令和3年8月25日新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答
(質問)
8月22日に投開票された横浜市長選について伺います。総理のお膝元での横浜市長選は野党系候補が、小此木八郎元国家公安委員長を大差で破りました。総理の選挙区である神奈川2区でも約2万票の差がつきました。政府のコロナ対応への不満や不信から逆風が吹き、総理が全面支援したことが裏目に出たとの指摘もあります。今回の市長選の敗因や責任をどのように受け止めておられますか。また、市民や国民の信頼を取り戻すために、今後何が必要と考えますか。選挙後、小此木さんとはどのようなやりとりをされたのかも伺います。【神奈川新聞】
(回答)
横浜市長選については、新型コロナを含め、横浜市が抱える様々な課題への、市民の皆さんの御判断であり、謙虚に受け止めたいと思います。
まずは新型コロナ対策が最優先です。全ての患者の方々が、必要な医療を受けられる体制を作り、治療薬により重症化を防ぎ、ワクチン接種を進めて、安心できる日常を1日も早く取り戻すため、全力で取り組んでまいります。
小此木さんには、まずは、御苦労様と申し上げました。
(質問)
総理は会見で「解散の選択肢は非常に少なくなっている」とおっしゃいました。本来、衆院議員の任期満了(10月21日)までに解散・総選挙をするのが望ましい形と思いますが、日程が窮屈になる中で、任期満了までに、投開票まで収めることは可能でしょうか。また、解散ではなく、任期満了選挙の閣議決定は選択肢にはないのでしょうか。【毎日新聞】
(回答)
衆議院選挙については、選択肢も少なくなってきていますが、あくまで新型コロナ対策が最優先であり、そうした中でよく考えていきたいと思います。
(質問)
政治の信頼回復についてお尋ねします。国会議員の不祥事や、「政治とカネ」問題の事件が後を絶ちません。そこで、歳費の返還を義務付ける歳費法改正に向けた最終調整を自民、公明両党が進めています。首相としては次期衆院選までに法改正を実現させる考えはありますか。改正論議は、2019年参院選広島選挙区の大規模買収事件が発端でした。公選法違反罪に問われた元衆院議員の河井克行被告(一審有罪、控訴)と妻の案里元参院議員(有罪確定で当選無効)には、自民党本部が破格の1億5千万円を提供していました。首相は昨年9月の総裁選で実態解明について「責任を持って対応する」と訴えましたが、どうなったのですか。検察当局が押収していた夫妻の関係資料は既に返還されました。国民に早急に説明すべきではないですか。【中国新聞】
(回答)
歳費法の改正については、国会がお決めになることであり、行政府の長として、発言することは控えるべきだと思います。
また、御指摘の資金については、党に資料が届き次第、党の公認会計士が内規に照らして監査を行い、しっかりとチェックすることとなっています。
その上で、監査の結果を踏まえ、法令にのっとって適切に対応してまいります。
(質問)
医療崩壊を招いた反省、責任について伺います。先ほどの記者会見で「菅政権のコロナ対策がきちんと機能していると考えるか。もし問題があるとすればどこを改めるか」との質問に対し、総理はワクチン接種に全力で取り組んでいることや、他国に比べて死者数が少ないことなどを挙げましたが、問題点への言及はありませんでした。総理は「国民の命と健康を守る」と約束して1年間、コロナ対策に当たってきましたが、第5波の感染拡大では都市部で医療崩壊が現実に起き、自宅療養者が亡くなるケースが相次いでいます。自宅療養の妊婦が医療機関にかかれず、赤ちゃんが亡くなる痛ましい出来事もありました。こうしたことが起こらないよう、様々な事態を想定して医療機関や自治体と連携し、全体的な戦略を立てて備えるべきだったのに、ほぼ無策で、ワクチン接種だけ力を入れてきたように見えます。本日改定の基本的対処方針には、医療体制の強化や感染した妊婦への対応が盛り込まれましたが、ここまでの無策によって医療崩壊を招き、国民の信頼を失ったことへの反省をお聞かせください。また、国民の命を守れなかった責任を取るつもりはあるのかについてもお聞かせください。【東京新聞】
(回答)
まず、今般の新型コロナ感染症により、お亡くなりになられた方に、心から御冥福をお祈り申し上げるとともに、ご家族に対し、心よりお見舞いを申し上げます。
新型コロナは未知のウイルスであり、模範解答もない中で、この1年8か月余り、日夜、全国の状況の報告を受け、専門家の分析や意見も聴きながら、「国民の命と健康を守る」ということを胸に、コロナ対策に全力を傾けてまいりました。
ワクチン接種については、最新のデータを見ても、2回接種された65歳以上の方は、未接種者と比べて、新規感染者が10分の1以下に抑えられるなど、高い効果が明らかとなっており、引き続き感染対策の決め手と考えています。10月上旬には、全ての国民の対象者に2回接種できるワクチンを配分することとしており、10月から11月のできるだけ早い時期に、希望する全ての方々への2回のワクチン接種の完了を目指し、ワクチン接種を進めてまいります。
その上で、当然ながら、新型コロナ対策はワクチン接種だけではありません。医療体制についても、これまでの感染拡大での反省も踏まえながら、昨年来、国と自治体が連携して体制の確保を進めてきており、昨年末と比べれば、全国で1万床の病床、1万5千室のホテル療養施設も確保してまいりました。
さらに、現在、首都圏を中心に医療体制が大変厳しい状況にある中で、更なる病床やホテル療養施設の確保に加え、自宅療養されている方の気持ちに寄り添いつつ、地域の診療所の御協力も頂きながら、健康観察や相談、電話診療などを行う体制を速やかに構築していくこととしております。また、今般の千葉県での痛ましい事案も踏まえ、新型コロナに感染した妊婦さんに対応できる高度な医療体制について、地域で確保を進めることに加え、酸素が必要となった患者のための酸素ステーションなどの整備も進めております。
併せて、感染対策についても、専門家から感染拡大の原因と指摘されている飲食を中心とする対策をこれまでも行ってきましたが、さらに、大規模商業施設の入場整理、業種別ガイドラインの見直しといった対策を進めるとともに、人流抑制に効果的なテレワークなどを強力に推進しています。
今後とも、国民の皆様からの御指摘は謙虚に受け止めながら、医療体制の構築を行うことを最優先に、感染防止対策、ワクチン接種といった柱から成る対策を徹底し、この危機を何としても乗り越えてまいりたいと考えており、正に、そのことこそが、総理大臣としての私の果たすべき責任と考えております。
(質問)
菅総理は25日の記者会見で、TBSの後藤記者の質問に「テレワークとオンライン会議を混同してお答えしてしまった。お詫(わ)び申し上げたい」と述べた。なぜ混同したのか、総理はテレワークを理解していなかったのか。総理は17日の前回の会見では「感染拡大を最優先に」と発言した。この際は総理御自身も総理秘書官も訂正せず、翌日、首相官邸ホームページに発言がそのまま掲載された。なぜこのようなことが起きたのか。総理秘書官はこの発言に気付かなかったのか。【時事通信】
(回答)
今回の記者会見における御指摘の発言については、通信ネットワークを活用した職場における感染対策として、官邸での会議の例を紹介する中で、テレワークとオンライン会議を混同してお答えしてしまったが、記者の方からの御質問の趣旨に沿った答えになっていなかったことから、その場でお詫びしたものです。テレワークが何を指すかは、当然理解しています。
また、17日の会見における御指摘の発言については、記者の方からのご質問に対して、「感染拡大への対応を最優先に」という意味で申し上げたものです。その上で、官邸のホームページについては、いくつかの御指摘を受け、誤解を招く言葉遣いであると判断し、事後的に訂正を行ったとの報告を受けています。前回の記者会見における総理秘書官の対応についてお答えする立場にありませんが、いずれにしても、本件についての答えは以上に尽きます。
(質問)
首相は会見でも触れられていた予備費についてお伺いします。政府は27日に1・4兆円規模のコロナ予備費の支出を閣議決定する方針ということですが、予備費の残りも少なくなる中、総理は衆院選前に臨時国会を召集し、補正予算編成などの対応に当たる必要性はあると思いますか。また、野党は既に7月、憲法53条に基づく臨時国会の召集を求めていますが、いまだに召集されないことに、専門家などから憲法違反との指摘があります。これまで臨時国会を開いてこなかったこと、あるいは召集後、補正などコロナ対応の議論をせずに解散することは妥当だと思いますか。【朝日新聞】
(回答)
新型コロナ対策の実行に万全を期すため、今般、1.4兆円の予備費の使用を決定しました。これにより、ワクチン接種の体制や、中和抗体薬の確保といった緊急の課題に対応するとともに、雇用調整助成金や緊急小口資金などの支援を続けてまいります。このほか、資金繰り支援や飲食店への協力金、医療機関への支援などについては、昨年末に決定した補正予算やこれまでに決定した予備費を活用しているところです。さらに、今年度の予備費も、2.6兆円残っています。
こうしたことを踏まえれば、今すぐに補正予算の編成が必要とは考えておらず、引き続き、新型コロナが企業や暮らしに与える影響に十分に目配りを行い、必要な対策をしっかり行ってまいります。
臨時会の召集については、国会のことでもあるので、与党とも相談しながら考えてまいります。衆議院の解散については、選択肢も少なくなってきていますが、あくまで、新型コロナ対策が最優先であり、そうした中で、よく考えていきたいと思います。
(質問)
菅総理は、総理総裁を続投されるご意向のようですが、総裁選において自民党内のライバル、あるいは総選挙において野党が、コロナ対策の3本柱のうち、(1)感染阻止対策(検査の拡充と隔離の徹底。検査数を人口100万人当たり143位から例えば10位以内にすること等を目標に掲げ、実行する)、(2)医療体制の構築(国立病院機構と地域医療機能推進機構の197病院の大半をコロナ病床にあて、同時に「臨時病院・臨時隔離施設」を設置して、「自宅放置ゼロ」を目指す)という改革目標を掲げて戦いを挑んできた場合、選挙に勝てるとお思いですか?【岩上安身氏(フリーランス)】
(回答)
以前から申し上げているように、検査が必要な方に速やかに検査を行っていくことが重要であり、感染リスクがある方への検査を徹底するなど、効果的な検査体制を進めてまいりました。
自治体や民間検査機関等とも協力しながら体制の拡充を図ってきており、我が国の1日当たりのPCR検査は、昨年4月には約7千件であったが、足元では約11万件と着実に増加しております。
また、短時間で判定できる抗原検査キットも活用し、高齢者施設などでの検査を進めるとともに、新学期に当たって、学校での感染拡大を防ぐためにも、幼稚園、小中学校に約80万回分の抗原検査キットを配布し、早期の発見、対応に努めてまいります。
なお、感染拡大地域において、保健所業務がひっ迫する状況においても必要な検査が適切に行われるよう、職場で陽性者が確認された場合、事業所で濃厚接触者等の候補を特定し、保健所が適切と認定することで、事業所から直接検査を依頼できる取組などを進めております。
また、医療体制についても、新型コロナ患者の方々が、症状に応じて必要な医療を受けることができるよう、その体制整備を進めております。
病床やホテル療養施設の確保については、既に、昨年末と比べれば、全国で約1万床の病床、1万5千室のホテル療養施設を確保していますが、今後も、公的病院を始め、自治体とも協力して、国自らも働き掛けを行い、最大限の上積みを行ってまいります。
国立病院機構においては、今回の感染拡大により東京都を中心に医療がひっ迫している状況を踏まえ、新型コロナ対応の病床を東京全体で200床まで拡大し、全国の新型コロナ対策センターとしての役割を果たしてまいります。
自宅療養されている方々は、大変不安な気持ちで過ごされていると考えており、地域の診療所の御協力も頂きながら、健康観察や相談、電話診療などを行う体制を速やかに構築していくこととしております。また、酸素が必要となった患者のための酸素ステーションなどの整備も進めております。
デルタ株によって、世界中で経験のない感染が広がり、我が国の状況も一変しましたが、医療体制の構築を行うことを最優先に、感染防止対策、ワクチン接種といった柱から成る対策を徹底し、この危機を何としても乗り越えてまいります。
(質問)
専門家からは、人出の抑制や医療提供の改善のために、法的な仕組みの検討や構築を求める声が挙がっている(この日の記者会見でも尾身会長が言及した)。また、野党4党が7月16日に憲法53条に基づいて国会の召集を要求して、もう40日になる。憲法には要求から召集までの期間は明記されていないが、常識的に合理的な期間に臨時国会を開くことが求められ、その期間として自民党が作った憲法修正草案では「20日以内」となっている。時折閉会中審査を行うだけでなく、法律の制定や改正なども踏まえ、臨時国会を開く必要性があり、憲法上の要請もあるのではないか。総理は、いつ、もしくは、どのような条件が整ったら、国会を開くつもりなのか。【江川紹子氏(フリーランス)】
(回答)
臨時会の召集については、国会のことでもあるので、与党とも相談しながら考えてまいります。
いずれにせよ、政府としては、新型コロナ対策、大雨の被害に遭われた方々への支援等、目下の重要課題に、引き続き全力で取り組んでまいります。
(質問)
東京を始め日本は非常に厳しい感染状況に堕(お)ちたと言わざるを得ません。緊急事態宣言はあまり効きません。自宅でコロナ感染者が死亡する件が多くなってきました。病院への搬送も難しい。オリンピックの影響で感染拡大が進んだ可能性を否定できないにもかかわらず、議論なしでパラリンピック開催が決定されました。パラリンピックの選手たちや他の関係者は感染したら、入院できない可能性が十分あります。多くの外国人選手たちは入院出来ないリスクを意識していない可能性が高いです。何か大変なことが起きたら、政府の責任が重いと思われます。それでも、問題ないと総理が思っていますか。その理由を聞かせて下さい。【西村カリン氏(Radio France)】
(回答)
パラリンピックについては、オリンピック開催の経験を活かして、選手や大会関係者の徹底した検査や行動管理を行っており、選手団の88パーセントがワクチンを接種済です。
その上で、パラアスリートのリスクや特性に配慮して、選手村内に看護師を配置し、総合診療所において、必要な医療が提供できる体制を整えています。
さらに、入院が必要な場合には、組織委員会と大会指定病院が迅速かつ円滑に連携して適切な対応を行うこととしております。
これらにより、選手の皆さんに安心して参加していただけるよう、感染対策に万全を尽くし、医療体制を整備しております。