知的財産戦略本部会合 議事録
日 時:平成28年5月9日(月)14:55〜15:27
場 所:官邸4階 大会議室
○島尻知的財産戦略担当大臣 それでは、ただいまから「知的財産戦略本部会合」を開催いたします。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中お集まりいただきましたことに対して、まことにありがとうございます。感謝申し上げます。
本日は、竹宮本部員、日覺本部員が欠席でございます。また、安倍総理は途中からの御出席となります。
本日の議題は、「『知的財産推進計画2016』について」です。本本部のもとに設置されました検証・評価・企画委員会での審議を踏まえ、計画(案)を取りまとめました。計画本文は資料2、工程表は資料3のとおりでございます。
では、資料1のポイントに沿って内容を御説明申し上げます。
「推進計画2016」は「はじめに」及び「第1」から「第4」までの4項目で構成されております。現在、IoT、ビッグデータ、人工知能など新しい技術が進展し、また、経済のグローバル化が加速する中で、データの集積に価値が生まれるなどの知的財産の射程拡大への対応や、オープン・イノベーションの推進、また、イノベーション創出のための制度づくり・人づくりが重要になっております。
以下4項目では、このような動きへの対応方策を取りまとめております。
一番左側の「第1.第4次産業革命時代の知財イノベーションの推進」には「デジタル・ネットワーク化に対応した次世代知財システムの構築」として、柔軟性のある権利制限規定の具体化やライセンスの円滑化など、新しい著作権システムの構築、AI創作物など新たな情報財の創出に対応した知財システムの構築などの取組を盛り込んでございます。
「第2.知財意識・知財活動の普及・浸透」には「知財教育・知財人材育成の充実」として、小中高、大学等における知財教育の推進、地域・社会と共同した「知財教育推進コンソーシアム」の構築、また、地方、中小企業、農林水産分野等における知財戦略の推進といたしまして、中小企業などへの戦略的な普及活動や相談機能強化などの取組を盛り込んでおります。
「第3.コンテンツの新規展開の推進」には「コンテンツ海外展開・産業基盤の強化」として「クールジャパン官民連携プラットホーム」を通じた、コンテンツ産業とものづくり・食・観光など非コンテンツ産業の連携強化、継続的なコンテンツ海外展開に向けた支援や、人材育成などの取り組みを盛り込んでおります。
「第4.知財システムの基盤整備」についてでございますが「知財紛争処理システムの機能強化」といたしまして、適切かつ公平な証拠収集手続や適切な損害賠償額の実現、中小企業や地方の知財司法アクセスの改善などの取組を盛り込んでおります。
続きまして、検証・評価・企画委員会の両座長から御発言をお願いしたいと思います。
まず、渡部座長、お願いいたします。
○渡部検証・評価・企画委員会座長 産業財産権関係を担当させていただきました渡部でございます。
IoT、ビッグデータ、人工知能の時代において、つながる中でビジネスをしていくということの中で、知財の役割も大きく変化をしながらその重要性をますます増していると考えています。
今回の推進計画では、そのような新たに時代に対応するべく、創造、活用から紛争までをカバーする知財戦略が取りまとめられています。
しかし、このような知財戦略の実行においては、それを担う人材が必要であります。人工知能の技術がわかり、データという新しい知財を取り扱い、グローバルなビジネスモデルをつくっていくという人材が我が国にどれだけいるかというところがポイントになってまいります。今回、そのような人材育成を強力に進めるべく、専門職高等教育に加え、その基盤を初等中等教育まで広げて実施することを盛り込んでいます。例えばプログラミング教育、これは非常に重要でありますけれども、同時にそれを社会で活用するすべを身につけていくことが知財の基礎になります。今の人工知能ベンチャーを担うのは20代の若者です。初等中等からというと時間がかかるように思えますけれども、実はすぐ効果が出てくると思います。そういう施策にしっかりと取り組んでいければと思っています。ありがとうございます。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
次に、中村座長、お願いいたします。
○中村検証・評価・企画委員会座長 コンテンツ部門を担当いたしました中村伊知哉と申します。
海外展開を進めるクールジャパンの政策では、政府の施策も厚みを増してきて、民間でも成果が出始めています。ICTの対応で日本はおくれをとりました。そこで、それを取り戻すべくここ数年ICTを活用した海外展開策に力を入れてきました。ところが、IoTや人工知能に代表される新しいステージへとまたも世界は急展開を見せています。今度はこれに追いつくというよりも、これをリードするという観点から、世界に先駆けて人工知能などの次世代の知財システムに関する議論を進めてきました。これを国の政策に取り入れて実行していくスピード感の勝負になってきております。政府一丸となった対応をお願いいたします。
以上です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
それでは、意見交換に移らせていただきます。
まず、各閣僚から御発言をいただきたいと思っております。
馳文部科学大臣、お願いいたします。
○馳文部科学大臣 文部科学省においては、1.デジタル・ネットワーク化に対応した著作権制度の見直し及びライセンス環境の整備、2.オープン・イノベーションのための産学連携の強化、3.初等中等教育段階から高等教育段階まで発達段階に応じた知的財産に関する教育の推進など、本計画に盛り込まれている内容について、しっかりと取り組んでまいります。
以上です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
続きまして、石破国務大臣、お願いいたします。
○石破国務大臣 地方におきましては、まだ未活用のまま眠っております魅力ある産品、すぐれた技術が多くあります。これらを活用して地域の力を向上させなければなりません。
この半年間、地域しごと創生会議におきまして、いろいろな地方を回ってまいりまして、会議も開催してまいりました。石川県能美市でありますが、炭素繊維を活用し、効果的な標準認証の取得に取り組む、要は、炭素繊維で耐震化を実現するというものであります。そのまま放っておけば捨てられます野菜でありますが、これを活用して、子供が食べても安全なお野菜クレヨンというものをつくっている地域があります。1粒1,000円のイチゴを原料に、クリスマスには大人気でありますイチゴワインというものも開発されているわけで、さまざまな先進的な取り組みがございますが、知財・標準の戦略的な活用、これがまだまだの課題であると認識をいたしております。この積極的な活用を支えるべく、関係官庁と緊密に連携をいたしてまいります。
以上です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
引き続きまして、松下総務副大臣、お願いいたします。
○松下総務副大臣 総務省では、地方の創生やビジットジャパン戦略、TPP協定の活用促進による新たな市場の開拓等に貢献すべく、放送コンテンツを軸に周辺産業との連携を図りながら海外展開を推進することが大変重要であると考えており、取り組みを重点的に進めているところでございます。
総務省といたしましては、知的財産戦略本部のもと、関係省庁と密接に連携し、今後とも戦略的な放送コンテンツの海外展開等を強力に進めてまいりたいと思います。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
続きまして、齋藤農林水産副大臣、お願いいたします。
○齋藤農林水産副大臣 農林水産物・食品の地理的表示保護制度、いわゆるGI制度につきましては、昨年から登録を開始しまして、これまでに神戸ビーフなど12産品を登録したところでございます。また、TPPで規定された国際協定によるGIの相互保護を我が国も実施できるよう、地理的表示法の改正法案を国会に提出しているところでございます。
このほか、東京オリンピック・パラリンピックにおいて、国産農林水産物が十分活用されるべく、国際的に通用する日本発の食品安全管理に関する規格と認証の仕組みの構築を進めているところでございます。
以上です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
北村経済産業大臣政務官、お願いいたします。
○北村経済産業大臣政務官 第4次産業革命とも呼ぶべき産業構造の大変革が起きております。その中で、我が国企業が保有する技術を利益につなげていくためには、技術の権利化、秘匿化、標準化などを総合的に組み合わせた知的財産戦略の推進が重要であります。
経済産業省としては、まずは全国47都道府県にある知財総合支援窓口を通じた地域中小企業に対するワンストップ支援や、地方における面接審査の拡充に取り組みます。また、世界をリードする審査の実現による企業のグローバルな事業展開支援の強化を行います。さらに、権利情報の集約化や、現地化・プロモーション支援事業などによるコンテンツの海外展開支援を行います。そして、国際標準化や中堅・中小企業支援も含めた官民連携による戦略的な標準化の取り組みを推進いたします。これらを通じて、我が国の知的財産政策を着実に実施してまいります。
以上です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
それでは、今、総理が到着されますので、少しお待ちいただければと思います。
(安倍内閣総理大臣入室)
○島尻知的財産戦略担当大臣 総理が到着されました。それでは、有識者本部員より御発言を賜りたいと思っております。
まず、宮川本部員、お願いいたします。
○宮川本部員 弁護士の宮川でございます。
トップバッターですので、まずは「知的財産推進計画2016」の取りまとめについて、関係者の皆様の御尽力に感謝申し上げます。
さて、この計画(案)で指摘されているとおり、デジタル・ネットワーク分野での技術革新により、知財システム自体のバージョンアップが求められています。そして、イノベーションを促進するためにも、知財紛争を迅速かつ公正に解決するシステムを構築することが必要と考えます。今回、「デジタル・ネットワーク時代の知財侵害対策」として具体的な施策が提案できたこと、そして、知財紛争処理システムの機能強化のために多方面の意見を踏まえた具体的な検討が行われたことを高く評価しております。
いずれもイノベーション創出を促進するための良好な環境を整えるという意義がございます。今後の制度設計におきましては、逆にイノベーション創出を阻害することにならないよう、多角的な視点から検討されることを希望いたします。
また、最後になりますが、今後、ますます企業のグローバルな事業展開が予想されますので、知財の面においても支援体制の強化が期待されております。法務省、特許庁、外務省、最高裁判所など、関係各機関におかれましては、新興国における法整備支援や知財制度運用支援など、国際的な連携を引き続き推進されるよう期待いたします。
以上です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
続きまして、奥山本部員、お願いいたします。
○奥山本部員 弁理士の奥山です。2点だけ発言させてください。
1つは地域創生です。今回の計画の第2の柱に含まれていますが、知的財産の面から見れば大体予算的には十分なものがあるのではないかという感覚で現在おります。
あとは、これをどうやって有効な結果に結びつけるのかということで、当たり前ですけれども、東京で考えていても地域の現状は見えてきません。今までの努力をこれからも長期的に継続するに当たって、地方の現状に合わせた最適化を図っていく段階に来ていると思います。
2つ目は、知的財産紛争処理システムの機能強化で、これはここまで取りまとめていただいたことは非常に多とするのですが、既に遅きに失したとも言えると思っています。ここで制度改革が行われないと、日本の科学技術の先がないというぐらいに思っています。日本はキャッチアップ型で成長してきました。私が知財業界に入った30年前になりますけれども、そのぐらいが最終期だったと思うのですが、そのころから裁判のやり方、手続面が大きく変わりました。迅速になっています。しかし、侵害訴訟の大もとの基本的な考え方はキャッチアップ時代のままです。恐らく現状維持派の人々の数は多いとは思うのですが、それを打ち破ってでもこれからの豊かになった日本をベースに、今回の提案を全て実現するようにしていただきたいと強く思っております。
以上です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
では、原山本部員、お願いいたします。
○原山本部員 この4月より第5期の基本計画が実装のフェーズに入りました。情報、無形資産を糧とする新たな経済社会構想、ソサエティー5.0を打ち出しましたが、そこでは21世紀型の知的財産システムが求められます。その第一歩がこの第1章に書かれております「デジタル・ネットワーク化に対応した次世代知財システムの構築」にあります「著作権システム」の再考でございます。と言いつつもまだ課題は山積ということです。しかし、データのオープン化、共有化、または流通化が地理的な制約を超えて進む中、新たな源泉にデータありという状況はさらに色濃くなってまいります。例えばこのスマートフォンですが、アプリの裏では日々リアルタイムにデータが取り込まれ、機械学習のインプットとして活用され、ここのユーザーにカスタマイズされたメニューが生成されております。いわゆる人工知能のディープラーニングの活用でございます。
特許法、著作権法等の精神の継承をしつつも、何をもって知的創造物とする、また、ロボットも含めてということも考えなければいけないのですが、誰を対象とする、何を保護するといった、これまでは自明であった概念すらも一歩踏み込んで議論するときが来ております。
総合科学技術・イノベーション会議と連携して、データ駆動型イノベーション時代における知財の再考を図るべきと考えます。
ありがとうございました。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
では、小林本部員、お願いいたします。
○小林本部員 今回の計画(案)の基本的な環境認識は、デジタル化されたデータが国境を無意味化して地球規模でつながって、それらビッグデータを集積、処理、活用するプラットフォーマーのマーケットシェア力がグローバルに急拡大しているということだと理解しますが、一方で、国家の安全保障や人々の健康・医療等、国民の社会生活の基盤に直結するデータや知的財産は当然、国家として確実に守っていく必要があるわけです。この大型連休期間中、経済同友会のミッションでイスラエルを訪問し、ルーベン・リヴリン大統領、シモン・ペレス前大統領など政財界の要人と意見交換する一方で、自動運転のモービルアイ社、サイバーセキュリティーのチェック・ポイント社、デジタル関連インキュベーターでヘルスケアのビッグデータほかを手がけているザ・タイム社などの先端企業や、ヘブライ大学やワイツマン科学研究所などを視察いたしましたけれども、特にデータ駆動型イノベーションにおいて日本は謙虚に学ぶべき点が多いということを痛感いたしました。日本が国家として何をクローズして守り抜き、逆に、テクノロジーも含めて何をオープンにして攻め出ていくのかという、まず基本を議論して、体系化することが次世代の知財システム設計の出発点になると考えます。
同時に、独禁法などに基づく競争政策も知財システムと同様に守りのかなめだと思います。これらをばらばらに議論、制度設計するのではなくて、国家としてどのような守りの体制を構築していくのか。こういう制度横断的で総合的な検討が必要ではなかろうかと思います。
私はもともと素材屋なのですが、このほど産総研やNIMSを中心に、マテリアル・インフォマティクスという計算科学と材料化学のコラボレーションが始まるわけですが、これもまたアメリカがマテリアルゲノムという名称で四、五年前から既にやっております。日本がこの辺をどう成功に導くかというのは、オープン・クローズによる勝負の試金石になるのではないかと思います。また、私が記録メディアビジネスをやっていた時代、特許化したときにはもう既にその商品は陳腐化してしまっていて、特許だとか知財だとか言う以前にデファクトのビジネスモデルがしっかりしていないと儲からない。技術ばかり優れているのだけれども、結果として全然お金にならないということが余りに多かった。特にコンシューマーエレクトロニクス業界も同じ轍を踏んでいたと思うのですが、そういった苦い教訓をもう少しお互いに考えていかなければならないと一部反省もしつつ、本日は意見を述べさせていただきました。
どうもありがとうございました。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
続きまして、五神本部員、お願いいたします。
○五神本部員 東京大学の五神です。
既に御指摘がありましたように、第5期の科学技術基本計画でうたっている超スマート社会あるいはSociety5.0という方向は、インダストリー4.0を包含し、その先をいくということでありますが、これは日本に閉じたものではなくて、世界全体の必然的な潮流だと捉えています。
そこでの特徴としては、サイバー空間と物理空間が密接に絡まった中で経済が動くということが挙げられます。ビッグデータをもとに多数のものから新しい価値が生み出されるという、創造でも模倣でもない創発、エマージェンスというべき活動が本質的な意味をもつことになります。創発とは、私の専門である物性物理学の分野でアンダーソン博士が、「モア・イズ・ディファレント」と説明したこと、つまり、原子が数多く集まると超電導や磁性のような新しいものが出てくるということに由来します。多数というものが質的に新しい価値を生み出すのだということに通じるのです。さらに、人工知能の関与も拡大するという状況になると思います。
そうしますと、知財政策も創造か模倣かという旧来の二元論をベースとした制度では対応ができなくなるわけです。このような状況において、個々人の知的な活動を適切に評価し、人々の意欲を引き出しつつ、公益性、国益を損なわず全体としての価値創造の効果を最大化する、そのための新しい仕組みをつくるということが求められています。すなわち知財政策のありよう自体を検討すべきときが今、来ていると認識しています。これを日本が率先し、ビジョンを世界に先駆けて提示していくということが大事だと思います。
私はその中で、とりわけ日本の人文科学、社会科学研究の中に最先端の研究が数多くあり、その知見を戦略的に活用するということが鍵になると考えています。そのため、大学では産業界との連携を従来とは違ったフェーズで強化し、組織対組織の大型共同研究あるいはベンチャー創出などを加速しながら、新しい社会をデザインする、そのための文理融合の世界的な研究拠点をつくるべきだと考えております。東京大学でもそのような活動に具体的に着手したところであります。
以上です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
それでは、迫本本部員、お願いいたします。
○迫本本部員 総理初め、関係者の方々で知財計画が非常にいい方向に進んでいると思っておりまして、本当に感謝しております。ありがとうございます。
2点申し上げたいことがありまして、著作権に関しまして柔軟性のある権利制限規定ということで、アメリカ型のフェアユースの一般規定を導入しようという動きがあります。私は個別の規定で足りると思っています。これは映画会社の代表として言っているわけではなくて、私は弁護士でもありますので、懲罰的損害賠償請求がない、クラスアクションがない、ディスカバリーがないという日本において、アメリカ型の訴訟型のシステムを設けると、遅かれ早かれ必ず紛争解決コストが大きくなってくると思います。私はむしろ個別の規定によって柔軟に対応する制度を早くに立ち上げるという意見でございます。
もう一点、これは前から申し上げているのですけれども、エンターテインメントの世界を活性化させようとしたときに、個人なり企業のインセンティブをどう上げていくかということが最大重要で、国はその基盤を整備すべき立場であるということから考えると、税制会計上の制度で優遇していくことを考えていただきたいということを申し上げていまして、結構前から申し上げているのですけれども、話し出しますと、必ず財務省が反対するからと言われて、財務省の方に聞くと、そんなことは言っていないという話になって、なかなか進まないのですが、ヨーロッパなどでは税の優遇、還付、控除を含めてEUの附属機関なども相当研究しています。アメリカでも州ごとにそういう研究が進んでおります。その効果として、制作本数がどうなっているか、国内と国外の制作本数の比率はどうなっているか、雇用がどれだけ増えているかということで、全てプラスの結果が出ております。今、潮流はそういう形になっていると思います。
フィルムコミッションなどとあわせて、地方でそのような制度をつくっていけば、地方の活性化にも非常につながるのではないか。今、お金のあるロケ隊は韓国とか中国のほうに行ってしまってそちらにお金を落としている。ですから、ちょっと仕組みをそのように変える形で相当活性化するのではないかと考えています。
補助金にしても、裁量で補助する場合と、幾つかの過去の実績とかの計数で補助していくということも考えられますので、今の国の状況の中で最もコストパフォーマンスのいい形で民間の自助努力を活性できるようにお願いできたらと思っております。
以上です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
それでは、川上本部員、お願いいたします。時間の都合上、1分程度でお願いいたします。恐縮です。
○川上本部員 最近とかく話題に上がる人工知能についてですが、インターネットを全く利用しない企業がもはや存在していないのと同様に、人工知能を利用しない企業も今後存在しなくなるだろうことは皆様の意見が一致しているところだと思います。
しかし、特にどのような職業、産業が人工知能の影響を受けるかについてはいろいろな意見があります。ここで私見を申し上げさせていただくと、人工知能が得意なのは、世の中の直感には反していますが、クリエーティブとされる仕事です。クリエーティブとは何をどうやっているのか、なかなか口ではっきりと説明できない、どうも勘でやっている類の仕事です。それが人工知能が得意です。要するに、日本人が得意とされる人間の感性を生かしたクリエーターや職人、中小企業の工場の熟練工、そういう技術を引き継いで発展させる人工知能こそ日本から生み出すべきで、次の次のオリンピックのエンブレムは日本の人工知能がデザインする、そういう未来を目指すべきではないかと思います。
もう一つ、人工知能に力を入れることは、明治政府でいえば殖産興業ということでしょうが、同時に明治政府は関税自主権など国家の主権を確立することにも力を入れました。今、インターネットは治外法権の場所になっています。日本の法律に反した行為が海外のサーバーで行われていても対抗手段がありません。著作権侵害サイトへのサイトブロッキングが今回、初めて検討課題としてですが、計画(案)に明記されたことは大きな第一歩ではないかと思います。
引き続き、ネット時代、人工知能時代の殖産興業と主権の確立を目指すのが日本の知財戦略のかなめではないかというのが私の意見です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
では、山田本部員、お願いいたします。
○山田本部員 東北電子産業の山田でございます。
この知財戦略2016は充実した内容で、さまざまな視点から施策がつくられていると思います。特に地域の中小企業のために地域の知財支援の体制、相談機能の強化、また、事業化支援の強化、中小企業のとがった技術を迅速に標準化する新市場創造型標準化制度の開始、海外認証取得支援等の具体的な項目が入ったことは、地域の中小としては大変心強く喜ばしいことだと思っております。
昨年からこの会議に出席させていただいて、国の中央の段階ではさまざまな視点で多くの施策が検討されていることがよくわかりました。内容もとてもすばらしいと思います。しかし、ここ1年、地方での現状を見る限り、まだまだ中央と地方の温度差が大きく、どこに行けばどのような支援が受けられるのかわからない、そもそも支援策があることすらわからないという状況であることは余り改善していないように思っています。また、支援人材の育成及び配置もまだまだ不足していると思います。
せっかくの計画を今後、いかに周知徹底し、活用するかというのがこれからの重要な課題であると思います。全国津々浦々の現場で実際に効果があらわれるように推進していただきたい。計画の実行、進捗確認、成果報告、見直しをどのように行っていくのかというのも計画に入れていただければと思います。
また、今までほかの政策で、本来の目的は大変すばらしいものであっても、現場におりてくるとささいな文書確認のみになってしまって、開発よりも書類作成に多大な時間と労力を要するという本末転倒な状況になることがしばしば見られております。地方経済の活性化、中小企業の技術の高度化と海外展開という目的を見失わずに計画を遂行していただきたいと思います。
最後に、ぜひ全国の地方の中小企業の生の意見の聞き取り調査も進めていただければと思います。
以上です。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
それでは、議論はここまでとさせていただきます。「知的財産推進計画2016」について、本案のとおり知的財産戦略本部決定とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
それでは、本案のとおり決定をさせていただきます。
最後に、本部長であります安倍総理大臣から締めくくりの御挨拶をいただきたいと思います。まず、プレスが入室いたしますので、少々お待ちください。
(報道関係者入室)
○島尻知的財産戦略担当大臣 それでは、総理、よろしくお願いいたします。
○安倍内閣総理大臣 ただいま「知的財産推進計画2016」を決定しました。
第4次産業革命に向けてビッグデータの収集、利用を進めるため、著作物を一定の場合に自由に使えるようにするなど、著作権制度を見直します。今後、人工知能が作り出す音楽や小説などの創作物についてどこまで誰に知的財産権を認めるのか検討してまいります。国民一人一人が創造性豊かに知的財産を創り出し、使いこなせることを目指します。そのため、子供たちが知的財産について興味関心と正しい知識を持てるよう、産学官のコンソーシアムを立ち上げ、小学校段階から知財教育に取り組みます。あわせて、地方・中小企業の知財戦略の強化を支援します。新しいビジネスを生み出すためにアニメなどのコンテンツとものづくり・食・観光などを結びつけるマッチングを官民連携して進めていきます。
我が国の知的財産を「守る」だけにとどまってはならないと思います。知的財産を活用し、イノベーションの創出に取り組む企業・大学などの「挑戦者」を力強く後押しするため、政府一丸となって知財戦略を進めてまいります。
○島尻知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
それでは、プレスの方、御退室をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○島尻知的財産戦略担当大臣 ただいま安倍総理から御発言がありましたとおり、本日決定いたしました「知的財産推進計画2016」の着実な推進に、関係閣僚及び有識者本部員の御協力をよろしくお願い申し上げます。
以上で「知的財産戦略本部」を閉会いたします。本日はお忙しい中、大変にありがとうございました。
|