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第一回知的財産戦略本部議事録

平成15年3月19日(水)17:30 〜18:30
於:官邸大会議室


○内閣官房長官 それでは、ただいまから「知的財産戦略本部」の第1回会合を開催させていただきます。本日は、御多忙のところ大変ありがとうございます。私、内閣官房長官の福田でございます。議事進行を務めさせていただきます。
 この本部は、去る3月1日に施行されました、知的財産基本法に基づいて、内閣に新たに設置されたものでございます。まず、議事に先立ちまして、知的財産戦略本部長の内閣総理大臣からごあいさつをいただきます。

○内閣総理大臣 皆様お御苦労様です。知的財産問題につきましては、知的財産戦略大綱のとりまとめ、知的財産基本法の成立など、昨年1年間で画期的な成果を極めて短い期間内におさめることができました。
 私は、今年1月の施政方針演説においても、国家戦略として引き続き知的財産立国を目指すことを約束しました。
 日本経済再生のため、7月を目途にとりまとめる予定の知的財産推進計画は、従来の制度にとらわれない、世界一を目指した内容のものとし、3年間に集中的な改革を進めることにしたいと思います。
 そうした観点から、本部員の方々に置かれましては、今後とも思い切った意見を出していただきたいと思います。
 今日は、お忙しいところありがとうございました。

○内閣官房長官 ありがとうございました。

(報道関係者退室)

○内閣官房長官 今回は、初顔合わせの会合でございますので、議事に入る前に有識者の本部員の方々を御紹介させていただきます。
 お手元に資料1として本部員の名簿を御用意いたしましたので御参照ください。
 総合科学技術会議の阿部博之議員。
 慶応義塾の安西裕一郎塾長。
 株式会社角川書店の角川歴彦会長。
 理化学研究所の川合真紀主任研究員。
 日比谷パーク法律事務所の久保利英明弁護士。
 下坂・松田国際特許事務所の下坂スミ子弁理士。
 東京大学の中山信弘教授。
 三菱電機株式会社の野間口有社長。
 キャノン株式会社の御手洗冨士夫社長。
 大阪大学の森下竜一助教授。
 以上の方々でございます。
 それでは、本部の運営について、荒井事務局長から御説明をいたします。皆様御承知のとおりでございますが、荒井事務局長は知的財産戦略会議のメンバーとして、知的財産問題に積極的に取り組んでいただいた方で、この度事務局長に御就任いただきました。
 それでは、お願いします。

○荒井知的財産戦略推進事務局長 事務局長の荒井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料2に沿いまして御説明いたします。
 「知的財産戦略本部の運営について(案)」
 1 本部会合への参加者について
   内閣官房副長官(3名)を本部会合に毎回参加させることとする。
 2 議事の公開について
   本部会合は非公開とし、議事録は、原則として、本部会合終了後速やかに発言者名を付して公開する。
 3 配付資料の公開について
   本部会合で配付された資料は、原則として、本部会合終了後速やかに公開する。
  以上でございます。

○内閣官房長官 ただいまの運営については、御了承いただけますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○内閣官房長官 ありがとうございました。それでは、資料2のとおり決定いたしました。続きまして、7月3日に戦略会議が決定した知的財産戦略大綱の進捗状況、及びこの本部で作成する知的財産推進計画の作成スケジュール等について、事務局から御説明いたします。

○荒井事務局長 お手元の資料の3に沿いまして、御説明させていただきます。
 1ページに大綱の主要課題として、第1の柱、知的財産の創造。
 1 大学における知的財産創出。
 2 企業における知的財産の創造促進、職務発明についての進捗状況がございます。
 2ページは、第2の柱、知的財産の保護につきまして。
 1 権利の付与の迅速化。
 2 迅速な裁判等の実現。
 3 模倣品・海賊版対策の強化につきまして、法案の提出等を含めて記してございます。
 3ページは。
 4 国際的な制度調和と協力の促進。
 5 営業秘密の保護強化。
 6 新分野等における知的財産の保護。これにつきましても、法立案の改正等について記しております。
 4ページは、第3の柱、知的財産の活用でございます。
 1 大学等からの技術移転の促進。
 2 知的財産の評価と活用についての進捗状況でございます。
 4ページの下の方は、第4の柱、人的基盤の充実でございます。
 1 専門人材の養成。法立案が設立した旨記してございます。
 5ページは。
 2 国民の知的財産意識の向上の進捗状況でございます。
 最後に、知的財産基本法が成立した旨記してございます。
 次に資料4に沿いまして、推進計画の作成スケジュールの案について御説明させていただきます。
 3月19日、本日第1回会合の後、4月中旬に第2回会合を開き、有識者からの意見発表をしていただき、5月には第3回会合で推進計画の骨子についての議論をしていただき、6月には第4回会合で推進計画の案について御議論していただき、7月には第5回会合で推進計画の決定をするというような案になっております。
 以上でございます。


○内閣官房長官 以上のような手続で、今後の検討を進めたいと考えておりますが、大変手回しがよろしいですけれども、御了承いただけますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○内閣官房長官 ありがとうございました。それでは、資料4のとおり決定をさせていただきます。
 次に意見交換に入りたいと思います。本日と第2回の会合で、有識者の方々から推進計画に盛り込むべき事項についてお考えを述べていただきたいと思います。
 本日は、まず事前にお申し出をいただいた有識者の方々からお考えを述べていただき、その後皆様に自由に御討議いただくことといたします。各大臣等におかれても、積極的にその際御発言をお願いいたします。
 それでは、まず角川会長から御発言をお願いいたします。

○角川会長 私が申し上げたいことは、資料5で事項を挙げさせていただきました。従来日本の知的所有権と申しますと、特許権と、それに類するものが非常に大きなテーマだったと思います。
 そういった点で今回、知的財産戦略本部が、文化財としての著作権について立ち入ろうという判断をされたことは、時代の状況に即して非常に的確だったと思います。私もそういう仕事をしている者として非常にうれしい限りであります。
 著作権の立場から申しますと、2つ申し上げたいと思います。本日は、第1回目でございますので、各論の細かい権利関係のことを申し上げても、明確ではなくりますので、2回目、3回目の中でそういうお話はしたいと思います。1回目は、総論的なお話で申し上げたいと思います。
 その1つは、ブロードバンドにおける著作権の問題であります。ブロードバンドは、これからの21世紀の日本の大きな産業として成長するだろうと言われております。けれども、事実上はなかなか「著作権」という問題が、いろんな実演者の権利主張がありますし、産業界の間の問題もございまして解決しておりません。普及を阻んでおります。現状では、逸早く従来のニューメディアがそうであったように、アダルトというものが動画配信として定着してしまっているということでございます。
 早く映画だとか、音楽だとか、そういう面でもブロードバンドにおける著作権という問題を解決していくことを、積極的にこの会でも取り上げていただきたいと思います。
 もう一つは、海外における日本の著作権の海賊版における啓蒙と取り締まりであります。特許権につきましては、とかく取り締まりということでありますけれども、著作権においてはやはりアジアにおいては「著作権思想」というものが非常に低いということでございますので、取り締まりも重要ですが、二本立てで啓蒙・教育ということが大事だと思っております。
 私は、海外におけるこの海賊版の問題においては、日本の文化を外交という形で広げていただきたいと、切にお願いいたします。従来文化産業という言葉がございましたけれども、今日では文化産業が即コンテンツ産業だと思います。もともとコンテンツという言葉はまだ生まれたばかりで、皆さんの中でコンテンツって一体何をさすのだろうといったことがあると思います。コンテンツという言葉自身がまだ5年ぐらい前から人口に膾炙されるようになったばかりで、コンテンツ産業というのも3年ぐらい前に生まれた概念であります。
 したがって、私はコンテンツ産業というのは、日本固有のアニメ、映画、ゲームソフト、出版、キャラクター商品、おもちゃ等、日本文化そのものであるという見地から、コンテンツ産業が日本の文化産業なんだということを申し上げたいと思います。非常に少なく見積っても、この分野は10兆円というふうな実績がございます。ですから、私は従来の日本の文化外交という点では、これからはコンテンツ外交になっていくんだろうと思います。
 日本の敗戦の後、実はアジアの国々は国策として非常に閉鎖的になっております。日本の映画は見せないという国が、台湾もそうでしたし、中国もそうでありますし、韓国もそうでありますし、シンガポールもそうであります。政府として日本の文化をもっと見てほしい体験してほしいという働きかけが、私は寡聞にして存じませんが余りなかったんじゃないかと思います。また著作権が侵害されても、従来は文化庁と申し上げていいんでしょうか、国内の著作権という問題に集中していて、海外における著作権の侵害ということに対しては二の次であったと申し上げていいと思います。
 そういう点で、中国というのは今、非常に躍進しているというふうに言われておりますけれども、「中国の光と影」、影という部分では、実は中国は海賊版大国となっております。ゲームソフトにいたっては、全く模倣品だらけになってしまって、日本のゲームソフトのメーカーが、アメリカやヨーロッパに売っていくのに比べますと、全く市場が成立しないという状況があります。そういう中国もWTOに加盟しました。
 そういう中で、映画におけるアメリカのハリウッド戦略に日本は学んでいかないといけないんじゃないかと思います。そういった点で、今回文化庁と経済産業省の協力によって、映画の保護期間が50年から70年に延長する著作権の改正案がまとまりました。これからはまた国会で検討されるんでありましょうけれども、このことは国家戦略としても正しい方向にあると思います。既に御存じのとおりハリウッドは、75年から95年に延長しておりますので、日本が外に出ていくときにハリウッドは95年、日本が50年ということでは勝負にならないということだと思います。
 私は、結論めいて申し上げるわけではありませんけれども、日本はすばらしい国だという日本のブランド力を上げる、日本というイメージを向上させるためには、どうかこの著作権というものをとおして日本の文化をコンテンツをアジアに、あるいは世界に広めていくことが、日本のブランド力を上げることだということを申し上げたい。私としても引き続きこれからも努力していきたいと思います。
 以上であります。

○内閣官房長官 ありがとうございました。
 続きまして、川合先生からお願いいたします。

○川合主任研究員 私は、基礎科学をする研究所に務めております。この知的財産の大綱を拝見いたしますと、中身が知の創造と、それからそのでき上がったもの保護という2に分かれているんじゃないかと思います。
 私の立場をもちまして、この完成されている大綱を拝見したときに気になったところを、かなりシンプルな形で今日はお話したいと思います。
 資料は、申し訳ございませんが、今日はございません。非常に簡単なことでございます。この大綱の中には、大変詳しく、どうやって新しい知を創成し、そしてそれを保護するかということを秩序建てて書かれておるんでございますが、どちらかというと保護側の方にかなり、でき上がった財産をどうするかというところに主眼が置かれているように思いました。
 私の立場で、生み出すためにどうするかということを考えましたときに、1つ非常に重要なことではないかと思うことがございますので、今日はそれをお話することにしたいと思います。
 人材育成に関しては、かなりきちっと記述されておりまして、これは大変いい御配慮をいただいていると思います。
 研究を創出するために、大学等の設備を充実し、その場を整えるということも明記されておりまして、これも大変結構だと思います。
 1つ非常に大事なことは、知はどうやって生み出されるかという点にございます。これは隔離された何の情報もないところで生み出されるわけでございませんで、やはり過去にある知を基にして新しい知が出てくるということが非常に大事なところだと思います。何が言いたいかと言いますと、でき上がった知を保護する政策が余りいき過ぎますと、科学技術を振興・発展させるために大事な情報が科学者同士の間でやり取りできなくなります。それから、特に最近生物材料などにおいて、アメリカの保護政策の波を日本はかなり被っておりまして、ある種の非常にファンダメンタルな、プリミティブな材料に関して権利が付いておりまして、それを自由に使うことができない。これは知の創造に対する大変な阻害要因になりますので、どこまでを知的財産として保護するか、どこから先をいわゆる人類の財産としてオープンにするか、その境目をきちっと考えて運営しませんと、逆に知の新しい創出に対して歯止めがかかるようなことになるのではないかと。これが大綱をざっくり読ませていただいたときの、基礎科学の者としての心配でございます。
 もう一つは、もう少し具体的な話になるのですが、今、科学者の分野では人材の流動性というのが非常に問われておりまして、一所にずっといるのではなく、場所を変わることによって新しい刺激を受け、新しい発明に通じるような環境を自分でつかむということが非常に大事だと思います。
 今、一般的に考えられている、新しい知の創成に対する保護策の中には、例えば研究機関であるとか、国であるとか、国だと問題ないかもしれませんが、そういうところに財産を位置させると、住民票をそこに置くというような方向が大分考えられております。これは当然国税を使ってある機関が研究したことであるから、その機関に所属する財産という位置づけは勿論重要なんでありますけれども、人が流動するときに、隣の機関に行ったときにそれがちゃんと使えないと、これまた健全な、基礎的な科学の創成にはかなりネガティブになる場合もございますので、この辺の保護策の具体的な在り方というのが、この知財の今後をかなり左右するのではないかという気がしております。
 特に企業さんなどでは、競合企業に対して移ることは多分余りないと聞いているんですが、大学等という研究機関においては、競合機関以外に移る可能性はございませんので、類似した研究をやっているところでその研究が継続できないということは、かなり無駄が出るんじゃないかという懸念がございます。
 基礎科学の者から見たときに、実際にでき上がった知財を保護する場合に、単に特許を出す、何とか権を取るというだけではだめでして、侵害に対する監視と、それに対する訴訟というものがカップルにならないと、本当の財産にはならないのだと思います。
 その点は、大綱の中にもうたわれておるんですが、現実に100 ぐらいある大学の中で、しかもありとあらゆる分野を取り込んだ大学の中で、各機関がこれだけの保護策を本当にできるかというのは、現場におりますと非常に不安になることでございまして、この辺具体策を考えるときに、きちっと筋道建てたガイドラインができれば非常に役に立つのではないかと思っております。
 以上、3点でございます。

○内閣官房長官 ありがとうございました。
 それでは、久保利先生からお願いいたします。

○久保利弁護士 弁護士の久保利でございます。お手元に『著作権ビジネス最前線』という、はでな本を配布させていただきましてありがとうございます。詳しいことは、これにも書いてありますので、今日はポイントを2つに絞って申し上げたいと思います。
 弁護士として私、知的財産を守る仕事をかなりやってまいりました。もう一つは、第二東京弁護士会の前の会長として今、ロースクールをつくる仕事を一生懸命やっております。この2つの観点から、2点申し上げたいと思います。
 1つは、コンテンツ、これは先ほど角川さんもおっしゃいました。やはりコンテンツのウェートがこれからものすごく増えてくるだろうと。1960年代にピカソが岡本太郎をつかまえて、日本のアニメはすばらしいと、日本の芸術は決して浮世絵とかそんなものではないぞと、アニメというのはすごいんだというふうに言ったという話があります。ひょっとすると次世代の輸出産業はものづくりではなくて、知恵づくりとか、文化づくりということになるかもしれない。そのときに、日本の将来というのはここにかなり大きく依拠するだろうというふうに考えておりまして、24日のアメリカのアカデミー賞を、ひょっとすると千と千尋が取るかもしれないというふうに言われておりますけれども、しかしピカチューもそうですし、そのいろんなアニメが世界中の放送局で流れていますが、はたしてクリエーターたちは本当にハッピーかというと、そうではない。やはりコンテンツ流通は非常に寡占化されておりまして、テレビ局、あるいは映画配給会社、こういうものがコントロールしていると。そういう中で、クリエーターが下請け化をしていく。
 あるいは、ディズニーに今、日本人のアニメの絵を書いたり、あるいはアイデアを出す人、まさにそのクリエーターたちがどんどんスカウトされているという話がございまして、学者ばかりでなくて、日本の文化づくりの人たちもどんどんアメリカに行く。それは保護せいという話ではなくて、やはりいいものをつくったらそれなりの見返りがあるという、そういうリターンが今、日本の知的財産のコンテンツをつくる人たちにないのではないか。ここをやはり根本的に変えるというのが、この本部の1つの役目ではないかと。かように考えます。もう一つは、著作権ビジネス、あるいはコンテンツビジネスでは、プロデューサーというのが大変大事なんです。ところが、プロデューサーというのは、特にアメリカでは弁護士です。みんな法律の知識を持った人がプロデューサーになって、それがものをつくって売っていく。
 日本の、国家として最大のウィークポイントというのは、司法だろうと。司法改革、まさに内閣総理大臣の下一生懸命やっておられますけれども、まだまだ足りない。日本はしょせん明治維新のときに、大蔵大輔の井上馨と司法卿の江藤新平の闘いがあって、司法が負けたと。それが百数十年尾を引いているというふうに思うんですが、やはり官民挙げて司法嫌いだったと思います。だから、弁護士は2万人しかいない。だけど、アメリカには100 万人の弁護士がいる。中国も、今、年間2万4,000 人の弁護士がどんどんどんと出てきています。もうあっという間に日本の弁護士全員が1年でできてしまうんです。そういう司法が今、舞台になっているときに、日本の司法というのははたして競争力があるのか、特に知財について考えてみると、せっかくロースクールができましたけれども、この中で知的財産権を中心に半分以上の単位をこれでやろうなんていう学校はできるわけがありません。認可の基準からしても。そういう意味でいいますと、必修科目が基本六法に偏り過ぎていて、自由にやろうと思っても、そういう自由度がない。逆にアメリカだと24単位から34単位、知財専門課目でいけるんですね。日本ですと、どうしてもそれだけの先生もいないとか、コストがかかるとか、いろんなことでせいぜい4単位とか8単位ぐらいしか知財がない。これではますます差が開く、まさにそういう意味では、土建国家から知財国家へ変わるんですから、是非リーガルの点、特に知財のリーガルについて国なりのコストというものを負担していただきたい。権利のための闘争に金を惜しむなというふうに申し上げたいというのが、私の見解でございます。
 以上でございます。

○内閣官房長官 ありがとうございました。
 次に、野間口社長からお願いいたします。

○野間口社長 三菱電機の野間口でございます。私どもは、電機・電子メーカーといたしまして、これまで半導体、カーエレクトロニクス、人工衛星、家庭電器品等々の分野で、さまざまな知的財産問題に遭遇してまいりました。その経験を踏まえまして、私は日本の産業競争力の強化には、知的財産戦略の確立が大変重要だと思っておりまして、今回のこの戦略本部の発足を大いに評価し、期待し、またその一員として貢献できればと思っているところでございます。
 いろいろありますけれども、今日は3点だけ申し上げさせていただきたいと思います。第1点は知的財産の創造における産学連携の強化でございます。ありていに申しまして、これまで知的財産、特に特許権につきましては、産業界を中心にして取り組んできましたが、これからの激化するグローバルな競争で勝ち抜いていくためには、大学を始めとした先生方の力をお借りすることが必須であり、この連携の強化が重要でございます。大学の中におきまして、どちらかといえば研究論文が業績として評価されるというだけではなくて、優れた知的財産を生み出すことも立派な業績だというような評価環境を整えていただく必要があります。
 また、生まれました知的財産権が民間で活用しやすいようなルールの整備も必要かと思っています。
 それから、大学の中での人材の流動化を始め、知の拠点としての活性化策、これも大いに期待したいところでございます。そのためには、人材の相互交流とか、企業と大学の間の相互交流とか、大学間の交流とか、そういったことをもっとレベルを上げる必要があるのではないかと考えております。
 第2点でございますが、日本で生まれました特許を、国際標準として認知されるようなレベルまで高めてゆく、即ち、国際標準として採用してもらう努力が重要でございます。これにつきましても、一企業、あるいは業界、こういったところでの取組みが、どちらかと言えば日本の場合は主でございましたけれども、国と連携しまして、あるいは大学と連携しまして、レベルの高い知的財産を生み出しまして、それを国際標準の場に提案し認めさせるというような取組みが国家戦略として大変重要になってきております。欧米先進国はそのような取組みを意図したかどうかわかりませんが、自然にやっておりまして、私どももそういったことが必要であると思っております。
 先般私どもの暗号が、ヨーロッパを中心とします国際標準に認めていただきましたけれども、これにつきましては、経済産業省の方に側面からいろいろ御支援いただきました。このことが国際標準としての採用に大きく貢献したと思っておりまして、こういった連携した取組みが大変重要ではないかと思います。
 国際標準になりますと、日本が国際的に使われる技術とかシステムづくりに貢献したという日本の評価も高まります。それだけではなく、有形無形の経済的なメリットもありまして、競争力の強化という点で大変重要だと思っております。
 最後でございますが、第3点、これは模倣品とか、特許侵害品の跋扈を取り締まることの強化でございます。日本国内というよりも、特に発展途上国等におきましては、日本の知的財産権にただ乗りのような製品が出回っております。これは、私ども企業といたしましても、個々に努力はしておりますが、政府におかれましても、いろんな機会にそういった問題の非合理性を指摘いただいて、問題製品がはびこるのを防止するということで、連携した、ねばり強い取組みが必要だと思っております。
 一朝一夕にはいきませんが、これをきちっとやりますことが、日本としての意見を明確に述べるということにもつながりますし、大変重要なことだと思います。
 それから、侵害品が国内のマーケットに入ってくる。この水際処置も大変重要でございまして、これにつきましては関係する権利者等がある程度わかりますので、そこと関係当局の連携よろしきを得て、適切な手が打てるように持っていくことが大変重要かと思っております。
 今日は以上3点を述べさせていただきました。ありがとうございました。

○内閣官房長官 ありがとうございました。
 森下先生、お願いいたします。

○森下取締役 大阪大学の森下です。私の方は、大学発ベンチャーをやっておりますので、そちらの方の立場から見たお話をさせていただきたいと思います。会社の資料はここに入っておりますので、また後ほどお時間があるときにでも見ていただければと思います。
 昨年大学発ベンチャーとして初めて東京証券市場のマザーズに上場させていただきまして、特にバイオ領域を代表してということだと思いますので、ITですとか、ほかの製造業と若干バイオ領域が違うとうことから始めたいと思います。バイオでは、1つの特許の価値が極めて高いということで、知的財産は非常に会社にとって生きる、死ぬの、生死の問題が関わっております。その辺のバックグランドも少し御説明しながら、大学の現場から見てこの辺りを変えていただきたいというお話をさせていただこうと思います。
 私どもの会社でやっておりますのは、血管を再生するということで、ここに示したのは歌手の村田英雄さんが足を切断したような、動脈硬化の治療をする薬をつくろうということでやっております。ここに関しては、実は非常に特許が高価な金額で既に売買のケースが出ておりまして、血管を再生するような物質の特許そのものが、欧米の企業ですと大体100 億円単位で今、取引されております。
 問題なのは、いわゆる筋肉に遺伝子を注射をするということで、これは治療方法になるんですが、これはアメリカでは特許になりまして、大体1社当たり10億円ぐらいのお金を要求されます。私どもも今アメリカでやはりそういう要求を受けておりまして、それだけで結構大きなバイオベンチャーができてくることになります。その意味からいきますと、特許の価値というのは極めて高い領域であります。
 その意味では、先進医療の特許1つでも、やはりバイオベンチャーができるということで、世界的に通用して、アメリカなりヨーロッパなりでそれなりの財産をかせいでこれます。是非この分野の特許というのを取りやすい環境というのをつくっていただければというふうに思います。
(スライド)
 私ども実はまだ商品がありません。現在薬としての開発をしている最中なんですが、なぜそういう状況で上場ができたかと言いますと、実は製薬企業に販売権を売ることによって開発資金ができます。その意味では、商品が先に出るという予測の下に、前取りをして売上げを立てて利益を出していきます。ですから、ある意味では本当に知的財産だけで商売をしているようなビジネスです。ただし、それを可能にしますのは、当然知的財産があるので大企業が連携をしてくれる。知的財産がなければ、大企業は一銭も払ってもらえませんので、会社としてもやっていけないということになります。
 その意味では、できるだけ多くの知的財産を早く、そして全世界で取りやすい環境というのが、バイオベンチャー、あるいは大学発ベンチャーとしては極めて重要な要素になるというふうに考えております。
(スライド)
 基本的に大学発ベンチャー、あるいはバイオベンチャーどちらも同じだと思いますが、やはりヒト・モノ・カネの3条件がそろわないといけないと。当然ながらお金の面、人の面ということでは、総合科学技術を始めとしていろいろ議論をしておりますが、特に重要なのはシーズになります。先ほど言いましたように、知的財産がないと当然ながら勝負が始まりません。ITと一番違うのは、ITの場合はお金をたくさん集めて、そのお金で知的財産を取ります。そして1年後、2年後には、既に商売ができる。バイオの分野ですと、やはり5年から10年商品が出るのにかかりますので、最初に大学にあるシーズを利用しない限りは、会社のお金が続かなくて死んでしまう。ですから、既存のシーズ、あるいは大学の基礎研究で得たシーズというのを、どうやってビジネスサイドで展開していくかが重要です。非常に大学は有利なんですが、やはりそうしたようなシーズの価値というのが高まらない限り、当然ながら成功はできないというポイントがあります。(スライド)
 次が、アメリカでのケースなんですけれども、御存じのようにアメリカではTLOという組織が非常に活用されまして、いろいろと技術が出ております。ただし、日本のTLOと一番大きな違いは、まずマーケティングが先にあります。要するに、すべての特許を出していきますと、当然ながらお金がかかるわりには売れないということで、いかに売れる特許を特許申請していくかが重要です。その意味では、大学の現場からいきますと知的財産本部が各大学に設置される予定で今、予算が付いておりますが、ここに非常に期待をしております。ただし、現状そのままでいって、本当にすべての知的財産が守られるかというと、残念ながら私個人的には非常に不安に思っております。
(スライド)
 次から具体的に、私自身が考えている、こういうところを是非お願いしたいという話になるんですが、1つはやはり大学の現場、あるいは研究者の方は、なぜ知的財産が重要なのかというのが現状まだわかっておりません。
 ビジネスに関係するという部分と、あるいは大学にとって先ほどもお話がありましたように、確かに基礎研究には特許が邪魔になる場合もあるわけです。そのバランスが非常に重要なんですけれども、なぜ知財本部ができてきたかという辺りの理由がまだよくわかっていないのが大学の実情です。
 予算が付いたので応募したいというところが、多分今の現状の認識だと思うんです。やはりそうではなくて、なぜ知的財産本部が設置されて、知財というものを大学が重視しなければいけないかと。それがはっきりポリシーとして出てきませんと、大学の現場になりますと、恐らく動かない、あるいは知的財産を取らなければいけないのはわかっていても、実際上の活動が阻害されてしまうと。今度独立行政法人になりますので、是非国としてのポリシーを制定していただいて、そのポリシーに沿って何をすればいいかというのを明確化させていただければ、非常に現場サイドから言うと動きやすいんじゃないかと思います。
 実際アメリカでバイドール法ができたときのNIHの中には、Sell Domestic! Sell Smaller!という言葉があります。要するに、国内企業に売って、より小さな企業に売れと。今やはり多くのTLOを見ていますと、海外の企業に売った方が格好がいいとか、あるいは大企業と提携した方がブランド力があるということで、活用されるかどうか、実際にビジネスにつながるかどうかよりも、やはり見栄の部分がかなり優先されております。そうではなくて、今回の知的財産戦略というのは、やはり社会、新規産業を創出するという観点をはっきりさせていただいて、ベンチャー育成、社会還元というのを明確化したポリシーというのを是非制定していただければ、大学の現場としては動きやすいというふうに思います。
 2点目としては、今の知財本部、やはり各大学それぞれの強み弱み関係なしに設置される形になりますので、より重点の予算配分をしていただいた、スーパー知財本部のようなものを是非いくつかの大学で選んでいただきたいと思います。特に知的クラスター、産業クラスターが既に動いてございますので、それと連携する形で、やはり大学と社会との連携というのを全面に押し出したような、新しい成功例というのを構築していただければと思います。
 今のままですと、恐らく大学の中で小さくまとまってしまいますので、そうではなくて既に既存の政策の中で動いているような地方、あるいは国の施策との連携というのを是非するような、新しいタイプといいますか、成功事例を構築していただければと思います。これは大学側の方なんですが、最後の方がバイオ産業の育成に関してなんですが。
(スライド)
 やはりバイオ産業、先ほど言いましたように知財が非常に重要な領域です。今、日本は400 社程度というふうに言われています。アメリカが1,400 社〜1,500 社、ヨーロッパが2,000 社ほどあります。その意味からいきますと、非常に日本のバイオ産業はまだ小さいというのが現実でありまして、特に先ほどのように世界的に財産をかせげる領域ですので、是非バイオベンチャーの数を増やしていきたいと。
 その中でも創薬、いわゆる薬をつくる部分というのが、非常に大きなビジネスの市場がありますので、そういったようなやはり大型のバイオ産業を育成するような施策というのをお願いしたいと思います。
 この中で具体的に知財が何ができるかといいますと、やはり特許の審査期間を是非短くしてほしいと思います。特に今ベンチャーキャピタルからベンチャーはお金を受け取るんですが、特許が取れないとやはりベンチャーキャピタルはお金を出してこないと。特許が取れるか取れないかというのが条件になって出資をされるケースもあります。その意味からいきますと、やはり今のケースですとまずアメリカの特許が取れてから日本の特許というケースが非常に多い。日本もかなり早くはなってきたんですが、やはりライフサイエンスの専門の審査官の数がまだ足りないという現実と、実際に弁理士の先生も非常に少ないと。特にアメリカ、あるいはヨーロッパで、非常に高い知的財産の地位を獲得できるような、優秀な弁理士の先生、特に専門性の高い先生というのはまだ残念ながら不十分ではないかというふうに思います。その意味では、審査官、弁理士辺りの増員というのも是非考えていただきたいと思います。
 それから、不正競争防止法に関してなんですけれども、現状いろいろとほかの分野では不正競争防止法でカバーされてきたんですが、私どもがやっております薬をつくるというところでは、実はまだほとんどカバーの目がかかっておりません。特に患者さんを使ったいわゆる臨床治験のデータというのは、非常に重要でありまして、この辺りの保護というのも是非考えていただければと思います。
 最後に、こうしたような知財をとおして、やはり世界に通用するグローバルなベンチャーを育成してほしいと思います。大学発ベンチャーの数は1,000 社恐らく出てくると思うんですが、やはり何社生き残れるかというのは非常に重要なポイントになりますし、国内の産業だけでは、今は医薬品も日本は小さくなっていますので、アメリカ、ヨーロッパなりに通用する企業を是非生み出していただきたいという意味では、グローバルな、いわゆるベンチャーのCOEのようなものをつくっていただいて、積極的に知財の面からも御支援を願えればと思います。
 以上です。どうもありがとうございます。


○内閣官房長官 どうもありがとうございました。
 以上で予定の御発言は終わりましたので、あと自由の御発言ください。では、まず民間委員の方から、どうぞ御手洗社長。

○御手洗社長 御手洗です。今の野間口委員の言ったことにも関連するんですが、今回この知的財産戦略大綱における期限を前倒ししまして、今通常国会で関税定率法の改定を審議されておりますし、また輸出貿易管理令の改定も予定しているというふうに聞いております。その重要性の認識と、スピードには、大変高く評価し、感謝するものであります。そういう雰囲気がちょうどありますので、やや具体的で大変申し訳ないんですが、今、模造品だとか、高度な技術侵害品を水際取締で止めていただくということが話題になっておりまして、止めていただくんですけれども、それだけでは十分ではなくて、我々被害者そのものが具体的に法的アクションを取って、自分の救済をする必要があるわけであります。
 そういう観点に立ちますと、模造品は水際で止められましても、現在は実はその模造品の製造者や輸入者というものは、その名前が開示されないことになっております。これは寄ってきたるところは、国家公務員法や国家公務員倫理規定だとか、所得税法等による公務員の守秘義務の法律があるからであります。
 公務員の守秘義務は勿論いいことなんですが、この模造品の水際取締に関する限り是非例外処置して、この模造品の製造者や輸入者に関して、我々被害者に積極的に税関が開示してくれるようになりますと、我々も特許裁判等々で大変スムーズなアクションが取れることになります。税関による情報開示につきまして、これから知的財産戦略推進案を計画していくときに、推進計画案の条項に是非盛り込んでいただきたいと思います。やや具体的で大変申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

○内閣官房長官 ありがとうございました。
 中山先生、どうぞ。

○中山教授 久保利さんと角川さんから、コンテンツが重要であるという意見が出まして、私もそれは極めて重要であると考えております。ただ、知的財産戦略大綱の起草委員長としては、大綱を書いた立場から申し上げますと、大綱の中には確かにコンテンツ、あるいはそれを保護する著作権の記述は、それほど多くはありません。特許は大半でして、著作権についての記述もありますけれども、比重は少ない。
 これは、あちこちから著作権を軽視しているんじゃないかという批判を受けるんですけれども、実は大綱は2005年度までの具体的なアクションプランを書くということになっています。では具体的に特許と比べると著作権はどれぐらいあるかというと、それほどなかったというだけの話でありまして、これは決してコンテンツ、あるいはコンテンツビジネスを軽視しているというわけではなくて、戦略計画においては2005年以降も大事ですので、それは是非やっていただきたいと思います。
 ただ、コンテンツに関しましては、今、久保利さんおっしゃいましたように、コンテンツをつくるクリエーターが本当にハッピーかというと、必ずしもハッピーな情況ではないと私は思っていますが、その寄ってきたる原因は、知的財産だけではないというか、知的財産以外の問題が多いわけでして、それは寡占とか、あるいは流通等々の問題が大きいと思われます。現在公正取引委員会で、この問題についての研究会が持たれており、間もなく報告書が出ますけれども、政府としてはこの問題を広い観点から全体を扱っていただきたい。知的財産戦略本部としては、知的財産の側面からいかにそれをバックアップするかということを扱っていただきたいと思っております。
 それから、川合委員からのお話は、私も全面的に賛成でありまして、大学において権利というものを余り振り回すと、これはもう学問の自由、あるいは学問の発展に対して阻害要因になるわけです。このことは知的財産戦略大綱に若干は書いてあります。私も危惧はしております。それは、今後の知的財産政策においては極めて注意をしなければいけない。産業界と大学とは違います。大学で国費を使ってできた技術等は積極的に還元しなければいけない。そのシステムはどんどん使わなければいけない。その反面、やはり学問の自由とか、学問の発展というものも考えていかなければいけない。産業と学問とは違うんだという点、これも戦略本部の計画をつくるときには十分に注意していただきたいと思います。
 それから、人材の問題が出ましたけれども、これは私は大学の人間として人材は一番興味があるんですけれども、時間の都合がございますで、これは次回申し上げたいと思います。
 以上です。

○内閣官房長官 ありがとうございました。
 それでは、阿部議員、お願いします。

○阿部議員 戦略大綱について、若干中山教授のお話に補足をさせていただきますと、これは総理のごあいさつにもありましたように、国家戦略としてのまさにスタートであったと思います。しかし、たった短い、また1年も経ってないわけですけれども、各国の知財戦略というのは日々進化しておりますので、大綱はあくまでも第一歩というふうに考えて、国益を追求していただくことを強くお願いしたいと思います。
 もう一つは、これは私の立場が変わりまして、大学から総合科学技術会議の議員になりましたので、大臣のお話があるいはあるかもしれませんが、実は総合科学技術会議の中で知財戦略の専門調査会というのを以前からやっておりまして、戦略大綱に一応の応援をさせていただいたわけでありますが、今後とも科学技術政策という立場で更に検討いたしますので、また御議論の材料にしていただければということをお願いします。
 以上でございます。

○内閣官房長官 ありがとうございました。
 安西先生、お願いします。

○安西塾長 一言だけ、人材の育成の面について、法科大学院ができても、なかなか知財弁護士といいましょうか、そういう人たちが育つというのは、今のままでは時間がかかるというふうに思われます。やはり基本六法の方へかなり偏っていまして、国の知財戦略が法科大学院の方には反映されていないように思われます。
 それから、理系の学生に対して知財が大事だということを染み込ませていくための教育、人材等々の在り方といいますか、それが不足しているというふうに思われますので、また次回申し上げますけれども、そのことだけは申し上げておきたいと思います。

○内閣官房長官 ありがとうございました。
 下坂先生、お願いいたします。

○下坂弁理士 今の安西委員の御発言に私賛成でございます。法科大学院ができたんでございますけれども、いろいろある選択科目から、知財というややこしい分野をはたして取ってくれるか、また法学部卒業生が大体7割というのが受けられるけれども、あとの3割が理工系を含めてしか受けられないということになりますと、例えば弁理士会の技術関係は、8割近くが技術屋でございます。その人たちが専門分野を持って入学していくことができる大学ということで、最初ロースクールに期待をしたんでございますけれども、今のままではちょっと人材育成には弱いのではないかということで、次回プレゼンさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○内閣官房長官 その節、よろしくお願いいたします。
 どうぞ、厚生労働副大臣、お願いします。

○厚生労働副大臣 厚生労働省としても、省内に戦略会議を開きまして、既に医薬品の産業ビジョンとか、医療機器の産業ビジョン等を発表しているところなんでございますけれども、今日のお話の中で、川合先生や中山先生がお話になりました点で、私ども大変懸念しているところがございます。
 と申しますのは、先ほどの治療法の点なんでございますけれども、これはどうしても人の命がかかっているところでございまして、ここはどちらかというと特許権というよりかは、人類共通の資産だということで、特許権のような取り扱いをしていますと、人の命をお金で買うような点につながりかねないというところでございまして、そこで日本はかつて日本でBCGを開発したんです。これは結核のワクチンで、もう皆さん経験がおありになると思うんですけれども、これは特許権を放棄しました。それで世界で非常に喜んでいただいた、そういう例があるわけであります。
 また一方では、カナダでもってアメリカで新型インフルエンザが発生しまして、そのワクチンをカナダが持っていなかったので、カナダでもつくらせてほしいと言ったら、アメリカは販売もさせずに、ノウハウも明かさなかったという経緯があったので、カナダは独自で開発しなければいけないという例もあったわけでございますので、やはり川合先生や中山先生がおっしゃるように、人間の命と特許権というのの調整というのはやはりどうしても必要ではないかと。
 先ほど申しましたように、人類の資産ということでもっと解放する何かいい方法を当然考えていくべきではないかと。その辺を強く感じている次第であります。

○内閣官房長官 文部科学副大臣、お願いします。

○文部科学副大臣 大変貴重な御意見をありがとうございました。コンテンツの問題というのは、我が省また文化庁等で大変大事な問題ということで、今、取り組んでおります。
 また、今、先生方がおっしゃったように、これはまさに文化であるということで、今後、産業の面からも経済産業省ともいろいろと協議を重ねながら、しっかりとした基盤をつくり上げていきたいと思います。また、その支援策等も、今後講じてまいりたいと思っております。
 著作権の問題も、御指摘がありましたが、法改正もございます。同時に、これはなかなか検討が要るかなというのは、まさに御指摘をいただいた、海外に向ける海賊版の問題でございます。これは非常に幅広い範囲に及ぶと思いますので、政府内部でも連携を図りながら、私どもも先生方の御意見を聞きながら検討させていただきたいと思っております。
 最後に、今年から「知的財産本部」というのを設置するということに対して御意見がございました。ここにいろいろな情報がうまく集まってくる仕組みをつくっていかなければいけないだろうと。30か所でございますから、これは第1年目ということで、できるだけ有効にこれが働くように努力をし、また改良していきたいと思っておりますので、いろいろと御意見をいただければありがたいと思っております。

○内閣官房長官 科学技術政策担当大臣。

○科学技術政策担当大臣 私は、科学技術政策とITの担当大臣を両方かねております。前の科学技術政策につきましては、先ほど総合科学技術会議の阿部議員がいろいろおっしゃいましたように、それぞれ知的財産戦略と大学の関係とか、その他利活用等について検討しておりますので、適宜また御報告を申し上げて貢献させていただきたいと思います。IT担当として申しますと、先ほど来ございますが、コンテンツについてはやはり今後非常に大きな問題があります。特にビデオオンディマンドの時代になると。それから、特に若い人の理科離れが進んでいます。非常に一番わかりやすい例で言うと、理科の実験とか、自然の紹介、天文とか、いろんな分野があります。小学校から高校ぐらいまでの教材というのは、何千本もあるんです。今まで教育テレビや放送大学やいろんなところでやったものがですね。それが秘蔵されたままです。NHKにこれを今後オープンにして、学校で使えるように、非常に理想的ないい実験状況の下でいろんなことを教育していますからやろうじゃないかというと、結局先生方がどこに行ったかわからないと、もう3年経つといろいろ移動して、また著作権の問題があってつかまえて、了承を取らなければならない。
 だから、今後の問題について言うと、こういう教育的なものは、文化的なものは別として、先生方も非常に喜んで生徒が利用してくれるならありがたいと。秘蔵されるのは嫌だと思われる方が多いと思いますので、自然に今後の問題としては、この著作権問題を解決しながら放映していく、そしてビデオ化するということが大事だと思いますし、また逆にさかのぼる方を何とか工夫して、秘蔵されているものを掘り起こしていかなければいけない。それで教育にどんどん活用して、理科離れを脱却して、面白いという教育を各学校がやっていけるような環境づくりをしなければならない。これは以外に大きな著作権問題の側面でございますので、先生方がおっしゃったこととまた違う面があると思いますけれども、是非検討をしていただきたいと思っております。

○内閣官房長官 ほかに、法務大臣。

○法務大臣 先ほど来法科大学院の話が何回が出ましたが、あれはまだ始まったわけでございませんで、来年始まるわけで、今、一生懸命やっている最中でございます。ですから、御指摘のような問題点がございましたらば、その点を特に設立者に注文していただき、あるいは学生たちにもそのような認識をもってもらうように教育していかなければならないと思いますが、大学の内容については文部科学大臣がやってらっしゃることですけれども、私も本部の副本部長といたしまして、お話は非常に参考にはなりますが、そのようなところでまだこれからでございますので、どしどし注文していただきたいというふうに思います。

○内閣官房長官 ほかにございますか。ないようですね。それでは、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。本日の御意見、また次回、第2回の会合でいただいた御意見につきましては、今後作成していきます推進計画に生かされるように検討を進めてまいりたいと考えております。
 それでは、本日の会合はここで閉会いたしたいと存じます。本日の会合の内容につきましては、会合終了後に事務局長から記者会見を行わせていただきます。次回会合は4月の中旬を目途に調整したいと考えております。次回会合は、引き続き有識者の本部員の皆様から御意見をいただくことといたしたいと思います。
 大変ありがとうございました。