【菅総理冒頭発言】
今日は国民の皆さんに二つのことが報告できることを大変うれしく思っております。その一つは、先ほどの復興本部において、復興基本方針を決定することができたということであります。そして二つ目は、関係閣僚が議論を重ねて、エネルギー・環境会議の場でエネルギー政策に関する重要な決定を、これも本日行うことができたことであります。これら2つのことは3月11日の大震災と原発事故発生を踏まえた、復興と原発・エネルギー政策の政府としての統一的な方針を示すものであります。そういった意味で、この2つの重要な決定ができたことは、大変重要でもあると同時に喜ばしいことだと考えております。
まず、復旧・復興について申し上げます。今週25日には、約2兆円の第2次補正予算が成立をし、復旧に向け1次補正では足りないものを盛り込みました。そして、先ほど開催された復興対策本部において、復興基本方針を決定いたしました。復旧の次のステージである、本格復興に向けて政策の全体像を示すものであります。新たな発想の具体的な政策も数多く盛り込まれております。また、5年間の集中復興期間に少なくとも19兆円の財政措置を講じることとなっております。復興債を発行し、償還財源も責任を持って確保いたします。この復興基本方針をベースに第3次補正の編成など、復興への取り組みを本格化してまいります。
次に原発・エネルギー政策について政府としての基本方針を申し上げます。原発の再稼働については、先週の7月21日、総合的な安全評価の仕組み、いわゆるストレステストの具体策を確定し、公表を致しました。これは、保安院だけでなく原子力安全委員会も関与する形で新しいルールを示すものであります。今後自治体、更には事業者等にこの新しいルールの周知を図るとともに、国民の皆様にも、このルールについてきっちりと情報公開をして知らせてまいりたいと、このように考えているところであります。そして、本日関係閣僚によるエネルギー・環境会議で、原子力を含めたエネルギー政策に関する重要な決定が行われました。具体的には、一つは当面のエネルギー需給安定策を取りまとめたものであります。そしてもう一つは、中長期的な革新的エネルギー・環境戦略として、原発への依存度を低減をさせて、そして、それに向けての工程表の策定や原発政策の徹底的検証などを行うことを決定をいたしました。
これらの議論は3月11日、原発事故発生以来、様々な機会に私が申し上げてきたことでありますが、例えば、エネルギー基本計画の見直しといった考え方、こういったことまで含めて、今回、玄葉国家戦略大臣を中心に海江田経産大臣あるいは江田環境大臣ら関係閣僚で検討をしてきたものであります。そして今日の決定をベースとして更に議論を重ねていくことになります。国民的な議論も大いに期待をいたしております。議論に必要なあらゆる情報を積極的に開示してまいります。今後、原発に依存しない社会を目指し、計画的段階的に原発への依存度を下げていく、このことを政府としても進めてまいります。
原発事故関係では既に7月19日に発表したところでありますけれども、原子力事故が収束に向かって大きく前進をしているところであります。具体的には、事故収束に向けてステップ1の目標を達成することができました。今後、ステップ2の着実な実現に向けて、政府として全力を尽くす覚悟であります。
本日夕方、中学生のグループが官邸に来られまして、震災復興にかかわる人達への激励の横断幕を頂きました。その中に、「政府の力を信じています」という言葉があり、胸に響いたところであります。私はこのような中学生あるいは多くの国民が政府に信頼を寄せて頑張るようにというその気持ちを大切にして、この大震災の復旧・復興、さらには原子力事故の収束に向けて、全力を挙げて責任を果たしてまいりたいと、このことを改めて決意したところであります。私からは以上です。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、質疑に移ります。指名された方は所属と名前をおっしゃってから質問をお願いいたします。
それでは、田中さんどうぞ。
(記者)
毎日新聞の田中です。まずエネルギー・環境会議の中間整理について伺います。ここでは原発への依存度を下げるというふうに記されておりますけれども、総理は先日の会見で原発がなくてもしっかりやっていける社会を目指すと仰っておりました。今回の中間整理では原発をゼロにして、脱原発を実現する方向性がはっきりは示されておりませんけれども、総理はご自身のお考えが十分反映されたとお考えでしょうか。それと中間整理では反原発と原発推進の対立を超えた議論を展開するとされています。総理は次の国政選挙ではエネルギー政策が最大の争点になると仰っておられましたが、両院議員総会で。この見解との整理はどういうふうにされてますでしょうか。それと退陣表明をされた総理が長期のエネルギー政策や復興増税といった方針を打ち出すことに野党だけでなく民主党内からも反発が強まっています。こうした批判にはどういうふうにお答えになられますでしょうか。
(菅総理)
先ほども申し上げましたが、3月11日の原発事故発生以来私は2030年に53%を原子力発電所で賄うとされてきたエネルギー基本計画を白紙から見直す、こういう方針を立て、内閣の中でも議論を既に始めておりました。また原子力安全・保安院について経済産業省に属することは問題であると、新たな問題も次々と出ておりますけれども、そのことをIAEAに対する政府としての報告でも申し上げ、この独立の方向も議論を致してまいりました。こういった議論の方向性と私がこの間申し上げてきたことは、方向性としては決して矛盾するものではありません。そして今回のエネルギー・環境会議においてはこうした私の指摘、あるいはこれまで政府が既に議論を始めていることなどをトータルでまとめて議論の場に乗せて革新的エネルギー環境戦略、そういう形で議論をスタートをし、そして今回中間的な取りまとめを決定を致したところであります。そういった意味で私は今回のこのエネルギー・環境会議の中間的整理、取りまとめというのは私がこの間申し上げてきたことあるいは政府として既に取り組んでいることの、いわばこの時点における集大成を関係閣僚の下で議論をし、決定をされたと。私にも先日、海江田大臣、細野大臣、玄葉大臣、そして枝野官房長官が来られて、この案を説明をされ、私も了承をしてきたところであります。そういった意味では矛盾というものは全くなくて、私の考え方を踏まえてこういう方向性をまとめていただいたと、このように理解を致しております。いわゆる脱原発か原発推進かという二項対立という形を採ることは生産的でないという指摘については、私も何かこう、レッテル貼りのような言葉でレッテルをお互いに貼って、それ以上議論が進まないという、そういう議論のやり方は決して望ましくないと思っております。そういった点では今回のこのエネルギー・環境会議での問題の進め方というのは私は大変前向きな進め方だと思っております。
また退陣に関連して色々このようなエネルギー政策を議論することについて問題があるという指摘があるということを申されましたが、私は逆に言うと非常に今この議論をしなければならない、その時だと思っております。それは言うまでもありませんけれども一つは日本ではもとより世界でも複数の原発がシビアアクシデントに同時的に襲われるということは私の知る限り初めてでありますし、そういうことを踏まえてその時に議論をしないで、その後になって議論を始めるということは私は逆に不自然ではないかと思います。それに加えてまさに多くの原子力発電所が現在地震などの影響もあって停止をしている中でありますから、そうした電力供給、エネルギー供給について短期的な見通しも含めて議論をする必要があります。そういった意味で今回のこの二つのまとめの一つはそうしたエネルギー供給、エネルギー需要についての議論でありまして、これを行わないということは内閣としての責任を果たさないことになりますから、当然、内閣としての責任としてこうしたことについて短期の問題も中長期の問題もしっかり議論をしていく。このことが必要だと考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
今市さん、どうぞ。
(記者)
TBSテレビの今市です。総理先ほどおっしゃったように第2次補正予算が成立しました。そして総理のいわゆる退陣の3条件とされている一つは片付いたことになるわけですけれども、残る二つ。再生可能エネルギー法案と特例公債法案については自民党などからはこれらが成立しても総理が退陣する保証がないと、そういうことで早期成立に反対する声も根強くあります。こうした中総理としてはこの3つの条件が今国会で成立すれば8月末までのこの国会の会期中に退陣するということを明確な言葉で、約束するという考えはないのでしょうか。また仮に残る2つの法案が、そのうちの一つでも今の国会で成立しなかった場合、その時にはどういう対応をされるお考えか、そのことについてお伺いしたいと思います。
(菅総理)
私の出処進退については6月2日の代議士会、そしてその後の記者会見などで申し上げてきたその言葉については、私自身の言葉でありますので責任を持ちたいとこう考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
坂尻さん、どうぞ。
(記者)
朝日新聞の坂尻です。総理が冒頭で言われた復興基本方針についてお尋ねします。今回の基本方針に対して足元の与党の民主党からは増税を行うことには反対だという声が巻き起こってまして、今回決められた基本方針も臨時増税の規模ですとか増税期間、そういったものは明示されなかったように思えます。総理が肝いりで設置された復興構想会議でも、この復興債の償還財源には臨時増税というものを充てるんだという考え方を明確に打ち出されているんですが、それから比べると姿勢が後退したようにも受け取れます。総理自身は復興債を発行する場合は臨時増税というもので償還する事が必要なんだという考え方に軸足を置いていらっしゃるのか、与党で反対の声が多ければ増税なんてそんなにこだわらないんだというお考えなのか、どちらの考え方なんでしょうか。
(菅総理)
まずこの基本方針をよくお読みいただきたいと思いますが、今の問題、かなりしっかりと表現されていると思っております。後ほど平野担当大臣が詳しいことについては会見をされると聞いております。私はこれを素直に読めば、今の御質問は全部この文章の中で読み取れるとこのように思っております。
(内閣広報官)
それでは。
松山さん、どうぞ。
(記者)
フジテレビの松山です。外交問題に関連して質問させていただきます。先週中国で中井前拉致問題担当大臣と北朝鮮の高官が接触して、同行した拉致対策本部の職員も随行を認めています。総理は本当にこの事実について全くその渡航の事実すら知らなかったのかどうか、もう一度確認したいのと、このことについて野党は二元外交だと言って批判していますけれども、一般論として拉致問題の解決のためには総理自身はそうした非公式な北朝鮮との接触は、ある意味必要だという認識でいらっしゃるのかどうか。また総理自身か、次の総理あるいはその先の総理かもしれませんけれども、拉致問題解決のために日本の総理がもう一度北朝鮮に行って直接交渉をするということの意味合い、総理自身どのようにお感じになっていらっしゃいますでしょうか。
(菅総理)
本件については、私は全く承知をしておりませんでした。拉致問題の解決について私はあらゆる努力は惜しまない、あるいはあらゆる努力をするべきだと基本的にはそのように考えております。
(内閣広報官)
それでは、外国のプレスの方。
関口さん、どうぞ。
(記者)
ダウ・ジョーンズの関口と申します。為替に関しての質問なんですけれども、4カ月ぶりの円高更新など、国内製造業には厳しいマーケット状況ですけれども、海外シフトを考える企業に対してどのような政府対策をお考えでしょうか。またこの段階で為替介入をするとしたら米国支持を得られるとお考えでしょうか。
(菅総理)
最近の為替市場では一方的な動きが見られております。引き続き為替市場の動きをしっかりと注視してまいりたいと思っております。為替相場の水準、あるいは今後の為替介入についてはコメントは控えさせていただきます。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
佐藤さん、どうぞ。
(記者)
日本テレビの佐藤です。先ほども出ましたけれども、通常国会も残り1カ月ですし、考えるに特例公債法案の成立というのが復興にも非常に重要な法案だと思います。これに野党が協力してこれないという理由に、やはり総理が退陣の時期を明確にしていないということがあるということについてどうお考えになっているのか。それとやはり、はっきりと辞めるのか辞めないのか言うべきだと思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。
(菅総理)
先ほど申し上げましたように、私は、これまで私が自ら発言したことについては、私自身の責任としてしっかりと自覚を致しております。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
七尾さん、どうぞ。
(記者)
ニコニコ動画の七尾です。よろしくお願いします。冒頭、子どもたちに政府の力を信じていますと言われたとのお話がありました。また総理は自分の言葉に責任を持ちたいとも言われました。ただ、繰り返しで申し訳ないのですが、我々国民にとって見れば、総理が続投されるのか、また退陣されるのか明快にされないことで、先ほど冒頭に説明されたような革新的な政策や方針を掲げても、実際のところ国民の心にリアルに響きません。総理はこうした現状について実際どうお考えになっており、そしてどう国民に説明されるのでしょうか。
(菅総理)
私はいつも、自分の内閣が今必要なことをしっかりとやれているか、あるいはやれていないかということは、私なりに注意深く見ているつもりであります。もちろんいろいろな意見があることは承知をしております。しかし私はこの間、この大震災に対する対応、そして原発事故に対する対応について、内閣としてやるべき事、もちろん100点とは申し上げませんが、私はやるべき事はしっかりと取り組んでいる。その早い遅いの見方はありますけれども、着実に復旧から復興に物事は進んでおりますし、先ほども申し上げましたように、原発事故の方も、当初は本当にどこまでこの原子炉そのものがコントロール可能になるかどうかという心配をした時期もありましたけれども、ステップ1がほぼ予定通り終了し、ステップ2に向かって今努力が始まっております。そういった意味で、私がやらなければならないことは、内閣が今やるべき仕事ができているかどうか、できていると私は思っておりますので、その事を通して国民の皆さんにご理解がいただけるものと、このように思っております。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
穴井さん、どうぞ。
(記者)
読売新聞の穴井です。先ほどは、先日の会見と今日決まったエネルギー・環境会議の中間報告に矛盾はないとおっしゃいましたけれども、最終的な姿として原発をなくす、ゼロにするということと、依存度を抑えて活用するということについては決定的な違いがあると思います。その点はどうお考えなのか。それが具体的に、例えば新規の原発を造るのかどうかとか、あるいは海外に対する原発の輸出にどう臨むかということにも関わってくると思うのですが、この辺はどうお考えでしょうか。
(菅総理)
この中間的な整理というものをよくお読みをいただくと、いろいろな可能性について、現在ここまでは、ほぼ、なんといいましょうか、方針として打ち出せるというものと、それからこれから先はさらなる議論が必要なものという形になっております。短期、中期、長期に分けて工程表が、6つの基本的な理念についても出されております。そういう中での議論をしていくということと、私が申し上げてきたことには矛盾はないと、こう思っております。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
山口さん、どうぞ。
(記者)
NHK山口です。総理が総理にそのままいて、民主党の代表選挙を前倒しで実施するお考えはないのでしょうか。もう馬淵さんも手を挙げてますし、スムーズに移行するために前倒しにやるという考えはないのでしょうか。
(菅総理)
同じことのお答えで恐縮ですが、私の出処進退については従来申し上げた、私自身が申し上げたことについては、私の責任としてそのことは大事にしていきたい。それに伴って、どういう形がどうなるかというのは、これは私が全て決めるということではないのではないかと思います。
(記者)
そしたら岡田さんが前倒しがいいって言ったら、それもOK。
(菅総理)
いや、今申し上げたのは、私が申し上げられるのは私のことについては申し上げられるという意味で申し上げたんです。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
水島さん、どうぞ。
(記者)
時事通信の水島です。原子力安全・保安院が中部電力などに、いわばやらせの質問、賛成の質問をシンポジウムで工作していたという問題が今日浮上しましたが、これについての総理の受け止めと、それから原子力行政の見直しのスケジュールなんですが、細野さんは8月に試案を出して、来年4月くらいの実現を目指すということなんですが、総理もこういったスケジュール感覚でやっていくということなのか、それとも前倒しなど考えられているのか。その辺の見通しをお願いします。
(菅総理)
今回また新たに原子力安全・保安院の、なにかこの、やらせ問題があったのではないかという報道が出ております。もしこれが事実だとすれば極めて由々しき問題であり、徹底的な事実関係の究明とそれを踏まえた厳正な対処が必要だと考えております。従来、電力会社においてそういうことが行われたのではないかという指摘がありましたが、今回は原子力安全・保安院という、行政として原子力の安全を担当している部署が、もしその行政として、それと矛盾する、あるいは反する、あるいは対立するようなことをやっていたとすれば、まさに保安院そのものの存在が問われる問題だと思っております。もう既に、保安院を経産省から切り離すということについてはIAEAの報告の中で述べ、海江田経産大臣も同じ考えでおられますし、この問題が起きた中で、海江田大臣からもお電話を頂きまして、第三者委員会を作るということを言われましたので、是非しっかりやって欲しいと私からも激励を致しておきました。また、そうした原子力行政の見直しについてでありますけれども、それは細野担当大臣にしっかりやってくれるように、私の方から指示を出しております。具体的な日程等については細野大臣の考え方、あるいはそれに伴う準備などを考えながらといいましょうか、基本的には細野大臣にしっかりやってもらいたいということで、任せているところであります。
(内閣広報官)
予定の時間が迫ってきておりますので最後の質問とさせていただきます。
犬童さん、どうぞ。
(記者)
日本経済新聞の犬童です。復興基本方針がまとまる過程で、党の方からはこれから3次補正以降に当たるに当たって、新体制の下で当たってくれという要望が出ていまして、政府の方針にはそれは入っていませんが、総理としては3次、来年度当初と予算を組んで、あと法案の処理も、あとの国会でしなければいけないと思うんですけれども、新体制でこちらは臨むべきだと総理としては思っていらっしゃるのでしょうか。
(菅総理)
党としてそういう議論があったということは承知をしております。
(内閣広報官)
それでは、これで記者会見を終わらせていただきます。どうもご協力大変ありがとうございました。