として取り扱うような場合、例えばということで、様々な録音とか録画の技術、そういう技術の開発、検証のために著作物を素材として利用するような場合、また、ネットワーク上の様々な情報の流れを円滑に進める上に、当然、ネットワーク上を流れる際には一定の複製行為が伴いますが、そういう場合の一定の複製行為というものについては、その行為そのものは著作物の表現、そういうものを享受するための利用ではない利用というふうに評価でき、それらの行為については権利者の利益というものを不当に害しないのではないかということで、今回の最終まとめにおきましては、以上のA、B、Cという3つの類型について、権利制限の一般規定等の対象とすることが適当というのが今回の最終まとめの内容でございます。 もう1点だけ説明しますと、5ページをご覧いただけますでしょうか。 5ページの真ん中ほどのところに、今回、パロディの利用について記述させていただいております。アメリカのフェアユース規定では、パロディについても対象になり得るという形になっておりますが、今回の文化審議会著作権分科会における検討におきましては、パロディの利用につきましては、そこに書いてございますように様々な論点、例えばパロディとはそもそも何なのか、また現行法の解釈によってどこまで許容できるのか、どこまで対応できるのか、また様々な同一性保持権、人格権とか表現の自由との関係、そういう様々な角度から検討しなければいけない、そういう重要な論点が多いということで、今回については権利制限の一般規定の対象ということではなくて、今後の早急に検討に着手すべき事項ということで、今後、必要に応じて個別規定の改正・創設により対応することが適当ということで、今後の検討課題という形で位置づけさせていただいております。 5分ほどということで、私からの説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中村会長 ありがとうございます。 では、ただいまのご説明についてご質問のある方は、挙手をお願いいたします。 ○中山本部員 このA、B、Cの3つの類型、これはこれで私もよいと思うのですけれども、Cの類型で、見たり聞いたりするための利用ではない利用に限られています。しかし、本当は、見たり聞いたりするような利用であっても権利者には影響を与えない、しかし、社会的には必要であるというものもあるはずです。パロディは後回しにするという話でしたけれども、パロディということは、恐らく条文として、言葉でパロディの定義をすることも不可能だし、これは正当なパロディ、これは不当なパロディということを条文で書きわけることも恐らく不可能だと思うし、世界中でそういう定義を置いている国はないわけです。恐らく、パロディはフェアユースの典型例だと私は思います。でも、しかし、パロディは見るためのものですから、これはC類型には入らない。従って、今回はもちろん落ちてしまうということになります。今回はこれでよいのですが、D類型とでも言うべきもの、つまり、見たり聞いたりはするのだけれども、権利者の利益を害するものではない、しかし、世の中には必要なものであるというものもあるわけですから、是非D類型を早急に検討してもらいたいと思います。 ○中村会長 他にいかがでしょうか。 ○吉羽委員 C類型の部分で、いわゆる自炊行為というのはこれに当たるのかなと思うんですけれども、個人的な利用の範囲をやはり逸脱しているのかなというので、かなり出版業界では議論になっているんですけれども、このあたりはどういうご見解でいらっしゃいますか。 ○永山課長 いわゆる自炊行為については、当然…… ○吉羽委員 すみません。自炊の業者ですね。自炊行為ではなく、自炊行為は全く問題ないですけれども、自炊業者について。 ○永山課長 業者についての問題というのは、今日はご説明しませんでしたが、著作権制度上の課題の中の間接侵害、まさに録画転送サービスと同じような論点があると思います。そういう観点から、今、間接侵害については、今日、本来であれば方向については説明すべきところでございますが、まだ審議会での検討というものがここで報告できる段階に達していないということでございます。 従って、今ご指摘の問題についても、間接侵害の問題の中で、我々はまた議論を深めてまいりたいというふうに思っております。 ○中村会長 他にいかがでしょう。 永山課長、これは今後、どういうスケジュールになるんですか。 ○永山課長 今後のスケジュールにつきましては、また後ほど説明させていただきますアクセスコントロールの問題も含めて、1月末の著作権分科会のほうで、全体として最終的にご了承いただければということを考えております。その後、当然、著作権法の改正ということも念頭に置いておりますけれども、具体的にどういう形で改正するのかどうかも含めて、また政務のほうともよく相談し、対応していきたいと思っております。 ○中村会長 他に何かございますでしょうか。 今日は、ひとまず著作権制度上の課題の総合的検討という中の、これまで整理していただいた権利制限一般規定を中心にお話をいただいたんですけれども、今回の結論の次に、先ほど中山本部員からもD類型という話が出ました。他にも、著作権制度上の課題の総合的検討について、議論したりお願いすることもあろうかと思いますけれども、そのあたりでも結構ですので、いかがでしょうか。 (発言する者なし)
○中村会長 著作権制度についてはよろしいですか。 ひとまず次期通常国会に向けて法案をということですので、それを進めていただくとともに、これまでも権利制限の一般規定の議論ですとかアクセスコントロールの議論などに取り組んできていただいておりますが、先ほどもまだ次の課題、次の課題と出てくると、積み残しもあるというようなお話だったので、幅広く検討していただければと思いますし、それから法制度だけではなくて、権利の集中管理ですとか契約の問題、様々な課題が著作権の場合にはございますので、この面でも今後とも積極的な役割を文化庁にはお果たしいただいて、この知財本部とも連携ができればと考えます。よろしくどうぞお願いいたします。 では、続いて、工程表の27番、書籍の電子配信の促進です。これは、総務省、経済産業省、文化庁にまたがる項目なのですけれども、まず総務省の安藤課長から電子書籍の促進に関する検討の進捗状況について、まとめて説明をお願いします。そして、続けて国立国会図書館における取組について、田中課長からご説明をお願いします。よろしくどうぞお願いいたします。 ○安藤課長 それでは、資料2−2をご覧いただきたいと存じます。総務省のほうでまとめて説明申し上げたいと思います。 1ページ目でございます。一番上に書いてございますとおり、総務省、文部科学省、経済産業省の副大臣・大臣政務官による共同懇談会という形で、この問題を議論いたしました。3月に第1回会合を開催し、6月末ごろに報告を取りまとめたという形でございます。 その内容でございます。大きな1番、2番、3番、4番というのが、問題意識といいますか、目的というふうにご理解いただきたいと存じます。 1.デジタル・ネットワーク社会における出版物の円滑かつ安定的な生産と流通による知の拡大再生産の実現ということに関しましては、(1)から(4)、権利処理の円滑化、あるいは契約の円滑化、出版者への権利付与に関する検討、外字・異体字の環境、そんなことの対応が必要であるということになってございます。 2.オープン型電子出版環境の実現、この場合のオープン型というのは、1つには誰でもこの電子出版の世界に参入ができるというようなオープンということもございますし、もう一つは国内・国外ということでのオープンというものがございます。(1)として、日本語フォーマット統一規格という問題、それから(2)がその国際標準化という問題、それから(4)でございますが、海外デファクト標準への日本語対応という問題、そういったことが報告されてございます。 3.「知のインフラ」へのアクセス環境の整備ということで、(1)といたしまして書誌データフォーマット標準化という問題、それから記事、目次等の単位で細分化されたコンテンツ配信、相互参照の実現という問題、それから書籍だけではなくて、公文書、美術館、博物館等のコンテンツ等も全部含めてでございますが、メタデータの相互運用性の確保という問題、それから図書館の在り方ということ、それから様々なサービスの高度化、この中には電子出版と紙の出版物のシナジー効果というようなことも含めてでございますが、そんな事柄の対応というのが書き込まれています。 最後は、4.利用者の安心・安全の確保ということで、読み手のプライバシーの保護、「ライフログ」的な取り扱いの問題でございます。それから、障がい者、高齢者、子ども等、身体的な条件に対応した利用の増進というようなこと、これらがそれぞれ政府が取り組むべき課題という形で示されたということでございます。 これを受けました総務省の取組というのが、3ページ目でございます。ここに書いてある10個のプロジェクトにつきまして、総務省のほうから民間の団体に委託いたしまして、様々な標準化規格の策定等に取り組んでいただいているというような状況にございます。 主だったものについては、4ページ目、5ページ目、6ページ目、7ページ目にごく簡単な概要をつけておりますが、説明は省略させていただきます。 8ページ目が、この懇談会の報告を受けました文化庁の取組でございます。方向性とアクションプランということで、文化庁の役割とされました図書館と公共サービスの在り方の整理、それから権利処理の円滑化、出版者への権利付与に関する検討、この3点に関しまして、電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議といったものを現在開催しており、この中で様々な調査等も実施していくということで取組が始まってございます。 それから、経済産業省が9ページ以下でございます。電子出版物の契約円滑化に関する実証実験というものを年度内に取り組むということで、現在、取り組まれているという状況にございます。それから、外字・異体字の利用環境整備に関する事業ということに関しましては、研究会を設置するということで、現在、予定されているというようなことでございます。 こういったことに対します予算ということで、今年度の1次補正予算で2億円の予算を確保いたしまして、ここに書いてございますような外字・異体字の問題、あるいは契約円滑化の問題、それに加えまして、私どものほうで委託いたしまして現在推進されてございます日本語フォーマット、そういったものへの転換支援といったことへの取組等々もおやりになられるというふうに聞いてございます。 ということで、現在、3省庁懇談会を行いまして、それを踏まえた取組を行っているところでございますが、それぞれ総務省、文部科学省、経済産業省、懇談会後はそれぞれの事業という形で取り組んでございますけれども、お互いにオブザーバー参加するというような形で連携を引き続き維持しながら、現在、取り組んでいるというような状況でございます。 以上でございます。 ○田中課長 国会図書館のほうから報告させていただきます。 国立国会図書館は、電子書籍との関係ということでは、本日説明します紙の出版物のデジタル・アーカイブ化ということだけではなくて、いわゆるデジタル形式で流通しているものの電子納本制度という部分もあるんですけれども、今日は出版物のアーカイブ化のほうについての現状を説明いたします。 まず、1枚めくっていただきまして、補正予算です。昨年度が127億円、今年度の1次補正で10億円、デジタル化の経費が認められております。 そのやり方なんですけれども、戦前期までの刊行図書等につきましては、権利の状況について個別に調査を行って、許諾をいただいた上で、インターネットで公開するというのを基本にして思います。戦後のもの、あと雑誌につきましては、まだ商業出版とのルールというところも十分すみ分けができていないということで、基本的には館内利用に限定するという形で、今、進めてきております。 1枚めくっていただきまして、資料群ごとのデジタル化の状況ということでございますが、この補正予算の執行が全部終了しますと、90万冊近い国内図書のデジタル化が終了するということになりますが、全体としましては、まだ400万冊以上の規模がございますので、大体5分の1ぐらいが終了する状況ということでございます。 また、めくっていただきまして、今、この戦前期までのものにつきましては、近代デジタルライブラリ事業ということで許諾をいただけたもの、あるいは権利が消滅したものにつきましては、インターネット上でも利用できるという形になりますが、本文の利用は画像データということで、いわゆる検索できるような形のデータではないということです。今現在、順次、デジタル化が終了したところから拡張しておりますので、40万冊近いものが収録されているんですが、インターネットで利用できるものは17万冊ということにとどまっております。 それから、5枚目のところですが、この保存のためというのは、昨年の著作権法改正によりまして、国会図書館においては資料が壊れていなくてもデジタル化ができるということの権利制限の規定ができたということでございます。 6ページ目でございますが、これにつきましては、ただ必要と認められる限度においてという制限がかかっておりますので、関係者と協議をいたしまして、利害関係者との協議によって、同一文献に対する同時利用は、資料の所蔵部数を超えないとか、デジタル化の方式は当面、画像ということにするとか、そういう具体的な対応を決めて、それに従って行っているというところでございます。 いずれにしましても、インターネット提供につきましては、個別の権利許諾がないとできないという状況に変わりはないということです。 7ページ目ですが、具体的な著作権処理の作業というのは、ここに示したようなフローで実際に行っております。保護期間がまだ満了していないものにつきましては、基本的に連絡先の調査を行って許諾をいただくか、その前に、不明の状態というのが非常に古いものにつきましては、連絡先不明という状況になっておりまして、これについて文化庁長官の裁定申請によって裁定利用するという形になります。 8ページ目のところで、これはもう数年前になるんですけれども、明治時代の刊行のものにつきまして、権利の許諾を作業した結果ということになりますが、ここにありますように7割の方が、著作権自体があるかどうかも不明ということになります。これにつきまして、昨年度の法改正によって、相当な努力の内容が法令で定められるようになったわけですが、運用の実態としましては、以前からの必要な相当の努力の部分のいろいろな調査というところは、基本的に現時点でも運用の実態は変わっておりませんので、個別に調べていくということが、非常に手間のかかる作業としては残っている状況ということであります。この明治のものにつきましては、5年間の利用期間ということで、1件当たりの補償額51円という形で補償金を積んで利用しております。 それから、9ページ目のところですが、この具体的な調査の実態としましては、ここにありますように3年近い、2年以上の期間を要して、かつ、総額でも2億円以上の費用をかけて権利調査をしたということで、これがまた5年たつと、改めて申請しなければいけないということになっております。 それから、10ページ目でございますが、その他です。権利の調査に手間暇がかかるということ以外に、当面デジタル化資料の利活用を進める上で、今、課題となっておりますのは、1つが公共図書館等へ限定した形の配信ということができないかということで協議しているんですが、これも権利制限の規定がないと、現時点では難しいと。 それから、先ほどご説明しましたように、画像によって、今、デジタル化を進めておりますので、これは検索できるような、いわゆるコード形式のデータをつくるということにつきまして、そういうことができますと、視覚障がい者の本文読み上げの利用ですとか、全文検索等の利用もできるわけですが、現時点では利害関係者との協議によって、当面、画像にとどめるという合意になっておりまして、ここも課題となっております。 その他、遠隔地で個人の方の配信利用というところも含めて、新たなルールといいますか、利用のモデルが必要になっている、そういう状況でございます。 11ページ目のところは、そういった関係者との今後の協議の課題というものを示したところでございます。 説明は以上でございます。 ○中村会長 ありがとうございました。 本件に関連しては、委員の方から資料を提出いただいているものがあるとお聞きしましたけれども、吉羽委員ですか。 ○吉羽委員 はい。提出資料は資料3というものですけれども、大きく言って2通りありまして、1つはデジタル雑誌配信の権利処理にかかわるもので、雑誌協会の出したガイドライン、雑誌協会と日本文藝家協会及び日本写真著作権協会で合意したものになっていますけれども、これは今、総務省「サイバー特区」の実証実験の一つとして、雑誌の同時配信実験というのを本年やるんですけれども、その中で、雑誌は権利の塊ということもありますので、様々な処理をしなければいけないわけです。現状、実証実験の中でやり、将来的に引き続き、実際の商用として雑誌を電子上に載せるために、権利者との間での合意を、これはすべて個々、やらなければいけないわけなんですけれども、それを一定、ガイドラインの中で業界団体同士が合意することで前に進めたいというために結ばれているものです。 しかしながら、まだごく一部の権利者の方とだけの合意という状態ですので、なかなかまだ雑誌丸ごとの配信というのが今すぐできる状況にはないということをご理解いただきたいと思います。 それからもう一つあるのは、これは出版4団体がアップル社に対して、アップルストアで出ている海賊版の適切な取り扱いについての申し入れを行っておりますが、それに関する、先に出ているのがプレスリリースで、こちらのほうが関係がわかりやすいんですけれども、それと4つ目の資料が協議申し入れということになっております。 事務局資料の中にも、村上春樹さんの「1Q84」の海賊版の話が出てきておりましたけれども、世界的に日本の特にコミック、それから最近こういった電子書籍端末が出てくる中で、海賊版の問題がさらに大きくなってきているんですけれども、漫画などは日本で刊行されるよりも前に、中国語や英語の海賊版がアップロードされていて、しかも、これまでは比較的無償のインターネット上に載っかっている部分が多かったのですけれども、こういった有料配信のサービスの中でも海賊版が見られるようになっているということなんですが、なかなかプラットフォーム業者のほうで即時削除というような対応が進まなかったりしていることで、私たちとしては誠意を持った対応をしていただきたいということでお願いしているところであります。 ここの2つに共通するんですけれども、出版者がこういったことでガイドラインをつくったり、海賊版に対する申し入れを行ったりしているんですけれども、先ほどの出版者への権利付与に関する問題というのがありましたけれども、現状は著作権者ではない出版者、版元が、こういった行為をどこまできちんとできるのかという部分でいうと、まだ若干曖昧なところがあるかというふうに思います。 ちょっと資料の話から外れるので、1回お戻しして、またもう1回、その辺についてちょっと説明させていただければというふうに思うんですけれども。 ○中村会長 わかりました。ありがとうございました。 では、他、どなたでも結構です。質問、コメントなどありましたら。どうぞ。 ○中山本部員 国会図書館の資料の6ページ、館内利用の具体的態様というところです。利害関係者が自由に見られては困るというのは非常によくわかるのですけれども、しかし、ここに書いてある態様は、全てデジタルの利点を殺してしまうという利用態様なわけです。ですから、それは今、長尾館長以下、非常に努力されていることは承知しておりますが、是非利害関係者のほうも努力して、なるべくウィン・ウィンの関係を早く構築していただきたいと思います。 ○吉羽委員 その利害関係者から引き続き。今日は、角川会長がいらっしゃらないので、何か出版者代表みたいになってしまいまして、議事録にも残るので、ちょっと長話になって申しわけないんですけれども、言いたいことを言わせていただければというふうに思っております。 ここで言う「しゅっぱんしゃ」という言葉は「出版者」のほうで、別に講談社とか角川さんのような出版会社のことを言っているのではないということを、まず前提にご理解いただきたいんですけれども、今現在、講談社では2万点の電子化ということで契約書の整備を行っているんですが、2万点の契約事務というのは、国会図書館さんもおやりになって、権利者を探すというので大変な行為だというのはおわかりいただけるかと思うんです。今日も、その契約書が回ってきたところでチェックしている中で、ある書籍で許諾が出ない、使えない写真が多いために、著者自身が電子化をペンディングしたいという申し入れをしてきたというような例があります。やはり、小説のように単純に1人の著作者が書いているものではない複合的な著作物というのは、かなり始末が厄介であるということがあって、というわけで、先ほどのガイドラインの話に出てきたような雑誌というのは、もう100、200の権利者の塊のようなもので、なかなかこの電子書籍化というか、電子雑誌化の推進がしにくいというのが状況としてあります。私ども版元としては、出版者に対する何らかの権利付与、隣接権のようなものを手に入れられないかというか、あったほうが、コンテンツ流通の促進という観点から、今申し上げたような権利処理の手間を大幅に省くことができるのではないかというふうに思っております。 ご承知のとおり、隣接権というのが著作物の伝達に重要な役割を果たすということで、今現在は実演家、それからレコード制作者、放送事業者、有線放送事業者などに認められている権利で、著作権そのものではないということがありますので、著作権と共存するものだというふうに考えているんですけれども、なかなかこの辺がご理解いただけていないのかなというふうに思います。 今、資料として提出させていただきましたアップルを初めとする海賊版に対抗する手段としても、我々は権利者ではないので、まず提訴もできないということですし、中国のある検索会社などの場合には、版元には権利がないのでといって、そもそも相手にしないというようなこともあったりします。それから、海外を相手に、最終的には著作権者が訴訟する必要は現在あるんですけれども、なかなか個々の著作権者が対抗するというのは限界があるのではないかと思いますし、契約に基づいた処置というのを今までも求めてきたんですけれども、国や地域によっては権利者でないので相手にしないというようなことも、かなり起きてきたりしております。1つには、こういった侵害対策という問題の中で、出版者の果たす役割というのは大きいのではないかというふうに思っております。 それからもう一つ、サイバー特区向けの雑誌配信実験に関して、今年は権利処理というのを大きなテーマの一つにしているんですけれども、やはり先ほど申し上げたように、非常に権利の塊で、雑誌の処理、権利処理というのはコストが膨大になってしまうというところがあります。ガイドラインというのは、お読みになっていただくとわかりますけれども、1カ月から3カ月という非常に短い期間を、こういった権利者の方から版元に対して、権利の譲渡をするという形で、譲渡というのは相当、そういう意味では著作権に詳しい方はおわかりかと思いますけれども、無理のある部分があって、版元もしくは出版者に隣接権があれば、こうした無理を通す必要はなかったのではないかというふうに思っております。 かつ、これは期間限定ということがありますので、今回、サイバー特区の対象になっている同時配信モデルではいいんですけれども、アーカイブ系のビジネスであるとか、多種多様なビジネスにはなかなか結びつかないということがあり、それから、このガイドラインの合意までは大変労力がかかっているんですけれども、まだまだ一部の団体との合意にすぎない。それから、拘束力そのものはないので浸透しにくいというような問題点を持っているのかなというふうに思いますので、権利付与というところで前向きにご検討いただくと、迅速な流通、それから海賊版対策というのにも効果が高いのではないかというふうに思っております。 実際、この権利付与の問題については、いらっしゃる文化庁の著作権審議会第8小委員会というところで、平成2年に法的保護について答申がなされた経緯があったんですけれども、経済団体の反対で、最終的には法改正まで至らなかったという経緯があります。惜しいところまでいきましたけれども、その時点では、やはり複写機の問題というのはかなり大きかったようです。今、こういったインターネット配信の時代に入ってくる中で、音楽配信に関しては、ご承知のとおり、レコード制作者が隣接権を付与されているので、非常に迅速に進んだ部分があったかと思います。それから、映画の著作物というのは著作権者が映画会社であるということで、配信ビジネスが進展しているというところがあります。 先ほど、出版者と版元という使い分けをしていますけれども、版元だけが出版者になれるわけではなくて、当然ながら、これから文芸とかコミックを流通させる方々が出版者になり得るわけなので、我々としては紙の本を出している立場を守りたいからではないんです。むしろ、インターネットでの流通を促進したいという立場からこういったことを申し上げておりまして、コンテンツ立国ということで、ここではコンテンツ流通促進、特に海外も含めた正常なコンテンツ流通促進を積極的に取り組むという立場で議論がされていると思いますけれども、なかなか文化庁も、海外にあまり例がないということをおっしゃるんですけれども、むしろ、今言ったような意味で、世界に先んじてこういった流通を促進するために、私たちというか、出版者に対する権利付与というか、隣接権の付与があってもよいのではないかというふうに思っております。こういったあたりのことを、なるべく前向きにお考えいただけないかというふうに思っております。 長時間、すみませんでした。 ○中村会長 何か永山課長から、コメントはありますでしょうか。 ○永山課長 文化庁著作権課でございますが、まさに今ご説明いただいた事項、出版者への権利の付与の問題ということは、先ほど総務省のほうがまとめてご説明された、文化庁でこの11月にスタートいたしました検討会議の3つの大きな検討課題のうちの一つに位置づけられております。私ども、その検討会議での検討ということを、これから進めていきたいというふうに思っています。 当然、この問題については、私どもも大きな命題として、この電子書籍、電子出版というものを進めていく中で、知の拡大再生産の実現、つまりは作家とか出版者がこれまで果たしてきている機能、これは重要だと。そういう機能が、今後とも我々としては維持・充実していかなければいけないという基本的スタンスに立ちながら、検討は進めていきたいと思っていますし、先ほどご指摘があったような、当然、海外の状況、出版者の権利というものを認めているのは、これは著作者としてイギリスとオーストラリアのほうでは、版面権という形で権利を認めている例はございますが、いわゆる先進国ではその2カ国ということでございますので、諸外国がどういう形で出版者とか出版者の役割、利益の確保、そういう意味での出版機能の充実という観点でどういう考え方をしているのかということを、一方、検討会議とは別に、我々は委託研究という形で来年度、諸外国の状況というものもきちん調査していきたいと。そういう形で、我々、検討は進めていきたいというふうに思っております。 以上でございます。 ○中村会長 ありがとうございます。 他に、この電子書籍関連で質問、コメント等ありましたら。 ○別所委員 お聞きしていて、私はショートフィルムの映画祭をやっているわけですけれども、何か頭の中がもやもやするなと思って、自分の中で何が整理できないかなと今の話を聞いていたのですが、今、吉羽さんがすごく重要なことをおっしゃっていたと思います。それも後で触れますが、今、国としてやろうとしていることが、今まで20世紀的に、見開きで開いて、本というフォーマットがあったものを、どのようにデジタライズ化して、デジタルライツとして未来に残していくかという、過去の確定物の話と、今後の電子書籍とか電子出版物とか電子配信物でもいいんですが、新たに生まれてきているものというのは、全く今までの本あるいは出版物という枠組み、概念ではなくて、むしろその自由度が新たなビジネスを生んだり、新たなアイデアを生んでいるわけでして、正直に言いますと、ショートフィルムであるとかゲームであるとか、音声コンテンツ、静止画、あらゆるものが複合的に集まったものが、これから言われる電子書籍であるとか電子出版物というものになるのであろうと僕は推察しています。そのため、その2つを、皆さんもごちゃまぜに考えていらっしゃらないと思うのですが、僕の中では何か国家戦略として、今まであったものをどうするかということと、これからどう海外からもそういったものを日本に呼び込むかとか、あるいはそういうハブになろうとするかとか、そういう未来系の話と2つに分けられて議論されるべきではないかと思いました。 ただ、その2つはやはりつながっていまして、典型的なのが先日もニュースであった、ルーカスフィルムは過去のハリウッドの俳優の肖像権を、今―言葉を悪く、あえて挑発的に言えば、買いあさっておりまして、その肖像権、映画化権で新たにCGによって俳優をよみがえらせ、現在の俳優と共演させたり、CGのキャラクターと共演させるというような、まさに21世紀後半の考え方のことを始めているわけでして、お隣りに吉羽さんもいらっしゃるのですけれども、出版会社の件でも、今あることの権利クリアが非常に難しいという現状で、踊り場的なところでご苦労されている段階で、既に日本語の刊行物を、海外のホームページの制作会社であるとかアニメの制作会社が、「もう日本語でマレーシアから出版して配信してしまえばよいではないか」と。決裁権もそちらで持っていたら、全然、シンガポールで全部、事が足りるではないかと。ネットは全部世界でつながっていますので、そういう発想になって、結局、日本という国自体がおきざりになるというか、海外に日本語の文化を持った出版物ですら、あるいはこれからの未来形の電子配信物ですら、足場を失うというところまで、実際には来ているのではないかなと思っています。 同時に、書籍なども、もうご存じのとおり、ツイッターで書かれたものが複合的に、今度は紙の出版物になったり、改めて編さんされるということもあるわけで、僕も出口があることではないんですが、こういう現状の中でどういうふうに皆さんが組み立てられるのかということが問いかけでもあります。 ○安藤課長 今、別所委員から、適切なお話をいただいたと存じます。この3省の懇談会というのは、今、別所委員のほうで2つに分けられたうちの、明らかに書籍資産をいかにデジタライズしていくか、マイグレーションしていくかというところに非常に強い問題意識があって行われたということが言えます。そういった意味におきましては、書籍というよりも、むしろ全く新しいインターネットコンテンツだと思いますけれども、そういったものをいかに増やしていくのか、そういったことはまた別の議論をしていく必要があるのではないかと総務省は思っております。そういったことで、賛同いただけるのであれば、両省とまた一緒に考えていきたい話だなと思っております。 ○中村会長 別所委員がご指摘になったのは、資料1の4ページをご覧いただきますと、次にどういうことを検討するのかの中に、意識としては盛り込まれているようでありまして、○の2つ目を見ると、「古い」コンテンツをどうするのかという議論があって、その下に、新たな形態、例えばクラウド型のコンテンツサービスにどのように対応していくのかというのも、どちらかというと、本当は知財本部は、そちらのほうにもっとエネルギーを割かなければいけないのかもしれません。 それで、おっしゃるように、例えばこれまでのような出版ですとか映画ですとか音楽といったジャンルでは、これから立ち行かなくなっていくかもしれないという問題意識を持って、では、新しい枠組みをこの知財本部として設計するというのも一つの課題になってくるかもしれませんので、それも引き続き、今後の議論の中でぶつけていただければと思います。 他に、この電子書籍について。 ○中山本部員 吉羽さんのおっしゃった出版者の権利ですけれども、これ自体は十分議論に値することだろうと思います。出版者というよりは、恐らくこれからは情報の媒介者一般について、従来にも3つの隣接権以外に何かやるべきものがあるのではないかというのは、これはそのとおりだと思いますし、出版者に何らかの権利があれば、違法なものを差し押さえるという点では確かに効果はあると思うんですけれども、コンテンツの流通という点を考えますと、従来の著作権がそのままですから、やはり著作権の集中というほうのことも、十分やっていく必要があるのではないかと思います。単に出版者の権利を認めれば、流通が促進するというものではないと思います。 ○中村会長 他にいかがでしょうか。 ○吉羽委員 もう一つ、別の話をします。 クラウド化の話の中で、多分この辺は解決しないとまずいのかなと最近思っていることがあります。インターネット配信で、コンテンツを買いましたと。クラウドにコンテンツを預けてある。その預けてあるものというのは、一定の期間、当然ながら、買った方は使えなければいけないという前提になるんですけれども、インターネット流通業者と著作権者の間の契約、ないしは我々みたいな代行している版元との契約、いずれかでもいいんですけれども、その契約期限が来た瞬間に送信可能化権がなくなってしまうので、買ったはずの人が不可抗力で再ダウンロードができなくなってしまうというようなことが想定されるんです。 ちょっとわかりにくかったかもしれないですけれども、要は、クラウド上に置いてあるコンテンツを閲覧する権利を購入して、それをしばらくの期間、行使できるわけなんですけれども、端末が例えば変わりました、新しい携帯電話になりましたというと、その人はまた再ダウンロードして、そのコンテンツを使うことができるというサービスが、割と一般的に行われているんですけれども、著者と流通業者、もしくは著者の権利を代行する者と流通業者との契約いかんによって、消費者側に与えられたはずのメリットが生かせなくなってしまうようなことが、多分、すぐに起きてくるだろうというふうに思っていて、この辺も、やはり消費者保護的な観点からも、何か結論を出す必要があるのではないかというふうに思っているんですが。 ○中村会長 他にいかがでしょう。よろしいでしょうか。 この書籍の電子配信については、関係の3省が連携して取組を推進していただいているという非常に珍しいパターンでございまして、是非とも早期に具体的な成果を出していただきたいと思いますし、フォーマットの実証実験なども、できるだけ早くアウトプットをご報告いただければと思います。 また、先ほど中山本部員からもありましたように、国立国会図書館の件も、利害が錯綜している中でウィン・ウィンのアウトプットが出ないのかということでありましたし、また、出版者の権利についても議論がテーブルに上るということですので、そのあたりの対応をよろしくお願いいたします。 では、次に違法対策に関連する項目として、工程表36番のアクセスコントロール回避規制の強化、それから工程表37番のプロバイダによる侵害対策措置の促進について、ご説明をお願いします。アクセスコントロール回避規制の強化については、永山課長、中原室長の順で、それから、プロバイダによる侵害対策措置の促進については、鈴木課長、新井課長にご説明をお願いした後で、今日は関税局から上川専門官にもご出席いただいておりますので、アクセスコントロール回避規制の強化について、補足などございましたらお願いしたいと思います。では、どうぞよろしくお願いいたします。 ○永山課長 それでは、資料2−4をご覧いただければと思います。 アクセスコントロール回避規制の強化に係る取組についての資料の、1枚めくっていただきまして1ページ以下が、文化庁から提出させていただきました資料でございます。 この問題につきましては、知財計画2010を受けまして、文化庁文化審議会で本年9月から検討をスタートいたしました。今お手元にある資料は、12月3日に法制問題小委員会でまとめられた中間まとめの概要でございます。これにつきましては、現在、パブリックコメントをしている段階でございまして、その結果も踏まえまして1月にさらに検討を行い、1月末の分科会のほうで最終的にご了承いただきたいという段取りで、今後、進めていきたいというふうに思っております。 資料の内容については、まず3ページをご覧いただけますでしょうか。 2 技術的保護手段の見直しに当たっての基本的考え方と保護技術の評価ということでございます。真ん中より少し上の表形式になっているところをご覧いただきたいと思います。 現行の著作権法におきましては、平成11年の法改正によりまして、その中の3つの枠の一番上でございます。現行法ではSCMSなどの非暗号型技術、これについて現行著作権法では規制の対象にしている技術ということでございます。これについては、複製物に直接コピー、複製などのコントロール信号を付す形の技術、これがSCMS、また映像についてはCGMSということですが、そういうコントロール信号を付すような技術について、直接コピーをコントロールするということで、そういう技術のみを現行の著作権法においては対象にしているということでございます。 今回、3カ月あまり検討を行いまして、基本的な考え方といたしまして、一番上の枠囲みのところにありますように、これまで現行著作権法における考え方、これは保護技術の技術のみに着目し、コピー、複製を直接コントロールする技術かどうかということによって、コピーコントロール技術かアクセスコントロール技術かということで評価している現行法の考え方を改め、ライセンス契約等の実態も含めて、当該技術が社会的にどういう機能を果たしているのかという観点から再評価すべきということで、今回、審議会のほうで現行付されている様々な著作権を守るための技術について再評価を行ったということでございます。 今回の再評価をいたしました結果が、その太囲みになっている部分ですが、映像系について付されている代表的な技術である「暗号型」技術、これまでは暗号化することによって視聴自体をできなくしている、そういう意味でのアクセスコントロール技術というふうにこれまでの著作権法では評価し、規制の対象外というふうにいたしておりますが、その技術が実際どういう使われ方をしているのか、社会的にどういう機能を果たしているのかという観点から再評価いたしますと、そういう技術は当然、暗号化することによって見ることができなくなる、そういうアクセスコントロール機能と、一方で、その後のコピー自体を、現行、映画などのDVDなどについてはコピー不可という形のコピーコントロール機能、両方を併せ有するものというふうに評価できるのではないかということで、コピーコントロール、下のほうに小さく書いてありますが、支分権の対象になる行為を技術的に制限する、そういうコピーコントロール機能も、CSSなどの「暗号型」技術は併せ有するということで、そういう形に再評価できるのではないかということで、現行著作権法はアクセスそのものについて権利を及ぼしていないということでございますが、そういう考え方の上に立っても、コピーコントロール機能を有するというところに着目いたしまして、著作権法において新たに法的な保護の対象とすべきではないかというのが中間まとめの考え方でございます。 また、下のほうのゲーム機・ゲームソフト用の保護技術については、右下のほうに書いてありますが、違法アップロードされたゲームデータをダウンロードしても、正規品に付された信号がないということで、仮に複製を行ったとしても、意味のない不完全な複製になるということで当該複製を抑止しているという形で再評価し、侵害行為の抑止を目的とする、そういうコピーコントロール機能を有するということで、こういう技術についても新たに著作権法の規制の対象にすべきというのが今回の考え方でございます。 4ページをご覧いただきますと、そういう現行の著作権法の保護対象になる技術的保護手段の範囲を、これまでよりはCSS、暗号型技術やゲーム用の技術に拡大すると。 その一方で、では具体的にどういう行為について、回避、規制対象にするのかというのが4番でございます。これについては、現行の規制内容を踏襲する、同様の規制とすることが適当ということで、結論というか、中間まとめでは方向性をいただいているところでございます。 1つ目は回避機器規制ということで、回避専用機能を有する装置、プログラム、そういうものの公衆への譲渡・貸与、いわゆる販売行為、また販売目的の製造・輸入・所持、またプログラムについては公衆送信、送信可能化、これらを刑事罰をもって規制することが適当ということございます。 また、回避行為につきましては、2つ目にございますように、業として行われる、いわゆる回避サービス行為、そういうものについて規制をするとともに、そういうコピーコントロール機能を回避して行った複製については、私的使用のための複製という範囲であっても、著作権侵害という形で権利制限から除外する。そういう内容についても、今回、拡大する分についても同様の規制を行うことが適当というのが基本的な考え方でございます。 従って、最後に米印のところですが、今回はアクセスそのもの、視聴行為そのものに著作権を及ぼすということではないという形の整理をしておりますので、アクセスコントロール機能を回避して視聴する行為自体については、規制の対象外とすることが適当というのが、今回の中間まとめの内容でございます。 文化庁からは以上でございます。 ○中原室長 経済産業省の知財室長の中原でございます。お手元の5ページから、私どもの施策について説明させていただければと思います。 6ページは、問題点の背景でございますので、皆様、ご高承のことばかりかと存じますので、7ページをお開きいただければと存じます。 経済産業省におきましては、今年9月から産業構造審議会の知的財産政策部会におきまして、技術的制限手段に係る規制の在り方に関する小委員会という下で、本件の問題について知財事務局から問題提起をいただいた点について検討を行ってまいったところでございまして、先般の金曜日に概ねこうした検討の方向性についてのパブリックコメントを前提とした報告書案についてのお取りまとめをいただいたということでございます。 7ページのまず最初に、@の規制対象装置等についてということでございます。現在、不正競争防止法におきましては、こうした技術的制限手段により制限されているものを回避するような装置ですとかプログラムを提供するような行為について、これを不正競争行為と定義しているわけでございますけれども、そこの定義規定におきましては、技術的制限手段を回避する機能のみを有する装置等が対象になっているということでございます。 しかし、知財事務局からも問題提起をちょうだいしましたように、技術的制限手段を回避する機能に加えまして、回避機能以外にも機能を持つと称する装置が、訴訟の話で答弁として、これは「のみ」装置ではないではないかということで出てしまうということで、なかなか実効的な規律になりにくいというご指摘がございました。 したがいまして、現状において氾濫している回避装置といったものの実態等を踏まえまして、より実効性のある規律とすべく、「のみ」要件を見直すということが適当であるというお取りまとめをちょうだいしたところでございます。 それから、Aとしまして、技術的制限手段回避装置等の提供行為への刑事罰の導入についてということでございます。先ほど申し上げましたように、不正競争防止法におきましては、技術的制限手段回避装置等の提供行為についての民事的な救済措置というのは整備されているわけですけれども、これが時として、こうした提供者を追及していく場合におきまして身体的な危険を伴うことがあるというような指摘がございまして、必ずしも民事措置だけでは実効的な救済を図れない場合が出てくるということでございました。 したがいまして、そうしたニーズを含めまして、より実効性のある規律をしなければいけないという観点から、刑事罰を一定の要件の下で導入することが適当であるというお取りまとめをいただいたところでございます。 それから、技術的制限手段回避措置等に対する水際措置の導入についてというBでございます。現在、関税法におきましては、こうした技術的制限手段回避装置等については輸出入禁止品とはされておりません。 しかし、こうした装置等が国境にまたがって国内へ流通してくるというものにつきましての実効性を高める観点から、こうした装置等についても水際措置を導入することが適当であるというご報告をいただいているところでございます。この点につきましては、また財務省とも調整させていただきながら、できる限りのことをしてまいりたいというふうに考えているところでございます。 以上です。 ○鈴木課長 続きまして、お手元の資料2−5に基づきまして、プロバイダによる侵害対策措置の促進に関連しまして、プロバイダ責任制限法検証WGの検討状況について説明させていただきます。 資料2−5のワーキンググループ設置の背景でございますけれども、プロバイダ責任制限法が制定されて10年の節目ということ、それから知財計画2010を踏まえまして、事業者等による運用状況、それからインターネットを取り巻く環境の変化、諸外国の動向を踏まえつつ、同法の検証を実施するということにしてございます。 ワーキンググループのメンバーでございますが、その下にございますとおり、東京大学の長谷部先生を主査、森田先生を主査代理として、こちらにございます委員の方々に入って議論していただいているところでございます。 検討スケジュールといたしましては、今年10月に第1回のワーキンググループが立ち上がりまして、11月、第2回で幅広くいろいろな方々から意見をお聞きするということで、11月、12月、ヒアリングを予定しておりまして、11月については日本音楽著作権協会様、日本レコード協会様、コンピュータソフトウエア著作権協会様、ユニオン・デ・ファブリカン様からご意見をいただいているところでございます。12月については、明日21日でございますけれども、ユーザー団体、事業者団体等の皆様からヒアリングを行う予定としております。 こういったヒアリングを受けまして、1月から3月にかけて、個別の検討項目について検討し、議論を深めていきまして、来年3月に報告書案を取りまとめる予定としてございます。 続いて、1枚おめくりいただきまして2ページ目ですが、具体的な検討項目のところでございますが、1から4までの4点、プロバイダ責任制限法の取り扱う範囲ということで、他人の権利を侵害していないが、有害な情報の取り扱いについてどのように考えるか等、3項目、それからプロバイダ責任制限法ガイドラインということで、具体的に事業者等がガイドラインに基づいて運用を行っている中での取組の状況を確認すること、それから3点目として、権利侵害情報の削除関係ということで、削除義務が生じる場合の明確化についてどのように考えるか等、3項目がございます。4点目として、発信者情報の開示請求関係ということで、開示要件についてどのように考えるか、開示請求権に関する仮処分の在り方についてどのように考えるか等、5項目挙がっております。 検討項目については、これは現在の段階でございますが、これに限定されることなく、これから来年にかけて議論を深めてまいりまして、年度内ということでございますので、3月には一定の取りまとめを行う予定としてございます。 続いて、3ページについてお願いします。 ○新井課長 知財計画37のプロバイダによる侵害対策措置の中で、警告メールの転送ですとか、技術的手段を用いた検知を図る、プロバイダと権利者が共同した仕組みを検討するということとされております。それにつきましての進捗状況を報告させていただきます。 本年、コンテンツ不正流通対策連絡会ということで、本年3月に、ファイル共有ソフト、それから動画共有サイト等で流通するコンテンツに関する課題を認識し、情報を共有する連絡会を立ち上げております。体制としましては、上智大学の音先生、それから筑波大学の北川先生、その他権利者団体、それから通信事業者、動画投稿サイト運営事業者、放送事業者らを集めて、今、対策を練っているところでございます。 それから、コンテンツ不正流通対策の実証実験でございますけれども、こちらにつきましては、まさに今、実験をやっているところでございます。本年12月18日から、国内外の14の動画投稿サイトにおきまして、不正流通コンテンツを検知し、削除要請を行う実証実験を、今、開始しているところでございます。年内は、NHKのコンテンツを使いまして、それから年明けには民放のコンテンツを提供していただきまして、そういった実験をさせていただく予定でございます。 それから、P2Pのファイル共有ソフトの実態調査というものを、本年11月から実態調査を行っております。こういった成果につきましては、3月末に取りまとめられる予定でございますので、また機会があれば、是非ご説明等をさせていただく機会を与えていただければと思います。 以上です。 ○上川専門官 財務省の上川でございます。先ほど、文化庁、経済産業省のほうから検討状況についてご報告がございましたが、それを踏まえまして財務省といたしましても、本年秋、関税・外国為替等審議会関税分科会企画部会におきまして、本件につきまして議論したところでございます。 そして、その議論結果を、政府税制調査会にお諮りいたしましてご議論いただき、先週16日の閣議決定をいただきました税制改正大綱におきましては、アクセスコントロール等回避機器について、不正競争防止法または著作権法の改正を前提に、関税法上の輸出入禁止品に追加するとの取りまとめをいただいたところでございます。 これを踏まえまして、財務省といたしましては、不正競争防止法または著作権法の改正を前提に、このアクセスコントロールの回避機器を関税法上の輸出入禁止品に追加する改正法案を次期通常国会に提出する方向で、現在、検討を行っているところでございます。 私からは以上でございます。 ○中村会長 ありがとうございました。 アクセスコントロール回避規制については、今、お話がありましたように、関係3省庁で短期間でとても積極的に取り組んでいただいておりますが、確認ですけれども、次期通常国会に著作権法、不正競争防止法、あるいは関税法の改正法案が出てくるということになりますでしょうか。 ○永山課長 それに向けて、今、検討を進めているというふうにご理解いただければと思います。 ○中村会長 わかりました。ありがとうございます。 それから、インターネット上の著作権侵害、これは未だ深刻な状況なんですけれども、先ほどプロバイダ責任制限法のお話がありましたが、これは次期通常国会ということではなくて、もっと先ということなんですね。 ○鈴木課長 知財計画2010で、年度内に結論を得るということでいただいていますので、来年3月までに結論を得まして、その後、その結論に応じて必要な措置を必要なスケジュールで進めていくということなので、次期通常国会の1月からというようなスケジュールにはなっておりません。 ○中村会長 わかりました。そういう点で、次の3月以降のアクションですとか方向性で、今、見えているものというのはありますか。 ○鈴木課長 このプロバイダ責任制限法の関係では、今の時点でその後のアクションで見えているものはございませんで、このワーキンググループでの結論を踏まえてそれぞれの必要な措置を、その後、講じていくことになると考えております。 ○中村会長 ということでございますが、本件について質問、コメント等ありましたらお願いします。どうぞ。 ○川上委員 プロバイダ責任制限法について、動画投稿サイトということで、我々は当事者ですので意見を述べさせていただきたいんですが、現状、例えば動画投稿サイトということであると、実質、日本の中で機能しているのが、多分、我々のニコニコ動画とグーグル、YouTube、この2つだと思うんですけれども、大きく違いがありまして、我々のほうは、ニコニコ動画ができたのが2006年12月なんですけれども、2007年7月には権利団体といろいろな話し合いを開始していまして、実質的な削除を行っています。これは世界中の投稿サイトでも、自主的なパトロールを行っているのはニコニコ動画だけです。 それで、実際に問題なのは、グーグルも含めた世界の日本国外の動画投稿サイトでして、実際、我々は多分、自主パトロールしないと、日本の法律下においてはいろいろな訴訟を起こされて、多分、会社がつぶれてしまうのだと思うんですけれども、海外の会社はそういうことにはならない。グーグルとかYouTubeでも、海外でも訴訟は起こせると経産省はおっしゃいますけれども、実際、現実上、世界中で起こっていますけれども、グーグルはつぶれていないわけですし、恐らくつぶれないわけですよね。 ですので、このプロバイダ責任制限法の中身がどうのこうのというような議論というのは本質的ではなくて、この権利侵害を食いとめるという話は、海外のサービスに対して、日本の法律が適用できないサイトが現実存在する。それをどういうふうにするのかということだと思うんです。そういう点が、何か議論されていないのか、多分、されていて無理だろうなという話になっているんだと思うんですけれども、それがないと、結局はその規制を強化しても、国内のネット産業にすら適用がなくて、海外のネット産業のほうにしかつながらない話になりますので、そういった視点の議論というのがされているのか。これは具体的には、僕は日本の法律を守らないサイトに対するインターネットアクセスというのを制限するようなことを考えないと、この問題というのは解決できないと思うんですけれども、そのあたりの議論を是非お聞かせいただけないでしょうか。 ○鈴木課長 ワーキンググループでは、これまで立ち上げて、各関係者からのいろいろなご意見等を伺っている段階で、議論を深めていくのは今後になりますけれども、今、お話がございましたとおり、グローバルにネットワークがつながっている中で、海外のサービスには適用されないと。そういう中での制度設計をどうするかというのは大きな課題だと思っておりますし、また、今、海外の状況とか海外の制度も調べていきながら検証を行っていこうという方針になってございますので、今後の議論の中で、本日いただいたご意見も踏まえて検証していくことになろうかと思います。 ○中村会長 今の川上委員の指摘は、我々サイドでも、次の課題で考えなければいけないことかもしれませんね。 他にいかがでしょうか。 (発言する者なし)
○中村会長 よろしいですか。 時間も押しておりますので、では、次に移りたいと思います。 最後ですけれども、工程表24番、「コンテンツ特区」です。本件については、まず事務局の奈良参事官から総括的に説明をいただいて、その上で、新井課長、高柳補佐からご説明をお願いしたいと思います。よろしくどうぞ。 ○奈良参事官 それでは、内閣官房の私のほうから、現在検討中の「総合特区制度」についてご説明させていただきたいと思います。 資料は、資料1にまた戻っていただきまして、その資料の12ページをご覧いただきたいと思います。 直接担当しておりますのは、内閣官房の地域活性化統合事務局でございまして、本日は小浪補佐も出席しておりますので、もし補足があればお願いしたいと思っております。 ここに書いてございますとおり、地域や民間の知恵、あるいは資金を生かしながら、経済成長あるいは地域活性化を図ろうというものでございまして、地域から提案いただきまして審査の上、特区を指定すると。その地域におきます規制あるいは制度改革を中心としますけれども、それだけではなくて、税財政措置でありますとか、予算の集中投資を図っていくというものでございます。 具体的には、左にございますとおり、国際戦略総合特区、それから右の地域活性化総合特区というものが想定されておりまして、いずれも地域からの提案を得て指定するというものでございます。 分野あるいはテーマ等につきましては、特定しているわけではございませんけれども、コンテンツ等のクリエイティブ産業も対象になってくるものでございまして、国としても優先的に取り組むべき課題の一つであるというふうに認識しているところでございます。 スケジュールといたしまして、うまくいきますと、次の国会に法案を提出いたしまして、5月ごろから地方から提案を募集ということで、夏ごろに特区の指定ということを想定しているところでございます。これにつきましては、従来も構造改革特区というものがございましたが、これが従来のものと異なりますのは、従来は単独の規制の特例措置ということでございましたけれども、今回は複数の規制の特例措置ができるということ、あるいは今までになく税制、それから財政、金融上の措置も総合的に支援するということで、パッケージで支援するというところが大きな特徴かというふうに思っております。 また、国と実施主体の協議の場というものも設けるということになりまして、国と地域が一体となって推進するというところがまた大きな違いかと存じております。 それから、13ページをご覧いただきたいと思います。 例えば、コンテンツ関連の特区のイメージということでございます。コンテンツ関連事業者の集積を図りましてビジネスの創出を行うということで、アジアのクリエイティブの拠点を目指すというようなことがイメージとしてあるわけでございますけれども、想定されている規制緩和の事例といたしましては、例えば映画撮影に係りまして、その許可手続を簡素化する、あるいは海外からのクリエーターの誘致を促進する。それから、デジタルサイネージ等のコンテンツ関連設備の設置の充実を図る、こういうようなことが想定されておって、政府としても優先的に取り組むべき課題であるというふうに認識しているところでございます。 今後、さらに検討を進めまして、法案を提出するということになりますけれども、問題は地方からよい提案が出てきていただくということが重要でございまして、関係省庁連携しまして情報提供あるいは相談に応じまして、地域からの提案を働きかけるということが重要であるというふうに認識しておりますし、また、もし特区として認定された、指定されたということになりますと、やはり各省庁の予算を集中的に投資していくということが必要ではないかというふうに考えております。 特区制度全体につきましての説明は以上でございまして、各省の取組について、では、お願いしたいと思います。 ○新井課長 総務省でございます。「総合特区制度」に関しまして、コンテンツに関する特区というものができたのは、大変意義深いことだというふうに考えております。私ども総務省といたしましても、本省及び地方の総合通信局等を通じまして、地方からの提案を促す、また提案の作成段階から相談を受け付ける等、必要な支援等を行ってまいりたいというふうに考えております。 ○高柳補佐 経産省でございます。お手元の資料、「e空間プロジェクト」というものをご覧いただければと思います。 こちらのほうにつきましては、具体的な課題抽出という観点から、地域に視点を置いてやっているものでございます。 具体的には、様々な情報通信技術を用いまして、まちや商業空間自体をメディア化していく。位置情報連動サービスのような新しいサービスを用いながら、新しい情報通信技術を活用したまちとの連携の具体的な課題抽出というのをやっているところでございます。 本年度におきましては、具体的施策といたしまして、位置情報サービス基盤技術及びモデルサービス実証を実施しておりまして、3つの分野、拡張現実とネットの融合の推進、情報への位置情報付加の推進、地域情報の収集・蓄積・発信等々をやっているところでございます。 以上でございます。 ○中村会長 ありがとうございました。 奈良参事官、これも次期通常国会に法案が出てくるということですか。 ○奈良参事官 次期通常国会に法案を提出するということで、今、準備を進めているところでございます。 ○中村会長 想定されるイメージとして、コンテンツ関連でどれぐらいの広さのものを何カ所みたいなイメージというのは、現時点ではありますか。 ○奈良参事官 現在、特区の数につきましては、まだ具体的なものというものがあるわけではございません。ただ、この特区制度を議論するときに、実は各都道府県、各地域あるいは民間に対しましてアイデアを募集しておりますけれども、コンテンツに関しましては12件のアイデアの提供があったということを伺っておりまして、今後こういった地域が、1つ、可能性としてはあるのではないかなというふうに考えているところでございます。 ○中村会長 ありがとうございました。 昨年来、この知財本部で議論してきたことから関連して、たくさんの法案が出てくるようでございまして、国会は大丈夫なのかというのが最大の課題かもしれませんけれども、コンテンツ特区についての質問等がありましたらお出しいただければと思います。いかがでしょうか。 ○別所委員 ちょっと中座しましたので、聞き逃していることだったら申しわけないんですが、この総合特区をつくるときに、一番最初に昨年度にも僕は言ったつもりがあるのですが、こういったコンテンツ強化の専門委員会や、あるいは知財の話をするときに、金融の政策やルール、財務的な決済など、いろいろなものがネット上でもうめいているわけですが、例えば具体的に言うと電子マネーですとか、今、新たに金融庁などもしっかりと見守っているものだと思いますけれども、ポイント制度であるとか、そういった世界観のものが、一番大きな表題ですけれども、デジタル化・ネットワーク化に係る課題という中には、必ずすべての経済活動に通じるわけですから、決済をどうするのかとか、そのルールが必ず伴うと思います。その中でも典型的なものが、電子マネーとポイント制度とか、そういったものだと思うのですが、この特区を考える上で、そういったものに対する何か具体的な特区を設けるとか、ネット上も含めまして、積極的な動きを考えている部分はあるんでしょうか。 ○奈良参事官 先ほども申しましたが、これを考えるに当たりまして、アイデアを各地方なり民間から募集しているわけでございますけれども、その中で1つ、先進的な産業とか、あるいは研究開発拠点を形成するというようなことで幾つか提案もいただいているところでございまして、具体的にそういった提案、それを活用しながら経済の活性化を図っていく、あるいは国際競争力の強化を図っていくという提案があれば、それは当然、政府としても検討していくということになろうかと思っております。 ○吉羽委員 今の別所委員の話にちょっと関連するんですけれども、電子配信のサービスを日本国内でやっているにもかかわらず、日本国に税金を払っていないような海外事業者があったりするわけなんです。 一方、日本の配信事業をこれから育てようという中に、競争力という部分で考えると、やはり不利な競争の部分がどうしても生じてしまうのではなかろうかというようなことも思うんです。ある特区の中で、例えばこれは無制限にというと、日本の国の税収のことを考えてもよろしくないのかと思うんですけれども、一定、立ち上がるまでの期間、例えば特例としてそういった海外の事業者がやっているようなことと同じように、税金を一定免除するようなこととか、やはり外から入ってくるサービスに対抗するために、日本の中で産業育成という立場からの何かご検討をいただけないのかなというようなことは思うんです。これは、クラウドのときもお話しして、何かグーグルなどは露天でもサーバーを回していたりとか、耐震性能みたいな話での日本の規制がかなりきつくて、日本の中にはクラウドサーバーを置きにくいというような話もあったりしたんですけれども、地方からアイデアを募って上げてくるのもよろしいんですけれども、やはり世界を見たときの競争上、こういうことが政策的に必要ではなかろうかというようなことを、もう少し政府として積極的に打ち出してもよいのかなというような気はしたりします。 ○杉山委員 これは、地方から出てくるのももちろん悪くはないんですけれども、マルチメディアを流行らすときにさんざんやったなという記憶があって、誰が最終的に、「これは良い、悪い」とやるのかなと。例えば、あの時も沖縄で集中的にやったんですけれども、コンテンツ産業はやはり育たなかったということもありますし、その内容をよく見ないと、確かにアイデアでは書いてあるけれども、実態的に数年たったらほとんど結果が出ていなかったということがあるのではないかなと。それは、僕はマルチメディアのときにかなり何カ所もの地方で経験したことなので、どうなんだろうなというふうに思います。同じようなことにまたなってしまうと、あの頃はまだ時間が、少し余裕があったけれども、今この時点では、本当に世界と戦うという意味では、全く余裕がないときなんです。だから、地方の活性化とかは必要だと思いますけれども、そんなことを言っている場合ではないぐらい、もう東京の最前線で戦っている人たちも危ないと思ってやっているわけですから、その辺、だから、もちろん悪いことではないんですけれども、誰がどこに何をやらせるかというのを決めるというのが、一番心配ですね。 ○中村会長 選定スキームの制度設計も、これからだとは思うんですけれども、何かそのあたりの議論というのは、奈良参事官、ありますでしょうか。 ○奈良参事官 まず、従来の構造改革と特区が違いますのは、規制改革が単独の規制だけではなくて、複数の規制ということもございますけれども、それに加えまして、税財政上の措置も行うということになってございます。この中で、例えば今、検討されておるのは、投資を促進するという意味で、出資に係ります所得控除を設けるでありますとか、あるいは投資税の投資税額控除、それから法人税の控除というような措置を、今、検討していることでございますので、まさにそうした規制緩和に加えまして、税財政の措置というのはパッケージで特区には適用されるということを検討しておりますので、そういった中で新たな産業の活性化、新たな産業の創出、あるいは活性化につながるというものが出てくるということを想定しているところでございます。 ○佐藤本部員 この「地域」といった場合、どのぐらいの広がりを想定されているんですか。都道府県単位、また地方、どういう広がりをお考えなのでしょうか。 ○小浪補佐 担当しています、地域活性化事務局の小浪と申します。 地域としては、今のところ、特に基準を設けるつもりはございませんけれども、一般的には例えば日本全国とか、そういうのはちょっとないのかなと。ただ、例えば複数の都道府県が連携して、ぐらいのものは、実際に提案として上がってございますので、そこら辺ぐらいのスパンまではターゲットにしてよいのかなと思っております。まだ、詳細は実際の法律ができて、その後の運用のときに詰まってくると思います。 ○佐藤本部員 今、質問した趣旨は、私も地方の関連の事業にいろいろ参画しているんですが、では、地域で誰がドライブするんだというのが非常に大きな問題だと思うんです。構想としては大変よい構想なんだけれども、実際にそれが、ある地域で資本を投下して、それで事業を起こしてドライブしていくという人が、どこに誰が手を挙げるんだというのが非常に問題だと思っておるんですけれども、その辺はどういうふうなものを具体的にイメージされているんでしょうか。 ○小浪補佐 これは、コンテンツ分野に限らない話だと思いますけれども、いろいろなケースがございます。例えば、地方自治体で市町村とか都道府県が中心となって、民間プレーヤーを呼び込むような形もありますれば、一方で、民間企業なりが中心となって、市町村とか都道府県と一緒にやっていくケース、もしくは全くのボランティアとかNPOみたいな市民が中心となってリードするようなケース、いろいろあると思います。どれかに限定するということはなく、それぞれターゲットに入れた包括的な制度ということで考えてはいます。 ○佐藤本部員 制度設計としては、いろいろな可能性を育てられる制度設計をしていただきたいと思うんですが、私が知っている地域で見ると、経産省系ですと経済産業局クラスのところしか、本気でドライブしているところはあまり見当たらないですね。各都道府県単位でいくと、東京とか大阪とかビッグの県はともかくとして、他の小さなところは都道府県単位でもなかなかドライブする機能がない。まして、地方自治体がドライブする力がない以上、民間にはもっとドライブする力がない。そうすると、環境をつくっても、実際には新しい事業が起こらないのではないかという心配をしているものですから、そういう事業を起こすためには何が必要なのかということを、是非この計画を検討される上ではご検討いただきたいなというのが、現場でやっている立場で強く感じるところでございます。 こういっては何ですけれども、本当に都道府県もピンからキリまであって、意欲のあるところから全く意欲のないところまで、非常に温度差がある。その中で、何とか1つでも2つでも成功事例をつくっていただきたいという意味では、地方任せでは多分だめだろうというふうに私は感じておりますので、そこをどうするかというのをご検討いただいたらいかがかというふうに思います。 ○中村会長 ありがとうございます。 ○近藤局長 すみません。私が質問したらいけないのかもしれませんが、地方で何かやりたいときは、誰に相談に行けばよいのですか。この特区の人のところに相談に行けばよいのですか。 ○小浪補佐 総合特区についてということですか。 ○近藤局長 このコンテンツ特区で、「私はこんなことをやってみたい」とか「こんなアイデアがある」というときは、例えば地域振興だから経済産業省に相談に行ったらよいのか、それも例えば、芸術を中心にして何かやろうとするから文部科学省に行ったらよいのか、それから税金の問題がやはり関心事項だから財務省に行ったらよいのかというか、正直言って、このアイデアが出てきたとして、「何かやってみたいな」と思っても、誰のところへ行ってよいかよくわからなくてということになっているのではないかなという気がして、僕は質問しているだけなんです。 ○小浪補佐 ちょっと自画自賛的な話になってしまいますが、内閣官房の地域活性化統合事務局というところで、一応、各省の出向者で構成されている関係から、各省への人脈がありますので、各地域の担当をつくりまして、各地域で起こっていることはこの人に相談すればよいという窓口を、一応つくってございます。そこで、たらい回しにはせず、関係省庁なり関係出先機関の人を紹介するとか、関係施策を一生懸命調べて紹介するとかというサービスを―あまり有名ではないんですけれども、行っているというのが実情でございますので、是非よろしくお願いいたします。 ○別所委員 先ほど僕が言った、ポイントとか電子上の決済権を伴うマネーの話とか、共同購入型のクーポンのような、今、この日本にもやってきているような話は、先ほどご説明いただいた、もちろん税法上の特区において、所得税や法人税がある種のメリットを得るとか、海外の企業を誘致できるとか、従来の特区にあるタックスフリーであるとか、あの考え方とはまたちょっと一線を画した話で、例えばシンガポールなどは、アジア全体で使えるポイント制度をつくってしまえば、インターネット上のマネーとして兌換性のあるリアルなマネーと動きをとれるようなものを、真剣に考えているんです。 ですから、そういう意味での国の戦略として、インターネットで今、リアルマネーとはまた違う形でのお金の在り方というのが動いているのであって、それを国として、例えば経済産業省や財務省の方が、あるいは総務省の方が、日本を中心に置くべく何らかの考え方を持とうというような議論があるのか。あるいは、特区をつくる場合に、そういう具体的なリアルマネー、今ある円だとか元だとか、そういっている話ではないものが、実際にもううごめいていて、それが主流にネット上では動き出しているのだということをどうとらえていくのかというのが重要なのではないかというご提案です。また、特区に関しては、皆さんおっしゃっているように、杉山委員もおっしゃっていますが、さんざん実証実験などをやっているものがあるんですけれども、結局それは本当に何に生かされて次につながっているのかということが、またわからない形になりがちなものです。その特区の在り方そのものが、僕はあえて誤解を恐れずに言うと、地域活性化であるべきではないと思っています。ある特定の地域の、例えば表裏一体で、そこに広くいろいろな形で国の政治がお金を施して、特区という形で何かをやっているという考え方では、今、世界中で動いていることに勝てないと思いますし、結局、あえて事を荒立てて言えば、消化試合のようなものにならないためには、もっとあるところに集中した特区制度であるべきだし、地域から上がってくるボトムアップではなくて、「もうこれで国はこの地域に巨費を投じて、こういうことで世界中を呼び込むのだ」とか、「インターネット上の特区でこういうことをやるんだ」とか、「これに関して一切税金はとらないで世界を呼び込むんだ」とか、何かそういう大きな旗印を立てていただくような特区制度であってほしいなと思っています。 それから、最後にもう一つ、特区をやるのであれば、局長もおっしゃっていましたが、具体的にそれを束ねるプロデューサーというか、そういった方をお立てになるということはできないのでしょうか。つまり、その方に聞けばそのことは統括してわかるということでないと、今、何が特区でうごめいているのか、この知財に関しても結局見えないものが偏在、点在して大きな書類が残るだけということにならないのかなと思っております。 ○芝田次長 貴重なご意見、ありがとうございます。 まさしくシンガポールのように、戦略的に国がリードしてそういう発想をしていくというのも、とても大切なことだと思います。我々内閣官房というのはまさしくそういうことを考えるためにあるので、今、構想されているような特区制度で、自治体やら民間から出てくる提案を待つというだけではなくて、私どものほうでもそういう提案を積極的に考えてみたいと思います。 ○中村会長 どうもありがとうございました。 ということで、案の定といいますか、質疑応答で時間が来てしまいました。知財計画2010に基づいて、政府が今、動いている案件についての質疑応答をさせていただいたのですけれども、知財計画2011に向けて新しいテーマ、新しい論議をどう載せていくかというのは、資料1の4、5ページに、これは事務局におつくりいただいた、頭出しがされた項目があります。例えば、デジタル・アーカイブの外部提供の拡充ということで、国立国会図書館のアーカイブの外部提供をどうするかとか、「古い」コンテンツをどうするか、あるいは新しい形態への対応ということで、クラウド型のコンテンツサービスへの対応ですとか、3Dコンテンツの戦略的推進、最後に書いてあります個人によるSNS等での引用紹介や二次創作への柔軟なアプローチ、これは前のラウンドで久夛良木委員がご指摘されていたことがここで頭出しされているわけですけれども、そういったこともありましょうし、また、今日の議論でも出てきました、新しいコンテンツをどのように考えるのかとか、それから海外のサイトへの対応をどうするのかといったことも、ここに載り得るものかもしれません。 このあたりは、次回以降の議論になりますので、皆さんから今日いただいた発言以外にも、ご意見、コメント等ありましたら、あるいはアイデアなどがありましたら、後ほど事務局までお寄せいただければと思いますけれども、現時点でこの部分について、何か言ってみたいということがもしありましたら。 ○杉山委員 今日、資料1の一番最後のページの3Dの放送の話が出なかったと思うんですけれども、ここはやはり日本としてどういうふうにとるのかというのを、知財計画2011では是非扱ってほしいなと。簡単に言うと、クールジャパン室の方々と一緒にパナソニックとかソニーの開発者から聞いて調べているんですけれども、単にもうNHKが動かない限りやらないだろうということになっていて、NHKはやはり次世代の8Kというような、多分、普通の人の家におりてくるのは、もうかなりとんでもなく先だみたいな方向で、今、お金をどんどんつぎ込んで研究していて、実態としてはもうあまり研究的にやることはないと、飛び越えてしまっているんです。でも、韓国は、やはりここは国際標準をとろうと思って、試験的にもうデュアルストリームという方式で電波が出ていますので、これはほうっておくと全部、多分、韓国のチップを日本のテレビが全部積まないといけないというふうになってしまう。結構、テレビをとられてしまうというのは大きな問題なので、やらないならやらないでいいんですけれども―やらないというのは、つまり、日本は国際的に決まったらそれに乗るというのだったらいいんですけれども、その辺も大きな問題だなと。特に、ハードメーカーが絡むので、売上的には物すごく大きなお金が動きます。 ○久夛良木委員 今のインターネットというのは壮大な実験の場で、かつてない効率で、かつてないスピードで、様々なことが提案されていって、それで全世界のユーザーの支持を得たものが、あっという間に広まってしまうというのは、皆さん、ご存じだと思います。そういった中で、いろいろなことに制限があると、やはり萎縮してしまうよりは、そういった制限のある国にはサーバーを置かない、ということが現実に起こっているわけで、こういったことが起こる中で、我が国の競争力であるとかコンテンツというのを議論するときに、どうしても守る側の話が非常に多いなと思うんです。私が気になったのは、今日の資料2−1の5ページのその他のところで、「権利制限の必要性を慎重に」という、この「慎重に」の一言が、これは配慮のたまものだとは思うんですが、この「慎重に」がなければよいのになと思います。つまり、世界の中でどなたかがすばらしいアイデアを提案し実現していって、権利者側も、それからユーザーの方も、これはすばらしいとなったときには、やはり我が国としてはなるべく早くそういったものにちゃんと対応していくか、もしくは一緒に国も引っ張っていくということにしていきたいし、できることだったらこの国として、そういったような新しい提案がどんどん出るような環境を整備していきたいわけですから、是非「慎重に」という言葉はどこかの時点で、もう少しポジティブな言葉に変えていただければ嬉しいかなというふうに思います。 ○中村会長 ありがとうございます。 よろしいでしょうか。では、時間がまいりましたので、最後に近藤事務局長からお話をいただければと思います。 ○近藤局長 今日も積極的なご議論をいただきまして、ありがとうございました。冒頭に少し遅れ、途中でまた中座したことをおわび申し上げます。ちょうど明朝、知的財産戦略本部を、行うことにいたしまして、その関係の根回しをしておりましたので、ご無礼をお許しいただきたいと思います。 この1年間、本当によく議論して、よくまとめていただきまして、ありがとうございました。改めてお礼を申し上げる次第でございます。この専門調査会、今年は最後でございます。随分と、この調査会は筋書きのない調査会でありまして、普通の審議会とは違って、やってみないとわからないというのは非常に楽しい調査会であります。これはもう委員の皆様方のご協力に心から感謝する次第であります。これまでも相当なペースでやっていただきましたが、また年が明けて一段と、さらにお力添えをお願いしたいと改めてお願いする次第でございます。 それから今日、各省から来ている方々も、せっかくの機会ですので、こういう場を使ってやりたいことを実現すると。これは、私どもの本部は総理が直轄しているという意味で、つまり、いろいろな意味でやりたいことができる可能性のある仕組みでありますから、むしろ我々知財事務局、知財本部を上手に使っていただいて、皆さんがしっかりと切り込んで、そして踏み込んで、一歩前進してもらいたい、こんなふうにお願いしたいと思います。 改めて、皆様方のご尽力、この1年間、本当にありがとうございました。また年が明けたらすぐに、引き続きよろしくお願いしますということを申し上げて、ご挨拶にします。ありがとうございました。 ○中村会長 ありがとうございます。 では、事務局から連絡事項をお願いいたします。 ○奈良参事官 次回は、1月17日月曜日、15時からを予定しております。次回から、知財計画2011に向けて、個別の論点につきまして議論を進めていきたいというふうに思っております。 ○中村会長 では、これにて閉会いたします。 本日はありがとうございました。 メリー・クリスマス。よいお年を(笑声)。 |