新たな総合経済対策が目指すもの
10月28日、岸田政権発足後2度目となる経済対策が閣議決定されました。今回の経済対策のタイトルは「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」。
この対策が目指すものは何なのか、以下で詳しく解説します。
これまでの対策
日本経済を取り巻く環境は厳しさを増しています。ロシアによるウクライナ侵略を背景とした国際的な原材料価格の上昇や円安の影響などで、国内では、日常生活に密接なエネルギー・食料品等の価格上昇が続き、また、世界的にも景気後退懸念が高まっています。
こうした事態に対し、政府では、本年4月に「コロナ禍における原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を取りまとめ、5月には、この対策を実現するための令和4年度補正予算が成立しました。特に、燃料油価格の高騰に対しては、激変緩和措置を講じることで、本来 200 円程度に上昇するガソリン価格は 170 円程度に抑制されてきました。
政府では、その後も物価・景気の状況に応じ、予備費を活用して機動的な対応を行ってきました。
(出典)資源エネルギー庁HP「燃料油価格激変緩和対策事業」
最新のデータはこちら
関連リンク
- 「原油価格高騰に対する緊急対策」(令和4年3月4日原油価格高騰等に関する関係閣僚会合決定)
- 「コロナ禍における原油価格・物価高騰等総合緊急対策」(令和4年4月26日原油価格・物価高騰等に関する関係閣僚会議決定)
- 物価・賃金・生活総合対策本部
今回の経済対策
こうした認識のもと、世界経済の減速リスクを十分視野に入れながら、足下の物価高騰など経済情勢の変化に切れ目なく対応し、新しい資本主義の加速により日本経済を再生するため、
①物価高騰・賃上げへの取組
②円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化
③「新しい資本主義」の加速
④国民の安全・安心の確保
第1の柱 物価高騰・賃上げへの取組
- 物価高騰の主な要因である「エネルギー、食料品」に重点を置いた効果的な対策を講じることで、国民生活と事業活動を守り抜きます。
- 日本では、化石燃料等の海外依存度の高さゆえに、これまで輸入物価が上昇する度に海外に所得が流出するという事態が続いてきました。こうした日本経済の脆弱性を克服するため、エネルギーや食料品等の危機に強い経済構造への転換を図ります。
- 目下の物価上昇に対する最大の処方箋は、物価上昇を十分にカバーする継続的な賃上げを実現することです。厳しい状況にあっても賃上げに踏み出す中小企業への支援策を強化します。
第2の柱 円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化
- 足元の円安に対して、そのメリットを最大限に引き出し、国民に還元するための力強い政策を進めます。
- インバウンドや国内観光、イベント需要など、コロナ禍で回復が遅れている分野の需要を回復させ、地域経済の活性化を図ります。
- 円安により国内立地環境がコスト面で大きく改善する中、半導体や蓄電池など、日本に期待される物資の供給力を強化します。また、企業の国内回帰など、「攻め」の国内投資を拡大するとともに、対内直接投資を一層呼び込みます。さらに、農林水産物の輸出拡大、これまで国内への供給にとどまっていた中小企業の海外への輸出展開を強力に後押しし、外需を取り込むことで、経済構造の強靱化を図ります。
第3の柱 「新しい資本主義」の加速
- 物価高が進み、賃上げが喫緊の課題となっている今こそ、「①賃上げ」「②労働移動の円滑化」「③人への投資」という3つの課題の一体的改革を進め、賃上げの流れが継続・拡大する「構造的な賃上げ」を実現します。
- 賃上げに加えて、個人金融資産のうち、現預金が投資にも向かい、持続的な企業価値向上の恩恵が家計に及ぶ好循環を形成すべく、「資産所得倍増プラン」を策定・実行します。
- 「新しい資本主義」を実現するため、「科学技術・イノベーション」、「スタートアップ」、「GX」、「DX」の4分野における大胆な投資を促進します。
- 0歳~2歳に焦点を当てた伴走型支援と経済的支援のパッケージなど、こども・子育て世代への支援の拡充、女性活躍、孤独・孤立対策など包摂社会の実現に向けた取組を進めます。
第4の柱 国民の安全・安心の確保
- ウィズコロナの下、できるだけ平時に近い社会経済活動が可能となるよう、感染症対応を強化します。
- 自然災害から国民の生命と財産を守るため、引き続き、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づく取組を推進するとともに、東日本大震災をはじめとする自然災害からの復旧・復興に全力で取り組みます。
- 安全保障環境の変化に対応した取組を進めるとともに、経済安全保障、食料安全保障を強化します。
できるだけ早く国民の皆さんのもとへ
今回の経済対策を決定した後の記者会見で、岸田総理は、次のように語っています。
【岸田総理】
物価対策と景気対策を「一体」として行い、国民の暮らし、雇用、事業を「守る」とともに、未来に向けて経済を「強く」していきます。
核兵器の威嚇が行われるなどウクライナ情勢は、緊迫の度を加えています。「世界は歴史上初めて真のエネルギー危機に直面している」と見る専門家もいます。現時点で見通し難い世界規模の経済下振れリスクに備え、トップダウンで万全の対応を図ることといたしました。
今後は、この経済対策をできるだけ早くお手元にお届けするよう、補正予算の編成を急ぎます。また、ご用意した政策を国民の皆さんに徹底的にご活用いただけるよう、発信と広報に全力を挙げてまいります。
国民の皆さんのご理解とご協力を心からお願い申し上げます。