首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸
 トップ会議等一覧知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会 [印刷用(PDF)]


コンテンツ専門調査会

企画ワーキンググループ(第1回)議事録


1.日 時:平成18年9月6日(水)10:00〜11:30
2.場 所:霞が関東京會舘エメラルドルーム
3.出席者:【委員】牛尾会長、荒川委員、角川委員、金丸委員、久保委員、國領委員、重延委員、村上委員、依田委員
【事務局】荒井事務局長、藤田次長、吉田次長
4.議 事
(1)開会
(2)企画ワーキンググループの開催について
(3)コンテンツをめぐる課題について
(4)閉会


○牛尾会長 お待たせしました。ただいまから「コンテンツ専門調査会 企画ワーキンググループ」を開催したいと思います。お忙しい中、本ワーキンググループへの参加の御了解をちょうだいし、ありがとうございました。
 今回は、第1回目の会合でありますので、最初に委員の方々を事務局から紹介したいと思います。どうぞ。

○荒井局長 それでは、資料1をごらんいただきたいと思います。委員の御紹介をさせていただきます。
 荒川委員でいらっしゃいます。
 角川委員でいらっしゃいます。
 金丸委員でいらっしゃいます。
 久保委員でいらっしゃいます。
 國領委員でいらっしゃいます。
 重延委員でいらっしゃいます。
 村上委員でいらっしゃいます。
 依田委員でいらっしゃいます。
 なお、岡村委員、久保利委員、原田委員とオブザーバーの中山本部員は、本日御欠席でございます。

○牛尾会長 そういうことで、これから発足して半年ぐらいで会合をまとめてまいりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 2番目の議題に入らせていただきます。まず事務局から「コンテンツをめぐる課題」につきまして説明を受け、その後委員の皆様から御意見をちょうだいします。
 事務局からお願いいたします。

○荒井局長 それでは、資料の御説明に入ります前に、資料2と3についても、ちょっと簡単に説明させていただきます。
 資料2が「コンテンツ専門調査会 企画ワーキンググループの開催について」ということで、開催の趣旨、調査事項、検討体制でございます。
 2ページ目は、このワーキンググループにつきましては、1として、専門調査会は原則として公開する。2として、専門調査会で配付された資料は原則として公開する。3として、参考人を招致することができるというふうになっております。
 資料3、企画ワーキンググループの検討スケジュールでございまして、本日第1回「コンテンツをめぐる課題について」の議論をしていただき、第2回は10月16日、第3回は11月27日を予定してございます。その後、第4回でとりまとめをさせていただくということで、来年2月にはコンテンツ専門調査会全体としての会合を予定しております。必要に応じ、参考人からの意見聴取を行っていただいたらどうかと思っております。
 資料4は「コンテンツをめぐる課題」ということで、第1は「コンテンツへの期待の高まり」、1は「コンテンツ市場規模の拡大」でございますが、経済財政諮問会議の経済成長戦略大綱や経済産業省の新経済成長戦略によれば、2004年のコンテンツの規模が13.6兆円のものが、2015年には18.7兆円に拡大することが期待されております。なお、この伸び率は年率で2.9 %になります。GDP全体がこの間2.2 %の成長を予想しておりますので、全体よりも高い、しかし2.9 %ということでございますから、それほど野心的ではなくみんなで力を合わせてやっていけば実現できる数字ではないかと思っております。
 2は「コンテンツは文化の重要な柱」であります。放送、音楽、映画、ゲーム、アニメなど、非常に重要な柱であり、ソフトパワーとしても外交的にも重要だということであります。
 第2は「時代の背景」でございます。@がデジタル化の加速、Aが国際化の進展、Bが知識社会の到来が進んでおります。
 2ページからは、これまでの間、コンテンツ専門調査会の牛尾会長の下いろいろな御努力によりまして、全体としていろいろ進んできております。コンテンツ促進法が制定されたり、ロードマップが作成されていること。
 2として、業界の近代化・合理化の取組みも進んでおります。
 3として、信託業法の改正もなされております。
 4として、人材育成については、映像産業振興機構(VIPO)やエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークも設立されております。
 5として、海外展開については、東京国際映画祭が強化されたり、CJマークが普及しております。
 6として、IPマルチキャスト放送に関する著作権法改正も近い国会での改正が予定されております。
 7として、制作環境も整備されております。
 3ページ以下は、第4として「残された課題(例示)」、今までの指摘の点ですが、資料5を使いながら説明させていただきたいと思います。資料5「コンテンツをめぐる課題(参考資料)」、2ページ目に「コンテンツ全体の動向」でございますが、デジタル化が加速しておりまして、ブロードバンド化、地上デジタル放送への移行、ユビキタスネットワークの普及が進んでおります。
 3ページ目に、2006年〜2011年の間にもいろいろなコンテンツ市場の環境変化が進んでいくということが示されております。
 4ページ目に、国内市場の動向でございます。国内の市場も徐々に拡大しております。
 5ページ目に、国際比較をしたときに、右側の円グラフにございますが、2000年には日本は世界の11.7%を占めておりましたが、2004年には残念ながら9.8 %まで減少しております。
 もう一点は、海外収支を見たときには輸入超過でございまして、ゲームの輸出が多いんですが、ほかの分野では輸入が多い、更に輸出も減少しているというのが最近の状況でございます。
 6ページ目に、こういう状況の下、コンテンツ促進法が3年経ちましたので見直しをすべきではないかという御意見、新しいロードマップをつくるべきという御意見、業界の皆さんの御協力を得てきちんとしたデータを整備したり、通信と放送、著作権法の在り方に関する検討をしたらどうかという御指摘もいただいております。
 7ページ目に、分野別の動向でございまして、(1)は放送でございます。国内市場が拡大しておりますし、マルチユース市場も拡大しているということで、世界的にも先進7か国のうち平均ぐらいだと思いますので、まだまだ伸びる余地があるのかということでございます。
 8ページ目に、地上波放送につきましては、民放さんの場合には10年前に比べて5,000億円近く拡大しているということでございますが、広告収入が9割ぐらいを占めて、まだまだこれからマルチユースの可能性があるのではないかというのがこの円グラフでございます。
 9ページ目に、メディア別広告市場の動向でございまして、全体はこういう流れになっているということでございます。
 10ページ目に、音楽について、音楽関連市場が1996年をピークに減っているのを、このグラフで示しております。レコード生産も下の表が示しますように減っているということです。
 11ページ目に、著作物の使用料収入を見たときには、音楽CD等のオーディオディスクからの収入がシェアとして減っているわけでございますが、携帯やネットを通じたインタラクティブ配信による収入にシフトしているということでございます。
 12ページ目に、映画でございます。興行収入が増加、2004年には史上最高になり、邦画も41%と増えており、シネマコンプレックスの増加が見られております。
 13ページ目に、映画関係の方もいろいろ鑑賞料金を多様化してお客さんを増やす努力をされておられます。
 14ページ目に、海外市場の問題でございますが、残念ながら輸出については映画は低迷しておりまして、映画の輸出は輸入の10分の1という状況でございます。
 15ページ目に、ゲームの状況でございます。オフラインゲーム、家庭用とかアーケードでのゲームが減る傾向にございまして、代わりにオンラインゲームが増えているということでございます。
 16ページ目に、こういう業界の状況に対して、どのように取り組んでいったらいいかということで、1つは近代化・合理化を更に進めて競争力のあるものにしていただいたらどうかということでございます。番組制作会社の大半は中小企業であって、テレビ放送についても基本的に二次利用の許諾権は放送局に7割ぐらいあるという統計も示されております。
 17ページ目に、アメリカ、イギリス、韓国でも、それぞれ制作を育成するために、従来いろんな手を打って、既にこういうのを廃止している段階にもなっておりますが、各国の努力している例を示してあります。
 18ページ目に、そういう状況で残された課題として御指摘をいただいておりますのは、窓口管理業務の問題など、放送番組の制作委託における課題を解決したらどうかという御指摘や、流通市場やルートを増やしていったらどうかという御指摘もいただいております。
 19ページ目に、実演家の関係でございますが、実演家の活動環境については、契約書が交わされてないのが52%あるとか、治療費の問題、失業問題、あるいは著作権や肖像権の保護とか、いろんな問題が実演家サイドからも御指摘いただいております。
 20ページ目に、そういうことで、映像実演に関する契約のルールをしっかりつくっていったらどうか。これは逆にそういうことをしないと、著作権が集中管理できませんので、二次利用、海外への輸出ができないという問題がございます。
 21ページ目に、資金調達の問題でございます。現在、制作委員会方式が一般的になされている仕組みが示されておりますし、信託とかLLPという制度も始まっているということでございます。
 22ページ目に、コンテンツ分野への信託業への新規参入も促進したらどうかという御指摘もいただいております。
 23ページ目に、人材育成でございます。クリエーターとかプロデューサーの育成の指摘がございますが、コンテンツ関連の教育機関も増加してきております。映像産業振興機構においても、各種の支援事業が行われております。
 24ページ目に、文化庁のメディア芸術祭等においての人材発掘や検証も強化されております。
 25ページ目に、そういうことではございますが、国際的に通用するプロデューサーが足りない、もっと育成すべきだという声がいろいろ聞かれております。そのほか、ここにありますような課題をやって、人材育成すべきだという御指摘をいただいております。
 26ページ目に、中でもエンターテインメント・ロイヤーズ、ハリウッドにいる弁護士ときちんとやるための弁護士が日本に少ないという御指摘もございまして、NPO法人がスタートしております。
 27ページ目に、国際的に通用するエンターテイメント・ロイヤーが必要だということでございます。
 28ページ目に、技術開発でございます。さまざまな研究開発課題が存在しておりまして、標準化や互換性など、いろいろな開発がありますし、コピーワンスの見直しが求められております。
 29ページ目に、課題として高精細デジタルシネマの開発・規格標準化の研究開発をしたらどうか。あるいは、デジタルライツマネージメントの技術を開発したらどうかという御指摘もいただいております。
 30ページ目に、海外展開でございますが、日本の場合には海外への依存が3%ということで、アメリカの17%と比較しても日本はまだまだ海外へ出ていってないという数字が出ておりますが、先ほどお話ししましたように輸入超過の状態が依然続いております。
 31ページ目に、そういうことで企業の皆さんには是非海外でも活躍していただくようにしていただいたらどうかという問題。下から2つ目にございますが、国際カーニバルの開催などもやって、いろいろ日本のコンテンツが海外に出るようにしたらいいということでございます。
 32ページ目に、海賊版対策でございます。非常に海賊版の問題は深刻になっております。日本だけでなく、アメリカもヨーロッパも問題になっているわけですが、東アジアにおいても非常に深刻な状況にあることが表で示してあります。
 33ページ目に、そういうこともありますので、海賊版対策を強化すべきだとか、条約を結ぶべきだ、あるいは無断盗撮の対策を御指摘いただいております。
 34ページ目に、新しいメディアを利用したコンテンツ流通でございますが、音楽配信や映像配信においても、いろいろ新しい動きがございます。35ページにありますが、そういうときには、マルチユースを前提にした契約の徹底をすべきではないかとか、ブロードバンド有料配信によるNHKアーカイブスの活用とか、コピーワンスの問題などユーザーに配慮したプロテクションシステムとか、こういうことを含めて新しいメディアによるコンテンツの流通を促進したらどうかという御指摘をいただいております。
 36ページ目に、制作環境の整備でございますが、フィルム・コミッションも全国に相当できるようになってきておりますが、37ページにございますように、まだまだ海外ロケを日本でやることは少ないわけでございますので、そういうものをもっと呼んだらどうかという御指摘もいただいております。
 以上、簡単ではございますが、説明させていただきました。

○牛尾会長 大変多くの問題を資料5を中心に御説明願ったわけですけれども、初めに委員の方から御意見を頂きたいと思います。今日は初回でもありますので全員のご発言を頂きたいため、大変申し訳ないですけれども時間の関係でお一人3分ぐらいを目安にご発言をお願いいたします。
 この参考資料から欠落しているけれども重要な問題も山ほどあるように思われますし、全体の把握についても環境のスピードが非常に早いのと、日本の場合は裾野の力、実際にやっている人たちがもっと伸び伸びと能力を発揮すれば、この分野の活性化がもっと力強いものになるようにも見受けられるのですが、そういう点で妨げるものとか、足りないものとか、この問題以外の問題等につきましても、今日は1回目でございますので幅広い御意見をちょうだいしたいと思います。
 荒川委員から順番に、3分ずつぐらいの御発言をお願いいたします。

○荒川委員 荒川でございます。初回ですので、余りきちんとまとまっているわけではないのですけれども、やはりクリエーターをきちんと養成していく。そのためには、教育だけではなくて、彼らの労働環境なり将来をきちんと保障していくにはどうしたらいいのかということも考えていかなければいけない。
 それらを守っていくためには、やはり制作者、またはそこに投資をしていく方々の権利もきちんと守られるような法整備が不可欠であるということで、一概に何でもコピーさせればいいとか、利便性が増大すればいいということは、結果的に裾野の育ちつつあるものを全部摘んでしまうということになりかねませんから、そうならないようにしていかなければいけない。
 ただ、そればかりをしていますと、市場全体が広がっていく。また、技術が進化していく中で取り残されてしまうということで、チャンスを逸してしまうということにもなりかねないと思いますので、そうした技術革新をどのようにとらえて、今、申し上げたような前者の問題、要するに権利ですとか育成といったようなところとどうバランスを取って全体のパイを広げつつ収益を配分していく、最終的にはユーザーさんの市場を取り付けていくのかというところが非常に重要ではないかと思います。日本ほどクリエーターやメーカーさんといったような、さまざまな可能性が一国に集中している国はないと思いますので、こうしたものをどのような形で活用していくのかということをきちんとした形で示せれば、世界的にも先進的な提案をしていくことができ、結果的にチャンスが増大するのではないかと私としては思っております。
 決して、これまでの制作の方々や既存の通信・放送といったモデルを、そのまま否定してしまっても何も生まれてこないと思いますので、それをうまく活用し、その人たちの権利を守りつつどう展開していくのかということをきちんと踏み込んで議論していくべきではないかと思っております。

○牛尾会長 ありがとうございました。
 角川委員、どうぞ。

○角川委員 4点ばかり申し上げたいと思います。最初に、資料4でお示しいただいた、コンテンツ産業の市場規模の拡大ということでございますけれども、ここで経済財政諮問会議、あるいは経産省の資料によると、2004の実績が13.6兆円、2015年の目標が18.7兆円ということでであります。今、荒井さんから御説明がありましたけれども、私の方から申し上げたいのは、知財の推進計画2006の「コンテンツを飛躍的に発展させる」という章の、(89ページ)冒頭の囲みのところで、2011年には地上デジタル放送への全面移行となるなど、本格的なデジタルコンテンツ時代が到来するということが書かれており、その2011年に向けて、その後の時代に先んじて環境を整えていこうというふうに言明しております。2004年〜2015年の間の2011年という辺りをもう一回確認させていただいて、そこに我々の当座の目標と施策を持っていくべきではないかと思っております。
 これは、資料5の3ページをごらんになっていただければおわかりになりますように、「コンテンツ市場の環境変化」という表では、03年〜15年という横軸を取っておられますけれども、この2011年のところまではいろいろと出てきて具体的ですけれども、2012年からは全く白紙ということですから、ここを見ても2011年を標準に、それをステップにして、ホップ・ステップ・ジャンプと2015年へ向かうのは結構だと思います。そういう点でこの2011年を私たちの当座のテーマにしていきたいと再度提案したいと思います。
 もう一つ申し上げたいのは、コンテンツ産業の現状というところで、これも今、荒井さんからいろんな音楽産業、ゲーム産業、映画産業の実態をるるおっしゃっていただきました。これは、結論的に言うとコンテンツ産業というものの現状が若々しい青年期にあるのではなくて、それぞれの産業というのは既に成熟期に来ているということを示しているのではないかと思います。マチュアードマーケット、成熟した市場の段階に来ていて、個々の業界は非常に苦しい問題点を抱えていて、それで伸び率がなかなか達成できてないという状況にあると思います。そういう中にあっては、我々は大所高所から言えば、個々の各論でいくとコンフリクトを起こす恐れがありますけれども、3つ対策があるのではないかと思います。
 1つは、圧倒的なヒットによって市場を差別化する。これは、戦略的メガコンテンツをどうやってつくっていこうかということです。映画で言えば『ハリー・ポッター』だとか、『ロード・オブ・ザ・リング』だとか、また日本アニメで言えば『千と千尋の神隠し』、ゲームソフトであれば『ドラゴンクエスト』、こういったものはやはり大きな投資がないと実現しませんし、大きな投資があって初めて市場を制圧するような、その年話題の作品になる。こういうものを送り出すためには、個々の企業の努力のみならず国家的な戦略的対策がなければいけないのではないかと思います。
 2番目には、海外にもマーケットを求めることだと思います。これについても、既に冒頭の資料4にありますように、2004年の13.6兆円のうち海外市場0.26兆円で、2015年にはそれを1.2 兆円にしようというふうに明記されております。ではどうやって1.2 兆円に増やしていくのかということに関して、海外で活躍する事業に対してどんな支援ができるのかという裏づけがないと、先ほど映画も輸入が多くて輸出がアンバランスだという御指摘があったばかりですから、大事なことではないかと思います。
 3番目に、コンテンツの世界、産業というものは、いろんな意味で出版界も放送界も、あるいは映画界も保護されていた部分があると思います。その保護がいけないというわけではなくて、保護を前提にしつつ、全体的には競争関係をつくっていって、大きなコンテンツ企業集団をつくっていくという視点があっていいんではないかと思います。M&Aなどで今、話題になった王子製紙、北越製紙の例もございますけれども、そういうことを乗り越えて、やはり基本的には世界のメガコンテンツ事業者、ディズニーだとか、ニューズコーポレーション、そういうところが世界に伍しているわけですから、そこに我々がどうやって戦っていけるかという大きな視点、各論で言うと知でいろんなコンフリクトを起こすリスクはありますけれども、そんな視点が欲しいと思います。
 そうしますと、例えばNHK改革などということも民間放送と通信業者の、これから起こってくるような大きな動きを前提に考えますと、自然にNHK改革の在り方も、民間がこうだからNHKがこうでなければいけないという形で見えてくるんではないかと思っております。
 もう一つ言わせていただきますと、地上デジタルの時代が起こってくる。これは、従来はアナログtoアナログだったのがデジタルtoデジタルの時代になってきて、録画については非常に多様な機械が出てきております。ところが、実際にソフト(パッケージ)事業者が事業として事業規模をつくっているのは、録画機能ではなくて再生機能なんです。録画機能をどんどん増えていくのに再生機能が無視されて、そこにビジネススキームができないと、結果的にデジタル時代になって映像産業全体が衰退する。市場規模が小さくなるというリスクを負っております。
 ですから、技術の進歩によって録画機能がデジタルtoデジタルでどんどんできるようになってきて、マスターテープとマスターから複製されたものとの差がどんどんなくなってしまうわけですけれども、そこのところでマスターをつくっている人たちの再生によるビジネススキームを基本的に尊重しながらデジタル録画技術を見据えていきたい。そういう視点が欲しいと、私は思っております。
 最後に、コンテンツカーニバルについても一言申し上げたいのです。これは経産省を中心に、来年はコンテンツカーニバルの実現ということが提唱されておりますけれども、このコンテンツカーニバルも本当に大きな反響を呼んでおります。実現に向けて、日本のコンテンツが映画産業のみならず、ジャパンポップ、また映画、アニメ、ゲームソフトというものを集合して、是非海外からも観光客が来るような観光視点も備えて成功するように持っていきたいと思います。
 少し長くなりましたけれども、以上です。

○牛尾会長 ありがとうございました。それぞれ大変に重要な意味を持つ問題提起をちょうだいしました。後でまた議論が出ると思います。
 金丸委員、お願いします。

○金丸委員 まず、我々は過去の反省に立って、今後付加価値の変遷について的を外してはいけないというふうに思うわけであります。過去の反省と言いますのは、我々日本は大きなコンピュータの時代がずっと続くと思っていたら、小さなコンピュータの時代が突然やってきた。今度は、ハードウェアに付加価値を求めていたら、マイクロソフトのウィンドゥズを始めとするソフトウェアに付加価値が変遷していった。ネットワークを見ましても、我々は交換機という技術に物すごく注力をしていたら、いつの間にかルーターという機器に付加価値が移っていました。その後、サービスが付加価値になるわけですけれども、そのサービスもBtoBとかBtoCが主体かと思っていたら、これはコンテンツ産業にとって厄介な問題ですけれども、PtoPという時代がやってきていて、本当は違法かもしれませんけれども個人間でのデジタルコンテンツの交換というのがやってきて、これもだんだんつぶしたかに見えて、なかなかこういうものが合法化という道を選び始めていますので、そんな時代が今、来ている中、1番目として我々日本が時代の読みを誤ってはいけないのではないかと思います。
 2番目は、この13.6兆円から18.7兆円という目標でいく限りは、何となく微増の連続ですから、わざわざ革新的なことが起きなくても今までの産業構造であるとか、今までの延長で十分足り得るかもしれませんので、無理かもしれませんけれどももう少し大きな目標を掲げた方が、そのために何を成すべきかという議論に注力できるのではないかと思います。
 3番目は、いずれにしても長期的な視点で是非産業界の皆さんも考えていただきたい。先ほど付加価値の変遷において、我々日本が後手に回った時代があるわけですけれども、それはやはり過去にこだわったからだと思いますので、是非将来に向けてお考えをいただきたいと思います。
 最後に、これは以前申し上げたんですけれども、コンテンツの権利が著作権という権利なんですけれども、組織の中のBS上に資産として載ってないケースが多いわけです。そうすると、持っていた本来の富が幾らかというのはなかなか分かりづらいわけです。仮に持っていたとしても、ある一定期間権利を保有していて、更に富を再生産していないケースは、ほかの外国でもあるように、ある一定期間過ぎた権利は開放した方がいいのではないかと思います。
 以上でございます。

○牛尾会長 ありがとうございました。
 久保委員、お願いします。

○久保委員 この3月から、秋葉原にございます東京アニメセンター(以下TAC)の責任者を拝命いたしました。7月にはTACが入っている秋葉原のUDXビルの同フロアーに中間法人日本動画協会(以下AJA)、東京アニメフェア事務局という3つの団体が1か所に集まりました。これで本当に日本のアニメを世界に発信できる環境が整いつつあるという実感をもっています。
 今回資料6−3をお配りしておりますけれども、アニメ制作会社数社とAJA事務局にヒアリングした上で提出させていただいております。
 さて、まずは簡単にこの資料に沿って日本のアニメの最新情報からお伝えしたいと思っております。
 昨日の日経新聞に、アニメ関連の公開企業8社の決算資料が掲載されておりました。そのうち6社がダウンしているということが記事になっております。98年以降のアニメバブルとも言うべき好景気は、大幅な縮小傾向にあるという認識を持っております。
 一方、アニメを制作する仕事はかなり幅が広がっております。例えばパチンコ、パチスロに使われておりますアニメ映像、自動車に搭載されておりますナビゲーションのアニメ映像というように新しいアニメを作る仕事が増えてきました。また、アニメ制作を定款に掲げる会社も、従来は440 社程度と認識しておりましたが、最新の調査データでは700 社程度に広がっていると言われております。
 日本のアニメ産業の現状は、非常にいい状況と悪い状況が混在していると言って良いと思います。
 その前提の元、この資料6−3を簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず1番目に「ハイビジョン対応による制作費高騰の問題」を掲げさせていただきました。2011年の地上波デジタルに向けてというお話が角川委員からございましたが、テレビアニメの映像もハイビジョン化が求められております。通常、ハイビジョン化に必要なコストアップは約30%と認識しております。この制作費30%アップというリスクをいかにリクープしていくのかという方策については、現時点では明快な解決策を見出されておりません。このままでは弱者である制作会社にリスクを押し付けられてしまうのではないかと危惧しております。
 2番目は「アニメーター(クリエイター)の人材育成の問題」です。PCを使用したアニメ制作は世界的に一般化してきておりますが、依然として実際に手で描く制作パートが重要であることは、ハリウッドも日本も変わりはありません。しかしながら、日本のアニメーターは高齢化してきており、更に若いクリエーターたちが制作環境の厳しいという風評が定着したアニメ業界を敬遠しがちな状況もあって、この実際に手でキャラクターやアニメ原画を描く人材が不足してきています。まさに業界全体の大きな問題になってきているのです。
 今までは、アニメ業界は苦しい貧しいということをずっと言ってきたために、美大卒などの優秀な若いクリエーターたちがアニメ業界ではなく他の業界を選択し始めている状況が出てきております。ですから、これからは、アニメ制作会社関係者は多分に発言内容の大きな方向転換をしなければいけないと思います。例えば、優秀なアニメーターの方達はそれなりのいい給料をもらっているとか、映画がヒットすると収入が増えるということもちゃんと言っていく必要があると思います。
 3番目は「3D−CGアニメコンテンツの制作に向けての課題」を挙げさせていただきました。世界的には、日本が得意とする2Dのセル画タイプのアニメは、映画だけでなくテレビ番組としても時代遅れになりつつある。今後は、日本のアニメ制作会社が力を合わせて、CGアニメ映像を制作するために必要なアプリケーションなどの技術開発、並びに制作資金・人員の確保に取り組む必要に迫られています。
 中国、韓国は2Dのアニメを飛び越して、いきなり3Dへ入ってきております。アメリカでも3Dアニメのテレビシリーズが人気になってきております。その意味では、2Dの倍以上制作コストのかかる3Dのアニメに日本の制作会社も着手しなければいけないのですが、残念ながら単独企業で制作費を全部背負い、つくっていくだけの人材・制作環境を持つ制作会社は日本には見あたりません。ですから、様々な企業間のコラボレーションを形成して対応していくことが必要になってくるわけです。その役割を今後は東京アニメセンターもお手伝いしていきたいと考えております。
 4番目は「放送事業者の視聴率偏重に対するご提案」です。要約すると、各テレビ局の「全日」番組視聴率については、今後は局間の競争を自粛してはいかがでしょうかというご提案です。視聴者の実態と乖離しつつあると認識されている数字に振り回されていることに、私も含めてですが、テレビ関連業界は勿論、スポンサーたる一般企業も再認識すべきです。ゴールデンやプライムタイムの局間競争は必要だと思いますが、教育的番組や株式市場情報、時代劇の再放送まで数字を争うことが必要でしょうか。
 視聴率が取れなくても放送の必要性が高い番組は放送すべきと思量します。それらの番組が、放送しづらくなる環境は排除すべきではないでしょうか。
 一例として児童向け番組を挙げたいと思います。児童数の減少傾向とともに、児童向け番組がなかなか視聴率が取れない状況が加速していることは周知の事実です。このまま視聴率偏重主義を続けると、児童向け番組自体が消滅してしまう危険性を否定できません。各国の児童向け番組の放送状況を見ると、教育向け番組のタイムスロットを設けたり、なんらかの児童向け番組の実現に向けた支援を行うというルール作りが行われているようです。また、来る自民党の総裁選挙のトピックスとして、「教育改革」が前面にでているようですが、子どもたちにとってもっとも影響力のあるテレビ、ラジオ、出版といったメディアは、今以上に子ども向けのコンテンツをしっかり考えていくということが必要だとと認識しております。
 5番目に「テレビアニメーションの楽曲の権利について」です。テレビアニメーションの楽曲の権利(代表出版)については、テレビ局の子会社が優先的に占有している事例が見受けられます。海外展開する上でも重要な権利ですので、制作プロダクション保有が望ましいと考えております。
 例えば、テレビアニメコンテンツを海外展開する際には、必ず音楽の代表出版権を持っている会社の了解が必要になります。将来的にコンテンツをもっと流動化させたいのであれば、是非一考をお願いしたいと考えております。
 最後に6番目に「寡占化が進む映画配給業界について」です。映画会社出資のシネコンが拡大したことで、映画制作、配給、興行のビジネスが系列化され、寡占化が進んでいます。結果として上映ラインナップが画一化されてきており、大作以外の作品が上映されづらい状況が見受けられます。中小規模の作品を支援する配給・興行システムの構築が望まれています。
 シネコンが拡大したことによってさまざまな作品が上映できるのではないかと思われがちですが、現状は全く逆かもしれません。映画興行はよりアメリカ的になっているのです。大作映画が一時的に拡大興行し一気に収束するという興行スタイルが定着しつつあります。これでは大作映画の興行スケジュールと集客状況にシネコンが大きく左右され、単館的に上映し徐々に全国へ拡大していくというタイプの作品が上映しづらいという状況が出てきております。今後は、中小規模の作品もしっかり上映できるシステムを是非とも考えていただきたいと希望します。
 若干長くなりましたが、以上です。ありがとうございました。

○牛尾会長 これも非常に多くの問題を提起していただいて、ありがとうございました。
 國領委員、お願いします。

○國領委員 國領でございます。よろしくお願いいたします。
 基本的に申し上げたいことは1つだけでございまして、やはり創造性とか、表現力とか、イノベーションとかというものを、いかに活性化するかという基本のところが一番大事ではないかということです。
 その上で、イノベーションを重視するという観点から、デジタル通信とかデジタル放送というのは、今、進化が始まったばかりでございまして、これから非常にいろんなものが出てくると思うんです。その中で、いかに新しい産業、新しい収益源をつくり出していくかということを是非考えていきたいということです。
 新しいものは、当然当初は非常に破壊的に見えるわけですけれども、その破壊的に見えるものの中から新しい芽をどうやって見出していくかというセンスが問われているような気がするんです。そういう意味では、例えばこの資料の中で、YouTubeのことが書いてあるわけなんですけれども、この辺りのことについての我々のセンスが求められていると思うんです。何を言いたいかというと、あの中でこれはやってはだめではないかと思うようなことがたくさん行われていることも片側で事実なんですけれども、もう片側で、これもアニメ業界にとっては大問題だと思うんですけれども、いろんな形でパロディー、いろいろ組み合わせて自分の表現をその上に乗せて、これほど新しい創造性が見える、日々だれでも見える状態になっている、正直言って見ていてとても楽しいわけです。
 ああいうものを見たときに、問題だとだけとらえるのか、むしろ我々はこのニーズのどこに応えられていないのだろうかというふうに考えたいところでありまして、やはりそのニーズに対して真っ当な応え方をするビジネスモデルをちゃんとつくる。ニーズに真っ当な形で応えるということをしない限りにおいては、どんどんアンダーグラウンドの変なものがはびこってしまうことになるかと思うので、やはりこういう資料の中ですごく多面的に見えるものについて、一体なぜそこにそういうものが現れていて、それをある意味で最終的に共通の目標である創造的な活動が大きくなる。かつ、それが持続可能な形で大きくなる。それが産業となるという方向へ、どうやったら結び付けられるのかということを考えていきたいわけですし、あれはやはり海外のサーバーでしか動かないというところが、どうなっているのかというところを考えたいところです。
 そういう意味で、新しく出てくるようなモデルについて、是非日本発で、制度も含めて、ビジネスモデルも含めて発信されていくような状態をつくりたいと思いますし、やはり人材の育成の育成などについても、少なくともこれからどんどん他チャンネル化、多様化、表現形態の多様化ということがどんどん進んでくるわけでありまして、そのときにやはり裾野の広さが問われてくると思うんです。
 頂点を極める方は家が建つというのが片側で大事ですし、それから裾野の小学生、中学生レベルの表現する感性みたいなものをどうやって育成していくかというところを是非考えていきたいと思います。
 とりあえず以上です。

○牛尾会長 ありがとうございました。
 重延委員、お願いします。

○重延委員 重延でございます。今回は、文章は提出していないのですけれども、この会の終わりまでには、きちっと具体的な発言をしようと思っております。しばらくこの委員会がなくて久し振りですけれども、私個人としてはこのちょっとした間に大きく変わったと思っているところがございます。牛尾会長もスピードがとおっしゃっていましたけれども、少し私の考え方も変わりました。
 何が一番大きく変わったかというと、私どもはよいコンテンツをいかに流通させて、産業になったり、文化になったり、利益になっていく、そういうことを考えていたのですが、GoogleとかYouTubeというのが突然出てくると、これはコンテンツが無料なんです。無料で集まるコンテンツのビジネスモデルがあっという間にできてきたということで、ユーザーが大事という発言もありましたけれども、ユーザーはそれに傾いているという実態が大きく変わったと思います。
 それに広告を載せていくというビジネスモデルが1つできてきたところで、コンテンツの位置づけは大きく変わってきた。これは無視できないと思います。無償のコンテンツというビジネスがある。これをこれから考えていかなければいけないと思います。
 勿論、右側には、映画、放送、ゲーム、アニメというようなものの、ある意味では成熟したコンテンツはあるんですけれども、実は今、私たちはその中間に向けて、つまり通信のインフラに向かってどのコンテンツが合うかということを考えて動いてきたけれども、突然一番左側に無償のコンテンツビジネスが出てきた。これは非常にすごい提案をなされて、勿論、内容は問題があるかもしれないけれども、ある意味では進化した提案だと思うんです。このことにどう対応できるかというのは、非常に大きな流れの変化だと思います。
 勿論、現実に起きていることには対応していかなければいけないということですけれども、ちょっと考えると私どもはどうも「最適なコンテンツは何か」ということばかりを考えてきて、つまりこのインフラには「どれが最適なコンテンツか」を忘れているのではないか、勿論映画もそうですし、放送もそうですし、新しいネット系のコンテンツも、「どのコンテンツを出せば一番最適か」ということを考えてきたんですけれども、最近私が変わったのは、「何が最高か」ということを考えないと、この無償のコンテンツには勝てないのではないかという気がちょっといたします。
 無償のコンテンツに最適はあるんですけれども最高はない。そうすると、やはり最高のコンテンツをどうやってつくっていくかということがこれからの大きなテーマであり、これは産業であり文化であるというところに持ち込むというのを、最近課題として思ったものですから、もう少し頭を切り換えてこの会が終わるころには、どうしたら具体的にできるかということを言いたいと思っております。
 勿論この経過の中で、積み残した課題がたくさん書いてありまして、この中では契約モデルというのは早くやっていただきたいと思いました。これは10年前から言っているんですけれども、ちっとも進まない。やはり契約モデルは第三者的にという形で1回出してみるというのがいいのではないか。
 著作権についても、総務省さんが著作権登録制などということを最近言いましたけれども、私は制作者を大事にした著作権の考え方というのは、今でも言っているんですが、ある種の登録とかいろんな形でできるかもしれません。IPマルチキャストの著作権のことだけではなく、著作権全体でもっと流通できるとか、あるいはこれは絶対流通したくないということがはっきり明記されて動くような、スピードのある著作権の改革はやるべきだと思いました。
 もう一つやっておきたいのは、やはりレベニューシェアの問題で、著作権者、著作隣接者だけがもらえるということではなくて、アメリカで言えば主演男優、女優がたくさんレベニューシェアを持っている。そういう合理的なものを早く契約書に入れられるようにして、初期に著作権を全部譲渡させていただくのではなくて、利益が上がったら分配していくこと。やはりこれもモデルケースをどんどんつくって、権利はそういうことを集約された中で動かしていくべきです。現実的にはこの3つはやっていただきたいと思います。
 加えて国際的にどうするかということがございます。国際的なものに関する考え方は、とても遅れている感じがいたしますので、その辺の整備をしたいということです。
 さらに、私も制作会社の一人の人間としていろいろ課題で、環境が悪いとか。実際、環境は悪いです。ATPというプロダクションの連盟がありますけれども、アンケートを取ったら、年商は微増ですけれども利益率は激減です。1年で約40%の利益率が下がる、制作費が下がっている、いろんな御事情があるのでしょうけれども、制作費は低下、仕事量は増えている、利益率は約40%ダウン。そういう事態をはっきりさせなければいけないし、久保さんのおっしゃったとおり、人が来なくなってきて、恥かしいですけれども、私どもも応募者がいつもより5割行くか行かないかというぐらいです。そういう状態になっているときは、やはり何か夢を持って越えていかなければいけない。そういうことで、最後には抽象的で申し上げないけれども、最適のコンテンツをつくるという日々のことはやります。だけれども、最高は何かということを考えていきませんかという提案を加えていきたい。最適なものは1年、2年は成功するんですけれども、10年成功する最高のものが、最も日本の文化、日本の産業にいいかという提案も合わせ最適プラス最高という方向で提案していきたいと思います。

○牛尾会長 ありがとうございました。
 村上委員、どうぞ、

○村上委員 村上でございます。今回から参加させていただきます。とりあえず私の立場は、民間放送事業者としての立場からいろいろ考えていくことになろうかと思います。今、重延委員から無償のコンテンツというお話が出て、実は民間放送事業者というのは重延委員がおっしゃった意味とは、ずれているかもしれないんですけれども、50年にわたって無料のコンテンツをずっと流し続けてきたという立場にあるわけです。
 特にこの数年、コンテンツ力が局のパワーに即つながるという認識が非常に強くなりまして、各放送事業者は必死でコンテンツ制作力を高めることにしのぎを削っている。その上に、先ほど資料5にございましたように、ある種放送収入の頭打ち状況の中で、コンテンツが権利の束である。つまり副次利用でいろんな収益、あるいはビジネス化ができるということが明快になりましたので、ますますコンテンツパワーを強めるということが、放送局の力を強める原動力であるという認識の下で動いております。
 正直、昔のように映画会社が撮影所という機能をほとんどなくしておりますので、日本でスタジオ機能みたいなものを持っているのがテレビ局であるというふうに言えるのではないかと思っております。
 したがいまして、番組だけではなくてイベント、当然劇場映画、そういったコンテンツから派生する二次利用ビジネス、キャラクター商品、DVD、CDといったところまで広げておりまして、ある意味で先ほどの重延委員の話で言うと、我々は今、最適のウィンドーに最適のコンテンツをどう流していったらいいかということについてのノウハウは大体でき上がってきたのではないかと思っております。
 ただ、現時点でいろんな問題点について私から資料6−6で提出させていただきましたけれども、実はそういう中で我々放送事業者が現在解決できずにいる、試行錯誤して苦しんでいるところが2点ございます。
 1つは、ここのところずっと言われておりますブロードバンドに対する、我々が持っているコンテンツをどう出していったらいいかという部分が、正直解決できておりません。これについては、去年辺りから例のライブドア騒動をきっかけにして、放送局側もいろんな取組みを始めておりますけれども、正直その道筋をまだ見つけられずにいるということが1つございます。
 それからもう一つは、角川委員、重延委員からもお話が出ました、いわゆるグローバル的なビジネス展開というものが、我々は豊富なコンテンツをつくり出しているという自負は持っておるんですが、正直いまだに海外展開についての正しい道筋ができずにいる。当社などは十数年前に資本参加をしてハリウッドでいろんな映画をつくったという実績は持っておるんですけれども、結局その後その形が伸びずに止まったままだということで、これについては共同制作の参加ということから、今は逆に一緒に開発するというクリエイティブの部分を共ににやっていくということしかないのではないかという考えの中で、いろんな取組みは始めようとしておりますけれども、正直ビジネスとして大きなものをつくる道筋ができてないということでございます。
 いずれにしても、先ほど申し上げましたけれども、現在テレビ局がある種、うちなどは特にそうなんですけれども、ハリウッドのスタジオのような形と規模を何とかつくりたいということで動いておりますが、先ほど久保委員から御指摘がございましたような視聴率偏重主義、あるいは外の制作会社にお願いする際の優越的地位の利用があるのではないかといったようないろんな御批判はございます。
 ただ、やはり日本のコンテンツ振興をしていくときに、昔の撮影所のベース、基地が要るのではないかと思っておりまして、そういう意味では今のテレビ局、あるいは放送事業者の持っているパワーを、それがすべてではございませんが、一つの大きな核として利用していただく。あるいは、我々が効果的な支援の中で更に大きな力を発揮できるいろんな施策等がございましたら、逆に日本のコンテンツ産業振興ということで言えば、文化論とは別に、また一つの大きな役割を果たせるのではないかと思っておりまして、この場でもそういうお話が少しでも探っていけたらありがたいと思っております。
 以上でございます。

○牛尾会長 それでは、最後になりましたが、依田委員、お願いします。

○依田委員 依田でございます。既に多くの皆様から非常に子細にわたっての御発言がございましたので、少し視点を変えて申し上げたいと思います。
 まず直近、政府、自民党も非常にコンテンツに対する踏み込んだ施策を打ち出してくださっており、非常に心強い追い風だと思っておりますし、また国際コンテンツカーニバル等、いろいろ話題性があることについてはコンテンツ業界にとって非常に明るい状況であると思っております。
 しかし、2015年までに5兆円の新ビジネスを創出するということになりますと、決してイージーなことではないと受け止めております。5兆円の市場規模というのは、今の音楽産業だと約三倍強の市場規模です。映画・ビデオ産業なら約六倍強の規模です。あるいはアニメならば、全世界の周辺ビジネスを入れても約二倍〜三倍の規模です。これを新たに創出していくということになりますと、大変大きなプロジェクトであろうととらえております。一種の危機感を持っておるわけでございます。
 過去3年間の動きとしましては、環境整備の3年であったということで、それなりの非常にいい成果が上がってきたと思っております。これからの3年というのは現状をよく踏まえた上で、各業界そのものの基盤整備をする必要があるのではないかと思っております。
 例えば、一般的に権利者、あるいは制作者、要するに著作権者、著作隣接権者を含めてのソフトと、ハードの間に溝が横たわっておると見ております。ソフト権利者不在でのコンテンツ論議が行われてはいないか?また、ソフトはハードの従属物的な発想になっているのではないかというソフト業界からの見方。あるいはハード業界その他からは、ソフト業界は閉鎖的で、不透明で、時代遅れではないかという見方をされているというふうに受け止めている。その辺の議論のすれ違いがあるように思います。
 例えば、映像関連の権利者は、まず映画、ドラマ、音楽、アニメ、すべてに関わるわけでございますから、この辺の業界団体との信頼関係の下に一緒にビジネスを増やしていくんだという風土を醸成しませんと、なかなか今、論じられている対策だけでは、5兆円が具体的に自分たちの目標数字として非現実的な印象がぬぐえないと思っております。
 そこで、これから第2期に入る3年なんですけれども、ロードマップのつくり方も、今までの環境整備という視点からの国策的な、いわゆる国がリーダーシップを発揮できるような環境整備のロードマップから、各セクターごとに成長目標を決め、その成長目標の数値をどう達成するかというアクションプランを国と業界が共同で検討できるような風土、プラットホームをつくる必要があるのではないかと思います。
 映画業界を例に取ると、韓国、フランス、イギリス、アメリカは当然のことですけれども、最近ではイタリア、カナダ等が国を挙げてコンテンツビジネスを伸ばしていこうとする動きが高まる中で、日本も当然そういう動きに追随していく必要があるのではないかと思っております。
 そのために、やはり法整備を急速に進める必要がある。放送と通信の法的なバックボーンになる法整備は喫緊の課題ですが、ブロードバンドの活用をこれからどのように伸ばすかという課題があります。また、コンテンツ振興法の見直し、著作権法改正、送信可能化権の活用状況についての検証等が必要ではないか。視点を変えると、超法規的な見地でゲームソフトの中古品問題をどうするか。最高裁で結論が出たからといってこのままいつまでも放って置いていいのかと思っています。
 この論議をするときに問題なのは、利用者、法律専門家の壁がございまして、業界のエゴという形で押し込められるケースが多いということです。そして、結果的に業界がどんどん疲弊していく。要するに、付加価値が取れなくなっていく。これは既にアニメで発言がありました。アニメやゲームビジネスが明るかったのは数年前までだと思っております。常に言い続けているんですが、日本のアニメ、ゲームビジネスの将来は決して明るくないと思っております。このままでは業界が伸びていかない。それは業界の慣行や、習慣であるとか、いわゆる業界のエゴが原因と片付けるのではなく、新しい通信手段、また先ほどのYouTubeに代表されるような新しいビジネスモデルを創出できる技術開発にソフト・ハードが一体となって対処していく風土が必要だと思っております。それはやはりソフト、ハードのお互いの信頼感で、わが国のコンテンツ産業を振興するという意味においての法的・環境的整備等理解を高める必要があると思います。
 最後に、ここ数年来ハードとソフトの連携を高めようという動きがございましたが、実態としては道半ばだと思います。最近、新しいテレビポータルサービス等の会社ができておりますが、これについてもハードが先行でソフトが対応できているとは思えません。万一、ソフト側の対応がなされずにコンテンツ提供が不足すると、お互いの信頼感が弱まり、連携が進まないという悪循環に陥る危険があり、かなり深刻な状況と受け止めていいのではないかと思っております。
 第1期が環境整備の3年だったとすれば、是非とも第2期のこれからの3年の集中改革期間は、具体的な数値を挙げて、それをどのように達成するかということをアクションプランとして官民一体となって進めていく必要があると思っております。
 以上です。

○牛尾会長 どうもありがとうございました。
 かなり多岐にわたって問題を提起していただきましたが、私が一つ気になるのは、経済財政諮問会議の経済成長戦略大綱で10年間の計画をつくって、当面は2.3 %ぐらいの実質成長を考えてロードマップをつくったんですが、潜在的には先進国の中で日本は割と賃金ベースがまだ低い国で、本来高い国よりも成長力の余力があるはずです。それがなぜアメリカなどより低いのかというのは、やはり潜在成長力を妨げているものがあるという認識でこの話はつくられておりまして、その妨げているものを除く決定的に足りないものをどうやって注入していくか。その大部分は、自由な、グローバルな交流をすることによって刺激を受けて、日本の中からいいものが出てくるということも考えております。
 時代の変化はきちっとあって、各分野がこの10年からそれをどう吸収して乗り越えるかということを、むしろ官の力よりも民の自由な力に、民がそういう気持ちになるような政治をつくっていくことが一番大事だという思想で今やっているわけです。
 この分野は、決して特殊な分野ではないというふうに思うことが一番大事だと思います。この分野の方は、私もKDDIの仕事に携わっておりますが、KDDIでは電信電話が全く特殊な分野だと思っていないわけです。NTTという、競争相手が非常に強いこともあって、みんなが自由にやらなければ生きていけないということからスタートしているから、ワイヤレスを中心とした通信業界の展望というのは、今までも非常に楽観的であります。
 この分野は、非常に特殊な分野だからと思い過ぎては絶対いけない。今までも日本のいろんな分野のうちの4分の1ぐらいの分野は世界の変化の中で、一番フロンティアのところにいるわけですから、この分野だって日本企業がフロンティアに十分いける可能性は持っている。それは文化的な背景とか、歴史的な背景とか、そういうものを入れるとまだそういうことが十分発揮されてない。しかし、映画というとランゲージバリアがあるとか、アジアの特殊性というのはプラスにもなるしマイナスにもなるという、その辺を考えて業界の中に優秀な人がどんどん来るようにしないといけない。
 やはりいいものが残って、悪いものが消えるようにしないといけないということに対して、既存のものの調整に終わろうとした瞬間にこの業界は終わってしまう。やはり全体が斜陽であるとは決して思わないし、そういう点では分野別にここでいろんな苦労をした方も多いし、許認可とか行政権力などが入り込んでいるところが多い分野ですから、そういうものが非常に影響して、何が邪魔をしているのか考えなければいけないわけです。
 恐らく、荒川さんなどは一番そういう経験をした方だと思いますけれども、やはりワイヤレスの情報環境の中で仕事をした人だと、非常に可能性が強いことを感じられると思いますが、一旦そうでない方に行くともう八方塞がりのように見えるわけです。
 ブロードバンドでも、IPバージョン6が入って相当開放されますけれども、ワイヤレスの世界も、ほぼ同じ程度に伸びてまいりますから、ワイヤレスの量は物すごい勢いで伸びてくる。この分野もこれから非常に情報の大きい分野で、事実、今、携帯電話は10年前には想像できなかったほど日常生活では必需品になって、携帯電話でテレビまで見ようということで、ワンセグだけで飛ぶように売れているわけですから、要するに人間が自分の身に付く情報力で動くのが一番ハッピーだと。小学生でもマイテレフォンでないと嫌だという時代になってきているわけですから、そういう局面が登場しただけでも5年前には想定できなかったわけです。
 だから、電電公社を開放したときに、自動車電話と長距離電話が合理化されたらなというささやかな自由を求める声から、今や30倍ぐらいの量になっているわけです。先行きは更に5倍、10倍になると思います。
 そういうふうに、今、Googleの話が出ましたけれども、アメリカは非常に自由な国ですから、どんどん拡がってくる。しかし、それはかつて金丸委員がおっしゃったように、ユーザーの方が情報に使う時間というのは限られているわけです。情報ばかりで生きているわけではないですから。日本は割と情報好き、映画好き、テレビ好き、本好きの人が多いですから、かなり多い方だけれども、これはどんなに伸びたって10%ぐらいで、その範囲の中で決まるということと、情報の種類というのは、今の10倍、15倍になっていますから、先行き考えると1個当たりの情報機関に落ちる金というのは5分の1ぐらいに減るのが当たり前なんです。使う方が限定されていて、情報量が決まっていて、日本の総GNPにおける情報費用や宣伝広告費用というのは、世界の標準からいって日本は高いんです。だから、これ以上増えるはずがない、むしろ合理化すれば減っていくわけですから、そういう話の中で先行きを見る場合、それを選ぶのはユーザーですから、いいものが残って、悪いものが消えていくのはやむを得ないことだと。
 しかも、こういう世界は日本人が特に不得意だとはとても思えないので、日本人が持っているそういう伝える力というのは、かなりレベルが高いわけです。
 今ちょっと話に出ましたが、韓国が映画などに非常に力を入れて、アジア各国で非常に映画がはやっているというのは、ある一部の現象で、韓国もそういう可能性を信じてやっているわけですから、日本というのは国内だけで、やや業界内発想で一番もがいている部分の多い分野だと思うので、私は違う分野から見て、そういうことをもっと開放しないといけないと思います。
 やはり携帯電話の分野は本当にすごい勢いで増えていってますが、それでも中国などに比べると日本人というのはこだわりの民族ですから、乗り方がそれでも遅いんです。しかし、質は非常に高い。そういうのを見ていくと、やはりこの分野はかなり国際競争力のある分野だということは、トータルとしては言えるので、どこかにまだ問題がある。國領さんは1つポイントをおっしゃいましたが、そこのところをこれまでのことをこだわりながら未来を考えると間違えると思います。
 そういう点では、今度のこの委員会はかなりオープンに議論し、国内の価値観とグローバルな価値観の、いいとか悪いという判断が6、7割は共通にしなければいけないと思います。だから、日本の特殊性というものを余り考え過ぎない方がいいと思います。この分野は特殊だからと言った瞬間に進歩は止まるし、若い人は来なくなるわけです。だから、特殊性を最小限にして、魅力のある分野にするということに、今、地位のある人は一番それを考えなければいけないと思います。その分野に行こうとか、その分野に入りたいという若い人が増えなければ、敬遠されたらもうだめです。その点は、買う方もそうであって、やはり次から次へと買いたいと思わないといけない。お金を出したいと思わないといけない。そういう意味では、この分野の中で唯一そういう方向でずっと進んでいるのが携帯電話、並びにソフトの分野で、携帯にまつわるソフトというのはすごい勢いで増えているし、1年ごとに電話を変える人が山ほどいる。それは販売方法の特殊性はありますけれども、やがてそういうものはどんどん消えていく方向にありますから、そういう意味でどうやってこだわりを取るかということと、この業界は特殊な業界ではない、普通の業界と同じなんですから、日本の業界はこの目覚ましい進歩の中で最先端にいるということです。この業界だって、その可能性は十分あると思います。
 いろんな知識があり過ぎて、いろんなことが妄想になっている部分があるとちょっと感じましたので、一応私の意見を申し上げさせていただきました。
 あと2、3人の方に、これまでの問題点で御意見がございましたら、御発言をお願いしたいと思います。
 どうぞ。

○依田委員 今、牛尾会長がおっしゃったとおりだと思います。KDDI、auが非常にいい形で伸びたのは、音楽ソフトとの連携がよかったと思います。思いますにコンテンツをつくる人たちの創作力をもっと引き出し、コンテンツが流通しやすくするためには、ボトルネックがどこかをやはり考えざるを得ない。やはりソフトコンテンツがもっと流通するようにボトルネックを解消するということです。権利者、あるいは制作者がハードの業界と一体となって、ソフトの提供をもっとダイナミックに行えるような環境整備をすれば、もっともっと多くのソフトの需要が発生するわけですから、そうすると若い人たちもどんどん入ってきます。しかし現状は、コンテンツ業界は既製のサクセスストーリーができ上がってしまっていて、もう自分たちには将来性がないのではないかという閉塞感が若い人たちにあるような気がします。それはよく考えてみるとボトルネックはどこかということが問題であり、もっとダイナミックにコンテンツが創出され、需要を促すようにするべきで、そのためには法制度見直しを含め、ソフト・ハード・官・民が運命共同体であるという風土をこのコンテンツ専門調査会がリードできるような姿が望ましいと思っております。

○牛尾会長 ありがとうございました。ほかにどなたか、どうぞ。

○久保委員 アニメの人材育成の点で、1点大きな進歩がございましたのでご報告させて頂きます。今年度11月実施を目指して、アニメのクリエーターに対する共通的な技能テストを経産省の支援の元、動画協会と東京アニメセンターが共同で実施することになりました。そのテストが一種のテンプレートとなって、アニメーターや学生の技能が明確化されます。そして、テストで優秀な成績を残された方には、アニメ制作会社で実際に制作を行う研修に参加して頂いたり、キャリアパスのようなものを出そうとも考えております。
 先日、タイのSIPAという団体とそのテストの話をしましたら、ほぼ同時にタイでも実施したいということになりました。SIPAは、タイの優秀な生徒に対して、タイの国費で日本企業へ研修させたいと考えているようです。また9月11日から中国に行きますけれども、北京、長春のアニメ学校に対しても同様なことを呼びかけていきたいと思っております。
 日本で考案されたテンプレートが世界標準になるというチャンスですので、今後クリエーター人材の国際交流に少しでも寄与していきたいと思っております。

○牛尾会長 どうぞ。

○角川委員 今、牛尾会長がおっしゃったとおり、それぞれ皆さん自分の業界がシュリンクしているので、それが発言の中に現れて牛尾会長もいらいらされているところではないかと思います。
 それについて、角川グループの例でお話しします。角川はここ3年ぐらいで、今、海外の外国人を300 人ぐらい使っています。台湾で60人ぐらい、台湾角川ということで『タイペイ・ウォーカー』を出しておりますし、去年の今ごろですけれども、インターコンチネンタルグループという香港の映画会社を買収しまして、そこで映画の配給だけではなくて劇場まで経営しております。ここには、250 人ぐらいいます。今、アメリカにも会社を作っており、7人のプロデューサーを育成しているんですけれども、そのうち3人は日本人、4人がアメリカ人で、日夜角川のコミックと小説を翻訳して、それをハリウッドのプロデューサーに1件1件持って回って歩いているんです。
 そういう話の中で『着信あり』という映画が、アメリカのプロデューサーが面白がって、『ワン・ミスド・コール』というタイトルで、フランスの監督、アトランタロケという形で、全てアメリカで資金を調達して撮っています。
 また、意外なことに彼らが非常に面白がっているのは、赤川次郎さんなんです。私たちは国内的な作家だとばかり思い込んでいましたら、赤川次郎さんの『セーラー服と機関銃』、これがまた面白いとか。驚いたことに、私も読んでなかったので恥かしかったんですけれども、『乳母車の狙撃者』という本があるんですけれども、これを『ミスター・アンド・ミセス・スミス』という、割と当たった映画の脚本家が、是非無償で脚本を書かせてくれと言ってきてくれたのです。ですから、赤川さんの小説世界というのは、アメリカのプロデューサーから見たら映画化のヒントの宝庫だというんです。
 そういう意味では村上委員も海外戦略が非常に重要だとおっしゃっていますが、本当に日本の可能性はあるんです。ただ、その可能性を実現するのにハードルが高いという悩みがありまして、そこをこれからこの調査会で、私もいろいろ提案していきたいと思います。
 もう一つは、角川の場合には、もともと出版をやっていて、それから映画産業に広げていったという経緯があります。そのときに、よく出版界の人からは、角川さんは出版界が8年間のマイナス成長で、13年前の規模という余りにも悪い状況なので映画に逃げ出したんだというようなことを言っている人がいるやに聞いているんですけれども、ところが映画界もべらぼうにいいわけではないんです。私はいろんなところでよくなったと言っていますけれども、1960年代に比べれば、11億人いた映画の観客が1億7,000 万人に減っているわけですから、むしろ最大の落ち込みをしている業界なんです。それで、映画界に行ったからよくなるという話はないわけです。
 そのときに私が感じたのは、両方やれば情報力がかなりつく。つまり出版界にいるから映画に対して情報力があるし、映画をやっているから情報力が出版に来るんだと思います。ですから、やはり牛尾会長のおっしゃるとおり、余り業界発想をこの調査会で考えるべきではないのではないか。業界発想からもう少し上の段階で委員の皆さんは発言していただくことによって調査会のレベルが上がる。依田委員がおっしゃったとおり、もう環境整備ではなくて、それぞれの数字をつくっていくという段階が必要なことではないかと思って、自ら反省して一言申し上げます。

○牛尾会長 ありがとうございました。大変にわかりやすく言っていただきました。
 我が方の事務局も、3年やっていると業界的になりますから、常に新しく考えていかないといけない分野だと思います。
 とにかく日本の若々しい、いい人材が集まった業界が伸びるんです。いい外国人がここへ来るとなったときに栄えるんであって、まさにそうなっています。いいのが逃げていくところは、全部衰退するわけです。それはなぜ逃げるかというと、いろんなことがありますけれども、基本的には若い人が伸び伸びと楽しく働けるかどうかということに尽きるわけですから、それを阻んでいるものが何かということです。
 もう一つは、世界共通の価値を常に内包してない業界は、しょせんローカルな業界になるということです。
 その原則というものを踏み違えないでやらないと、知識が出てくると内閣府の方でもこもりがちになるから、私はこの業界は非常に伸びるという気持ちを持っております。携帯電話などの反省から言うと、携帯電話にカメラを付けるとか、GPSを付けるとか、もう画期的な発想なのに、これは日本人同士が競争して、共通の特許を持ってないことは国家的には大変なロスだったわけです。ボーダフォンとauとDocomoの3者で組めば、カメラ付きの携帯も、GPS付きの携帯も、世界的な特許が取れているわけです。それを仲間内で争って、それが全部流通して、日本のメーカーも中に入れるカメラとレンズが売れればそれでいいと考えてしまったところに、日本の国家的な戦略のなさがあるんです。着メロなども大変なソフトで、それでも取ろうと思えば取れたのに取らない、それに対してアップルがそれに対抗するiPodを出してきたわけです。それが出たことによって、こちらも非常にいろんな発想を持つようになった。
 しかし、そのときに着メロでも3分間使う人と、着メロというのは1分10秒、それで十分という若者の方が多いんです。音楽がそういうふうになってきている。しかも、それを聞くことによって、やがては全曲を聞きたいと思うようになる。しかし、日本が業界で競争するあまり丸ごと日本の業界が組んで世界的な特許を取るべきチャンスをこの10年間、この業界はこれだけ収益が出ているのにそれに怠ったというのは国家的な反省です。あれは取れるんですよ。それを世界がまねしているわけですから、カメラが付いていることによって携帯電話で目を使った一番完璧な認証ができるということも、結局は世界的に特許が取れてないので日本の収入の減になっている。そういう研究は世界と争うときは組まなければいけません。
 いろんなことがあるので、これから角川さんおっしゃる2011年〜2015年の間というのは、未知の分野でバラ色のようなものにしていくにはどうすればいいかということが大きなことで、ここに書いてある前半というのは大した話ではないですね。あとどう使用していくかということを、業界として考えるということだと思います。
 私が発言し過ぎましたけれども、時間が来ましたので、今日の会合はこれで終了しますが、次回10月16日とその次の11月27日、4回やりまして今日申し上げたようなことを中心に次回に具体化してまいりたいと思います。
 今日の御意見、大変広範囲に、非常にいい御意見が多いので、事務局でよくまとめて、やはり18兆7000 億円を突き抜けるような話でないとだめだと思います。二けた成長するぐらいの気持ちがないと人は集まらないです。それはどこに突破口があるかということも考えながらつくっていくということをやりたい。
 省庁の発想をこの委員会の存在によって、もう一歩見えるような方向に変えていくのがこの委員会の使命でありますので、そういう方向で是非やってほしいと思います。
 本日の会合は、皆様にオープンにしておりますので、今日の議論が伝わることによって全国から積極的な御意見が来ることを極めて期待しておりますので、後ろに座っている方々もどんどんそういうことを書いていただきたいということをお願いしたいと思います。

○荒井局長 それでは、今回いろいろ御意見をいただきましたので、これを次回までにまとめて皆様方にお示しいたします。更にこのワーキンググループの検討を行う上での参考とするために、本日の会合の資料を基に広く国民一般の皆様からも御意見をお伺いすることといたしまして、パブリック・コメントの手続に付したいと思いますので、御了解いただきたいと思います。

○牛尾会長 次の2回目が非常に大事なので、事務局が各委員の方を訪問して、この後しみじみ考えてみたらこうだという話を全部お伺いして準備してください。

○荒井局長 はい。

○牛尾会長 それでは、本日はこれで終了します。ありがとうございました。