○福田官房長官 総務大臣どうぞ。
○片山総務大臣 コンテンツのことでございますが、コンテンツの重要性でありますが、私が云々するあれもありませんけれども、このコンテンツ政策を総合的に展開していく必要があるということから、今回の推進計画の骨子におきましては、独立した第4章を設けていただきまして、コンテンツの創造、保護、流通の各段階における必要な施策を網羅しておられることは誠に適切であると考えております。
私ども総務省でも、放送事業者、権利者団体等と連携して現在やっておりますプロードバンドコンテンツ流通の実証実験等を通じて整備が進みつつありますブロードバンド・インフラの上における新しいコンテンツ市場が形成されるように取り組んでまいる所存でございます。
ただし、この中にコンテンツ・ビジネス振興法の検討等という表現がございましたが、放送事業者や権利者団体と関係者間の利害関係や過去の経緯もございますので、そういうところの意見交換を十分に行える場を別途設けるなどしまして、その調整をきっちり行っていく必要があると思います。そうでなければ、幾ら言っても絵にかいた餅になりますので、そういう面でも我が省としては積極的に協力してまいりたいと考えております。
今回の推進計画骨子や参考資料によりますと、国の機構定員に係る話があちこちに出てまいりますが、これは中央省庁改革以来、政府の基本方針は行政の減量、効率化、スリム化ということでございますので、機構の新設や増員が当然あるということではなくて、政府として、どのような機能を担うべきかを中身をしっかり議論して、既存組織の活用など、十分検討した上で、どうしてもやむを得ないものに限るべきであると考えますし、その場合でも、スクラップ・アンド・ビルドということでございますので、その点は御留意いただきたいと思います。
以上です。
○遠山文部科学大臣 諸先生方がおいでになりますが、こちら側が先に発言させていただき恐縮です。
今回、提出されました骨子案につきましては、おおむね必要な事項が記載されておりまして、この案に基づいて今後具体的な内容を議論して、その結果を再び骨子に反映していくということが適切だと思います。御尽力を大いに評価をしたいと思います。
我が省関連の事項はどこを見ましても随所に出てまいりまして、責任の重さを感じるわけでございます。特に、今回、映画等や人材育成について柱が設けられましたことは、これらを知的財産の重要な要素として積極的に推進していくことの必要性を明確化したという点で大変意義あるものと考えております。
3点絞って申し上げたいと思います。個別事項のうち、「第1章 創造分野」の関係でございますが、推進計画において、大学等における知的財産の創造の重要性を明確にしたことは適切と考えております。「知の創造・管理・活用」のため、現在、整備中でございます「大学知的財産本部」については、来月中旬には30から40ぐらいまでの数を選定いたしまして、これで総合的な体制というものをつくっていきたいと思っております。そこに集う人たちのいろいろな知恵も集約しながら、こちらの御議論にも反映させてまいりたいと思っております。
それから、先端機器の研究開発等の研究基盤整備の強化に取り組みたいと思っておりますほか、大学等で生み出されました「知」の権利化の促進が課題だと思っております。特に、国際的な視野に立った特許の取得につきまして、政府としても支援をしていくことが非常に大事だと思っております。
2番目には、個別事項の「第4章 コンテンツ・ビジネスを飛躍的に拡大する」ということについてです。総務大臣からも評価のお言葉がございましたけれども、私どもの方から見ましても、いわゆる「メディア芸術」とされております映画、アニメーションなどの創造・保護・活用を網羅的、体系的に推進するということは大変大事な課題だと思っております。特に。日本のこの面における力は、世界から注目を浴びているわけでございます。この点につきましては、文化庁で「映画振興に関する懇談会」がつくられまして、先般、レポートが出ましたが、その分野をどうやって振興していくかということも考えているわけでございます。多様な支援のための仕組みについては、今、検討中でございまして、そういった中身についても、また、こちらに反映させていただければありがたいと思います。
3点目は、個別事項の「第5章 人材育成と国民意識を向上する」ということが明確に取り上げられていることについて評価をしたいと思います。
現在、御存じのように法科大学院、それから技術経営大学院などの専門職大学院の設置等で、人材育成を推進しようとしているわけでございますが、特に法科大学院は国家戦略としての司法改革の一環として取り上げているわけでございます。今後設置されようとしている大学院の多くのところで、知的財産に関するいろいろな講座、カリキュラムが組まれていくことを期待しております。
同時に、理系の出身者をどう活用していくか等、これからまだ詰めなくてはならない様々な問題もあると思いますが、私どもも努力をしたいと思います。その際は、是非とも先生方のお知恵を拝借したいと思います。
よろしくお願いいたします。
○森山法務大臣 この骨子の中には司法制度改革推進本部において検討している事項や、既に着手し始めている事項が多く含まれております。御存じのように、今般の司法制度改革は、司法制度改革審議会の意見、2年にわたって慎重に審議していただいたものですが、この意見を踏まえまして、閣議決定されました司法制度改革推進計画に基づいて進められているものでございます。
そこで知的財産戦略本部において、推進計画を定めるに当たりましても、司法制度改革推進本部と十分に調整して、同じ内閣にある本部として閣議決定の趣旨との整合性を確保する必要があると思います。
まず、推進計画案の骨子の中には、知的財産高等裁判所や、いわゆる技術系裁判官について触れている部分がございます。この問題は司法制度改革推進本部の知的財産訴訟検討会で検討を進めているところでありまして、これには荒井事務局長さんも入っていただき、ほかの先生のお知恵もお借りしているわけでございます。
この検討会における議論の中では、いずれの問題につきましても、賛否両論があると聞いております。
また、国会に今提出いたして、現在、審議をいただいている民事訴訟法等の一部を改正する法律案、これは衆議院は既に通過いたしましたが、実質的な意味で知的財産高等裁判所の機能を創出するような内容が盛り込まれております。具体的には特許権、実用新案権等に関する訴訟の管轄につきまして、第一審を東京地方裁判所及び大阪地方裁判所に専属するものとするほか、控訴審についても、東京高等裁判所に専属化するということにされておりまして、更には特許権等に関する訴訟の審理の特則といたしまして、5人の裁判官による合議体で審理及び裁判をすることができるようにする制度も盛り込まれているわけでございます。
つまり、知的財産訴訟の専門的処理体制の強化を図るということが、これから行われようとしているわけでございますので、このような制度の導入の後の姿を少し見る必要があると思います。
したがいまして、この場で新しい制度を導入する結論を決めてしまうのは、ちょっと早計ではないか。相当ではないと考えます。
そのほか、法曹人口の大幅な増加とか、知財弁護士という新たな制度の創設、弁理士の機能の強化などといった提案がなされておりますが、法曹人口の増加、知的財産に強い弁護士の育成、弁理士の活用については、いずれも司法制度改革の重要なテーマでございまして、さまざまな観点から検討を加えた上で具体的な制度設計がなされて、これからスタートを図ろうとしているところでございます。したがいまして、提案された点は、現段階で結論づけをすることは適当ではないというふうに思いますし、司法制度改革における運用を見極めた上で十分に検討することが必要ではないかと考える次第でございます。
○亀井農林水産大臣 植物新品種という知的財産の適正な保護を図る観点から、育成者権侵害対策の強化に取り組んでおります。近年新品種が不法に海外に持ち出され、その収穫物が我が国に輸入される等、権利侵害が進んでおりまして、農家、産地への影響が懸念をされております。このため、育成者権侵害に対する罰則の強化を内容とする種苗法改正法案を今国会に提出しております。現在、参議院を通過いたしまして、衆議院の段階にきております。また、関税定率法改正による税関での育成者権侵害物品の取締りが効果的に行われるよう、財務省、税関とも連携をしてまいりたいと考えております。
育成者権侵害の対策として、DNA品種識別技術の開発及び利用の促進、植物新品種審査期間の短縮、アジア諸国等における新品種保護のための制度整備への支援等にも着実に取り組んでまいりたいと思います。
○伊藤内閣府副大臣 先ほど平沼大臣の御発言にありました知財権の信託事業に関する規制緩和の問題でございますが、これは私も平沼大臣の下で仕事をさせていただき、また、知財戦略の問題についても取り組みをさせていただきましたので、信託スキームのニーズについは十分承知をいたしております。
金融庁といたしましては、閣議決定された規制改革推進計画に従って、金融審議会の場で受託可能財産の範囲の拡大、そして信託業への一般の事業法人が新たに参入できることを可能とするということを中心に、今スピード感を持って真剣に検討させていただいております。
金融審の報告は7月までにはまとめる予定でございまして、この報告を踏まえて、今年度のできるだけ早い段階、仮に臨時国会が秋に開催されるようでありましたら、その機会に信託業法の改正案を提出すべく作業を進めさせていただいているところでございます。 また、平沼大臣が特別立法というお話がございましたけれども、特別法になりますと、二元的な規制監督ということになってまいりますので、そのニーズを十分踏まえて、特許庁、経済産業省と十分連絡を取らさせていただいて、見直しに当たっては、信託の利用者にとって使い勝手のルールをつくるべく取り組んでまいりたいと考えております。
○福田官房長官 ただいま政府側の方からいろいろ申し上げましたけれども、中山さん、どうぞ。
○中山教授 最初は苦情めいた話ですけれども、この推進計画案は事務局で作成したものと思われますけれども、私はその内容を5月12日の日経新聞で知ってびっくりしたわけでございます。その後5月14日にちょうだいいたしました案は、現在配られている案とかなり異なっておりまして、関係官庁との折衝の結果こうなったといううわさを聞いております。
いずれにいたしましても、本部員は全くのかやの外に置かれており、何がどうなっているのかよくわからないという状況でございます。どういう議論を経てこういう案になったのかという点について、本部員には十分説明をしていただきたいと思いますし、また、事前に協議をしていただきたいと考えております。
次に本論に入りますけれども、知的財産の改革には、直ちに、かつ強力に実行すべきものも多数あるわけでございますけれども、一方では、他の分野に与える影響が極めて大きいために、その利害得失、与える影響等について十分吟味しないと将来に禍根を残すというものもたくさんございます。
言葉は悪いんですけれども、私は現在は知財のバブル状態にあると考えておりまして、一時のブームに惑わされて、十分な検討なくして重要な制度の変更を致し
ますと、これは場合によっては後世、小泉内閣はとんでもないことをしてくれたという批判も受けかねないと危惧しているわけでございます。
世の中というものは、知的財産だけででき上がっているわけではないわけでありまして、すべての制度というものは有機的な関連しております。単に審査・審判、裁判の促進とか、あるいは知的財産権の侵害のし得を防止するという知的財産側だけの一方的な論理だけで突き進むと、とんでもない結果になる場合も多いと考えております。
この計画案は、知的財産の範囲をはるかに超えたものだと思っておりますし、そのこと自体は私は問題ない、結構なことであると思っておりますが、我が国の法体系、あるいは司法全体、WTO等々、対外的な関係に影響を与えるというものも少ないわけでありまして、そちらへの配慮ということも忘れてはいけないと考えております。
言いたいことはいっぱいあるんですけれども、時間の関係で一例を挙げますと、先ほど法務大臣からもお話しが出ました技術系裁判官について申し上げます。
ここで技術系裁判官とは一体何を意味するのかよくわかりませんけれども、しかし、この問題は、裁判というものは一体何か、いかなる理念の下に裁判というものはなされるべきかという問題と深く関係をしています。私個人は技術系裁判官なるものには反対ですけれども、仮にこういう制度を導入するといたしましても、余りにも議論が少ないと考えております。裁判官は技術がわからないから技術の専門家を裁判官にすればいいという単純なものではないわけであります。
例えばアメリカですと、事実問題につきましては、むしろプロが判断してはいけない、無作為に抽出された素人が、全くのド素人が判断をするというのが原則になっています。私個人は少なくとも知財に関しては陪審制には反対ですけれども、もし、技術の専門家を裁判官にするとなりますと、アメリカの取っているシステムと180 度逆になるわけです。アメリカと逆になってもそれ自体は構わないんですけれども、しかし、技術者をすぐ裁判官にするという世界でもほとんど例を見ない制度をつくる以上は、裁判とは一体何かということも、慎重なる検討というものの上に成り立つべきものであると考えております。
と言いますのは、この問題は単に知財の問題だけではないわけでして、直ちに医療過誤であるとか、製造物責任とか建築紛争等々の理系のことが関係している事件に多大な影響を与えることは必至でありまして、こちらの影響も検討しなければなりません。
失礼かもしれせんけれども、恐らく事務局にはそういうことを総合的に判断できる人はいないのではなかという感じはしておりますし、この結論は余りにも短絡的、あるいは唐突な感じがするわけです。
先ほど法務大臣からお話がございましたとおり、これは現在、司法制度改革推進本部の知的財産訴訟検討会で外国の法令の実態を詳細に研究し、検討しているわけでございます。こちらの知的財産戦略本部も、司法制度改革推進本部も、内閣の下にある同じ立場の会議でございまして、こちらの方だけで一方的な結論を出すというのは問題があると思います。
実は私は両方とも関与しておりまして、両方見ているわけですけれども、少なくともこの問題に関しましては、司法制度改革推進本部の方が圧倒的に調査研究、検討が進んでおります。したがいまして、向こうとの緊密な連携の下に、結論を出してもらいたいと思うわけでございます。
その他、いろいろ申し上げたい項目がありますけれどもそのくらいにいたしまして、知的財産の分野おきましては、慎重な検討をして時間を費すよりは、直ちに、かつ強力に行わなければいけないというものも多いわけであります。これもほんの一例を挙げれば、前回にも申し上げましたけれども、海外における海賊版とか模倣品対策であります。知的財産戦略というものを武力を持っていない、軍事力を行使しないということを国是にしている我が国としては、これは外交の核の1つにするべきだと思っております。
例えば一例を挙げますと、ODAで援助する場合だとか、あるいはFTAの協定を結ぶ場合にも、知的財産の条項を入れる等々の対策を早急にやっていただきたいと思っております。
それから、財務副大臣からお話がございましたけれども、水際規制、これも早急に欧米並みの効果というものを獲得する必要があるわけであります。
しかし、先ほどお話がございましたとおり、この問題は関税定率法21条がこの国会で改正されたばかりでありまして、少なくともその改正の効果を検証してみなければ、次のステップに移るには性急過ぎると思っております。
今回の改正がうまくいけば、それで問題ないわけです。仮に満足いく結果が得られない場合には、当事者の参加手続等を加えた新しい改革が必要になるだろうと思います。 その場合は、現行の関税定率法の改正、手直しでいくのか、あるいはアメリカのITC、国際貿易委員会ですけれども、このような独立行政委員会的な機関を設けるのか、あるいはヨーロッパのように、裁判との何らかのリンクを付けるのかということを検討しなければなりません。これは大問題でありまして、どれを選択するかということは非常に時間のかかる問題であります。
この計画案を見てみますと国際知的財産取引委員会を設置するとありますけれども、その意味はよくわかりませんけれども、恐らくアメリカ型のものを想定していと思えます。
しかし、アメリカのITCは、元来、知的財産の専門機関ではありませんし、WTO整合性の問題もあります。内外人平等の問題ですけれども、整合性の問題もありますし、我が国もヨーロッパと一緒にこの制度を批判して、WTO、かつてのGATTの方ですけれども、提訴をしたということもあるわけでして、そこら辺は慎重に検討してもらいたいと思います。
いずれにいたしましても、今回の関税定率法の改正の結果を見て決めなければいけない。7月に結論を出すというのはいかにも早急ではないかという気がいたします。
以上は言いたいことのほんの一例で、必要があればあとは書面で出しますけれども、いずれにいたしましても、事務局だけでこの計画案を作成するのではなくて、本部員との連携を密にしてほしいと思っております。
本来作成するのは事務局ではなく、本部員であって、事務局はそのお手伝いだという位置づけだと私は理解をしているわけであります。
最後にこの計画案、中途のものであるということによると思いますけれども、何を述べているのか、内容がよくわからないという項目が多数あります。
一例を挙げるならば、最後の7ページの方に「知的財産学を推進する」とありますけれども、知的財産学などという学問は聞いたことは余りありませんし、実態はさっぱりわかりません。一体何をやったらいいのか。仮に大学でこんな講座をつくれと言われたら、一体何をやったらいいのか、全く見当もつかないわけであります。
そういうわけで文章が余りはっきりしない、内容がはっきりしないものが多々ありますので、全体にわたりまして、しっかりした定義を考えていただきたい。
以上でございます。
○福田官房長官 ありがとうございました。それでは順番で川合先生どうぞ。
○川合主任研究員 3点ほど申し挙げたいと思います。
1つは、知財の創造に関する意見です。ある程度は骨子の中にも盛り込まれておりますが、世界的に大学や公的研究機関の研究成果を知的財産として保護する傾向が強まっておりまして、我が国も知的立国に向けてそのような動きを加速していく目的で、推進計画が策定されるのは、大変結構なことです。発明というのは必ず過去の発明の上に成り立っておるわけでございまして、知財の創造を推進するには、学術上の発明や特許の発明といったものを公開して試験研究現場で利用できる体制を確保する必要がございます。
そういった意味で、米国では特許保護に力を入れる一方で、生物医科学系などに関しましてはNIH等、国立の機関が研究者のために、発明や材料を利用できるようガイドラインをつくっていると伺っております我が国でもそのようなガイドラインをきちっと制定する必要があると思います。
文科省では、ガイドラインをある程度作成しているという話も聞きますが、ガイドラインの内容を普及する活動をしていただき、研究現場、知財創造現場に対して、そのガイドラインを周知せしめるような方策を是非取っていただきたいと思います。
第二点は、特許の申請に関することです。研究者は論文という形で成果を世に公表します。
過激な競争にある研究分野ほど、なるべく早く公表する必要に迫られるわけですが、一方では早く論文を発表してしまいますと、特許を取るときに権利を失うというジレンマがございます。特許審査作業等を迅速に行うための制度の採択を是非考えていただきたいと思います。
今までの発言は創造という立場に立って保護をどう見るかということでございますが、第三点は知財の保護に関する意見です。知財の保護に対する我が国の立場をもっと明確にする必要があると思います。 この骨子を拝見したところ、いろんな意味で細かい作戦は見えますが、我が国独自の知財に対する考え方示されておりません。特許戦略、知財保護は、国際問題でございます。我が国独自の、知財に対する考え方が、どこかで制定されなければいけないと思います。これ点がこの骨子には表れておりません。独自の立場をきちっと宣言した上で、我が国の論理に照らすと矛盾するような論理に基づく闘いを国際的に挑まれたときには、それを受けて立つシステムが必要でしょう。この2つを両方とも明確に位置付け、推進計画を立てる必要があるかと思います。
後者の計画として、即ち防御システムの確立という観点から、先ほど来司法制度の拡充や、知財の専門家を配置し、大学における知財保護を推進するシステムをつくるというお話が出ておるわけでございます。司法制度の改革では、長期適展望に立ち、しかも大変大きな影響のあることを制定されていただいていることがよく理解できます。司法制度改革は、10年、20年後の日本にとってどういう形が望ましいかという、非常に大局的な見地に立って行われております。 一方、特許の問題というのは、現在進行形の問題で、今日もどこかで起こっているようなことに早急に対処していく必要があります。長期的な展望に立つ司法改革と、今日明日が問題となる知財保護とをうまくリエゾンさせていかなくてはいけないわけです。
そういう意味で、先ほど理系の裁判官という話も出ましたが、理系の知識のある方が、そういう司法との間のつなぎ役として存在することは非常に大事なことです。今は、それが欠けている部分だと思います。
知を創造し、知財を保持している者が、襲い来る問題に対して、どういう形で司法制度に乗せていくか、ここに溝があるのです。この谷間を司法の知識を有した理系の人間が、リエゾン的な立場でつなぐことができれば、比較的早急な対策にも繋がると思いますので、その辺を御検討いただければと思います。
○福田官房長官 ありがとうございました。
○久保利弁護士 1つ感じたんですけれども、盛んに各大臣の方から調整とか、所轄官庁からの申し立てを待って税制を考えるとか、いろいろお話がありしたが、私はそれではこの本部を一体何でつくったのかと。我々民間人を入れてこれをつくった意味は、多分、そうではないのではないか。もともと閣議の中で皆さんが協議すれば済む話だったら、我々がいる必要はないわけでありまして、たまたま税制の話が出ましたけれども、ほかの分野でも多分そういう話がたくさんあるんだろうと。それは十分理解はしますけれども、それではこの本部は余り機能しないだろう。
そういう意味において、既得権者、あるいは利害関係者の存在、そういうものはむしろ置いておいて、全国民の目から見たらばどんな知財政策が望ましいのかということをはっきり打ち出すからこそ、小泉内閣の1つの目玉として存在し得るんじゃないかと私は思います。
したがって、もしいろんな協議をなさるのであれば、それは透明性を持ってやっていただきたい。今日付けの追加要望事項というところに書いておきましたけれども、やはりいろんなネゴシエーションがあっていいと思いますけれども、それはある省庁はこう言った、それに対して本部の事務局はこういった。本部員はこう考えたというのをどんどんオープンにしていくべきではないかと思います。
あとは司法の問題、まさに今、川合先生おっしゃったように、大局的に考えなければいけない問題と、今からでもすぐにできる問題がある。例えば最高裁は100 人の専門委員でもいいということをおっしゃっているようです。100 人と言わなくても、50人でも30人でもとりあえずどんどん募集しましょうと。そのためには、逆に学会側はこれだけのことが協力できますと言って、リストもつくりましょうと。知財学会は現にこれを考えているようです。そういうふうな形で私は日々進んでいくものはやり、そして中期的目標は中期的に考え、しかも余りセクト争いをしないで、これは司法制度改革推進本部の問題だとか、そこと調整しなければにっちもさっちもいかないということを言わないで、どんどんやれること、言えることはやっていって、そこで国民の討議に付していく。それをまたフィードバックしてまたここで考えるということで、少しでも前に行かなければ、日本沈没の時期は近いと私は思います。
以上です。
○下坂弁理士 私自身は学者でなくて実務家でございまして、そのため上手く表現できないところもありますが、日々いろいろ実務をやっている上で、これでは知財の関係が大変だということでいろいろ意見を出させていただいております。
政府側もしくは行政側、もしくは学者側から見れば、もっと審議を伸ばすべきであるとか、慎重に審議すべしとか、外国の制度にはないとか、いろんな御意見がございますけれども、今、私どもがやろうとしておりますのは、世界一の知的財産の構造をつくろうということで、小泉総理大臣のリーダーシップにすがって、今がチャンスということでやっております。もし慎重に慎重にというのであれば、いつまでたっても事は前に進まないと思っております。
例えば女性の名字の面で言わせていただきますと、40年経っておりますけれども、民法750 条でございますか、まだ変わっておりません。いつも慎重に、世の中にない、世界にないということでは一歩も前に進んでいかないと思います。世界にないならば、日本につくればいいじゃないかというのが私の主張でございます。
ということで、私の方は先回の発表に加えて、職務発明規定の見直しということについて、35条に関する提案は本日配布されています骨子の方に出ております。それから、審査促進の迅速化につきましては、迅速化法というものの制定ということが出ておりますけれども、この迅速化はできるだけ実現可能な迅速化ということを望みたいと思いますので、出願人、代理人、行政の三者が手続の迅速化を含めた充実した手続の実施と、それを支える制度・体制の整備というものを慎重に、これは中山先生のお言葉を拝借して、慎重に審議しなくてはいけないかと考えておりますが、時期は迫られておりますし、私ども日々困っていることが非常に多いのでございます。
それから、知財高等裁判所、技術系裁判官、知財弁護士については、先般主張いたしましたように主張させていただきます。
それから、国際知的財産取引委員会、ITC日本版のようなものでございますが、これを設置していただきたい。先程、米国のITCは知財だけではないというお話もございましたけれども、それならば日本に適した知財だけのものをおつくりいただいてもいいんじゃないかと考えております。
それから、知的財産の活用、知的財産信託特別法の制定につきましては、地方の中小企業の方から、中小企業はたくさんいい特許を持っているけれども、例えば大阪市の水をきれいにしたいというような要望があった場合に、それらの特許の売り込み先が見あたらない。大会社に持ち込んだが断られた。どこにどうやったらいいかわからないので、それらをまとめて信託いただけるような制度をつくってもらえないだろうかという要望が強く出ております。信託ということで特別法ができて、ちょうど音楽などの信託のようなものが特許の知財にできましたら、それは地方の産業の活性化、環境などを含めた大きな改革につながると考えております。
以上でございます。
○御手洗社長 私は12項目の意見書を出しましたが、時間もありませんので、その中の2つだけ取り上げてお願いしたいと思います。
先ほど経済産業大臣、財務副大臣から、水際作戦について迅速にやるという大変頼もしい言葉をいただきまして安心したんですが、本当に今、発展途上国の技術力が上がりまして、生産力がまし、非常に模造品の問題が日々大きくなってきております。それに対して、我々は司法構造よりは行政構造の方が早いだろうということで、アメリカのインターナショナル・トレード・コミッション、ITCのような組織をつくったらどうかというお願いをした訳ですが、しかし確かに、大臣が言われましたとおり、新しい組織をつくり、今、急にやると言っても人材もいないだろうし、大変混乱が起こると思いますので、それはプラクティカルに迅速にやっていただくということで、その仕組みを充実させていただくということで納得できるんですが、その中で1つだけ是非お願いしたいことがあります。模造品が来た場合に、我々はそれを発見して、輸入業者にとどまらずメーカーまでさかのぼって根絶やしにすることをやります。訴訟します。
そのときに、水際で断っても、よその国に模造品を持って行くということが必ずあるわけです。そうすると、我々は、輸入元の国でモグラたたきをやらなければならない。それは大変な負荷になります。だから、もし模造品が日本に来たら、それを税関が撃退してくれるだけでなく、アメリカの税関のように輸入元とか、製造元とか、そういった情報を是非開示していただきたいというのがお願いです。これは公務員の守秘義務に関わることで、そう簡単なことではないということは認識しておりますが、それに対する法制や法の解釈等々を含めて、何か対策をしていただけないものかと思います。
もう一つは、今、文部科学大臣が言われました法科大学院の件です。是非夜間の大学を設けていただき大強化していただきたいと思います。日本はどうしても夜間というと、何となくセカンド・フィールドと言いますか、程度が低いように思われますけれども、先程、法務大臣が言われましたように、特許裁判所等々をすぐつくるとか、そういったことはまだ議論を待たなきゃならないことだと思いますが、特許裁判所ができるできないに拘わらず、知的財産の専門性を有する人材が必要なことは確かなことです。特許訴訟の司法に携わる人たちは、本当に現実のビジネスの体験者が必要だと思います。そのために是非会社から、昼間働いている人を夜奨学金を与えて、弁護士の資格を取らせることが出来るように、夜間の大学を充実していただきたいと思います。
私の経験から言いましても、私はアメリカでアメリカ人の社員を公認会計士や弁護士にしたことがあります。今でも続けています。例えばニューヨーク大学には夜間の講座があります。弁護士にしても、公認会計士にしましても、例えばニューヨーク大学のカリキュラムは、2年間の夜間講座に1か月間に、2回か3回の土曜日の講座を組み合わせて、2年間で卒業できます。真面目に勉強すれば2年間で資格が取れます。現に私は取らせました。
逆に言うと、ニューヨーク大学に私が知っている限り、今もそうだと思いますが、弁護士や公認会計士の資格を取る講座は昼間にはありません。夜の講座しかありません。そのくらい夜の講座を充実させています。
御承知のとおりアメリカは職務給の社会でありまして、職業が変わらないと給料は上がりませんから、働いている人の力を更に上げるための専門学校の基盤が非常に発達しておりまして、それがアメリカの流動性を助けているわけであります。是非そういった昼間働いている優秀な社員を、我々が奨学金を付けて送り込める大学にしてほしいと思います。昼間ですと、優秀なものほど昼間は働いてもらいますので、昼間の講座には行かせることが出来ません。
我々も将来は、言葉は悪いかもしれませんけれども、外部の弁護士というのはしばしば費用が高いことがありますので、ハウスローヤーをつくらなければいけません。私は大いに社員を夜間の大学に出したいんです。そういう受け皿を是非つくっていただきたい。以上の2つお願いです。
○野間口社長 特に強調したい点につきましては書面でも出しましたし、今、各大臣をはじめとして、種々のご指摘がありましたので、省かせていただきます。骨子の構成は日本中の知恵が集まったという形で大変立派なものだなと思うんですが、余り知恵が集まり過ぎて動きが取れないというようなことにもなっているんじゃないかともみられます。もともと知的財産戦略をやろうというのは、日本の産業競争力をいかに高めるかということで始まったと私は認識しておりまして、そういった面で、先ほどもお話が出ましたけれども、知的財産活動の効果を更に高めるために今すぐにもやるべきこと、例えば標準化への取り組みとか、模倣品対策、そういうものと、ちゃんとした日本としての法体系の改正も含めた骨格づくりに関して、取り組みの優先順位とタイミングをはっきりさせる形で推進計画を肉付けしていただきたいと考えます。私共も、そのような視点をもって積極的に参画したいと思っております。
よろしくお願いします。
○角川社長 私は第1回目の説明のときに、コンテンツ産業が10兆円の規模があると申し上げました。しかしながら、10兆円の規模のあるコンテンツ産業というのは、本当のところ映画をつくっている人たち、ゲームをつくっている人たち、中小企業が非常に多いんです。会社としても零細、あるいは個人でやっているという人もおります。
そういう点では、やはり知的財産戦略本部がそういう現場で創造に携わっている人たちを保護・育成するという視点が非常に重要じゃないかなと思っております。
そこで私は、コンテンツ・ビジネス振興法というものが必要なんじゃないかという提案もしておりました。勿論、著作権法というライツの法律がございますけれども、そういう零細な人たちを保護・育成するための法律として、コンテンツ芸術振興法というものを考えていただいて、そこでWIPOという国際的な組織がございますけれども、そういうものと足並みをそろえていって、このコンテンツ産業がますます元気になりますように、カンヌ映画祭だとか東京映画祭でそういう人たちが活躍できる場を広げていくような仕組みをつくっていただきたいなとお願いしたいと思います。
○安西塾長 1つは知財関連の弁護士等々の育成のことでありますけれども、法科大学院がそれにはなかなか難しいということは、大体ロースクールに関連する教育関係者の一致した意見ではないかとも思います。
勿論、知財だけを知っている法曹関係の人材がいいのかどうかというのは、また別問題でありますけれども、私は知財関連を熟知した法曹界の人材がたくさん出てほしいというふうに思っておりますが、多少今、そこにはギャップがあるというふうに思います。
そのことに関連してですけれども、端的に申し上げますが、戦略と言うからには、例えば大学のことを取りましても、教育のことと、それから、特許申請管理等々の支援のことと、それからむしろ特許の申請数というのは日本全体では他国に比べて遜色はないわけで、むしろその活用の場、あるいは活用の仕方の方が問題だということがありまして、そういったことの関連性を持って教育と研究と活用とか実践とか、それは大学の例ですけれども、全体的にも総花的でない、やはり全体が有機的な関連を持って日本が知財立国であることを示せるような骨子案であってほしないと思っておりますので、そのことは申し上げておきたいと思います。
○阿部議員 総合科学技術会議の専門調査会につきましては、細田大臣から御説明がありましたが、時間の都合上省略をさせていただきまして、1点だけ出ていないことについて申し上げさせていただきます。
具体的なことですが、国立大学が法人化されますが、それによって特許権が大学に帰属することになります。こういった流れもありまして、弁理士費用とか、国際出願費用などが大幅に増加してまいります。これは大変いいことなんですが、その結果、費用の捻出が問題になります。例えば研究費の一部を計上できるようにするなど、私立大学も含めまして、何らかの競争的な支援の仕組みを積極的につくっていく必要があろうかと思いますので、御検討願えればありがたい。その1点だけです。
○福田官房長官 ありがとうございました。御意見、まだまだあると思いますか、時間もまいりましたので、これで御意見の開陳は終わりにさせていただきます。大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。この本部の在り方も含めて御意見をいただきました。
今、いただきました御意見につきましては、今後作成していく推進計画に生かされるように検討を進めてまいりたいと思います。
それでは、最後にこの本部の本部長でございます小泉総理から御発言をお願いいたしたいと思います。その前にプレスが入ります。
(報道関係者入室)
○小泉総理大臣 どうも本日もまた活発な御議論ありがとうございました。今後、この骨子案を作成するに当たりましては、今のいろいろ御意見を参考にしながら、日本の将来に真に役に経つ推進計画をとりまとめていきたいと思います。引き続きスピード感を持って積極的に議論を進めていただきまして、よりよいものをつくっていきたいと思いますので、よろしく御指導お願いします。
(報道関係者退室)
○福田官房長官 それでは、本日の会合の内容につきましては、会合終了後に事務局長から記者会見を行わせていただきます。
次回の会合は6月20日、午後5時15分から開催をしたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。次回の会合におきましては、知的財産の推進計画案をお示ししたい。その間によく調整をして、また御意見も伺いますので、よろしくお願いいたします。
本日は大変御多忙のところありがとうございました。
○小泉総理大臣 意見は違ってもいいですから、挑戦してください。
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