令和3年11月10日岸田内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答

(質問)
 総理にお尋ねします。先日出席された英国でのCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)のスピーチで、自動車のカーボンニュートラルの実現を訴え、電気自動車普及の鍵を握る次世代電池やモーターなどの開発を進めると訴えました。地球温暖化対策では重要な取組だと思います。総理の地元は自動車産業の盛んな広島です。自動車の部品メーカーなど関連する雇用の減少も懸念されています。総理は総裁選期間中、自動車整備業の経営者から「ガソリン車が消えたら仕事がなくなる」という声を聞いたとのことです。電気自動車への転換に当たり、ガソリン車に関わってきた企業や従業員の雇用をどう守り、いかなる産業転換策を考えているか、聞かせてください。【中国新聞】

(回答)
 自動車の電動化については、政府として2035年までに新車販売の電動車100パーセントを実現する方針を掲げたところです。
 この目標に向けて、地域の自動車サプライチェーンに携わる方々が前向きに取り組んでいけるよう、例えば、事業再構築補助金などにより、エンジン部品を製造していた企業が、電動車部品の製造に新たに挑戦するといった取組を積極的に支援します。
 また、中長期的な業態転換に向けて、人的投資への支援を行っていきます。
 こうした対策を今般取りまとめる経済対策にもしっかりと盛り込み、自動車産業の競争力強化と事業転換への支援に取り組んでまいります。

(質問)
 先の衆院選は、男女の候補者の数ができる限り均等になることを目指す「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が2018年に施行されて初めて行われましたが、全候補者に占める女性の割合は4年前の前回と同水準の17.7パーセントにとどまり、当選者では全体の9.7パーセントと前回よりも後退しています。政府は2025年までに国政選挙の女性候補者割合を35パーセントとする目標を掲げていますが、このような状況で、総理は達成可能と考えているのでしょうか。海外を見れば、候補者の男女同数を義務付ける「パリテ法」や、一定数を女性に割り当てる「クオータ制」を導入する国があります。総理は会見で「多様性が尊重される社会を目指す」とおっしゃっていますが、女性候補者の比率を引き上げていくため選挙制度自体を抜本的に変えていく必要性はあるとお考えでしょうか。【京都新聞】

(回答)
 政治分野における男女共同参画の推進に関する法律では、政党は、男女の候補者数の目標設定のほか、候補者の選定方法の改善、セクハラ・マタハラ等の防止等に自主的に取り組むよう努めるものとされています。
 候補者における女性の割合を含め、目標を達成できるように、数値目標の設定等の自主的な取組を各党に積極的に働きかけていくとともに、各政党の取組の見える化や、各議会においてハラスメント防止研修に活用できる教材の作成などの環境整備を通じて、取組を後押ししてまいります。
 女性候補者の比率に関し、法律等によって義務付けや制度化を行うことについては、機会均等原則や政治活動の自由など憲法上の基本原則との関係などの課題が指摘されています。いずれにせよ、選挙制度の根幹に関わることであり、各党各会派において御議論いただくべきものと考えています。

(質問)
 本日の会見で、岸田首相は「モリ・カケ・桜の再調査」についての東京新聞からの質問にこう答えました。「従来から申し上げているように、行政や会計検査院、検察、様々な機関で調査が行われ、報告書が出されています。そうしたものをしっかりと見ていただいた上で、なおかつ足りないものがあれば政治として、説明をさせていただくという姿勢をこれからも大事にしていきたい」。岸田首相は「足りないものがあれば説明」と再三繰り返しています。足りないものがあるのかないのか、そもそも御自身はどう受け止めているのか、教えてください。自殺に追い込まれた近畿財務局の元職員赤木俊夫(としお)さんの妻雅子(まさこ)さんは10月11日の衆院本会議を傍聴し、「再調査を期待していたので残念だ」とコメントしています。これは「これまでの調査では足りない」ということです。再調査なくして、足りないものを埋めることはあり得ません。岸田首相がいつも強調する「丁寧な説明」をするには、森友問題の「再調査」が不可欠だと思いますがいかがでしょうか。【日刊現代】

(回答)
 森友学園問題については、財務省において、捜査当局の協力も得て、事実を徹底的に調査し、自らの非を認めた調査報告を取りまとめており、会計検査院も2度にわたる検査報告を国会に提出し、さらに、第三者である検察の捜査も行われ、結論が出ているものと承知しております。
 また、本件は、民事訴訟において、法的プロセスに委ねられています。この裁判の過程において、裁判所の訴訟指揮に従いつつ、丁寧に対応するよう、指示を行ったところであり、財務省において、丁寧に対応しているものと認識しています。
 こうした内容については、これまでも国会などにおいて、様々なお尋ねに対して丁寧に説明を行ってきたところと承知しており、今後も必要に応じてしっかり説明してまいります。
 今後、行政において、こうした国民の疑惑を招くような事態を二度と起こさないことが重要であり、今後も国民の信頼に応えるために、公文書管理法に基づき、文書管理を徹底してまいります。

(質問)
 棚上げとなっている中国の習近平国家主席の国賓来日について、日本政府はこれまで、新型コロナウイルス禍であることを理由に「日程を調整する段階にない」と説明してきました。コロナの感染が日中双方で落ち着いている今、岸田総理としては、国賓来日の調整を進める環境が整いつつあるとお考えでしょうか。【共同通信】

(回答)
 新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は落ち着いてきましたが、冬にかけて、再度感染が拡大することを含め、まだ最悪の事態に備えた万全の体制を採ることが重要と考えています。
 いずれにせよ、中国の習近平国家主席の国賓来日については、引き続き、新型コロナウイルス感染症を含め状況を見極める必要があり、今は、具体的な日程調整をする段階にないと考えています。

(質問)
 総理は会見でロシアに触れましたが、北方領土返還について触れませんでした。総裁選から総理就任、今に至るまで、外交分野で北方領土問題への言及はかなり少ない印象です。難しい問題だと見て優先順位を低く見てはいないでしょうか。また安倍元総理は日ソ共同宣言を交渉の基礎に位置付け、解決を目指したわけですが、首相はどのような方法で解決を目指しますか。元島民の高齢化は著しく進んでいます。自らの任期中に領土問題を解決する決意はあるのでしょうか。首脳会談の予定と併せて伺います。【北海道新聞】

(回答)
 我が国として、日露関係を重視していく姿勢に変わりはありません。平和条約締結問題を含む政治、経済、文化など、幅広い分野で日露関係全体を国益に資するよう発展させていく考えです。
 ロシアとの平和条約については、次の世代に先送りせず、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針です。2018年のシンガポールでの合意を含め、これまでの両国間の諸合意を踏まえてしっかりと取り組んでいきます。
 今後の首脳会談について、現時点で決まっているものはありませんが、先月もプーチン大統領との間で首脳電話会談を行ったところであり、引き続き首脳間の信頼関係を構築しながら、平和条約締結を含む日露関係全体の発展に向けて尽力する考えです。

(質問)
 科学技術立国についてお伺いいたします。国際リニアコライダー(ILC)を誘致し、東日本大震災の復興につなげるお考えはありますでしょうか。日本は加速器大国であり、ノーベル物理学賞を多数輩出しております。自分はJ-PARC(大強度陽子加速器施設)、KEK(高エネルギー加速器研究機構)の現場は勿論(もちろん)、加速器と医療の融合で、がんの治療などの現場も訪れ、多くの素粒子物理学者にも話を聞いております。J-PARCでは、中性子を使いチョコレートの結晶の研究もしており、宇宙の謎を解くイメージが強いですが、加速器は新しい産業も生み出す可能性も高く、理論的には放射能の除去もできると言われております。福島原発事故があり、総理は広島県出身でいらっしゃいます。放射性廃棄物処理などで世界貢献含め、地方から新たな産業を生み出すなど、復興を含めて、幅広く国民と議論をし、誘致などを決めるなどのお考えはありますか。お聞かせください。【大川豊氏】

(回答)
 お尋ねの国際リニアコライダー計画は、国内外の研究者コミュニティが日本に建設することを提案しているほか、岩手県等から誘致の要望があることは承知しています。
 一方、同計画は、巨額の経費を要する国際プロジェクトであり、技術的な成立性や国際的な費用分担などの課題が存在することから、国内外の幅広い協力と理解が得られることが必要であると認識しています。
 このため、現在、文部科学省において、有識者会議を開催するとともに、国際的な意見交換を進めているところであり、その動きを注視してまいりたいと考えております。
 なお、被災地においては、ILCに限らず、福島イノベーションコースト構想を始め、科学技術の振興を通じた復興の取組も進めています。

(質問)
 有権者が候補者を十分に吟味して投票する権利について。第49回衆議院議員総選挙では、残念ながら新型コロナ禍や紛争などの理由で「在外投票」をしたくてもかなわなかった人が出ました。15か所の在外公館で在外投票が実施されず、実施されても平日1日だけという国や地域もありました。今回は衆議院解散から投開票日までが戦後最短の17日間であったことや、もともとの選挙期間の短さ(12日間)が理由で郵便投票が間に合わない人もいました。国内では、投票締切時刻を午後8時以前に繰り上げた投票所が全国で37パーセントに上ったこともあり、投票に間に合わなかった人もいました。その結果、投票率は戦後3番目に低い55.93パーセントにとどまりました。岸田首相は今回の総選挙において、「有権者が十分に吟味して投票する権利は保障されていた」とお考えでしょうか。今後、例えば選挙期間の延長、在外投票におけるインターネット投票の先行導入など、何らかの対応を採るお考えはありますでしょうか。それともネット投票は時期尚早だとお考えでしょうか。【畠山理仁氏】

(回答)
 投票率については、例えば天候であるとか、選挙の争点であるとか、様々な事情が総合的に影響するため、上下する要因を一概に申し上げることは難しいと考えていますが、できるだけ多くの有権者の皆様に投票していただくことが望ましいと考えています。
 こうしたことから、ショッピングセンターや駅構内に期日前投票所を設置するなど有権者の投票しやすい環境を確保しているところです。
 御指摘の郵便による在外投票については、投票用紙の郵送に時間を要する場合があること等から、総務省において、在外選挙人の利便性の観点から在外選挙インターネット投票の導入の検討を進めています。
 他方、在外選挙インターネット投票については、セキュリティー対策のほかに、確実な本人確認や投票の秘密保持など選挙の公平・公正の観点から検討すべき課題があります。
 いずれにせよ、新たな投票方法の導入は、選挙制度の根幹に関わることであり、各党各会派において御議論いただくべきものと考えています。

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