令和3年3月5日新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答

(質問)
 新型コロナウイルス対応において、地方の声を総理がどのように捉えているか、お尋ねします。例えば中国地方では、島根県知事は、政府・東京都の対応に問題があるとして、東京五輪の開催に反対の意思と、5月に地元で予定される聖火リレーの中止検討を表明しました。緊急事態宣言の対象地域の飲食店などに給付金が出る一方、島根県のように感染者が少ない地方県への支援が乏しいことを「不公平」と批判しています。また広島県知事は、無症状の感染者を見つけて感染拡大を抑え込む狙いで、広島市中区で任意、無料の集中検査を始めました。両県知事とも地方の実情や住民の声に耳目を傾けた上で、政府対応の不備を指摘しています。総理は秋田出身をアピールし、就任当初に地方重視を訴えながら、その姿勢が乏しいように思えます。島根、広島両県知事の問題提起をどう酌み取り、コロナ対応で地方の声や動きをどう尊重するか、お聞かせください。【中国新聞】

(回答)
 新型コロナ対策については、西村大臣などが各知事と随時意見交換をしており、各知事の御意見をできる限り、政策に反映させています。
 協力金は時間短縮を要請した場合、現在、緊急事態宣言の対象地域以外でも、1日4万円の支援を行っています。
 さらに、昨年来、補正予算で地方向けの交付金を4.5兆円、医療関係の交付金も3.0兆円措置しており、各自治体の独自の取組をできる限り支援しています。

(質問)
 緊急事態宣言の発令以降、与党議員の深夜会食や官僚の高額接待など、国民を失望させる事例が相次ぎ、国民に協力を求める上で重要な政治、行政の信頼が損なわれています。政治の信頼回復がないまま、自粛をお願いしても、首相のメッセージが十分に届かないとの指摘もあります。首相の御長男も関係した総務省幹部への接待問題では、首相への忖度(そんたく)や、その結果として、放送行政に影響を与えたとも言われています。前政権から続く政官関係の問題は続いています。この状況で今、政治、行政の信頼回復のために、首相がすべきこと、果たすべき責任は何でしょうか。官僚が官邸の方ばかり向かずに、公正公平に働けるようにするための改善策をお示しください。【東京新聞】

(回答)
 総務省の一連の問題に関して、国民の信頼を大きく損なうことになったことは、政府として、深く反省しなければなりません。
 検証を徹底し、それぞれの事案に応じた再発防止策を講じることが重要であり、国民の信頼を回復し、期待に応えることが、私の責務であると考えています。
 また、国家公務員は、常に中立性、公正性を保ちつつ職務を遂行することが重要であります。

(質問)
 首相は首都圏で宣言を延長する大きな理由として病床の使用率を挙げているが、一方で、首相も言及した変異株への懸念、また、尾身会長が言及したリバウンドリスク、中でも首都圏の匿名性、特殊性、クラスターの追いづらさ等を踏まえた場合に、2週間の延長幅は妥当と考えるのか。2週間より長めの幅を持たせる選択はなかったのか。改めて延長幅を2週間とした理由を伺いたい。【フジテレビ】

(回答)
 緊急事態宣言の対象地域である1都3県においては、既に多くの指標で当初目指した基準を満たしていますが、病床の状況など、一部には厳しい指標も見られたところであり、こうした中で、感染拡大を抑え込むと同時に、状況を更に慎重に見極めるため、2週間の延長を判断したものです。
 今後、この2週間で、飲食店の時間短縮や不要不急の外出自粛等の従来の対策を更に徹底するとともに、高齢者施設等における感染を早期に発見し、クラスターの発生を防ぐため、3月中に10都府県・約3万の施設での集中的な検査を実施、市中感染を探知するため、無症状者などのモニタリング検査を大都市でも規模を拡大して実施、飲食店の営業時間短縮や、ガイドラインの遵守について、自治体と協力して見回りの強化、卒業式・入学式・歓送迎会やお花見等の機会で、大人数での会食を控えてもらうことの呼びかけなど、様々な対策を講じてまいります。

(質問)
 原発について伺います。間もなく東京電力福島第一原発事故から10年になりますが、東京電力では柏崎刈羽原発、福島第一、第二原発に関連して不適切な事案が相次いで発覚しています。中でも、東電が再稼働を目指す柏崎刈羽では社員による不正入室や核物質防護設備の損傷、完了したとしていた工事の未完了の発覚などが立て続けに起きて、地域住民の東京電力への不信感は高まっています。東電の一連の問題への対応についての所見を伺います。また、過酷事故を起こした当事者でありながら、不適切な対応を重ねる東電が再び原発を動かしてもいいとお考えでしょうか。併せて今後、東電及び柏崎刈羽原発について政府としてどのように対応していかれるかも合わせてお答えください。【新潟日報】

(回答)
 東京電力福島第一原発事故から10年となりますが、原発事故の教訓は、事故は起きないといういわゆる「安全神話」から決別しなければならない、ということだと認識しています。
 このため、世界で最も厳しいレベルの基準を定め、地震や津波に耐え得る性能を求め、もし過酷な事故が起きてしまっても十分に対処できるだけの対策を要求することとしています。
 この安全対策をしっかりと実行しなければならない東京電力が、柏崎刈羽原発や福島第一原発などにおいて、不適切な事案を相次いで起こし、地元の方々の信頼を損ねていることは誠に遺憾です。
 政府としては、現在ある原発については、安全最優先、すなわち原子力規制委員会が、世界で最も厳しい水準の新規制基準に適合すると認めた原発のみ、地元の理解を得ながら進めていくという方針に変わりはありません。
 東京電力は高い緊張感を持って、責任を持って取り組むべきだと考えており、東京電力を監督する立場の経済産業省から厳しく指導していきます。

(質問)
 放送事業会社に勤める首相の長男らからの接待で、多くの総務省職員が国家公務員倫理規程違反で処分を受けました。総務相秘書官を務めた長男の放送事業会社就職は結果的に不適切だったのではないですか。また首相は今日(5日)の国会で政治責任を問われ、政治責任の定義はないと発言しましたが、首相は野党時代、与党幹事長の政治資金問題に対し、政治的道義的責任はあると批判しました。今回の件で御自身の政治責任はないのでしょうか。山田前内閣広報官のNTTからの接待問題も明らかになりました。退職したから調査しないのではなく、襟を正すべく真相究明すべきではないでしょうか。【北海道新聞】

(回答)
 総務省の一連の問題に関して、国民の信頼を大きく損なうことになったことは、政府として、深く反省しなければなりません。
 また、私の家族が関係し、結果として公務員が倫理法に違反する行為をすることになったことについて、大変申し訳なく思っており、国民の皆様に、重ねてお詫(わ)び申し上げます。
 いずれにせよ、検証を徹底し、それぞれの事案に応じた再発防止策を講じることが重要であり、国民の信頼を回復し、期待に応えることが、私の責務であると考えています。
 なお、山田前内閣広報官については、既に退職しており、国家公務員倫理法の対象ではありませんが、総務省において、検証委員会を立ち上げ、山田前広報官の総務省在職期間中のものも含め、過去の衛星基幹放送の認定プロセスなどについて検証が進められるものと承知しています。

(質問)
 新型コロナウイルス対策のうち、特に変異株の感染状況の把握と、その対策について改めてお伺いいたします。私どもの放送エリアのうち、愛知県と岐阜県は2月28日に緊急事態宣言が解除されました。その後は、クラスター発生等で、新規感染者の上下はありますが、両県とも、顕著な感染拡大は認められず、確かに、比較的落ち着いた状況と思われます。一方で、岐阜県では、変異株の新規感染者が確認されました。この方は、直近2週間の海外渡航歴はないと聞いています。そこで、地元には、新型コロナウイルス自体の感染が拡大していない状況であっても、変異株の国内の広がりに対する心配の声が聞かれます。総理は、先ほど、変異株を短時間で検出できる検査について言及されました。こうした検査を、例えば、これも言及された、無症状者のモニタリング検査とリンクするお考えはないのかなど、新型コロナウイルスの感染が、現状でさほど広がっていない地域を含めて、全国の変異株の感染状況の具体的な把握の方策と、変異株への対策について、お伺いいたします。【CBCテレビ】

(回答)
 国内では変異株感染例が継続的に確認され、自治体による積極的疫学調査も受けて、感染者とクラスター報告数の増加傾向が見られます。
 今後、変異株の拡大が懸念される中で、2月26日の政府の新型コロナウイルス感染症対策本部において、3月から全ての都道府県で陽性患者の検体から一定割合を抽出し、スクリーニング検査を実施する等の監視体制の強化を含め、変異株対策のパッケージを決定し、実行に移しているところです。
 引き続き、変異株の状況を含め、しっかりと状況を注視し、専門家の意見も伺いながら、対応してまいります。

(質問)
 6府県の先行解除を表明した2月26日、菅首相は記者会見でなく、ぶら下がりで対応しました。昨年春の先行解除は、1日の感染者がゼロの県も多く、国民の多くは先行解除は当然と受け止めていました。ところが、今回はまだ感染者数が相当いる中で、1週間の前倒しに疑問を抱く国民も少なくなかった。だから、ぶら下がりでなく、記者会見でちゃんと首相が説明すべきだったと思います。26日に記者会見を行わなかったことについて、「山田広報官のことは全く関係ありません」とした上で、菅首相は「現に昨年の関西圏を解除したときは行っておりませんで、このような形でぶら下がりで対応している、このことも事実であります」と前例を理由に挙げました。菅首相は前例踏襲打破を掲げ、総理になりました。ところが、前例を理由に大事な会見を開かないのは、これまでの方針と真っ向から食い違います。説明してください。もし、「一部先行解除では会見を開かないという前例」が悪しき前例でなく、維持すべき良き前例であるというなら、それは国民にとってどんなメリットがあり、コロナの感染対策に何を寄与するのでしょうか。それが説明できないのであれば、山田広報官の問題が影響し、会見を開かなかったと考えざるを得ません。反論してください。【日刊ゲンダイ】

(回答)
 政府としては、記者会見、ぶら下がり取材のいずれも、総理の正式の見解表明の機会として重要と考えており、可能な限り丁寧に対応しております。
 その上で申し上げれば、既に重ねて説明してきているとおり、2月26日の6府県の緊急事態宣言の解除の公表に当たっては、昨年の関西圏の先行解除を公表する際にはぶら下がり取材で対応したこととの一貫性を念頭に置く必要があったこと、さらに、東京を含む1都3県において、引き続き緊張感を持って、感染拡大防止を徹底する必要があったことから、3月7日までとしていた緊急事態宣言の期間が終わるタイミングで会見を行うこととしたものです。
 2月26日の対応は、上記を理由とするものであり、山田前内閣広報官のことは全く関係ありません。

(質問)
 五輪を開催するに当たって関係者、選手団には厳重な検査を行う。しかし、観客に対して行うという話はないのですね、まだ。これは無観客でやるのかどうかという問題もありますけれども、観客を入れて行うのだったらば、そこへの全員検査というものを行うべきではないか。民間のスポーツイベントなどでは、直前の入場検査で全量検査を行っているところもあります。そうしたことも含めてお答え願えないか。お考えをお示しいただきたいと思います。【岩上氏(フリーランス)】

(回答)
 先日開催された「五者協議」(IOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)、組織委員会、東京都及び国)において、東京大会における海外からの観客については、国内外における感染状況や防疫措置、専門家による科学的知見等を勘案して、3月中に判断することで合意されたと承知しています。
 また、観客の感染症対策については、安全・安心な大会の実現に向けて、国内外の感染状況や様々なスポーツ大会における感染対策の取組等も踏まえながら、主催者であるIOC、IPC、東京都、組織委員会と緊密に連携し、検討を進めてまいります。

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