沖縄全戦没者追悼式 総理あいさつ



 平成二十三年 沖縄全戦没者追悼式が挙行されるに当たり、戦没者の御霊に対し、謹んで哀悼の誠を捧げます。

 先の大戦において、ここ沖縄の地は、国内最大規模の地上戦の場となり、苛烈な戦闘により多くの尊い命が失われました。今、改めて、県民の筆舌に尽くしがたい苦難に思いを致すとき、胸塞がる思いを禁じ得ません。さらに、東日本大震災と原子力発電所の事故という未曽有の困難の中で、「慰霊の日」を迎えることに、私は特別な感慨を覚えます。私たちは二度と悲惨な戦争を経験してはならないことは言うまでもありません。いつの時代も、人間の尊厳と生命を守ることこそ政治の任務であることをこの場で心に刻んでいます。

 本年は、終戦から六十六年となりました。戦後、沖縄は、大きな悲しみを乗り越えて立ち上がり、力強い発展を遂げてきました。しかしながら、今なお、沖縄には米軍基地が集中し、県民の皆様に大きな御負担をおかけしております。本土復帰から三十九年が過ぎたにもかかわらず、沖縄だけ負担軽減が遅れていることは慙愧に堪えません。今後、米軍基地に関わる沖縄の負担軽減と危険性の除去への取組に最大限努力いたします。

 沖縄は、独自の文化を育んできた、我が国が誇るべき地域です。豊かな自然に恵まれ、また、我が国で最も高い出生率により人口増加が続き、成長著しいアジアと近接するという地理的な優位性を有するなど、更なる飛躍の可能性を大いに備えています。

 本年度は、十か年の沖縄振興計画の最終年に当たります。政府としては、現行の沖縄振興計画の総仕上げをしっかり行ってまいります。また、沖縄の優位性や潜在力を最大限に生かし、沖縄の自立的発展のみならず、我が国及びアジア太平洋地域の発展に寄与しうる新たな沖縄振興策に取り組んでまいりたいと思います。一括交付金、県が主体となる計画への支援、跡地利用に関する法律の制定、出先機関の見直しなど、様々な制度について、地元の方々の声に耳を傾けながら、これを実現してまいります。

 今日の日本の平和と繁栄は、戦没者の尊い犠牲の上に築かれています。我が国は、二度と国民を戦争という「不幸」に陥れないという不戦の誓いを堅持し、国際社会の一員として国際平和の実現を不断に追求してまいります。

 この地に眠る御霊の御冥福と、御遺族の方々の御多幸を心からお祈り申し上げ、私の挨拶といたします。


平成二十三年六月二十三日
内閣総理大臣 菅 直人