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地球温暖化対策推進大綱

−2010年に向けた地球温暖化対策について−

平成10年6月19日
地球温暖化対策推進本部決定



第1.基本的な考え方

  1. 地球温暖化は現在の人類の生活と将来の人類の生存に関わる深刻な問題である。我々は、本問題の究極的な解決に向け、叡智を結集しなければならない。
    1992年のリオ・デ・ジャネイロにおける地球サミットにおいて、地球温暖化対策に最大限努力すべく気候変動に関する国際連合枠組条約への署名が開始され、1994年に発効した。この条約の実効性を担保し、世界各国が協調して地球温暖化防止への取組を加速的に進めるため、1997年12月、京都において気候変動に関する国際連合枠組条約第3回締約国会議が開催され、京都議定書が採択された。
    京都議定書においては、先進国全体の温室効果ガスの排出量を、
    2008年から12年までの期間中に、1990年の水準より少なくとも5%削減することを目的として、先進各国の削減目標を設定し、我が国は6%削減を世界に約束した。

  2. エネルギー効率が既に世界最高水準に達している我が国にとって、この目標を達成することは容易ではない。しかし、地球温暖化問題の解決に向けた取組は、環境と調和した循環型の経済社会を構築し、持続可能な経済社会の発展が可能となるために必要不可欠である。国民の理解と協力を得て、官民を挙げて地球温暖化対策を強力に推進していかなければならない。
    このため、政府においては、国民各界各層の参加や協力が得られるような取組の強化を図るとともに、あらゆる政策手段を動員して、着実に削減が達成されるよう総合的な施策を計画的に推進する。

  3. このような認識の下、2010年に向けて緊急に推進すべき地球温暖化対策として本大綱を策定した。政府は、本大綱に従って、地方公共団体、事業者及び国民と連携しつつ、以下の対策を推進する。

    (1)省エネルギーや新エネルギー導入及び安全に万全を期した原子力立地の推進を中心とした二酸化炭素の排出量の削減その他の温室効果ガスの排出削減対策を、世界初の試みであるトップランナー方式の導入を始めとし、2010年までに想定されるあらゆる革新的技術をも駆使して強力に進める。

    (2)地球温暖化対策を実効あるものとするため、国民の生活様式(ライフスタイル)の見直し及びその支援、政府による率先実行などにより、地球温暖化対策を強力に推進する。特に、国民の理解を得て、ライフスタイルを見直すには、軸となる契機が必要であり、夏時間(サマータイム)の導入と地球環境にやさしい生活のあり方について、国民的議論を提起する。

    (3)地球温暖化問題は我が国一国のみの取組で解決できる問題ではなく、すべての国が国際協調の下取り組んでいくべき問題である。我が国としては、京都議定書で導入された排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズムなどの国際的な枠組みの構築や途上国の取組強化を始めとする国際的課題の解決に向けた役割を積極的に果たしていく。

  4. 本部は、本大綱の着実な実施を図るため、毎年、地球温暖化対策の具体的措置の推進状況を点検し、必要に応じその内容の見直しを行う。その際、地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議において、地球温暖化対策として講じる個別の措置の進捗状況について、委員の意見を聴取する。

第2.講ずべき地球温暖化対策

  1. 6%削減目標の達成に向けた方針
    京都議定書における我が国の6%の削減目標については、当面、次の対策により達成していくこととする。

    (1)二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素の排出量については、1997年11月の地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議報告書に従い、省エネルギーや新エネルギーの導入及び安全に万全を期した原子力立地の推進を中心としたエネルギー需給両面の対策や革新的技術開発、国民各界各層の更なる努力などを着実に推進することにより、2.5%の削減を達成する。

    (2)代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)の排出量については、プラス2%程度の影響に止める。

    (3)目標期間の排出量から植林、再植林等による純吸収分を差し引くことにより、議定書上約0.3%の削減が見込まれる。
    また、2010年頃における我が国全体の森林等による純吸収量が3.7%程度と推計されるところ、今後の国際交渉において必要な追加的吸収分が確保されるよう努める。このため、二酸化炭素の吸収量に関する調査研究の推進等を踏まえつつ、締約国会議の合意を得て適切な方法論等を確保するよう努める。

    (4)京都議定書で導入された排出量取引、先進国間での共同実施、先進国と途上国で共同して排出削減を行うクリーン開発メカニズムなどの国際的な枠組みの活用を図る。

  2. 地球温暖化対策の総合的推進
    国、地方公共団体、事業者及び国民それぞれの責務と取組を定めた「地球温暖化対策の推進に関する法律案(地球温暖化対策推進法案)」(1998年4月28日閣議決定)に基づく対策を円滑に推進するための基礎を直ちに整え、その成立後速やかに以下の取組を進める。

    (1)地球温暖化対策に関する基本方針の策定
    地球温暖化対策推進法に基づき、6つの温室効果ガスの排出及び二酸化炭素の吸収すべてを対象とした地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、対策の基本的方向や各主体が講ずべき措置に関する基本的事項等を内容とする基本方針を策定する。

    (2)地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進
    地球温暖化対策推進法に基づき、温室効果ガスの濃度変化の状況等の観測及び監視を行うとともに、総合的な地球温暖化対策を策定し、実施する。また、国の自らの事務・事業に関し、温室効果ガスの排出抑制等のための措置に関する計画を策定、公表するとともに、その実施状況を公表する。さらに、温室効果ガスの排出抑制等のための地方公共団体の施策を支援するとともに、事業者、国民や民間団体等の温室効果ガス排出抑制関連の活動を促進するため、技術的な助言等の措置を講ずる。

  3. エネルギー需給両面の対策を中心とした二酸化炭素排出削減対策の推進
    二酸化炭素の排出削減を図るため、その排出抑制に向けての長期的なエネルギー需給の見通しに配慮しつつ、産業、民生、運輸の各部門における抜本的な省エネルギーを図るとともに、新エネルギーや安全に万全を期した原子力の導入を促進するなど、エネルギー需給両面にわたる対策を強力に推進する。

    <エネルギー需要面の二酸化炭素排出削減対策の推進>

    (1)改正省エネルギー法によるエネルギー消費効率の大幅改善
    改正「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネルギー法)」(1998年6月5日公布)に基づき、自動車の燃費基準や家電・OA機器等の省エネルギー基準について、商品化されている製品のうち、最高の省エネルギー性能以上の水準を目指すトップランナー方式の考え方を導入し、機器のエネルギー消費効率の改善を図るとともに、工場・事業場におけるエネルギー使用合理化の徹底を図る。

    (2)省エネルギー基準等の強化

    1. 自動車の燃費基準の強化
      改正省エネルギー法に基づき、1999年4月に予定されている改正省エネルギー法の施行に併せて、自動車の燃費基準をトップランナー方式の考え方に基づき強化し、燃費について2010年度までに1995年度比15%乃至20%超の向上を目指す。

    2. 家電・OA機器等の省エネルギー基準の強化
      改正省エネルギー法の施行に併せて、家電・OA機器等の省エネルギー基準をトップランナー方式の考え方に基づき強化し、エネルギー効率について8%乃至30%程度の向上を目指す。その際、機器が作動していない待機時のエネルギー消費量が大きい機器の省エネルギー基準は、待機時の省エネルギーを組み入れたものとする。
    3. 住宅・建築物の省エネルギー基準の強化
      1998年度中に、住宅・建築物の断熱化等に係る省エネルギー基準の強化を行い、現行基準と比して、住宅の冷暖房用エネルギー消費量の約20%削減、建築物のエネルギー消費量の約10%削減を目指すとともに、省エネルギー型住宅、建築物に対する融資制度等による誘導を推進する。また、建築材料の断熱性能の改善を図るよう、建築材料の断熱性に係る標準的な性能値を見直す。

    4. 工場、事業場におけるエネルギー使用合理化の徹底
      2000年度までに、省エネルギー法に基づくエネルギー消費量の大きな工場約3500か所の省エネルギー基準の順守状況を総点検する。また、工場・事業場に対し、必要に応じ、エネルギー使用合理化に必要な指導・助言を行うとともに、エネルギー使用合理化が著しく不十分な工場・事業場に対しては、合理化計画の作成指示、指示に従わなかった場合の公表等の省エネルギー法に基づく措置の発動を行う。

    5. 鉄道、船舶、航空機のエネルギー消費効率の向上
      鉄道、船舶、航空機について、エネルギー消費原単位を、2010年までに、1995年度比、鉄道約7%、船舶約3%、航空機約7%の改善を図り、これら部門のエネルギー消費効率の向上を図る。

    (3)インフラ整備等による二酸化炭素排出抑制型社会の形成

    1. 二酸化炭素排出の少ない都市・地域構造の形成
      環境負荷軽減のための施策を総合的かつ計画的に実施し、二酸化炭素排出の抑制に資する環境と共生する都市・地域構造を形成する。
      そのため、都市交通の改善を図るとともに、緑地の保全及び緑化の推進、都市内の水面の確保、雨水の地下浸透の推進により、都市の高温化(ヒートアイランド)現象の緩和に積極的に取り組む。
      また、熱電併給システム(コージェネレーション)、地域冷暖房導入の推進、下水処理水や河川水の熱利用等による未利用エネルギーの活用等の推進に加え、自然エネルギー、未利用エネルギーのネットワーク化による有効利用を図ることにより、都市レベルでのエネルギー利用の効率化を促進する。
      さらに、クリーンエネルギー自動車・低公害車の普及のため、充電設備、ガス充填設備、メタノール充填設備等の燃料供給施設(エコステーション等)の設置を促進する。
      加えて、情報通信を活用した遠隔勤務や光害対策ガイドラインに基づく屋外照明の適正化等を推進する。

    2. 物流の効率化
      鉄道・内航貨物輸送の推進、国際コンテナ貨物等の国内陸上輸送距離の削減のための港湾整備、トラックの積載効率の向上、トレーラー化及び車両の大型化の促進、物流の情報化、商慣行の改善等を推進し、物流の効率化を図り、二酸化炭素の排出を抑制する。
      具体的には、鉄道貨物のインフラ整備の促進、効率的な鉄道貨物集配システムの構築、船腹調整事業の解消等による内航海運の活性化、内貿ターミナルへの陸上輸送半日往復圏の人口カバー率を21世紀初頭に約9割を目指した複合一貫輸送対応ターミナルの整備、中枢・中核国際港湾における国際海上コンテナターミナルの整備及びこれらに関連する道路整備、車両の大型化に対応した橋梁の補強、ISOコンテナフル積載対応トレーラーの導入促進を図る。
      また、トラック全体の積載効率を早期に50%に引き上げるため、自営転換、共同配送等の諸施策を積極的に推進する。
      さらに、地域における物流効率化を推進するために、ソフト・ハード両面にわたる物流に関する総合的かつ計画的な取組を促進する。

    3. 公共交通機関の利用促進
      二酸化炭素排出の少ない交通体系の形成を図るため、公共交通機関の利用促進を図る。
      具体的には、バス交通等との有機的連携を図りつつ、新線の建設、高速化、輸送力増強等の鉄道の整備、路面電車、新交通システム等の整備を推進する。
      また、バス停留所の改善、超低床式ノンステップバス導入等バス利用促進に資する施策の計画的な実施を推進する。
      さらに、運賃・料金の多様化等によるサービスの改善の促進、乗り継ぎの円滑化を図るための交通結節点の整備を推進する。

    4. 交通渋滞の緩和
      沿道環境保全に配慮した円滑な自動車走行確保のためのバイパス・環状道路の整備、連続立体交差事業・交差点立体化の推進、交通安全施設の整備、交通需要マネジメント(TDM)施策や高度道路交通システム(ITS)等を推進し、交通渋滞の緩和を図り、走行中の二酸化炭素の排出量を低減する。
      特に、ITSについては、ナビゲーションシステムの高度化に関し、既に全国の高速道路、三大都市圏等の9都府県の一般道路にて運用中である道路交通情報通信システム(VICS)について、情報提供サービスエリアの全都道府県の一般道路への拡大を推進するとともに、ノンストップ自動料金収受システム(ETC)に関し、整備効果の高い路線の料金所から逐次導入を図る。
      また、リアルタイムの交通情報の収集・提供を行い、より高度な信号制御を行う新交通管理システム(UTMS)については、その基盤となる光ビーコン等の整備を全国に広げるとともに、公共車両優先システム、交通公害低減システムの整備を推進する。
      さらに、ITSの更なる推進を図るため、先進安全自動車(ASV)、自動運転道路システム(AHS)、超知能化自動車システム(SSVS)等の研究開発を推進する。
      また、総合的な渋滞対策のため、都市圏交通円滑化総合計画の策定を推進する。

    (4)産業界等の行動計画の事後点検
    経済団体連合会環境自主行動計画を始め産業界等において策定された2010年を目標とした省エネルギー・二酸化炭素排出削減のための、製造工程の改善、運転管理の高度化、生産設備の効率化や排熱回収、新たな技術の導入といった省エネルギー努力のほか、燃料転換、廃棄物利用等の二酸化炭素排出削減対策等を含む行動計画について、関係審議会等により、その進捗状況の点検を行い、その実効性を確保する。
    また、このような行動計画を策定していない業種に対し、
    1998年度中に数値目標などの具体的な行動計画の早期の策定とその公表を促す。

    (5)新たな省エネルギー型技術等の開発・普及

    1. 新たな省エネルギー型技術の開発・普及の推進
      高性能工業炉(エネルギー効率を約10%乃至30%向上)や次世代高性能ボイラー(ボイラー効率を17%程度向上)等の省エネルギー設備等の開発・普及により、産業部門の省エネルギー対策を推進する。また、発光ダイオードを用いた高効率照明(蛍光燈に比べエネルギー効率を50%程度向上)の開発・普及、省エネルギー性能の高い住宅・建築物の普及等により、民生部門の省エネルギー対策を推進する。

    2. クリーンエネルギー自動車・低公害車、低燃費車の普及促進
      クリーンエネルギー自動車・低公害車の導入・普及を推進するとともに、新たなクリーンエネルギー自動車・低公害車の開発を推進する。また、次世代低公害車に対応した検査基準の整備を行う。
      さらに、地球温暖化防止に資するため、低燃費自動車の一層の普及促進を図る。そのため、自動車関係税制を含めあらゆる政策手段について検討する。

    <エネルギー供給面の二酸化炭素排出削減対策の推進>

    (1)原子力立地の推進
    我が国の削減目標を達成するためには、2010年度において
    1997年度の5割以上の発電電力量の増加を目指した原子力発電所の増設が必要である。このためには、高速増殖炉等をめぐる一連の事故及び不祥事により損なわれた原子力に対する国民の信頼の回復に努めるとともに、安全性の確保に徹底して努めることを大前提として、原子力立地に対する住民の理解と協力を求めていくこととする。また、原子力立地地域の振興について、引き続き、当該地域の産業振興を図り、雇用創出につなげるなどの観点を中心として、一層の推進を図るほか、道路、鉄道、港湾等の基盤インフラの整備が円滑に実施されるよう、関係省庁が十分連携をとり、政府一体となった最大限の取組を行う。

    (2)新エネルギーの加速的導入
    住宅はもとより、工場・事業場、公共施設等への太陽光発電の導入を強力に推進し、設備容量の拡大を目指す。また、風力発電、廃棄物発電についても、事業者、地方公共団体による導入を推進するとともに、太陽熱や未利用熱エネルギーの積極的活用を図る。また、パルプ黒液、木質廃材等を活用したバイオマス(生物体)エネルギーの導入を推進する。これにより、官民一体となって、2010年度において、現行の約3倍の新エネルギー導入が図られるよう最大限の取組を行う。

    (3)電力負荷平準化対策の推進
    二酸化炭素排出原単位の低い夜間電力を用いて昼間の空調を行う蓄熱式空調システムの普及促進に向けた保安規制の合理化、公共建築物への率先導入等を図るとともに、電力の代わりにガスを用いて空調を行うガス冷暖房の普及促進に向け、公共建築物への率先導入等を行い、省エネルギー及び二酸化炭素排出抑制につながる電力負荷平準化対策を推進する。

    <その他の二酸化炭素排出抑制対策の推進>

    (1)工業過程からの二酸化炭素排出抑制対策の推進
    生産工程で二酸化炭素排出のより少ない混合セメントの利用拡大を図ることなどにより、工業過程からの二酸化炭素の排出抑制を図る。

    (2)廃棄物からの二酸化炭素排出抑制対策の推進
    廃棄物の減量化、リサイクルにより(一般廃棄物のリサイクル率を1996年度の10%から2002年度までに15%に引き上げる)、廃棄物の焼却量を抑制し、廃棄物からの二酸化炭素の排出抑制を図る。

    (3)木材資源の有効利用の推進
    化石燃料の使用量を抑制するため、再生産可能な資源である木材の有効利用を推進する。このため、木材・木質材料の利用・加工技術等の向上、木材の需要拡大を図るとともに、長期利用に関する普及啓発等を行う。

  4. その他の温室効果ガスの排出抑制対策の推進

    (1)代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)の排出抑制対策 の推進

    1. 産業界の計画的な取組の促進
      関係事業者団体において策定された代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)の排出抑制対策、数値目標等を盛り込んだ、
      HFC等の製造工程や出荷時の充填工程等における漏洩防止対策や廃エアコン等の廃棄機器からの冷媒の回収・再利用・破壊、半導体製造工程におけるガス使用効率化や排ガスの回収・再利用・破壊等を含む行動計画について、関係審議会等においてその実施状況の定期的な点検を行い、行動計画の実効性を確保する。
      また、このような行動計画を策定していない業種に対しても、
      1998年度中に産業の実態に応じた行動計画の早期の策定とその公表を促す。

    2. 代替物質の開発等
      多種多様な分野で様々に利用される代替フロン等3ガスの新規代替物質等の開発を図る。
      具体的には、冷媒用、洗浄用、発泡用の新規代替物質の開発、半導体製造用のPFC等の代替ガス・システムの研究、電子デバイス製造洗浄システムにおけるSF6等の代替ガス・システムの開発、工業過程において副生されるHFC23の回収・破壊装置の開発等を行う。
      また、CFCの回収・破壊に関するシステムの整備の経験を踏まえ、HFCについても回収・再利用・破壊のためのシステムの整備に着手する。

    (2)メタンの排出削減対策の推進
    ごみの直接埋め立ての縮減(ごみの直接埋め立て率を1996年度の13%から2002年度までに9%に引き下げる)等の廃棄物処理における排出削減対策や、ほ場の管理の改善、メタンの排出削減のための家畜の飼養管理技術の確立等の農業、畜産業における排出削減対策等を推進することにより、メタンの排出削減を図る。

    (3)亜酸化窒素の排出削減対策の推進
    アジピン酸製造過程に亜酸化窒素排出抑制装置を設置することにより工業過程での亜酸化窒素の排出量を2010年において
    1990年度比約9割削減するなど、亜酸化窒素の排出削減を図る。
    また、廃棄物、下水汚泥等の焼却施設において燃焼温度の高度化を図ることにより、亜酸化窒素の発生を抑制する。

  5. 植林等の二酸化炭素吸収源対策の推進

    (1)森林整備の推進
    森林整備に資する国産材の安定供給と利用の促進及び森林資源情報の整備を図りつつ、耕作放棄地、荒廃地、原野等における植林を推進するとともに、必要な保育・間伐の的確な実施、病害虫等各種被害を最小限に留める適切な防除等の実施により、健全で活力ある森林の整備を進める。
    また、身近な森林である里山林等の整備を住民参加の下で進めるとともに、森林を持続的に経営することなどにより木材資源を持続的・安定的に利用する新たな循環型の仕組み作りを図るとともに、森林整備に関する協定の締結の促進等を行う。さらに、国民参加による国土緑化運動を推進する。

    (2)都市緑化等の推進
    都市緑化等をより一層推進する観点から、緑の政策大綱や緑の基本計画等、国及び地方公共団体における緑の保全、創出に係る総合的な計画の策定を推進するとともに、都市公園の整備や道路、河川等の緑化、既存の民有緑地の保全、建築物の屋上、壁面等の新たな緑化空間の創出を促進する。また、都市における国民参加による「平成の森」づくりを推進する。

  6. 革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化
    2010年に向け、現在の想定を超えた技術革新を実現するため、超臨界流体利用技術等のエネルギー利用部門における省エネルギー関連技術や超高効率太陽光発電等の現在の技術水準を超えた革新的技術開発を強力に推進する。
    また、地球温暖化問題の究極的な解決に向けた対策を強力に推進するため、地球温暖化防止上の効果を期待した革新的な水素製造技術や二酸化炭素の貯留・固定化技術等の技術開発、エネルギー利用効率を改善する超鉄鋼、超耐熱材料等の研究開発を計画的に実施する。さらに、新たな政策を円滑に実施するための政策提案に向けて地球温暖化対策の戦略作りのための研究を推進するとともに、資源の循環やエネルギーの消費抑制・効率的利用を促進する仕組みの構築を戦略目標とする基礎研究等を推進する。
    加えて、地球科学技術に関する研究開発基本計画の達成状況の点検を行い、更なる強化を図る。

  7. 地球観測体制等の強化
    地球温暖化現象の解明等に関する研究を推進するとともに、地球規模の環境変化を正確に観測・監視するため、総合的な地球観測体制の整備・強化を図る。また、地球環境に関する情報を整備し、その流通を促進する。

  8. 国際協力の推進

    (1)京都議定書において提起された諸課題の解決
    排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズム、吸収源の取扱いなどについては、制度の具体化を今後の国際交渉で行うこととなっており、可能な限り早期に解決を図るよう我が国が率先的に国際貢献に努める。
    具体的には、排出量取引については、公平、透明、検証可能、市場志向、簡明という5つを基本原則とする制度を作るよう働きかけることとする。共同実施については、プロジェクトが効率的な枠組の下で実施されるよう働きかける。また、クリーン開発メカニズムについては、途上国に対し技術移転、資金移転等の利点をもたらすことについて理解を深め、2000年からプロジェクト実施が可能となるよう、早急に規則を設定するよう働きかけることとする。吸収源の取扱いについては、技術的な議論を主導し、今後の国際交渉において必要な追加的吸収分が確保されるよう、適切な方法論等の確立に向けて努力することととする。
    また、途上国に対して様々な機会を捉えて地球温暖化防止への理解を求め、途上国の自発的な取組を推奨し、途上国の将来的参加を促す。

    (2)京都イニシアティブの具体化
    途上国の人材育成への協力(1998年度から5年間で3,000人の温暖化対策関連分野の人材育成)、最優遇条件(金利0.75%、償還期間40年)による円借款及び地球温暖化防止技術の移転を進める。

    (3)気候変動技術イニシアティブの推進
    先進国による気候変動技術イニシアティブ(CTI)の活動を通じ、国際協調の下、地球温暖化防止に向けた技術戦略の策定、途上国等への地球温暖化防止技術の普及、革新的な地球温暖化防止技術の国際共同研究等を推進する。

    (4)関係国との協議による協力案件の発掘
    共同実施、クリーン開発メカニズムを積極的に活用するため、ロシア、中・東欧、アジア諸国等関係国との緊密な協議等を通じ、省エネルギー、新エネルギー、植林等の案件発掘を図るとともに、個別事業計画の事業化に向けた実現可能性調査を強力に推進する。

第3.ライフスタイルの見直し

  1. 夏時間(サマータイム)の導入についての国民的議論の展開
    社会全体が夏季の朝夕の日照などを有効に活用するシステムに切り替え、人々が自ら地球環境にやさしいライフスタイルを工夫し、実現するきっかけとなる「夏時間」の導入についての多面的な議論を行う。具体的には、1998年夏から「地球環境と夏時間を考える国民会議」(仮称)を開催し、国民、事業者、国、地方公共団体など関係者の参加により、「夏時間」の導入と地球環境にやさしい生活のあり方について国民的議論を行い、1998年度中を目途に結論を得る。

  2. 自転車の安全かつ適正な利用の促進に向けた環境整備
    交通渋滞等の緩和につながり、化石エネルギーを消費しない自転車利用の促進のため、自転車利用に配慮した道路、自転車駐車場等の社会インフラの整備を図るとともに、特定線区において車両空間の余裕を活用した鉄道車両への自転車持ち込みを容易にするなど、自転車利用の拡大につながる社会環境の整備を行う。また、市町村における自転車の駐車対策に関する総合計画の策定を促進する。

  3. 教育・啓発及び情報提供体制の整備

    (1)環境やエネルギーに関する教育・学習の充実
    将来を担う子供たちや若い世代を始め、あらゆる世代の国民の取組を促すため、学校、地域社会や家庭など多様な場において、森林の役割をも視野に入れた地球温暖化問題を始めとする環境教育・環境学習や省エネルギー、原子力等のエネルギーに関する教育・学習の充実を図る。

    1. 学校教育における環境教育・エネルギー教育の充実
      学校教育において、環境の保全やよりよい環境の創造のために主体的に行動する実践的な態度等を育成することとする。このため、担当教員講習会等を開催し、教員の指導力の向上を図るほか、環境やエネルギーに関する教材の充実を図るなど、環境教育・エネルギー教育の充実を図る。また、教科書への再生紙の全面使用に向けた取組を促進する。

    2. 多様な場における環境やエネルギーに関する教育・学習の充実
      子供から大人までの幅広い世代が地球温暖化問題を始めとする環境問題を身近なものとして体験できるような環境教育の拠点を整備するとともに、各地の環境教育・環境学習拠点間の連携体制を整備する。また、国立青年の家、国立少年自然の家等の場における教育活動の積極的な推進や、ビジターセンター、森林総合利用施設の整備など、自然の中での体験活動を通じた学習を推進する。併せて、身近な都市公園等における環境体験学習の充実を図る。
      さらに、こどもエコクラブの充実やエネルギー関連展示館、森林教室の実施、地球環境パートナーシッププラザを拠点とした情報や交流の場の提供の促進を図るとともに、地球環境問題や省エネルギー、新エネルギー、原子力等のエネルギー問題に関する普及啓発を推進するなど、小中学生を始めとするあらゆる年齢層に対する学習機会を提供する。
      また、環境カウンセラー登録制度や森林インストラクター制度等による多様な場における人材の育成を図る。

    (2)広報の強化

    1. 広報体制の整備
      1998年度から、地球温暖化対策に関する広報活動の年次計画を策定し、幅広い媒体を通じた広報活動を展開する。その際、地球温暖化防止に関するシンボルマークを公募し、広報活動に活用するなど、国民参加型の広報活動の実施にも重点を置く。

    2. 「地球温暖化防止月間」の創設
      地球温暖化防止に向けた国民各層の取組を促すため、1998年度から、毎年12月を「地球温暖化防止月間」とし、環境月間(6月)、省エネルギー月間(2月)等と併せて、重点的かつ継続的な広報活動を展開する。

    3. 事業者、地方公共団体等の取組の顕彰
      事業者、地方公共団体等が公表する優れた地球温暖化防止への取組について、顕彰を行い、その普及を図ることにより、地球温暖化防止への取組を支援する。

    (3)情報提供の推進

    1. 住宅・建築物に関する情報提供の推進
      消費者が住宅・建築物の省エネルギー性能に関して的確な判断ができるよう支援するため、住宅の性能表示制度や建築物の省エネルギーマーク制度について早期の導入を図る。

    2. 民生用機器及び自動車に関する情報提供の推進
      エアコン、冷蔵庫等の民生用機器及び自動車の二酸化炭素の排出量、エネルギー消費効率等を一般消費者にわかりやすく示すことにより、国民の低二酸化炭素排出型、省エネルギー型製品への選択や二酸化炭素排出やエネルギー消費の少ない製品の使い方を促進する。

    3. 製品等に関する環境情報提供の推進
      OA機器の待機時消費電力が削減された製品に付される国際エネルギースターマークの普及を図るとともに、製品等に関する環境情報の積極的な提供を図るため、エコマーク制度の改良を促すことなどを通じ、温室効果ガスの排出量等を含む製品等の環境負荷に関する情報を提供する環境ラベルの新たな方式を1998年度中を目途に試行する。

    4. 代替フロン等3ガスに関する情報提供の推進
      HFC等の排出抑制対策の必要性について啓発するとともに、回収ルートの状況、HFC等の使用表示等の実施状況、非フロン系製品に関する情報等を提供し、国民の幅広い理解と協力を得る。

    (4)国民参加型の普及啓発の充実
    環境家計簿、省エネ家計簿、環境にやさしい運転方法(エコドライブ)、国民の省エネルギーアイデアの募集、費用対効果を明示した省資源型ライフスタイルの提言等を通じて二酸化炭素排出やエネルギー消費の少ない環境にやさしい暮らしの実践を進めることにより、国民にわかりやすい国民参加型の普及啓発の充実を図る。
    また、夏は28度以上、冬は20度以下の温度設定を普及するとともに、例えば、新しい衣料の開発・普及や職場における服装について、国民、事業者等から広くアイデアを募集して、新たな流行の様式の定着を目指すなど省エネルギー型の新しいライフスタイル(スマートライフ)の確立を目指す。

  4. 政府の率先実行
    政府は、事業者・消費者として、地球温暖化対策に率先して取り組む。
    具体的には、@公用車について基本的に低燃費・低公害車を購入する、A官庁舎、学校等の公共施設に可能な限り太陽光発電システム等の新エネルギーを導入する、B環境配慮型官庁施設(グリーン庁舎)の整備を推進する、C霞が関において自転車の共同利用を積極的に導入する、D毎月第一月曜日に公用車の使用を原則自粛する(霞が関ノーカーデー)、Eフロン系冷媒の回収を徹底するとともに、エアゾール製品について非フロン系製品の購入・使用を徹底するなどの対策に重点的に取り組む。
    また、これらの取組について、地方公共団体、民間団体等の理解を得ながら、その普及を図る。

  5. 地球温暖化対策を進める緑化運動の展開
    二酸化炭素の吸収源の拡大を図るため、@みどりの週間(4月23日〜29日)、都市緑化月間(10月)等における国民的緑化運動の展開、A緑の募金による森林づくり活動への支援や都市緑化基金の活用等による民間緑化活動への支援、B森林インストラクター、樹木医、緑の少年団を活用した国民参加の森林づくりの推進、学校林の活用、樹木の二酸化炭素吸収量調査を通じ小中学生への啓発を図る「こども葉っぱ判定士」事業の実施、野鳥やトンボなどの生物が生息できる空間(ビオトープ)づくりなどの国民参加型の緑化運動を積極的に展開する。

  6. 社会システム変革に向けたモデル事業の実施
    関係省庁が一体となって、地方公共団体等とも連携し、既存施策を有効に活用して、地域において、@新エネルギー関連施設の整備、A自転車利用促進のための道路環境等の整備、B公共交通機関利用促進のための社会基盤整備、C環境にやさしい交通管理、D情報通信を活用した遠隔勤務、E環境にやさしい生活(エコライフ)や夜間照明の適正化の実践、F地域材の住宅への活用や里山林の整備、G道路交通混雑の緩和のための時差通勤の促進、H夏季等長期の連続休暇の普及・拡大など、国民の参加を得た先駆的な地球温暖化対策モデル事業を集中的に行い、その成果を検証し、地球温暖化対策の効果的な推進を図るための大規模な社会実験を行う。


    地球温暖化対策推進大綱に基づく施策の体系