令和5年11月2日岸田内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問に対する回答

【京都新聞】

 LGBTなど性的少数者の方々に関する政策(性同一性障害特例法改正、受けたくなかったのに生殖機能をなくす手術を受けた方々の救済)について

(回答)

 御指摘の性同一性障害特例法に関する最高裁判所の違憲決定については、厳粛に受け止める必要があります。
 現段階で、具体的な対応方針について定まったものはありませんが、政府としては、立法府の皆様とも十分に連携して、適切に対応してまいります。
 いずれにせよ、政府としては、多様性が尊重され、性的マイノリティの方もマジョリティの方も含めた全ての人々が、お互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向け、しっかりと取り組んでまいります。

【中国新聞】

 EV(電動車)普及を支援する意義、具体的支援策について

(回答)

 先日、「ジャパン・モビリティショー」に足を運んで、「モビリティ懇談会」を通じて、国際競争が厳しさを増す中での我が国の自動車業界の危機感と本気度を感じたところです。
 EVを含め、あらゆる選択肢を確保し、自動車分野のカーボンニュートラル実現を目指していきます。EVについても、「日本は決して負けない」体制を官民で作っていく必要があります。
 政府としても、今回の経済対策で、EV等のクリーンエネルギー自動車の導入支援や、充電インフラの支援施策を盛り込みました。合わせて、蓄電池、電気自動車、半導体など、戦略分野の国内投資について、予見可能性を高める、過去に例のない減税制度を創設することとしました。
 日本の基幹産業である自動車産業の競争力強化に、全力で取り組んでまいります。

【文化放送】

 総理や大臣の給与引き上げ法案について

(回答)

 特別職給与法について、特別職の国家公務員には、内閣総理大臣や国務大臣の他にも、会計検査院長や人事院総裁、各種委員会の委員長など様々なものがあり、官職の職務と責任に応じて、多様な人材を確保するため、その給与については、従来から、
・一般職の国家公務員の給与との均衡を図るとともに、
・公務員全体の給与の体系を維持する観点から、
一般職の国家公務員の給与改定に準じて改定してきており、賃上げの流れを止めないためにも、民間に準拠した改定を続けていくことが適切と判断し、今回の改正法案を提出したものです。
 しかしながら、総理や閣僚などの給与が上がることについて、国民からのご批判をいただいていることも事実です。
 もとより、自らを利するような考えは全く持ち合わせていませんが、万が一にも国民の皆様の不信を招くことがあってはなりません。
 このため、国会において法案を成立いただいた場合には、政治家である内閣総理大臣、国務大臣、副大臣及び大臣政務官について、今回の給与増額分をすべて、国庫に返納する旨を申し合わせることとします。
 なお、法案修正については、官職の給与は、その職務と責任に応じて定まるものであり、いわゆる政務三役のみ法律上据え置くことは、他の官職とのバランスを欠くこととなり、公務員全体の給与の体系を崩すことにもなりかねないため、実施しない考えです。

【新潟日報社】

 柏崎刈羽原発事故時の冬季を含む避難実効性向上について

(回答)

 柏崎刈羽地域は、冬季に積雪が多い地域であり、豪雪との複合災害時における避難の実効性の向上は重要です。
 豪雪時など、避難行動をとると人命を危険にさらすリスクがある場合には、そのリスクを回避するため屋内退避を優先し、天候回復等により安全に避難できることが確認された後に、原子力災害に対する避難等の対応をとることが基本となりますが、その上で安全・円滑な避難が可能な環境整備に取り組んでいきます。
 また、避難道路の整備を含む原子力防災対策の充実は、地域の安全・安心のため重要です。国としては、エネルギー基本計画やGX(グリーン・トランスフォーメーション)基本方針等を踏まえ、内閣府、国交省(国土交通省)、経産省(経済産業省)など、関係省庁連携の下、避難道路の整備を含む原子力防災対策の充実に向けてしっかり取り組んでいきます。
 原子力防災の備えに終わりや完璧はありません。国としては、自治体や地域住民の意見を踏まえて、原子力防災対策の充実・強化を図り、原子力災害対応の実効性向上にしっかり取り組んでいきます。

【河北新報】

 半導体投資推進対策の狙い、地元からの人手不足、地価、物価高騰等の懸念への対応について

(回答)

 半導体は、デジタル化や脱炭素化に不可欠なキーテクノロジーであり、我が国の今後の経済成長に欠かせない物資であるとともに、経済安全保障の観点からも重要な戦略物資です。
 今回の経済対策では、こうした戦略分野において大胆な投資を進め、供給力の強化を行うことで、我が国が将来に向けてイノベーションで世界をリードしていけるよう取り組みます。
 また、例えば、熊本に誘致したTSMC(台湾積体電路製造)の半導体工場は、地域に十年間で6.9兆円を超える経済効果を生むとの試算もあるなど、今回の対策による投資も、地域経済にも大きく裨益(ひえき)するものと期待しています。
 同時に、半導体工場の進出によって、地元経済に人手不足や物価高騰などの悪影響が起こらないよう、取組を進めることも重要です。
 経済対策の中では、半導体支援とは別に、足下の物価高への対応や、構造的な人手不足に対応するための省力化投資への支援などを盛り込んでいます。
 引き続き、地域で必要となる半導体人材の育成・確保支援を含め、地元産業界や自治体と協力して、半導体政策に取り組んでいきます。

【Radio France】

 再審制度、死刑制度等、司法制度の改革について

(回答)

 再審制度の在り方については、確定判決による法的安定性の要請と個々の事件における是正の必要性との調和点をどこに求めるかに関わるものとして、様々な角度からの検討を要するものであり、法務省において、現在開催中の「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」での議論等も踏まえ、適切に対応するものと考えています。
 また、死刑制度の存廃については、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題であり、国民世論に十分に配慮しつつ、社会における正義の実現等、種々の観点から慎重に検討すべき事柄であると認識しています。
 この点、国民世論の多数が極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等に鑑みると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないというのが、従来からの政府の見解です。

【アドバンスニュース】

 複数の企業で働く場合の労働時間通算の弾力化や解雇紛争の金銭解決など、労働法制の規制改革について

(回答)

【複数企業で働く場合の労働時間の通算について】
 労働時間については、働き方改革関連法によって改正された労働基準法において、長時間労働の是正の観点から、時間外・休日労働の上限が法定されています。そうした中で、副業・兼業の場合における労働時間の管理については、通算して管理することとしています。
 その上で、政府としては、副業・兼業を推進する観点から、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」により、副業・兼業の場合における労働時間管理・健康管理のルール等を周知するとともに、本年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」に基づき、実際の企業等における取組事例を収集・周知するなど、副業・兼業がより行いやすくなるよう環境整備を進めているところです。
 引き続き、労使ともがより安心して副業・兼業を活用することができるよう必要な取組を実施していきます。
【解雇の金銭解決について】
 政府としては、金銭を支払えば自由に解雇できるという制度を導入することは考えていません。
 その上で、解雇無効時の金銭救済制度について、労使の御意見を伺いながら、丁寧に検討を行ってまいります。

【犬飼淳氏(フリーランス)】

 総理がマイナンバーカードを保険証と紐づけた時期について

(回答)

 マイナンバーカードの健康保険証としての利用については、2021年12月時点で利用登録の申込みを済ませ、その後、登録済であることを確認しています。

【江川紹子氏(フリーランス)】

 イスラエル・パレスチナ情勢(現在のイスラエルの対応への認識、日本としての対応方針、国連事務総長との会談・連帯)について

(回答)

 我が国は、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、(1)人質の即時解放・一般市民の安全確保、(2)すべての当事者が国際法に従って行動すること、(3)事態の早期沈静化、を一貫して求めてきています。
 そうした中、一般論として申し上げれば、いかなる場合においても、国際人道法の基本的な規範は守られなければならないと考えます。例えば、無辜(むこ)の民間人を無用に巻き込む攻撃は国際人道法の基本的な原則に反するものであり、正当化できません。
 こうしたことも踏まえ、我が国は、全ての当事者が国際法に従って行動することを一貫して求めてきており、イスラエルに対しても、これまで、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難する旨を伝えた上で、一般市民の保護の重要性、国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請しています。先般の上川外務大臣のイスラエル訪問においても、コーヘン外相に改めて直接申し入れを行ったところです。
 我が国としては、引き続き、様々な機会において一貫して、人質の即時解放や国際人道法を含む国際法遵守を求めていきます。

【大川豊氏(フリーランス)】

 イスラエル、パレスチナの大規模軍事衝突における日本の支援について

(回答)

 パレスチナのガザ地区における人道状況の悪化を踏まえ、ガザ地区の人々一人ひとりに、一日も早く必要な支援を届けることが目下の優先課題です。
 現地の情勢は極めて深刻であり、引き続き人道状況の悪化が懸念されることから、我が国は、既に決定した1,000万ドルの緊急無償資金協力に加え、当面の措置として、パレスチナに対し今後約6,500万ドルの追加的な人道支援及びJICA(国際協力機構)を通じた支援物資の供与を行うべく取り組んでいるところです。
 今後、水、食糧、医療、衛生をはじめとする現地のニーズに沿った支援を、国際機関や日本のNGO(非政府組織)と協力しつつ、スピード感をもって実施していくべく準備しています。

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