沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会提言の実施に係る有識者懇談会報告書
2 沖縄懇談会事業の概要
3 事業の評価
5 チーム未来
6 今後の沖縄懇談会事業の運営等に関する提言
有識者懇談会は、
有識者懇談会では、基地所在市町村に対するプロジェクトに関する助言などを効果的に行うため、作業部会を設置し、基地所在市町村振興のための特別プロジェクトの目的である、
有識者懇談会は、平成9年6月17日に第1回を開催して以降、最終回の平成12年5月31日に至るまで、合計8回にわたって、各委員の積極的な参画を得て審議を行ってきた。その間、作業部会においても現地ヒヤリングを含めて11回にわたって精力的な検討が行われた。(資料1参照)
3年間にわたる有識者懇談会の指導的な役割の下で、25の米軍基地所在市町村の全てにおいて、沖縄懇談会事業の方向性が概ね示される状況に至った。
ア 分析結果は、建設経済波及効果に比べて、事業波及効果の方が、より大きく、かつ、永続的な効果を持つことを示している。
イ 県内生産額に関しては、多くの事業関連施設の完成・運用開始を迎える平成13、14両年度には、それぞれ年間765億円、912億円の誘発生産額をもたらすと予測され、その後、ほぼ年間800億円前後の生産額増加を生むと推計される。この様な生産の増加に対応して、付加価値面でも平成13、14年を境に年間500億円台の所得増加を誘発し続ける。
ウ 生産の増加に伴う雇用については、沖縄懇談会事業の建設に関わる雇用とこれらの事業運営活動からの波及効果によって全産業部門に間接的に生じる雇用とを総合すると最終的には年間約9,200人の雇用が県内で誘発される計算となる。沖縄懇談会事業による雇用の対完全失業者比率(失業解消率)は、将来の完全失業率が近年と同水準にあるとすると平成19年度には20.4%に達する。
エ 平成9年度から19年度までの11年間の地元市町村負担分を合わせた総投資額が事業費ベースで974億円であるのに対し、誘発生産額は3,839億円と約4倍の所得増加を生み出す。これは極めて高い政策効果を示しており、海外の途上国における公共事業実施による収益率の例などと比べても、特に高いものである。
その理由としては、まず建設経済波及効果に関して、投資のうち用地費に充当される部分が少ないこと、地元調達率の高いものが多いこと等の背景があり、更に事業経済波及効果が加わることにによるものと考えられる。
ア 人材育成
人材育成に関する事業は、職業訓練の性格に近いものと生涯学習の性格に近いものの二つに分類される。
職業訓練の観点からは、まず、沖縄懇談会事業が県民、地元企業のニーズに合致しているのか評価する必要がある。既に、実施され、利用できる調査結果によれば、県民、地元企業とも情報処理・活用能力、語学力の二つの分野が、自分あるいは従業員に不足しており、社内で育成をするのは不可能であると考えていることが伺われる。次表にあるように沖縄懇談会事業の多くが、情報関連、語学の分野に及んでいることは、この様な実態を踏まえたものとなっていると言える。
ヒアリング等を基に計画段階での事業開始後10年間の職業訓練による人材育成人数は次のとおりとなる。
沖縄における高失業率の背景として、専門人材の需給のミスマッチが指摘されている。効果的な専門人材の育成は、それ自身が雇用促進効果を生むものと推測される。
こうした視点から、人材育成による雇用促進効果を計算することとしたい。
情報関連学科の就職率の状況、琉球大学の工学部の就職率などの統計を基に、控え目の数値を用いることにより、現実的な形で雇用促進効果を試算すると、各事業開始後10年間の雇用量は計6,930名となる。これは、琉球大学全学部の10年間の卒業就職者数に匹敵するものとなっている。
また、育成される人材のかなりの部分が、情報関連であり、過去の調査によれば、このような人材を潜在的に求める企業は県内では、比較的新しい企業であることから、これら新しい企業にも育成された人材が供給されることで、県全体の産業構造変革にも寄与する。
生涯学習については、本件事業の生涯学習、趣味の講座受講者は、10年間で25万人にものぼり、単純に1年間に直すと2.5万人となるが、これは平成11年度の県高校、専修学校、短期大学在学者数67,292人の37%に相当する。
その他、名桜大学関連では、本件事業により、人材育成の観点からも多くの有用な施設が出来、大学の教育・研究活動の一層の充実に直結するものとなっている。これは、大学の評価や就職にも良い影響を与えるものと考えるが、現段階で、定量的な評価は困難であり、控えることとしたい。
イ 人的交流
人的交流の評価には様々な方法があろうが、ここでは、沖縄懇談会事業を、@県内の交流により地域連帯感を向上させるもの、A県外との交流により観光宣伝効果があるもの、B海外との交流により国際化の効果のあるもの、の3つに分けた。
最も事業数として多いのが、県内の交流を主の目的としたものであるが、具体的にはレクリエーション、学習を内容としたものが最も多い。最終年度(平成19年度)における県内の交流数は116万人と推定される。
次に、平成19年度の県外との人的交流数を見ると約83万人と予想される。これは、平成10年度の沖縄全体の観光客総数の約20%に及ぶものであり、観光リゾート分野の発展に与える影響は大きい。
海外との交流事業の比重は大きくないが、沖縄懇談会事業では、「ワールドパートナーシップフォーラム名護」が県内で開催の平成10年度国際会議の海外参加者数第10位に入り、その成功を示した。金武町のハワイ学童との交流、北谷の米軍基地内大学を利用した交流などは、新しい視点からの国際交流として注目される。