○牛尾座長 定刻になりましたので、ただいまから「コンテンツ専門調査会第2回日本ブランド・ワーキンググループ」を開催いたしたいと思います。
本日は、ファッション分野を中心に議論を進めてまいりますので、参考人としてお二人大変御多忙の中を出席していただきました。御紹介申し上げます。
イトーヨーカ堂のメイドインジャパンというプライベートブランドの開発コーディネーターをされております河邉司郎さんです。
○河邉参考人 河邉でございます。よろしくお願いします。
○牛尾座長 もう一方は、前職で長くエルメスの広報担当をされ、今は福助で広報担当部長をされている東野香代子さんです。
○東野参考人 東野でございます。よろしくお願いします。
○牛尾座長 皆さん、お手元に東野参考人の大変興味深い資料が入っていますので、御参照くだされば結構だと思います。
また、本日は、経済産業省製造産業局の奥田次長に出席をいただいております。
○奥田経済産業省次長 奥田でございます。よろしくお願いします。
○牛尾座長 では、前回御欠席で御発言がなかった山田委員に、一応3分以内で御発言をお願いしたいと思います。
○山田委員 前回欠席しました、全国農協中央会の山田でございます。どうぞ、よろしくお願いいします。
私の方から若干申し上げさせていただきます。
国際化は各方面において、相当早くから進行しているわけでありますけれども、農業の分野は国際化が遅れているんじゃないかというふうに言われている部分でありますけれども、しかし、農産物の輸入という分野で考えますと、圧倒的に多くのものを海外から輸入しておりまして、そういう面では国際化は相当前から進んでいたというふうに言えるかと思います。
ところで、農産物の輸出ということになりますと、明治初年の産業品の中でも1位、2位を占める生糸だったり、それからお茶だったりしたわけでありますが、それ以降は内外価格差もありまして到底無理ということで、それこそ最近になりまして、リンゴのふじとか、温州ミカンとか、それから20世紀ナシとか、一部で挑戦してきたにすぎないわけであります。
ただ、ここへ来まして、FTAやEPA等、国際化の中で一層の輸入拡大が迫られてくるわけでありまして、日本の高品質の果物や野菜や米の輸出を本格的に取り組もうという動きが出てきているところであります。
そして、価格競争では到底勝てないわけでありますから、それこそ技術や品質で競争してみようということで、まさにこのときになって初めて農産物の日本ブランドを作り上げることの重要性に気づいている、大変遅れていますが、そうした次第であります。
言うまでもなく、我が国はアジアモンスーンの下で水田農業を中心にしながら、南北に長くて、かつ農耕社会であったわけで、そんな中で多種多様な農産物なり、それから郷土料理、風俗、風習、歴史、建物、こうしたものをずっと育ててきているわけであります。
今後、国際化がより進展する中で、このような農産物や、食文化などを魅力あるものとして国際的に売り出していく。本日のテーマでもありますファッションも含めまして、こうした農産物、食文化、ファッション、これらを総合的一体的にどうアピールしていけるかということが大変大きな課題でありまして、当調査会は大変意義あるものというふうに受け止めております。
どうぞよろしくお願いします。
○牛尾座長 ありがとうございました。
では、事務局から、まず資料の説明をお願いしたいと思います。
○荒井局長 それでは、資料1について御説明いたします。
資料1は、前回の第1回会合の議論を整理したものでございまして、内容については委員の皆様に前もって御確認をいただいております。
資料2は、前回会合後に実施いたしました意見募集の結果をまとめたものであります。提出された意見は、個人16件、団体10件の計26件です。意見の内容は別添1及び別添2のとおりでございます。
主な意見を御紹介いたしますと、日本ブランド総合戦略につきましては、日本ブランドを形づくるものを政府が高く評価し、日本人に自信と意欲と活動の機会を与える施策が必要だ。
ファッションについては、デザイナーのビジネス活動をサポートするデザイン・マネージメント人材の育成が必要だ。
食については、消費者ニーズや食全体のマーケットの視点に基づいた戦略が必要。
地域ブランドについては、地域ブランドの商標保護のルールの早期明確化を期待するなどの意見が出ております。
資料3は、ファッションビジネスについて、前回会合や事前に委員の皆様の御意見をいただいたり、あるいは意見募集などを踏まえて、事務局でまとめ、たたき台として示したものであります。
1ページは、現状でございますが、日本は国際的には競争力が不十分であること、国内的には適度な付加価値の国産品の需要が存在することを示しております。
2ページは、問題点を消費者や企業、業界、社会の視点から示しております。
消費者の視点からは、日本にはデザインや素材で世界に通用するものがあるが、消費者に対するブランドイメージが構築されていない。供給者、企業の観点からは、長期的な視点に立ち、新しいものを作り、消費者に直接訴えるという意識が不足しているなど、いろいろな御意見をまとめたものでございます。
3ページは、課題と対応策を一覧表にまとめました。消費者ニーズへの対応、人材育成、ビジネス支援、素材、情報発信、知的財産権の6項目にまとめております。
4ページからは、各論でございまして、消費者ニーズへの対応といたしまして、優れたデザイナーの顕彰や、日本の優れたファッションの発信などにより、消費者にとって魅力あるファッションを創造していくことが必要だという御指摘。
5ページからは、人材育成でございますが、6ページに人材育成の対応策として、才能あるデザイナーの発掘・育成。
7ページには、デザイナー及びデザイナーのパートナーとなる人材の育成。
8ページには、日本ファッションの発展に貢献したものを顕彰することなどが掲げられております。
9ページからは、ビジネスの支援でございますが、10ページにございますように、ビジネス展開を支援することが掲げられております。
11ページは、素材でございまして、12ページにありますように、素材ビジネスの強化連携育成が必要であること。
13ページは、情報発信でございまして、14ページに内外の目を日本に向けていただくことが重要だということ。
15ページからは、知的財産権でございまして、16ページに模倣品・海賊版への対策と知的財産権の啓発が必要であること。
こういうものをまとめてございます。
このほか、資料4として委員からの配付資料、また席上配付として参考人のプロフィールなどをお配りしております。
資料の説明は、以上でございます。
○牛尾座長 ありがとうございました。
では、今日の発言の順序ですが、まず、ファッション関係の委員の方に5分ずつぐらいお話をちょうだいしたいと思いますが、初めに太田委員からお話をちょうだいしたいと思います。
○太田委員 それでは、お手元に簡単なメモを御用意させていただきました。
ファッションビジネスで市場として非常に激戦区の代表的な街がアメリカのニューヨーク、そこで、デザイナーの商品をたくさん世界中から集めて売っている代表的な大型店舗が3つあります。BERGDORF GOODMAN 、SAKS、BARNEYS NEWYORK と3つありまして、いろんな売場がありますけれども、そこのデザイナーコレクション、もしくはインポートデザイナー売場と称されるデザイナーのものを主に扱っているフロア、それぞれ2フロア、もしくは4フロアありますけれども、そこに展開されているブランドを一応列記しました。
アメリカと書いてあるのは、本拠地がアメリカのブランド、それからフランス、イタリア、それから日本と書きまして、その中の○は、自分の国ではないところで、コレクションを発表しているというデザイナーです。
これをご覧いただくとわかるように、まず、日本はそれぞれ4つなり、5つなり入っていて、日本の実力からすると、こんなものかなと思うんですけれども、そこそこ入っていることは入っているけれども、いつも同じ顔ぶれだというのが1つです。
それから、次の世代が育っていない。これも1つです。
見ていただくとわかるように、やはりイタリア勢が非常に伸びてきているというのが、これを見てもわかると思います。
2枚目の資料、これは先ごろの10月のパリの既製服のデザイナーのコレクションの、通称パリコレと言われているスケジュールです。この中で、まだたくさんこの周辺にショーみたいなものがあるんですけれども、マスコミの人たちが行くであろう主立ったショーの中で、斜がかかっているのが日本ブランド、日本から商品を作って持っていって、向こうで発表しているというブランドです。
これもご覧になっていただくとわかるように、いろんな国からも来ているんです。日本のデザイナーの人たち、数はとりあえずいっぱい出ている。遠いところから行くわけですから、みんな1回につき数千万円ずつ使ってショーをやっている。現状はこういうことです。
3番目に、これは本家本元というか、フランスの主要ブランドが、落ち込んでいたのが非常に頑張って急に再生されたとか、名門ブランドが、今、どんなデザイナーを使っていますという簡単な名前を入れましたけれども、フランスのブランドでありながら、多くのブランドは、実はフランス人ではない人がデザインをしているという現状があります。ここもフランスはフランスで、人材育成という部分では若干の問題があるのかもしれません。
私は、今日、事務局がおまとめになった資料3の3ページの課題と対応策という中で、特に人材育成について、ちょっと私から御意見を申し上げたいと思います。
今、御案内したように、まず、ビジネス面でも名前は出ていっているし、ビジネスもやっているし、ただしいつも同じ名前、それからパリコレでも数はちゃんと出ているし、それからフランスでも実は同じような問題点を抱えているところがあると私は思うんです。 日本の場合は、やはり特にデザイナーの育成というところで、いろんな日本独特の障害が過去にありました。やはりデザイナーの育成という部分は、日本の場合は、各種学校、専門学校にすべてがゆだねられてきた。そこにある種の限界が今までありました。
1つは、やはり業界からも行政からも余り物心両面で協力はなかった。だから、そこで教育をせざるを得なかったというものであります。
それから、指導者が主に、その学校を卒業したOBで、ビジネス社会でビジネス体験がない人が教えているということも非常に大きいと思います。
それから、インターンシップ、これは欧米のこういうデザインの学校と比べますと、インターンとは名ばかりで、お客さん扱いで、もしくはアルバイトで出ているだけで、実際に企業に入って、しっかりとプログラムで教わっていくということはありません。
各種学校の限界としては、やはり2年制だったり、3年制で卒業する。だから基本的には一般教養を教えていません。
欧米は、今、非常にデザイナーをたくさん出している。例えば、ロンドンのセント・マーチンスであれ、ニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインであれ、やはり4年制のちゃんとした大学だということです。一般教養もちゃんとやらせているということが1つ。
それから、先生たちがほとんどが業界で働いている人たち、インターンシップが完璧に整っている。そういうことがありまして、やはり各種学校、専門学校の限界がいろんな部分であって、その中でも数は出ている。だから、日本の専門学校は非常によく頑張ってきた。協力がない中で、今までよく頑張ってきたと思います。
ただし、これから本当に世界に通じる人材を育成するためには、やはりいろんな部分で教養もあり、それからきちんとした訓練を受けているようなビジネスマインドもあるデザイナーが生まれてこなければいけないので、一番手っ取り早い方法は、やはり最高学府の中にデザイン科があると。例えばの話だけれども、東京芸術大学にファッション・デザインの研究室があって、一般教養も習ってみたいなぐらいのインパクトのある施策がないと、なかなか難しいんじゃないかと思います。
それから、デザイナーがビジネスを学ぶ機会が少ないと。これもやはり同じで、指導者にビジネス経験がないわけですから教えようがありません。そこは非常に大きな課題じゃないかなと思います。
今度、北野武さんが東京芸術大学で教授をなさると。いずれ、そういうみんなが知っているような学校で大学にファッションの学科ができて、川久保玲さんなり、あり得るかどうか知りませんけれども、出ていって教授をやるみたいな話が出てくれば、多少空気が変わるかなと思います。
2番目、もう一つの人材、これはビジネスマネージメントの問題です。実は、今から約20年ほど前に日本に帰ってきて、デザイナー協議会という協会を作ったときに、当時の通産省の方々に、とにかくデザイナーがたくさんいることはいると。ところが、マネージメントができる人がいないので、学校を作ってくださいよという話をしました。
そのときに、いろいろ調べているうちに、文部省にかけ合うとどうも無理だと。それはファッションというのは、マネージメントもマーケティングもマーチャンダイジングも、すべてどうやら家政学という学問に分類されていて、そこから抜け出せないということは、女子大にしかない。女子大の家政学部の被服学科みたいなところにいかないと、ファッションに扱われない。それは違うんじゃないかと。でも、文部科学省のくくりではそうなっていた。
そこで、通産省の方々と、では例えば財団法人で、通産省認可でビジネスの学校を作るしかないねといって、みんなで協力し合って、IFIビジネススクールと呼んでおりますけれども、公共機関で行政が20億円、業界が確か30億円ですかね、お金を出し合って、財源でもって学校は作りましたが、そこにいろんな問題があります。
やはり、カリキュラムがまだまだ甘い。それから実践と言いながら、なかなか実践になっていない。それからどんな人材を育てるか、経営者を育てるのか、本当に実務にたけた人を育てるのか、まだまだ議論の余地がいっぱいあるところで、発足して約10年ぐらいになりますけれども、これがある種のビジネスを目指す人たちの最高学部にはなり得ていない。
やはり大事なことは、ここでも同じで、やはり普通の大学の商学部なり経営学部なり、マーチャンダイジングやマーケティングや、そういう学科ができて、それでそこを出た人たちが、企業に入って育てられて伸びていくという構図がないと、なかなか難しいんじゃないかなと思います。
だから、ファッションビジネスのカテゴリー分類を変えていただいて、新しいスキームの中で、どんな学部に取り入れたらいいのかというのをやっていただいて、一番いいのは、国公立でそういうのができたら、一発で空気が変わるんじゃないかなという気はします。 それから、ファッションの中で、もう一個コンテストというのが出てくるんですけれども、コンテストは逆に日本はあり過ぎで、これは要らないと思います。ややもすると、各種学校の弊害はコンテスト教育になっていて、一発勝負で当てた者が、私どもの学生はこれだけコンテストを取っていますというのが、人を募集するためのツールになっていて、我々企業としては、基礎を学んだ人が欲しいわけです。実践は会社を通して教えていくわけで、基礎ができていないのが余りにも多過ぎる。それはコンテスト教育の弊害で、やはり賞金の高いコンテストが日本ほどある国はありません。だから、これは逆に削った方がいいんじゃいないかなと思います。
以上です。
○牛尾座長 ありがとうございました。
では、続きまして、原委員どうぞ。
○原委員 私からは、太田委員のように1つのことというよりは、ファッションを私の場合は作るのでもなく、売るのでもない立場で長い間見てきたことで感じたことを、またもう一度言わせていただきたいと思います。
まず、私の資料4−2に書いてある1番「在外公館を通じた情報発信」みたいなことでは、日本にいますと、フランス大使館では、かなり頻繁にフランス系ブランドのプレスプレゼンテーションみたいなものが開かれますし、ファッションショーが行われたこともあります。
また、一番最近では、ジャンポール・ゴルチェが日本との合弁会社を始めるに当たり、フランス大使館でレセプションを開いています。また、イギリス大使館ではアクアスキュータムの記念ショーをやったり、フォックスという傘のブランドのために、一等書記官の官舎を利用して、やはりプレス向けの催しをしたりしています。あとイギリスのブランドであったら、例えばファッション雑誌で英国調というテーマをやるときに貸してくれと言うと、いろいろな問題があって大変だと思ったんですが、本当にメイド・イン・イングランドのものを撮影するならOKということで、イギリス大使館内での撮影も許可されました。日本の場合にはそんなことはあり得ないとあきらめてしまっているんですけれども、外国では、そういう意味でファッションというものを国がどういうふうにとらえているか、またビジネスとして外国に売るためには相当力を入れるということを痛感します。
それで、これは2にも通じるんですけれども、パリではいつもカルーセル・デュ・ルーヴルという会場でプレタポルテのコレクションが開かれていますが、これはフランスの文化省とプレタポルテ協会との協力でできた施設ですし、プレタの期間中のファッションショーなども歴史的建造物、公共の美術館、美術学校等でも、デザイナーのイメージに合い、申請があれば、かなり広い範囲で許可され、使用されています。
これは、日本は木の建物も多く、フランスは石だから火災とかの問題で一概に同じとは言えませんけれども、ファッションというものを最良の状態で見せるためには、国が全面的にバックアップしているということを常に感じさせられます。
これは3と4にも通じるんですけれども、そういうようなとき、よく目にするのが、かなり小さい小学生ぐらいがクラス単位で美術館のある一室に先生と一緒に入って、一つの作品をじっくりながめながら授業を受けているみたいな、そういう風景をよく目にすることがあります。多分小さいときからの美意識とか、情操教育とか、そういった部分からある意味では始めていかないと、そういう教育なしでもデザイナーを目指す人はいるかもしれないけれども、やはりフランスとかイタリアで感じるのは、小さいときからの美しいものに対する感性の教育を心がけていること。
プレタに行っていてもう一つ感じたのは、ある時期、数人の韓国のデザイナーのショーが開かれたことがあって、そのときにお手伝いとして、かなり若い韓国人の学生さんがパリに見えていたんですけれども、その人たちは、多分特別に英語教育を受けた人ではないと思うんですが、とても堂々と英語を話していました。これは学校で本当に話す教育がされているなという感じだったので、日本では私立学校では少し会話の教育がされていますけれども、やはり今はまだ文法とか、読むことが中心の受験英語のようです。やはり語学教育というのは、コミュニケーション手段であると思うので、少なくとも英語をもっと早い時期から聞くことと、話すことをしっかりやると、ファッションはもちろん、すべての方面で、これから世界に通用する人になるには一番大切なことじゃないかなと思います。
それと、やはり長い間外国に通っていて思うのは、町の景観に対する意識、やはり便利さとか、目立つことだけを優先しないで、パリの場合には、シャンゼリゼにはグリーンの薬屋さんのマーク以外は絶対出していないとか、そういった規制がかなりあるので、住んでいる方たちにとっては中も勝手に直せないとか不便なこともあるけれども、やはりその結果として保たれている景観の美しさというのは、どうしようもないものがあって、それをバックにして美しいファッションが完璧に成り立っている。ファッションショーのステージで出てくる洋服の強さだとか美しさだけを見ていて、ファッションの本質というのはわかりにくい。コンクールで優勝する服がいかに力強かったり、才能あふれているように見えても、それがファッションビジネスに結びつくかと別問題です。
5の顕彰のことについては、先ほどの資料でレジオン・ドヌール勲章のこととか、いろいろ書いてありましたので、1つだけ言わせていただくと、ズッカというブランドがやっていたズッカトラバーユという仕事着のシリーズみたいのがあるんですが、これはフランスのボルドーの小さな労働着の工場に依頼してコラボレーションという形で作っていた製品が10年間に売上げを伸ばした。そのボルドーの労働着の工場というのは、廃れかけていたというんですけれども、このコラボレーションによって再生した。そういったことをフランスのプレタポルテ協会が細かく見ていて、10年の結果として、今年表彰されたりとか、そういった意味では、フランスという国は、外国人デザイナーのビジネス両面での細かいところまで見守っているという面もあります。
また、6はアンティパストという靴下のブランドが小さいながらも外国で評価されているというのは有名なのですが、あとMOKUBAというリボンのブランドがあるのですが、フランスのオートクチュール協会に加盟しているようなデザイナーやプレタのデザイナーもほとんど使っているリボンです。これはデザイナーたちが発注して作っているというものではなくて、MOKUBAの日本人デザイナー渡辺さんが自分で企画して作ったものを常にプレゼンして、それをイタリアとか、フランスのトップレベルのデザイナーたちが注文して、取り寄せて使っているという現状があります。そういう個々の部分では世界に知られているブランドというのはあると思います。
こういうことから考えても、いわゆるファッションというと、デザイナーということにすぐ飛んでいきがちなんですけれども、これからはもっと細かい部分というか、いろんな面での見方があるので、デザイナーが作る洋服だけがすべてではないファッションのとらえ方というのをもう一度考え直したいというのが私の中にはあります。
最後に、この前伝統工芸のお話がありましたけれども、例えば、柿渋で染めるような技法みたいなのは日本独自のもので、それは伝統工芸には入っていないかもしれないけれども、その技術とか色には単に日本的とは言えない魅力もあるので、そういったものをもっと開発することなどを考えたらいいのではないかと思いました。
以上です。
○牛尾座長 ありがとうございました。
では、続きまして、皆川委員どうぞ。
○皆川委員 今、最後に原委員の方でおっしゃられていた、服だけではなくというところに私も強く思いがありまして、テキスタイルメーカーということも日本ブランドとして大変重要な役割を持っているなと感じておりましたので、今回は4つ柱を立てて考えさせていただきました。
その1つが、繊維メーカーの維持・成長を支えていくということが、今後の課題になっているんではないかなと思っておりまして、それに対しましては、海外に向かって日本の産地の特色を伝えるというのが非常に重要ではないかなと思います。
日本の産地というのは、各都市に分かれておりますが、それぞれに発達した技術や技法、または生地の繊維の特色がございます。そういうものを一つ日本ブランドとして海外に向かって伝えていく必要があるかなと思っております。そうすることで、テキスタイルメーカーのマーケットを世界に広げていくということが高めていくことができるんじゃないかなと考えております。
それに当たりましては、海外の見本市に積極的に参加できるように支援する。具体的にはコストですとか、出店する機会ですとか、情報においてのサポートをするということです。
続いて、日本メーカーの合同展を海外で行う。これは、先ほどフランス大使館、英国大使館が積極的に自国のファッションを大使館を通してPRしているのと同じように、各国の日本大使館などの協力を得て、そのようなことをしていければいいんではないかと考えております。
続きまして、海外向けに日本のテキスタイルのPR誌を作るということはどうだろうかと考えております。
それは、単に生地見本をテキスタイルの見本市で見せるということだけではなくて、常に海外のファッションブランドなどにPRできるような資料を作ってはどうかと考えております。4−3の資料の後半部分にテキスタイルのイメージを集めている雑誌がありますが、この写真のような具体的なテキスタイルをPRするというよりは、日本のテキスタイルの特色ですとか、そういうものをビジュアル的に、よりファッションブランドがイメージとして取り上げやすいようなPR誌を作ってはどうかと考えました。
日本独自、または日本で長年培われてきた技術、技法、織機、そのハードな部分の活用を支援していくということも重要だと考えております。
特にテキスタイルの場合は、最近効率化が重要視されていまして、速く、そして大量に作れるものということがかなり工場内で重要視されて、そちらの方向にシフトしておりますが、やはり日本の場合は人件費も高いですし、ただ安い生地を作ってということでは競争力もなくなってくると思いますので、今まで、日本でシャトル織機と言われるような、ゆっくりではありますが、風合いのいい付加価値を持った、独特な触感を持てるような生地というものをじっくり作れるように、多少効率の悪いものが工場内でもきちんと残るような支援ができたらなと思います。
あと、テキスタイルメーカーにとって、海外に向かっていくときに、やはり海外のファッション事情や海外でのファッションのクリエーションの方向、各国の経済状況、為替、ブランドの経営状況などの情報というのは、なかなか各産地のオーナーの方たちには届きにくい、または知る手段がないのではないかなと感じておりますので、そういうものを情報として発信できる機関というものがあれば、より具体的な、ただものがいいというだけではなくて、プレゼンテーションするいい資料になるんではないかなと考えております。
服だけではなくて、やはり繊維分野においてのクリエーション活動を大きく評価していくということも必要ではないかと考えます。
2番目にクリエーターの成長・維持を支えるということですが、それもクリエーター個人や、またはブランドという単体ではなくて、製造メーカーとの取り組みの際に、新人のクリエーターなどですと、製造コストに対してのメーカー側の不安もありますし、勿論準備する資金というものも十分ではありませんので、そういうものを何か保障制度などを作って、業者が取り組みやすいような仕組みを作っていくということはどうかなと思っております。
太田委員がおっしゃったような、クリエーターがビジネス的な知識を身に付けられる機関というものもとても重要だと思っておりまして、その際にブランドというのは、特徴が各それぞれあるということがファッションの価値でもありますので、学問的、一般的なものだけでは、1つの答えというものは出せないと思いますので、コンサルティングというと言葉がおかしいかもしれませんが、そのブランドに合った方向性、マーケティング、ビジネス的な戦略ということをアドバイスできるような機関が必要なんではないかなと思っております。
それと同時に、学生のときから国内繊維産地や、その流通の仕組みをクリエーションと同様に教育していくということが必要だと感じます。
3番は、産地とクリエーターが長期にわたって連携して、日本ブランドの本質的な濃度を上げていくということを長期的に見守ることが必要ではないかと感じております。
同時に、日本ブランドと言うからには、ブランドという価値を示さなければいけません。今、コピー商品や模造品というものがメイドインジャパンでも多く作られております。こういうものが横行していきますと、日本ブランドというものは、価値として当然海外に伝わりにくいものになってしまいますので、ファッション産業全体がコピー商品や模造品に対して、否定の姿勢を表明する、それを公共的にPRしていく必要があるんではないかなと思います。各ブランドごとが、コピーや模造品に対して、各々で係争していくんではなくて、公共的なPRをもって否定の姿勢を表明していくということが必要だと思います。
例えば、著名クリエーターによって、コピー商品反対のコメントを公共広告するなどの、何か全体的な動きとして、このコピー商品というものを否定していく姿勢が必要かなと思っております。
コピー製品・製造元・輸入元などに対して罰則を強化し、ファッションですので、迅速な対応を必要として、それを行動として移していくということが必要かと思います。
同時に、ファッションカレッジと言いますか、服飾専門学校においてもモラルを徹底していき、コピー商品、模造品の製造や、そういうものに対してのモラル、それに対して否定するということを教育としても強くしていく必要があるんじゃないかなと考えております。
以上です。
○牛尾座長 どうもありがとうございました。
では、これからの展開は、まず、参考人の方にお話をちょうだいします。その後、各委員からの自由な御発言に移りたいと思います。参考人の方から、時間を制約して申し訳ありませんが、5〜6分で東野部長からよろしくお話をお願いしたいと思います。
○東野参考人 東野と申します。私は、先ほど御紹介があったように、エルメスの日本の支社に20年ほど勤めておりまして、今年の4月から福助におります。
今日、5分間で、私の会社員人生の全部を語れと言われて、ちょっと無謀な挑戦にまいりましたけれども、エルメスというのは、御承知の向きの方もいらっしゃると思いますけれども、マスコミからは世界のトップブランドと言われている会社で、福助というのは、日本の靴下肌着メーカーなんですが、昨年6月に経営破綻した、こう言っては何ですけれども、最低の会社、すごく極端なところに来たんですけれども、それだけにいろいろな違いというのが本当にはっきり見えてきました。
私が勤めてきた日本でのラグジュアリービジネスの20年というのは、総代理店という、何とかジャパンとか、何とかジャポンという会社がちょうどでき始めて、現在、去年、一昨年辺りから、銀座、表参道の一等地にビルを建てるというような、まさに急成長していた時期でもありまして、どうしてこんなに成長したのかということを、つぶさに見てきたんですけれども、では、今いる会社の中で起きていることと、そういう会社が伸びてきたときにやってきたことがどこが違うのかということを、私は広報の宣伝の専門なので、ものづくりには関わっていないんですが、自分の仕事の観点からちょっとお話をしたいと思いました。
海外のブランド、私がこれから申し上げるブランドというのは、いわゆるラグジュアリーブランドで、高級品を扱っていることなんですけれども、それと国内とどこが違うかというと、まず、一番大きい違いは、社内のデザイナーなりクリエーターへの自由な発想への障害というのが一番大きいところがありまして、以前いた会社では前例のあることは絶対にやってはいけないことなんですが、日本の会社というのは、前例にないことというのは、相当時間をかけないと認めてもらえない。更に新しい発想を実行することによって、現在の売上げではなくて、将来的な発展というのが見えている。
例えばの話なんですけれども、エルメスという会社の作っているハンドバッグ、バーキンとか、ケリーとかあるんですが、これは今、お店で予約注文すると、10年から15年待ち、ひどいともっとかかるんです。お年寄りの方は、もうすぐ命がないから早くしてくれとよく言われたんですけれども、今、そのハンドバッグだけを例えば工房で作っていると、非常に売上げは上がって、会社は儲かるんですが、それだけをデザイナーとか職人にやらせていると、新しい発想で作って、新しい技術とかデザインというものが全く芽を摘まれて、会社の中にはそういうソフトが何も残らない。したがって、お客さんからクレームを言われて、20年待ってもらっても半分の生産体制は新製品であるとか、新しいデザインを作ることに注力されています。
その結果、例えば20年後、50年後には予約注文がなくなって、あきられてしまったときには、また違うものが残っているんですが、それと同じような考えで、今、福助で発言をしてみたところ、秋、冬の製品の生産が間に合っていないのに、新しいことをやるのは何事かと、そんなことは絶対にやらせないと頭から言われて、日本語でしゃべっているのに言葉が通じませんでした。これは、まだ今、進行中のことなので。
それから、やはり海外のブランドと日本のブランドが日本市場において何が一番違うかというと、いわゆる海外の子会社なんです。つまり、本国という強大な権力があって、そこが言っていることは絶対に従わないといけない。封建的を通り越して絶対王政の体制になっています。つまり、デザイナーなり、向こうのオーナーなりが、こうやりたいと言うと、支社の社員は全員死にものぐるいでそれを実行するわけです。
ところが、やはり日本の会社で、今いる会社を見てみると、何かいろいろ妥協がすごいんです。すぐあきらめる。こういう点も、もしかしたら日本市場においては違うんではないかと思います。
それから、いろいろな資料を拝見していて出ていたのが、やはりファッションとかブランドというのが数字で表現できない感性のものである。数字以外の付加価値というのが一切認められていない、それが問題で、例えば企業哲学を広報するとか、ブランドには神話があるとか、伝説があるとか、そういうことをやろうとしたときに、何の障害もなく予算が付いて、製品の売上げがそこで幾ら弾けなくても、イベントなり広告なりが実行できるんですが、日本の会社というのは、とある製品の売上げ、そこから出る利益、そこから計算しての販売促進しかできないケースがとても多くて、これではいつまで経ってもブランドと言ったときに、そこのブランドを聞いたときに、消費者の頭の中に広がる夢というのはいつまで経っても作れない。
私は、自分がものづくりの専門ではないので、ブランドというのは、消費者が何でブランド品を買うかというと、ものがほしくて買っているのが半分かもしれませんけれども、一種のレクリエーションみたいなもので、触れて手に触感があるものを自分のものにするだけではなくて、例えばずっとそれにあこがれて、お金をためてきたり、何か雑誌を切り抜いたりというような、前の夢みたいな行動があって、ある日お店に入って、それを手にしたときの喜び、それを持っていたときに友達に見せびらかしたときのうれしい気持ち、そういうものも全部含めて、本当にブランドを作るのであれば、ものを作ることだけではなくて、一種のエンターテイメントの演出、これを考えていただかないと、幾らいいものを作っても、ではそれを見せる演出なり、手にした人の喜びなりがわからないと、本当のブランドはできないんじゃないかなと思いました。
次に、デザインのこだわりということでも、さっき原委員がおっしゃっていたんですけれども、製品のデザインだけではなくて、それを取り巻く環境というのも非常に徹底しているところがあって、ファッションをやっている会社、ブランドと呼ばれているところは、会社の経営全般にデザインを適用している。
今日、ちょっと例でお持ちしたんですけれども、投資家に対して、経営報告書なり、アニュアルレポートというものを各社配っていると思いますけれども、福助と同じでストッキングを作っているウォルフォードというオーストリアの会社があるんですが、そこのアニュアルレポートというのが、こういうものなんです。こういう立派な冊子で、経営の数字も入っているんですけれども、写真をふんだんに使って、つまり投資家に対してもこういうイメージとか、夢とか、そういう知的財産をアピールして、そこから投資を引き出そうという姿勢が見られるんですが、一応会社に許可を取ってもらってきた、これが一部上場してきた福助の、もう今は上場していませんけれども、いわゆる経営報告書なんです。 やはり、このこだわりの違いというのが、私は今、日本市場で言われている海外のブランドにかなわないところではないかと思いました。
それから、エルメスというフランスの会社にいたので、日本のデザインとか、伝統的なものに触れる機会がかえって多かったので、フランスの人が、日本のデザインをどう評価しているかというのをお話しすると、フランスのコルベール委員会というフランスのブランドを海外に振興しようという団体があるんですけれども、そこが10年ぐらい前に、日本人の学生に対して、デザイン賞というのを行いました。これは、アメリカでもロンドンでも行われていたもので、そのデザイン賞に入賞した学生は、そのコミテコルベールの参加企業にデザイナーとして採用される機会があるんです。
日本で行ったところ、作品はいろいろ出たんですが、最後にフランス大使館で表彰式が行われました。そのときに、総評として出たのが、いろいろな国で同じような年齢の学生に行ったけれども、今回の日本での応募作品は大変レベルが低いと。本来であれば、コルベール委員会から賞などはあげられないけれども、努力賞ということで差し上げましょうと、はっきり言われました。
これが、例えば、日本のコンテストですと、いずれの作品も甲乙付け難くてと、だらだら話がありまして、結局政治的にもしかしたら今、何かあるかもしれないということで賞がもらえることがあるかもしれないんですが、それはデザインというものに対して、いわゆるこれから伸びようとする学生に大人が真剣に接してないからじゃないかと思いました。
フランスだと、フランスの例しか取れないんですけれども、デザイン全般に対して先輩がデザインを見る目があるんです。そういう人たちが見てはっきり評価してあげる、これがやはり伸びていく一番の理由じゃないかと思いました。
あとは日本の伝統工芸、これもフランス人がいろいろ興味を持って接しているんですけれども、表向きやはり美しいとか、すばらしいとか評価があるんですが、実際のところ多くの人が何と言っていたかというと、昔からあるものをそのまま模写しているだけじゃないかと。普遍性ということをとらえたときに、いつの時代も変わらないという評価は、時代と一緒に変わっているので、いつの時代の価値観が変わった時代の人にも同じものだと言われていて、常にヨーロッパの老舗と言われるブランドというのは、時代の空気というのを取り込んで変わろう、変わろうとしている。それがあるから100 年前と同じような評価をされる。
ところが、日本の伝統的な工芸品と呼ばれているものは、昔からあるものを模写して、まずそこの段階に行かないと新しいことをやってはいけないと。そうすると、そこの段階に達したときには、かなり高齢になっていて、もう新しいことをやる気持ちも体力もなくなっている。それの繰り返しで続いてきたものなので、若い人にはやはり魅力がない。伝統的なものをファッションにと言っても、作っているもともとの伝統的な工芸品の分野の人たちが、そういう体力がないので、若いファッションデザイナーが何か言ってきてもなかなか対応ができないというのが私は現状かと思いました。
ちょっと手短なんですが、以上です。
○牛尾座長 ありがとうございました。
それでは、河邉参考人、お願いします。
○河邉参考人 イトーヨーカ堂の河邉でございます。私は、3年前からイトーヨーカ堂でメイドインジャパン、いわゆる日本製品の開発と販売をやっております。3年前にスタートしたときに比べますと、もう売上金額も約300億の規模になりまして、産地も、毎シーズン60〜70産地、品目でも300 品目というふうに、もうイトーヨーカ堂の衣料品の中の品揃えではかかせない位置づけになってございます。
このメイドインジャパンというのは、社内的な規定がありまして、イタリアの生地を日本に持ってきた縫製したものを、これは原産国は日本ですけれども、これはメイドインジャパンと打たないと。要は、あくまでも日本の糸、編み、それから織り、染め、加工、縫製、そして付属も日本のものというふうに、相当厳しく日本のものを使っての製品という形で実はやってまいりました。
では、消費者が今この日本製品だとか、メイドインジャパンとかということに、どういう期待を持っているのか、実は事前にマーケット調査、アンケートをいろいろ取ってみました。日本製品ってどういうふうに感じているのかということなんですが、30代、40代の、私どもの中心のお客さん、ミセスのお客さんに調査いたしましたら、日本で作られている日本製というものに対するイメージは、即ち潜在的なイメージだと思いますが、期待しないというのが、センスがない、おしゃれ性がない、感性が豊かでない、デザイン性が低いというふうな項目が、実はこの日本製品、メイドインジャパンの発売前にイメージとして出てきたということです。
一方で、期待するというのは、縫製がいい、品質がいい、まじめ、無難、安心できる、素材がよい、きめが細かいというふうに、ものづくりに対しての姿勢には高い評価を得ているということなんです。ですから、一般的な消費者が日本のものということに関してのイメージというのは、ものづくりの姿勢は非常にいいイメージを持っている。ただ、ファッションとか、センスとか、感性とかというものに関しては、期待をしてない、イメージとしてはよくないというのが、実は調査から出てまいりました。
私どもは、まずこのいいところを積極的に打ち出していこうと、まじめに、丁寧に、しっかり作るのがメイドインジャパンだというようなキャッチフレーズで、地域ブランドとしての産地を入れる。
例えば、西脇のシャツ、豊岡のバッグ、五泉のセーターとかというふうに、産地名をきっちりと入れた形で、これをブランドとして販売をしてまいりました。非常にそういう意味から言いますと、高い支持を受けてきたということが言えるんではないかと思います。 2点目は、開発に行きますと、なぜ今さらメイドインジャパンなのか、日本製品なのかとよく質問されます。圧倒的にものづくりは、もう東南アジアの衣料が中心じゃないかとよく言われるんです。ファッションは日本ではないでしょうと、やはり欧米のファッションじゃないのと、どうして今さら日本製にこだわるんだという質問をよくされるんです。これに対しては、今だからこそ日本製品なんだということを私は申し上げるんです。それはなぜかと言いますと、もう今、衣料品は安いものが安い値段で大量に売れる時代じゃないんです。もう完全に、御存じのとおり飽和状態にあるわけです。ですから、消費者、お客さんから見て価値のあるものでなければ、今は値段が安いからってお買いになる時代じゃないんです。今は価値を求めておられるんです。
そういう意味では、日本の産地、日本で作られている素材にしろ、製品にしろ、もう一度これを拾っていきますと、世界に通じるすばらしいものがいっぱいあるということなんです。それを、なかなか今までは、物事簡単に安く大量に東南アジアでものを作ってきた。そうじゃなくて、価値というものを見直すと日本にまだまだいっぱいいいものがあるんだというのが、正直言って実態として出てきたと。ここに非常に私どもはチャンスどころがあるんではないかと思うわけであります。
3点目は、今、私ども中国で、北京で3店舗、成都で2店舗、小売りをやっております。これはほぼGMSに近い形、一部準百貨店に近い形で、衣料品のウェートが大体40〜45%ですから、非常に日本の我々の店よりも衣料品のウェートが高いです。
ここで、対日本のものに対する、またファッションに対する、どういうふうに消費者が思っているかということです。もう完全に、中国ですら日本のファッションというのは後進国です、もう欧米が圧倒的で、日本に対するファッション性を高く買うということはありません。ですから、意見を聞いてみますと、日本の消費者と同じようなんです。安心できる、品質がいいというような答えが、ほとんどの中国の人たちからも返ってくるということなんです。
私は、是非一つ提言申し上げたいのは、日本の製品、いわゆるブランド、テキスタイルというふうにありますけれども、世界に何が通じるのか、何が通じないのかということをよく掘り下げる必要があるんではないかと。私の意見かもしれませんが、日本で通用しないものが海外で本当に通用するのかなというふうに、実は思うわけであります。
もう一点あります。それは、海外と言っても中国とフランスとアメリカと、国によってニーズは違うと思います。ですから、ニーズが何なのかということをきちっと把握した上で、そこで大きな戦略をきっちり立てていくことが非常に重要ではないかと思います。
最後に、日本の素材は本当にいいものがあります。それから、加工技術もすばらしいです。匠の技、職人の技、これをアレンジしてあげると非常にいいものがあります。それから、ハイテクを利用した、いわゆる織りであるとか、編みであるとか、こういうものもすばらしいものがあります。ですから、本当にそういう意味で言うと、全くノーチャンスではなくて、本当にもう一度日本のものがどうなのかということを十分に知る必要があるんではないかと思います。
以上でございます。
○牛尾座長 ありがとうございました。
これから30分時間がありますので、3分ずつ話していただけると10の発言ができるわけですが、御自由に、大変に5人の方からいろんな角度で立体的に、非常にふくれ上がったすばらしい問題提起をいただきましたので、今度は委員の御発言を。
麻生委員、どうぞ。
○麻生委員 先ほど皆川委員、あるいは東野参考人から、伝統的な我々の織物が通用する余地があるんではないかというお話がございました。資料4−5ということでお配りをいたしております。
私どものところに、伝統的な織物として2つあるわけでありまして、1つは、博多織というのがあります。700 年以上の歴史があるものであります。これが、今、産業として見ますと売上げが34億円、従業員が445 名、まだ伝統産業としては非常に大きい方の産業であります。
これが、しかしずっと低迷しておりました。これを何とか打開しなければいかぬということで、いろんな試みをしておるわけなんですが、それの1つといたしまして、地場の5社と女性デザイナーの皆さんと組むということで、ロイヤル・チエの今井千恵さん、ジャンヌマリーの大倉紀子さんと提携をいたしまして、今まで考えられなかったんですけれども、いわゆるデザイナーの皆さんと組んでみようという試みを始めております。そして、実際に作っていますのは、素材を生かしましたハンドバッグとかサイドバッグとか、そういうものであります。
これでニューヨークに打って出ようということで、打って出ました。これが好評だったということで自信を付けておるわけでございまして、こういう従来の博多織とは違う製品の専門店も作っていこうということでやっております。更に、ニューヨークとかパリにも積極的に出していこうということであります。
それから、久留米絣というものが、これも長い伝統のものがあるんですけれども、これは博多織よりも大分小さいわけなんですが、これもようやく今までのやり方ではだめだということで、やはりデザイナーと積極的に組まなければいかぬということで、こちらの方はどちらかと言いますと、若者向きのアパレル商品ということで久留米絣を使うという試みをやっております。
博多織の方は、ずっと低迷して売上げも減少しておりましたけれども、こういう試みをすることによりまして、明らかに底を打ちました。それで、少しずつよくなってきているという状況です。久留米絣の方は、まだずっと減少傾向が続いておりますけれども、こういう新しい商品を作ることによって、新しいマーケットを作るということが、だんだん可能であるということに気が付いてきておるということであります。特に経営者も若い方だけではなくて、年を取った人でもしっかりした人はこういうことに非常に積極的です。という状況です。
ただ、実は正直申しまして、これをやるにはお金がかかっております。大体公的資金を2000〜3000万円注ぎ込んで、とにかく海外に行ってやろうじゃないかとか、こういうデザイナーと組もうじゃないかということをやっているという状況であります。
それから、今日の議論とはちょっと違うと言いましょうか、関連しているんですけれども、その次のページに東アジアにおけるソフトパワー競争という考え方で問題を提起いたしております。世界のファッションでいろいろ、日本のファッションという考え方も勿論あるわけでありますが、実際にはこの参考資料の中でいろいろ書いておりますけれども、実は東アジアでファッション、映画、デジタルアート、あるいは食、それからいろんな文化、こういうところで非常に中国、韓国、シンガポール、タイ、それぞれ焦点を定めまして、国として自分たちの得意分野で1つの東アジアにおきます、こういうソフトパワーの一分野の拠点になっていくんだという考え方を非常に強く持って動いているわけです。ファッションのことは、皆さんよく御存じかと思いますけれども、我々もアジアコレクションというのをやっているんですけれども、これはアジアのコレクションでやっているんですけれども、1つの特色は、いわゆるファッションとヘアファッションと組み合わせてやっているということなんです。
映画は東京映画祭が非常に盛んなんですが、例えば、今、韓国が猛烈な勢いで映画をやっておりますけれども、これは単に映画祭をやるというだけではなくて、映画を作るというそのものに対しても本格的な支援をやっているということです。そういう幅広い活動をやっております。
したがいまして、世界の中での日本ということと同時に、今、猛烈に東アジアでの1つの新しい文化の形態、若者文化とか、ポップミュージックとかできておりますけれども、その中でこの前もちょっと申し上げましたけれども、日本は圧倒的に今まで強かったんですが、実はだんだん圧倒的に強くなくなってきているという状況でありますから、やはり世界という視点と同時に、是非東アジアでのソフトパワーの競争ということも重要な視野に入れて政策を考えていく必要があると思います。
○牛尾座長 ありがとうございました。
浜野委員、どうぞ。
○浜野委員 環境整備について3点お話したいと思います。もう既に太田委員からお話があったものと同じです。フランスのファッション界で、活躍している有名デザイナーの出身地を学生に調べさせたものです。
日本人が海外に行って活躍することを支援するとともに、外国の方にも日本に来ていただくことも同じように重要だと思います。日本で活躍したいと思うような土壌を作る。もし引き込めなければ日本に魅力がないのですから、あきらめざるを得ない。先ほどのコルベール委員会のお話のように、いろんな形で海外の方を引き入れて顕彰して、活躍をしていただくというインフラを作る必要があるのではないでしょうか。
そういった点からも、外国人への顕彰事業というのは重要なのに、日本の顕彰事業というのは、ある程度の歳にならないとあげない。長生きしていてよかったという感じのものになっています。海外では時機を捉えて、タイミングよくあげるので、御配慮をいただきたいというのが1点です。
2番目は、正装の復活です。日本には正装という言葉がほとんど死語になっています。政府関係の表彰式では、平服で来てくださいと言われます。わざわざ、晴れの舞台での正装を押しとどめるようなことをしています。
数年前に、私が東京国際映画祭の国際審査員を頼まれたときに、正装でやってくれるなら出ますと条件を出して、それから正装になりました。そのときの歓迎パーティーで、日本の映画人が普通の背広で参加しているのを見て、審査員長のノーマン・ジェイソン監督が、「これは自動車のディーラーの会か。映画人のパーティーじゃないのか」と私に耳打ちしました。要するに、私たちは一生懸命おしゃれにしているのに、日本の映画界とはこういうものなのかという皮肉なのでしょう。
政府の式典では正装を復活していただきたい。「隗より始めよ」という言葉があるように、上の方からやっていただかないと、中央政府の表彰式が平服だから、それでは福岡県でも福岡市でも平服でいいということになってしまうわけです。原委員がおっしゃるように、ファッションはふさわしい環境とか景観が必要です。そういった場を消滅させていては、着る機会が失せてしまいます。せめて内閣府の表彰式は全員正装とか、この会議は全員おしゃれで来るとか、晴れの舞台には正装の復活をお願いしたいと思う次第です。
3点目は、太田委員が御指摘された教育の面なんです。日本では、目的的に美を観賞するという西洋的な美術教育を明治以降やっていますけれども、日本は日常使うもの、着るものとか、料理の飾り付けとか、そういった技芸一般に美意識を非常に見出してきました。
美術教育の中にそういった技芸を含め、伝統工芸品とか日常の飾り付けとかが位置づけられ、芸術系の大学にもファッションなどがあるべきだと思います。技芸の点から日常品としての美意識みたいなものをもう一度、美術教育とか美学の点で再検討を是非お願いしたいというのが3点目です。
以上です。
○牛尾座長 ありがとうございました。
ほかに、どうぞ。
○皆川委員 自分も産地ですとか、いろいろものを作る現場の大切さというのを痛感するんですが、考えていく最終的な到達点というのはジャパンブランド、日本ブランドということだと、この会の趣旨はそう思っているんですけれども、つまりメイドインジャパンということだけで終わってしまってはいけないのではないかと感じております。
メイドインジャパンということだけではなくて、そこに含まれるクリエーションやクオリティーが日本ブランドという付加価値を持っていることが大切なんだ思っておりますので、それをどういうふうに作っていくかということがこの場で話し合われていくということが必要なんではないかと。そのジャパンブランドの裏付けとして、クオリティーやクリエーションがある、それを成長させるためにこういう教育が必要というような考え方を進めていけたらと思っております。
○牛尾座長 ありがとうございました。
どうですか、他分野で三國委員。
○三國委員 原委員が先ほどおっしゃった、フランス大使館でジャンポール・ゴルチェさんのパーティーなんですが、実は料理を私が担当しました。なぜ私だったのかよくわからないんですけれども、彼は非常にアバンギャルドで、多分日本のシェフたちは手に負えないと言いますか、非常に大変なんです。そのジャンポール・ゴルチェさんのパーティーで、フランス人も日本人もリスクというか、結局批判されるのはこっちなので、私にやれということだったんです。
そのときに私がどういうプレゼンテーションをしたかといいますと、まずプラチナ箔を使ったんです。プラチナ箔は金沢で真四角に伸してもらったんです。金粉を普通は伸すんですけれども、プラチナ箔を伸せるというのは、金沢の金粉を伸している技術者しか伸せないんです。皆さんも多分見たことないと思うんですけれども、それは非常に特殊な技術で、彼も驚いていました。前菜にはユズを使いました。そのユズは、枯木ユズというのがあるんですけれども、100年の枯木ユズ、もう今、絶滅に近いんですけれども、その100年の枯木ユズというのは非常に大きくて、サクラの木ぐらいあって、その上に200年の枯木ユズというのがあるんです。四国の山奥にあるんですけれども、その200年の枯木ユズはめったに使えないんです。なぜかというと、そこまで行くにはクマがいるんです。なので、結局その方もそれを拾いに行かなければいけないので、今度クリスマスでその200年の枯木ユズを使うんですけれども、命がけで50個届けてもらいました。その枯木ユズをカルパッチョといって、刺身にお醤油とオリーブオイルと枯木ユズを使ってというプレゼンテーションをしました。
最後のデザートは、フランス語でラッケノアと言うんでけれども、ラッケというのは光る、ノアというのは黒い、漆塗りのことをフランス語でラッケノアと言うんですけれども、そのテカテカの黒いチョコレートムースの、漆塗り仕立てに見立てたデザートを作ったんです。原委員が召し上がったかどうか承知していませんけれども、ゴルチェさんも後で是非会いたいと言って握手して、すごく喜んでいただいたんです。
そういうプレゼンテーションと言いますか、日本のシェフを、普通であればフランス人のシェフを連れてきて、エルメスでもどこでもパーティーに、この前エルメスの銀座のパーティーで、フランスの私の友人のピエール・ガニエルというのがわざわざ来ていましたけれども、そういうフランス人を連れてくるんですけれども、日本人をあえて指名されたので、私としてはあえてそういう日本人の持っている一番代表的な、フランス人とか世界の人々が表現できない、特殊な技術と表現力でフランス料理で表現したということをやりました。
○牛尾座長 どうぞ。
○山田委員 今、三國委員がお話しになったことと同じなんだと思いますが、食とファッションのコラボレーションが大変大事と言いますか、欠けている部分があるんじゃないかと思います。成熟した社会において、食は単に栄養を満たせばいいとか、おなかをいっぱいにすればいいということではなくて、おいしかったり、安全・安心だったり、健康によいものということで食しているわけであります。更に、日本食とか、フランス料理とか、中華料理なんかも、食そのものもありますが、インテリアとか、食器とか、サービスとか、そういう文化を食べているというふうに言ってもいい時代に来ているんだろうと思います。 ですから、そういう面ではこれら全体をファッションというふうに言えるというか、ファッションそのものだというふうに言えると思います。
そういう面では、それこそ狭い意味でのファッションという意味だけではなくて、日本の食文化や食のスタイル、そういうことが協同で情報発信されるということが大変海外でも評価される、翻ってそれは日本に来て評価されるということかと思います。
残念ながら私が行ったわけではなくて、私の部下が行って経験してきたわけでありますが、ミラノのアルマーニのアンテナショップで、1階はレストランが和食のNOBUだそうでありまして、ディプレイのワインセラーには新潟の日本酒が並べられていたということであります。それから、2階のインテリアショップは、和がテーマとなっておりまして、お箸と茶碗を売っていたということであります。つまり、アルマーニのような著名な海外のファッションデザイナーが、日本の食文化を意識してアンテナショップで取り上げているということでありますから、そういう面では日本の食文化のポテンシャルというのは大変あるというふうに考えていいんではないかと思います。
そういう面では、本家本元の日本が、広い意味でのファッションを通じて日本文化を伝えるという、こういう取り組みと言いますか、意識と言いますか、それがもう大変大事かなと思います。
○牛尾座長 ほかにありませんか。どうぞ。
○太田委員 今の浜野先生のお話の中で、正装ということと美の教育というお話がありました。1つ実例があって、ニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインという学校は、学生の卒業制作、日本では規模はともあれ、普通にみんなが行って、学生が見て終わってしまう。ところが、パーソンズの卒業製作というのは、まず業界リーダー全員が正装で来るんです。タキシードとドレスで、そのテーブルをみんなが買うんです。その1日の売上げが約2億円あるんです。紡績の社長さん、百貨店の社長さん、アパレルメーカーの社長さん、有名なデザイナーがみんな来て、みんなテーブルを買って、正装で来て、学生の大したことない服を見るわけです。
その中で彼らがやっていることは、その2億円はどこに行くかと言ったら奨学金に回っていく、それが1つです。もう一つは、そこで出来のいい子は、うちにおいでということで連れていくわけです。そこで採用を起こす。
もう一つ、我々も実は数年前の金時計、その子はギリシャ人だったんだけれども、その子は私が授業に行ったときに、私は日本で働きたいんだと、何でアメリカのある著名なデザイナー、だれでも知っているデザイナーに誘われているのになぜ行かないんだと言ったら、つまらないと。何とかして日本のデザイナーの下で働きたいんだと言って、うちに来るかと言って、まず航空チケットを送るから日本を見に来いと、住めるのかどうか自分で確かめろと言って、それで見に来て、結局、今、うちに来て働いていて、貴重な戦力になっているんですね。私の選択は間違ってなかった。
それから、その後輩たちも、盛んに日本に来たい、日本に来たいという、手紙やメールがいっぱい来るわけです。また、ロンドンのセント・マーティンスの金時計の子も、これは台湾人だったんだけれども、これも卒業してどうしても入りたいと。だから、日本語勉強して来いと言って、勉強して入って来た。
今、うちだけではなくて、外国人を取り込んでいる企業もあると思います。ただし、うちも同じて、そのときにスタッフが言葉ができない。その中で彼女たちも日本語に学びながら一生懸命やっている。やはりそこで異文化が交流すると、とても面白いものができる。三宅がいつも言っているのは、やはり血が混じると面白いものができるねと。そこに日本がとても苦手なところがある。言葉の問題もあってできなかった。でも、それをやっていくととても日本のベースの中から、何か突然変異で面白いものが出てくる。それを世界にどう発信していくのかというのが、恐らくこのジャパンブランドにとってもとても大事なものだと思うし、学生さんたちの作品をディナーパーティーで、業界のリーダーが正装して見に行くという、こういう何か産学協同みたいな空気がもっと日本に生まれると、もっともっと日本の教育現場の雰囲気が変わっていくんじゃないかと思います。
○牛尾座長 そのテーブルは、日本の企業は買ったりしないんですか。
○太田委員 1社あります。
○麻生委員 浜野先生の正装と言う場合には、先生の言う日本の正装というのは、何なんですか。
○浜野委員 エンターテイメントの世界では、ブラックタイというのがあれですね。
○牛尾座長 大体両方書いてありますね。ホワイトタイとかブラックタイに、ナショナルコスチュームタイとかね。
○三國委員 先ほどのNOBUさんの話なんですけれども、実は佐渡島なんです。NOBUさんに収めている日本酒のメーカーが。
今、佐渡が非常に観光客を、新潟県もそうなんですけれども、佐渡の観光客が今すごく減っていて、何とかしなければいけないと。私、スローフードの運動をやっているので、スローフードの町にしたいということで、行政に呼ばれて行ったんです。そうしたら、その日本酒をNOBUさんが、NOBUさんのオーナーというのはロバート・デニーロで、デニーロさんとアルマーニさんが友達で、それであそこの出店に至ったんですけれども、とにかくデニーロさんが日本酒通で、NOBUさんが佐渡島の日本酒の蔵元まで連れて行ったときの写真がでかでかとありました。デニーロさんがニューヨークでボランティアのパーティーをやったら、その蔵元の亭主がドンペリを飲んでいたので、それではたから行って、何でお前ドンペリ飲んでいるんだ、お前も日本酒を飲めと言うぐらいなのです。私が佐渡に行ったときに、どうしてあなた方、ロバート・デニーロが日本酒が大好きで、そこの新潟の蔵元の日本酒が大好きなのを何で宣伝しないんだと、こんなこと宣伝したら、マーケティング、日本じゅうにあっという間に、行政もそれを手伝って、ロバート・デニーロが来た、三國シェフが来たと言ったら、一躍観光客が増えるぞなんていう話はしたんですけれども。
ですから、そういうことが逆に既に巷と言いますか、部分では、イタリアでも、ニューヨークでも、佐渡でも起きているんです。それを表現してないという状況で、非常にもったいない。
○牛尾座長 十分可能性は持っているんだけれども、日本人によって生かされてないわけですね。
○三國委員 そうですね。
○牛尾座長 どうぞ。
○中山本部員 意見ではないのですが、感想を申し上げます。これはジャパンブランドのワーキンググループですけれども、食とファッションでは大きく分けてかなり違うんだろうと思います。ファッションの方は、これは知的財産法にかなりなじみやすい分野だろうと思います。先ほどの東野参考人のおっしゃったこと、非常に面白く拝聴したんですけれども、これは国家と言うよりは、むしろ個々の企業のブランド戦略をどうするかという問題のように思えます。個々の企業のブランド戦略がしっかりしていて、世界で通用すれば、恐らく日本の全体のイメージも上がるということだろうと思います。
それに対して食の方は、個々の企業のブランドイメージというよりは、日本の文化を世界に知ってもらうということだろうと思います。その場合の食というのは、山田委員のおっしゃったように、勿論、食それだけではなくて、食器とか、マナーも含めて、あるいは場合によってはもっと食以外にも生け花でも、盆栽でも、場合によっては柔道でも、剣道でも、最近は相撲でも、日本のことをよく知ってもらうと。日本にいいイメージを持ってもらうという。これは全然戦略が別です。
○牛尾座長 小山委員、どうぞ。
○小山委員 コルベール委員会がありますね。プラザアテネで、8年ほど前に私のフェアを1週間やってくれたんです。大入り満員だったんですけれども、そのときにコルベール委員会の当時の委員長が来て、ニューヨークのリッツで君の料理をやりたいと言われて、私、青首鴨のことをコルベールと言うんですね。私のつたないフランス語では、カモの委員会が料理作れと言われて、何で私が行かなければいけないのかという感じで断わったんですね。後で聞けば、それはブランド全部の委員会だったということで、非常に残念だったなと思っています。そのときも、また他にも、いろいろなホテルでさせて頂きましたが、実はフランスは日本酒を持ち込めないんですね。アメリカは割合輸入が楽なんですね。ワインでさえ入れないんですね。日本の山梨のワインがボルドーのコンテストで金賞を取ったということで、ベルサイユでフェアをしたときにそれを出しました。アラン・デュカスというシェフがおいしいと気に入って、スプーンという店を作るときにそれを並べたいと言っていましたが、そうしたら入らないんですね。
ですから、実は日本の国の人もいろいろやりたいことはたくさんあると思います。私も何かやるたびに、なかなか難しいです。私が海外でさせて頂くときには、実は、中山先生に叱られるかもしれませんけれども、すべてフランスのお皿を使うんです。向こうのホテルに日本の漆器とかをすべて持ち込むと、それだけで莫大な費用がかかり、向こうのホテルがペイしないんです。ですから、日本料理というのは、私はお皿の中にきちっと日本料理があるというのが、まず先決であると思います。私たちはやはり食を大切にしたいと思います。
それから言うと、太田委員も言っているように、教育の中で、辻先生もいらっしゃいますけれども、私は料理の大学を是非作っていただきたいと思います。そのことによって格付けもできるし、世界の中で日本料理というものをきちっと表現できる。日本の中でも、一地方料理ではなくて、日本料理というナショナルブランド的なものを作って、それで初めて世界戦略も組めると思います。後ろに資料も作って下さってありますけれども、こんなところもファッションも食も悩みは非常によく似ています。ドメスティックなブランドなのか、ナショナルブランドなのか、グローバルブランドなのかということの意味づけが、海外から見た場合と、国内で見た場合と違うので、そこのところの格付けや位置付けのゾーニングをきちっと分けたら、そこで初めて世界の人にも、日本という国がよく分かるようになると思うんです。その方法を国家的にも大学というようなものを踏まえて、スタートさせられるようなことがあればいいんじゃないかと思っております。
○牛尾座長 ありがとうございました。
最後になりますので、2分ぐらいでお願いします。
○土肥委員 わかりました。本日のジャパンブランドということのお話を伺っておりまして、基本的には創造と伝統をどう調和して戦略を構築するかということなんだろうと思います。つまり、創造という部分、クリエーションですね、そこのインセンティブをどう作るか。それから、伝統におけるクオリティー、質をどう戦略的に喧伝していくかということだと思います。
いずれにしても、1つの問題としては、従来から出ています、人の育成の問題がありまして、これについては、例えば、文科省では、現代GPとか、特色GP、グットプラクティスというのをやっておりまして、これは既に相当大きく新聞等でも報道されております。
そういうグットプラクティス、あるいはそういうGPの対象の1つに、こういうさまざまなファッションの人材育成の教育プログラムと連動させるということが可能なわけですから、その辺りときちんと連絡を取る。これが1つあると思います。
それから、法律的な話としては、恐らく創造していく部分の保護と、伝統を継承していくところの部分の保護は、多分違うんだろうと思うんです。恐らく創造していく部分については、従来の知財というのはかなりうまく行くんだろうと思うんですけれども、創作部分の保護として。伝統を継承していくというのは、恐らく今まで出てきたのでいくと、やはり地域ブランド辺りが最も効果的ではないかと思っております。
以上が感想です。
○牛尾座長 時間が来てしまいましたので、本日の会合はこの辺で終えるわけですが、先週ちょうど私が雑誌の対談で、銀座のシャネルの10階に新しくできたフランス料理店に行きました。もうシャネルのイメージを本当にこだわりまくっていて、さらにびっくりしたのは、ほとんどまだパンフレットもできてない、チラシもできてないのに、客がいっぱい入っているんですね。1週間目ぐらいからそうですから、日本人の潜在的需要はすごいと思います。
これだけ好奇心の強い、しかも贅沢なマーケットを持っているというのは、これは絶対に成長の秘訣なんです。そのシャネルというファッションと三ツ星レストランが一緒にいるという例を見ても、やはりこの委員会は非常に先見性があっていいんじゃないかと思います。レストランとファッションを一緒にやることをあのシャネルが実にやり始めたのですから。今、土肥委員からも創造と伝統という話がありましたけれども、日本の自動車だってデジタル化だって、実は企業の中ではその部分をうまく和で融合している強さなんです。それが、社会では政治が日本の経営のように融合させられなくて、勝ち組、負け組になってしまうから、この日本全体としては力がない。個別企業はそれを全部結んでいるわけですね。だから、もうすべての会社の中に伝統的に古いものもみんな残っているし、フロンティアもあって、それを経営力でつないでいるというところが日本の企業の強さなんです。それがなぜ行政でできないのかというのが、私は最大の疑問だと思います。
そういう問題もありまして、第2回目の今日の議論は、非常に深い議論が多かったと思いますが、これを事務局でよく整理をしていただいて、また東野参考人、河邉参考人、本当にいいお話をありがとうございました。東野さんもがっかりしないで頑張ってください。河邉参考人の方は、基本的にはそれがいいものだとなっていくことは必ず見えているわけですね。
次回は、食分野が中心になって、食分野、地域ブランドについての議論をしたいと思います。来年1月21日金曜日の14時〜15時半までやりますので、今度は食グループの方によく勉強をお願いしたいと思います。
本日は誠にありがとうございました。
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