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コンテンツ専門調査会

デジタルコンテンツ・ワーキンググループ(第4回)議事録


1.日 時:平成18年2月2日(木)10:30〜12:00
2.場 所:霞が関東京會舘エメラルドルーム
3.出席者:
【委 員】牛尾会長、荒川委員、小川委員、金丸委員、浜野委員、中山本部員
【事務局】荒井事務局長、辰野次長、藤田次長
4.議 事:
(1) 開会
(2) デジタルコンテンツの振興戦略について
(3) 閉会


○牛尾座長 あと2名の委員の出席がちょっと遅れておりますが、定刻になりましたので、ただいまから「コンテンツ専門調査会 デジタルコンテンツ・ワーキンググループ(第4回)」を開催します。
 本日の議題は、デジタルコンテンツの振興戦略のとりまとめでありまして、これにつきまして、早速でありますが、事務局から資料についての説明をお願いしたいと思います。

○荒井局長 それでは、資料に沿いまして説明させていただきます。
 資料1がデジタルコンテンツ振興戦略の概要でございまして、資料2が本文でございます。前回、委員の皆様から御指摘いただいた点、それから、その後、またいろいろ御指導いただいた点を踏まえて修正したものでございます。
 資料2に沿いまして、説明させていただきます。資料2の1ページ〜4ページまでが全体でございますが、具体的な内容が5ページ以下にございます。
 下線部分に、前回との修正を書いてございますので、修正点を中心に説明させていただきます。
 まず、7ページでございます。「2.基本的方向」の目標1のところで、ユーザーをはっきり「ユーザーである国民」と明確にしたということでございます。
 「2.6つの視点」でございますが、アナログ時代と違っているということをはっきり書くということでございます。
 それから、8ページの「視点4:各国と比較して一番よい仕組みを作る」ということを明記いたしました。
 8ページの下のところに、通信と放送の融合の問題など、いろいろな審議会で議論が行われておりますので、そちらとの連携を図るということでございます。
 9ページから「3.具体策」でございますが「目標1:ユーザー大国の実現」のうち、解決策の(1)でございます。「IPマルチキャスト放送の積極的活用」。中ほどにございますが「法改正を含め必要な措置を速やかに講ずる。その際、クリエーターに十分な報酬が支払われるよう配慮する」ということをはっきりと書いてございます。
 10ページでございますが「(3)セットトップボックスの標準化」ということでいろいろ御指摘いただきましたので、このように書いてございます。
 提言2については、プロテクションシステムにつきまして、解決策の(1)、透明な検討の場づくりをしっかりするということで検討する。それから、継続的に見直しをするということをはっきり書きました。
 11ページは、提言3でございますが、解決策の(2)で「音楽用CDにおける再販売価格維持制度の見直し」を指摘してございます。
 12ページは、(提言4)アーカイブの関係でございますが、解決策の「(2)既存のアーカイブ活用のための関係者の合意の促進」ということで、アーカイブ化されたものが活用されるように書いてございます。
 13ページは「目標2:クリエーター大国の実現」でございますが、解決策として(1)、IPマルチ放送事業者自身による魅力的なコンテンツをつくる。そういうことによって、クリエーターには新しい創作のチャンスを与えるということを書いてございます。
 (2)は「インターネットを使ったコンテンツの発信」ということで、クリエーターがエンドユーザーに近いところで自分の作品をプロモートする機会をつくるということを書いてございます。
 14ページの「(提言6)クリエーターが適正なリターンを得られるようにする」ということで、クリエーター自身も、成果に見合い、次の創作活動につなげる報酬を手に入れるという、言わばビジネス感覚というか、そういう感覚を持っていただくということが必要ではないかということを指摘してございます。
 15ページの上の方におきまして、3行目から、クリエーターの組織化を進めるということによって、クリエーターにとって不利にならないような契約慣行をつくっていただくということも必要ではないかということを書いてございます。
 (2)は「契約における自主基準やひな形の策定・見直し」でございます。日本でもしっかり契約をつくっていただくということで、中ほどにございますが「その際、エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークの活動に期待する」ということで、業界がやるのに弁護士の先生方の参加も求めるということでございます。
 (3)は、ヒットに応じた報酬を得られる契約方式の導入をして、クリエーターにインセンティブを与えたらどうだということでございます。
 16ページからは、人材育成のもので、一番下に「(4)創造性を高める教育の推進」ということでございます。
 17ページの(5)は「エンターテインメント・ロイヤーの育成」ということでございます。
 18ページからは「目標3:ビジネス大国の実現」でございますが、提言9として「コンテンツを輸出する」ということを明記いたしました。
 解決策としては、(2)、海外との協力によるコンテンツづくりをして、そういうことによって海外でも見ていただく、聞いていただくというふうにしていったらどうかということでございます。
 19ページは、(3)で、世界への情報発信をいろいろな工夫をして進めていこうということを列記いたしました。
 20ページが、(5)で、日本にはすばらしいハード技術があるので、それを生かした戦略づくりをしたらどうかという御指摘がございましたので、ここに書いてございます。
 (6)は「外国人クリエーターの受入れ」でございます。
 20ページの下の方、「(提言10)著作権問題を早急に解決する」ということで、解決策としては(1)、マルチユースを想定した契約の促進と権利の集中管理を進めるということでございます。
 21ページの(2)は、映像コンテンツのブロードバンド配信に関する利用料率に係る取組みを促進するということでございます。
 22ページでございますが、(6)、裁定制度を使って、著作者が不明だったりする場合、相続した人とかそういうことがわからないとか、いろんな不明の場合がございますので、そういうことについては円滑にいくような仕組みを考えるということでございます。
 それから「(提言11)国際標準をリードする」ということで「(2)競争的観点からの技術規格の設定」ということで、技術規格の設定が新規参入を阻害することにならないように注意しながら国際標準を進めるということでございます。
 以上が、前回の報告書との修正の主な点でございます。
 それから、資料3−1に、本日御欠席の久保利委員から資料の提出をいただいております。「コンテンツ契約の書面化促進について」ということでございます。
 1は、コンテンツ業界では必ずしも契約が十分行われていない。
 2として、契約ひな形を作成することが必要であるということ。
 2ページに、その際「3 エンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワークとの協力の必要性」ということで「エンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワーク」が、350 人の弁護士と、業界団体の方が約150人、合計500 名で組織しているので、こういう場としてもいろいろ協力していきたいということの申し出でございます。
 資料の説明は以上でございます。

○牛尾座長 資料1はいいんですか。

○荒井局長 資料1は結構でございます。資料1は資料2を要約したものでございますので、あるいはちょっと見ていただければ、その全貌がわかると思います。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 では、続きまして、資料の提出がありました荒川委員と金丸委員の説明をちょうだいするわけですが、まず金丸委員からお願いしたいと思います。

○金丸委員 おはようございます。
 今、事務局がおまとめになられた御説明をお伺いしたわけですけれども、随分、以前の議論がうまく整理されてまいりましたので、そういう意味では多分、私のペーパーの今日の位置づけは、皆さんの今後の議論をなさる上で少し整理であるとかという役目でお使いいただければと思います。
 それでは、お手元の資料3−3を見ていただけますか。横で「デジタルコンテンツのバリューチェインに関するディスカッションメモ」でございます。少し前に荒川委員のペーパーを拝見したんですけれども、似たような視点が入っていたような気がいたします。私の方から説明させていただきます。
 1枚目の絵でございます「コンテンツビジネスの価値連鎖・バリューチェイン」というようなものを、本当はもっと詳細なプロセスで書いてみた方がいいと思いますけれども、ちょっとマクロに書かせていただきました。
 デジタルコンテンツの議論の対象となる映像・音楽の分野のコンテンツは、古くは繰り返し使用がされるという前提でないものが多かったのではないか。
 ところが、いろいろ技術インフラ、あるいは利用者の活用の進歩みたいなものもあって、私的録画や、複製の配布・配信ビジネスも拡大してきて、二次使用の市場が拡大しつつあるというところだと思いますけれども、全体としては法律であるとか、商慣行で対応できなくなってきているのではないか。これは今までの皆様の議論と同じ視点だと思います。 さて、Win−Winの関係をつくるというようなことが提言にもありましたけれども、左側の絵は、要するに制作の現場といいますか、個人リッチみたいなお話も過去にはさせていただきました。この組織の中に属している個人と、組織と、この絵の外にある個人という小さい丸。契約といいますか、組織の中にいない、外部にある本当の個人という意味も含めてあります。
 組織のところにちょうど円が重なった個人というのは、契約社員みたいな身分の方もいらっしゃるのかなということで、いずれにしても、この個人の方がいらっしゃって、ある組織が会社として何か仕事をなさって、物がつくられて、物の移動がまずあるでしょう。 一方で、コンテンツは物が移動するわけではなくて、権利があって、権利も移動していくわけであります。中には分割をして権利をシェアするというケースもあるかもしれません。
 ですから、ここからこの先なんですけれども、基本的に権利の帰属は明確ですが、お金を払う側の強者が優位になっているということです。
 それから、慣行として権利を買い取ってしまいますので、二次利用への対応は弱いというようなことなのではないでしょうか。
 それが、まず一次市場を形成するわけですけれども、この市場を大まかに2つに分けて、自由市場と規制市場というふうに分けて、今後の日本の国の戦略は、この規制市場をコアにして国益を増す方策を取るのか。そうではなくて、この自由市場というのを活性化して、こちらで富を増していくと考えるのか。これはまず、戦略の視点のポイントが必要なのではないでしょうか。
 右側は、同じ円の大きさで描いていますけれども、本当はもっと大きい絵を描けばよかったんでしょうけれども、二次使用ができ上がっていって、これも規制市場が放送3兆円、通信1兆円とかと書いていますけれども、こういう売上げとか、富に対して、自由市場がもっと大きくなるということが多分目指す姿なのではないのでしょうか。
 この自由市場が、多分、国内と国外に分かれて、パッケージを輸出したり、権利を販売したり、国内はいろんな有力なネットの配信の事業をなさっている方々を通じて、あるいはパッケージが出て行ったりということで国内市場が大きくなっていくということなのでしょう。
 さて、次のページですけれども、前回いただいたすごくたくさんのペーパーを一枚一枚読み取るのも結構大変だったんですけれども、それを読み取った後、例えば今回おまとめになられた施策も、一体どのポイントに処方せんなりメスを入れるのかということをはっきりした方がいいのではないかと思っておりまして、それぞれこういうところに課題がありましたねということの整理であります。
 左側は、組織と、その中にいらっしゃる個人を含めてリターンが少ない。あるいは自発的な政策を支援する制度がない。要するに、自分で創意工夫してコンテンツをつくっていくというお金を持っていらっしゃらないので、その都度、お金を、しかも非常に小さなお金をもらいつつ制作をして、それを生活のために売り渡すみたいなことなのではないか。だけれども、そういうことを支援する制度があればいいのかもしれないという意味であります。
 権利の帰属が、契約書もほとんどないというようなお話でしたので、担保されなくて、利益の還元がない。だから個人リッチが生まれにくくて、インセンティブが弱いというところを放置したままでは、この循環系で富が増えていくということにはならないのではないのかということであります。
 下の方は、右端まで、権利の移動・分割から含めて赤い点線で四角で囲っている規制市場なんですけれども、ここは規制市場にやや権利が集中しているでしょう。これも、権利を集中させて、規制市場にいらっしゃるプレーヤーを通じて国の富を増せば、そこから税収も入るわけで、もし、そういう施策を取って、今後、全体の富を増すというのであれば、それも一つはあるかもしれません。多分そうではなくて、上側の自由市場と言われるところを大きくしようというのが、むしろ今までの議論ではないかと思います。
 そういう意味で、上側は市場縮小の危機もあるのではないか。コンテンツのデジタル化によって、違法コピーが合法コンテンツの市場を侵食している。ですから、アナログのものをデジタルにすることに対して危機感を持っていらっしゃる人もいらっしゃるのではないのかということであります。
 一方で、チャネルは毎年増えてきているんですけれども、利用者から見ると選択肢は拡大していいのかもしれませんけれども、ここのチャネルの採算性というのは、ケーブルテレビだとか何かを見てみても、まだそれほど大きく育っていないので、チャネルごとの採算性は一方で低下しているのではないのかということであります。ですから、コンテンツがどんどん増えてこないと、チャネルだけ増えても、縮小均衡といいますか、ビジネスが成り立たないということの課題があるのではないか。
 それから、二次市場なんですけれども、貨幣の消費であるとか、可処分所得であるとか、あるいは自分の一日の生活の中におけるこういったことを利用できる時間消費に充てる時間であるとかというのはもとより限界があるわけですから、飽和するかもしれない。
 海外市場への展開は、今でも有望なコンテンツというのは海外にも出ていっているわけですけれども、ただ、契約形態というのは多分、リスクは海外の方が多く、マネーのリスクも取って、ですから売り切りとか、利用者が拡大することによって富が必ずしも国に戻ってきていないではないか。主導権は、どうしてもリスクをとる海外に取られていて、ですから、リターンも少ないのではないかということであります。
 その次のページですが、いずれにしても、このマルで描いたところすべてが、拡大をしていくというのがWin−Winだと思います。そこでは今回の今後の戦略につきましては、循環をするということ。物とか権利とかがスムーズに流れていく。その質と量が増えるということを考えなければいけないというような絵をつくったわけであります。 クリエーターの育成と権利保護というのがあって、一方で一次市場があって、一次市場から二次市場に行って、二次市場が拡大していって、一次市場にリターンが適正に行われて、そういうことで一次市場からクリエーターとか制作の現場にもう一度リターンがあるということであります。それには、法制度と技術基盤の整備、それから規制市場をどうするかという検討も併せて必要ではないかということでございます。
 次のページですけれども「国益の拡大に向けて・・・規制と開放」。国益のために、この規制は本当に必要であるというのなら、それは戦略的には許されると思いますけれども、一方でそういうことを見直さなければいけないのではないかということであります。
 制作、編集、配信、消費という、これは大まかに4つで書いてあるんですけれども、放送、インターネット、モバイルで見ますと、それぞれドメインは、ここで書いたように、放送局が制作から消費に至るまで持っていらっしゃって、ポータルというのは少し小さくなって、ISPというふうに、そこから先にインターネットサービスプロバイダーの人たちとまた別れたりして分業みたいなこともあるわけでして、モバイルははやっておりますけれども、有償コンテンツは囲い込まれていて、携帯でもデバイスはクローズドになっている。
 そういう意味では、この全体について右側の@、A、Bと書かせていただいたんですけれども、ですから、どこの市場を開放するんだ、あるいはどの市場は規制するんだというポートフォリオをはっきりさせる。
 2番目、技術仕様も、標準化であるとか、開放という施策が必要なのではないか。
 3番目は、これはいろんな分野でも見られることですが、技術仕様というのは、一見オープンになっているふうに見えるんですけれども、例えば運用上の規制があって、その規制から逆算すると、ある意味で技術仕様とか、あるいはプレーヤーが限られるというようなものがもしあれば、そういったものは見直す必要があるのではないかということで、戦略的な開放と調整が必要というふうに書かせていただきました。
 5番目は、特に力んで説明をしなくてもいいと思うんですけれども、例えばこういう制作者の人がやや優位に制作会社の方々とも交渉できるためにも、何らかの形で、何か仕事を請け負ったというのであれば、その請け負った間に必要な経費等についても何か保証するリスクを取る人が現れたり、金融機関が現れたりして融資が行われたり、あるいはこういう何らかの書類というものが用意されつつ、この取引が行われるということがあれば、金融機関の方も融資もしやすいのではないかということであります。
 その次のページは、何らかの形で数値目標がどうなんでしょうかということなんですが、例えば11兆円ぐらいのコンテンツビジネスは倍増するとか、あるいは10倍にするとか、何かそういう必要があるかもしれないと思っています。
 いずれにしても、海外市場を獲得しなければいけない。そうすると、海外コンテンツ市場に対してマーケティング能力もアップしなければいけませんし、海外で勝負できるクリエーティブパワーも獲得しなければいけない。それから、オフショアに対してのマーケットプレースといいますか、そういう市場のオルタナティブ等の準備をしなければいけない。 それから、国民の皆様の消費時間と言うと、それは今どんどん始まっていますけれども、すき間時間でのコンテンツ消費の促進、クロスメディア化、あるいは魅力あるコンテンツの創出。
 その次が、どんどんアナログの資産からデジタルに移そうというインセンティブを働かせなければいけませんので、こういう権利関係であるとか、あるいは消費者のリターンをもっとつくっていって、それによってもっと使われるというようなことが重要なのではないかということであります。
 最後に、テクニカルといいますか、技術の基盤の話です。荒川委員のペーパーにも同じようなところがあったように思いますけれども、左側に既存のコンテンツがどんどん整理されて、これがデジタル化されていって、下はもっと新しいコンテンツがまた制作されていく。そこから先に権利関係がきっちり管理されるような何かプラットホームというようなもの。こういうことがないとコンテンツの拡大もないし、それによって利用者の利得もないということであります。
 そういう意味で、拡大再生産のためのコンテンツライツ管理。
 コンテンツ循環を促進して、利用者の利便性を向上させる最適化技術の開発。
 デバイスのところは、消費者の多様な利用に対応できるデバイス技術というようなものは、ハードウェアとかソフトウェア両面において必要になるのではないか。
 それから、今、検索エンジンだとか、ほとんどのインフラ技術が海外化なわけですけれども、我々も携帯というものをインターネット端末として利用している割合は、多分日本が高いと思いますので、そういう利用文化にも適したポータル技術であるとか検索技術というようなものも国としてはやってみたらどうかということであります。
 マーケティングとかということも、非常にいいものを持っていても、なかなかプレゼンテーション能力だとかそういったところも必要だと思いますので、こういうマーケティングインフラといいますか、マーケティングができるような、人も含めたインフラができればいいのではないかということであります。
 今までのお話の中で、多少の整理をさせていただいたわけですけれども、お役に立てれば幸いです。
 以上でございます。

○牛尾座長 では、討議はその次にしまして、荒川委員から資料3−2で御説明をお願いしたいと思います。

○荒川委員 私の意見は、今、金丸委員の方から御説明いただいた内容とかなりダブるものがございます。また、先般こちらの方でまとめていただいている資料には、内容的にはほとんど網羅されているという内容でございますけれども、あえてこれをまとめさせていただいた理由は、こうした取組みというのは、個々のものだけを取り上げていても全体の整合が取れなくなる可能性がある。一連、こういう流れですねということに関して押さえた上で、個々の施策に対して矛盾が起こらないように、また相乗効果が出るような形で取り組めていかないと、必ずしも効果が満足に得られないということを申し上げている話でございます。
 個々を読んでも仕方がないと思いますので、大枠、そうした中で、まずエンド・トゥー・エンドに立った形でバリューチェインの拡大、それぞれの権利者の収益の拡大ということがどのような形で起こっていくのかということ。それによって、真にWin−Winモデル。よくWin−Winといいますけれども、市場が限られたパイしかなければWin−Winというのは結局うそです。相手の利益は自分の不利益になる。
 どうも、これまでの議論というのは、市場が一定であって、それを取り合うというような形の中でさまざまな取り決めがなされてきたのではないかと思いますが、デジタル機器の発展や通信手段等々のインフラの進化によって、この部分についてはまだ拡大・発展の余地があるのではないか。
 そうなると、この拡大したところでWin−Winというモデルが確実に存在していく。流通量が増えれば、すべての人たちがもうかっていくというようなモデルというものが構築できるのではないだろうかということで、そのためにはやはり消費者にとって本当に使いやすい、または公平であると思えるような仕組みというものをつくっていく。そして、その仕組み自身が利用形態を余り制限しないといいましょうか、難しくしないということが非常に重要で、ただ、それぞれの権利者はそれについてしっかり担保ができるような仕組み、技術、法律、そうしたものを同時に整備していく必要があるのではないかというのが、ここにまとめさせていただいた内容でございます。
 以上でございます。

○牛尾座長 ありがとうございました。お二人から問題提起がありましたので、ここから議論に入りたいと思います。
 では、委員の方から御意見をお願いします。浜野委員、いかがですか。

○浜野委員 細かい点ですが、16ページに人材育成で学生の教育について書かれていますが、最近の情報の陳腐化の速度などを考えると、就労者の再教育も必要だと思います。
 ハリウッドがうまくいっている理由の一つに、再教育システムの充実があります。アメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)のコンサーバトリー(Conservatory)という、現場で実績のある人しか入れない1年間の修士課程で再教育を行っています。日本映画撮影監督協会(JSC)も、日本に再教育システムがないので、AFIに定期的に派遣しています。渡部眞カメラマンなどがそうです。サンダンス・インスティチュートという学校がありますが、黒沢清監督はそこに行っていました。再教育システムについても是非触れておいていただきたい。
 AFIレベルのものを日本でつくることは難しいでしょうが、アニメーションや漫画、ゲームでは、海外から受け入れられる再教育システムをつくれるのではないかと思っております。

○牛尾座長 アメリカの場合は、それは南カリフォルニアにあるんですか。

○浜野委員 はい。ハリウッドの近くにあります。AFIは半官半民の組織で、再教育をしています。エリート教育で、入学には手がけた作品の評価が必要です。
 もう一つは、そういった集中的な教育以外に、情報共有のシステムができていて、CG関係だとシーグラフ(SIGGRAPH)というのがあります。学会とエンターテインメント業界が一緒に華やかな催し物にしたてあげ、学者は技術を業界に売り込むし、企業側は生徒をリクルートしたり、新しい技術でこういうふうにエンターテインメントに応用したらというので情報共有ができている。日本では学会とエンターテインメント産業界が分離しているので、技術の売り込みとか技術者のリクルートというのがうまくいません。
 シーグラフやVFX(視覚効果)の大きな大会がアメリカで開催され、多くの研究者や業界人が日本から参加しますが、みんながそこに行けるわけではない。日本では昨年初めて日本映画テレビ技術協会がコンテンツ系の学会と共同で大会を開催しましたが、そういったことを支援いただくと、研究開発と、学生と、産業界とのマッチングがうまくいくと思います。まだ日本には経験が少ないので、そういったことを御支援いただきたいと思います。
 それと、19ページに「(3)世界への発信強化」でクリエーティブフェスタの検討というのが出ています。今、日本でも聞かない日はないぐらい、情報発信力をアカデミー賞は持っています。国際的な顕彰事業を育てる必要があると思います。顕彰事業は、それ自体がコンテンツで、日本だとアニメーションや、漫画、ゲームの賞を世界的にリードできるのではないでしょうか。世界に日本の評価軸を出せるチャンスがまだ十分あるので、せっかく我々が持っている資産がまだ十分生かされていないので、顕彰事業の育成も是非やっていただきたいと思っております。以上です。

○牛尾座長 アメリカは、こういう第3者が団体の間に入ってプロモートし、調整していくようなコーディネーターみたいな人がいるんですけれども、日本ではそういうのはどんな人がするんですか。みんなばらばらでしょう。

○浜野委員 学者がそういうことをすると、ちゃらちゃらしているとしかられます。

○牛尾座長 業者がするんですか。

○金丸委員 そうでしょうね。業者なのではないですか。

○牛尾座長 官庁が一番張り切っているんです。
 映画祭でも、今、浜野委員が言うように、そういうものがコンテンツみたいに伸び切っていないですね。

○浜野委員 例えば、ずっとアカデミー賞の式典の責任者だったギルバート・ケイツというのは私の友人で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の映画学部の学部長でした。式典の準備で夏以降、学校に出てこない。それでも大学にはメリットがあるので、学部長にしていた。私がそんなことをやったらすぐ、大学を首になります。
 だから、高等教育機関と産業界がうまく連動していて、そのノウハウは大学にも行って、大学の人材をちゃんとハリウッドに還元して、中山先生がいらっしゃるからちょっと言いづらいんですけれども、日本ではそういった関係は稀薄です。

○牛尾座長 サンタフェみたいなところに映画か何かの研究をするシンクタンクみたいなのがあって、そういうところが無料で出して交流していますね。日本には、そういう交流の場というのはないんですか。そういうことを研究しないと、ほうっておいたら日本では行政主導型しか育たない気がします。

○金丸委員 浜野先生が起業されたらいいと思います。

○牛尾座長 どうぞ。

○荒川委員 やはりシーグラフなどというのは、コンピュータ学会の中にあるんです。ACMというアメリカの一番大きなコンピュータ学会の中にSIGというスペシャル・インタレスト・グループのグラフィックスという部会にあって、もともと技術的にグラフィックスを、どうやってきれいにCGをつくるかというような研究をなさっていたところが、その成果を発表するのにそういうクリエーター等の発表の場にもなっていっているんです。
 ピクサーは、そういうところですごい早い段階からいろんなCGアニメ、ショートフィルムなどを発表していて、商業的には全然うまくいっていなかったんですけれども、非常にその分野では有名というような形で、ああいう中でそういう融合が起こって、新しい文化を創造しているという意味から言えば、先ほど浜野委員がおっしゃったように、学会系のところがそういうものを取り込む努力をしてみた方がお互いの成果のためにもよいのかななどというふうには思うんです。

○金丸委員 だけれども、発表できる場があるというのは大きいです。それに個人がやってきて、昔のコムデックスなどもそうですけれども、小さい会社が世界中から現れて、自分の製品とかソフトウェアも全部見せて、それをみんなが見に来て、その中にはお金、ファイナンスの人もいらっしゃれば、ハイテクの人もいらっしゃって、大企業もいて、そこで一番最初、Yahooなどもそこで出てきて、孫さんがお金をどんと出したというのもあったし、そういう場を国としても支援して、バックアップして舞台をつくるというのがいいかもしれませんね。

○荒川委員 そうですね。やはり技術は技術だけでは成り立ちませんし、クリエーターも何かそれを使っていって発表の場があるということは、お互いの励みになると思うんです。 皆さん、そこで競われるんです。1つは展示会。1つは学会の発表。それから、ショートフィルムですとかの上映というのがシーグラフなどはペアになっていて、これはみんな面白いので、あそこには物すごい大勢のいろんな方々が集まって、そこにビジネスも起こるし、技術とクリエーターの融合というようなものも起こるということで、ああいうのを日本で仕掛けられたら非常にいいような気がするんです。

○牛尾座長 アメリカは、独立心のある自立型の個人とか小さな企業があって、自分の判断で自由に動けるという社会で、日本は、どこか権威を探して横並びしようとか、一瞬、周りを見る気風が強いというのもそういうのを妨げている原因にはなるでしょうね。

○荒川委員 でも、アメリカも生き残りという意味では日本より厳しいところがありますから、小さなクリエーターなどはなかなか競争は簡単ではないと思いますけれども、ただチャンスは大きいということで、何かでチャンスがあればみんながそこで評価してというような仕組みはありますね。

○牛尾座長 小川委員、どうですか。

○小川委員 クリエーターの育成とか、クリエーターをもっともっと増やしていくということ自体は、日本でも実際には自然発生的に広がってるところもあるのが事実で、例えばコミケのようなものを自分たちで主体的に主催して大きなイベントに成長してきているものもありますし、いろんな支援があれば勿論ベターなんですけれども、そこはある程度ほうっておいた方が育つ部分もあるところだと思うんです。
 一方、先ほど荒川委員のところにあった「標準化と個別化」の標準化のところなんですけれども、(ii)にあったように、本当にコンテンツを提供していったりする上で、ある部分、標準化されたプラットホームが用意されている必要性というのはすごくあると思うんです。ここのところを国益という観点で考えるならば、できれば国がもっと後押しして、日本発の標準化されたプラットホームづくりみたいなことができてくると、クリエーターにとっても、コンテンツを提供する人にとっても、世界の競争で見たときのアドバンテージがあるのではないでしょうか。
 また携帯の世界になってしまいますけれども、本来ならばNTTドコモさんにもっともっと世界でもリーダーシップを取っていってほしいと思っているんですけれども、まだまだ、例えばクアルコムだとか、ノキアだとか、そういうところの闘いと言うと語弊があるかもしれませんけれども、闘いがあるのがやはり実情だと思うんです。気がつくと、プラットホームはクアルコムがつくっていたみたいなというのが一番残念なことなのではないかと感じております。

○牛尾会長 その場合、「国が…」というのは、日本のどの辺の行政をイメージされているのですか。

○小川委員 私は余り行政に詳しくないんですが、何となくですけれども、民間企業が1社で、世界で、標準化の場で何か発言していても、やはりどうも力不足のようで、どういう力学があるのか余りわからないんですけれども、アメリカとかはそういうのは上手だなと思います。
 気がつくとクアルコムという顔をしているんだけれど、何かアメリカというところでごりごり日本のマーケットにも世界のマーケットにも進出していっているというのは、感覚的で数字に表れているものではないんですけれども、すごく感じていまして、そのプラットホームの上でコンテンツを提供するということを考えれば、そこに何ら問題はないんですけれども、できればアドバンテージを考えると、そういう標準化されたプラットホームを、日本の技術とか日本の企業の中から生まれてくるといい。アクセスのブラウザなどは、今、一番いい例なんだと思うんです。

○牛尾会長 どうぞ、金丸委員。

○金丸委員 そういう観点から見ますと、この20ページの(5)はちょっと違和感を感じるんですけれども、タイトルが日本のプラットホーム技術を生かした戦略づくりの方がいいのではないかと思うんです。要するに、ハードウェアとソフトウェアの両面だと思います。
 一方で、この終盤の最後のところで「こうした異業種間の連携を戦略的に立案・実施するため、ハードとソフトが連携した」、この経団連の、ここでこんな「結論を得るよう促す」と言って、これは物すごく違和感があります。私も経団連に入っていませんし、荒川委員も入っていないと思いますし、小川委員のところも入っていません。

○牛尾座長 ちょっと違和感がありますね。

○金丸委員 しかも、先ほどの規制市場における、一方でプラットホーム技術というようなものは、むしろ既得権と言うとしかられますけれども、そういう技術で固まっている方々がいらっしゃるのではないかと思います。

○牛尾座長 これは、海賊版をどうするかということから発生してきた集団みたいですね。

○荒井局長 といいますか、日本のハードとソフト、家電メーカーとソフトメーカーがもうちょっと協力すると強くなるのではないかという発想で、これがスタートしているんです。

○荒川委員 ここで言うソフトというのは、コンテンツ系のことですね。ですから、表現がこうなっているのではないかと思うんですが、金丸委員のおっしゃるソフトというのは、ハードウェアに非常に近いところのソフトウェアも入れた話をされていらっしゃいますね。

○金丸委員 そうです。プラットホームなので、例えばハードウェアメーカーさんが必ずしもつくらなければいけないことでも何でもないので、例えば携帯だと、携帯メーカーさんがハードウェアをつくって、そこのブラウザはアクセスがつくっているわけですね。

○荒川委員 ですから、まだ、この表現が出てくるということ自身が大きく、ソフトウェアと言うとコンテンツのような感覚があって、あとはハードウェアというふうに思ってしまうので、なかなか難しくなってしまうのではないかと思うんですが、パソコンがそうであるように、ハードウェアとOS、そしてアプリケーションという形で分かれているわけです。今、恐らくプラットホームという意味で問題なのは、このハードウェアとOSのような、そういうものを指してプラットホームとおっしゃられているのではないかと思うんですけれども、違いますか。

○金丸委員 そうです。このままだと、例えば我々がデジタルコンテンツにアクセスを携帯電話でしようと思うと、一番の入り口はgoogleのデジタルコンテンツ検索というものになるかもしれないというようなことも含めて、私は言っているので、しかも世界のハードウェアだけ提供しても、しかももっと勝ち組で、家電メーカーさんも数が減ればいいと思いますけれども、多分ここは、こういう話し合いをなされるとみんな共存しようという感じになるのではないかと思います。

○牛尾会長 では、例えばというフレーズですね。

○荒井局長 そうですね。

○金丸委員 済みません、この会がどんな会か余り知らなくて言っているかもしれません。

○牛尾会長 もう2〜3、おおまかでもいいから、そういう集団があればいいんだけれども、全くないんです。

○金丸委員 だから、この議論をしていて、ここでこれをすぐ手放してしまう感じがするんです。

○荒川委員 一部、例えばアライブのような放送系であれば、そういう団体もありますけれども、どちらかというと余りオープンに議論しているという感覚がない。

○牛尾会長 やはり、こういうものをつくりたくないと思っている人も多いです。自然に時代の流れで最終的に日本に適したものになるのが一番理想なんですけれども、今、やる途中にこれが入ってくるというのはやはり。

○荒井局長 前よりは進歩したんです。こういうのが議論されるだけでも進歩ですが、今の金丸委員からの御指摘のとおり、それではまだ不十分ですね。

○牛尾会長 ぱっとみんな遠くに散ってしまうから、表現をちょっと考えて、例えばでもちょっと強過ぎるわけですね。
 どうぞ。

○荒川委員 先ほど、小川委員の方からあった標準化等々のお話ですけれども、まず通信方式ですとか放送方式というようなものに関しては、海外のメーカーさん、基盤提供者というのは非常にうまく、まず国内のロビー活動等をして、国の標準の一つとして認めさせ、それを更に海外でも認めさせていくというようなやり方を取られているんです。そういう意味では、そちらの方の標準というのは恐らく総務省さんなどが管轄していくところなのかなというふうにも思います。
 インターネット系の標準ですと、例えば通信プロトコールだと、IETFという団体で討議されていきますし、ブラウザなどですと、W3C、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムというところで議論されています。
 携帯電話のブラウザというような世界だと、OMAという団体が、やはり標準化活動を中心に行っています。オープン・モバイル・アライアンスという、これは世界中のセットメーカーさんが入っています。
 あと、3G系、第3世代の携帯電話などですと、3GPP、3GPP2というのがありますけれども、こういった団体で議論されているということで、この辺になっていきますと、どちらから攻めるのがいいのかというのは難しいところがありますけれども、経産省さんですとかというようなところになってくるのかなということがあります。
 やはり、さすがに通信方式、放送方式というのはかなり国のバックアップがないと難しいところはあるような気がいたしますけれども、それ以外のところというのは、実は積極的にきちんとした提案・発言をすれば、どんな小さなところ、日本からでも十分に受け入れていただけます。
 事実、弊社もW3Cというブラウザの標準をつくる団体、これは数千社加盟している団体ですけれども、ここでまさに組み込み系のブラウザの標準というようなものをつくるときの議長に選ばれて、とりまとめさせていただいたというような経緯もありますし、OMAという団体でも最新の指標をとりまとめるので、我々が議長としてそれをやらさせていただいたということもありますので、日本のメーカーさんなり、そういう技術開発のところがそういうところに出ていけば、十分にリードできる可能性は高いと思います。
 ただし、なかなか提案が出ません。そこら辺が大きな問題なのかなというふうには思います。

○牛尾会長 小川委員、この問題について何かありますか。

○小川委員 最後の、なかなか提案が出ませんというところが一番の問題で、話がそれてしまいますけれども、昨今、ちょうどIT企業へのバッシングが吹き荒れていると思うんですけれども、ここの空気もできるだけ偏り過ぎずに、中にはやはり第2のアクセスになるような力を秘めた卵の企業もきっとあるはずであるので、その辺りを十把一からげで、今回いろいろな騒動の中でまた芽をつぶしていくということがないようにしなければいけないということ。
 それと、日本の場合、技術は大企業の中から生まれてくるということが、過去、どちらかというと多かったんだと思いますけれども、それだけではなくて、本当に個人だったり、小さい企業の中から生まれてくる技術・アイデアに対する支援とは何を指すのかはいろいろあると思うんですが、そういうこととか、あと、失敗したりしても何らかの復活できる道筋みたいなものをつくっていくということも重要なのかなと思います。
 これは、クリエーターに対してもそうだと思うんです。やはり、こける作品というのも当然、それは大半なのであって、それでもうだめだというレッテルではなく、次の挑戦ができるステージづくりというのも重要なのかなという気がします。

○牛尾座長 現在の、いわゆる一部のIT企業の、罪を犯している問題のバッシングと、この分野におけるものとまぜこぜにならないように仕分けて整理するということは、この委員会でもきちんと書いた方がいいと思います。今日もどこかの新聞に載っていましたけれども、放火魔が多いからといってマッチ会社を罰したらだめだというのと一緒で、きちっとその辺は、やや行き過ぎている部分もあるし、しかし、まだまだもっとやらなければならぬ部分も残っているので、そこを整然とどこか初めの方にきちっと書いて、この分野できちんと努力をすれば必ずきちんと見て評価される。善悪が混同して、乱れないような仕組みを積極的に我らも考えていくというようなことを入れ込んだ方がいいのではないでしょうか。
 中山本部員、何か総括的に御意見ございますか。

○中山本部員 違う問題でよろしいですか。

○牛尾座長 結構です。

○中山本部員 この報告書で、私は基本的によろしいかと思います。かなり抽象的な文言になっておりますし、具体的な結論を出していないものが多いんですけれども、それは各官庁を始めとして専門部署で十分練ればいいわけで、これで結構だと思います。
 私の専門である著作権につきましても、IPマルチキャスト放送とか、あるいは30条の私的使用目的の複製は、この記載でよろしいかと思います。
 あと一つ、浜野先生のおっしゃった人材問題、社会人をもう一回教育するという件、これは私も極めて大事だと思っていまして、入れていただければいいと思うんですけれども、これはコンテンツだけの問題ではありません。理系の方はうまくいっているかどうかわかりません。うまくいっているのかもしれませんけれども、社会科学に関しては社会人教育というのはほとんどできていません。学部で卒業させて、あとは自分で勉強せいというスタイルを取っております。
 それで、大学院というのは研究者という非常に特殊な職業人の養成所だというふうになっていましたけれども、だんだん変わってきまして、ロースクールも一つの変化なんですけれども、一応でき上がった弁護士などを対象とした教育というのは実は余り行われてこなかったけれども、しかし、ある特殊な分野、例えばこの分野だとか、知的財産の分野、独禁の分野、あるいは商取の分野等々の深い知識を持った弁護士を養成するという教育の重要性は、私は非常にあると思うんです。
 先ほど、浜野先生がおっしゃったのと通じるわけですけれども、東大でも博士課程40人体制をとり、実務家を養成目的として、弁護士などを入学させたいと思ってやってはいますけれども、ロースクールで疲弊していまして、教える人、金、教室、研究室等々も何もかも不足してなかなかできません。やはり方向としては、ある方面に非常に深い知識を持った人を養成する再教育ということは、このコンテンツだけでなくて、全体的に必要になってくると思います。

○牛尾座長 東大などでも今度3年間でプログラムを終わらせるような提案をする等うまくいっているのは自然科学の方で、社会科学と人文科学に関しては、中山先生がおっしゃるように、疲弊困憊するというか、初めから疲労しているのではないかという感じで、要するにうまくいっていないんです。
 浜野委員などのメディア環境額の分野もまだプリミティブで、なかなかふくらまないんです。ふくらめようと思うと、学外からもっといろんな人を持ってこないと、学内だけではつくるだけでも精一杯。学外というと、学内の数よりも多く来ると困るとか、いろいろな慣習があって、この2〜3年は非常に大事なわけです。だから、そういう意味では、このままでいいと思います。 だから、自然科学や社会科学の教育分野に関して、社会人まで含めてふくらんでいくことを要請するとどこかに1行きちっと書いた方がいいです。文部行政ではそこまでいかないと思います。
 自然科学の方は、今度の口火で、プロフェッショナルスクールで怒涛のごとくいろんなものが出てきています。社会科学も本格的なMBAやパブリックアドミニストレーション等もでてきているし、デジタルコンテンツ分野の専門職大学院などでエンターテインメントマネージメントを学んだ人材も出てきているから、そういう人が新しい流れを起こす。そういう、横に動く人を推進するような提言も一つ上手に入れ込んだ方がいいかもしれません。

○荒井局長 ちょっと考えます。

○牛尾会長 では、ほかに。
 どうぞ。

○浜野委員 7ページの「2.6つの視点」に関係することで、抽象的なことですが、ポップカルチャーも含めて、日本は海外で評価されて評価するという傾向が強い。この委員会ができたと経緯も、そういったところがないとはいえません。アカデミー賞もそうであるように、その国民とか、その国が伝えたい表現とか思想を伝えたい機構として機能しています。海外からの評価を待つのではなく、自らの主体的な評価軸で、我々の表現を評価して、海外にも伝える努力をすることが、国境がない時代にクリエーターを大切にするということになるのではないかと思うのです。
  黒澤明監督は、海外で褒められてはじめて認めるのではなく、主体的に志を高く持ってやるべきだと行っておられました。実は、全米美術批評家賞で、去年のアメリカで開かれた展示会のベストに選ばれたのは、村上隆さんの「リトルボーイ展」に決まりました。なぜ村上さんは、「リトルボーイ展」をやった経緯について、日本のポップカルチャーをアメリカ人の視点から紹介される前に、日本人の視点から紹介したかったとおっしゃっておられます。ですから、我々の評価軸を出していくということが、どこかでわかるようにしていただくとありがたいと思います。

○牛尾座長 難しい問題ですね。まだ両面あるんでしょうね。

○荒井局長 ちょっと検討して、議論させていただきます。

○牛尾座長 ほかに、御意見ございませんか。今日は、今回が最後で、最終案に取りかかりますので、気になるところはどんどんおっしゃっていただきたいと思います。
 特に、事務局の方はよろしいですか。

○荒井局長 結構です。

○牛尾座長 では、かなり率直な御意見もたくさんちょうだいしましたし、また、この分野の後進性というものが、日本の行政と民間の間のすき間がいかに多いかということも問題としては提起されているけれども、これはやはり制度改正で解決する問題と、全体のものが成熟してそれが埋まってくる、成熟する時間を要するという分野なんです。ここは非常に難しいので、その辺は判断は慎重にしないといけないと思っています。
 だから、行政の方はやはり余りにも分割し過ぎているので、やはり違う国がそうであるように、デパートメント・オブ・インフォメーションみたいなものがもっときちっとできて、頭がたくさんあるという現状も打破する必要があると思うので、これは既に政府においてもそういう議論が始まっていますから、ここ2〜3年で相当いろんなものが変化する中で、基本的にはやはり自主独立の気性に富んだ個人や企業というものが非常にこの分野では大事だということも強調しておく必要があるかと思います。
 今日もかなりいろんな御提案ありましたが、今日の御発言を踏まえまして、丁寧にこれを消化して、必要な修正を行いたいと思います。
 次回までの作業について、どんどん取り組まなければならないことは、座長である私に御一任いただいてよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○牛尾座長 それでは、そういう形にさせていただきます。
 では、若干、予定よりも時間が早いですが、皆さん、非常に時間の貴重な方も多いようでありますので、本日の会議はこれにて終了したいと思います。
 昨年の11月以来、4回にわたる会合においてデジタルコンテンツに関する課題について各委員から大変にいろんな御意見をちょうだいし、また、事務局がそれぞれヒアリングに参りましても、かなり多くの問題提起をちょうだいしましたことを心から感謝したいと思います。
 今回のとりまとめについては、今月の2月20日に開催されるコンテンツ専門調査会にこれを報告し、議論をちょうだいしたいと思います。
 それでは、本日の会合はこれにて終了したいと思います。誠にありがとうございました。