デジタルアーカイブの連携に関する実務者協議会(第1回) 議事概要
日時:平成27年11月25日(水)15:00〜17:00
場所:中央合同庁舎4号館 108会議室
【議事】
1.開会
2.実務者協議会の開催及び会議の運営について
3.デジタルアーカイブ構築に係る情報共有及び今年度の実務者協議会の具体的な進め方
- (1)各分野におけるデジタルアーカイブ構築の状況について
- (2)今年度の実務者協議会における主要論点について
- (3)デジタルアーカイブ構築の海外事例
- (4)今年度の実務者協議会の具体的な進め方について
4.アーカイブ利活用促進に向けた制度整備の状況について
5.閉会
【概要】
1.開会
- ○高野座長より挨拶
- 知財推進計画2015等で謳われる国の施策を各分野で無理なく実現するにはどうすればよいか、この場で話し合いたい。
2.実務者協議会の開催及び会議の運営について
- ○事務局より、資料1−1及び資料1−2に基づき説明。
3.(1)各分野におけるデジタルアーカイブ構築の状況について
- ○国立国会図書館、日本放送協会、放送番組センター、文化庁伝統文化課、国立近代美術館、国立博物館、文化庁芸術文化課より、資料2−1〜資料2−7に基づき説明。
3.(2)今年度の実務者協議会における主要論点について
- ○国立国会図書館より、資料3に基づき説明。
- ○質疑の内容は、以下の通り。
(高野座長)
- 「アグリゲーター」の役割をどう捉えるか。
(東京国立博物館 田良島課長)
- 自館内に閉じたデジタル化やその公開は、金銭面の問題を別とすれば比較的ハードルは低い。美術館と異なり、文化財の世界は基本的に著作権が問題となるケースは少ない。画像データも、最近では内部で撮影するため、著作権で問題になるケースも減少している。
- だが、目録を繋ぐのは国立博物館4館だけでも難しい。どこかでプラットフォームを作らないと前に進まないと感じるが、東博としてはそれだけの立場や力量がなく、消極的にならざるを得ない。
- 博物館法人の外側にプラットフォームを構築すること自体は問題ない。
(高野座長)
- 文化遺産オンラインも当初はプラットフォーム的な役割を期待されていたが、体力的な問題等でその役割を果たし切れていないのが現状。
- 東京国立近代美術館からオーファンや権利許諾の話が出たが、これがどこまでの許諾かという点が、今後問題となるのでないか。
(東京国立近代美術館 水谷室長)
- 国立美術館の所蔵作品のメタデータについては、我々の所蔵作品総合目録で活用するのと同じように、文化遺産オンラインでも国立国会図書館サーチでも利用していただいている。
- 国立国会図書館サーチで検索して最終的に画像が見られるのは、あくまでも国立美術館の所蔵作品総合目録のサイトとして許諾を受けているため。これらの画像を別サイトに持っていくには、改めて許諾を受ける必要があると考えている。
- 今後の分については許諾の取り方をフレキシブルにすることで対応可能かもしれないが、これまでの許諾分については公開範囲の限定があり悩ましい。
- ただし、メタデータについては少なくとも国立美術館としてはオープンにするという意思は持っている。
(高野座長)
- 許諾については文化遺産オンラインも同様の状況かと思う。
- メディア芸術分野の権利関係の整理はどうなっているか。
(文化庁芸術文化課 加藤課長)
- メディア芸術については、文化庁がコンテンツそのものを持っている訳ではない。メディア芸術データベースでは書誌情報と現物の所蔵館のみを掲示しているため、別途各所蔵館にアクセスして見てもらう形となる。
- 今後データベースが充実しても現物に対する権利が切れない限り、利用条件云々まで進めにくい。
- 文化庁としては、書誌データの整備や原画のデジタル化に対する支援まではできるが、画像を統合ポータルにアップするということまでは難しいと考える。
(高野座長)
- これまでの文化遺産オンラインでは、呼びかけに応じたボランタリーでの提供がベースだと思うが、今後の収集ポリシーをどのように考えていくのか。例えば文化財自体のメンテナンス等の修復作業と、文化遺産オンラインでの発信とを結びつけるような工夫として何かできるか。
(文化庁伝統文化課 大谷課長)
- まず文化遺産オンラインを知ってもらうため、普及啓発活動は継続する。
- アクセス数を増やすにはコンテンツの充実化が重要。現状、国の重要文化財の画像ですら不揃い、作品の説明も貧弱、外国人が理解しにくい等の問題がある。
- 文化財本体の修復は所有者が行うべきであるが、メンテナンスと情報発信をつなぐ部分について、デジタル化も含め、誰が行うべきかすぐには結論が出ない。
(高野座長)
- メタデータ推進に関し、組織的に大規模なところはともかく、中小規模では難しいという状況もよく聞く。
- 物の所蔵、メタデータの作成、その発信
- 活用の全てを同じ組織が担うことに無理があるように感じる。例えば、メタデータを他者が作ることについてどう考えるか。
(東京国立博物館 田良島課長)
- 物の大きさや材質等の基礎的な情報についてのメタデータ化は、現物を見て行う必要がある場合が多く、基本的に所蔵館が行うべきであり、博物館機能として最小限の情報であっても自ら発信していくべきと考える。
- 博物館資料の情報は、館内職員の他、外部の方が実際に見ることで発見されることも多い。そのため、物を見た人が情報と物そのものを結びつけられるような仕掛けも重要。
(高野座長)
- 「松本竣介」で検索したところ、近代美術館が12枚、全国では文化遺産オンラインだけで20枚以上の作品があったが、それらの情報が繋がっていないのはもったいない。
(東京国立近代美術館 水谷室長)
- 美術館がこれまで大量に作ってきたメタデータの多くは紙媒体であり、機械可読になっていない。データベースの整備には人材の問題もある。
- 紙媒体の情報を機械可読化するための同意と資金的援助が得られれば、公開されるメタデータ量は一気に増加可能と考える。
3.(3)デジタルアーカイブ構築の海外事例
- ○生貝構成員より、資料4に基づき説明。
- ○質疑の内容は、以下の通り。
(高野座長)
- 考え方を整理する上で、資料13ページ目の三層構造の図が分かりやすい。昔は紙媒体で十分であったが、この時代でのバージョンアップが求められる中、過去の作業を無駄にせず、今後どう進めていくのか、この協議会で問われている。
- テクニカルに法律で決めるという話もあり得るが、事実上、誰がどこまで行うか分担がなされ、権利関係も含めこの三層で整理されるところを目指したい。
- 放送に関し、例えば番組表のようなラテ欄情報は一種のファクトとしてオープンな情報に見えるが、実際に集めて利用しようとすると権利も未整理の状態に感じる。
- 例えば番組表を公開するような考えはあるか。また、今後サービスに組み込もうとするとデータとして纏めて利活用できるかが重要だが、その可能性はあるか。
(日本放送協会 古堅部長)
- 番組表については、テレビ放送が始まってから現在に至るまでのテレビの全放送分をホームページで公開している。
(放送番組センター 鈴木事務局長)
- データとして纏まれば、利活用の可能性はある。
- 放送番組センターでは、当センターで保存している番組の内容等の情報を放送局から提供を受けて収集しており、ホームページで公開している。ラテ欄の情報は収集していない。
(東京国立近代美術館 水谷室長)
- 美術館や博物館で作成してきた紙媒体の所蔵品目録は、まさに資料3の13ページ目の三層構造の図のメタデータとサムネイルに該当する。
- インターネットの普及に伴って、最近、美術館は画像の扱いについて非常に慎重になってきている。これまで、作品の文字情報や名刺大程度のサムネイル画像は目録に載せる慣行もあったが、インターネットでの画像の扱いについてはルールが不明確であり公開も躊躇せざるを得ない。
- そこで、「サムネイル」等の定義を規定する等した上で、公的文化施設においては原則CC0ということを明確にしてもらえれば、美術館としても安心してサムネイル画像の公開率を一気に上げることができる。
(高野座長)
- 慎重さが妨げとなることもある。そのため、きちんとルール化することが重要。例えば、欧州委員会勧告第5条には、パブリックドメインである資料は、電子化された後もパブリックドメインを確保する、というルールが書かれている。
- そういった社会的合意を国際的な基準で見てもおかしくない範囲で取り込んでいけると良い。そういったルール作りも含めて、この場での報告、提案に取り入れていきたいと思う。
(秋田県立図書館 山崎副館長)
- 根本的なところかもしれないが、デジタルアーカイブが何を指すのかが明確でないように思う。総務省の地域情報化アドバイザーとして全国を回った際に受けた相談は、デジタル化に関するものが多く、公開についてはほとんどなかった。デジタルアーカイブが「デジタル化して保存したもの」のみを指すのか、「公開するまで至ったもの」を指すのかでは大きな違いがある。
- ここ数年、地方でもデジタル化に予算が付き始めており、必要性も認識されてきているが、デジタル化したところで終わって放置されている場合が多い。デジタル化したデータを公開する仕組みが必要だが、各機関がなかなかそこまでたどりつけないようだ。
- アグリゲーターの定義もきちんとする必要がある。企業やNPO団体でもデジタル化を始めており、分野ごとのアグリゲーターだけでは漏れが生じる可能性がある。地方のアグリゲーターも重要。縦、横の両方向からアグリゲーターの存在を検討した方が良いと考える。
(高野座長)
- 所謂プロのアーキビストにとってのデジタルアーカイブとは、ボーンデジタルな情報を保存することであり、我々がやっているものはデジタルコレクションだと言われる。
- この会議におけるデジタルアーカイブの利活用とは、デジタル化という手法を使って、何らかのアーカイブのようなポリシーで蓄積したものについて新しい利活用を図っていくことだと思う。
- アグリゲーターの役割はデータを集める方法を標準化すること。加えて、利活用の際に、誰かが情報を上げれば関連情報を返すような双方向に情報をつなげることも重要な役割。
- そのニュアンスを含むように「アグリゲーター」という名称自体についても本協議会で考えていければ良い。また、アグリゲーターは一つの組織で担う必要もなく、NPOや役所が分担することもあり得るだろう。
(内閣官房知財事務局 中野補佐)
- アグリゲーターの定義について、資料3の3ページ目のアグリゲーター構造の図では個々の収蔵館が一つのアグリゲーターにまとまってEuropeanaにいくように見えるが、話を聞く限りではニュースとして集めたり歴史的事象等のトピックとして集めたり、単なる線形構造ではないようだが、実態はどうなのか。
(東京大学大学院 生貝特任講師)
- ご指摘の通り、一つのコンテンツが複数のアグリゲーターを通じて収集されるケースは存在しており、Europeanaでも重複コンテンツがあることは認識されているが、その辺りはある程度おおらかに進めているようである。国や地域ごとの縦軸と、分野ごとの横軸という両方から、まずは少しでも広く網羅することを重視して収集を進め、重複の問題は後から解決していくということだと理解している。
(高野座長)
- 私も同じ認識。テーマごとに集めるために、何らかのポータルに繋がっており、当然重複がある。Europeanaは登録件数こそ多いものの、各情報の質に凹凸感があるというデメリットが指摘されている。
- 発信の形を統一した上でデータが収集できると質は統一されるかもしれないが、それぞれのやり方に良し悪しもある。日本は欧州と違い、一国でできるのであるからもう少し上手く出来ると良い。
(国立国会図書館 大場課長)
- アグリゲーターについての概念が曖昧であり、日本の現状に対してどう適用すべきか、もう少し整理し詰めていく必要がある。
- 権利関係では、データベースの著作権があることが良い面と悪い面がある。国立国会図書館としても、データベース丸ごとはまだ無償提供できておらず、その点の整理も必要。
- サムネイルは、本の世界でも非常に効果的で、表紙が見えるだけでもまるで印象が違う。サムネイルが載ることで利用が進むということもあるので、この辺りの方向性も出せるとありがたい。
3.(4)今年度の実務者協議会の具体的な進め方について
-
○国立国会図書館より、資料5に基づき説明。
4.アーカイブ利活用促進に向けた制度整備の状況について
-
○文化庁著作権課より、資料6に基づき説明。
5.閉会
-
○次回の実務者協議会は、1月以降に開催予定。
以上
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