令和3年7月30日新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答
(質問)
今回、まん延防止等重点措置が5道府県に再び適用されることになりましたが、京都府知事は7月27日の記者会見で政府に重点措置の適用を要請するか問われ、「要請してもなかなか政府は動いてくれないと思っている」と述べました。北海道知事は逆に、重点措置の早期適用を要請しても政府から検討するとの話がなく、29日に「歯がゆい状況」と述べています。ワクチン供給に関しても地方自治体は政府の場当たり的な対応に不満が募っており、コロナ対策全般に関する政府への信頼は薄れ、諦めや不信が広がっています。総理はこのような状況を招いていることについてどうお考えですか。【京都新聞】
(回答)
まん延防止等重点措置の適用については、基本的対処方針に沿って、それぞれの地域における感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制の状況を見ながら、専門家の御意見を伺った上で総合的に判断することとされています。
また、都道府県から要請があった場合には、国会の附帯決議等を踏まえ、速やかに検討を行うこととしており、各都道府県と緊密に連絡を取り、意見交換を行いながら、対応してきたところです。
私としては、何としても国民の命と健康を守っていく決意であり、この難局を乗り越えるため、国、自治体、医療関係者が、一致団結して対処していきたいと考えております。
(質問)
東京五輪の開会式で、天皇陛下が開会宣言された際、菅総理は当初座っていて、途中から立ち上がりました。こうした所作に国民からは疑念の声が出ています。現場では、どういう状況だったのか、総理の言葉で説明を頂ければと思います。【テレビ東京】
(回答)
当日、天皇陛下の開会宣言が始まる際には、一同に起立を促すアナウンスが流れる旨の連絡を大会組織委員会から事前に受けておりましたが、実際にはアナウンスが流れませんでした。結果として、宣言が始まってから立ち上がる形となりました。
こうした点は、大会組織委員会からも説明があり、バッハ会長のスピーチの最後で、バッハ会長が陛下に開会宣言のスピーチをお願いされ、起立を促すタイミングがなくなってしまったということでした。
(質問)
総理は7月24日にフランスのマクロン大統領と会談した際に、子供の連れ去り問題も取り上げられたと思います。菅総理はその点に関してはマクロン大統領に何を言ったのでしょうか。連れ去られた2人の子供に会えないから、ハンガーストライキをしたフランス人男性のフィショさんにメッセージがありませんか?【Radio France】
(回答)
御質問の件については、先般の日仏首脳会談でマクロン大統領から提起がありましたが、その詳細については、外交上のやり取りであり、差し控えます。
本件は個別の民事事案であり、政府としてコメントすることは適当でないことは御理解いただきたいと思います。その上で申し上げれば、我が国はこれまでフランス政府に対して、我が国の法制度等について説明をしてきているところであり、今後とも両国間で対話を行っていくことで一致しています。
(質問)
総理は会見で感染拡大と東京五輪の因果関係に関して「その原因にはなってないと思っている」と明言されましたが、新型コロナ対策分科会の尾身会長は昨日の国会で「感染を上げる要素」として東京五輪に言及しました。別の専門家からは「五輪というお祭りを開催している中で、感染拡大防止を国民に呼び掛けるのはメッセージとして矛盾している」との指摘もありますし、本日の基本的対処方針分科会では「政府は五輪が人々の気持ちに影響を与えていることを認めた上で、協力のお願いをするべきではないか」との意見もありました。東京五輪が国民の行動に影響し、緊急事態宣言の効果を損ねているとは考えませんか。また、首相の発信が、人出が減していることや感染者に占める高齢者の割合が低いことなど、楽観的な側面ばかり語っているように見えます。本日も国会では「首相が楽観バイアスを増幅させ、緊急事態宣言が意味を成さなくなっている」との批判がありました。国民との危機感の共有が重要性が指摘されている中、なぜ、リスクをきちんと国民に説明しないのでしょうか。前回の記者会見後の書面質問では、本紙を含めて複数の社が違う質問をしたのに、同一の文面での回答がありました。今回は真摯な回答をお願いします。【東京新聞】
(回答)
これまで、客観的な事実や数値に基づき、国民に対して説明を行ってきたものであり、その際には、新型コロナのリスクもきちんと説明した上で、国民への協力を求めるなど対応してきたところであります。
7月30日の記者会見においても、高齢者の接種が進む中で、これまでの感染拡大期と明らかに違う点について、客観的な事実に基づき説明するとともに、デルタ株への置き換わりが急速に進むにつれ、更に感染の拡大が進むことが懸念されること、若い世代での感染が急拡大していることや、40代、50代の重症者が増加傾向にあり、今後病床がひっ迫するおそれがあること、デルタ株の出現によって、若い世代の方々であっても重症化リスクが高まっており、感染後の重い後遺症に苦しんでいる方がいることなどの危機感をお伝えした上で、国民の皆様に対し、お一人お一人が高い警戒感を持って、感染予防を徹底し、慎重な行動をとるようにお願いしたところです。
また、今般の東京オリンピック大会の開催に際しては、その多くを無観客で開催することとされたほか、政府としても、経済界に対しテレワーク等の促進を依頼するとともに、国民の皆様には、御自宅でテレビなどを通じて声援を送っていただくようお願いしてまいりました。
全国的に感染が拡大する中、引き続き、政府として、感染拡大防止や医療提供体制の確保を進めるとともに、ワクチン接種を更に進めてまいります。
(質問)
菅首相は3月18日の記者会見で、新型コロナ対策に関して「若者への発信が足りなかった」と述べ、若者に対する呼び掛けを強化する考えを示しました。発言から4か月以上が経過しましたが、これまでのところ、若い世代に首相の声が十分に届いていないのが現状です。首相自身の発信の在り方や姿勢を見直す考えはありますか。【共同通信】
(回答)
若者に対する呼び掛けについては、利用頻度が高いユーチューブやツイッターなどのメディアを活用するとともに、若者に影響力のある著名人による発信や、ワクチン接種に関しては、接種のために必要な情報を専門家から分かりやすくお伝えするなど、情報を受け取る方々の気持ちに立って、工夫をしていきたいと思います。
(質問)
「桜を見る会」前日の夕食会の費用を安倍前首相側が補塡していた問題をめぐり、検察審査会が安倍前首相を不起訴とした東京地検特捜部の処分のうち、公職選挙法違反容疑などについて「不起訴不当」としました。受け止めをお聞かせください。また、この問題については、安倍前首相はいまだにホテルの明細書や領収書などを示せていません。さらに安倍前首相の事実に反する答弁も118回確認されています。安倍前首相が改めて国会招致に応じる必要性はあると思いますか。この問題を通じて国民の政治不信が高まる中で、安倍前首相の説明責任を果たそうとしない姿勢をどう評価しますか。【朝日新聞】
(回答)
個別事件における検察審査会の議決について、私からは、コメントすべきではないと思います。
国会における対応については、国会がお決めになることであり、また、安倍前総理の説明が十分であったかどうかは国民の皆様が判断されることであると思います。
(質問)
2003年SARS(重症急性呼吸器症候群)の現場取材の経験があるのですが、日本がベトナムでバックマイ病院を専門病院にして感染予防指導し、医療従事者のスキルも上がり、世界で最初にSARSを制圧しました。東京での感染拡大により、中等症の患者さんも増加し、都立病院などが実質的にコロナ専門病院になりつつありますが、専門病院にする事で対応のスピードアップ、スキルアップ、治療薬などの数値以外の現場情報共有など多くのメリットがあります。今後国立のコロナ専門病院指定、拡充など、国民の安心につながる新たな医療体制の確立のお考えはありますでしょうか。【大川豊氏(フリーランス)】
(回答)
デルタ株による急激な感染拡大が進む中で、国民の命と健康を守るためには、感染防止対策やワクチン接種を強力に前に進めるとともに、医療提供体制の確保が重要であると考えています。
特に、本年1月の感染拡大の反省に立って、これまで病床の確保を進めており、例えば東京都では、4月以降、既に1,300床の病床を確保しています。さらに、今回の感染拡大を受けて、一層の病床確保を進めるとともに、軽症から軽い中等症の患者を対象として初めて特例承認された中和抗体薬(ロナプリーブ)について、国が買い上げて各医療機関に配布しており、既に投与が開始される等、対策の強化を図っているところであります。
御指摘のいわゆる新型コロナ専門病院については、特にまとまった医療従事者を確保する必要があり、このため、医師が感染した場合の代替医師の確保、医師、看護師等の入院医療機関への派遣等に対して新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金により、政府として、財政的な支援を行っています。
なお、国立病院を始めとする公的医療機関には、それぞれの地域において求められる役割分担に応じて、地域の一般医療と新型コロナ対応を支えていただいています。このため、国立病院を新型コロナ専門病院とすることは、現時点では想定していませんが、これまで、医療提供体制がひっ迫した地域については、都道府県からの要請を受け、国立病院を含む各省庁所管の公的医療機関等に対し、新型コロナ病床の更なる確保の働きかけを行い、追加的な増床を図ってきたところであります。
引き続き、都道府県と連携して、全力で医療提供体制の確保に取り組んでまいります。
(質問)
菅総理の説明をお聞きし、今回のデルタ株による感染爆発を止める決め手はワクチンであるとお考えになっていることが分かりました。しかし、ワクチン接種が進んでいる米国で、ワクチン2回接種完了者の間で、ウイルスがワクチンの効果を突破(ブレイクスルー)してしまう「ブレイクスルー感染」のケースが増えています。米国の疾病対策予防センター(CDC)によると、米国で7月19日、「ブレイクスルー感染」で入院した患者は5,601人と、4月26日時点と比べて6.7倍に増加。同じ日の「ブレイクスルー感染」の死亡者は1,141人と、4月26日時点の死亡者132人と比べ8.6倍に急増しています。こうなると、ワクチン接種が、絶対的な決め手になるかどうか、疑問が生じてきます。ワクチン以外では、国民の行動抑制を強化する旨おっしゃいましたが、国民にも受忍限度があります。政府があらゆる手を尽くしているなら、国民もこれ以上の行動制限を受け入れるかもしれませんが、政府は1年半にわたってPCR検査の抑制を続けています。東京都の新規感染者数は、五輪が開幕した7月23日の1,359人から6日後の29日には3,865人と2.8倍に急増しています。問題は、陽性率と検査数です。7月28日の陽性率は18.0パーセントで、五輪開幕の23日の12.8パーセントの1.5倍と急上昇しています。これは端的に検査数が足りないことを示しています。実際、PCRと抗原検査を合計しても、東京における検査数は7月28日(7日間移動平均)で8,980人、7月23日の8,082人から、ほとんど増えていません。世界を見渡しても、先進国でこんなに検査を抑制している国はどこにもありません。7月29日現在、日本は100万人当たりの検査人数が14万4,365人で、世界143位です。会見の間、尾身会長は何度か検査の必要性を口にされ、「言葉だけでは足りない。行動が必要」とまで訴えておられましたが、菅総理からは、検査をどこまで増やす、といった具体的な目標などは示されませんでした。日本のトップが検査の拡充に消極的では、厚労省の検査抑制の姿勢が変わるわけがありません。国民に行動変容を求める前に、厚労省の官僚の意識と行動の変容を求めるべきではないでしょうか。「検査も必要」という尾身会長の「言葉」を、政治力によって「実行」するのは、菅総理であるはずです。ワクチンと国民への行動抑制の強制だけでなく、検査拡充についても具体的な目標数値を挙げて、思い切ったリーダーシップを政府に対して発揮することはできないのでしょうか? 検査の思い切った拡充を行う意思がおありかどうか、その点を総理にお伺いしたいと存じます。【岩上安身氏(フリーランス)】
(回答)
感染拡大を防ぐ上で、検査の拡充は極めて重要であり、まず、全体の検査能力の底上げを図るため、医療機関や民間検査機関も含め検査機器の導入を支援する等、検査体制の整備に取り組んできたところです。
この結果、我が国の1日当たりのPCR検査の能力は、昨年4月上旬に約1万件であったのが、直近では約30万件となっています。
また、重症化リスクの高い高齢者施設の従事者等に対する集中的な検査については、本年の2月~3月にかけて約63万件を超える検査を、4月以降からは約364万件の検査を実施してきたところです。
さらに、感染拡大の予兆をつかむため、無症状者を対象にしたモニタリング検査についても、本年2月から累計で約58万件の実施をしています。
加えて、専門家の提言を踏まえ、軽い症状がある方が速やかに気軽に検査を受けていただけるよう、短時間で結果が分かる抗原簡易キットの活用を推進しています。
高齢者施設や医療施設等に対しては、6月以降、約460万回分の抗原簡易キットを、大学等に対しては、7月末から約45万回分の抗原簡易キットを順次無償で配布しています。職場においても、抗原簡易キットを用いた検査を円滑に実施できるよう利用を促進しています。
引き続き、感染拡大防止に向けて必要な検査が行われるよう、引き続き都道府県等と連携しながら、取り組んでまいります。