令和3年10月14日岸田内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答
(質問)
総理は所信表明演説でコロナ対応に関して、「これまでの対応を徹底的に分析し、何が危機管理のボトルネックだったのかを検証します」と発言しました。いつ頃までに、どのような方法で、検証を行うのでしょうか。例えば検証委員会を立ち上げるのでしょうか。併せてどのような形で、検証結果を発表するお考えなのでしょうか。報告書取りまとめや記者会見を行うのでしょうか。【ジャパンタイムズ】
(回答)
まず、足元のコロナ対応に万全を期すため、今夏の危機管理と医療体制を検証し、この冬に向けた、安心確保のための医療体制整備に向けた全体像の骨格を先般、お示ししました。
さらに、一昨年以来のコロナ対応を徹底的に分析、何がボトルネックだったのか検証し、国と地方の役割分担を含め、司令塔機能の強化、人流抑制、医療確保のための法改正など、危機管理を抜本的に強化してまいります。
その際は、有識者の意見もしっかり踏まえて、分析、検証しなければならないと思っており、その方法やスケジュールなども含めて、早急に検討してまいります。
(質問)
岸田総理は「核兵器のない世界」を実現するため、核兵器国、とりわけ同盟国である米国との連携を重視する立場を示されています。米国の協力を得るために具体的にどうすることが必要だとお考えでしょうか。【共同通信】
(回答)
被爆地広島出身の総理大臣として、「核兵器のない世界」に向けて、全力を尽くす決意です。
外務大臣としての経験から、「核兵器のない世界」を実現するためには、現に核兵器を保有している国を巻き込んでいくことが不可欠だと考えています。我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力していかなくてはなりません。
先般の日米首脳電話会談で、バイデン大統領と「核兵器のない世界」に向け、共に取り組んでいくことで一致しました。
唯一の同盟国である米国の信頼を得た上で、次回NPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議や私が立ち上げた賢人会議も活用し、「核兵器のない世界」に向け、共に前進していきたいと思います。
(質問)
総理にお尋ねします。衆院選の大きな争点となるであろう「政治とカネ」の問題です。総理の地元広島では2019年参院選で大規模買収事件がありました。自民党本部が事件を起こした河井夫妻に提供した1億5千万円の問題を巡って、総理は党本部の説明を「了」とされましたが、広島の有権者から納得できないとの声が聞かれます。「政治とカネ」問題で疑問がなお残る甘利明氏を自民党幹事長に据えたことへの批判もあります。当選無効となった国会議員に歳費返還を義務付ける歳費法改正もまだ実現していません。いずれも「政治とカネ」問題に絡む1.5億円問題、甘利氏の幹事長起用、歳費法改正についてお聞かせ下さい。【中国新聞】
(回答)
広島の資金については、前執行部において、河井夫妻側が作成した収支報告書について、党の公認会計士・税理士が、党の内規に照らして監査し、領収書等の必要書類を添付の上、法令に基づき広島県選挙管理委員会及び総務省に提出が済んだ旨を説明したと認識しております。
甘利幹事長も、前執行部による説明を了とされ、私も、総裁として、その説明を了としています。
また、甘利幹事長をめぐる問題については、捜査が行われ、御本人も元秘書も不起訴という結論が出ていると承知しています。そうした経緯について、さらに国民の皆さんから疑問があれば、本人がしっかり丁寧に説明をしていくことは重要なことと考えています。
政治に要する費用の問題は、議会政治や議員活動のあり方、すなわち民主主義の根幹に関わる重要な課題ですので、歳費法改正については、国会において、国民の代表たる国会議員が真摯な議論を通じて、合意を得る努力を重ねていくべきものであると考えています。
(質問)
安倍政権、菅政権の「負の遺産」に関して伺います。岸田総理は森友問題や広島の選挙違反事件について、再調査に否定的です。日本学術会議の問題でも任命はしない立場を変えていません。いずれの問題についても、政府の説明や対応に釈然としない思いを抱き、納得していない国民は多いです。今からでも再調査などに踏み切り、安倍・菅政治の「負の遺産」に向き合うべきではないでしょうか。【東京新聞】
(回答)
森友学園問題については、財務省において、捜査当局の協力も得て、事実を徹底的に調査し、自らの非を認めた調査報告を取りまとめており、また、会計検査院も2度にわたる検査報告を国会に提出し、さらに、第三者である検察の捜査も行われ、結論が出ているものと承知しております。
また、広島の資金については、前執行部において、河井夫妻側が作成した収支報告書について、党の公認会計士・税理士が、党の内規に照らして監査し、領収書等の必要書類を添付の上、法令に基づき広島県選挙管理委員会及び総務省に提出が済んだ旨を説明したと認識しております。
さらに、昨年10月の日本学術会議の会員任命については、任命権者である当時の内閣総理大臣が最終判断したものであることから、一連の手続きは終了したものと承知しております。
(質問)
岸田総理は自民党総裁選挙で、「健康危機管理庁」構想を訴えられたが、総理就任後に具体的にどう検討していますか。また、菅前総理は最後の総理会見で「厚労省の分割・見直しは不可避」との認識を示しましたが、岸田総理としては、厚労省の組織の在り方についてどう考えていますか。【テレビ東京】
(回答)
健康危機管理の司令塔機能の強化については、コロナとの戦いの中で、その必要性を申し上げてまいりました。将来の危機管理のためにも、取り組まなければならない課題だと考えています。
足元のコロナ対応に万全を期しつつ、同時に、一昨年以来の、これまでの対応を更に徹底的に分析して、何がボトルネックだったのか検証し、危機管理における行政の在り方を含めて検討して、我が国の危機管理を抜本的に強化してまいります。
厚生労働省については、新型コロナ対応を含め、多岐にわたる行政分野を担当していますが、現役世代の減少という社会構造の変化を踏まえれば、社会保障施策と雇用施策を一体的・横断的に実施できる組織であることが適切と考えています。
同時に、時代に応じ要請される行政課題に合わせ、しっかりと対応する体制を確保することは重要であると認識しており、その観点から不断に必要な見直しを検討してまいります。
(質問)
公明党がマイナンバーカードの普及と消費喚起を目的に、カード所有者に3万円分のポイントを付与する「新たなマイナポイント事業」創設を提案し、岸田総理は先の代表質問で「提案を含め、与党の議論も踏まえながら政府内においても検討を進めていく」と答弁した。新たな経済対策に盛り込む方向で検討するのか。いまだ普及率が低迷するマイナンバーカードについて、2022年度末までにほぼ全ての国民に行き渡らせるとする政府目標は達成可能なのか、目標は維持するのか。【時事通信】
(回答)
御指摘の「新たなマイナポイント事業」については、国会でもお答えさせていただいたとおり、今後、与党における協議を踏まえ、政府内においても検討を進めてまいります。
マイナンバーカードは、今後のデジタル社会形成に向けた基本インフラです。2022年度末までにほぼ全ての国民に行き渡らせることを目指し、今月20日から開始する健康保険証利用の本格運用などカードの利便性の向上策等によりその普及を促進してまいります。
(質問)
岸田総理がめざす「新しい資本主義」の実現するための「新しい資本主義実現会議」の創設によって、現在ある政府諮問会議など廃止を含む改組、改編を進められるのか、お尋ねいたします。【ラジオ日本】
(回答)
先日、「新しい資本主義実現本部」を設置したところであり、まずは第1回「新しい資本主義実現会議」の開催を検討中です。
現在開催している会議について、例えば「成長戦略会議」については、「新しい資本主義実現会議」の下で議論していきたいと考えます。その他、「経済財政諮問会議」や「規制改革推進会議」は、それぞれの役割を果たしてもらうことを考えています。
(質問)
首相は「成長なくして分配なし」としていますが、長く実質賃金の伸び悩みが続いた日本としては、今後も分配の機会が回ってこない可能性が懸念されます。総理が本当に分配ができると考えているのであれば、成長と分配までの工程表をぜひお示し下さい。会見では「軽々しく言うと誤解を招く」とおっしゃっていましたが、総理が抱いている希望的な目標でも構いません。日本はいつごろコロナ禍から脱して経済成長に転じ、国民への分配を始められる、あるいは始めたいとお考えでしょうか。また、首相がおっしゃっていた看護、介護、保育などの現場で働いている方の収入引き上げは恒久的な財源が必要になります。非正規や子育て世帯への支援もまとまった財源が必要になります。国債での対応だけでは限界があると思いますが、国債以外の財源についてはどのようにお考えですか。工程表と財源を一定程度示していただかなければ、「成長も分配も」と言っても国民は期待を持てないと考えますがいかがでしょうか。【朝日新聞】
(回答)
会見で申し上げたとおりですが、今はまだ、コロナとの戦いの中にあり、まずは、1日も早く通常に近い経済・社会を取り戻すために全力を挙げる必要があります。その段階で、何年度に結果を出せるのか、軽々しく申し上げるのは誤解を招いてしまうと思います。
私としては、コロナとの戦いに勝ち抜いた上で、成長と分配の好循環を築き、持続可能な日本経済を作り上げるという思いを皆様と共有する努力をするとともに、お約束した政策を形にし、しっかり前に進めていきたいと思います。
財源については、今は新型コロナという危機のさなかにあり、必要な財政支出は躊躇(ちゅうちょ)なく行ってまいります。新型コロナの影響により非正規や子育て世帯などで経済的にお困りの方々への給付金を含め、その財源については、赤字国債を含め、あらゆる手立てを尽くしていく考えです。
また、看護、介護、保育など新型コロナ、そして、少子高齢化への対応の最前線にいる皆さんの収入を増やしていくための安定財源については、医療や介護など、高齢化等に伴って拡大するそれぞれの市場の中での分配のあり方なども考えながら、その確保を検討してまいります。
(質問)
この4年で政権は安倍政権、菅政権、岸田政権と変わりました。この選挙は長期にわたる自民党政権の是非が問われる選挙だと思います。総理は自民党総裁選の立候補会見で「政治の根幹である国民の信頼が崩れ、民主主義が危機にひんしている」と述べました。ここまでの表現を用いた以上、総理は安倍・菅政権下において、どういった点で国民の信頼が崩れ、民主主義が危機にひんしたと考えているのでしょうか、具体的な事象を伺います。それを踏まえ、両政権の何を反省点として、どう変えますと国民に問うのでしょうか。【北海道新聞】
(回答)
「民主主義の危機」については、国民の声が政治に届かない、政治の説明が国民の心に響かない状況への危機感を表す表現である旨、国会でも説明させていただきました。
こうした危機感を背景に、国民の信頼と共感を最優先する政治姿勢を堅持し、丁寧な対話を積み重ねることで、真に国民が必要とする政策に取り組んでまいります。
(質問)
自分は、毎年ラスベガスで開催されている世界最大の家電見本市・CESの現場で、15年近く国内外のスタートアップを取材し、日本型金融システムが必要であると感じています。バングラデシュでは、グラミン銀行、ブラチ銀行など、欧米型金融でなくマイクロクレジットで多くの貧困層のスタートアップを応援し、世界が変わりました。以前、金融大臣に郵便貯金がグラミン銀行融資し、アジアのスタートアップ応援しながらノウハウを取得し、日本型にアレンジして誰でもスタートアップ金融を生み出す考えはないか聞きました。新しい資本主義には新しい日本型金融システムが必要であると考えます。何か具体的なお考えはありますでしょうか。【大川豊氏】
(回答)
新しい資本主義を実現するための成長戦略の柱の1つとして、科学技術立国の実現を掲げており、その中で、イノベーションの担い手であるスタートアップへの徹底支援を通じて、新たなビジネス、産業の創出を進めてまいります。
スタートアップへの成長資金の供給を含め、市場機能向上のための制度・市場慣行の点検や見直しを行うことで、経済全体のイノベーションや産業構造の変革を後押しするような金融システムを構築してまいります。
(質問)
岸田総理に、総選挙の争点に関する質問をさせていただきます。現役の財務事務次官である矢野康治氏が、月刊「文藝春秋」11月号に、「このままでは国家財政は破綻する」と題した論文を寄稿し、衆議院選挙に向けて、与野党の掲げる大規模財政出動を「バラマキ合戦」と批判しました。高市政調会長の示す財政出動の方向なのか。鈴木財務大臣、矢野財務事務次官、経済同友会の桜田代表幹事らが支持する財政規律を守る方向なのか。財政についてどちらの方向を向いていくべきなのか、岸田総理御自身の御判断による大方針を、明確にお示しください。
また、会見中に産経新聞の記者が改憲について質問されました。岸田総理は、恒久的な内閣独裁を可能にし、国会を空洞化させてしまう現在の自民党改憲案「緊急事態対応」にそのまま賛成なのでしょうか。他方、総理御自身が他日の記者会見でこの問題への質問に答えて、「国会の機能の維持をはかる」と発言されています。つまりこれは、緊急事態宣言の後も「国会の機能の維持」をはかり、緊急事態宣言発出の前に国会で事前同意することや政令発出前に国会での事前の承認を必要とすること、また、緊急事態が一時的な措置で終わるように、解除の手続きと、国会に立法権を速やかに戻すなどの条件を織り込む、徹底した制限を加えた、先進国並みの「国家緊急権」へと手直しをするおつもりなのか。岸田総理の本音はどちらにあるのか、お聞かせ願いたいと思います。【岩上安身氏】
(回答)
財政は国の信頼の礎であり、財政健全化の旗は絶対降ろしてはならないと考えています。
しかしながら、経済あっての財政であり、順番を間違ってはいけません。今は新型コロナという危機のさなかにあり、必要な財政支出は躊躇なく行ってまいります。
経済をしっかり立て直します。そして、財政健全化に向けて取り組んでまいります。
また、憲法改正については、国会が発議し、最終的には、国民投票により、主権者である国民の皆様が決めるものです。
憲法改正の具体的な内容等について、内閣総理大臣としてお答えすることは差し控えたいと思いますが、自民党が提示した改憲項目は、たたき台であると承知しております。
新型コロナへの対応を受けて、緊急事態への備えに対する関心が高まる中、まずは、憲法審査会において、与野党の枠を超えて、様々な論点について建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていただきたいと思います。