知的財産戦略本部会合
議事録

日時: 平成22年3月30日(火)17:00〜17:45
場所: 官邸大会議室



○古川内閣府副大臣
 それでは、時間となりましたので、ただいまから知的財産戦略本部会合を開催いたします。
 本日はお忙しい中、ご参集いただき、誠にありがとうございます。
 総理初め、閣僚の何人かが公務のため到着が遅れておりますが、先に始めておくようにというお話でございましたので、開会させていただきたいと思います。
 本年1月に、菅大臣の後を受け、知的財産戦略担当の大臣に就任されました川端大臣が本来、司会進行を行うべきところでありますが、本日、川端大臣も国会の都合で遅れて出席されるとのことでございますので、副大臣であります私が司会を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、早速議事に入りたいと思います。本日の議題は、「知的財産推進計画2010骨子(案)について」及び「企画委員会の設置及び本部の運営について(案)」の2つであります。それぞれについてご説明した後、まとめて意見交換を行いたいと思います。
 最初の議題は、「知的財産推進計画2010骨子(案)について」であります。
 昨年12月の本部会合で、本年前半をめどに新たな知的財産推進計画を策定することが決定されました。これを受け、本部の下に知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会及びコンテンツ強化専門調査会を設置して、計画に盛り込むべき事項について具体的な検討を行ってまいりました。そこで本日は、まず両専門調査会の代表者から、調査会における検討状況についてご報告をいただきたいと考えます。続いて、調査会における検討を受けて、知的財産戦略担当の政務三役と両調査会長で取りまとめました知的財産推進計画2010骨子(案)につきまして、津村内閣府大臣政務官からご説明をいたします。
 それでは、各専門調査会の代表からそれぞれの調査会における検討状況を報告していただきます。
 初めに、知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会からお願いしたいと思いますが、会長の妹尾堅一郎・NPO法人産学連携推進機構理事長は、本日ご都合がつかずご欠席でございますので、副会長の岸宣仁・日本大学大学院知的財産研究科講師からご報告をお願いいたします。

○岸副会長(知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会)
 それでは、ご報告させていただきます。
 まず、資料1−1を見ていただければと思いますが、これまでの専門調査会の検討経緯については、本年2月から検討を開始し、これまで5回の議論において骨子に盛り込むべきと考えられる事項及びその目標指標について検討を行ってきたところです。
 検討の状況は、最近の国際競争力は技術のみならず、ビジネスモデルやそのための国際標準化を含む知的財産マネジメントといった「知を使う知」─これは知財を使いこなす知恵という意味で使っておりますが─に大きく依存しております。そこで、例えば最近の事例でいいますとスマートグリッドとか蓄電池の国際標準化を初め、成長戦略における重点分野での国際競争を勝ち抜くためには、何よりスピード感を持ってこの「知を使う知」を駆使し次の取り組みを進めることが肝要であるという点で意見が一致いたしました。
 次に、大きな柱が2つありまして、企業の国際標準化、知的財産を有効なツールとして活用することにより、グローバルな規模で事業に成功するというのが第1でありますが、これについては新たな視点として、単に国際標準、知的財産権の獲得を目的にせず、それらを活用した事業での成功を目的とし、そのために必要な戦略を官民一体となり策定・実行する。特に官民一体という点ではかなり議論が出ました。その中の重要施策例としましては、国際標準化や事業化を見据えたロードマップを含めた競争力強化戦略の官民一体となった策定・実行、もう一つ、欧米のみならずアジア諸国とのパートナーシップに基づく共同研究開発プログラムの構築。
 もう一つ、大きな柱の2ですが、我が国のすぐれた技術を生かした世界に通用する新規事業を創出する。これについては新たな視点として、これまでに十分に活用されていなかったベンチャーとか中小企業、大学を含めた知を生み出す能力を活性化するため、これまで手をつけられなかった課題に大胆に取り組むということになっています。重要施策例を箇条書きにいたしますが、ベンチャー・中小企業に対する出願支援策として、弁理士費用の負担を軽減させるための方策。一例としては特許パック料金制度など。もう一つは、大学や公的研究機関がそれぞれの研究リソースをもって参画し、イノベーションの出口イメージを共有して共同研究─共創と呼んでいますが─する場の構築。それから、知的財産管理を含む研究マネジメントを行う専門職の社会的地位の確立、その人材の育成・確保。最後に、特許の活用促進や大学を含めたユーザーの利便性向上のための特許制度見直し。この中には、例として通常実施権の対抗制度とか出願フォーマットの自由化などがあります。
 以上でございます。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 次に、コンテンツ強化専門調査会の会長の中村伊知哉・慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授からご報告をお願いいたします。

○中村会長(コンテンツ強化専門調査会)
 資料2−1をご覧ください。コンテンツでございます。
 5回の議論を行いまして、私ども、財政支出を極力抑えて、規制緩和ですとか外交といった手段で市場を拡大しようという戦略を立てました。従来のコンテンツ政策といいますのは、国内の産業振興と著作権の保護強化の色彩が強かったのですが、その転換も図ったというものであります。
 U.の検討状況のところをご覧いただきますと、そこで我々は海外、人材、デジタル・ネットの3つの柱を立てました。順に申し上げますと、まず1番目、海外から利益が入る仕組みを構築する。視点としては、日本単独ではなく海外と共同してコンテンツを作るあるいは外交力を活用してアジア市場を開拓するといったことのために、施策としては、ファンドを創設したりアジア諸国における規制緩和を働きかけたりします。
 また、海外にコンテンツを売るのに対しまして、人材の方は─2.ですけれども─海外からも優秀な人材が日本に集まるという魅力的な「本場」を日本に形成するという方向で、視点としては、海外の優秀な人材との交流を促進するあるいはクリエーターの裾野を拡大し、コンテンツの創造機会を創出するために、施策としては、コンテンツ版のCOE(中核的な大学)を形成する。つまり、これは世界的な高等教育の場を日本の中に作るということです。それとともに、小中学生に対するコンテンツ教育を実施するなどして、底上げを図るということを考えております。
 3.です。デジタル化・ネットワーク化を促進するために─これは施策のところをご覧ください─4つ挙げました。まず、コンテンツの特区、コンテンツに関する実験の場を創設すると。あるいは2ポツ、新たなメディアを整備する。デジタルサイネージ─これは電子看板のことですけれども─ですとか携帯向けの放送などに、これは通信・放送の融合法制度を整えて電波も開放していくという措置でございます。3点目に、プラットフォーム、3D、立体の映像やIPTVの国際標準を取りにいく。そして4点目としては、ネット上の著作権侵害対策等を実施していくというものでございます。
 以上でございます。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 では次に、津村政務官から知的財産推進計画2010骨子(案)について説明願います。

○津村内閣府大臣政務官
 知的財産推進計画2010骨子(案)についてご説明をいたします。資料3−1と3−2がございますけれども、内容は基本的には重複をしております。資料3−1の方が少し見やすいポンチ絵になっております。3−1をご覧ください。
 まず、1ページ目でございますけれども、先ほど岸先生からもお話がありました、世界的に「知を使う知」の競争が熾烈になっておりまして、この「知を使う知」というのは知財を使う知恵というふうに先ほどご紹介ありましたが、こうした競争が熾烈になっている中、画期的なビジネスモデルや戦略的な国際標準化を含む総合的な知的財産マネジメントを駆使した国際競争の時代となっているというのが現状認識でございます。そのような中で、成長戦略の二本柱でもございますグリーンイノベーション、ライフイノベーションなど、日本が強みを持つ技術の力やクールジャパンとして評価される文化の力について、国際競争力強化のための施策をスピード感を持って推進するため、知的財産推進計画2010を策定してまいります。本日説明いたしますのはその骨子でございます。
 この計画骨子は、資料3−1、中ほどに示しております三本柱の重点戦略から構成をいたしております。緑の矢印の戦略1、戦略2、戦略3という部分でございますが、個々の戦略につきましては後ほどご説明いたします。本骨子には、短期・中期という施策の実施時期や責任府省を明記しております。今後、本骨子を新成長戦略に可能な限り反映させるとともに、両専門調査会では引き続き検討を深めていただきまして、本年5月を目途に知的財産推進計画2010を決定したいと考えております。
 1枚おめくりいただきまして、2ページをご覧いただければと思います。個別戦略三本柱のうち、まず1つ目でございますが、戦略1、特定戦略分野における国際標準の獲得を通じた競争力強化でございます。目標といたしまして、特定戦略分野に選択と集中を行い、国際標準の獲得や知財活用を行うための知財マネジメントの推進を謳っております。重点施策といたしましては、国際標準化ロードマップを含む競争力強化戦略をオールジャパンで策定・実施すること、またフォーラム標準を含め、国際標準化活動を総合的に支援することといった施策を掲げております。
 もう一枚おめくりをいただきまして3ページでございますが、こちらは戦略の2、コンテンツ強化を核とした成長戦略の推進でございます。目標といたしまして、コンテンツの海外展開促進、世界のコンテンツ人材が集まる「本場」の形成、コンテンツのデジタル化・ネットワーク化の推進などを掲げてございます。重点施策といたしまして、海外展開を支援するファンドの形成、コンテンツ版COEの形成支援、一流クリエーターの小学校、中学校等への派遣、プロバイダによる侵害対策措置の実施を促す仕組みの導入、アクセスコントロール回避規制の強化、またコンテンツ特区の設立といった施策を掲げております。
 最後に、4ページでございますが、戦略3、知的財産の産業横断的な強化策を掲げております。目標は、経営層を対象とした意識改革・実践的研修、ベンチャー・中小企業や大学の知財活用へ向けた特許制度の見直しなどでございます。重点施策といたしまして、大学にも容易な出願手続など特許制度の利便性向上、ベンチャー・中小企業のための特許パック料金制度の検討、研究マネジメントに関する専門職の社会的地位の確立と人材育成、模倣品・海賊版拡散防止条約の交渉妥結、いわゆるACTA条約でございますが、こういった施策を推進してまいります。
 最初の1ページの中ほどにも書いてございますけれども、総合科学技術会議における科学技術政策あるいはIT戦略本部におけるIT政策等と一体化して推進していくことが非常に重要なポイントだと考えております。
 以上でございます。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 ただいま川端大臣がお着きになられましたが、引き続きまして私が司会を務めさせていただきます。
 この骨子案につきましては、後ほど次の議題とあわせてご意見をいただきたいと思っております。
 続いて、本日2つ目の議題であります「企画委員会の設置及び本部の運営について(案)」、引き続き津村政務官から説明願います。

○津村内閣府大臣政務官
 たびたび失礼いたします。議題の2についてご説明をいたします。「企画委員会の設置及び本部の運営について(案)」でございますが、資料4−1と4−2をご覧いただければと思います。こちらも内容的には同じものでございまして、分かりやすく図表化いたしました資料4−1でご説明をしたいと思います。
 知的財産戦略本部の検討を政治主導で実施してまいりますために、本部の下に知的財産戦略担当大臣を座長とする企画委員会を設置いたします。企画委員会は専門調査会の運営状況についての報告を受けることといたします。また、この企画委員会には幹事を置きまして、幹事会を開催いたします。幹事は座長、国家戦略室・知財本部副本部長府省の副大臣または政務官といたします。座長は、必要に応じて関係府省の副大臣または政務官に幹事会への出席を求めることができることといたします。
 こちらも、先ほど少し触れましたIT戦略本部と同じ構成になっております。
 以上でございます。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 それでは、「知的財産推進計画2010骨子(案)について」及び「企画委員会の設置及び本部の運営について(案)」、皆様のご意見を伺いたいと思います。
 時間が限られておりますので、できるだけ多くの方がご発言できますよう、大変恐縮でございますが、発言はお一人1分程度でお願いいたします。申し訳ございません。ご配慮いただければと思っております。まず、有識者本部員の方々から挙手の上ご発言をいただければと思います。
 では、相澤本部員、お願いいたします。

○相澤本部員
 知的財産推進計画の骨子が大変すばらしい形でまとまってきたのではないかなと思います。私も専門調査会の一員でございましたので、新たな提案ではございません。専門調査会の段階で私は何度か指摘してきたことがございますが、改めて申し上げたいと思います。
 それは、本部から出る戦略の実施主体を明確にすべきだということでありました。その結果、最後の添付資料に明確に示されております。しかし、これは複数の省にまたがっているものもあり、それから知的財産本部が相当グリップ力を強めて全省をまとめなければいけない部分があるのではないかと思われます。特に、添付資料の別添となっている1番目の戦略分野におけるロードマップの策定は、本部自ら戦略的にまとめていくものだと思います。そこの位置づけを計画策定の最終段階では特に明確にしていただければと思います。
 以上でございます。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 では、佐藤本部員、お願いいたします。

○佐藤本部員
 昨年12月の本部会合の際に、この知的財産戦略本部の組織機能を抜本的に強化すべきだということを提言申し上げました。今回、企画委員会の設置という形で本部の機能強化が図られたということで、大変ありがたく思っております。韓国、中国初め、諸外国での知的財産戦略も非常に速いスピードで進んでおります。そういう意味でもこの新しい企画委員会が戦略をしっかりグリップしていただいて、指令塔として政官に責任を持ちながら、国家としての知的財産戦略をぜひドライブしていただきたいと思っています。それによって我が国の競争力強化という目的が達成されるように、関係各位のご尽力をよろしくお願いしたいと思っております。

○長谷川本部員
 先ほどご説明のありました、2010骨子の戦略3の知的財産の産業横断的な強化策に関連するわけでありますけれども、私もこの戦略会議に出席させていただきまして、何度かご説明も申し上げましたし要望も申し上げてきました。私が用意をいたしました資料6−3の2ページ目にも入っていますけれども、やはり産業横断的なワンストップショッピングを作るということについて、アイデアは非常に良いのですが、なかなかそれを具体的に進めるというところで具体案が出てこないという問題があります。既にバイオの場合には製薬協が中心になりましてそういったワンストップショッピング的なものを作りまして、その後、産業革新機構と連携して、アカデミアあるいはバイオベンチャーでご相談があるときには受けられるという体制を作りました。是非他の分野でもそういうオールジャパンのワンストップショッピング体制をお作りになることを推薦いたしますと同時に、具体的にそれはやっぱり具体案を持って後押しをしていただかないと、アイデアがなかなか具体化に進まないということです。ぜひそういう具体例も見た上でご検討をいただければと思います。よろしくお願いします。

○古川内閣府副大臣
 野間口本部員、お願いいたします。

○野間口本部員
 今日、私、資料6−2を持ってまいりましたので、これを持ちながら説明したいと思います。  標準化の重要性が知的財産戦略の中で取り上げられたということは、大変心強いことだと考えております。これに関しまして2点申し上げますが、私が今おります産総研もその一端を担っているわけですけれども、標準化活動が功を奏した例を紹介したいと思います。これが6−2のところでございますけれども、俗に光触媒と申します、窓や壁に塗って空気浄化などの効果を出すものでありますが、形がないだけに模倣品とか粗悪品が、特に外国製ですけれども数多く出て、光触媒の信用が得られず普及しませんでした。ところが、ちゃんとした評価法というのを日本が提案しまして─試験法ですね、これが国際標準になりまして、それを使ってきちっとした保証ができるような認証をやるということができるようになりまして、具体的な市場が今立ち上がりつつあるということで、市場創造という面でもこの国際標準の重要性は大きいと私どもは思っております。
 それから、2ページ目でございますが、国際標準、これは大変重要でございますけれども、国際標準に合致しているか否かの適合性評価、これについても力を入れていく必要があると思っております。現在、実は多くの分野で標準は取っても認証という行為は海外機関─特にヨーロッパ勢でございますけれども─が、独占と言えばちょっと語弊がありますけれども、非常に広い範囲で認証サービスをやっているということがございまして、せっかくの日本の製品がヨーロッパの認証機関でいろいろ試験されるということが多く行われております。私はそういった状況から、このページの下の方に書いておりますように、日本でも認証体制を強化して、国内で十分な認証が得られるようにする必要があると思います。そして、海外との相互認証ができるような形にしますと、日本からの技術流出の防止あるいは認証サービスという雇用の創出、そういった面でも大変大きな効果があるのではないかと思っておりますので、こういった観点もよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 それでは、松本本部員、お願いいたします。

○松本本部員
 ありがとうございます。資料6−4を持ってまいりましたので、それをご覧になりながら3点ほど簡単に申し上げたいと思います。
 資料6−4の1ページ目に関することでありますが、大学の本質は教育研究活動であり、利益を追求する組織ではないということはご理解いただいていると思います。その上で、大学が特許を持つことの意義については、第一義的には大学の研究成果の一日も早い社会還元であると考えております。2つ目としては、企業との共同研究の推進による産官学連携活動の促進であり、この活動はよい意味で国際競争力強化に向けた知的創造サイクルの活性化にあるということで、これを掲げていただきまして、大変ありがたいと思っております。
 2番目は、次のページへめくっていただきまして、我々が提案をさせていただいてきた要望でございますが、大学の特殊性を踏まえた柔軟な特許出願制度の確立ということをお願いしてまいりました。本日お示しいただきました骨子案の2ページ、知的財産の産業横断的な強化策の中で、先ほど津村政務官からお話がございましたが、大学・公的研究機関による知的財産の活用を大幅に増やすべく、料金の低額化、出願要件の緩和等、ユーザーの利便性の向上に資するような特許制度の見直しを言及していただいております。これは高く大学としても評価をしたいと思いますし、深く感謝をしているところでございます。
 最後に3番目でございますが、2ページ目の最後にちょっと書かせていただきましたとおり、今後の具体的な制度設計の検討に全面的な協力を大学群はさせていただく所存でございますが、1つお願いしたいことがございます。ご存じのiPS細胞技術のような、国家の基盤技術となる、極めて重要で国家・国民が一番受益者となるような特許につきましては、今回の柔軟な特許出願制度の導入により、さらなる国際競争力強化につながるというように思っておりますが、そういった質の高い特許を確保するためには、外国出願費用の助成制度の拡充に加えて、海外での権利確保に必要な特許係争にかかわる支援策につきまして、ぜひ盛り込んでいただきたく、お願いを申し上げたいと思っております。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 他に。では、山本本部員、お願いいたします。

○山本本部員
 私は資料の6−6でございます。1枚でございます。
 今回の知的財産推進計画が実行されますと、随分今までとは違う画期的な取り組みになると考えております。ただ、今後の検討事項として私は申し上げたいことが2点あります。米国の大学は実は大学の技術の3分の2はベンチャー企業や中小企業にライセンスをされていて、これが中小企業支援につながっております。これは過去10年間どこをとっても同じようなデータで、大体、大学の技術の3分の2はベンチャー・中小企業にライセンスをされているのですが、日本ではまだ半々という状況でございますので、何とかこの大学の技術をベンチャー・中小企業から事業化ができるような施策について今後ご検討をいただければと考えております。あと、実は日本の大学の技術を狙っているというか買いあさっているパテント・アグリゲーターとかパテント・トロールというのがございまして、昨年は実は9校の日本の大学が米国のそういったところに大学の技術を譲渡していたのですが、もうそれが今や20校にふえているという状況で、これは日本の税金を使った研究が海外で実用化されて日本の企業を脅かすという危険性もございますので、これについてもさらなるご検討をいただければと考えております。
 私からは以上です。

○古川内閣府副大臣
 では、三尾本部員、お願いいたします。

○三尾本部員
 資料6−5をご覧いただきたいと思います。とかく知財といいますと、弁護士は訴訟関連に限定される業務が想定されがちだと思うのですけれども、実は中小企業やベンチャーの設立段階から営業展開、雇用政策、コンプライアンスとか営業秘密管理等の社内管理、共同研究、委託研究の契約書の整備、もちろんライセンスや権利譲渡についても、ワンストップでサービスを提供できるということを皆さん実は余りご存じないのかもしれないなと思いまして、ここで改めてご紹介したいと思います。特に中小・ベンチャー企業に対しましてきめ細やかなサービスを弁護士は提供できると思いますので、ぜひご活用いただきたいと思います。弁護士の団体としては弁護士知財ネットという団体がございまして、特許その他の知財を専門とする弁護士の紹介をしております。また、コンテンツ関連につきましてはエンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワークというNPO法人がコンテンツの海外展開を含めまして弁護士サービスの提供をしておりますので、ここでご紹介させていただきます。ぜひご利用いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございます。
 里中本部員、如何でしょうか。

○里中本部員
 これまでいろいろとお話しさせていただいた日本を魅力あるコンテンツの市場にするということが盛り込まれていて、大変心強く思いました。
 本日、私は資料6−1ですけれども、これまでのことというより、ちょっと今後のことで2点ほどと考えて書かせていただきましたが、違法コピーに対する取り組みの具体策、使う側から見てこういうのはどうだろうかというのを書かせていただきました。
 この下の「日本独自のアイデアと開発力を世界に広め」という部分は、実は今この場でというよりちょっと先のことですけれども、せっかく我が国はすばらしいアイデアと技術を持っていながら、世界にアピールする力がちょっと弱いのではないか、遠慮深いのではないかと常日ごろ感じている部分があります。ここには、例として沈みゆく国、ツバルをどうするかということを通じて我が国の技術と将来とを世界にアピールできないかと。ある国の過去と歴史とそして未来も救うということで、そこには我が国の技術を使うわけですから、我が国の技術者あるいは企業にお金も還元されるということで、しかもツバルの場合は援助実態がうやむやにされることもないだろうし、日本とツバル2国間だけの合意で進められると。こういう各省をまたがったアイデアというか企画を通じて、我が国がより魅力的な国、よりすばらしい国に見えるようなアピールの仕方をして、しかも実際に助けられるわけです。こういうことを各省横断的に考える、そういうアイデアをこれからいろいろ出していければいいかなと思いました。
 ちょっと目を通していただければと思います。失礼しました。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 中山本部員、如何でしょうか。

○中山本部員
 今回の骨子案の二本柱のうちの一つがコンテンツだと思いますけれども、コンテンツは資源が少ない我が国の有力な産業になり得ると思います。わが国が強いと言われているアニメや漫画も足腰が弱り、このままだと韓国や中国に負けそうです。そこで、コンテンツを振興させなければいけないのですけれども、振興策はいろいろ必要ですが、法的な観点からいいますと、どうも著作権法がある意味では規制法になっている面もあるわけです。著作権法というのは著作者、創作者をエンカレッジするのが目的ですけれども、今ではそれと同時に流通、利用、その方面も促進しなければいけない。特に流通を促進するという観点から著作権法というものを見直していただきたいと思っております。
 以上でございます。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 それでは、続きまして有識者本部員以外の本部員の方々から挙手の上、お一人1分程度でご発言をお願いいたします。時間がちょっと限られて、5分程度になりますが、よろしくお願いいたします。

○原口総務大臣
 3点。1つは国際標準の獲得関連ですけれども、やはりコンテンツと言った場合、デジタルコンテンツの割合が非常に高うございます。今私たちは南米で3億人の新たな市場を創出したわけですけれども、国際競争力の強化の中でこの国際標準、ICT分野の国際標準化ということをまずご提案したいと思います。
 それからもう一つは、今日、角川先生はお見えになっていませんが、デジタルコンテンツの強化でございまして、コンテンツ産業の拡大のみならず、日本のプレゼンス向上のためには、まさにすべてのコンテンツがデジタル化し、ネット配信化するということが大事でございまして、人材育成の観点からデジタル教科書、これは入れていただいていますけれども、情報通信技術への教育への活用というのは重要でございます。
 それからもう一つは、知的財産のマネジメント戦略でございまして、ICT分野を初め、各分野で国が所有する知財の有効活用を進めていくことが必要で、証券化等を含めた知財に関する金融面での取り組みを促進する方策について検討することをご提案申し上げます。
 これで最後にしますが、戦略というのであれば、戦略に向けたやはり明確なビジョンの数値化ということが必要だと思います。これは数値化というものがこれから為されると思いますが、現在の知財は幾らで、誰が幾ら持っているのか、そしてその割合は何なのか、そして生産性はどうなっているのか。先ほど山本先生の方からパテント・アグリゲーターのお話がありましたけれども、この戦略の中身を見る限り、そういう危機感はどこにも書いてありません。私たちは食い荒らされている国にいるんだという危機感の下で、しっかりと国民と共有して、数値をいついつまでに何を実現するということが必要だと考えていますが、これは質問ですけれども、今知財本部が持っている知財の内訳について教えてください。

○古川内閣府副大臣
 確認して後でご報告させていただきます。

○原口総務大臣
 ありがとうございます。

○古川内閣府副大臣
 では、高橋政務官、お願いいたします。

○高橋経済産業大臣政務官
 経産省の政務官の高橋でございます。
 先ほど来、何人かの方々から特許のお話が出ましたので。特許は経産省の管轄でございます。この特許庁のシステムの見直しも今やっているのですが、特許手数料の引き下げということを直嶋大臣の方から指示を受けて今やっている最中でございまして、特に中小企業等を含め、この特許というのは大変お金がかかるものでございますので、ここの引き下げを今実行に移そうとしておりますので、そういう部分にこたえていきたいというふうに思っております。
 以上でございます。

○古川内閣府副大臣
 他にございますか。
 では、仙谷大臣、お願いします。

○仙谷内閣府特命担当大臣
 遅れて参りまして誠に申し訳ございません。今度、国家戦略を担当することになりましたので、若干知財関係についても私の方からお願いかたがたお話をさせていただきたいと思います。
 ご承知のように、産業構造が大変、知識経済化しております。まさに知的財産権の問題が今ほど重要なことはないと言っても過言ではないと思います。昨年、菅副総理がこの国家戦略を担当しているときに作りました新しい成長戦略、柱をグリーンイノベーションあるいはライフイノベーションを掲げたわけでございますが、今度のこの知財計画上の特定戦略分野にしていただいていることに感謝をしたいと思います。また、本計画で重視されておりますクールジャパンといいましょうか、ジャパンクールも成長戦略の柱であることも疑いのないところであります。
 今、上野の国立科学博物館でものづくり展が開催されておりますが、先日これを見学に行ってまいりました。世界ナンバーワンあるいはオンリーワンの技術が日本という国は全国津々浦々、大企業から中小企業まで無数に存在しているという事実を見てまいった次第であります。これらのものを拝見いたしますと、日本の伝統文化、つまりきめ細やかさとかもてなしとか自然との共生という、そういうものが例外なく内在化しているということが分かります。そして、それが世界を魅了しつつあるといいましょうか、そういうものかなと改めて思いました。まさに本計画でも指摘されているように、ものづくり力と文化力、その総合力が非常に重要だなと改めて感じたところでございます。今後、成長戦略と知財計画をよく連携させあるいは組み合わせて所要の政策を実現していきたいと思いますので、今後ともご指導、ご指摘、よろしくお願いを申し上げます。
 以上でございます。

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 大変恐縮でございますが、ちょっと後ろが詰まっておりますので、ご発言はここまでとさせていただきたいと思います。
 では、ただいまの議論も踏まえ、知的財産戦略本部として知的財産推進計画2010骨子を本案の通り決定したいと思いますが、ご異議ありませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○古川内閣府副大臣
 ご異議がないようですので、本案の通り決定いたします。
 続いて、「企画委員会の設置及び本部の運営について(案)」でありますが、本部の運営に関して必要な事項は本部長が本部に諮って定めることとなっております。本件についてご異議ありませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございます。ご異議がないようですので、本案の通り本部長の決裁を仰ぎたいと思います。
 では、ここでプレスが入室いたしますので、少々お待ちください。

(プレス入室)

○古川内閣府副大臣
 それでは、鳩山総理からご挨拶をお願いいたします。

○鳩山内閣総理大臣
 知財戦略本部の会合で熱心なご議論をいただきまして、ありがとうございます。私自身が遅参をいたしましたことを心からお詫び申し上げます。今、知財の推進計画2010骨子を皆様方でご討議をいただき、お認めいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。
 まさに「知を使う知」の戦いが世界の中で繰り広げられているわけでございまして、日本がこの戦いに負けるわけにはまいらないと、すばらしい知的財産を持っている国なんですから、もっともっとそれを戦略的に使うべきだと、おっしゃる通りだと思っております。それが必ずしも十分に戦略的になかったということで、これからはさらに磨きをかけましょうということで2010をおまとめいただいたことだと思っております。
 これからは、例えばスマートグリッドとかあるいは電気自動車において、世界の開発が進んでまいると思っております。そういった中で、国際的な標準化の競争に負けてしまったら、せっかくいいものを持っていてもそれを世界の中でお認めいただけないという結果にならんとも限らないわけでありまして、こういった国際標準化の中でもしっかりとした戦略性を持っていかなければならないということは言うまでもありません。
 また、コンテンツが日本の力だという話も盛んにいただいたわけでございまして、これをいかに生かし切っていくかということも大変重要な発想だと思っておりまして、ぜひ日本としてのコンテンツを生かし切る戦略を皆様方でお作り願いたいと。いや、それは分かったぞというところであろうかと思います。
 また、大学でも─私もかつて大学におりましたが─盛んに研究成果はあります。それが本当に活用されているのかと。中小企業の皆さんも一生懸命いろんな研究開発をされておられる。それが十分に知財として利用されているのか。それをいかに利用者に結びつけるかとか、産業的な連携をどうするかとか、様々な議論があろうかと思っておりまして、こういったことを結びつけるための戦略性も大変重要ではないかと思っております。
 そういった方向性を皆様方がお認めをいただいたということでございまして、ぜひ「知を使う知」のトップリーダーと日本がなって活躍できる環境にまで、皆様方のお力でぜひとも導いていただきたいと、心からそのことを祈念いたしたいと存じます。成長戦略、我々がそれを本当の意味で国民の皆様方の明日のために使い切っていくための、今日は知財戦略の方向性のおまとめの日だったと、そのように思っておりまして、改めて、ご多忙の中でお運びをくださいましたお一人一人の本部員の皆様方、ご参加いただきました閣僚初め、皆さん方にも感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。(拍手)

○古川内閣府副大臣
 ありがとうございました。
 では、ここでプレスの方は退室してください。

(プレス退室)

○古川内閣府副大臣
 それでは、時間となりましたので、本日の本部会合を終了いたします。今後は、企画委員会及び専門調査会でさらに検討を深めた上で、5月に再度本部会合を開催し、知的財産推進計画2010を決定したいと思います。
 なお、本日の会合の内容につきましては、この後で私の方から記者会見を行わせていただきます。
 本日はどうもありがとうございました。