スウェーデンの訪問
矢田総理補佐官は、現地時間、令和6年6月10日~14日に、スウェーデンを訪問しました。
1 TRR
労使の労働協約に基づき設置された雇用保障協会を訪問しました。TRRでは、約3万5千社・110万人のホワイトカラーを対象にしており、整理解雇の対象となった在職中の労働者等に対し、職業相談や職業紹介、職業訓練等の支援を行っています。
2022年のデータでは、転職支援を提供した92%が転職を果たし、そのうち44%がTRRの独自のネットワークを活用し就職先をみつけているとともに、38%の方がこれまでより高い収入の仕事についているとのことです。
2 介護事業所の訪問
在宅介護サービスを提供する事業所を訪問しました。スウェーデンにおいて、移民等が増加する中での、介護人材の確保やキャリアアップの仕組みについて、意見交換しました。
また、独居で生活されることが多いこと、家族介護ではなく、基本的に介護サービスを利用していることから、介護離職等はなく、高齢者自身がサービスを利用しながら生活していること等について話を伺いました。
3 保健・社会省
育児と家庭の両立、社会保障制度等について、意見交換を行うため、保健・社会省を訪問しました。60年代は専業主婦家庭が多かったものの、70年代に、世帯課税から個人課税に移行したこと、育児休業中の給付を導入したこと、保育所が増加したこと等により、女性の社会進出が進んだとのことであり、2023年のジェンダーギャップ指数は世界5位となっています。
また、男性の育児休業の取得率は9割を超え、全取得日数に占める男性のシェア割合は約3割となっているとのことです。
年金については、無業であった方や一定収入以下であった方には、税を財源とする保証年金が支給され、所得に基づく年金は、「賦課方式部分」、「積立方式部分」に分かれているとのことです。
4 エリクソン
1876年に設立し、世界180カ国でサービス提供を行い、10万人の労働者を抱えるエリクソンを訪問しました。特にメンタルヘルスケアの対策、働き方改革、女性技術者の確保等について意見交換しました。
・チーム毎に2時間程度かけ、定期的に労働環境のフォローアップを行っていること
・20日間の休暇の取得を求め、上司が労働者と相談し休暇の計画作成を行っていること
・女性管理職割合を4割にすることを目標に、プログラミングに関する講座を学生に対し行っていることや、1年間のリーダーシップ研修を行っていること
等について、話を伺いました。
5 プレスクール
就学前の子どもが通うプレスクールを訪問しました。スウェーデンでは、プレスクールに、1歳から5歳の子どもの85%、4~5歳の子どもの95%が通っています。また、インクルーシブ教育が行われており、障害がある子どもも、ない子どもも、同じプレスクールに通う仕組みとなっています。
保育士の不足は生じていないものの、専門性の高い保育士の確保は課題となっているとのことです。
さらに、一時的に保護された場合の子どもに対応する里親制度が設けられていることなど、虐待を受けた子どもへの対応についても話を伺いました。
6 サムハル
障害のある労働者を雇用する国営企業であるサムハルを訪問しました。約2万5千人の障害者を雇用しており、6,000か所の顧客を抱え、12,700か所の働く場所を確保しています。また、障害のある方もない方も、同一労働同一賃金の原則のもと、同じ賃金体系のもとで働いています。障害の程度については、障害者手帳ではなく、読み書きなど、16の能力に基づき判断され、それに基づき働く場所等が決められます。
政府から数値目標を課されており、利益を5%以上あげることや、他社で働く障害者を一定数以上とすること、毎年一定数以上の障害者を雇うこと等が求められているとのことです。
7 職業訓練校
社会人に対する職業訓練を行う、職業訓練校を訪問しました。スウェーデンでは、産業界、政府が密に連携し、労働市場の分析に基づき、教育訓練の量や内容を決定しており、それを踏まえて、職業訓練が行われています。
職業訓練校においても産業界と連携し、講師の派遣を含めプログラムの決定が行われており、職場実習が必ず組み込まれるなど即戦力となる人材育成が進められています。また、企業からの依頼を受け、在職労働者の職業訓練も行っているとのことです。
8 LO(スウェーデン全国労働組合連盟)
スウェーデン最大の労働組合であり、ブルーカラー労働者を中心とした労働組合を訪問しました。スウェーデンでは、労働組合の組織率が7割程度となっており、非正規雇用労働者でも約4割、労働者が1~5人程度の企業の労働者でも約5割が加入しているとのことです。
スウェーデンでは、労使自治の原則が非常に強く、労働協約のカバー率が9割を超えているほか、最低賃金制度がなく労働協約で決定されており、その決定過程についても、話を伺いました。
9 雇用省、教育研究省
男女間賃金格差を始めとする賃金や、人材育成等に関する取組について話を伺うため、雇用省、教育研究省に伺いました。
男女間賃金格差については、スウェーデンでは、約9割(日本は約75%)となっており、国際的にも小さくなっています。女性の社会進出が非常に進んでいることに加え、法律上も男女間賃金格差の縮小に向けた取組みが規定され、状況の分析・報告が求められているほか、一定規模の企業に対しては、格差是正に向けたアクションプランの策定が求められています。
また、人材育成については、将来推計に基づき、産業構造の変化に対応した取組みが行われており、産業のグリーン化やデジタル化に積極的に取り組むほか、医療・福祉分野の人材確保にも取り組んでいるとのことです。大学教育、社会人向け高等職業教育等、それぞれが無料であり、高等教育卒業後、約8割が大学、約2割が職業教育の過程に進むほか、就職した後も、リスキリングで、職業教育を利用する者が多いとのことです。