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コンテンツ・日本ブランド専門調査会
コンテンツ企画ワーキンググループ(第4回)議事録
  1. 日時:平成20年2月1日(金)13:00〜15:00
  2. 場所:霞ヶ関東京會舘シルバースタールーム
  3. 出席者
    【委 員】 久保利座長、角川委員、木村委員、久保委員、里中委員、重延委員、高橋委員、中村委員、南場委員、浜野委員、原田委員、廣瀬委員、三尾委員、村上委員、和田委員、佐藤本部員
    【事務局】 素川事務局長、松村次長、吉田次長
  4. 議事:「デジタル時代におけるコンテンツ振興のための総合的な方策(案)」について

○久保利座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまからコンテンツ・日本ブランド専門調査会、第4回コンテンツ企画ワーキンググループを開催いたします。
 本日は、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございました。もう角川委員もお見えになると思いますので、スタートしたいと思います。
 本日は、前回までの議論を事務局のほうで報告書案として取りまとめておりますので、それについて議論をお願いいたしたいと考えております。
 まず、事務局から報告書案についてご説明をお願いします。

○吉田次長 お手元に資料1と資料2をお配りしております。資料の2が報告書の本文でございますけれども、資料1は概要版ということでまとめたものでございます。適宜両方の資料を見比べながら説明をお聞きいただければと思います。
 これまでの3回のワーキンググループにおきまして、委員からのご意見や、あるいはヒアリングでお呼びいたしました参考人のご意見、そういったものも含めまして、私どものほうで整理をしたものでございます。本日のご議論を踏まえまして、また改めて3月6日の専門調査会の場に報告をさせていただきたいというふうに考えております。
 それでは、概要版のほうをお開きいただきたいと存じます。これは本文のほうでは2ページから3ページにかけてのものでございます。ここは、我が国のコンテンツ分野の現状と課題ということについての記述をしているものでございます。ここでは3つの観点から課題というものを整理しております。
 最初は、コンテンツを取り巻く環境の急激な変化に素早く対応しようということでございますが、その下に幾つかの説明を加えております。既存メディアの停滞と言ってしまうとちょっときついかもしれませんが、新聞や出版、あるいは放送、音楽の世界ではパッケージといったものがこれまであるわけでございますけれども、こういったものに加えまして、近年はインターネットや、あるいはモバイル、そういったものがメディアとして大きな伸びを示してきているわけでございます。そういう意味で、ユーザーがこういったネットサービスに傾斜をしてきており、また、諸外国の状況を見ましても、世界じゅうがこういった新しいビジネスの模索や、あるいは新たな動きを展開しているという状況がございます。これまで日本も、コンテンツ大国の実現を目指しまして逐次制度改正とか業界慣行の改善を実施してきまして、その結果として着実に拡大しているという側面はございますけれども、まだまだそういった変化に素早く対応するという部分では課題が残っているのではなかろうかと思います。特にブロードバンド化の関係もございまして、動画のネット配信といったものが急成長しているわけでございます。こういったものを活用した新しいビジネスモデルといったものの追求が今後の課題として挙げられるだろうと思います。
 2つ目の課題は、コンテンツ産業が持つ強みを最大限発揮するというものでございます。コンテンツ産業の規模につきましては、ご承知のとおりでございますけれども、日本のコンテンツ産業は幅広い分野で──これはアニメですとか漫画、あるいはゲーム、さらには映画といった、そういった分野で見渡してみましても高い創造力を持っております。また、ブロードバンドの整備ですとか、あるいはモバイルの普及、そういったことから世界最高水準の情報通信環境も持っているわけであります。また、情報家電ですとか、あるいはデジタル機器、そういったハード面のことに目を転じましても、物づくりの高い技術力といったものを持っているわけでございまして、そういったものを生かせば、今後十分に伸びる余地があるんであろうというふうに考えられます。
 3番目の課題は、グローバルにビジネスを展開しようというものでございます。国内市場にはやはり限界があるわけでございまして、今後、日本のコンテンツ産業を発展させるためには国際市場に活路を見出していくということが必要なのではなかろうかというふうに考えられます。昨年来、JAPAN国際コンテンツ・フェスティバルなどさまざまな取り組みが始まっておりますし、また既存のさまざまな取り組みがございますけれども、日本のコンテンツを世界に発信するという、そういった姿勢が重要であろうというふうに考えられるというふうにまとめてございます。
 次のページをお開きいただきたいと思います。こちらは、本文のほうでは4ページに記載してあることでございます。
 少しここは図を使っておりますけれども、左側のほうに環境の変化として幾つか挙げてございます。最初のほうでは、世界最高水準の情報通信環境、さらにコンテンツ産業のグローバル化、こういったものに対応して新しい市場を拡大していこうではないかということでございます。それを基本戦略ということで展開していきますと、右側のほうにございますように、既存の枠組みにとらわれない新しいビジネスに挑戦をする、基本戦略の2としては、海外に目を向け、グローバルにビジネスを展開するというものでございます。
 それから、ちょっと順序は変わりますけれども、下のほうに1億総クリエーターの時代というのを書いております。ここは、これまでのプロによる創造だけではなくて、プロではない方が創造に参加をしてくると、そういったことも著しくなってきているわけでございます。そういった要素も加味しながら、世界じゅうのクリエーターの目標となり得る創作環境の整備というものが重要ではないかということでございます。
 そして、その間をつなぐものといたしまして流通の円滑化ということで、これが真ん中に書かれております。市場の拡大、それから創造の拡大、それをうまくつないでいくものとして流通の円滑化というものをとらえまして、基本戦略の3として多様なメディアに対応したコンテンツの流通を促進するというものを掲げております。こういった取り組みを通じまして、新たな市場の開拓と利益の還元、さらにすぐれたコンテンツの創造と、こういった正のスパイラルを実現していってはどうかということでございます。
 概要の次のページをお開きいただきたいと存じます。ここからは、本文のほうでいきますと5ページ以下のところでございまして、具体的な取り組みについて整理をしたものでございます。この概要の4ページのところは、これからご説明いたします基本戦略ごとに整理をしたもののうち、主要なものをピックアップしてここに並べているということでございます。
 その次のページをお開きいただきたいと存じますが、ここは基本戦略1、新しいビジネスに挑戦をするというところに関連したものでございます。本文のほうでは5ページということになります。
 まず、コンテンツ共有サービスの適法化の推進というタイトルでございますけれども、動画投稿サイトですとか、そういったコンテンツ共有サービスといったものが成長をしてきているわけでございます。こういったものを新しいコンテンツ流通経路として取り込んでいこうという、こういった取り組みがいろいろと行われているわけでございます。その下に書いてございますけれども、サービス事業者と権利者との包括的な契約を促進するということですとか、また、一方では違法なコンテンツがこういったサービスの中に含まれている場合がございますから、そういったものを適切に排除するという意味で、サービス事業者が提供する技術的手段によるフィルタリングを活用し、違法コンテンツの排除と適法利用のための許諾の効率化への取り組みを促進するということを考えてはどうかということでございます。
 また、一番下のサービス事業者の法的責任の明確化を検討というところは、専門的にはいわゆる間接侵害の問題として位置づけられているものでございますけれども、コンテンツの流通にかかわって、その道具ですとか、あるいは場ですとか、そういったものを提供している事業者の法的責任、これは差しとめ請求権がどこまで及ぶのかという問題ともかかわってまいりますけれども、このあたりが不明確でありますと、事業者の法的な立場というものが非常に不安定であるということでございますので、その点の明確化というのが必要ではないかということをここで述べております。
 次のページをお開きいただきたいと思います。ここは、通信と放送の垣根を超えた新しいサービスへの対応というタイトルでございます。本文のほうでは6ページのところに記載をしているものでございます。
 通信と放送の垣根を越えた新たなサービス展開が本格化をしております。その図の真ん中あたりに書いてございますけれども、従来の放送や有線放送、それから通信といった垣根を越えまして、IPテレビですとか、あるいは携帯端末向けのマルチメディア放送など、新しいそういったサービスが起こってきているわけでございます。そうした場合に、既存の法制では、やはり放送・有線放送、それから通信といった従来の区分にのっとった法制が存在しているわけでありますけれども、それを、その下にございますように、利用者から見たサービスの形態、つまり流通経路の違いではなくて、利用者が受けるサービスの性質、そういったものに応じまして権利関係の規定の見直しですとか、あるいは場合によりましては著作隣接権を事業者に付与するとか、そういったことについても検討してはどうかと、こういうことでございます。
 なお、本文のほうでは、6ページから7ページにかけましては検索エンジンに係る法的問題の整理ですとか、あるいは通信過程における一時的な蓄積に係る著作権法上の問題ですとか、そういったものについての検討を提案しているところでございます。
 それから、概要の7ページをお開きいただきたいと存じます。ここのところは、本文でいきますと7ページのところになってまいります。
 コンテンツ市場の拡大に向けた新たなビジネスモデルの追求と知財制度の見直しということでございます。この図にございますように、まさにメディアといったものが大きく変わってこようとしております。流通実態が変化をしたり、あるいは収益構造が変化をしたり、それから市場の海外展開、そういったことを通じましてコンテンツ産業に大きな可能性があるわけでございますけれども、それでは、そういった急速な変化といったものに、知財法制、あるいは契約ですとか、そういったものを含めた、いわゆる知財の制度として十分に対応し切れているかといいますと、それについては疑問の部分があるわけでございます。この専門調査会、このワーキンググループでは、これまで個々の法的な課題につきましてさまざまなご提言をいただき、整備を進めてきておりますけれども、もう少し包括的な議論が必要ではないだろうかということでございます。ビジネスモデルの開発に際して支障となるおそれがある法的課題に対して、より迅速かつ柔軟に対応し得る制度が必要ではないかということで、全般的な見直しをここで提言してはどうでしょうかということでございます。内容としましては、権利関係ですとか、あるいは権利制限のあり方ですとか、さらには契約を通じた許諾の円滑化に係る方策ですとか、今後の中期的な動きを展望しながら課題を抽出し、それに対して基本的な方向づけをしていくというような、そういった作業が考えられるわけでございます。知財法制、特に著作権法制の関係でございますと、条約との関係ですとか、あるいはこれまで形成されてきました業界の秩序ですとか、そういった事柄は存在するわけでございますけれども、この際、少し全般的な見直し、検討といったものをする時期になってきているのではなかろうかと、こういった問題意識をここに出しておるわけでございます。
 それから、次のページをお開きいただきたいと存じます。これは、本文のほうでまいりますと8ページのところでございます。
 基本戦略の2ということで、グローバルな海外展開ということでございますけれども、ここでは英語の使用など海外を意識した見本市や映画祭の実施というふうにタイトルをつけております。これに先立ちまして本文のほうをごらんいただきますとおわかりになりますけれども、取引市場の機能の強化ということで、コフェスタを初めとする、さまざまなそういった取引市場の機会をさらに充実していくというようなことを掲げてございますが、それに関連いたしまして、やはり言語の壁といったものがございます。そういったものを超えていくということで、そこに書いてございますが、表現内容を英語化するなど、現地の人間が理解できるように多言語とすることが重要ではないかということで、見本市や映画祭などの国際イベントにおいてイベント進行や広報パンフレットについて英語使用を推進するとか、あるいは、コンテンツ・ポータルサイトが日本のコンテンツ情報の発信源として位置づけられているわけでございますけれども、それにおきましても英語を初めとする多言語化を推進するということが必要ではないかというふうにまとめております。
 次のページ、9ページをお開きいただきたいと存じます。ここも、本文のほうでございますと8ページから10ページにかけてのものでございますが、その中で、海外展開を支える情報の収集とビジネス手法の確立ということでまとめております。
 まず、業界団体ごとに輸出入等の統計情報の整備、あるいはその公開ということを促進する必要があるのではないだろうかということでございます。それから、海外の情報ということになりますと、JETROなどを初めとして幾つかの機関がこれまでも行ってきているわけではございますけれども、それをさらに効果的に収集、提供するような仕組みといったものを考えてはどうかということでございます。それから、海外展開ということになりましたときに、権利処理をそれに目がけて常に整理をしていくことですとかといった契約ルールを確立をするという必要がございます。また、国際的な契約ということになってまいりますと、国際的な実務にも精通した専門家を活用したライセンスビジネスを強化するということが課題になってくるかと、こういうふうに思います。
 なお、本文の9ページのところには、コンテンツの国際共同製作の課題ですとか、それから10ページにつきましては発信チャンネルの確保ということで、この中には国際放送の充実なども含めた記述をしてございます。
 概要のほうの10ページをお開きいただきますと、ここは海賊版対策の関係でございます。本文のほうでは10ページのところに記載をしてございます。
 ここでは、今、関係国間で協議が行われております模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)の早期実現、それから在外公館における海賊版対策の強化、そしてCJマークの普及の促進といった3つの事柄をここに掲げております。
 概要の11ページをお開きいただけますでしょうか。ここは基本戦略の3ということで、流通の促進ということにかかわるものでございます。本文のほうは11ページから12ページにかけての記述に対応するところでございます。
 透明な市場の確立と取引機会の拡大ということでございますけれども、具体策ということでは、コンテンツ・ポータルサイト等の各データベースの充実と連携強化に対する支援ということを掲げてございます。その下に図がございますけれども、データベースといたしますと、真ん中にコンテンツ・ポータルサイトがございます。これは既に2007年6月から運用を開始しているものでございます。それから、左側のほうに創作者団体ポータルサイトというのがございます。これは権利者情報を含んだデータベースということになりますが、これは2009年1月に運用開始ということで聞いておりますけれども、こことの間の連携。さらに放送番組の関係につきましても、今、データベースを構築する動きがございます。そういったものとの連携。そういった、この3つのデータベースが有機的に連携することによりまして、日本のコンテンツ関係の情報がより把握できるような、そういった体制をつくっていこうということでございます。
 それから、概要の12ページのところをお開きいただきたいと存じます。これも本文のほうでいきますと12ページから13ページにかけての記述でございます。
 コンテンツの二次利用を促進するための法制度などの整備ということでございます。具体的な課題といたしましては、最初に所在不明の権利者がいる場合の対策でございます。ここについては、関係者の自主的なルールによる解決というのもございますし、また、制度的な面で著作隣接権に関する裁定制度を設けるということ、これも視野に入れた検討が必要だというふうにここは記述しております。それから、2つ目については、多数の権利者がかかわるコンテンツにつきまして、その一部に反対者がいる場合に、その権利行使をどのように考えているかというような課題でございます。それから、放送コンテンツの二次利用に関する契約ルールについては、日本経団連の映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会におきまして、これまでの取り組みがありまして、ガイドラインですとか、あるいはネット配信に関するルールづくりというのが進んでいるところでございますけれども、そういったものを全体に周知徹底をしていくということがさらに必要であろうというふうに考えられます。
 なお、本文の13ページのところでは、これらに加えまして集中管理事業の拡大ですとか、あるいはコンテンツや権利の管理といった点について有益なコード体系の整備と普及ということについても触れております。映像コンテンツの国際的なコードでございますISANの普及といったことについても、ここの中に触れているところでございます。
 それから、概要の13ページをお開きいただきたいと存じます。
 ここは流通の促進ということで、どちらかといいますと図書館のことでございます。図書館にはすぐれた文化的な資産が多く蓄積されているわけでございますけれども、それを広く活用していこうということでございます。代表的な図書館でございます国立国会図書館、880万冊の蔵書というのがございますけれども、こういったものをデジタル化いたしまして国民に提供していくという、そういったことについて、より積極的な取り組みが必要ではないかということでございます。その下に少し具体的なものとしまして、図書館が許諾なしに蔵書のデジタル化をするということ、さらには、ここはデータの共有化ということになりますが、図書館間でのデータのやりとりですとか、あるいはその利用者への資料提供、サービスの向上、そういった観点から見直しが必要ではないかと、こういうことでございます。
 その次のページをお開きいただきたいと存じます。ここは基本戦略の4でございまして、世界じゅうのクリエーターの目標となり得る創作環境の整備という、その切り口でございます。本文のほうでは15ページから16ページあたりにかけましての記述でございますが、15ページのほうには投資の活性化ということで、さまざまな資金調達のための制度の改正なども行われておりますけれども、それをより活用するような取り組みですとか、あるいはコンテンツ制作現場の環境の改善というようなことで、下請取引の適正化の問題ですとか、そういったものを掲げてございますが、本文のほうでいきますと16ページでございますが、日本の科学技術力を生かしたコンテンツ創造の充実ということでございます。冒頭の現状と課題のところで申し上げましたように、極めてすぐれた技術力を持っているわけでございますけれども、それをコンテンツ制作に生かしていくということが緊要であろうかというふうに思います。そういう意味で、クリエーターと科学技術者知識やアイデアを交換できるような場を構築したり、あるいはコンテンツ政策に役立つ機器やソフトウエアの技術開発を促進するということを1つ目標として掲げているわけでございます。
 その次のページをお開きいただきたいと存じます。これは海外からの人材受け入れの促進というところでございます。本文のほうでは17ページということになりますけれども、各種学校として認可を受けていない民間教育機関で学ぼうとする外国人学生に就学という形で在留資格が与えられないだろうかという問題でございます。既にファッション分野におきましては、特区の仕組みを使いまして、各種学校に準ずるような水準のものにつきましては在留資格を与えるような方向で関係省庁間での検討が進んでいるところでございます。それをコンテンツの分野におきましても展開できないだろうかということでございまして、このあたりは具体的なニーズなどもきちんと踏まえる必要がございますけれども、そういった方向で検討を進めてはどうだろうかということでございます。
 それから、概要の最後のページでございますが、1億総クリエーター時代に対応した創作活動の支援ということでございます。ここは、最初のところで申し上げましたコンテンツ共有サービスとダブる部分がございますが、前のほうはどちらかといいますと、そういったメディアの拡大を図っていこうという視点でありましたのに対しまして、こちらのほうはそういったものに参加をしていく新たなクリエーターといいましょうか、そういった方々の環境を整備していこうというところで記述をしてございます。最初のコンテンツを公表する場を提供するサービス事業者や権利者との間で、あらかじめ包括的な契約を行うなどの自主的な取り組みを支援するという部分は共通でございます。その下の意思表示システムの改善普及・民間における活動の促進というのは、ネットの中にアップロードされますようなものにおきまして、自由利用という前提でアップロードしているものもあるわけでございます。そういったものをきちんと意思表示をするシステムというのが既に幾つか存在しているわけでございますけれども、そういったものをさらに拡充できるような方策というものを検討してはどうかということでございます。
 以上のような内容でございます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 次に、事前に資料をご提出いただいております久保委員、中村委員、和田委員、その順序でご発言をお願いしたいと思います。
 久保委員、お願いします。

○久保委員 東京アニメセンターの久保でございます。資料3−1を出させていただきました。
 まずは、「地球温暖化対策」最優先時代のコンテンツ産業についてです。北海道洞爺湖サミットにおいて地球温暖化対策が最優先議題に位置づけられており、日本がそのリーダーシップをとろうとしていることは、皆さんご存じだと思います。近い将来、コンテンツ産業に対してもCO2排出削減に対する対策の協力要請が間違いなく来ると予想しています。地球温暖化対策の前にはコンテンツ産業も例外ではないと考えているからです。大きな課題でもありますし難題でもあります。しかし、全く別の観点から考えると、コンテンツ産業にとって難題ではありますが、もしかすると、停滞している権利者間交渉を大きく進めるための解決のヒントになるかもしれません。
 どういうことかと申しますと、放送・通信融合に向けた既得権益者間の調整というのは数年間にわたる大きな未解決問題との認識を持っていますが、個人の権利・利益よりもはるかに重要で、国家・地球規模の新しい考え・イデオロギーが優先される時代になるのであれば、譲歩する側も納得しやすくなり、解決の糸口が見えてくるのではないかと考えました。これから5年、10年先を見据えた総合的な政策を打ち出すためには、コンテンツ産業、また国民が何を優先していくのかということをしっかりと提案し、納得しやすい環境を準備していくということが必要だと思っております。
 2番目には、コンテンツ共有サービスについてです。この施策の中でも様々に書かれておりますが、アニメ業界は通称ファンサブと言われているピア・ツー・ピア型の海賊版対策について大きな脅威を感じていることをお伝えしたいと思います。ファンサブとは、テレビアニメなどの映像作品にファンが勝手に英語やドイツ語、フランス語等の字幕をつけたもので、その活動はほとんど無許可で行われています。現在、コンテンツ共有サービスの大手でありますBitTorrentでは、英文字幕のついた日本のアニメ映像のファイル交換が1週間に600万ダウンロードされているということが報道されました。1カ月で直せば2,400万ダウンロードされていることになります。非常に多数のアメリカ人の方に日本のアニメを見ていただけているわけですから、人気があると言うことでは喜ばしい点もありますが、結果として北米地域における日本のアニメのDVD等のパッケージ商品の販売が急落しており、日本のアニメ産業は大きなダメージを受けています。DVDが売れないことを受けて、日本のアニメ番組の海外における販売価格も著しく下がってきています。その影響は国内にも現れておりまして、2008年4月のテレビ番組改編後にはアニメ番組数が大きく減少することが確実視されています。つまり、このファンサブ等の海賊版によって、日本のアニメビジネスが大ピンチに陥っているという実情をぜひお伝えしたいと考えております。
 外国語字幕をつけたアニメ映像をYouTube、BitTorrentなどのファイル交換サイトに打ち上げている濃いファンは、国内に10人前後いると言われております。このマニアの人たちは無償で自分の好きなアニメ映像に英文の字幕をつけているわけですが、アメリカにおります私どもの英訳スタッフが見ても、翻訳能力は大変高いと評価をしております。もちろん行為自体は違法の可能性が高く、今後、国がコンテンツ共有サービスを正式に認めていこうと指向しているならば、彼らに対して何らかのアプローチが必要になると予想します。個人的には、そのような能力の高いファンの人たちを少しでも日本のアニメのために生かせる形で解決していただきたいと希望します。
 最後に、著作権法の改正について書かせていただきました。著作権法は、ご存じのように、毎年小改正が行われておりまして、それを担当されています文化庁の方々は大変頑張って仕事をされていると評価しておりますが、抜本的な大きな改正をしようとすると、やはり二、三年かけて各方面からさまざまな意見を集約し、審議していくことが必要になるわけです。年度毎に行われています小改正と並行して抜本的な改正をするということは大変な作業量と推察します。この知財戦略本部は、すでに多方面から著作権法改正に関する意見を集約しやすい環境ができあがっている認識しております。ですので是非、文化庁さんの法改正作業を補完・協力するということが可能になればと考えております。
 以上でございます。ありがとうございました。

○久保利座長 ありがとうございます。
 次に、中村委員、お願いします。

○中村委員 中村です。資料3−2でございます。
 今回の案、非常に充実した施策の案となっていると考えます。取りまとめ、どうもお疲れさまでした。そこで、補足したいアイデアについて2つばかり書き出しました。
 まず最初の論点、産業政策でございますが、日本はこの数年でコンテンツのサービス面で後進国になったのではないかと私は認識をしております。活性化する必要があると感じます。そこで、制度面で言いますと知財法制を見直すというようなことが資料2の中に記述があるんですけれども、同時に重要なのは、今、見直しが行われております通信・放送法体系ではないかと感じます。その抜本的な見直しというのが政府の中で進められているわけですけれども、これもコンテンツの生産・流通・消費を最大化する方法で大幅な規制緩和を進めるということが必要かと感じます。特に電波の利用等を柔軟にして、コンテンツのビジネス、あるいはコンテンツのサービスが拡大するという方向で、こちらのほうの制度設計もする必要があると思います。
 と同時に、あわせて、このたび政府が発表したユビキタス特区などの仕組みも積極的に活用すべきだと考えます。そうした法体系の見直しということを待たずとも、今の民間のビジネスを活性化させるような場、機会を広げていって、新しいサービスが生まれるような政策を支援すべきではないかと。このたび22件が採択されたわけですけれども、その中にはIPによるマルチメディア放送といった新しいビジネス、新しいコンテンツのサービスを開拓しようとする民間の熱意が見られますので、こういったものを後押しするということを提案いたします。
 それから、2つ目の論点ですけれども、人材育成についてです。大学レベルの教育の強化という記述はあるんですけれども、同時に長期的な観点から、子供たちのレベルでデジタルの表現力や創造力を向上させるという視点も大事だと考えます。デジタルの技術を使って子供たちがアニメをつくる、あるいはゲームや映画をつくるという各種コンテンツをつくって情報を発信していくという取り組みが各地で広がりを今見せておりまして、私もそういった活動をみずから取り組んでいるんですが、こうした取り組みを評価するということを提案いたします。
 もう一点、ペーパーにはしなかったんですけれども、資料2の11ページ、12ページあたりでコンテンツ取引市場に関する記述が出てまいります。これも私自身も携わっている仕事なんですが、そういったコンテンツの取引市場を形づくっていくという仕事を強力に推進したいと思っています。そこで1点だけ付言させていただきたいんですが、11ページの枠の中で、権利処理の時間やコストがかかるということについて問題提起がなされていまして、時間、コストはかかるんですけれども、ここで今問題なのは、そうした時間やコストを負担してでもビジネスを切り開くというような人がどれだけあらわれてくるかではないかと思います。例えば通信業界、あるいはIPマルチキャストの事業者のように、新しいコンテンツを生み出して、それを流通させてビジネスをしようという人が、どれだけこれからリスクをとっていくのかというのは非常に重要なことではないかというふうに考えます。制度、あるいは規制というものを論ずる前に、こうした民間の発意で市場をつくっていくという努力といった形が大事になってくると感じます。
 以上です。

○久保利座長 ありがとうございました。
 続いて、和田委員、お願いいたします。

○和田委員 和田でございます。
 いただきましたペーパーにつきましては、本当に事務局の方々も含めて大変なご努力で作成なさっていらっしゃるんだろうとは思っております。ただ、余りにも内容が多様で、骨、中核がどこなのかということが、ちょっと分かりにくいのではと存じます。そこで、力点をどこに置くべきかにつき、1つの意見を申し上げたいと思います。
 若干、昔話になりますが、20年前、日本が金融大国になり得るということで、世界中から注目された瞬間がございました。このときに、金融というものが当時の「ものづくり大国日本」というところと、精神的には必ずしもしっくりこなかったというのが、当時の政界、財界の本音だったと思います。このため、金融大国として、世界の中核となれるかもしれないと、注目は受けたんですけれども、議論のほとんどが本質論、すなわち金融業の競争力をいかに高めるかということにならず、日本の金融市場の中での業界の縄張り争いに矮小化された印象があります。当時、私も証券会社におりましたけれども、若い頭脳が総がかりになって、銀行をして、いかに証券業に参入させないかというペーパーを作っていたわけです。金融業の真の重要性が国全体に認識され、同じ才能が金融業の未来についての議論に投入されていれば、日本の立場は今と全く違ったものになっていたと思います。
 今、コンテンツ産業は注目を受けています。コンテンツ業界に属している私としても、非常にそこは誇りに思うところでございますが、本当にコンテンツ大国になろうとしているのかどうかという根本的なところ、本当に腹に落ちた上でそう思ってくれているかどうかというところが、やや不安です。20年前の金融立国、金融大国という時期の空気と非常に似ている感じがしておりますので、あえて申し上げております。
 本題に戻ります。(資料3-3)
 最初に、これは意見書でございますので、すべての文末に「と思う」とつけ加えてごらんください。断定的な表現を使っておりますけれども、私も余り人に嫌われたくないものですから、腰砕けの状態で聞いていただければと思います。
 それから、いただいたペーパー案についてコメントを加えるという形ではなくて、フリーに書いております。つまり、ペーパー案の構成自体に対する意見も含みますので、あえてご提示いただいたペーパーと独立した状態にしております。
 はじめに申し上げたいのは、コンテンツ産業自体に価値があるのだということです。コンテンツ産業を強化するというのは、コンテンツをつくる能力をどう高めるかということに尽きる。世界の業者に比べて、私ども業者が弱いと言及されていますが、それは我々の責任であって、政策的な問題なのかどうか、というのはちょっと違うんだろうなと思っております。それが(1)のところです。コンテンツ産業の競争力の源泉は、コンテンツ創造力そのものだということです。
 (2)はコンテンツそのものの価値、これを認識していただきたいということ。また、日本という国が、コンテンツを創造する能力が極めて高く、極めて国際競争力を持った国だということをぜひご認識いただければというふうに思っております。これは、先ほどの金融の話とリンクしますが、しょせん虚業ではないかとか、ものづくりと関係ないとか、額に汗していないとか、そういう話になっちゃうんですね。コンテンツが一番価値があるなんていうことは全く言っておりません。ただ、コンテンツの価値自体について、本当のところは疑問視されているんではないかなというところもありますので、あえて申し上げます。技術というのは、これは一方向に進歩していくものだと思います。したがって、例えば50年前の技術というのが今、経済的な価値を持てるかというと、これは私は不可能だと思います。技術というのは日々進歩していきますから、リードするためにいかに能力を使うかは考えなければいけないんですけれども、原則減価していきます。だから永久に競争し続けなくてはならない分野です。また、事業モデルというのは、これは環境適応という意味で、進化──進歩とは違うんですけれども、進化ということがあると思います。環境に従って変わりますから、常時変化します。1つのモデルをつくったら、これでおしまいということは決してないということだと思います。
 他方、コンテンツというのは、すぐれたコンテンツであれば、そのコンテンツがどのようにお客様の前で音になったり絵になったりするかにかかわらず、すぐれていれば長生きすることができるのだと思います。例えば、すぐれた哲学書というのは、何千年も前のものがいまだに読まれますけれども、その当時の製本技術は今は全く使えません。あるいは、個人が本を売るという事業モデル、あるいは配るという事業モデルだったのが、出版業者が作家に対して発注することで成り立っているとか、モデルが変わってきたりします。つまり、逆に言えば、本の中身自体は数千年も生き続けているということだと思います。非常にすぐれたものであれば劣化しにくい価値を持っているということ。物事の価値にはやはりタイムバリューというのが含まれるというふうに考えますと、実際のコンテンツの根源的な価値は相当大きいというふうにご了解いただいても良いんじゃないかと思っております。
 そういった、価値が高いであろうコンテンツをつくる能力、国際競争力ということでいきますと、繰り返しとなりますが、日本人、日本国というのは非常にすぐれていると思っております。例えば食文化ですとか衣料ですとかありますけれども、極めて多方面で創造力を発揮している。しかも、日本のようにどの分野においても世界的に認められている国はほとんどございません。非常に高い創造力を持っているということですから、ここをどう強化するかに注力すれば、結果的に、それをいかに収益につなげるかということになってくると思います。コンテンツそのものの価値を認めていただいて、従って、つくる能力をどう考えるかというところに議論が収れんしていけば、よりクリアになるんではないかと思っております。
 次のページは、仮にと言うと変ですけれども、仮に議論するのであれば、コンテンツとは何かということを定義しないといけないんだと思います。コンテンツを定義することは、実はかなり困難です。当たり前のように言われていますけれども、コンテンツという単語自体が生まれてそんなに時はたっておりませんので、解釈のしようによって相当議論が拡散せざるを得ないぐらい定義があいまいです。一つにしばる必要はありませんが、その一つ一つは定義する必要があります。コンテンツの中身は全部違いますから、例えばデジタルコンテンツでいうと、デジタルデータは、お客様にエンターテインメントとして楽しんでもらうまでの間に、幾層にも幾層にも重なったさまざまな層や機能をくぐっていきます。ハードであるデバイスがあって、それが何らかのネットワークシステムの中に組み込まれていて、メディアの規格があって(これは、それこそブルーレイですとかなんとかということかもしれません)、それからユーザーインターフェース(これはハード、ソフト、双方あります)、課金等基幹サービスというのがソフトとしてまた乗っかって、そこに今度はコンテンツとして、コードとデータがある。こういったときにどこをコンテンツと呼ぶかという話ですね。
 私どもゲーム会社の定義ですとデータ。もちろんゲームというのはデータとコードと両方ないと動きませんので、2つが両輪となって動いて初めてゲームなんですけれども、極論を言った場合には、ゲームコンテンツとはデータのことです。世界観ですとか絵素材ですとかシナリオですとかになります。一部、コミュニティーサービスという分野もございますので、データないしはコードとお客様と一体となった非常に有機的なコミュニティー、これ自体をどう運営、発現していくかというところ自体もコンテンツと呼べるかもしれません。
 皆様ご存じのセカンドライフというのがございます。3Dのバーチャルの世界があって、その中で自由自在に行動できる、生活できるというものですけれども、私どもの会社ではファイナルファンタジーXIというオンラインゲームを運営しています。これはファンタジーの世界を3Dで表現して、中で自由に遊べるというものです。似ていますけれども、全く思想が違います。ファイナルファンタジーXIはデータの塊なのです。もちろん、それを動かすためにさまざまなエンジン(コード)が中に入っておりますし、ネットワーク技術も当然加味した上で成立しております。ただ、お客様方にこう楽しんでいただきたいというデータの塊なのです。一方、セカンドライフではデータはお客様がつくります。いわば、セカンドライフというのはコードです。「このように書くと、このような絵ができるかもしれません。このようにビルを建てることができるかもしれません。さあ、勝手に書いてください」と、こういう話です。ですから、見た目は似ているんですけれども、本質は全く違う。5年間にわたって、数十万人のユーザーが遊んでくれているファイナルファンタジーXIというのは、データを提供しており世界を形成しておりますが、セカンドライフというのは、コードを提供するのみなので、形成される世界が有機的でなく、ブームが去ってしまうということなんだと思います。そこが非常に大きく違います。私の意見では、「セカンドライフ」はコンテンツではないと思います。
 いずれにしても、コンテンツの定義ということ自体には思想が入ります。コンテンツとはこうであるという思想が入りますので、きちんと議論するのであれば、お互いの思想の何が一致して、何が相違しているかということを確認する必要があると思いますから、定義の議論というのは本当は極めて重要だと思います。
 それと、(4)ですけれども、コンテンツを創造するクリエーターの定義も、合わせて議論すべきであると思います。いわゆるクリエーターと言うのと、1億総クリエーターというところのクリエーターというのは全く違うんだと思います。クリエーターを育てようというときに、だれの話をしているのか。私は、クリエーターの定義を非常に狭義にとらえていまして、プロだと思っています。私もYouTubeにデジカメで映像を撮ってアップしたりしますけれども、僕がクリエーターかというと、決してクリエーターではないと思います。無論、そのサービス自体を否定するんではなくて、クリエーターを育てるという脈絡で議論するときに、例えばYouTubeの話をケースとして出すというのは変だと思うんです。クリエーターの予備軍、文化をつくるという脈絡での議論ですとか、あるいは、新しいサービス、付加価値を考えるという脈絡での議論ならばYouTubeは適切な例です。しかし、プロのクリエーターを議論する脈絡で、(私はここで「参加者」という単語を使いますけれども)参加者を議論するのは少し違うんではないかという印象を持っております。
 それから、大きく2つ目は、著作権の議論です。本件は非常に困難だというのはわかります。ただ、なぜ困難かというと、皆さんもよくご存じのとおり、異質な理念を幾つも中に入れようとしているからなんですね。事後的にいろいろな理念を付加してきていますから、もうどうにもならなくなっているというのは皆さんが実感していらっしゃるとおりでございます。ですから、制度上どうするかということは、非常に難易度が高いことは百も二百も承知の上で、実は一見すると相反するかもしれない理念を2つながら中に持とうとしているというところを自覚した上で、それを分けるとしたら制度上どのような手当てをすべきかということを、もう表に出して話したほうがいいんではないかという気がしております。これが、(1)から(5)までに記載してあることになります。
 長くなりましたので要約しますと、コンテンツそのものの価値が非常に高いという認識を持っていただき、そのコンテンツをつくる能力をどう高めるかというところに議論を収れんさせれば、非常にすっきりするのではないかと思います。付随的にいろいろな話が出るんですけれども、やはり、骨格中の骨格というのはそこではないかなということをあえて──申し上げました。
 以上でございます。

○久保利座長 ありがとうございました。非常に刺激的な、かつ有意義なお話だったと私は理解をいたしました。
 さて、続きまして、全体についての意見交換に移りたいと思います。事務局からの説明等を踏まえまして、発言のある方はネームプレートをお立ていただければと思います。
 じゃ、まず原田委員、お願いします。

○原田委員 私も、この全体のまとめについて、これまでの非常に多岐にわたる議論を踏まえた内容で、ポイントをよく押さえてまとめていただいていると思います。そういう意味で敬意を表したいと思います。この中で基本戦略1に掲げられた通信と放送の垣根を超えた新しいサービスへの対応、あるいは2の海外展開、そうしたところは、放送に身を置く者といたしましても一層努力を本当にしていかなければいけないと思いますし、急激な変化の中で、本当に素早い対応がまさに今求められていると思います。
 ただ、今日ここでお話したいのは、そのような中で、全体のところで書かれております日本がコンテンツ大国を実現するというところで、大事なことは日本がどのようなコンテンツ大国を目指すのかという、その視点が私は大切だと思います。コンテンツ大国の大国という意味というのは、例えば市場とか流通の規模、そういう点も大変大事なことであると思いますが、それだけではない、つまり、先ほどの和田委員のお話ですとコンテンツをつくる能力ということをおっしゃいましたけれども、コンテンツの質ということが非常に大事な視点であると考えております。確かに日本の文化や、日本人の英知、あるいはすぐれた科学技術、そうしたものに日本は大変すぐれたものを持っています。それを基盤にしたコンテンツの質の高さというもの、これがやはり日本の強みになるのであろうと私は思いますし、世界の中でもやはりその点で独自性を発揮することができる。ですから、こうしたことでコンテンツ大国として日本が世界に地歩を築いていくということです。尊敬をされることにつながっていけばいい。その強みをそのところで確保していくべきだと考えています。ですから、こうした姿勢、ある意味コンテンツ大国は何を目指すのかという、その志を明確にし、せっかく議論するのであれば打ち出していったらどうかと考えております。
 これは言うまでもないことを申し上げているように聞こえるかもしれませんが、やはり今、本当にメディアの変化は速いわけで、さまざまな新しいツールが出来てくる。あるいは流通ということも言われております。そうした中で結局最終的に問われるのは、コンテンツに魅力があるのかという、コンテンツが持っている力、それを本当にどれだけ我々が持続的に生み出すことが出来るのかということが、これから生き抜いていくために問われるのだという認識でおりますので申し上げております。
 そして、こうした質の高いコンテンツをつくり上げるためには、やはりすそ野の広い文化の土壌といいますか、そうしたものがあって初めて実現できると思います。テレビ番組の世界でいうと、優秀なディレクターは必要ですが、カメラマンも、あるいは編集マンも音声の専門家も、もちろん脚本家も俳優の皆さんも、本当にそれぞれがプロであるということが必要で、こうした人材というのは一朝一夕で育つわけではございませんし、そうした専門家集団をこの社会でやはりノウハウを含めて継承していくということで、初めていい番組をつくるチームができてくるのではないかというふうに思います。その背景に、もちろんすぐれた舞台や絵画、芸術もあるでしょうし、あるいは技術、あるいは日本の伝統ということもあるでしょう。そうしたことが支えになって初めてコンテンツが持続的に生まれてくる環境が整うのだと思います。ですから、国の総合力が豊かなコンテンツというものの背景に必要だということで、知財政策も是非そのあたりに目を配っていただいて進めていただけないものか。そういう意味では地味かもしれませんけれども、クリエーターの活動を支援するような施策、この中にも幾つかありましたが、人材の育成、あるいは海外のコンクールに出品する場合の支援であるとか、または放送番組の制作プロダクションへのさまざまな形の支援であるとか、そうしたことは地味かもしれませんが、やはり息の長い取り組みに光を当てるということは本当に大事だと思います。
 それとあわせて、コンテンツを発表する場、それをどのように確保していくのかということもあわせて大事です。こうした中でコンテンツ・フェスティバルというイベントが新しく生まれてきた。すばらしいことだと思いますし、それから、放送だけではなくてネットでも多くのコンテンツが流通していく、そのことがまた制作者を育てていく、そういう意味では、市場が拡大し、あるいは流通が拡大しということは、極めてそれは大事なことです。ただ、その根底にやはり大前提として、そういうコンテンツを生み出す創造力というか、そこをやはり本当に国として大事にする、そういう大きな施策、視点というものをぜひ持つ必要があるということでお話をさせていただきました。

○久保利座長 ありがとうございました。
 では、続いて三尾委員、お願いします。

○三尾委員 報告書のほう、どうもありがとうございました。ほとんどすべての意見を全体としてうまくまとめていただきまして、すっきりした報告書かなというふうに感想を持ちました。
 ただ、私の意見を述べさせていただきますと、この報告書からは、何が本当の現状の問題点なのか、具体的な現状の発展を阻害している要因は何なのかというところがすっきり見えてこないというような印象を持ちます。例えばこの資料1の概要2ページなんですけれども、逐次制度改正や業界慣行の改善を実施するという漠然とした対策はあるんですけれども、一体何に対する改善策として必要なのか、どういったことが問題なので具体的にどういう改善がなされるべきなのかというような検証が少し足りないのではないかというような気がいたします。具体的な施策としては、最終的には各省庁に落とし込んだ形で、次年度以降で具体的に実行されるということになろうかと思いますけれども、そのあたりのどういったものを各省庁がやっていくべきなのかという点も踏まえて、もう少し具体的な内容を書いていただく必要があるのかなという気がいたします。
 それとあわせて、この全体の中で国が行うべき施策というものは一体何なのか。民に任せておいたほうがむしろスムーズにいく、民に任せておくべきことなのかという点が峻別されていないのではないかという印象を持ちました。国としてすべてをやっていくということは、財政的な問題もあると思いますし無理であろうと思います。民にほとんど任せていった上で、国は最低限バックアップとしてやるべきことをやるというようなスタイルでいくべきではないかというふうに考えます。
 そういうことを踏まえまして、今一番発展を阻害している要因は何かという、私の個人的な意見なんですけれども、それを述べさせていただきます。資料1の3ページなんですけれども、3つの枠がありますが、この中でやはり一番問題なのは創造のところではないかというふうに思います。先ほど原田委員や和田委員もおっしゃっておられましたように、いいコンテンツをつくることがすべてである、そこがスタートであるということは私も十分思っておりまして、いいコンテンツがあれば、発表の場があればということなんですけれども、流通をし、さらにそれがお金を生み、そのお金をもとにして新しいビジネスモデルや新しい市場の拡大、これは民のレベルで恐らくやっていかれるだろうというふうに思います。それぐらいの意欲のある方々がたくさんいらっしゃいますし、私もそういうふうにやりたいというふうにおっしゃっている方を何人も知っております。ですので、まず創造の分野を確立していくということが大事だと思うんですけれども、現状の私のクライアントや知人の話を聞きますと、非常に創造の分野は今疲弊しているというふうに聞きます。具体的には、何が疲弊しているのかということなんですが、アイデアではないんですね。資金がないということなんですね。いろいろないいものをつくりたいと思うけれども、自分たちはこのようなものをつくりたいという想定される資金がなかなか捻出できないということがあります。そのために大手の制作、例えば放送局とか大手のところの下請となって、その内容も最低限のものをつくって、それを出すということが精いっぱいである。新しいビジネスモデルを開拓するとか、新しい市場を開拓するとか、海外へ出ていくとかという余裕はとてもありませんと、そういった言葉を聞いたりいたします。しかしながら、彼らが持っているクリエーターとしての資質というのは非常に高いものがあるわけでして、それをあえて摘んでいってしまうというような、そういう危機感を私は感じます。
 そういう現状を踏まえまして、国がやるべきこととして何だろうかというふうに考えたときに思いましたのは、例えば技術の分野では、私は別に競争力強化の専門調査会に所属もしているんですけれども、そちらのほうでは国として中小企業を支援していこうという施策が、これはもう知財立国が唱えられたころからずっと一貫して唱えられているんですね。技術の分野で資金がない中小の企業を支援していこうという国の施策があるわけなんです。これをなぜコンテンツの分野に、お金や資金力はないけれども能力があって優秀なコンテンツをつくるという芽のある中小企業を国としてバックアップすることができないんだろうかというふうに考えます。例えば、特許庁がやっています特許の分野では、いろいろな意味で金銭的な補助もやっている。そういうこともやっております。ですので、多額のお金を出すのは無理かもしれませんけれども、優秀なコンテンツのクリエーターに対して、少しでもモチベーションを高めるために、国として資金的なバックアップもできるのではないかというふうに考えます。技術の分野ではやっているわけですから、コンテンツも同じように財産的な価値のある国の施策として今後発展させていこうという分野ですので、それはやっていただきたいというふうに考えます。
 もう一点、これは流通枠の拡大ですね。今、現状で流通の選択肢が非常に少ないというふうに考えます。いわゆる発表する場が余りないということですね。これから発表する場として考えられる場としては、ネット、あとは放送ということが一番メインかなと思います。ネットについては、いろいろな施策も今回も認められておりますし、将来的にも発展していくのではないだろうかというふうに私は考えます。ただ、まだ十分育ってはいない市場ですし、少し時間がかかるのではないかというふうに考えます。例えばもう一方の放送の分野なんですけれども、例えばなんですけれども、この分野の電波の枠を一部開放してあげる。もちろん優秀で、これはというコンテンツを流すという、もちろんそういう審査を事前にした上で、その審査を通ったものに関して放送の場として流通の場を与えてあげる。そうすると、例えばそれにスポンサーがついてお金を出してもらえるということになれば、コンテンツのクリエーターはもっと先を目指すだろうし、そうすると海外に出ていこうということにもなっていくのかなというふうに考えます。ですので、こういうことを言うとあれなんですけれども、基本的にはやはりある程度の資金力がないといいコンテンツがつくれないということは現実問題としてあるというふうに思うわけです。
 さらにもう一点なんですけれども、あとは国際的な分野に関する点です。これについては、例えば資料2の9ページのCで、国際市場における知的財産権を活用したビジネス手法の確立というところなんですが、ここで契約を活用するということが書いてあります。このコンテンツ分野は、契約を十分利用、活用できていないというふうに思うんですけれども、特に海外の場合は、ほとんどが相手方は弁護士がついてくる場合が多いですね。当然相手方に弁護士がつくんだから、こちら側も弁護士ということになるかと思うんですけれども、私の少ない経験を述べますと、でき上がった契約書に弁護士として名前を書くだけといったような、そういった現状もあろうかと思うんですね。交渉した上での契約ということなんですけれども、そのあたり弁護士をもっと使って契約交渉した上で合意ができたきちんとした契約書というものを業界としてつくっていただきたいし、そのためには私たち弁護士をもっと利用していただきたいというふうに思う次第です。
 最後にもう一点だけなんですけれども、Dのほうのコンテンツの共同製作の促進というところなんですけれども、これをどこの国と共同製作をするかという選択をする場合に、例えば税金面での手当がある国を選ぶということがよく言われると思うんですね。ですので、そういった税金面で国際共同製作を支援するというようなこともあわせて検討していただきたいというふうに考える次第です。

○吉田次長 先ほど三尾委員のほうから、この報告書の取りまとめ方で、それぞれの省庁のやるべきことが必ずしも明確じゃないとか、あるいは国と民間の役割関係が明確ではないのではないかというご指摘がございました。それはそのとおりといいましょうか、この段階ではまだそのとおりでございまして、この後、これをまたさらに精査いたしまして、知財計画2008という計画に仕上げていくわけでございますけれども、その段階では、こういった事項については、どこそこの省庁がこれを担当するとか、それから、これについては国でやっていこう、これは民間で取り組んでいただくというあたりの仕分けを明確にした形で整理をしていきたいと思いますが、今回のこのまとめでは、つまり官民挙げて今後どういった方法で進んでいくべきかということをここでは書かせていただいておりますので、そういう意味で、そういう段階の資料だということでご理解いただければと思います。

○久保利座長 座長からもそれはお願いをしてありまして、いずれ三尾本部員のところに行くと思いますので、そのときには厳しいご意見をしっかりお願いしたいと思います。
 じゃ、南場委員、お願いいたします。

○南場委員 私のほうから2点ございます。
 1点は、以前この場で放送番組のネットの流通についてコメントさせていただいたことがありました。そのとき私は、例えば我が社が持っているような携帯電話のポータルサイトで放送番組を流そうとしたときに想定されることについて社内で調査を行った際、当社の現場から「気が遠くなるほど大変な話だ」という声があがったことを共有させていただきました。しかし実は、それは感覚的な話で、1世代前の話を申し上げてしまったのではないかという反省をしております。というのはその後、とある先と具体的に放送コンテンツを我が社の携帯ポータルサイトで流せないかということを交渉させていただいた場面がございました。放送局の現場ははじめ「えっ」という反応をしましたが、話を広げていくうちに非常に積極的にテーブルについてくださり、しかも、いろいろな出演者の権利の処理など手間がかかる部分も含めて、経済的にどういう条件であれば折り合うか、それから、どういう内容であればイメージを崩さないのかということを一つ一つ是々非々でご検討いただけたという経験がございました。このような実体験がないまま、感覚的なことを申し上げてしまったと思います。その点を改めて申し上げたいと思います。
 また、コンテンツ流通のマーケットをつくるという話がありましたが、企業が投資をして資金をかけてノウハウをつぎ込んでつくった番組を強制的にマーケットに出させて、だれでも見なさいという話は、やはりそれはさすがに私も事業者として、そういうものではないだろうなと思います。一方で、相対の取引の中で一つ一つ是々非々でご判断いただける土壌になってきているのではないかというふうに感じた面を共有させていただきたいと思います。
 2点目は、今回の案でぜひ加えていただきたいと思っていることですが、16ページ1億総クリエーター時代に対応した創作活動の支援というのがポイントに挙がっています。プロに狭く定義するべきだという意見もあるかもしれませんが、この絵に書いてある投稿サイトを持っている立場として、我が社のサイトもそうですし、魔法のiらんどさんもそうですが、携帯において発表された小説や詩を出版化することも行っております。ここで権利処理等の負担が大きいということが書いてありますが、権利処理に関してはそれほど複雑ではなく、比較的ストレートに行うことができました。
 それよりも、本件に関して大きな問題は、携帯電話の違法・有害コンテンツのフィルタリングサービスの原則化ということが起こっているということです。青少年保護という抽象的かつ、概念としては非常に反論しがたい概念のもと、このフィルタリングを原則化せよということが12月10日に総務大臣からの要請で行われました。フィルタリング自体を反対するものではありませんが、現状のフィルタリングサービスのまま原則化されますと、例えば投稿サイトなど書き込むことができるサイトがすべてアクセス不能になってしまうことになります。権利処理云々の前に、充分な議論が行われることなく推進されているフィルタリングの問題に、もう少し慎重に取り組むようにということをぜひここに書いて頂きたいとお願い申し上げる次第です。
 もう既に魔法のiらんどさんと当社と合わせて百数十万の小説や詩が集まっています。若年層を中心に、親指で毎日少しずつ詩を書いたり小説を更新する。そうすると、毎日、ファンや何百万人というユーザーさんが作品を見て、それについての感想や激励を送る。こういった若者の発信文化というのは日本独特でありまして、世界の先端を行くものであります。それがフィルタリングサービスの義務化によって「有害なコンテンツはだめだよね」ということで、通信事業者さんに対して何ら意思表示をしないと原則的にフィルタリングの対象になってしまい、一切書き込みができなくなってしまいます。当会議でも、コンテンツ立国、コンテンツ大国及び1億総クリエーター時代・デジタル表現力という言葉等が何度も出てきていますが、フィルタリングサービスの原則化によって、その中でも最も活発に行われている領域を萎縮させてしまう、あるいは衰退、むしろなくなってしまうかもしれないような危機にあるという認識を持って頂き、ぜひこの会議から発言をしていただきたいと思っております。ついては明示的にこの案に書いていただきたいということをお願いする次第です。
 ありがとうございました。

○久保利座長 ありがとうございました。
 里中委員、そろそろ退席されるご予定のようですけれども、何かご発言がございましたらどうぞ。

○里中委員 じゃ、一言だけ、すみません。
 この中で、今、国立国会図書館でのデジタル化というのは、貴重な本とか、過去の著作権が切れたものということで限定されているようではありますが、やはり図書館の中で権利制限が行われている。そのことと引き合わせて、これは慎重に見ていかないと、今後図書館サービス──もちろん積極的に今後デジタル化ですべての図書館の持っている蔵書がデジタル化されて、お互いの図書館同士で共有できるというのはとてもすばらしいことだとは思うんですが、それは著作者にとっては非常に苦しい側面もあります。やはり国の力で、図書館において本の購入の時点で上乗せするなり何なり、何らかの著作者、版元への見返りという制度がなされた上で推進するという、ちょっと将来的なことですが、今は貴重本、昔の本だけをしていくということになっておりますが、加速度的にこういうことが実行されますと、利用者のほうは図書館の本をデジタル上で見るのも当たり前。それにも権利制限がかかったままですと、それこそ創作者、あるいは、一般の人に見せる私たちの場合ですと、創作者を支える版元とかネット配信サービスとか、そういうところの前向きな姿勢を萎縮させることになると思いますし、また、若者たちが創作はお金にならないと思っちゃうと、ちょっと寂しい面もありますので、やはり幅広くいろいろな可能性を求めて議論して決定していただきたいと思います。よろしくお願いします。

○久保利座長 わかりました。1点だけ座長から質問で、この席で多分恐らくたった一人のプロのクリエーターではないかと思うのですが、今の1億クリエーター論という、このあたりについて何か一言ございましたら。

○里中委員 1億クリエーターという考え方は大変すばらしいですし、これは本当に素人とプロの差はなく、だれがどんなすばらしい創作物を世に出すかわからないので、発表の場がふえるというのは大変いいんですが、恐らく皆さんがお考えになっているのは、プロの創作者というのは大変楽な環境で創作活動をしているんじゃないかという誤解があるようですので、実は私ども、クリエーターだからといって税制上の優遇措置も何もありません。事業所扱いで、創作のために必要な必要経費すら、非常に何かぎくしゃくとした税法上の縛りの中で苦しい思いをしております。それでも創作したいからやっているという人が多いのであって、世間的には決して恵まれた環境ではありません。ごく一部の、今脚光を浴びている方でも、膨大な税金を納めるために、一度ヒットしてしまうと休む暇なく毎年働かないと予定納税が納められないという、それでクリエーターはみんな短命ということになっております。私もいつまで生きられるかわかりません。漫画家は60歳が一つの山と言われておりまして、今、戦々恐々として健康管理に気を使っておりますが、コンテンツ大国になるためには、税法上の創作にかかわる費用をどこまで認めるかという、これは全然この場とは違う話になるかもしれませんが、その辺、もう少し風通しのいい、取材費として認めていただける範囲──瑣末な話になりましてすみません。本当に1億総クリエーターはいいんですが、1億の人が憧れるほど楽な現場ではないということを踏まえて、ご協力よろしくお願いいたします。

○久保利座長 ありがとうございました。
 それ以外の方でご発言のご希望は。

○重延委員 重延でございます。
 まず、今回の方針は、ほとんど私としては核心を突いてよい方向に向かっていると思っております。1つだけ言えば、いきなり最初のページに「既存メディアが停滞し」と書いてあるのは、停滞じゃなくて環境の変化だと思うんですね。放送では、レギュラー的に同じ視聴者を押さえていくことはなかなか難しい時代ですけれども、単発的には、スポーツや社会的事件を含めて一挙に国民的な視聴をとるということもありますので、「環境の変化」ということではないかなと思います。
 こういう方針について、いつもすばらしい試みもあるなと思いつつ、私は、昨年から「動く」ということをテーマにしておりまして、方針をどう動かせばいいのかということが本当に重要な時代になっていると思います。昨年度については、私は、JAPAN国際コンテンツ・フェスティバルのエグゼクティブプロデューサーを務めました。非常によい経験だったのですが、経験で終わらせちゃいけないんですけれども、よいこと、それから難しいことがよくわかりました。1年目はコンテンツ産業全体が同じ方向で集まってみるということが限度で、それはできたと思います。ただ、目的は何なのか、その効果は何なのか、国際的であったかというご批判に関しては、これが2年目の課題でありまして、2月の実行委員会で私が次のエグゼクティブプロデューサーに推薦された場合ですけれども、私としてはお引き受けする方向で、私の個人の私案というものを出しておりまして、多少それを今日の意見として短く言わせていただければと思います。
 1つは、コンテンツの概念という和田委員のお話もあったんですが、よく非常に拡散的で統一性がないという話がきたのですが、「いいえ、私はコンテンツは拡散します」と発言をしています。拡散でいいんだと。それを総合的、統合的に考えていくのがコンテンツであって、決して制限をしたり統一をしたりする気はありませんということです。今はオフィシャルイベント、パートナーイベント、フレンドシップイベントという3種のイベント構想を持っておりますけれども、そのフレンドシップの中には、食文化からデザインから、あるいはファッションからというコンテンツ環境をいろいろな形で広げていくという形でいい。そういう意味では拡散していって総合的に動くもの、それがコンテンツの概念に近いものではないかという考えを打ち出したいと申し上げております。
 それから、国際性に関しては、確かにエネルギーと人材の限度がありましてできなかったことがあるけれども、やはり海外の方が喜んで来ていただける国でありたいし、フェスティバルでありたいし、やはりそこでよいものを見せられる、コンテンツをご紹介できる、あるいは日本のすばらしい才能があるということは事実でございますので、それを見せる契機をつくるということでやっていきたい。そのためのオリジナリティーをしっかりと広報していきたいという方針を出すつもりでございます。
 後で、そのオリジナリティーについてはもっと深く申し上げますが、3つ目はマーケットが成立したか。マーケットというものは短い時間に成立するものではありません。継続して、例えば数カ月前から話していたものがそこで成立したり、そこで出会ったものが数カ月後に成立する、そういうものであって、「交流である」という考えですから、そう性急に結果を課しても無理です。むしろ広い意味でのマーケットであるというぐあいに考えて、あるいはインターネットを通じてそれから流れていくというようなことだと思います。ただ、デジタルコンテンツに関しては、私も概念が非常に難しくございまして、ある意味ではデジタルコンテンツはコンテンツ産業にイコールではないということも、どちらかといえばインフラへの効果、あるいは広告産業の貢献ということがあるんですけれども、イコールでない部分も多々ありますのて、イコールコンテンツ産業ということではないかもしれないということを慎重に考えながら、未来的に考えたいということです。
 先ほど、オリジナリティーということを申し上げました。ことしは私の本当の私案という形で言っていますのは、先ほど久保委員の中にもあったんですけれども、人間が大切にするもの、そういうフェスティバルにしていきたいということなんです。その中には、もちろん人間が有意義にあり得るとともに、環境とか福祉とか医療とか教育とか、そして文化ですね。こういうものをすべて含めて、その視線を持ったフェスティバルにしたいと本当に思っています。実はいろいろなフェスティバルがございますけれども、こういう精神をうたっているフェスティバルは世界にない。オリジナルである。しかも日本的である。日本が発信するにはいい。それから、他国のことは申し上げられませんが、これから同じようなフェスティバルを企画されているものが幾つかあるけれども、そこは本当に表層と利益のフェスティバルです。その前に日本から、やはり社会を考える、人間の視線を持ったフェスティバルが目的にあると言ってしまうことによって、私は10年先を見越した一つの新しいフェスティバルができ、日本らしいとか、それを日本の魅力とし、才能ある日本ですから、日本って魅力があるな、才能があるなと思わせることが、実はこういうフェスティバルが契機になって、次第次第に日本に意味や価値が出てくる。そういう日本でありたいという考えを持ち始めて提案をし始めています。

○久保利座長 ありがとうございました。
 浜野委員、お願いします。

○浜野委員 国にやっていただきたいことに限定して3つ言いたいと思います。
 1番目は全体的な見直しをしていただきたいということです。これまでのコンテンツにかかわる法体系や制度は、表現や流通の技術には大きな資本が要った時代につくられたもので、現状では表現や流通の技術はすべての人に開放されておりますので、いろいろなそごが出てきていると思います。
 身近かな例では、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)は授業を全部インターネットで流すと発表しましたが、日本の大学はできない事情があります。もちろん魅力的な授業は日本の大学でもいっぱいあり、重要なコンテンツです。アメリカはフェアユースがあるので、例えば日本の研究者のデータや写真をそのまま使っても何の問題もありませんが、日本の現行法でやりますと、MITのデータの図表を使うにしても一々許諾を得ないと、下手をすればMITの先生に訴えられることもあって、怖くてできない。現制度ではやりたくてもできないということがたきさんあり、全体的に見直していただきたいと思います。
 2番目はグローバルマーケットの件ですが、幾つかの国の若者はコンテンツに対価を払う気分がなくなりつつあるのではないかということです。ある音楽産業のアジア担当の方に聞いたら、「海賊版とか違法配信を阻止できると思いますか」とあきらめぎみで、実演でしかもうけられないっていて、時代が逆行したようないうような感じになっています。民間レベルでは違法市場への対処はもとても無理だし、一国でも無理です。「クレヨンしんちゃん」の登録商標の問題も一向に何か進んでいないような感じですので、国際的なコンテンツのルールをぜひ日本が先導してやっていただきたいと思います。
 3番目は、和田さんの国の姿勢に対する危惧と関係しています。報告書の文中に、こう書かれています。世界じゅうのクリエーターの目標になる。これは大事なことで、こう書かれていること自体はうれしく思ったんですが、しかし、映画や漫画、アニメーション、ゲームについて、総合的なミュージアムもなければアーカイブも完備されていない。2005年にフランスのレジオンドヌール勲章を大友克洋さんが、2006年には宮本茂さんももらわれたんですが、日本では、どうなんでしょうかということです。さらにレジオンドヌール勲章を取るだろうといわれている日本人の名前があがっていて、常に後手後手になっています。政府がコンテンツ産業に目配りをして、重要な産業だと思っていてくださっても、態度じゃなくて行動で示さないと伝わらなくて、政府への危惧が出ても当然だと思います。以上3点です。

○久保利座長 ありがとうございました。
 じゃ、角川委員、お願いします。

○角川委員 今の浜野先生の全体的な見直しを求める意見に本当に賛成です。私たちも、数年かけてこの知財活動をやってきて、現在第2期ですが、これを第3期につなげていくという中にあって、1期でやったことの見直し・評価を、我々自身でやはりやってみる必要があるんじゃないかと思います。そうすることで先ほどの三尾さんのご指摘のようなお金がついていないのではないかという話等、これは本当に最初から出ていることですから、重複した議論が避けられるのではないかという気がします。
 そういう点で、例えば人材の育成ということも、最初の年から出ていましたが、ここ数年、色々な大学に映画科ができてきて、あるいはまた漫画科、コミック科みたいなものもできてきております。そういうものを一回どの大学で何を行っているのか、どれだけの人達を送り出しているのか等、例えば東大でも早稲田でも慶應でも立教でもやっていることを、ヒアリング、精査する必要があると思います。芸大の映画科から早くも昨年城戸脚本賞を受賞する作家が生まれてきています。また、専門学校からも、アニメだとかライトノベルズの作家等がかなり生まれてきているという成果も見られます。こういうことを検証していくと、知財がやはり人材育成に貢献していることがわかると思います。それからまた、大学がそういうことを始めていることに対して、国がもう一回どういう支援をしたらいいのかを考える基礎になると思います。繰り返しになりますが、知財あるいは文部省で調査するようにしていただけたら、この人材の育成ということに対してそれなりに成果も見えてくるし、しなければいけない課題もまた見えてくるのではないかと思います。
 それから、やはり我々、知財がやるべきこととしては、コンテンツの創造力、基本的な資質づくりについて民間企業が中心となってやるべきとしても、国としてできること、制度の支援ということが挙げられます。
 それから、この知財がしなければいけないことに、IT企業の育成ということがあります。現在アメリカ中心のクラウドコンピューティング時代に於いて、日本でどうやったらクラウドコンピューティングの企業を育成することができるのかと思うのです。例えば、アップルのジョブスという人は、技術とハードとソフトウエアとサービスを一体化させたビジネスを作ることができる人なのですけれども、アップルだからできるということではなくて、日本でもやればできるのではないかと思います。物づくりではすぐれている強みを生かしつつ、それからソフトウエアとサービスとの、特にサービスですね、一体的に開発・育成を進めることにより、恐らく産業規模として大きな数字になっていくと思います。
 又、本日お話にでております国が行うべきことは何かということなのですが、なかなか大変なことなので、すぐに出来るとは思えませんが、国が行うコンテンツ産業の育成の為の横断的な機能を一つの組織として固められないかなということを感じています。例えば、法律や制度面に関しても、インターネットの対応ということになると非常に総務省的になりますし、産業育成となると経産省的ですし、著作権制度となると文化庁的ということになります。これは知財本部をレベルアップしていくということで解決していけるのか、もう少しどこか別の組織で一本化していくべきなのか、考えていく必要があると思います。例えば先ほどお話が出ました国際コンテンツ・フェスティバル(通称コフェスタ)についても、今、経産省が中心となっていますが、さらに文化庁や総務省が支援していく上でどんな形が望ましいのか。そうすると、経産省がやってくれているコフェスタですけれども、もっと高いレベルで何かやるということが本当は必要なのではないかということもあるかもしれません。このような意見は今回の「知財推進計画2008」への各団体へのヒアリングを行う中でも、映連から出ています。つまりVIPOのあり方ということで語られているテーマと重なっているように思います。
 それから、もう一つ難しいことだと思っているのは、先ほど南場さんからも出ていたフィルタリングの話にもつながるのですが、私は、そろそろこの知財本部からネットの匿名性のうそというのを表現していいのではないかなあと思っています。日本人は1億数千万人おりますが、2ちゃんねるの話でも、結局キャリアとISPが協力すると全部名前はわかるのです。インターネットで匿名性だ、匿名性だと言っていますが、P2Pの違反についても摘発できるわけです。デジタルというのはかえって消せないのですよね。それなのに匿名性だと言うものですから、悪いことをして良いのではないかなというふうに出てしまうのだと思います。実際、やっている人たちも、匿名性って本当かなと思いながら、皆が匿名性だ、自由にできると言うから、何か甘えちゃうのですね。でも、実際に自由主義社会でもインターネットは匿名であるはずはないということをもう表現していいのではないかと思います。
 そういう環境の中で、ハードメーカーはデジタルを前提にした課金システムが構築できるはずです。そうなれば、今問題になっている私的録画・録音補償金制度の見直しも、そのときまでの暫定的継承ということになっていくと思います。つまり、そういう広く、安く、あまねく課金できるシステムがあれば、コンテンツをつくった一人一人の権利を守れるし、また、責任ある消費者の皆さんも、それなりの対価を払ってくれると思います。もうそろそろ国としてそういうシステムがあるべきではないかと発言しても良いのではないかと思いました。

○久保利座長 ありがとうございました。
 廣瀬委員、お願いします。

○廣瀬委員 二、三、コメントさせていただきます。
 まず、この報告書を見せていただきまして、2つの点で今までになかったことがクローズアップされていると思っておりまして、多分それがこれから次のステップに進むポイントではないかと思います。
 1つは、何カ所もビジネスモデルという話が出てまいります。まさにご指摘のように、新しい環境、あるいは新しいコンテンツの中の環境で、どんなふうにビジネスが成り立つのかというところがポイントでして、従来の議論の中では権利と規制の話でございましたけれども、それが一歩進んだポイントかなというふうに見ております。
 それから、もう一つ、似たような言葉で市場という言葉が出てきますね。多分、どういう市場を形成するかということが、今我々が議論しております幾つかの問題を解いてくれるだろうと。そうすると、市場を設計するというところは、多分民だけではできないところで、かなり政府も絡んでの分野ではないかと思います。そういう意味では政府にお願いすることは、どういう場をつくるか。例えば市場もそうですし、それから先ほど中村さんがおっしゃったユビキタス特区ということですね。私は多分役割は場の提供であろうと、そういうふうに思っております。特に現場のビジネスをやっている立場から申しますと、いろいろなところが異なる省庁に絡んでおります。その異なる省庁が絡んでいるところを共通部分をまとめていただくというところに、次に進むときのスピードが上がるんではないかと思います。
 それから、久保委員のお話、あるいは浜野委員のお話の中に、実はパイラシーの件が出てきております。かなり深刻な話でして、久保委員のお話の中にはアニメのお話が出ておりますが、アニメのテレビ番組が減ってきているということは、アニメをつくる意欲がもうそがれてきておるわけですね。同じことが音楽の世界にもありまして、実は、どんなふうな状況が起きているかと申しますと、昨年のシングルCDのヒットのトップテンの中で新たに出てきたアーチストはおりません。それは非常に深刻なことで、どうしてかと申しますと、新たなアーチストは基本的には若いアーチストなんですね。昔の人がカムバックしてくるケースはあるんです。ところが、若い新しいアーチストが出てきていないということは、若い新しいアーチストをターゲットにしたマーケットで商品をつくる意味がビジネス的になくなった。コンテンツ的にはあっても、もはやビジネスにならない。
 その背景は何かと申しますと、実は、大体携帯ダウンロードの売り上げは七、八百億になってまいりまして、日本は非常に特殊なケースで、その9割が携帯のダウンロードなんです。実はここから先は推測でしかならないので、正確な数字はとれませんのでおよその推測なんですが、昨年はほぼ正規ダウンロードと同じだけの正規ではないダウンロードが実際はなされただろうと思われています。したがって、金額的には七、八百億円に相当するところになっています。先ほど申しましたように9割が携帯のマーケットでございますから、その9割の携帯マーケットの主なユーザーはだれかと申しますと、ハイティーンからロートウェンティーのところなんですね。そこのところは、したがってビジネスにならんわけですね。そうすると、先ほどの久保委員のお話のように、もうアニメの番組はつくれなくなった、あるいはつくらなくなったと同じように、もう我々もハイティーンからロートウェンティーのところのマーケットをターゲットにしたポップスはつくらなくなりつつあるわけですね。となるとどうなるかというと、その年齢がどんどん上がってまいりますと、新しい音楽はつくらなくなってくるんですね。
 翻って、じゃ、海外はどうなっているかと申しますと、例えばアメリカのマーケットなんかを見ますと、実はもはやCDショップはないんですけれども、本屋さんがCDを一緒に売っております。売っておりますCDの大半は、過去のカタログ製品のつくり直しなんです。新しいアーチストは出てこない、デビューできないんですね。したがって、先ほどの議論の中に幾つかありましたけれども、新しいアーチストが自分を発揮する場をどうやってつくっていくか。今まではテレビのアニメ番組であったし、あるいはCDであったわけですね。それが大きな出口がなくなりつつあるときに、どういう場をつくるかというところが大きな問題だと思いますのと、現在のハイティーンは10年たてば20代後半になってまいりますから、ですからどんどんそういう意味ではコンテンツのビジネスとしてのマーケットが狭まっていくという状況でございます。
 じゃ、それに対して一体どうしているのかと申しますと、先ほどフィルタリングのお話がございましたけれども、何でもかんでもフィルタリングすることの危険というのは、もうだれも承知していることで、必ずしもフィルタリングが解決策にはならんわけですね。レコード業界では、したがって、ポジティブリストという発想だと思いますが、適正マークをサイトにつけていただこうと。ですから、どのサイトが適正マークをつけてくださったかというのはレコード業界全体としてわかっているわけですね。それによって、少なくともポジティブなアピールはしていこうと。ネガティブなものと思われるものをはじいてしまうのではなくて、したがって、フィルタリングの議論の中でいろいろあると思いますが、従来、非常にネガティブリストの発想が強いんですが、ポジティブリストという発想を入れることによって、完璧な状況ではなくとも対処する手は出てくるんではないかなというふうに思っております。
 最後に、ビジネスモデルのところは、私はビジネスをやっておりますので非常に関心があるんですが、残念ながらネット上でのコンテンツが動いている場はほとんど海外、特にアメリカのベンチャーがつくり出したモデルでございます。YouTubeにしましてもMySpaceにつきましてもそういうモデルですね。我々、危惧しておりますのは、従来はオペレーティングシステムがほとんど独占されました。今、マーケットを動かす場がソフトウエアとして独占されつつある。先ほど、日本でもできるはずだろうと角川委員もおっしゃっていましたけれども、まさにそうだと思いますね。今回はオペレーティングシステムよりももっと危険なのは、YouTubeならYouTube、MySpaceならMySpaceの場にアップロードされたコンテンツはどこへ行くかというと、YouTubeのサーバーに行くわけですね。YouTubeのサーバーはどこにあるかというと海外にあるわけですね。そうすると、そのコンテンツに対する知的財産の取り扱い、著作権の扱いは、そのサーバーのあるところの法律が適用されます。そういう意味では、実は何十年前か、飛行場のハブの議論があったと思いますけれども、やはりコンテンツのハブということを考えますと、それを扱うソフトウエアをやはり我々のソフトウエアにしていく、そういうサービスを提供するというようなことをどうやってやっていくかというのが、これからの大きな課題ではないかと思っております。

○久保利座長 ありがとうございました。
 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 今回の報告書案は、課題をきちんと整理して基本戦略、具体的な取り組みの方向性が明確に示されたということで、座長並びに事務局のご努力に感謝したいと思います。しかし、この実現にはたくさんのハードルがあると思います。関係者の努力はもとより、やはり国の関与の必要な部分も大きいのではないかと思っております。
 先ほど和田委員が金融の20年前のことに言及されたんですが、私は30年前から金融の世界をずっと取材しておりましたので、金融の失敗は繰り返してはならないということは同感に思います。20年前に自由化のゴングが鳴って、それがうまくいかなかったのは、やはり既得権を持っている業界、金融でいうと銀行、証券、保険業界が融合を嫌がったこと、それから縦割り行政、省益にこだわる官僚の方々がいらして法制の横断化ができなかったということがあったわけなんですね。20年前に金融ビッグバンという形で大人の決断をした英国は、たそがれの国から立ち直って今の現状を見ていただければわかるとおりなんですけれども、激変緩和という四文字熟語でゆっくり進めた日本の金融は今の状況になっている。慌てたのが10年前でございまして、ビッグバンで何とかしようと、法制の整備に取り組んだんですけれども、これもご存じのとおり、金融商品取引法という横断法制の制定の施行に10年以上かかっております。放送・通信の融合を標榜する情報通信の分野が、今、金融の10年前の段階にあると私は思います。10年かけちゃいけないんですね。ですので、抜本的な対策をとることのコンセンサスができたわけですから、金融の轍を踏まないように、既得権を守ろうとされている──名指しすると放送業界を中心に幾つかあると思うんですけれども、やはり意識改革、大人の行動というのを求めたいと思います。
 知財の法制のこともいろいろ書いていただいているんですけれども、11ページに情報通信分野でのマルチユースに対応した法整備や契約ルール、こういったところの未整備の問題が上げてございます。情報通信法でしょうか、国にそういった法制の取り組みとか、具体的なガイドラインあたりまでなるべく早く詰めていただきたいと思っております。
 それから、金融の分野では、この10年で法制化はできたんですけれども、人材育成を行わなかったために、プロの人材が日本にいない状況になってきております。今、非常に慌てているわけですけれども、海外人材を大量に呼び込まなければいけない状況になっております。コンテンツの世界も、今聞いたお話でも海外コンテンツがふえてきているということです。デジタルコンテンツの流通促進の委員会にも出ておりますけれども、そこでも気がついたら日本のコンテンツが少ないという時代になるかもしれないということが言われております。けさもニュースで、映画の世界でも、洋画が邦画を逆転したと言ってました。その辺も十分に考えなければいけないのではないかと思います。
 それで、やはり放送を名指しして大変恐縮なんですが、最近、朝日新聞──新聞業界が放送のことをここまで書くというのも、やはり危機感があったのではないかというふうに思うんですけれども、「テレビはどこへ」という見出しで、コマーシャル源が気がかりで、ネット配信などコンテンツの2次利用に民放が及び腰であるというふうに書かれていました。ここのところをやはり変えていくための努力が必要で、放送局さんが自主的にできないのであれば、やはり国が関与して、いい形の競争を促進していただきたいと思います。放送局は巨大な力を持っていらっしゃるので、ここに制作者たちが対抗していくというのは非常に難しい。制作者の方々はマルチウインドーで展開したいと思っても、実際にはウインドーコントロールによってテレビを中心に考えざるを得ない今の状況は変えていくべきだと思っております。
 それから、もう一つは、やはり人材育成とも絡みますが、今回の15ページに、世界じゅうのクリエーターの目標となる創作環境を整備するというふうなまとめになっておりまして、この整備はまさに国の仕事の部分が大きいのではないかというふうに思います。下請取引の適正化のことが書いてありますけれども、ここには違反行為の厳しい取り締まりを徹底することに加え、第三者の仲裁、あっせんによる裁判以外の紛争解決、ADR手段を取り入れるというふうになっているんですけれども、制作者の方々にもいろいろお話を伺っても、なかなか訴えるところまでいかないという非常に悩ましい問題があるんだと思います。放送コンテンツ等の制作者の役割の重要性は非常に高まっているわけなので、そういう制作のインセンティブの向上が図られるように下請取引のガイドラインを早くつくるとか、やはり日常的に違反の監視、それから仲裁等々にも取り組むという国の姿勢が必要なのではないかなと思っています。
 最後に、長くなりましたけれども、やはりコンテンツの取引市場の育成、これに関しても、今、民民のトライアルということで進んでいるものの、なかなか大きな課題があると伺っております。また金融の話をしますと、私は東京証券取引所にも関与しているんですが、やはり東証がなくなったら、日本の企業、国民は非常に困るんだと思います。ところが、コンテンツにおいては取引市場さえないという状況です。日本がグローバル展開するときに、海外の取引市場を使えばいいじゃないかということにはならないと思うんですね。ですから、取引市場の形成も重要な課題だと思っています。これについても関係者及び国の姿勢をきちんと示す必要があると思っております。
 以上です。

○久保利座長 名指しがありましたけれども、名札をお立てになった順番で、木村委員のほうからまずやっていただいて、その後で村上委員、お願いします。

○木村委員 木村でございます。
 報告書全般、本当に包括的によくまとまっていると思うのですけれども、皆さんおっしゃっているとおり、ここの基本戦略の4つですか、これをいかにアグレッシブに、それからやはりスピード感を持って本当にしていくかということなのだと思うのです。その過程でいろいろなさらなる問題というのもアイデンティファイされるのだと思いますし、やはりいかに早くやるかということが、全体の競争力を本当に持てるかどうかということのかなりの部分をやはり制するのではないかというように思います。
 少し細かい点にはなってしまうと思うのですけれども、基本戦略の1のところにも出てきましたが、私どもがアメリカでやっていることの紹介ということで、ソニー・ピクチャーズが1年半ほど前にGrouperというネットの投稿サイトを買い入れしまして、現在そこを運営しているのですけれども、名前を半年ほど前にCrackleという形にして、ユーザーがつくったコンテンツを集めてくるのですけれども、我々、今チャレンジをしているのは、どちらかというとプロへの登竜門といいますか、新しい才能を発掘するためのサイトとしての運営というのをやっております。そこから出てきたものにどういうインセンティブを与えるかということで、一般の方の反応を見たり、あるいはスタジオの人たちが評価をやったりして、そういう中から出てきたものでいいものに対してリソースを供給するとか、あるいはパートナーとの結びつきができる場をつくるとか、あるいは資金的な援助を試みるとか、まだまだチャレンジなのですけれども、こういうことを実はやっているのです。そこから何か出てきたかというとまだまだなのですけれども、そういう新しい、そこにスポンサーをつけるということも含めて、ビジネスとして全体にそういうものが回らないかというチャレンジをやっております。やはりそういうまだまだ確定できないビジネスモデルがあるわけですから、いろいろなチャレンジがダイナミックに動き出すような環境というのはやはり一番必要だと思うのです。
 それで、フィルタリングの話とかも今日出ていたので、実はそこのサイトで、私ども、フィルタリングを現実に使っておりまして、まだまだ動画に関してはできていないのですけれども、いわゆる音楽の部分に関してはフィルタリングの技術をトライといいますか、実際に使い始めています。もちろん著作権上の問題があるものをそれでもってフィルタリングして落としていくというようなことをプライマリーにやるわけですけれども、やはり幾つかここでも議論が出ておりましたが、むしろそれをポジティブに使うという方向で、そういったものを見つけて、許諾、許諾から課金というようなスパイラルにいくような形というのを試行錯誤してはどうかと思っているんですね。
 ちょっと申し上げたいのは、そういうところにいろいろな技術が使われるわけですけれども、この技術というのもなかなか当然完成したものではなくて、先ほどもフィルタリングでいい面と悪い面という議論がございましたけれども、ただ、そういういろいろな場でこういう技術を使い込んでいって、技術そのものをインプルーブさせていくということがどんどんできないと、やはり新しいものが見つけられないということだと私は思っておりまして、完全なものがあるわけではないのですけれども、むしろそこから次のこういう技術を我々が日本として持つとか、日本発信のものができるとか、あるいは技術そのものはどこからか持ってきても、それをどう使うかというような仕組みに技術をインプルーブしていくかとか、そういう少し先に行けるような開発とか技術投資というところに、全体が向くようなプッシュを仕組みとして何かできればいいんじゃないかと思います。
 最後の基本戦略の4のところに1億総クリエーターというお話がございましたけれども、たしかここでも議論が過去何回かあったと思うのですけれども、1つは、やはりツールですよね。コンテンツをつくるツールというものを、本当にこれだけのすばらしいコンテンツを持っている国から発信できないのか。そういうツールが現実にいろいろなところでいろいろな試みがされていますから、そういう技術としてのツールというようなところを持っていくことによって、何か新しいビジネスモデルを試行錯誤するという動きを物凄く活性化できるような形があると、全体的に元気が出てくるんじゃないかなというふうに私は思っております。

○久保利座長 お待たせしました。では、村上委員、お願いします。

○村上委員 このワーキンググループでは、大体毎回高橋委員のほうからいろいろ放送側にご意見をいただきまして、私がそれに反論するという構図がずっと続いておりまして、今回もそういう感じだなというふうに思っておりますが、ぜひ皆様方にはこの構図をよくご理解していただいたまま、いろいろお考えいただければと思っています。
 今日は、そのような話にちょっとつながる部分もあるんですけれども、まず今回の取りまとめについて、私としては基本的には異存はございません。ただ、いよいよ最終まとめというところに入るわけなので、あえて放送局の立場から、改めてちょっと皆様方にご理解をしていただきたいということで、放送番組の特性について、最後にもう一回申し上げさせていただきたいと思っています。
 放送番組が映像コンテンツ、あるいは動画ということで、この取りまとめの中でも、例えば映画と同列に取り扱われているという感じがちょっとあるわけなんですけれども、実はマルチユースの観点から言うと、映画とは放送番組はかなり異なる点がございます。その一番のポイントは、やはり放送というのがメディアであるということなんですね。いわゆる情報メディア。ですから、ドラマだとかバラエティーなどのエンターテインメントを提供するだけではなくて、いわゆる速報性とか即時性を特徴とする情報メディアである。したがって、放送番組というのはマルチユースが可能なコンテンツばかりではございませんで、ただ1回の放送を目的として制作されるものも多いわけです。当然1日の我々のタイムテーブルにおきましても、ニュースとか情報番組などの生放送番組が実は50%以上を占めておりまして、これ、我々はいわゆる生物(ナマモノ)というわけですけれども、これらのコンテンツは当然2次利用の機会も限られている。マルチユースを前提として制作される映画とは違いまして、テレビの場合には、放送された数多くの番組の中から2次利用の可能なもの、それに適したものを取捨選択していくということも実は必要になっているということでございます。
 したがいまして、制度面においても、こうした放送の特性を踏まえた対応が図られておるわけでございます。著作権法において、いわゆる放送のための一時固定という規定がございますが、これも放送サービスが円滑に行われることを目的としたものだと思っております。また、権利処理の枠組みに関して申し上げますと、例えば音楽の放送利用については、我々、JASRACと包括契約というのを結んでおりまして、ほとんどの楽曲については一々個別の許諾を必要としないという形になっておるわけですけれども、しかし、放送番組をDVD化しましたり、それから、特に海外に販売したりする際に、外国音楽が個別に権利元と、しかも大体海外の権利元を探して交渉する。その許諾を得なければならない。また、許諾料は収入に比して非常に高額なものとなるという事情がございます。放送番組というのは、このように本来の目的でございます放送サービスが円滑に行われて、幅広い視聴者が多様なコンテンツを楽しんでいただけるという枠組みがある一方で、放送後の二次利用については、映画と違いまして非常に特有の課題が実は存在しているということを改めて申し上げたいと思います。無論、それらの諸課題は解決しなければいけないことですし、これは毎度申し上げておりますけれども、我々は放送コンテンツのマルチユースの可能性を最大限に開発することについては全力を挙げて取り組んでいるというところでございます。そのためにも、この取りまとめに示されておりますような環境整備が進むということを強く期待しております。
 先ほどからも皆様方、ずっとお話が出ております海賊版の問題でございますが、正直、動画投稿サイトで放送局のいろいろなコンテンツが無許可で配信されておりまして、我々も削除要請、これはNHKさんとご一緒に繰り返しておりますけれども、正直まだ有効な対策が講じられておりません。こうしたサービスにおける権利侵害を未然に阻止するための適切な対応が図られるよう、改めて皆様方とともにもう一度、この制度面の対応をお願いしたいと思っております。特に取りまとめにおいて、コンテンツ産業のグローバル化が提言されておりますけれども、海外にコンテンツを販売しようとしましても、もう既に違法な配信事業が横行したりしていてはビジネスとして成立しないわけでございます。コンテンツの取引市場を拡大していくためには、権利が適切に保護されていることが何といっても不可欠ですので、ぜひとも実効性のある制度整備を進めていただきたいと思っております。
 それから、最後に、先ほど三尾委員のほうから、放送枠を開放するというようなことはできないのかというお話がございました。実は今、まだこれは試みでございますけれども、一般からある放送枠についての番組を公募するという取り組みが行われておりまして、今月の半ばまで公募をしております。まだこれは実験的なところですけれども、そういう取り組みが始まったということは、ちょっとここでご報告をさせていただきます。
 以上でございます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 佐藤本部員、まだご発言がありませんので。

○佐藤本部員 今日のお話を伺っていて、今日のこの取りまとめの方向は、今までの議論を総括した形でできてよかったなと思っております。ただ、できたものを見ると、特別目新しいことはないんじゃないかという感想でございます。そういう意味では現状を表現したというところにとどまっていますので、さらに進むためには、今日ご議論があったような細かい部分をしっかりしていく必要があるんじゃないかなと思っています。
 私は、産業財産権のほうの立場で、競争力の専門調査会のほうの動きと比較して見ますと、このコンテンツの問題というのは文化の問題と産業の問題と2つあると思うんですが、産業的な面から見ると、やはり今、ビジネスモデルということが非常に重要視されています。今まで知的財産に関しては創造、保護、活用という知的創造サイクルを中心に政策検討をやってきたわけですけれども、やはり市場につながらなければいいものをつくっても意味がないということが、はっきりここの5年間でわかってきたということだと思います。そういう意味で、今回のこの取りまとめの中でもビジネスモデルということが打ち出されているわけですけれども、これをどうしていくかということが一番大きな問題だろうと思います。
 iPodにしても、ハードウエアそのものは今まであったものをつくっただけ、ネットワークも既にある、サービスするコンテンツもあった。それをビジネスモデル化したことによって、ああいう世界制覇できるようなビジネスができるようになった。これをこれから我々は日本でつくっていくのにどうしたらいいかということだろうと思うんですね。その中で、最近ご案内のとおり、日経が言っていますように、京セラさんが中国の携帯事業から撤退した。これで中国から日本の携帯メーカーは全部撤退した。技術的にトップであるにもかかわらず、何で撤退しなければならなかったのか。やはりこれはビジネスモデルの失敗だと私は思っています。そういう意味で、コンテンツにおいても、やはり国際競争力を持つためには、国際的に勝てるビジネスモデルをどうやってつくっていくか。そのためには国はどういうことを支援し、どういう環境整備をすればいいかということをやはり考えていくのが一番重要かなと思います。
 それから、最近我々、産業財産権関係で言っているんですけれども、いいものがすべてではない。どうしても特許の世界というのは、世界一が特許なんですね。したがって、オリンピックゲームで世界一で強い人は一番偉いみたいになるんですけれども、実際の産業界において知的財産というのは、やはりユーザーが求めて魅力があるもの、それが商売になるということだろうということがわかってきた。そういう意味では、ビジネスモデルの中で、日本が強い、すぐれているというだけではなくて、やはり本当に市場の中で支持されるビジネスモデルをどうやってつくっていくかということが、これからの戦略上では一番大きな問題かなと思っております。今日いろいろな方のご意見を伺いまして、いろいろな産業コンテンツの分野別に相当違ってきているということをすごく感じました。競争力専門調査会のほうは、戦略重点4分野別に検討をやりました。それによって分野別に特徴がはっきりしてきたし、課題も明確になってきた。そういう意味では、ここのコンテンツのほうでも、これからそういう分野別の掘り下げた議論をされることによって、もう一回横に広がった議論がつくれるんではないかというようなことを思いましたので、ご検討いただければと思います。

○久保利座長 貴重なご意見ありがとうございました。
 じゃ、三尾委員。もう時間が5分以上過ぎておりますので、手短に、30秒ぐらいで。

○三尾委員 わかりました。
 先ほど村上委員のほうからお話がありました、放送枠の開放の件なんですが、既にトライアルが行われているということは存じ上げているんですけれども、それをパブリックな公の機関、いわば国がサポートする形で、公正でかつ開かれたというか、全体として皆さんに周知していただけるような形で制度としてやっていただきたいというふうに考えます。といいますのは、応募しようとしているものがいろいろなしがらみの中で応募するに躊躇があるというような意見がある。もし自分たちが出して、受ける側がどう考えるんだろうかとか、何かわけのわからない躊躇があるらしいんですね。ですから、そういう無駄な躊躇をさせないために国が全体としてバックアップしていって、非常に公平かつ公共のものであるというような、そういうトライアルの形にしていただきたいというふうに思います。

○久保利座長 ご意見として承りましたけれども、そこまで国が絡むものかどうかは検討させてください。
 今日は本ワーキンググループの検討結果の取りまとめとしての報告書案について検討を行いました。頂戴した意見については、事務局と相談いたしまして、必要に応じて報告書に反映させ、コンテンツ・日本ブランド専門調査会のほうへ報告することとしたいと思います。皆様方には、コンテンツ・日本ブランド専門調査会の場において、もう一度本報告書について検討いただく機会がございますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、予定の時間が過ぎましたので、本日の会合はこれで閉会したいと存じます。
 次回はコンテンツ・日本ブランド専門調査会での議論となります。その専門調査会は3月6日木曜日、午前10時から虎ノ門パストラルホテル、プリムローズで開催する予定でございます。
 今日は、ご多忙のところ、まことにありがとうございました。御礼申し上げます。